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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】多層素材の物性予測システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/16 20060101AFI20240924BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
G01N25/16 Z
G01N3/00 P
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023523177
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 KR2022012499
(87)【国際公開番号】W WO2023027445
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】10-2021-0113915
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0138918
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0086165
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン・ナム・ムン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・テ・キム
(72)【発明者】
【氏名】サン・ジン・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ミ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ダム・ヒョク・イム
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/004500(WO,A1)
【文献】特表2018-503884(JP,A)
【文献】特開2012-141920(JP,A)
【文献】福永久雄,複合材料力学入門 第3章 積層板の理論と最適設計の基礎,日本複合材料学会誌,22巻3号,1996年03月15日,p.114-119,DOI:https://doi.org/10.6089/jscm.22.114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00
G01N 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測システムにおいて、
前記フィルムは非繊維性平板状のプラスチック成形物であり、
各層(k)の弾性係数(E)、各層(k)のポアソン比(ν)、各層(k)のせん断係数(G)、各層(k)の厚さ(Z)、各層(k)の積層角度(θ)、各層(k)の熱膨張係数(α 1,2)と水分膨張係数(β 1,2)、温度変化値(ΔT)、および湿度変化値(ΔC)のうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される入力部と、
前記入力部に入力された入力値を適用して、多層素材の物性を算出する制御部と、
前記制御部に連結されているディスプレイと、
前記制御部に連結されている保存部と、を含み、
前記制御部は、前記入力部に入力された入力値を処理して、多層素材の熱膨張係数(α)および多層素材の水分膨張係数(β)のうちいずれか1つ以上を算出する、多層素材の物性予測システム。
【請求項2】
前記入力部に入力される入力値は、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の弾性係数(E 1,2)、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のポアソン比(ν 1,2)、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のせん断係数(G 1,2)、
多層素材のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θ)(x方向は、多層素材の平面のうち任意に設定された一方向を意味する)、および
各層(k)の厚さ(Z)のうちいずれか1つ以上、ならびに
各層(k)の熱膨張係数(α 1,2)、水分膨張係数(β 1,2)、温度変化値(ΔT)、および湿度変化値(ΔC)のうちいずれか1つ以上、
のうちいずれか1つ以上を含む、請求項1に記載の多層素材の物性予測システム。
【請求項3】
前記入力部には、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の弾性係数(E 1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のポアソン比(ν 1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のせん断係数(G 1,2)、多層素材のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θ)(x方向は、多層素材の平面のうち任意に設定された一方向を意味する)、各層(k)の厚さ(Z)、各層(k)の熱膨張係数(α 1,2)、水分膨張係数(β 1,2)、温度変化値(ΔT)、および湿度変化値(ΔC)が入力される、請求項1に記載の多層素材の物性予測システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記弾性係数(E 1,2)、ポアソン比(ν 1,2)、せん断係数(G 1,2)を用いて各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の剛性マトリクス([Q] 1,2)を算出し、
前記各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の剛性マトリクス([Q] 1,2)に対する逆行列([S] 1,2)を設定し、
前記剛性マトリクス([Q] 1,2)に多層素材の積層角度(θ)を反映して、多層素材の剛性マトリクス([Q] x,y)を再設定し、
各層(k)の厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を用いて多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)を算出し、
前記多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を設定し、
各層(k)の熱膨張係数(α 1,2)、水分膨張係数(β 1,2)、温度変化値(ΔT)、湿度変化値(ΔC)を用いて各層(k)の主方向別に各層(k)の水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率(e 1,2)を算出し、
前記フリーラミナ熱水変形率に各層(k)の積層角度(θ)を反映して、多層素材の熱水変形率変形(e x,y,s)を算出し、
前記多層素材の熱水変形率変形(e x,y,s)と、全体積層体である多層素材の剛性マトリクス([Q] x,y)と、各層(k)の厚さ(Z)に基づいて多層素材で発生する熱水力(MHT x,y,s)および熱水モーメント(MHT x,y,s)を算出し、
前記熱水力(MHT x,y,s)および熱水モーメント(MHT x,y,s)に外力(N、M)を加えることにより、全体力(/N)および全体モーメント(/M)を構成し、
前記全体力(/N)および全体モーメント(/M)と、多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を用いて多層素材の熱膨張係数(α)と水分膨張係数(β)を算出する、請求項1に記載の多層素材の物性予測システム。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、
前記全体力(/N)および全体モーメント(/M)と多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を用いて中間面の変形率(εx,y)および曲率(kx,y,s)を算出し、
前記中間面の曲率(kx,y,s)と、サンプルサイズ(x、y)の情報を用いて多層素材の反りを算出する、請求項4に記載の多層素材の物性予測システム。
【請求項6】
前記制御部は、さらに、
多層素材の総厚さ(h)と前記逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)の値を用いて多層素材の弾性係数(Ex,y)、せん断係数(Gx,y)、ポアソン比(νx,y)を算出する、請求項4に記載の多層素材の物性予測システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記弾性係数(E 1,2)、ポアソン比(ν 1,2)、せん断係数(G 1,2)を用いて各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の剛性マトリクス([Q] 1,2)を算出し、
前記各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の剛性マトリクス([Q] 1,2)に対する逆行列([S] 1,2)を設定し、
前記剛性マトリクス([Q] 1,2)に多層素材の積層角度(θ)を反映して、多層素材の剛性マトリクス([Q] x,y)を再設定し、
各層(k)の厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を用いて多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)を算出し、
前記多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を設定し、
多層素材の総厚さ(h)と前記逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)の値を用いて多層素材の弾性係数(Ex,y)、せん断係数(Gx,y)、ポアソン比(νx,y)を算出し、
各層(k)の熱膨張係数(α 1,2)、水分膨張係数(β 1,2)、温度変化値(ΔT)、湿度変化値(ΔC)を用いて各層(k)の主方向別に各層(k)の水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率(e 1,2)を算出し、
前記フリーラミナ熱水変形率に各層(k)の積層角度(θ)を反映して、多層素材の熱水変形率変形(e x,y,s)を算出し、
前記多層素材の熱水変形率変形(e x,y,s)と、全体積層体である多層素材の剛性マトリクス([Q] x,y)と、各層(k)の厚さ(Z)に基づいて多層素材で発生する熱水力(MHT x,y,s)および熱水モーメント(MHT x,y,s)を算出し、
前記熱水力(MHT x,y,s)および熱水モーメント(MHT x,y,s)に外力(N、M)を加えることにより、全体力(/N)および全体モーメント(/M)を構成し、
前記全体力(/N)および全体モーメント(/M)と、多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を用いて多層素材の熱膨張係数(α)と水分膨張係数(β)を求め、
前記全体力(/N)および全体モーメント(/M)と多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を用いて中間面の変形率(εx,y)および曲率(kx,y,s)を算出し、
前記中間面の曲率(kx,y,s)と、サンプルサイズ(x、y)の情報を用いて多層素材の反りをさらに算出する、請求項1に記載の多層素材の物性予測システム。
【請求項8】
n個(nは2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測方法において、
前記フィルムは非繊維性平板状のプラスチック成形物であり、
各層(k)の弾性係数(E)、各層(k)のポアソン比(ν)、各層(k)のせん断係数(G)、各層(k)の厚さ(Z)、各層(k)の積層角度(θ)、各層(k)の熱膨張係数(α 1,2)と水分膨張係数(β 1,2)、温度変化値(ΔT)、および湿度変化値(ΔC)のうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される段階と、
入力された入力値を適用して、多層素材の熱膨張係数(α)および多層素材の水分膨張係数(β)のうちいずれか1つ以上の出力値を算出する段階と、を含む多層素材の物性予測方法。
【請求項9】
前記入力値が入力される段階で、入力値は、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の弾性係数(E 1,2)、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のポアソン比(ν 1,2)、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のせん断係数(G 1,2)、
多層素材のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θ)(x方向は、多層素材の平面のうち任意に設定された一方向を意味する)、および
各層(k)の厚さ(Z)のうちいずれか1つ以上、ならびに
各層(k)の熱膨張係数(α 1,2)、水分膨張係数(β 1,2)、温度変化値(ΔT)、および湿度変化値(ΔC)のうちいずれか1つ以上、
のうちいずれか1つ以上を含む、請求項8に記載の多層素材の物性予測方法。
【請求項10】
前記入力値が入力される段階は、
各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の弾性係数(E 1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のポアソン比(ν 1,2)、各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)のせん断係数(G 1,2)、多層素材のx方向に対する各層の機械方向(1)の角度(θ)、各層(k)の厚さ(Z)が入力される段階(S11)を含む、請求項8に記載の多層素材の物性予測方法。
【請求項11】
前記出力値を算出する段階は、
前記弾性係数(E 1,2)、ポアソン比(ν 1,2)、せん断係数(G 1,2)を用いて各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の剛性マトリクス([Q] 1,2)を算出する段階(S12)と、
前記各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の剛性マトリクス([Q] 1,2)に対する逆行列([S] 1,2)を設定する段階(S13)と、
前記剛性マトリクス([Q] 1,2)に多層素材の積層角度(θ)を反映して、多層素材の剛性マトリクス([Q] x,y)を再設定する段階(S14)と、
各層(k)の厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を用いて多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)を算出する段階(S15)と、
前記多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を設定する段階(S16)と、
各層(k)の熱膨張係数(α 1,2)、水分膨張係数(β 1,2)、温度変化値(ΔT)、および湿度変化値(ΔC)を入力する段階(S21)と、
各層(k)の熱膨張係数(α 1,2)、水分膨張係数(β 1,2)、温度変化値(ΔT)、および湿度変化値(ΔC)を用いて各層(k)の主方向別に各層(k)の水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率(e 1,2)を算出する段階(S22)と、
前記フリーラミナ熱水変形率に各層(k)の積層角度(θ)を反映して、多層素材の熱水変形率変形(e x,y,s)を算出する段階(S23)と、
前記多層素材の熱水変形率変形(e x,y,s)と、前記多層素材の剛性マトリクス([Q] x,y)と、各層(k)の厚さ(Z)に基づいて多層素材で発生する熱水力(MHT x,y,s)および熱水モーメント(MHT x,y,s)を算出する段階(S24)と、
前記熱水力(MHT x,y,s)および熱水モーメント(MHT x,y,s)に外力(N、M)を加えることにより、全体力(/N)および全体モーメント(/M)を構成する段階(S25)と、
前記全体力(/N)および全体モーメント(/M)と、多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を用いて多層素材の熱膨張係数(α)と水分膨張係数(β)を求める段階(S26)と、を含む、請求項8に記載の多層素材の物性予測方法。
【請求項12】
前記全体力(/N)および全体モーメント(/M)と、多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を用いて中間面の変形率(εx,y)および曲率(kx,y,s)を算出する段階(S27)と、
前記中間面の曲率(kx,y,s)と、サンプルサイズ(x、y)の情報を用いて多層素材の反りを算出する段階(S28)と、をさらに含む請求項11に記載の多層素材の物性予測方法。
【請求項13】
前記逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を設定する段階(S16)の後に、
多層素材の総厚さ(h)と前記逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)の値を用いて多層素材の弾性係数(/Ex,y)、せん断係数(/Gx,y)、ポアソン比(/νx,y)を算出する段階(S17)をさらに含む請求項11に記載の多層素材の物性予測方法。
【請求項14】
前記出力値を算出する段階は、
前記弾性係数(E 1,2)、ポアソン比(ν 1,2)、せん断係数(G 1,2)を用いて各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の剛性マトリクス([Q] 1,2)を算出する段階(S12)と、
前記各層(k)の機械方向(1)および横軸方向(2)の剛性マトリクス([Q] 1,2)に対する逆行列([S] 1,2)を設定する段階(S13)と、
前記剛性マトリクス([Q] 1,2)に多層素材の積層角度(θ)を反映して、多層素材の剛性マトリクス([Q] x,y)を再設定する段階(S14)と、
各層(k)の厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を用いて多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)を算出する段階(S15)と、
前記多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を設定する段階(S16)と、
多層素材の総厚さ(h)と前記逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)の値を用いて多層素材の弾性係数(/Ex,y)、せん断係数(/Gx,y)、ポアソン比(/νx,y)を算出する段階(S17)と、
各層(k)の熱膨張係数(α 1,2)、水分膨張係数(β 1,2)、温度変化値(ΔT)、湿度変化値(ΔC)を入力する段階(S21)と、
各層(k)の熱膨張係数(α 1,2)、水分膨張係数(β 1,2)、温度変化値(ΔT)、湿度変化値(ΔC)を用いて各層(k)の主方向別に各層(k)の水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率(e 1,2)を算出する段階(S22)と、
前記フリーラミナ熱水変形率に各層(k)の積層角度(θ)を反映して、多層素材の熱水変形率変形(e x,y,s)を算出する段階(S23)と、
前記多層素材の熱水変形率変形(e x,y,s)と、前記多層素材の剛性マトリクス([Q] x,y)と、各層(k)の厚さ(Z)に基づいて多層素材で発生する熱水力(MHT x,y,s)および熱水モーメント(MHT x,y,s)を算出する段階(S24)と、
前記熱水力(MHT x,y,s)および熱水モーメント(MHT x,y,s)に外力(N、M)を加えることにより、全体力(/N)および全体モーメント(/M)を構成する段階(S25)と、
前記全体力(/N)および全体モーメント(/M)と、多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を用いて多層素材の熱膨張係数(α)と水分膨張係数(β)を求める段階(S26)と、
前記全体力(/N)および全体モーメント(/M)と、多層素材の剛性マトリクス([A]x,y、[B]x,y、[D]x,y)に対する逆行列([a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y)を用いて中間面の変形率(εx,y)および曲率(kx,y,s)を算出する段階(S27)と、
前記中間面の曲率(kx,y,s)と、サンプルサイズ(x、y)の情報を用いて多層素材の反りをさらに算出する段階(S28)と、を含む、請求項8に記載の多層素材の物性予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年08月27日付の韓国特許出願第10-2021-0113915号、2021年10月19日付の韓国特許出願第10-2021-0138918号および2022年07月13日付の韓国特許出願第10-2022-0086165号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、多層素材の物性予測システムおよび方法に関し、より具体的には、多層素材の開発時に、その物性をあらかじめ予測できるシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高分子フィルムは、非繊維性平板状のプラスチック成形物を言い、軽く、遮断性が良く、透明性にも優れ、価格も相対的に安いため、包装材、生活用品、電子機器、自動車、航空機など多くの分野において使用されている。
【0004】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成高分子が高分子フィルムに加工されて国内外で広く使用されており、現在は、数多くの合成高分子を単独でまたはブレンドして高分子フィルム用材料として用いている。
【0005】
多層素材は、フィルムの多機能化を目的として種類が異なるフィルムを積層した複合フィルムであり、例えば、ポリエチレン(PE)の優れた機械的特性とセロハンの印刷美麗性を組み合わせたフィルムとナイロンとビニルアルコール‐エチレン共重合体などの組み合わせによる各種多層素材が包装用材料として使用されている。
【0006】
このような多層素材を素材として開発する場合に、全体積層体の膨張係数(Expansion coefficient)のような物性を予測する必要がある。
【0007】
膨張係数(Expansion coefficient)は、物体が加熱されたとき、または水分を吸収したとき、その長さまたは体積が増大する割合を示す値である。前者を熱膨張係数といい、後者を水分膨張係数という。
【0008】
多層素材の素材は、製造工程で機械方向(Machine Direction、MD)および横軸方向(Transverse Direction、TD)に異方性を示すので、素材の堅固な(robust)設計のためには、多層素材の全体積層体の均質化された剛性だけでなく、熱膨張、水分膨張による非対称構造によって不所望に発生する反り(Warpage)に対する予測が必要である。
【0009】
多層素材の素材開発過程で全体積層体の均質化された熱膨張係数および水分膨張係数は、最終製品の変形と直接的な関係がある。したがって、素材の堅固な(robust)設計のためには、環境的要因である温度変化、湿度変化を考慮した熱膨張および水分膨張と共に反り(Warpage)に対する予測を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前述のような技術的課題を解決するためのものであって、多層素材を素材として開発する場合に、全体積層体の熱膨張係数および水分膨張係数のような物性を予測することができ、反り(Warpage)に対する予測を行うことができる、多層素材の物性予測装置およびその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測システムは、n個(nは、2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測システムにおいて、
各層kの弾性係数E、各層kのポアソン比ν、各層kのせん断係数G、各層kの厚さZ、各層kの積層角度θ、各層kの熱膨張係数α 1,2と水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、および湿度変化値ΔCのうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される入力部と、
入力部に入力された値を適用して、多層素材の物性を算出する制御部と、
上記制御部に連結されているディスプレイと、
上記制御部に連結されている保存部と、を含む。
【0012】
また、本発明は、多層素材の物性予測方法を提供する。一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法は、n個(nは、2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測方法において、
各層kの弾性係数E、各層kのポアソン比ν、各層kのせん断係数G、各層kの厚さZ、各層kの積層角度θ、各層kの熱膨張係数α 1,2と水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、および湿度変化値ΔCのうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される段階と、
入力された入力値を適用して、多層素材の熱膨張係数α、多層素材の水分膨張係数βおよび多層素材の反りのうちいずれか1つ以上の出力値を算出する段階と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、多層素材を素材として開発する場合に、全体積層体の熱膨張係数および水分膨張係数のような物性を予測することができ、反り(Warpage)に対する予測を行うことができる、効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測装置の構成図である。
図2】本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測装置の入力画面の構成図である。
図3】本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測装置の出力画面の構成図である。
図4】本発明の第2実施形態による多層素材の物性予測方法のフローチャートである。
図5】本発明の第3実施形態による多層素材の物性予測方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記目的を達成するための一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測システムは、n個(nは、2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測システムにおいて、
各層kの弾性係数E、各層kのポアソン比ν、各層kのせん断係数G、各層kの厚さZ、各層kの積層角度θ、各層kの熱膨張係数α 1,2と水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、および湿度変化値ΔCのうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される入力部と、
入力部に入力された値を適用して、多層素材の物性を算出する制御部と、
上記制御部に連結されているディスプレイと、
上記制御部に連結されている保存部と、を含む。
【0016】
また、上記制御部は、入力部で入力された入力値を処理して、多層素材の熱膨張係数α、多層素材の水分膨張係数βおよび多層素材の反りのうちいずれか1つ以上を算出する。
【0017】
具体的な実施形態において、上記入力部に入力される入力値は、
各層kの機械方向1および横軸方向2の弾性係数E 1,2
各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比ν 1,2
各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数G 1,2
多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θ、ここで、x方向は、多層素材の平面のうち任意に設定された一方向を意味し、
各層kの厚さZ、のうちいずれか1つ以上;および
各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、および湿度変化値ΔCのうちいずれか1つ以上;
のうちいずれか1つ以上を含む。
【0018】
具体的な実施形態において、上記入力部には、
各層kの機械方向1および横軸方向2の弾性係数E 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比ν 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数G 1,2、多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θ、ここで、x方向は、多層素材の平面のうち任意に設定された一方向を意味し、各層kの厚さZ、各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、および湿度変化値ΔCが入力される。
【0019】
別の具体的な実施形態において、上記制御部は、
上記弾性係数E 1,2、ポアソン比ν 1,2、せん断係数G 1,2を利用して各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q] 1,2を算出し、
上記各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q] 1,2に対する逆行列[S] 1,2を設定し、
上記剛性マトリクス[Q] 1,2に多層素材の積層角度θを反映して、多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yを再設定し、
各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを算出し、
上記多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを設定し、
上記各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを利用して各層kの主方向別に各層kの水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率e 1,2を算出し、
上記フリーラミナ熱水変形率に各層kの積層角度θを反映して、多層素材の熱水変形率変形e x,y,sを算出し、
上記多層素材の熱水変形率変形e x,y,sと、上記全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yと、各層kの厚さZを基に多層素材で発生する熱水力MHT x,y,sおよび熱水モーメントMHT x,y,sを算出し、
上記熱水力MHT x,y,sおよび熱水モーメントMHT x,y,sに外力N、Mを加えることにより、全体力/Nおよび全体モーメント/Mを構成し、
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して多層素材の熱膨張係数αと水分膨張係数βを算出する。
【0020】
別の一実施形態において、上記制御部は、
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して中間面の変形率εx,yおよび曲率kx,y,sを算出し、
上記中間面の曲率kx,y,sと、サンプルサイズx、y情報を活用して多層素材の反りを算出することを含む。
【0021】
別の一実施形態において、上記制御部は、
多層素材の総厚さhと上記逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して多層素材の弾性係数Ex,y、せん断係数Gx,y、ポアソン比νx,yを算出することをさらに含む。
【0022】
具体的な一実施形態において、
上記入力部には、
各層kの機械方向1および横軸方向2の弾性係数E 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比ν 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数G 1,2、多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θ、ここで、x方向は、多層素材の平面のうち任意に設定された一方向を意味し、各層kの厚さZ、各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、および湿度変化値ΔCが入力される。
【0023】
別の具体的な実施形態において、上記制御部は、
上記弾性係数E 1,2、ポアソン比ν 1,2、せん断係数G 1,2を利用して各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q] 1,2を算出し、
上記各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q] 1,2に対する逆行列[S] 1,2を設定し、
上記剛性マトリクス[Q] 1,2に多層素材の積層角度θを反映して、多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yを再設定し、
各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを算出し、
上記多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを設定し、
多層素材の総厚さhと上記逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して多層素材の弾性係数Ex,y、せん断係数Gx,y、ポアソン比νx,yを算出し、
上記各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを利用して各層kの主方向別に各層kの水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率e 1,2を算出し、
上記フリーラミナ熱水変形率に各層kの積層角度θを反映して、多層素材の熱水変形率変形e x,y,sを算出し、
上記多層素材の熱水変形率変形e x,y,sと、上記全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yと、各層kの厚さZを基に多層素材で発生する熱水力MHT x,y,sおよび熱水モーメントMHT x,y,sを算出し、
上記熱水力MHT x,y,sおよび熱水モーメントMHT x,y,sに外力N、Mを加えることにより、全体力/Nおよび全体モーメント/Mを構成し、
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して多層素材の熱膨張係数αと水分膨張係数βを求め、
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して中間面の変形率εx,yおよび曲率kx,y,sを算出し、
上記中間面の曲率kx,y,sと、サンプルサイズx、y情報を活用して多層素材の反りを算出する。
【0024】
また、本発明は、多層素材の物性予測方法を提供する。一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法は、n個(nは、2以上の整数)のフィルムが積層された多層素材の物性予測方法において、
各層kの弾性係数E、各層kのポアソン比ν、各層kのせん断係数G、各層kの厚さZ、各層kの積層角度θ、各層kの熱膨張係数α 1,2と水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、および湿度変化値ΔCのうちいずれか1つ以上を含む入力値が入力される段階と、
入力された入力値を適用して、多層素材の熱膨張係数α、多層素材の水分膨張係数βおよび多層素材の反りのうちいずれか1つ以上の出力値を算出する段階と、を含む。
【0025】
一実施形態において、上記入力値が入力される段階で、
入力値は、
各層kの機械方向1および横軸方向2の弾性係数E 1,2
各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比ν 1,2
各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数G 1,2
多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θ、ここで、x方向は、多層素材の平面のうち任意に設定された一方向を意味し、
各層kの厚さZのうちいずれか1つ以上;および
各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、および湿度変化値ΔCのうちいずれか1つ以上;
のうちいずれか1つ以上を含む。
【0026】
一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法において、上記入力値が入力される段階は、各層kの機械方向1および横軸方向2の弾性係数E 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比ν 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数G 1,2、多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θ、各層kの厚さZを入力する段階S11を含む。
【0027】
別の一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法において、上記出力値が入力される段階は、
上記弾性係数E 1,2、ポアソン比ν 1,2、せん断係数G 1,2を利用して各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q] 1,2を算出する段階S1,2と、
上記各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q] 1,2に対する逆行列[S] 1,2を設定する段階S13と、
上記剛性マトリクス[Q] 1,2に多層素材の積層角度θを反映して、多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yを再設定する段階S14と、
各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを算出する段階S15と、
上記多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを設定する段階S16と、
各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを入力する段階S21と、
上記各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを利用して各層kの主方向別に各層kの水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率e 1,2を算出する段階S22と、
上記フリーラミナ熱水変形率に各層kの積層角度θを反映して、多層素材の熱水変形率変形e x,y,sを算出する段階S23と、
上記多層素材の熱水変形率変形e x,y,sと、上記多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yと、各層kの厚さZを基に多層素材で発生する熱水力MHT x,y,sおよび熱水モーメントMHT x,y,sを算出する段階S24と、
上記熱水力MHT x,y,sおよび熱水モーメントMHT x,y,sに外力N、Mを加えることにより、全体力/Nおよび全体モーメント/Mを構成する段階S25と、
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して多層素材の熱膨張係数αと水分膨張係数βを求める段階S26と、を含む。
【0028】
別の一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法は、
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して中間面の変形率εx,yおよび曲率kx,y,sを算出する段階S27と、
上記中間面の曲率kx,y,sと、サンプルサイズx、y情報を活用して多層素材の反りを算出する段階S28と、を含む。
【0029】
別の一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法は、上記逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを設定する段階S16後、
多層素材の総厚さhと上記逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,y、ポアソン比/νx,yを算出する段階S17をさらに含む。
【0030】
具体的な一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法において、上記入力値が入力される段階は、
各層kの機械方向1および横軸方向2の弾性係数E 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比ν 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数G 1,2、多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θ、各層の厚さZを入力する段階S11を含む。
【0031】
具体的な別の一実施形態において、本発明による多層素材の物性予測方法において、上記出力値が入力される段階は、
上記弾性係数E 1,2、ポアソン比ν 1,2、せん断係数G 1,2を利用して各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q] 1,2を算出する段階S1,2と、
上記各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q] 1,2に対する逆行列[S] 1,2を設定する段階S13と、
上記剛性マトリクス[Q] 1,2に多層素材の積層角度θを反映して、多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yを再設定する段階S14と、
各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを算出する段階S15と、
上記多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを設定する段階S16と、
多層素材の総厚さhと上記逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,y、ポアソン比/νx,yを算出する段階S17と、
各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを入力する段階S21と、
上記各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを利用して各層kの主方向別に各層kの水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率e 1,2を算出する段階S22と、
上記フリーラミナ熱水変形率に各層kの積層角度θを反映して、多層素材の熱水変形率変形e x,y,sを算出する段階S23と、
上記多層素材の熱水変形率変形e x,y,sと、上記多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yと、各層kの厚さZを基に多層素材で発生する熱水力MHT x,y,sおよび熱水モーメントMHT x,y,sを算出する段階S24と、
上記熱水力MHT x,y,sおよび熱水モーメントMHT x,y,sに外力N、Mを加えることにより、全体力/Nおよび全体モーメント/Mを構成する段階S25と、
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して多層素材の熱膨張係数αと水分膨張係数βを求める段階S26と、
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して中間面の変形率εx,yおよび曲率kx,y,sを算出する段階S27と、
上記中間面の曲率kx,y,sと、サンプルサイズx、y情報を活用して多層素材の反りを算出する段階S28と、を含む。
【0032】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できる程度に詳細に説明するために、本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明することとする。本発明の目的、作用、効果を含んでその他他の目的、特徴点など、および動作上のメリットが好ましい実施形態の説明によりさらに明確になる。
【0033】
参考として、ここで開示される実施形態は、様々な実施可能な例のうち、当業者の理解を助けるために最も好ましい実施形態を選定して提示したものであり、本発明の技術的思想が必ず提示された実施形態のみにより限定または制限されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で均等物ないし代替物を含む多様な変化と付加および変更が可能である。
【0034】
また、本願の明細書および請求範囲に使用された用語や単語の表現は、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて定義されたものであり、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されるべきものではなく、本発明の技術的思想に符合する意味や概念と解釈すべきである。一例として、単数の表現は、文脈上明白に相異に意味しない限り、複数の表現を含み、方向に関する表現は、説明上の便宜のために図面上に表現された位置を基準として設定し、「連結される」または「接続される」という表現は、直接的な連結または接続だけでなく、中間に他の構成要素を媒介とする連結または接続を含む。また、「~部」という表現は、ハードウェアを利用して実現されるユニット、ソフトウェアを利用して実現されるユニット、ハードウェアやソフトウェア両方を利用して実現されるユニットなどを含み、1個のユニットは、1個以上のハードウェアまたはソフトウェアを利用して実現されることもでき、2個以上のユニットが1個のハードウェアまたはソフトウェアを利用して実現されることもできる。
【0035】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測装置の構成図である。
【0036】
図1に示されたように、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測装置の構成は、ユーザが各層kの機械方向(Machine Direction、MD)(以下「1」と設定し、主方向を意味する)および横軸方向(Transverse Direction、TD)(以下「2」と設定する)の弾性係数(Elastic modulus)e 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比(Poisson’s ratio)ν 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数(Shear modulus)G 1,2、多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θ、各層kの厚さZ、各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、および湿度変化値ΔCのうちいずれか1つ以上が入力される入力部10と、上記入力部10に連結されており、全体積層体物性算出部21と膨張係数および反り算出部22を含む制御部20と、上記制御部20に連結されているディスプレイ30と、上記制御部20に連結されている保存部40と、を含んでなる。
【0037】
図2は、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測装置の入力画面の構成図である。
【0038】
図2に示されたように、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測装置の入力画面の構成は、各層別に名前入力欄111、厚さ入力欄11,2、角度入力欄113が配置されている積層情報入力部11と、各層別に機械方向(MD)弾性係数入力欄1,21、横軸方向(TD)弾性係数入力欄1,22、ポアソン比入力欄1,23、熱膨張率入力欄1,24が配置されている剛性予測入力部1,2と、サンプルの縦横長さ入力欄131が配置されているサンプルサイズ入力部13と、X軸引張力入力欄141、Y軸引張力入力欄142、せん断力入力欄143、温度変化量入力欄144が配置されている外力入力部14と、を含んでなる。
【0039】
本発明の第1実施形態の入力画面では、多層素材が3個のフィルム層からなるものと設定されているが、4個以上のフィルム層からなる入力画面を提供することもできる。
【0040】
図3は、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測装置の出力画面の構成図である。
【0041】
図3に示されたように、本発明の第1実施形態による多層素材の物性予測装置の出力画面は、剛性均質化結果32として機械方向(MD)弾性係数、横軸方向(TD)弾性係数、ポアソン比、せん断係数、体積弾性率、熱膨張率を出力して、反りプロット(Warpage plot)32を出力し、厚さによるx方向変形率33、厚さによるx方向応力34、厚さによるy方向変形率35、厚さによるy方向応力36を出力する。
【0042】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態による多層素材の物性予測方法のフローチャートである。図4に示されたように、本発明の第2実施形態による多層素材の物性予測方法は、例えば、次の通りである。
【0043】
2個以上のフィルムが積層された多層素材の物性予測方法において、
各層kの機械方向1および横軸方向2の弾性係数(Elastic modulus)e 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のポアソン比(Poisson’s ratio)ν 1,2、各層kの機械方向1および横軸方向2のせん断係数(Shear modulus)G 1,2、多層素材のx方向に対する各層の機械方向1の角度θ、各層kの厚さZを入力する段階S11を行う。
【0044】
上記弾性係数E 1,2、ポアソン比ν 1,2、せん断係数(Shear modulus)G 1,2を利用して各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス(stiffness matrix)[Q] 1,2を次の式(1)のように算出する段階S1,2を行う。
【0045】
【数1】
【0046】
等方性物質の場合に、G=E/2(1+ν)である。
【0047】
このように算出した各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q] 1,2に対する逆行列である[S] 1,2(compliance matrix)を設定する段階S13を行う。
【0048】
上記導き出された剛性マトリクス[Q] 1,2に多層素材の積層角度θを反映して、全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yを次の式(2)のように再設定する段階S14を行う。
【0049】
【数2】
【0050】
また、各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを次の式(3)のように算出する段階S15を行う。
【0051】
【数3】
【0052】
式(3)中、kは、各層を意味し、全体n個層で形成され、nは、2~10の範囲の整数である。
【0053】
このように算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列である[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y(compliance matrix)を次の式(4)のように設定する段階S16を行う。
【0054】
【数4】
【0055】
必要に応じて、全体積層体である多層素材の総厚さhと上記設定された逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して全体積層体である多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,y、ポアソン比/νx,yを次の式(5)のように算出する段階S17を行うことができる。
【0056】
【数5】
【0057】
上記各層kの弾性係数E 1,2、ポアソン比ν 1,2、せん断係数G 1,2を入力する段階S11で、上記せん断係数G 1,2は、等方性物質の弾性係数Eとせん断係数Gとポアソン比ν間の次の関係式を利用して制御部20により弾性係数E 1,2およびポアソン比ν 1,2から算出される。
【0058】
G=E/{2(1+ν)}
【0059】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態による多層素材の物性予測方法のフローチャートである。図5に示されたように、本発明の第3実施形態による多層素材の物性予測方法は、例えば、次の通りである。
【0060】
2個以上のフィルムが積層された多層素材の物性予測方法において、
各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを入力する段階S21を行う。
【0061】
このように入力された各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを利用して各層kの主方向別に各層kの水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率(free lamina hydrothermal strain)e 1,2を次の式(6)のように算出する段階S22を行う。
【0062】
【数6】
【0063】
このように算出したフリーラミナ熱水変形率(free lamina hydrothermal strain)に各層kの積層角度θを反映して、全体積層体である多層素材の熱水変形率変形(hygrothermal strain transformation)e x,y,sを次の式(7)のように算出する段階S23を行う。
【0064】
【数7】
【0065】
上記全体積層体である多層素材の熱水変形率変形e x,y,sと、上記第2実施形態で算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yと、各層kの厚さZを基に全体積層体である多層素材で発生する熱水力(hygrothermal force)MHT x,y,sおよび熱水モーメント(hygrothermal moments)MHT x,y,sを次の式(8)のように算出する段階S24を行う。
【0066】
【数8】
【0067】
上記で算出した熱水力MHT x,y,sおよび熱水モーメントMHT x,y,sに機械的荷重(mechanical loading)の外力N、Mを加えることにより、全体力(Total forces)/Nおよび全体モーメント(Total monents)/Mを次の式(9)のように構成する段階S25を行う。
【0068】
【数9】
【0069】
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、第2実施形態で算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列である[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y(compliance matrix)を利用して全体積層体である多層素材の熱膨張係数αを次の式(10)のように求め、
【0070】
【数10】
【0071】
ここで、[N]=0、[M]=0、ΔT=1と仮定する。
【0072】
全体積層体である多層素材の水分膨張係数βを次の式(11)のように求める段階S26を行う。
【0073】
【数11】
【0074】
ここで、[N]=0、[M]=0、ΔC=1と仮定する。
【0075】
上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、第2実施形態で算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列(compliance matrix)[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して中間面(midplane)の変形率(strain)(εx,yおよび曲率(curvatures)kx,y,sを次の式(12)のように算出する段階S27を行う。
【0076】
【数12】
【0077】
上記中間面の曲率kx,y,sと、入力部10を通じて入力されたサンプルサイズx、y情報を活用して反り(Warpage)を次の式(13)のように算出して3Dプロットする段階S28を行う。
【0078】
【数13】
【0079】
(第4実施形態)
上記した構成による、本発明の実施形態による多層素材の物性予測装置および方法の作用は、次の通りである。
【0080】
多層素材の物性予測のために、ユーザは、ディスプレイ30に示された入力画面を見ながら入力部10を利用して各層k(k=1、2、3)の機械方向1および横軸方向2の弾性係数E 1,2、各層k(k=1、2、3)の機械方向1および横軸方向2のポアソン比ν 1,2、各層k(k=1、2、3)の機械方向1および横軸方向2のせん断係数G 1,2、多層素材のx方向に対する各層k(k=1、2、3)の機械方向1の角度θ、各層kの厚さZを入力する(S11)。
【0081】
ディスプレイ30で提供される入力画面には、図2に示されたように、各層別に名前入力欄111、厚さ入力欄112、角度入力欄113が配置されている積層情報入力部11と、各層別に機械方向(MD)弾性係数入力欄121、横軸方向(TD)弾性係数入力欄122、ポアソン比入力欄123、熱膨張率入力欄124が配置されている剛性予測入力部12と、サンプルの縦横長さ入力欄131が配置されているサンプルサイズ入力部13と、X軸引張力入力欄141、Y軸引張力入力欄142、せん断力入力欄143、温度変化量入力欄144が配置されている外力入力部14が提供され、入力画面に示されていない情報は、入力部10を通じて入力された情報から制御部20が自動で算出して保存部40に保存する。例えば、入力画面および入力部10を通じて各層別に機械方向(MD)弾性係数E 、横軸方向(TD)弾性係数E 、ポアソン比ν 1,2が入力されると、制御部20は、次の等方性物質の弾性係数Eとせん断係数Gとポアソン比ν間の関係式を利用して自動でせん断係数G 1,2を算出した後、これを保存部40に保存する。
【0082】
G=E/{2(1+ν)}
【0083】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、上記弾性係数E 1,2、ポアソン比ν 1,2、せん断係数G 1,2を利用して各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス(stiffness matrix)[Q] 1,2を次の式(1)のように算出する(S12)。
【0084】
【数14】
【0085】
等方性物質に対する関係式G=E/{2(1+ν)}を利用する。
【0086】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、上記で算出した各層kの機械方向1および横軸方向2の剛性マトリクス[Q] 1,2に対する逆行列(inverse matrix)[S] 1,2を求めて、コンプライアンスマトリクス(compliance matrix)として設定する(S13)。これは、特異行列(singular matrix)の剛性マトリクス(stiffness matrix)を逆行列(inverse matrix)が存在する可逆行列(invertible matrix)に変換するためである。
【0087】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、上記導き出された剛性マトリクス[Q] 1,2に多層素材の積層角度θを反映して、全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yを次の式(2)のように再設定する(S14)。
【0088】
【数15】
【0089】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、各層kの厚さ情報を伝達されて再設定された剛性マトリクス値を利用して全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[D]x,yを次の式(3)のように算出する(S15)。
【0090】
【数16】
【0091】
式(3)中、kは、各層を意味し、全体n個層で形成され、nは、2~10の範囲の整数である。
【0092】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列(compliance matrix)[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを次の式(4)のように設定する(S16)。
【0093】
【数17】
【0094】
次に、制御部20の全体積層体物性算出部21は、各層kの厚さ情報から全体積層体である多層素材の総厚さhを求めた後、上記で設定された逆行列[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,y値を利用して全体積層体である多層素材の弾性係数/Ex,y、せん断係数/Gx,y、ポアソン比/νx,yを次の式(5)のように算出する(S17)。
【0095】
【数18】
【0096】
次に、ユーザは、ディスプレイ30に示された入力画面(不図示)を見ながら入力部10を利用して各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを入力し(S21)、制御部20の膨張係数および反り算出部22は、これを読み込む。
【0097】
次に、制御部20の膨張係数および反り算出部22は、入力された各層kの熱膨張係数α 1,2、水分膨張係数β 1,2、温度変化値ΔT、湿度変化値ΔCを利用して各層kの主方向別に各層kの水分膨張によるフリーラミナ熱水変形率(free lamina hydrothermal strain)e 1,2を次の式(6)のように算出する(S22)。
【0098】
【数19】
【0099】
次に、制御部20の膨張係数および反り算出部22は、算出したフリーラミナ熱水変形率(free lamina hydrothermal strain)に各層kの積層角度を反映して、全体積層体である多層素材の熱水変形率変形(hygrothermal strain transformation)e x,y,sを次の式(7)のように算出する(S23)。
【0100】
【数20】
【0101】
次に、制御部20の膨張係数および反り算出部22は、上記全体積層体である多層素材の熱水変形率変形e x,y,sと、第2実施形態で算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[Q] x,yと各層の厚さZを基に全体積層体である多層素材で発生する熱水力(hygrothermal force)MHT x,y,sおよび熱水モーメント(hygrothermal moments)MHT x,y,sを次の数式8のように算出する(S24)。
【0102】
【数21】
【0103】
次に、制御部20の膨張係数および反り算出部22は、上記算出した熱水力MHT x,y,sおよび熱水モーメントMHT x,y,sに機械的荷重(mechanical loading)の外力N、Mを加えることにより、全体力(Total forces)/Nおよび全体モーメント(Total monents)/Mを次の式(9)のように構成する(S25)。
【0104】
【数22】
【0105】
次に、制御部20の膨張係数および反り算出部22は、上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、第2実施形態で算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列(compliance matrix)[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して全体積層体である多層素材の熱膨張係数/αを次の式(10)のように求めると同時に、
【0106】
【数23】
【0107】
ここで、[N]=0、[M]=0、ΔT=1と仮定する。
【0108】
全体積層体である多層素材の水分膨張係数βを次の数式(11)のように求める(S26)。
【0109】
【数24】
【0110】
ここで、[N]=0、[M]=0、ΔC=1と仮定する。
【0111】
次に、制御部20の膨張係数および反り算出部22は、上記全体力/Nおよび全体モーメント/Mと、第2実施形態で算出した全体積層体である多層素材の剛性マトリクス[A]x,y、[B]x,y、[C]x,yに対する逆行列(compliance matrix)[a]x,y、[b]x,y、[c]x,y、[d]x,yを利用して中間面(midplane)の変形率(strain)(εx,yおよび曲率(curvatures)kx,y,sを次の式(12)のように算出する(S27)。
【0112】
【数25】
【0113】
次に、制御部20の膨張係数および反り算出部22は、上記中間面の曲率kx,y,sと、入力部10を通じて入力されたサンプルサイズx、y情報を活用して反り(Warpage)ωを次の式(13)のように算出して、出力画面に3Dプロットする(S28)。
【0114】
【数26】
【0115】
ディスプレイ30で提供される出力画面には、図3に示されたように、剛性均質化結果32として機械方向(MD)弾性係数(Elastic modulus)、横軸方向(TD)弾性係数(Elastic modulus)、ポアソン比(Poisson’s ratio)、せん断係数(Shear modulus)、体積弾性率(Bulk modulus)、熱膨張率(Thermal expansion rate)が出力され、3Dの反りプロット(Warpage plot)32が出力され、厚さ(Thickness)によるx方向変形率33、厚さ(Thickness)によるx方向応力34、厚さ(Thickness)によるy方向変形率35、厚さ(Thickness)によるy方向応力36が出力される。
【0116】
(第5実施形態)
本発明の一実施形態において、入力部に入力される入力値をすぐに入手できない場合には、他の物性数値を利用して変換する過程を通じて導き出すことができる。
【0117】
一実施形態において、各層kの弾性係数Eと各層kのポアソン比νを入力する過程で、ラメ第1係数λ、せん断係数Gおよび体積弾性係数Kのうちいずれか1つ以上の物性数値を利用して算出可能である。
【0118】
例えば、下記数式1~9を利用して弾性係数Eとポアソン比νに変換することが可能である。
【0119】
入手可能な組み合わせが(λ,G)であるとき、下記数式1による。
【0120】
【数27】
【0121】
入手可能な組み合わせが(λ,E)であるとき、下記数式2による。
【0122】
【数28】
【0123】
入手可能な組み合わせが(λ,ν)であるとき、下記数式3による。
【0124】
【数29】
【0125】
入手可能な組み合わせが(λ,K)であるとき、下記数式4による。
【0126】
【数30】
【0127】
入手可能な組み合わせが(G,E)であるとき、下記数式5による。
【0128】
【数31】
【0129】
入手可能な組み合わせが(G,ν)であるとき、下記数式6による。
【0130】
【数32】
【0131】
入手可能な組み合わせが(G,K)であるとき、下記数式7による。
【0132】
【数33】
【0133】
入手可能な組み合わせが(K,E)であるとき、下記数式8による。
【0134】
【数34】
【0135】
入手可能な組み合わせが(K,ν)であるとき、下記数式9による。
【0136】
【数35】
【0137】
上記の数式1~9は、例示に該当し、必要に応じて2以上の数式を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0138】
10 入力部
20 制御部
21 全体積層体物性算出部
22 膨張係数および反り算出部
30 ディスプレイ
40 保存部
図1
図2
図3
図4
図5