(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】検査方法、樹脂組成物の製造方法、及びレジスト組成物又は熱硬化性組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/95 20060101AFI20240920BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20240920BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240920BHJP
G01N 33/44 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N21/95 Z
G03F7/26
H01L21/66 J
G01N33/44
(21)【出願番号】P 2023207435
(22)【出願日】2023-12-08
【審査請求日】2024-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】平原 孔明
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 義人
(72)【発明者】
【氏名】中田 明彦
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/054070(WO,A1)
【文献】特開2004-139133(JP,A)
【文献】特開2007-298833(JP,A)
【文献】国際公開第2022/102375(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/077291(WO,A1)
【文献】特開平07-280739(JP,A)
【文献】特開2022-142378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G03F 7/00-7/42
H01L 21/00-21/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子化合物と溶剤Vとを含有する前駆組成物Vをろ過する工程Vと、
前記前駆組成物を含む
非感光性の樹脂組成物Xを基板Xに塗布して塗膜Xを形成する工程X1と、
有機溶剤X、アルカリ現像液X及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む除去用溶剤Xを使用して前記塗膜Xを前記基板Xから除去する工程X2と、
前記塗膜Xを除去した後の前記基板X上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する工程X3と、
前記工程X1又は前記工程Z1の前に、前記工程X1又は前記工程Z1で使用する前記基板X又は前記基板Zに対して、前記欠陥検査装置を使用して前記基板X又は前記基板Z上の欠陥の位置を検出する工程Y1と、
前記工程Y1による欠陥の検出結果と前記工程X3による欠陥の検出結果の位置座標を重ね合わせ、前記工程X3による欠陥数から、前記工程Y1で検出した前記基板Z上の欠陥の位置と同じ位置に検出される欠陥の数を差し引き、前記樹脂組成物X由来の欠陥数を測定する工程X4と、を含む検査方法。
【請求項2】
更に、前記前駆組成物Vを含有するレジスト組成物又は熱硬化性組成物を基板Zに塗布して塗膜Zを形成する工程Z1と、
有機溶剤Z、アルカリ現像液Z及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む除去用溶剤Zを使用して前記塗膜Zを前記基板Zから除去する工程Z2と、
前記塗膜Zを除去した後の前記基板Z上の欠陥の数を、前記欠陥検査装置を使用して測定する工程Z3と、を含む、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記工程X3、前記工程Z3及び前記工程Y1からなる群より選ばれる少なくとも1種において測定する欠陥の大きさが12.5nm以上である、請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、前記高分子化合物と前記溶剤Vからなる、請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項5】
前記工程X2は、前記塗膜Xが活性光線又は放射線の照射による露光処理をされていない状態で適用される、請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項6】
前記工程X2は、前記塗膜Xが活性光線又は放射線の照射による露光処理をした状態で適用される、請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項7】
高分子化合物と溶剤Vとを含有する前駆組成物をろ過する工程Vと、
前記前駆組成物を含む
非感光性の樹脂組成物Xを基板Xに塗布して塗膜Xを形成する工程X1と、
有機溶剤、アルカリ現像液及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む除去用溶剤Xを使用して前記塗膜Xを前記基板Xから除去する工程X2と、
前記塗膜Xを除去した後の前記基板X上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する工程X3と、
前記工程X1又は前記工程Z1の前に、前記工程X1又は前記工程Z1で使用する前記基板X又は前記基板Zに対して、前記欠陥検査装置を使用して前記基板X又は前記基板Z上の欠陥の位置を検出する工程Y1と、
前記工程Y1による欠陥の検出結果と前記工程X3による欠陥の検出結果の位置座標を重ね合わせ、前記工程X3による欠陥数から、前記工程Y1で検出した前記基板Z上の欠陥の位置と同じ位置に検出される欠陥の数を差し引き、前記樹脂組成物X由来の欠陥数を測定する工程X4と、
前記工程X
4において所定の欠陥の数を満たす樹脂組成物を提供する工程R1を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の樹脂組成物の製造方法により樹脂組成物を提供する工程R11と、
前記樹脂組成物を含有するレジスト組成物又は熱硬化性組成物を提供する工程R12とを含む、レジスト組成物又は熱硬化性組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法、樹脂溶液、レジスト組成物又は熱硬化性組成物、樹脂組成物の製造方法、及びレジスト組成物又は熱硬化性組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、フォトリソグラフィ技術を用いて、基板上に微細な電子回路パターンを形成して製造されることが知られている。
具体的には、感活性光線性又は感放射線性組成物(以下「レジスト組成物」ともいう。)を用いて得られるレジスト膜を基板上に形成した後、レジスト膜に対して、光を照射する露光処理、現像液を用いた現像処理、及び、必要に応じてリンス液を用いたリンス処理等の各種処理を行うことにより、パターン状のレジスト膜が得られる。このようにして得られたパターン状のレジスト膜をマスクとして、各種処理を施して電子回路パターンを形成する。
このような半導体デバイス形成工程において、得られる半導体デバイスの歩留まりをより向上させるため、欠陥の発生を抑制できるパターン形成方法が求められている。近年、10nmノード以下の半導体デバイスの製造が検討されており、この傾向は更に顕著になっている。
【0003】
ところで、パターンに欠陥が生じる原因の一つとして、レジスト組成物に含まれる異物が挙げられる。
例えば、特許文献1には、塗布材料の塗布前後あるいはそのいずれかに、基板等の被塗布部材に異物が付着しているかを自動的に検査し、良否の選別を行って不良品を次工程へ搬送しないようにする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、電子回路パターンの更なる微細化が進んでおり、僅かな異物でも微細な欠陥の原因となり、半導体デバイスの性能に多大な影響を与える場合がある。そのため、半導体デバイスの製造プロセスにおいて、微細な欠陥の発見できる検査方法が求められていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、微細な欠陥の発見できる検査方法、当該検査方法により欠陥数を低減した樹脂溶液、当該検査方法により欠陥数を低減したレジスト組成物又は熱硬化性組成物、当該樹脂組成物の製造方法、及び当該レジスト組成物又は熱硬化性組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、高分子化合物と溶剤Vとを含有する前駆組成物Vをろ過する工程Vと、前記前駆組成物を含む樹脂組成物Xを基板Xに塗布して塗膜Xを形成する工程X1と、有機溶剤X、アルカリ現像液X及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む除去用溶剤Xを使用して前記塗膜Xを前記基板Xから除去する工程X2と、前記塗膜Xを除去した後の前記基板X上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する工程X3と、を含む検査方法である。
【0008】
本発明の第2の態様は、高分子化合物と溶剤Vとを含有する樹脂溶液であって、下記測定条件で測定する、1cm2あたりの12.5nm以上の大きさの欠陥の数が2個以下である、樹脂溶液。
(測定条件)
(1)高分子化合物と溶剤Vとを含有する前駆組成物をろ過する。
(2)前記前駆組成物を含む樹脂組成物Xを基板Xに塗布して塗膜Xを形成する。
(3)有機溶剤、アルカリ現像液及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む除去用溶剤Xを使用して前記塗膜Xを前記基板Xから除去する。
(4)前記塗膜Xを除去した後の前記基板X上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する。
【0009】
本発明の第3の態様は、前記第2の態様にかかる樹脂溶液を含有するレジスト組成物又は熱硬化性組成物である。
【0010】
本発明の第4の態様は、高分子化合物と溶剤Vとを含有する前駆組成物をろ過する工程Vと、前記前駆組成物を含む樹脂組成物Xを基板Xに塗布して塗膜Xを形成する工程X1と、有機溶剤、アルカリ現像液及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む除去用溶剤Xを使用して前記塗膜Xを前記基板Xから除去する工程X2と、前記塗膜Xを除去した後の前記基板X上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する工程X3と、前記工程X3において所定の欠陥の数を満たす樹脂組成物を提供する工程R1を含む、樹脂組成物の製造方法である。
【0011】
本発明の第5の態様は、前記第4の態様にかかる樹脂組成物の製造方法により樹脂組成物を提供する工程R11と、前記樹脂組成物を含有するレジスト組成物又は熱硬化性組成物を提供する工程R12とを含む、レジスト組成物又は熱硬化性組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微細な欠陥の発見できる検査方法、当該検査方法により欠陥数を低減した樹脂溶液、当該検査方法により欠陥数を低減したレジスト組成物又は熱硬化性組成物、当該樹脂組成物の製造方法、及び当該レジスト組成物又は熱硬化性組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、工程X41で測定した、基板X中の欠陥位置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、工程X42で測定した、基板X及び樹脂組成物Xに由来する欠陥位置を示す模式図である。
【
図3】
図3は、工程X42で測定した欠陥位置から、工程X41で測定した欠陥位置を差し引いた、樹脂組成物Xに由来する欠陥位置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の態様:検査方法>
本実施形態にかかる検査方法は、高分子化合物と溶剤Vとを含有する前駆組成物Vをろ過する工程Vと、前記前駆組成物を含む樹脂組成物Xを基板Xに塗布して塗膜Xを形成する工程X1と、有機溶剤X、アルカリ現像液X及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む除去用溶剤Xを使用して前記塗膜Xを前記基板Xから除去する工程X2と、前記塗膜Xを除去した後の前記基板X上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する工程X3と、を含む。
以下、各工程について説明する。
【0015】
[工程V]
前駆組成物Vをろ過する方法は特に限定されず、例えば、フィルターを用いた濾過を挙げることができる。フィルター孔径および材質としては、特に制限はなく、組成物に合わせて適宜調整することができる。フィルターは、溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び材質の少なくとも一方が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。
【0016】
フィルターとしては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリエチレンの少なくとも1種の多孔質膜からなるフィルター等を用いて、前駆組成物Vの濾過を行ってもよい。前記ポリイミド多孔質膜及び前記ポリアミドイミド多孔質膜としては、例えば、特開2016-155121号公報に記載のもの等が例示される。
また、フィルターとしては、特開2016-201426号公報に開示されるような溶出物が低減されたものでもよい。
【0017】
フィルターの孔径は特に限定されないが、50nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。
【0018】
本実施形態において、フィルターは1段でも2段以上でもよいが、2段以上が好ましい。
1段目のフィルターの孔径は20nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましく、6nm以下がさらに好ましい。2段目以降のフィルターの孔径は10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、2nm以下がさらに好ましい。
【0019】
フィルター濾過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は活性炭等の有機系吸着材を使用することができる。金属吸着剤としては、例えば、特開2016-206500号公報に開示されるものを挙げることができる。
【0020】
また、金属等の不純物を除去する方法としては、原料として金属含有量が少ない原料を選択する、原料に対してフィルター濾過を行う、又は装置内をポリテトラフルオロエチレンでライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
【0021】
(高分子化合物)
高分子化合物は特に限定されず、半導体デバイスの製造プロセスにおいて基板等の被塗布材料に塗布する塗布材料に含まれる高分子化合物等が挙げられる。前記高分子化合物としては、具体的には、レジスト組成物の基材成分、反射防止膜形成のための熱硬化性組成物、ダイシング保護膜形成用材料等が挙げられる。
【0022】
(溶剤)
溶剤は高分子化合物を溶解できるものであれば特に限定されない。前記溶剤としては、具体的には、水、ラクトン溶媒、ケトン溶媒、アルコール溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、芳香族系有機溶剤、炭化水素溶媒ジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性溶媒等が挙げられる。
【0023】
前駆組成物の固形分濃度は特に限定されないが、50質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
[工程X1]
前駆組成物を用いて基板X上に塗膜Xを形成する方法としては、例えば、前駆組成物を基板X上に塗布する方法が挙げられる。また、塗布方法の他の一例としては、コーターカップを用いた塗布方法、及び、有機現像ユニットを用いた塗布方法が挙げられる。また、スピナーを用いたスピン塗布方法を使用した塗布方法であるのも好ましい。スピナーを用いたスピン塗布をする際の回転数は、500~3000rpmが好ましい。
コーターを用いる場合、吐出時間は特に限定されず、組成物の固形分濃度に応じて適宜変更してもよい。
【0025】
基板X上に前駆組成物を塗布した後、基板Xを乾燥することが好ましい。
乾燥方法としては、例えば、加熱して乾燥する方法が挙げられる。加熱は通常の露光機、及び/又は、現像機に備わっている手段で実施でき、ホットプレート等を用いて実施してもよい。加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましく、80~130℃が更に好ましい。加熱時間は30~1000秒が好ましく、60~800秒がより好ましく、60~600秒が更に好ましい。一態様としては、100℃にて60秒間加熱を実施することが好ましい。
【0026】
塗膜Xの膜厚は特に制限されないが、10~1000nmが好ましく、10~120nmがより好ましい。なかでも、前駆組成物の使用用途毎に膜厚を考慮することが好ましく、例えば、前駆組成物がレジスト組成物用の基材成分であり、且つ、EUV露光又はEB露光でのパターン形成に供されるものである場合、塗膜Xの膜厚としては、10~100nmがより好ましく、15~70nmが更に好ましい。また、例えば、前駆組成物がレジスト組成物用の基材成分であり、且つ、ArF露光でのパターン形成に供されるものである場合、塗膜Xの膜厚としては、10~120nmがより好ましく、15~90nmが更に好ましい。
【0027】
(樹脂組成物X)
樹脂組成物Xしては、前駆組成物を含んでいれば特に限定されない。例えば、前駆組成物自体を樹脂組成物Xとして用いてもよいし、前駆組成物を任意成分と混合して樹脂組成物Xとしてもよい。
本実施形態においては、前駆組成物に由来する欠陥をより精度高く検査する観点から、樹脂組成物が非感光性であることが好ましい。
また、本実施形態においては、前駆組成物に由来する欠陥をより精度高く検査する観点から、樹脂組成物Xが高分子化合物と前記溶剤Vからなることが好ましい。
【0028】
(基板X)
基板Xとしては、集積回路素子の製造に使用されるような基板が挙げられ、シリコンウエハが好ましい。基板Xは、再生ウェハであってもよい。
検査精度がより向上する点で、工程X1で使用される基板Xは、工程X1へ適用する以前から基板X上に存在する欠陥の数(元基板欠陥数)が2.00個/cm2以下であることが好ましく、1.20個/cm2以下であることがより好ましく、0.75個/cm2以下であることが更に好ましく、0.15個/cm2以下であることが特に好ましい。なお、下限値としては、例えば、0.00個/cm2以上である。
なかでも、検査精度がより向上する点で、工程X1で使用される基板Xは、工程X1へ適用する以前から基板X上に存在する12.5nm以上の大きさの欠陥の数が2.00個/cm2以下であることが好ましく、1.20個/cm2以下であることがより好ましく、0.75個/cm2以下であることが更に好ましく、0.15個/cm2以下であることが特に好ましい。なお、下限値としては、例えば、0.00個/cm2以上である。欠陥の大きさについて、上限には特に制限はないが、例えば、5μm以下であり、後述する各工程で記載されている欠陥についても同様である。工程X1で使用される基板Xの欠陥の数が多い場合、工程X3で実施される基板上の欠陥検査の際に散乱が生じて欠陥の数の正確な測定が阻害される場合がある。このため、工程X3での基板上の欠陥検査の精度がより優れる点(ひいては、本検査方法の検査精度がより向上する点)で、工程X1で使用される基板Xは清浄度の高いもの(元基板欠陥数が小さいもの)を使用することが好ましい。
基板X上の欠陥検査は、欠陥検査装置(例えば、暗視野欠陥検査装置:KLA-Tencor社製、Surfscan(登録商標) SP7XP等)で測定できる。
【0029】
[工程X2]
工程X2で使用する除去用溶剤Xは、有機溶剤X、アルカリ現像液X及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、「X成分」ともいう)を含む。
X成分は、1種単独であっても、複数種の混合であってもよい。
除去用溶剤におけるX成分(複数種を混合する場合は合計)の含有量としては、除去用溶剤X全量に対して60~100質量%が好ましく、85~100質量%がより好ましく、90~100質量%が更に好ましく、95~100質量%が特に好ましく、98~100質量%が最も好ましい。
なかでも、有機溶剤Xは、検査精度の向上の点で、実質的に水を含まないことが好ましい。「有機溶剤Xが実質的に水を含まない」とは、有機溶剤X中の含水率が、10質量%以下であることを意図し、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、水を含まないことが更に好ましい。
【0030】
(有機溶剤X)
上記有機溶剤Xとしては、工程X1で形成された塗膜Xを基板Xから除去できるものであれば特に制限されないが、なかでも、前駆組成物中に含まれている有機溶剤(例えば、前駆組成物がレジスト組成物の基材成分である場合、レジスト成分を希釈している有機溶剤が該当する。)であることが好ましく、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、及びケトン系有機溶剤からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、これらの群からなることがより好ましい。
【0031】
エステル系有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、乳酸エステル、酢酸エステル、ラクトン、及び、アルコキシプロピオン酸エステル等が挙げられる。
【0032】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、又は、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)がより好ましい。
乳酸エステルとしては、乳酸エチル、乳酸ブチル、又は、乳酸プロピルが好ましい。
酢酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸イソアミル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、又は、酢酸3-メトキシブチルが好ましい。
アルコキシプロピオン酸エステルとしては、3-メトキシプロピオン酸メチル(MMP:methyl 3-Methoxypropionate)、又は3-エトキシプロピオン酸エチル(EEP:ethyl 3-ethoxypropionate)が好ましい。
ラクトンとしては、γ-ブチロラクトンが好ましい。
【0033】
アルコール系有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。
プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、又は、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)が好ましい。
【0034】
ケトン系有機溶剤としては、例えば、鎖状ケトン及び環状ケトン等が挙げられる。
鎖状ケトンとしては、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、又は、メチルアミルケトンが好ましい。
環状ケトンとしては、メチルシクロヘキサノン、イソホロン、又は、シクロヘキサノンが好ましい。
【0035】
有機溶剤Xとしては、1種単独であっても、2種以上を混合してもよい。
有機溶剤Xとしては、なかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、酢酸ブチル、及びγ-ブチルラクトンからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、これらの群からなることがより好ましい。
【0036】
(アルカリ現像液X)
アルカリ現像液Xとしては、例えば0.1~10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
【0037】
本実施形態において、工程X2は、前記塗膜Xが活性光線又は放射線の照射による露光処理をされていない状態で適用されてもよいし、前記塗膜Xが活性光線又は放射線の照射による露光処理をした状態で適用されてもよい。
前駆組成物に由来する欠陥をより精度高く検査する観点から、工程X2は、前記塗膜Xが活性光線又は放射線の照射による露光処理をされていない状態で適用されることが好ましい。
【0038】
[工程X3]
工程X3は、工程X2により塗膜Xを除去された後の基板X上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する工程である。具体的には、基板X上に存在する欠陥の数(好ましくは、12.5nm以上の大きさの欠陥の数)を測定する。
工程X3における基板Xの欠陥検査は、欠陥検査装置(例えば、暗視野欠陥検査装置:KLA-Tencor社製、Surfscan(登録商標) SP7XP等)で測定できる。
上記工程X3を実施することにより、除去用溶剤による除去後の基板X上に存在する欠陥の数(好ましくは、12.5nm以上の大きさの欠陥の数)が測定される。
【0039】
[任意工程]
本実施形態に係る検査方法は、工程V、工程X1、工程X2及び工程X3以外の工程を含んでもよい。
以下、各任意工程について説明する。
【0040】
[工程X2A]
除去用溶剤Xは、ろ過してから用いてもよい(工程X2A)。除去用溶剤Xを濾過する方法としては、前記工程Vにおいて前駆組成物Vをろ過する方法と同様である。
【0041】
[工程Z]
本実施形態に係る検査方法は、前記前駆組成物Vを含有するレジスト組成物又は熱硬化性組成物を基板Zに塗布して塗膜Zを形成する工程Z1と、有機溶剤Z、アルカリ現像液Z及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む除去用溶剤Zを使用して前記塗膜Zを前記基板Zから除去する工程Z2と、前記塗膜Zを除去した後の前記基板Z上の欠陥の数を、前記欠陥検査装置を使用して測定する工程Z3と、を含む工程Zを行ってもよい。
工程Zを行うことにより、前駆組成物Vに由来する欠陥のみならず、レジスト組成物又は熱硬化性組成物のその他の成分に由来する欠陥も検査できるので、半導体デバイスの製造に実際に用いるレジスト組成物又は熱硬化性組成物に由来する欠陥について結果を判断しやすくなる。
【0042】
[工程Z1]
レジスト組成物又は熱硬化性組成物を基板Zに塗布して塗膜Zを形成する方法は、工程X1において前駆組成物を用いて基板X上に塗膜Xを形成する方法と同様である。
【0043】
(レジスト組成物又は熱硬化性組成物)
工程Z1で用いるレジスト組成物又は熱硬化性組成物は、前記前駆組成物Vを含有していれば特に限定されない。
例えば、レジスト組成物としては、基材成分として前駆組成物Vを含有し、その他の任意成分を含んでもよい。典型的には、基材成分として前駆組成物Vと、光酸発生剤と、酸拡散制御剤と、溶剤と、その他添加剤(架橋剤、フッ素添加剤、有機酸、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料など)を含有する。
あるいは、レジスト組成物は、疎水性樹脂として前駆組成物Vと、基材成分と、光酸発生剤と、酸拡散制御剤と、溶剤と、その他添加剤(架橋剤、フッ素添加剤、有機酸、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料など)を含有してもよい。
熱硬化性組成物としては、前駆組成物Vと、溶剤と、架橋剤と、界面活性剤とを含有してもよい。
【0044】
レジスト組成物又は熱硬化性組成物の固形分濃度は特に限定されないが、50質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
(基板Z)
基板Zは、前記工程X1で説明した基板Xの任意の1種を用いることができる。レジスト組成物又は熱硬化性組成物に由来する欠陥を精度高く測定する観点から、基板Zは基板Xと同種類であり、かつ、前記工程X1で用いた基板X自体を基板Zとして使用しないほうが好ましい。
【0046】
[工程Z2]
工程Z2で使用する除去用溶剤Zは、前記工程X2で説明した除去用溶剤Xの中から用いることができ、前記工程X2で用いた除去用溶剤Xと同種であることが好ましい。
[工程Z2A]
除去用溶剤Zは、ろ過してから用いてもよい(工程Z2A)。除去用溶剤Zを濾過する方法としては、前記工程Vにおいて前駆組成物Vをろ過する方法と同様である。
【0047】
[工程Z3]
工程Z3は、前記工程X3と同様に行うことができる。
【0048】
[工程Y1]
本実施形態に係る検査方法は、更に、前記工程X1又は工程Z1の前に、前記工程X1又は工程Z1で使用する前記基板X又は基板Zに対して、前記欠陥検査装置を使用して前記基板X又は基板Z上の欠陥の数を測定する工程Y1を含んでもよい。
工程Y1を行うことにより、基板X又は基板Zに由来する欠陥を予め把握できるので、工程X3又は工程Z3において前駆組成物V、レジスト組成物又は熱硬化性組成物に由来する欠陥についてより結果を判断しやすくなる。
【0049】
基板X又は基板Z上の欠陥検査は、欠陥検査装置(例えば、暗視野欠陥検査装置:KLA-Tencor社製、Surfscan(登録商標) SP7XP等)で測定できる。
【0050】
[工程Y2]
本実施形態に係る検査方法は、工程X2又は工程Z2で使用する除去用溶剤を基板Yに塗布する工程Y2Aと、前記除去用溶剤塗布後の基板X又は基板Z上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する工程Y2Bとを含む工程Y2を行ってもよい。
工程Yを行うことにより、除去用溶剤に由来する欠陥の数を測定できるため、工程X3において前駆組成物Vに由来する欠陥についてより結果を判断しやすくなる。
【0051】
工程Y2Aは、前記工程X1又は工程Z1と同様に行うことができる。
工程Y2Bは、前記工程X3又は工程Z3と同様に行うことができる。
【0052】
本実施形態に係る検査方法は、前記工程Y1及び前記工程Y2の両方を行ってもよい。
前記工程Y1及び前記工程Y2の両方行う場合、前記工程X3又は工程Z3において測定された欠陥の数から、工程Y1で測定された基板X又は基板Zに由来する欠陥の数と、工程Y2で測定された除去用溶剤に由来する欠陥の数を差し引いてもよい。当該差し引きにより、前駆組成物Vに由来する欠陥についてより結果を判断しやすくなる。
なお、除去用溶剤に由来する欠陥の数(除去溶剤欠陥数)がカタログ等の記載により既に公知である場合、工程Y2は行わずにかかる公称値を「工程Y2で測定された除去用溶剤に由来する欠陥の数」として使用してもよい。
【0053】
[工程X4]
本実施形態に係る検査方法は、前記工程Y1による欠陥の検出結果と前記工程X3による欠陥の検出結果の位置座標を重ね合わせ、前記工程X3による欠陥数から、前記工程Y1で求めた欠陥数を差し引き、前記樹脂組成物X由来の欠陥数を測定する工程X4を含んでもよい。
工程X4を行うことにより、樹脂組成物X由来の欠陥についてより結果を判断しやすくなる。
【0054】
工程X4の手順の一例について、図面に参照して説明する。
始めに、
図1に示す通り、基板X中の欠陥位置を測定する(工程X41)。
図1中、欠陥41は、基板Xに由来する欠陥である。
次に、
図2に示す通り、除去用溶剤X塗布後の基板Xにおいて、基板X中の欠陥位置を測定する(工程X42)。
図2中、欠陥41’は基板Xに由来する欠陥であり、欠陥42は樹脂組成物Xに由来する欠陥である。
さらに、
図3に示す通り、工程X42で測定された欠陥41’及び欠陥42から、工程X41で測定された欠陥と同じ位置の欠陥41’を差し引き、除去用溶剤Xに由来する欠陥43の数を測定する(工程X43)。
【0055】
工程X41と工程X42で同じ位置に検出された欠陥は、基板X由来であるため、同じ位置に検出された欠陥を差し引くことで、工程X43において樹脂組成物に由来する欠陥数を適切に測定することができる。
【0056】
なお、工程X42では、工程41で測定した基板X中の欠陥位置の全てが検出されない場合もある。そのため、工程X43において、工程X42で測定された欠陥数から、工程X41と工程X42で同じ位置に検出された欠陥数ではなく工程X41の全て欠陥数を差し引いてしまった場合、工程X41で検出されたものの工程X42で検出されなかった欠陥を余計に差し引いてしまい、正確な欠陥数を測定することができない。
【0057】
[工程Y3]
本実施形態に係る検査方法は、前記工程Y1による欠陥の検出結果と前記工程Y2による欠陥の検出結果の位置座標を重ね合わせ、前記工程Y2による欠陥数から、前記工程Y1で求めた欠陥数を差し引き、前記除去用溶剤Y由来の欠陥数を測定する工程Y3を含んでもよい。
工程Y3を行うことにより、樹脂組成物X由来の欠陥についてより結果を判断しやすくなる。
工程Y3は、工程X4と同様に行うことができる。
【0058】
[工程Z4]
本実施形態に係る検査方法は、前記工程Y1による欠陥の検出結果と前記工程Z3による欠陥の検出結果の位置座標を重ね合わせ、前記工程Z3による欠陥数から、前記工程Y1で求めた欠陥数を差し引き、前記レジスト組成物又は熱硬化性組成物由来の欠陥数を測定する工程Z4を含んでもよい。
工程Z4を行うことにより、レジスト組成物又は熱硬化性組成物由来の欠陥についてより結果を判断しやすくなる。
工程Z4は、工程X4と同様に行うことができる。
【0059】
本実施形態に係る検査方法において、測定可能な欠陥の最小値は、20nm以下が好ましく、19nm以下がより好ましく、17nm以下がさらに好ましく、12.5nm以下が最も好ましい。
すなわち、本実施形態に係る検査方法において、前記工程X3、前記工程Z3及び前記工程Y1からなる群より選ばれる少なくとも1種において測定する欠陥の大きさが12.5nm以上であることが最も好ましい。
【0060】
本実施形態に係る検査方法によれば、レジスト組成物又は熱硬化性組成物を調製する前に樹脂原料を欠陥評価することで、不良な樹脂を判別できる。そのため、本実施形態に係る検査方法を適用することにより、半導体デバイスの生産性が向上することが期待できる。
また、樹脂組成物Xの欠陥数を予め検査しておくことで、レジスト組成物又は熱硬化性組成物の欠陥についてより正確に原因究明しやすい。
【0061】
<第2の態様:樹脂溶液>
本実施形態に係る樹脂溶液は、高分子化合物と溶剤Vとを含有し、下記測定条件で測定する、1cm2あたりの12.5nm以上の大きさの欠陥の数が2個以下である。
(測定条件)
(1)高分子化合物と溶剤Vとを含有する前駆組成物をろ過する。
(2)前記前駆組成物を含む樹脂組成物Xを基板Xに塗布して塗膜Xを形成する。
(3)有機溶剤、アルカリ現像液及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む除去用溶剤Xを使用して前記塗膜Xを前記基板Xから除去する。
(4)前記塗膜Xを除去した後の前記基板X上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する。
【0062】
本実施形態において、上記測定条件の(1)~(4)は、前記第1の態様に係る検査方法における工程V、工程X1、工程X2及び工程X3と同様に行うことができる。
【0063】
本実施形態に係る樹脂溶液は、欠陥が低減されているため、半導体デバイスの製造に用いる各種材料の樹脂原料として有用である。
【0064】
<第3の態様:レジスト組成物又は熱硬化性組成物>
本実施形態に係るレジスト組成物又は熱硬化性組成物は、前記第2の態様にかかる樹脂溶液を含有する。
本実施形態に係るレジスト組成物は、例えば、基材成分として前記第2の態様にかかる樹脂溶液を含有し、その他の任意成分を含んでもよい。典型的には、基材成分として前記第2の態様にかかる樹脂溶液と、光酸発生剤と、酸拡散制御剤と、溶剤と、その他添加剤(架橋剤、フッ素添加剤、有機酸、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料など)を含有する。
あるいは、レジスト組成物は、疎水性樹脂として前記第2の態様にかかる樹脂溶液と、基材成分と、光酸発生剤と、酸拡散制御剤と、溶剤と、その他添加剤(架橋剤、フッ素添加剤、有機酸、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料など)を含有してもよい。
本実施形態に係る熱硬化性組成物としては、前駆組成物Vと、溶剤と、架橋剤と、界面活性剤とを含有してもよい。
【0065】
本実施形態に係るレジスト組成物又は熱硬化性組成物は、欠陥が低減されている樹脂溶液を含有するため、半導体デバイスの製造に好適である。
【0066】
<第4の態様:樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、高分子化合物と溶剤Vとを含有する前駆組成物をろ過する工程Vと、前記前駆組成物を含む樹脂組成物Xを基板Xに塗布して塗膜Xを形成する工程X1と、有機溶剤、アルカリ現像液及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む除去用溶剤Xを使用して前記塗膜Xを前記基板Xから除去する工程X2と、前記塗膜Xを除去した後の前記基板X上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する工程X3と、前記工程X3において所定の欠陥の数を満たす樹脂組成物を提供する工程R1を含む。
【0067】
本実施形態において、工程V、工程X1、工程X2及び工程X3は、前記第1の態様にかかる検査方法における工程V、工程X1、工程X2及び工程X3と同様である。
工程R1において、所定の欠陥の数を満たす樹脂組成物としては、工程X3で測定した、1cm2あたりの12.5nm以上の大きさの欠陥の数が2個以下であることが好ましい。
【0068】
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法によれば、欠陥が低減された樹脂組成物が得られるので、半導体デバイスの製造に用いる各種材料の樹脂原料に適用できる。
【0069】
<レジスト組成物又は熱硬化性組成物の製造方法>
本実施形態にかかるレジスト組成物又は熱硬化性組成物の製造方法は、樹脂組成物の製造方法により樹脂組成物を提供する工程R11と、前記樹脂組成物を含有するレジスト組成物又は熱硬化性組成物を提供する工程R12とを含む。
本実施形態にかかるレジスト組成物又は熱硬化性組成物の製造方法によれば、欠陥が低減できるため、半導体デバイスの製造に好適なレジスト組成物又は熱硬化性組成物を提供できる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0071】
(工程Y1:工程X1で使用する基板Xに対して、基板X上の欠陥の数を測定する工程)
暗視野欠陥検査装置(KLA-Tencor社製、Surfscan(登録商標)SP7XP)を使用して、検査に用いる12インチ(直径300mm)シリコンウエハの欠陥検査を実施し、1cm2以上あたりのシリコンウエハの表面に存在する12.5nm以上の大きさの欠陥の数(欠陥数)を測定した。結果を「E:元基板欠陥数」とする。
【0072】
(工程X2A、工程Z2A:除去用溶剤の濾過)
ポアサイズ10nmポリエチレンフィルタを用いて、各除去用溶剤を濾過し、濾過後の液をガロン瓶へ充填した。
【0073】
(工程Y2:工程X2で使用する除去用溶剤に由来する欠陥数の測定)
上述の濾過後の除去用溶剤を、それぞれ、コーター(東京エレクトロン(株)社、CLEAN TRACK(登録商標)ACT(登録商標)12)のラインに接続した(なお、接続の際、接続配管にフィルタを接続しなかった)。続いて、上述の〔検査用ウエハの欠陥検査〕において予め欠陥数を検査した12インチ(直径300mm)シリコンウエハ上に、上述の方法によって接続された除去用溶剤を上記コーターにて塗布(75mL/minの流量で10秒吐出)し、その後、100℃にて45秒間ベークした。上記手順によって得られた除去用溶剤塗布後のウエハに対して、暗視野欠陥検査装置(KLA-Tencor社製、Surfscan(登録商標)SP7XP)を使用して、1cm2以上あたりのシリコンウエハの表面に存在する12.5nm以上の大きさの欠陥の数(欠陥数)を測定した。結果を「F:除去用溶剤振切後欠陥数」とする。次いで、上記各種検査により得られた「E:元基板欠陥数」及び「F:除去用溶剤振切後欠陥数」の結果に基づいて、下記計算式により「C:除去用溶剤欠陥数」を求めた。
式(A1):[C:除去用溶剤欠陥数]=[F:除去用溶剤振切後欠陥数]-[E:元基板欠陥数]
【0074】
[前駆組成物、レジスト組成物、熱硬化性組成物の調製]
前駆組成物、レジスト組成物、熱硬化性組成物の調製には、下記の各成分を用いた。
(高分子化合物)
用いた各高分子化合物の構造を以下に示す。各高分子化合物について、13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))を表1に示す。なお、表1の組成比は、各高分子化合物の左から順に対応する。また、各高分子化合物について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、分子量分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
(化合物1:光酸発生剤、近赤外線吸収染料)
化合物1として用いた各光酸発生剤、近赤外線吸収染料の構造を以下に示す。
【0080】
【0081】
(化合物2:酸拡散制御剤)
化合物2として用いた各酸拡散制御剤の構造を以下に示す。
【0082】
【0083】
(化合物3:フッ素添加剤、酸発生剤)
化合物3として用いた各フッ素添加剤、酸発生剤の構造を以下に示す。
【0084】
【0085】
GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は15000、分子量分散度(Mw/Mn)1.5。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m=50/50。
【0086】
【0087】
【0088】
GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は10000、分子量分散度(Mw/Mn)1.4。13C-NMRにより求めた共重合組成比(構造式中の各構成単位の割合(モル比))はl/m=60/40。
【0089】
【0090】
(溶剤)
使用した組成物用溶剤は以下の通りである。
s1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」)
s2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGME」)
s3:ガンマブチロラクトン
【0091】
使用した除去用溶剤は以下の通りである。
c1:PGMEA/PGME=3/7の混合溶液
c2:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38%水溶液(NMD-3:東京応化工業株式会社製)
c3:PGMEA
【0092】
[工程V:前駆組成物の調製]
実施例01~04、11~28、比較例01~04、11~18について、表2に示す高分子化合物と組成物用溶剤とからなる溶液を、固形分濃度が10質量%となるように調製した。次に、1段目にポアサイズナイロンフィルタ、2段目にポアサイズ1nmのポリエチレンフィルタの2段フィルタで1回濾過し、前駆組成物を得た。
【0093】
【0094】
(工程X1:前駆組成物を基板Xに塗布して塗膜Xを形成する工程)
調製した前駆組成物を、それぞれ、コーター(東京エレクトロン(株)社、CLEAN TRACK(登録商標)LITHIUSPro (登録商標)Z)のライン(但し、溶剤とは別のラインである。)に接続した。なお、接続の際、接続配管にフィルタを接続しなかった。続いて、上述の[検査用ウエハの欠陥検査]において予め欠陥数を検査した12インチ(直径300mm)シリコンウエハ上に、上述の方法によって接続された前駆組成物を上記コーターにて1500rpmで塗布し、その後、110℃、60秒ベークして塗膜を形成した。
【0095】
(工程X2:除去用溶剤Xを使用して前記塗膜Xを前記基板Xから除去する工程)
実施例01~04、11~28では、次いで、除去用溶剤を使用して、工程X1で得られた塗膜付きシリコンウエハから塗膜を除去する。なお、ここで使用する除去用溶剤は、工程X2、工程Z2にて準備した各種溶剤である。
【0096】
(工程X3:塗膜Xを除去した後の基板X上の欠陥の数を、欠陥検査装置Xを使用して測定する工程)
上記塗膜の除去工程後のウエハに対して、暗視野欠陥検査装置(KLA-Tencor社製、Surfscan(登録商標) SP7XP)を使用して欠陥検査を実施し、1cm2以上あたりのシリコンウエハの表面に存在する12.5nm以上の大きさの欠陥の数(欠陥数)を測定した([D:溶剤除去処理後のTotal欠陥数])。次いで、上記各種検査により得られた「E:元基板欠陥数」及び[D:溶剤除去処理後のTotal欠陥数]の結果に基づいて、下記計算式により「B:除去後欠陥数」を求めた。式(A2):[B:除去後欠陥数]=[D:溶剤除去処理後のTotal欠陥数]-[E:元基板欠陥数]
【0097】
<剥離後欠陥評価([A:剥離後欠陥数]の算出)>剥離後欠陥数として、除去後欠陥数から除去用溶剤に由来する欠陥数([C:除去用溶剤欠陥数])を差し引いた値を、「A:剥離後欠陥数」とした。「A:剥離後欠陥数」は、具体的には、下記計算式により求めた。なお、[C:除去用溶剤欠陥数]は、上記記載に基づく。式(A3):[A:剥離後欠陥数]=[B:除去後欠陥数]-[C:除去用溶剤欠陥数]。1cm2あたりの剥離後欠陥の欠陥数を、下記の評価基準にしたがって評価した。結果を表4及び5に示す。
(評価基準)
A:1cm2あたりの剥離後欠陥の欠陥数が0.1個未満
B:1cm2あたりの剥離後欠陥の欠陥数が0.5個以上2個未満
C:1cm2あたりの剥離後欠陥の欠陥数が2個以上10個未満
D:1cm2あたりの剥離後欠陥の欠陥数が10個以上
【0098】
(塗膜欠陥評価)
上記塗膜付きウエハに対して暗視野欠陥検査装置(KLA-Tencor社製、Surfscan(登録商標)SP7XP)を使用して、欠陥検査を実施した。この結果、検査対象が塗膜であるため、30nm未満の欠陥は評価できない。そのため、塗膜欠陥数として、1cm2以上あたりの塗膜の表面及び膜中の30nm以上の大きさの欠陥数([B’:塗布後欠陥数])から元基板欠陥数に由来する欠陥数([E:元基板欠陥数])を差し引いた値を、「A’:塗膜欠陥数」とした。「A’:塗膜欠陥数」は、具体的には、下記計算式により求めた。式(A3’):[A’:塗膜欠陥数]=[B’:塗布後欠陥数]-[E:元基板欠陥数]。1cm2あたりの塗膜欠陥の欠陥数を表4に示す。
【0099】
(工程X4:工程Y1による欠陥の検出結果と工程X3による欠陥の検出結果の位置座標を重ね合わせ、工程X3による欠陥数から、工程Y1で求めた欠陥数を差し引き、樹脂組成物X由来の欠陥数を測定する工程)
始めに、
図1に示す通り、基板X中の欠陥位置を測定する(工程X41)。次に、
図2に示す通り、樹脂組成物X塗布後の基板Xにおいて、基板X中の欠陥位置を測定する(工程X42)。さらに、
図3に示す通り、工程X42で測定された欠陥から、工程X41で測定された欠陥と同じ位置の欠陥を差し引き、樹脂組成物Xに由来する欠陥数を測定する(工程X43)。
【0100】
工程X41と工程X42で同じ位置に検出された欠陥は、基板X由来であるため、同じ位置に検出された欠陥を差し引くことで、工程X43において樹脂組成物Xに由来する欠陥数を適切に測定することができる。
なお、除去用溶剤に由来する欠陥、レジスト組成物又は熱硬化性組成物に由来する欠陥についても、工程X4と同様の方法で基板Y又は基板Zに由来する欠陥数を差し引いて測定する(工程Y3、工程Z4)。
【0101】
(前駆組成物を用いたレジスト組成物又は熱硬化性組成物の調製)
実施例01、03、11~28、比較例01~04では、表3に示す前駆組成物、化合物1、化合物2、化合物3、及び組成物用溶剤1~2を混合し、固形分濃度2質量%の溶液を調製した。次に、1段目にポアサイズ5nmナイロンフィルタ、2段目にポアサイズ1nmのポリエチレンフィルタの2段フィルタで表4及び5に記載の通り、1回濾過し、レジスト組成物又は熱硬化性組成物を得た。
なお、実施例02及び実施例04では、前駆組成物の剥離後欠陥でレジスト組成物と使用した場合に不良な欠陥数となるものであることが判明したため、レジスト組成物を調製しなかった。
【0102】
比較例11~18では、表2に示す前駆組成物及び表3に示す化合物1~3を混合し、固形分濃度2質量%の溶液を調製した。次に、1段目にポアサイズ5nmナイロンフィルタ、2段目にポアサイズ1nmのポリエチレンフィルタの2段フィルタで表5に記載の通り2回濾過し、レジスト組成物又は熱硬化性組成物を得た。
なお、表3中の化合物1~3は、レジスト組成物又は熱硬化性組成物中に含まれる高分子化合物の含有量100質量%に対する値である。
【0103】
【0104】
(工程Z1:前駆組成物Vを含有するレジスト組成物又は熱硬化性組成物を基板Zに塗布して塗膜Zを形成する工程)
前記工程X1と同様にしてレジスト組成物又は熱硬化性組成物を基板に塗布して塗膜を形成した。
【0105】
(工程Z1A:塗膜を露光する工程)
実施例28では、工程Z1で形成した塗膜Zに対し、ArF液浸露光装置1900i(NA1.35 Closspole(in/o=0.78/0.97)with Pol. の液浸露光装置;液浸媒体:水)を用いて、ArFエキシマレーザー(193nm)を選択的に照射した。そして、温度90℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行った。
次いで、23℃にて、酢酸ブチルで13秒間の溶剤現像を行った。その後、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)を用いて5秒間リンスを実施した。
【0106】
(工程Z2:除去用溶剤を使用して前記塗膜Zを前記基板Zから除去する工程)
前記工程X2と同様にして、工程Z1で形成した塗膜Zを前記基板Zから除去した。
【0107】
(工程Z3:塗膜Zを除去した後の基板Z上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する工程)
前記工程X3と同様にして、前記工程Z2後の基板Z上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定した。
【0108】
【0109】
表4に示すように、高分子化合物とPGMEAからなる前駆組成物を濾過する工程V2後の、同一組成で異なるロットの前駆組成物を含む樹脂組成物において、除去用溶剤を使用して塗膜を前記基板Xから除去する工程X2と、塗膜を除去した後の基板上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する工程X3と、を有する検査手法で測定した「剥離後欠陥」では、12.5nm以上の大きさの欠陥の1cm2あたりの欠陥数にロット間の違いを見つけることができた。しかし、高分子化合物と組成物用溶剤からなる溶液を濾過する工程V2を行わず、塗膜付きウエハの欠陥数を測定した「塗膜欠陥」では、30nm以上の大きさの欠陥の単位面積当たりの欠陥数しか評価できず、ロット間の違いを見つけることができなかった。
【0110】
以上の結果から本願発明の検査方法は、除去用溶剤を使用して前記塗膜を前記基板Xから除去する工程X2を行わない塗膜欠陥に比べて、簡便にレジスト組成物に使用する高分子化合物の良、不良を判断できることが確認された。
【0111】
【0112】
表5に示すように、本願発明の検査方法を適用することにより、その後レジスト組成物又は熱硬化性組成物を1回濾過することで、欠陥数の少ないレジスト組成物を調製することができた。一方、高分子化合物と溶剤からなる前駆組成物を濾過する工程V2を行わなかった場合、その後レジスト組成物又は熱硬化性組成物の濾過を2回行っても、レジスト組成物又は熱硬化性組成物の欠陥数が多かった。また、レジスト組成物又は熱硬化性組成物の露光を行わなかったほうが良好であった。さらに、座標位置合わせを行うことにより、評価目的である組成物由来と無関係な元基板由来の検出分の混在抑制により、除去溶剤又は組成物に由来する欠陥数を適切に測定することができた。なお、座標合わせによる差し引きで求めたい欠陥数が正確に求まるので、使用するウエハの初期状態の清浄度は特に求めなくてもよい。
【符号の説明】
【0113】
X 基板
41、41’、42、43 欠陥
【要約】
【課題】微細な欠陥の発見できる検査方法、当該検査方法により欠陥数を低減した樹脂溶液、当該検査方法により欠陥数を低減したレジスト組成物、当該樹脂組成物の製造方法、及び当該レジスト組成物の製造方法の提供。
【解決手段】高分子化合物と溶剤Vとを含有する前駆組成物Vをろ過する工程Vと、前記前駆組成物を含む樹脂組成物Xを基板Xに塗布して塗膜Xを形成する工程X1と、有機溶剤X、アルカリ現像液X及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む除去用溶剤Xを使用して前記塗膜Xを前記基板Xから除去する工程X2と、前記塗膜Xを除去した後の前記基板X上の欠陥の数を、欠陥検査装置を使用して測定する工程X3と、を含む検査方法。
【選択図】なし