(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】重合体およびこれを用いた有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20240924BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240924BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240924BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
C08G61/12
H05B33/22 D
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
(21)【出願番号】P 2022536605
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(86)【国際出願番号】 KR2021000378
(87)【国際公開番号】W WO2021145639
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0003988
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェスン・ペ
(72)【発明者】
【氏名】ジェチョル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュファン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドンヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミン・スク・ジュン
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-501872(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119483(WO,A1)
【文献】特開2014-078381(JP,A)
【文献】特表2019-531311(JP,A)
【文献】国際公開第2015/089027(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G61/00-61/12
C08G 2/00- 2/38
C08G73/00-73/26
H05B33/00-33/28
H10K50/15
H10K50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される重合体:
【化1】
前記化学式1中、
Aは、下記化学式2-1で表され、
Bは、下記化学式3で表され、
Cは、置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換の2価のヘテロ環基であり、
E1およびE2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;またはこれらの組み合わせであり、
a、b、およびcは、それぞれモル分率であって、
aは、0.4≦a≦0.9の実数であり、
bは、0.1≦b≦0.4の実数であり、
cは、0≦c≦0.2の実数であり、
a+b+cは1であり、
【化2】
前記化学式2-1中、
Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリール基であり、
Ar1およびAr4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
R1およびR2は、それぞれFであり、
R3は、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;または置換もしくは非置換のシロキサン基であり、
n3は、1~4の整数であり、
n3が2以上である場合、それぞれの括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
*は、重合体内での付着点であり、
【化3】
前記化学式3中、
mは、3または4の整数であり、
mが3である場合、Zは、CRa;SiRa;N;または3価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
mが4である場合、Zは、C;Si;または4価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
Raは、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;または置換もしくは非置換のアリール基であり、
Yは、直接結合;置換もしくは非置換のアルキレン基;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
Yが直接結合;または置換もしくは非置換のアルキレン基である場合、Zは、3価または4価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
*は、重合体内での付着点である。
【請求項2】
前記化学式3は、下記化学式3-1~3-4のいずれか一つで表される、請求項
1に記載の重合体:
【化4】
前記化学式3-1~3-4中、
Z1は、CRa;SiRa;N;または3価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
Z2およびZ3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、C;Si;または4価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
L1は、直接結合;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
Raは、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;または置換もしくは非置換のアリール基であり、
R10~R20は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;フルオロアルコキシ基;シロキサン基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロ環基;または架橋結合性基であり、隣接した基が互いに結合して環を形成してもよく、
k1は、1~4の整数であり、
k2は、1~5の整数であり、
k1が2以上である場合、括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
k2が2以上である場合、括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
*は、重合体内での付着点である。
【請求項3】
前記重合体の重量平均分子量は、70,000g/mol~2,000,000g/molである、請求項
1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
第1電極;
前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および
前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた発光層を含む1層以上の有機物層を含み、
前記有機物層のうち1層以上は、請求項
1~3のいずれか1項に記載の重合体を含む、有機発光素子。
【請求項5】
前記重合体を含む有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、または正孔注入と正孔輸送を同時にする層である、請求項
4に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記発光層は、有機化合物を含む、請求項
4に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記発光層は、量子ドットを含む、請求項
4に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年1月13日付けで韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2020-0003988号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【0002】
本明細書は、重合体およびこれを用いて形成された有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0003】
有機発光現象は、特定の有機分子の内部プロセスにより電流が可視光に転換される例の一つである。有機発光現象の原理は次のとおりである。陽極と陰極との間に有機物層を位置させた際、二つの電極の間に電圧を印加すると、陰極と陽極からそれぞれ電子と正孔が有機物層に注入される。有機物層に注入された電子と正孔は再結合してエキシトン(exciton)を形成し、該エキシトンが再び基底状態に落ちて光が出ることになる。このような原理を用いた有機電界発光素子は、一般に、陰極と陽極およびその間に位置した有機物層、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層を含む有機物層で構成されることができる。
【0004】
有機発光素子で用いられる物質としては、純粋有機物質または有機物質と金属が錯体をなす錯化合物が大半を占めており、用途に応じて正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質などに区分することができる。ここで、正孔注入物質や正孔輸送物質としては、p-タイプの性質を有する有機物質、すなわち、酸化し易く、酸化時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に用いられている。一方、電子注入物質や電子輸送物質としては、n-タイプの性質を有する有機物質、すなわち、還元し易く、還元時に電気化学的に安定した状態を有する有機物が主に用いられている。発光物質としては、p-タイプの性質とn-タイプの性質を同時に有する物質、すなわち、酸化と還元状態でいずれにも安定した形態を有する物質が好ましく、エキシトンが形成された際にそれを光に転換する発光効率の高い物質が好ましい。
【0005】
上記で言及したものの他に、有機発光素子で用いられる物質は、次のような性質をさらに有することが好ましい。
【0006】
第1に、有機発光素子で用いられる物質は、熱的安定性に優れることが好ましい。有機発光素子内では、電荷の移動によるジュール熱(joule heating)が発生するためである。現在、正孔輸送層物質として主に用いられるNPB(N,N’-Di(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)は、ガラス転移温度が100℃以下の値を有するため、高い電流を必要とする有機発光素子には使用し難いという問題がある。
【0007】
第2に、低電圧駆動が可能な高効率の有機発光素子を得るためには、有機発光素子内に注入された正孔または電子が円滑に発光層に伝達されるとともに、注入された正孔と電子が発光層の外に抜け出ないようにしなければならない。このために、有機発光素子で用いられる物質は、適切なバンドギャップ(band gap)およびHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)またはLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)エネルギー準位を有しなければならない。現在、溶液塗布法により製造される有機発光素子において、正孔輸送物質として用いられるPEDOT:PSS(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene) doped:poly(styrenesulfonic acid))の場合、発光層物質として用いられる有機物のLUMOエネルギー準位に比べてLUMOエネルギー準位が低いため、高効率、長寿命の有機発光素子の製造に困難がある。
【0008】
この他にも、有機発光素子で用いられる物質は、化学的安定性、電荷移動度、電極や隣接した層との界面特性などに優れなければならない。すなわち、有機発光素子で用いられる物質は、水分や酸素による物質の変形が少ないべきである。また、適切な正孔または電子移動度を有することで、有機発光素子の発光層において、正孔と電子の密度がバランスをなすようにしてエキシトンの形成を極大化しなければならない。そして、素子の安定性のために、金属または金属酸化物を含む電極との界面を良くするべきである。
上記で言及したものの他に、溶液工程用有機発光素子で用いられる物質は、次のような性質をさらに有しなければならない。
【0009】
第1に、貯蔵可能な均質な溶液を形成しなければならない。商用化された蒸着工程用物質の場合、結晶性が良いため、溶液によく溶けないかまたは溶液を形成するとしても結晶が形成されやすいので、貯蔵期間に応じて溶液の濃度勾配が異なったり不良素子を形成したりする可能性が大きい。
【0010】
第2に、溶液工程が行われる層は、他の層に対して溶媒および物質に対する耐性があるべきである。このために、VNPB(N4,N4’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N4,N4’-ビス(4-ビニルフェニル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)のように、硬化基を導入し、溶液の塗布後、熱処理もしくはUV(ultraviolet)照射により、基板上で自己架橋により結合された高分子を形成または次の工程に十分な耐性を有する高分子を形成可能な物質が好ましく、HATCN(ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル:Hexaazatriphenylenehexacarbonitrile)のように、それ自体が溶媒耐性を有することができる物質も好ましい。
【0011】
したがって、当技術分野においては、上記のような要件を備えた有機物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本明細書は、重合体およびこれを用いて形成された有機発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施態様は、下記化学式1で表される重合体を提供する。
【0014】
【化1】
前記化学式1中、
Aは、下記化学式2で表され、
Bは、下記化学式3で表され、
Cは、置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換の2価のヘテロ環基であり、
E1およびE2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のシロキサン基;架橋結合性基;またはこれらの組み合わせであり、
a、b、およびcは、それぞれモル分率であって、
aは、0<a≦1の実数であり、
bは、0≦b<1の実数であり、
cは、0≦c<1の実数であり、
a+b+cは1であり、
【化2】
前記化学式2中、
Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリール基であり、
Ar1およびAr4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
R1およびR2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基であり、
R3は、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;または置換もしくは非置換のシロキサン基であり、
n1~n3は、それぞれ1~4の整数であり、
n1~n3がそれぞれ2以上である場合、それぞれの括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
*は、重合体内での付着点(結合点)であり、
【化3】
前記化学式3中、
mは、3または4の整数であり、
mが3である場合、Zは、CRa;SiRa;N;または3価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
mが4である場合、Zは、C;Si;または4価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
Raは、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;または置換もしくは非置換のアリール基であり、
Yは、直接結合;置換もしくは非置換のアルキレン基;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
Yが直接結合;または置換もしくは非置換のアルキレン基である場合、Zは、3価または4価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
*は、重合体内での付着点である。
【0015】
本発明のまた一つの実施態様は、下記化学式2で表される単位および下記化学式5で表される末端基を含む重合体を提供する。
【0016】
【0017】
前記化学式2および5中、
Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリール基であり、
Ar1およびAr4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
R1およびR2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基であり、
R3は、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;または置換もしくは非置換のシロキサン基であり、
n1~n3は、それぞれ1~4の整数であり、
n1~n3がそれぞれ2以上である場合、それぞれの括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
Eは、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のシロキサン基;架橋結合性基;またはこれらの組み合わせであり、
*は、重合体内での付着点である。
【0018】
本発明のまた一つの実施態様は、第1電極;
前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および
前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた発光層を含む1層以上の有機物層を含み、
前記有機物層のうち1層以上は、前記重合体を含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施態様による重合体は、化学式2がハロゲン基を含む。これにより、低いHOMOエネルギーレベルおよび相対的に大きい双極子モーメント(dipole moment)を示すため、正孔輸送が容易である。
【0020】
また、本発明の一実施態様による化合物は、有機発光素子の正孔輸送層に適用されており、素子の性能および寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施態様による有機発光素子の構造の例示図である。
【
図2】本発明の一実施態様による有機発光素子の構造の例示図である。
【
図3】化合物a-1のNMR測定結果を示す図である。
【
図4】化合物a-2のNMR測定結果を示す図である。
【
図6】単量体AのHPLC測定結果を示す図である。
【
図7】実験例1で製造されたコーティング組成物1により形成した薄膜の膜保持率の実験結果を示す図である。
【
図8】実験例1で製造されたコーティング組成物2により形成した薄膜の膜保持率の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0023】
本発明は、下記化学式1で表される重合体を提供する。
【0024】
【化5】
前記化学式1中、
Aは、下記化学式2で表され、
Bは、下記化学式3で表され、
Cは、置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換の2価のヘテロ環基であり、
E1およびE2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のシロキサン基;架橋結合性基;またはこれらの組み合わせであり、
a、b、およびcは、それぞれモル分率であって、
aは、0<a≦1の実数であり、
bは、0≦b<1の実数であり、
cは、0≦c<1の実数であり、
a+b+cは1であり、
【化6】
前記化学式2中、
Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリール基であり、
Ar1およびAr4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
R1およびR2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基であり、
R3は、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;または置換もしくは非置換のシロキサン基であり、
n1~n3は、それぞれ1~4の整数であり、
n1~n3がそれぞれ2以上である場合、それぞれの括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
*は、重合体内での付着点であり、
【化7】
前記化学式3中、
mは、3または4の整数であり、
mが3である場合、Zは、CRa;SiRa;N;または3価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
mが4である場合、Zは、C;Si;または4価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
Raは、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;または置換もしくは非置換のアリール基であり、
Yは、直接結合;置換もしくは非置換のアルキレン基;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
Yが直接結合;または置換もしくは非置換のアルキレン基である場合、Zは、3価または4価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
*は、重合体内での付着点である。
【0025】
前記重合体において、化学式2は、ハロゲン基(R1およびR2)を含む。したがって、前記化学式2を含む重合体は、低いHOMOエネルギーレベルおよび相対的に大きい双極子モーメント(dipole moment)を示すため、正孔輸送が容易である。
【0026】
本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする際、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、二つの部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0027】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする際、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0028】
本明細書において、置換基の例示は、以下に説明するが、これらに限定されない。
前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合された水素原子が他の置換基に置き換わることを意味し、置換される位置は、水素原子が置換される位置、すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0029】
本明細書において、「置換もしくは非置換」という用語は、重水素;ハロゲン基;アルキル基;シクロアルキル基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アミン基;アリール基;およびヘテロ環基からなる群より選択された1または2以上の置換基で置換されるか、前記例示された置換基のうち2以上の置換基が連結された置換基で置換されるか、またはいかなる置換基も有しないことを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0030】
前記置換基の例示は、以下に説明するが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素(-F)、塩素(-Cl)、臭素(-Br)、またはヨウ素(-I)が挙げられる。
【0032】
本明細書において、アルキル基は、直鎖もしくは分岐鎖であってもよく、炭素数は、特に限定されないが、1~60であることが好ましい。一実施態様によれば、前記アルキル基の炭素数は1~30である。前記アルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
本明細書において、シクロアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、3~60であることが好ましい。一実施態様によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。前記シクロアルキル基の具体的な例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書において、アルコキシ基は、直鎖、分岐鎖もしくは環状鎖であってもよい。前記アルコキシ基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~30であることが好ましい。前記アルコキシ基の具体的な例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、3,3-ジメチルブチルオキシ、2-エチルブチルオキシ、n-オクチルオキシ、n-ノニルオキシ、n-デシルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書において、アミン基は、-NH2;アルキルアミン基;アリールアルキルアミン基;アリールアミン基;アリールヘテロアリールアミン基;アルキルヘテロアリールアミン基、およびヘテロアリールアミン基からなる群より選択されてもよく、これらに限定されない。前記アミン基の炭素数は、特に限定されないが、1~60であることが好ましい。
【0036】
本明細書において、アリール基の炭素数は、特に限定されないが、6~60であることが好ましい。一実施態様によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。本明細書の一実施態様において、前記アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、トリフェニル基、クリセニル基、フルオレニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書において、アリールアミン基のアリール基は、前述したアリール基の例示の中から選択されてもよい。
【0038】
本明細書において、アリーレン基は、アリール基に結合位置が二つあるもの、すなわち、2価の基を意味する。これらは、それぞれ2価の基であることを除いては、前述したアリール基の説明が適用されてもよい。
【0039】
本明細書において、ヘテロ環基は、炭素ではない原子、ヘテロ原子を1以上含むものであって、具体的に、前記へテロ原子は、O、N、Se、およびSなどからなる群より選択される原子を1以上含んでもよい。前記ヘテロ環基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数2~30であることが好ましい。本明細書の一実施態様において、前記ヘテロ環基は、単環式もしくは多環式であってもよい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、ピリジン基、ビピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、トリアゾール基、アクリジン基、ピリダジン基、ピラジン基、キノリン基、キナゾリン基、キノキサリン基、フタラジン基、ピリドピリミジン基、ピリドピラジン基、ピラジノピラジン基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、フェナントリジン基(phenanthridine)、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾール基、チアジアゾール基、フェノチアジン基、およびジベンゾフラン基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書において、2価のヘテロ環は、単環もしくは多環であってもよく、前記ヘテロ環基において結合位置が二つあるものを意味する。例えば、前記2価のヘテロ環基としては、例えば、2価のチオフェン基;2価のカルバゾール基;2価のジベンゾフラン基;および2価のジベンゾチオフェン基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書において、アリールオキシ基は、-OR200で表される基であって、R200は、アリール基である。アリールオキシ基中のアリール基は、前述したアリール基の例示のとおりである。具体的に、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ベンジルオキシ、p-メチルベンジルオキシ、p-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、3,5-ジメチル-フェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、p-tert-ブチルフェノキシ基、3-ビフェニルオキシ基、4-ビフェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、4-メチル-1-ナフチルオキシ基、5-メチル-2-ナフチルオキシ基、1-アントリルオキシ基、2-アントリルオキシ基、9-アントリルオキシ基、1-フェナントリルオキシ基、3-フェナントリルオキシ基、9-フェナントリルオキシ基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書において、シリル基は、SiR201R202R203で表される基であって、R201、R202、およびR203は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;または置換もしくは非置換のアリール基である。前記シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、およびフェニルシリル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書において、シロキサン基は、-Si(R204)2OSi(R205)3で表される基であって、R204およびR205は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;または置換もしくは非置換のアリール基である。
【0044】
本明細書において、架橋結合性基は、熱、光、および/または放射線に曝露させることで、化合物の間に架橋をさせる反応性置換基を意味し得る。架橋は、熱処理、光照射、および/または放射線照射により、炭素-炭素多重結合、環状構造が分解されることで生成されたラジカルが連結されることで生成されることができる。
【0045】
本明細書の一実施態様において、前記架橋結合性基は、下記構造のいずれか一つである。
【0046】
【0047】
前記構造中、
【化9】
は、他の置換基または結合部に結合される部位を意味する。
【0048】
本明細書において、「隣接した」基は、当該置換基が置換された原子と直接連結された原子に置換された置換基、当該置換基と立体構造的に最も近く位置した置換基、または当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基を意味し得る。例えば、ベンゼン環においてオルト(ortho)位置に置換された2個の置換基、および脂肪族環において同一炭素に置換された2個の置換基は、互いに「隣接した」基と解釈されてもよい。
【0049】
本明細書において、隣接した基が互いに結合して形成される環において、「環」は、置換もしくは非置換の炭化水素環;または置換もしくは非置換のヘテロ環を意味する。
【0050】
本明細書において、「モル分率」は、全ての成分の総モル数に対して与えられた成分のモル数の比を意味する。
【0051】
本発明の一実施態様において、前記化学式2は、下記化学式2-1で表される。
【0052】
【化10】
前記化学式2-1中、
R1~R3、Ar1~Ar4、およびn3は、化学式2で定義したものと同様であり、
*は、重合体内での付着点である。
【0053】
本発明の一実施態様において、前記化学式2は、下記化学式2-2で表される。
【0054】
【化11】
前記化学式2-2中、
R1~R3、Ar2、Ar3、およびn3は、化学式2で定義したものと同様であり、
R4およびR5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のシロキサン基;または架橋結合性基であり、
n4およびn5は、それぞれ1~4の整数であり、
h1およびh2は、それぞれ1~3の整数であり、
n4が2以上である場合、前記2以上のR4は、互いに同一または異なり、
n5が2以上である場合、前記2以上のR5は、互いに同一または異なり、
h1が2以上である場合、括弧内の構造は、互いに同一または異なり、
h2が2以上である場合、括弧内の構造は、互いに同一または異なり、
*は、重合体内での付着点である。
【0055】
本発明の一実施態様において、前記R1およびR2は、フッ素である。
【0056】
本発明の一実施態様において、前記R3は、水素;または置換もしくは非置換のアルキル基である。
【0057】
本発明の一実施態様において、前記R3は、水素;または炭素数1~30のアルキル基である。
【0058】
本発明の一実施態様において、前記R3は、水素;または炭素数1~10のアルキル基である。
【0059】
本発明の一実施態様において、前記R3は、水素;またはヘキシル基である。
【0060】
本発明の一実施態様において、前記n3は2であり、前記R3はヘキシル基である。
【0061】
本発明の一実施態様において、前記h1およびh2は、それぞれ2である。
【0062】
本発明の一実施態様において、前記R4およびR5は、それぞれ水素である。
【0063】
本発明の一実施態様において、前記Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基である。
【0064】
本発明の一実施態様において、前記Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のビフェニル基である。
【0065】
本発明の一実施態様において、前記Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、アルキル基で置換されたビフェニル基である。
【0066】
本発明の一実施態様において、前記Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基で置換されたビフェニル基である。
【0067】
本発明の一実施態様において、前記化学式2は、下記構造である。
【化12】
前記構造中、*は、重合体内での付着点である。
【0068】
本発明の一実施態様において、前記bは、モル分率であって、0≦b<1の実数である。すなわち、前記重合体は、Bを選択的に含む。
【0069】
本発明の一実施態様において、前記Yは、直接結合;または置換もしくは非置換のアリーレン基である。
【0070】
本発明の一実施態様において、前記Yは、直接結合;または置換もしくは非置換のフェニレン基である。
【0071】
本発明の一実施態様において、前記化学式3は、下記化学式3-1~3-4のいずれか一つで表される。
【0072】
【0073】
前記化学式3-1~3-4中、
Z1は、CRa;SiRa;N;または3価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
Z2およびZ3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、C;Si;または4価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
L1は、直接結合;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
Raは、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;または置換もしくは非置換のアリール基であり、
R10~R20は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;フルオロアルコキシ基;シロキサン基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロ環基;または架橋結合性基であり、隣接した基が互いに結合して環を形成してもよく、
k1は、1~4の整数であり、
k2は、1~5の整数であり、
k1が2以上である場合、括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
k2が2以上である場合、括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
*は、重合体内での付着点である。
【0074】
本発明の一実施態様において、前記化学式3は、前記化学式3-1で表される。
【0075】
本発明の一実施態様において、前記Z1は、CH;SiH;N;または置換もしくは非置換の3価のアリール基である。
【0076】
本発明の一実施態様において、前記Z1は、CH;SiH;N;または置換もしくは非置換の3価のフェニル基である。
【0077】
本発明の一実施態様において、前記Z1は、N;または3価のフェニル基である。
【0078】
本発明の一実施態様において、前記L1は、直接結合;または置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基である。
【0079】
本発明の一実施態様において、前記L1は、直接結合;または炭素数6~30のアリーレン基である。
【0080】
本発明の一実施態様において、前記L1は、直接結合;またはフェニレン基である。
【0081】
本発明の一実施態様において、前記L1は、直接結合である。
【0082】
本発明の一実施態様において、前記化学式3は、前記化学式3-2で表される。
【0083】
本発明の一実施態様において、前記Z2は、C;またはSiである。
【0084】
本発明の一実施態様において、前記Bは、前記化学式3-3で表される。
【0085】
本発明の一実施態様において、前記Z3は、C;またはSiである。
【0086】
本発明の一実施態様において、前記化学式3は、前記化学式3-4で表される。
【0087】
本発明の一実施態様において、前記化学式3は、下記構造のいずれか一つで表される。
【0088】
【0089】
前記構造中、
R10~R20は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン基;シアノ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;フルオロアルコキシ基;シロキサン基;置換もしくは非置換のアミン基;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のヘテロ環基;または架橋結合性基であり、隣接した基が互いに結合して環を形成してもよく、
k1は、1~4の整数であり、
k2は、1~5の整数であり、
k1が2以上である場合、括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
k2が2以上である場合、括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
*は、重合体内での付着点である。
【0090】
本発明の一実施態様において、前記R10~R20は、それぞれ水素である。
具体的に、前記化学式3は、下記構造のいずれか一つで表される。
【0091】
【0092】
前記構造中、*は、重合体内での付着点である。
【0093】
より具体的に、前記化学式3は、下記構造のいずれか一つで表される。
【0094】
【0095】
前記構造中、*は、重合体内での付着点である。
【0096】
より具体的に、前記化学式3は、下記構造のいずれか一つで表される。
【0097】
【0098】
前記構造中、*は、重合体内での付着点である。
【0099】
本発明の一実施態様において、前記cは、モル分率であって、0≦c<1の実数である。すなわち、前記重合体は、Cを選択的に含む。
【0100】
本発明の一実施態様において、前記Cは、2個の付着点を有する単位である。
【0101】
本発明の一実施態様において、前記Cは、置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換の2価のヘテロ環基である。
【0102】
本発明の一実施態様において、前記Cは、重水素または架橋結合性基で置換もしくは非置換のアリーレン基;または重水素または架橋結合性基で置換もしくは非置換の2価のヘテロ環基である。
【0103】
本発明の一実施態様において、前記Cは、下記構造のいずれか一つである。
【0104】
【0105】
前記構造中、
Y1は、S、O、またはNR100であり、
R30~R39およびR100は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;または架橋結合性基であり、
k3は、1または2の整数であり、
k4は、1~4の整数であり、
k5は、1~3の整数であり、
k6は、1~8の整数であり、
k3~k6がそれぞれ2以上である場合、それぞれの括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
*は、重合体内での付着点である。
【0106】
具体的に、前記Cは、下記構造のいずれか一つである。
【0107】
【0108】
前記構造中、
Y1は、S、O、またはNR100であり、
R30~R39およびR100は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;または架橋結合性基であり、
k3は、1または2の整数であり、
k4は、1~4の整数であり、
k5は、1~3の整数であり、
k6は、1~8の整数であり、
k3~k6がそれぞれ2以上である場合、それぞれの括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
*は、重合体内での付着点である。
【0109】
より具体的に、前記Cは、下記構造のいずれか一つである。
【0110】
【0111】
前記構造中、*は、重合体内での付着点である。
【0112】
本発明の一実施態様において、前記E1およびE2は、重合体の末端-キャッピング(end-capping)単位である。
【0113】
本発明の一実施態様において、前記E1およびE2は、1個の付着点のみを有する単位である。
【0114】
本発明の一実施態様において、前記E1およびE2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のアリール基;架橋結合性基;またはこれらの組み合わせである。
【0115】
本発明の一実施態様において、前記E1およびE2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基;置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基;架橋結合性基;またはこれらの組み合わせである。
【0116】
本発明の一実施態様において、前記E1およびE2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基;置換もしくは非置換のフェニル基;置換もしくは非置換のビフェニル基;架橋結合性基;またはこれらの組み合わせである。
【0117】
本発明の一実施態様において、前記E1およびE2は、それぞれ下記構造のいずれか一つである。
【0118】
【0119】
前記構造中、*は、重合体内での付着点である。
【0120】
より具体的に、前記E1およびE2は、それぞれ下記構造のいずれか一つである。
【0121】
【0122】
前記構造中、*は、重合体内での付着点である。
【0123】
本発明の一実施態様において、前記a、b、およびcは、重合体の製造時に用いられる単量体の当量比に応じて決定される。
【0124】
本発明の一実施態様において、aは0.4以上の実数である。
【0125】
本発明の一実施態様において、aは0.4~1の実数である。
【0126】
本発明の一実施態様において、aは0.5~1の実数である。
【0127】
本発明の一実施態様において、aは0.5~0.9の実数である。
【0128】
本発明の一実施態様において、aは0.5~0.8の実数である。
【0129】
本発明の一実施態様において、bは0以上の実数である。
【0130】
本発明の一実施態様において、bは0~0.5の実数である。
【0131】
本発明の一実施態様において、bは0.1~0.4の実数である。
【0132】
本発明の一実施態様において、bは0.1~0.3の実数である。
【0133】
本発明の一実施態様において、bは0.1~0.3の実数である。
【0134】
本発明の一実施態様において、cは0~0.2の実数である。
【0135】
本発明の一実施態様において、cは0~0.1の実数である。
【0136】
本発明の一実施態様において、cは0である。
【0137】
本発明の一実施態様において、aは0.4~1の実数であり、bは0~0.4の実数であり、cは0~0.2の実数である。
【0138】
本発明の一実施態様において、aは0.4~0.9の実数であり、bは0.1~0.4の実数であり、cは0~0.2の実数である。
【0139】
本発明の一実施態様において、(A+B):(E1+E2)のモル比は、40:60~98:2である。
【0140】
本発明の一実施態様は、下記化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体を提供する。
【0141】
【0142】
前記化学式2および5中、
Ar2およびAr3は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリール基であり、
Ar1およびAr4は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
R1およびR2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、ハロゲン基であり、
R3は、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;または置換もしくは非置換のシロキサン基であり、
n1~n3は、それぞれ1~4の整数であり、
n1~n3がそれぞれ2以上である場合、それぞれの括弧内の置換基は、互いに同一または異なり、
Eは、水素;重水素;置換もしくは非置換のアルキル基;置換もしくは非置換のシリル基;置換もしくは非置換のアリール基;置換もしくは非置換のアリールアミン基;置換もしくは非置換のシロキサン基;架橋結合性基;またはこれらの組み合わせであり、
*は、重合体内での付着点である。
【0143】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される重合体は、前記化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体と表現されてもよい。具体的に、前記化学式1のbおよびcが0である場合、前記化学式1で表される重合体は、前記化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体と表現されてもよい。
【0144】
本発明の一実施態様において、前記化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体は、下記化学式3で表される単位をさらに含む。
【0145】
【0146】
前記化学式3中、
mは、3または4の整数であり、
mが3である場合、Zは、CRa;SiRa;N;または3価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
mが4である場合、Zは、C;Si;または4価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
Raは、水素;置換もしくは非置換のアルキル基;または置換もしくは非置換のアリール基であり、
Yは、直接結合;置換もしくは非置換のアルキレン基;または置換もしくは非置換のアリーレン基であり、
Yが直接結合;または置換もしくは非置換のアルキレン基である場合、Zは、3価または4価の置換もしくは非置換のアリール基であり、
*は、重合体内での付着点である。
【0147】
すなわち、本発明の一実施態様は、前記化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体を提供する。
【0148】
この際、前記化学式1で表される重合体は、前記化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体と表現されてもよい。
【0149】
具体的に、前記化学式1のbが0超過1未満の実数であり、cが0である場合、前記化学式1で表される重合体は、前記化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体と表現されてもよい。
【0150】
本発明の一実施態様において、前記化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体は、下記化学式4で表される単位をさらに含む。
【0151】
【0152】
前記化学式4中、
Cは、置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換の2価のヘテロ環基であり、
*は、重合体内での付着点である。
【0153】
すなわち、本発明の一実施態様は、前記化学式2で表される単位、化学式4で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体を提供する。
【0154】
この際、前記化学式1で表される重合体は、前記化学式2で表される単位、化学式4で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体と表現されてもよい。
【0155】
具体的に、前記化学式1のbが0であり、cが0超過1未満の実数である場合、前記化学式1で表される重合体は、前記化学式2で表される単位、化学式4で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体と表現されてもよい。
【0156】
また、本発明の一実施態様は、前記化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、化学式4で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体を提供する。
【0157】
この際、前記化学式1で表される重合体は、前記化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、化学式4で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体と表現されてもよい。
【0158】
具体的に、前記化学式1のbおよびcがそれぞれ0超過1未満の実数である場合、前記化学式1で表される重合体は、前記化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、化学式4で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体と表現されてもよい。
【0159】
本発明の一実施態様において、前記化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体の化学式2に関する説明は、化学式1で前述した化学式2に関する説明が同等に適用される。例えば、前記化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体において、前記化学式2は、前記化学式2-1で表されてもよい。
【0160】
本発明の一実施態様において、前記化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体が化学式3で表される単位をさらに含む場合、化学式3に関する説明は、化学式1で前述した化学式3に関する説明が同等に適用される。例えば、前記化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体において、前記化学式3は、前記化学式3-1で表されてもよい。
【0161】
前記化学式2および3に関する説明は、化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、化学式4で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体にも同等に適用される。
【0162】
本発明の一実施態様において、前記化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体が化学式4をさらに含む場合、化学式4のCに関する説明は、化学式1で定義したCの定義が同等に適用される。例えば、前記化学式2で表される単位、化学式4で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体において、化学式4のCは、下記構造のいずれか一つである。
【0163】
【0164】
前記Cに関する説明は、化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、化学式4で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体にも同等に適用される。
【0165】
本発明の一実施態様において、前記化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体において、前記化学式5のEは、化学式1のE1に関する説明が同等に適用される。例えば、前記前記化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体において、Eは、重合体の末端-キャッピング(end-capping)単位であり、下記構造のいずれか一つで表されてもよい。
【0166】
【0167】
前記Eに関する説明は、化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体にも同等に適用される。また、前記Eに関する説明は、化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、化学式4で表される単位、および化学式5で表される末端基を含む重合体にも同等に適用される。
【0168】
本発明の一実施態様において、前記重合体は、交互重合体、ブロック重合体、またはランダム重合体である。
【0169】
本発明の一実施態様において、前記重合体の重量平均分子量(Mw)は、70,000g/mol~2,000,000g/molである。具体的に、70,000g/mol~1,000,000g/molである。より具体的に、70,000g/mol~500,000g/molである。
【0170】
重合体の重量平均分子量が前記範囲を満たす場合、溶液工程により素子に適用可能であり、素子に適用後に有機物層が維持される効果を示す。
【0171】
本発明の一実施態様において、前記化学式2で表される単位、化学式3で表される単位、化学式4で表される単位、および化学式5で表される末端基は、重合体の特性が最適化されるように分布することができる。
【0172】
本発明の一実施態様において、重合体中の、化学式2で表される単位のモル分率をa1、化学式3で表される単位のモル分率をb1、化学式4で表される単位のモル分率をc1、化学式5で表される単位のモル分率をe1とする際、a1、b1、c1、およびe1は、それぞれ実数であり、0<a1<1、0≦b1<1、0≦c1<1、0<e1<1であり、a1+b1+c1+e1=1である。
【0173】
本発明の一実施態様において、a1は0.4以上の実数である。
【0174】
本発明の一実施態様において、a1は0.4以上1未満の実数である。
【0175】
本発明の一実施態様において、a1は0.5以上1未満の実数である。
【0176】
本発明の一実施態様において、a1は0.5~0.9の実数である。
【0177】
本発明の一実施態様において、a1は0.5~0.8の実数である。
【0178】
本発明の一実施態様において、b1は0以上の実数である。
【0179】
本発明の一実施態様において、b1は0~0.5の実数である。
【0180】
本発明の一実施態様において、b1は0.1~0.4の実数である。
【0181】
本発明の一実施態様において、b1は0.1~0.3の実数である。
【0182】
本発明の一実施態様において、c1は0~0.2の実数である。
【0183】
本発明の一実施態様において、c1は0~0.1の実数である。
【0184】
本発明の一実施態様において、c1は0である。
【0185】
本発明の一実施態様において、前記e1は0.1~0.5の実数である。
【0186】
本発明の一実施態様において、前記e1は0.1~0.4の実数である。
【0187】
本発明の一実施態様において、前記e1は0.1~0.35の実数である。
【0188】
本発明の一実施態様において、a1は0.4以上1未満の実数であり、b1は0~0.5の実数であり、c1は0~0.2の実数であり、e1は0.1~0.5の実数であり、a1+b1+c1+e1=1である。
【0189】
本発明の一実施態様において、a1は0.4~0.9の実数であり、b1は0.1~0.4の実数であり、c1は0~0.2の実数であり、e1は0.1~0.5の実数であり、a1+b1+c1+e1=1である。
【0190】
本発明の一実施態様において、a1は0.4~0.7の実数であり、b1は0.1~0.3の実数であり、c1は0~0.1の実数であり、e1は0.2~0.4の実数であり、a1+b1+c1+e1=1である。
【0191】
本発明の一実施態様において、前記重合体は、下記構造のいずれか一つで表される。
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
前記構造中、a1は0<a1<1の実数であり、b1は0≦b1<1の実数であり、e1は0<e1<1の実数であり、a1+b1+e1は1である。
【0208】
具体的に、前記構造中、a1は0.4~0.9の実数であり、b1は0.1~0.4の実数であり、e1は0.1~0.5の実数であり、a1+b1+e1は1である。
【0209】
より具体的に、前記構造中、a1は0.4~0.8の実数であり、b1は0.1~0.4の実数であり、e1は0.1~0.5の実数であり、a1+b1+e1は1である。
【0210】
前記構造中、a1、b1、およびe1は、重合体の製造時に投入される単量体の当量に応じて決定される。
【0211】
本発明の一実施態様において、前記重合体は、公知の重合技術を用いて製造されてもよい。例えば、鈴木(Suzuki)、山本(Yamamoto)、スティル(Stille)、金属触媒使用C-Nカップリング反応、および金属触媒使用アリール化反応のような製造方法が適用されてもよい。
【0212】
本発明の一実施態様において、前記重合体は、重水素で置換されていてもよい。この際、重水素は、前駆体材料を用いる方式を適用して置換させてもよい。例えば、ルイス酸H/D交換触媒の存在下で、重水素化されていない単量体および/または重合体を重水素化溶媒で処理することで重水素を置換させてもよい。
【0213】
本発明の一実施態様において、前記重合体の分子量は、用いられた単量体の比を調節して制御してもよい。また、一部の実施態様において、前記重合体の分子量は、クエンチング(quenching)反応を用いて制御されてもよい。
【0214】
本発明の一実施態様において、前記重合体は、正孔輸送材料として用いられてもよい。例えば、前記重合体は、「正孔輸送用重合体」であってもよい。
【0215】
本発明の一実施態様において、前記重合体は、溶液工程により層に形成されてもよい。用語「層」は、用語「膜」または「フィルム」と互いに交換可能に用いられており、所望の領域を覆うコーティングを指す。この用語は、大きさにより制限されない。前記領域は、全体素子だけ大きいか、実際の視覚ディスプレイのような特定の機能領域だけ小さいか、または単一サブピクセル(sub-pixel)だけ小さくてもよい。層およびフィルムは、蒸着、液体沈着(連続および不連続技術)、および熱転写を含む任意の通常の沈着技術により形成されてもよい。連続沈着技術は、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スロット-ダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングを含むが、これらに限定されない。不連続沈着技術は、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷を含むが、これらに限定されない。
【0216】
本発明の一実施態様において、前記重合体は、固有粘度が60mL/g未満である。これは、インクジェット印刷の応用のために特に有用であり、さらに低い粘度により、さらに濃い溶液が噴射されるようにすることができる。具体的に、前記重合体は、固有粘度が50mL/g未満、より具体的には40mL/g未満、さらに具体的には30mL/g未満である。
【0217】
本発明の一実施態様において、前記重合体の固有粘度は、20mL/g以上60mL/g未満、具体的には20mL/g~50mL/g、より具体的には20mL/g~40mL/gである。
【0218】
本発明の一実施態様は、前述した化合物を含むコーティング組成物を提供する。
【0219】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物は、溶媒をさらに含む。本明細書の一実施態様において、前記コーティング組成物は、前記化合物および溶媒を含む。
【0220】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物は、液状であってもよい。前記「液状」は、常温および常圧で液体状態であることを意味する。
本発明の一実施態様において、前記溶媒は、下部層に適用される物質を溶解しないことが好ましい。
【0221】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物が有機発光素子の有機物層に適用される場合、下部層の物質を溶解しない溶媒を用いる。例えば、前記コーティング組成物が正孔輸送層に適用される場合、下部層(第1電極、正孔注入層など)の物質を溶解しない溶媒を用いる。これにより、溶液工程により正孔輸送層の導入が可能であるという長所がある。
【0222】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物は、分子量が大きいため、コーティング後の熱処理時に溶媒耐性が向上する。
【0223】
例えば、前記重合体を溶解させる溶媒を用いてコーティング組成物を製造し、溶液工程により層を製造したとしても、熱処理後には同一の溶媒に対して耐性を有することができる。
【0224】
したがって、前記重合体を用いて有機物層を形成した後に熱処理過程を経ると、他の有機物層に適用時に溶液工程が可能である。
【0225】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物に含まれる溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2-ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;メチルベンゾエート、ブチルベンゾエート、3-フェノキシベンゾエートなどのベンゾエート系溶媒;およびテトラリンなどの溶媒が挙げられるが、本願発明の一実施態様による化合物を溶解または分散可能な溶媒であればよく、これらに限定されない。
【0226】
本発明の一実施態様において、前記溶媒は、1種を単独で用いるか、または2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
【0227】
本発明の一実施態様において、前記溶媒の沸点は、好ましくは40℃~350℃、より好ましくは80℃~330℃であるが、これらに限定されない。
【0228】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物中の前記重合体の濃度は、好ましくは0.1wt/v%~20wt/v%、より好ましくは0.5wt/v%~10wt/v%であるが、これらに限定されない。
【0229】
本発明の一実施態様は、第1電極;
前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および
前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた発光層を含む1層以上の有機物層を含み、
前記有機物層のうち1層以上は、前記重合体を含む、有機発光素子を提供する。
【0230】
本発明の一実施態様において、前記第1電極は陽極であり、前記第2電極は陰極である。また一つの実施態様において、前記第1電極は陰極であり、前記第2電極は陽極である。
【0231】
また一つの実施態様において、有機発光素子は、基板上に、陽極、1層以上の有機物層、および陰極が順次積層された構造(normal type)の有機発光素子であってもよい。
【0232】
また一つの実施態様において、有機発光素子は、基板上に、陰極、1層以上の有機物層、および陽極が順次積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であってもよい。
【0233】
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有してもよい。しかし、有機発光素子の構造は、これに限定されず、さらに少ない数の有機層を含んでもよい。
【0234】
例えば、本発明の一実施態様による有機発光素子の構造が
図1に例示されている。
図1には、基板1、陽極2、発光層3、および陰極4が順次積層された有機発光素子の構造が例示されている。
【0235】
図2には、基板1、陽極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層3、電子注入および輸送層7、および陰極4が順次積層された有機発光素子の構造が例示されている。
図1および2は、有機発光素子を例示したものであって、本発明の有機発光素子の構造は、これらに限定されない。
【0236】
前記有機発光素子が複数の有機物層を含む場合、前記有機物層は、同一の物質または異なる物質から形成されてもよい。
【0237】
本発明の有機発光素子は、有機物層のうち1層以上が前記重合体を含むように製造されることを除いては、当技術分野で周知の材料および方法により製造されてもよい。具体的に、前記有機発光素子は、有機物層のうち1層以上が前記重合体を含むコーティング組成物を用いて形成されてもよい。
【0238】
例えば、本発明の有機発光素子は、基板上に陽極、有機物層、および陰極を順次積層させることで製造されることができる。この際、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)のようなPVD(physical Vapor Deposition)方法を用いて、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させて陽極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に陰極として使用可能な物質を蒸着させることで製造されることができる。
このような方法の他にも、基板上に陰極物質から有機物層、陽極物質を順に蒸着させて有機発光素子を作製することができる。
【0239】
また、本発明は、前記コーティング組成物を用いて形成された有機発光素子の製造方法を提供する。
【0240】
具体的に、本発明の一実施態様において、基板を準備するステップ;前記基板上に第1電極を形成するステップ;前記第1電極上に1層以上の有機物層を形成するステップ;および前記有機物層上に第2電極を形成するステップを含み、前記有機物層のうち1層以上は、前記コーティング組成物を用いて形成される。
【0241】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層は、スピンコーティングを用いて形成される。
【0242】
他の実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層は、印刷法により形成される。
【0243】
本発明の一実施態様において、前記印刷法としては、例えば、インクジェット印刷、ノズル印刷、オフセット印刷、転写印刷、またはスクリーン印刷などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0244】
本発明の一実施態様によるコーティング組成物は、構造的な特性上、溶液工程が適しており、有機物層を印刷法により形成することができるため、素子の製造時に時間および費用的に経済的であるという効果がある。
【0245】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層を形成するステップは、前記第1電極上に前記コーティング組成物をコーティングするステップ;および前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理または光処理するステップを含む。
【0246】
また一つの実施態様において、前記熱処理するステップにおける熱処理時間は、1時間以内であってもよい。具体的には、30分以内であってもよい。
【0247】
本発明の一実施態様において、前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層を熱処理する雰囲気は、アルゴン、窒素などの不活性気体雰囲気であることが好ましい。
【0248】
前記コーティング組成物を用いて形成された有機物層が熱処理または光処理ステップを含んで形成された場合には、溶媒に対する抵抗性が増加して溶液蒸着および架橋方法を繰り返し行って多層を形成することができ、安定性が増加して素子の寿命特性を増加させることができる。
【0249】
本発明の一実施態様において、前記重合体を含む有機物層は、正孔注入層、正孔輸送層、または正孔注入と正孔輸送を同時にする層である。
【0250】
本発明の一実施態様において、前記第1電極は陽極であり、第2電極は陰極である。
【0251】
また一つの一実施態様によれば、前記第1電極は陰極であり、第2電極は陽極である。
【0252】
本発明の有機発光素子は、下記例示のような構造に積層されてもよい。
(1)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(3)陽極/正孔注入層/正孔バッファ層/正孔輸送層/発光層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(8)陽極/正孔注入層/正孔バッファ層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(9)陽極/正孔注入層/正孔バッファ層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(10)陽極/正孔輸送層/電子抑制層/発光層/電子輸送層/陰極
(11)陽極/正孔輸送層/電子抑制層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(12)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子抑制層/発光層/電子輸送層/陰極
(13)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子抑制層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(14)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔抑制層/電子輸送層/陰極
(15)陽極/正孔輸送層/発光層/正孔抑制層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(16)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔抑制層/電子輸送層/陰極
(17)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔抑制層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(18)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子抑制層/発光層/正孔阻止層/電子注入層および輸送層/陰極
【0253】
前記構造中、「電子輸送層/電子注入層」は、「電子注入および輸送層」に代替されてもよい。
【0254】
本発明の一実施態様において、前記陽極物質としては、通常、有機物層への正孔注入が円滑になるように仕事関数の大きい物質が好ましい。本発明で使用可能な陽極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO2:Sbのような金属と酸化物の組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロール、およびポリアニリンのような導電性高分子などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0255】
本発明の一実施態様において、前記陰極物質としては、通常、有機物層への電子注入が容易にように仕事関数の小さい物質が好ましい。陰極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、および鉛のような金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO2/Alのような多層構造の物質などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0256】
本発明の一実施態様において、前記正孔注入層は、電極から正孔を注入する層であって、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力をもって陽極での正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力に優れた化合物が好ましい。また、正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)は、陽極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノン、およびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などが挙げられるが、これらのみ限定されるものではない。
【0257】
本発明の一実施態様において、前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取って発光層まで正孔を輸送する層であって、正孔輸送物質としては、陽極や正孔注入層から正孔の輸送を受けて発光層に移せる物質であって、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。本発明の一実施態様において、前記正孔輸送層は、前記重合体を含む。
【0258】
本発明の一実施態様において、前記発光層は、有機化合物を含む。前記有機化合物は、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子の輸送をそれぞれ受けて結合させることで可視光線領域の光を出せる物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体的な例としては、8-ヒドロキシ-キノリンアルミニウム錯体(Alq3);カルバゾール系化合物;二量化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10-ヒドロキシベンゾキノリン-金属化合物;ベンゾオキサゾール、ベンズチアゾール、およびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン;ルブレンなどが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0259】
本発明の一実施態様において、前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含んでもよい。ホスト材料としては、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などが挙げられる。具体的に、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などが挙げられ、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、金属錯体などが挙げられる。例えば、芳香族アミン誘導体としては、置換もしくは非置換のアリールアミノ基で置換された縮合芳香族環誘導体であって、アリールアミノ基で置換されたフルオレン、ベンゾフルオレン、ピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどが挙げられ、スチリルアミン化合物としては、置換もしくは非置換のアリールアミンに少なくとも1個のアリールビニル基が置換されている化合物であって、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基、およびアリールアミノ基からなる群より1または2以上選択される置換基が置換もしくは非置換される。具体的に、スチリルアミン化合物としては、スチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0260】
本発明の一実施態様において、前記ホスト材料は、アントラセン誘導体であり、前記ドーパント材料は、アリールアミン基で置換されたベンゾフルオレン系化合物である。具体的に、前記ホスト材料は、重水素化アントラセン誘導体であり、前記ドーパント材料は、ビス(ジアリールアミノ)ベンゾフルオレン系化合物である。
【0261】
本発明の一実施態様において、前記発光層は、量子ドットを含む。例えば、前記発光層は、マトリックス樹脂および量子ドットを含んでもよく、量子ドットの種類および含量は、当技術分野で周知のものを用いてもよい。
【0262】
発光層に量子ドットを含む場合、発光層に有機化合物を含む場合よりも低いHOMOエネルギーレベルを示すため、共通層もまた低いHOMOエネルギーレベルを示さなければならない。本発明の一実施態様による化合物は、ハロゲン基を含むことで低いHOMOエネルギーレベルを示すため、発光層に量子ドットの導入が可能である。
【0263】
本発明の一実施態様において、前記共通層は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入と正孔輸送を同時にする層、電子注入層、電子輸送層、または電子注入と電子輸送を同時にする層である。
【0264】
本発明の一実施態様において、前記電子輸送層は、電子注入層から電子を受け取って発光層まで電子を輸送する層であって、電子輸送物質としては、陰極から電子の注入を円滑に受けて発光層に移せる物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては、8-ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alq3を含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン-金属錯体などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。電子輸送層は、従来技術に応じて用いられたように、任意の所望の陰極物質と共に用いてもよい。特に、適切な陰極物質の例は、低い仕事関数を有し、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く通常の物質である。具体的に、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウム、およびサマリウムであり、それぞれの場合、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く。
【0265】
本発明の一実施態様において、前記電子注入層は、電極から電子を注入する層であって、電子を輸送する能力を有し、陰極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成された励起子の正孔注入層への移動を防止し、また、薄膜形成能力に優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フルオレニリデンメタン、アントロン、バソクプロイン(bathocuproine)(BCP)などとその誘導体、金属錯体化合物、および含窒素5員環誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0266】
本発明の一実施態様において、前記金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリナートリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナート)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)(2-ナフトラート)ガリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0267】
本発明の一実施態様において、前記正孔阻止層は、正孔の陰極到達を阻止する層であって、一般に正孔注入層と同一の条件で形成されてもよい。具体的に、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、BCP、アルミニウム錯体(aluminum complex)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0268】
本発明の一実施態様において、前記化学式1で表される重合体;または化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体が含まれる有機物層と隣接した層、例えば、バンク層は、置換基としてフッ素を有する化合物を含む。
【0269】
例えば、前記化学式1で表される重合体が正孔輸送層に含まれる際、正孔輸送層と隣接したバンク層、正孔注入層、および発光層のうち一つ以上はフッ素を含む。
【0270】
上記のように前記化学式1で表される重合体;または化学式2で表される単位および化学式5で表される末端基を含む重合体が含まれる有機物層と隣接した層がフッ素を含む場合、フッ素により双極子モーメント(dipole moment)が異なるため、均一な層を形成できるという効果がある。
【0271】
本発明に係る有機発光素子は、用いられる材料に応じて、前面発光型、背面発光型、または両面発光型であってもよい。
【実施例】
【0272】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳しく説明する。ただし、本発明に係る実施例は種々の他の形態に変形されてもよく、本出願の範囲が以下に記述する実施例に限定されるものと解釈されない。本出願の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0273】
【0274】
(1)化合物a-1の製造
コンデンサ付き丸底フラスコにて、1,4-ジブロモ-2,5-ジヘキシルベンゼン(1,4-dibromo-2,5-dihexylbenzene)10g(1.00eq)および2-(4-クロロ-2-フルオロフェニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(2-(4-chloro-2-fluorophenyl)-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane)10.5g(2.05eq)をトルエン200mLに溶解させた。完全に溶解したら、2M炭酸ナトリウム(sodium carbonate)水溶液100mLとビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(Bis(di-tert-butyl(4-dimethylaminophenyl)phosphine)dichloropalladium(II))0.08g(0.005eq)および相間移動触媒としてアリコート336(Aliquit336)を3滴投入し、90℃で12時間還流させた。DIウォータ(DI water)によって反応を終了した後、有機溶媒で抽出し、固体状態の化合物a-1を10.86g得た。
図3には、化合物a-1のNMR測定結果を示した。
【0275】
(2)化合物a-2の製造
コンデンサ付き丸底フラスコにて、化合物a-1 10g(1.00eq)および4’-プロピル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン(4’-propyl-[1,1’-biphenyl]-4-amine)9.23g(2.20eq)をキシレン200mLに溶解させた。完全に溶解すると、ナトリウムtert-ブトキシド(sodium tert-butoxide)4.77g(2.50eq)およびビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)(Bis(tri-tert-butylphosphine)palladium(0))0.50g(0.05eq)を投入した後、120℃で3時間還流させた。DIウォータ(DI water)によって反応を終了した後、酢酸エチル(ethyl acetate)および蒸留水で有機溶媒抽出を行い、トルエンおよびヘキサンで沈殿させ、白色固体の化合物a-2を得た。
図4には、化合物a-2のNMR測定結果を示した。
【0276】
(3)単量体Aの製造
コンデンサ付き丸底フラスコにて、化合物a-2 8.00g(1.00eq)、4-ブロモ-4’-ヨード-1,1’-ビフェニル(4-bromo-4’-iodo-1,1’-biphenyl)9.77g(3.00eq)、およびナトリウムtert-ブトキシド(sodium tert-butoxide)2.60g(3.00eq)をトルエン200mLに溶解させた。完全に溶解したら、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(tris(dibenzylideneacetone)dipalladium(0))0.16g(0.02eq)および1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1,1’-Bis(diphenylphosphino)ferrocene)0.20g(0.04eq)を投入した後、90℃で8時間還流させた。DIウォータ(DI water)によって反応を終了した後、酢酸エチルおよび蒸留水で有機溶媒抽出を行い、カラムクロマトグラフィーによって99.1%純度の単量体Aを得た。
図5には、単量体AのNMR測定結果を示した。
図6には、単量体AのHPLC測定結果を示した。
【0277】
(4)単量体A-1の製造
コンデンサ付き丸底フラスコにて、単量体A 10.00g(1.00eq)、ビス(ピナコラート)ジボロン(Bis(pinacolato)diboron)14g(2.00eq)、およびカリウムtert-ブトキシド(potassium tert-butoxide)1.60g(3.00eq)をトルエン200mLに溶解させた。完全に溶解したら、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)([1,1’-Bis(diphenylphosphino)ferrocene]dichloropalladium(II)(Pd(dppf)))0.20g(0.04eq)を投入した後、90℃で8時間還流させた。DIウォータ(DI water)によって反応を終了した後、酢酸エチル(ethyl acetate)および蒸留水で有機溶媒抽出を行い、カラムクロマトグラフィーによって99.3%純度の単量体A-1を得た。
【0278】
【0279】
単量体A-1(0.765mmol)、4,4’’-ジブロモ-5’-(4-ブロモフェニル)-1,1’:3’,1’’-テルフェニル(0.158mmol)、および4-ブロモ-4’-プロピル-1,1’-ビフェニル(0.369mmol)を丸底フラスコに入れ、トルエン(11mL)に溶解させた後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(tetrakis(triphenylphosphine)palladium(0)、Pd(PPh3)4)(0.05mmol)と炭酸カリウム(K2CO3)2M溶液5mLおよび相間移動触媒としてアリコート336(Aliquit336)を0.1mL注入した後、100℃で12時間還流させた。反応物をメタノールに徐々に滴加して反応を終了した後、45分間撹拌し、生成された固体を濾過した。乾燥された固体をトルエンに溶解させ(1%wt/v)、シリカゲルおよび塩基性酸化アルミニウム(各6g)を含有したカラムに通過させて精製した。得られたトルエン溶液をアセトンにトリチュレート(triturating)し、重合体1(5.2g)を製造した。
【0280】
【0281】
合成例2において、4,4’’-ジブロモ-5’-(4-ブロモフェニル)-1,1’:3’,1’’-テルフェニル(4,4’’-dibromo-5’-(4-bromophenyl)-1,1’:3’,1’’-terphenyl)の代わりに、3,3’’-ジブロモ-5’-(3-ブロモフェニル)-1,1’:3’,1’’-テルフェニル(3,3’’-dibromo-5’-(3-bromophenyl)-1,1’:3’,1’’-terphenyl)を用いたことを除いては、合成例2と同様の方法で重合体2を製造した。
【0282】
【0283】
合成例2において、4,4’’-ジブロモ-5’-(4-ブロモフェニル)-1,1’:3’,1’’-テルフェニル(4,4’’-dibromo-5’-(4-bromophenyl)-1,1’:3’,1’’-terphenyl)の代わりに、トリス(4-ブロモフェニル)(フェニル)シラン(tris(4-bromophenyl)(phenyl)silane)を用いたことを除いては、合成例2と同様の方法で重合体3を製造した。
【0284】
【0285】
合成例2において、4,4’’-ジブロモ-5’-(4-ブロモフェニル)-1,1’:3’,1’’-テルフェニル(4,4’’-dibromo-5’-(4-bromophenyl)-1,1’:3’,1’’-terphenyl)の代わりに、1,3,5-トリブロモベンゼン(1,3,5-tribromobenzene)を用いたことを除いては、合成例2と同様の方法で重合体4を製造した。
【0286】
【0287】
合成例2において、4,4’’-ジブロモ-5’-(4-ブロモフェニル)-1,1’:3’,1’’-テルフェニル(4,4’’-dibromo-5’-(4-bromophenyl)-1,1’:3’,1’’-terphenyl)の代わりに、トリス(4-ブロモフェニル)アミン(tris(4-bromophenyl)amine)を用いたことを除いては、合成例2と同様の方法で重合体5を製造した。
【0288】
【0289】
前記合成例2において、単量体A-1の代わりに単量体Bを用いたことを除いては、合成例2と同様の方法で比較化合物C1を製造した。
【0290】
前記合成例2~6で製造された重合体1~5の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(PDI)を測定し、下記表1に示す。
数平均分子量、重量平均分子量、および分子量分布はGPCを用いて測定し、合成された重合体をTHF 1wt%に溶かした溶液を用いて測定した。
【0291】
【0292】
実験例1.薄膜保持率の測定
前記合成例6で製造された重合体5(重量平均分子量:110,000g/mol)をトルエンに2wt%濃度で溶かし、コーティング組成物1を製造した。
【0293】
また、合成例5と同様の方法で重合体を製造するが、重量平均分子量が10,000g/molの際に合成を中止し、重量平均分子量が10,000g/molの重合体をトルエンに2wt%濃度で溶かし、コーティング組成物2を製造した。
【0294】
前記コーティング組成物1および2をそれぞれガラスにスピンコーティングして薄膜を形成した。薄膜を220℃で30分間熱処理し、UV吸収を測定した。この薄膜をトルエン(toluene)に10分間再び浸した後に乾燥し、UV吸収を測定した。浸す前後のUV吸収の最大ピークの大きさの比較により薄膜保持率を確認することができる。
【0295】
図7は、コーティング組成物1により形成した薄膜の膜保持率の実験結果を示す図である。
図8は、コーティング組成物2により形成した薄膜の膜保持率の実験結果を示す図である。
図7および8において、(a)は、薄膜を熱処理した直後(トルエンに10分間浸す前)のUV測定結果であり、(b)は、熱処理された薄膜をトルエンに10分間浸した後のUV測定結果である。
【0296】
図7から、重量平均分子量の高い重合体を含むコーティング組成物1により形成した薄膜の場合、薄膜保持率が100%であることを確認することができる。これに対し、
図8から、重量平均分子量の低い重合体を含むコーティング組成物2により形成した薄膜の場合、20%の薄膜が損傷することを確認することができる。
【0297】
これにより、重合体の分子量に応じて薄膜保持率が異なることを確認することができる。また、重量平均分子量の高い重合体を有機物層に適用することで、追加の層を溶液工程により適用しても、形成された有機物層の損失なしに安定性が向上すると予測することができる。
【0298】
実験例2.有機発光素子の製造
【0299】
実施例1.
(1)材料
ドーパントとしては、US8,465,848B2に記載のビス(ジアリールアミノ)ベンゾフルオレン系化合物を用いた。
HILとしては、US7,351,358B2に記載の材料を用いた。具体的には、電気伝導性重合体およびポリマー性フッ化スルホン酸の水性分散液から製造される正孔注入材料を用いた。
ホストとしては、WO2011-028216A1に記載の重水素化アントラセン化合物を用いた。
【0300】
(2)素子の作製
ITO(indium tin oxide)が1,500Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を、洗剤を溶かした蒸留水に入れ、超音波で洗浄した。この際、洗剤としては、フィッシャー社製(Fischer Co.)の製品を用い、蒸留水としては、ミリポア社製(Millipore Co.)のフィルタ(Filter)で2次濾過した蒸留水を用いた。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間行った。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトンの溶剤で超音波洗浄をし乾燥させた後、前記基板を5分間洗浄した後に乾燥した。
素子の作製直前に、洗浄しパターン化されたITOをUVオゾンで10分間処理した。オゾン処理後、HILの水性分散液をITO表面上にスピン-コーティングし、熱処理により溶媒を除去し、約40nm厚さの正孔注入層を形成した。上記で形成された正孔注入層上に、前記合成例2で製造した重合体1が1.5wt%溶解されたトルエン(toluene)溶液をスピン-コーティングし、熱処理により溶媒を除去し、約100nm厚さの正孔輸送層を形成した。正孔輸送層上に、2.0wt%濃度でホストおよびドーパント(ホスト:ドーパント=93:7(wt%))が溶解されたメチルベンゾエート溶液をスピン-コーティングし、約100nm厚さの発光層を形成した。その後、真空蒸着機に移送した後、前記発光層上に、BCPを35nmの厚さに真空蒸着し、電子注入および輸送層を形成した。前記電子注入および輸送層上に、1nmの厚さにLiFおよび100nmの厚さにアルミニウムを順次蒸着し、カソードを形成した。
上記の過程において、カソードのフッ化リチウムの蒸着速度は0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2×10-7torr~5×10-6torrを維持した。
【0301】
実施例2.
前記実施例1において、重合体1の代わりに重合体2を用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0302】
実施例3.
前記実施例1において、重合体1の代わりに重合体3を用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0303】
実施例4.
前記実施例1において、重合体1の代わりに重合体4を用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0304】
実施例5.
前記実施例1において、重合体1の代わりに重合体5を用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0305】
比較例1.
前記実施例1において、重合体1の代わりに比較合成例1で製造された比較化合物C1を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。
【0306】
前記実施例1~5および比較例1で製造された有機発光素子を10mA/cm2の電流密度で性能測定した結果を下記表2に示す。
【0307】
【0308】
前記表2において、別に明示しない限り、測定値は、1000ニット(nit)でのものであり、Vは、10mA/cm2での駆動電圧(ボルト単位)であり、QEは、外部量子効率であり、cd/A(CE)は、電流効率であり、lm/Wは、光源効率であり、CIExおよびCIEyは、C.I.E色度図(Commission Internationale de L’Eclairage、1931)に応じたxおよびy座標である。
【0309】
前記表2において、実施例1~5は、比較例1に比べて、駆動電圧が低く、効率が向上したことを確認することができる。これにより、コアにFが導入された化合物を適用した場合(実施例1~5)、Fが導入されていない化合物を適用した場合(比較例1)に比べて、性能が向上することを確認することができる。これは、Fの導入により、比較化合物よりも向上した電荷移動度を示すためである。
【0310】
実施例6.
前記実施例1において、正孔輸送層上に量子ドットを用いて発光層を形成したことを除いては、実施例1と同様の方法で有機発光素子を製造した。製造された有機発光素子を10mA/cm2の電流密度で駆動し、有機発光素子が駆動されることを確認した。
【符号の説明】
【0311】
1:基板
2:陽極
3:発光層
4:陰極
5:正孔注入層
6:正孔輸送層
7:電子注入および輸送層