(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】めっき装置
(51)【国際特許分類】
C25D 17/10 20060101AFI20240920BHJP
C25D 17/08 20060101ALI20240920BHJP
C25D 17/00 20060101ALI20240920BHJP
C25D 7/12 20060101ALN20240920BHJP
C25D 17/06 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C25D17/10 A
C25D17/10 C
C25D17/08 R
C25D17/00 H
C25D7/12
C25D17/06 C
(21)【出願番号】P 2024523198
(86)(22)【出願日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2023045911
【審査請求日】2024-04-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】下村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中濱 重之
(72)【発明者】
【氏名】長井 瑞樹
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-218618(JP,A)
【文献】特開2021-042414(JP,A)
【文献】特開2021-011624(JP,A)
【文献】国際公開第2019/013111(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/233571(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/00-17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を収容するためのめっき槽と、
前記めっき槽内に配置されたアノードと、
被めっき面が前記アノードと対向するように矩形の基板を保持するための基板ホルダであって、
前記矩形の基板を保持したときに、前記矩形の基板の対向する一対の辺に給電するように構成され、かつ、前記矩形の基板の対向する他の一対の辺に給電しないように構成される、基板ホルダと、
前記アノードと前記基板ホルダとの間に配置され、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通する矩形の第1の中央開口を有するアノードマスクと、
前記アノードマスクと前記基板ホルダとの間に配置され、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通する矩形の第2の中央開口を有する中間マスクと、
を含み、
前記中間マスクは、前記基板ホルダの
給電する対向する一対の辺に対向して配置された一対の第1の辺部材と、前記基板ホルダの
給電しない他の一対の辺に対向して配置された一対の第2の辺部材と、前記一対の第1の辺部材のそれぞれの前記基板ホルダ側の面に配置された、電場を供給するための第1の電場供給部材と、前記一対の第2の辺部材のそれぞれの前記基板ホルダ側の面に配置された、電場を供給するための第2の電場供給部材と、を含み、
前記第1の電場供給部材は、前記矩形の第2の中央開口の
、前記第2の辺部材の一方に画定される第1の辺の延長上にある第1の位置と、前記第1の辺に対向する第2の辺の延長上にある第2の位置と、の間において前記第1の辺部材に沿って伸びるように構成され、
前記第2の電場供給部材は、前記矩形の第2の中央開口の
、前記第1の辺部材の一方に画定される第3の辺の延長上にある第3の位置と、前記第3の辺に対向する第4の辺の延長上にある第4の位置と、の間において、前記第3の位置および前記第4の位置から離れて一対に電場を供給するように構成される、
めっき装置。
【請求項2】
前記第1の電場供給部材は、前記第1の位置から前記第2の位置まで伸びる第1の溝と、前記第1の溝の内部に配置された第1の補助アノードと、前記第1の補助アノードを遮蔽するように前記第1の溝に配置された第1の遮蔽部材と、前記第1の位置から前記第2の位置まで前記第1の遮蔽部材に形成された第1の開口と、を含み、
前記第2の電場供給部材は、前記第3の位置から前記第4の位置まで伸びる第2の溝と、前記第2の溝の内部に配置された第2の補助アノードと、前記第2の補助アノードを遮蔽するように前記第2の溝に配置された第2の遮蔽部材と、前記第3の位置から離れて前記第2の遮蔽部材に形成された第2の開口と、前記第4の位置および前記第2の開口から離れて前記第2の遮蔽部材に形成された第3の開口と、を含む、
請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記第1の電場供給部材は、前記第1の開口に配置された第1のメンブレンをさらに含み、
前記第2の電場供給部材は、前記第2の開口および前記第3の開口にそれぞれ配置された第2のメンブレンおよび第3のメンブレンをさらに含む、
請求項2に記載のめっき装置。
【請求項4】
前記第2の電場供給部材は、前記第3の位置から前記第4の位置までを4等分割した第1の領域から第4の領域を有し、
前記第2の開口は、前記第1の領域において前記第3の位置から離れて前記第2の遮蔽部材に形成され、
前記第3の開口は、前記第4の領域において前記第4の位置から離れて前記第2の遮蔽部材に形成される、
請求項2または3に記載のめっき装置。
【請求項5】
前記第2の開口および前記第3の開口は、前記第2の辺部材に沿った方向のサイズが、前記第2の開口と前記第3の開口との間の前記第2の遮蔽部材の前記第2の辺部材に沿った方向のサイズよりも小さくなるように形成される、
請求項4に記載のめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、めっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解めっき装置の一例として、ディップ式のめっき装置が知られている。ディップ式のめっき装置は、被めっき面が側方に向くように基板を基板ホルダに保持してめっき液に浸漬させ、基板とアノードとの間に電圧を印加することによって、被めっき面に導電膜を析出させるように構成される。
【0003】
特許文献1には、矩形の基板に対してめっき処理を行うためのディップ式のめっき装置が開示されている。このめっき装置は、アノードの近傍においてアノードから基板への電場(電流)を調整するためのアノードマスクと、基板の近傍においてアノードから基板への電場を調整するための中間マスクと、を備えている。また、特許文献1には、中間マスクに補助アノードを設けることによって、基板のめっき膜厚分布を均一化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されためっき装置は、基板の一方の対向辺にのみ給電するめっき装置においてめっき膜厚分布の均一性を向上させることについては考慮されていない。
【0006】
すなわち、ある種のめっき装置では、基板ホルダの構成を簡素化することを主な目的として、矩形の基板の対向する一対の辺に給電し、他の対向する一対の辺に給電しないように構成された基板ホルダを用いる場合がある。この場合、基板の4辺に給電するめっき装置と比較して電場の形成状態が異なるので、単に中間マスクに補助アノードを設けるだけでは基板のめっき膜厚分布にばらつきが生じ易い。
【0007】
そこで、本願は、基板の一方の対向辺にのみ給電するめっき装置においてめっき膜厚分布の均一性を向上させることを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、めっき液を収容するためのめっき槽と、前記めっき槽内に配置されたアノードと、被めっき面が前記アノードと対向するように矩形の基板を保持するための基板ホルダであって、前記矩形の基板の対向する一対の辺に給電する給電辺部材と、前記矩形の基板の対向する他の一対の辺に給電しない非給電辺部材と、を有する、基板ホルダと、前記アノードと前記基板ホルダとの間に配置され、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通する矩形の第1の中央開口を有するアノードマスクと、前記アノードマスクと前記基板ホルダとの間に配置され、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通する矩形の第2の中央開口を有する中間マスクと、を含み、前記中間マスクは、前記基板ホルダの前記給電辺部材に対向して配置された一対の第1の辺部材と、前記基板ホルダの前記非給電辺部材に対向して配置された一対の第2の辺部材と、前記一対の第1の辺部材のそれぞれの前記基板ホルダ側の面に配置された、電場を供給するための第1の電場供給部材と、前記一対の第2の辺部材のそれぞれの前記基板ホルダ側の面に配置された、電場を供給するための第2の電場供給部材と、を含み、前記第1の電場供給部材は、前記矩形の第2の中央開口の第1の辺の延長上にある第1の位置と、前記第1の辺に対向する第2の辺の延長上にある第2の位置と、の間において前記第1の辺部材に沿って伸びるように構成され、前記第2の電場供給部材は、前記矩形の第2の中央開口の第3の辺の延長上にある第3の位置と、前記第3の辺に対向する第4の辺の延長上にある第4の位置と、の間において、前記第3の位置および前記第4の位置から離れて一対に電場を供給するように構成される、めっき装置が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態のめっき装置の全体構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の基板ホルダの構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の中間マスクの構成を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、比較例1、2の中間マスクの構成を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、一実施形態の中間マスクと比較例の中間マスクによるめっき膜厚分布を示す図である。
【
図8】
図8は、一実施形態の中間マスクと比較例の中間マスクによるめっき膜厚分布の均一性の比較結果を示す図である。
【
図9】
図9は、他の実施形態の中間マスクの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0011】
図1は、一実施形態のめっき装置の全体構成を示す断面図である。図示のように、本実施形態に係るめっき装置10は、アノード21を保持するように構成されたアノードホルダ20と、矩形の基板WFを保持するように構成された基板ホルダ40と、アノードホルダ20と基板ホルダ40とを内部に収容するめっき槽50と、を有する。
【0012】
図1に示すように、めっき槽50は、添加剤を含むめっき液Qを収容するめっき処理槽52と、めっき処理槽52からオーバーフローしためっき液Qを受けて排出するめっき液排出槽54と、めっき処理槽52とめっき液排出槽54とを仕切る仕切り壁55と、を有する。
【0013】
アノード21を保持したアノードホルダ20と基板WFを保持した基板ホルダ40は、めっき処理槽52内のめっき液Qに浸漬され、アノード21と基板WFの被めっき面WF1が略平行になるように対向して設けられる。言い換えると、基板ホルダ40は、被めっき面WF1を側方に向けた状態で基板WFを保持する。アノード21と基板WFは、めっき処理槽52のめっき液Qに浸漬された状態で、電圧が印加される。これにより、金属イオンが基板WFの被めっき面WF1において還元され、被めっき面WF1に膜が形成される。
【0014】
図2は、基板ホルダの構成を概略的に示す図である。
図2に示すように、基板ホルダ40は、矩形の基板WFの対向する一対の辺に給電する給電辺部材42と、矩形の基板WFの対向する他の一対の辺にそれぞれ給電しない非給電辺部材44と、を有する。給電辺部材42は、基板ホルダ40に基板WFを装着したときに基板WFと接触するコンタクト43を有し、図示していない電源からコンタクト43を介して基板WFの一対の辺に給電するように構成される。一方、非給電辺部材44には、コンタクトが設けられておらず、基板WFの他の一対の辺には給電されない。
【0015】
本実施形態では、基板ホルダ40は、基板WFの左右の一対の辺に給電し、基板WFの上下の一対の辺に給電しないように構成される。しかし、これに限定されず、基板ホルダ40は、基板WFの上下の一対の辺に給電し、基板WFの左右の一対の辺に給電しないように構成されてもよい。
【0016】
図1の説明に戻ると、めっき処理槽52は、槽内部にめっき液Qを供給するためのめっき液供給口56を有する。めっき液排出槽54は、めっき処理槽52からオーバーフローしためっき液Qを排出するためのめっき液排出口57を有する。めっき液供給口56はめっき処理槽52の底部に配置され、めっき液排出口57はめっき液排出槽54の底部に配置される。
【0017】
めっき液Qがめっき液供給口56からめっき処理槽52に供給されると、めっき液Qはめっき処理槽52から溢れ、仕切り壁55を越えてめっき液排出槽54に流入する。めっき液排出槽54に流入しためっき液Qはめっき液排出口57から排出され、めっき液循環装置58が有するフィルタ等で不純物が除去される。不純物が除去されためっき液Qは、めっき液循環装置58によりめっき液供給口56を介してめっき処理槽52に供給される。
【0018】
めっき装置10は、アノード21と基板WFとの間の電場を調節するためのアノードマスク70を有する。アノードマスク70は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノードホルダ20の前面に設けられる。ここで、アノードホルダ20の前面とは、基板ホルダ40に対向する側の面をいう。すなわち、アノードマスク70は、アノード21と基板ホルダ40の間に配置される。アノードマスク70は、アノード21側と基板ホルダ40側とを貫通する、言い換えればアノード21と基板WFとの間に流れる電流が通過する、第1の中央開口70aを略中央部に有する。第1の中央開口70aの径は、アノード21の径よりも小さいことが好ましい。アノードマスク70は、第1の中央開口70aの径を調節可能に構成される。
【0019】
また、めっき装置10は、アノード21と基板WFとの間の電場を調節するための電場調節部材の一例である中間マスク30を有する。中間マスク30は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノードマスク70と基板ホルダ40(基板WF)との間に配置される。中間マスク30は、アノード21側と基板ホルダ40側とを貫通する、言い換えればアノード21と基板WFとの間に流れる電流が通過する、第2の中央開口30aを有する。第2の中央開口30aの径は、基板WFの径より小さいことが好ましい。中間マスク30は、第2の中央開口30aの径を調節可能に構成される。
【0020】
中間マスク30と基板ホルダ40との間には、基板WFの被めっき面WF1近傍のめっき液Qを撹拌するためのパドル18が設けられる。パドル18の一端は、パドル駆動装置19に固定される。パドル18は、パドル駆動装置19により基板WFの被めっき面WF1に沿って移動され、これによりめっき液Qが撹拌される。
【0021】
めっき装置10は、さらに、メンブレンボックス60を有する。メンブレンボックス60は、めっき槽50内において、アノードホルダ20(アノード21)およびアノードマスク70を収容するための箱状の部材である。メンブレンボックス60は、アノードマスク70と中間マスク30との間に配置されたメンブレン62を有する。メンブレン62は、アノード21が配置されたアノード領域と基板WFが配置されるカソード領域とを仕切る膜である。メンブレンボックス60は、メンブレンボックス60をめっき槽50から持ち上げたときにメンブレンボックス60からめっき液Qを排出するためのプラグ64を有する。
【0022】
本実施形態のように中間マスク30を備えるめっき装置においては、中間マスク30に補助アノードを設けることが知られている。しかしながら、上述の基板ホルダ40のように基板の一方の対向辺にのみ給電する場合には、基板の4辺に給電する場合と比較して電場の形成状態が異なるので、電場の形成状態に応じた補助アノードの設置が求められる。以下、この点について説明する。
【0023】
図3は、一実施形態の中間マスクの構成を概略的に示す図である。
図4は、
図3のA-A線における断面を示す図である。
図5は、
図3のB-B線における断面を示す図である。
【0024】
図3から
図5に示すように、本実施形態の中間マスク30は、基板ホルダ40の給電辺部材42に対向して配置された一対の第1の辺部材31と、基板ホルダ40の非給電辺部材44に対向して配置された一対の第2の辺部材33と、を含む。
【0025】
また、中間マスク30は、第1の辺部材31の基板ホルダ側の面に配置された、電場を供給するための第1の電場供給部材35と、第2の辺部材33の基板ホルダ側の面に配置された、電場を供給するための第2の電場供給部材37と、を含む。
【0026】
第1の電場供給部材35は、矩形の第2の中央開口30aの第1の辺30a-1の延長上にある第1の位置PG-1と、第1の辺30a-1に対向する第2の辺30a-2の延長上にある第2の位置PG-2と、の間において第1の辺部材31に沿って伸びるように構成される。
【0027】
より具体的には、第1の電場供給部材35は、第1の位置PG-1から第2の位置PG-2まで伸びる第1の溝32-1と、第1の溝32-1の内部に配置された第1の補助アノード34-1と、を備える。また、第1の電場供給部材35は、第1の補助アノード34-1を遮蔽するように第1の溝32-1に配置された第1の遮蔽部材36-1と、第1の位置PG-1から第2の位置PG-2まで第1の遮蔽部材36-1に形成された第1の開口36-1aと、を備える。これにより、第1の開口36-1aから第1の補助アノード34-1が露出するので、第1の開口36-1aを介して基板WFに電場が供給される。
【0028】
また、第1の電場供給部材35は、第1の開口36-1aに配置された第1のメンブレン38-1を備える。第1のメンブレン38-1はイオン交換膜などの隔膜である。第1のメンブレン38-1を設けることにより、第1の補助アノード34-1に起因して発生する分解生成物等が基板WFの被めっき面WF1に付着するのを抑制することができる。
【0029】
一方、第2の電場供給部材37は、矩形の第2の中央開口30aの第3の辺30a-3の延長上にある第3の位置PG-3と、第3の辺30a-3に対向する第4の辺30a-4の延長上にある第4の位置PG-4と、の間において、第3の位置PG-3および第4の位置PG-4から離れて一対に電場を供給するように構成される。
【0030】
より具体的には、第2の電場供給部材37は、第3の位置PG-3から第4の位置PG-4まで伸びる第2の溝32-2と、第2の溝32-2の内部に配置された第2の補助アノード34-2と、を備える。また、第2の電場供給部材37は、第2の補助アノード34-2を遮蔽するように第2の溝32-2に配置された第2の遮蔽部材36-2を備える。また、第2の電場供給部材37は、第3の位置PG-3から離れて第2の遮蔽部材36-2に形成された第2の開口36-2aと、第4の位置PG-4および第2の開口36-2aから離れて第2の遮蔽部材36-2に形成された第3の開口36-2bを備える。これにより、第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bから第2の補助アノード34-2が露出するので、第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bを介して基板WFに電場が供給される。なお、第2の開口36-2aと第3の開口36-2bは一体となっておらず、第2の開口36-2aと第3の開口36-2bとの間には第2の遮蔽部材36-2が存在する。
【0031】
また、第2の電場供給部材37は、第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bにそれぞれ配置された第2のメンブレン38-2および第3のメンブレン38-3を備える。第2のメンブレン38-2および第3のメンブレン38-3は、イオン交換膜などの隔膜である。本実施形態では、第2の溝32-2の内部に配置された第2の補助アノード34-2を第2の遮蔽部材36-2で覆い、第2の遮蔽部材36-2に第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bを形成することによって補助アノードの効果が生じる領域を規定する例を示したが、これに限定されない。例えば、第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bが形成される場所に、第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bに相当する大きさの補助アノードを配置してもよい。これにより、第2の電場供給部材37は、第3の位置PG-3および第4の位置PG-4から離れて一対に電場を供給することができる。
【0032】
図6は、比較例1、2の中間マスクの構成を概略的に示す図である。
図6(a)に示す比較例1の中間マスクは、第1の辺部材31には、本実施形態と同様に第1の電場供給部材35が設けられる。一方、第2の辺部材33においては第2の遮蔽部材36-2に開口が形成されておらず、補助アノードが設けられていない状態になっている。
【0033】
また、
図6(b)に示す比較例2の中間マスクは、第1の辺部材31には、本実施形態と同様に第1の電場供給部材35が設けられる。一方、第2の辺部材33においては第2の遮蔽部材36-2に一対の開口36-2a,36-2bが形成されているが、これらの開口はそれぞれ第3の位置PG-3および第4の位置PG-4に接している。
【0034】
図7は、一実施形態の中間マスクと比較例の中間マスクによるめっき膜厚分布を示す図である。
図7は、基板WFの中心(A)から端部(B)までのめっき膜厚のプロファイルを示している。
図7のグラフにおいて縦軸は正規化されためっき膜厚を示しており、横軸は基板WFの中心(A)から端部(B)までのめっき膜厚の測定位置を示している。
【0035】
図7に示すように、比較例1では、第2の辺部材33に補助アノードがないので、基板WFの端部から内側に入った箇所(破線αで囲まれた領域)のめっき膜厚が薄くなる。また、比較例2では、第2の遮蔽部材36-2に形成された開口36-2a,36-2bが第3の位置PG-3および第4の位置PG-4に接しているので、基板WFの角部に対して電場が集中し、その結果、基板WFの端部(破線βで囲まれた領域)のめっき膜厚が厚くなり過ぎる。これに対して本実施形態は、第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bが第3の位置PG-3および第4の位置PG-4から離して形成されている。その結果、基板WFの角部に対する電場集中を抑制するとともに、基板WFの端部から内側に入った箇所に電場を供給することができるので、めっき膜厚分布の均一性を向上させることができる。
【0036】
図8は、一実施形態の中間マスクと比較例の中間マスクによるめっき膜厚分布の均一性の比較結果を示す図である。
図8のグラフにおいて縦軸は正規化されためっき膜厚分布のばらつきを示している。
図8に示すように、本実施形態の中間マスク30を採用した場合、比較例1、2に比べてめっき膜厚分布のばらつきを抑えることができる。
【0037】
なお、
図3に示した第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bの形成態様は一例に過ぎない。第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bは、以下に説明するように様々な態様で形成することができる。
【0038】
図9は、他の実施形態の中間マスクの構成を概略的に示す図である。
図9(a)(b)(c)に示すように、第2の電場供給部材37は、第3の位置PG-3から第4の位置PG-4までを4等分割した4つの領域(第1の領域(1)から第4の領域(4))を有する。第2の開口36-2aは、第1の領域(1)において第3の位置PG-3から離れて第2の遮蔽部材36-2に形成されていればよい。また、第3の開口36-2bは、第4の領域(4)において第4の位置PG-4から離れて第2の遮蔽部材36-2に形成されていればよい。
【0039】
したがって、
図3では、第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bが、第2の中央開口30aから離れた第2の遮蔽部材36-2の遠位辺36-2cに形成される例を示したが、これは一例に過ぎない。
図9(a)に示すように、第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bは、第2の中央開口30aに近い第2の遮蔽部材36-2の近位辺36-2dに形成されてもよい。
【0040】
また、
図9(b)に示すように、第2の開口36-2aは、少なくとも第1の領域(1)において第3の位置PG-3から離れて形成されていればよいので、第1の領域(1)および第2の領域(2)に跨って形成されてもよい。第3の開口36-2bは、少なくとも第4の領域(4)において第4の位置PG-4から離れて形成されていればよいので、第3の領域(3)および第4の領域(4)に跨って形成されてもよい。さらに、第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bは、第2の遮蔽部材36-2の遠位辺36-2cおよび近位辺36-2dの間に形成されてもよい。
【0041】
また、
図9(c)に示すように、第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bは、第2の辺部材33に沿った方向のサイズ(AA)が、第2の開口36-2aと第3の開口36-2bとの間の第2の遮蔽部材36-2の第2の辺部材33に沿った方向のサイズ(BB)よりも小さくなるように(AA<BBとなるように)形成されてもよい。
【0042】
すなわち、第2の開口36-2aおよび第3の開口36-2bの第2の辺部材33に沿った方向のサイズが大きすぎると、基板WFの中央部に対する電場供給が過多になり、めっき膜厚分布の均一性が損なわれるおそれがある。これに対して、第2の開口36-2aと第3の開口36-2bとの間に第2の遮蔽部材36-2を適切なサイズで配置することによって、基板WFの中央部に対して電場が過剰に供給されるのを抑制することができ、その結果、めっき膜厚分布の均一性を向上させることができる。
【0043】
以上、いくつかの本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0044】
本願は、一実施形態として、めっき液を収容するためのめっき槽と、前記めっき槽内に配置されたアノードと、被めっき面が前記アノードと対向するように矩形の基板を保持するための基板ホルダであって、前記矩形の基板の対向する一対の辺に給電する給電辺部材と、前記矩形の基板の対向する他の一対の辺に給電しない非給電辺部材と、を有する、基板ホルダと、前記アノードと前記基板ホルダとの間に配置され、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通する矩形の第1の中央開口を有するアノードマスクと、前記アノードマスクと前記基板ホルダとの間に配置され、前記アノード側と前記基板ホルダ側とを貫通する矩形の第2の中央開口を有する中間マスクと、を含み、前記中間マスクは、前記基板ホルダの前記給電辺部材に対向して配置された一対の第1の辺部材と、前記基板ホルダの前記非給電辺部材に対向して配置された一対の第2の辺部材と、前記一対の第1の辺部材のそれぞれの前記基板ホルダ側の面に配置された、電場を供給するための第1の電場供給部材と、前記一対の第2の辺部材のそれぞれの前記基板ホルダ側の面に配置された、電場を供給するための第2の電場供給部材と、を含み、前記第1の電場供給部材は、前記矩形の第2の中央開口の第1の辺の延長上にある第1の位置と、前記第1の辺に対向する第2の辺の延長上にある第2の位置と、の間において前記第1の辺部材に沿って伸びるように構成され、前記第2の電場供給部材は、前記矩形の第2の中央開口の第3の辺の延長上にある第3の位置と、前記第3の辺に対向する第4の辺の延長上にある第4の位置と、の間において、前記第3の位置および前記第4の位置から離れて一対に電場を供給するように構成される、めっき装置を開示する。
【0045】
さらに、本願は、一実施形態として、前記第1の電場供給部材は、前記第1の位置から前記第2の位置まで伸びる第1の溝と、前記第1の溝の内部に配置された第1の補助アノードと、前記第1の補助アノードを遮蔽するように前記第1の溝に配置された第1の遮蔽部材と、前記第1の位置から前記第2の位置まで前記第1の遮蔽部材に形成された第1の開口と、を含み、前記第2の電場供給部材は、前記第3の位置から前記第4の位置まで伸びる第2の溝と、前記第2の溝の内部に配置された第2の補助アノードと、前記第2の補助アノードを遮蔽するように前記第2の溝に配置された第2の遮蔽部材と、前記第3の位置から離れて前記第2の遮蔽部材に形成された第2の開口と、前記第4の位置および前記第2の開口から離れて前記第2の遮蔽部材に形成された第3の開口と、を含む、めっき装置を開示する。
【0046】
さらに、本願は、一実施形態として、前記第1の電場供給部材は、前記第1の開口に配置された第1のメンブレンをさらに含み、前記第2の電場供給部材は、前記第2の開口および前記第3の開口にそれぞれ配置された第2のメンブレンおよび第3のメンブレンをさらに含む、めっき装置を開示する。
【0047】
さらに、本願は、一実施形態として、前記第2の電場供給部材は、前記第3の位置から前記第4の位置までを4等分割した第1の領域から第4の領域を有し、前記第2の開口は、前記第1の領域において前記第3の位置から離れて前記第2の遮蔽部材に形成され、前記第3の開口は、前記第4の領域において前記第4の位置から離れて前記第2の遮蔽部材に形成される、めっき装置を開示する。
【0048】
さらに、本願は、一実施形態として、前記第2の開口および前記第3の開口は、前記第2の辺部材に沿った方向のサイズが、前記第2の開口と前記第3の開口との間の前記第2の遮蔽部材の前記第2の辺部材に沿った方向のサイズよりも小さくなるように形成される、めっき装置を開示する。
【符号の説明】
【0049】
10 めっき装置
21 アノード
30 中間マスク
30a 第2の中央開口
30a-1 第1の辺
30a-2 第2の辺
30a-3 第3の辺
30a-4 第4の辺
31 第1の辺部材
32-1 第1の溝
32-2 第2の溝
33 第2の辺部材
34-1 第1の補助アノード
34-2 第2の補助アノード
35 第1の電場供給部材
36-1 第1の遮蔽部材
36-1a 第1の開口
36-2 第2の遮蔽部材
36-2a 第2の開口
36-2b 第3の開口
37 第2の電場供給部材
38-1 第1のメンブレン
38-2 第2のメンブレン
38-3 第3のメンブレン
40 基板ホルダ
42 給電辺部材
44 非給電辺部材
50 めっき槽
70 アノードマスク
70a 第1の中央開口
PG-1 第1の位置
PG-2 第2の位置
PG-3 第3の位置
PG-4 第4の位置
Q めっき液
WF 基板
WF1 被めっき面
【要約】
基板の一方の対向辺にのみ給電するめっき装置においてめっき膜厚分布の均一性を向上させる。
中間マスク30は、基板ホルダの給電辺部材に対向する一対の第1の辺部材31と、基板ホルダの非給電辺部材に対向する一対の第2の辺部材33と、第1の辺部材31に配置された第1の電場供給部材35と、第2の辺部材33に配置された第2の電場供給部材37と、を含む。第1の電場供給部材35は、第2の中央開口30aの第1の辺30a-1の延長上にある第1の位置PG-1と、第1の辺30a-1に対向する第2の辺30a-2の延長上にある第2の位置PG-2と、の間において第1の辺部材31に沿って伸びるように構成される。第2の電場供給部材37は、第2の中央開口30aの第3の辺30a-3の延長上にある第3の位置PG-3と、第3の辺30a-3に対向する第4の辺30a-4の延長上にある第4の位置PG-4と、の間において、第3の位置PG-3および第4の位置PG-4から離れて一対に電場を供給するように構成される。