(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】球体駆動式移動装置
(51)【国際特許分類】
B60B 19/14 20060101AFI20240924BHJP
B62D 15/00 20060101ALI20240924BHJP
A61G 5/04 20130101ALI20240924BHJP
B65G 1/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B60B19/14
B62D15/00
A61G5/04 701
A61G5/04 710
B65G1/00 501C
(21)【出願番号】P 2020558261
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2019043715
(87)【国際公開番号】W WO2020110651
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2018222165
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019131032
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185317
【氏名又は名称】石井 琢哉
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】宮本 弘之
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥樹
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-030360(JP,A)
【文献】特開2015-024160(JP,A)
【文献】特開2002-200991(JP,A)
【文献】特開2015-117011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0263377(US,A1)
【文献】米国特許第09795863(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 15/00
B60B 19/14
B60B 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ走行面上を転動するn個の駆動球体と、前記各駆動球体に2つの異なる方向から接触した状態で回転駆動して該駆動球体を回転させるn個以上の回転体と、前記駆動球体
と接触するボールキャスタ
又はフリーローラ式車輪を具備し、前記走行面上を移動する球体駆動式移動装置であって、
前記各駆動球体の中心は、該各駆動球体の中心より高い位置に底面が配され該底面から離れた頂点が該各駆動球体の中心より低い位置に配された仮想逆n角錐の各側辺上に位置し、
該駆動球体の中心が配されている2つの前記側辺を外縁の一部とする前記仮想逆n角錐の側面を対応側面としたとき、前記各回転体は、接している前記駆動球体の中心より高い位置で、かつ、前記仮想逆n角錐の内側又は前記対応側面上で、該駆動球体に接触し、しかも、該対応側面に対し垂直な回転軸を中心に回転駆動
し、前記各回転体が回転自在に取り付けられた機構が装着されたベース部材の自重及び前記ベース部材の上に載せられた物体の自重で、前記駆動球体に押し付けられ、前記駆動球体からみて前記各回転体がある側とは反対側で前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪が前記駆動球体に当接するように、前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪が前記ベース部材に支持されている、ことを特徴とする球体駆動式移動装置。
但し、nは3以上の整数である。
【請求項2】
請求項1記載の球体駆動式移動装置
であって、前記駆動球体と前記回転体との接点及び該駆動球体の中心を通る各仮想直線Jは、該駆動球体の中心が位置する前記側辺に対し直交することを特徴とする球体駆動式移動装置。
【請求項3】
請求項1記載の球体駆動式移動装置
であって、前記各回転体は、円錐台状であって側面が前記駆動球体に接触し、該駆動球体と該回転体の側面との接点及び該駆動球体の中心を通る仮想直線Jは該回転体の側面に垂直に交わることを特徴とする球体駆動式移動装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の球体駆動式移動装置
であって、前記仮想逆n角錐の各側面は、該側面の外縁の一部をなす2つの前記側辺にそれぞれ中心が配された2つの前記駆動球体間にある前記回転体と一方の該駆動球体との接点及び該回転体と他方の該駆動球体との接点を通る仮想直線Kに対し平行であることを特徴とする球体駆動式移動装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の球体駆動式移動装置
であって、前記仮想逆n角錐の底面は等角多角形であることを特徴とする球体駆動式移動装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の球体駆動式移動装置
であって、前記各駆動球体は同じ大きさであり、前記各回転体は、同一の大きさの円錐台状であり、側面が同一高さで前記駆動球体に接していることを特徴とする球体駆動式移動装置。
【請求項7】
それぞれ走行面上を転動する複数の駆動球体と、前記各駆動球体に2つの異なる方向から接触した状態で回転駆動して該駆動球体を回転させる3個以上の回転体と、前記駆動球体
と接触するボールキャスタ
又はフリーローラ式車輪を具備し、前記走行面上を移動する球体駆動式移動装置であって、
前記各回転体は、接している前記駆動球体の中心より高い位置で該駆動球体に接触して、前記3個以上の回転体が回転自在に取り付けられた機構が装着されたベース部材の自重で、前記駆動球体に押し付けられ
、前記駆動球体からみて前記各回転体がある側とは反対側で前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪が前記駆動球体に当接するように、前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪がベース部材に支持されている、ことを特徴とする球体駆動式移動装置。
【請求項8】
それぞれ走行面上を転動する複数の駆動球体と、前記各駆動球体に2つの異なる方向から接触した状態で回転駆動して該駆動球体を回転させる3個以上の回転体と、前記駆動球体
と接触するボールキャスタ
又はフリーローラ式車輪を具備し、前記走行面上を移動する球体駆動式移動装置であって、
前記各回転体は、接している前記駆動球体の中心より高い位置で該駆動球体に接触して、前記3個以上の回転体が回転自在に取り付けられた機構が装着されたベース部材の自重及び前記ベース部材の上に載せられた物体の自重で、前記駆動球体に押し付けられ
、前記駆動球体からみて前記各回転体がある側とは反対側で前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪が前記駆動球体に当接するように、前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪がベース部材に支持されている、ことを特徴とする球体駆動式移動装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の球体駆動式移動装置
であって、前記ベース部材には、前記回転体を回転駆動させるモータが取り付けられ、前記回転体は、円錐台状であって、側面が前記駆動球体に接触することを特徴とする球体駆動式移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球体を回転駆動させて全方向に移動可能な球体駆動式移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3つの球体及び球体に回転力を与える3つの駆動手段(駆動用モータ)を有する移動装置(特許文献1参照)は、全方向に移動できることから、電動車いすや自走式台車等に使用するのが有効である。特許文献1の移動装置は、1つの球体に対し、それぞれ駆動手段の駆動により回転駆動する2つのロータが異なる方向から接している。当該移動装置では、ロータと球体が球体の中心と同じ高さ位置で接触しており、球体をロータに対して押し付けるアイドラ(車輪型キャスター)が設けられている。ロータが空回りすると、移動装置が所望の方向に進まなくなるため、移動装置の安定的な走行にはロータを球体に押し付けた状態を維持することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の移動装置では、稀にロータが球体に非接触な状態になることがあった。移動装置を電動車いすに用いる等、使用者が移動装置を操縦する場合、使用者自身で移動方向の修正を行うことは容易であるが、移動装置を自走式台車に用いる場合等、移動装置の操縦者がいないシステムでは移動装置の移動方向を修正できず、移動装置が予定通りに走行できないという問題が生じる。
ロータの空回りを抑制する方法として、ロータを弾性力の異なる素材からなる多層構造にすることが考えられるが、その場合、ロータの耐久性が低下してロータの摩耗が顕著になるという別の問題が招来する。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、球体に接触した状態で回転駆動する回転体が空回りするのを抑制可能な球体駆動式移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る球体駆動式移動装置は、それぞれ走行面上を転動するn個の駆動球体と、前記各駆動球体に2つの異なる方向から接触した状態で回転駆動して該駆動球体を回転させるn個以上の回転体と、前記駆動球体と接触するボールキャスタ又はフリーローラ式車輪を具備し、前記走行面上を移動する球体駆動式移動装置であって、前記各駆動球体の中心は、該各駆動球体の中心より高い位置に底面が配され該底面から離れた頂点が該各駆動球体の中心より低い位置に配された仮想逆n角錐の各側辺上に位置し、該駆動球体の中心が配されている2つの前記側辺を外縁の一部とする前記仮想逆n角錐の側面を対応側面としたとき、前記各回転体は、接している前記駆動球体の中心より高い位置で、かつ、前記仮想逆n角錐の内側又は前記対応側面上で、該駆動球体に接触し、しかも、該対応側面に対し垂直な回転軸を中心に回転駆動し、前記各回転体が回転自在に取り付けられた機構が装着されたベース部材の自重及び前記ベース部材の上に載せられた物体の自重で、前記駆動球体に押し付けられ、前記駆動球体からみて前記各回転体がある側とは反対側で前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪が前記駆動球体に当接するように、前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪が前記ベース部材に支持されている。但し、nは3以上の整数である。
【0006】
前記目的に沿う第2の発明に係る球体駆動式移動装置は、それぞれ走行面上を転動する複数の駆動球体と、前記各駆動球体に2つの異なる方向から接触した状態で回転駆動して該駆動球体を回転させる3個以上の回転体と、前記駆動球体と接触するボールキャスタ又はフリーローラ式車輪を具備し、前記走行面上を移動する球体駆動式移動装置であって、前記各回転体は、接している前記駆動球体の中心より高い位置で該駆動球体に接触して、前記3個以上の回転体が回転自在に取り付けられた機構が装着されたベース部材の自重で、前記駆動球体に押し付けられ、前記駆動球体からみて前記各回転体がある側とは反対側で前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪が前記駆動球体に当接するように、前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪がベース部材に支持されている。
【0007】
前記目的に沿う第3の発明に係る球体駆動式移動装置は、それぞれ走行面上を転動する複数の駆動球体と、前記各駆動球体に2つの異なる方向から接触した状態で回転駆動して該駆動球体を回転させる3個以上の回転体と、前記駆動球体と接触するボールキャスタ又はフリーローラ式車輪を具備し、前記走行面上を移動する球体駆動式移動装置であって、前記各回転体は、接している前記駆動球体の中心より高い位置で該駆動球体に接触して、前記3個以上の回転体が回転自在に取り付けられた機構が装着されたベース部材の自重及び前記ベース部材の上に載せられた物体の自重で、前記駆動球体に押し付けられ、前記駆動球体からみて前記各回転体がある側とは反対側で前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪が前記駆動球体に当接するように、前記ボールキャスタ又は前記フリーローラ式車輪がベース部材に支持されている。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明に係る球体駆動式移動装置は、n個の駆動球体が転動する走行面を水平面としたとき、各回転体が、接している駆動球体の中心より高い位置、かつ、仮想逆n角錐の内側又は駆動球体の中心が配されている2つの側辺を外縁の一部とする仮想逆n角錐の側面である対応側面上で駆動球体に接触し、しかも、対応側面に対し垂直な回転軸を中心に回転駆動する。また、第2の発明に係る球体駆動式移動装置は、走行面を水平面としたとき、各回転体が、接している駆動球体の中心より高い位置で駆動球体に接触して、3個以上の回転体が回転自在に取り付けられた機構が装着されたベース部材の自重で、前記駆動球体に押し付けられる。そして、第3の発明に係る球体駆動式移動装置は、走行面を水平面としたとき、各回転体は、接している駆動球体の中心より高い位置で駆動球体に接触して、3個以上の回転体が回転自在に取り付けられた機構が装着されたベース部材の自重及びベース部材の上に載せられた物体の自重で、駆動球体に押し付けられる。
従って、第1、第2、第3の発明に係る球体駆動式移動装置は、ベース部材自体の荷重やベース部材の上に載せられた物体の荷重が部分的に回転体を介して駆動球体に与えられ、回転体を確実に駆動球体に押し付けることができ、駆動球体に接触した状態で回転駆動する回転体が空回りするのを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施例に係る球体駆動式移動装置の説明図である。
【
図2】同球体駆動式移動装置の駆動球体及び回転体の配置を示す平面図である。
【
図3】同球体駆動式移動装置の駆動球体及び回転体の配置を示す斜視図である。
【
図4】同球体駆動式移動装置の駆動球体の局所座標系を示す説明図である。
【
図5】同球体駆動式移動装置の駆動球体の座標系を示す説明図である。
【
図6】本発明の第2の実施例に係る球体駆動式移動装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、
図2、
図3に示すように、本発明の第1の実施例に係る球体駆動式移動装置10は、それぞれ走行面G上を転動する3個(n個の一例、nは3以上の整数)の駆動球体11、12、13と、各駆動球体11、12、13に2つの異なる方向から接触した状態で回転駆動して駆動球体11、12、13を回転させる3個(n個以上の一例)の回転体14、15、16とを具備して、走行面G上を移動する装置である。以下、詳細に説明する。
【0011】
本実施例において、駆動球体11、12、13は、
図1、
図2、
図3に示すように、同じ大きさの(径が等しい)真球である。駆動球体11の中心P1、駆動球体12の中心P2、駆動球体13の中心P3は、走行面Gを水平面として、駆動球体11、12、13が走行面G上に置かれた状態で、同一の高さに位置する。以下、走行面Gが水平面であり、駆動球体11、12、13が走行面G上に置かれているものとする。
【0012】
回転体14、15、16は同一の大きさで同一の形状の円錐台状の部材であり、同一の高さ位置に配されている。回転体14は側面28が同一高さで駆動球体11、12に接触し、回転体15は側面29が同一高さで駆動球体12、13に接触し、回転体16は側面30が同一高さで駆動球体11、13に接触している。回転体14の軸心には、
図2に示すように、モータ18の回転軸19が連結され、回転体15の軸心にはモータ20の回転軸21が連結され、回転体16の軸心にはモータ22の回転軸23が連結されている。回転体14はモータ18の作動によって回転軸19を中心に回転駆動し、回転体15はモータ20の作動によって回転軸21を中心に回転駆動し、回転体16はモータ22の作動によって回転軸23を中心に回転駆動する。
【0013】
回転体14、15は、駆動球体12に異なる方向から接触し、回転体15、16は駆動球体13に異なる方向から接触し、回転体14、16は駆動球体11に異なる方向から接触している。
駆動球体11には、
図1、
図2に示すように、回転体14、16に加えてボールキャスタ24が接触し、駆動球体12には回転体14、15に加えてボールキャスタ25が接触し、駆動球体13には回転体15、16に加えてボールキャスタ26が接触している。
【0014】
本実施例では、ボールキャスタ24、25、26を支持するベース部材27(
図1参照)にモータ18、20、22が固定され、回転体14、15、16はベース部材27に装着されたベアリング機構に回転自在に取り付けられている。
図1、
図2には、ボールキャスタ24、25、26のボールのみを記載している。なお、駆動球体11、12、13にそれぞれ接触するアイドラを採用して、駆動球体11、12、13が外れないようにしてもよい。
【0015】
駆動球体11と回転体14の側面28及び回転体16の側面30が接触する接点をそれぞれ接点T14、T16とし、駆動球体12と回転体14の側面28及び回転体15の側面29が接触する接点をそれぞれ接点T24、T25とし、駆動球体13と回転体15の側面29及び回転体16の側面30が接触する接点をそれぞれ接点T35、T36として、接点T14、T16、T24、T25、T35、T36は、駆動球体11の中心P1、駆動球体12の中心P2及び駆動球体13の中心P3より高い位置で同じ高さに配されている(よって、回転体14の側面28、回転体15の側面29及び回転体16の側面30は同一高さで駆動球体11、12、13に接触している)。
【0016】
即ち、回転体14は、駆動球体11の中心P1より高い位置で駆動球体11に接触し、駆動球体12の中心P2より高い位置で駆動球体12に接触し、回転体15は、駆動球体12の中心P2より高い位置で駆動球体12に接触し、駆動球体13の中心P3より高い位置で駆動球体13に接触し、回転体16は、駆動球体11の中心P1より高い位置で駆動球体11に接触し、駆動球体13の中心P3より高い位置で駆動球体13に接触している。
【0017】
ここで、
図1、
図2、
図3に示すように、駆動球体11の中心P1、駆動球体12の中心P2及び駆動球体13の中心P3より高い位置に三角形(本実施例では、等角多角形の一例である正三角形)の底面ηが配され、底面ηから離れた頂点Oが駆動球体11の中心P1、駆動球体12の中心P2及び駆動球体13の中心P3より低い位置に配された三角錐(n角錐の一例)を仮想逆三角錐(仮想逆n角錐の一例)Hとすると、本実施例では、球体駆動式移動装置10が、後述する条件1~6を全て満たすように設計されている。
【0018】
仮想逆三角錐Hにおいて、底面ηの3つの頂点をそれぞれ頂点A、B、Cとし、頂点O、A、Bを3つの頂点とする三角形の側面を側面αとし、頂点O、B、Cを3つの頂点とする三角形の側面を側面βとし、頂点O、A、Cを3つの頂点とする三角形の側面を側面γとし、頂点O、Aを結ぶ直線状の辺を側辺S1とし、頂点O、Bを結ぶ直線状の辺を側辺S2とし、頂点O、Cを結ぶ直線状の辺を側辺S3とする。本実施例では、底面ηが正三角形(等角多角形の一例)であり、側辺S1、S2、S3が同じ長さである。なお、
図2には、駆動球体11、12、13及び回転体14、15、16等を平面視した様子が描かれている。また、
図3では、モータ18、22等の記載を省略している。
【0019】
条件1:駆動球体11の中心P1、駆動球体12の中心P2及び駆動球体13の中心P3はそれぞれ、側辺S1、S2、S3上に位置している。
【0020】
条件2:回転体14は仮想逆三角錐Hの内側で駆動球体11、12に接触(接点T14、T24は仮想逆三角錐H内に位置)し、回転体15は仮想逆三角錐Hの内側で駆動球体12、13に接触(接点T25、T35は仮想逆三角錐H内に位置)し、回転体16は仮想逆三角錐Hの内側で駆動球体11、13に接触(接点T16、T36は仮想逆三角錐H内に位置)している。
【0021】
条件3:回転軸19は側面α(回転体14の対応側面)に対し垂直であり(回転体14は回転体14が接している駆動球体11、12の各中心P1、P2がそれぞれ配されている側辺S1、S2を外縁の一部とする側面αに対し垂直な回転軸19を中心に回転駆動し)、回転軸21は側面β(回転体15の対応側面)に対し垂直であり(回転体15は回転体15が接している駆動球体12、13の各中心P2、P3がそれぞれ配されている側辺S2、S3を外縁の一部とする側面βに対し垂直な回転軸21を中心に回転駆動し)、回転軸23は側面γ(回転体16の対応側面)に対し垂直である(回転体16は回転体16が接している駆動球体11、13の各中心P1、P3がそれぞれ配されている側辺S1、S3を外縁の一部とする側面γに対し垂直な回転軸23を中心に回転駆動する)。
【0022】
条件3から、本実施例では、駆動球体11に接する回転体14の回転軸19及び回転体16の回転軸23が非平行であり、駆動球体12に接する回転体14の回転軸19及び回転体15の回転軸21が非平行であり、駆動球体13に接する回転体15の回転軸21及び回転体16の回転軸23が非平行であると言える。
【0023】
本実施例では、駆動球体11、12、13、回転体14、15、16及び回転軸19、21、23が、条件1、2、3を満たすように配置し、回転体14、15、16の角速度を調整することによって、回転体14に対する駆動球体11、12の横滑り、回転体15に対する駆動球体12、13の横滑り及び回転体16に対する駆動球体11、13の横滑りを抑制した状態で、球体駆動式移動装置10を走行面G上で如何なる方向にも移動可能にしている。なお、回転体14に対する駆動球体11の横滑りとは、接点T14における駆動球体11の回転体14に対する相対的な運動が、接点T14を中心とした旋回運動以外の運動であることを意味し、回転体14に対する駆動球体11の横滑りが生じると、回転体14及び駆動球体11の摩耗が助長される。
【0024】
しかも、回転体14は駆動球体11の中心P1及び駆動球体12の中心P2より高い位置でそれぞれ駆動球体11、12に接触し、回転体15は駆動球体12の中心P2及び駆動球体13の中心P3より高い位置でそれぞれ駆動球体12、13に接触し、回転体16は駆動球体11の中心P1及び駆動球体13の中心P3より高い位置でそれぞれ駆動球体11、13に接触しているため、駆動球体11には回転体14、16を通じて鉛直成分の力が作用し、駆動球体12には回転体14、15を通じて鉛直成分の力が作用し、駆動球体13には回転体15、16を通じて鉛直成分の力が作用する。従って、ベース部材27やベース部材27に載せられた重量物等の自重を利用して、回転体14を駆動球体11、12に、回転体15を駆動球体12、13に、回転体16を駆動球体11、13にそれぞれ押し付けることができ、回転体14、15、16の空回りを抑制可能である。
【0025】
接点T14が駆動球体11の中心P1に比べ僅かに高い位置に存在し、接点T24が駆動球体12の中心P2に比べ僅かに高い位置に存在する場合、回転体14は、仮想逆n角錐Hの側面α(対応側面)上で駆動球体11、12に接触していても、実質的に回転体14に対して駆動球体11、12が横滑りせず、これは、回転体15と駆動球体12、13との関係及び回転体16と駆動球体11、13との関係でも同様である。
【0026】
従って、条件2の代わりに以下の条件2’を満たすように設計することもできる。
条件2’:回転体14は仮想逆三角錐Hの側面α(回転体14の対応側面)上で駆動球体11、12に接触し、回転体15は仮想逆三角錐Hの側面β(回転体15の対応側面)上で駆動球体12、13に接触し、回転体16は仮想逆三角錐Hの側面γ(回転体16の対応側面)上で駆動球体11、13に接触している。
【0027】
ここで、回転体14の駆動球体11、12に対する空回り、回転体15の駆動球体12、13に対する空回り及び回転体16の駆動球体11、13に対する空回りの発生を安定して抑制する観点では、条件1、2、3を満たすのに加えて、以下の条件4、5、6の1つを満たすのが好ましい(2つを満たすのがより好ましい、3つ全てを満たすのが更に好ましい)ことが検証によって確認されている。なお、回転体14、15、16の空回りの抑制に対し、条件1、2、3の条件を満たすことが、条件4、5、6の条件を満たすことに比べて重要であることを確認している。
【0028】
条件4:駆動球体11と回転体14との接点T14及び駆動球体11の中心P1を通る仮想直線J14(仮想直線Jの一例)が駆動球体11の中心P1が位置する側辺S1に対し直交し(
図1参照)、駆動球体11と回転体16との接点T16及び駆動球体11の中心P1を通る仮想直線J16(仮想直線Jの一例)が駆動球体11の中心P1が位置する側辺S1に対し直交する。駆動球体12と回転体14との接点T24及び駆動球体12の中心P2を通る仮想直線J24(仮想直線Jの一例)が駆動球体12の中心P2が位置する側辺S2に対し直交し(
図1参照)、駆動球体12と回転体15との接点T25及び駆動球体12の中心P2を通る仮想直線J25(仮想直線Jの一例)が駆動球体12の中心P2が位置する側辺S2に対し直交する。駆動球体13と回転体15との接点T35及び駆動球体13の中心P3を通る仮想直線J35(仮想直線Jの一例)が駆動球体13の中心P3が位置する側辺S3に対し直交し、駆動球体13と回転体16との接点T36及び駆動球体13の中心P3を通る仮想直線J36(仮想直線Jの一例)が駆動球体13の中心P3が位置する側辺S3に対し直交する。
【0029】
条件5:駆動球体11と回転体14との接点T14及び駆動球体11の中心P1を通る仮想直線J14は回転体14の側面28に垂直に交わり、駆動球体12と回転体14との接点T24及び駆動球体12の中心P2を通る仮想直線J24は回転体14の側面28に垂直に交わる。駆動球体12と回転体15との接点T25及び駆動球体12の中心P2を通る仮想直線J25は回転体15の側面29に垂直に交わり、駆動球体13と回転体15との接点T35及び駆動球体13の中心P3を通る仮想直線J35は回転体15の側面29に垂直に交わる。駆動球体11と回転体16との接点T16及び駆動球体11の中心P1を通る仮想直線J16は回転体16の側面30に垂直に交わり、駆動球体13と回転体16との接点T36及び駆動球体13の中心P3を通る仮想直線J36は回転体16の側面30に垂直に交わる。
【0030】
条件6:仮想逆三角錐Hの側面αは、該側面αの外縁の一部をなす2つの側辺S1、S2にそれぞれ中心P1、P2が配された2つの駆動球体11、12間にある回転体14と一方の駆動球体11との接点T14及び回転体14と他方の駆動球体12との接点T24を通る仮想直線K12(仮想直線Kの一例)に対し平行であり、仮想逆三角錐Hの側面βは、該側面βの外縁の一部をなす2つの側辺S2、S3にそれぞれ中心P2、P3が配された2つの駆動球体12、13間にある回転体15と一方の駆動球体12との接点T25及び回転体15と他方の駆動球体13との接点T35を通る仮想直線K23(仮想直線Kの一例)に対し平行であり、仮想逆三角錐Hの側面γは、該側面γの外縁の一部をなす2つの側辺S1、S3にそれぞれ中心P1、P3が配された2つの駆動球体11、13間にある回転体16と一方の駆動球体11との接点T16及び回転体16と他方の駆動球体13との接点T36を通る仮想直線K13(仮想直線Kの一例)に対し平行である。
【0031】
これらを基に球体駆動式移動装置10の運動について、数式を用いて検討する。
走行面G(水平面)に対する側辺S1の角度をθとし、
図4に示すように、駆動球体11の中心P1から接点T14に向かう単位位置ベクトルをI
1とし、駆動球体11の中心P1から接点T16に向かう単位位置ベクトルをI
2とし、I
1及びI
2のなす角度をφとして、本実施例では、I
1が頂点Oを始点とし頂点Aを終点とするベクトルと直交していることから、以下の式(1)が成立する。
【0032】
【0033】
また、以下の式(2)が成立する。
【0034】
【0035】
そして、I1、I2を以下の式(3)のように表すと、以下の式(4)が成立する。
【0036】
【0037】
式(2)、式(4)から、以下の式(5)、式(6)が成立する。
【0038】
【0039】
よって、式(1)、式(5)、式(6)から、a、b、cはそれぞれ以下の式(7)、式(8)、式(9)のように表すことができる。
【0040】
【0041】
式(7)、式(8)、式(9)より、I1及びI2はそれぞれ以下の式(10)、式(11)のように表すことができる。
【0042】
【0043】
また、Ix及びIyには以下の式(12)の関係があることから、以下の式(13)が成立する。
【0044】
【0045】
sinφは以下の式(14)で表わされることから、Ix及びIyはそれぞれ以下の式(15)及び式(16)で表わすことができる。
【0046】
【0047】
ここで、
図5に示すように、走行面Gに平行な2つの直交する仮想軸をx軸、y軸とし、駆動球体11の中心P1、駆動球体12の中心P2、駆動球体13の中心P3を頂点とする正三角形の中心から駆動球体11の中心P1、駆動球体12の中心P2、駆動球体13の中心P3それぞれまでの距離をl、接点T14(接点T24)から回転体14の軸心までの距離、接点T25(接点T35)から回転体15の軸心までの距離、回転体16の接点T16(接点T36)から回転体16の軸心までの距離をそれぞれrとし(
図4参照)、球体駆動式移動装置10の速度ベクトルをVとし、回転体14、15、16から駆動球体11、12、13全体に与えられる角速度ベクトルをλとすると、V及びλには以下の式(17)の関係がある。
【0048】
【0049】
また、球体駆動式移動装置10のx軸方向の速度をvxとし、球体駆動式移動装置10のy軸方向の速度をvyとし、球体駆動式移動装置10の旋回速度をωとして、球体駆動式移動装置10の速度ベクトルVは、V=(vx、vy、ω)Tとして表される。
回転体14から駆動球体11、12に伝達される角速度をλ1とし、回転体15から駆動球体12、13に伝達される角速度をλ2とし、回転体16から駆動球体11、13に伝達される角速度をλ3として、角速度ベクトルλはλ=(λ1、λ2、λ3)Tとして表される。
そして、式(17)のQは以下の式(18)で表わされる。
【0050】
【0051】
よって、Q-1は以下の式(19)で表わされる。
【0052】
【0053】
ここで、k=Iy/sinφとすると、kは以下の式(20)によって表すことができる。
【0054】
【0055】
また、
図4、
図5に示すように、駆動球体11、12、13それぞれの半径をRとし、駆動球体11の中心P1及び駆動球体12の中心P2を結ぶ直線と駆動球体11の中心P1及び駆動球体13の中心P3を結ぶ直線との角度、駆動球体11の中心P1及び駆動球体12の中心P2を結ぶ直線と駆動球体12の中心P2及び駆動球体13の中心P3を結ぶ直線との角度、駆動球体11の中心P1及び駆動球体13の中心P3を結ぶ直線と駆動球体12の中心P2及び駆動球体13の中心P3を結ぶ直線との角度をそれぞれψとし、接点T14及び接点T24を結ぶ直線から側面αまでの距離、接点T25及び接点T35を結ぶ直線から側面βまでの距離、接点T16及び接点T36を結ぶ直線から側面γまでの距離をそれぞれdとし、側面28の回転体14の軸心に対する角度、側面29の回転体15の軸心に対する角度、側面30の回転体16の軸心に対する角度をそれぞれδとして、以下の式(21)、式(22)、式(23)が成立する。
【0056】
【0057】
上記検討は、3つの駆動球体11、12、13が同じ大きさであり、駆動球体11の中心P1、駆動球体12の中心P2及び駆動球体13の中心P3を3つの頂点とする三角形が正三角形である場合について行っているが、駆動球体の大きさ(径)がそれぞれ異なり、かつ、3つの駆動球体それぞれの中心を頂点とする三角形の3つの辺がそれぞれ異なる長さであっても、同様の結果を得ることができる。また、駆動球体が4つ以上であっても同様の結果を得ることができる。但し、全ての駆動球体の大きさが同じであり、各駆動球体の中心を頂点とする多角形が等角多角形である場合、球体駆動式移動装置を所望の方向に移動させるために各モータの回転数をどのようにするかの計算が容易であり、当該多角形が正多角形で有る場合は、正多角形でない等角多角形の場合と比較して当該計算が容易となる。なお、各駆動球体が同じ大きさであれば、各駆動球体の中心を頂点とする多角形と仮想逆n角錐の底面とは同じ形状で大きさが異なるようになる。
【0058】
ここまで説明した球体駆動式移動装置10は、3個の駆動球体11、12、13を有するものであったが、駆動球体は4個以上であってもよいし、2個であってもよい。
駆動球体がq個(q≧4)の場合、仮想逆q角錐(角錐を上下逆にしたもの)を基に駆動球体や回転体の配置が決定され、各駆動球体に2つの回転体が接するようになる。
駆動球体が2個の場合、走行面上を転動する1個又は複数個の従動回転物(例えば、球体や回転軸の方向が変更自在のローラ)が設けられて、球体駆動式移動装置が2個の駆動球体及び1個又は複数個の従動回転物を走行面に接触させた状態で走行する。
【0059】
以下、
図6を参酌して2個の駆動球体11、12及び1個の従動球体(従動回転物の一例)43を備える球体駆動式移動装置40について説明する。なお、球体駆動式移動装置40において、球体駆動式移動装置10と同様の構成については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
本発明の第2の実施例に係る球体駆動式移動装置40は、
図6に示すように、それぞれ走行面G上を転動する2個の駆動球体11、12と、走行面G上を転動する従動球体43と、各駆動流体11、12に2つの異なる方向から接触した状態で回転駆動して駆動球体11、12を回転させる3つ(m個の一例、mは3以上の整数)の回転体14、45、46とを具備し、走行面G上を移動する装置である。
【0060】
回転体14は、モータ18の作動によってモータ18の回転軸19を中心に回転駆動し、回転体45は、回転体45の軸心に回転軸47が連結されたモータ48の作動によって回転軸47を中心に回転駆動し、回転体46は、回転体46の軸心に回転軸49が連結されたモータ50の作動によって回転軸49を中心に回転駆動する。
回転体14、46は、駆動球体11に異なる方向から接触し、回転体14、45は駆動球体12に異なる方向から接触している。従動球体43は、従動球体43にボールキャスタ51、52、53が接触することによって所定位置で保持されている。なお、
図6では、ボールキャスタ24、25、51、52、53のボールのみを記載している。
【0061】
駆動球体11と回転体14の側面28及び回転体46の側面54が接触する接点をそれぞれ接点T14、T16’とし、駆動球体12と回転体14の側面28及び回転体45の側面55が接触する接点をそれぞれ接点T24、T25’として、接点T14、T16’、T24、T25’は、駆動球体11の中心P1及び駆動球体12の中心P2(本実施例では、これらに加えて従動球体43の中心P3’)より高い位置で同じ高さに配されている。
【0062】
よって、回転体14は、駆動球体11の中心P1より高い位置で駆動球体11に接触し、駆動球体12の中心P2より高い位置で駆動球体12に接触し、回転体45は、駆動球体12の中心P2より高い位置で駆動球体12に接触し、回転体46は、駆動球体11の中心P1より高い位置で駆動球体11に接触している。
【0063】
駆動球体11の中心P1、駆動球体12の中心P2及び従動球体43の中心P3’より高い位置に三角形(本実施例では、2等辺三角形)の底面η’が配され、底面η’から離れた頂点O’が駆動球体11の中心P1、駆動球体12の中心P2及び従動球体13の中心P3’より低い位置に配された三角錐を仮想逆三角錐H’とし、底面η’の3つの頂点をそれぞれ頂点A’、B’、C’とし、頂点O’、A’、B’を3つの頂点とする三角形の側面を側面α’(駆動球体11の中心P1及び駆動球体12の中心P2を通る仮想傾斜面の一例)とし、頂点O’、B’、C’を3つの頂点とする三角形の側面を側面β’とし、頂点O’、A’、C’を3つの頂点とする三角形の側面を側面γ’とし、頂点O’、A’を結ぶ直線状の辺を側辺S1’とし、頂点O’、B’を結ぶ直線状の辺を側辺S2’とし、頂点O’、C’を結ぶ直線状の辺を側辺S3’とすると、球体駆動式移動装置40は、後述する条件7~9を全て満たすように設計されている。
【0064】
条件7:駆動球体11の中心P1、駆動球体12の中心P2及び従動球体43の中心P3’はそれぞれ、側辺S1’、S2’、S3’上に位置している。
【0065】
条件8:回転体14は仮想逆三角錐H’の内側(即ち、仮想傾斜面の一例である側面α’を基準として従動球体43側)で駆動球体11、12に接触し、回転体45は仮想逆三角錐H’の内側で駆動球体12に接触し、回転体46は仮想逆三角錐H’の内側で駆動球体11に接触している。
【0066】
条件9:回転軸19は側面α’に対し垂直であり、回転軸47は側面β’に対し垂直であり、回転軸49は側面γ’に対し垂直である。
【0067】
なお、接点T14が駆動球体11の中心P1に比べ僅かに高い位置に存在し、接点T24が駆動球体12の中心P2に比べ僅かに高い位置に存在する場合には、条件8の代わりに、以下の条件8’を満たすようにしてもよい。
条件8’:回転体14は仮想逆三角錐H’の側面α’上で駆動球体11、12に接触し、回転体45は仮想逆三角錐H’の側面β’上で駆動球体12に接触し、回転体46は仮想逆三角錐H’の側面γ’上で駆動球体11に接触している。
【0068】
また、条件9から、駆動球体11に接する回転体14の回転軸19及び回転体46の回転軸49は非平行であり、駆動球体12に接する回転体14の回転軸19及び回転体45の回転軸47は非平行である。また、回転体14、45、46の角速度を調整することによって、回転体14に対する駆動球体11、12の横滑り、回転体45に対する駆動球体12の横滑り及び回転体46に対する駆動球体11の横滑りを抑制した状態で、球体駆動式移動装置40を走行面G上で如何なる方向にも移動可能にしている。
【0069】
球体駆動式移動装置40も球体駆動式移動装置10と同様に回転体14、45、46はそれぞれ円錐台状である。駆動球体11と回転体14の側面28との接点T14及び駆動球体11の中心P1を通る仮想直線は、回転体14の側面28に垂直に交わり、駆動球体12と回転体14の側面28との接点T24及び駆動球体12の中心P2を通る仮想直線は、回転体14の側面28に垂直に交わり、駆動球体11と回転体46の側面54との接点T16’及び駆動球体11の中心P1を通る仮想直線は、回転体46の側面54に垂直に交わり、駆動球体12と回転体45の側面55との接点T25’及び駆動球体12の中心P2を通る仮想直線は、回転体45の側面55に垂直に交わっている。また、球体駆動式移動装置40における駆動球体11、12と回転体14、45、46との位置関係も、球体駆動式移動装置10における駆動球体11、12と回転体14、15、16との位置関係と同様である。
【0070】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、1つのモータによって、動力伝達ベルト等が掛け渡された2つの回転体を回転駆動するようにして、2つの回転体を隣り合う駆動球体の一方及び他方にそれぞれ接するようにしてもよいし、隣り合う駆動球体それぞれに異なる回転体を接触させ、当該2つの回転体それぞれにモータを連結するようにしてもよい。
【0071】
それぞれ走行面上を転動する2個の駆動球体と、走行面上を転動する従動回転物と、各駆動球体に2つの異なる方向から接触した状態で回転駆動して駆動球体を回転させるr個(rは3以上の整数)の回転体とを具備し、走行面上を移動する球体駆動式移動装置において、1つのモータによって、動力伝達ベルト等が掛け渡された2つの回転体を回転駆動するようにして、2つの回転体を隣り合う駆動球体の一方及び他方にそれぞれ接するようにする場合は、各回転体を、接している駆動球体の中心より高い位置で駆動球体に接触させ、r個の回転体のうち駆動回転力が共通のモータから与えられる2つの回転体を、各駆動球体の中心を通る仮想傾斜面を基準として従動回転物側又は仮想傾斜面上で駆動球体に接触させ、しかも、仮想傾斜面に対し垂直な回転軸を中心に回転駆動するようにすればよい。そして、この場合、駆動球体と回転体との位置関係は、球体駆動式移動装置10における駆動球体11、12と回転体14、15、16との位置関係及び球体駆動式移動装置40における駆動球体11、12と回転体14、45、46との位置関係と同様である。
【0072】
また、回転体は円錐台状である必要はなく、例えば円柱状であってもよいし、球状であってもよい。
そして、回転体の回転軸は軸材(即ち、実在する部材)であってもよいし、仮想軸であってもよい。
更に、駆動球体を支持するのはボールキャスタに限定されず、例えば、ボールキャスタの代わりに、自在キャスタやオムニホイル等のフリーローラ式車輪を採用してもよい。
【0073】
また、各駆動球体は大きさが異なっていてもよいし、各回転体は大きさや形状が異なっていてもよい。そして、各駆動球体を水平面に置いた状態で、各回転体が駆動球体に接する高さが異なるように各回転体を配置してもよい。
更に、本発明は走行面上の移動方向が特定されている球体駆動式移動装置(例えば、前進及び後退のみが可能な球体駆動式移動装置)にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る球体駆動式移動装置は、駆動球体に接触している回転体が空回りするのを抑制した状態で走行するので、所望の経路に沿った移動を安定的に行うことができ、車いすへの適用や無人搬送車への適用が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10:球体駆動式移動装置、11、12、13:駆動球体、14、15、16:回転体、18:モータ、19:回転軸、20:モータ、21:回転軸、22:モータ、23:回転軸、24、25、26:ボールキャスタ、27:ベース部材、28、29、30:側面、40:球体駆動式移動装置、43:従動球体、45、46:回転体、47:回転軸、48:モータ、49:回転軸、50:モータ、51、52、53:ボールキャスタ、54、55:側面、A、B、C、A’、B’、C’:頂点、G:走行面、H、H’:仮想逆三角錐、J14、J16、J24、J25、J35、J36:仮想直線、K12、K13、K23:仮想直線、O、O’:頂点、P1、P2、P3、P3’:中心、S1、S2、S3、S1’、S2’、S3’:側辺、T14、T16、T24、T25、T35、T36、T16’、T25’:接点、α、β、γ、α’、β’、γ’:側面、η、η’:底面