IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

特許7558107横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法
<>
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図1
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図2
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図3
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図4
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図5
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図6
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図7
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図8
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図9
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図10
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図11
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図12
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図13
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図14
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図15
  • 特許-横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 11/00 20060101AFI20240920BHJP
   F04D 29/60 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F04D11/00 101
F04D29/60 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021070233
(22)【出願日】2021-04-19
(65)【公開番号】P2022165053
(43)【公開日】2022-10-31
【審査請求日】2023-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】久保田 響
(72)【発明者】
【氏名】石渡 隆行
(72)【発明者】
【氏名】中塩 雄二
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-161406(JP,A)
【文献】特開2015-200241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 11/00
F04D 29/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点検口が上部に設けられたポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの内部に収容された羽根車と、前記ポンプケーシングを貫通して内部に挿入され、且つ、前記点検口の下方を通って前記羽根車を水平支持しているポンプ軸と、を備える横軸ポンプの内部点検装置であって、
前記ポンプケーシングの内部において前記ポンプケーシングと前記羽根車との隙間を測定する隙間測定装置と、
前記ポンプケーシングの内部において前記隙間測定装置を支持する共に、前記ポンプ軸に装着され、前記ポンプ軸と共に回転可能な装着用治具と、を備える、ことを特徴とする横軸ポンプの内部点検装置。
【請求項2】
前記装着用治具は、
ヒンジを介して複数の分割片が連結され、前記ポンプ軸に装着可能な閉状態と、前記ポンプ軸から脱着可能な開状態とに変形可能な環状部と、
前記環状部に係合し、前記環状部を閉状態で固定する固定部と、を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の横軸ポンプの内部点検装置。
【請求項3】
前記固定部の少なくとも一部は、円弧状に形成され、
前記環状部の外周面には、前記固定部が係合可能な係合部が形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の横軸ポンプの内部点検装置。
【請求項4】
前記ヒンジは、前記係合部を避けた位置に配置されている、ことを特徴とする請求項3に記載の横軸ポンプの内部点検装置。
【請求項5】
前記複数の分割片は、円弧状の支持片と、前記支持片の周方向両端部に前記ヒンジを介して連結された一対の開閉片と、を備え、
前記ヒンジは、前記一対の開閉片の間の割れ面に対して、前記環状部の中心軸を挟んだ反対側の領域に配置されている、ことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の横軸ポンプの内部点検装置。
【請求項6】
前記割れ面は、外周側に開いた開先形状を有する、ことを特徴とする請求項5に記載の横軸ポンプの内部点検装置。
【請求項7】
前記装着用治具は、位置調整用治具を介して前記隙間測定装置を支持している、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の横軸ポンプの内部点検装置。
【請求項8】
前記位置調整用治具は、少なくとも前記ポンプ軸が延びる軸方向の位置、前記ポンプ軸と直交する半径方向の位置、及び前記隙間測定装置の取付角度を調整可能である、ことを特徴とする請求項7に記載の横軸ポンプの内部点検装置。
【請求項9】
前記位置調整用治具は、前記羽根車のハブの端面との軸方向の距離を測定する距離測定部を備える、ことを特徴とする請求項7または8に記載の横軸ポンプの内部点検装置。
【請求項10】
前記位置調整用治具は、前記羽根車のハブの端面に向かって3点以上のレーザーを照射するレーザー照射部を備える、ことを特徴とする請求項7または8に記載の横軸ポンプの内部点検装置。
【請求項11】
前記隙間測定装置は、映像による状態観察が可能な撮像装置である、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の横軸ポンプの内部点検装置。
【請求項12】
点検口が上部に設けられたポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの内部に収容された羽根車と、前記ポンプケーシングを貫通して内部に挿入され、且つ、前記点検口の下方を通って前記羽根車を水平支持しているポンプ軸と、を備える横軸ポンプの内部点検方法であって、
前記点検口から挿入した装着用治具を、前記ポンプ軸に装着し、
前記ポンプ軸に装着した前記装着用治具に、前記ポンプケーシングと前記羽根車との隙間を測定する隙間測定装置を支持させ、
その後、前記ポンプ軸を回転させて、前記隙間測定装置を、少なくとも前記ポンプケーシングと前記羽根車との下部の隙間に対向させて、当該隙間を測定する、ことを特徴とする横軸ポンプの内部点検方法。
【請求項13】
前記ポンプ軸に装着した前記装着用治具に、位置調整用治具を介して前記隙間測定装置を支持させる、ことを特徴とする請求項12に記載の横軸ポンプの内部点検方法。
【請求項14】
前記羽根車のブレードのエッジの最上流点から前記ポンプ軸の中心軸までの半径方向の高さをh´とし、前記位置調整用治具から前記羽根車のハブの端面までの軸方向の距離をaとし、前記羽根車のブレードのエッジの最上流点から前記羽根車のハブの端面までの軸方向の距離をa´とし、前記羽根車のブレードのエッジの前記ポンプ軸の中心軸に対する傾きをθとしたとき、前記隙間測定装置の前記ポンプ軸の中心軸に対する半径方向の高さhが、
h = h´-(a-a´)×tanθ
の関係を満たすように、前記位置調整用治具によって前記隙間測定装置の位置を調整する、ことを特徴とする請求項13に記載の横軸ポンプの内部点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、河川水や農業用水などを移送するための横軸ポンプが知られている。このような横軸ポンプでは、羽根車とポンプケーシングとが水を介して摺動する隙間部分が徐々に摩耗する。当該隙間部分の摩耗が進むと、ポンプ本体の性能低下、異常振動、軸受部の発熱などの不具合が発生するため、定期的な点検が必要となる。横軸ポンプの口径が十分大きい場合、人が点検口からポンプケーシングの内部に半身を入れ、当該隙間部分をすきまゲージ等で計測しているが、このような点検作業は難易度が高いという課題がある。
【0003】
下記特許文献1には、横軸ポンプの内部状況を容易に点検するための横軸ポンプの内部点検装置が開示されている。この内部点検装置は、横軸ポンプのポンプケーシングの上部に設けられた点検口に取り付けられる第1固定具と、ポンプケーシングの内面に取り付けられる第2固定具と、第1固定具と第2固定具との間に設けられたレールと、レールに沿って移動可能な点検ユニットと、を備え、当該点検ユニットは、撮影装置を含み、撮影装置は、レールが延びる方向に対して垂直な方向に移動可能に構成されている(特許文献1の図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-200241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
横軸ポンプは、ポンプ軸によって羽根車を水平支持しているため、ポンプ軸は重力の影響を受け易く、羽根車とポンプケーシングとの隙間は、ポンプ軸の下部で最小となる。このため、ポンプ軸の下部における羽根車とポンプケーシングとの隙間の点検が重要である。しかしながら、上記先行技術では、ポンプケーシングの上部の点検口からポンプ軸を避けるようにレールが曲がっており、ポンプ軸の下部における羽根車とポンプケーシングとの隙間まで撮像装置を近づけることは困難であった。また、仮に撮像装置を近づけたとしても、数ミリ程度しかない羽根車とポンプケーシングとの隙間に対して撮像装置を精度よく対向させることは困難であった。また、ポンプ軸の下部における羽根車とポンプケーシングとの隙間までは、点検口から手が届かないため、従来のすきまゲージ等では測定を行うことができなかった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ポンプ軸の下部における羽根車とポンプケーシングとの隙間の点検が可能な横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る横軸ポンプの内部点検装置は、点検口が上部に設けられたポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの内部に収容された羽根車と、前記ポンプケーシングを貫通して内部に挿入され、且つ、前記点検口の下方を通って前記羽根車を水平支持しているポンプ軸と、を備える横軸ポンプの内部点検装置であって、前記ポンプケーシングの内部において前記ポンプケーシングと前記羽根車との隙間を測定する隙間測定装置と、前記ポンプケーシングの内部において前記隙間測定装置を支持する共に、前記ポンプ軸に装着され、前記ポンプ軸と共に回転可能な装着用治具と、を備える。
【0008】
上記横軸ポンプの内部点検装置においては、前記装着用治具は、ヒンジを介して複数の分割片が連結され、前記ポンプ軸に装着可能な閉状態と、前記ポンプ軸から脱着可能な開状態とに変形可能な環状部と、前記環状部に係合し、前記環状部を閉状態で固定する固定部と、を備えてもよい。
【0009】
上記横軸ポンプの内部点検装置においては、前記固定部の少なくとも一部は、円弧状に形成され、前記環状部の外周面には、前記固定部が係合可能な係合部が形成されていてもよい。
【0010】
上記横軸ポンプの内部点検装置においては、前記ヒンジは、前記係合部を避けた位置に配置されていてもよい。
【0011】
上記横軸ポンプの内部点検装置においては、前記ヒンジは、前記環状部の割れ面に対して、前記環状部の中心軸を挟んだ反対側の領域に配置されていてもよい。
【0012】
上記横軸ポンプの内部点検装置においては、前記環状部の割れ面は、外周側に開いた開先形状を有してもよい。
【0013】
上記横軸ポンプの内部点検装置においては、前記装着用治具は、位置調整用治具を介して前記隙間測定装置を支持していてもよい。
【0014】
上記横軸ポンプの内部点検装置においては、前記位置調整用治具は、少なくとも前記ポンプ軸が延びる軸方向の位置、前記ポンプ軸と直交する半径方向の位置、及び前記隙間測定装置の取付角度を調整可能であってもよい。
【0015】
上記横軸ポンプの内部点検装置においては、前記位置調整用治具は、前記羽根車のハブの端面との軸方向の距離を測定する距離測定部を備えてもよい。
【0016】
上記横軸ポンプの内部点検装置においては、前記位置調整用治具は、前記羽根車のハブの端面に向かって3点以上のレーザーを照射するレーザー照射部を備えてもよい。
【0017】
上記横軸ポンプの内部点検装置においては、前記隙間測定装置は、映像による状態観察が可能な撮像装置であってもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る横軸ポンプの内部点検方法においては、点検口が上部に設けられたポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの内部に収容された羽根車と、前記ポンプケーシングを貫通して内部に挿入され、且つ、前記点検口の下方を通って前記羽根車を水平支持しているポンプ軸と、を備える横軸ポンプの内部点検方法であって、前記点検口から挿入した装着用治具を、前記ポンプ軸に装着し、前記ポンプ軸に装着した前記装着用治具に、前記ポンプケーシングと前記羽根車との隙間を測定する隙間測定装置を支持させ、その後、前記ポンプ軸を回転させて、前記隙間測定装置を、少なくとも前記ポンプケーシングと前記羽根車との下部の隙間に対向させて、当該隙間を測定する。
【0019】
上記横軸ポンプの内部点検方法においては、前記ポンプ軸に装着した前記装着用治具に、位置調整用治具を介して前記隙間測定装置を支持させてもよい。
【0020】
上記横軸ポンプの内部点検方法においては、前記羽根車のブレードのエッジの最上流点から前記ポンプ軸の中心軸までの半径方向の高さをh´とし、前記位置調整用治具から前記羽根車のハブの端面までの軸方向の距離をaとし、前記羽根車のブレードのエッジの最上流点から前記羽根車のハブの端面までの軸方向の距離をa´とし、前記羽根車のブレードのエッジの前記ポンプ軸の中心軸に対する傾きをθとしたとき、前記隙間測定装置の前記ポンプ軸の中心軸に対する半径方向の高さhが、
h = h´-(a-a´)×tanθ
の関係を満たすように、前記位置調整用治具によって前記隙間測定装置の位置を調整してもよい。
【発明の効果】
【0021】
上記本発明の一態様によれば、ポンプ軸の下部における羽根車とポンプケーシングとの隙間の点検が可能な横軸ポンプの内部点検装置及び横軸ポンプの内部点検方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る横軸ポンプ及びその内部点検装置を示す断面図である。
図2図1に示す内部点検装置をポンプ軸と共に180度回転させた様子を示す断面図である。
図3図1に示す矢視III-III断面図である。
図4】一実施形態に係る環状部がポンプ軸に装着された閉状態を示す図である。
図5】一実施形態に係る環状部がポンプ軸から脱着するときの開状態を示す図である。
図6】一実施形態に係る環状部の開状態を示す斜視図である。
図7】一実施形態に係る環状部をポンプ軸に装着する様子を示す図である。
図8】一実施形態に係る位置調整用治具を示す斜視図である。
図9】一実施形態に係る羽根車のハブの端面を示す図である。
図10】一実施形態に係る位置調整用治具を装着用治具に取り付ける様子を示す図である。
図11】一実施形態に係る横軸ポンプの内部点検方法を説明するフローチャートである。
図12】一実施形態に係る装着用治具の軸部に延長棒を装着した様子を示す図である。
図13図12に示す延長棒の要部拡大図である。
図14図12に示す延長棒の使い方を示す図である。
図15】一実施形態の変形例に係る装着用治具の閉状態を示す図である。
図16】一実施形態の変形例に係る装着用治具の開状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、一実施形態に係る横軸ポンプ1及びその内部点検装置10を示す断面図である。図2は、図1に示す内部点検装置10をポンプ軸4と共に180度回転させた様子を示す断面図である。
横軸ポンプ1は、図1に示すように、点検口2Aが上部に設けられたポンプケーシング2と、ポンプケーシング2の内部に収容された羽根車3と、ポンプケーシング2を貫通して内部に挿入され、且つ、点検口2Aの下方を通って羽根車3を水平支持しているポンプ軸4と、を備えている。
【0025】
以下、ポンプ軸4の中心軸が延びる方向を軸方向または水平方向という。また、ポンプ軸4の中心軸と直交する方向を半径方向という。また、半径方向のうち、水平面と直交する方向を鉛直方向という。また、ポンプ軸4の中心軸周りに周回する方向を周方向という。
【0026】
横軸ポンプ1は、非容積型ポンプの一つである横軸斜流ポンプであり、液体を斜め外方に吐出する羽根車3を備えている。羽根車3は、複数のブレード3aと、複数のブレード3aが接続されたハブ3bと、を備えている。ハブ3bは、ポンプ軸4に嵌合している。ブレード3aのエッジは、ポンプ軸4の中心軸に対して角度θで傾いている。
【0027】
ポンプケーシング2は、吐出し側ケーシング2aと、吐出し側ケーシング2aに接続された吸込み側ケーシング2bと、を備えている。吐出し側ケーシング2aは、水平方向に延び、羽根車3を取り囲むボウル状に形成されている。吐出し側ケーシング2a内の羽根車3よりも下流側には、羽根車3から吐出された液体の流れを整流する複数の案内羽根6が設けられている。
【0028】
吸込み側ケーシング2bは、エルボ状に形成され、吐出し側ケーシング2aの上流側において水平方向に接続されている。吸込み側ケーシング2bは、鉛直方向に延びる鉛直部分と、水平方向に延びる水平部分と、を備えている。吸込み側ケーシング2bの水平部分の上部には、人の半身が入れる程の大きさの点検口2Aが設けられている。
【0029】
ポンプ軸4は、吐出し側ケーシング2aに沿って水平方向に延び、吸込み側ケーシング2bを貫通している。吸込み側ケーシング2bのポンプ軸4が貫通する部分には、軸封部5が設けられている。ポンプ軸4は、案内羽根6の半径方向内側に配置されたケーシング内軸受7と、軸封部5よりも軸方向外側に配置されたケーシング外軸受8とによって支持されている。
【0030】
ポンプ軸4のポンプケーシング2の外側の端部には、軸継手9が設けられている。軸継手9は、ポンプ軸4を図示しない駆動機と連結させる。ポンプ軸4は、この図示しない駆動機によって回転する。ポンプケーシング2に接続された図示しない真空ポンプによって吸込み水槽内の液体を羽根車3まで呼び水として揚水した後、ポンプ軸4の回転によって羽根車3が回転すると、エルボ状の吸込み側ケーシング2bから液体が吸い上げられ、吐出し側ケーシング2a内で羽根車3を通過した後、案内羽根6によって整流されて吐出される。
【0031】
次に、上記構成の横軸ポンプ1の内部を点検する内部点検装置10について説明する。
本実施形態の内部点検装置10は、ポンプケーシング2の点検口2Aから挿入され、ポンプ軸4に装着されて、ポンプケーシング2と羽根車3との隙間sを点検する。特に、本実施形態の内部点検装置10は、図2に示すように、ポンプ軸4と共に回転し、ポンプ軸4の下部における羽根車3とポンプケーシング2との隙間s1を点検する。
【0032】
内部点検装置10は、ポンプケーシング2の内部においてポンプケーシング2と羽根車3との隙間s(隙間s1)を測定する隙間測定装置11と、隙間測定装置11の位置を調整する位置調整用治具12と、位置調整用治具12を介して隙間測定装置11を支持する共に、ポンプ軸4に装着され、ポンプ軸4と共に回転可能な装着用治具13と、を備えている。
【0033】
図3は、図1に示す矢視III-III断面図である。
図3に示すように、装着用治具13は、ポンプ軸4に対して半径方向に脱着可能に装着された環状部20と、環状部20を固定する固定部30と、固定部30に設けられた門型部40と、環状部20から半径方向に延びて、門型部40が固定される軸部50と、を備えている。
【0034】
図4は、一実施形態に係る環状部20がポンプ軸4に装着された閉状態を示す図である。図5は、一実施形態に係る環状部20がポンプ軸4から脱着するときの開状態を示す図である。
図4に示すように、環状部20は、複数の分割片21と、複数の分割片21を連結するヒンジ22と、を備えている。
【0035】
本実施形態の環状部20は、中心角がそれぞれ120度の3つの分割片21に分割されている。具体的に、環状部20は、3つの分割片21として、軸部50が接続された支持片21aと、支持片21aの周方向両端部にヒンジ22を介して連結された一対の開閉片21bと、を備えている。
【0036】
環状部20は、一対の開閉片21bが離間する割れ面20aを備えている。割れ面20aは、ポンプ軸4の下部において、ポンプ軸4の中心軸を通る鉛直線L1に沿って延びている。環状部20は、割れ面20aにおいて、一対の開閉片21bの端部が互いに離間することで環状から展開され、図4に示す閉状態から図5に示す開状態に変形可能とされている。
【0037】
ヒンジ22は、図4に示すように、環状部20の割れ面20aに対して、環状部20の中心軸を挟んだ反対側の領域に配置されている。具体的に、ヒンジ22は、ポンプ軸4の中心軸において鉛直線L1と直交した水平線L2を境界線とし、割れ面20aに対して当該水平線L2を挟んだ反対側(水平線L2よりも上側)の領域に配置されている。
【0038】
環状部20の割れ面20aは、外周側に開いた開先形状を有している。具体的に、一対の開閉片21bのヒンジ22と反対側の端部には、割れ面20aを形成する鉛直面の半径方向外側に配置され、且つ、半径方向外側に向かうに従って互いに周方向に離間するように傾いた傾斜面23が形成されている。
【0039】
図6は、一実施形態に係る環状部20の開状態を示す斜視図である。
図6に示すように、環状部20の外周面には、固定部30が係合可能な係合部24が形成されている。係合部24は、凹形状を有し、環状部20の各分割片21の外周面に、一定の幅且つ一定の深さで形成されている。なお、係合部24は、溝ではなく凸部とし、固定部30に凹部を形成して係合しても構わない。
【0040】
ヒンジ22は、係合部24に係合する固定部30と干渉しないように、係合部24を避けた位置に配置されている。具体的に、ヒンジ22は、係合部24を挟んだ位置に軸方向に離間して一対で設けられ、支持片21aと開閉片21bとの間を回動可能に連結している。
【0041】
固定部30は、図5に示すように、円弧状の円弧部31と、円弧部31の両端から平行に延びる一対の直線部32と、を備えている。この固定部30が、上述した係合部24に係合すると、図4に示すように、一対の直線部32が、一対の開閉片21bを水平方向両側から抱え込む状態となり、環状部20が閉状態で固定される。
【0042】
図6に示すように、環状部20には、軸部50が接続されている。軸部50は、支持片21aの係合部24内であって、支持片21aの周方向の中央位置に接続されている。固定部30の円弧部31には、軸部50が半径方向に挿通可能な挿通孔31aが形成されている。また、円弧部31に接続された門型部40にも、軸部50が半径方向に挿通可能な挿通孔40aが形成されている。
【0043】
図4に示すように、門型部40の上面は、円弧部31よりもナット41の座りをよくするために平面となっている。軸部50には、ナット41が螺合するためのネジ溝が形成されている。軸部50に螺合したナット41を門型部40の上面まで締め付けることで、固定部30の半径方向の移動を規制することができる。
【0044】
図7は、一実施形態に係る環状部20をポンプ軸4に装着する様子を示す図である。
環状部20をポンプ軸4に装着するためには、先ず、軸部50を保持し、点検口2Aからポンプケーシング2の内部に環状部20を挿入し、図7(a)に示すように、環状部20の割れ面20aの開先形状(傾斜面23)をポンプ軸4の周面に押し付ける。
【0045】
そうすると、図7(b)に示すように、環状部20の割れ面20aが、ポンプ軸4の周面によって押し広げられ、一対の開閉片21bがヒンジ22を中心に回動する。これにより、環状部20が閉状態から開状態に変形する。
【0046】
その後、さらに、環状部20を押し下げると、一対の開閉片21bの下端部がポンプ軸4の中心軸の水平位置より下がったところで重力によって閉じ始め、図7(c)に示すように、環状部20がポンプ軸4を抱え込む。
【0047】
この状態になったら、図4に示すように、環状部20に固定部30を係合させると共に、ナット41を締め付け、固定部30を固定する。
以上により、ポンプ軸4に対する装着用治具13の装着が完了する。
【0048】
図8は、一実施形態に係る位置調整用治具12を示す斜視図である。なお、図8において、xは軸方向(水平方向)を示し、yは半径方向のうちの水平方向、zは半径方向のうちの鉛直方向を示している。
図8に示す位置調整用治具12は、少なくともポンプ軸4が延びる軸方向の位置、ポンプ軸4と直交する半径方向の位置、及び隙間測定装置11の取付角度を調整可能とされている。
【0049】
具体的に、位置調整用治具12は、装着用治具13と連結する連結部60と、第1ジョイント部70と、第2ジョイント部80と、取付部90と、高さ調整部100と、傾き調整部110と、を備えている。第1ジョイント部70及び第2ジョイント部80は、少なくともポンプ軸4が延びる軸方向の位置を調整するものである。
【0050】
例えば、第1ジョイント部70は、y軸周りのP方向に回転可能なジョイントであってもよい。第2ジョイント部80も、y軸周りのP方向に回転可能なジョイントであってもよい。また、第2ジョイント部80は、さらに、x軸周りのR方向に回転可能なジョイントであってもよい。
【0051】
また、第2ジョイント部80は、さらに、z軸周りのY方向に回転可能なジョイントであってもよい。なお、第1ジョイント部70も同様である。例えば、第1ジョイント部70及び第2ジョイント部80の少なくとも一方は、ボールジョイントなどのユニバーサルジョイントであってもよい。
【0052】
取付部90は、第2ジョイント部80から下方に延びるロッドに取り付けられている。取付部90は、ポンプ軸4と同心の半円弧状に形成されており、図1に示す羽根車3のハブ3bの端面3cと軸方向で対向可能とされている。取付部90の羽根車3を向く端面には、図8に示すように、複数のレーザー照射部91が設けられている。レーザー照射部91は、同一半径上に90度間隔で3つ配置されている。
【0053】
図9は、一実施形態に係る羽根車3のハブ3bの端面3cを示す図である。なお、図9は、図1に示す矢視IX-IX図に対応している。
図9に示すように、ハブ3bの端面3cには、機械加工面3c1と、黒皮面3c2と、が形成されている。黒皮面3c2は、羽根車3を鋳造するときに形成される面であり、鋳物特有の色及び凸凹が形成されている。機械加工面3c1は、例えば、ポンプ軸4が嵌合するキー溝3dや嵌合孔などをハブ3bに形成するために、黒皮面3c2を平滑に機械加工した面である。
【0054】
機械加工面3c1と黒皮面3c2との間には、ポンプ軸4と同心の環状の境界線3c3が形成されている。3つのレーザー照射部91から照射されたレーザー光91Pは、この境界線3c3に向かって照射される。3つのレーザー光91Pが、境界線3c3上にある場合、取付部90と羽根車3のハブ3bの端面3cは、平行となる。
【0055】
図8に示すように、3つのレーザー照射部91のうちの1つは、距離測定部92となっている。この距離測定部92としては、レーザー反射型の距離計を例示できる。距離測定部92は、図1に示す位置調整用治具12(取付部90)と羽根車3のハブ3bの端面3cとの軸方向の距離aを測定する。
【0056】
図8に示すように、高さ調整部100は、第2ジョイント部80から上方に延びるロッドに取り付けられている。高さ調整部100は、z軸に沿って延びるネジ軸101と、ネジ軸101に螺合するナット102と、を備えている。この高さ調整部100は、ネジ軸101とナット102とのz軸における螺合位置を変更することで、隙間測定装置11の高さを調整する。
【0057】
傾き調整部110は、ネジ軸101の上端に取り付けられている。傾き調整部110は、図1に示すように、隙間測定装置11のポンプ軸4の中心軸に対する傾きθを調整する。隙間測定装置11は、例えば、映像による状態観察が可能な撮像装置である。なお、隙間測定装置11は、ポンプケーシング2と羽根車3との隙間sを測定するための2点間距離を測定可能なものであれば、例えば、所定幅に亘ってレーザー光を照射するレーザー反射型の距離計であっても構わない。
【0058】
図8に示すように、連結部60は、門型に形成されている。連結部60の一対の脚部には、y軸方向に貫通するネジ孔61が形成されている。
上記構成の位置調整用治具12は、図10に示すようにして、装着用治具13に取り付けられる。
【0059】
図10は、一実施形態に係る位置調整用治具12を装着用治具13に取り付ける様子を示す図である。
位置調整用治具12を装着用治具13に取り付けるためには、先ず、装着用治具13が装着された状態(上述した図4に示す状態)のポンプ軸4を180度回転し、図10(a)に示すように、装着用治具13を逆さまにする。
【0060】
次に、点検口2Aからポンプケーシング2の内部に隙間測定装置11付きの位置調整用治具12を挿入する。このとき、位置調整用治具12の連結部60のネジ孔61には、ボルト62を螺合させておくとよい。これにより、ポンプケーシング2の内部におけるボルト62の落下を防止できる。
【0061】
次に、図10(b)に示すように、装着用治具13の固定部30の一対の直線部32に設けられた孔部32aに、連結部60に螺合したボルト62を挿入する。これにより、装着用治具13に位置調整用治具12が連結される。また、一対の直線部32が、門型の連結部60の内側に固定されることで、一対の直線部32の開きが規制され、環状部20をより確実に固定できる。
【0062】
続いて、上記構成の内部点検装置10を用いた横軸ポンプ1の内部点検方法(以下、本手法と称する)について説明する。
【0063】
図11は、一実施形態に係る横軸ポンプ1の内部点検方法を説明するフローチャートである。
本手法では、先ず、装着用治具13をポンプ軸4に装着する(ステップS1)。具体的には、上述した図7に示すように、点検口2Aからポンプケーシング2の内部に環状部20を挿入し、環状部20の割れ面20aの開先形状(傾斜面23)をポンプ軸4の周面に押し付けて環状部20を開き、環状部20がポンプ軸4を抱え込む状態とする。
【0064】
この状態になったら、図4に示すように、環状部20に固定部30を係合させると共に、ナット41を締め付け、固定部30を固定する。以上により、ポンプ軸4に対する装着用治具13の装着が完了する。
なお、このとき、以下の図12図14に示すように、装着用治具13の軸部50に延長棒52を装着するとよい。
【0065】
図12は、一実施形態に係る装着用治具13の軸部50に延長棒52を装着した様子を示す図である。図13は、図12に示す延長棒52の要部拡大図である。図14は、図12に示す延長棒52の使い方を示す図である。
図12に示すように、軸部50の上端部には、延長棒52を連結可能な小径のネジ軸51が設けられている。
【0066】
延長棒52は、図13に示すように、ネジ軸に螺合するネジ孔53が形成されている。延長棒52の上端には、孔部54が形成され、落下防止用のワイヤー55を通すことが可能とされている。延長棒52の外径は、軸部50の外径よりも小さく、図14に示すように、軸部50に螺合するナット41の挿入を妨げないようになっている。
【0067】
延長棒52は、図14に示すように、その上端部が点検口2Aの開口範囲200の外側に延出可能な長さを有している。これにより、ナット41を挿入するときに、誤ってナット41を点検口2A内に落下させてしまうことを防止することができる。また、延長棒52は、ナット41だけでなく、門型部40を軸部50に挿入するときにも脱落防止効果がある。さらには、延長棒52は、ナット41や門型部40の挿入時だけでなく、これらを取り外すときにも脱落防止効果がある。
【0068】
図11に戻り、ステップS1にて装着用治具13をポンプ軸4に装着したら、次に、ポンプ軸4を180度回転させる(ステップS2)。なお、上述した延長棒52は、ポンプ軸4の回転の妨げになるため、ステップS2の前に取り外す。これにより、上述した図10(a)に示すような状態になり、その状態の装着用治具13に、隙間測定装置11付きの位置調整用治具12を装着する(ステップS3)。具体的には、図10(b)に示すように、装着用治具13の固定部30と、位置調整用治具12の連結部60とをボルト62によって固定する。
【0069】
位置調整用治具12を装着用治具13に装着したら、次に、ポンプ軸4を180度回転させる(ステップS4)。そうすると、図1に示すような状態になる。その状態で、位置調整用治具12を用いて、隙間測定装置11の位置を調整する(ステップS4)。
【0070】
具体的には、先ず、上述した図8に示す3つのレーザー照射部91からレーザー光91Pを照射し、図9に示すように、ハブ3bの端面3cの境界線3c3に合わせ込むように、第1ジョイント部70及び第2ジョイント部80を動かす。これにより、取付部90と羽根車3のハブ3bの端面3cとの平行度を確保する。次に、図1に示すように、隙間測定装置11のポンプ軸4の中心軸に対する半径方向の高さhを調整する。
【0071】
具体的には、羽根車3のブレード3aのエッジの最上流点からポンプ軸4の中心軸までの半径方向の高さをh´とし、位置調整用治具12から羽根車3のハブ3bの端面3cまでの軸方向の距離をaとし、羽根車3のブレード3aのエッジの最上流点から羽根車3のハブ3bの端面3cまでの軸方向の距離をa´とし、羽根車3のブレード3aのエッジのポンプ軸4の中心軸に対する傾きをθとしたとき、隙間測定装置11のポンプ軸4の中心軸に対する半径方向の高さhが、以下の式(1)の関係を満たすように、位置調整用治具12によって隙間測定装置11の位置を調整する。
h = h´-(a-a´)×tanθ …(1)
【0072】
羽根車3の製造時の設計図等からh´、a´、θは既知である。また、aは、上述した図8に示す距離測定部92によって測定することができる。よって、上述した式(1)からhを算出することができる。なお、θは既知であるため、図8に示す傾き調整部110によって、隙間測定装置11の取付角度を予めθで固定しておけば、hの調整のみで、隙間測定装置11をポンプケーシング2と羽根車3との隙間sに対向させることができる。
【0073】
図11に戻り、上述したように位置調整用治具12を用いて隙間測定装置11の位置を調整したら、次に、ポンプ軸4を180度回転させる(ステップS5)。そうすると、図2に示すような状態になり、ポンプ軸4の下部において、隙間測定装置11をポンプケーシング2と羽根車3との隙間s1に対向させることができる。次に、隙間測定装置11を用いて、隙間s1の測定及び診断を行う(ステップS6)。
【0074】
具体的には、隙間測定装置11で、羽根車3のエッジの特定点と、ポンプケーシング2の内壁の任意の点との2点間距離を測定する。測定した2点間の距離が、既定値と異なる場合は、腐食等の可能性がある。また、隙間測定装置11が撮像した画像で、腐食状況などを確認する。そして、運転時間と腐食時期と測定値などの情報を蓄積し、点検時期などの参考にする。
【0075】
以上により、横軸ポンプ1の内部点検が終了する。
なお、上述した測定及び診断は、隙間s1だけでなく、ポンプ軸4を回転させることで、隙間sの全周に亘って実施することが可能である。ちなみに、内部点検装置10を取り外す場合には、上述した取り付け手順を逆に行うことで、内部点検装置10をポンプ軸4から取り外すことができる。
【0076】
このように、上述した本実施形態に係る横軸ポンプ1の内部点検装置10は、点検口2Aが上部に設けられたポンプケーシング2と、ポンプケーシング2の内部に収容された羽根車3と、ポンプケーシング2を貫通して内部に挿入され、且つ、点検口2Aの下方を通って羽根車3を水平支持しているポンプ軸4と、を備える横軸ポンプ1の内部点検装置10であって、ポンプケーシング2の内部においてポンプケーシング2と羽根車3との隙間s(隙間s1)を測定する隙間測定装置11と、ポンプケーシング2の内部において隙間測定装置11を支持する共に、ポンプ軸4に装着され、ポンプ軸4と共に回転可能な装着用治具13と、を備える。この構成によれば、ポンプ軸4の下部における羽根車3とポンプケーシング2との隙間s1の点検が可能になる。
【0077】
また、本実施形態においては、装着用治具13は、図4に示すように、ヒンジ22を介して複数の分割片21が連結され、ポンプ軸4に装着可能な閉状態と、ポンプ軸4から脱着可能な開状態とに変形可能な環状部20と、環状部20に係合し、環状部20を閉状態で固定する固定部30と、を備える。この構成によれば、点検口2Aから装着用治具13を挿入し、ポンプ軸4に対して半径方向から装着用治具13を着脱できるようになる。
【0078】
また、本実施形態においては、固定部30の少なくとも一部は、円弧状に形成され、環状部20の外周面には、図6に示すように、固定部30が係合可能な係合部24が形成されている。この構成によれば、固定部30が環状部20を閉状態で安定して固定できるようになる。
【0079】
また、本実施形態においては、ヒンジ22は、係合部24を避けた位置に配置されている。この構成によれば、ヒンジ22が、係合部24に係合する固定部30と干渉しないようにすることができる。
【0080】
また、本実施形態においては、ヒンジ22は、図4に示すように、環状部20の割れ面20aに対して、環状部20の中心軸を挟んだ反対側の領域に配置されている。この構成によれば、図7(c)に示すように、一対の開閉片21bが重力によって自然に閉じ始めるため、環状部20によるポンプ軸4の抱え込み及び環状部20に対する固定部30の係合が容易になる。
【0081】
また、本実施形態においては、環状部20の割れ面20aは、外周側に開いた開先形状を有している。この構成によれば、図7(b)に示すように、環状部20の割れ面20aの開先形状(傾斜面23)をポンプ軸4の周面に押し付けると、割れ面20aがポンプ軸4の周面によって押し広げられ、環状部20を閉状態から開状態に変形させることができる。
【0082】
また、本実施形態においては、装着用治具13は、位置調整用治具12を介して隙間測定装置11を支持している。この構成によれば、ポンプケーシング2の内部において、隙間測定装置11の位置を調整し、隙間測定装置11をポンプケーシング2と羽根車3との隙間s(隙間s1)に対向させることができる。
【0083】
また、本実施形態においては、位置調整用治具12は、少なくともポンプ軸4が延びる軸方向の位置、ポンプ軸4と直交する半径方向の位置、及び隙間測定装置11の取付角度を調整可能である。この構成によれば、上述した式(1)のa、h、θを調整し、隙間測定装置11を精度よくポンプケーシング2と羽根車3との隙間s(隙間s1)に対向させることができる。
【0084】
また、本実施形態においては、位置調整用治具12は、羽根車3のハブ3bの端面3cとの軸方向の距離を測定する距離測定部92を備えている。この構成によれば、上述した式(1)のaを測定することができる。
【0085】
また、本実施形態においては、位置調整用治具12は、羽根車3のハブ3bの端面3cに向かって3点以上のレーザーを照射するレーザー照射部91を備えている。この構成によれば、位置調整用治具12と羽根車3のハブ3bの端面3cとの平行度を確保することができる。
【0086】
また、本実施形態においては、隙間測定装置11は、映像による状態観察が可能な撮像装置である。この構成によれば、羽根車3のエッジの特定点と、ポンプケーシング2の内壁の任意の点との2点間距離の測定だけでなく、腐食状況などを確認することができる。
【0087】
また、本実施形態に係る横軸ポンプ1の内部点検方法においては、点検口2Aが上部に設けられたポンプケーシング2と、ポンプケーシング2の内部に収容された羽根車3と、ポンプケーシング2を貫通して内部に挿入され、且つ、点検口2Aの下方を通って羽根車3を水平支持しているポンプ軸4と、を備える横軸ポンプ1の内部点検方法であって、点検口2Aから挿入した装着用治具13を、ポンプ軸4に装着し、ポンプ軸4に装着した装着用治具13に、ポンプケーシング2と羽根車3との隙間sを測定する隙間測定装置11を支持させ、その後、ポンプ軸4を回転させて、隙間測定装置11を、少なくともポンプケーシング2と羽根車3との下部の隙間s1に対向させて、当該隙間s1を測定する。この手法によれば、重力の影響を受け、ポンプ軸4の下部で最小となる羽根車3とポンプケーシング2との隙間s1を測定及び診断することができる。
【0088】
また、本実施形態においては、ポンプ軸4に装着した装着用治具13に、位置調整用治具12を介して隙間測定装置11を支持させる。この手法によれば、ポンプケーシング2の内部において、隙間測定装置11の位置を調整し、隙間測定装置11をポンプケーシング2と羽根車3との隙間s(隙間s1)に対向させることができる。
【0089】
また、本実施形態においては、羽根車3のブレード3aのエッジの最上流点からポンプ軸4の中心軸までの半径方向の高さをh´とし、位置調整用治具12から羽根車3のハブ3bの端面3cまでの軸方向の距離をaとし、羽根車3のブレード3aのエッジの最上流点から羽根車3のハブ3bの端面3cまでの軸方向の距離をa´とし、羽根車3のブレード3aのエッジのポンプ軸4の中心軸に対する傾きをθとしたとき、隙間測定装置11のポンプ軸4の中心軸に対する半径方向の高さhが、
h = h´-(a-a´)×tanθ
の関係を満たすように、位置調整用治具12によって隙間測定装置11の位置を調整する。この構成によれば、隙間測定装置11を精度よくポンプケーシング2と羽根車3との隙間s(隙間s1)に対向させることができる。
【0090】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0091】
例えば、図15及び図16に示す変形例を採用してもよい。
【0092】
図15は、一実施形態の変形例に係る装着用治具13の閉状態を示す図である。図16は、一実施形態の変形例に係る装着用治具13の開状態を示す図である。
図15に示す装着用治具13は、環状部20の割れ面20aに磁着部29を備えている。また、装着用治具13は、軸部50に装着されたスライダー40Aと、スライダー40Aとそれぞれの開閉片21bとを接続するワイヤー41Aと、を備えている。
【0093】
この構成によれば、図16に示すように、スライダー40Aを上昇させることで、ワイヤー41Aを介して一対の開閉片21bを引っ張り上げ、環状部20を閉状態から開状態に変形させることができる。また、環状部20をポンプ軸4に装着する際には、割れ面20aに設けられた磁着部29によって、環状部20を閉状態で固定することができる。
【0094】
また、例えば、上記実施形態では、位置調整用治具12を用いてポンプケーシング2の内部において隙間測定装置11の位置を調整していたが、上述した式(1)のhを予め求めておけば、必ずしも位置調整用治具12を用いてポンプケーシング2の内部において隙間測定装置11の位置を調整する必要はない。つまり、内部点検装置10には、位置調整用治具12が無い形態もあり得る。
【0095】
また、例えば、上記実施形態では、横軸ポンプ1として、非容積型ポンプの一つである横軸斜流ポンプを例示したが、横軸軸流ポンプであっても構わない。
【符号の説明】
【0096】
1 横軸ポンプ
2 ポンプケーシング
2a 吐出し側ケーシング
2A 点検口
2b 吸込み側ケーシング
3 羽根車
3a ブレード
3b ハブ
3c 端面
3c1 機械加工面
3c2 黒皮面
3c3 境界線
3d キー溝
4 ポンプ軸
5 軸封部
6 案内羽根
7 ケーシング内軸受
8 ケーシング外軸受
9 軸継手
10 内部点検装置
11 隙間測定装置
12 位置調整用治具
13 装着用治具
20 環状部
20a 割れ面
21 分割片
21a 支持片
21b 開閉片
22 ヒンジ
23 傾斜面
24 係合部
29 磁着部
30 固定部
31 円弧部
31a 挿通孔
32 直線部
32a 孔部
40 門型部
40a 挿通孔
40A スライダー
41 ナット
41A ワイヤー
50 軸部
51 ネジ軸
52 延長棒
53 ネジ孔
54 孔部
55 ワイヤー
60 連結部
61 ネジ孔
62 ボルト
70 第1ジョイント部
80 第2ジョイント部
90 取付部
91 レーザー照射部
91P レーザー光
92 距離測定部
100 調整部
101 ネジ軸
102 ナット
110 調整部
200 開口範囲
L1 鉛直線
L2 水平線
s 隙間
s1 隙間
S1 ステップ
S2 ステップ
S3 ステップ
S4 ステップ
S5 ステップ
S6 ステップ
S7 ステップ
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16