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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】めっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/10 20060101AFI20240920BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20240920BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C25D21/10 301
C25D7/12
C25D21/12 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024535244
(86)(22)【出願日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2024008573
【審査請求日】2024-06-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 慎吾
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特許第7357824(JP,B1)
【文献】特開2011-26708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/12
17/00
17/06
21/10 - 21/12
H01M 21/288
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられたフォトレジスト層の開口密度が変化する方向である開口密度変化方向を取得することと、
前記開口密度変化方向が取得された前記基板を基板ホルダに保持させることと、
めっきを促進させる促進剤を含むめっき液を貯留するとともにアノードが配置されためっき槽の前記めっき液の内部に、前記基板ホルダに保持された前記基板を、前記アノードに対向するように浸漬させることと、
前記基板ホルダを回転させるとともに、撹拌機構によって前記めっき液を撹拌させながら、前記基板と前記アノードとの間に電流を供給するように構成された電源に、前記めっき液から前記基板に金属を析出させるための正方向電流を供給させる、第1めっき処理を実行することと、
前記開口密度変化方向が、前記撹拌機構によって撹拌された前記めっき液の流れの方向と非平行になる状態で前記基板ホルダの回転を停止させた状態で、前記撹拌機構によって前記めっき液を撹拌させながら、前記電源に、前記正方向電流と反対方向にパルス状に流れる電流である逆電流パルスを供給させる、第2めっき処理を実行することと、
前記第1めっき処理を再び実行することと、を含む、めっき方法。
【請求項2】
前記第2めっき処理において、前記開口密度変化方向が前記撹拌機構によって撹拌された前記めっき液の流れの方向に対して垂直になっている、請求項1に記載のめっき方法。
【請求項3】
前記撹拌機構は、往復移動することで前記めっき槽の前記めっき液を撹拌するように構成されたパドルを含み、
前記第2めっき処理における前記撹拌機構によって撹拌された前記めっき液の流れの方向として、前記パドルが往復移動する方向を用いる、請求項1に記載のめっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にめっきを施すめっき方法が知られている(例えば、特許文献1,2,3参照)。このようなめっき方法で用いられるめっき装置は、例えば、めっき液を貯留するとともにアノードが配置されためっき槽と、カソードとしての基板をアノードに対向するように保持する基板ホルダと、基板とアノードとの間に電流を供給するように構成された電源と、めっき液を攪拌するように構成された攪拌機構と、を備えている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
なお、特許文献2,3には、めっきによって基板に金属を析出させてバンプを形成する技術も開示されている。また、特許文献2,3には、めっきを促進させる促進剤を含むめっき液を用いるめっき方法において、基板及びアノードに正方向電流と逆電流パルスとが供給されるように電源を制御する技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7079388号公報
【文献】特許第7357824号公報
【文献】特開2006-131926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、めっきによって基板に形成されるバンプの高さの均一化が求められている。この点において、従来の技術は、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、バンプの高さの均一化を図ることができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき方法は、基板に設けられたフォトレジスト層の開口密度が変化する方向である開口密度変化方向を取得することと、前記開口密度変化方向が取得された前記基板を基板ホルダに保持させることと、めっきを促進させる促進剤を含むめっき液を貯留するとともにアノードが配置されためっき槽の前記めっき液の内部に、前記基板ホルダに保持された前記基板を、前記アノードに対向するように浸漬させることと、前記基板ホルダを回転させるとともに、撹拌機構によって前記めっき液を撹拌させながら、前記基板と前記アノードとの間に電流を供給するように構成された電源に、前記めっき液から前記基板に金属を析出させるための正方向電流を供給させる、第1めっき処理を実行することと、前記開口密度変化方向が、前記撹拌機構によって撹拌された前記めっき液の流れの方向と非平行になる状態で前記基板ホルダの回転を停止させた状態で、前記撹拌機構によって前記めっき液を撹拌させながら、前記電源に、前記正方向電流と反対方向にパルス状に流れる電流である逆電流パルスを供給させる、第2めっき処理を実行することと、前記第1めっき処理を再び実行することと、を含む。
【0008】
この態様によれば、基板に析出された金属によって形成されるバンプの高さの均一化を図ることができる。
【0009】
(態様2)
上記の態様1は、前記第2めっき処理において、前記開口密度変化方向が前記撹拌機構によって撹拌された前記めっき液の流れの方向に対して垂直になっていてもよい。
【0010】
(態様3)
上記の態様1又は態様2において、前記撹拌機構は、往復移動することで前記めっき槽の前記めっき液を撹拌するように構成されたパドルを含み、前記第2めっき処理における前記撹拌機構によって撹拌された前記めっき液の流れの方向として、前記パドルが往復移動する方向を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す平面図である。
図3】実施形態に係るめっきモジュールの構成を示す模式図である。
図4】実施形態に係る基板がめっき液に浸漬された状態を示す模式図である。
図5】実施形態に係るパドルの模式的な平面図である。
図6図6(A)は実施形態に係る基板の表面構成を説明するための模式図である。図6(B)は実施形態に係るフォトレジスト層の開口パターンの一例を示す模式図である。
図7図7(A)及び図7(B)は、実施形態に係る電源からアノードと基板とに供給される電流の時間波形の一例を説明するための図である。
図8図6(B)に例示するフォトレジスト層を有する基板に複数のバンプを形成したときの、各パターン領域のバンプの高さを測定した一例を示すグラフである。
図9】実施形態に係るめっき方法を説明するためのフローチャートの一例である。
図10】実施形態に係る基板の開口密度変化方向を説明するための模式的な平面図である。
図11図11(A)及び図11(B)は、基板の開口密度変化方向と撹拌時におけるめっき液の流れの方向とのなす角によって、バンプの高さの均一化の度合いが変化することを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、構成要素の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、いくつかの図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0013】
図1は、実施形態に係るめっき装置1000の全体構成を示す斜視図である。図2は、実施形態に係るめっき装置1000の全体構成を示す平面図(上面図)である。図1及び図2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、及び、制御モジュール800を備える。
【0014】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収容された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数及び配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、プリウェットモジュール200及びスピンリンスドライヤ600の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110及び搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、仮置き台(図示せず)を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0015】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数及び配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数及び配置は任意である。
【0016】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸等の処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数及び配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっきを施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数及び配置は任意である。
【0017】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数及び配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤ600が上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤ600の数及び配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0018】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収容された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板をプリウェットモジュール200へ受け渡す。
【0019】
プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっきを施す。
【0020】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送ロボット110は、スピンリンスドライヤ600から基板を受け取り、乾燥処理を施した基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収容したカセットが搬出される。
【0021】
なお、図1図2で説明しためっき装置1000の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1000の構成は、図1図2の構成に限定されるものではない。
【0022】
続いて、めっきモジュール400について説明する。なお、本実施形態に係るめっき装置1000が有する複数のめっきモジュール400は同様の構成を有しているので、1つのめっきモジュール400について説明する。
【0023】
図3は、めっき装置1000におけるめっきモジュール400の構成を示す模式図である。具体的には、図3は、基板Wfがめっき液Psに浸漬される前の状態におけるめっきモジュール400を模式的に図示している。図4は、基板Wfがめっき液Psに浸漬された状態を示す模式図である。
【0024】
図3及び図4に例示するめっき装置1000は、一例として、基板Wfの面方向を水平方向にした状態でめっき液Psに浸漬させるタイプのめっき装置(いわゆる、カップ式のめっき装置)である。但し、めっき装置1000の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、基板Wfの面方向を非水平方向(一例として、地面に対して垂直方向)にした状態でめっき液Psに浸漬させるタイプのめっき装置であってもよい。
【0025】
図3及び図4に例示するめっき装置1000のめっきモジュール400は、めっき槽10と、オーバーフロー槽20と、基板ホルダ30と、撹拌機構60の一例としてのパドル70と、を備えている。また、めっきモジュール400は、図3に例示するように、回転機構40と、傾斜機構45と、昇降機構50と、を備えている。また、めっきモジュール400は、図3に例示するように、センサ類130を備えている。また、めっきモジュール400は、図4に例示するように、電源80と、めっき液流動機構90とを備えている。
【0026】
本実施形態に係るめっき槽10は、上方に開口を有する有底の容器によって構成されている。具体的には、めっき槽10は、底壁10aと、この底壁10aの外周縁から上方に延在する外周壁10bとを有しており、この外周壁10bの上部が開口している。なお、めっき槽10の外周壁10bの形状は特に限定されるものではないが、本実施形態に係る外周壁10bは、一例として円筒形状を有している。めっき槽10の内部には、めっき液Psが貯留されている。
【0027】
めっき液Psとしては、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液Psの一例として、硫酸銅溶液を用いている。また、めっき液Psには所定の添加剤が含まれていてもよい。
【0028】
このめっき液Psに含まれる添加剤として、例えば、めっきを促進させる促進剤(具体的には、めっき皮膜の生成を促進させる促進剤)を用いることができる。この促進剤としては、例えば、SPS(ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド)等を用いることができる。
【0029】
めっき槽10の内部には、アノード11が配置されている。アノード11の具体的な種類は特に限定されるものではなく、不溶解アノードであってもよく、溶解アノードであってもよい。本実施形態では、アノード11の一例として、不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。
【0030】
図3図4に例示するように、めっき槽10の内部において、アノード11よりも上方には、イオン抵抗体12が配置されていてもよい。具体的には、図4の一部拡大図に例示するように、イオン抵抗体12は、複数の孔12a(細孔)を有する多孔質の板部材によって構成されている。孔12aは、イオン抵抗体12の下面と上面とを連通するように設けられている。
【0031】
このイオン抵抗体12は、アノード11とカソードとしての基板Wfとの間に形成される電場の均一化を図るために設けられている。本実施形態のように、めっき槽10にイオン抵抗体12が配置されることで、基板Wfに形成されるめっき皮膜(めっき層)の膜厚の均一化を容易に図ることができる。
【0032】
図3図4に例示するように、めっき槽10の内部において、アノード11よりも上方且つイオン抵抗体12よりも下方の箇所には、膜16が配置されていてもよい。この場合、めっき槽10の内部は、膜16によって、膜16よりも下方のアノード室17aと、膜16よりも上方のカソード室17bとに区画される。アノード11はアノード室17aに配置され、イオン抵抗体12や基板Wfはカソード室17bに配置される。膜16は、めっき液Psに含まれる金属イオンを含むイオン種が膜16を通過することを許容しつつ、めっき液Psに含まれる非イオン系のめっき添加剤が膜16を通過することを抑制するように構成されている。このような膜16として、例えばイオン交換膜を用いることができる。
【0033】
図4に例示するように、めっき液流動機構90は、めっき槽10のめっき液Psを流動させるように構成されている。本実施形態に係るめっき液流動機構90は、一例として、第1流動機構91aと第2流動機構91bとを備えている。
【0034】
第1流動機構91aは、アノード室17aのめっき液Psを流動させるための機構である。第2流動機構91bは、カソード室17bのめっき液Psを流動させるための機構である。第1流動機構91aは、配管92aを介してアノード室17aと連通されている。第2流動機構91bは、配管92bを介してカソード室17bと連通されている。なお、第1流動機構91a及び第2流動機構91bは、それぞれ、めっき液Psを圧送するためのポンプ等を備えている。
【0035】
図3及び図4を参照して、めっき槽10には、めっき槽10にめっき液Psを供給するための供給口が設けられている。具体的には、本実施形態に係るめっき槽10の外周壁10bには、アノード室17aにめっき液Psを供給するための第1供給口13aと、カソード室17bにめっき液Psを供給するための第2供給口13bと、が設けられている。第1排出口14aから排出されためっき液Psは、第1流動機構91aによって圧送されて、再び、第1供給口13aからアノード室17aに供給される。
【0036】
オーバーフロー槽20は、めっき槽10の外側に配置された、有底の容器によって構成されている。オーバーフロー槽20は、めっき槽10の外周壁10bの上端を超えためっき液Ps(すなわち、めっき槽10からオーバーフローしためっき液Ps)を一時的に貯留するために設けられている。オーバーフロー槽20に貯留されためっき液Psは、第2排出口14bから排出された後に、第2流動機構91bによって圧送されて、再び、第2供給口13bからカソード室17bに供給される。
【0037】
基板ホルダ30は、カソードとしての基板Wfを、基板Wfの被めっき面Wfaがアノード11に対向するように保持している。本実施形態において、基板Wfの被めっき面Wfaは、具体的には、基板Wfの下方側を向いた面(下面)に設けられている。
【0038】
基板ホルダ30は、回転機構40に接続されていている。回転機構40は、基板ホルダ30を回転させるための機構である。図3に例示されている「R1」は、基板ホルダ30の回転方向の一例である。回転機構40としては、公知の回転モータ等を用いることができる。傾斜機構45は、回転機構40及び基板ホルダ30を傾斜させるための機構である。昇降機構50は、上下方向に延在する支軸51によって支持されている。昇降機構50は、基板ホルダ30、回転機構40及び傾斜機構45を上下方向に昇降させるための機構である。昇降機構50としては、直動式のアクチュエータ等の公知の昇降機構を用いることができる。
【0039】
制御モジュール800は、マイクロコンピュータを備えており、このマイクロコンピュータは、プロセッサ801や、非一時的な記憶媒体としての記憶装置802等を備えている。制御モジュール800は、記憶装置802に記憶されたプログラムの指令に基づいて、プロセッサ801が作動することで、めっきモジュール400の動作を制御する。
【0040】
図3を参照して、センサ類130は、制御モジュール800の各種制御に用いられる各種の情報を検出して、この検出結果を制御モジュール800に伝える。センサ類130は、例えば、アノード11と基板Wfとの間の電流値(A)を検出する電流センサや、アノード11と基板Wfとの間の電圧値(V)を検出する電圧センサを含んでいる。
【0041】
また、センサ類130は、パドル70の移動速度(rpm、又は、m/sec)を検出するための速度センサを含んでいる。また、センサ類130は、基板ホルダ30の回転速度(rpm)を検出するための回転速度センサを含んでいる。また、センサ類130は、めっき槽10のめっき液Psの流速(m/sec)を検出するための流速センサを含んでいる。具体的には、この流速センサは、アノード室17aにおけるめっき液Psの流速を検出するための流速センサと、カソード室17bにおけるめっき液Psの流速を検出するための流速センサと、を含んでいる。
【0042】
また、センサ類130は、基板ホルダ30の回転角度を検出するための角度センサを備えている。制御モジュール800は、この角度センサの検出結果を取得することで、基板ホルダ30の回転角度(回転位置)を取得することができ、これにより、基板ホルダ30に保持された基板Wfの回転角度(回転位置)を取得することもできる。
【0043】
図4に例示するように、電源80は、基板Wfとアノード11とに電気的に接続されており、基板Wfとアノード11との間に電流を供給するように構成されている。電源80の動作は制御モジュール800が制御する。
【0044】
本実施形態に係る制御モジュール800は、基板Wfにめっきを施す「めっき処理時」において、めっき液Psから基板Wfに金属を析出させるための「正方向電流」と、正方向電流と反対方向にパルス状に流れる電流である「逆電流パルス」と、が供給されるように、電源80を制御する。
【0045】
図5は、パドル70の模式的な平面図である。図3図4及び図5を参照して、パドル70は、基板Wfとアノード11との間(具体的には、本実施形態では、一例として、基板Wfとイオン抵抗体12との間)に配置されている。パドル70は、制御モジュール800の指示を受けた駆動装置77によって駆動される。パドル70が駆動されることで、めっき槽10のめっき液Psは撹拌される。
【0046】
本実施形態に係るパドル70は、一例として、基板Wfと平行な「第1方向(本実施形態では、一例としてX方向)」、及び、第1方向とは反対の「第2方向(本実施形態では、一例として-X方向)」に交互に駆動される。すなわち、本実施形態に係るパドル70は、一例として、X軸の方向に往復移動する。
【0047】
図5に例示するように、本実施形態に係るパドル70は、一例として、パドル70の第1方向及び第2方向に対して垂直な方向(Y軸の方向)に延在する撹拌部材71aを、複数有している。隣接する撹拌部材71aの間には、隙間が設けられている。複数の撹拌部材71aの一端は連結部材72aに連結され、他端は連結部材72bに連結されている。
【0048】
但し、パドル70の構成は、これに限定されるものではなく、例えば、特許文献1に例示されているような、種々の公知のパドルを用いることができる。
【0049】
なお、パドル70は、少なくともめっき液Psを撹拌するときに、めっき槽10の内部に配置されていればよく、めっき槽10の内部に常に配置されている必要はない。例えば、パドル70の駆動が停止されてパドル70によるめっき液Psの撹拌が行われない場合には、パドル70はめっき槽10の内部に配置されていない構成とすることもできる。
【0050】
なお、「パドル70の移動速度がN(rpm)」とは、具体的には、パドル70が1往復すること(すなわち、パドル70が所定位置から出発して例えば第1方向に移動後に第2方向に移動して再び第1方向に移動して所定位置に戻るということ)を1分間にN回行う、ということを意味する。パドル70の移動速度が速いほど、パドル70によるめっき液Psの撹拌強度は強くなる。すなわち、パドル70の移動速度は、「めっき液Psの撹拌強度」の一例である。
【0051】
図6(A)は、基板Wfの表面構成を説明するための模式図である。具体的には、図6(A)には、めっき処理によって基板Wfにバンプ143が形成された様子が模式的に断面図示されている。なお、バンプ143は、具体的には、基板Wfに析出した金属(例えばCu)によって形成されたものである。
【0052】
図6(A)に例示するように、本実施形態に係る基板Wfの表面全面には、一例として、金属の薄いシード層140が予め設けられている。めっき処理時において、このシード層140を介して基板Wfの表面が給電される。シード層140における基板Wfの側とは反対側の面にはフォトレジスト層141が設けられている。フォトレジスト層141は、バンプ143が形成されるべき部分に開口142を有している。なお、図6(A)に例示されている「φ」は、フォトレジスト層141の開口142の径(μm)であり、「BH」は、バンプ143の高さ(μm)である。
【0053】
図6(B)は、フォトレジスト層141の開口パターンの一例を示す模式図である。図6(B)のNo1及びNo2には、開口142の径φが相対的に小さい場合(一例として、30μm)の例が図示され、No3及びNo4は開口142の径φが相対的に大きい場合(一例として、75μm)の例が図示されている。No1とNo2とを比較すると、No1の方がNo2よりも開口142が高密度で配置されている。No3とNo4とを比較すると、No3の方がNo4よりも開口142が高密度で配置されている。
【0054】
上述したようなフォトレジスト層141が設けられた基板Wfが基板ホルダ30に保持され、めっき槽10のめっき液Psに浸漬されて、めっき処理が行われる。めっき処理の実行中において、基板Wfの表面のうちフォトレジスト層141の開口142以外の部分は、フォトレジスト層141によってめっき液Psから遮蔽される。これにより、フォトレジスト層141の開口142の部分にのみめっき皮膜が成長することで、基板Wfにバンプ143が形成される。なお、めっき処理後にフォトレジスト層141は除去されてもよい。
【0055】
図7(A)及び図7(B)は、本実施形態に係る電源80から出力されてアノード11と基板Wfとに供給される電流の時間波形の一例を説明するための図である。図7(A)及び図7(B)に例示するように、制御モジュール800の指示を受けて電源80は、第1期間T1において正方向電流を供給する。「正方向」は、めっき液Ps中をアノード11から基板Wfへ向かって電流が流れる向きである。したがって、第1期間T1では、めっき液Ps中の金属イオンが基板Wfの被めっき面Wfaにおいて還元されることで、被めっき面Wfaに金属(バンプ143)が析出して、めっき皮膜が形成される。
【0056】
第1期間T1の長さは、めっき皮膜が実質的に成長していくように、めっき処理が行われる全時間のうち大部分を占める長さの時間であってもよい。換言すると、第1期間T1の長さに比べて、後述する第2期間T2と第3期間T3の長さの和は無視できる程度であってもよい。正方向電流の大きさは、例えば、第1期間T1の全体にわたって一定の電流値であってもよい。あるいは、正方向電流の電流値は、時間とともに変化するよう制御されてもよい。
【0057】
第1期間T1の途中に設けられた第2期間T2において、制御モジュール800の指示を受けて電源80は、上述の正方向電流とは反対方向の電流、すなわち、逆電流パルスを供給する。例えば、第2期間T2の長さ、すなわち逆電流パルスのパルス幅は、0.1秒~数秒程度であってもよい。第2期間T2では、第1期間T1における金属イオンの還元反応とは逆に、第1期間T1で基板Wfに形成されためっき皮膜の一部の金属がめっき液Psに再溶解するとともに、還元反応中にめっき皮膜の最表面に付着していた促進剤(めっき液Psに含まれる添加剤の1つ)が、めっき皮膜表面から脱離する。なお、逆電流パルスの電流値は、促進剤の脱離が十分に行われるような値に設定することが望ましい。
【0058】
図7(B)に例示するように、電源80は、第2期間T2に引き続く第3期間T3において、電流供給を停止してもよい。すなわち、第3期間T3では、電流はめっき液Ps中を正方向にも逆方向にも流れない。第2期間T2と同様、第3期間T3の長さは、第1期間T1と比較してきわめて短い長さの時間であり、例えば、0.1秒~数秒程度であってもよい。第3期間T3では、めっき皮膜表面から脱離した促進剤のめっき液Ps内での拡散が進行する。
【0059】
第2期間T2又は第3期間T3の後、再び電源80は、正方向電流を供給する。正方向電流は、所定のめっき処理時間が終了するまで、例えば、形成されためっき皮膜の膜厚が所定の目標膜厚に達するまで、継続される。
【0060】
図8は、図6(B)に例示するフォトレジスト層141を有する基板Wfに複数のバンプ143を形成したときの、各パターン領域のバンプ143の高さ(BH)を測定した一例を示すグラフである。図8の縦軸において、図6(B)の各パターン領域P1、P2、P3、P4に対応するそれぞれのバンプ143の高さ(BH)は、具体的には、当該パターン領域に含まれる複数のバンプ143の高さの平均値を示している。
【0061】
図8左のグラフは、めっき処理の全期間にわたって正方向電流を供給して、バンプ143を形成した場合の測定結果を示し、図8右のグラフは、めっき処理期間中に逆電流パルスを1回、供給して、バンプ143を形成した場合の測定結果を示す。
【0062】
図8から分かるように、全パターン領域の中で、パターン領域P1におけるバンプ143の高さ(BH)が最も低く、パターン領域P4におけるバンプ143の高さ(BH)が最も高い。これは、開口142の径φが小さいほど、また開口142の配置密度が高いほど、開口142の中へ金属イオンが十分に補充され難くなることで、めっき皮膜の形成レートがより低くなるためである。ここで、バンプ143の高さ(BH)の最大値と最小値との差を、「バンプ高さばらつき(ΔBH)」と定義する。
【0063】
図8から、めっき処理期間中に逆電流パルスを供給した場合(図8右のグラフ)は、逆電流パルスを供給しない場合(図8左のグラフ)よりも、バンプ高さばらつき(ΔBH)が小さいことが分かる。このように、逆電流パルスを供給することで、バンプ143の高さの均一化を図ることができる。
【0064】
図10は、基板Wfに設けられたフォトレジスト層141の開口密度が変化する方向である「開口密度変化方向(Dr2)」を説明するための模式的な平面図である。一例として、図10において、フォトレジスト層141の開口142は、開口密度が所定値よりも低い「領域Ar1(すなわち、開口密度が「疎」である領域)」と、開口密度が領域Ar1の開口密度よりも高い「領域Ar2(すなわち、開口密度が「密」である領域)」と、を含んでいる。この場合、開口密度変化方向(Dr2)は、領域Ar1から領域Ar2に向かう方向(又は、領域Ar2から領域Ar1に向かう方向)である。
【0065】
ここで、発明者の研究により、逆電流パルスが供給される際に、「開口密度変化方向(Dr2)」と、撹拌時におけるめっき液Psの流れの方向(Dr1)と、のなす角(α1)によって、バンプ143の高さの均一化の度合いが変化することが分かった(この詳細は、後述する図11で説明する実験結果の記載を参照)。そこで、本実施形態では、バンプ143の高さの均一化を効果的に図るために、以下の図9で説明するめっき方法を実行する。
【0066】
図9は、本実施形態に係るめっき方法を説明するためのフローチャートの一例である。まず、ユーザ(作業者)は、基板Wfに設けられたフォトレジスト層141の開口密度が変化する方向である「開口密度変化方向(Dr2)」を取得する(ステップS10)。
【0067】
なお、ユーザは、開口密度変化方向(Dr2)を取得するにあたり、例えば、基板Wfの仕様書等に開口密度に関する情報が記載されている場合には、この仕様書等に基づいて開口密度変化方向(Dr2)を取得してもよい。あるいは、ユーザは、目視や顕微鏡等を用いて基板Wfを観察することで、開口密度変化方向(Dr2)を取得(すなわち、測定)してもよい。
【0068】
ステップS10の後に、ユーザ、又は、制御モジュール800は、開口密度変化方向(Dr2)が取得された基板Wfを基板ホルダ30に保持させる(ステップS20)。
【0069】
なお、基板Wfは、例えば基板Wfに設けられたオリエンテーションフラットが基板ホルダ30の所定方向を向くように、基板ホルダ30に保持される。すなわち、基板Wfは、基板Wfの方位(オリエンテーションフラットの方向)が把握できるような態様で基板ホルダ30に保持される。このため、制御モジュール800は、基板ホルダ30に基板Wfが保持された状態において、基板Wfの開口密度変化方向(Dr2)がどの方向を向いているのかを把握することができる。
【0070】
次いで、制御モジュール800は、めっき槽10のめっき液Psの内部に、基板ホルダ30に保持された基板Wfを、アノード11に対向するように浸漬させる(ステップS30)。
【0071】
次いで、制御モジュール800は、第1めっき処理を実行する(ステップS40)。具体的には、ステップS40において、制御モジュール800は、撹拌機構60(一例としてパドル70)によるめっき液Psの攪拌、及び、回転機構40による基板ホルダ30の回転を実行させつつ、電源80に正方向電流を所定時間、供給させる。これにより、基板Wfにめっき皮膜(具体的にはバンプ143)が形成される。
【0072】
次いで、制御モジュール800は、第2めっき処理を実行する(ステップS50)。具体的には、ステップS50において、制御モジュール800は、開口密度変化方向(Dr2)が、撹拌機構60によって撹拌されためっき液Psの流れの方向(Dr1)と非平行になる状態で基板ホルダ30の回転を停止させた状態で、撹拌機構60によってめっき液Psを撹拌させながら、電源80に逆電流パルスを供給させる。
【0073】
なお、「開口密度変化方向(Dr2)」が「めっき液Psの流れの方向(Dr1)」と非平行であるとは、換言すると、「開口密度変化方向(Dr2)」が「めっき液Psの流れの方向(Dr1)」と同一方向でなく且つ反対方向でもない、ことを意味している。
【0074】
具体的には、図10を参照して、本実施形態に係る制御モジュール800は、開口密度変化方向(Dr2)とめっき液Psの流れの方向(Dr1)とのなす角(α1)が、0度よりも大きく180度よりも小さくなるような角度で基板ホルダ30の回転を停止させる。
【0075】
図10においては、一例として、開口密度変化方向(Dr2)とめっき液Psの流れの方向(Dr1)とが垂直(α1が90度)になるように基板ホルダ30の回転が停止している。制御モジュール800は、このように基板ホルダ30の回転を停止させた状態で、撹拌機構60によってめっき液Psを撹拌させながら、電源80に逆電流パルスを供給させる。
【0076】
なお、本実施例において、「撹拌機構60によって撹拌されためっき液Psの流れの方向(Dr1)」は、具体的には、「パドル70が往復移動する方向(Dr1)」と一致している。したがって、「撹拌機構60によって撹拌されためっき液Psの流れの方向(Dr1)」として、「パドル70が往復移動する方向(Dr1)」を用いてもよい。
【0077】
すなわち、この場合、ステップS50において、制御モジュール800は、開口密度変化方向(Dr2)が、パドル70が往復移動する方向(Dr1)と非平行になる状態で基板ホルダ30の回転を停止させた状態で、撹拌機構60によってめっき液Psを撹拌させながら、電源80に逆電流パルスを供給させればよい。
【0078】
図9を参照して、ステップS50の後に制御モジュール800は、第1めっき処理を再び実行する(ステップS60)。
【0079】
なお、制御モジュール800は、図9のステップS40、ステップS50、ステップS60を複数回繰り返し実行してもよい。
【0080】
図11(A)及び図11(B)は、開口密度変化方向(Dr2)と撹拌時におけるめっき液Psの流れの方向(Dr1)とのなす角(α1)によって、バンプ143の高さの均一化の度合いが変化することを説明するための図である。図11(A)及び図11(B)の縦軸は、ダイ内均一性(バンプ143の高さの最大値と最小値との差)を示している。
【0081】
具体的には、図11(A)は、バンプ143の開口率のバラツキ度合いが相対的に大きい基板Wf(ダイ内の開口率の差が8倍の基板Wf)を用いて、実験を行った結果を示している。また、図11(B)は、バンプ143の開口率のバラツキ度合いが相対的に小さい基板Wf(ダイ内の開口率の差が3倍の基板Wf)を用いて、実験を行った結果を示している。
【0082】
図11(A)のサンプルNo1は、第1めっき処理のみを実行した場合(すなわち、正方向電流のみを供給した場合)の実験結果である。サンプルNo2は、本実施形態に係るめっき方法(図9)を実行した場合の実験結果である。具体的には、サンプルNo2においては、ステップS50に係る第2めっき処理において、なす角(α1)として90度を用いた。サンプルNo3は、図9のフローチャートのステップS10~ステップS60を実行するが、ステップS50に係る第2めっき処理において、なす角(α1)としてゼロ度(又は180度)を用いた場合の実験結果である。すなわち、サンプルNo2は実施例であり、サンプルNo1及びサンプルNo3は比較例である。
【0083】
サンプルNo1とサンプルNo2及びサンプルNo3とを比較すると分かるように、めっき処理時に逆電流パルスが供給されることで、ダイ内均一性の値を低くできることが分かる(すなわち、バンプ143の高さの均一化を図れることが分かる)。また、サンプルNo2とサンプルNo3とを比較すると分かるように、第2めっき処理の実行時におけるなす角(α1)の値によって、ダイ内均一性の値が変化することが分かる。
【0084】
そして、サンプルNo2とサンプルNo3とを比較すると分かるように、サンプルNo2の方がサンプルNo3よりもダイ内均一性の値が低くなっている。このことから、サンプルNo2のように、第2めっき処理時において、開口密度変化方向(Dr2)が撹拌時におけるめっき液Psの流れの方向(Dr1)と非平行の状態で基板ホルダ30の回転を停止させる方が、サンプルNo3のように、開口密度変化方向(Dr2)が撹拌時におけるめっき液Psの流れの方向(Dr1)と平行な状態で基板ホルダ30の回転を停止させる場合に比較して、ダイ内均一性の値を小さくできることが分かる。
【0085】
これは、第2めっき処理時において、開口密度変化方向(Dr2)が撹拌時におけるめっき液Psの流れの方向(Dr1)と非平行の場合の方が、そうでない場合よりも、基板Wfの表面(すなわち、めっき皮膜の表面)に存在するめっき液Psを、基板Wfの表面全体に亘ってより均一に撹拌できるため、めっき皮膜の表面からの促進剤の脱離を均一且つ効果的に行わせることができた結果、ダイ内均一性の値が小さくなったものと考えられる。
【0086】
図11(B)のサンプルNo4は、第1めっき処理のみを実行した場合(すなわち、正方向電流のみを供給した場合)の実験結果である。サンプルNo5は、本実施形態に係るめっき方法(図9)を実行した場合の実験結果である。具体的には、サンプルNo5においては、ステップS50に係る第2めっき処理において、なす角(α1)として90度を用いた。サンプルNo6は、図9のフローチャートのステップS10~ステップS60を実行するが、ステップS50に係る第2めっき処理において、なす角(α1)としてゼロ度(又は180度)を用いた場合の実験結果である。すなわち、サンプルNo5は実施例であり、サンプルNo4及びサンプルNo6は比較例である。
【0087】
サンプルNo4とサンプルNo5及びサンプルNo6とを比較すると分かるように、めっき処理時に逆電流パルスが供給されることで、ダイ内均一性の値を低くできることが分かる。また、サンプルNo5とサンプルNo6とを比較すると分かるように、第2めっき処理の実行時におけるなす角(α1)の値によって、ダイ内均一性の値が変化することが分かる。
【0088】
そして、サンプルNo5とサンプルNo6とを比較すると分かるように、サンプルNo5のように、第2めっき処理時において、開口密度変化方向(Dr2)が撹拌時におけるめっき液Psの流れの方向(Dr1)と非平行の状態で基板ホルダ30の回転を停止させる方が、サンプルNo6のように、開口密度変化方向(Dr2)が撹拌時におけるめっき液Psの流れの方向(Dr1)と平行の状態で基板ホルダ30の回転を停止させる場合に比較して、ダイ内均一性の値を小さくできることが分かる。
【0089】
以上のように、第2めっき処理の実行時におけるなす角(α1)の値によって、ダイ内均一性が変化すること、すなわち、バンプ143の高さの均一化の程度が変化することが分かる。
【0090】
なお、本実施形態では、第2めっき処理の実行時におけるなす角(α1)の一例として90度を用いたが、これに限定されるものではない。なす角(α1)は、0度よりも大きく、180度よりも小さい範囲であれば、特に限定されるものではない。なす角(α1)に関しては、バンプ143の高さの均一化が最も図れるような値を予め実験によって求めて、この求められた値をなす角(α1)として設定すればよい。
【0091】
なす角(α1)とバンプ143の高さの均一化との関係性を調査したところ、なす角(α1)の値が90度に近くなるほど、パンプ143の高さがより均一化する傾向がある。したがって、パンプ143の高さの均一化を図るという観点においては、なす角(α1)は、40度以上135度以下の範囲から選択された値であることが好ましく、80度以上100度以下の範囲から選択された値であることがより好ましく、90度であることがさらに好ましい。
【0092】
以上説明したような本実施形態によれば、バンプ143の高さの均一化を図ることができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態や変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、さらなる種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0094】
10 めっき槽
11 アノード
30 基板ホルダ
60 撹拌機構
70 パドル
80 電源
141 フォトレジスト層
142 開口
Ps めっき液
Wf 基板
Dr1 撹拌機構によって撹拌されためっき液の流れの方向
Dr2 開口密度変化方向
【要約】
バンプの高さの均一化を図ることができる技術を提供する。
めっき方法は、開口密度変化方向Dr2を取得することと、開口密度変化方向が取得された基板Wfを基板ホルダ30に保持させることと、めっき液Psの内部に基板ホルダに保持された基板をアノードに対向するように浸漬させることと、基板ホルダを回転させるとともに撹拌機構60によってめっき液を撹拌させながら、電源80に正方向電流を供給させる第1めっき処理を実行することと、開口密度変化方向が撹拌機構によって撹拌されためっき液の流れの方向Dr1と非平行になる状態で基板ホルダの回転を停止させた状態で、撹拌機構によってめっき液を撹拌させながら、電源に逆電流パルスを供給させる第2めっき処理を実行することと、前記第1めっき処理を再び実行することと、を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11