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特許7558291インクセット、積層体、及び、積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】インクセット、積層体、及び、積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/52 20140101AFI20240920BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20240920BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20240920BHJP
【FI】
C09D11/52
H05K3/10
C09D11/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022553506
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2021028607
(87)【国際公開番号】W WO2022070593
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】63/085,155
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勇介
(72)【発明者】
【氏名】横井 和公
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】竹下 紘平
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102499(JP,A)
【文献】特開2012-193229(JP,A)
【文献】特開2016-041820(JP,A)
【文献】特開2016-069416(JP,A)
【文献】特開2019-096442(JP,A)
【文献】特開2012-060084(JP,A)
【文献】特開2010-182776(JP,A)
【文献】特開2015-183180(JP,A)
【文献】特開2014-189680(JP,A)
【文献】特表2017-516887(JP,A)
【文献】特開2004-241514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0112089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00
C09D 11/52
H05K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤及び重合性モノマーを含む絶縁インクと、
金属錯体及び金属塩のうち少なくとも一方を含む導電インクと、を含有し、
前記金属錯体は、金属塩と錯化剤とを反応させることにより得られる金属錯体である、インクセット。
【請求項2】
前記重合開始剤は、アルキルフェノン化合物である、請求項1に記載のインクセット。
【請求項3】
前記重合開始剤は、α-アミノアルキルフェノン化合物及びベンジルケタールアルキルフェノン化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載のインクセット。
【請求項4】
前記重合開始剤の含有量は、前記絶縁インクの全量に対して2質量%~10質量%である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項5】
前記重合性モノマーに占める多官能重合性モノマーの割合が50質量%以下である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項6】
前記絶縁インクは、N-ビニル化合物を含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項7】
前記絶縁インクによって形成される絶縁層上における前記導電インクの接触角は60°以下である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項8】
前記金属錯体は、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、アミン、及び炭素数8~20のカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造を有する金属錯体であり、
前記金属塩は、金属カルボン酸塩である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項9】
前記絶縁インクと前記導電インクを同質量としたとき、
前記導電インク中におけるカルボン酸とアミンの合計質量に対する、前記絶縁インクに含まれる前記重合開始剤の質量の比率が0.06~0.5である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項10】
プリント基板に用いられる、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のインクセット。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のインクセットが用いられ、
基材上に、前記絶縁インクを付与して絶縁層を得る工程と、
前記絶縁層上に、前記導電インクを付与して導電層を得る工程と、を含む積層体の製造方法。
【請求項12】
前記絶縁層の厚さに対する前記導電層の厚さの比率を0.5未満とする、請求項11に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
前記導電層を得る工程では、前記導電インクを付与した後、熱又は光を用いて、前記導電インクを硬化させる、請求項11又は請求項12に記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
前記導電層を得る工程では、前記導電インクを付与する工程を2回以上繰り返す、請求項11~請求項13のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項15】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のインクセットが用いられ、
基材と、
前記基材上に設けられた前記絶縁インクの硬化物である絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた前記導電インクの硬化物である導電層と、を含む積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクセット、積層体、及び、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板においては、電磁波ノイズ、静電気ノイズ等のノイズが問題になることがある。従来、銀粒子インクを用いた熱焼結によって導電層を形成する方法が知られている。
【0003】
例えば、特開2003-183401公報には、一分子中に2個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸樹脂(A)、硬化成分(B)、硬化剤(C)およびpHが7.0を上回る導電性フィラー(D)を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物が記載されている。また、米国特許第10597547号明細書には、銀錯体を含むインク組成物が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁層上に設けられた導電層において、導電性の向上が要求されている。絶縁層上に導電性により優れた導電層を設けるためには、絶縁層を形成するための絶縁インクと、導電層を形成するための導電インクとの組み合わせが重要である。
【0005】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の一実施形態によれば、導電性に優れる積層体を得ることができるインクセットが提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、導電性に優れる積層体及び積層体の製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の態様を含む。
<1>オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤及び重合性モノマーを含む絶縁インクと、金属錯体及び金属塩のうち少なくとも一方を含む導電インクと、を含有するインクセット。
<2>重合開始剤は、アルキルフェノン化合物である、<1>に記載のインクセット。
<3>重合開始剤は、α-アミノアルキルフェノン化合物及びベンジルケタールアルキルフェノン化合物からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載のインクセット。
<4>重合開始剤の含有量は、絶縁インクの全量に対して2質量%~10質量%である<1>~<3>のいずれか1つに記載のインクセット。
<5>重合性モノマーに占める多官能重合性モノマーの割合が50質量%以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のインクセット。
<6>絶縁インクは、N-ビニル化合物を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載のインクセット。
<7>絶縁インクによって形成される絶縁層上における導電インクの接触角は60°以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のインクセット。
<8>金属錯体は、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、アミン、及び炭素数8~20のカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造を有する金属錯体であり、金属塩は、金属カルボン酸塩である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のインクセット。
<9>絶縁インクと導電インクを同質量としたとき、導電インク中におけるカルボン酸とアミンの合計質量に対する、絶縁インクに含まれる重合開始剤の質量の比率が0.06~0.5である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のインクセット。
<10>プリント基板に用いられる、<1>~<9>のいずれか1つに記載のインクセット。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載のインクセットが用いられ、基材上に、絶縁インクを付与して絶縁層を得る工程と、絶縁層上に、導電インクを付与して導電層を得る工程と、を含む積層体の製造方法。
<12>絶縁層の厚さに対する導電層の厚さの比率を0.5未満とする、<11>に記載の積層体の製造方法。
<13>導電層を得る工程では、導電インクを付与した後、熱又は光を用いて、導電インクを硬化させる、<11>又は<12>に記載の積層体の製造方法。
<14>導電層を得る工程では、導電インクを付与する工程を2回以上繰り返す、<11>~<13>のいずれか1つに記載の積層体の製造方法。
<15><1>~<10>のいずれか1つに記載のインクセットが用いられ、基材と、基材上に設けられた絶縁インクの硬化物である絶縁層と、絶縁層上に設けられた導電インクの硬化物である導電層と、を含む積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、導電性に優れる積層体を得ることができるインクセットが提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、導電性に優れる積層体及び積層体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示のインクセット、積層体、及び積層体の製造方法について詳細に説明する。
【0009】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「工程」という語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
本明細書において、「画像」とは、膜全般を意味し、「画像記録」とは、画像(すなわち、膜)の形成を意味する。また、本明細書における「画像」の概念には、ベタ画像(solid image)も包含される。
【0012】
[インクセット]
本開示のインクセットは、オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤及び重合性モノマーを含む絶縁インクと、金属錯体及び金属塩のうち少なくとも一方を含む導電インクと、を含有する。本開示のインクセットを用いることにより、導電性に優れる積層体を得ることができる。この理由は、以下のように推定される。
【0013】
本開示のインクセットにおいて、絶縁インクは、重合開始剤及び重合性モノマーを含み、例えば、活性エネルギー線を照射することにより、重合開始剤から発生したラジカルによって重合性モノマーの重合が進行する。重合性モノマーの重合によって、絶縁インクが硬化することによって、絶縁層が形成される。また、絶縁層上に導電インクを付与し、加熱することにより、導電層が形成される。本発明者らは、絶縁層の形成において、絶縁層における未硬化成分が導電性インクへ移行するのを抑制することにより、導電性が向上することを見出した。特に、絶縁層における未硬化成分として、重合開始剤の分解物に着目した。重合開始剤の分解物が導電性インクへ移行するのを抑制することが、導電性の向上に寄与していることを見出した。本開示のインクセットにおいて、絶縁インクに含まれるオキシム化合物、アルキルフェノン化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤は、分解しても導電性インクへ移行しにくいか、又は、分解して導電性インクへ移行したとしても導電性を低下させにくいものと考えられる。
【0014】
さらに、本開示のインクセットにおいて、導電インクは、金属錯体及び金属塩のうち少なくとも一方を含む。金属錯体及び金属塩のうち少なくとも一方を含む導電インクによって形成される導電層は、金属粒子を含む導電インクによって形成される導電層と比較して空隙が少ない。そのため、導電性に優れる積層体を得ることができる。
【0015】
例えば、特開2003-183401公報には、導電性フィラーを含む硬化性樹脂組成物が記載されている。導電性フィラーを含む硬化性樹脂組成物によって形成される導電層は、空隙が存在することにより、高い導電性が得られないと考えられる。また、特開2003-183401公報には、絶縁インクと導電インクとの組み合わせに着目した記載はない。
【0016】
一方、米国特許第10597547号明細書には、銀錯体を含むインク組成物が記載されている。しかし、米国特許第10597547号明細書においても、絶縁インクと導電インクとの組み合わせに着目した記載はない。
【0017】
<絶縁インク>
本開示のインクセットにおいて、絶縁インクは、オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤及び重合性モノマーを含む。
【0018】
本開示において、絶縁インクとは、絶縁性を有する絶縁層を形成するためのインクを意味する。絶縁性とは、体積抵抗率が1010Ωcm以上である性質を意味する。
【0019】
(重合開始剤)
絶縁インクは、オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤を含む。
【0020】
オキシム化合物としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンが挙げられる。
【0021】
また、オキシム化合物は、カルバゾール環のN位にオキシムが連結した特表2009-519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号明細書に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010-15025号公報及び米国特許公開第2009-292039号明細書に記載の化合物、国際公開第2009/131189号明細書に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許第7556910号明細書に記載の化合物;又は、405nmに吸収極大を有し、g線光源に対して良好な感度を有する特開2009-221114号公報に記載の化合物であってもよい。
【0022】
また、オキシム化合物は、フルオレン環を有するオキシム化合物であってもよい。フルオレン環を有するオキシム化合物としては、例えば、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0023】
また、オキシム化合物は、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物であってもよい。ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物としては、例えば、国際公開第2015/036910号に記載の化合物OE-01~OE-75が挙げられる。
【0024】
また、オキシム化合物は、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物であってもよい。このようなオキシム化合物としては、例えば、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられる。
【0025】
また、オキシム化合物は、フッ素原子を有するオキシム化合物であってもよい。フッ素原子を有するオキシム化合物としては、例えば、特開2010-262028号公報に記載の化合物;特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40;及び、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)が挙げられる。
【0026】
また、オキシム化合物は、ニトロ基を有するオキシム化合物であってもよい。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体であってもよい。ニトロ基を有するオキシム化合物としては、例えば、特開2013-114249号公報の段落0031~0047、特開2014-137466号公報の段落0008~0012、0070~0079に記載の化合物;特許第4223071号公報の段落0007~0025に記載の化合物;及び、アデカアークルズNCI-831(アデカ社製)が挙げられる。
【0027】
オキシム化合物の市販品としては、例えば、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02、IRGACURE OXE03、及びIRGACURE OXE04(BASFジャパン社製);TR-PBG-304、TR-PBG-309、及びTR-PBG-305(CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD製);並びに、アデカアークルズNCI-930及びアデカオプトマーN-1919(アデカ社製)が挙げられる。
【0028】
アルキルフェノン化合物としては、例えば、α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物、α-アミノアルキルフェノン化合物、及びベンジルケタールアルキルフェノン化合物が挙げられる。
【0029】
α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物としては、例えば、2,2’-ジヒドロキシ-2,2’-ジメチル-1,1’-[メチレンビス(4,1-フェニレン)]ビス(プロパン-1-オン)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-2-ヒドロキシ-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。
【0030】
α-アミノアルキルフェノン化合物としては、例えば、2-メチル-1-フェニル-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(ヘキシル)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-エチル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-ブタン-1-オンが挙げられる。
【0031】
ベンジルケタールアルキルフェノン化合物としては、例えば、アルキルフェノン化合物は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンが挙げられる。
【0032】
アルキルフェノン化合物の市販品としては、例えば、Omnirad 651、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E(IGM Resins B.V.社製)が挙げられる。
【0033】
チタノセン化合物としては、例えば、ジ‐η(5)‐シクロペンタジエニルビス[2,6‐ジフルオロ‐3‐(ピロール‐1‐イル)フェニル]チタン(IV)、ジシクロペンタジエニル-チタニウム-ジクロリド、ジシクロペンタジエニル-チタニウム-ビスフェニル、ジシクロペンタジエニル-チタニウム-ビス-2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル-1-イル、ジシクロペンタジエニル-チタニウム-ビス-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル-1-イル、ジシクロペンタジエニル-チタニウム-ビス-2,4,6-トリフルオロフェニル-1-イル、ジシクロペンタジエニル-チタニウム-2,6-ジフルオロフェニル-1-イル、ジシクロペンタジエニル-チタニウム-ビス-2,4-ジフルオロフェニル-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル-チタニウム-ビス-2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル-チタニウム-ビス-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル-1-イル、ジメチルシクロペンタジエニル-チタニウム-ビス-2,4-ジフルオロフェニル-1-イル、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(ピリ-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6-ジフルオロ-3-(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、及びビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6-ジフルオロ-3-(N-ブチルビアロイル-アミノ)フェニル〕チタンが挙げられる。
【0034】
中でも、導電性をより向上させる観点から、絶縁インクに含まれる重合開始剤は、アルキルフェノン化合物であることが好ましく、α-アミノアルキルフェノン化合物及びベンジルケタールアルキルフェノン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。アルキルフェノン化合物は分解しても、分解物が導電性インクへ移行しにくいと考えられる。また、アルキルフェノン化合物の分解物は導電性インクへ移行したとしても、導電性を低下させにくいと考えられる。
【0035】
オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤の含有量は、絶縁インクの全量に対して、2質量%~10質量%であることが好ましく、3質量%~9質量%であることがより好ましい。上記含有量が2質量%以上であると、絶縁層と導電層との密着性が向上する。一方、上記含有量が10質量%以下であると、導電性が向上し、かつ、絶縁層と導電層との密着性が向上する。
【0036】
絶縁インクは、オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤以外の他の重合開始剤を含有していてもよい。導電性の観点から、絶縁インクは、他の重合開始剤を含まないことが好ましい。
【0037】
他の重合開始剤としては、例えば、アシルホスフィンオキシド化合物が挙げられる。絶縁インクが他の重合開始剤を含む場合には、導電性の観点から、他の重合開始剤の含有量は、絶縁インクの全量に対して、5質量%以下であることが好ましい。
【0038】
(重合性モノマー)
絶縁インクは、少なくとも1種の重合性モノマーを含む。
【0039】
重合性モノマーとは、1分子中に少なくとも1つの重合性基を有するモノマーのことをいう。重合性モノマーにおける重合性基は、カチオン重合性基であっても、ラジカル重合性基であってもよいが、硬化性の観点から、ラジカル重合性基であることが好ましい。また、ラジカル重合性基は、硬化性の観点から、エチレン性不飽和基であることが好ましい。
【0040】
本開示において、モノマーとは、分子量が1000以下である化合物のことをいう。分子量は、化合物を構成する原子の種類及び数より算出することができる。
【0041】
重合性モノマーは、重合性基を1つ有する単官能重合性モノマーであってもよく、重合性基を2つ以上有する多官能重合性モノマーであってもよい。
【0042】
-単官能重合性モノマー-
単官能重合性モノマーは、重合性基を1つ有するモノマーであれば特に限定されない。単官能重合性モノマーは、硬化性の観点から、単官能のラジカル重合性モノマーであることが好ましく、単官能エチレン性不飽和モノマーであることがより好ましい。
【0043】
単官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル及び単官能N-ビニル化合物が挙げられる。
【0044】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert-オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、4-ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2-テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5-テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニルメチル)(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネートが挙げられる。
【0045】
中でも、耐熱性を向上させる観点から、単官能(メタ)アクリレートは、芳香環又は脂肪族環を有する単官能(メタ)アクリレートであることが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、又はジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-トであることがより好ましい。
【0046】
単官能(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
【0047】
単官能芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、3-プロピルスチレン、4-プロピルスチレン、3-ブチルスチレン、4-ブチルスチレン、3-ヘキシルスチレン、4-ヘキシルスチレン、3-オクチルスチレン、4-オクチルスチレン、3-(2-エチルヘキシル)スチレン、4-(2-エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4-t-ブトキシカルボニルスチレン及び4-t-ブトキシスチレンが挙げられる。
【0048】
単官能ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、n-ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4-メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2-ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル及びフェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルが挙げられる。
【0049】
単官能N-ビニル化合物としては、例えば、N-ビニル-ε-カプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、及びN-ビニルフタルイミドが挙げられる。
【0050】
中でも、表面硬化性及び密着性を向上させる観点から、単官能N-ビニル化合物は、ヘテロ環構造を有する化合物であることが好ましい。
【0051】
-多官能重合性モノマー-
多官能重合性化合物は、重合性基を2つ以上有するモノマーであれば特に限定されない。多官能重合性化合物は、硬化性の観点から、多官能のラジカル重合性モノマーであることが好ましく、多官能エチレン性不飽和モノマーであることがより好ましい。
【0052】
多官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能ビニルエーテル、及び多官能アリル化合物が挙げられる。
【0053】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO付加トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート及びトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0054】
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、EO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、PO付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、EO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、PO付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、EO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、PO付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、EO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル及びPO付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルが挙げられる。
【0055】
多官能アリル化合物としては、例えば、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、及びピロメリット酸テトラアリルが挙げられる。
【0056】
中でも、硬化性の観点から、多官能重合性モノマーは、(メタ)アクリロイル基以外の部分の炭素数が3~11のモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリロイル基以外の部分の炭素数が3~11のモノマーとして、具体的には、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(EO鎖 n=4)、又は1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0057】
重合性モノマーに占める多官能重合性モノマーの割合は60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。重合性モノマーに占める多官能重合性モノマーの割合が60質量%以下であると、硬化収縮による残留応力が大きくなりすぎず、絶縁層と導電層との密着性、及び、基材と絶縁層との密着性に優れる。重合性モノマーに占める多官能重合性モノマーの割合の下限値は0質量%であることが好ましく、20質量%であることがより好ましい。
【0058】
本開示において、絶縁インクは、N-ビニル化合物を含むことが好ましく、N-ビニルカプロラクタムを含むことがより好ましい。N-ビニル化合物は、空気界面に存在しやすく、インク膜の表面硬化性を高める機能を有する。そのため、絶縁インクにN-ビニル化合物が含まれていると、絶縁層における未硬化成分が導電インクへ移行するのが抑制され、導電性が向上する。また、N-ビニル化合物は、極性が高いため、導電層との相互作用が強い。そのため、絶縁インクにN-ビニル化合物が含まれていると、絶縁層と導電層との密着性が向上する。
【0059】
本開示において、絶縁インクは、重合開始剤及び重合性モノマー以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、増感剤、界面活性剤及び添加剤が挙げられる。
【0060】
(増感剤)
絶縁インクは、少なくとも1種の増感剤を含有してもよい。
【0061】
増感剤として、例えば、多核芳香族化合物(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、及び2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン)、キサンテン系化合物(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、及びローズベンガル)、シアニン系化合物(例えば、チアカルボシアニン及びオキサカルボシアニン)、メロシアニン系化合物(例えば、メロシアニン、及びカルボメロシアニン)、チアジン系化合物(例えば、チオニン、メチレンブルー、及びトルイジンブルー)、アクリジン系化合物(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、及びアクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリリウム系化合物(例えば、スクアリリウム)、クマリン系化合物(例えば、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン)、チオキサントン系化合物(例えば、イソプロピルチオキサントン)、及びチオクロマノン系化合物(例えば、チオクロマノン)が挙げられる。中でも、増感剤は、チオキサントン系化合物であることが好ましい。
【0062】
チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4-ブトキシカルボニルチオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]チオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノエチル)チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチルチオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシベンジル)チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチルチオキサントン、n-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、n-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)チオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-ポリエチレングリコールエステル、及び2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリドが挙げられる。
【0063】
チオキサントン系化合物の市販品としては、Lambson社製のSPEEDCUREシリーズ、例えば、SPEEDCURE ITX(2-イソプロピルチオキサントン)が挙げられる。
【0064】
絶縁インクが増感剤を含有する場合、増感剤の含有量は特に限定されないが、絶縁インクの全量に対して、1.0質量%~15.0質量%であることが好ましく、1.5質量%~5.0質量%であることがより好ましい。
【0065】
増感剤の含有量に対する重合開始剤の含有量の質量比率は、1より大きいことが好ましく、1.5より大きいことがより好ましい。また、上記質量比率の上限値は特に限定されず、例えば、10である。
【0066】
(連鎖移動剤)
絶縁性保護層形成用インクは、少なくとも1種の連鎖移動剤を含有してもよい。
連鎖移動剤は、光重合反応の反応性を向上させる観点から、多官能チオールであることが好ましい。
【0067】
多官能性チオールとしては、例えば、ヘキサン-1,6-ジチオール、デカン-1,10-ジチオール、ジメルカプトジエチルエーテル、ジメルカプトジエチルスルフィド等の脂肪族チオール類、キシリレンジメルカプタン、4,4′-ジメルカプトジフェニルスルフィド、1,4-ベンゼンジチオール等の芳香族チオール類;
エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、ポリエチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、プロピレングリコールビス(メルカプトアセテート)、グリセリントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(メルカプトアセテート)等の多価アルコールのポリ(メルカプトアセテート);
エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等の多価アルコールのポリ(3-メルカプトプロピオネート);及び、
1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等のポリ(メルカプトブチレート)が挙げられる。
【0068】
(界面活性剤)
絶縁インクは、少なくとも1種の界面活性剤を含有してもよい。
【0069】
界面活性剤としては、特開昭62-173463号公報、及び特開昭62-183457号公報に記載されたものが挙げられる。また、界面活性剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、アセチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン性界面活性剤;及び、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。また、界面活性剤は、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤であってもよい。
【0070】
絶縁インクが界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、絶縁インクの全量に対して、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量の下限値は特に限定されない。
【0071】
(有機溶剤)
絶縁インクは、少なくとも1種の有機溶剤を含有してもよい。
【0072】
有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;
エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールアセテート類;
エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールジアセテート類;
エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
γ-ブチロラクトン等のラクトン類;
酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸3-メトキシブチル(MBA)、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;及び
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類が挙げられる。
【0073】
絶縁インクが有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の含有量は、絶縁インクの全量に対して、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。有機溶剤の含有量の下限値は特に限定されない。
【0074】
(添加剤)
絶縁インクは、必要に応じて、共増感剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、塩基性化合物等の添加剤を含有してもよい。
【0075】
(物性)
絶縁インクのpHは、インクジェット記録方式を用いて付与する場合に吐出安定性を向上させる観点から、7~10であることが好ましく、7.5~9.5であることがより好ましい。pHは、pH計を用いて25℃で測定され、例えば、東亜DKK社製のpHメーター(型番「HM-31」)を用いて測定される。
【0076】
絶縁インクの粘度は、絶縁層の膜厚を制御する観点から、0.5mPa・s~100mPa・sであることが好ましく、2mPa・s~80mPa・sであることがより好ましく、3mPa・s~60mPa・sであることがさらに好ましい。粘度は、粘度計を用いて25℃で測定され、例えば、東機産業社製のTV-22型粘度計を用いて測定される。
【0077】
絶縁インクの表面張力は、絶縁層の膜厚を制御する観点から、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m~50mN/mであることがより好ましく、25mN/m~45mN/mであることがさらに好ましい。表面張力は、表面張力計を用いて25℃で測定され、例えば、協和界面科学社製の自動表面張力計(製品名「CBVP-Z」)を用いて、プレート法によって測定される。
【0078】
<導電インク>
本開示のインクセットにおいて、導電インクは、金属錯体及び金属塩のうち少なくとも一方を含む。
【0079】
本開示において、導電インクとは、導電性を有する導電層を形成するためのインクを意味する。導電性とは、体積抵抗率が10Ωcm未満である性質を意味する。
【0080】
(金属錯体)
金属錯体を構成する金属としては、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、スズ、銅、及び鉛が挙げられる。中でも、導電性の観点から、金属錯体を構成する金属は、銀、金、白金、ニッケル、パラジウム及び銅からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、銀を含むことがより好ましい。
【0081】
金属錯体は、例えば、金属塩と、錯化剤とを反応させることにより得られる。金属錯体の製造方法としては、例えば、金属塩及び錯化剤を有機溶媒に加え、所定時間撹拌する方法が挙げられる。撹拌方法は特に限定されず、撹拌子、撹拌翼又はミキサーを用いて撹拌させる方法、超音波を加える方法等の公知の方法から適宜選択することができる。
【0082】
金属塩としては、金属の酸化物、チオシアン酸塩、硫化物、塩化物、シアン化物、シアン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、アセチルアセトナート錯塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。
【0083】
錯化剤としては、アミン、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、アンモニウムバイカーボネート化合物、及びカルボン酸が挙げられる。中でも、導電性の観点から、錯化剤は、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、アミン、及び、炭素数8~20のカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0084】
金属錯体は、錯化剤に由来する構造を有しており、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、アミン、及び、炭素数8~20のカルボン酸からなる群より選択される少なくとも1種に由来する構造を有することが好ましい。
【0085】
錯化剤であるアミンとしては、例えば、アンモニア、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及びポリアミンが挙げられる。
【0086】
直鎖状のアルキル基を有する第1級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、1-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、n-デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、及びオクタデシルアミンが挙げられる。
【0087】
分岐鎖状アルキル基を有する第1級アミンとしては、例えば、イソプロピルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、イソペンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、及びtert-オクチルアミンが挙げられる。
【0088】
脂環構造を有する第1級アミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミン、及びジシクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0089】
ヒドロキシアルキル基を有する第1級アミンとしては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、及びトリイソプロパノールアミンが挙げられる。
【0090】
芳香環を有する第1級アミンとしては、例えば、ベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、4-アミノピリジン、及び4-ジメチルアミノピリジンが挙げられる。
【0091】
第2級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、ジシクロペンチルアミン、及びメチルブチルアミンが挙げられる。
【0092】
第3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、及びトリフェニルアミンが挙げられる。
【0093】
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
アミンは、アルキルアミンであることが好ましく、炭素原子数が3~10のアルキルアミンであることが好ましく、炭素原子数が4~10の第1級アルキルアミンであることがより好ましい。
【0095】
金属錯体を構成するアミンは1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0096】
金属塩とアミンとを反応させる際、金属塩のモル量に対するアミンのモル量の比率は、1倍~15倍であることが好ましく、1.5倍~6倍であることがより好ましい。上記比率が上記範囲内であると、錯体形成反応が完結し、透明な溶液が得られる。
【0097】
錯化剤であるアンモニウムカルバメート系化合物としては、アンモニウムカルバメート、メチルアンモニウムメチルカルバメート、エチルアンモニウムエチルカルバメート、1-プロピルアンモニウム1-プロピルカルバメート、イソプロピルアンモニウムイソプロピルカルバメート、ブチルアンモニウムブチルカルバメート、イソブチルアンモニウムイソブチルカルバメート、アミルアンモニウムアミルカルバメート、ヘキシルアンモニウムヘキシルカルバメート、ヘプチルアンモニウムヘプチルカルバメート、オクチルアンモニウムオクチルカルバメート、2-エチルヘキシルアンモニウム2-エチルヘキシルカルバメート、ノニルアンモニウムノニルカルバメート、及びデシルアンモニウムデシルカルバメートが挙げられる。
【0098】
錯化剤であるアンモニウムカーボネート系化合物としては、アンモニウムカーボネート、メチルアンモニウムカーボネート、エチルアンモニウムカーボネート、1-プロピルアンモニウムカーボネート、イソプロピルアンモニウムカーボネート、ブチルアンモニウムカーボネート、イソブチルアンモニウムカーボネート、アミルアンモニウムカーボネート、ヘキシルアンモニウムカーボネート、ヘプチルアンモニウムカーボネート、オクチルアンモニウムカーボネート、2-エチルヘキシルアンモニウムカーボネート、ノニルアンモニウムカーボネート、及びデシルアンモニウムカーボネートが挙げられる。
【0099】
錯化剤であるアンモニウムバイカーボネート系化合物としては、アンモニウムバイカーボネート、メチルアンモニウムバイカーボネート、エチルアンモニウムバイカーボネート、1-プロピルアンモニウムバイカーボネート、イソプロピルアンモニウムバイカーボネート、ブチルアンモニウムバイカーボネート、イソブチルアンモニウムバイカーボネート、アミルアンモニウムバイカーボネート、ヘキシルアンモニウムバイカーボネート、ヘプチルアンモニウムバイカーボネート、オクチルアンモニウムバイカーボネート、2-エチルヘキシルアンモニウムバイカーボネート、ノニルアンモニウムバイカーボネート、及びデシルアンモニウムバイカーボネートが挙げられる。
【0100】
金属塩と、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、又はアンモニウムバイカーボネート系化合物とを反応させる際、金属塩のモル量に対する、アンモニウムカルバメート系化合物、アンモニウムカーボネート系化合物、又はアンモニウムバイカーボネート系化合物のモル量の比率は、0.01倍~1倍であることが好ましく、0.05倍~0.6倍であることがより好ましい。
【0101】
錯化剤であるカルボン酸としては、例えば、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2-エチルヘキサン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸が挙げられる。中でも、カルボン酸は、炭素数8~20のカルボン酸であることが好ましい。
【0102】
<金属塩>
金属塩を構成する金属としては、例えば、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、スズ、銅、及び鉛が挙げられる。中でも、導電性の観点から、金属錯体を構成する金属は、銀、金、白金、ニッケル、パラジウム及び銅からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、銀を含むことがより好ましい。
【0103】
金属塩としては、例えば、金属の安息香酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、クエン酸塩、ヨウ素酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫化物、トリフルオロ酢酸塩、及びカルボン酸塩が挙げられる。なお、塩は、2種以上を組み合わせてもよい。
【0104】
金属塩は、導電性及び安定性の観点から、金属カルボン酸塩であることが好ましい。カルボン酸塩を形成するカルボン酸は、ギ酸及び炭素数1~30の脂肪酸からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。カルボン酸が炭素数1~30の脂肪酸である場合、脂肪酸は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、置換基を有していてもよい。
【0105】
直鎖脂肪酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ベヘン酸、オレイン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、及びウンデカン酸が挙げられる。
【0106】
分岐脂肪酸としては、例えば、イソ酪酸、イソ吉草酸、エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ピバル酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,3-ジメチルブタン酸、3,3-ジメチルブタン酸、及び2-エチルブタン酸が挙げられる。
【0107】
置換基を有するカルボン酸としては、例えば、3-ヒドロキシ酪酸、2-メチル-3-ヒドロキシ酪酸、3-メトキシ酪酸、アセトンジカルボン酸、3-ヒドロキシグルタル酸、2-メチル-3-ヒドロキシグルタル酸、ヘキサフルオロアセチルアセトン酸、ヒドロアンゲリカ酸、及び2,2,4,4-ヒドロキシグルタル酸が挙げられる。
【0108】
金属塩は市販品であってもよく、公知の方法により製造されたものであってもよい。銀塩は、例えば、以下の方法で製造される。
【0109】
まず、エタノール等の有機溶媒中に、銀の供給源となる銀化合物(例えば酢酸銀)と、銀化合物のモル当量に対して等量のギ酸又は炭素数1~30の脂肪酸とを加える。所定時間、超音波撹拌機を用いて撹拌し、生成した沈殿物をエタノールで洗浄してデカンテーションする。これらの工程は全て室温で行うことができる。銀化合物と、ギ酸又は炭素数1~30の脂肪酸との混合比は、モル比で1:2~2:1であることが好ましく、1:1であることがより好ましい。
【0110】
(溶媒)
導電インクは、溶媒を含有することが好ましい。溶媒は、金属錯体、金属塩等の導電インクに含まれる成分を溶解することができれば特に限定されない。溶媒は、製造容易性の観点から、沸点が30℃~300℃であることが好ましく、50℃~200℃であることがより好ましく、50℃~150℃であることがより好ましい。
【0111】
導電インクが金属錯体を含む場合、導電インク中、溶媒の含有量は、金属錯体に対する金属イオンの濃度(金属錯体1gに対して遊離イオンとして存在する金属の量)が、0.01mmol/g~3.6mmol/gであることが好ましく、0.05mmol/g~2mmol/gであることがより好ましい。金属イオンの濃度が上記範囲内であると、金属錯体インクが流動性に優れ、かつ、導電性を得ることができる。
【0112】
溶媒としては、例えば、炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、カルバメート、アルケン、アミド、エーテル、エステル、アルコール、チオール、チオエーテル、ホスフィン、及び水が挙げられる。導電インクに含まれる溶媒は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0113】
炭化水素は、炭素数6~20の直鎖状又は分枝状の炭化水素であることが好ましい。炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン及びイコサンが挙げられる。
【0114】
環状炭化水素は、炭素数6~20の環状炭化水素であることが好ましい。環状炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、及びデカリンを含むことができる。
【0115】
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びテトラリンが挙げられる。
【0116】
エーテルは、直鎖状エーテル、分枝鎖状エーテル、及び環状エーテルのいずれであってもよい。エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、及び1,4-ジオキサンが挙げられる。
【0117】
アルコールは、第1級アルコール、第2級アルコール、及び第3級アルコールのいずれであってもよい。
【0118】
アルコールとしては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、シクロペンタノール、テルピネオール、デカノール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソオレイルアルコール、リノリルアルコール、イソリノリルアルコール、パルミチルアルコール、イソパルミチルアルコール、アイコシルアルコール、及びイソアイコシルアルコールが挙げられる。
【0119】
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。
【0120】
エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及び3-メトキシブチルアセテートが挙げられる。
【0121】
導電インクが金属塩を含む場合、導電インク中、溶媒の含有量は、金属塩に対する金属イオンの濃度(金属塩1gに対して遊離イオンとして存在する金属の量)が、0.01mmol/g~3.6mmol/gであることが好ましく、0.05mmol/g~2.6mmol/gであることがより好ましい。金属イオンの濃度が上記範囲内であると、導電インクが流動性に優れ、かつ、電磁波シールド性を得ることができる。
【0122】
溶媒としては、例えば、炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、カルバメート、アルケン、アミド、エーテル、エステル、アルコール、チオール、チオエーテル、ホスフィン、及び水が挙げられる。
金属塩インクに含まれる溶媒は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0123】
溶媒は、芳香族炭化水素を含むことが好ましい。
芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、t-ブチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、テトラリン、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、及び安息香酸ブチルが挙げられる。
芳香族炭化水素における芳香族環の数は、他成分との相溶性の観点から、1つ又は2つが好ましく、1つがより好ましい。
芳香族炭化水素の沸点は、製造容易性の観点から、50℃~300℃であることが好ましく、60℃~250℃であることがより好ましく、80℃~200℃であることがより好ましい。
【0124】
溶剤は、芳香族炭化水素と、芳香族炭化水素以外の炭化水素と、を含んでもよい。
芳香族炭化水素以外の炭化水素としては、炭素数6~20の直鎖状炭化水素、炭素数6~20の分枝状炭化水素、炭素数6~20の脂環式炭化水素が挙げられる。
芳香族炭化水素以外の炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、デカリン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、デセン、テルペン系化合物及びイコサンが挙げられる。
芳香族炭化水素以外の炭化水素は不飽和結合を含むことが好ましい。
不飽和結合を含む芳香族炭化水素以外の炭化水素としては、テルペン系化合物が挙げられる。
テルペン系化合物は、テルペン系化合物を構成するイソプレン単位の数に応じ、例えば、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、セステルテルペン、トリテルペン、セスクアルテルペン、及びテトラテルペンに分類される。
溶媒としてのテルペン系化合物は、上記のいずれでもよいが、モノテルペンが好ましい。
モノテルペンとしては、例えば、ピネン(α-ピネン、β-ピネン)、テルピネオール(α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオール)、ミルセン、カンフェン、リモネン(d-リモネン、l-リモネン、ジペンテン)、オシメン(α-オシメン、β-オシメン)、アロオシメン、フェランドレン(α-フェランドレン、β-フェランドレン)、テルピネン(α-テルピネン、γ-テルピネン)、テルピノーレン(α-テルピノーレン、β-テルピノーレン、γ-テルピノーレン、δ-テルピノーレン)、1,8-シネオール、1,4-シネオール、サビネン、パラメンタジエン、カレン(δ-3-カレン)が挙げられる。
モノテルペンとしては、環式モノテルペンが好ましく、ピネン、テルピネオール、又はカレンがより好ましい。
【0125】
エーテルは、直鎖状エーテル、分枝鎖状エーテル、及び環状エーテルのいずれであってもよい。エーテルとしては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロピラン、及び1,4-ジオキサンが挙げられる。
【0126】
アルコールは、第1級アルコール、第2級アルコール、及び第3級アルコールのいずれであってもよい。
【0127】
アルコールとしては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、シクロペンタノール、テルピネオール、デカノール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソオレイルアルコール、リノリルアルコール、イソリノリルアルコール、パルミチルアルコール、イソパルミチルアルコール、アイコシルアルコール、及びイソアイコシルアルコールが挙げられる。
【0128】
ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びシクロヘキサノンが挙げられる。
【0129】
エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及び3-メトキシブチルアセテートが挙げられる。
【0130】
(還元剤)
導電インクは、還元剤を含有していてもよい。導電インクに還元剤が含まれていると、金属錯体及び金属塩のうち少なくとも一方から金属への還元が促進される。
【0131】
還元剤としては、例えば、水素化ホウ素金属塩、水素化アルミニウム塩、アミン、アルコール、有機酸(カルボン酸、スルホン酸)、還元糖、糖アルコール、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン化合物、デキストリン、ハイドロキノン、ヒドロキシルアミン、エチレングリコール、グルタチオン、及びオキシム化合物が挙げられる。
【0132】
還元剤は、特表2014-516463号公報に記載のオキシム化合物であってもよい。オキシム化合物としては、例えば、アセトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、2-ブタノンオキシム、2,3-ブタンジオンモノオキシム、ジメチルグリオキシム、メチルアセトアセテートモノオキシム、メチルピルベートモノオキシム、ベンズアルデヒドオキシム、1-インダノンオキシム、2-アダマンタノンオキシム、2-メチルベンズアミドオキシム、3-メチルベンズアミドオキシム、4-メチルベンズアミドオキシム、3-アミノベンズアミドオキシム、4-アミノベンズアミドオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンズアミドオキシム、及びピナコロンオキシムが挙げられる。
【0133】
導電インクに含まれる還元剤は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0134】
導電インク中、還元剤の含有量は特に限定されないが、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、0.3質量%~10質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることがさらに好ましい。
【0135】
(樹脂)
導電インクは、樹脂を含有していてもよい。導電インクに樹脂が含まれていると、導電インクの基材への密着性が向上する。
【0136】
樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ロジン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスルフィド、ポリアミドイミド、ポリエーテル、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、及び尿素樹脂が挙げられる。
【0137】
導電インクに含まれる樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0138】
(添加剤)
導電インクは、本開示の効果を損なわない範囲で、さらに、無機塩、有機塩、シリカ等の無機酸化物;表面調整剤、湿潤剤、架橋剤、酸化防止剤、防錆剤、耐熱安定剤、界面活性剤、可塑剤、硬化剤、増粘剤、シランカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。導電インク中、添加剤の合計含有量は、導電インクの全量に対して、20質量%以下であることが好ましい。
【0139】
(物性)
導電インクのpHは、インクジェット記録方式を用いて付与する場合に吐出安定性を向上させる観点から、7~11.5であることが好ましく、7.5~11であることがより好ましい。pHは、pH計を用いて25℃で測定され、例えば、東亜DKK社製のpHメーター(型番「HM-31」)を用いて測定される。
【0140】
導電インクの粘度は特に限定されず、1mPa・s~5000Pa・sであればよく、3mPa・s~100Pa・sであることが好ましい。導電インクをスプレー法又はインクジェット記録方式を用いて付与する場合には、導電インクの粘度は、1mPa・s~100mPa・sであることが好ましく、2mPa・s~50mPa・sであることがより好ましく、3mPa・s~30mPa・sであることがさらに好ましい。
【0141】
導電インクの粘度は、粘度計を用いて25℃で測定され、例えば、東機産業社製のTV-22型粘度計を用いて測定される。
【0142】
導電インクの表面張力は、60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m~50mN/mであることがより好ましく、25mN/m~45mN/mであることがさらに好ましい。表面張力は、表面張力計を用いて25℃で測定され、例えば、協和界面科学社製の自動表面張力計(製品名「CBVP-Z」)を用いて、プレート法によって測定される。
【0143】
上述したように、導電性インクは、金属錯体及び金属塩のうち少なくとも一方を含む。金属錯体及び金属塩には、カルボン酸及び/又はアミンに由来する構造が含まれていてよい。また、導電性インクは、還元剤を含有していてもよく、還元剤としてカルボン酸又はアミンを含有していてもよい。以下、金属錯体及び金属塩に含まれるカルボン酸及び/又はアミンに由来する構造、還元剤に含まれるカルボン酸又はアミンを総称してカルボン酸及びアミンとする。
【0144】
カルボン酸及びアミンの含有量は、ガスクロマトグラフィーの測定結果における、検出成分の面積割合(%)より算出される。測定装置としては、例えば、島津製作所製の製品名「ガスクロマトグラフGC‐2010」が用いられる。
【0145】
本開示のインクセットでは、絶縁インクと導電インクを同質量としたとき、導電インク中におけるカルボン酸とアミンの合計質量に対する、絶縁インクに含まれる重合開始剤の質量の比率(すなわち、「絶縁インクに含まれる重合開始剤の質量/導電インク中におけるカルボン酸とアミンの合計質量」)が0.06~0.5であることが好ましい。上記比率が0.06以上であると、絶縁層と導電層との密着性に優れる。一方、上記比率が0.5以下であると、導電性に優れる。上記比率は、導電性、及び絶縁層と導電層との密着性を向上させる観点から、0.06~0.4であることがより好ましく、0.06~0.3であることがさらに好ましい。
【0146】
絶縁インクによって形成される絶縁層上における導電インクの接触角は60°以下であることが好ましく、50°以下であることがより好ましく、40°以下であることがさらに好ましい。上記接触角が60°以下であると、導電層が均一に形成されやすい。上記接触角の下限値は特に限定されず、例えば、5°である。
【0147】
絶縁インクによって形成される絶縁層上における導電インクの接触角は、例えば、以下の方法で測定される。
まず、基材上に絶縁インクを付与し、活性エネルギー線を照射して絶縁層を形成する。形成された絶縁層上に導電インクを滴下し、接触角計を用いて25℃で測定される。接触角は、例えば、接触角計(製品名「Drop master 500」、協和界面科学社製」)を用いて測定される。
【0148】
(用途)
本開示のインクセットは、プリント基板に用いられることが好ましい。すなわち、本開示のインクセットは、プリント基板用インクセットであることが好ましい。
【0149】
本開示のインクセットにおける絶縁インクを基材上に付与し、絶縁層を形成した後、本開示のインクセットにおける導電インクを絶縁層上に付与し、配線パターンとなる画像を記録することにより、プリント基板を作製することができる。また、基材上にチップ等の電子部品を搭載し、搭載された電子部品上に絶縁インクを付与し、絶縁層を形成した後、本開示のインクセットにおける導電インクを絶縁層上に付与し、導電層を形成することにより、プリント基板を作製してもよい。
【0150】
本開示のインクセットにおける絶縁インクを基材上に付与し、絶縁層を形成した後、本開示のインクセットにおける導電インクを絶縁層上に付与し、絶縁層の全面を導電層で覆うことにより電磁波シールドを作製することができる。
【0151】
[積層体の製造方法]
本開示の積層体の製造方法は、基材上に、本開示の絶縁インクを付与して絶縁層を得る工程と、絶縁層上に、本開示の導電インクを付与して導電層を得る工程と、を含む。
【0152】
(絶縁層を得る工程)
基材の材質は特に限定されず、目的に応じて選択することができる。具体的には、基材の材質としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン樹脂)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、トリアセチルセルロース、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、ポリ乳酸、等の合成樹脂;銅、鋼、アルミニウム、シリコン、ソーダガラス、無アルカリガラス、酸化インジウムスズ(ITO)等の無機材料;及び、原紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、レジンコート紙、合成紙等の紙類が挙げられる。また、基材は1層であってもよく、2層以上であってもよい。基材が2層以上である場合、材質の異なる2種以上の基材を積層させてもよい。
【0153】
基材の形態は、シート状又はフィルム状であることが好ましい。基材の厚さは、20μm~2000μmであることが好ましい。
【0154】
基材はインク受容層を有していてもよく、インク受容層の厚さは1μm~20μmであることが好ましい。インク受容層の厚さが1μm~20μmであると、インク受容層をより安定して保持することができる。インク受容層とは、インクを吸収し、インクを定着させるために基材上に形成されるコーティング層のことである。
【0155】
基材上に、絶縁インクを付与する方法は特に限定されず、例えば、塗布法、インクジェット記録方式、浸漬法等の公知の方法が挙げられる。中でも、少量を打滴して1回の付与によって形成される絶縁インク膜の厚さを薄くできる観点から、インクジェット記録方式を用いて、絶縁インクを付与することが好ましい。
【0156】
また、絶縁インクを付与する前に、基材に対して前処理を行ってもよい。前処理としては、例えば、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、プライマー処理、粗化処理等の公知の方法が挙げられる。
【0157】
インクジェット記録方式は、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式のいずれであってもよい。
【0158】
インクジェット記録方式としては、特に、特開昭54-59936号公報に記載の方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット記録方式を有効に利用することができる。
【0159】
また、インクジェット記録方式については、特開2003-306623号公報の段落0093~0105に記載の方法も参照できる。
【0160】
インクジェット記録方式に用いるインクジェットヘッドとしては、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを基材の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式と、基材の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とが挙げられる。
【0161】
ライン方式では、記録素子の配列方向と交差する方向に基材を走査させることで基材の全面にパターン形成を行なうことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。
【0162】
また、キャリッジの移動と基材との複雑な走査制御が不要になり、基材だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
【0163】
インクジェットヘッドから吐出される絶縁インクの打滴量は、1pL(ピコリットル)~100pLであることが好ましく、3pL~80pLであることがより好ましく、3pL~20pLであることがさらに好ましい。
【0164】
本開示の積層体の製造方法では、基材上に、本開示の絶縁インクを付与した後、活性エネルギー線を照射することが好ましい。
【0165】
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線及び電子線が挙げられ、中でも紫外線(以下、「UV」ともいう)が好ましい。
【0166】
紫外線のピーク波長は、200nm~405nmであることが好ましく、250nm~400nmであることがより好ましく、300nm~400nmであることがさらに好ましい。
【0167】
活性エネルギー線の照射における露光量は、100mJ/cm~5000mJ/cmであることが好ましく、300mJ/cm~1500mJ/cmであることがより好ましい。
【0168】
紫外線照射用の光源としては、水銀ランプ、ガスレーザー及び固体レーザーが主に利用されており、水銀ランプ、メタルハライドランプ及び紫外線蛍光灯が広く知られている。また、UV-LED(発光ダイオード)及びUV-LD(レーザダイオード)は小型、高寿命、高効率、かつ、低コストであり、紫外線照射用の光源として期待されている。中でも、紫外線照射用の光源は、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ又はUV-LEDであることが好ましい。
【0169】
絶縁層を得る工程では、所望の厚さの絶縁層を得るために、絶縁インクを付与して、活性エネルギー線を照射する工程を2回以上繰り返すことが好ましい。
【0170】
絶縁層の厚さは、5μm~5000μmであることが好ましく、10μm~2000μmであることがより好ましい。
【0171】
(導電層を得る工程)
絶縁層上に、導電インクを付与する方法は特に限定されず、例えば、塗布法、インクジェット記録方式、浸漬法等の公知の方法が挙げられる。中でも、少量を打滴して1回の付与によって形成される導電インク膜の厚さを薄くできる観点から、インクジェット記録方式を用いて、導電インクを付与することが好ましい。インクジェット記録方式の詳細は上記のとおりである。
【0172】
導電インクを付与する前に、絶縁層が形成された基材をあらかじめ加温しておくことが好ましい。導電インクを付与する際の基材の温度は、20℃~120℃であることが好ましく、40℃~100℃であることがより好ましい。
【0173】
絶縁層上に、導電インクを付与した後、熱又は光を用いて、導電インクを硬化させることが好ましい。
【0174】
熱を用いて硬化させる場合に、焼成温度は250℃以下であり、かつ、焼成時間は1分~120分であることが好ましい。焼成温度及び焼成時間が上記範囲であると、基材へのダメージが抑制される。
【0175】
焼成温度は、80℃~250℃であることがより好ましく、100℃~200℃であることがさらに好ましい。また、焼成時間は、1分~60分であることがより好ましい。
【0176】
焼成方法は特に限定されず、通常公知の方法により行うことができる。
【0177】
導電インクの付与が終了した時点から、焼成を開始する時点までの時間は60秒以下であることが好ましい。上記時間の下限値は特に限定されないが、例えば、20秒である。上記時間が60秒以下であると、導電性が向上する。
【0178】
なお、「導電インクの付与が終了した時点」とは、導電インクの全てのインク滴が絶縁層上に着弾した時点をいう。
【0179】
光を用いて硬化させる場合に、光としては、例えば、紫外線及び赤外線が挙げられる。
【0180】
紫外線のピーク波長は、200nm~405nmであることが好ましく、250nm~400nmであることがより好ましく、300nm~400nmであることがさらに好ましい。
【0181】
光の照射における露光量は、100mJ/cm~10000mJ/cmであることが好ましく、500mJ/cm~7500mJ/cmであることがより好ましい。
【0182】
導電層を得る工程では、所望の厚さの導電層を得るために、導電インクを付与する工程を2回以上繰り返すことが好ましく、導電インクを付与し、導電インクを硬化させる工程を2回以上繰り返すことがより好ましい。また、導電インクを付与する工程を2回以上繰り返すことにより、導電層が密になり、導電性が向上する。
【0183】
導電層の厚さは、0.1μm~100μmであることが好ましく、1μm~50μmであることがより好ましい。
【0184】
本開示の積層体の製造方法では、絶縁層の厚さに対する導電層の厚さの比率(すなわち、「導電層の厚さ/絶縁層の厚さ」)を0.5未満とすることが好ましい。上記比率が0.5未満とすることにより、導電層を形成する際に絶縁層に割れ等の破壊が生じることなく、絶縁層と導電層との密着性が向上する。上記比率は、絶縁層と導電層との密着性をより向上させる観点から、0.2未満とすることがより好ましい。上記比率の下限値は特に限定されず、例えば、0.01である。
【0185】
[積層体]
本開示の積層体は、基材と、基材上に設けられた絶縁層と、絶縁層上に設けられた導電層と、を含む。絶縁層は、本開示の絶縁インクの硬化物である。導電層は、本開示の導電インクの硬化物である。本開示のインクセットを用いて製造される積層体は、導電性に優れる。
【実施例
【0186】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0187】
<絶縁インク1の調製>
下記成分を混合し、混合物を、ミキサー(製品名「L4R」、シルバーソン社製)を用いて、25℃で5000回転/分の条件で20分間撹拌し、絶縁インクを得た。
・Omni.379:2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン(製品名「Omnirad 379」、IGM Resins B.V.社製)…4.0質量%
・ITX:2-イソプロピルチオキサントン(製品名「SPEEDCURE ITX」、LAMBSON社製)…2.0質量%
・PEA:フェノキシエチルアクリレート(富士フイルム和光純薬社製)…49.0質量%
・NVC:N-ビニルカプロラクタム(富士フイルム和光純薬社製)…22.0質量%
・TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート(富士フイルム和光純薬社製)…23.0質量%
【0188】
<絶縁インク2~絶縁インク22>
重合開始剤、増感剤、重合性モノマー(単官能重合性モノマー及び多官能重合性モノマー)、及び他の成分の種類及び含有量を表1に記載のものに変更したこと以外は、絶縁インク1と同様の方法で、絶縁インク2~絶縁インク22を調製した。
【0189】
絶縁インク2~絶縁インク22で用いられている各成分の詳細は以下のとおりである。
【0190】
-重合開始剤-
・Omni.907:2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(製品名「Omnirad 907」、IGM Resins B.V.社製)
・Omni.651:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(製品名「Omnirad 651」、IGM Resins B.V.社製)
・OXE01:1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(製品名「Irgacure OXE01」、BASFジャバン社製)
・Irg.784:ジ‐η(5)‐シクロペンタジエニルビス[2,6‐ジフルオロ‐3‐(ピロール‐1‐イル)フェニル]チタン(IV)(製品名「Irgacure 784」、BASF社製)
・Omni.127:2,2’-ジヒドロキシ-2,2’-ジメチル-1,1’-[メチレンビス(4,1-フェニレン)]ビス(プロパン-1-オン)(製品名「Omnirad 127、IGM Resins B.V.社製)
・TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(製品名「Omnirad TPO H」、IGM Resins B.V.社製)
・4-PBZ:4-フェニルベンゾフェノン(製品名「Omnirad 4-PBZ」、IGM社製)
【0191】
-単官能重合性モノマー-
・CTFA:環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(製品名「SR-531」、サートマー社製)
・EOEOEA:アクリル酸2-(2-エトキシエトキシ)エチル(富士フイルム和光純薬社製)
・IBOA:イソボルニルアクリレート(製品名「SR506」、サートマー社製)
【0192】
-多官能重合性モノマー-
・HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(富士フイルム和光純薬社製)
・NPGDA:ネオペンチルグリコールジアクリレート(製品名「SR-248」、サートマー社製)
・EOTMPTA:トリメチロールプロパンEO付加トリアクリレート(製品名「SR-415」、サートマー社製)
【0193】
-界面活性剤-
・TR2010:重合性シリコーン界面活性剤(製品名「TEGORAD2010」、エボニック社製)
【0194】
-連鎖移動剤-
・ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)製品名「カレンズ MT-PE1」
【0195】
-重合禁止剤-
・MEHQ:p-メトキシフェノール(富士フイルム和光純薬社製)
【0196】
表1に、絶縁インク1~絶縁インク22に含まれる各成分の種類及び含有量(質量%)を示す。なお、絶縁インク21は、表1に記載の成分以外に、上記連鎖移動剤20.0質量%及び上記重合禁止剤1.0質量%を含む。
【0197】
【表1】

【0198】
<導電インク1の調製>
300mLの3口フラスコに、1-プロパノール25.1g、酢酸銀20g、及びギ酸5gを加え、20分間撹拌した。生成した銀塩の沈殿物を、1-プロパノールを用いて3回デカンテーションを行い、洗浄した。沈殿物に、1-プロピルアミン14.4g、及び1-プロパノール25.1gを加え、30分間撹拌した。次に、水10gを加え、さらに撹拌し、銀錯体を含む溶液を得た。この溶液を、孔径0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを使用してろ過し、導電インク1を得た。
【0199】
<導電インク2の調製>
300mLの3口フラスコに、水46g、酢酸銀20.0g、エチレンジアミン20g、及びアミルアミン20gを加え、20分間撹拌した。得られた溶液にギ酸4gを加え、さらに30分間撹拌し銀錯体を含む溶液を得た。この溶液を、孔径0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを使用してろ過し、導電インク2を得た。
【0200】
<導電インク3の調製>
導電インク1において、錯化剤の種類及び量、並びに、溶媒の種類及び量を表2に記載のものに変更したこと以外は、導電インク1と同様の方法で、導電インク3を得た。
【0201】
<導電インク4の調製>
脱水シュウ酸30gを350mLの水に溶解させ、シュウ酸水溶液を準備した。また、硝酸銀30gを120mLの水に溶解させ、硝酸銀水溶液を準備した。硝酸銀水溶液をシュウ酸水溶液に攪拌しながら滴下した。反応終了後、沈殿物であるシュウ酸銀を単離した。200mLの3口フラスコに、単離したシュウ酸銀18g及びエタノール36.50gを加えた。氷浴中、得られた懸濁液に36gのイソプロパノールアミンを10分かけて滴下した。オクチルアミン12.5gを加え、室温で2時間攪拌し、銀錯体を含む溶液を得た。上記錯体溶液98.8gにポリビニルピロリドン1.2gを加えた。この溶液を、孔径0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを使用してろ過し、導電インク4を得た。
【0202】
<導電インク5~導電インク7の調製>
導電インク4において、錯体を形成する前の金属塩の種類及び含有量、溶媒の種類及び含有量、並びに、還元剤の種類を表2に記載のものに変更したこと以外は、導電インク4と同様の方法で、導電インク5~導電インク7を得た。
【0203】
<導電インク8の調製>
200mLの3口フラスコに、ネオデカン酸銀40gを加えた。次に、トリメチルベンゼン30.0g、及びテルピネオール30.0gを加え、撹拌し、銀塩を含む溶液を得た。この溶液を、孔径0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを使用してろ過し、導電インク8を得た。
【0204】
<導電インク9の調製>
200mLの3口フラスコに、ネオデカン酸銀25.0g、キシレン35g、及びテルピネオール30.0gを加え、溶解させた。次に、tert-オクチルアミン10gを加え撹拌し、銀錯体を含む溶液を得た。常温で2時間反応させ、均一な溶液を得た。この溶液を、孔径0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを使用してろ過し、導電インク9を得た。
【0205】
<導電インク10の調製>
導電インク9におけるtert-オクチルアミンをアミルアミンに変更したこと以外は、導電インク9と同様の方法で、導電インク10を得た。
【0206】
<導電インク11の調製>
導電インク9におけるtert-オクチルアミン1gをアミルアミン0.5gとオクチルアミン0.5gに変更したこと以外は、導電インク9と同様の方法で、導電インク11を得た。
【0207】
<導電インク12の調製>
200mLの3口フラスコに、イソブチルアンモニウムカーボネート26.14g、及びイソプロピルアルコール64.0gを加え、溶解させた。次に、酸化銀9.0gを加え、常温で2時間反応させ、均一な溶液を得た。さらに、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルアミン1.29gを加え、撹拌し、銀錯体を含む溶液を得た。この溶液を、孔径0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを使用してろ過し、導電インク12を得た。
【0208】
<導電インク13の調製>
導電インク3において、錯化剤の量、及び、還元剤の量を表2に記載のものに変更したこと以外は、導電インク3と同様の方法で、導電インク13を得た。
【0209】
<導電インク14の調製>
分散剤としてポリビニルピロリドン(重量平均分子量3000、シグマアルドリッチ社製)6.8gを水100mLに溶解させた溶液aを調製した。別途、硝酸銀50.00gを水200mLに溶解させた溶液bを調製した。溶液aと溶液bとを混合し、攪拌して得られた混合液に、85質量%N,N-ジエチルヒドロキシルアミン水溶液78.71gを室温で滴下し、さらに、ポリビニルピロリドン6.8gを水1000mLに溶解させた溶液を室温でゆっくり滴下した。得られた懸濁液を限外濾過ユニット(ザルトリウス・ステディム社製ビバフロー50、分画分子量:10万、ユニット数:4個)に通し、限外濾過ユニットから約5Lの滲出液が出るまで精製水を通過させて精製した。精製水の供給を止め、濃縮し、銀粒子分散液1を30g得た。この分散液中の固形分の含有量は50質量%であり、固形分中の銀の含有量をTG-DTA(示差熱熱重量同時測定)(日立ハイテク社製、モデル:STA7000シリーズ)により測定したところ、96.0質量%であった。得られた銀粒子分散液1を、イオン交換水を用いて20倍に希釈し、粒径アナライザーFPAR-1000(大塚電子社製)を用いて測定を行い、銀粒子の体積平均粒子径を求めた。銀粒子分散液1の体積粒径は60nmであった。
銀粒子分散液10gに2-プロパノール2g、界面活性剤としてオルフィンE-1010(日信化学工業社製)0.1gを添加し、銀濃度が40質量%になるように水を添加し、導電インク14を得た。
【0210】
表2に、導電インク1~導電インク14に含まれる各成分の種類及び含有量(質量%)を示す。まず、導電インクに含まれる金属化合物の形態が金属錯体、金属塩、及び金属粒子のいずれであるかを記載した。また、金属錯体である場合には、錯体を形成する前の金属塩の種類、錯化剤の種類も記載した。
【0211】
表2中の略語の詳細は以下のとおりである。
-錯化剤-
PA:1-プロピルアミン
EDA:エチレンジアミン
EA:エチルアミン
iPrOHA:イソプロパノールアミン
AA:アミルアミン
EtOHA:エタノールアミン
OA:オクチルアミン
2HMPA:2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルアミン
tOA:t-オクチルアミン
IBAC:イソブチルアンモニウムカーボネート
-溶媒-
1PrOH:1-プロパノール
O:水
MeOH:メタノール
EtOH:エタノール
IPA:イソプロパノール
TO:テルピネオール
TMB:トリメチルベンゼン
XL:キシレン
-還元剤-
FA:ギ酸
-樹脂-
PVP:ポリビニルピロリドン
【0212】
【表2】
【0213】
[実施例1]
-積層体サンプル1の作製-
基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「ビューフルUV TP-100」、きもと社製)を準備した。絶縁インク1を、インクジェット記録装置(製品名「DMP-2850」、FUJIFILM DIMATIX社製)用インクカートリッジ(10ピコリットル用)に充填した。画像記録条件は、解像度を1270dpi(dots per inch)、打滴量を1ドット当たり10ピコリットルとした。インクジェットヘッドの横に、紫外線ランプ式照射器(製品名「UVスポットキュア OmniCure S2000」、LumenDynamics社製)を準備した。基材上に画像を記録しながら露光するという操作を繰り返し行い、4回積層し、幅10cm、長さ5cm、厚さ100μmのベタ画像を記録し、絶縁層を形成した。
【0214】
次に、導電インク1をインクジェット記録装置(製品名「DMP-2850」、FUJIFILM DIMATIX社製)用インクカートリッジ(10ピコリットル用)に充填した。画像記録条件は、解像度を1270dpi(dots per inch)、打滴量を1ドット当たり6ピコリットルとした。絶縁層が形成された基材をあらかじめ50℃まで加温した。50℃の基材上に、上記ベタ画像と重なるように、ベタ画像を記録した。最後のインク滴が基材上に着弾した時点から10秒経過した後に、ホットプレートを用いて、ベタ画像を120℃で20分間加熱した。この操作を4回繰り返し、絶縁層上に、金属光沢のある厚さ1.0μmの導電層が形成された積層体サンプル1を得た。
【0215】
-積層体サンプル2の作製-
基材として、プリント基板を用いたこと以外は積層体サンプル1の作製方法と同様の方法で、絶縁インク1を用いて、基材上に幅2.5cm、長さ2.5cm、厚さ100μmのベタ画像を記録した。また、積層体サンプル1の作製方法と同様の方法で、導電インク1を用いて、絶縁層上に、金属光沢のある厚さ1.0μmの導電層が形成された積層体サンプル2を得た。
【0216】
[実施例2~実施例7、実施例9~実施例32、比較例1]
絶縁インク及び導電インクの種類を表3に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、積層体サンプル1及び積層体サンプル2を作製した。
【0217】
[実施例8及び比較例2]
絶縁インク及び導電インクの種類を表3に記載のものに変更し、かつ、導電インクを用いて記録されたベタ画像の加熱温度を120℃から150℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法で、積層体サンプル1及び積層体サンプル2を作製した。
【0218】
各実施例及び各比較例で得られた積層体サンプル1及び積層体サンプル2を用いて、導電性、絶縁層と導電層との密着性、基材との密着性、及び導電層の均一性に関する評価を行った。また、積層体サンプル1を作製する際に、絶縁層上での導電インクの接触角を測定した。測定方法及び評価方法は以下のとおりである。測定結果及び評価結果を表3に示す。
【0219】
<接触角>
積層体サンプル1を作製した際に、絶縁層上に導電インクを滴下し、接触角計(製品名「Drop master 500」、協和界面科学社製」)を用いて測定した。
【0220】
<導電性>
積層体サンプル1における導電層について、抵抗率計(商品名「ロレスターGP」、三菱化学アナリテック社製)を用い、表面抵抗率[Ω/□]を4端子法により室温(23℃)下で測定した。評価基準は以下のとおりである。ランク2以上は、実用上問題ないレベルである。
5:表面抵抗率が100mΩ/□未満である。
4:表面抵抗率が100mΩ/□以上250mΩ/□未満である。
3:表面抵抗率が250mΩ/□以上500mΩ/□未満である。
2:表面抵抗率が500mΩ/□以上1Ω/□未満である。
1:表面抵抗率が1Ω/□以上である。
【0221】
<絶縁層と導電層との密着性(表中、「密着性A」)>
積層体サンプル1を作製後、25℃で1時間放置した。1時間経過後、積層体サンプル1の導電層上にセロテープ(登録商標、No.405、ニチバン社製、幅12mm、以下、単に「テープ」ともいう。)のテープ片を貼り付けた。次に、テープ片を画像から剥離することにより、絶縁層と導電層との密着性を評価した。
テープの貼り付け及び剥離は、具体的には、下記の方法により行った。
一定の速度でテープを取り出し、約75mmの長さにカットし、テープ片を得た。
得られたテープ片を積層体サンプル1の導電層上に重ね、テープ片の中央部の幅12mm、長さ25mmの領域を指で貼り付け、指先でしっかりこすった。
テープ片を貼り付けた後、テープ片の端をつかみ、できるだけ60°に近い角度で0.5秒~1.0秒で剥離した。
剥離したテープ片における付着物の有無と、積層体サンプル1における導電層の剥がれの有無と、を目視で観察した。下記評価基準に従い、絶縁層と導電層との密着性を評価した。評価基準は以下のとおりである。評価結果を表3に示す。
5:テープ片に付着物が認められず、導電層の剥がれも認められない。
4:テープ片に若干の付着物が認められたが、導電層の剥がれは認められない。
3:テープ片に若干の付着物が認められ、導電層に若干の剥がれが認められるが、実用上許容できる範囲内である。
2:テープ片に付着物が認められ、導電層に剥がれも認められ、実用上許容できる範囲を超えている。
1:テープ片に付着物が認められ、導電層がほとんど剥がれ、絶縁層が視認される。
【0222】
<基材と絶縁層との密着性(表中、「密着性B」)>
積層体サンプル2を用いて、絶縁層と導電層との密着性の評価方法と同様の方法で、基材と絶縁層との密着性の評価を行った。評価基準は以下のとおりである。評価結果を表3に示す。
5:テープ片に付着物が認められず、基材と絶縁層との間における剥がれも認められない。
4:テープ片に若干の付着物が認められたが、基材と絶縁層との間における剥がれは認められない。
3:テープ片に若干の付着物が認められ、基材と絶縁層との間における剥がれが認められるが、実用上許容できる範囲内である。
2:テープ片に付着物が認められ、基材と絶縁層との間における剥がれも認められ、実用上許容できる範囲を超えている。
1:テープ片に付着物が認められ、基材と絶縁層との間がほとんど剥がれ、基材が視認される。
【0223】
<導電層の均一性(表中、「均一性」)>
積層体サンプル1における導電性インク膜について、抵抗率計(商品名「ロレスターGP」、三菱化学アナリテック社製)を用い、表面抵抗率[Ω/□]を4端子法により室温(23℃)下で測定した。導電層の任意の8箇所において、表面抵抗率を測定し、標準偏差を算出した。また、標準偏差が150mΩ/□以上である場合には、導電層の表面を目視で観察し、ムラの有無を判定した。評価基準は以下のとおりである。ランク2以上は、実用上問題ないレベルである。
5:標準偏差が50mΩ/□未満である。
4:標準偏差が50mΩ/□以上150mΩ/□未満である。
3:標準偏差が150mΩ/□以上であり、表面にムラが確認できない。
2:標準偏差は150mΩ/□以上であり、表面にムラが確認できる。
1:導電層が均一でなく、表面抵抗率を測定するのが困難である。
【0224】
表3に、絶縁インクに関して、絶縁インクの種類、絶縁インクに含まれる重合開始剤の種類及び含有量、絶縁インクに含まれるN-ビニル化合物の含有量、及び多官能比率を記載した。多官能比率とは、絶縁インクに含まれる重合性モノマーに占める多官能重合性モノマーの割合を意味する。導電インクに関して、導電インクの種類、及び、絶縁層上における接触角を記載した。また、「カルボン酸とアミンの合計質量に対する重合開始剤の質量の比率」とは、導電インク中におけるカルボン酸とアミンの合計質量に対する、絶縁インクに含まれる重合開始剤の質量の比率を意味する。
【0225】
【表3】
【0226】
表3に示すように、実施例1~実施例32では、絶縁インクが、オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤及び重合性モノマーを含み、導電インクが、金属錯体及び金属塩のうち少なくとも一方を含むため、導電性に優れた積層体が得られることが分かった。
【0227】
一方、比較例1では、絶縁インクが、オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤を含まないため、得られる積層体は、導電性に劣ることが分かった。
【0228】
比較例2では、導電インクが、金属錯体及び金属塩のうち少なくとも一方を含むまないため、得られる積層体は、導電性に劣ることが分かった。
【0229】
実施例7では、絶縁インクが重合開始剤としてアルキルフェノン化合物を含むため、実施例17及び実施例18と比較して、得られる積層体は、導電性、及び絶縁層と導電層との密着性に優れることが分かった。
【0230】
実施例7、実施例15及び実施例16では、絶縁インクが重合開始剤として、α-アミノアルキルフェノン化合物及びベンジルケタールアルキルフェノン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むため、実施例19と比較して、得られる積層体は、導電性に優れることが分かった。
【0231】
実施例7では、オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、及びチタノセン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤の含有量が、2質量%~10質量%であり、上記含有量が10質量%超である実施例26と比較して、得られる積層体は、導電性、及び絶縁層と導電層との密着性に優れることが分かった。また、実施例7では、上記含有量が2質量%未満である実施例25と比較して、得られる積層体は、導電性、絶縁層と導電層との密着性、及び、基材と絶縁層との密着性に優れることが分かった。
【0232】
実施例7では、重合性モノマーに占める多官能重合性モノマーの割合が50質量%以下であり、実施例28及び実施例29と比較して、得られる積層体は、基材と絶縁層との密着性に優れることが分かった。
【0233】
実施例7では、絶縁インクにN-ビニル化合物が含まれており、実施例30と比較して、得られる積層体は、導電性、絶縁層と導電層との密着性、及び、基材と絶縁層との密着性に優れることが分かった。
【0234】
実施例7では、絶縁層上における導電インクの接触角が60°以下であり、実施例31と比較して、得られる積層体は、導電層の均一性が高いことが分かった。
【0235】
実施例1では、導電インク中におけるカルボン酸とアミンの合計質量に対する、絶縁インクに含まれる重合開始剤の質量の比率が0.06~0.5であり、上記比率が0.06未満である実施例13と比較して、得られる積層体は、絶縁層と導電層との密着性に優れることが分かった。
【0236】
また、実施例1では、導電インク中におけるカルボン酸とアミンの合計質量に対する、絶縁インクに含まれる重合開始剤の質量の比率が0.06~0.5であり、上記比率が0.5超である実施例14と比較して、得られる積層体は、導電性に優れることが分かった。
【0237】
上記実施例では、積層体サンプル1の作製において、導電インクを熱を用いて硬化させたが、導電インクを光を用いて硬化させた例を以下に示す。
【0238】
[実施例33]
-積層体サンプル3の作製-
積層体サンプル1の作製と同様の方法で、絶縁インク1を用いて、基材上に絶縁層を形成した。
【0239】
次に、導電インク3をインクジェット記録装置(製品名「DMP-2850」、FUJIFILM DIMATIX社製)用インクカートリッジ(10ピコリットル用)に充填した。画像記録条件は、解像度を1270dpi(dots per inch)、打滴量を1ドット当たり10ピコリットルとした。絶縁層が形成された基材をあらかじめ50℃まで加温した。50℃の基材上に、上記ベタ画像と重なるように、ベタ画像を記録した。最後のインク滴が基材上に着弾した時点から10秒経過した後に、パルス光発生装置(製品名「PulseForge3300」、NovaCentrix社製)を用いて、出力600V、パルス幅50μsecで3回照射した。この操作を4回繰り返し、絶縁層上に、金属光沢のある厚さ1.3μmの導電層が形成された積層体サンプル3を得た。
【0240】
-積層体サンプル4の作製-
積層体サンプル1の作製と同様の方法で、絶縁インク1を用いて、基材上に絶縁層を形成した。
【0241】
次に、導電インク3を、インクジェット記録装置(製品名「DMP-2850」、FUJIFILM DIMATIX社製)用インクカートリッジ(10ピコリットル用)に充填した。画像記録条件は、解像度を1270dpi(dots per inch)、打滴量を1ドット当たり10ピコリットルとした。インクジェットヘッドの横に、紫外線ランプ式照射器(製品名「UVスポットキュア OmniCure S2000」、LumenDynamics社製)を準備し、照度が10W/cmになるように調整した。絶縁インク層が形成された基材をあらかじめ50℃まで加温した。50℃の基材上に、上記ベタ画像と重なるように、露光しながらベタ画像を記録した。露光量は12J/cmになるように調整した。この操作を4回繰り返し、絶縁層上に、金属光沢のある厚さ1.3μmの導電層が形成された積層体サンプル4を得た。
【0242】
積層体サンプル3及び積層体サンプル4それぞれを用いて、導電性、絶縁層と導電層との密着性、基材と絶縁層との密着性、及び導電層の均一性の評価を行った。評価方法は、上記と同じである。
【0243】
積層体サンプル3及び積層体サンプル4のいずれにおいても、導電性、絶縁層と導電層との密着性、基材と絶縁層との密着性、及び導電層の均一性の評価結果は5であった。
【0244】
なお、2020年9月30日に出願された米国特許出願63/085,155の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。