IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7558378フォトリソグラフィマスクのパターン要素の側壁角を設定するための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】フォトリソグラフィマスクのパターン要素の側壁角を設定するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/74 20120101AFI20240920BHJP
   C23C 16/48 20060101ALI20240920BHJP
   H01L 21/302 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G03F1/74
C23C16/48
H01L21/302 201B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023500049
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2021067838
(87)【国際公開番号】W WO2022002931
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】102020208185.9
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】リノウ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルテ ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】バウアー マルクス
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-109164(JP,A)
【文献】特開2004-294613(JP,A)
【文献】特表2017-534145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
C23C 16/48
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトリソグラフィマスク(150、200、700)の少なくとも1つのパターン要素(120、220、230、250、260、280、290)の少なくとも1つの側壁角(170、670、1970、2470、2770、2780)を設定するための方法(2800)であって、
a.少なくとも1つの前駆体ガスを供給するステップと、
b.前記少なくとも1つの前駆体ガスの局所化学反応を誘発する少なくとも1つの質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)を提供するステップと、
c.前記少なくとも1つのパターン要素(120、220、230、250、260、280、290)の前記少なくとも1つの側壁角(170、670、1970、2470、2770、2780)を設定するために、前記局所化学反応中に前記粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)の少なくとも1つのパラメータおよび/またはプロセスパラメータを変更するステップと、
を含み、
前記少なくとも1つのプロセスパラメータを変更するステップが、前記局所化学反応中に、繰り返し時間、滞留時間、前記質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)の隣接する走査点の間隔、および前記少なくとも1つの質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)の加速電圧の群のうちの少なくとも1つのパラメータを変更するステップを含み、
d.一次元における修復形状(2620)のサイズが、前記局所化学反応の開始から終了までに、一次元におけるプロセス分解能限界に対して少なくとも5%変化する、
方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)が、設定される前記側壁角(170、670、1970、2470、2770、2780)の前記位置で前記局所化学反応を誘発する、請求項1に記載の方法(2800)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの側壁角(170、670、1970、2470、2770、2780)が、前記フォトリソグラフィマスク(150、200、700)の欠陥が修復されている間に設定される、請求項1または2に記載の方法(2800)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)の少なくとも1つのパラメータを変更するステップが、
- 少なくとも1つの粒子ビーム源(1205、1505)の結像システム(1213、1513)の少なくとも1つのコンデンサ絞りを、前記質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)の光軸に対して中心対称に設定するステップ、
- 前記少なくとも1つの粒子ビーム源(1205、1505)の前記結像システム(1213、1513)の少なくとも1つの絞りを非円形に設定するステップ、
- 前記フォトリソグラフィマスク(150、200、700)のパターニングされた表面の垂線に対して前記質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)を傾斜させるための、前記少なくとも1つの粒子ビーム源(1205、1505)の前記結像システム(1213、1513)を調整するステップ、
- 前記フォトリソグラフィマスク(150、200、700)の前記パターニングされた表面の前記垂線に対して前記質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)を傾斜させるための偏向システム(1350)を設定するステップ、または
- 前記局所化学反応中に前記質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)のビームプロファイルを設定するステップ、
の群のうちの少なくとも1つの要素を変更するステップを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法(2800)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのプロセスパラメータを変更するステップが、
- 修復形状(2520、2620)を少なくとも2つの部分修復形状に分割して、前記少なくとも2つの部分修復形状を異なるプロセスパラメータで処理するステップ、
- 前記局所化学反応中に前記修復形状(2620)のサイズを変更するステップ、または
- 前記局所化学反応中に前記修復形状(2520、2620)の位置を変更するステップ、
の群のうちの少なくとも1つの要素を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法(2800)。
【請求項6】
一次元における修復形状(2620)の前記サイズが、前記局所化学反応の前記開始から前記終了までに、一次元におけるプロセス分解能限界に対して少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%変化する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法(2800)。
【請求項7】
修復形状(2520、2620)のエッジの前記位置が、前記局所化学反応の前記開始から前記終了までに、一次元におけるプロセス分解能限界に対して少なくとも5%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも100%変化する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法(2800)。
【請求項8】
a.前記局所化学反応を中断するステップと、
b.前記局所化学反応中に生成された前記少なくとも1つの欠陥(750)および/または側壁(2460)の欠陥残留物を検査するステップと、
をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法(2800)。
【請求項9】
c.前記検査された欠陥残留物および/または前記生成された側壁(2460)によって必要とされる場合、前記局所化学反応中に以前に変更されないままであった前記粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)の少なくとも1つのパラメータおよび/またはプロセスパラメータを変更するステップと、
d.前記検査された欠陥残留物および/または前記生成された側壁(2460)によって必要とされない場合には、前記少なくとも1つの変更されたパラメータを用いて前記局所化学反応を継続するか、または前記変更されていないパラメータを用いて前記局所化学反応を継続するステップと、
をさらに含む、請求項8に記載の方法(2800)。
【請求項10】
コンピュータシステムによって実行されると、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法ステップを前記コンピュータシステムに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項11】
フォトリソグラフィマスク(160、200、700)の少なくとも1つのパターン要素(170、670、1970、2470、2770、2780)の少なくとも1つの側壁角(170、670、1970、2470、2770、2780)を設定するための装置(1500)であって、
a.少なくとも1つの前駆体ガスを供給するように具現化された少なくとも1つのガス供給システム(1540、1542、1545、1547、1550、1552、1555、1547、1560、1562、1565、1567)と、
b.少なくとも1つの質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)を生成するように具現化された少なくとも1つの粒子ビーム源(1205、1505)であって、前記少なくとも1つの質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)が、前記少なくとも1つの前駆体ガスの局所化学反応を誘発するように具現化されている、少なくとも1つの粒子ビーム源(1205、1505)と、
c.前記少なくとも1つのパターン要素(120、220、230、250、260、280、290)の前記少なくとも1つの側壁角(170、670、1970、2470、2770、2780)を設定するために、前記局所化学反応中に前記少なくとも1つの粒子ビーム源(1205、1505)の少なくとも1つのパラメータおよび/または少なくとも1つのプロセスパラメータを変更するように具現化されている少なくとも1つの調整ユニット(1590)と、
を備え、
前記少なくとも1つのプロセスパラメータを変更することが、前記局所化学反応中に、繰り返し時間、滞留時間、前記質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)の隣接する走査点の間隔、および前記少なくとも1つの質量を有する粒子ビーム(910、1215、1515、1930、2120)の加速電圧の群のうちの少なくとも1つのパラメータを変更することを含み、
d.前記少なくとも1つの調整ユニット(1590)が、前記局所化学反応の開始から終了までに、一次元における修復形状(2620)のサイズを、一次元におけるプロセス分解能限界に対して少なくとも5%変化させるようにさらに具現化されている、
装置(1500)。
【請求項12】
前記調整ユニット(1590)が、
- 異なる入射角(φ1、φ2、φ3)で記録された少なくとも1つの欠陥(750)の測定データ、
- 少なくとも1つの欠陥(750)の3次元輪郭のデータ、
- 少なくとも1つの欠陥(750)の修復形状(2520、2620)のパラメータ、
- 少なくとも1つの欠陥(750)の欠陥残留物のデータ、
- 少なくとも1つのパターン要素(120、220、230、250、260、280、290)の側壁角(170、670、1970、2470、2770、2780)、および
- 生成された側壁(2460)の角度、
の群のうちの少なくとも1つの要素を受け取るようにさらに具現化されている、請求項11に記載の装置(1500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月30日にドイツ特許庁に出願された「Verfahren und Vorrichtung zum Einstellen eines Seitenwandwinkels eines Pattern-Elements einer fotolithographischen Maske」と題する独国特許出願第102020208185.9号の優先権を主張する。独国優先出願第102020208185.9号は、その全体が参照により本特許出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、フォトリソグラフィマスクのパターン要素の側壁角を設定するための方法および装置に関する。さらに、本発明は、フォトリソグラフィマスクの欠陥を検査するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体産業における集積密度の向上の結果として、フォトリソグラフィマスクは、ウエハ上にますます小さな構造を結像(image)しなければならない。この傾向に対応する1つのオプションは、化学線波長をよりも短い波長にシフトさせたフォトリソグラフィマスクを使用することにある。現在、光源として、約193nmの波長で発光するArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザがフォトリソグラフィにおいて頻繁に使用されている。
【0004】
現在、EUV(極紫外線)波長域(好ましくは10nm~15nmの範囲)の電磁放射線を使用するリソグラフィシステムが開発されている。前記EUVリソグラフィシステムは、現在、記載されたEUV域において光学的に透明な材料が利用可能でないため、反射光学素子を使用した全く新しいビーム誘導概念に基づいている。EUVシステムを開発する際の技術的課題は膨大であり、前記システムを産業応用可能なレベルにまでもって行くには、多大な開発努力が必要である。
【0005】
ウエハ上に配置されたフォトレジストにこれまで以上に小さな構造を結像する(image)のに大きく寄与するのは、フォトリソグラフィマスク、露光マスク、フォトマスク、または単なるマスクである。集積密度がさらに向上するにつれて、露光マスクの最小構造サイズを縮小させることがますます重要になっている。したがって、フォトリソグラフィマスクの製造プロセスは、ますます複雑になり、その結果、より時間がかかり、最終的にはより高価にもなる。パターン要素の微細な構造サイズに起因して、マスク製造中の欠陥を排除することができない。これらの欠陥は、可能な場合はいつでも修復されなければならない。
【0006】
記載された問題は、ナノインプリントリソグラフィにさらに一層当てはまる。ナノインプリントリソグラフィの場合、ナノ構造化されたテンプレートから基板に塗布されたポジへの構造転写は1対1で実施される。したがって、このリソグラフィ技術に対して、構造寸法および側壁角を維持することに関する要求が増加している。これらの要求の増加は、ナノインプリントテンプレートの欠陥の修復にも当てはまる。
【0007】
EUVフォトマスクを含む反射光学素子のみを使用する新奇なビーム誘導概念のために、EUVフォトマスクを垂直に露光することはできない。むしろ、現在のEUVマスク露光システムにおけるEUV放射線は、法線に対して5°~6°の角度でEUVマスクのパターニングされた表面に衝突する。斜め光入射は、様々な困難をもたらす。一部は、例示的な文献である米国特許第5485497号、米国特許第7198872B2号、および米国特許第9285672B2号に記載されており、適切な解決策がこれらの文献に記載されている。
【0008】
現在、マスクの欠陥は、電子ビーム誘起局所堆積および/またはエッチングプロセスによって頻繁に修復されている。修復プロセスに対する要求は、構造要素またはパターン要素の構造サイズの縮小に起因して、これまで以上に厳しくなっている。この理由から、限界寸法(CD)および/またはエッジ位置などのフォトリソグラフィマスクの以前から知られている特徴変数に加えて、さらなる記述変数がますます重要になっている。特に、構造要素またはパターン要素のエッジ勾配または側壁角は、この文脈で言及されるべきである。
【0009】
独国特許第102019201468.2号に記載されているように、欠陥の修復中に、指定された基準構造の設計に可能な限り近くなる修復されたパターン要素の側壁角(SWA)またはエッジ勾配を捜し求める。この側壁角は、典型的には90°の側壁角である。この角度は、特にEUV波長域用のフォトマスクの修正に適用される。
【0010】
一方、論文"Impact of EUV mask absorber sidewall angle on patterning robustness", Proc. SPIE, Vol. 10583, Extreme Ultraviolet (EUV) Lithography IX, 1058314 (19 March 2018), https://doi.org/10.11117/12. 2296865において、著者L.S.Mervin IIIらは、90°から逸脱する側壁角が、特定の状況下でEUVマスクの結像挙動に好都合な特性を有し得ることを示唆するシミュレーションを記載している。
【0011】
したがって、この背景に対して、本発明は、フォトリソグラフィマスクの修復を改善することができる方法および装置を指定するという問題に対処する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の例示的な一実施形態によると、この問題は、請求項1に記載の方法および請求項17に記載の装置によって解決される。さらなる例示的な実施形態において、この問題は、請求項10に記載の方法および請求項19に記載の装置によって解決される。
【0013】
一実施形態では、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つのパターン要素の少なくとも1つの側壁角を設定するための方法は、(a)少なくとも1つの前駆体ガスを供給するステップと、(b)少なくとも1つの前駆体ガスの局所化学反応を誘発するように具現化された少なくとも1つの質量を有する粒子ビームを提供するステップと、(c)少なくとも1つのパターン要素の少なくとも1つの側壁角を設定するために、局所化学反応中に粒子ビームの少なくとも1つのパラメータおよび/またはプロセスパラメータを変更するステップと、を含む。
【0014】
本発明による方法は、フォトリソグラフィマスクのパターン要素の側壁角の目標とする設定を容易にする。側壁角は、90°から逸脱した角度領域に位置することができる。これにより、フォトリソグラフィマスクの結像特性を改善するために使用することができる追加の自由度が開かれる。例として、この自由度により、プロセスウィンドウの拡大が容易になり、このプロセスウィンドウの範囲内で、側壁角が規定された様式で設定されたフォトマスクを操作することができる。さらに、追加の自由度のために、マスクの他の弱点、または不完全なもしくは非理想的な特性を補償することができる。エッジ勾配または側壁角を制御するオプションにより、結果的に、フォトリソグラフィマスクの光学特性を改善することが可能になる。
【0015】
ナノインプリントリソグラフィ(NIL)内でテンプレートおよび/または基板を修復する際、本発明による方法を用いて、エッジ勾配に関する厳しい要求を満たすことができる。
【0016】
本出願において、エッジ勾配および側壁角という表現は、同義に使用される。
【0017】
少なくとも1つの前駆体ガスは、少なくとも1つのエッチングガスを含むことができ、局所化学反応は、エッチング反応を含むことができ、または少なくとも1つの前駆体ガスは、少なくとも1つの堆積ガスを含むことができ、局所化学反応は、堆積反応を含むことができる。
【0018】
少なくとも1つの質量を有する粒子ビームは、設定される側壁角の位置で局所化学反応を誘発することができる。少なくとも1つの質量を有する粒子ビームは、フォトリソグラフィマスクの欠陥の位置で局所化学反応を誘発することができる。
【0019】
質量を有する粒子ビーム、例えば電子ビームまたはイオンビームを、数ナノメートルの領域のスポット径に集束させることができる。これにより、反応領域が狭く限定された化学反応を行うことができる。例として、局所化学反応の直径は、粒子ビームのスポット径の数倍、例えばスポット径の2~5倍に制限することができる。その結果、一次元における局所化学反応のプロセス分解能限界は、1nm~30nm、好ましくは2nm~20nm、より好ましくは2nm~15nm、最も好ましくは2nm~10nmの範囲とすることができる。
【0020】
フォトリソグラフィマスクの欠陥が修復されている間に、少なくとも1つの側壁角を設定することができる。
【0021】
その結果、実質的に90°の角度を有するマスクのパターン要素の側壁の角度またはエッジ勾配は、マスクの欠陥とはならず、設計によって指定された値を正確に有する。本発明による方法は、上述の利点のうちの1つまたは複数、例えば、プロセスウィンドウの拡大を達成するために、パターン要素の側壁の角度を目標通りに変更すること、または90°とは異なる特定の値に設定することを可能にする。さらに、1つまたは複数のパターン要素の1つもしくは複数の側壁角を目標通りに設定することにより、フォトマスクの弱点を補償することができる。フォトリソグラフィマスクの弱点は、依然として指定された数値範囲内にあるが、範囲限界に近づくパラメータである。
【0022】
しかしながら、パターン要素の側壁角は、典型的には、フォトマスクの修復プロセス中に規定されたやり方で設定される。頻繁に発生するフォトリソグラフィマスクの欠陥は、過剰材料、例えば、過剰な吸収体材料によって引き起こされる暗欠陥である。過剰材料は、EBIE(電子ビーム誘起エッチング)プロセスを実行することによって頻繁にマスクから除去される。過剰材料を除去しながら、新たに形成されたパターン要素の側壁の角度を所望のまたは指定された値に設定する。
【0023】
欠落材料欠陥は、欠落材料が吸収材料である場合、白欠陥と呼ばれる。この欠陥は、吸収材料、例えばクロムまたは窒化タンタルを、例えばEBID(電子ビーム誘起堆積)プロセスで堆積させることによって修正される。EBIDプロセスを実行する際、新たに形成される側壁が指定された範囲内の側壁角を有するように注意が払われる。
【0024】
本発明による方法は、位相シフトマスクの位相シフト要素の側壁角を設定するために使用することもできることは自明である。さらに、本発明による方法は、当然ながら、NILテンプレートの要素の側壁角を設定するために使用することもできる。
【0025】
ここでは、および本明細書の他の箇所では、「実質的に」という表現は、従来技術による測定機器を用いて測定変数を決定する場合に、測定変数が通常の測定誤差内にあることを示すことを意味する。
【0026】
少なくとも1つの粒子ビームの少なくとも1つのパラメータを変更するステップは、
- 少なくとも1つの粒子ビーム源の結像システムの少なくとも1つのコンデンサ絞りを、質量を有する粒子ビームの光軸に対して中心対称に設定するステップ、
- 少なくとも1つの粒子ビーム源の結像システムの少なくとも1つの絞りを非円形に設定するステップ、
- フォトリソグラフィマスクのパターニングされた表面に対する垂線に対して質量を有する粒子ビームを傾斜させるための、少なくとも1つの粒子ビーム源の結像システムを調整するステップ、
- フォトリソグラフィマスクのパターニングされた表面に対する垂線に対して質量を有する粒子ビームを傾斜させるための偏向システムを設定するステップ、および
- 局所化学反応中に質量を有する粒子ビームのビームプロファイルを設定するステップ、
の群のうちの1つの要素を少なくとも変更するステップを含むことができる。
【0027】
従来技術では、質量を有する粒子ビームを特徴付ける1組のパラメータが、フォトリソグラフィマスクの処理プロセスの開始時に規定され、処理プロセス、すなわち、側壁角の設定および/または欠陥の修復は、これらのパラメータを用いて行われる。典型的には、質量を有する粒子ビームを結像(image)するシステムのパラメータは、粒子ビームが可能な限り正確に結像システムの光軸に沿って進むように選択される。これにより、実質的に収差がないかまたは収差成分が少ない粒子ビーム源の光学結像が達成される。
【0028】
しかしながら、本発明者らは、質量のある粒子ビームを使用して局所化学反応を開始する場合、粒子ビームを、粒子ビーム源の結像システムの光軸から逸脱するように意図的に誘導することが有利な場合があることを認識した。同様に、円対称から逸脱するビームプロファイルを選択することが好都合な場合がある。これらの設定は、生成された粒子ビームの収差を増大させる。しかしながら、粒子ビームが局所化学反応を誘発するために使用される場合、粒子ビームは、パワーを供給するためにのみ使用されるため、粒子ビームの結像特性に対するこれらの悪影響は許容される。歪んだ粒子ビームは、ほとんど収差のない質量のある粒子ビームと比較して、局所化学反応を加速するエネルギー線量分布を生成することさえ可能である。
【0029】
局所化学反応が行われている間に粒子ビーム源の結像システムの1つまたは複数のパラメータを上述のように変更することによって、欠陥の修復に加えて、フォトマスクのパターン要素および/またはNILテンプレートの要素のエッジ勾配を指定された値に調整することを可能にする追加の自由度が開かれる。
【0030】
現在の走査型電子システム(SEM)のコンデンサ絞りは、典型的には、10μm~60μmの範囲の直径を有する。コンデンサ絞りまたは単に絞りの開口もしくは直径は、本質的に、試料に入射する粒子ビームのアパーチャ角または開口角を決定する。絞り開口が大きいほど、粒子ビームの開口角が大きくなる。しかしながら、絞り開口が大きくなると、収差も見えてくる。さらに、粒子ビームの粒子の運動エネルギーが小さくなると、収差も大きくなる。
【0031】
電子ビームの非中心対称設定は、円形コンデンサ絞りの中心に関連付けることができる。設定の2つの極値は、以下の通りである。電子ビームは、コンデンサ絞りの中心を垂直に通過し、ビームは、コンデンサ絞りのエッジに沿って垂直に通過する。
【0032】
少なくとも1つの非円形絞りの設定は、0<ε<0.1、好ましくは0<ε<0.2、より好ましくは0<ε<0.5、最も好ましくは0<ε<0.8の範囲の偏心率εを含むことができる。
【0033】
少なくとも1つの粒子ビームの結像システムを調整するステップは、少なくとも1つのパターン要素の表面への質量を有する粒子ビームの入射角を、89°~91°、好ましくは80°~93°、より好ましくは70°~100°、最も好ましくは60°~120°の範囲で変更するステップを含むことができる。範囲を変更するステップは、範囲のほぼ上限(例えば、80°~93°の区間では約93°)に位置する少なくとも1つの数値を有する入射角を有する粒子ビームを適用するステップ、および/または数値がほぼ範囲の下限(例えば、再び80°~93°の区間では約80°)に位置する入射角を有する粒子ビームを適用するステップであると理解することができる。
【0034】
ビームプロファイルの設定を変更するステップは、ビームプロファイルの設定を円形ビームプロファイルから非対称ビームプロファイルに変更するステップを含むことができる。非対称ビームプロファイルは、楕円ビームプロファイルを含むことができる。楕円ビームプロファイルの偏心率εは、0≦ε<0.1、好ましくは0≦ε<0.2、より好ましくは0≦ε<0.5、最も好ましくは0≦ε<0.8の範囲を含むことができる。
【0035】
少なくとも1つのプロセスパラメータを変更するステップは、
- 修復形状を少なくとも2つの部分修復形状に分割して、少なくとも2つの部分修復形状を異なるプロセスパラメータで処理するステップ、
- 局所化学反応中に、繰り返し時間(フレームリフレッシュ時間)、滞留時間、質量を有する粒子ビームの隣接する走査点の間隔(ラインステップ)、および少なくとも1つの質量を有する粒子ビームの加速電圧の群のうちの少なくとも1つのパラメータを変更するステップ、
- 局所化学反応中に修復形状のサイズを変更するステップ、ならびに
- 局所化学反応中に修復形状の位置を変更するステップ
の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0036】
現在、フォトリソグラフィマスクの欠陥は、欠陥の修復プロセスのためのパラメータセットを確認することによって修正されている。次いで、この設定されたプロセスパラメータセットを用いて、適切な前駆体ガスを供給しながら質量を有する粒子ビームを欠陥上で走査することによって欠陥が除去され、またはパターン要素の側壁が指定された角度で生成される。しかしながら、欠陥修復中に、プロセスパラメータのうちの少なくとも1つが、修復されるべきそれぞれの欠陥に対して局所的および/または時間的に調整される場合には、多くの欠陥の修復がより有望になる。
【0037】
修復形状は、修復されるべき欠陥のその底面への投影を記述する。ここで、底面の各ピクセルには、堆積させるべきエネルギー線量が割り当てられ、このエネルギー線量は、対応するピクセルの位置における局所化学反応の持続時間を反映し、それぞれのピクセル位置における欠陥の程度に対応する。
【0038】
修復形状を2つ以上の部分修復形状に分割し、各部分修復形状に異なるプロセスパラメータのセットを割り当てることによって、第1に、欠陥の修復を改善することができ、第2に、追加の自由度の結果として、欠陥修復中に形成されるエッジ勾配を指定された区間内の角度で形成することができる。
【0039】
繰り返し時間は、その都度実行されるプロセスに著しく依存する。例として、修復形状のサイズは、重要な変数である。さらに、繰り返し時間は、修復形状のガス被覆が繰り返し時間内に再確立されるように選択されるべきである。これらの制約が遵守される場合、局所化学反応の開始時の繰り返し時間は、10-8秒~10-6秒の範囲の持続時間を有することができ、その終了時の繰り返し時間は、10-7秒~10-5秒の範囲の持続時間を有することができる。
【0040】
局所化学反応の開始時の滞留時間は、10-9秒~10-7秒の範囲の持続時間を有することができ、その終了時の繰り返し時間は、10-7秒~10-6秒の範囲の持続時間を有することができる。
【0041】
質量を有する粒子ビームの隣接する走査点の間隔は、局所化学反応の開始時に40nm~20nmの範囲を含むことができ、その終了時に10nm~1nmの範囲を含むことができる。
【0042】
質量を有する粒子ビームの加速電圧は、局所化学反応の開始時に5keV~1keVの範囲を含むことができ、その終了時に1keV~0.1keVの範囲を含むことができる。この加速電圧の範囲は、特に、電子ビームの形態の質量を有する粒子ビームに当てはまる。一般に、例えば、イオンのようなより質量の大きな粒子には、より高い加速電圧が必要とされる。
【0043】
最後に述べた4つのプロセスパラメータのうちの1つまたは複数を設定することによって、追加の自由度が生じ、この自由度は、第1に欠陥修復を改善するために使用することができ、第2に欠陥修復中に生成される1つもしくは複数のエッジまたは側壁のエッジ勾配を指定された角度範囲内に調整するために使用することができる。
【0044】
さらに、少なくとも1つの前駆体ガスの供給は、1つまたは複数のプロセスパラメータの変更に対して調整することができる。少なくとも1つの前駆体ガスの供給は、少なくとも1つの前駆体ガスのガス質量流量、温度および/または組成を設定することを含むことができる。
【0045】
一次元における修復形状のサイズは、局所化学反応の開始から終了までに、一次元におけるプロセス分解能限界に対して少なくとも5%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも100%変化することができる。
【0046】
一次元における修復形状の時間依存の変化により、修復形状の両側に生成された2つの側壁のエッジ勾配を規定された通りに設定することが可能になる。
【0047】
修復形状のエッジの位置は、局所化学反応の開始から終了までに、一次元におけるプロセス分解能限界に対して少なくとも5%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも100%変化することができる。
【0048】
局所化学反応を行いながら修復形状を一方向に変位させることにより、変位させた修復形状の方向にエッジ勾配を設定することができる。
【0049】
局所化学反応中に粒子ビームの少なくとも1つのパラメータおよび/またはプロセスパラメータを変更することにより、少なくとも1つの側壁角を85°~95°、好ましくは80°~100°、より好ましくは75°~105°、最も好ましくは70°~110°の範囲内に設定することができる。
【0050】
本発明による方法は、(a)局所化学反応を中断するステップと、(b)局所化学反応中に生成された少なくとも1つの欠陥および/または側壁の欠陥残留物を検査するステップと、をさらに含むことができる。
【0051】
さらに、本発明による方法は、(c)検査された欠陥残留物および/または生成された側壁によって必要とされる場合、局所化学反応中に以前に変更されないままであった粒子ビームの少なくとも1つのパラメータおよび/またはプロセスパラメータを変更するステップと、(d)検査された欠陥残留物および/または生成された側壁によって必要とされない場合には、少なくとも1つの変更されたパラメータを用いて局所化学反応を継続するか、または変更されていないパラメータを用いて局所化学反応を継続するステップと、を含むことができる。
【0052】
以前に生成されたエッジ勾配を用いて、以前に変更されないままであったパラメータのうちの1つまたは複数を変更する必要があるかどうかを決定する。以前に生成されたエッジ勾配が指定された角度範囲外にある場合は、変更が必要とされる。
【0053】
本出願で定義される方法では、局所化学反応が実行されている間に、1つまたは複数のパラメータが変更される。記載された方法は、その実行中にさらに中断することができ、残った欠陥または生成された側壁を検査することができる。検査結果が、変更されたパラメータでは要求されたエッジ勾配を達成することができないことを示している場合には、これまでの修復プロセスの範囲内で変更されなかったパラメータの1つまたは複数を変更し、このさらに変更されたパラメータを用いて局所化学反応を継続する。本プロセスでは、これまでの修復プロセスの過程で変更されたパラメータを変更するか、または一定に保持することが可能である。
【0054】
第2の実施形態では、少なくとも1つの質量を有する粒子ビームを用いてフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥を検査するための方法は、(a)少なくとも1つの質量を有する粒子ビームを供給するステップと、(b)少なくとも1つの欠陥の検査中に少なくとも1つの欠陥への質量を有する粒子ビームの平均入射角を変更するステップと、を含む。
【0055】
典型的には、質量を有する粒子ビームは、検査される物体、例えばフォトリソグラフィマスクの欠陥に垂直に衝突する。フォトリソグラフィマスクと、マスクに面する粒子光学系の部分との間の作動距離が小さい場合は、これらの2つの構成要素は、実質的に互いに平行にしか位置合わせすることができず、その結果、粒子ビームは、フォトリソグラフィマスクに実質的に垂直に入射する。既に上述したように、質量を有する粒子ビームは、数ナノメートル~サブナノメートルの範囲のスポット径に集束させることができる。これにより、非常に高い横方向分解能が得られる。しかしながら、分解能は、ビーム方向では著しく低下する。その結果、質量を有する粒子ビームを用いた3次元(3D)物体の検査中、高さ分解能が損なわれる。したがって、測定データから生成された3D物体、例えば欠陥の画像は、大きな不確実性に悩まされる。例として、欠陥の3D画像のこの不確実性は、検査から決定された修復形状のパラメータの大きな誤差間隔に変換される。
【0056】
この不確実性は、質量を有する粒子ビームを用いて異なる角度から欠陥を走査することによって著しく低減することができる。その結果、検査された欠陥の正確な3D輪郭を確認することが可能である。
【0057】
既に上述したように、粒子ビームを偏向させると、試料、例えばフォトリソグラフィマスクに垂直に入射する粒子ビームと比較して収差が大きくなることがある。しかしながら、この有害な影響は、例えば欠陥を3D物体として画像化することができるなどの、新たな自由度によって開かれる機会と比較すると小さなものである。
【0058】
典型的には、粒子ビームは、粒子ビームが走査領域にわたってラインごとに走査されることよって、フォトリソグラフィマスクまたは欠陥の走査領域を感知する。ラインが走査されている間、試料の表面への粒子ビームの入射角にはわずかな変化がある。上記の点(b)で指定されたフォトリソグラフィマスクの表面への入射角の変化は、ライン走査中の、または一般的には走査領域の感知中の粒子ビームのこの角度変化を指すものではない。上記で定義された入射角の変化をライン走査中の入射角の変化と区別するために、「平均入射角」という用語が導入される。前記用語は、ライン走査中に粒子ビームが試料に入射する平均角度を表す。例として、平均入射角は、粒子ビームのライン走査、または一般的には走査領域のすべての入射角にわたる算術平均として定義することができる。
【0059】
少なくとも1つの欠陥は、
- パターン要素の欠落材料、
- パターン要素の過剰材料、
- フォトリソグラフィマスクの基板の欠落材料、
- フォトリソグラフィマスクの基板の過剰材料、
- NIL基板および/またはNILテンプレート上の要素の欠落材料、
- NIL基板および/またはNILテンプレート上の要素の過剰材料、
- 指定範囲外の側壁角、
- 少なくとも1つのパターン要素の側壁の、その表面に対する曲率半径であって、指定範囲外にある曲率半径、および
- フォトリソグラフィマスクの基板に対する少なくとも1つのパターン要素の側壁の曲率半径であって、指定範囲外にある曲率半径、
の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0060】
少なくとも1つの質量を有する粒子ビームの入射角を変更するステップは、電界および/または磁界内で質量を有する粒子ビームを偏向させるステップを含むことができる。
【0061】
欠陥への質量を有する粒子ビームの入射角は、欠陥を有するマスクをフォトマスクのパターニングされた側の法線に垂直な軸の周りに回転させることによって、最も容易に変更することができる。しかしながら、本実施形態は、質量を有する粒子ビームの粒子ビーム源の結像システムのビーム出射点とマスクのパターニングされた表面との間の距離が小さいため、粒子ビームのビーム方向に対してマスクを傾けることができないか、またはわずかな範囲しか傾けることができないという問題にしばしば遭遇する。同じ理由で、フォトマスクのパターニングされた表面に対して粒子ビーム源の結像システムを傾けることは、同様に、限られた範囲しか可能でないことが多い。
【0062】
結像システムからの質量を有する粒子ビームのビーム出口とマスクとの間に、および/またはビーム出口に隣接する結像システムの部分に、電界および/または磁界を形成することによって、空間的制約を大幅に回避することが可能であり、質量を有する粒子ビームを粒子ビームの結像システムの光軸に対して規定された角度だけ偏向させることができる。
【0063】
少なくとも1つの欠陥を検査するための方法は、検査中に取得された測定データから少なくとも1つの欠陥の3次元輪郭を確認するステップをさらに含むことができる。
【0064】
上述したように、異なる角度で欠陥を走査することにより、z方向またはビーム方向における欠陥の空間分解能が向上する。結果として、質量を有する粒子ビームによって様々な角度で走査された欠陥の3D輪郭を高精度で決定することが可能になる。
【0065】
少なくとも1つの欠陥を検査するための方法は、少なくとも1つの検査された欠陥に対する修復形状のパラメータを決定するステップをさらに含むことができる。
【0066】
修復装置は、パラメータ化された修復形状、すなわち、パラメータが決定された修復形状に基づいて欠陥を修復することができる。しかしながら、修復形状は、側壁角が指定された角度範囲外にある1つまたは複数のパターン要素の規定された側壁角の設定を規定することも可能である。例として、パターン要素は、実質的に90°のエッジ勾配を有してもよいが、その側壁角は、例えば、95°~98°の角度範囲内にあるべきである。
【0067】
入射角を変更するステップは、フォトリソグラフィマスクの基板への少なくとも1つの質量を有する粒子ビームの垂直入射に対して、入射角を5°超、好ましくは10°超、好ましくは20°超、最も好ましくは40°超変更するステップを含むことができる。
【0068】
少なくとも1つの欠陥を検査するための加速電圧は、100keV~0.01keV、好ましくは20keV~0.02keV、より好ましくは5keV~0.05keV、最も好ましくは3keV~0.1keVの範囲を含むことができる。
【0069】
加速電圧が1keV(キロ電子ボルト)の領域にある電子ビームが質量を有する粒子として使用される場合、数百Vの領域の電圧が、電子ビームを前述の角度だけ偏向させる電界を生成することができる。
【0070】
フォトリソグラフィマスクへの入射時に、質量を有する粒子ビームは、0.1nm~1000nm、好ましくは0.2nm~200nm、より好ましくは0.4nm~50nm、最も好ましくは0.5nm~20nmの焦点直径を有することができる。
【0071】
質量を有する粒子ビームのこれらの焦点直径は、好ましくは、異なる入射角で欠陥を露光することによる欠陥の検査に適用される。局所化学反応を行うことによって側壁角を設定する場合、粒子ビームの許容される収差のために、焦点直径は一般的に大きくなる。この増大は、それぞれの欠陥箇所への粒子ビームの入射角に依存する。収差、したがって焦点直径の増大は、粒子光学系の適切な設定によって最小化することができる。
【0072】
質量を有する粒子ビームは、0.1°~60°、好ましくは0.2°~40°、より好ましくは0.5°~20°、最も好ましくは1°~10°のアパーチャ角を有することができる。
【0073】
したがって、質量を有する粒子ビームの最も好ましいアパーチャ角に対して、入射角の変化または変動は、そのアパーチャ角よりも大きくてもよい。質量を有する粒子ビームのアパーチャ角の変化または変動は、その最も好ましいアパーチャ角を、1.5倍、好ましくは2倍、より好ましくは4倍、最も好ましくは6倍上回ることができる。質量を有する粒子ビームのアパーチャ角が下限に近い場合、すなわち約0.5°~2.0°の角度領域にある場合、入射角の変化は、アパーチャ角を、2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍、最も好ましくは20倍上回ることができる。
【0074】
粒子ビームのアパーチャ角が大きいほど、その焦点直径は小さくなる。したがって、欠陥を検査するためには、大きなアパーチャ角を有する粒子ビームがしばしば使用され、一方、局所化学反応を用いて側壁角を設定するためには、必要とされる精度に応じて、より小さなアパーチャ角が使用されることもある。
【0075】
少なくとも1つの質量を有する粒子ビームは、電子ビーム、イオンビーム、原子ビーム、および分子ビームの群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0076】
フォトリソグラフィマスクは、透過型フォトマスクおよび反射型フォトマスクを含むことができる。フォトリソグラフィマスクは、バイナリフォトマスクまたは位相シフトフォトマスクを含むことができる。さらに、フォトリソグラフィマスクは、多重露光用のマスクを含むことができる。
【0077】
典型的には、フォトリソグラフィマスクは、基板上に構造要素またはパターン要素が配置された基板、または基板内にパターン要素がエッチングされた基板を含む。本出願では、フォトリソグラフィマスクの表面とは、フォトマスクの表面の領域を意味すると理解され、前記領域には入射光を結像(image)させる構造要素がない。
【0078】
コンピュータプログラムは、コンピュータシステムによって実行されると、コンピュータシステムに、少なくとも1つの側壁角を設定する態様のうちの1つによる方法ステップを実行させる命令を含むことができる。
【0079】
コンピュータプログラムは、コンピュータシステムによって実行されると、コンピュータシステムに、少なくとも1つの欠陥を検査する態様のうちの1つによる方法ステップを実行させる命令を含むことができる。
【0080】
一実施形態では、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つのパターン要素の少なくとも1つの側壁角を設定するための装置は、(a)少なくとも1つの前駆体ガスを供給するように具現化された少なくとも1つのガス供給システムと、(b)少なくとも1つの質量を有する粒子ビームを生成するように具現化された少なくとも1つの粒子ビーム源であって、少なくとも1つの質量を有する粒子ビームが少なくとも1つの前駆体ガスの局所化学反応を誘発するように具現化されている、少なくとも1つの粒子ビーム源と、(c)少なくとも1つのパターン要素の少なくとも1つの側壁角を設定するために、局所化学反応中に少なくとも1つの粒子ビーム源の少なくとも1つのパラメータおよび/または少なくとも1つのプロセスパラメータを変更するように具現化された少なくとも1つの調整ユニットと、を含む。
【0081】
調整ユニットは、
- 異なる入射角で記録された少なくとも1つの欠陥の測定データ、
- 少なくとも1つの欠陥の3次元輪郭のデータ、
- 少なくとも1つの欠陥の修復形状のパラメータ、
- 少なくとも1つの欠陥の欠陥残留物のデータ、
- 少なくとも1つのパターン要素の側壁角、および
- 生成された側壁の角度、
の群の少なくとも1つの要素を取得するようにさらに具現化することができる。
【0082】
少なくとも1つのガス供給システムは、少なくとも1つの前駆体ガスを、指定されたガス質量流量で、指定された温度で、および/または指定された前駆体ガス組成で供給するように具現化することができる。ガス供給システムは、少なくとも1つの前駆体ガスを貯蔵するように具現化された少なくとも1つの供給容器、少なくとも1つの前駆体ガスのガス質量流量を制御するように具現化された少なくとも1つの制御弁、少なくとも1つの前駆体ガスを少なくとも1つの供給容器からフォトリソグラフィマスク上の質量を有する粒子ビームの入射点に案内するように具現化された少なくとも1つのガス供給ラインシステム、およびフォトリソグラフィマスクの表面への質量を有する粒子ビームの入射点に前駆体ガスを集中させるように具現化された少なくとも1つのノズルの群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0083】
少なくとも1つの前駆体ガスは、少なくとも1つのエッチングガス、少なくとも1つの堆積ガス、および少なくとも1つの添加ガスの群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0084】
少なくとも1つのエッチングガスは、少なくとも1つのハロゲン含有化合物を含むことができる。ハロゲン含有化合物は、フッ素(F2)、塩素(Cl2)、臭素(Br2)、ヨウ素(I2)、二フッ化キセノン(XeF2)、四フッ化キセノン(XeF4)、六フッ化キセノン(XeF6)、塩化キセノン(XeCl)、フッ化水素(HF)、フッ化アルゴン(ArF)、フッ化クリプトン(KrF)、二フッ化硫黄(SF2)、四フッ化硫黄(SF4)、六フッ化硫黄(SF6)、三フッ化リン(PF3)、五フッ化リン(PF5)、および塩化ニトロシル(NOCl)の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0085】
少なくとも1つの堆積ガスは、金属アルキル、遷移元素アルキル、典型元素アルキル、金属カルボニル、遷移元素カルボニル、典型元素カルボニル、金属アルコキシド、遷移元素アルコキシド、典型元素アルコキシド、金属錯体、遷移元素錯体、典型元素錯体、および有機化合物の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0086】
遷移金属アルキル、遷移元素アルキルおよび典型元素アルキルは、シクロペンタジエニル(Cp)トリメチル白金(CpPtMe3)、メチルシクロペンタジエニル(MeCp)トリメチル白金(MeCpPtMe3)、テトラメチルスズ(SnMe4)、トリメチルガリウム(GaMe3)、フェロシン(Cp2Fe)、およびビスアリールクロム(Ar2Cr)の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0087】
遷移金属カルボニル、遷移金属元素カルボニルおよび典型元素カルボニルは、クロムヘキサカルボニル(Cr(CO)6)、モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO)6)、タングステンヘキサカルボニル(W(CO)6)、ジコバルトオクタカルボニル(Co2(CO)8)、トリルテニウムドデカカルボニル(Ru3(CO)12)、および鉄ペンタカルボニル(Fe(CO)5)の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0088】
金属アルコキシド、遷移元素アルコキシドおよび典型元素アルコキシドは、テトラエチルオルトシリケート(TEOS、Si(OC254)、およびテトライソプロポキシチタン(Ti(OC374)の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。金属ハロゲン化物、遷移元素ハロゲン化物および典型元素ハロゲン化物は、六フッ化タングステン(WF6)、六塩化タングステン(WCl6)、六塩化チタン(TiCl6)、三塩化ホウ素(BCl3)、および四塩化ケイ素(SiCl4)の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0089】
金属錯体、遷移元素錯体および典型元素錯体は、銅ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)(Cu(C56HO22)、およびジメチル金トリフルオロアセチルアセトネート(Me2Au(C5342))の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0090】
有機化合物は、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、真空ポンプ油の成分、および揮発性有機化合物の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0091】
少なくとも1つの添加ガスは、酸化剤、ハロゲン化物、および還元剤の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0092】
酸化剤は、酸素(O2)、オゾン(O3)、水蒸気(H2O)、過酸化水素(H22)、一酸化二窒素(N2O)、酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、および硝酸(HNO3)の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。ハロゲン化物は、塩素(Cl2)、塩酸(HCl)、二フッ化キセノン(XeF2)、フッ化水素(HF)、ヨウ素(I2)、ヨウ化水素(HI)、臭素(Br2)、臭化水素(HBr)、塩化ニトロシル(NOCl)、三塩化リン(PCl3)、五塩化リン(PCl5)、および三フッ化リン(PF3)の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。還元剤は、水素(H2)、アンモニア(NH3)、およびメタン(CH4)の群のうちの少なくとも1つの要素を含むことができる。
【0093】
さらに、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つのパターン要素の側壁角を設定するための装置は、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つのパターン要素の側壁角を設定するための上記で定義された方法のステップを実行するように具現化することができる。
【0094】
第2の実施形態では、少なくとも1つの質量を有する粒子ビームを用いて異なる角度でフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥を検査するための装置は、(a)少なくとも1つの質量を有する粒子ビームを生成するように具現化された少なくとも1つの粒子ビーム源と、(b)検査中に質量を有する粒子ビームの入射角を変更するように具現化された少なくとも1つの調整ユニットと、を含む。
【0095】
調整ユニットは、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥への粒子ビームの平均入射角の変化を制御するようにさらに具現化することができる。さらに、調整ユニットは、コンデンサ絞りを変更または変化させるように具現化することができる。これは、コンデンサ絞り(または単に絞り)を交換することによって行うことができる。その結果、調整ユニットは、アパーチャ角および質量を有する粒子ビームの焦点スポットを変化させることができる。
【0096】
さらに、より低いアパーチャ角範囲(例えば、約0.5°~2.0°のアパーチャ角範囲)に対して、調整ユニットは、アパーチャ角を2倍、好ましくは5倍、より好ましくは10倍、最も好ましくは20倍上回る、試料表面の法線に対するフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥への粒子ビームの平均入射角を変化させるように具現化することができる。
【0097】
調整ユニットは、電気偏向システムおよび磁気偏向システムの群のうちの少なくとも1つの要素を備えることができる。
【0098】
電気偏向システムは、粒子ビーム源の一部とすることができ、特に、電気偏向システムは、粒子ビーム源の結像システムの一部とすることができる。磁気偏向システムは、粒子ビーム源の一部でなくてもよい。これは、磁気偏向システムを粒子ビーム源の結像システムの外側に配置することができることを意味する。
【0099】
しかしながら、電気偏向システムおよび磁気偏向システムは両方とも、質量を有する粒子ビームの粒子ビーム源の一部であってもよい。したがって、例えば、電気偏向システムは、粒子ビーム源の結像システムの電子光学レンズの上流に配置することができ、磁気偏向システムは、粒子ビーム源の結像システムの電子光学レンズの下流に配置することができる。
【0100】
電気偏向システムは、少なくとも1つの偏向板対を備えることができる。電気偏向システムは、互いに平行に配置された少なくとも2つの偏向板対を備えることができる。電気偏向システムは、質量を有する粒子ビーム用の粒子ビーム源の結像システムの電子光学対物レンズの上流に配置することができる。
【0101】
磁気偏向システムは、少なくとも1つのコイル対を備えることができる。しかしながら、磁気偏向システムは、少なくとも1つの永久磁石を備えることもできる。
【0102】
検査装置および/または側壁角を設定するための装置は、フォトリソグラフィマスクのパターニングされた表面に対して垂直な軸の周りでフォトリソグラフィマスクを回転させるように具現化された少なくとも1つの試料ステージをさらに備えることができる。少なくとも1つの試料ステージは、パターニングされた試料表面の法線に対して垂直な角度でフォトリソグラフィマスクを回転させるようにさらに具現化することができる。調整ユニットは、試料ステージの回転を開ループまたは閉ループ制御するようにさらに具現化することができる。
【0103】
球面座標で考えると、フォトリソグラフィマスクの光軸が球面座標の座標系のz軸に平行であるという仮定の下で、少なくとも1つの試料ステージは、粒子ビームと光軸との間の極角を変化させるように具現化される。少なくとも1つの試料ステージが極角の変化に加えて方位角の変化も容易にすることによって、局所化学反応によるフォトリソグラフィマスクの改善された処理を、フォトマスクのパターン要素の任意の箇所または任意の側で実行することができる。
【0104】
粒子ビーム源の結像システムは、フォトリソグラフィマスクのパターニングされた表面の法線に対して垂直な軸の周りで回転可能であるように具現化することができる。調整ユニットは、結像システムの回転を開ループまたは閉ループ制御するようにさらに具現化することができる。さらに、粒子ビーム源は、フォトリソグラフィマスクのパターニングされた表面の法線に対して垂直な軸の周りで回転可能であるように具現化することができる。さらに、調整ユニットは、粒子ビーム源の回転を開ループまたは閉ループ制御するように具現化することができる。さらに、調整ユニットは、入射角を変更する目的で、試料ステージと、結像システムまたは粒子ビーム源との両方を開ループまたは閉ループ制御するように具現化することができる。
【0105】
少なくとも1つの試料ステージは、第3の軸の周りで回転可能とすることができ、試料ステージの第3の回転軸は、フォトリソグラフィマスクのパターニングされた表面の法線に対して実質的に垂直である。試料ステージの3つの回転軸が直交座標系を張る(span)ように、第3の回転軸が試料ステージの第2の回転軸に対しても垂直であると有利である。
【0106】
一方向における平均入射角を減少させる、フォトリソグラフィマスクの表面への質量を有する粒子ビームの平均入射角の変更と、フォトリソグラフィマスクの光軸の周りで回転可能な試料ステージとの組合せにより、質量を有する粒子ビームの平均入射角を2つの空間方向で設定することが可能になる。これにより、フォトリソグラフィマスク上の任意の処理位置へのアクセスが容易になる。これにより、フォトリソグラフィマスクのパターン要素の任意の所望の側壁角を設定することができる。
【0107】
さらに、調整ユニットは、質量を有する粒子ビームを2つの方向に偏向させるように具現化することができる。調整ユニットの2つの偏向方向は、互いに対して実質的に90°の角度に設定することができる。
【0108】
検査装置および/またはフォトリソグラフィマスクの少なくとも1つのパターン要素の側壁角を設定するための装置は、フォトリソグラフィマスクに由来する、質量を有する粒子ビームによって引き起こされる粒子を検出するように具現化された少なくとも1つの検出器をさらに備える。フォトリソグラフィマスクに由来する粒子は、質量を有する粒子ビームの粒子タイプを含む場合がある。フォトリソグラフィマスクに由来する粒子は、質量を有する粒子ビームの粒子タイプとは異なってもよい。
【0109】
検査装置および/または側壁角を設定するための装置は、異なる入射角で記録された少なくとも1つの欠陥のデータを分析するように具現化された評価ユニットをさらに備えることができる。
【0110】
評価ユニットは、異なる入射角で記録されたデータから少なくとも1つの欠陥の3次元輪郭を生成するようにさらに具現化することができる。特に、評価ユニットは、質量を有する粒子ビームの走査データから画像データを生成することができる。画像データは、記憶することができ、ならびに/あるいは少なくとも1つの欠陥を検査するための装置および/または側壁角を設定するための装置のモニタ上に表示することができる。
【0111】
さらに、評価ユニットは、分析された走査データからフォトリソグラフィマスクの表面への質量を有する粒子ビームの平均入射角の少なくとも1つの変更を決定するように具現化することができる。
【0112】
さらに、評価ユニットは、局所化学反応を行うための粒子ビームの運動エネルギーから、質量を有する粒子ビームの平均入射角の設定すべき変更を決定するように具現化することができる。さらに、評価ユニットは、局所化学反応の材料組成から、質量を有する粒子ビームの平均入射角の設定すべき変更を決定するように具現化することができる。
【0113】
質量を有する粒子ビームの粒子の運動エネルギー、および粒子ビームの粒子が衝突する材料組成は、粒子ビームとフォトリソグラフィマスクとの相互作用領域のサイズに影響を与え、したがって、局所化学反応を行うことによって損なわれる可能性があるマスクの領域に影響を与える。
【0114】
評価ユニットは、欠陥の処理箇所の周囲の、またはエッジ勾配を設定するための処理箇所の、局所的に制限された保護層の領域および材料組成を決定するようにさらに具現化することができる。
【0115】
局所化学反応中の損傷からマスク基板を保護するために、局所化学反応を行う前に、欠陥の周囲のフォトマスクの基板上に局所的に制限された保護層を堆積させることができる。局所化学反応が終了した後、EBIEプロセスを用いて、局所的に制限された保護層を基板から再び除去することができる。代替として、保護層は、マスク洗浄ステップによってマスクから再び除去することができる。
【0116】
さらに、評価ユニットは、分析されたデータから、質量を有する粒子ビームのフォトリソグラフィマスクへの入射角の設定すべき少なくとも1つの変更を決定するように具現化することができる。
【0117】
さらに、評価ユニットは、分析されたデータから修復形状のパラメータを確認するように具現化することができる。
【0118】
検査装置は、側壁角を設定するための装置に測定データを送信することができ、側壁角を設定するための装置またはその評価ユニットは、検査されたマスクの1つもしくは複数のパターン要素の欠陥を除去するための、および/または要求されるエッジ勾配を設定するための、修復形状のパラメータを確認することができる。しかしながら、検査装置またはその評価ユニットが、異なる角度で記録された測定データから、1つもしくは複数のパターン要素の欠陥を修復するための、および/または1つもしくは複数の側壁のエッジ勾配を設定するための、パラメータ化された修復形状を計算し、側壁角を設定するための装置にパラメータ化された修復形状を送信することも可能である。
【0119】
さらに、検査装置と側壁角を設定するための装置は両方とも、評価ユニットを含むことができる。代替として、評価ユニットが検査装置と側壁角度を設定するための装置との間で分割されることも可能である。検査装置および側壁角を設定するための装置は、無線または有線のインターフェースを介して通信することができる。
【0120】
さらに、検査装置および側壁角を設定するための装置を単一の装置に統合することが可能である。
【0121】
調整ユニットは、パラメータ化された修復形状に基づいて、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つのパターン要素への質量を有する粒子ビームの入射角の変更を制御するようにさらに具現化することができる。
【0122】
さらに、調整ユニットは、少なくとも1つの質量を有する粒子ビームの少なくとも1つのパラメータの変更、プロセスパラメータの変更、および/または質量を有する粒子ビームの入射角の変更を自動化された形態で実行するように具現化することができる。
【0123】
最後に、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥を検査するための装置は、フォトリソグラフィマスクの少なくとも1つの欠陥を検査するための上記で定義された方法のステップを実行するように具現化することができる。
【0124】
以下の詳細な説明は、図面を参照して本発明の現時点で好ましい実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0125】
図1】上側部分画像において、設計によって予め決められたフォトリソグラフィマスクのパターン要素のエッジの概略断面を示し、下側部分画像において、欠陥なしに生成された上側部分画像のパターン要素のエッジを再現した図である。
図2a】パターン要素がα=90°のエッジ勾配を有する極紫外線(EUV)波長域用のマスクの概略断面図である。
図2b図2aのEUVマスクの断面を再現した図であり、パターン要素の側壁角(SWA)が上方に開いており、すなわちα<90°である。
図2c図2aのEUVマスクの断面を示す図であり、パターン要素がアンダーカットを有し、すなわちα>90°である。
図3図2aの部分画像のEUVマスクへのEUV放射線の衝突およびその反射を概略的に説明する図である。
図4図2bの部分画像のEUVマスクへのEUV放射線の入射およびEUVマスクの多層構造によるEUV放射線の反射を概略的に示す図である。
図5】開いたパターン要素(α<90°)とエッジ勾配がα=90°のパターン要素とを有するEUVマスクへのEUV放射線の衝突を概略的に示す図である。
図6】Aは、フォトマスクの理想的な切り抜き部分を通る概略断面図であり、Bは、フォトマスクの理想的なエッジを示す図であり、Cは、電子ビーム誘起エッチング(EBIE)プロセスを概略的に説明する図であり、Dは、EBIEプロセスによって生成された実際の切り抜き部分を再現した図であり、Eは、EBIEプロセスによって生成された実際のエッジを示す図である。
図7】過剰材料の形態の欠陥を有するフォトリソグラフィマスクのパターン要素のエッジの概略断面図である。
図8】従来技術による、欠陥を除去するための局所化学反応または局所修復プロセスを行った後の図7のパターン要素のエッジの概略断面図である。
図9】上側部分画像において、アパーチャ角βを有する粒子ビームがフォトリソグラフィマスクに入射する図1の下側部分画像を再現し、下側部分画像において、図9の上側部分画像の粒子ビームの焦点の強度分布を示す図である。
図10】従来技術による、図1の下側部分画像のフォトリソグラフィマスクのパターン要素のエッジまたは側壁を処理するときの、図9の粒子ビームの相互作用領域(「散乱コーン」)を示す図である。
図11】従来技術による粒子ビーム誘起堆積プロセスの実行を概略的に可視化した図である。
図12】フォトリソグラフィマスクを検査するための装置のいくつかの構成要素の概略断面図である。
図13】走査型電子顕微鏡のカラムの出力部に磁気偏向システムの形態の偏向システムを有する図12の装置の拡大詳細図である。
図14】走査型粒子顕微鏡のカラムの試料側端部に電気偏向システムの形態の偏向システムを有する図12の装置の拡大詳細図を再現した図である。
図15】フォトリソグラフィマスクのパターン要素の側壁角を設定するための装置の一部の構成要素の概略断面図である。
図16図12図15の装置の組合せの概略断面図である。
図17】光軸から偏向された質量を有する粒子ビームを用いたEUVマスクの多層構造のエッジの検査を示す図である。
図18】フォトリソグラフィマスクの欠陥を検査するための方法の流れ図を示す図である。
図19】EBIEプロセスによる、偏向された質量を有する粒子ビームを用いた試料の切り抜き部分およびエッジのエッチングを概略的に説明する図である。
図20】従来技術によるイオンビーム誘起エッチングプロセスの実施態様を概略的に再現した図である。
図21】イオンビームが90°未満の角度で試料に入射するイオンビーム誘起エッチングプロセスの実施態様を概略的に示す図である。
図22】光軸から偏向された大きなアパーチャ角を有する電子ビームのパターン要素の側壁への衝突を概略的に示す図である。
図23図22の電子ビームを用いたパターン要素の側壁の検査手順またはエッチングプロセスの実施態様を概略的に再現した図である。
図24】偏向された電子ビームを用いたパターン要素上への材料の堆積を概略的に示す図である。
図25】従来技術による修復形状による欠陥のエッチングを概略的に示す図である。
図26】エッチングプロセス中に変化する修復形状を用いた図25の欠陥のエッチングを概略的に示す図である。
図27】非対称ビームプロファイルを有する質量を有する粒子ビームを用いてフォトマスクの基板内に切り抜き部分をエッチングする際の、異なる側壁角の生成を示す図である。
図28】フォトリソグラフィマスクのパターン要素の側壁角を設定するための方法の流れ図を指定する図である。
【発明を実施するための形態】
【0126】
フォトリソグラフィマスクのパターン要素の側壁角を設定するための本発明による方法および本発明による装置の現時点で好ましい実施形態を以下でより詳細に説明する。さらに、フォトマスクの欠陥を検査するための本発明による方法および本発明による装置の例示的な実施形態を以下で詳細に説明する。本発明による方法は、極紫外線(EUV)波長域用のフォトマスクの例を使用して説明される。しかしながら、これらの例は、EUVマスクの結像挙動の改善に限定されるものではない。むしろ、これらの例は、フォトマスクの任意のタイプの欠陥を修正し、任意のタイプのフォトマスクのパターン要素の側壁角またはエッジ勾配を設定するために使用することができる。以下では、マスクまたはフォトマスクという用語は、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)用のテンプレートも含むものとする。
【0127】
パターン要素の側壁角を設定するための、および/またはフォトリソグラフィマスクの欠陥を検査するための本発明による装置は、改良された走査型電子顕微鏡の例を用いて説明される。しかしながら、本発明による装置は、走査型電子顕微鏡に基づいて実現することができるだけではない。むしろ、本発明による装置は、任意の走査型粒子顕微鏡に基づくことができ、すなわち、本出願で定義される装置は、フォトマスクを検査および/または処理するための任意のタイプの質量を有する粒子を使用することができる。さらに、本発明による装置および本発明による方法の使用は、フォトリソグラフィマスクの処理のみに限定されない。むしろ、本明細書で説明される装置および方法は、様々な微細構造構成要素を分析および/または処理するために使用することができる。この目的の例としては、ウエハ、IC(集積回路)、MEMS(微小電気機械システム)、およびPIC(フォトニック集積回路)が挙げられる。
【0128】
図1の上側部分画像105は、フォトリソグラフィマスク100の細部の断面を概略的に示す。マスク100は、透過型または反射型マスク100とすることができる。図1の例では、フォトマスク100は、基板110と、パターン要素120または構造要素120とを含む。基板110は、石英基板および/または低熱膨張係数を有する材料(LTE(低熱膨張(low thermal expansion))基板)を含むことができる。パターン要素120は、バイナリフォトマスク100の構造要素120とすることができる。この場合、パターン要素120は、吸収体構造120の要素を含んでもよく、例えばクロムを含んでもよい。しかしながら、パターン要素120は、位相シフトフォトマスク100の構造要素120を含むこともできる。例として、位相シフトマスク100は、適切なパターンをマスク100の基板110にエッチングすることによって製造することができる。さらに、パターン要素120は、基板110に入射する放射線に対して化学線の位相を変位させ、また、パターン要素120に入射する化学線波長の光の一部を吸収する構造要素120を含むことができる。この例には、OMOG(不透明なMoSi(モリブデンシリサイド)オンガラス)マスクが含まれる。
【0129】
図1の上側部分画像105は、設計によって予め決められた理想的なエッジ130または側壁130を通る断面を示す。パターン要素120のエッジ130は、エッジ勾配140または側壁角140によって決定される。さらに、エッジ130または側壁130は、半径135および145、または曲率半径135および145によって特徴付けられ、これらの半径によって、側壁130は、第1にマスク100の基板110の表面115に合流し、第2にパターン要素120の平坦な表面125に合流する。典型的には、設計は、実質的にα=90°のエッジ勾配140または側壁角140を規定する。パターン要素120のエッジ130または側壁130の曲率半径135および145は、可能な限り小さくあるべきであり、すなわち、可能な限り0に近くあるべきである。
【0130】
図1の下側部分画像155は、上述した設計規定に従ってフォトマスク150の基板110上に生成されたパターン要素120を通る断面を示す。側壁160またはエッジ160のエッジ勾配170すなわち側壁角170は、実質的にα=90°であり、したがって、設計の規定との良好な一致を示す。側壁160の曲率半径165および175は、0ではないが、パターン要素120がその機能を果たすのに十分小さい。これは、構造要素120が、図1の下側部分画像155に示すような側壁角170を備えた側壁160またはエッジ160を有するフォトリソグラフィマスク100が仕様を満たすことを意味する。
【0131】
図2aは、EUV波長域用のフォトリソグラフィマスク200の一部の概略断面を示す。多数層構造210または多層構造210がフォトリソグラフィマスクの基板110に施されている。例として、多層構造は、モリブデン(Mo)およびシリコン(Si)からなる20~60の交互層を有することができる。2つの構造要素またはパターン要素220および230を多層構造210上に堆積させる。例として、EUVマスク200のパターン要素220、230は、窒化タンタル(TaN)を含むことができる。右側のパターン要素220には、エッジ勾配170または側壁角170を規定するために使用される座標系235がプロットされている。図2aでは、2つのパターン要素220、230の側壁角170は、実質的にα=90°の値を有する。
【0132】
図2bは、図2aのEUVマスク200と同様の構造を有するEUVマスク240の詳細を明らかにしている。図2aのEUVマスク200とは対照的に、パターン要素250および260は、90°から逸脱したエッジ勾配170を有する。パターン要素250および260は、上方に開いており、座標系235によって明らかにされるように、90°未満の側壁角170を有する。パターン要素250および260によって形成される開口部245は、上方向に大きくなっている。
【0133】
図2cは、EUVマスク270の詳細を示し、そのパターン要素280および290は、アンダーカットを有し、すなわち、開口部275は、上方向にテーパが付けられている。この構成は、側壁角α>90°によって特徴付けられる。
【0134】
図3は、化学線波長の光を使用した図2aのEUVマスク細部200の露光を概略的に示す。EUVマスク200は、反射型マスク200として具現化されているため、角度≠0°で照明される。現在、主光線角310(CRA)は、EUVマスク200の法線からのずれが5°~6°の範囲にある。図3に示す例では、後続の図4および図5と同様に、EUVマスクは、双極子放射線を用いて露光される。これは、マスク200に入射する2つのビーム320および330によって表される。ビーム320は、パターン要素230によって部分的に遮蔽または吸収され、強度が低下したビーム325としてEUVマスク200の多層構造220に衝突する。ビーム325は、多層構造220によってEUV光ビーム360として反射され、光ビーム330は、ビーム350として反射される。反射されたCRA310は、図3の参照符号340を使用して再現されている。パターン要素230による光ビーム320の部分的遮蔽は、EUVマスク200を介したリソグラフィ結像の場合にコントラストの損失をもたらす。この問題を可能な限り小さくしておくために、EUVマスク200の吸収パターン要素220、230の厚さは、可能な限り小さくなるように選択される。パターン要素220、230の典型的な厚さは、50nm未満である。
【0135】
図4は、同じく化学線波長の光を用いた図2bのEUVマスク細部240の露光を概略的に示す。図3の文脈で説明したように、照明は、CRA410の角度が5°で実施されている。図3とは異なり、ビーム420は、パターン要素250および260の側壁角170がα<90°であるため、妨げられることなく多層構造210に入射することができる。これにより、2つの入射光ビーム420および430は、EUVビーム450および460と同じ強度で反射され、その結果、EUVマスク240を結像(image)する際のコントラストの損失を回避することができる。
【0136】
図5は、左側のパターン要素220がα=90°のエッジ勾配170を有するEUVマスク500の細部を示す。これに対して、右側のパターン要素260は、側壁角170がα<90°である。非垂直入射の場合のこのエッジ勾配170の利点は、図4の文脈で説明されている。EUVマスク500の多層構造210には、双極子放射線源の光ビーム520および530が入射する。図5の矢印560によって明らかにされているように、多層構造210によって反射されたEUV放射線の一部は、パターン要素220によって吸収される。別の部分は、パターン要素220の側壁570によって反射され、パターン要素220の側壁570の近傍に干渉パターン(図5には図示せず)を形成する。
【0137】
側壁角α=90°を有する側壁570の反射の結果として、多層構造210によって反射されたEUV放射線の一部が再分配される。それぞれの用途に応じて、この再分配は有利である場合があり、EUVマスク500の結像挙動に好影響を与えることができる。これは、パターン要素220、260が非対称の側壁角170を有するEUVマスク500が、原理的に、EUVマスク500によって反射された放射線540、565の、エッジ勾配170によって調整可能な分布をもたらし、結果として、所望の効果を引き起こすことができることを意味する。
【0138】
部分画像Aにおいて、図6は、例示的なEBIE(電子ビーム誘起エッチング)プロセスによる、マスク600の設計によって指定された、フォトリソグラフィマスク600の矩形プロファイル610の生成を示す。例として、矩形プロファイル610は、基板110内、多層構造210内、またはパターン要素220、230、250、260、280、290内に生成することができる。矩形プロファイル600の曲率半径605および615は、非常に小さい数値を有する。図6の部分画像Bは、フォトマスク600にエッチングされた理想的なエッジ620を再現している。理想的なエッジ620の曲率半径625および635も同様に非常に小さい値を有し、理想的な曲率半径0に非常に近くなる。
【0139】
図6の部分画像Cは、設計によって指定された、図6の部分画像Aの矩形プロファイル610を生成するためのEBIEプロセスの実施態様を概略的に示す。エッチングガス640の形態の前駆体ガスが、生成されるプロファイル610の領域に供給される。集束電子ビーム630、または集束電子ビーム630によってフォトマスク600の材料から放出された二次電子650は、エッチングガスの分子を分解し、こうして少なくとも反応性タイプの粒子を生成することによってEBIEプロセスを誘発する。これらの反応性粒子がフォトマスク600の材料と反応する。
【0140】
電子ビーム630をプロファイルのベース領域上で周期的に走査したとしても、図6の部分画像Dに再現されるような実際のEBIEプロセスは、設計によって指定された矩形プロファイル610を生成せず、代わりに、トラフの形状を有することにより近いプロファイル660を生成する。エッジ勾配670または側壁角670は、設計によって要求される側壁角α=90°から著しく逸脱している。さらに、生成されたトラフの曲率半径665および675は、矩形プロファイル610の曲率半径605および615よりも著しく大きい数値を有する。
【0141】
部分画像Eは、EBIEプロセスによって生成された実際のエッジ680を示す。エッチングされたエッジ680のエッジ勾配670は、設計によって指定された側壁角α=90°よりも著しく小さい。さらに、実際に生成された曲率半径685および695は、部分画像Bで指定された理想的なエッジ620の曲率半径625および635よりも実質的に大きな数値を有する。
【0142】
図6の部分画像Cに指定されているように、電子ビーム630は、フォトリソグラフィマスク600に直角に衝突する。EBIEプロセスを実行する際の部分画像DおよびEにおいて明らかにされたような欠点の少なくとも一部は、フォトマスク600への電子ビーム640の垂直入射に遡ることができる。
【0143】
図7は、基板110と、エッジ160または側壁160に過剰材料750を有するパターン要素120とを含むフォトリソグラフィマスク700の概略断面を示す。過剰材料750は、吸収パターン要素もしくは位相シフトパターン要素120の材料、または基板110の材料を含むことがある。しかしながら、過剰材料750の欠陥は、パターン要素120のエッジ160に沈着した粒子である場合もある。粒子の形態の過剰材料750は、典型的には、フォトマスク700の材料組成とは異なる材料組成を有する。
【0144】
図7に再現された例では、過剰材料750の欠陥は、パターン要素120と同じ高さを有する。しかしながら、これは、欠陥750を検査するための、および/または欠陥の過剰材料750を処理するための、または側壁角170、670を設定するための、本出願に記載されるような方法あるいは記載される装置を適用するための前提条件ではない。むしろ、以下に説明する装置は、実質的に任意の形態を有する欠落材料および/または過剰材料750の欠陥を検査および/または処理することができる。
【0145】
図8は、過剰材料750または過剰材料750の欠陥が、局所粒子ビーム誘起エッチングプロセス、例えば従来技術によるEBIEプロセスを用いて除去された後の、図7のマスク700の細部の断面を示す。図8に示す修復されたフォトマスクの細部800から推測できることは、局所エッチングプロセスの結果として生じた側壁870の側壁角α’が、設計によって要求される角度α=90°から著しく逸脱していることである。さらに、生成されたパターン要素820の側壁860の曲率半径880、885は、図1の下側部分画像155で指定された例に対して大幅に増加している。さらに、以前に過剰材料750によって覆われていた領域およびその周囲の、マスク700の基板110の一部850が局所エッチングプロセスによって除去されている。説明した局所エッチングプロセスの不利な影響の結果として、修復されたマスク800は、依然として、フォトマスクに対して指定された結像仕様を常に満たすわけではない。
【0146】
図8は、粒子ビーム誘起局所エッチングプロセスを実行することによって過剰材料750の欠陥を処理する際の難しさを説明するために上記で使用された。フォトリソグラフィマスクの頻繁に発生する第2のクラスの欠陥は、例えば、バイナリマスクの場合の、吸収体材料が欠落した、欠落材料の欠陥である(図8には図示せず)。局所的なエッチングの場合と同様に、堆積させたパターン要素の側壁の90°から著しく逸脱したエッジ勾配が、粒子ビーム誘起堆積プロセス、例えばEBID(電子ビーム誘起堆積)プロセスを用いて、欠落材料、例えば欠落した吸収体材料の局所的な堆積の範囲内で生成される。さらに、修復中に形成される側壁に影響を与えることができないか、または側壁にごくわずかな程度しか影響を与えることができない。さらに、堆積させたパターン要素の曲率半径は、多くの場合、欠陥のないマスク150の元の製造プロセスで生成されたパターン要素120の曲率半径165、175よりも著しく大きい。さらに、局所的な堆積プロセスのために、基板110の表面115の、堆積させた材料がないはずの部分に望ましくない材料の蓄積があり、または基板110の部分が望ましくない形でエッチングされる。
【0147】
これは、局所的な堆積プロセスにより局所的な処理箇所の周囲に一種のハローが生成されることを意味する。基板110の表面115の部分に追加的に堆積した材料、および局所的なEBIDプロセスの上述の欠陥は、通常、結果として、修復されたフォトリソグラフィマスクの機能を局所的に損傷する。
【0148】
図8の文脈で上述した問題につながる原因の少なくとも一部を、図9および図10に基づいて以下に説明する。
【0149】
図9の上側部分画像905は、図1のフォトリソグラフィマスク150の下側部分画像の細部を再現している。アパーチャ角βを有する粒子ビーム910がマスク150の基板110に衝突する。アパーチャ角βは、数分の1度~数度の角度範囲を含むことができる。粒子ビーム910は、マスク150の基板110の表面115に実質的に垂直に衝突する。
【0150】
アパーチャ角βは、本質的に、走査型粒子顕微鏡のコンデンサ絞りの開口部のサイズによって決定される。それぞれの開口部を有する絞りを選択することによって、粒子ビーム910のアパーチャ角βを固定することができる。しかし、絞りのサイズまたは直径を大きくすると、粒子ビーム910の収差の量に有害な影響を与えることがある。
【0151】
図9の下側部分画像955は、粒子ビーム910の先端920または焦点920内の、あるいは図1のマスク150の基板110の表面115への入射点における粒子ビーム910の強度分布を示す。典型的には、粒子ビーム910は、その焦点920においてガウスまたはガウス様の強度プロファイルを有する。達成可能な最小の半値全幅(FWHM)950は、粒子ビーム910の粒子タイプに依存する。現在、焦点において、電子ビームをナノメートル範囲~サブナノメートル範囲に及ぶスポット径に集束させることが可能である。
【0152】
試料、例えば欠陥750を検査するための可能な限り高い空間分解能を得るために、粒子ビーム910を検査位置において小さなスポット950に集束させなければならない。これは、多くの場合、試料の処理、例えば、欠陥750の修復および/またはフォトマスク700のパターン要素120の側壁角170、670の設定にも当てはまる。しかしながら、光学領域と同様に、焦点におけるスポット径を小さくするという要求は、粒子ビーム910に大きなアパーチャ角βを必要とする。しかしながら、図9の上側部分画像905に可視化されているように、粒子ビーム910のアパーチャ角βが大きいと、パターン要素120のエッジ160または急峻な側壁160の近傍に位置する検査、処理および/または修復位置に粒子ビーム910がアクセスする能力が損なわれる。
【0153】
図10は、図1のマスク細部150を再度再現しており、加えて、図9の粒子ビーム910がフォトリソグラフィマスク150の材料に入射している。図10において、参照符号1010は、粒子ビーム910がフォトリソグラフィマスク150の基板110に入射する際に生成する相互作用領域を示す。粒子ビーム910が基板110に入射すると、前記粒子ビームの粒子、例えば電子は、基板材料110の原子核の静電界中で散乱される。粒子ビーム910の入射粒子のエネルギーは、相互作用体積1010内または散乱コーン1010内に二次生成物を生成する。例として、入射粒子の原子核との散乱プロセスは、マスク150の基板材料110の格子にエネルギーを伝達し、その結果、基板材料110が局所的に加熱される。基板材料110の電子は、散乱プロセスによって、点1020で基板110に入射する粒子ビーム910の一次粒子からエネルギーを吸収することもでき、二次電子および/または後方散乱電子として放出されることがある。相互作用領域1010のサイズおよび形状は、粒子ビーム910の粒子タイプおよび基板110に入射する粒子ビーム910の粒子の運動エネルギーに依存する。さらに、基板110の材料または材料組成は、散乱コーン1010のサイズおよび形状に影響を与える。
【0154】
処理プロセス中、例えば、欠陥750の修復および/または側壁角670の設定中、前駆体ガスの分子は、処理される箇所の近傍の基板110の表面115に吸着される。マスク150、200の基板110の表面125への粒子ビーム910の入射点1020の領域に存在する前駆体ガスの分子は、相互作用領域1010において進行するプロセスによって、例えば、二次電子および/または後方散乱電子の吸収によって、それらの成分に分解される。
【0155】
粒子ビーム910が基板110に入射する場合、相互作用領域1010または散乱コーン1010は、実質的にマスク150の基板110内に位置する。粒子ビーム910がマスク150のパターン要素120のエッジ160または側壁160に入射する場合は、相互作用領域1010において進行するプロセスの一部のみが、マスク150のパターン要素120の材料内で行われる。これは、図10において、変形したまたは実質的に半分になった相互作用領域1050によって可視化されている。変形した相互作用領域1050で生成された二次粒子または後方散乱粒子560の一部は、相互作用領域1050を離れ、マスク100の基板110の表面115に到達することができる。これは、図10の矢印1060によって示されている。パターン要素120の材料とは異なり、検査プロセスおよび/または処理プロセス中にマスク150、200が典型的に配置される真空環境では、相互作用プロセスはほとんどない。
【0156】
既に上述したように、フォトリソグラフィマスク150の処理プロセス中、マスク150の基板110の表面125は、パターン要素120のエッジ160または側壁160の領域において、前駆体ガス640の分子によって覆われている。変形した相互作用領域1050において粒子ビーム910によって放出され、基板110の表面115に入射する二次粒子1060は、基板110上で望ましくない局所処理プロセスを開始する。前駆体ガス640がエッチングガス640の形態で存在する場合、これは、図8に示すように、基板110の局所的なくぼみ850をもたらす基板110のエッチングプロセスである。対照的に、堆積ガスの形態で存在する前駆体ガスは、例えば、フォトリソグラフィマスク150、700の基板110上にハローの形態で望ましくない局所的な堆積プロセスをもたらすことが多い。
【0157】
図11図1100は、フォトリソグラフィマスク150の基板110上にパターン要素120の側壁170に沿って材料1150を堆積させることによる欠落材料の欠陥の修正を可視化している。図11は、従来技術によるEIBDプロセスの実行を示す。電子ビーム910は、マスク150の基板110の表面115に入射すると、基板内に相互作用領域1010を生成することを図10の文脈内で説明した。相互作用領域1010で行われるプロセスは、基板110の表面115に吸着された前駆体ガス640の分子の分解を促進する。基板110の表面115に吸着された前駆体ガスの分子が堆積ガスである場合、電子ビーム910の作用によって分解された堆積ガスの分子の成分または構成要素を、基板110の表面115上に堆積させることができる。したがって、例えば、金属カルボニルは、電子ビーム910の直接的な作用によって金属原子または金属イオンと一酸化炭素とに分解される。金属原子は、基板110の表面115に沈着することができ、一方、揮発性一酸化炭素分子は、大部分が処理位置を離れることができる。
【0158】
集束電子ビーム910を欠落材料1150の領域上で順次走査することによって、欠落材料が堆積ガスの存在下で基板110上に層ごとに堆積する。しかしながら、基板110または堆積物1150もしくは堆積材料1150において電子ビーム910によって生成される相互作用領域1110のサイズは、実質的にα=90°の側壁角670を有する側壁170またはエッジへの堆積ができないようにする。代わりに、相互作用領域1110のサイズは、堆積物1150の側壁1160またはエッジ1160のエッジ勾配1170α’’の大きさを少なくとも部分的に設定する。局所エッチングプロセスが行われる場合と同様に、相互作用領域1110のサイズおよび形状は、電子ビーム910の電子の運動エネルギーおよび堆積物1150の材料組成に依存する。しかしながら、局所的な粒子ビーム誘起エッチングプロセスを実施しても、局所的な粒子ビーム誘起堆積プロセスを実施しても、側壁角170、670、1170の設定は容易ではない。
【0159】
図12は、フォトリソグラフィマスク700の1つまたは複数の欠陥750を検査するために使用することができる装置1200の一部の重要な構成要素の概略断面を示す。図12の例示的な装置1200は、走査型電子顕微鏡(SEM)1210の形態の改良された走査型粒子顕微鏡1210を含む。
【0160】
装置1200は、質量を有する粒子ビーム1215として電子ビーム1215を生成する電子ビーム源1205の形態の粒子ビーム源1205を備える。電子ビーム1215は、イオンビームと比較して、試料1225またはフォトリソグラフィマスク700に衝突する電子が、試料1225またはフォトマスク700を実質的に損傷し得ないという利点を有する。しかしながら、試料1225を処理する目的で、装置1200においてイオンビーム、原子ビームまたは分子ビーム(図12には図示せず)を使用することも可能である。
【0161】
走査型粒子顕微鏡1210は、電子ビーム源1205と、例えばSEM1210の電子光学ユニットの形態のビーム光学ユニット1213が配置されたカラム1220と、から構成されている。図12のSEM1210において、電子ビーム源1205は、電子ビーム1215を生成し、この電子ビームは、カラム1220内に配置された結像素子によって、位置1222において集束電子ビーム1215として、フォトリソグラフィマスク700を含むことができる試料1225上に向けられ、前記結像素子は、図12には示されていない。したがって、ビーム光学ユニット1213は、SEM1200の電子ビーム源1205の結像システム1213を形成する。
【0162】
さらに、SEM1210のカラム1220の結像素子は、試料1225上で電子ビーム1215を走査することができる。試料1225は、SEM1210の電子ビーム1215を用いて検査することができる。通常、電子ビーム1215は、試料1225に直角に衝突する(図12には図示せず)。代わりに、装置1200のSEM1210は、偏向システム1203を含む。偏向システム1203は、電子ビーム1215を垂直から偏向させることができ、したがって、電子ビーム1215は、90°未満の角度で試料1225に入射する。その結果、試料1225をより詳細なレベルで分析することができる。これは、質量を有する粒子ビーム1215のビーム方向における制限された空間分解能を少なくとも部分的に克服することができる。
【0163】
試料1225の相互作用領域1010、1050、1110において電子ビーム1215によって生成された後方散乱電子および二次電子は、検出器1217によって記録される。電子カラム1220内に配置された検出器1217は、「レンズ内検出器」と呼ばれる。検出器1217は、様々な実施形態において、カラム1220内に設置することができる。検出器1217は、電子ビーム1215によって測定点1222で生成された二次電子および/または試料1225から後方散乱された電子を電気測定信号に変換し、この電気測定信号を装置1200のコンピュータシステム1280の評価ユニット1285に送信する。検出器1217は、エネルギーおよび/または立体角の観点から電子を弁別するために、フィルタまたはフィルタシステムを含むことができる(図12には再現されていない)。検出器1217は、装置1200の設定ユニット1290によって制御される。
【0164】
例示的な装置1200は、第2の検出器1219を含むことができる。第2の検出器1219は、特にX線領域の電磁放射線を検出するように設計することができる。結果として、検出器1219により、検査中に試料1225によって生成された放射線の材料組成を分析することが可能になる。検出器1219は、設定ユニット1290によって同様に制御される。
【0165】
さらに、装置1200は、第3の検出器(図12には図示せず)を含むことができる。第3の検出器は、しばしば、Everhart-Thornley検出器の形態で具現化され、典型的には、カラム1220の外側に配置される。通常、この検出器は、二次電子を検出するために使用される。
【0166】
装置1200は、試料1225の領域に運動エネルギーの低いイオンを供給するイオン源を含むことができる(図12には図示せず)。運動エネルギーの低いイオンは、試料1225の帯電を打ち消すことができる。さらに、装置1200は、改良されたSEM1210のカラム1220の出力部にメッシュを含むことができる(同様に図12には示されていない)。メッシュに電圧を印加することによって、試料1225の静電帯電を同様に打ち消すことができる。メッシュを接地することがさらに可能である。
【0167】
試料1225は、検査目的のために試料ステージ1230または試料ホルダ1230上に配置される。試料ステージ1230は、当技術分野では「ステージ」としても知られている。図12に矢印で表されるように、試料ステージ1230は、例えば図12には示されていないマイクロマニピュレータによって、SEM1210のカラム1215に対して3つの空間方向に移動させることができる。
【0168】
並進移動の他に、試料ステージ1230は、少なくとも粒子ビーム源1205のビーム方向に平行に配向された軸を中心に回転させることができる。試料ステージ1230を、1つまたは2つのさらなる軸を中心に回転可能であるように具現化することがさらに可能であり、これらの軸は、試料ステージ1230の平面内に配置されている。2つまたは3つの回転軸は、好ましくは直交座標系を形成する。図12から推測できるように、試料ステージ1230の平面内に配置された回転軸を中心とした試料ステージ1230の回転は、カラムの端部と試料1235との間の距離が小さいため、多くの場合限られた範囲でしか可能ではない。
【0169】
検査される試料1225は、分析および場合によってはその後の処理、例えば、局所欠陥750の修復および/またはフォトリソグラフィマスク700のパターン要素120の側壁角670の設定を必要とする任意の微細構造化構成要素または構成部品とすることができる。したがって、試料1225は、例えば、透過型もしくは反射型フォトマスク700および/またはナノインプリント技術用のテンプレートを含むことができる。透過型および反射型フォトマスク150、700は、すべてのタイプのフォトマスク、例えば、バイナリマスク、位相シフトマスク、OMOGマスク、または二重もしくは多重露光用マスクを含むことができる。
【0170】
さらに、図12の装置1200は、試料1225を分析および/または処理するために使用することができる、例えば原子間力顕微鏡(AFM)(図12には図示せず)の形態の1つまたは複数の走査型プローブ顕微鏡を含むことができる。
【0171】
図12に例として示す走査型電子顕微鏡1210は、真空チャンバ1270内で動作する。真空チャンバ1270で必要な減圧を生成し維持するために、図12のSEM1210は、ポンプシステム1272を有する。
【0172】
装置1200は、コンピュータシステム1280を含む。コンピュータシステム1280は、試料1225上で電子ビーム1215を走査する走査ユニット1282を含む。さらに、コンピュータシステム1280は、装置1200の改良された走査型粒子顕微鏡1210の様々なパラメータを設定し、試料1225が電子ビーム1215を用いて検査されている間にこれらのパラメータのうちの1つまたは複数を変更するための設定ユニット1290を含む。また、設定ユニット1290は、偏向システム1203および試料ステージ1230の回転を制御することができる。
【0173】
さらに、コンピュータシステム1280は、検出器1217および1219からの測定信号を分析し、そこから試料1225の画像を生成する評価ユニット1285を備え、前記画像は、コンピュータシステム1280のディスプレイ1295上に表示される。特に、評価ユニット1285は、検出器1217の測定データから、試料1225、例えばフォトリソグラフィマスク700の欠落材料の欠陥および/または過剰材料の欠陥750の相対位置ならびに輪郭を決定するように設計されている。評価ユニット1285は、分析されたマスク700の欠陥750に対応する修復形状を決定することを可能にする1つまたは複数のアルゴリズムをさらに含むことができる。コンピュータシステム1280の評価ユニット1285は、偏向システム1203のパラメータを確認することができる1つまたは複数のアルゴリズムをさらに含むことができる。電子ビーム1215のための偏向システム1203の例を、図13および図14に基づいて以下に説明する。評価ユニット1285のアルゴリズムは、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せを使用して実装することができる。特に、アルゴリズムは、ASIC(特定用途向け集積回路)および/またはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の形態で実現することができる。
【0174】
コンピュータシステム1280および/または評価ユニット1285は、様々なマスクタイプに対する修復形状の1つまたは複数のモデルを記憶するメモリ(図12には図示せず)、好ましくは不揮発性メモリを含むことができる。評価ユニット1285は、検出器1217の測定データから、修復モデルに基づいて、フォトリソグラフィマスク700の欠陥750に対する修復形状を計算するように設計することができる。さらに、コンピュータシステム1280は、インターネット、イントラネットおよび/または他の何らかの装置、例えば側壁角を設定するための装置とデータを交換するためのインターフェース1287を含むことができる。インターフェース1287は、無線または有線インターフェースを含むことができる。
【0175】
図12に示すように、評価ユニット1285および/または設定ユニット1290は、コンピュータシステム1280に統合することができる。しかしながら、評価ユニット1285および/または設定ユニット1290を、装置1200の内部または外部の独立したユニットとして具現化することも可能である。特に、評価ユニット1285および/または設定ユニット1290は、それらのタスクの一部を専用のハードウェア実装によって実行するように設計することができる。
【0176】
コンピュータシステム1280は、装置1200に統合されてもよく、または独立した装置(図12には図示せず)として具現化されてもよい。コンピュータシステム1280は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または組合せを使用して具現化することができる。
【0177】
図13図1300は、図7のフォトリソグラフィマスク700への電子ビーム1215の入射点1322の領域における装置1200の拡大詳細図を示す。図13に示す例では、フォトリソグラフィマスク700の基板110は、3点軸受によって試料ステージ1340上に配置されている。フォトマスク700は、重力の作用によってその位置に保持されている。図1300の断面は、3点軸受の3つの球体1320のうちの2つを示す。
【0178】
偏向システム1350は、SEM1210のカラム1220の出力部1390とフォトマスク700との間で装置1200に設置されている。偏向システム1350は、例えば、コイル対または1つもしくは複数の永久磁石(図13には図示せず)の形態で具現化することができる磁気偏向システム1330を含む。図13に示す例では、磁気偏向システム1330は、磁力線が紙面に垂直で、紙面に向かう磁界1310を生成する。電子ビーム1215の電子は、カラム1220を離れると、磁気偏向システム1330によって生成された磁界1310によって偏向され、前記電子は、湾曲した経路1315に沿って入射点1322でフォトリソグラフィマスク700に到達する。例として、電子ビーム1215の電子は、過剰材料の欠陥750に到達する。磁気偏向システム1330の磁界1310によって偏向された電子ビーム1215は、偏向されていない電子ビームの入射角φ=90°よりも小さい角度φ1でマスク700に衝突する。磁気偏向システム1330によって長くなった電子の経路1315は、電子ビーム1215を集束する際に考慮される。
【0179】
磁気偏向システム1330は、均一または不均一な磁界1310を生成することができる。磁界1310の強度は、コンピュータシステム1280の設定ユニット1290によって、例えば、磁界1310を生成するコイル対を流れる電流の強度によって設定することができる。
【0180】
図13に再現された例では、磁気偏向システム1330は、磁力線が紙面を垂直に通過する均一な磁界1310を生成する。しかしながら、磁気偏向システム1330は、例えば、磁力線が紙面に平行に延びる第2の磁界を生成することもできる。互いに実質的に垂直な2つの磁界を用いて、磁気偏向システム1330は、2つの磁界の磁界強度を修正することによって、電子ビーム1215の極角だけでなく、その方位角も設定することができる。これにより、電子ビーム1215は、フォトリソグラフィマスク700のパターン要素120の異なる側面に入射角φ1で到達することができる。例として、磁気偏向システム1330は、コイル電流を変更することによって磁界強度を設定することができ、したがって、試料1225またはフォトリソグラフィマスク700の分析中に現在検査されている欠陥に対する入射角φ1を動的に調整することができる。
【0181】
図13では、磁気偏向システム1330は、SEM1210のカラム1220とは別個の、または独立したユニット1350として装置1200に設置されている。しかしながら、磁気偏向システム1330は、カラム1220の出力部においてSEM1210に統合することもできる(図13には図示せず)。
【0182】
図14図1400は、偏向システム1203、1350の第2の例示的な実施形態を示す。図14に再現された例では、偏向システム1203、1350は、電気偏向システム1430を含む。図14では、電気偏向システム1430は、SEM1210の電子-光学対物レンズ1450の上流でSEMのカラム1420内に設置された2つの追加の偏向板対1410および1420によって実現されている。第1の偏向板対1410は、電子ビーム1215をSEM1210の軸1460または電子-光学軸1460から偏向させる。第2の偏向板対1420は、偏向された電子ビーム1415が電子-光学対物レンズ1450の中心を実質的に通過するように設計され、配置されている。このビーム誘導により、偏向された電子ビーム1415が電子-光学対物レンズ1450のために著しい結像収差を受けることが防止される。
【0183】
図14から推測できることは、電気偏向システム1430によって偏向された電子ビーム1415が、偏向されていない電子ビームの入射角に対して著しく減少した角度φ2で試料1225に入射することである。さらに、偏向された電子ビーム1415は、偏向されていない電子ビームの入射点とは異なる試料1225の表面115上の箇所1422に衝突する。試料1225の表面115への入射角φ2は、電気偏向システム1430の偏向板対1410および1420に印加される電圧を変えることによって設定することができる。さらに、偏向板対1410および1420に印加される電圧を変更することによって、試料1225の走査または検査中に入射角φ2を調整可能に変更することが可能である。設定ユニット1290は、電気偏向システム1430を設定し制御することができる。評価ユニット1285は、欠陥について確認された測定データに基づいて電気偏向システム1430の設定を確認することができる。
【0184】
図14に示す例では、電気偏向システム1430は、電子ビーム1215を電子-光学軸1460に対して一方向に偏向させるように設計されている。当然ながら、電気偏向システム1430は、偏向システム1430を通過する電子ビーム1215をSEM1210の電子-光学軸1460に対して2つの異なる方向に偏向させることができるように設計することもできる。
【0185】
さらに、磁気偏向システム1330および電気偏向システム1430を1つの偏向システム1203、1350に組み合わせることができる。偏向システム1330および1430は、電子ビーム910の形態の質量を有する粒子を偏向させるためにだけ使用することができるわけではない。むしろ、これらの偏向システム1340および1440は、イオンビームを偏向させるために使用することもできる。
【0186】
図15は、試料1525、例えばフォトリソグラフィマスク700を局所的に処理する際に、上述した難しさのうちの少なくとも1つの発生を防止することができる装置1500の一部の重要な構成要素の概略断面を示す。装置1500は、例えば、フォトマスク700の欠陥750を修正するために使用することができ、パターン要素120の側壁角170、670を設定することが可能である。図15の例示的な装置1500は、走査型電子顕微鏡(SEM)1510の形態で再度、改良された走査型粒子顕微鏡1210を含む。不必要な長さを回避するために、図12の装置1200と同じかまたは非常に類似した装置1500の部分は、再び説明されないか、または非常に簡潔にしか説明されない。代わりに、図12の議論が参照される。
【0187】
試料1525は、試料ステージ(ステージ)1530上に配置されている。SEM1510のカラム1520の結像素子は、電子ビーム1515を集束させ、試料1525上で電子ビームを走査することができる。SEM1510の電子ビーム1515は、粒子ビーム誘起堆積プロセス(EBID、electron beam induced deposition)および/または粒子ビーム誘起エッチングプロセス(EBIE、electron beam induced etching)を誘発するために使用することができる。さらに、SEM1510の電子ビーム1515は、試料1525または試料1525の欠陥、例えばフォトリソグラフィマスク700上の過剰材料750の欠陥を分析するために使用することもできる。
【0188】
電子ビーム1515によって試料1525の相互作用領域1010、1050、1110で生成された後方散乱電子および二次電子は、検出器1517によって記録される。電子カラム1520内に配置された検出器1517は、「レンズ内検出器」と呼ばれる。検出器1517は、様々な実施形態において、カラム1520内に設置することができる。検出器1517は、電子ビーム1515によって測定点1522で生成された二次電子および/または試料1525から後方散乱された電子を電気測定信号に変換し、この電気測定信号を装置1500のコンピュータシステム1580の評価ユニット1585に送信する。検出器1517は、エネルギーおよび/または立体角の観点から電子を弁別するために、フィルタまたはフィルタシステムを含むことができる(図15には再現されていない)。検出器1517は、装置1500の設定ユニット1590によって制御される。
【0189】
装置1500の第2の検出器1519は、特にX線領域の電磁放射線を検出するように設計されている。したがって、検出器1519により、試料1525を処理するプロセス中に生成された放射線の分析が容易になる。検出器1519は、典型的には、設定ユニット1590によって同様に制御される。
【0190】
既に上述したように、電子ビーム1515は、試料1525の分析に加えて、電子ビーム誘起堆積プロセスおよびEBIEプロセスを誘発するために使用することもできる。さらに、装置1500のSEM1510の電子ビーム1515は、EBIDプロセスを実行するために使用することもできる。図15の例示的な装置1500は、これらのプロセスを実行する目的で、様々な前駆体ガスを貯蔵するための3つの異なる供給容器1540、1550、および1560を有する。
【0191】
第1の供給容器1540は、前駆体ガス、例えば金属カルボニル、例えばクロムヘキサカルボニル(Cr(CO)6)、または例えばTEOSなどの典型元素金属アルコキシドを貯蔵する。第1の供給容器1540に貯蔵された前駆体ガスを用いて、フォトリソグラフィマスク700から欠落した材料を、例えば局所化学堆積反応の範囲内でフォトリソグラフィマスク上に堆積させることができる。マスク700の欠落材料は、欠落した吸収体材料、例えばクロム、欠落した基板材料110、例えば石英、OMOGマスクの欠落材料、例えばモリブデンシリサイド、あるいは反射型フォトマスクの多層構造の欠落材料、例えばモリブデンおよび/またはシリコンを含むことができる。
【0192】
図10の文脈で上述したように、SEM1510の電子ビーム1515は、第1の供給容器1540に貯蔵された前駆体ガスを、試料1525上に材料を堆積させるべき箇所で分解するためのエネルギー供給源として機能する。これは、電子ビーム1515と前駆体ガスの複合的な供給により、欠落材料、例えばフォトマスク700から欠落した材料の局所的な堆積のためにEBIDプロセスが実行されることとなることを意味する。装置1500の改良されたSEM1510は、第1の供給容器1540と組み合わせて堆積装置を形成する。
【0193】
電子ビーム1515は、ナノメートル範囲~サブナノメートル範囲に及ぶスポット径に集束させることができる。結果として、EBIDプロセスは、1桁台前半のナノメートル範囲の空間分解能で、欠落材料の局所的な堆積を可能にする。しかしながら、電子ビーム1515の小さな焦点直径は、図9の文脈で論じたように、大きなアパーチャ角βと相関する。
【0194】
図15に示す装置1500において、第2の供給容器1550は、局所電子ビーム誘起エッチング(EBIE)プロセスを実行することを可能にするエッチングガスを貯蔵する。電子ビーム誘起エッチングプロセスを用いて、試料1525から過剰材料、例えば、フォトリソグラフィマスク700の基板110の表面115から過剰材料750または過剰材料の欠陥750を除去することができる。例として、エッチングガスは、二フッ化キセノン(XeF2)、ハロゲン、または塩化ニトロシル(NOCl)を含むことができる。その結果、改良されたSEM1510は、第2の供給容器1550と組み合わせて局所エッチング装置を形成する。
【0195】
第3の供給容器1560には、添加ガスまたは追加ガスを貯蔵することができ、必要に応じて、前記添加ガスを、第2の供給容器1550に利用可能に保持されたエッチングガスまたは第1の供給容器1540に貯蔵された前駆体ガスに添加することができる。あるいは、第3の供給容器1560は、第2の前駆体ガスまたは第2のエッチングガスを貯蔵することができる。
【0196】
図15に示す走査型電子顕微鏡1510では、供給容器1540、1550、および1560のそれぞれは、単位時間当たりに供給される対応するガスの量、すなわち試料1525への電子ビーム1515の入射箇所1522におけるガス体積流量を監視または制御するために、独自の制御弁1542、1552、および1562を有する。制御弁1542、1552および1562は、設定ユニット1590によって制御され、監視される。この設定ユニットを用いて、EBIDおよび/またはEBIEプロセスを行うための、処理位置1522に供給されるガスの分圧条件を広範囲に設定することが可能である。
【0197】
さらに、図15の例示的なSEM1510では、各供給容器1540、1550、および1560は、試料1525への電子ビーム1515の入射点1522の近傍のノズル1547、1557、および1567で終端する独自のガス供給ラインシステム1545、1555、および1565を有する。
【0198】
供給容器1540、1550および1560は、対応する供給容器1540、1550および1560の冷却および加熱の両方を可能にする独自の温度設定要素および/または制御要素を有することができる。これにより、前駆体ガスおよび/またはエッチングガス640を、それぞれ最適な温度で貯蔵し、特に供給することが可能になる(図15には図示せず)。設定ユニット1590は、供給容器1540、1550、1560の温度設定要素および温度制御要素を制御することができる。EBIDおよびEBIE処理プロセスの間、供給容器1540、1550、および1560の温度設定要素は、適切な温度を選択することによって、供給容器に貯蔵された前駆体ガスの蒸気圧を設定するためにさらに使用することができる。
【0199】
装置1500は、2つ以上の前駆体ガスを貯蔵するために、2つ以上の供給容器1540を備えてもよい。さらに、装置1500は、2つ以上のエッチングガス640(図15には図示せず)を貯蔵するために、2つ以上の供給容器1550を備えてもよい。
【0200】
図15に示す走査型電子顕微鏡1510は、真空チャンバ1570内で動作する。通常、EBIDプロセスおよびEBIEプロセスを実施するには、真空チャンバ1570内を周囲圧力に対して負圧にする必要がある。この目的のために、図15のSEM1510は、真空チャンバ1570内で必要な負圧を生成および維持するためのポンプシステム1572を備える。制御弁1542、1552および1562を閉じた状態で、真空チャンバ1570内に<10-4Paの残留ガス圧が達成される。ポンプシステム1572は、SEM1510の電子ビーム1515を供給するための真空チャンバ1570の上側部分と、下側部分1575または反応チャンバ1575とのための別個のポンプシステムを備えることができる(図15には図示せず)。
【0201】
装置1500は、コンピュータシステム1580を含む。コンピュータシステム1580は、試料1525上で電子ビーム1515を走査する走査ユニット1582を備える。さらに、コンピュータシステム1580は、装置1500の改良された走査型粒子顕微鏡1510の様々なパラメータを設定および制御するための設定ユニット1590を備える。また、設定ユニット1590は、試料ステージ1530の回転を制御することができる。特に、調整ユニット1590は、電子ビーム1515の1つもしくは複数のパラメータおよび/または1つもしくは複数のプロセスパラメータを、処理プロセス中に、例えば欠陥750の修復中におよび/または側壁角170、670の設定中に変更することができる。
【0202】
さらに、コンピュータシステム1580は、検出器1517および1519からの測定信号を分析し、そこから画像を生成する評価ユニット1585を備え、前記画像は、コンピュータシステム1580のディスプレイ1595上に表示される。特に、評価ユニット1585は、検出器1517の測定データから、試料1525、例えばフォトリソグラフィマスク700の欠落材料の欠陥および/または過剰材料の欠陥750の位置ならびに3D輪郭を決定するように設計されている。評価ユニット1585は、装置1500のインターフェース1587を介して、このタスクを実行するための測定データを受け取ることができる。これらのデータに基づいて、評価ユニット1585は、修復形状のパラメータを確認することができ、これらのパラメータを用いて、識別された欠陥750を修復することができる。
【0203】
しかしながら、装置1500が、電子ビーム1515および検出器1517、1519を用いて測定データ自体を確認することも可能である。代替の実施形態では、評価ユニット1585は、欠陥750を検査するための装置1200から、処理すべき欠陥750の位置および3D輪郭を受け取る。しかしながら、装置1500の評価ユニット1585が、装置1200から、それらのインターフェース1287および1587を介して修復形状のパラメータを取得することも可能である。
【0204】
さらに、評価ユニット1585は、分析されたマスク700の欠陥750に対応する修復形状を決定することを可能にする1つまたは複数のアルゴリズムを含むことができる。さらに、コンピュータシステム1580の評価ユニット1585は、1つまたは複数のアルゴリズムを含むことができる。アルゴリズムは、粒子ビーム1515の電子の運動エネルギー、エッチングもしくは堆積させる材料組成、および/または欠陥750の3D輪郭から、試料1525、例えばフォトマスク700のパターン要素120の欠陥750への電子ビーム1515の入射角の変更を決定することができる。
【0205】
さらに、評価ユニット1585のアルゴリズムは、偏向システム1330、1430、1503のパラメータを確認することができる。この目的のために、アルゴリズムは、電子ビーム1515によって開始されるEBIEまたはEBIDプロセスが、パターン要素120の側壁160のエッジ勾配670を、指定された範囲内に有するように、試料1525への電子ビーム1515の入射角φの変更を確認する。電子ビーム1515の偏向システムの例を、図13および図14に基づいて説明する。評価ユニット1585のアルゴリズムは、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せを用いて実装することができる。
【0206】
評価ユニット1585は、検出器1519の測定データから、処理すべき箇所に対する一時的な局所的に制限された保護層の領域および位置決めを確認するようにさらに設計することができる。一時的な局所的に制限された保護層を少なくとも部分的に局所的な処理箇所の周囲に施すことにより、実行されている局所処理プロセスに関与しない試料1525の領域、例えばマスク700の基板110の部分が損なわれたり、または損傷を受けたりするのを大幅に防止することができる。コンピュータシステム1580の設定ユニット1590は、例えばEBIDプロセスによる一時的な局所的に制限された保護層の堆積と、例えばEBIEプロセスを実行することによるその除去との両方を制御することができる。代替の実施形態では、一時的な局所的に制限された保護層は、試料1525の洗浄プロセス、例えば湿式化学洗浄プロセス中に試料1525から除去することができる。
【0207】
コンピュータシステム1580および/または評価ユニット1585は、メモリ(図15には図示せず)、好ましくは不揮発性メモリを含むことができ、メモリは、様々なマスクタイプに対する修復形状の1つまたは複数のモデルを記憶する。評価ユニット1585は、修復モデルに基づいて、検出器1517の測定データからフォトリソグラフィマスク700の欠陥750に対する修復形状を計算するように設計することができる。しかしながら、評価ユニット1585がインターフェース1287および1587を介して装置1200から測定データを受け取り、これに基づいて修復形状のパラメータを決定することも可能である。
【0208】
図12の文脈で既に上述したように、図15に再現された評価ユニット1585は、コンピュータシステム1580に統合することができる。しかしながら、評価ユニット1585および/または設定ユニット1590を装置1500の内部または外部の独立したユニットとして具現化することも可能である。特に、評価ユニット1585および/または設定ユニット1590は、それらのタスクの一部を専用のハードウェア実装によって実行するように設計することができる。
【0209】
最後に、コンピュータシステム1580は、装置1500に統合することができ、または独立した装置(図15には再現されていない)として具現化することができる。コンピュータシステム1580は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの組合せで構成されてもよい。
【0210】
図16は、インターフェース1287および1587ならびにリンク1650を介してデータを交換することができる装置1200と1500との組合せ1600を示す。したがって、フォトリソグラフィマスク700の欠陥750を検査するための装置1200は、欠陥750からの測定データを、側壁角170、670を設定するための装置1500に転送することができる。しかしながら、装置1200は、欠陥750の確認された3D輪郭を装置1500に送信することもできる。さらに、装置1200が、識別された欠陥750の修復形状のパラメータを、リンク1650を介して装置1500に転送することが可能である。さらに、装置1200を装置1500に一部または全部統合することが可能である。
【0211】
図17図1700は、装置1200を用いたEUVマスク200のマスク細部のエッジ1760の検査を概略的に示す。図17の矢印1710でのみ明らかにされている第1のステップでは、電子ビーム910は、基板110の表面115、多層構造210の表面215、およびエッジ1760を走査する。本プロセスでは、電子ビーム910は、基板110および多層構造210の表面115、215に垂直に衝突する。
【0212】
第2のステップにおいて、装置1200の設定ユニット1290は、電気偏向システム1430を作動させ、エッジ1760を正確に走査するための、装置1200の評価ユニット1285によって第1の走査の測定データから確認された電圧を偏向板対1410、1420に印加する。電気偏向システム1430は、電子ビーム910をビーム方向1720から偏向させ、偏向された電子ビーム1730は、90°よりも著しく小さな入射角φ2でEUVマスク200のエッジ1760に衝突する。エッジ1760および曲率半径1755、1765は、偏向された電子ビーム1730で新たに走査される。エッジ1760を走査している間に電子ビーム1730によって生成された二次電子は、参照符号1750によって図17に再現されている。二次電子1750は、評価ユニット1285によってエッジ1760およびその周囲の画像を生成するために使用される。
【0213】
装置1200の評価ユニット1285は、(偏向されていない電子ビーム910による)第1の走査および(偏向された電子ビーム1730による)第2の走査の測定データからEUVマスク200のマスク細部の現実的な画像を生成する。この画像から、または2つの走査の測定データから、エッジ1760のエッジ勾配1770および曲率半径1755、1765の両方を高い精度で確認することが可能である。測定データの評価中に、選択された偏向角φ2がエッジ1760を走査するのに最適ではないことが明らかになった場合、異なる(より大きいまたはより小さい)偏向角φ2を選択することが可能であり、エッジ1760を曲率半径とともに新たに走査することができる。さらに、エッジ1760を走査している間に、評価ユニット1285が偏向角φ2の変更を確認し、調整ユニット1290が電子ビーム1730の偏向角を変更することが可能である。
【0214】
図17の文脈と同様に、エッジ1760の代わりに欠陥750が走査される場合、装置1200の評価ユニット1285は、欠陥750の2つ以上の走査の測定データ記録から欠陥750の3D輪郭を確認することができ、少なくとも1つの走査は、偏向された質量を有する粒子ビーム1730を用いて実施される。
【0215】
代替の例示的な実施形態では、欠陥750は、側壁角170、670を設定するための装置1500を用いて検査することができる。
【0216】
図18の流れ図1800は、少なくとも1つの質量を有する粒子ビーム910を用いてフォトリソグラフィマスク700の少なくとも1つの欠陥750を検査するための方法のステップを提示する。本方法は、ステップ1810で開始する。次のステップ1820では、少なくとも1つの質量を有する粒子ビーム910が提供される。このような質量を有する粒子ビーム910は、好ましくは電子ビーム910を含む。次いで、ステップ1830において、少なくとも1つの欠陥750への質量を有する粒子ビーム910の平均入射角φ1、φ2が、少なくとも1つの欠陥750が検査されている間に変更される。平均入射角φ1、φ2は、偏向システム1203、1330、1430、1503を用いて変更することができる。本方法は、ステップ1840で終了する。
【0217】
図19図1900は、装置1500を用いてEBIEプロセスを実行することによって、試料1910にくぼみをエッチングすることを概略的に示し、電子ビーム1930は、角度φ2<90°で試料1910に入射する。例として、くぼみは、図面の平面に垂直な方向に試料1910にエッチングされた線であってもよい。例として、試料1910は、EUVマスク200の基板110、多層構造210、および/またはパターン要素220とすることができる。図19の部分画像Aは、偏向された電子ビーム1930を用いたEBIEプロセスの実施態様を再現している。図19では、簡略化のために、エッチングガス640は、削除されている。粒子ビーム源1510によって生成された電子ビーム910は、光軸に沿ってSEM1510のカラム1520を通過する。電気偏向システム1430は、電子ビーム1930をカラム1520の光軸から偏向させて、前記電子ビームが角度φ2<90°で試料1910の表面1915に衝突するようにする。EBIEプロセスによって生成されるくぼみの平均的な方向は、入射電子ビーム1930の方向と実質的に平行である。
【0218】
図19の部分画像Bは、生成されたくぼみを再現している。EBIEプロセスによって生成される2つの側壁角1970および1990は、互いに異なる。しかしながら、両方とも試料1910への電子ビーム1930の入射角φ2に依存する。2つの曲率半径1925および1945は、同様に異なる数値を有する。生成されたくぼみは、その下端が丸み1935を帯びている。側壁角1970および/または曲率半径1925を設定するために、電子ビーム1930の入射角φ2をくぼみがエッチングされている間に変更することができる。
【0219】
図19の部分画像Cは、SEM1510のカラム1520の光軸を中心にして試料を180°回転させた後に、または電子ビーム910を部分画像Aとは逆方向に偏向させ、これによりくぼみを広げて対称なくぼみを形成することによって得られた部分画像Bのくぼみを示す。図19の部分画像A~Cから明らかなように、試料表面1915への入射角φ2が90°未満の電子ビーム1930を使用するEBIEプロセスを用いて、試料1910に構造をエッチングすることが可能であり、前記構造の側壁角1970は、試料表面1915への入射角φ2によって調整可能である。さらに、入射角φ2は、エッチングされた構造の、試料表面1915への移行部の曲率半径1925に影響を与える。
【0220】
図19の部分画像Dは、くぼみの左側の試料1910の部分がEBIEプロセスを用いて所与の深さまでエッチング除去された後の、エッジ勾配1970を有する部分画像Bのくぼみの右側エッジを再現している。このエッチングプロセスのために、エネルギーを供給する電子ビームを偏向させずに(すなわち、電子ビーム910として)または偏向させて(すなわち、電子ビーム1930として)試料1910に入射させることができる。エッジ勾配1970が指定された間隔内にない場合、および/または曲率半径1925、1965が所望の数値を有していない場合、エッチングされたエッジ1960は、電子ビーム1930が異なる入射角φ2を有するEBIEプロセスを用いて新たに処理することができる。自明であるが、くぼみをエッチングしている間に電子ビーム1930の入射角φ2を変更することも当然可能である。
【0221】
図20図2000は、EUVマスク200の多層構造210上に配置されたパターン要素220の開口部2020のエッチングを明らかにしている。これまでとは異なり、開口部2020を生成するために、EUVマスク200のパターン要素220に垂直に入射するイオンビーム2010が使用されている。イオンビーム2010によるエッチングは、電子ビーム誘起エッチングと比較して、少なくとも2つの重要な利点を有する。第1に、イオンビームは、スパッタリングプロセスを行うことによって開口部2020を生成することができる。スパッタリング手順の間、パターン要素220の格子の原子は、イオンビーム2010のイオンによる運動量の伝達によって、それらの結合から実質的に引き裂かれる。したがって、イオンビーム2010を用いて行われるエッチングプロセスは、EBIEプロセスよりも著しく速い。第2に、イオンビーム2010は、多くの場合、エッチングガス640を供給することなく開口部2020をエッチングすることができる。
【0222】
しかしながら、これらの利点に反し、同じくらい重大な欠点がある。第1に、パターン要素220の原子に高質量イオンから運動量が伝達される結果、イオンと格子原子との相互作用の領域でパターン要素220の格子が著しい損傷を受ける。第2に、イオンのかなりの成分が、パターン要素220の損傷した格子に、またはその下にある多層構造210に取り込まれ、その結果、特性、例えば光学特性が、相互作用領域において著しく変化する。図20において、相互作用領域または損傷領域は、灰色の散乱コーン2030によって明らかにされている。パターン要素220の開口部2020の生成は、図20に示すエッチングプロセスにおいて多層構造220の上部の-極めて重要な(decisive)-層に損傷をもたらす。
【0223】
図21図2100は、イオンビーム誘起エッチングプロセスの欠点を、イオンビームの非垂直入射によってどのように実質的に回避することができるかを示す。FIB(集束イオンビーム)装置の光軸に沿って進むイオンビーム2010は、偏向システム1203、1330、1430、1503を用いて偏向され、偏向イオンビーム2120として、パターン要素220の表面225に角度φ3<90°で衝突する。スパッタ速度、したがってプロセス速度は、イオンビーム2120の平坦な入射角φ3<<90°の場合にその最大値に達する。さらに、イオンビーム2120によってスパッタされた原子2150の大部分は、パターン要素220を離れる。これは、偏向イオンビーム2120を用いて行われるエッチングプロセスのさらなる利点である。同時に、偏向イオンビーム2120のエネルギーおよびイオンは、パターン要素220にほとんど取り込まれない。しかしながら、偏向イオンビーム2120を用いて行われるエッチングまたはスパッタリングプロセスの結果として、開口部2030の下の多層構造210にほとんど損傷が生じないことがさらに重要である。このことは、多層構造210の光学特性が、イオンビーム誘起エッチングプロセスによって実質的に損なわれないことを意味する。
【0224】
図22および図23は、試料1225、1525、例えばフォトマスク150、700の局所的な検査および/または処理中に生じる図9および図10で説明した難しさを、パターン要素120の側壁160への質量を有する粒子ビーム1215、1515、1930の平均入射角を小さくすることによって、どのように大幅に取り除くことができるかを示す。図22の上側部分画像2205は、角度φ2だけ偏向された電子ビーム1215、1515、1930のフォトリソグラフィマスク150への入射を明らかにしている。電子ビーム1215、1515、1930を偏向させるための例示的な装置は、図13および図14の文脈で説明されている。
【0225】
図22の下側部分画像2255は、偏向された電子ビーム1215、1515、1930のその焦点1940における強度分布を示す。図22で明らかにされているように、フォトリソグラフィマスク150、700の側壁160への電子ビーム1215、1515、1930の平均入射角を小さくすることにより、それによって生じる大きなアパーチャ角βがフォトマスク150、700のパターン要素120によって著しく遮られることなく、電子ビーム1215、1515、1930は、焦点において小さなスポット径1980に集束することができる。
【0226】
図23は、フォトリソグラフィマスク150、700の側壁160を検査する際のおよび/または処理する際の、例えばエッチングする際の電子ビーム1215、1515、1930の相互作用領域2310、2350を示し、側壁160への電子ビーム1215、1515、1930の平均入射角φ2は、部分画像2205に指定されているように90°未満である。偏向されていない電子ビームを用いて側壁160を検査および/または処理する問題は、図10の文脈で既に説明した。図10とは異なり、入射角φ2<90°で側壁160を検査および/または処理する場合、相互作用領域2350は、もはやほとんど変形されない。例として、これは、相互作用領域2310および2350がフォトマスク150の基板110を損傷することなく、側壁160を電子ビーム1215、1515、1930によって走査することができることを意味する。
【0227】
さらに、側壁160は、図23に示す例示的なプロセスにおけるエッジ勾配170を著しく変更することなく、偏向電子ビーム1215、1515、1930によって処理することができ、例えば、EBIEプロセスを用いてエッチングすることができる。しかしながら、これは、具体的に選択された入射角φ2の結果である。さらに、入射角φ2もプロセスパラメータも、エッチングプロセス中に変更されなかった。図19の文脈で説明したように、入射角φ2および/またはプロセスパラメータを変更することによって、エッジ勾配170を設定することが可能である。偏向された電子ビーム1215、1515、1930のさらなる利点は、基板110の表面115が、局所エッチングプロセスが行われている間に著しく攻撃されないことである。
【0228】
図24図2400は、フォトリソグラフィマスク150の基板110上にパターン要素120の側壁160に沿って材料2420を堆積させることによる欠落材料の欠陥の修正を提示する。図11で説明した堆積プロセスの実施態様とは対照的に、フォトマスク150の表面115、125、160への質量を有する粒子ビーム1930の平均入射角φ2<90°を、図22および図23と同様に、プロセスを開始する前に小さくした。図24から推測できることは、フォトマスク150の設計によって予め決められた90°の角度からわずかに逸脱した側壁2460またはエッジ勾配2470で堆積物2420が堆積することである。生成された側壁2460のエッジ勾配2470は、入射角φ2を選択することによって、特に堆積プロセス中に変化させることによって設定することができる。必要に応じて、1つまたは複数のプロセスパラメータを、堆積プロセス中に追加的に変更することができる。さらに、生成された側壁2460の曲率半径2475は、フォトマスク150の欠陥のないパターン要素120の曲率半径に比べて著しく大きくはない。さらに、図24の範囲内で説明した堆積プロセスは、フォトリソグラフィマスク150の基板110の表面115上に材料2420を実質的に堆積させない。
【0229】
図25図2500は、従来技術の方法による、フォトマスクのパターン要素2510に隣接する欠陥2550の修正を示す。例として、パターン要素2510は、マスク200の基板110上に、またはEUVマスク150の多層構造220上に配置することができる。欠陥2550は、EBIEプロセスを用いて修復される。欠陥2550を修正するために使用される修復形状2520の平面図が、欠陥2550の下に配置されている。灰色の背景を有する領域2530、2535、および2540は、欠陥のエッチングプロセスの過程で、修復形状2520によって欠陥2550上で露光された領域を表す。これは、修復形状2520を欠陥上で走査することにより、欠陥2550の灰色の背景を有する領域2530、2535、および2540が順次露光されることを意味する。
【0230】
修復形状2520によって指定されるように欠陥2550を露光または走査する際に、エッチングガス640、例えば二フッ化キセノン(XeF2)または一般にハロゲン含有ガスが欠陥2550の上方に供給される(図25には図示せず)。プロセスパラメータ、例えば、繰り返し時間、すなわち、電子ビーム910が修復形状内の同じ点に戻るまでの時間間隔、滞留時間、すなわち、電子ビーム910が走査点に滞留する期間、個々の走査点の間隔、および電子ビーム910の電子の加速電圧は、EBIEプロセスを行う前に設定される。領域2530は、修復形状2520の欠陥2550上の第1の走査を指定する。領域2535は、欠陥2550を除去するためのエッチング時間の約半分の後の、欠陥2550上の修復形状の走査を再現する。例として、修復形状2520を欠陥2550上で数千回実施した後に、欠陥2550の半分(特にその高さの半分)に到達することができる。領域2540は、エッチングプロセスの終了時における修復形状2520の実施態様を記述する。図25の例では、時間は、上から下に進む。露光された領域2530、2535および2540から明らかなように、修復形状2520によって露光された領域は、エッチングプロセス中に変化しない。
【0231】
曲線2560は、エッチング処理によって新たに形成されたパターン要素2510の側壁のx方向およびz方向のエッチングプロファイルを規定する。エッジ2580で生じるエッチングプロファイルは、修復形状2520およびプロセスパラメータによって規定されるエッジ勾配2570または側壁角2570を生成する。エッジ勾配2570は、設計によって指定された90°の角度よりも著しく小さい角度を有する。
【0232】
図26図2600は、欠陥2550がパターン要素2510に隣接する図25の初期状態を再度再現している。しかしながら、図25とは異なり、電子ビーム910を用いて修復形状2620によって露光される欠陥2550の領域は、エッチングプロセスの経過とともに、すなわち欠陥の露光回数2630、2635、および2640が増加するとともに増加する。これは、図26の矢印2605および2615によって明らかにされている。2630から2640への露光領域のこの動的変化は、パターン要素2510の成形側壁のエッジ2680におけるエッチングプロファイル2660をもたらす。修復形状2620によって露光される領域の動的増加の結果として、エッチングプロセス中に形成されるパターン要素2510の側壁のエッジ勾配2670が増加する。これは、修復形状2620を動的に変化させることによって、新たに生成される側壁の側壁角2570を設定することができることを意味する。
【0233】
修復形状2620を変化させる代わりに、またはそれに加えて、エッチングプロセスが実行されている間に、EBIEプロセスの1つまたは複数のプロセスパラメータを変更することができる(図26には図示せず)。
【0234】
図27図2700は、上側部分画像Aにおいてフォトマスクの基板2710を示し、基板2710には、EBIEプロセスによってくぼみ2720が再びエッチングされた。くぼみ2720は、その後、金属2730を堆積させることによって充填された。電子ビーム910は、くぼみ2720をエッチングする際に非対称なビームプロファイルを有していた。図27において、2つの白い、その後に導入された線は、くぼみ2720のエッジ勾配2770、2780を指定する。図27の部分画像Aから推測できるように、電子ビーム910の非対称ビームプロファイルは、異なる数値を有する左側壁角2770および右側壁角2780に変換される。
【0235】
図27の下側部分画像Bは、ビームプロファイルの非対称性を180°変えたくぼみ2750のエッチングを示す。図27は、質量を有する粒子ビーム910の1つまたは複数のパラメータを変化させることにより、調整可能な側壁角2770、2780を有するくぼみを生成することが可能になることを示す。
【0236】
最後に、図28の流れ図2800は、フォトリソグラフィマスク150、200、700のパターン要素120、220、230、250、260、280、290の少なくとも1つの側壁角170、670、1970、2470、2770、2780を設定するための方法のステップを提示する。本方法は、ステップ2810で開始する。次のステップ2820では、少なくとも1つの前駆体ガスが供給される。1つまたは複数の前駆体ガスを、装置1500の供給容器1540、1550、1560のうちの1つに貯蔵することができ、ガス供給ラインシステム1545、1555、1565によって、質量を有する粒子ビーム910、1215、1515、1930が試料1225、1525に入射する位置に案内することができる。
【0237】
その後すぐに、ステップ2830において、少なくとも1つの前駆体ガスの局所化学反応を誘発する少なくとも1つの質量を有する粒子ビーム910、1215、1515、1930、2120が提供される。ステップ2840では、粒子ビームの少なくとも1つのパラメータおよび/またはプロセスパラメータが、少なくとも1つのパターン要素の少なくとも1つの側壁角170、670、1970、2470、2770、2780を設定する目的で、局所化学反応中に変更される。本方法は、ステップ2850で終了する。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28