(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
(21)【出願番号】P 2023517222
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016775
(87)【国際公開番号】W WO2022230613
(87)【国際公開日】2022-11-03
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2021076528
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100849
【氏名又は名称】株式会社アイセロ
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勝裕
(72)【発明者】
【氏名】平尾 剛
(72)【発明者】
【氏名】稲田 博一
(72)【発明者】
【氏名】沓名 芳道
(72)【発明者】
【氏名】山本 高司
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-023310(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0013837(KR,A)
【文献】特開2002-059055(JP,A)
【文献】特開2004-172201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
677
B05C 5/00
G03F 7/16
7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための処理液を貯留する貯留空間が内部に形成された貯留空間形成部と、
前記貯留空間形成部に設けられる前記処理液の吐出口と、
前記吐出口から前記処理液が吐出されるように前記貯留空間を加圧する進入部を前記貯留空間形成部の内部に進入させる進入路を形成するために、当該進入部の押圧で裂けるように当該貯留空間形成部に設けられる脆弱部と、
を備える容器。
【請求項2】
前記吐出口は下方に開口し、
前記貯留空間形成部に対して着脱自在であり、当該貯留空間形成部に装着した状態で前記吐出口を下方から塞ぐ下蓋が設けられる請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記貯留空間形成部は係合部を備え、
前記下蓋は、前記係合部に対して係合する被係合部を備える請求項2記載の容器。
【請求項4】
前記貯留空間形成部は、前記吐出口が形成された容器本体と、当該容器本体に対して着脱自在な上蓋と、を備え、
前記上蓋は、前記進入部を備えると共に前記貯留空間形成部を搬送する搬送部に密着することで、前記進入路が形成された前記貯留空間形成部の内部をシールするためのシール面を備える請求項1ないし3のいずれか一つに記載の容器。
【請求項5】
前記脆弱部は前記上蓋に設けられている請求項4記載の容器。
【請求項6】
前記上蓋の下方における前記容器本体の側面には、当該容器本体の外方へ向けて突出すると共に当該側面と一体成形され、前記搬送部に把持されるように当該容器本体の周方向に沿った凸部が設けられる請求項4または5記載の容器。
【請求項7】
前記脆弱部には局所的に凹部が設けられ、当該凹部の底部は、当該凹部の外側よりも厚さが小さい薄肉部をなす請求項1ないし6のいずれか一つに記載の容器。
【請求項8】
前記脆弱部について、破壊強度が5N~40Nであり且つ破壊変位が4mm以下である請求項1ないし7のいずれか一つに記載の容器。
【請求項9】
前記貯留空間形成部により囲まれる空間を前記脆弱部に臨む上方側空間と、前記貯留空間をなす下方側空間とに仕切る内蓋が設けられ、
前記内蓋には平面視で前記脆弱部と重ならない位置に、前記上方側空間と前記下方側空間とを連通させる貫通孔が設けられる請求項1ないし8のいずれか一つに記載の容器。
【請求項10】
前記内蓋の外周面は、前記貯留空間形成部における内周面に接する接触部を備える請求項9記載の容器。
【請求項11】
前記貯留空間形成部は、前記吐出口が形成された容器本体と、当該容器本体に対して着脱自在な上蓋と、を備え、
前記貯留空間形成部により囲まれる空間を前記脆弱部に臨む上方側空間と、前記貯留空間をなす下方側空間とに仕切る内蓋が設けられ、
前記内蓋は、前記上蓋の脆弱部を含む第1の面に向き合う第2の面を備え、
当該第2の面について、前記脆弱部に対向する領域がその周囲の領域よりも前記第1の面寄りに位置するように盛り上がる請求項
1ないし3のいずれか一つに記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は容器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、基板処理装置によって基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)に対して、様々な処理液が供給される。特許文献1には処理液としてレジスト(フォトレジスト液)を基板に供給してスピンコーティングにより、レジスト膜を形成する基板処理装置(塗布装置)について記載されている。この塗布装置においては、レジストを貯留している貯留タンクと、供給ノズルと、貯留タンクと供給ノズルとを接続すると共にベローズポンプが介設される供給配管と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、処理液を用いて基板を処理するにあたり、処理の手間及び処理に付随する作業の手間を軽減することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の容器は、基板を処理するための処理液を貯留する貯留空間が内部に形成された貯留空間形成部と、
前記貯留空間形成部に設けられる前記処理液の吐出口と、
前記吐出口から前記処理液が吐出されるように前記貯留空間を加圧する進入部を前記貯留空間形成部の内部に進入させる進入路を形成するために、当該進入部の押圧で裂けるように当該貯留空間形成部に設けられる脆弱部と、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、処理液を用いて基板を処理するにあたり、処理の手間及び処理に付随する作業の手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係る容器を備えるレジスト塗布装置の平面図である。
【
図3】前記レジスト塗布装置に設けられる容器及び搬送部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の容器の一実施形態を含むレジスト塗布装置1について、夫々平面図、概略側面図である
図1、
図2を参照して説明する。先ず、レジスト塗布装置1の構成の概要を述べると、レジスト塗布装置1は円形の基板であるウエハWに処理液としてレジストを供給し、スピンコートによってレジスト膜を形成する。このレジスト塗布装置1は、カップ11、容器2、搬送部6、容器配置部8及び基台19を備えている。容器配置部8には複数、例えば2つの容器2が配置されており、例えばこれらの容器2には異なる種類のレジストが貯留されている。この容器2を構成している容器ノズル20は、レジストを貯留するタンク且つノズルとして用いられる。
【0009】
搬送部6は選択した1つの容器2の容器ノズル20を装着して把持し、容器配置部8からカップ11内のウエハW上における処理位置へと搬送して、当該容器ノズル20からウエハWにレジストを吐出させる。搬送部6への装着前の容器ノズル20はその内部が密閉されるように構成されているが、装着される際に当該容器ノズル20の壁部を構成している脆弱部47が、搬送部6を構成する給排気管68によって押圧されて破断、変形する。それにより形成された進入路47Aを介して、給排気管68が容器ノズル20内に進入する。その給排気管68からの給気及び排気によって、容器ノズル20内の加圧及び減圧を行うことが可能となり、上記のレジストの吐出と、吐出の停止と、が切り替えられる。なお、使用済みの容器ノズル20は、搬送部6による装着が解除されて、容器配置部8に戻される。
【0010】
以下、より具体的にレジスト塗布装置1の構成を説明する。基台19の右側にカップ11が、左側に容器配置部8が夫々設けられる。カップ11内には、スピンチャック12が設けられている。スピンチャック12はウエハWの裏面側中央部を吸着して、当該ウエハWが水平な姿勢となるように保持する。スピンチャック12は回転機構13に接続されており、当該回転機構13によって、スピンチャック12と共にウエハWが鉛直軸周りに回転する。図示しない搬送機構によってウエハWはカップ11の後方の搬送領域から、当該カップ11上に搬送される。そして、カップ11内に設けられる図示しない昇降ピンにより、当該カップ11上の搬送機構とスピンチャック12との間でウエハWが受け渡される。
【0011】
容器配置部8については、後に詳しく述べる搬送部6によって容器ノズル20の装着、把持が可能なレイアウトで、容器2が配置されている。本例では、容器配置部8は左右方向に並んだ凹部81を2つ備えており、これらの凹部81に容器2が各々配置されている。さらに具体的に述べると、当該凹部81には容器2を構成する下蓋31が固定され、容器ノズル20を把持した搬送部6の昇降動作により、容器ノズル20への当該下蓋31の着脱が可能となっているが、この着脱については後に詳述する。
【0012】
以下、上記の容器2について
図3、
図4の斜視図及び
図5の縦断側面図を参照して説明する。容器2は概ね縦長の円筒形であり、容器本体21、下蓋31、上蓋41及び内蓋51により構成されている。上記の容器ノズル20は容器本体21、上蓋41及び内蓋51により構成されており、その外表面は容器本体21及び上蓋41により構成される。つまり内蓋51は、容器本体21及び上蓋41がなす空間内に設けられる。また、容器ノズル20は内部に貯留空間59を備える貯留空間形成部である。容器本体21に対して、下蓋31、上蓋41、内蓋51の各々が着脱自在であり、
図3では下蓋31が装着された状態を、
図4では下蓋31が外された状態を夫々示している。下蓋31は容器配置部8に固定され、既述したように搬送部6によって容器ノズル20が搬送されるにあたり、当該下蓋31が着脱される。
【0013】
容器2を構成する上記の容器本体21、下蓋31、上蓋41及び内蓋51については、平面視で中心軸を同一とする円形部材である。また容器本体21、下蓋31、上蓋41の各々については、例えば一体成形された樹脂により構成されている。具体的には熱可塑性樹脂により構成されており、好ましくはポリオレフィン、より好ましくはポリエチレンあるいはポリプロピレンにより構成されている。
【0014】
以下、容器2を構成する部材毎に説明する。なお、容器2については使用する際に各部材の中心軸が垂直(鉛直)な状態とされる。以降の説明では、そのように中心軸が垂直であるものとして説明する。先ず容器本体21について説明すると、容器本体21は胴部をなす円筒部22を備えており、当該円筒部22はレジストの貯留空間59を形成する。容器本体21における円筒部22よりも下方側の部位は、漏斗状に構成されている。具体的に説明すると、円筒部22の下側の周壁が下方へ向うにつれて容器本体21の中心軸へと向うように伸びることで傾斜壁23として形成されている。この傾斜壁23の下端部は若干、垂直下方に引き出されるように伸びて先端部24をなす。この先端部24に囲まれる領域が下方に向けて開口する吐出口25として構成され、当該吐出口25の中心は容器本体21の中心軸上に位置する。
【0015】
このように容器本体21の底部が傾斜壁23により構成されることで、貯留空間59のレジストを使い切る際には、傾斜壁23における内周面23Aを伝わって容器本体21内のレジストは吐出口25へ向けて流下するため、容器本体21への液残りが防止される。傾斜壁23がなす内周面23Aと水平面とのなす角度をθ1とする。角度θ1が小さすぎるとレジストが流下し難くなり、θ1が大き過ぎると容器本体21の底部の高さが大型化してしまう。それ故に角度θ1としては1°~60°とすることが好ましく、1°~45°とすることがより好ましい。また、吐出口25の孔径L1について、大きすぎるとレジストが漏れてしまい、小さすぎると貯留空間59の圧力により先端部24の内部にレジストを充填することが困難になることから、例えば0.5mm~2.0mmとすることが好ましい。また、
図5に吐出口25の長さをL0として示している。当該長さL0は、大き過ぎるとレジストが流下し難くなる。また長さL0が小さすぎるとレジストが流れやすくなるため、当該長さL0は例えば4mm以上とすることが好ましい。なお、吐出口25の孔径L1や長さL0は、容器2のサイズ、レジストの粘度等を考慮して、最適なサイズを設計することが好ましい。
【0016】
円筒部22の外周面の高さ中央部は、当該円筒部22の外側へ向けて膨らむことで、円環状の把手26を形成している。従って、この把手26は容器本体21の側面において容器本体21の外方に向けて突出すると共に、容器本体21の周方向に沿って形成された凸部である。なお上蓋41は、この把手26よりも上方に設けられる。上記したように容器2を構成する各部材は一体成形品であるため、把手26は円筒部22に一体的に形成されており、そのため円筒部22に対して脱着不可である。後述するように搬送部6は把手26を把持する。
【0017】
円筒部22の外周面において把手26よりも上方には、円筒部22の中心軸を螺旋軸とすると共に、当該外周面に沿った螺旋状の突起が形成されており、雄ネジ27をなす。また円筒部22の外周面における把手26よりも下方には、水平方向に突出する2つの突起28が形成されている。これらの突起28については、円筒部22の中心軸に対して当該円筒部22の外周面における180°異なる同じ高さの部位が互いに反対方向に突出することで形成されており、突出方向に見て各々円形である。
【0018】
続いて、下蓋31について説明する。下蓋31は、垂直に起立した円筒部32と、当該円筒部32の下部を塞ぐ底板33とにより構成されており、円筒部32は容器本体21の下端部を囲む。円筒部32の上端部の周方向の互いに離れた2つの位置が、下方に向けて切り欠かれ、溝35として形成されている。これらの溝35は、円筒部32の中心軸に対して180°異なる位置に形成されており、上記した円筒部22の突起28の差し込みを行えるように形成されている。溝35は、鍵穴状に形成されている。具体的に述べると、溝35の上部側は下方へ向うにつれて幅が若干狭まり、その下端の幅は突起28を突出方向に見た円の直径よりも僅かに小さい。そして、溝35の下部側は円形に形成されており、その大きさは突起28を突出方向に見た円の大きさと略同じである。従って、溝35が下方に向う途中で、その幅を狭める狭窄部が設けられていると見ることができる。
【0019】
容器本体21に対する下蓋31の装着に関して説明しておく。下蓋31、容器本体21が互いに離れた状態で、各々の中心軸を揃えると共に、軸方向に見て突起28の位置が溝35に重なる状態とする。そして下蓋31に対して容器本体21を相対的に軸方向に沿って近接移動させることで、各溝35に突起28を進入させる。その状態から容器本体21を下蓋31に向けて押圧することで、突起28は溝35の狭窄部を越えて当該溝35の奥へと移動し、突起28と溝35とが互いに嵌合(係合)する。従って、突起28、溝35は夫々係合部、被係合部として構成され、容器本体21と下蓋31との間に係合を形成して互いの相対位置を固定する。
【0020】
そのように係合が形成されて互いに固定された状態においては、容器本体21の先端部24が下蓋31の底板33に接して吐出口25については塞がれ、容器本体21内のレジストは吐出口25から漏洩しない。なお、上記したように容器本体21の下部側は傾斜壁23を備えることで尖頭形状となっているため、下蓋31についてはそのような吐出口25の閉塞を行う他に、装着されることで容器本体21の傾倒を防いで姿勢を保つ役割も有している。
【0021】
なお、容器本体21を下蓋31に対して相対的に離れるように軸方向に沿った力を加えることで、突起28は狭窄部を越えて溝35の入口へと移動し、上記の嵌合は解除され、下蓋31は容器本体21から取り外される。後述するように、下蓋31は容器配置部8に固定された状態とされ、その状態で容器本体21を含む容器ノズル20を保持する搬送部6が下蓋31に対して昇降する。それにより、このような嵌合及び嵌合の解除が行われる。
【0022】
下蓋31の構成について補足すると、下蓋31の円筒部32には1つの溝35の下方に貫通孔36が形成されており、下蓋31の装着時に容器本体21の傾斜壁23と下蓋31とに囲まれる空間に開口する。この貫通孔36は、容器本体21から下蓋31を取り外す際に、上記の傾斜壁23と下蓋31とに囲まれる空間が負圧になることを防止する役割を有する。そのように負圧となることが防止されることで、容器本体21の吐出口25から下蓋31内へレジストが漏れてしまうことが防止される。このように、この貫通孔36は、容器2の外側の雰囲気(外気)との通気によって、容器本体21と下蓋31とによって囲まれた空間の圧力変動を抑制するので、下蓋31の内側と外気とを連通する通気口とも言える。この貫通孔36の直径L2は、例えば0.5mm~2mm、より具体的には例えば1mmである。
【0023】
次に上蓋41について、平面図である
図6も参照して説明する。上蓋41は、垂直に起立した円筒部42と、当該円筒部42の上側を塞ぐように設けられる上壁43とを備える。円筒部42の内周面においては、当該円筒部42の中心軸を螺旋軸とすると共に、当該内周面に沿った螺旋状の溝部が形成されており、雌ネジ44をなす。雌ネジ44と容器本体21の雄ネジ27とを螺合させることで、上蓋41は容器本体21に装着、固定される。上壁43の上面には円形の凹部45が設けられる。そして凹部45の中心部には円形の凹部46が設けられている。なお凹部45、46の中心は、上蓋41の中心軸上に位置する。そして凹部46を構成する底部が既述した脆弱部47であり、水平な薄板状に構成されている。上記した給排気管68は垂直に伸長するように構成され、その下端がこの脆弱部47を突き刺すように垂直下方に押圧することで脆弱部47が破断する。
【0024】
脆弱部47の上面には例えば2本~6本の直線状の溝48が、平面視の当該脆弱部47の中心で交差するように設けられる。従って、多数の溝が脆弱部47の中心から放射状に伸びるように形成される。見方を変えれば複数の溝が脆弱部47の中心部にて互いに接続される構成となっている。そして溝48としては脆弱部47の上面に局所的に形成されており、即ち当該脆弱部47の上面全体には形成されていない。本例では4本の溝48が形成されており、脆弱部47の中心に対して45°ずつ互いに向きを変えて配置されると共に、当該脆弱部47の中心で交差している。従って、溝48は脆弱部47の上面を8等分して互いに同じ形状の扇状領域を8つ形成するように設けられている。
【0025】
脆弱部47において凹部である溝48が形成される部位は、当該部位の外側の部位よりも厚さが小さい薄肉部位として構成されている。給排気管68によって脆弱部47が押圧されることで溝48に沿って脆弱部47が裂けるように破断する。なお、上記のように複数の溝が脆弱部47の中心部にて接続される構成であることから、脆弱部47の中心部から裂け始め、その破断が周縁部に向かう。そして、そのような破断によって形成された8つの扇状の小片は、押圧によってその尖頭が下方へ垂れ下がるように変形する。それにより、上蓋41において脆弱部47が設けられていた位置が開口し、当該給排気管68の進入路47Aが形成されて、給排気管68の下端部は上蓋41を貫通することになる。
【0026】
以上に述べたように、進入部である給排気管68の押圧によって脆弱部47を破断させるにあたり、溝48が設けられて当該溝48に沿って脆弱部47が破断するが、そのように溝48に沿った破断となることで、当該脆弱部47が砕けて微細な破片が生じることが防止される。従って溝48は、容器ノズル20内のレジストに当該破片が混入してしまうことを防止することに寄与する。
【0027】
ところで上蓋41の凹部45の底面で凹部46の外側領域は、上記のように脆弱部47が破断、変形した際に、容器ノズル20内をシールするための平坦なシール面46Aとして構成されている。このシールについては、搬送部6について説明する際に詳しく述べる。また上壁43の下面側の周縁部には、平面視で凹部46を囲む円環突起49が形成されている。この円環突起49は、後に詳しく述べる内蓋51の側周部54の位置を規制する。
【0028】
作業員が上蓋41を容器本体21に対して容器2の軸周りに捻ることで、上蓋41と容器本体21との間に形成された螺合は解除可能である。従って既述したように、上蓋41は容器本体21に対して着脱可能である。なお、容器本体21に設けられる上記の突起28は、下蓋31の溝35から外側に突出する長さが設けられていてもよい。このときの突起28は、上蓋41と容器本体21との着脱を行うにあたり、作業員の手が容器本体21の外周面に対して滑ってしまうことを防止する役割も有する。つまり、容器本体21の側面を一方の手でつまむように持ち、他方の手で上蓋41の側面をつまんで当該上蓋41を捻るにあたり、突起28が作業員の指に引っかかることで、容器本体21について回転しないように保持することが容易であるので、上蓋41の着脱を容易に行うことができる。
【0029】
続いて内蓋51について
図3~
図5の他に、平面図である
図7も参照して説明する。この内蓋51は、容器本体21の上側の開口を塞ぐように設けられることで、当該容器本体21の円筒部22内を上方側空間と下方側空間とに区画する区画部材をなす。下方側空間はレジストの貯留空間59である。従って、容器本体21の上部側の開口はこの内蓋51に塞がれ、さらに上記した上蓋41に覆われ、既述の脆弱部47は上方側空間に臨む。
【0030】
内蓋51は、樹脂、具体的には例えば熱可塑性樹脂により一体成形されている。この熱可塑性樹脂として、より具体的には例えば既述した容器本体21等と同様に好ましくはポリオレフィン、より好ましくはポリエチレンあるいはポリプロピレンが用いられる。その他に内蓋51は、ゴムによって構成されていてもよい。それらの材料によって構成されることで、貯留空間59に貯留される処理液(本例ではレジスト)が仮に接触したとしても、処理液を金属汚染させるおそれが低い。また内蓋51は、例示した各樹脂あるいはゴムにより構成されることで、弾性を有している。
【0031】
内蓋51は回転対称体として構成されており、平面視円形で容器本体21内を横方向に広がるように形成された板状体である本体部52を備える。レジストはその液面が本体部52に接しない高さになるように貯留空間59に貯留され、例えば10mL~200mLのレジストが貯留される。また、上記のように容器本体21内に進入する給排気管68の下端は、本体部52の中心部の上方に位置する。
【0032】
本体部52については、中央部が周縁部に比べて盛り上がることで、縦断面が弓状となるように形成されている。従って本体部52は湾曲部として構成されており、当該本体部52の上面において脆弱部47に対向する領域は、その周囲の領域よりも上方に位置する。なお、この本体部52の上面は、上蓋41において脆弱部47を備える上壁43の下面(第1の面)に向き合うように形成された第2の面である。従って、第2の面において脆弱部47に対向する中央部は、その周囲に比べて脆弱部47寄りに位置するように盛り上がっている。
【0033】
そして本体部52の周縁部には、当該本体部52の厚さ方向に穿孔された貫通孔53が1つ以上設けられている。貯留空間59を周方向に均一性高く加圧及び減圧するために、貫通孔53は好ましくは複数、より具体的には例えば2~8個設けられ、本体部52の中心から等距離、且つ本体部52の周方向に互いに等間隔を空けて各々配置される。本例では4つの貫通孔53が、そのような配置で設けられるものとして示している。貫通孔53の孔径L3は、例えば0.5mm~3mmである。後に詳しく述べる、給排気管68を介してのレジストの汚染を防止するという内蓋51の役割が損なわれないように、貫通孔53は平面視で上記の脆弱部47に重ならない、即ち脆弱部47が破断して生じる給排気管68の導入路に重ならない位置に設けられる。
【0034】
そして本体部52の周端は上方へ向けて延伸され、低背の円筒状の側周部54をなす。この側周部54については、上側に向うにつれて、内蓋51の中心軸から次第に離れるように、その縦断面が弧を描くように形成されている。従って、側周部54についても湾曲部をなす。この側周部54の外周面の上部側は、容器本体21の内周面に接する接触部をなす。そして側周部54の上端部は外方へ水平に広がることで、フランジ部55をなす。このフランジ部55の下部側は突出し、内蓋51の周方向に沿った環状突起56を形成している。
【0035】
フランジ部55は、上蓋41の上壁43の下面と、容器本体21の円筒部22の上端とに挟まれ、環状突起56は当該円筒部22の上端に当接する。この環状突起56は、内蓋51の周縁部を容器本体21の上端により確実に接触させて、貯留空間59の密閉性を高めるために設けられている。また内蓋51の側周部54における上側は、容器本体21の内周面と上蓋41の円環突起49の外周面とに挟まれると共にこれらに当接する。このようにフランジ部55が上下から挟まれること、及び側周部54がその内側と外側とから挟まれることで、内蓋51は容器ノズル20内にてその位置が固定される。
【0036】
内蓋51の作用効果を説明するために、仮にこの内蓋51が設けられないとした場合を考える。その場合に、給排気管68による給排気あるいは容器ノズル20の搬送時の振動によって、貯留空間59の液面からレジストが跳ねて給排気管68内に付着してしまうことが考えられる。上記したように各容器2には異なる種類のレジストが貯留され、給排気管68は各容器2に対して共用であるため、そのように一つの容器2内にて付着したレジストが他の容器2のレジストに混入してしまうことが考えられる。しかし、既述したように平面視で脆弱部47から外れた位置に貫通孔53を備える内蓋51を設けることで、上記のレジストの給排気管68への付着が防止されつつ、給排気によって貯留空間59の圧力を変化させることができる。
【0037】
なお、内蓋51を構成する側周部54は湾曲部を備える構成であると共に弾性体であることで、当該内蓋51を構成する側周部54の外周面は容器本体21の内周面を押圧し、当該内周面に密着している。そのために上記の給排気管68による給排気を行う際に、これら内蓋51と容器本体21との隙間を介して容器ノズル20の外部へガスが漏れたり、容器ノズル20の外部から内部へガスが流入したりすることが防止される。つまり容器ノズル20内について、高いシール性が得られるように、当該内蓋51が構成されている。
【0038】
また、既述したように内蓋51を構成する本体部52の上面について、脆弱部47に対向する部位が、その周囲の部位よりも上方に位置するように湾曲している。従って、脆弱部47を介して容器ノズル20内に進入した給排気管68から下方にガスが供給されるにあたり、当該上面によってガスは吐出された位置から、その周囲に均一性高く分散されるように流れる。そして、上記のように分散されて本体部52の周縁部に向ったガスは、内蓋51が回転対称体であることから、各貫通孔53に均一性高い流量で流入する。従って、貯留空間59の周方向において圧力の偏りが大きくなりにくい。そのために、当該貯留空間59においてレジストの不規則な流れが生じたり、跳ねたりすることで泡が生じてしまうことが抑制される。従って、その泡がウエハWに供給されてしまうことが防止され、ウエハWから製造される半導体製品の歩留りが低下することが抑制される。
【0039】
またこの内蓋51については、上記した給排気管68を介したレジストの汚染を防ぐ役割の他に、脆弱部47が破断する際に微細な破片が生じたとしても、その破片がレジストに混入することを抑制する役割も有する。詳しく述べると、仮に当該破片が生じて容器ノズル20内を落下しても内蓋51に支持されることになるため、貯留空間59へ落下が抑制される。そして当該破片は給排気管68からの排気によって、容器ノズル20内から除去されるため、レジストへの混入が抑制されることになる。
【0040】
続いて、搬送部6について
図1~
図3に戻って説明する。また、
図8、
図9の縦断側面図も適宜参照する。搬送部6は、移動部61、アーム62、給排気部63及び把持部7により構成される。移動部61は基台19上におけるカップ11に対する前方側領域(ウエハWが搬入出される側とは反対側の領域)を左右に移動自在である。また移動部61は、アーム62の基端部を支持すると共に垂直に昇降させる。アーム62の先端部は後方へ向けて伸び、当該先端部には、給排気部63及び把持部7が設けられている。給排気部63は、容器接続部66、Oリング67、給排気管68、分岐路69A、69B、バルブV1、V2、ガス供給源60A及び排気源60Bにより構成されている。
【0041】
容器接続部66は、アーム62の先端部から下方に突出する円形部材である。この容器接続部66の下端部については、容器2の上蓋41の凹部45に対して陥入及び後退ができる大きさに形成されている。容器接続部66の下面には、当該容器接続部66の周に沿った環状溝が設けられ、この環状溝にはOリング67が埋設されている。そして、容器接続部66の中心を垂直方向に貫くように既述した給排気管68が設けられており、給排気管68の先端部は容器接続部66の下面から突出している。従ってOリング67については、給排気管68の下端よりも上方に位置し、平面視で当該給排気管68を囲むように設けられている。
【0042】
そのような位置関係により、給排気管68が脆弱部47から形成された進入路47Aを介して容器ノズル20内に進入した状態では、容器接続部66が凹部45に陥入し、Oリング67が上蓋41のシール面46Aに密着した状態となる。なお、以降はこの状態となる容器ノズル20の搬送部6に対する位置を装着位置として記載する。Oリング67についてはそのようにシール面46Aに密着することで、脆弱部47が破断した状態であっても、容器ノズル20内の貯留空間59が外部からシールされた状態に保つ役割を有する。そして給排気管68については例えばJIS規格のSUS304であるステンレス鋼により構成されており、外径は3mm、内径は1mmである。また、給排気管68の外面には鏡面加工が施されており、当該外面の一部である下端面については水平である。
【0043】
給排気管68の上方側に流路の一端が接続されており、この流路の他端が2つに分岐して分岐路69A、69Bをなす。分岐路69AはバルブV1を介してガス供給源60Aに接続されており、分岐路69BはバルブV2を介して例えばエジェクタにより構成される排気源60Bに接続されている。バルブV1、V2については両方が閉じられるか、いずれか一方が開かれた状態とされる。バルブV1の開放により給排気管68の先端からガスとして例えば不活性ガスである窒素ガスが供給され、バルブV2の開放により給排気管68の先端からの排気が行われる。
【0044】
把持部7については、3つの爪部71と、アーム62の先端部に設けられる図示しない駆動機構と、により構成される。これらの爪部71は、平面視で給排気管68を中心として120°離れた位置に設けられ、給排気管68に対して等距離に位置し、互いに回転対称に配置されている。なお
図8、
図9では図示の便宜上、給排気管68に対して120°異なる向きの断面を同一平面に表しているため、2つの爪部71が給排気管68を挟むように対称に示されている。
【0045】
爪部71は縦長であり、側面視逆さL字状に形成されている。詳しく述べると、爪部71は給排気管68から離れるように水平に伸びた後、下方へ屈曲された形状とされている。そして、爪部71の下端部は平面視で給排気管68へ向けて若干突出して、支持部72を形成している。この支持部72は、爪部71による把持時に、容器本体21の把手26を下方から支持する。各爪部71の上端は既述の駆動機構に接続されており、当該駆動機構は、各爪部71を、平面視で給排気管68から比較的大きく離れた開放位置(
図8中実線で表示)と、給排気管68に比較的近い把持位置(
図8中鎖線で表示)との間で水平移動させる。
【0046】
以降、容器2の脆弱部47について
図5、
図6を参照することで補足して説明する。上記のように脆弱部47については、給排気管68の下降によって破断する。この脆弱部47の破壊強度(上記の破断が起きる極限の強度)が低すぎると、容器2の取り扱いが困難である。その一方で破壊強度が高すぎると、給排気管68、アーム62及び移動部61等の装置を構成する各部材への負荷が大きくなってしまい、また、脆弱部47が破断するにあたり微小な破片が生じやすくなってしまう。また脆弱部47の破壊変位(破断時の変形量)が大き過ぎると、容器本体21の内圧の上昇が比較的大きくなるおそれが有り、吐出口25から液漏れするおそれが有る。それ故に脆弱部47についての破壊強度については、例えば5N~40Nとすることが好ましく、さらに破壊変位については例えば4mm以下とすることが好ましい。つまり、脆弱部47の破断によって生じる扇状である小片の先端(即ち、扇の要側の端)は、破断が起きる前の元の位置から4mmより大きく下方には移動しないことが好ましい。
【0047】
本例では、上記した給排気管68は例えば速度50mm/分で脆弱部47に向けて下降し、脆弱部47に対して上記した好ましい範囲内の破壊強度を与えると共に、好ましい破壊変位となるように構成されている。なお、仮に給排気管68を速度500mm/分として脆弱部47に向けて下降させても、破壊強度は23N、破壊変位は3mmであり、上記の好ましい範囲に各々含まれる。従って、給排気管68を下降させて脆弱部47を破断させるにあたり、速度50mm/分~500mm/とすることが好ましい。
【0048】
脆弱部47について、そのように好ましい破壊強度及び破壊変位とするために上記したように溝48については2本~6本とすることが望ましい。また、その好ましい破壊強度及び破壊変位にするため、脆弱部47の溝48以外の領域(溝48の外側領域)の厚さH1は例えば0.2mm~1mm、溝48の厚さH2は例えば0.1mm~0.95mm、溝48の幅L4は例えば0.2mm~3mmとすることが好ましい。そして、脆弱部47の厚さH1に対する溝48の厚さH2の割合は例えば10%~95%、脆弱部47の直径L5は例えば5mm~30mmとすることが好ましい。
【0049】
以下、レジスト塗布装置1によるウエハWの処理手順について説明する。アーム62が容器ノズル20を保持しておらず、アーム62における給排気管68からの給排気は停止した状態となっており、アーム62における爪部71は開放位置に位置しているものとする。図示しない搬送機構によってウエハWがレジスト塗布装置1に搬送され、スピンチャック12に吸着保持される。
【0050】
搬送部6をなすアーム62が左右方向に移動し、容器配置部8において上記のウエハWを処理するように設定されたレジストが貯留されている容器2の脆弱部47上に、搬送部6を構成する給排気管68が位置する。この給排気管68からの排気が開始されると、アーム62が下降して、既述したようにOリング67が上蓋41のシール面46Aに密着する。その一方で、給排気管68の下端が脆弱部47を押圧し、既述したように脆弱部47が破断、変形して進入路47Aが形成され、この進入路47Aを介して給排気管68の先端部が容器ノズル20内に進入し、容器ノズル20は搬送部6の装着位置に位置する。その後、爪部71が把持位置へ移動し、各爪部71の側面が容器ノズル20の把手26の側面を容器ノズル20の中心軸へ向けて押圧することで、当該容器ノズル20が押圧されて、搬送部6に把持される。なお、
図8はこのように把持が行われる際の容器ノズル20及び搬送部6を示している。
【0051】
然る後、アーム62が上昇し、爪部71の支持部72により、容器ノズル20の把手26が引き上げられて、下蓋31と容器ノズル20との嵌合が解除されることで、下蓋31が容器ノズル20から取り外される。その際においては、給排気管68からの排気によって貯留空間59が減圧されているため、下蓋31が外れた状態であっても容器ノズル20の吐出口25からのレジストの流下は防止される。なお、
図9はこのように下蓋31が取り外された際の容器ノズル20及び搬送部6を示している。
【0052】
搬送部6によって保持された容器ノズル20がウエハWの中心部上に位置すると、給排気管68について、排気が停止すると共にガス供給が開始され、容器ノズル20内が加圧され、吐出口25からウエハWの中心部にレジストが供給される。給排気管68からのガス供給が停止すると共に排気が再度開始されて、容器ノズル20内が減圧され、吐出口25からのレジストの吐出が停止する。ウエハWが回転することによって、ウエハWに供給されたレジストはウエハWの表面全体に展伸されて、レジスト膜が形成される。その後、ウエハWは、搬送機構によってレジスト塗布装置1から搬出される。
【0053】
例えば順次、装置に搬送されるウエハWに対して同様に成膜処理が行われた後、搬送部6について、容器ノズル20を装着した動作とは逆の動作が行われる。具体的には、搬送部6の容器配置部8への下降による容器ノズル20への下蓋31の装着(即ち下蓋31と容器ノズル20との嵌合)、爪部71の開放位置への移動、搬送部6の上昇による当該容器ノズル20の装着位置からの開放が、順番に行われる。
【0054】
ところでウエハWにレジストを塗布するにあたっては、特許文献1に記載されるように、ノズルとレジストの供給源(タンク)とを配管により接続し、配管に介設したポンプにより、レジストをノズルから吐出する装置構成とすることが考えられる。しかし、そのような装置構成で複数の種類のレジストを用いて処理を行うとすると、使用するレジストを切り替えるにあたり、タンクについて必要なレジストが貯留されたものに交換することになるので、当該タンクの配管への接続の手間を要することになる。また、そのようにタンクを交換する場合、ウエハWに供給されるレジストが他のレジストにより汚染されたり、気泡が混入されたりすることを防ぐために、洗浄液による配管の洗浄、配管からの洗浄液の除去、配管へのレジストの充填などの作業が必要になる。従って、処理を行うまでの準備(処理に付随する作業)に、多大な手間を要してしまうおそれが有る。
【0055】
また、上記のタンクを交換する他に、ノズルとタンクとこれらノズル及びタンクを接続すると共にバルブやポンプが介設された配管系を複数設け、使用する配管系を切り替えることでウエハWに各種のレジストを供給することが考えられる。しかし、このような配管系は比較的大きなスペースを要することから、装置に設置可能な数が限られる。そのため、装置にて使用可能なレジストの種類は、この配管系の数によって制限されてしまい、十分な種類のレジストを使用できないおそれが有る。その他に、作業員が手作業によりウエハWにレジストを供給することが考えられる。つまり、作業員が処理の都度、所望のレジストを含むボトルをウエハW上で傾けて供給することが考えられる。しかし、そのようにするとウエハWを続けて複数枚処理するにあたり、作業員が装置付近に常時待機することになるので作業員の手間及び負担が大きい。
【0056】
しかし、既述のように容器2を構成する容器ノズル20については、吐出口25、レジストの貯留空間59及び脆弱部47が設けられている。そしてその脆弱部47が破断、変形することで形成される進入路47Aを介して、当該容器ノズル20を搬送するための搬送部6に含まれる給排気管68が容器ノズル20内に対して進入し、容器ノズル20内の貯留空間59の加圧、減圧が切替え可能である。それ故に、容器ノズル20については、必要時のみ吐出口25からのレジストの吐出を行うことができ、それ以外の場合は吐出口25からのレジストの漏洩が防止される。従ってこのような容器2を備えるレジスト塗布装置1については、任意の容器2を選択し、当該容器2を構成する容器ノズル20をウエハW上へと搬送してレジスト塗布を行うことができる。従って、上記の手作業を行う場合に比べて作業員の手間が削減され、既述した配管の洗浄等の処理に付随して行う作業の手間も削減される。なお、装置において容器2が1つのみ設けられる構成であってもよい。その場合でも上記した配管についての洗浄等の作業が不要であるため、装置の処理に付随する作業について低減される。
【0057】
ところで容器ノズル20の把持に用いられる把手26は、容器ノズル20の外表面を構成する容器本体21と上蓋41とのうち、容器本体21に設けられている。仮に上蓋41に把手26が設けられるとすると、搬送中の振動などの要因で、上蓋41と容器本体21との螺合が解除されて容器本体21が落下することや、上蓋41に対して容器本体21の高さがずれて処理に影響が出ることが考えられる。しかし把手26が容器本体21に設けられることで、それらの不具合が防止される。また容器本体21の胴部をなす円筒部22において、把手26は着脱不可となっている。従って、上記の振動などによって搬送中に把手26が外れて円筒部22が落下してしまうことが防止される。
【0058】
また、容器2については既述したように上蓋41及び内蓋51が容器本体21に対して着脱自在な構成であるため、容器本体21の上部側からレジストの充填を容易に行うことができるので有利である。そして、脆弱部47については、容器ノズル20の外表面を構成する容器本体21及び上蓋41のうち、上蓋41に設けられている。従って、レジストの容器本体21への充填作業時に、作業員が上蓋41を取り扱う必要が無いため、誤って脆弱部47を破断させてしまうことが抑制される。
【0059】
なお、容器2については使い捨てとしてもよいが、使用後にレジストを再充填して再利用してもよい。そのように再利用するにあたっても、容器本体21及び上蓋41のうち、上蓋41に脆弱部47が設けられることが有利である。それは再利用を行うにあたって、作業員が上蓋41を容器本体21から取り外した後に、容器本体21に残留したレジストの廃棄、容器本体21の洗浄、レジストの再充填といった作業が行われるが、それらの各作業時に、作業員が上蓋41を取り扱う必要が無いため、誤って脆弱部47を破断させてしまうことが抑制されるためである。なお、容器本体21に脆弱部47が設けられないことから当該容器本体21については取り扱いが容易であるので、上記の再利用のための各作業を行うことが容易である。また、上蓋41が容器本体21に対して着脱自在であることは、上記した再利用のための各作業の実施を容易にすることにも寄与する。
【0060】
また、容器ノズル20についてはその周方向に沿った把手26が設けられ、当該把手26の上側に上蓋41が設けられ、この上蓋41の上面は、容器ノズル20内をシールするために搬送部6のOリング67と密着するシール面46Aとして構成されている。そのため把手26が爪部71によって把持され、爪部71を構成する支持部72が当該把手26を下方から支持する際に、弾性体であるOリング67によって上蓋41は相対的に容器本体21に向うように押圧される。そのため、上蓋41は容器本体21に対して緩みにくく、搬送中において容器ノズル20内についての高い密閉性が得られるという利点が有る。また、このシール面46Aとしては上蓋41の上壁43、即ち容器本体21上で当該容器本体21に重なる位置に形成されている。従って、シール面46Aを備えるように構成された上蓋41としては、容器本体21に対して大型化することが防止されるので、容器2についての大型化が防止される。
【0061】
ところで下蓋31について容器ノズル20に密着させるためにその内部に凸部や凹部を設けた構成とし、当該凸部または凹部が、容器ノズル20において当該凸部または凹部に対応して設けられた部位と嵌合する構成であってもよい。また、下蓋31に容器ノズル20に密着させるための緩衝材を設けてもよい。なお、既述したように下蓋31は容器ノズル20の吐出口25を塞ぐと共に、容器ノズル20の傾倒を防ぐように支持する支持台の役割を有しているが、容器配置部8に設けられる凹部81によって直接、容器ノズル20が支持されると共に、吐出口25が塞がれる構成であってもよい。従って、容器2には下蓋31が設けられない構成であってもよい。また、吐出口25を形成する容器ノズル20の先端部24は下蓋31に当接するようにストレート形状、即ち垂直に伸びる円筒形状であってもよいし、丸みを帯びた形状であってもよく、先端部24に向けて先細り形状であってもよく、注射針のような形状であってもよく、テーパーカットの形状であってもよい。上記の下蓋31の凸部または凹部について詳しく述べると、下蓋31において、上記したように形成された先端部24が進入することで嵌め込まれる凹部が設けられていてもよいし、吐出口25に進入して嵌め込まれる凸部が設けられていてもよい。
【0062】
上蓋41に設けられる脆弱部としては上記した上蓋41と一体として構成される構成であることには限られない。例えば上蓋41の上壁43に形成された貫通孔を塞ぐと共に、上蓋41とは別体として構成された薄膜を脆弱部として設けて、給排気管68による押圧で当該薄膜が破断して、給排気管68が上蓋41を貫通して容器ノズル20内に進入するようにしてもよい。上記した範囲の破壊強度となるように、この薄膜の厚さとしては例えば0.03mm~1mmとする。
【0063】
また、容器2内には上記したように内蓋51が設けられ、上記したように容器2内の圧力変化や搬送時の振動に起因する給排気管68へのレジストの付着が防止されるようになっている。ただし、ガス供給量及び排気量を調整したり、搬送時の速度の調整により振動を抑制したりすることで、当該汚染を防止することができる。従って容器2において、内蓋51が設けられない構成としてもよい。なお容器ノズル2の把手26については、容器ノズル20を把持可能な構成であればよく、環状には限られず、例えば容器本体21の外周面の周方向に間隔を空けて形成された突起であってもよい。その場合であっても、既述したようにOリング67を利用して、容器本体21に向けて上蓋41が相対的に押圧されるように容器ノズル20を把持することができる。
【0064】
さらに容器2には、レジストが貯留されることには限られない。例えば反射防止膜形成用の塗布用の処理液、絶縁膜形成用の塗布用の処理液、現像液、ウエハWの洗浄液、ウエハWを貼り合わせるための接着材などの各種の処理液を容器2に収納して処理を行うことができる。容器2の成形方法については、公知の成形方法を採用できるが、射出成形で成形することが好ましい。なお、容器2の内外面にレジスト等の処理液の内容量を示す目盛り線を設けてもよく、目盛り線として段差を設けてもよい。
【0065】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更及び組み合わせがなされてもよい。
【符号の説明】
【0066】
W ウエハ
2 容器
20 容器ノズル
25 吐出口
47 脆弱部
47A 進入路
59 貯留空間
68 給排気管