(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物、積層体、硬化物の製造方法、及び、半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20240920BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20240920BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20240920BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20240920BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08G73/10
C08F290/14
B32B15/088
B32B27/34
H01L21/312 B
C08L79/08 A
(21)【出願番号】P 2022544619
(86)(22)【出願日】2021-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2021030970
(87)【国際公開番号】W WO2022045124
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2020141770
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】小川 倫弘
(72)【発明者】
【氏名】青島 俊栄
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/066435(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/054226(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/004500(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/151195(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146611(WO,A1)
【文献】特開2020-154205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/00 -73/26
C08F290/14
B32B 1/00 -43/00
H01L 21/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体を含み、
前記ポリイミド前駆体の環状イミド構造及び環状イソイミド構造の合計含有量が0.01~1.0mmol/gであり、
前記ポリイミド前駆体におけるアミック酸構造及びアミック酸エステル構造の合計モル量に対する、アミック酸エステル構造の含有量が97%を超え100%以下である、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリイミド前駆体における酸価が5.6mgKOH/g未満である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
溶剤を更に含む、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリイミド前駆体が、下記式(2)で表される繰り返し単位を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
式(2)中、A
1及びA
2は、それぞれ独立に、酸素原子を表し、R
111は、2価の有機基を表し、R
115は、4価の有機基を表し、R
3は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【請求項5】
前記式(2)における1価の有機基であるR
3の少なくとも一方が、ラジカル重合性基を含む基を含む、請求項4に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が3,000~50,000である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が3,000~15,000である、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
光重合開始剤を更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記光重合開始剤がチタノセン化合物である、請求項8に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
重合性化合物を更に含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、請求項1~10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化物からなる層を2層以上有し、前記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を有する、積層体。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含む、硬化物の製造方法。
【請求項15】
前記膜を50~450℃で加熱する工程を含む、請求項14に記載の硬化物の製造方法。
【請求項16】
前記加熱する工程における加熱を赤外線オーブンを用いて行う、請求項15に記載の硬化物の製造方法。
【請求項17】
請求項12に記載の硬化物又は請求項13に記載の積層体を有する、半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、硬化物、積層体、硬化物の製造方法、及び、半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、耐熱性及び絶縁性等に優れるため、様々な用途に適用されている。上記用途としては特に限定されないが、実装用の半導体デバイスを例に挙げると、絶縁膜や封止材の材料、又は、保護膜としての利用が挙げられる。また、フレキシブル基板のベースフィルムやカバーレイなどとしても用いられている。
【0003】
例えば上述した用途において、ポリイミドは、ポリイミド前駆体を含む硬化性樹脂組成物の形態で用いられる。
このような硬化性樹脂組成物を、例えば塗布等により基材に適用して感光膜を形成し、その後、必要に応じて露光、現像、加熱等を行うことにより、硬化物を基材上に形成することができる。
上記ポリイミド前駆体は、例えば加熱により環化され、硬化物中でポリイミドとなる。
硬化性樹脂組成物は、公知の塗布方法等により適用可能であるため、例えば、適用される硬化性樹脂組成物の適用時の形状、大きさ、適用位置等の設計の自由度が高いなど、製造上の適応性に優れるといえる。ポリイミドが有する高い性能に加え、このような製造上の適応性に優れる観点から、上述の硬化性樹脂組成物の産業上の応用展開がますます期待されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、特定の構造単位を複数有するポリアミド酸誘導体、及び、放射線照射により塩基性物質を発生する化合物を含有してなるネガ型感光性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
硬化性樹脂組成物において、保存安定性の向上が求められている。
また、硬化性樹脂組成物からなる硬化物において、高温環境下に晒された後の基材との密着性が求められている。
本発明において、硬化物における高温環境下に晒された後の基材との密着性に優れることを、硬化物の信頼性に優れるともいう。
【0007】
本発明は、保存安定性に優れ、得られる硬化物の信頼性に優れる硬化性樹脂組成物、上記硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物、上記硬化物を含む積層体、上記硬化物の製造方法、及び、上記硬化物又は上記積層体を含む半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の代表的な実施態様の例を以下に示す。
<1> ポリイミド前駆体を含み、
上記ポリイミド前駆体の環状イミド構造及び環状イソイミド構造の合計含有量が0.01~1.0mmol/gであり、
上記ポリイミド前駆体におけるアミック酸構造及びアミック酸エステル構造の合計モル量に対する、アミック酸エステル構造の含有量が97%を超え100%以下である、硬化性樹脂組成物。
<2> 上記ポリイミド前駆体における酸価が5.6mgKOH/g未満である、<1>に記載の硬化性樹脂組成物。
<3> 溶剤を更に含む、<1>又は<2>に記載の硬化性樹脂組成物。
<4> 上記ポリイミド前駆体が、下記式(2)で表される繰り返し単位を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
式(2)中、A
1及びA
2は、それぞれ独立に、酸素原子を表し、R
111は、2価の有機基を表し、R
115は、4価の有機基を表し、R
3は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
<5> 上記式(2)における1価の有機基であるR
3の少なくとも一方が、ラジカル重合性基を含む基を含む、<4>に記載の硬化性樹脂組成物。
<6> 上記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が3,000~50,000である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
<7> 上記ポリイミド前駆体の重量平均分子量が3,000~15,000である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
<8> 光重合開始剤を更に含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
<9> 上記光重合開始剤がチタノセン化合物である、<8>に記載の硬化性樹脂組成物。
<10> 重合性化合物を更に含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
<11> 再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、<1>~<10>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
<12> <1>~<11>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
<13> <12>に記載の硬化物からなる層を2層以上有し、上記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を有する、積層体。
<14> <1>~<11>のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含む、硬化物の製造方法。
<15> 上記膜を50~450℃で加熱する工程を含む、<14>に記載の硬化物の製造方法。
<16> 上記加熱する工程における加熱を赤外線オーブンを用いて行う、<15>に記載の硬化物の製造方法。
<17> <12>に記載の硬化物又は<13>に記載の積層体を有する、半導体デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存安定性に優れ、得られる硬化物の信頼性に優れる硬化性樹脂組成物、上記硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物、上記硬化物を含む積層体、上記硬化物の製造方法、及び、上記硬化物又は上記積層体を含む半導体デバイスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有しない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた露光も含む。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方、又は、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の両方、又は、いずれかを意味する。
本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また本明細書において、固形分濃度とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率である。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法を用いて測定した値であり、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000、及び、TSKgel Super HZ2000(以上、東ソー(株)製)を直列に連結して用いることによって求めることができる。それらの分子量は特に述べない限り、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。ただし、溶解性が低い場合など、溶離液としてTHFが適していない場合にはNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いることもできる。また、GPC測定における検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
本明細書において、積層体を構成する各層の位置関係について、「上」又は「下」と記載したときには、注目している複数の層のうち基準となる層の上側又は下側に他の層があればよい。すなわち、基準となる層と上記他の層の間に、更に第3の層や要素が介在していてもよく、基準となる層と上記他の層は接している必要はない。また、特に断らない限り、基材に対し層が積み重なっていく方向を「上」と称し、又は、樹脂組成物層がある場合には、基材から樹脂組成物層へ向かう方向を「上」と称し、その反対方向を「下」と称する。なお、このような上下方向の設定は、本明細書中における便宜のためであり、実際の態様においては、本明細書における「上」方向は、鉛直上向きと異なることもありうる。
本明細書において、特段の記載がない限り、組成物は、組成物に含まれる各成分として、その成分に該当する2種以上の化合物を含んでもよい。また、特段の記載がない限り、組成物における各成分の含有量とは、その成分に該当する全ての化合物の合計含有量を意味する。
本明細書において、特に述べない限り、温度は23℃、気圧は101,325Pa(1気圧)、相対湿度は50%RHである。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0011】
(硬化性樹脂組成物)
本発明の硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、ポリイミド前駆体を含み、上記ポリイミド前駆体の環状イミド構造及び環状イソイミド構造の合計含有量(以下、「環化体量」ともいう。)が0.01~1.0mmol/gであり、上記ポリイミド前駆体におけるアミック酸構造及びアミック酸エステル構造の合計モル量に対する、アミック酸エステル構造の含有量(以下、「エステル化率」ともいう。)が97%を超え100%以下である。
以下、上記環化体量及び上記エステル化率が共に上記範囲内であるポリイミド前駆体を、「特定樹脂」ともいう。
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物は、露光及び現像に供される感光膜の形成に用いられることが好ましく、露光及び有機溶剤を含む現像液を用いた現像に供される膜の形成に用いられることが好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、ネガ型現像に供される感光膜の形成に用いられることが好ましい。
本発明において、ネガ型現像とは、露光及び現像において、現像により非露光部が除去される現像をいい、ポジ型現像とは、現像により露光部が除去される現像をいう。
上記露光の方法、上記現像液、及び、上記現像の方法としては、例えば、後述する硬化物の製造方法の説明における露光工程において説明された露光方法、現像工程において説明された現像液及び現像方法が使用される。
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物は、保存安定性及び信頼性に優れる。
上記効果が得られるメカニズムは不明であるが、下記のように推測される。
【0014】
本発明において用いられる特定樹脂は、上記ポリイミド前駆体におけるアミック酸構造及びアミック酸エステル構造の合計モル量に対する、アミック酸エステル構造の含有量(エステル化率)が97%を超え100%以下である。
そのため、硬化性樹脂組成物中での樹脂のイミド化が抑制され、硬化性樹脂組成物の保存安定性が向上すると推測される。
また、本発明において用いられる特定樹脂は、環状イミド構造及び環状イソイミド構造の合計含有量(環化体量)が0.01~1.0mmol/gであり、かつ、エステル化率が97%を超え100%以下である。このような特定樹脂を含む硬化性樹脂組成物を基材に適用した場合、基材と特定樹脂における環状イミド構造又は環状イソイミド構造との相互作用により、信頼性が向上すると推測される。具体的には、流動性の高い硬化性樹脂組成物を基材に適用する際に、環化体量が0.01mmol/g以上であるため、基材に対してイミド環が吸着しやすいためであると推測される。
また、硬化性樹脂組成物が溶剤を含む場合、環化体量が1.0mmol/g以下であり、かつ、エステル化率が97%を超え100%以下であるため、溶剤における特定樹脂の溶解度に優れる。上記溶解度の優れることから、硬化性樹脂組成物が溶剤を含む場合には、上記基材と特定樹脂における環状イミド構造又は環状イソイミド構造との相互作用が起こりやすく、信頼性向上の効果がより発揮されやすいと考えられる。
【0015】
ここで、特許文献1には、環化体量が上記範囲内であり、かつ、エステル化率が上記範囲内であるポリイミド前駆体を含む硬化性樹脂組成物については記載されていない。
【0016】
また、環化体量及びエステル化率が上記範囲内であること、及び、上記相互作用により、得られる硬化物は耐薬品性にも優れると推測される。
これは、環化体量が0.01mmol/g以上であることにより、硬化物中のポリイミドにおける環状イミド構造の量が増加するためであると推測される。
また、特定樹脂にエステル結合により重合性基が導入されている場合には、上記エステル化率が高いことにより、エステル結合により導入される重合性基量が増加し、架橋密度が向上するため、耐薬品性はより向上すると考えられる。
【0017】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる成分について詳細に説明する。
【0018】
<特定樹脂>
本発明の硬化性樹脂組成物は、特定樹脂を含む。
特定樹脂における環状イミド構造及び環状イソイミド構造の合計含有量が0.01~1.0mmol/gであり、上記ポリイミド前駆体におけるアミック酸構造及びアミック酸エステル構造の合計モル量に対する、アミック酸エステル構造の含有量が97%を超え100%以下である。
【0019】
〔環化体量〕
特定樹脂における環状イミド構造及び環状イソイミド構造の合計含有量(環化体量)は、0.01~1.0mmol/gである。
特定樹脂は、環状イミド構造及び環状イソイミド構造の少なくとも一方を側鎖に有してもよいが、主鎖に有することが好ましい。
本明細書において、樹脂の主鎖とは、分子中で相対的に最も長い分子鎖をいう。
上記環化体量の下限は、0.015mmol/g以上であることが好ましく、0.02mmol/g以上であることがより好ましい。
上記環化体量の上限は、0.95mmol/g以下であることが好ましく、0.9mmol/g以下であることがより好ましい。
上記環化体量は、例えば、実施例において記載した方法により算出される。
【0020】
〔エステル化率〕
上記ポリイミド前駆体におけるアミック酸構造及びアミック酸エステル構造の合計モル量に対する、アミック酸エステル構造の含有量(エステル化率)が97%を超え100%以下である。
すなわち、本発明において用いられる特定樹脂は、少なくともポリアミック酸エステル構造を含む樹脂である。また、特定樹脂は、ポリアミック酸構造を含んでいてもよい。
上記エステル化率の下限は、97.2%以上であることが好ましく、97.5%以上であることがより好ましい。
上記エステル化率の上限は、99.8%以下であることが好ましく、99.5%以下であることがより好ましい。
上記エステル化率は、例えば、実施例において記載した方法により算出される。
【0021】
特定樹脂は、少なくとも下記式(1-1)で表される構造を含むことが好ましい。また、特定樹脂は、下記式(1-2)で表される構造を含んでもよい。
ここで、特定樹脂における下記式(1-1)~(1-2)の合計モル量に対する式(1-1)の含有モル量は、97%を超え100%以下であることが好ましい。
上記含有モル量の下限は、97.2%以上であることが好ましく、97.5%以上であることがより好ましい。また、上記含有モル量の上限は、99.8%以下であることが好ましく、99.5%以下であることがより好ましい。
【化2】
式(1-1)又は式(1-2)中、*はそれぞれ独立に他の構造との結合部位を表し、#は他の構造との結合部位を表し、Rは1価の有機基を表し、破線を有する結合は単結合又は二重結合を表す。
Rの好ましい態様は、後述の式(2)におけるR
3の好ましい態様と同様である。
*のうち少なくとも一方と、#とがいずれも特定樹脂の主鎖に結合することが好ましい。2つの*に結合する構造は環構造を形成してもよく、ベンゼン環構造を形成することが好ましい。
【0022】
〔酸価〕
特定樹脂の酸価は、5.6mgKOH/g未満であることが好ましい。
上記酸価の下限は、0.56mgKOH/g以上であることが好ましく、1.12mgKOH/g以上であることがより好ましい。
上記酸価の上限は、5.5mgKOH/g以下であることが好ましく、5.05mgKOH/g以下であることがより好ましい。
上記酸価は、例えば、JIS K 0070:1992に記載の方法に従って測定することができる。
【0023】
〔カルボキシ基の含有量〕
特定樹脂におけるカルボキシ基の含有量は、5.6mgKOH/g未満であることが好ましい。
上記カルボキシ基の含有量の下限は、0.56mgKOH/g以上であることが好ましく、1.12mgKOH/g以上であることがより好ましい。
上記カルボキシ基の含有量の上限は、5.5mgKOH/g以下であることが好ましく、5.05mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0024】
また、特定樹脂はラジカル重合性基を有することが好ましい。
特定樹脂がラジカル重合性基を有する場合、硬化性樹脂組成物は、後述の光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、後述の光ラジカル重合開始剤を含み、かつ、後述のラジカル架橋剤を含むことがより好ましい。
上記態様において、後述の増感剤を更に含む態様も本発明の好ましい態様の1つである。
このような硬化性樹脂組成物からは、例えば、ネガ型感光膜が形成される。
特定樹脂がラジカル重合性基を有する場合、特定樹脂1gにおけるラジカル重合性基の含有モル量は、1.30~2.60mmol/gであることが好ましく、1.40~2.50mmol/gであることがより好ましく、1.50~2.40mmol/gであることが更に好ましい。
【0025】
また、特定樹脂は、酸分解性基等の極性変換基を有していてもよい。
特定樹脂が酸分解性基を有する場合、硬化性樹脂組成物は、感光剤として後述の光酸発生剤を含むことが好ましい。このような硬化性樹脂組成物からは、例えば、化学増幅型であるポジ型感光膜又はネガ型感光膜が形成される。
【0026】
〔式(2)で表される繰り返し単位〕
本発明で用いる特定樹脂は、式(2)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【化3】
式(2)中、A
1及びA
2は、それぞれ独立に、酸素原子を表し、R
111は、2価の有機基を表し、R
115は、4価の有機基を表し、R
3は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【0027】
式(2)におけるR111は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、直鎖又は分岐の脂肪族基、環状の脂肪族基及び芳香族基を含む基が例示され、炭素数2~20の直鎖又は分岐の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数3~20の芳香族基、又は、これらの組み合わせからなる基が好ましく、炭素数6~20の芳香族基を含む基がより好ましい。上記直鎖又は分岐の脂肪族基は鎖中の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、上記環状の脂肪族基および芳香族基は環員の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。本発明の好ましい実施形態として、-Ar-および-Ar-L-Ar-で表される基であることが例示され、特に好ましくは-Ar-L-Ar-で表される基である。但し、Arは、それぞれ独立に、芳香族基であり、Lは、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO2-又は-NHCO-、あるいは、上記の2つ以上の組み合わせからなる基である。これらの好ましい範囲は、上述のとおりである。
【0028】
R111は、ジアミンから誘導されることが好ましい。ポリイミド前駆体の製造に用いられるジアミンとしては、直鎖又は分岐の脂肪族、環状の脂肪族又は芳香族ジアミンなどが挙げられる。ジアミンは、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
具体的には、炭素数2~20の直鎖又は分岐の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数3~20の芳香族基、又は、これらの組み合わせからなる基を含むジアミンであることが好ましく、炭素数6~20の芳香族基を含むジアミンであることがより好ましい。上記直鎖又は分岐の脂肪族基は鎖中の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく上記環状の脂肪族基および芳香族基は環員の炭化水素基がヘテロ原子を含む基で置換されていてもよい。芳香族基を含む基の例としては、下記が挙げられる。
【0029】
【化4】
式中、Aは、単結合又は2価の連結基を表し、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-SO
2-、-NHCO-、又は、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-、又は、-SO
2-から選択される基であることがより好ましく、-CH
2-、-O-、-S-、-SO
2-、-C(CF
3)
2-、又は、-C(CH
3)
2-であることが更に好ましい。
式中、*は他の構造との結合部位を表す。
【0030】
ジアミンとしては、具体的には、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン及び1,6-ジアミノヘキサン;1,2-又は1,3-ジアミノシクロペンタン、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-、1,3-又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス-(3-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルシクロヘキシルメタン及びイソホロンジアミン;m-又はp-フェニレンジアミン、ジアミノトルエン、4,4’-又は3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-及び3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-及び3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-及び3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-又は3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノパラテルフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-10-ヒドロアントラセン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテル、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、3,3-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-ジメチル-3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4-及び2,5-ジアミノクメン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、アセトグアナミン、2,3,5,6-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、2,4,6-トリメチル-m-フェニレンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサン、2,7-ジアミノフルオレン、2,5-ジアミノピリジン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノ安息香酸のエステル、1,5-ジアミノナフタレン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)オクタフルオロブタン、1,5-ビス(4-アミノフェニル)デカフルオロペンタン、1,7-ビス(4-アミノフェニル)テトラデカフルオロヘプタン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、p-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’-ビス(3-アミノ-5-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロトリジン及び4,4’-ジアミノクアテルフェニルから選ばれる少なくとも1種のジアミンが挙げられる。
【0031】
また、国際公開第2017/038598号の段落0030~0031に記載のジアミン(DA-1)~(DA-18)も好ましい。
【0032】
また、国際公開第2017/038598号の段落0032~0034に記載の2つ以上のアルキレングリコール単位を主鎖にもつジアミンも好ましく用いられる。
【0033】
R111は、得られる有機膜の柔軟性の観点から、-Ar-L-Ar-で表されることが好ましい。但し、Arは、それぞれ独立に、芳香族基であり、Lは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO2-又は-NHCO-、あるいは、上記の2つ以上の組み合わせからなる基である。Arは、フェニレン基が好ましく、Lは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1又は2の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-又は-SO2-が好ましい。ここでの脂肪族炭化水素基は、アルキレン基が好ましい。
【0034】
また、R
111は、i線透過率の観点から、下記式(51)又は式(61)で表される2価の有機基であることが好ましい。特に、i線透過率、入手のし易さの観点から、式(61)で表される2価の有機基であることがより好ましい。
式(51)
【化5】
式(51)中、R
50~R
57は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は1価の有機基であり、R
50~R
57の少なくとも1つは、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、*はそれぞれ独立に、式(2)中の窒素原子との結合部位を表す。
R
50~R
57の1価の有機基としては、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)の無置換のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)のフッ化アルキル基等が挙げられる。
【化6】
式(61)中、R
58及びR
59は、それぞれ独立に、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、*はそれぞれ独立に、式(2)中の窒素原子との結合部位を表す。
式(51)又は(61)の構造を与えるジアミンとしては、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(フルオロ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル等が挙げられる。これらは1種で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
式(2)におけるR
115は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、芳香環を含む4価の有機基が好ましく、下記式(5)又は式(6)で表される基がより好ましい。
式(5)又は式(6)中、*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
【化7】
式(5)中、R
112は単結合又は2価の連結基であり、単結合、又は、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、及び-NHCO-、ならびに、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-CO-、-S-及び-SO
2-から選択される基であることがより好ましく、-CH
2-、-C(CF
3)
2-、-C(CH
3)
2-、-O-、-CO-、-S-及び-SO
2-からなる群から選択される2価の基であることが更に好ましい。
【0036】
R
115は、具体的には、テトラカルボン酸二無水物から無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基などが挙げられる。ポリイミド前駆体は、R
115に該当する構造として、テトラカルボン酸二無水物残基を、1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
テトラカルボン酸二無水物は、下記式(O)で表されることが好ましい。
【化8】
式(O)中、R
115は、4価の有機基を表す。R
115の好ましい範囲は式(2)におけるR
115と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0037】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ジフェニルヘキサフルオロプロパン-3,3,4,4-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ならびに、これらの炭素数1~6のアルキル及び炭素数1~6のアルコキシ誘導体が挙げられる。
【0038】
また、国際公開第2017/038598号の段落0038に記載のテトラカルボン酸二無水物(DAA-1)~(DAA-5)も好ましい例として挙げられる。
【0039】
式(2)において、R111とR115の少なくとも一方がOH基を有することも可能である。より具体的には、R111として、ビスアミノフェノール誘導体の残基が挙げられる。
【0040】
式(2)におけるR3は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。1価の有機基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、環状アルキル基、芳香族基、又はポリアルキレンオキシ基を含むことが好ましい。また、R3の少なくとも一方が重合性基を含むことが好ましく、両方が重合性基を含むことがより好ましい。R3の少なくとも一方が2以上の重合性基を含むことも好ましい。重合性基としては、熱、ラジカル等の作用により、架橋反応することが可能な基であって、ラジカル重合性基が好ましい。重合性基の具体例としては、エチレン性不飽和結合を有する基、アルコキシメチル基、ヒドロキシメチル基、アシルオキシメチル基、エポキシ基、オキセタニル基、ベンゾオキサゾリル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基が挙げられる。ポリイミド前駆体が有するラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基が好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、イソアリル基、2-メチルアリル基、ビニル基と直接結合した芳香環を有する基(例えば、ビニルフェニル基など)、(メタ)アクリルアミド基、(メタ)アクリロイルオキシ基、下記式(III)で表される基などが挙げられ、下記式(III)で表される基が好ましい。
【0041】
【0042】
式(III)において、R200は、水素原子、メチル基、エチル基又はメチロール基を表し、水素原子又はメチル基が好ましい。
式(III)において、*は他の構造との結合部位を表す。
式(III)において、R201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CH2CH(OH)CH2-、シクロアルキレン基又はポリアルキレンオキシ基を表す。
好適なR201の例は、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基等のアルキレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、-CH2CH(OH)CH2-、ポリアルキレンオキシ基が挙げられ、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、-CH2CH(OH)CH2-、シクロヘキシル基、ポリアルキレンオキシ基がより好ましく、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、又はポリアルキレンオキシ基が更に好ましい。
本発明において、ポリアルキレンオキシ基とは、アルキレンオキシ基が2以上直接結合した基をいう。ポリアルキレンオキシ基に含まれる複数のアルキレンオキシ基におけるアルキレン基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ポリアルキレンオキシ基が、アルキレン基が異なる複数種のアルキレンオキシ基を含む場合、ポリアルキレンオキシ基におけるアルキレンオキシ基の配列は、ランダムな配列であってもよいし、ブロックを有する配列であってもよいし、交互等のパターンを有する配列であってもよい。
上記アルキレン基の炭素数(アルキレン基が置換基を有する場合、置換基の炭素数を含む)は、2以上であることが好ましく、2~10であることがより好ましく、2~6であることがより好ましく、2~5であることが更に好ましく、2~4であることが一層好ましく、2又は3であることが特に好ましく、2であることが最も好ましい。
また、上記アルキレン基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等が挙げられる。
また、ポリアルキレンオキシ基に含まれるアルキレンオキシ基の数(ポリアルキレンオキシ基の繰返し数)は、2~20が好ましく、2~10がより好ましく、2~6が更に好ましい。
ポリアルキレンオキシ基としては、溶剤溶解性及び耐溶剤性の観点からは、ポリエチレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基、ポリトリメチレンオキシ基、ポリテトラメチレンオキシ基、又は、複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基が好ましく、ポリエチレンオキシ基又はポリプロピレンオキシ基がより好ましく、ポリエチレンオキシ基が更に好ましい。上記複数のエチレンオキシ基と複数のプロピレンオキシ基とが結合した基において、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基とはランダムに配列していてもよいし、ブロックを形成して配列していてもよいし、交互等のパターン状に配列していてもよい。これらの基におけるエチレンオキシ基等の繰返し数の好ましい態様は上述の通りである。
【0043】
式(2)において、R3が水素原子である場合ポリイミド前駆体はエチレン性不飽和結合を有する3級アミン化合物と対塩を形成していてもよい。このようなエチレン性不飽和結合を有する3級アミン化合物の例としては、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリレートが挙げられる。
【0044】
式(2)において、R3の少なくとも一方が、酸分解性基等の極性変換基であってもよい。酸分解性基としては、酸の作用で分解して、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基等のアルカリ可溶性基を生じるものであれば特に限定されないが、アセタール基、ケタール基、シリル基、シリルエーテル基、第三級アルキルエステル基等が好ましく、露光感度の観点からは、アセタール基又はケタール基がより好ましい。
酸分解性基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、エトキシエチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、トリメチルシリル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基、トリメチルシリルエーテル基などが挙げられる。露光感度の観点からは、エトキシエチル基、又は、テトラヒドロフラニル基が好ましい。
【0045】
また、ポリイミド前駆体は、構造中にフッ素原子を有することも好ましい。ポリイミド前駆体中のフッ素原子含有量は、10質量%以上が好ましく、また、20質量%以下が好ましい。
【0046】
また、基板との密着性を向上させる目的で、ポリイミド前駆体は、シロキサン構造を有する脂肪族基と共重合していてもよい。具体的には、ジアミンとして、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを用いる態様が挙げられる。
【0047】
式(2)で表される繰返し単位は、式(2-A)で表される繰返し単位であることが好ましい。すなわち、本発明で用いるポリイミド前駆体の少なくとも1種が、式(2-A)で表される繰返し単位を有する前駆体であることが好ましい。ポリイミド前駆体が式(2-A)で表される繰返し単位を含むことにより、露光ラチチュードの幅をより広げることが可能になる。
式(2-A)
【化10】
式(2-A)中、A
1及びA
2は、酸素原子を表し、R
111及びR
112は、それぞれ独立に、2価の有機基を表し、R
3は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、R
3の少なくとも一方は、重合性基を含む基であり、両方が重合性基を含む基であることが好ましい。
【0048】
A1、A2、R111、R3は、それぞれ独立に、式(2)におけるA1、A2、R111、R3と同義であり、好ましい範囲も同様である。
R112は、式(5)におけるR112と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0049】
特定樹脂は、環状イミド構造及び環状イソイミド構造の少なくとも一方を有する繰返し単位として、下記式(2-1)~式(2-4)のいずれかで表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含むことが好ましく、下記式(2-1)~(2-2)のいずれかで表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含むことがより好ましい。
【化11】
式(2-1)~式(2-4)中、R
111、R
3、R
115及びA
1はそれぞれ、上述の式(2)中のR
111、R
3、R
115及びA
1と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0050】
式(2-1)~式(2-4)のいずれかで表される繰返し単位の合計含有量は、特定樹脂における環状イミド構造及び環状イソイミド構造の合計含有量が上述の範囲内となる量とすればよい。
また、特定樹脂が式(2-1)~式(2-4)のいずれかで表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位を含む場合、式(2)並びに式(2-1)~式(2-4)のいずれかで表される繰返し単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の繰返し単位に含まれる全てのR3のうち、1価の有機基であるR3の割合が97%を超え100%以下であることが好ましく、97.2~99.8%であることがより好ましく、97.5~99.5%であることが更に好ましい。
【0051】
本発明における特定樹脂の一実施形態として、式(2)で表される繰り返し単位、及び、式(2-1)~式(2-4)のいずれかで表される繰返し単位の合計含有量が、全繰り返し単位の50モル%以上である態様が挙げられる。上記合計含有量は、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることが更に好ましく、90モル%超であることが特に好ましい。上記合計含有量の上限は、特に限定されず、末端を除く特定樹脂における全ての繰返し単位が、式(2)で表される繰り返し単位、及び、式(2-1)~式(2-4)のいずれかで表される繰返し単位のいずれかであってもよい。
【0052】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000~100,000であり、より好ましくは10,000~50,000であり、更に好ましくは15,000~40,000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは2,000~40,000であり、より好ましくは3,000~30,000であり、更に好ましくは4,000~20,000である。
また、本発明において、特定樹脂のMwが、3,000~50,000である態様も好ましく、3,000~15,000であることがより好ましい。
本発明においては、特定樹脂のMwが15,000以下であっても、環化体量が0.01mmol/g以上であることにより、硬化物中のポリイミドにおける環状イミド構造の量が増加するため優れた破断伸び及び耐薬品性が得られると推測される。
また、特定樹脂のMwが、15,000を超え30,000以下である(好ましくは16,000~28,000であり、より好ましくは17,000~25,000である)態様も、本発明の好ましい態様の1つである。
上記ポリイミド前駆体の分子量の分散度は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上であることが更に好ましい。ポリイミド前駆体の分子量の分散度の上限値は特に定めるものではないが、例えば、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。
本明細書において、分子量の分散度とは、重量平均分子量/数平均分子量により算出される値である。
また、樹脂組成物が特定樹脂として複数種のポリイミド前駆体を含む場合、少なくとも1種のポリイミド前駆体の重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が上記範囲であることが好ましい。また、上記複数種のポリイミド前駆体を1つの樹脂として算出した重量平均分子量、数平均分子量、及び、分散度が、それぞれ、上記範囲内であることも好ましい。
【0053】
〔ポリイミド前駆体の製造方法〕
ポリイミド前駆体は、例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させる方法、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させてポリアミック酸を得、縮合剤又はアルキル化剤を用いてエステル化する方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミンと縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸をハロゲン化剤を用いて酸ハロゲン化し、ジアミンと反応させる方法、などの方法を利用して得ることができる。上記製造方法のうち、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸をハロゲン化剤を用いて酸ハロゲン化し、ジアミンと反応させる方法がより好ましい。
上記ジアミンと反応させる際の反応温度及び反応時間を適宜設定することにより、得られるポリイミド前駆体における環化体量を設定することができる。
また、上記ジエステルとして、エステル化率が高いものを使用することにより、得られるポリイミド前駆体におけるエステル化率を増加させることができる。
上記縮合剤としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン、1,1-カルボニルジオキシ-ジ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート、無水トリフルオロ酢酸等が挙げられる。
上記アルキル化剤としては、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N-ジアルキルホルムアミドジアルキルアセタール、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル等が挙げられる。
上記ハロゲン化剤としては、塩化チオニル、塩化オキサリル、オキシ塩化リン等が挙げられる。
ポリイミド前駆体の製造方法では、反応に際し、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
有機溶剤としては、原料に応じて適宜定めることができるが、ピリジン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、プロピオン酸エチル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン等が例示される。
ポリイミド前駆体の製造方法では、反応に際し、塩基性化合物を添加することが好ましい。塩基性化合物は1種でもよいし、2種以上でもよい。
塩基性化合物は、原料に応じて適宜定めることができるが、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン等が例示される。
【0054】
-末端封止剤-
ポリイミド前駆体の製造方法に際し、保存安定性をより向上させるため、ポリイミド前駆体の樹脂末端に残存するカルボン酸無水物、酸無水物誘導体、或いは、アミノ基を封止することが好ましい。樹脂末端に残存するカルボン酸無水物、及び酸無水物誘導体を封止する際、末端封止剤としては、モノアルコール、フェノール、チオール、チオフェノール、モノアミン等が挙げられ、反応性、膜の安定性から、モノアルコール、フェノール類やモノアミンを用いることがより好ましい。モノアルコールの好ましい化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、ドデシノール、ベンジルアルコール、2-フェニルエタノール、2-メトキシエタノール、2-クロロメタノール、フルフリルアルコール等の1級アルコール、イソプロパノール、2-ブタノール、シクロヘキシルアルコール、シクロペンタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等の2級アルコール、t-ブチルアルコール、アダマンタンアルコール等の3級アルコールが挙げられる。フェノール類の好ましい化合物としては、フェノール、メトキシフェノール、メチルフェノール、ナフタレン-1-オール、ナフタレン-2-オール、ヒドロキシスチレン等のフェノール類などが挙げられる。また、モノアミンの好ましい化合物としては、アニリン、2-エチニルアニリン、3-エチニルアニリン、4-エチニルアニリン、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノールなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよく、複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
また、樹脂末端のアミノ基を封止する際、アミノ基と反応可能な官能基を有する化合物で封止することが可能である。アミノ基に対する好ましい封止剤は、カルボン酸無水物、カルボン酸クロリド、カルボン酸ブロミド、スルホン酸クロリド、無水スルホン酸、スルホン酸カルボン酸無水物などが好ましく、カルボン酸無水物、カルボン酸クロリドがより好ましい。カルボン酸無水物の好ましい化合物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水安息香酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物などが挙げられる。また、カルボン酸クロリドの好ましい化合物としては、塩化アセチル、アクリル酸クロリド、プロピオニルクロリド、メタクリル酸クロリド、ピバロイルクロリド、シクロヘキサンカルボニルクロリド、2-エチルヘキサノイルクロリド、シンナモイルクロリド、1-アダマンタンカルボニルクロリド、ヘプタフルオロブチリルクロリド、ステアリン酸クロリド、ベンゾイルクロリド、などが挙げられる。
【0055】
-固体析出-
ポリイミド前駆体の製造に際し、固体を析出する工程を含んでいてもよい。具体的には、反応液中に共存している脱水縮合剤の吸水副生物を必要に応じて濾別した後、水、脂肪族低級アルコール、又はその混合液等の貧溶媒に、得られた重合体成分を投入し、重合体成分を析出させることで、固体として析出させ、乾燥させることでポリイミド前駆体等を得ることができる。精製度を向上させるために、ポリイミド前駆体等を再溶解、再沈析出、乾燥等の操作を繰返してもよい。さらに、イオン交換樹脂を用いてイオン性不純物を除去する工程を含んでいてもよい。
【0056】
〔含有量〕
本発明の樹脂組成物における特定樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが一層好ましい。また、本発明の樹脂組成物における樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることが更に好ましく、97質量%以下であることが一層好ましく、95質量%以下であることがより一層好ましい。
本発明の樹脂組成物は、特定樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物がポリイミド前駆体を2種以上含む場合、少なくとも1種のポリイミド前駆体に含まれる環状イミド構造及び環状イソイミド構造の合計含有量並びに酸価が上述の範囲内であればよく、全てのポリイミド前駆体の合計量を1gとした場合に対する、全てのポリイミド前駆体に含まれる環状イミド構造及び環状イソイミド構造の合計含有量並びに酸価が上述の範囲であることが好ましく、硬化性樹脂組成物に含まれるポリイミド前駆体のそれぞれについて、環状イミド構造及び環状イソイミド構造の合計含有量並びに酸価が上述の範囲であることがより好ましい。
【0057】
また、本発明の樹脂組成物は、少なくとも2種の樹脂を含むことも好ましい。
具体的には、本発明の樹脂組成物は、特定樹脂と、後述する他の樹脂とを合計で2種以上含んでもよいし、特定樹脂を2種以上含んでいてもよいが、特定樹脂を2種以上含むことが好ましい。
本発明の樹脂組成物が特定樹脂を2種以上含む場合、例えば、ポリイミド前駆体であって、二無水物由来の構造(上述の式(2)でいうR115)が異なる2種以上のポリイミド前駆体を含むことが好ましい。
【0058】
<他の樹脂>
本発明の樹脂組成物は、上述した特定樹脂と、特定樹脂とは異なる他の樹脂(以下、単に「他の樹脂」ともいう)とを含んでもよい。
他の樹脂としては、フェノール樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリシロキサン、シロキサン構造を含む樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、スチリル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
例えば、(メタ)アクリル樹脂を更に加えることにより、塗布性に優れた樹脂組成物が得られ、また、耐溶剤性に優れたパターン(硬化物)が得られる。
例えば、後述する重合性化合物に代えて、又は、後述する重合性化合物に加えて、重量平均分子量が20,000以下の重合性基価の高い(例えば、樹脂1gにおける重合性基の含有モル量が1×10-3モル/g以上である)(メタ)アクリル樹脂を樹脂組成物に添加することにより、樹脂組成物の塗布性、パターン(硬化物)の耐溶剤性等を向上させることができる。
【0059】
本発明の樹脂組成物が他の樹脂を含む場合、他の樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、2質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以上であることがより一層好ましく、10質量%以上であることが更に一層好ましい。
また、本発明の樹脂組成物における、他の樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましく、60質量%以下であることが一層好ましく、50質量%以下であることがより一層好ましい。
また、本発明の樹脂組成物の好ましい一態様として、他の樹脂の含有量が低含有量である態様とすることもできる。上記態様において、他の樹脂の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが一層好ましく、1質量%以下であることがより一層好ましい。上記含有量の下限は特に限定されず、0質量%以上であればよい。
本発明の樹脂組成物は、他の樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0060】
<溶剤>
本発明の樹脂組成物は、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、環状炭化水素類、スルホキシド類、アミド類、ウレア類、アルコール類などの化合物が挙げられる。
【0061】
エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸へキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等が好適なものとして挙げられる。
【0062】
エーテル類として、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が好適なものとして挙げられる。
【0063】
ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、3-メチルシクロヘキサノン、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノン等が好適なものとして挙げられる。
【0064】
環状炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素類、リモネン等の環式テルペン類が好適なものとして挙げられる。
【0065】
スルホキシド類として、例えば、ジメチルスルホキシドが好適なものとして挙げられる。
【0066】
アミド類として、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、N-ホルミルモルホリン、N-アセチルモルホリン等が好適なものとして挙げられる。
【0067】
ウレア類として、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が好適なものとして挙げられる。
【0068】
アルコール類として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n-アミルアルコール、メチルアミルアルコール、および、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。
【0069】
溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。
【0070】
本発明では、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、レボグルコセノン、ジヒドロレボグルコセノンから選択される1種の溶剤、又は、2種以上で構成される混合溶剤が好ましい。ジメチルスルホキシドとγ-ブチロラクトンとの併用、又は、N-メチル-2-ピロリドンと乳酸エチルとの併用が特に好ましい。
【0071】
溶剤の含有量は、塗布性の観点から、本発明の樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量とすることが好ましく、5~75質量%となる量にすることがより好ましく、10~70質量%となる量にすることが更に好ましく、20~70質量%となるようにすることが一層好ましい。溶剤含有量は、塗膜の所望の厚さと塗布方法に応じて調節すればよい。
【0072】
本発明の樹脂組成物は、溶剤を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。溶剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0073】
〔重合開始剤〕
本発明の樹脂組成物は、光及び/又は熱により重合を開始させることができる重合開始剤を含むことが好ましい。特に光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
【0074】
光ラジカル重合開始剤は、波長約240~800nm(好ましくは330~500nm)の範囲内で少なくとも約50L・mol-1・cm-1のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶剤を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0075】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノンなどのα-アミノケトン化合物、ヒドロキシアセトフェノンなどのα-ヒドロキシケトン化合物、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182、国際公開第2015/199219号の段落0138~0151の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報に記載された化合物、MATERIAL STAGE 37~60p,vol.19,No.3,2019に記載されたパーオキサイド系光重合開始剤、国際公開第2018/221177号に記載の光重合開始剤、国際公開第2018/110179号に記載の光重合開始剤、特開2019-043864号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-044030号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-167313号公報に記載の過酸化物系開始剤が挙げられ、これらの内容も本明細書に組み込まれる。
【0076】
ケトン化合物としては、例えば、特開2015-087611号公報の段落0087に記載の化合物が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品では、カヤキュア-DETX-S(日本化薬(株)製)も好適に用いられる。
【0077】
本発明の一実施態様において、光ラジカル重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤を用いることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0078】
α-ヒドロキシケトン系開始剤としては、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127(以上、IGM Resins B.V.社製)、IRGACURE 184(IRGACUREは登録商標)、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE-2959、IRGACURE 127(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0079】
α-アミノケトン系開始剤としては、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(以上、IGM Resins B.V.社製)、IRGACURE 907、IRGACURE 369、及び、IRGACURE 379(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0080】
アミノアセトフェノン系開始剤として、365nm又は405nm等の波長光源に極大吸収波長がマッチングされた特開2009-191179号公報に記載の化合物も用いることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0081】
アシルホスフィンオキシド系開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。また、Omnirad 819、Omnirad TPO(以上、IGM Resins B.V.社製)、IRGACURE-819やIRGACURE-TPO(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0082】
メタロセン化合物としては、IRGACURE-784、IRGACURE-784EG(いずれもBASF社製)、Keycure VIS 813(King Brother Chem社製)などが例示される。
【0083】
光ラジカル重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物を用いることにより、露光ラチチュードをより効果的に向上させることが可能になる。オキシム化合物は、露光ラチチュード(露光マージン)が広く、かつ、光硬化促進剤としても働くため、特に好ましい。
【0084】
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0085】
好ましいオキシム化合物としては、例えば、下記の構造の化合物や、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。本発明の樹脂組成物においては、特に光ラジカル重合開始剤としてオキシム化合物(オキシム系の光ラジカル重合開始剤)を用いることが好ましい。オキシム系の光ラジカル重合開始剤は、分子内に >C=N-O-C(=O)- の連結基を有する。
【0086】
【0087】
市販品ではIRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE OXE 03、IRGACURE OXE 04(以上、BASF社製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光ラジカル重合開始剤2)も好適に用いられる。また、TR-PBG-304、TR-PBG-305(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-730、NCI-831及びアデカアークルズNCI-930((株)ADEKA製)も用いることができる。また、DFI-091(ダイトーケミックス(株)製)、SpeedCure PDO(SARTOMER ARKEMA製)を用いることができる。また、下記の構造のオキシム化合物を用いることもできる。
【化13】
【0088】
光ラジカル重合開始剤としては、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物、特許06636081号に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0089】
光ラジカル重合開始剤としては、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0090】
また、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることも可能である。そのようなオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載されている化合物、特表2014-500852号公報の段落0345に記載されている化合物24、36~40、特開2013-164471号公報の段落0101に記載されている化合物(C-3)などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0091】
光重合開始剤としては、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、ニトロ基を有するオキシム化合物としては、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)も挙げられる。
【0092】
光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載されているOE-01~OE-75が挙げられる。
【0093】
光ラジカル重合開始剤としては、カルバゾール骨格にヒドロキシ基を有する置換基が結合したオキシム化合物を用いることもできる。このような光重合開始剤としては国際公開第2019/088055号に記載された化合物などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0094】
光重合開始剤としては、芳香族環に電子求引性基が導入された芳香族環基ArOX1を有するオキシム化合物(以下、オキシム化合物OXともいう)を用いることもできる。上記芳香族環基ArOX1が有する電子求引性基としては、アシル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基が挙げられ、アシル基およびニトロ基が好ましく、耐光性に優れた膜を形成しやすいという理由からアシル基であることがより好ましく、ベンゾイル基であることが更に好ましい。ベンゾイル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルケニル基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アシル基またはアミノ基であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基またはアミノ基であることがより好ましく、アルコキシ基、アルキルスルファニル基またはアミノ基であることが更に好ましい。
【0095】
オキシム化合物OXは、式(OX1)で表される化合物および式(OX2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、式(OX2)で表される化合物であることがより好ましい。
【化14】
式中、R
X1は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミノ基、ホスフィノイル基、カルバモイル基またはスルファモイル基を表し、
R
X2は、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、複素環オキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシルオキシ基またはアミノ基を表し、
R
X3~R
X14は、それぞれ独立して水素原子または置換基を表す。
ただし、R
X10~R
X14のうち少なくとも一つは、電子求引性基である。
【0096】
上記式において、RX12が電子求引性基であり、RX10、RX11、RX13、RX14は水素原子であることが好ましい。
【0097】
オキシム化合物OXの具体例としては、特許第4600600号公報の段落番号0083~0105に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0098】
最も好ましいオキシム化合物としては、特開2007-269779号公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009-191061号公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0099】
光ラジカル重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3-アリール置換クマリン化合物よりなる群から選択される化合物が好ましい。
【0100】
更に好ましい光ラジカル重合開始剤は、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物であり、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が一層好ましく、メタロセン化合物又はオキシム化合物を用いるのがより一層好ましい。
また、本発明では、光重合開始剤としてメタロセン化合物を用いることも好ましく、チタノセン化合物を用いることがより好ましい。
【0101】
また、光ラジカル重合開始剤は、ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)等のN,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等の芳香環と縮環したキノン類、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体などを用いることもできる。また、下記式(I)で表される化合物を用いることもできる。
【0102】
【0103】
式(I)中、RI00は、炭素数1~20のアルキル基、1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2~20のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、フェニル基、又は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、ハロゲン原子、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素数2~12のアルケニル基、1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2~18のアルキル基及び炭素数1~4のアルキル基の少なくとも1つで置換されたフェニル基、若しくは、ビフェニル基であり、RI01は、式(II)で表される基であるか、RI00と同じ基であり、RI02~RI04は各々独立に炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基又はハロゲン原子である。
【0104】
【0105】
式中、RI05~RI07は、上記式(I)のRI02~RI04と同じである。
【0106】
また、光ラジカル重合開始剤は、国際公開第2015/125469号の段落0048~0055に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0107】
光ラジカル重合開始剤としては、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、樹脂組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)、特許第6469669号公報に記載されているオキシムエステル光開始剤などが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0108】
光重合開始剤を含む場合、その含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%であり、更に好ましくは0.5~15質量%であり、一層好ましくは1.0~10質量%である。光重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
なお、光重合開始剤は熱重合開始剤としても機能する場合があるため、オーブンやホットプレート等の加熱によって光重合開始剤による架橋を更に進行させられる場合がある。
【0109】
〔増感剤〕
樹脂組成物は、増感剤を含んでいてもよい。増感剤は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などと接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸又は塩基を生成する。
使用可能な増感剤として、ベンゾフェノン系、ミヒラーズケトン系、クマリン系、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アントラセン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ペンゾピラン系、インジゴ系等の化合物を使用することができる。
増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビフェニレン)-ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4’-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンジロキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-メトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン(7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボン酸エチル)、N-フェニル-N’-エチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-p-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、4-モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2-メルカプトベンズイミダゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2-d)チアゾール、2-(p-ジメチルアミノベンゾイル)スチレン、ジフェニルアセトアミド、ベンズアニリド、N-メチルアセトアニリド、3‘,4’-ジメチルアセトアニリド等が挙げられる。
また、他の増感色素を用いてもよい。
増感色素の詳細については、特開2016-027357号公報の段落0161~0163の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0110】
樹脂組成物が増感剤を含む場合、増感剤の含有量は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~15質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることが更に好ましい。増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0111】
〔連鎖移動剤〕
本発明の樹脂組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683-684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内に-S-S-、-SO2-S-、-N-O-、SH、PH、SiH、及びGeHを有する化合物群、RAFT(Reversible Addition Fragmentation chain Transfer)重合に用いられるチオカルボニルチオ基を有するジチオベンゾアート、トリチオカルボナート、ジチオカルバマート、キサンタート化合物等が用いられる。これらは、低活性のラジカルに水素を供与して、ラジカルを生成するか、若しくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。特に、チオール化合物を好ましく用いることができる。
【0112】
また、連鎖移動剤は、国際公開第2015/199219号の段落0152~0153に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0113】
本発明の樹脂組成物が連鎖移動剤を有する場合、連鎖移動剤の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部が更に好ましい。連鎖移動剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。連鎖移動剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0114】
〔光酸発生剤〕
本発明の樹脂組成物は、光酸発生剤を含むことが好ましい。
光酸発生剤とは、200nm~900nmの光照射により、ブレンステッド酸、及び、ルイス酸の少なくとも一方を発生させる化合物を表す。照射される光は、好ましくは波長300nm~450nmの光であり、より好ましくは330nm~420nmの光である。光酸発生剤単独または増感剤との併用において、感光して酸を発生させることが可能な光酸発生剤であることが好ましい。
発生する酸の例としては、ハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、チオスルフィン酸、リン酸、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、ホウ素誘導体、リン誘導体、アンチモン誘導体、過酸化ハロゲン、スルホンアミド等が好ましく挙げられる。
【0115】
本発明の樹脂組成物に用いられる光酸発生剤としては、例えば、キノンジアジド化合物、オキシムスルホネート化合物、有機ハロゲン化化合物、有機ホウ酸塩化合物、ジスルホン化合物、オニウム塩化合物等が挙げられる。
感度、保存安定性の観点から、有機ハロゲン化合物、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩化合物が好ましく、形成する膜の機械特性等から、オキシムエステルが好ましい。
【0116】
キノンジアジド化合物としては、1価または多価のヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合したもの、1価または多価のアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらポリヒドロキシ化合物、ポリアミノ化合物、ポリヒドロキシポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくてもよいが、平均して官能基全体の40モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を含有させることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)に感光する樹脂組成物を得ることができる。
【0117】
ヒドロキシ化合物として具体的には、フェノール、トリヒドロキシベンゾフェノン、4メトキシフェノール、イソプロパノール、オクタノール、t-Buアルコール、シクロヘキサノール、ナフトール、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、TrisP-SA、TrisOCR-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PCHP、DML-PC、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP、DML-POP、ジメチロール-BisOC-P、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MTrisPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-BP、TML-HQ、TML-pp-BPF、TML-BPA、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業製)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A、46DMOC、46DMOEP、TM-BIP-A(以上、商品名、旭有機材工業製)、2,6-ジメトキシメチル-4-t-ブチルフェノール、2,6-ジメトキシメチル-p-クレゾール、2,6-ジアセトキシメチル-p-クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP-AP(商品名、本州化学工業製)、ノボラック樹脂などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0118】
アミノ化合物として具体的には、アニリン、メチルアニリン、ジエチルアミン、ブチルアミン、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィドなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0119】
また、ポリヒドロキシポリアミノ化合物として具体的には、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジヒドロキシベンジジンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0120】
これらの中でも、キノンジアジド化合物として、フェノール化合物および4-ナフトキノンジアジドスルホニル基とのエステルを含むことが好ましい。これによりi線露光に対するより高い感度と、より高い解像度を得ることができる。
【0121】
本発明の樹脂組成物に用いるキノンジアジド化合物の含有量は、樹脂100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、10~40質量部がより好ましい。キノンジアジド化合物の含有量をこの範囲とすることにより、露光部と未露光部のコントラストが得られることでより高感度化を図ることができるため好ましい。さらに増感剤などを必要に応じて添加してもよい。
【0122】
光酸発生剤は、オキシムスルホネート基を含む化合物(以下、単に「オキシムスルホネート化合物」ともいう)であることが好ましい。
オキシムスルホネート化合物は、オキシムスルホネート基を有していれば特に制限はないが、下記式(OS-1)、後述する式(OS-103)、式(OS-104)、又は、式(OS-105)で表されるオキシムスルホネート化合物であることが好ましい。
【0123】
【0124】
式(OS-1)中、X3は、アルキル基、アルコキシ基、又は、ハロゲン原子を表す。X3が複数存在する場合は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記X3におけるアルキル基及びアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。上記X3におけるアルキル基としては、炭素数1~4の、直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。上記X3におけるアルコキシ基としては、炭素数1~4の直鎖状又は分岐状アルコキシ基が好ましい。上記X3におけるハロゲン原子としては、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。
式(OS-1)中、m3は、0~3の整数を表し、0又は1が好ましい。m3が2又は3であるとき、複数のX3は同一でも異なっていてもよい。
式(OS-1)中、R34は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルコキシ基、Wで置換されていてもよいフェニル基、Wで置換されていてもよいナフチル基又はWで置換されていてもよいアントラニル基であることが好ましい。Wは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン化アリール基を表す。
【0125】
式(OS-1)中、m3が3であり、X3がメチル基であり、X3の置換位置がオルト位であり、R34が炭素数1~10の直鎖状アルキル基、7,7-ジメチル-2-オキソノルボルニルメチル基、又は、p-トリル基である化合物が特に好ましい。
【0126】
式(OS-1)で表されるオキシムスルホネート化合物の具体例としては、特開2011-209692号公報の段落番号0064~0068、特開2015-194674号公報の段落番号0158~0167に記載された以下の化合物が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0127】
【0128】
式(OS-103)~式(OS-105)中、Rs1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、複数存在する場合のあるRs2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表し、複数存在する場合のあるRs6はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、スルホン酸基、アミノスルホニル基又はアルコキシスルホニル基を表し、XsはO又はSを表し、nsは1又は2を表し、msは0~6の整数を表す。
式(OS-103)~式(OS-105)中、Rs1で表されるアルキル基(炭素数1~30が好ましい)、アリール基(炭素数6~30が好ましい)又はヘテロアリール基(炭素数4~30が好ましい)は、本発明の効果が得られる範囲で公知の置換基を有していてもよい。
【0129】
式(OS-103)~式(OS-105)中、Rs2は、水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましい)又はアリール基(炭素数6~30が好ましい)であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。化合物中に2以上存在する場合のあるRs2のうち、1つ又は2つがアルキル基、アリール基又はハロゲン原子であることが好ましく、1つがアルキル基、アリール基又はハロゲン原子であることがより好ましく、1つがアルキル基であり、かつ残りが水素原子であることが特に好ましい。Rs2で表されるアルキル基又はアリール基は、本発明の効果が得られる範囲で公知の置換基を有していてもよい。
式(OS-103)、式(OS-104)、又は、式(OS-105)中、XsはO又はSを表し、Oであることが好ましい。上記式(OS-103)~(OS-105)において、Xsを環員として含む環は、5員環又は6員環である。
【0130】
式(OS-103)~式(OS-105)中、nsは1又は2を表し、XsがOである場合、nsは1であることが好ましく、また、XsがSである場合、nsは2であることが好ましい。
式(OS-103)~式(OS-105)中、Rs6で表されるアルキル基(炭素数1~30が好ましい)及びアルキルオキシ基(炭素数1~30が好ましい)は、置換基を有していてもよい。
式(OS-103)~式(OS-105)中、msは0~6の整数を表し、0~2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0131】
また、上記式(OS-103)で表される化合物は、下記式(OS-106)、式(OS-110)又は式(OS-111)で表される化合物であることが特に好ましく、上記式(OS-104)で表される化合物は、下記式(OS-107)で表される化合物であることが特に好ましく、上記式(OS-105)で表される化合物は、下記式(OS-108)又は式(OS-109)で表される化合物であることが特に好ましい。
【化19】
【0132】
式(OS-106)~式(OS-111)中、Rt1はアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、Rt7は、水素原子又は臭素原子を表し、Rt8は水素原子、炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子、クロロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はクロロフェニル基を表し、Rt9は水素原子、ハロゲン原子、メチル基又はメトキシ基を表し、Rt2は水素原子又はメチル基を表す。
式(OS-106)~式(OS-111)中、Rt7は、水素原子又は臭素原子を表し、水素原子であることが好ましい。
【0133】
式(OS-106)~式(OS-111)中、Rt8は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子、クロロメチル基、ブロモメチル基、ブロモエチル基、メトキシメチル基、フェニル基又はクロロフェニル基を表し、炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0134】
式(OS-106)~式(OS-111)中、Rt9は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基又はメトキシ基を表し、水素原子であることが好ましい。
Rt2は、水素原子又はメチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
また、上記オキシムスルホネート化合物において、オキシムの立体構造(E,Z)については、いずれか一方であっても、混合物であってもよい。
上記式(OS-103)~式(OS-105)で表されるオキシムスルホネート化合物の具体例としては、特開2011-209692号公報の段落番号0088~0095、特開2015-194674号公報の段落番号0168~0194に記載の化合物が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0135】
オキシムスルホネート基を少なくとも1つを含むオキシムスルホネート化合物の好適な他の態様としては、下記式(OS-101)、式(OS-102)で表される化合物が挙げられる。
【0136】
【0137】
式(OS-101)又は式(OS-102)中、Ru9は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホ基、シアノ基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。Ru9がシアノ基又はアリール基である態様がより好ましく、Ru9がシアノ基、フェニル基又はナフチル基である態様が更に好ましい。
式(OS-101)又は式(OS-102)中、Ru2aは、アルキル基又はアリール基を表す。
式(OS-101)又は式(OS-102)中、Xuは、-O-、-S-、-NH-、-NRu5-、-CH2-、-CRu6H-又はCRu6Ru7-を表し、Ru5~Ru7はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表す。
【0138】
式(OS-101)又は式(OS-102)中、Ru1~Ru4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミド基、スルホ基、シアノ基又はアリール基を表す。Ru1~Ru4のうちの2つがそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。このとき、環が縮環してベンゼン環ともに縮合環を形成していてもよい。Ru1~Ru4としては、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基が好ましく、また、Ru1~Ru4のうちの少なくとも2つが互いに結合してアリール基を形成する態様も好ましい。中でも、Ru1~Ru4がいずれも水素原子である態様が好ましい。上記した置換基は、いずれも、更に置換基を有していてもよい。
【0139】
上記式(OS-101)で表される化合物は、式(OS-102)で表される化合物であることがより好ましい。
また、上記オキシムスルホネート化合物において、オキシムやベンゾチアゾール環の立体構造(E,Z等)についてはそれぞれ、いずれか一方であっても、混合物であってもよい。
式(OS-101)で表される化合物の具体例としては、特開2011-209692号公報の段落番号0102~0106、特開2015-194674号公報の段落番号0195~0207に記載の化合物が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
上記化合物の中でも、下記b-9、b-16、b-31、b-33が好ましい。
【化21】
市販品としては、WPAG-336(富士フイルム和光純薬(株)製)、WPAG-443(富士フイルム和光純薬(株)製)、MBZ-101(みどり化学(株)製)等を挙げることができる。
【0140】
また、下記構造式で表される化合物も好ましい例として挙げられる。
【化22】
【0141】
有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46-4605号、特開昭48-36281号公報、特開昭55-32070号公報、特開昭60-239736号公報、特開昭61-169835号公報、特開昭61-169837号公報、特開昭62-58241号公報、特開昭62-212401号公報、特開昭63-70243号公報、特開昭63-298339号公報、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)などに記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S-トリアジン化合物が好ましい例として挙げられる。
より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs-トリアジン環に結合したs-トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6-トリス(モノクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2―n-プロピル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(α,α,β-トリクロロエチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3,4-エポキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-〔1-(p-メトキシフェニル)-2,4-ブタジエニル〕-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-スチリル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-i-プロピルオキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-ナトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニルチオ-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ベンジルチオ-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(ジブロモメチル)-s-トリアジン、2,4,6-トリス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、2-メトキシ-4,6-ビス(トリブロモメチル)-s-トリアジン等が挙げられる。
【0142】
有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62-143044号公報、特開昭62-150242号公報、特開平9-188685号公報、特開平9-188686号公報、特開平9-188710号公報、特開2000-131837号公報、特開2002-107916号公報、特許第2764769号公報、特開2002-116539号公報、等、及び、Kunz,Martin“Rad Tech'98.Proceeding April 19-22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6-157623号公報、特開平6-175564号公報、特開平6-175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6-175554号公報、特開平6-175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9-188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6-348011号公報、特開平7-128785号公報、特開平7-140589号公報、特開平7-306527号公報、特開平7-292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0143】
ジスルホン化合物としては、特開昭61-166544号公報、特願2001-132318公報等に記載されている化合物およびジアゾジスルホン化合物が挙げられる。
【0144】
上記オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4-365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2-150848号、特開平2-296514号公報に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩等が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0145】
オニウム塩としては、下記一般式(RI-I)~(RI-III)で表されるオニウム塩が挙げられる。
【化23】
式(RI-I)中、Ar
11は置換基を1~6有していても良い炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキルアミノ基、炭素数2~12のジアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が1~12のアルキルアミド基又はアリール基の炭素数が6~20のアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1~12のチオアルキル基、炭素数1~12のチオアリール基が挙げられる。Z
11
-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが好ましい。式(RI-II)中、Ar
21、Ar
22は各々独立に置換基を1~6有していてもよい炭素数1~20のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数1~12のアリール基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~12のモノアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数がそれぞれ独立に1~12のジアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が炭素数1~12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1~12のチオアルキル基、炭素数1~12のチオアリール基が挙げられる。Z21
-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。式(RI-III)中、R
31、R
32、R
33は各々独立に置換基を1~6有していても良い炭素数6~20のアリール基又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、好ましくは反応性、安定性の面から、アリール基であることが望ましい。好ましい置換基としては炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、炭素数2~12のアルキニル基、炭素数1~12のアリール基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数1~12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~12のモノアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数がそれぞれ独立に炭素数1~12のジアルキルアミノ基、アルキル基の炭素数が炭素数1~12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシ基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1~12のチオアルキル基、炭素数1~12のチオアリール基が挙げられる。Z
31
-は1価の陰イオンを表し、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
【0146】
好ましい光酸発生剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【0147】
光酸発生剤は、樹脂組成物の全固形分に対し、0.1~20質量%使用することが好ましく、0.5~18質量%使用することがより好ましく、0.5~10質量%使用することが更に好ましく、0.5~3質量%使用することが一層好ましく、0.5~1.2質量%使用することがより一層好ましい。
光酸発生剤は、1種単独で使用されても、複数種の組み合わせで使用されてもよい。複数種の組み合わせの場合には、それらの合計量が上記範囲にあることが好ましい。
また、所望の光源に対して、感光性を付与する為、増感剤と併用することも好ましい。
【0148】
<熱酸発生剤>
本発明の組成物は、熱酸発生剤を含んでもよい。
熱酸発生剤は、加熱により酸を発生し、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基を有する化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物及びベンゾオキサジン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物の架橋反応を促進させる効果がある。
【0149】
熱酸発生剤の熱分解開始温度は、50℃~270℃が好ましく、50℃~250℃がより好ましい。また、組成物を基板に塗布した後の乾燥(プリベーク:約70~140℃)時には酸を発生せず、その後の露光、現像でパターニングした後の最終加熱(キュア:約100~400℃)時に酸を発生するものを熱酸発生剤として選択すると、現像時の感度低下を抑制できるため好ましい。
熱分解開始温度は、熱酸発生剤を耐圧カプセル中5℃/分で500℃まで加熱した場合に、最も温度が低い発熱ピークのピーク温度として求められる。
熱分解開始温度を測定する際に用いられる機器としては、Q2000(TAインスツルメント社製)等が挙げられる。
【0150】
熱酸発生剤から発生する酸は強酸が好ましく、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、あるいはトリフルオロメタンスルホン酸などのハロアルキルスルホン酸などが好ましい。このような熱酸発生剤の例としては、特開2013-072935号公報の段落0055に記載のものが挙げられる。
【0151】
中でも、有機膜中の残留が少なく有機膜物性を低下させにくいという観点から、炭素数1~4のアルキルスルホン酸や炭素数1~4のハロアルキルスルホン酸を発生するものがより好ましく、メタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、メタンスルホン酸(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)ジメチルスルホニウム、メタンスルホン酸ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム、メタンスルホン酸ベンジル(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)メチルスルホニウム、メタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)メチル((2-メチルフェニル)メチル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)ジメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ベンジル(4-ヒドロキシフェニル)メチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ベンジル(4-((メトキシカルボニル)オキシ)フェニル)メチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(4-ヒドロキシフェニル)メチル((2-メチルフェニル)メチル)スルホニウム、3-(5-(((プロピルスルホニル)オキシ)イミノ)チオフェン-2(5H)-イリデン)-2-(o-トリル)プロパンニトリル、2,2-ビス(3-(メタンスルホニルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが、熱酸発生剤として好ましい。
【0152】
また、特開2013-167742号公報の段落0059に記載の化合物も熱酸発生剤として好ましい。
【0153】
熱酸発生剤の含有量は、特定樹脂100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。0.01質量部以上含有することで、架橋反応が促進されるため、有機膜の機械特性及び耐溶剤性をより向上させることができる。また、有機膜の電気絶縁性の観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。
【0154】
<塩基発生剤>
本発明の樹脂組成物は、塩基発生剤を含んでもよい。ここで、塩基発生剤とは、物理的または化学的な作用によって塩基を発生することができる化合物である。本発明の樹脂組成物にとって好ましい塩基発生剤としては、熱塩基発生剤および光塩基発生剤が挙げられる。
特に、樹脂組成物が環化樹脂の前駆体を含む場合、樹脂組成物は塩基発生剤を含むことが好ましい。樹脂組成物が熱塩基発生剤を含有することによって、例えば加熱により前駆体の環化反応を促進でき、硬化物の機械特性や耐薬品性が良好なものとなり、例えば半導体パッケージ中に含まれる再配線層用層間絶縁膜としての性能が良好となる。
塩基発生剤としては、イオン型塩基発生剤でもよく、非イオン型塩基発生剤でもよい。塩基発生剤から発生する塩基としては、例えば、2級アミン、3級アミンが挙げられる。
本発明に係る塩基発生剤について特に制限はなく、公知の塩基発生剤を用いることができる。公知の塩基発生剤としては、例えば、カルバモイルオキシム化合物、カルバモイルヒドロキシルアミン化合物、カルバミン酸化合物、ホルムアミド化合物、アセトアミド化合物、カルバメート化合物、ベンジルカルバメート化合物、ニトロベンジルカルバメート化合物、スルホンアミド化合物、イミダゾール誘導体化合物、アミンイミド化合物、ピリジン誘導体化合物、α-アミノアセトフェノン誘導体化合物、4級アンモニウム塩誘導体化合物、ピリジニウム塩、α-ラクトン環誘導体化合物、アミンイミド化合物、フタルイミド誘導体化合物、アシルオキシイミノ化合物、などを用いることができる。
非イオン型塩基発生剤の具体的な化合物としては、式(B1)、式(B2)、又は式(B3)で表される化合物が挙げられる。
【化28】
【0155】
式(B1)及び式(B2)中、Rb1、Rb2及びRb3はそれぞれ独立に、第三級アミン構造を有しない有機基、ハロゲン原子又は水素原子である。ただし、Rb1及びRb2が同時に水素原子となることはない。また、Rb1、Rb2及びRb3はいずれもカルボキシ基を有することはない。なお、本明細書で第三級アミン構造とは、3価の窒素原子の3つの結合手がいずれも炭化水素系の炭素原子と共有結合している構造を指す。したがって、結合した炭素原子がカルボニル基をなす炭素原子の場合、つまり窒素原子とともにアミド基を形成する場合はこの限りではない。
【0156】
式(B1)、(B2)中、Rb1、Rb2及びRb3は、これらのうち少なくとも1つが環状構造を含むことが好ましく、少なくとも2つが環状構造を含むことがより好ましい。環状構造としては、単環及び縮合環のいずれであってもよく、単環又は単環が2つ縮合した縮合環が好ましい。単環は、5員環又は6員環が好ましく、6員環がより好ましい。単環は、シクロヘキサン環及びベンゼン環が好ましく、シクロヘキサン環がより好ましい。
【0157】
より具体的にRb1及びRb2は、水素原子、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、又はアリールアルキル基(炭素数7~25が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であることが好ましい。これらの基は、本発明の効果を奏する範囲で置換基を有していてもよい。Rb1とRb2とは互いに結合して環を形成していてもよい。形成される環としては、4~7員の含窒素複素環が好ましい。Rb1及びRb2は特に、置換基を有してもよい直鎖、分岐、又は環状のアルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)であることが好ましく、置換基を有してもよいシクロアルキル基(炭素数3~24が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)であることがより好ましく、置換基を有してもよいシクロヘキシル基が更に好ましい。
【0158】
Rb3としては、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)、アリールアルケニル基(炭素数8~24が好ましく、8~20がより好ましく、8~16が更に好ましい)、アルコキシル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリールオキシ基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、又はアリールアルキルオキシ基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)が挙げられる。中でも、シクロアルキル基(炭素数3~24が好ましく、3~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリールアルケニル基、アリールアルキルオキシ基が好ましい。Rb3は更に本発明の効果を奏する範囲で置換基を有していてもよい。
【0159】
式(B1)で表される化合物は、下記式(B1-1)又は下記式(B1-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化29】
【0160】
式中、Rb11及びRb12、並びに、Rb31及びRb32は、それぞれ、式(B1)におけるRb1及びRb2と同じである。
Rb13はアルキル基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、本発明の効果を奏する範囲で置換基を有していてもよい。中でも、Rb13はアリールアルキル基が好ましい。
【0161】
Rb33及びRb34は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~8がより好ましく、1~3が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~8がより好ましく、2~3が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が更に好ましい)であり、水素原子が好ましい。
【0162】
Rb35は、アルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~10がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、アリール基が好ましい。
【0163】
式(B1-1)で表される化合物は、式(B1-1a)で表される化合物もまた好ましい。
【化30】
【0164】
Rb11及びRb12は式(B1-1)におけるRb11及びRb12と同義である。
Rb15及びRb16は水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が更に好ましい)であり、水素原子又はメチル基が好ましい。
Rb17はアルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~10がより好ましく、3~8が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~12が更に好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~12が更に好ましい)であり、中でもアリール基が好ましい。
【0165】
【0166】
式(B3)において、Lは、隣接する酸素原子と炭素原子を連結する連結鎖の経路上に飽和炭化水素基を有する2価の炭化水素基であって、連結鎖の経路上の原子数が3以上である炭化水素基を表す。また、RN1およびRN2は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。
【0167】
本明細書において、「連結鎖」とは、連結対象の2つの原子または原子群の間を結ぶ経路上の原子鎖のうち、これらの連結対象を最短(最小原子数)で結ぶものをいう。例えば、下記式で表される化合物において、Lは、フェニレンエチレン基から構成され、飽和炭化水素基としてエチレン基を有し、連結鎖は4つの炭素原子から構成されており、連結鎖の経路上の原子数(つまり、連結鎖を構成する原子の数であり、以下、「連結鎖長」あるいは「連結鎖の長さ」ともいう。)は4である。
【化32】
【0168】
式(B3)におけるL中の炭素数(連結鎖中の炭素原子以外の炭素原子も含む)は、3~24であることが好ましい。上限は、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましく、8以下であることが特に好ましい。下限は、4以上であることがより好ましい。上記分子内環化反応を速やかに進行させる観点から、Lの連結鎖長の上限は、12以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましく、5以下であることが特に好ましい。特に、Lの連結鎖長は、4または5であることが好ましく、4であることが最も好ましい。塩基発生剤の具体的な好ましい化合物としては、例えば、国際公開第2020/066416号の段落番号0102~0168に記載の化合物、国際公開第2018/038002号の段落番号0143~0177に記載の化合物も挙げられる。
【0169】
また、塩基発生剤は下記式(N1)で表される化合物を含むことも好ましい。
【化33】
【0170】
式(N1)中、RN1およびRN2はそれぞれ独立に1価の有機基を表し、RC1は水素原子または保護基を表し、Lは2価の連結基を表す。
【0171】
Lは2価の連結基であり、2価の有機基であることが好ましい。連結基の連結鎖長は1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。上限としては、12以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。連結鎖長とは、式中の2つのカルボニル基の間において最短の道程となる原子配列に存在する原子の数である。
【0172】
式(N1)中、RN1およびRN2はそれぞれ独立に1価の有機基(炭素数1~24が好ましく、2~18がより好ましく、3~12がさらに好ましい)を表し、炭化水素基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~10がさらに好ましい)であることが好ましく、具体的には、脂肪族炭化水素基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~10がさらに好ましい)または芳香族炭化水素基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)を挙げることができ、脂肪族炭化水素基が好ましい。RN1およびRN2として、脂肪族炭化水素基を用いると、発生する塩基の塩基性が高く好ましい。なお、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、また、脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基が脂肪族炭化水素鎖中や芳香環中、置換基中に酸素原子を有していてもよい。特に、脂肪族炭化水素基が炭化水素鎖中に酸素原子を有している態様が例示される。
【0173】
RN1およびRN2を構成する脂肪族炭化水素基としては、直鎖または分岐の鎖状アルキル基、環状アルキル基、鎖状アルキル基と環状アルキル基の組合せに係る基、酸素原子を鎖中に有するアルキル基が挙げられる。直鎖または分岐の鎖状アルキル基は、炭素数1~24のものが好ましく、2~18がより好ましく、3~12がさらに好ましい。直鎖または分岐の鎖状アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ターシャリーペンチル基、イソヘキシル基等が挙げられる。
環状アルキル基は、炭素数3~12のものが好ましく、3~6がより好ましい。環状アルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
鎖状アルキル基と環状アルキル基の組合せに係る基は、炭素数4~24のものが好ましく、4~18がより好ましく、4~12がさらに好ましい。鎖状アルキル基と環状アルキル基の組合せに係る基は、例えば、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基、メチルシクロヘキシルメチル基、エチルシクロヘキシルエチル基等が挙げられる。
酸素原子を鎖中に有するアルキル基は、炭素数2~12のものが好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。酸素原子を鎖中に有するアルキル基は、鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。
なかでも、後述する分解生成塩基の沸点を高める観点で、RN1およびRN2は炭素数5~12のアルキル基が好ましい。ただし、金属(例えば銅)の層と積層する際の密着性を重視する処方においては、環状のアルキル基を有する基や炭素数1~8のアルキル基であることが好ましい。
【0174】
RN1およびRN2は互いに連結して環状構造を形成していてもよい。環状構造を形成するにあたっては、酸素原子等を鎖中に有していてもよい。また、RN1およびRN2が形成する環状構造は、単環であっても、縮合環であってもよいが、単環が好ましい。形成される環状構造としては、式(N1)中の窒素原子を含有する5員環または6員環が好ましく、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピロリン環、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、ピぺリジン環、ピペラジン環、モルホリン環などが挙げられ、ピロリン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環が好ましく挙げられる。
【0175】
RC1は水素原子または保護基を表し、水素原子が好ましい。
【0176】
保護基としては、酸または塩基の作用により分解する保護基が好ましく、酸で分解する保護基が好ましく挙げられる。
【0177】
保護基の具体例としては、鎖状もしくは環状のアルキル基または鎖中に酸素原子を有する鎖状もしくは環状のアルキル基が挙げられる。鎖状もしくは環状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。鎖中に酸素原子を有する鎖状のアルキル基としては、具体的にはアルキルオキシアルキル基が挙げられ、さらに具体的には、メチルオキシメチル(MOM)基、エチルオキシエチル(EE)基等が挙げられる。鎖中に酸素原子を有する環状のアルキル基としては、エポキシ基、グリシジル基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル(THP)基等が挙げられる。
【0178】
Lを構成する2価の連結基としては、特に定めるものではないが、炭化水素基が好ましく、脂肪族炭化水素基がより好ましい。炭化水素基は、置換基を有していてもよく、また、炭化水素鎖の中に炭素原子以外の種類の原子を有していてもよい。より具体的には、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の炭化水素連結基であることが好ましく、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、または鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基と2価の芳香族炭化水素基の組み合わせに係る基がより好ましく、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基がさらに好ましい。これらの基は、酸素原子を有していないほうが好ましい。
2価の炭化水素連結基は、炭素数1~24のものが好ましく、2~12がより好ましく、2~6がさらに好ましい。2価の脂肪族炭化水素基は、炭素数1~12のものが好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。2価の芳香族炭化水素基は、炭素数6~22のものが好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい。2価の脂肪族炭化水素基と2価の芳香族炭化水素基の組み合わせに係る基(例えば、アリーレンアルキル基)は、炭素数7~22のものが好ましく、7~18がより好ましく、7~10がさらに好ましい。
【0179】
連結基Lとしては、具体的に、直鎖または分岐の鎖状アルキレン基、環状アルキレン基、鎖状アルキレン基と環状アルキレン基の組み合わせに係る基、酸素原子を鎖中に有しているアルキレン基、直鎖または分岐の鎖状のアルケニレン基、環状のアルケニレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基が好ましい。
直鎖または分岐の鎖状アルキレン基は、炭素数1~12のものが好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。
環状アルキレン基は、炭素数3~12のものが好ましく、3~6がより好ましい。
鎖状アルキレン基と環状アルキレン基の組み合わせに係る基は、炭素数4~24のものが好ましく、4~12がより好ましく、4~6がさらに好ましい。
酸素原子を鎖中に有するアルキレン基は、鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。酸素原子を鎖中に有するアルキレン基は、炭素数1~12のものが好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
【0180】
直鎖または分岐の鎖状のアルケニレン基は、炭素数2~12のものが好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい。直鎖または分岐の鎖状のアルケニレン基は、C=C結合の数は1~10のものが好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
環状のアルケニレン基は、炭素数3~12のものが好ましく、3~6がより好ましい。環状のアルケニレン基は、C=C結合の数は1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
アリーレン基は、炭素数6~22のものが好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
アリーレンアルキレン基は、炭素数7~23のものが好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい。
中でも、鎖状アルキレン基、環状アルキレン基、酸素原子を鎖中に有するアルキレン基、鎖状のアルケニレン基、アリーレン基、アリーレンアルキレン基が好ましく、1,2-エチレン基、プロパンジイル基(特に1,3-プロパンジイル基)、シクロヘキサンジイル基(特に1,2-シクロヘキサンジイル基)、ビニレン基(特にシスビニレン基)、フェニレン基(1,2-フェニレン基)、フェニレンメチレン基(特に1,2-フェニレンメチレン基)、エチレンオキシエチレン基(特に1,2-エチレンオキシ-1,2-エチレン基)がより好ましい。
【0181】
塩基発生剤としては、下記の例が挙げられるが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
【0182】
【0183】
非イオン型塩基発生剤の分子量は、800以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。下限としては、100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、300以上であることが更に好ましい。
【0184】
イオン型塩基発生剤の具体的な好ましい化合物としては、例えば、国際公開第2018/038002号の段落番号0148~0163に記載の化合物も挙げられる。
【0185】
アンモニウム塩の具体例としては、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化35】
【0186】
イミニウム塩の具体例としては、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化36】
【0187】
本発明の樹脂組成物が塩基発生剤を含む場合、塩基発生剤の含有量は、本発明の樹脂組成物中の樹脂100質量部に対し、0.1~50質量部が好ましい。下限は、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。上限は、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が更に好ましく、10質量部以下が一層好ましく、5質量部以下であってもよく、4質量部以下であってもよい。
塩基発生剤は、1種又は2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0188】
<重合性化合物>
本発明の樹脂組成物は、重合性化合物を含むことが好ましい。
重合性化合物としては、ラジカル架橋剤、又は、他の架橋剤が挙げられる。
【0189】
〔ラジカル架橋剤〕
本発明の樹脂組成物は、ラジカル架橋剤を含むことが好ましい。
ラジカル架橋剤は、ラジカル重合性基を有する化合物である。ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合を含む基が好ましい。上記エチレン性不飽和結合を含む基としては、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基などのエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。
これらの中でも、上記エチレン性不飽和結合を含む基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルフェニル基が好ましく、反応性の観点からは、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
【0190】
ラジカル架橋剤は、エチレン性不飽和結合を1個以上有する化合物であることが好ましいが、2個以上有する化合物であることがより好ましい。ラジカル架橋剤は、エチレン性不飽和結合を3個以上有していてもよい。
上記エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物としては、エチレン性不飽和結合を2~15個有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を2~10個有する化合物がより好ましく、2~6個有する化合物が更に好ましい。
また、得られるパターン(硬化物)の膜強度の観点からは、本発明の樹脂組成物は、エチレン性不飽和結合を2個有する化合物と、上記エチレン性不飽和結合を3個以上有する化合物とを含むことも好ましい。
【0191】
ラジカル架橋剤の分子量は、2,000以下が好ましく、1,500以下がより好ましく、900以下が更に好ましい。ラジカル架橋剤の分子量の下限は、100以上が好ましい。
【0192】
ラジカル架橋剤の具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類である。また、ヒドロキシ基やアミノ基、スルファニル基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類又はエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲノ基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0113~0122の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0193】
また、ラジカル架橋剤は、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後、(メタ)アクリレート化した化合物、特公昭48-041708号公報、特公昭50-006034号公報、特開昭51-037193号各公報に記載されているようなウレタン(メタ)アクリレート類、特開昭48-064183号、特公昭49-043191号、特公昭52-030490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。また、特開2008-292970号公報の段落0254~0257に記載の化合物も好適である。また、多官能カルボン酸にグリシジル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基とエチレン性不飽和結合を有する化合物を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレートなども挙げることができる。
【0194】
また、上述以外の好ましいラジカル架橋剤として、特開2010-160418号公報、特開2010-129825号公報、特許第4364216号公報等に記載される、フルオレン環を有し、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物や、カルド樹脂も使用することが可能である。
【0195】
更に、その他の例としては、特公昭46-043946号公報、特公平01-040337号公報、特公平01-040336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平02-025493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、特開昭61-022048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含む化合物を用いることもできる。更に日本接着協会誌 vol.20、No.7、300~308ページ(1984年)に光重合性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0196】
上記のほか、特開2015-034964号公報の段落0048~0051に記載の化合物、国際公開第2015/199219号の段落0087~0131に記載の化合物も好ましく用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0197】
また、特開平10-062986号公報において式(1)及び式(2)としてその具体例と共に記載の、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も、ラジカル架橋剤として用いることができる。
【0198】
更に、特開2015-187211号公報の段落0104~0131に記載の化合物もラジカル架橋剤として用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0199】
ラジカル架橋剤としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D-320;日本化薬(株)製、A-TMMT:新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A-DPH;新中村化学工業社製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基又はプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0200】
ラジカル架橋剤の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、エチレンオキシ鎖を4個有する2官能メタクリレートであるサートマー社製のSR-209、231、239、日本化薬(株)製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330、ウレタンオリゴマーUAS-10、UAB-140(日本製紙社製)、NKエステルM-40G、NKエステル4G、NKエステルM-9300、NKエステルA-9300、UA-7200(新中村化学工業社製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社化学社製)、ブレンマーPME400(日油(株)製)などが挙げられる。
【0201】
ラジカル架橋剤としては、特公昭48-041708号公報、特開昭51-037193号公報、特公平02-032293号公報、特公平02-016765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-049860号公報、特公昭56-017654号公報、特公昭62-039417号公報、特公昭62-039418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、ラジカル架橋剤として、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平01-105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する化合物を用いることもできる。
【0202】
ラジカル架橋剤は、カルボキシ基、リン酸基等の酸基を有するラジカル架橋剤であってもよい。酸基を有するラジカル架橋剤は、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル架橋剤がより好ましい。特に好ましくは、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシ基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル架橋剤において、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールである化合物である。市販品としては、例えば、東亞合成(株)製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M-510、M-520などが挙げられる。
【0203】
酸基を有するラジカル架橋剤の好ましい酸価は、0.1~300mgKOH/gであり、特に好ましくは1~100mgKOH/gである。ラジカル架橋剤の酸価が上記範囲であれば、製造上の取扱性に優れ、更には、現像性に優れる。また、重合性が良好である。上記酸価は、JIS K 0070:1992の記載に準拠して測定される。
【0204】
樹脂組成物は、パターンの解像性と膜の伸縮性の観点から、2官能のメタアクリレート又はアクリレートを用いることが好ましい。
具体的な化合物としては、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、PEG(ポリエチレングリコール)200ジアクリレート、PEG200ジメタクリレート、PEG600ジアクリレート、PEG600ジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6ヘキサンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジメタクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキシド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジメタリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキシド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジメタリレート、2-ヒドロキシー3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸変性ジメタクリレート、その他ウレタン結合を有する2官能アクリレート、ウレタン結合を有する2官能メタクリレートを使用することができる。これらは必要に応じ、2種以上を混合し使用することができる。
なお、例えばPEG200ジアクリレートとは、ポリエチレングリコールジアクリレートであって、ポリエチレングリコール鎖の式量が200程度のものをいう。
本発明の樹脂組成物は、パターン(硬化物)の弾性率制御に伴う反り抑制の観点から、ラジカル架橋剤として、単官能ラジカル架橋剤を好ましく用いることができる。単官能ラジカル架橋剤としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル等が好ましく用いられる。単官能ラジカル架橋剤としては、露光前の揮発を抑制するため、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。
その他、2官能以上のラジカル架橋剤としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物類が挙げられる。
【0205】
ラジカル架橋剤を含有する場合、その含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対して、0質量%超60質量%以下であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
【0206】
ラジカル架橋剤は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を併用する場合にはその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0207】
〔他の架橋剤〕
本発明の樹脂組成物は、上述したラジカル架橋剤とは異なる、他の架橋剤を含むことも好ましい。
本発明において、他の架橋剤とは、上述したラジカル架橋剤以外の架橋剤をいい、上述の光酸発生剤、又は、光塩基発生剤の感光により、組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が促進される基を分子内に複数個有する化合物であることが好ましく、組成物中の他の化合物又はその反応生成物との間で共有結合を形成する反応が酸又は塩基の作用によって促進される基を分子内に複数個有する化合物が好ましい。
上記酸又は塩基は、露光工程において、光酸発生剤又は光塩基発生剤から発生する酸又は塩基であることが好ましい。
他の架橋剤としては、アシルオキシメチル基、メチロール基及びアルコキシメチル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有する化合物が好ましく、アシルオキシメチル基、メチロール基及びアルコキシメチル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基が窒素原子に直接結合した構造を有する化合物がより好ましい。
他の架橋剤としては、例えば、メラミン、グリコールウリル、尿素、アルキレン尿素、ベンゾグアナミンなどのアミノ基含有化合物にホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドとアルコールを反応させ、上記アミノ基の水素原子をアシルオキシメチル基、メチロール基又はアルコキシメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。これらの化合物の製造方法は特に限定されず、上記方法により製造された化合物と同様の構造を有する化合物であればよい。また、これらの化合物のメチロール基同士が自己縮合してなるオリゴマーであってもよい。
上記のアミノ基含有化合物として、メラミンを用いた架橋剤をメラミン系架橋剤、グリコールウリル、尿素又はアルキレン尿素を用いた架橋剤を尿素系架橋剤、アルキレン尿素を用いた架橋剤をアルキレン尿素系架橋剤、ベンゾグアナミンを用いた架橋剤をベンゾグアナミン系架橋剤という。
これらの中でも、本発明の樹脂組成物は、尿素系架橋剤及びメラミン系架橋剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、後述するグリコールウリル系架橋剤及びメラミン系架橋剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。
【0208】
本発明におけるアルコキシメチル基及びアシルオキシメチル基の少なくとも1つを含有する化合物としては、アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基が、直接芳香族基や下記ウレア構造の窒素原子上に、又は、トリアジン上に置換した化合物を構造例として挙げることができる。
上記化合物が有するアルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基は、炭素数2~5が好ましく、炭素数2又は3が好ましく、炭素数2がより好ましい。
上記化合物が有するアルコキシメチル基及びアシルオキシメチル基の総数は1~10が好ましく、より好ましくは2~8、特に好ましくは3~6である。
上記化合物の分子量は好ましくは1500以下であり、180~1200が好ましい。
【0209】
【0210】
R100は、アルキル基又はアシル基を表す。
R101及びR102は、それぞれ独立に、一価の有機基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。
【0211】
アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基が直接芳香族基に置換した化合物としては、例えば下記一般式の様な化合物を挙げることができる。
【0212】
【0213】
式中、Xは単結合又は2価の有機基を示し、個々のR104はそれぞれ独立にアルキル基又はアシル基を示し、R103は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、又は、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基(例えば、酸の作用により脱離する基、-C(R4)2COOR5で表される基(R4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、R5は酸の作用により脱離する基を表す。))を示す。
R105は各々独立にアルキル基又はアルケニル基を示し、a、b及びcは各々独立に1~3であり、dは0~4であり、eは0~3であり、fは0~3であり、a+dは5以下であり、b+eは4以下であり、c+fは4以下である。
酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基、酸の作用により脱離する基、-C(R4)2COOR5で表される基におけるR5については、例えば、-C(R36)(R37)(R38)、-C(R36)(R37)(OR39)、-C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36~R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
上記アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましい。
上記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。
上記シクロアルキル基としては、炭素数3~12のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3~8のシクロアルキル基がより好ましい。
上記シクロアルキル基は単環構造であってもよいし、縮合環等の多環構造であってもよい。
上記アリール基は炭素数6~30の芳香族炭化水素基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
上記アラルキル基としては、炭素数7~20のアラルキル基が好ましく、炭素数7~16のアラルキル基がより好ましい。
上記アラルキル基はアルキル基により置換されたアリール基を意図しており、これらのアルキル基及びアリール基の好ましい態様は、上述のアルキル基及びアリール基の好ましい態様と同様である。
上記アルケニル基は炭素数3~20のアルケニル基が好ましく、炭素数3~16のアルケニル基がより好ましい。
また、これらの基は本発明の効果が得られる範囲内で、公知の置換基を更に有していてもよい。
【0214】
R01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0215】
酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基、または酸の作用により脱離する基としては好ましくは、第3級アルキルエステル基、アセタール基、クミルエステル基、エノールエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基、アセタール基である。
【0216】
アルコキシメチル基を有する化合物としては具体的に以下の構造を挙げることができる。アシルオキシメチル基を有する化合物は下記化合物のアルコキシメチル基をアシルオキシメチル基に変更した化合物を挙げることができる。アルコキシメチル基又はアシルオキシメチルを分子内に有する化合物としては以下の様な化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0217】
【0218】
【0219】
アルコキシメチル基及びアシルオキシメチル基の少なくとも1つを含有する化合物は、市販のものを用いても、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
耐熱性の観点で、アルコキシメチル基又はアシルオキシメチル基が、直接芳香環やトリアジン環上に置換した化合物が好ましい。
【0220】
メラミン系架橋剤の具体例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシブチルメラミンなどが挙げられる。
【0221】
尿素系架橋剤の具体例としては、例えば、モノヒドロキシメチル化グリコールウリル、ジヒドロキシメチル化グリコールウリル、トリヒドロキシメチル化グリコールウリル、テトラヒドロキシメチル化グリコールウリル、モノメトキシメチル化グリコールウリル,ジメトキシメチル化グリコールウリル、トリメトキシメチル化グリコールウリル、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、モノエトキシメチル化グリコールウリル、ジエトキシメチル化グリコールウリル、トリエトキシメチル化グリコールウリル、テトラエトキシメチル化グリコールウリル、モノプロポキシメチル化グリコールウリル、ジプロポキシメチル化グリコールウリル、トリプロポキシメチル化グリコールウリル、テトラプロポキシメチル化グリコールウリル、モノブトキシメチル化グリコールウリル、ジブトキシメチル化グリコールウリル、トリブトキシメチル化グリコールウリル、又は、テトラブトキシメチル化グリコールウリルなどのグリコールウリル系架橋剤;
ビスメトキシメチル尿素、ビスエトキシメチル尿素、ビスプロポキシメチル尿素、ビスブトキシメチル尿素等の尿素系架橋剤、
モノヒドロキシメチル化エチレン尿素又はジヒドロキシメチル化エチレン尿素、モノメトキシメチル化エチレン尿素、ジメトキシメチル化エチレン尿素、モノエトキシメチル化エチレン尿素、ジエトキシメチル化エチレン尿素、モノプロポキシメチル化エチレン尿素、ジプロポキシメチル化エチレン尿素、モノブトキシメチル化エチレン尿素、又は、ジブトキシメチル化エチレン尿素などのエチレン尿素系架橋剤、
モノヒドロキシメチル化プロピレン尿素、ジヒドロキシメチル化プロピレン尿素、モノメトキシメチル化プロピレン尿素、ジメトキシメチル化プロピレン尿素、モノジエトキシメチル化プロピレン尿素、ジエトキシメチル化プロピレン尿素、モノプロポキシメチル化プロピレン尿素、ジプロポキシメチル化プロピレン尿素、モノブトキシメチル化プロピレン尿素、又は、ジブトキシメチル化プロピレン尿素などのプロピレン尿素系架橋剤、
1,3-ジ(メトキシメチル)4,5-ジヒドロキシ-2-イミダゾリジノン、1,3-ジ(メトキシメチル)-4,5-ジメトキシ-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0222】
ベンゾグアナミン系架橋剤の具体例としては、例えばモノヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、ジヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、トリヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラヒドロキシメチル化ベンゾグアナミン、モノメトキシメチル化ベンゾグアナミン、ジメトキシメチル化ベンゾグアナミン、トリメトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラメトキシメチル化ベンゾグアナミン、モノエトキシメチル化ベンゾグアナミン、ジエトキシメチル化ベンゾグアナミン、トリエトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラエトキシメチル化ベンゾグアナミン、モノプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、ジプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、トリプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラプロポキシメチル化ベンゾグアナミン、モノブトキシメチル化ベンゾグアナミン、ジブトキシメチル化ベンゾグアナミン、トリブトキシメチル化ベンゾグアナミン、テトラブトキシメチル化ベンゾグアナミンなどが挙げられる。
【0223】
その他、メチロール基及びアルコキシメチル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有する化合物としては、芳香環(好ましくはベンゼン環)にメチロール基及びアルコキシメチル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基が直接結合した化合物も好適に用いられる。
このような化合物の具体例としては、ベンゼンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)クレゾール、ビス(ヒドロキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、ヒドロキシメチル安息香酸ヒドロキシメチルフェニル、ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ベンゼン、ビス(メトキシメチル)クレゾール、ビス(メトキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(メトキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(メトキシメチル)ベンゾフェノン、メトキシメチル安息香酸メトキシメチルフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(メトキシメチル)ビフェニル、4,4’,4’’-エチリデントリス[2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール]、5,5’-[2,2,2‐トリフルオロ‐1‐(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2‐ヒドロキシ‐1,3‐ベンゼンジメタノール]、3,3’,5,5’-テトラキス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジオール等が挙げられる。
【0224】
他の架橋剤としては市販品を用いてもよく、好適な市販品としては、46DMOC、46DMOEP(以上、旭有機材工業社製)、DML-PC、DML-PEP、DML-OC、DML-OEP、DML-34X、DML-PTBP、DML-PCHP、DML-OCHP、DML-PFP、DML-PSBP、DML-POP、DML-MBOC、DML-MBPC、DML-MTrisPC、DML-BisOC-Z、DML-BisOCHP-Z、DML-BPC、DMLBisOC-P、DMOM-PC、DMOM-PTBP、DMOM-MBPC、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPE、TML-BPA、TML-BPAF、TML-BPAP、TMOM-BP、TMOM-BPE、TMOM-BPA、TMOM-BPAF、TMOM-BPAP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、本州化学工業社製)、ニカラック(登録商標、以下同様)MX-290、ニカラックMX-280、ニカラックMX-270、ニカラックMX-279、ニカラックMW-100LM、ニカラックMX-750LM(以上、三和ケミカル社製)などが挙げられる。
【0225】
また、本発明の樹脂組成物は、他の架橋剤として、エポキシ化合物、オキセタン化合物、及び、ベンゾオキサジン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことも好ましい。
【0226】
-エポキシ化合物(エポキシ基を有する化合物)-
エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物であることが好ましい。エポキシ基は、200℃以下で架橋反応し、かつ、架橋に由来する脱水反応が起こらないため膜収縮が起きにくい。このため、エポキシ化合物を含有することは、本発明の樹脂組成物の低温硬化及び反りの抑制に効果的である。
【0227】
エポキシ化合物は、ポリエチレンオキサイド基を含有することが好ましい。これにより、より弾性率が低下し、また反りを抑制することができる。ポリエチレンオキサイド基は、エチレンオキサイドの繰返し単位数が2以上のものを意味し、繰返し単位数が2~15であることが好ましい。
【0228】
エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のアルキレングリコール型エポキシ樹脂又は多価アルコール炭化水素型エポキシ樹脂;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂;ポリメチル(グリシジロキシプロピル)シロキサン等のエポキシ基含有シリコーンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、エピクロン(登録商標)850-S、エピクロン(登録商標)HP-4032、エピクロン(登録商標)HP-7200、エピクロン(登録商標)HP-820、エピクロン(登録商標)HP-4700、エピクロン(登録商標)HP-4770、エピクロン(登録商標)EXA-830LVP、エピクロン(登録商標)EXA-8183、エピクロン(登録商標)EXA-8169、エピクロン(登録商標)N-660、エピクロン(登録商標)N-665-EXP-S、エピクロン(登録商標)N-740(以上商品名、DIC(株)製)、リカレジン(登録商標)BEO-20E、リカレジン(登録商標)BEO-60E、リカレジン(登録商標)HBE-100、リカレジン(登録商標)DME-100、リカレジン(登録商標)L-200(商品名、新日本理化(株))、EP-4003S、EP-4000S、EP-4088S、EP-3950S(以上商品名、(株)ADEKA製)、セロキサイド(登録商標)2021P、セロキサイド(登録商標)2081、セロキサイド(登録商標)2000、EHPE3150、エポリード(登録商標)GT401、エポリード(登録商標)PB4700、エポリード(登録商標)PB3600(以上商品名、(株)ダイセル製)、NC-3000、NC-3000-L、NC-3000-H、NC-3000-FH-75M、NC-3100、CER-3000-L、NC-2000-L、XD-1000、NC-7000L、NC-7300L、EPPN-501H、EPPN-501HY、EPPN-502H、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、CER-1020、EPPN-201、BREN-S、BREN-10S(以上商品名、日本化薬(株)製)などが挙げられる。また以下の化合物も好適に用いられる。
【0229】
【0230】
式中nは1~5の整数、mは1~20の整数である。
【0231】
上記構造の中でも、耐熱性と伸度向上を両立する点から、nは1~2、mは3~7であることが好ましい。
【0232】
-オキセタン化合物(オキセタニル基を有する化合物)-
オキセタン化合物としては、一分子中にオキセタン環を2つ以上有する化合物、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルメチル)オキセタン、1,4-ベンゼンジカルボン酸-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル等を挙げることができる。具体的な例としては、東亞合成(株)製のアロンオキセタンシリーズ(例えば、OXT-121、OXT-221)が好適に使用することができ、これらは単独で、又は2種以上混合してもよい。
【0233】
-ベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサゾリル基を有する化合物)-
ベンゾオキサジン化合物は、開環付加反応に由来する架橋反応のため、硬化時に脱ガスが発生せず、更に熱収縮を小さくして反りの発生が抑えられることから好ましい。
【0234】
ベンゾオキサジン化合物の好ましい例としては、P-d型ベンゾオキサジン、F-a型ベンゾオキサジン(以上、商品名、四国化成工業社製)、ポリヒドロキシスチレン樹脂のベンゾオキサジン付加物、フェノールノボラック型ジヒドロベンゾオキサジン化合物が挙げられる。これらは単独で用いるか、又は2種以上混合してもよい。
【0235】
他の架橋剤の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、0.1~20質量%であることがより好ましく、0.5~15質量%であることが更に好ましく、1.0~10質量%であることが特に好ましい。他の架橋剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。他の架橋剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0236】
<金属接着性改良剤>
本発明の樹脂組成物は、電極や配線などに用いられる金属材料との接着性を向上させるための金属接着性改良剤を含んでいることが好ましい。金属接着性改良剤としては、アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤、アルミニウム系接着助剤、チタン系接着助剤、スルホンアミド構造を有する化合物及びチオウレア構造を有する化合物、リン酸誘導体化合物、βケトエステル化合物、アミノ化合物等が挙げられる。
【0237】
〔シランカップリング剤〕
シランカップリング剤としては、例えば、国際公開第2015/199219号の段落0167に記載の化合物、特開2014-191002号公報の段落0062~0073に記載の化合物、国際公開第2011/080992号の段落0063~0071に記載の化合物、特開2014-191252号公報の段落0060~0061に記載の化合物、特開2014-041264号公報の段落0045~0052に記載の化合物、国際公開第2014/097594号の段落0055に記載の化合物、特開2018-173573の段落0067~0078に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2011-128358号公報の段落0050~0058に記載のように異なる2種以上のシランカップリング剤を用いることも好ましい。また、シランカップリング剤は、下記化合物を用いることも好ましい。以下の式中、Meはメチル基を、Etはエチル基を表す。
【0238】
【0239】
他のシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0240】
〔アルミニウム系接着助剤〕
アルミニウム系接着助剤としては、例えば、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等を挙げることができる。
【0241】
また、その他の金属接着性改良剤としては、特開2014-186186号公報の段落0046~0049に記載の化合物、特開2013-072935号公報の段落0032~0043に記載のスルフィド系化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0242】
金属接着性改良剤の含有量は特定樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~30質量部であり、より好ましくは0.1~10質量部の範囲であり、更に好ましくは0.5~5質量部の範囲である。上記下限値以上とすることでパターンと金属層との接着性が良好となり、上記上限値以下とすることでパターンの耐熱性、機械特性が良好となる。金属接着性改良剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上用いる場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0243】
<マイグレーション抑制剤>
本発明の樹脂組成物は、マイグレーション抑制剤を更に含むことが好ましい。マイグレーション抑制剤を含むことにより、金属層(金属配線)由来の金属イオンが膜内へ移動することを効果的に抑制可能となる。
【0244】
マイグレーション抑制剤としては、特に制限はないが、複素環(ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H-ピラン環及び6H-ピラン環、トリアジン環)を有する化合物、チオ尿素類及びスルファニル基を有する化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体系化合物、ヒドラジド誘導体系化合物が挙げられる。特に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール系化合物、1H-テトラゾール、5-フェニルテトラゾール、5-アミノ―1H-テトラゾール等のテトラゾール系化合物が好ましく使用できる。
【0245】
又はハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉するイオントラップ剤を使用することもできる。
【0246】
その他のマイグレーション抑制剤としては、特開2013-015701号公報の段落0094に記載の防錆剤、特開2009-283711号公報の段落0073~0076に記載の化合物、特開2011-059656号公報の段落0052に記載の化合物、特開2012-194520号公報の段落0114、0116及び0118に記載の化合物、国際公開第2015/199219号の段落0166に記載の化合物などを使用することができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0247】
マイグレーション抑制剤の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。
【0248】
【0249】
本発明の樹脂組成物がマイグレーション抑制剤を有する場合、マイグレーション抑制剤の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることが更に好ましい。
【0250】
マイグレーション抑制剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。マイグレーション抑制剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0251】
<重合禁止剤>
本発明の樹脂組成物は、重合禁止剤を含むことが好ましい。重合禁止剤としてはフェノール系化合物、キノン系化合物、アミノ系化合物、N-オキシルフリーラジカル化合物系化合物、ニトロ系化合物、ニトロソ系化合物、ヘテロ芳香環系化合物、金属化合物などが挙げられる。
【0252】
重合禁止剤の具体的な化合物としては、p-ヒドロキノン、o-ヒドロキノン、o-メトキシフェノール、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、p-tert-ブチルカテコール、1,4-ベンゾキノン、ジフェニル-p-ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、N-ニトロソジフェニルアミン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソ-N-(1-ナフチル)ヒドロキシアミンアンモニウム塩、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-tert-ブチル)フェニルメタン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、4‐ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルフリーラジカル、フェノチアジン、フェノキサジン、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル、ジブチルジチオカーバネート銅(II)、ニトロベンゼン、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、などが好適に用いられる。また、特開2015-127817号公報の段落0060に記載の重合禁止剤、及び、国際公開第2015/125469号の段落0031~0046に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0253】
本発明の樹脂組成物が重合禁止剤を有する場合、重合禁止剤の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%であることが好ましく、0.02~15質量%であることがより好ましく、0.05~10質量%であることが更に好ましい。
【0254】
重合禁止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。重合禁止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0255】
<酸捕捉剤>
本発明の樹脂組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、酸捕捉剤を含有することが好ましい。ここで酸捕捉剤とは、系中に存在することで発生酸を捕捉することができる化合物を指し、酸性度が低くpKaの高い化合物であることが好ましい。酸捕捉剤としては、アミノ基を有する化合物が好ましく、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アンモニウム塩、3級アミドなどが好ましく、1級アミン、2級アミン、3級アミン、アンモニウム塩が好ましく、2級アミン、3級アミン、アンモニウム塩がより好ましい。
酸捕捉剤としては、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウム構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を好ましく挙げることができる。オニウム構造を有する場合、酸捕捉剤はアンモニウム、ジアゾニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウムなどから選択されるカチオンと、酸発生剤が発生する酸より酸性度の低い酸のアニオンとを有する塩であることが好ましい。
【0256】
イミダゾール構造を有する酸捕捉剤としてはイミダゾール、2、4、5-トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する酸捕捉剤としては1、4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ-5-エン、1、8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7-エン等が挙げられる。オニウム構造を有する酸捕捉剤としてはテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2-オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t-ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t-ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2-オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する酸捕捉剤としては、トリ(n-ブチル)アミン、トリ(n-オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン構造を有する酸捕捉剤としては、2,6-ジイソプロピルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジブチルアニリン、N,N-ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。ピリジン構造を有する酸捕捉剤としては、ピリジン、4-メチルピリジン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0257】
好ましい酸捕捉剤の具体例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヘキシルアミン、ドデシルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、ピリジン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、DABCO(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、エチレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、N-メチルヘキシルアミン、N-メチルジシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N-エチルエチレンジアミン、N,N―ジエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラブチルー1,6-ヘキサンジアミン、スペルミジン、ジアミノシクロヘキサン、ビス(2-メトキシエチル)アミン、ピペリジン、メチルピペリジン、ピペラジン、トロパン、N-フェニルベンジルアミン、1,2-ジアニリノエタン、2-アミノエタノール、トルイジン、アミノフェノール、ヘキシルアニリン、フェニレンジアミン、フェニルエチルアミン、ジベンジルアミン、ピロール、N-メチルピロール、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン等があげられる。
【0258】
これらの酸捕捉剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る組成物は、酸捕捉剤を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、酸捕捉剤の含有量は、組成物の全固形分を基準として、通常は0.001~10質量%であり、好ましくは0.01~5質量%である。
【0259】
酸発生剤と酸捕捉剤との使用割合は、酸発生剤/酸捕捉剤(モル比)=2.5~300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上であることが好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレリーフパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/酸捕捉剤(モル比)は、より好ましくは5.0~200、更に好ましくは7.0~150である。
【0260】
<その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果が得られる範囲で、必要に応じて、各種の添加物、例えば、界面活性剤、高級脂肪酸誘導体、熱重合開始剤、無機粒子、紫外線吸収剤、有機チタン化合物、酸化防止剤、凝集防止剤、フェノール系化合物、他の高分子化合物、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、消泡剤、難燃剤など)等を配合することができる。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。これらの添加剤を配合する場合、その合計配合量は本発明の樹脂組成物の固形分の3質量%以下とすることが好ましい。
【0261】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。界面活性剤はノニオン型界面活性剤であってもよく、カチオン型界面活性剤であってもよく、アニオン型界面活性剤であってもよい。
【0262】
本発明の感光性樹脂組成物に界面活性剤を含有させることで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上し、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。即ち、界面活性剤を含有する組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力が低下して、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行うことができる。
【0263】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、RS-72-K(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171、ノベックFC4430、同FC4432(以上、スリーエム ジャパン(株)製)、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-1068、同SC-381、同SC-383、同S-393、同KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落0015~0158に記載の化合物、特開2011-132503号公報の段落0117~0132に記載の化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤としてブロックポリマーを用いることもでき、具体例としては、例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができ、下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化44】
【0264】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000であり、5,000~30,000であることがより好ましい。
フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体をフッ素系界面活性剤として用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落0050~0090および段落0289~0295に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、市販品としては、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K等が挙げられる。
【0265】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0266】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF6001、KF6002(以上、信越シリコーン(株)製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー(株)製)等が挙げられる。
【0267】
炭化水素系界面活性剤としては、例えば、パイオニンA-76、ニューカルゲンFS-3PG、パイオニンB-709、パイオニンB-811-N、パイオニンD-1004、パイオニンD-3104、パイオニンD-3605、パイオニンD-6112、パイオニンD-2104-D、パイオニンD-212、パイオニンD-931、パイオニンD-941、パイオニンD-951、パイオニンE-5310、パイオニンP-1050-B、パイオニンP-1028-P、パイオニンP-4050-T等(以上、竹本油脂社製)、などが挙げられる。
【0268】
ノニオン型界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステルなどが例示される。市販品としては、プルロニック(登録商標)L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0269】
カチオン型界面活性剤として具体的には、オルガノシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.77、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0270】
アニオン型界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)製)、サンデットBL(三洋化成(株)製)等が挙げられる。
【0271】
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%が好ましく、0.005~1.0質量%がより好ましい。
【0272】
〔高級脂肪酸誘導体〕
本発明の樹脂組成物は、酸素に起因する重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体を添加して、塗布後の乾燥の過程で本発明の樹脂組成物の表面に偏在させてもよい。
【0273】
また、高級脂肪酸誘導体は、国際公開第2015/199219号の段落0155に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0274】
本発明の樹脂組成物が高級脂肪酸誘導体を有する場合、高級脂肪酸誘導体の含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。高級脂肪酸誘導体は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。高級脂肪酸誘導体が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0275】
〔熱重合開始剤〕
本発明の樹脂組成物は、熱重合開始剤を含んでもよく、特に熱ラジカル重合開始剤を含んでもよい。熱ラジカル重合開始剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性を有する化合物の重合反応を開始又は促進させる化合物である。熱ラジカル重合開始剤を添加することによって樹脂及び重合性化合物の重合反応を進行させることもできるので、より耐溶剤性を向上できる。また、上述した光重合開始剤も熱により重合を開始する機能を有する場合があり、熱重合開始剤として添加することができる場合がある。
【0276】
熱ラジカル重合開始剤として、具体的には、特開2008-063554号公報の段落0074~0118に記載されている化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0277】
熱重合開始剤を含む場合、その含有量は、本発明の樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%であり、更に好ましくは0.5~15質量%である。熱重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。熱重合開始剤を2種以上含有する場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0278】
〔無機粒子〕
本発明の樹脂組成物は、無機粒子を含んでもよい。無機粒子として、具体的には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、ガラス等を含むことができる。
【0279】
上記無機粒子の平均粒子径としては、0.01~2.0μmが好ましく、0.02~1.5μmがより好ましく、0.03~1.0μmがさらに好ましく、0.04~0.5μmが特に好ましい。
無機粒子の上記平均粒子径は、一次粒子径であり、また体積平均粒子径である。体積平均粒子径は、Nanotrac WAVE II EX-150(日機装社製)による動的光散乱法で測定できる。
上記測定が困難である場合は、遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法で測定することもできる。
【0280】
〔紫外線吸収剤〕
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、トリアジン系などの紫外線吸収剤を使用することができる。
サリシレート系紫外線吸収剤の例としては、フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、p-t-ブチルフェニルサリシレートなどが挙げられ、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例としては、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例としては、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-アミル-5’-イソブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-イソブチル-5’-プロピルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(1,1,3,3-テトラメチル)フェニル]ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0281】
置換アクリロニトリル系紫外線吸収剤の例としては、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシルなどが挙げられる。さらに、トリアジン系紫外線吸収剤の例としては、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどのモノ(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物;2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-プロピルオキシフェニル)-6-(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどのビス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物;2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス[2-ヒドロキシ-4-(3-ブトキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)フェニル]-1,3,5-トリアジンなどのトリス(ヒドロキシフェニル)トリアジン化合物等が挙げられる。
【0282】
本発明においては、上記各種の紫外線吸収剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物は、紫外線吸収剤を含んでも含まなくてもよいが、含む場合、紫外線吸収剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分質量に対して、0.001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0283】
〔有機チタン化合物〕
本実施形態の樹脂組成物は、有機チタン化合物を含有してもよい。樹脂組成物が有機チタン化合物を含有することにより、低温で硬化した場合であっても耐薬品性に優れる樹脂層を形成できる。
【0284】
使用可能な有機チタン化合物としては、チタン原子に有機基が共有結合又はイオン結合を介して結合しているものが挙げられる。
有機チタン化合物の具体例を、以下のI)~VII)に示す:
I)チタンキレート化合物:中でも、樹脂組成物の保存安定性がよく、良好な硬化パターンが得られることから、アルコキシ基を2個以上有するチタンキレート化合物がより好ましい。具体的な例は、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n-ブトキサイド)ビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等である。
II)テトラアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2-エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n-ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n-プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス[ビス{2,2-(アリロキシメチル)ブトキサイド}]等である。
III)チタノセン化合物:例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム等である。
IV)モノアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキサイド等である。
V)チタニウムオキサイド化合物:例えば、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等である。
VI)チタニウムテトラアセチルアセトネート化合物:例えば、チタニウムテトラアセチルアセトネート等である。
VII)チタネートカップリング剤:例えば、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等である。
【0285】
中でも、有機チタン化合物としては、上記I)チタンキレート化合物、II)テトラアルコキシチタン化合物、及びIII)チタノセン化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが、より良好な耐薬品性を奏するという観点から好ましい。特に、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、及びビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムが好ましい。
【0286】
有機チタン化合物を配合する場合、その配合量は、特定樹脂100質量部に対し、0.05~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~2質量部である。配合量が0.05質量部以上である場合、得られる硬化パターンに良好な耐熱性及び耐薬品性がより効果的に発現し、一方10質量部以下である場合、組成物の保存安定性により優れる。
【0287】
〔酸化防止剤〕
本発明の組成物は、酸化防止剤を含んでいてもよい。添加剤として酸化防止剤を含有することで、硬化後の膜の伸度特性や、金属材料との密着性を向上させることができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。上述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-50F、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-60G、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-330(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。また、酸化防止剤は、特許第6268967号公報の段落番号0023~0048に記載された化合物を使用することもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、本発明の組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
好ましい酸化防止剤の例としては、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチルフェノールおよび式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0288】
【0289】
一般式(3)中、R5は水素原子または炭素数2以上(好ましくは炭素数2~10)のアルキル基を表し、R6は炭素数2以上(好ましくは炭素数2~10)のアルキレン基を表す。R7は、炭素数2以上(好ましくは炭素数2~10)のアルキレン基、酸素原子、および窒素原子のうち少なくともいずれかを含む1~4価の有機基を示す。kは1~4の整数を示す。
【0290】
式(3)で表される化合物は、樹脂が有する脂肪族基やフェノール性水酸基の酸化劣化を抑制する。また、金属材料への防錆作用により、金属酸化を抑制することができる。
【0291】
樹脂と金属材料に同時に作用できるため、kは2~4の整数がより好ましい。R7としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキルエーテル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、アリール基、アリールエーテル基、カルボキシル基、カルボニル基、アリル基、ビニル基、複素環基、-O-、-NH-、-NHNH-、それらを組み合わせたものなどが挙げられ、さらに置換基を有していてもよい。この中でも、現像液への溶解性や金属密着性の点から、アルキルエーテル基、-NH-を有することが好ましく、樹脂との相互作用と金属錯形成による金属密着性の点から-NH-がより好ましい。
【0292】
一般式(3)で表される化合物は、例としては以下のものが挙げられるが、下記構造に限らない。
【0293】
【0294】
【0295】
【0296】
【0297】
酸化防止剤の添加量は、樹脂に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。添加量を0.1質量部以上とすることにより、高温高湿環境下においても伸度特性や金属材料に対する密着性向上の効果が得られやすく、また10質量部以下とすることにより、例えば感光剤との相互作用により、樹脂組成物の感度が向上する。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0298】
〔凝集防止剤〕
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて凝集防止剤を含有してもよい。凝集防止剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0299】
本発明においては、凝集防止剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物は、凝集防止剤を含んでも含まなくてもよいが、含む場合、凝集防止剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分質量に対して、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0300】
〔フェノール系化合物〕
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じてフェノール系化合物を含有してもよい。フェノール系化合物としては、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-BIPC-F(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)等が挙げられる。
【0301】
本発明においては、フェノール系化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物は、フェノール系化合物を含んでも含まなくてもよいが、含む場合、フェノール系化合物の含有量は、本発明の組成物の全固形分質量に対して、0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0302】
〔他の高分子化合物〕
他の高分子化合物としては、シロキサン樹脂、(メタ)アクリル酸を共重合した(メタ)アクリルポリマー、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂およびそれらの共重合体などが挙げられる。他の高分子化合物はメチロール基、アルコキシメチル基、エポキシ基などの架橋基が導入された変性体であってもよい。
【0303】
本発明においては、他の高分子化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物は、他の高分子化合物を含んでも含まなくてもよいが、含む場合、他の高分子化合物の含有量は、本発明の組成物の全固形分質量に対して、0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0304】
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物の粘度は、樹脂組成物の固形分濃度により調整できる。塗布膜厚の観点から、1,000mm2/s~12,000mm2/sが好ましく、2,000mm2/s~10,000mm2/sがより好ましく、3,000mm2/s~8,000mm2/sが更に好ましい。上記範囲であれば、均一性の高い塗布膜を得ることが容易になる。1,000mm2/s以下では、例えば再配線用絶縁膜として必要とされる膜厚で塗布することが困難であり、12,000mm2/s以上では、塗布面状が悪化する可能性がある。
【0305】
<樹脂組成物の含有物質についての制限>
本発明の樹脂組成物の含水率は、2.0質量%未満であることが好ましく、1.5質量%未満であることがより好ましく、1.0質量%未満であることが更に好ましい。2.0%以上では、樹脂組成物の保存安定性が損なわれる可能性がある。
水分の含有量を維持する方法としては、保管条件における湿度の調整、保管時の収容容器の空隙率低減などが挙げられる。
【0306】
本発明の樹脂組成物の金属含有量は、絶縁性の観点から、5質量ppm(parts per million)未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、銅、クロム、ニッケルなどが挙げられるが、有機化合物と金属との錯体として含まれる金属は除く。金属を複数含む場合は、これらの金属の合計が上記範囲であることが好ましい。
【0307】
また、本発明の樹脂組成物に意図せずに含まれる金属不純物を低減する方法としては、本発明の樹脂組成物を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、本発明の樹脂組成物を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、装置内をポリテトラフルオロエチレン等でライニングしてコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。
【0308】
本発明の樹脂組成物は、半導体材料としての用途を考慮すると、ハロゲン原子の含有量が、配線腐食性の観点から、500質量ppm未満が好ましく、300質量ppm未満がより好ましく、200質量ppm未満が更に好ましい。中でも、ハロゲンイオンの状態で存在するものは、5質量ppm未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満が更に好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。塩素原子及び臭素原子、又は塩素イオン及び臭素イオンの合計がそれぞれ上記範囲であることが好ましい。
ハロゲン原子の含有量を調節する方法としては、イオン交換処理などが好ましく挙げられる。
【0309】
本発明の樹脂組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料や本発明の樹脂組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0310】
<樹脂組成物の硬化物>
本発明の樹脂組成物を硬化することにより、この樹脂組成物の硬化物を得ることができる。
本発明の硬化物は、本発明の樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
樹脂組成物の硬化は加熱によるものであることが好ましく、加熱温度が120℃~400℃の範囲内であることがより好ましく、140℃~380℃の範囲内にあることが更に好ましく、170℃~350℃の範囲内にあることが特に好ましい。樹脂組成物の硬化物の形態は、特に限定されず、フィルム状、棒状、球状、ペレット状など、用途に合わせて選択することができる。本発明において、この硬化物は、フィルム状であることが好ましい。また、樹脂組成物のパターン加工によって、壁面への保護膜の形成、導通のためのビアホール形成、インピーダンスや静電容量あるいは内部応力の調整、放熱機能付与など、用途にあわせて、この硬化物の形状を選択することもできる。この硬化物(硬化物からなる膜)の膜厚は、0.5μm以上150μm以下であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物を硬化した際の収縮率は、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下が更に好ましい。ここで、収縮率は、樹脂組成物の硬化前後の体積変化の百分率を指し、下記の式より算出することができる。
収縮率[%]=100-(硬化後の体積÷硬化前の体積)×100
【0311】
<樹脂組成物の硬化物の特性>
本発明の樹脂組成物の硬化物のイミド化反応率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。70%未満では硬化物の機械特性が劣る可能性がある。
本発明の樹脂組成物の硬化物の破断伸びは、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。
本発明の樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、180℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることがさらに好ましい。
【0312】
<樹脂組成物の調製>
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。混合方法は特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。
混合は撹拌羽による混合、ボールミルによる混合、タンク自身を回転させる混合などを採用することができる。
混合中の温度は10~30℃が好ましく、15~25℃がより好ましい。
【0313】
また、本発明の樹脂組成物中のゴミや微粒子等の異物を除去する目的で、フィルターを用いたろ過を行うことが好ましい。フィルター孔径は、例えば5μm以下である態様が挙げられ、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下が更に好ましい。フィルターの材質は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。フィルターの材質がポリエチレンである場合はHDPE(高密度ポリエチレン)であることがより好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数種のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種のフィルターを使用する場合は、孔径又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。接続態様としては、例えば、1段目として孔径1μmのHDPEフィルターを、2段目として孔径0.2μmのHDPEフィルターを、直列に接続した態様が挙げられる。また、各種材料を複数回ろ過してもよい。複数回ろ過する場合は、循環ろ過であってもよい。また、加圧してろ過を行ってもよい。加圧してろ過を行う場合、加圧する圧力は例えば0.01MPa以上1.0MPa以下である態様が挙げられ、0.03MPa以上0.9MPa以下が好ましく、0.05MPa以上0.7MPa以下がより好ましく、0.05MPa以上0.5MPa以下が更に好ましい。
フィルターを用いたろ過の他、吸着材を用いた不純物の除去処理を行ってもよい。フィルターろ過と吸着材を用いた不純物除去処理とを組み合わせてもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができる。例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材が挙げられる。
更にフィルターを用いたろ過後、ボトルに充填した樹脂組成物を減圧下に置き、脱気する工程を施しても良い。
【0314】
(硬化物の製造方法)
本発明の硬化物の製造方法は、樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含むことが好ましい。
また、本発明の硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、膜形成工程により形成された膜を選択的に露光する露光工程、及び、露光工程により露光された膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含むことがより好ましい。
本発明の硬化物の製造方法は、上記膜形成工程、上記露光工程、上記現像工程、並びに、現像工程により得られたパターンを加熱する加熱工程及び現像工程により得られたパターンを露光する現像後露光工程の少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
また、本発明の製造方法は、上記膜形成工程、及び、上記膜を加熱する工程を含むことも好ましい。
以下、各工程の詳細について説明する。
【0315】
<膜形成工程>
本発明の樹脂組成物は、基材上に適用して膜を形成する膜形成工程に用いることができる。
本発明の硬化物の製造方法は、樹脂組成物を基材上に適用して膜を形成する膜形成工程を含むことが好ましい。
【0316】
〔基材〕
基材の種類は、用途に応じて適宜定めることができるが、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基材、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基材(例えば、金属から形成された基材、及び、金属層が例えばめっきや蒸着等により形成された基材のいずれであってもよい)、紙、SOG(Spin On Glass)、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ基材、モールド基材、プラズマディスプレイパネル(PDP)の電極板などが挙げられ、特に制約されない。本発明では、特に、半導体作製基材が好ましく、シリコン基材、Cu基材およびモールド基材がより好ましい。
また、これらの基材にはヘキサメチルジシラザン(HMDS)等による密着層や酸化層などの層が表面に設けられていてもよい。
また、基材の形状は特に限定されず、円形状であってもよく、矩形状であってもよい。
基材のサイズとしては、円形状であれば、例えば直径が100~450mmであり、好ましくは200~450mmである。矩形状であれば、例えば短辺の長さが100~1000mmであり、好ましくは200~700mmである。
また、基材としては、例えば板状、好ましくはパネル状の基材(基板)が用いられる。
【0317】
また、樹脂層(例えば、硬化物からなる層)の表面や金属層の表面に樹脂組成物を適用して膜を形成する場合は、樹脂層や金属層が基材となる。
【0318】
本発明の樹脂組成物を基材上に適用する手段としては、塗布が好ましい。
【0319】
適用する手段としては、具体的には、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法などが例示される。膜の厚さの均一性の観点から、より好ましくはスピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、又は、インクジェット法であり、膜の厚さの均一性の観点および生産性の観点からスピンコート法およびスリットコート法が好ましい。方法に応じて樹脂組成物の固形分濃度や塗布条件を調整することで、所望の厚さの膜を得ることができる。また、基材の形状によっても塗布方法を適宜選択でき、ウエハ等の円形基材であればスピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法等が好ましく、矩形基材であればスリットコート法やスプレーコート法、インクジェット法等が好ましい。スピンコート法の場合は、例えば、500~3,500rpmの回転数で、10秒~3分程度適用することができる。
また、あらかじめ仮支持体上に上記付与方法によって付与して形成した塗膜を、基材上に転写する方法を適用することもできる。
転写方法に関しては特開2006-023696号公報の段落0023、0036~0051や、特開2006-047592号公報の段落0096~0108に記載の作製方法を本発明においても好適に用いることができる。
また、基材の端部において余分な膜の除去を行なう工程を行なってもよい。このような工程の例には、エッジビードリンス(EBR)、バックリンスなどが挙げられる。
また樹脂組成物を基材に塗布する前に基材を種々の溶剤を塗布し、基材の濡れ性を向上させた後に樹脂組成物を塗布するプリウェット工程を採用しても良い。
【0320】
<乾燥工程>
上記膜は、膜形成工程(層形成工程)の後に、溶剤を除去するために形成された膜(層)を乾燥する工程(乾燥工程)に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、膜形成工程により形成された膜を乾燥する乾燥工程を含んでもよい。
また、上記乾燥工程は膜形成工程の後、露光工程の前に行われることが好ましい。
乾燥工程における膜の乾燥温度は50~150℃であることが好ましく、70℃~130℃がより好ましく、90℃~110℃が更に好ましい。また、減圧により乾燥を行っても良い。乾燥時間としては、30秒~20分が例示され、1分~10分が好ましく、2分~7分がより好ましい。
【0321】
<露光工程>
上記膜は、膜を選択的に露光する露光工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、膜形成工程により形成された膜を選択的に露光する露光工程を含んでもよい。
選択的に露光するとは、膜の一部を露光することを意味している。また、選択的に露光することにより、膜には露光された領域(露光部)と露光されていない領域(非露光部)が形成される。
露光量は、本発明の樹脂組成物を硬化できる限り特に定めるものではないが、例えば、波長365nmでの露光エネルギー換算で50~10,000mJ/cm2が好ましく、200~8,000mJ/cm2がより好ましい。
【0322】
露光波長は、190~1,000nmの範囲で適宜定めることができ、240~550nmが好ましい。
【0323】
露光波長は、光源との関係でいうと、(1)半導体レーザー(波長 830nm、532nm、488nm、405nm、375nm、355nm etc.)、(2)メタルハライドランプ、(3)高圧水銀灯、g線(波長 436nm)、h線(波長 405nm)、i線(波長 365nm)、ブロード(g,h,i線の3波長)、(4)エキシマレーザー、KrFエキシマレーザー(波長 248nm)、ArFエキシマレーザー(波長 193nm)、F2エキシマレーザー(波長 157nm)、(5)極端紫外線;EUV(波長 13.6nm)、(6)電子線、(7)YAGレーザーの第二高調波532nm、第三高調波355nm等が挙げられる。本発明の樹脂組成物については、特に高圧水銀灯による露光が好ましく、中でも、i線による露光が好ましい。これにより、特に高い露光感度が得られうる。
また、露光の方式は特に限定されず、本発明の樹脂組成物からなる膜の少なくとも一部が露光される方式であればよいが、フォトマスクを使用した露光、レーザーダイレクトイメージング法による露光等が挙げられる。
【0324】
<露光後加熱工程>
上記膜は、露光後に加熱する工程(露光後加熱工程)に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、露光工程により露光された膜を加熱する露光後加熱工程を含んでもよい。
露光後加熱工程は、露光工程後、現像工程前に行うことができる。
露光後加熱工程における加熱温度は、50℃~140℃であることが好ましく、60℃~120℃であることがより好ましい。
露光後加熱工程における加熱時間は、30秒間~300分間が好ましく、1分間~10分間がより好ましい。
露光後加熱工程における昇温速度は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分が好ましく、2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分が更に好ましい。
また、昇温速度は加熱途中で適宜変更してもよい。
露光後加熱工程における加熱手段としては、特に限定されず、公知のホットプレート、オーブン、赤外線ヒーター等を用いることができる。
また、加熱に際し、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す等により、低酸素濃度の雰囲気で行うことも好ましい。
【0325】
<現像工程>
露光後の上記膜は、現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、露光工程により露光された膜を現像液を用いて現像してパターンを形成する現像工程を含んでもよい。 現像を行うことにより、膜の露光部及び非露光部のうち一方が除去され、パターンが形成される。
ここで、膜の非露光部が現像工程により除去される現像をネガ型現像といい、膜の露光部が現像工程により除去される現像をポジ型現像という。
【0326】
〔現像液〕
現像工程において用いられる現像液としては、アルカリ水溶液、又は、有機溶剤を含む現像液が挙げられる。
【0327】
現像液がアルカリ水溶液である場合、アルカリ水溶液が含みうる塩基性化合物としては、無機アルカリ類、第一級アミン類、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩が挙げられ、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドドキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラオクチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリアミルアンモニウムヒドロキシド、ジブチルジペンチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジンが好ましく、より好ましくはTMAHである。現像液における塩基性化合物の含有量は、例えばTMAHを用いる場合、現像液全質量中0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.3~3質量%が更に好ましい。
【0328】
現像液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例:アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等、並びに、エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、並びに、ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、N-メチル-2-ピロリドン等、並びに、環状炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素類、リモネン等の環式テルペン類、スルホキシド類としてジメチルスルホキシド、並びに、アルコール類として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、オクタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルイソブチルカルビノール、トリエチレングリコール等、並びに、アミド類として、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が好適に挙げられる。
【0329】
現像液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することができる。本発明では特にシクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、及び、シクロヘキサノンよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む現像液が好ましく、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン及びジメチルスルホキシドよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む現像液がより好ましく、シクロペンタノンを含む現像液が最も好ましい。
【0330】
現像液が有機溶剤を含む場合、現像液の全質量に対する有機溶剤の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、上記含有量は、100質量%であってもよい。
【0331】
現像液は、他の成分を更に含んでもよい。
他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
【0332】
〔現像液の供給方法〕
現像液の供給方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、膜が形成された基材を現像液に浸漬する方法、基材上に形成された膜にノズルを用いて現像液を供給するパドル現像、または、現像液を連続供給する方法がある。ノズルの種類は特に制限は無く、ストレートノズル、シャワーノズル、スプレーノズル等が挙げられる。
現像液の浸透性、非画像部の除去性、製造上の効率の観点から、現像液をストレートノズルで供給する方法、又はスプレーノズルにて連続供給する方法が好ましく、画像部への現像液の浸透性の観点からは、スプレーノズルで供給する方法がより好ましい。
また、現像液をストレートノズルにて連続供給後、基材をスピンし現像液を基材上から除去し、スピン乾燥後に再度ストレートノズルにて連続供給後、基材をスピンし現像液を基材上から除去する工程を採用してもよく、この工程を複数回繰り返しても良い。
また現像工程における現像液の供給方法としては、現像液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上で現像液が略静止状態で保たれる工程、基材上で現像液を超音波等で振動させる工程及びそれらを組み合わせた工程などが採用可能である。
【0333】
現像時間としては、10秒~10分間が好ましく、20秒~5分間がより好ましい。現像時の現像液の温度は、特に定めるものではないが、好ましくは、10~45℃、より好ましくは、18℃~30℃で行うことができる。
【0334】
現像工程において、現像液を用いた処理の後、更に、リンス液によるパターンの洗浄(リンス)を行ってもよい。また、パターン上に接する現像液が乾燥しきらないうちにリンス液を供給するなどの方法を採用しても良い。
【0335】
〔リンス液〕
現像液がアルカリ水溶液である場合、リンス液としては、例えば水を用いることができる。現像液が有機溶剤を含む現像液である場合、リンス液としては、例えば、現像液に含まれる溶剤とは異なる溶剤(例えば、水、現像液に含まれる有機溶剤とは異なる有機溶剤)を用いることができる。
【0336】
リンス液が有機溶剤を含む場合の有機溶剤としては、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例:アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等、並びに、エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、並びに、ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、N-メチル-2-ピロリドン等、並びに、環状炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族炭化水素類、リモネン等の環式テルペン類、スルホキシド類としてジメチルスルホキシド、並びに、アルコール類として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、オクタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルイソブチルカルビノール、トリエチレングリコール等、並びに、アミド類として、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が好適に挙げられる。
【0337】
リンス液が有機溶剤を含む場合、有機溶剤は1種又は、2種以上を混合して使用することができる。本発明では特にシクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、PGMEA、PGMEが好ましく、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、PGMEA、PGMEがより好ましく、シクロヘキサノン、PGMEAがさらに好ましい。
【0338】
リンス液が有機溶剤を含む場合、リンス液は、50質量%以上が有機溶剤であることが好ましく、70質量%以上が有機溶剤であることがより好ましく、90質量%以上が有機溶剤であることが更に好ましい。また、リンス液は、100質量%が有機溶剤であってもよい。
【0339】
リンス液は、他の成分を更に含んでもよい。
他の成分としては、例えば、公知の界面活性剤や公知の消泡剤等が挙げられる。
【0340】
〔リンス液の供給方法〕
リンス液の供給方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、基材をリンス液に浸漬する方法、基材に液盛りによりリンス液を供給する方法、基材にリンス液をシャワーで供給する方法、基材上にストレートノズル等の手段によりリンス液を連続供給する方法がある。
リンス液の浸透性、非画像部の除去性、製造上の効率の観点から、リンス液をシャワーノズル、ストレートノズル、スプレーノズルなどで供給する方法があり、スプレーノズルにて連続供給する方法が好ましく、画像部へのリンス液の浸透性の観点からは、スプレーノズルで供給する方法がより好ましい。ノズルの種類は特に制限は無く、ストレートノズル、シャワーノズル、スプレーノズル等が挙げられる。
すなわち、リンス工程は、リンス液を上記露光後の膜に対してストレートノズルにより供給、又は、連続供給する工程であることが好ましく、リンス液をスプレーノズルにより供給する工程であることがより好ましい。
またリンス工程におけるリンス液の供給方法としては、リンス液が連続的に基材に供給され続ける工程、基材上でリンス液が略静止状態で保たれる工程、基材上でリンス液を超音波等で振動させる工程及びそれらを組み合わせた工程などが採用可能である。
【0341】
リンス時間としては、10秒~10分間が好ましく、20秒~5分間がより好ましい。リンス時のリンス液の温度は、特に定めるものではないが、好ましくは、10~45℃、より好ましくは、18℃~30℃で行うことができる。
【0342】
<加熱工程>
現像工程により得られたパターン(リンス工程を行う場合は、リンス後のパターン)は、上記現像により得られたパターンを加熱する加熱工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターンを加熱する加熱工程を含んでもよい。
また、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程を行わずに他の方法で得られたパターン、又は、膜形成工程により得られた膜を加熱する加熱工程を含んでもよい。
加熱工程において、ポリイミド前駆体等の樹脂は環化してポリイミド等の樹脂となる。
また、特定樹脂、又は特定樹脂以外の架橋剤における未反応の架橋性基の架橋なども進行する。
加熱工程における加熱温度(最高加熱温度)としては、50~450℃が好ましく、150~350℃がより好ましく、150~250℃が更に好ましく、160~250℃が一層好ましく、160~230℃が特に好ましい。
【0343】
加熱工程は、加熱により、上記塩基発生剤から発生した塩基等の作用により、上記パターン内で上記ポリイミド前駆体の環化反応を促進する工程であることが好ましい。
【0344】
加熱工程における加熱は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分の昇温速度で行うことが好ましい。上記昇温速度は2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分が更に好ましい。昇温速度を1℃/分以上とすることにより、生産性を確保しつつ、酸又は溶剤の過剰な揮発を防止することができ、昇温速度を12℃/分以下とすることにより、硬化物の残存応力を緩和することができる。
加えて、急速加熱可能なオーブンの場合、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~8℃/秒の昇温速度で行うことが好ましく、2~7℃/秒がより好ましく、3~6℃/秒が更に好ましい。
【0345】
加熱開始時の温度は、20℃~150℃が好ましく、20℃~130℃がより好ましく、25℃~120℃が更に好ましい。加熱開始時の温度は、最高加熱温度まで加熱する工程を開始する際の温度のことをいう。例えば、本発明の樹脂組成物を基材の上に適用した後、乾燥させる場合、この乾燥後の膜(層)の温度であり、例えば、本発明の樹脂組成物に含まれる溶剤の沸点よりも、30~200℃低い温度から昇温させることが好ましい。
【0346】
加熱時間(最高加熱温度での加熱時間)は、5~360分であることが好ましく、10~300分であることがより好ましく、15~240分であることが更に好ましい。
【0347】
特に多層の積層体を形成する場合、層間の密着性の観点から、加熱温度は30℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが更に好ましく、120℃以上であることが特に好ましい。
上記加熱温度の上限は、350℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましく、240℃以下であることが更に好ましい。
【0348】
加熱は段階的に行ってもよい。例として、25℃から120℃まで3℃/分で昇温し、120℃にて60分保持し、120℃から180℃まで2℃/分で昇温し、180℃にて120分保持する、といった工程を行ってもよい。また、米国特許第9159547号明細書に記載のように紫外線を照射しながら処理することも好ましい。このような前処理工程により膜の特性を向上させることが可能である。前処理工程は10秒間~2時間程度の短い時間で行うとよく、15秒~30分間がより好ましい。前処理は2段階以上のステップとしてもよく、例えば100~150℃の範囲で1段階目の前処理工程を行い、その後に150~200℃の範囲で2段階目の前処理工程を行ってもよい。
更に、加熱後冷却してもよく、この場合の冷却速度としては、1~5℃/分であることが好ましい。
【0349】
加熱工程は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す、減圧下で行う等により、低酸素濃度の雰囲気で行うことが特定樹脂の分解を防ぐ点で好ましい。酸素濃度は、50ppm(体積比)以下が好ましく、20ppm(体積比)以下がより好ましい。
加熱工程における加熱手段としては、特に限定されないが、例えばホットプレート、赤外炉、電熱式オーブン、熱風式オーブン、赤外線オーブンなどが挙げられる。
【0350】
これらの中でも、本発明において、加熱する工程における加熱を赤外線オーブンを用いて行う態様も、本発明の好ましい態様の1つである。
赤外線オーブンを用いることにより、硬化物を比較的均一近い状態で加熱でき、また、比較的高速で加熱することができる。
特に、本発明のような環化体量が0.01mmol/g以上である特定樹脂を用いた場合には、短時間の加熱により樹脂の環化が進行し、プロセスを短時間化することができると考えられる。
【0351】
<現像後露光工程>
現像工程により得られた(リンス工程を行う場合は、リンス後のパターン)は、上記加熱工程に代えて、又は、上記加熱工程に加えて、現像工程後のパターンを露光する現像後露光工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターンを露光する現像後露光工程を含んでもよい。本発明の硬化物の製造方法は、加熱工程及び現像後露光工程を含んでもよいし、加熱工程及び現像後露光工程の一方のみを含んでもよい。
現像後露光工程においては、例えば、光塩基発生剤の感光によってポリイミド前駆体等の環化が進行する反応や、光酸発生剤の感光によって酸分解性基の脱離が進行する反応などを促進することができる。
現像後露光工程においては、現像工程において得られたパターンの少なくとも一部が露光されればよいが、上記パターンの全部が露光されることが好ましい。
現像後露光工程における露光量は、感光性化合物が感度を有する波長における露光エネルギー換算で、50~20,000mJ/cm2であることが好ましく、100~15,000mJ/cm2であることがより好ましい。
現像後露光工程は、例えば、上述の露光工程における光源を用いて行うことができ、ブロードバンド光を用いることが好ましい。
【0352】
<金属層形成工程>
現像工程により得られたパターン(加熱工程及び露光後現像工程の少なくとも一方に供されたものが好ましい)は、パターン上に金属層を形成する金属層形成工程に供されてもよい。
すなわち、本発明の硬化物の製造方法は、現像工程により得られたパターン(加熱工程及び現像後露光工程少なくとも一方に供されたものが好ましい)上に金属層を形成する金属層形成工程を含むことが好ましい。
【0353】
金属層としては、特に限定なく、既存の金属種を使用することができ、銅、アルミニウム、ニッケル、バナジウム、チタン、クロム、コバルト、金、タングステン、錫、銀及びこれらの金属を含む合金が例示され、銅及びアルミニウムがより好ましく、銅が更に好ましい。
【0354】
金属層の形成方法は、特に限定なく、既存の方法を適用することができる。例えば、特開2007-157879号公報、特表2001-521288号公報、特開2004-214501号公報、特開2004-101850号公報、米国特許第7888181B2、米国特許第9177926B2に記載された方法を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィ、PVD(物理蒸着法)、CVD(化学気相成長法)、リフトオフ、電解めっき、無電解めっき、エッチング、印刷、及びこれらを組み合わせた方法などが考えられる。より具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィ及びエッチングを組み合わせたパターニング方法、フォトリソグラフィと電解めっきを組み合わせたパターニング方法が挙げられる。めっきの好ましい態様としては、硫酸銅やシアン化銅めっき液を用いた電解めっきが挙げられる。
【0355】
金属層の厚さとしては、最も厚肉の部分で、0.01~50μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
【0356】
<用途>
本発明の硬化物の製造方法、又は、本発明の硬化物の適用可能な分野としては、電子デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜などが挙げられる。そのほか、封止フィルム、基板材料(フレキシブルプリント基板のベースフィルムやカバーレイ、層間絶縁膜)、又は上記のような実装用途の絶縁膜をエッチングでパターン形成することなどが挙げられる。これらの用途については、例えば、サイエンス&テクノロジー(株)「ポリイミドの高機能化と応用技術」2008年4月、柿本雅明/監修、CMCテクニカルライブラリー「ポリイミド材料の基礎と開発」2011年11月発行、日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会/編「最新ポリイミド 基礎と応用」エヌ・ティー・エス,2010年8月等を参照することができる。
【0357】
また、本発明の硬化物の製造方法、又は、本発明の硬化物は、オフセット版面又はスクリーン版面などの版面の製造、成形部品のエッチングへの使用、エレクトロニクス、特に、マイクロエレクトロニクスにおける保護ラッカー及び誘電層の製造などにも用いることもできる。
【0358】
(積層体、及び、積層体の製造方法)
本発明の積層体とは、本発明の硬化物からなる層を複数層有する構造体をいう。
本発明の積層体は、硬化物からなる層を2層以上含む積層体であり、3層以上積層した積層体としてもよい。
上記積層体に含まれる2層以上の上記硬化物からなる層のうち、少なくとも1つが本発明の硬化物からなる層であり、硬化物の収縮、又は、上記収縮に伴う硬化物の変形等を抑制する観点からは、上記積層体に含まれる全ての硬化物からなる層が本発明の硬化物からなる層であることも好ましい。
【0359】
すなわち、本発明の積層体の製造方法は、本発明の硬化物の製造方法を含むことが好ましく、本発明の硬化物の製造方法を複数回繰り返すことを含むことがより好ましい。
【0360】
本発明の積層体は、硬化物からなる層を2層以上含み、上記硬化物からなる層同士のいずれかの間に金属層を含む態様が好ましい。上記金属層は、上記金属層形成工程により形成されることが好ましい。
すなわち、本発明の積層体の製造方法は、複数回行われる硬化物の製造方法の間に、硬化物からなる層上に金属層を形成する金属層形成工程を更に含むことが好ましい。金属層形成工程の好ましい態様は上述の通りである。
上記積層体としては、例えば、第一の硬化物からなる層、金属層、第二の硬化物からなる層の3つの層がこの順に積層された層構造を少なくとも含む積層体が好ましいものとして挙げられる。
上記第一の硬化物からなる層及び上記第二の硬化物からなる層は、いずれも本発明の硬化物からなる層であることが好ましい。上記第一の硬化物からなる層の形成に用いられる本発明の樹脂組成物と、上記第二の硬化物からなる層の形成に用いられる本発明の樹脂組成物とは、組成が同一の組成物であってもよいし、組成が異なる組成物であってもよい。本発明の積層体における金属層は、再配線層などの金属配線として好ましく用いられる。
【0361】
<積層工程>
本発明の積層体の製造方法は、積層工程を含むことが好ましい。
積層工程とは、パターン(樹脂層)又は金属層の表面に、再度、(a)膜形成工程(層形成工程)、(b)露光工程、(c)現像工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方を、この順に行うことを含む一連の工程である。ただし、(a)の膜形成工程および(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方を繰り返す態様であってもよい。また、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方の後には(e)金属層形成工程を含んでもよい。積層工程には、更に、上記乾燥工程等を適宜含んでいてもよいことは言うまでもない。
【0362】
積層工程後、更に積層工程を行う場合には、上記露光工程後、上記加熱工程の後、又は、上記金属層形成工程後に、更に、表面活性化処理工程を行ってもよい。表面活性化処理としては、プラズマ処理が例示される。表面活性化処理の詳細については後述する。
【0363】
上記積層工程は、2~20回行うことが好ましく、2~9回行うことがより好ましい。
例えば、樹脂層/金属層/樹脂層/金属層/樹脂層/金属層のように、樹脂層を2層以上20層以下とする構成が好ましく、2層以上9層以下とする構成が更に好ましい。
上記各層はそれぞれ、組成、形状、膜厚等が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0364】
本発明では特に、金属層を設けた後、更に、上記金属層を覆うように、上記本発明の樹脂組成物の硬化物(樹脂層)を形成する態様が好ましい。具体的には、(a)膜形成工程、(b)露光工程、(c)現像工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方(e)金属層形成工程、の順序で繰り返す態様、又は、(a)膜形成工程、(d)加熱工程及び現像後露光工程の少なくとも一方、(e)金属層形成工程の順序で繰り返す態様が挙げられる。本発明の樹脂組成物層(樹脂層)を積層する積層工程と、金属層形成工程を交互に行うことにより、本発明の樹脂組成物層(樹脂層)と金属層を交互に積層することができる。
【0365】
(表面活性化処理工程)
本発明の積層体の製造方法は、上記金属層および樹脂組成物層の少なくとも一部を表面活性化処理する、表面活性化処理工程を含むことが好ましい。
表面活性化処理工程は、通常、金属層形成工程の後に行うが、上記現像工程の後、樹脂組成物層に表面活性化処理工程を行ってから、金属層形成工程を行ってもよい。
表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、露光後の樹脂組成物層の少なくとも一部のみに行ってもよいし、金属層および露光後の樹脂組成物層の両方について、それぞれ、少なくとも一部に行ってもよい。表面活性化処理は、金属層の少なくとも一部について行うことが好ましく、金属層のうち、表面に樹脂組成物層を形成する領域の一部または全部に表面活性化処理を行うことが好ましい。このように、金属層の表面に表面活性化処理を行うことにより、その表面に設けられる樹脂組成物層(膜)との密着性を向上させることができる。
また、表面活性化処理は、露光後の樹脂組成物層(樹脂層)の一部または全部についても行うことが好ましい。このように、樹脂組成物層の表面に表面活性化処理を行うことにより、表面活性化処理した表面に設けられる金属層や樹脂層との密着性を向上させることができる。特にネガ型現像を行う場合など、樹脂組成物層が硬化されている場合には、表面処理によるダメージを受けにくく、密着性が向上しやすい。
表面活性化処理としては、具体的には、各種原料ガス(酸素、水素、アルゴン、窒素、窒素/水素混合ガス、アルゴン/酸素混合ガスなど)のプラズマ処理、コロナ放電処理、CF4/O2、NF3/O2、SF6、NF3、NF3/O2によるエッチング処理、紫外線(UV)オゾン法による表面処理、塩酸水溶液に浸漬して酸化皮膜を除去した後にアミノ基とチオール基を少なくとも一種有する化合物を含む有機表面処理剤への浸漬処理、ブラシを用いた機械的な粗面化処理から選択され、プラズマ処理が好ましく、特に原料ガスに酸素を用いた酸素プラズマ処理が好ましい。コロナ放電処理の場合、エネルギーは、500~200,000J/m2が好ましく、1000~100,000J/m2がより好ましく、10,000~50,000J/m2が最も好ましい。
【0366】
(電子デバイスの製造方法)
また、本発明は、本発明の硬化物、又は、本発明の積層体を含む半導体デバイスも開示する。
また、本発明は、本発明の硬化物の製造方法、又は、本発明の積層体の製造方法を含む半導体デバイスの製造方法も開示する。本発明の樹脂組成物を再配線層用層間絶縁膜の形成に用いた半導体デバイスの具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0213~0218の記載及び
図1の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0367】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0368】
<合成例1>
〔ピロメリット酸二無水物、4,4-ジアミノジフェニルエーテルおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-1)の合成〕
14.06g(64.5ミリモル)のピロメリット酸二無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)と、100gのダイグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)を混合し、60℃の温度で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、ピロメリット酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±4℃に保ちながら16.12g(135.5ミリモル)のSOCl2を10分かけて加えた。SOCl2を加えている間、粘度が増加した。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、反応混合物を室温(25℃)で2時間撹拌した。次いで、100mLのN-メチルピロリドンに11.75g(58.7ミリモル)の4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を、-5~0℃で20分かけて反応混合物に滴下した。次いで、反応混合物を0℃で1時間反応させたのち、エタノールを70g加えて、室温で1晩撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5,000rpm(revolutions per minute)の速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体をろ過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再びろ過した。次いで、得られたポリイミド前駆体を減圧下で、45℃で3日間乾燥し、ポリイミド前駆体A-1を得た。このポリイミド前駆体A-1の重量平均分子量は、19,000であった。得られたポリイミド前駆体A-1は、下記式(A-1)で表される繰り返し単位を含むと推測される。
エステル化率は98.2%、環化体量は0.015mmol/gであった。酸価は4.9mgKOH/gであった。エステル化率、及び、環化体量は下記方法により算出した。以下の樹脂において、エステル化率及び環化体量の測定方法は同様である。
【0369】
-酸価及びエステル化率の測定-
ビーカーにポリマー0.300gを量り取り、NMP80mL中で撹拌、溶解した後、撹拌しながら超純水5mLを加えて溶解させて、0.01N(0.01mol/L) NaOH標準液で滴定し、ポリマーの酸価を測定した。
酸化の測定の詳細はJIS K 0070:1992に記載の方法に従った。
また、ポリマー0.09gを0.9gのDMSO-d6(ジメチルスルホキシド-d6)に溶解し、1H-NMRを測定し、ポリマー中のアミック酸構造及びアミック酸エステル構造の合計モル量に対する、アミック酸エステル構造の含有量(エステル化率)を算出した。
【0370】
-環化体量の測定-
ポリマー0.09gを0.9gのDMSO-d6(ジメチルスルホキシド-d6)に溶解し、
1H-NMRを測定し、閉環体と環化体の芳香族プロトン比から算出した。
【化50】
【0371】
<合成例2>
〔3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-2)の合成〕
20.0g(64.5ミリモル)の3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4g(258ミリモル)のピリジンと、100gのダイグライムとを混合し(含水率88ppm)、60℃の温度で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl
2により塩素化した後、合成例1と同様の方法で4,4’-ジアミノジフェニルエーテルでポリイミド前駆体に変換し、合成例1と同様の方法でポリイミド前駆体A-2を得た。このポリイミド前駆体A-2の重量平均分子量は、20,000であった。得られたポリイミド前駆体A-2は、下記式(A-2)で表される繰り返し単位を含むと推測される。
エステル化率は98.5%、環化体量は0.02mmol/gであった。酸価は4.8mgKOH/gであった。
【化51】
【0372】
<合成例3>
〔4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-3)の合成〕
20.0g(64.5ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)と、100gのダイグライムとを混合し、60℃の温度で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl
2により塩素化した後、合成例1と同様の方法で4,4’-ジアミノジフェニルエーテルでポリイミド前駆体に変換し、合成例1と同様の方法でポリイミド前駆体を得た。このポリイミド前駆体の重量平均分子量は、18,000であった。得られたポリイミド前駆体A-3は、下記式(A-3)で表される繰り返し単位を含むと推測される。
エステル化率は99.0%、環化体量は0.018mmol/gであった。酸価は4.8mgKOH/gであった。
【化52】
【0373】
<合成例4>
〔4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル(オルトトリジン)及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-4)の合成〕
20.0g(64.5ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)と、100gのダイグライムとを混合し(含水率67ppm)、60℃の温度で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl
2により塩素化した後、合成例1と同様の方法で4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニルでポリイミド前駆体に変換し、合成例1と同様の方法でポリイミド前駆体A-4を得た。このポリイミド前駆体A-4の重量平均分子量は、19,000であった。得られたポリイミド前駆体A-4は、下記式(A-4)で表される繰り返し単位を含むと推測される。
エステル化率は98.0%、環化体量は0.02mmol/gであった。酸価は4.9mgKOH/gであった。
【化53】
【0374】
<合成例5>
〔4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-5)の合成〕
20.0g(64.5ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)と、200gのγ-ブチロラクトンとを混合し、室温で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。
次に、氷冷下、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)26.6gを25gのγ―ブチロラクトンに溶解した溶液を撹拌しながら滴下した。続いて4,4’-ジアミノジフェニルエーテル12.0gをγ-ブチロラクトン45mlに懸濁したものとDCC 3.8gを10gのγ-ブチロラクトンに溶解させた溶液を撹拌しながら60分かけて同時に加えた。更に室温で2時間撹拌した後、エチルアルコール30mlを加えて1時間撹拌し、次に、γ-ブチロラクトン100mlを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。次いで、3リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5,000rpm(revolutions per minute)の速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体をろ過して取得し、300mLのテトラヒドロフランに溶解後、2リットルの水の中で再度ポリイミド前駆体を沈殿物として得た。得られたポリイミド前駆体を減圧下で、45℃で3日間乾燥し、ポリイミド前駆体A-5を得た。このポリイミド前駆体A-5の重量平均分子量は、22,000であった。
エステル化率は97.5%、環化体量は0.15mmol/gであった。酸価は4.9mgKOH/gであった。
【0375】
<合成例6>
〔ピロメリット酸二無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-6)の合成〕
14.1g(64.5ミリモル)のピロメリット酸二無水物と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4g(258ミリモル)のピリジンと、200gのγ―ブチロラクトンとを混合し、室温で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、ピロメリット酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをDCCを用いて合成例5と同様の方法で4,4’-ジアミノジフェニルエーテルでポリイミド前駆体に変換し、合成例5と同様の方法でポリイミド前駆体A-6を得た。このポリイミド前駆体A-6の重量平均分子量は、20,000であった。
エステル化率は98.5%、環化体量は0.12mmol/gであった。酸価は4.8mgKOH/gであった。
【0376】
<合成例7>
〔3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-7)の合成〕
19.0g(64.5ミリモル)の3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4g(258ミリモル)のピリジンと、200gのγ―ブチロラクトンとを混合し、室温で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをDCCを用いて合成例5と同様の方法で4,4’-ジアミノジフェニルエーテルでポリイミド前駆体に変換し、合成例5と同様の方法でポリイミド前駆体A-7を得た。このポリイミド前駆体A-7の重量平均分子量は、21,000であった。
エステル化率は98.8%、環化体量は0.13mmol/gであった。酸価は4.8mgKOH/gであった。
【0377】
<合成例8>
〔4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル(オルトトリジン)及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-8)の合成〕
19.0g(64.5ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4g(258ミリモル)のピリジンと、200gのγ―ブチロラクトンとを混合し、室温で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをDCCを用いて合成例5と同様の方法で4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル(オルトトリジン)でポリイミド前駆体に変換し、合成例5と同様の方法でポリイミド前駆体A-8を得た。このポリイミド前駆体A-8の重量平均分子量は、19,000であった。
エステル化率は99.0%、環化体量は0.08mmol/gであった。酸価は4.8mgKOH/gであった。
【0378】
<合成例9>
〔3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-9)の合成〕
20.0g(64.5ミリモル)の3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4g(258ミリモル)のピリジンと、100gのダイグライムとを混合し(含水率88ppm)、60℃の温度で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl2により塩素化した。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、100mLのN-メチルピロリドンに11.08g(58.7ミリモル)の4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を、-15℃で20分かけて反応混合物に滴下した。次いで、反応混合物を-5℃で1時間反応させたのち、エタノールを70g加えて、0℃で1晩撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5,000rpm(revolutions per minute)の速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体をろ過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再びろ過した。次いで、得られたポリイミド前駆体を減圧下で、45℃で3日間乾燥し、ポリイミド前駆体A-9を得た。このポリイミド前駆体A-9の重量平均分子量は、20,000であった。
エステル化率は98.0%、環化体量は0.011mmol/gであった。酸価は4.9mgKOH/gであった。
【0379】
<合成例10>
〔3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-10)の合成〕
20.0g(64.5ミリモル)の3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4g(258ミリモル)のピリジンと、100gのダイグライムとを混合し(含水率88ppm)、60℃の温度で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl2により塩素化した。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、100mLのN-メチルピロリドンに11.08g(58.7ミリモル)の4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を、-5~0℃で20分かけて反応混合物に滴下した。次いで、反応混合物を0℃で1時間反応させたのち、ピリジン0.204g(2.58ミリモル)とエタノールを70g加えて、室温で1晩撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5,000rpm(revolutions per minute)の速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体をろ過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再びろ過した。次いで、得られたポリイミド前駆体を減圧下で、45℃で3日間乾燥し、ポリイミド前駆体A-10を得た。このポリイミド前駆体A-10の重量平均分子量は、20,000であった。
エステル化率は98.0%、環化体量は0.85mmol/gであった。酸価は4.9mgKOH/gであった。
【0380】
<合成例11>
〔ピロメリット酸二無水物、4,4-ジアミノジフェニルエーテルおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-11)の合成〕
14.06g(64.5ミリモル)のピロメリット酸二無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、16.6g(127.7ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)と、100gのダイグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)を混合し、40℃の温度で4時間撹拌して、ピロメリット酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±4℃に保ちながら16.12g(135.5ミリモル)のSOCl2を10分かけて加えた。SOCl2を加えている間、粘度が増加した。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、100mLのN-メチルピロリドンに11.08g(58.7ミリモル)の4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を、-5~0℃で20分かけて反応混合物に滴下した。次いで、反応混合物を0℃で1時間反応させたのち、エタノールを70g加えて、室温で1晩撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5,000rpm(revolutions per minute)の速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体をろ過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再びろ過した。次いで、得られたポリイミド前駆体を減圧下で、45℃で3日間乾燥し、ポリイミド前駆体A-11を得た。このポリイミド前駆体A-11の重量平均分子量は、19,000であった。
エステル化率は97.1%、環化体量は0.015mmol/gであった。酸価は4.9mgKOH/gであった。
【0381】
<合成例12>
〔4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-12)の合成〕
20.0g(64.5ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)と、100gのダイグライムとを混合し、60℃の温度で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl2により塩素化した後、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルの仕込み量を11.99g(59.9ミリモル)にした以外は合成例1と同様の方法でポリイミド前駆体に変換し、ポリイミド前駆体A-12を得た。このポリイミド前駆体の重量平均分子量は、40,000であった。
エステル化率は98.1%、環化体量は0.017mmol/gであった。酸価は4.9mgKOH/gであった。
【0382】
<合成例13>
〔4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-13)の合成〕
20.0g(64.5ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)と、100gのダイグライムとを混合し、60℃の温度で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl2により塩素化した後、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルの仕込み量を10.33g(51.6ミリモル)にした以外は合成例1と同様の方法でポリイミド前駆体に変換し、ポリイミド前駆体A-13を得た。このポリイミド前駆体の重量平均分子量は、3,200であった。
エステル化率は98.5%、環化体量は0.015mmol/gであった。酸価は4.8mgKOH/gであった。
【0383】
<合成例14>
〔4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-14)の合成〕
20.0g(64.5ミリモル)の4,4’-オキシジフタル酸無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、16.8g(129ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)と、100gのダイグライムとを混合し、60℃の温度で10時間撹拌した。さらに0.84g(6.45ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートを添加し、2時間撹拌して、4,4’-オキシジフタル酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl2により塩素化した後、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルの仕込み量を11.51g(57.5ミリモル)にした以外は合成例1と同様の方法でポリイミド前駆体に変換し、ポリイミド前駆体A-14を得た。このポリイミド前駆体の重量平均分子量は、14,500であった。
エステル化率は98.4%、環化体量は0.017mmol/gであった。酸価は4.8mgKOH/gであった。
【0384】
<比較用合成例1’>
〔3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-1’)の合成〕
20.0g(64.5ミリモル)の3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、15.5g(119ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4g(258ミリモル)のピリジンと、100gのダイグライムとを混合し(含水率88ppm)、40℃の温度で4時間撹拌して、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±4℃に保ちながら16.12g(135.5ミリモル)のSOCl2を10分かけて加えた。SOCl2を加えている間、粘度が増加した。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、100mLのN-メチルピロリドンに11.08g(58.7ミリモル)の4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を、-5~0℃で20分かけて反応混合物に滴下した。次いで、反応混合物を0℃で1時間反応させたのち、エタノールを70g加えて、室温で1晩撹拌した。次いで、5リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5,000rpm(revolutions per minute)の速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体をろ過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再びろ過した。次いで、得られたポリイミド前駆体を減圧下で、45℃で3日間乾燥し、ポリイミド前駆体A-1’を得た。このポリイミド前駆体A-1’の重量平均分子量は、19,000であった。
エステル化率は90.0%、環化体量は0.012mmol/gであった。酸価は6.3mgKOH/gであった。
【0385】
<比較用合成例2’>
〔3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートからのポリイミド前駆体(A-2’)の合成〕
20.0g(64.5ミリモル)の3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(140℃で12時間乾燥したもの)と、15.9g(124ミリモル)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.05gのハイドロキノンと、20.4gのピリジン(258ミリモル)と、100gのダイグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)を混合し、40℃の温度で4時間撹拌して、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。次いで、得られたジエステルをSOCl2により塩素化した。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±4℃に保ちながら16.12g(135.5ミリモル)のSOCl2を10分かけて加えた。SOCl2を加えている間、粘度が増加した。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、100mLのN-メチルピロリドンに11.08g(58.7ミリモル)の4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を、-15℃で20分かけて反応混合物に滴下した。次いで、反応混合物を-5℃で1時間反応させたのち、エタノールを70g加えて、0℃で1時間撹拌した。撹拌終了後、直ちに5リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5,000rpm(revolutions per minute)の速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体をろ過して取得し、4リットルの水の中で再度30分間撹拌し再びろ過した。次いで、得られたポリイミド前駆体を減圧下で、45℃で3日間乾燥し、ポリイミド前駆体A-2’を得た。このポリイミド前駆体A-2’の重量平均分子量は、19,000であった。
エステル化率は94.0%、環化体は検出されなかった。酸価は5.8mgKOH/gであった。
【0386】
<実施例及び比較例>
各実施例において、それぞれ、下記表に記載の成分を混合し、各硬化性樹脂組成物を得た。また、各比較例において、それぞれ、下記表に記載の成分を混合し、各比較用組成物を得た。
具体的には、表に記載の各成分の含有量は、表の「質量部」欄に記載の量(質量部)とした。
得られた硬化性樹脂組成物及び比較用組成物を、細孔の幅が0.8μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターを用いて加圧ろ過した。
また、表中、「-」の記載は該当する成分を組成物が含有していないことを示している。
【0387】
【0388】
表に記載した各成分の詳細は下記の通りである。
【0389】
〔樹脂〕
・A-1~A-14、A-1’、A-2’:上記合成例により得られたポリマー(ポリイミド前駆体)A-1~A-14、A-1’、A-2’
【0390】
〔熱塩基発生剤〕
・B-1~B-5:下記式(B-1)~式(B-5)で表される化合物
【化54】
【0391】
〔ラジカル重合開始剤〕
・C-1:IRGACURE OXE 01(BASF社製)
・C-2:IRGACURE OXE 02(BASF社製)
・C-3:IRGACURE 369(BASF社製)
・C-4:下記構造の化合物
【化55】
【0392】
〔ラジカル架橋剤〕
・D-1:A-DPH(新中村化学工業(株)製)
・D-2:SR-209(サートマー社製、下記構造の化合物)
・D-3:A-TMMT(新中村化学工業(株)製)
【化56】
【0393】
〔重合禁止剤〕
・E-1:2-ニトロソ-1-ナフトール(東京化成工業(株)製)
・E-2:パラベンゾキノン(東京化成工業(株)製)
・E-3:パラメトキシフェノール(東京化成工業(株)製)
【0394】
〔マイグレーション抑制剤〕
・F-1~F-4:下記構造の化合物
【化57】
【0395】
〔シランカップリング剤(金属接着性改良剤)〕
・G-1~G-3:下記構造の化合物。以下の構造式中、Etはエチル基を表す。
【化58】
【0396】
〔溶剤〕
・H-1:N-メチル-2-ピロリドン
・H-2:乳酸エチル
・H-3:γ-ブチロラクトン:ジメチルスルホキシド=80質量%:20質量%の混合溶剤
【0397】
〔その他の添加剤〕
・J-1:下記式(J-1)で表される化合物
・J-2:N-フェニルジエタノールアミン-2-ピロリドン
【化59】
【0398】
<評価>
〔保存安定性の評価〕
各実施例及び比較例において調製した硬化性樹脂組成物及び比較用組成物を、それぞれ、E型粘度計を用いて粘度(0日)を測定した。遮光、密閉容器中、25℃で14日間、組成物を静置した後、再度E型粘度計を用いて粘度(14日)を測定した。以下の式から、粘度変動率(%)を算出した。得られた粘度変動率(%)から下記評価基準に従って評価を行い、評価結果を下記表の「保存安定性」の欄に記載した。粘度変動率が低ければ低い程、保存安定性が高いことを表す。
粘度変動率(%)=|100×{1-(粘度(14日)/粘度(0日))}|
粘度の測定は25℃で行うこととし、その他はJIS Z 8803:2011に準拠することとした。
―評価基準―
A:粘度変動率が5%以下であった。
B:粘度変動率が5%を超えて10%以下であった。
C:粘度変動率が10%を超えて15%以下であった。
D:粘度変動率が15%を超えて20%以下であった。
【0399】
〔信頼性評価〕
各実施例及び比較例において調製した硬化性樹脂組成物又は比較用組成物を、それぞれ、銅基板上にスピンコート法により層状に適用して、硬化性樹脂組成物層又は比較用組成物層を形成した。得られた硬化性樹脂組成物層又は比較用組成物層を形成した銅基板をホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、銅基板上に20μmの厚さの均一な硬化性樹脂組成物層又は比較用組成物層とした。銅基板上の硬化性樹脂組成物層又は比較用組成物層を、ステッパー(Nikon NSR 2005 i9C)を用いて、500mJ/cm2の露光エネルギーで100μm四方の正方形状の非マスク部が形成されたフォトマスクを使用してi線により露光し、その後シクロペンタノンで60秒間現像し、PGMEAで20秒間リンスして、100μm四方の正方形状の樹脂層を得た。さらに、窒素雰囲気下で230℃で3時間加熱して樹脂層(パターン)を形成した。上記加熱はホットプレートにより行った。上記加熱後に、175℃の恒温槽内で1000時間経過させた。上記時間の経過後、銅基板上の100μm四方の正方形状の樹脂層に対して、25℃、65%相対湿度(RH)の環境下にて、ボンドテスター(XYZTEC社製、CondorSigma)を用いて、せん断力を測定し、下記評価基準に従って評価した。評価結果は下記表の「信頼性」の欄に記載した。せん断力が大きければ大きいほど、信頼性試験後の硬化物の金属密着性(銅密着性)に優れるといえる。
せん断力が大きければ大きいほど硬化物の金属密着性(銅密着性)に優れるといえる。
―評価基準―
A:せん断力が30gfを超えた。
B:せん断力が25gfを超えて30gf以下であった。
C:せん断力が25gf以下であった。
また、1gfは0.00980665Nである。
【0400】
〔耐薬品性評価〕
各実施例及び比較例において、上述の密着性評価と同様の方法により、銅基板上に20μmの厚さの均一な硬化性樹脂組成物層又は比較用組成物層を形成した。
銅基板上の硬化性樹脂組成物層又は比較用組成物層を、ステッパー(Nikon NSR 2005 i9C)を用いて、500mJ/cm2の露光エネルギーでi線により全面露光した後、窒素雰囲気下で5℃/分の昇温速度で昇温し230℃で3時間加熱して硬化物を得た。
耐薬品性の評価においては、簡略化のため現像は省略した。
得られた硬化物を下記の薬液に下記の条件で浸漬し、溶解速度を算定した。
薬液:ジメチルスルホキシド(DMSO)と25質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液の90:10(質量比)の混合物
評価条件:薬液中に硬化物を75℃で15分間浸漬して浸漬前後の膜厚を比較し、溶解速度(nm/分)を算出した。膜厚測定は、エリプソメーター(Foothill社製KT-22)で塗布面10点の膜厚測定を実施し、その算術平均値として求めた。
評価は下記評価基準に従って行った。評価結果は下記表の「耐薬品性」の欄に記載した。溶解速度の値が小さいほど、硬化物は耐薬品性に優れるといえる。
―評価基準―
A:溶解速度が250nm/分未満である。
B:溶解速度が250nm/分以上400nm/分未満である。
C:400nm/分以上550nm/分未満である。
D:溶解速度が550nm/分以上である。に細分化してください。
【0401】
【0402】
<実施例101>
上述の密着性評価、信頼性評価、耐薬品性評価における230℃で3時間(昇温速度6℃/秒)加熱を赤外線ランプ加熱装置(アドバンス理工社製、RTP-6)を用いて実施した以外は実施例1と同様の条件により膜を作成した。
保存安定性、信頼性、耐薬品性のいずれにおいても実施例1と同様の結果が得られた。
【0403】
<実施例102>
実施例11において、ステッパー(Nikon NSR 2005 i9C)に代えて、ダイレクト露光装置(アドテック DE-6UH III)を用いて露光した以外は実施例11と同様の方法により、信頼性評価及び耐薬品性の評価を実施した。
信頼性評価においては、露光部が100μm四方の正方形状となるように露光した。耐薬品性評価においては、硬化性樹脂組成物層又は比較用組成物層の全面を露光した。
露光量は、いずれの評価においても500mJ/cm2とした。
信頼性評価、耐薬品性の評価のいずれの評価においても、それぞれ、実施例11と同様の結果が得られた。
【0404】
<実施例103>
実施例11において樹脂A-1を下記樹脂A-15(重量平均分子量20,500、エステル化率97.5%,環化体量0.015mmol/g)、熱塩基発生剤B-1を下記光酸発生剤B-6に変更し、ラジカル架橋剤D-1、重合禁止剤E-3を除いた以外は、実施例11と同様の方法により硬化性樹脂組成物を調製した。得られた硬化性樹脂組成物を用い、保存安定性の評価、信頼性評価及び耐薬品性の評価を行った。
保存安定性の評価は、実施例11と同様の方法により行った。
信頼性評価は、フォトマスクを、100μm四方の正方形状のマスク部が形成されたフォトマスクに変更し、現像を2.38%質量テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて30秒間で行い、純水でリンスしてパターンを形成した以外は、実施例11と同様の方法により行った。
耐薬品性の評価は、全面露光を行わなかった以外は、実施例11と同様の方法により行った。
保存安定性の評価、信頼性評価及び耐薬品性の評価における評価結果は、いずれも、実施例11におけるそれぞれの評価と同等の結果であった。
【化60】
【化61】
【0405】
<実施例201>
実施例1において使用した硬化性樹脂組成物を、表面に銅薄層が形成された樹脂基材の銅薄層の表面にスピンコート法により層状に適用して、100℃で4分間乾燥し、膜厚20μmの感光膜を形成した後、ステッパー((株)ニコン製、NSR1505 i6)を用いて露光した。露光はマスク(パターンが1:1ラインアンドスペースであり、線幅が10μmであるバイナリマスク)を介して、波長365nmで行った。露光後、100℃で4分間加熱した。上記加熱後、シクロヘキサノンで2分間現像し、PGMEAで30秒間リンスし、層のパターンを得た。
次いで、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、230℃に達した後、230℃で3時間維持して、再配線層用層間絶縁膜を形成した。この再配線層用層間絶縁膜は、絶縁性に優れていた。
また、これらの再配線層用層間絶縁膜を使用して半導体デバイスを製造したところ、問題なく動作することを確認した。