(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】プレストン行列ジェネレータ
(51)【国際特許分類】
B24B 37/005 20120101AFI20240920BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20240920BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240920BHJP
B24B 37/30 20120101ALI20240920BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B24B37/005 A
B24B49/04 Z
B24B49/12
B24B37/30 E
H01L21/304 621D
H01L21/304 622R
H01L21/304 622S
(21)【出願番号】P 2021536749
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 US2019067257
(87)【国際公開番号】W WO2020139663
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-08-19
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダンダパーニ, シヴァクマール
(72)【発明者】
【氏名】リー, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】チエン, チュン
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-513434(JP,A)
【文献】特表2013-529386(JP,A)
【文献】特表2016-538728(JP,A)
【文献】特開2010-284792(JP,A)
【文献】米国特許第06540591(US,B1)
【文献】特開2015-168015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0237128(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/005
B24B 49/04
B24B 49/12
B24B 37/30
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨システムの複数の制御可能なパラメータ
から研磨速度プロファイル
を計算するための
プレストン行列を生成する方法であって、
化学機械研磨システムにおいて研磨パッドで試験基板を研磨することであって、該基板を研磨パッドに維持しつつ、
複数の制御可能なパラメータについてのベースラインパラメータ値を使用して前記試験基板を第1の期間にわたり研磨することであって、前記ベースラインパラメータ値が第1の値に設定された第1のパラメータを含む、第1の期間にわたり研磨すること、
前記複数の制御可能なパラメータについての第1の修正パラメータ値を使用して前記試験基板を第2の期間にわたり研磨することであって、前記第1の修正パラメータが、修正された第2の値に設定された前記第1のパラメータを含む、第2の期間にわたり研磨すること、
を含む、研磨すること;
インシトゥモニタシステムを使用して前記基板にわたる複数の位置の各々における研磨中の前記試験基板の厚さをモニタすること;
前記インシトゥモニタシステムによる厚さの測定に基づいて、前記第1の期間についてのベースライン研磨速度プロファイル及び前記第2の期間についての第1の修正研磨速度プロファイルを決定すること;及び
前記ベースラインパラメータ値、前記第1の修正パラメータ、前記ベースライン研磨速度プロファイル、及び前記第1の修正研磨速度プロファイルに基づいて、前記
プレストン行列を計算すること
を含む、方法。
【請求項2】
ターゲット除去プロファイルを受信すること、及び前記複数の制御可能なパラメータの各パラメータの値を決定して、前記ターゲット除去プロファイルと前記
プレストン行列に基づいて計算された予想される除去プロファイルとの差を最小化することを含
み、前記ターゲット除去プロファイルは、目標とする、研磨によって除去された量を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記差を最小化するために、前記複数の制御可能なパラメータの各パラメータの値を使用して、前記化学機械研磨システムでデバイス基板を研磨することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の値が前記第1の値と比較して増加し、かつ、前記基板を前記研磨パッドに維持しつつ前記試験基板を研磨することが、前記複数の制御可能なパラメータについての第2の修正パラメータ値を使用して
、総研磨時間よりも短い第3の期間にわたり前記試験基板を研磨することを含み、前記第2の修正パラメータが、前記第1の値と比較して減少する第3の値に設定された前記第1のパラメータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記インシトゥモニタシステムによる厚さの測定に基づいて、
前記第3の期間にわたる第2の修正研磨速度プロファイルを決定すること、並びに前記ベースラインパラメータ値、前記第1の修正パラメータ、前記第2の修正パラメータ、前記ベースライン研磨速度プロファイル、前記第1の修正研磨速度プロファイル、及び前記第2の修正研磨速度プロファイルに基づいて前記
プレストン行列を計算することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ベースラインパラメータ値が、
前記第1のパラメータとは異なる、第4の値に設定された第2のパラメータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板を研磨パッドに維持しつつ前記試験基板を研磨することが、前記複数の制御可能なパラメータについての第3の修正パラメータ値を使用して第4の期間にわたり前記試験基板を研磨することを含み、前記第3の修正パラメータが前記第4の値とは異なる第5の値に設定された前記第2のパラメータを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の制御可能なパラメータが、前記基板上の複数のゾーンに圧力を加えるキャリアヘッドの複数のチャンバの圧力を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
化学機械研磨システムの複数の制御可能なパラメータから研磨速度プロファイルを計算するためのプレストン行列を生成するためのコンピュータプログラム製品であって、非一時的なコンピュータ記憶媒体上にエンコードされ、かつ、プロセッサに、
化学機械研磨システムに試験基板を研磨させることであって、
複数の制御可能なパラメータについてのベースラインパラメータ値を使用して第1の期間にわたり前記試験基板を研磨することであって、前記ベースラインパラメータ値が、第1の値に設定された第1のパラメータを含む、第1の期間にわたり研磨させること、
前記複数の制御可能なパラメータについての第1の修正パラメータ値を使用して、第2の期間にわたり前記試験基板を研磨することであって、前記第1の修正パラメータが修正された第2の値に設定された前記第1のパラメータを含む、第2の期間にわたり研磨させること
を含む、研磨させること;
インシトゥモニタシステムから、前記基板にわたる複数の位置の各々における研磨中の前記試験基板の厚さの測定値を受信させること;
前記インシトゥモニタシステムによる厚さの測定値に基づいて、前記第1の期間についてのベースライン研磨速度プロファイル及び前記第2の期間についての第1の修正研磨速度プロファイルを決定させること;並びに
前記ベースラインパラメータ値、前記第1の修正パラメータ、前記ベースライン研磨速度プロファイル、及び前記第1の修正研磨速度プロファイルに基づいて、前記
プレストン行列を計算させ
ること
を含む命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項10】
ターゲット
除去プロファイルを受信し、かつ、前記複数の制御可能なパラメータの各パラメータの値を決定して、
前記ターゲット除去プロファイルと前記
プレストン行列に基づいて計算された予想される除去プロファイルとの差を最小化するための命令を含
み、前記ターゲット除去プロファイルは、目標とする、研磨によって除去された量を表す、請求項9に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
前記複数の制御可能なパラメータが、前記基板上の複数のゾーンに圧力を加えるキャリアヘッドの複数のチャンバの圧力を含む、請求項9に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項12】
前記複数の制御可能なパラメータが、前記キャリアヘッドの保持リングに圧力を加える前記キャリアヘッドのチャンバの圧力を含む、請求項11に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
研磨システムであって、
研磨パッドを支持するための回転可能なプラテン;
基板を前記研磨パッドの研磨面と接触させて保持するためのキャリアヘッドであって、複数の制御可能なゾーンを有する、キャリアヘッド;
前記基板にわたる複数の位置の各々における研磨中の前記基板の一連の厚さ測定をするように構成されたインシトゥモニタシステム;及び
化学機械研磨システムの複数の制御可能なパラメータから研磨速度プロファイルを計算するためのプレストン行列を生成するためのコントローラであって、
化学機械研磨システムに試験基板を研磨させることであって、
複数の制御可能なパラメータについてのベースラインパラメータ値を使用して第1の期間にわたり前記試験基板を研磨
させることであって、前記ベースラインパラメータ値が第1の値に設定された第1のパラメータを含む、第1の期間にわたり研磨
させること、
前記複数の制御可能なパラメータについての第1の修正パラメータ値を使用して第2の期間にわたり前記試験基板を研磨させることであって、前記第1の修正パラメータが修正された第2の値に設定された前記第1のパラメータを含む、第2の期間にわたり研磨させること
を含む、研磨させること;
前記基板にわたる複数の位置の各々における研磨中の前記試験基板の厚さの測定値をインシトゥモニタシステムから受信
すること;
前記インシトゥモニタシステムによる厚さの測定値に基づいて、前記第1の期間についてのベースライン研磨速度プロファイル及び前記第2の期間についての第1の修正研磨速度プロファイルを決定
すること、並びに
前記ベースラインパラメータ値、前記第1の修正パラメータ、前記ベースライン研磨速度プロファイル、及び前記第1の修正研磨速度プロファイルに基づいて、前記
プレストン行列を計算
すること、
を実行するように構成されたコントローラ
を備えた、システム。
【請求項14】
前記コントローラが、ターゲット
除去プロファイルを受信し、かつ、前記複数の制御可能なパラメータの各パラメータの値を決定して、
前記ターゲット除去プロファイルと前記行列に基づいて計算された予想される除去プロファイルとの差を最小化するように構成され
、前記ターゲット除去プロファイルは、目標とする、研磨によって除去された量を表す、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記インシトゥモニタシステムが分光学的モニタシステムを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記
プレストン行列を計算させることは、Plackett-Burman設計を使用して
前記プレストン行列を計算させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記
プレストン行列を計算させることは、Plackett-Burman設計を使用して行列を計算させることを含む、請求項9に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
前記
プレストン行列を計算
することは、Plackett-Burman設計を使用して行列を計算
することを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
化学機械研磨システムの複数の制御可能なパラメータ
から研磨速度プロファイル
を計算するための
プレストン行列を生成する方法であって、
一時一事(OFAT)の除去実験計画法を実行することであって、前記一時一事(OFAT)の除去実験計画法に用いられる1または複数の試験基板の総数が前記複数の制御可能なパラメータの総数より少なく、前記1または複数の試験基板のうちの少なくとも1つの試験基板について、前記試験基板が前記一時一事(OFAT)の除去実験計画法における複数の実験に用いられ、複数の実験における各実験が、所定の期間及び前記実験に対する試験基板の研磨に先だって設定される所定の値によって規定され、前記一時一事(OFAT)の除去実験計画法を実行することが、
前記化学機械研磨システムにおいて研磨パッドで
前記1または複数の試験基板のうちの前記試験基板を研磨することであって、該試験基板を研磨パッドに維持しつつ、
前記複数の実験のうちの第1の実験については、複数の制御可能なパラメータについての
前記一時一事(OFAT)の除去実験計画法のベースラインパラメータ値を使用して前記試験基板を第1の
所定の期間にわたり研磨することであって、前記ベースラインパラメータ値が第1の
所定の値に設定された第1のパラメータを含む、第1の
所定の期間にわたり研磨すること
と、
前記複数の実験のうちの第2の実験については、前記複数の制御可能なパラメータについての
前記一時一事(OFAT)の除去実験計画法の第1の修正パラメータ値を使用して前記試験基板を第2の
所定の期間にわたり研磨することであって、前記第1の修正パラメータが、修正された第2の
所定の値に設定された前記第1のパラメータを含む、第2の
所定の期間にわたり研磨することと、
を含む、
前記試験基板を研磨すること;
インシトゥモニタシステムを使用して前記基板にわたる複数の位置の各々における研磨中の前記試験基板の厚さをモニタすること;
及び
前記インシトゥモニタシステムによる厚さの測定に基づいて、前記第1の
所定の期間についてのベースライン研磨速度プロファイル及び前記第2の
所定の期間についての第1の修正研磨速度プロファイルを決定すること;を
含む、一時一事(OFAT)の除去実験計画法を実行すること、並びに
前記ベースラインパラメータ値、前記第1の修正パラメータ、前記ベースライン研磨速度プロファイル、及び前記第1の修正研磨速度プロファイルに基づいて、前記
プレストン行列を計算すること
により、前記プレストン行列を生成すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械研磨用の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、通常、シリコンウエハ上に導電層、半導体層、又は絶縁層を連続して堆積させることによって、基板上に形成される。製造工程の1つは、非平面表面上に充填層を堆積させること、及び該充填層を平坦化することを含む。一部の応用では、充填層は、パターン形成された層の上面が露出されるまで平坦化される。例えば、導電性充填層をパターン形成された絶縁層上に堆積させて、絶縁層のトレンチ又は孔を満たすことができる。平坦化の後、絶縁層の浮き出しパターンの間に残っている導電層の部分が、基板上の薄膜回路間に導電経路を提供するビア、プラグ、及びラインを形成する。他の応用では、充填層は、下にある層の上に所定の厚さが残されるまで平坦化される。例えば、堆積した誘電体層をフォトリソグラフィ用に平坦化することができる。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、許容された平坦化方法の一つである。この平坦化方法は、通常、基板をキャリアヘッドに取り付けることを必要とする。基板の露出面は、通常、耐久性のある粗い表面を備えた回転研磨パッドに対して配置される。キャリアヘッドは、基板に制御可能な負荷を提供して、基板を研磨パッドに押し付ける。研磨粒子を有するスラリーなどの研磨液が、通常、研磨パッドの表面に供給される。
【0004】
処理された基板は、研磨プロセス後の研磨された層の厚さ変化の放射状又は2次元マップである、材料除去プロファイルを示す。
【発明の概要】
【0005】
化学機械研磨システムの複数の制御可能なパラメータを研磨速度プロファイルに関連付けるための行列を生成する方法は、化学機械研磨システムの研磨パッドで試験基板を研磨すること、及びインシトゥモニタシステムを使用して基板にわたる複数の位置の各々における研磨中の試験基板の厚さをモニタすることを含む。基板を研磨パッドに維持しつつ、該試験基板を、第1のパラメータが第1の値に設定された複数の制御可能なパラメータについてのベースラインパラメータ値を使用して第1の期間研磨し、該試験基板を、第1のパラメータが修正された第2の値に設定された複数の制御可能なパラメータについての第1の修正パラメータ値を使用して第2の期間研磨する。インシトゥモニタシステムによる厚さの測定に基づいて、ベースライン研磨速度プロファイルが第1の期間に決定され、かつ第1の修正研磨速度プロファイルが第2の期間に決定される。複数の制御可能なパラメータを化学機械研磨システムの研磨速度プロファイルに関連づける行列が、ベースラインパラメータ値、第1の修正パラメータ、ベースライン研磨速度プロファイル、及び第1の修正研磨速度プロファイルに基づいて計算される。
【0006】
実装形態は、次の特徴の1つ以上を含みうる。
【0007】
ターゲット研磨プロファイルを受信することができ、ターゲット除去プロファイルと行列に基づいて計算された予想される除去プロファイルとの差を最小化するように、複数の制御可能なパラメータの各パラメータの値を決定することができる。
【0008】
デバイス基板は、差を最小化するために、複数の制御可能なパラメータの各パラメータの値を使用して、化学機械研磨システムで研磨することができる。
【0009】
第2の値は、第1の値と比較して増加しうる。基板を研磨パッドに維持しつつ試験基板を研磨することは、複数の制御可能なパラメータについての第2の修正パラメータ値を使用して第3の期間にわたり試験基板を研磨することを含みうる。第2の修正パラメータは、第1の値と比較して減少する第3の値に設定された第1のパラメータを含みうる。
【0010】
第3の期間にわたる第2の修正研磨速度プロファイルは、インシトゥモニタシステムによる厚さの測定に基づいて、並びに、ベースラインパラメータ値、第1の修正パラメータ、第2の修正パラメータ、ベースライン研磨速度プロファイル、第1の修正研磨速度プロファイル、及び第2の修正研磨速度プロファイルに基づいて行列を計算することに基づいて決定することができる。
【0011】
ベースラインパラメータ値は、第4の値に設定された第2のパラメータを含みうる。基板を研磨パッドに維持しつつ試験基板を研磨することは、複数の制御可能なパラメータについての第4の修正パラメータ値を使用して第4の期間にわたり試験基板を研磨することを含みうる。第4の修正パラメータは、第4の値とは異なる第5の値に設定された第2のパラメータを含みうる。第4の修正パラメータは、第1の値に設定された第1のパラメータを含みうる。第1の修正パラメータは、修正された第5の値に設定された第2のパラメータを含みうる。
【0012】
複数の制御可能なパラメータは、基板上の複数のゾーンに圧力を加えるキャリアヘッドの複数のチャンバの圧力を含みうる。複数の制御可能なパラメータは、キャリアヘッドの保持リングに圧力を加えるキャリアヘッドのチャンバの圧力を含みうる。複数のゾーンは、同心円状に配置することができ、複数の位置は基板の中心からの半径方向の距離である。
【0013】
他の態様では、これらの方法を実行するために、コンピュータ可読媒体上に明白に具現化された研磨システム及びコンピュータプログラム製品が提供される。
【0014】
実装形態の利点には、任意選択的に、次の1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。プレストン行列(Preston Matrix)を生成するために必要とされる基板の数を減らすことができる。プレストン行列を生成するために、独立型の計測ツールは必要ではない。プレストン行列の生成は自動化することができ、ユーザエラーのリスクが軽減される。
【0015】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、これらの記述及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】研磨パッドの上面図であって、基板上でインシトゥ測定が行われうる位置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
さまざまな図面における類似の参照符号は、類似した要素を指し示している。
【0018】
多重圧力制御(Multiple Pressure Control;MPC)は、参照することによって組み込まれる米国特許第9,490,186号に記載される、研磨中の基板均一性の閉ループ最適化を提供する技法である。MPCソフトウェアは、ゾーン圧力をリアルタイムで調整して、優れたウエハ内(WIW)の均一性性能を提供する。適切なゾーン変更を行うために、MPCソフトウェアはユーザが提供するプレストン行列に依拠しており、これにより、ゾーン圧力の変化と除去プロファイルの変化との間の数学的な変換が可能となる。より正式には、プレストン行列Pの要素pi,jは、ゾーンiの除去速度の変化に対する圧力ゾーンjの変化をマッピングする。プレストン行列の使用は、参照することによって組み込まれる米国特許第8774958号に記載されている。
【0019】
所与の消耗品セットについてのプレストン行列を決定する手順は、一時一事(OFAT)の除去実験計画法(DOE)を実行することである。例えば、7ゾーンヘッドでは、DOEには最低15の基板が必要である。1つの基板を使用してベースライン除去プロファイルを測定し、2つの基板を使用して、単一ゾーンの圧力がベースラインからそれぞれ上下に変化した場合の除去プロファイルを測定する。DOEの例が表1に示されている。
【0020】
プレストン行列を生成するこのような方法には、3つの主な不都合がある。第一に、除去速度の計算は、前後の厚さの測定値を使用し、これには、十分に高い測定密度を可能にする独立型の計測ツールへのアクセスを必要とするが、これは顧客のサイトではすぐに利用できない可能性がある。第二に、計算では、エンジニアが計測データにアクセスして、例えばExcelスプレッドシートを介して処理する必要があり、データ転送及び人的エラーによる遅延の余地がある。第三に、この手順ではかなりの数の基板(上記の例では15)が必要であり、顧客サイトで入手するのは困難な場合がある。
【0021】
インシトゥモニタシステムによって取得されたスペクトルデータから直接プレストン行列の計算を自動化することにより、追加の計測ツール、方策、又はデータの必要性を減らすか、又は排除することができる。加えて、プレストン行列の決定に必要とされる基板の数を減らすことができる。これらの要素が相まって、MPC技法の使い易さが大幅に向上する。
【0022】
図1は、研磨装置100の一例を示している。研磨装置100は、研磨パッド110が配置されている回転可能な円盤状のプラテン120を備えている。プラテンは、軸125を中心に回転するように動作可能である。例えば、モータ121は駆動シャフト124を回して、プラテン120を回転させることができる。研磨パッド110は、例えば接着剤の層によって、プラテン120に取り外し可能に固定することができる。研磨パッド110は、外側の研磨層112と、より軟らかいバッキング層114とを備えた2層の研磨パッドでありうる。
【0023】
研磨装置100は、スラリー/リンスアーム130の組合せを含みうる。研磨中、アーム130は、スラリーなどの研磨液132を研磨パッド110上に分配するように動作可能である。1つのスラリー/リンスアーム130のみが示されているが、キャリアヘッドごとに1つ以上の特化されたスラリーアームなどの追加のノズルを使用することができる。研磨装置はまた、研磨パッド110を研磨して、該研磨パッド110を一定の研磨状態に維持するための研磨パッドコンディショナを含むことができる。
【0024】
研磨装置100はさらに、キャリアヘッド140を含むことができる。キャリアヘッド140は、基板10を可撓性膜144の下に保持するための保持リング142を含むことができる。キャリアヘッド140はまた、膜によって画成される独立して制御可能な複数の加圧可能なチャンバ、例えば、3つのチャンバ146a-146cを含むことができ、これらは、独立して制御された量の圧力を、可撓性膜144上の関連するゾーン148a-148cに、したがって基板10の裏側に加えることができる(
図2を参照)。可撓性膜144は、高強度シリコーンゴムなどの弾性材料で形成することができる。
図2を参照すると、中心ゾーン148aは実質的に円形であってよく、残りのゾーン148b-148cは、中心ゾーン148aの周りの同心環状ゾーンでありうる。例示を容易にするために
図1及び2には3つのチャンバのみが示されているが、2つのチャンバ、又は4つ以上のチャンバ、例えば5つのチャンバが存在していてもよい。
【0025】
図1を参照すると、キャリアヘッド140は、支持構造150、例えば、カルーセル又はトラックから懸架され、かつ、キャリアヘッドが軸155の周りを回転することができるように、駆動シャフト152によってキャリアヘッド回転モータ154に接続されている。任意選択的に、キャリアヘッド140は、トラックに沿った動きによって;又は、カルーセル自体の回転振動によって、例えば、カルーセル150上のスライダ上で、横方向に振動することができる。動作中、プラテンはその中心軸125を中心に回転し、キャリアヘッドはその中心軸155を中心に回転し、研磨パッドの上面を横切って横方向に移動する。
【0026】
研磨装置はまた、インシトゥモニタシステム160も含み、そこからのデータをコントローラ190が使用して、研磨速度を調整するかどうかを又は研磨速度の調整を決定することができる。コントローラ190は、以下に説明されるように、プレストン行列の計算にも使用することができる。
【0027】
インシトゥモニタシステム160は、光学モニタシステム、例えば分光学的モニタシステムを含みうる。研磨パッドを通る光アクセスは、開孔(すなわち、パッドを貫通する孔)又は中実の窓118を含むことによって提供される。中実の窓118は、例えば研磨パッドの開孔を埋める(例えば研磨パッドへと成形されるか、又は接着剤で研磨パッドに固定される)プラグとして、研磨パッド110に固定することができるが、幾つかの実装形態では、中実の窓は、プラテン120上に支持されて、研磨パッドの開孔内へと突出してもよい。
【0028】
光学モニタシステム160は、光源162、光検出器164、並びに、遠隔コントローラ190(例えばコンピュータ)と光源162及び光検出器164との間で信号を送受信するための回路166を含むことができる。1つ以上の光ファイバを使用して、光源162からの光を研磨パッド内の光アクセスに伝達し、かつ基板10から反射された光を検出器164に伝達することができる。例えば、分岐した光ファイバ170を使用して、光源162から基板10に光を伝達し、検出器164に戻すことができる。分岐した光ファイバは、光アクセスの近くに位置づけられたトランク172と、それぞれ光源162及び検出器164に接続された2つの分岐174及び176を含む。
【0029】
幾つかの実装形態では、プラテンの上面は、分岐したファイバのトランク172の一端を保持する光学ヘッド168が嵌め込まれる凹部128を含むことができる。光学ヘッド168は、トランク172の上部と中実の窓118との間の垂直距離を調整するための機構を含むことができる。
【0030】
回路166の出力は、駆動シャフト124内のロータリーカプラ129、例えばスリップリングを通過して光学モニタシステム用のコントローラ190に至るデジタル電子信号でありうる。同様に、光源は、コントローラ190からロータリーカプラ129を通過して光学モニタシステム160に至るデジタル電子信号の制御コマンドに応答して、オン又はオフにすることができる。あるいは、回路166は、無線信号によってコントローラ190と通信することができる。
【0031】
光源162は、白色光を放出するように動作可能でありうる。一実装形態では、放出する白色光は、200~800ナノメートルの波長を有する光を含む。適切な光源は、キセノンランプ又はキセノン水銀ランプである。
【0032】
光検出器164は分光計でありうる。分光計は、電磁スペクトルの一部にわたって光の強度を測定するための光学機器である。適切な分光計は格子分光計である。分光計の典型的な出力は、波長(又は周波数)の関数としての光の強度である。
【0033】
上記のように、光源162及び光検出器164は、それらの動作を制御し、それらの信号を受信するように動作可能なコンピューティングデバイス、例えばコントローラ190に接続することができる。コンピューティングデバイスは、研磨装置の近くに配置されたマイクロプロセッサ、例えばプログラム可能なコンピュータを含むことができる。制御に関して、コンピューティングデバイスは、例えば、光源の活性化をプラテン120の回転と同期させることができる。コントローラ190はまた、光学モニタシステム160からのデータに基づいてターゲット圧力プロファイルを生成し、ターゲット圧力プロファイルを記憶し、ターゲット圧力プロファイルを達成するためにキャリアヘッド内のチャンバの圧力のセットを計算することができる。
【0034】
幾つかの実装形態では、インシトゥモニタシステム160の光源162及び検出器164は、プラテン120内に設置され、プラテン120とともに回転する。この場合、プラテンの動きにより、センサが各基板をスキャンする。特に、プラテン120が回転すると、コントローラ190は、光源162に、各基板10が光アクセスを通過する直前に開始し、直後に終了する一連のフラッシュを放出させることができる。あるいは、コンピューティングデバイスは、光源162に、各基板10が光アクセスを通過する直前に開始し、直後に終了する光を連続的に放出させることができる。いずれの場合も、検出器からの信号をサンプリング期間にわたって積分し、サンプリング周波数でのスペクトル測定値を生成することができる。
【0035】
動作中、コントローラ190は、例えば、光源の特定のフラッシュ又は検出器の時間枠について、光検出器によって受信された光のスペクトルを説明する情報を担持する信号を受信することができる。したがって、このスペクトルは、研磨中にインシトゥで測定されたスペクトルである。
【0036】
図3に示されるように、検出器がプラテンに設置されている場合には、プラテンの回転(矢印2024で示される)に起因して、窓108が1つのキャリアヘッド(例えば、第1の基板10aを保持するキャリアヘッド)の下を移動する際に、サンプリング周波数でスペクトル測定を行う光学モニタシステムは、スペクトル測定が第1の基板10aを横切る弧の位置201において行われるようにさせる。例えば、点201a~201kのそれぞれは、第1の基板10aのモニタシステムによるスペクトル測定の位置を表している(点の数は例示的であり、サンプリング周波数に応じて、図示されるよりも多い又は少ない数の測定を行うことができる)。示されるように、プラテンの1回転にわたり、基板10a上の異なる半径からスペクトルが得られる。すなわち、幾つかのスペクトルは、基板10aの中心に近い位置から得られ、幾つかは、端部に近い位置から得られる。
【0037】
インシトゥモニタシステム160からのスペクトルデータは、コントローラ190によって使用されて、例えば、参照することによって組み込まれる米国特許第8944884号に記載されるように、膜厚を計算することができる。特に、試験基板についての膜厚値を計算することができ、したがって、計測ツールの必要性を排除することができる。さらには、インシトゥモニタシステム160から収集されたスペクトルデータは、瞬間的な除去速度を計算するために使用することができる。対照的に、オフライン計測は、研磨全体にわたる平均除去速度を計算するためにのみ使用することができる。
【0038】
加えて、時間分解能に起因して、単一の基板研磨内で複数のDOE分割を行うことができる。例えば、試験基板の研磨において、該基板は、スペクトルデータを得ている間に、総研磨時間よりも短い設定時間、例えば、30~60秒のベースラインパラメータを使用して研磨することができる。その後、基板は、修正パラメータを用いて研磨し続けることができる(単一ゾーンの圧力がそれぞれ、上に例えば10~50%変化、及び下に例えば10~50%変化するごとに)。各修正パラメータでの研磨の研磨時間は、ベースラインパラメータと同じ、例えば、30~60秒とすることができるが、これは必須ではない。チャンバ圧力の増加及び減少を測定するプロセスを各チャンバに対して繰り返して、そのチャンバの圧力が上下に変化したときに各チャンバのそれぞれのプロファイルを取得することができる。単一の基板を使用して複数のDOEを実行することができることから、必要とされる基板の数が削減される。
【0039】
プレストン行列に必要とされる基板の数をさらに削減するために、より効率的な実験計画を使用することができる。例えば、Plackett-Burmanの実験計画を試験した。Plackett-Burmanの実験計画は、分割間の複数のゾーンを変化させ、各ゾーンが減少する回数と同じ回数増加するように実験を構成する。この手法を使用すると、プレストン行列を生成するために必要な分割の数を15から8に減らすことができる。
【0040】
各ゾーンが他のゾーンからほぼ独立していると仮定することにより、ミニマリスト設計についても試験した。このような仮定により、すべてのゾーンを分割ごとに変化させることができる。基礎となる仮定は厳密には真実ではないが、予備試験は、それが十分に良好でありうることを示している。この方法では、必要とされる分割の数が5に減少する。
【0041】
インシトゥモニタシステムによって取得されたスペクトルデータが、前後の計測の代わりに使用できることを確認するために、BKM OFAT DOE(15のウエハを使用する15の分割)を実行し、FullVisionスペクトルモニタシステムを使用してインシトゥで測定値を収集し、かつ、Nanometricsツールを使用して研磨の前後の測定値を収集した。Nano計測データ(
図2)から計算したプレストン行列を、FullVisionデータのみを使用して計算したもの(
図3)と比較することができる。
【0042】
結果は十分に類似しており、このより効率的なDOEは、成功を合理的に期待して使用することができるはずである。
その後、Plackett-Burman設計(2つのウエハを使用した8分割)を試験し、FullVisionデータから行列(表4)を計算した。
【0043】
この場合も、結果は表2に示されるプレストン行列と同じ概数にある。結果は十分に類似しており、このより効率的なDOEは、成功を合理的に期待して使用することができるはずである。
【0044】
ゾーンの独立性の仮定がMPCについて機能するかどうかを調べるために、恒等行列をプレストン行列として使用してアクティブなMPCを試験した。ゾーンの厚さは収束し、これは、この特定の事例では、恒等行列がWIWの均一性を改善するのに十分に良好であったことを示している。しかしながら、プレストン行列を0.3でスケーリングした場合、ゾーンは収束せず、これは、対角外の項は重要ではないかもしれないが、主対角項は重要であることを示している。
【0045】
ゾーンの独立性を前提として、ミニマリストDOEを実行し、5分割のみを使用してプレストン行列を計算し、すべて、単一のウエハ上で単一の連続研磨で実行した。結果の行列(表5)は、BKMプレストン行列と比較してわずかに大きい主対角値を有している。
【0046】
インシトゥ測定に切り替え、より効率的なDOEを使用することにより、サードパーティの計測及びデータの必要性を排除し、必要とされる基板の数を15からわずか1にまで減らすことができる。したがって、上記の方法を使用することにより、プレストン行列の生成の容易さ及び速度が向上し、よって、MPCの使用の容易さ及び単純さが向上する。
【0047】
コントローラ190によって提供される本明細書に記載の機能的動作は、デジタル電子回路に、若しくは、本明細書に開示された構造的手段及びそれらの構造的同等物、又はそれらの組合せを含めた、コンピュータソフトウェア、ファームウェア、又はハードウェアに実装することができる。機能的動作は、データ処理装置、例えば、プログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、若しくは複数のプロセッサ又はコンピュータによる実行のため、若しくはそれらの動作を制御するために、1つ以上のコンピュータプログラム製品として、すなわち、情報キャリア、例えば、機械可読な非一時的ストレージデバイス又は伝搬信号において明白に具現化された1つ以上のコンピュータプログラムとして実装させることができる。コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、又はコードとしても知られる)は、コンパイル型言語又はインタプリタ型言語を含む任意の形式のプログラミング言語で記述されてよく、かつ、独立型プログラムとして、若しくはモジュール、構成要素、サブルーチン、又はコンピューティング環境での使用に適している他のユニットとしてなど、任意の形式で展開することができる。コンピュータプログラムは、必ずしもファイルに対応するとは限らない。プログラムは、他のプログラム又はデータを保持するファイルの一部分、対象とするプログラム専用の単一のファイル、若しくは複数の連携ファイル(coordinated files)(例えば、1つ以上のモジュール、サブプログラム、又はコードの一部を保存するファイル)に保存することができる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータで、若しくは1つのサイトに位置するか又は複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークで相互接続されている複数のコンピュータで実行されるように展開させることができる。
【0048】
本明細書に記載される処理及び論理の流れは、1つ以上のコンピュータプログラムを実行して、入力データに対して動作し出力を生成することによって諸機能を実施する1つ以上のプログラム可能プロセッサによって実施することができる。プロセス及び論理の流れはまた、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)によって実行可能であり、また、装置も、FPGA又はASICとして実装可能である。
【0049】
この技法は、例えば、ブランケット及びパターン化されたウエハなどのさまざまなタイプの基板に適用可能である。
【0050】
本発明の複数の実施形態を説明してきた。それにもかかわらず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、さまざまな修正を行うことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。