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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20240924BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
A61F13/49 312A
A61F13/532 200
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020185283
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074874
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】手島 翠
(72)【発明者】
【氏名】橋野 夕貴
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-099704(JP,A)
【文献】特開2018-061605(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004081(WO,A1)
【文献】特表2020-508141(JP,A)
【文献】特開2020-000757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する長手方向及び幅方向と、
前胴回り域、後胴回り域、及び前記前胴回り域及び前記後胴回り域との間に配置された股下域と、
少なくとも股下域に配置された吸収コアと、を有する吸収性物品であって、
前記前胴回り域及び前記後胴回り域には、前記前胴回り域及び前記後胴回り域を前記長手方向に分割した複数の領域が設けられており、
前記複数の領域は、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%後方に位置する前ウエスト領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%後方に位置する上腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%後方に位置する下腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%後方に位置する前脚領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%前方に位置する後ウエスト領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%前方に位置する上背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%前方に位置する下背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%前方に位置する後脚領域と、を有し、
前記下腹領域の前記幅方向の引張り応力は、前記前胴回り域のいずれの領域の前記幅方向の引張り応力よりも大きく、
前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力は、前記後胴回り域のいずれの領域の前記幅方向の引張り応力よりも大きく、
前記上背領域の前記幅方向の引張り応力は、前記下背領域の前記幅方向の引張り応力よりも大きく、
前記下背領域の前記幅方向の引張り応力は、前記後脚領域の前記幅方向の引張り応力よりも大きい、吸収性物品。
【請求項2】
互いに直交する長手方向及び幅方向と、
前胴回り域、後胴回り域、及び前記前胴回り域及び前記後胴回り域との間に配置された股下域と、
少なくとも股下域に配置された吸収コアと、を有する吸収性物品であって、
前記前胴回り域及び前記後胴回り域には、前記前胴回り域及び前記後胴回り域を前記長手方向に分割した複数の領域が設けられており、
前記複数の領域は、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%後方に位置する前ウエスト領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%後方に位置する上腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%後方に位置する下腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%後方に位置する前脚領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%前方に位置する後ウエスト領域と、
前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%前方に位置する上背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%前方に位置する下背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%前方に位置する後脚領域と、を有し、
前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力は、他のいかなる領域の前記幅方向の引張り応力よりも大きい、吸収性物品。
【請求項3】
前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力は、前記下腹領域の前記幅方向の引張り応力よりも大きい、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記上背領域の前記幅方向の引張り応力は、前記下背領域の前記幅方向の引張り応力よりも大きい、請求項2又は請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記下背領域の前記幅方向の引張り応力は、前記後脚領域の前記幅方向の引張り応力よりも大きい、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記前ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力は、前記上腹領域の前記幅方向の引張り応力よりも小さい、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記前ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力と前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力の合計値は、前記下腹領域の前記幅方向の引張り応力と前記下背領域の前記幅方向の引張り応力の合計値よりも大きい、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記前ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力と前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力の合計値、及び前記下腹領域の前記幅方向の引張り応力と前記下背領域の前記幅方向の引張り応力の合計値は、前記上腹領域の前記幅方向の引張り応力と前記上背領域の前記幅方向の引張り応力の合計値よりも大きい、請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力と前記上背領域の前記幅方向の引張り応力の合計値は、前記下腹領域の前記幅方向の引張り応力と前記前脚領域の前記幅方向の引張り応力の合計値よりも大きい、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記後胴回り域の4つの領域の前記幅方向の引張り応力の合計値は、前記前胴回り域の4つの領域の前記幅方向の引張り応力の合計値よりも大きい、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収コアは、周囲よりも吸収材料の坪量が低い低坪量部を有し、
前記低坪量部は、前記下腹領域と重なる領域に配置されている、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品は、身体の腹部及び背部を覆うように装着され、ずれ下がりを抑制するように構成されている(例えば、下記特許文献1)。特許文献1の吸収性物品は、着用者の身体の動きに対して吸収性物品がずれ難いように構成されている。より詳細には、後胴回り域には、第1伸縮部と、第1伸縮部よりも股下側に位置する第2伸縮部が設けられている。第1伸縮部と第2伸縮部は、長手方向に間隔を空けて配置されている。第1伸縮部の伸縮応力及び第2伸縮部の伸縮応力は、第1伸縮部と第2伸縮部の間の領域の伸縮応力よりも大きい。そのため、吸収性物品が着用された状態で、第1伸縮部と第2伸縮部は、身体に密着し、第1伸縮部と第2伸縮部の間の領域は、身体に比較的密着しない。
【0003】
例えば、着用者が脚を曲げ伸ばし等で動くと、後胴回り域において股下域側に位置する第2伸縮部が股下側に引っ張られる。また、第2伸縮部の股下側への移動に伴って、第1伸縮部と第2伸縮部の間の領域も股下側に引っ張られる。第1伸縮部と第2伸縮部の間の領域は、伸縮応力が比較的小さく身体に密着していない。よって、着用者の身体の動きによって使い捨ておむつの後胴回り域に長手方向に引っ張られる力が掛かった際に、当該第1伸縮部と第2伸縮部の間の領域が緩衝領域となり、身体の動きによる皮膚の伸縮変化を吸収することができる。そのため、第1伸縮部が股下側にずれることを抑制できる。また、第1伸縮部と第3伸縮部は、連なり、第2伸縮部と第3伸縮部は、連なっている。すなわち、前胴回り域の伸縮部と後胴回り域の伸縮部が、着用者の腰回りを一周覆うように配置されている。よって、第2伸縮部が股下側にずれた場合に、第3伸縮部によって元の位置に引き上げることができる。このようにして、特許文献1の吸収性物品は、ずれを抑制するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-202246号公報
【発明の概要】
【0005】
吸収性物品のずれ抑制のニーズは大きく、未だ改善の余地がある。特に、着用者の体形に吸収性物品が合っていないと、当該合っていない箇所におけるずれが生じ、着用時に吸収性物品全体のずれが生じるおそれがあった。そこで、吸収性物品のずれ下がりをより抑制できる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る吸収性物品は、互いに直交する長手方向及び幅方向と、前胴回り域、後胴回り域、及び前記前胴回り域及び前記後胴回り域との間に配置された股下域と、少なくとも股下域に配置された吸収コアと、を有する。前記前胴回り域及び前記後胴回り域には、前記前胴回り域及び前記後胴回り域を長手方向に分割した複数の領域が設けられている。前記複数の領域は、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%後方に位置する前ウエスト領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%後方に位置する上腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%後方に位置する下腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%後方に位置する前脚領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%前方に位置する後ウエスト領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%前方に位置する上背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%前方に位置する下背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%前方に位置する後脚領域と、を有する。前記下腹領域の前記幅方向の引張り応力は、前記前胴回り域のいずれの領域の引張り応力よりも大きい。前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力は、前記後胴回り域のいずれの領域の引張り応力よりも大きい。
【0007】
他態様に係る吸収性物品は、互いに直交する長手方向及び幅方向と、前胴回り域、後胴回り域、及び前記前胴回り域及び前記後胴回り域との間に配置された股下域と、少なくとも股下域に配置された吸収コアと、を有する。前記前胴回り域及び前記後胴回り域には、前記前胴回り域及び前記後胴回り域を長手方向に分割した複数の領域が設けられている。前記複数の領域は、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%後方に位置する前ウエスト領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%後方に位置する上腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%後方に位置する下腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%後方に位置する前脚領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%前方に位置する後ウエスト領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%前方に位置する上背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%前方に位置する下背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%前方に位置する後脚領域と、を有する。前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力は、他のいかなる領域の引張り応力よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る吸収性物品の模式正面図である。
図2図2は、本実施形態に係る吸収性物品の展開状態の模式平面図である。
図3図3は、図1に示すF3-F3に沿った模式断面図である。
図4図4は、吸収性物品が着用者に装着された状態を模式的に示した図である。
【0009】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一態様に係る吸収性物品は、互いに直交する長手方向及び幅方向と、前胴回り域、後胴回り域、及び前記前胴回り域及び前記後胴回り域との間に配置された股下域と、少なくとも股下域に配置された吸収コアと、を有する。前記前胴回り域及び前記後胴回り域には、前記前胴回り域及び前記後胴回り域を長手方向に分割した複数の領域が設けられている。前記複数の領域は、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%後方に位置する前ウエスト領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%後方に位置する上腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%後方に位置する下腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%後方に位置する前脚領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%前方に位置する後ウエスト領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%前方に位置する上背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%前方に位置する下背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%前方に位置する後脚領域と、を有する。前記下腹領域の前記幅方向の引張り応力は、前記前胴回り域のいずれの領域の引張り応力よりも大きい。前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力は、前記後胴回り域のいずれの領域の引張り応力よりも大きい。本態様によれば、腹部において最も胴回り寸法が短い部分に当接する下腹領域の引張り応力が最も大きく、背部において最も胴回り寸法が短い部分に当接する後ウエスト領域の引張り応力がもっとも大きく、身体の胴回り寸法が短い部分に最も応力が大きい部分が当たる。身体の最も凹んだ部分に最も大きい応力を当てることで、吸収性物品の収縮によって吸収性物品が長手方向にずれることを抑制できる。すなわち、身体の凹みに応力が大きい領域を配置することで、身体の形状と吸収性物品の応力の程度が合い、吸収性物品のずれを抑制できる。加えて、比較的応力が大きい後ウエスト領域は、身体がフラットな形状となる背側のウエスト近傍にフィットするため、フィット時の長手方向のずれが生じ難く、適した位置を維持し続け易い。
【0010】
他態様に係る吸収性物品は、互いに直交する長手方向及び幅方向と、前胴回り域、後胴回り域、及び前記前胴回り域及び前記後胴回り域との間に配置された股下域と、少なくとも股下域に配置された吸収コアと、を有する。前記前胴回り域及び前記後胴回り域には、前記前胴回り域及び前記後胴回り域を長手方向に分割した複数の領域が設けられている。前記複数の領域は、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%後方に位置する前ウエスト領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%後方に位置する上腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%後方に位置する下腹領域と、前記前胴回り域の前端縁から前記前胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%後方に位置する前脚領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する0~25%前方に位置する後ウエスト領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する25~50%前方に位置する上背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する50~85%前方に位置する下背領域と、前記後胴回り域の後端縁から前記後胴回り域の前記長手方向の全長に対する85~100%前方に位置する後脚領域と、を有する。前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力は、他のいかなる領域の引張り応力よりも大きい。背部において最も胴回り寸法が短い部分に当接する後ウエスト領域の引張り応力がもっとも大きく、身体の胴回り寸法が短い部分に最も応力が大きい部分が当たる。身体の最も凹んだ部分に最も大きい応力を当てることで、吸収性物品の収縮によって吸収性物品が長手方向にずれることを抑制できる。また、後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力が、他のいかなる領域の引張り応力よりも大きいため、腹部に対する着圧を抑えつつ、背部の着圧を高めることでずれを抑制できる。着用者の腹部に対する圧迫感を抑えることができ、装着感を向上できる。
【0011】
好ましい態様によれば、前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力は、前記下腹領域の前記幅方向の引張り応力よりも大きい。前胴回り域において下腹領域の引張り応力が最も大きく、後胴回り域において後ウエスト領域の引張り応力が最も大きく、装着状態において下腹領域と後ウエスト領域が互いに引っ張り合う。このとき、後ウエスト領域の引張り応力が下腹領域の引張り応力よりも大きいため、腹部の中央から身体の側部に向かって斜め上方向の力が作用する。よって、尿等の体液の吸収時に股下域側の力が作用しても、吸収性物品の引き下がりを抑制できる。
【0012】
好ましい態様によれば、前記上背領域の前記幅方向の引張り応力は、前記下背領域の前記幅方向の引張り応力よりも大きい。本態様によれば、後胴回り域の引張り応力は、下背領域、上背領域、及び後ウエスト領域の順で徐々に大きくなる。背側の胴回り寸法は、臀部の膨らみから上側に向かって徐々に短くなる。身体の胴回り寸法が小さくなるにつれて、吸収性物品の応力を大きくすることで、着用者の体形に吸収性物品を沿わせ、吸収性物品の長手方向のずれを抑制できる。
【0013】
好ましい態様によれば、前記下背領域の前記幅方向の引張り応力は、前記後脚領域の前記幅方向の引張り応力よりも大きい。本態様によれば、後胴回り域の引張り応力は、後脚領域、下背領域、上背領域、及び後ウエスト領域の順で徐々に大きくなる。背側の胴回り寸法は、臀部の膨らみから股下側に向かって短くなる。そのため、下背領域が配置される部分の胴回り寸法よりも、後脚領域が配置される部分の胴回り寸法の方が短い。しかし、後脚領域は、足の付け根が配置され、足の動きに追従して動きやすい領域である。当該後脚領域の引張り応力を比較的小さくすることにより、足の付け根の動きを阻害せずに装着感を向上できる。
【0014】
好ましい態様によれば、前記前ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力は、前記上腹領域の前記幅方向の引張り応力よりも小さい。本態様によれば、前胴回り域の引張り応力は、下腹領域、上腹領域、及び前ウエスト領域の順で徐々に小さくなる。身体の胴回り寸法が大きくなるにつれて、吸収性物品の応力を小さくすることで、着用者の体形に吸収性物品を沿わせ、吸収性物品の長手方向のずれを抑制できる。
【0015】
好ましい態様によれば、前記前ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力と前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力の合計値は、前記下腹領域の前記幅方向の引張り応力と前記下背領域の前記幅方向の引張り応力の合計値よりも大きい。着用状態において、前胴回り域と後胴回り域は、連なっており、両者が連携して着用者の胴回りを覆う。着用者の胴回り一周の寸法は、下腹近傍よりもウエスト開口近傍において短くなりやすい。本態様によれば、ウエスト開口近傍の引張り応力の合計値を大きくすることにより、身体の前後足した周長にあった応力設計にでき、吸収性物品のずれを抑制できる。
【0016】
好ましい態様によれば、前記前ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力と前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力の合計値、及び前記下腹領域の前記幅方向の引張り応力と前記下背領域の前記幅方向の引張り応力の合計値は、前記上腹領域の前記幅方向の引張り応力と前記上背領域の前記幅方向の引張り応力の合計値よりも大きい。胴回りの周長は、ウエスト開口近傍において最も短く、ウエスト開口から股下側に向かって長くなる。長くなる理由は、腹のふくらみと臀部の頂点からの傾斜によるものである。腹のふくらみと臀部の頂点からの傾斜は、主に上腹領域と上背領域に対応する。上腹領域と上背領域の引張り応力の合算値が前ウエスト領域の引張り応力と前記後ウエスト領域の引張り応力の合算値よりも小さいことにより、身体のふくらみを締め付けずに、身体に沿って吸収性物品が配置される。また、胴回りの周長は、腹のふくらみと臀部の頂点からの傾斜よりも股下側に向かって、下腹部の凹みによって短くなる。下腹領域の引張り応力と下背領域の引張り応力の合算値は、当該上腹領域と上背領域の引張り応力の合算値よりも大きく、下腹部の凹みにフィットする。ウエスト開口近傍から腹部の下端までの領域が、身体の周長に合わせて配置され、局所的な締め付けによる装着感の悪化を抑制しつつ、吸収性物品全体のずれを抑制できる。
【0017】
好ましい態様によれば、前記後ウエスト領域の前記幅方向の引張り応力と前記上背領域の前記幅方向の引張り応力の合計値は、前記下腹領域の前記幅方向の引張り応力と前記前脚領域の前記幅方向の引張り応力合計値よりも大きい。本態様によれば、腹部及び背部において凹んでいる領域に対して強く締め、ずれ下がりを抑制できる。また、腹側よりも背側を強く締め付けることで、背側の上に向かって引っ張る力を大きくし、腹側が下にずれる方向と逆の力を加えられる。よって、吸収性物品1がずれ下がることを抑制できる。
【0018】
好ましい態様によれば、前記後胴回り域の4つの領域の前記幅方向の引張り応力の合計値は、前記前胴回り域の4つの領域の前記幅方向の引張り応力の合計値よりも大きい。着用者の体形は、腹側と背側で異なり、腹側の方が背側よりも膨らんでいる。本態様によれば、前胴回り域の複数の領域の引張り応力の合計値が比較的小さく、身体の膨らみが多い腹側に対して締め付けすぎず、かつ後胴回り域の複数の領域の引張り応力の合計値が比較的大きく、身体の膨らみが少ない背側に対して吸収性物品がフィットし、装着感の向上とずれの抑制を両立できる。
【0019】
好ましい態様によれば、前記吸収コアは、周囲よりも吸収材料の坪量が小さい低坪量部を有する。前記低坪量部は、前記下腹領域と重なる領域に配置されている。本態様によれば、低坪量部によって吸収コアが変形し易く、下腹領域がより身体にフィットし、前胴回り域のずれをより抑制できる。
【0020】
(2)吸収性物品の全体概略構成
以下、図面を参照して、実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。図1は、本実施形態に係る吸収性物品の模式正面図である。図2は、本実施形態に係る吸収性物品の展開状態の模式平面図である。図2は、後述するサイド接合部の接合を解除した状態において吸収性物品1を皺が形成されない状態まで伸長させた伸長状態を示している。図3は、図2におけるF3-F3線に沿った吸収性物品の模式断面図である。なお、説明の便宜上、図示が省略されている部材がある。また、説明の便宜上、各部材が厚さ方向において離間していたとしても、実際の製品では厚さ方向に接していることがある。
【0021】
吸収性物品1は、例えば、パンツ型の使い捨ておむつ、テープ型の使い捨ておむつ、又はショーツ型の生理用ナプキンなどである。実施形態の吸収性物品1は、パンツ型の使い捨ておむつである。図1に示すように、吸収性物品1は、長手方向L及び長手方向Lに直交する幅方向Wを有する。長手方向Lは、身体前側と身体後側とに延びる方向である。吸収性物品1は、長手方向Lと幅方向Wの両方の直交する厚さ方向Tを有する。厚さ方向Tは、着用者側に向かう肌面側T1と、肌面側と反対側の非肌面側T2と、に延びる。
【0022】
吸収性物品1は、着用者の腹側に配置される前胴回り域S1と、着用者の背側に配置される後胴回り域S2と、着用者の股下に配置され、前胴回り域S1及び後胴回り域の間に配置された股下域S3と、を有する。図1に示すように、吸収性物品1は、前胴回り域S1の外側部と、後胴回り域S2の外側部を接合するサイド接合部16を有してよい。図1に示すように、サイド接合部16が形成された状態で、吸収性物品1には、着用者の胴が通されるウエスト開口部17と、着用者の脚がそれぞれ挿入される一対の脚回り開口部18と、が形成される。ウエスト開口部17は、前胴回り域S1の前端縁S1Fと、後胴回り域S2の後端縁S2Rとによって規定されていてよい。
【0023】
パンツ型の吸収性物品1においては、股下域S3は、長手方向Lにおけるサイド接合部16の内端縁により規定されてよい。前胴回り域S1と股下域S3との境界は、前胴回り域S1におけるサイド接合部16の後端縁16Rによって規定されてよい。後胴回り域S2と股下域S3との境界は、後胴回り域S2におけるサイド接合部16の前端縁16Fによって規定されてよい。なお、股下域S3は、脚回り開口部18が設けられた領域により規定されてもよい。脚回り開口部18は、吸収性物品1の外側縁から幅方向Wの内側に凹む部分である。前胴回り域S1と股下域S3との境界は、脚回り開口部18の前端縁によって規定されてよい。後胴回り域S2と股下域S3との境界は、脚回り開口部18の後端縁によって規定されてよい。
【0024】
なお、本明細書における外側部とは、幅方向Wにおける外縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、外側縁とは、幅方向Wにおける外縁である。本明細書における内側部とは、幅方向Wにおける内縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、内側縁とは、幅方向Wにおける内縁である。また、本明細書における前端部及び後端部は、長手方向Lにおける縁を含む長手方向Lに一定の範囲を占める部分であり、前端縁及び後端縁は、長手方向Lにおける縁である。外端部は、前端部及び後端部を含んでおり、外端縁は、前端縁及び後端縁を含んでいる。
【0025】
吸収性物品1は、吸収性本体20及び外装体50を有してよい。吸収性本体20は、外装体50とは別体として構成されていてよい。吸収性本体20は、少なくとも股下域S3に配置されている。吸収性本体20は、股下域S3から少なくとも前胴回り域S1へ長手方向Lに延びてもよいし、前胴回り域S1、後胴回り域S2及び股下域S3にわたって延びてもよい。図3に示すように、吸収性本体20は、前胴回り域S1及び後胴回り域S2において、外装体50と厚さ方向Tに重なっている。外装体50は、前胴回り域S1と後胴回り域S2に少なくとも配置される。吸収性本体20は、吸収体30、表面シート41、裏面シート42、サイドシート47を有してよい。吸収体30は、吸収材料を含む吸収コア31を少なくとも有する。吸収材料は、例えば粉砕パルプもしくは高吸収性ポリマー(SAP)、又はこれらの混合物を含んでいてよい。吸収コア31は、少なくとも股下域S3に配置されており、前胴回り域S1から後胴回り域S2にわたって延びていてもよい。吸収体30は、吸収コア31を覆うコアラップ32を有してよい。コアラップ32は、例えば、ティッシュ又は不織布によって構成されていてよい。
【0026】
吸収体30は、周囲よりも吸収材料の坪量が低い低坪量部LRを有してよい。本実施形態では、低坪量部LRには、厚さ方向Tにおいて吸収コア31が配置されずコアラップ32が配置されている。従って、本実施の形態において低坪量部LRの吸収材料の坪量は0である。なお、吸収材料の坪量が0とは、実質的に0であればよく、低坪量部LRには、吸収コア31が実質的に存在しなければよい。低坪量部LRには、周囲の吸収材料の一部が流入することで存在してもよいし、周囲の吸収コア31よりも低い坪量の吸収材料が配置されていてもよい。
【0027】
表面シート41は、吸収体30よりも肌面側T1に位置する。表面シート41の少なくとも一部(例えば、サイドシート47によって覆われていない部分)は、吸収性物品において最も肌面側T1に配置され、着用者の肌に当接する。表面シート41は、液透過性を有していればよく、例えば、不織布によって構成されていてよい。裏面シート42は、吸収体30よりも非肌面側T2に位置する。裏面シート42は、液不透過性を有していればよく、例えば、フィルムによって構成されてよい。サイドシート47は、吸収コア31の幅方向Wの中心よりも幅方向Wの外側に配置される。サイドシート47は、表面シートの肌面側T1に配置されてよい。サイドシート47は、例えば、不織布によって構成されていてよい。
【0028】
外装体50は、吸収性本体20よりも非肌面側T2に配置されてよい。外装体50は、複数のシート部材により構成されてよい。複数のシート材は、例えば不織布により構成されてよい。前胴回り域S1の外装体と後胴回り域S2の外装体は、長手方向Lに離間してよい。外装体50は、前胴回り域S1及び後胴回り域S2において幅方向Wに伸長した状態で配置されているウエスト弾性部材55を有してよい。ウエスト弾性部材55は、幅方向Wに延びている糸状又は紐状の弾性部材によって構成されてもよいし、シート状の弾性部材によって構成されてよい。
【0029】
本実施の形態の吸収性物品1は、吸収性物品1のずれ下がりを抑制できるように構成されている。次いで、吸収性物品1のずれ下がりを抑制する構成について詳細に説明する。前胴回り域S1及び後胴回り域S2には、前胴回り域S1及び後胴回り域S2を長手方向Lに分割した複数の領域が設けられている。各領域は、それぞれ適切な引張り応力となるように設計されている。引張り応力の違いによって各領域が異なる態様で変形し、吸収性物品1がずれ下がり難く構成されている。複数の領域は、前胴回り域S1の前端縁S1Fから前胴回り域S1の長手方向Lの全長に対する0~25%後方に位置する前ウエスト領域F11と、前胴回り域S1の前端縁S1Fから前胴回り域S1の長手方向Lの全長に対する25~50%後方に位置する上腹領域F12と、前胴回り域S1の前端縁S1Fから前胴回り域S1の長手方向Lの全長に対する50~85%後方に位置する下腹領域F13と、前胴回り域S1の前端縁S1Fから前胴回り域S1の長手方向Lの全長に対する85~100%後方に位置する前脚領域F14と、後胴回り域S2の後端縁S2Rから後胴回り域S2の長手方向Lの全長に対する0~25%前方に位置する後ウエスト領域R11と、後胴回り域S2の後端縁S2Rから後胴回り域S2の長手方向Lの全長に対する25~50%前方に位置する上背領域R12と、後胴回り域S2の後端縁から後胴回り域S2の長手方向Lの全長に対する50~85%前方に位置する下背領域R13と、後胴回り域S2の後端縁から後胴回り域S2の長手方向Lの全長に対する85~100%前方に位置する後脚領域R14と、を有する。
【0030】
各領域は、外装体50の領域である。各領域の規定及び引張り応力の測定は、以下の方法によって得ることができる。サイド接合部16を有する吸収性物品1は、サイド接合部16を引き裂いて、前胴回り域S1と後胴回り域S2を分離する。次に、外装体50から吸収性本体20を分離する。外装体50を、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の環境下で2時間放置した後に、外装体50を皺が見えなくなるまで伸長させた状態で、前胴回り域S1及び後胴回り域S2の領域の境界に印を付す。当該印に基づいて外装体50を切断し、複数の領域に分割した試験片を得ることができる。次に、切り出した試験片の両端部(5mm幅)を引張試験器(インストロン)のチャック(挟持具)によって挟持する。このとき、チャック間の距離を100mmとする。次に、幅方向Wにおけるチャックの一方を固定した状態で、チャック間の距離を変えるようにチャックのもう一方を移動させる。このときのチャックの移動スピードは、254mm/minとする。チャックの移動中に、チャックに係る応力を測定し、伸長状態から70%(一定幅)の状態で得られた応力(N/mm)を「引張り応力」と定義する。実施例1及び実施例2にかかる吸収性物品1において得られた引張り応力の測定データを表1に示す。
【表1】
【0031】
図4は、吸収性物品1が着用者に装着された状態を模式的に示した図である。図4は、立った状態における側面側の装着状態を示した図である。着用者の身体のラインを一点鎖線BLで示す。図4に示すように、着用者の体形は、腹側と背側で異なり、吸収性物品1の長手方向Lにおいて胴回り寸法が変化する。出願人が鋭意研究したところ、着用者の腹部においては、腹部の下端の凹み付近の胴回り寸法が最も短く、腹部の下端の凹みから上側及び股下側に向かって胴回り寸法が長くなる。また、着用者の背部においては、臀部の膨らみよりも上側に離れるにしたがって胴回り寸法が短くなり、ウエスト(胴の一番細い部分)近傍では、胴回り寸法の変化が少なく、ほぼ身体の外側への膨らみが少なくフラットな形状である。吸収性物品1において応力が大きい領域は、身体に対して密着する。このとき、例えば、応力が大きい領域が身体の胴回り寸法が比較的長い部分に密着すると、応力が大きい領域が吸収性物品1の収縮によって胴回り寸法が短い部分に移動することで吸収性物品1がずれてしまうことがある。しかし、本実施の形態において、下腹領域F13の幅方向Wの引張り応力は、前胴回り域S1のいずれの領域の引張り応力よりも大きい。すなわち、引張り応力の関係は、F13>F11、F13>F12、F13>F14を満たす。また、後ウエスト領域R11の幅方向Wの引張り応力は、後胴回り域S2のいずれの領域の引張り応力よりも大きい。すなわち、引張り応力の関係は、R11>R12、R11>R13、R11>R14を満たす。腹部において最も胴回り寸法が短い部分に当接する下腹領域F13の引張り応力が最も大きく、背部において最も胴回り寸法が短い部分に当接する後ウエスト領域R11の引張り応力がもっとも大きく、身体の胴回り寸法が短い部分に最も応力が大きい領域が当たる。身体の最も凹んだ部分に最も大きい応力の領域を当てることで、吸収性物品1の収縮によって吸収性物品1が身体の形状にフィットし、吸収性物品1が長手方向Lにずれることを抑制できる。すなわち、身体の凹みに応力が大きい領域を配置することで、身体の形状と吸収性物品1の応力による着圧の程度が合い、吸収性物品1のずれを抑制できる。加えて、比較的応力が大きい後ウエスト領域R11は、身体がフラットな形状となる背側のウエスト近傍にフィットするため、フィット時の長手方向Lのずれが生じ難く、適した吸収性物品1の位置を維持し続け易い。
【0032】
上背領域R12の幅方向Wの引張り応力は、下背領域R13の幅方向Wの引張り応力よりも大きくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、R12>R13を満たしてよい。後胴回り域S2の引張り応力は、下背領域R13、上背領域R12、及び後ウエスト領域R11の順で徐々に大きくなる。下背領域R13は、着用者の臀部の膨らみを覆う部分である。背側の胴回り寸法は、臀部の膨らみから上側に向かって徐々に短くなる。身体の胴回り寸法が小さくなるにつれて、吸収性物品1の応力を大きくすることで、着用者の体形に吸収性物品1を沿わせ、吸収性物品1の長手方向Lのずれを抑制できる。加えて、下背領域R13は、排出された便に対向して配置される。仮に下背領域R13の引張り応力が大きいと、便が体に密着し、装着感が悪化するおそれがある。しかし、下背領域R13は、後ウエスト領域R11及び上背領域R12と比較して応力が小さく、身体に密着しない。よって、排出された便を体に密着させずに収容し続けることができ、装着感の悪化を抑制できる。また、下背領域R13が覆う臀部の膨らみ部分は、動作時に身体が動きやすい部分である。当該動作時に身体が動きやすい部分に吸収性物品1が密着しすぎないことにより、身体の動きに起因して吸収性物品1がたくれ難くなり、ずれを抑制できる。
【0033】
下背領域R13の幅方向Wの引張り応力は、後脚領域R14の幅方向Wの引張り応力よりも大きくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、R13>R14を満たし、R11>R12>R13>R14を満たしてよい。後胴回り域S2の引張り応力は、後脚領域R14、下背領域R13、上背領域R12、及び後ウエスト領域R11の順で徐々に大きくなる。背側の胴回り寸法は、臀部の膨らみから股下側に向かって短くなる。そのため、下背領域R13が配置される部分の胴回り寸法よりも、後脚領域R14が配置される部分の胴回り寸法の方が短い。しかし、後脚領域R14は、足の付け根が配置され、足の動きに追従して動きやすい領域である。当該後脚領域R14の引張り応力を比較的小さくすることにより、足の付け根の動きを阻害せずに装着感を向上できる。
【0034】
前ウエスト領域F11の幅方向Wの引張り応力は、上腹領域F12の幅方向Wの引張り応力よりも小さくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、F11<F12を満たしてよい。着用者の腹部の胴回り寸法は、腹部の下端の凹みが最も短く、当該凹みから上側に離れるにしたがって長くなる。前胴回り域S1の引張り応力は、下腹領域F13、上腹領域F12、及び前ウエスト領域F11の順で徐々に小さくなる。身体の胴回り寸法が大きくなるにつれて吸収性物品1の応力を小さくすることで、着用者の体形に吸収性物品1を沿わせ、吸収性物品1の長手方向Lのずれを抑制できる。また、前ウエスト領域F11が覆う腹の膨らみ部分は、動作時に身体が動きやすい部分である。当該動作時に身体が動きやすい部分に吸収性物品1が密着しすぎないことにより、身体の動きに起因して吸収性物品1がたくれ難くなり、ずれを抑制できる。
【0035】
下腹領域F13の幅方向Wの引張り応力は、前ウエスト領域F11の幅方向Wの引張り応力、上腹領域F12の幅方向Wの引張り応力、及び前脚領域F14の幅方向Wの引張り応力の合計値以下であってよい。すなわち、引張り応力の関係は、F13<F11+F12+F14、又はF13=F11+F12+F14を満たしてよい。下腹領域F13の引張り応力が周囲と比較して大き過ぎると、吸収性物品1のずれ下がりを抑制できる一方で、局所的な締め付けによって装着感が悪化するおそれがある。下腹領域F13の引張り応力が、前胴回り域S1の他の領域の引張り応力の合計値以下であることにより、前胴回り域S1の全体の着圧に対して下腹領域F13が突出し過ぎず、違和感を抑制しつつずれ下がりを抑制できる。
【0036】
前胴回り域S1の領域の引張り応力の関係は、F13>F12>F11>F14を満たしてよい。腹部の胴回りの周長に合わせて引張り応力の関係を配置することができ、比較的周長が短い下腹領域F13に吸収性物品1をフィットさせることができる、かつ足回りの弾性部材の跡がつきやすい前脚領域F14において応力をさげることにより、太もも付近を締め付けずに着用者の装着感を向上できる。
【0037】
後ウエスト領域R11の幅方向Wの引張り応力は、他のいかなる領域の引張り応力よりも大きい。すなわち、引張り応力の関係は、R11>R12、R11>R13、R11>R14、R11>F11、R11>F12、R11>F13、R11>F14を満たす。背部において身体の最も凹んだ部分に最も大きい応力を当てることで、吸収性物品1の収縮によって吸収性物品1が長手方向Lにずれることを抑制できる。また、後ウエスト領域R11の幅方向Wの引張り応力が、他のいかなる領域の引張り応力よりも大きいため、腹部に対する着圧を抑えつつ、背部の着圧を高めることでずれを抑制できる。着用者の腹部に対する圧迫感を抑えることができ、装着感を向上できる。
【0038】
後胴回り域S2の4つの領域の幅方向Wの引張り応力の合計値は、前胴回り域S1の4つの領域の幅方向Wの引張り応力の合計値よりも大きくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、R11+R12+R13+R14>F11+F12+F13+F14を満たしてよい。着用者の体形は、腹部と背部で異なり、腹側の方が背側よりも膨らんでいる。前胴回り域S1の複数の領域の引張り応力の合計値が比較的小さく、身体の膨らみが多い腹側に対して締め付けすぎず、かつ後胴回り域S2の複数の領域の引張り応力の合計値が比較的大きく、身体の膨らみが少ない背側に対して吸収性物品1がフィットし、装着感の向上とずれの抑制を両立できる。
【0039】
前ウエスト領域F11の幅方向Wの引張り応力と後ウエスト領域R11の幅方向Wの引張り応力の合計値は、下腹領域F13の幅方向Wの引張り応力と下背領域R13の幅方向Wの引張り応力の合計値よりも大きくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、F11+R11>F13+R13を満たしてよい。着用状態において、前胴回り域S1と後胴回り域S2は、連なっており、両者が連携して着用者の胴回りを覆う。着用者の胴回り一周の寸法は、下腹近傍よりもウエスト開口近傍において短くなりやすい。ウエスト開口近傍の引張り応力の合計値を大きくすることにより、身体の前後を足した周長にあった応力設計にでき、吸収性物品1のずれを抑制できる。
【0040】
前ウエスト領域F11の幅方向Wの引張り応力と後ウエスト領域R11の幅方向Wの引張り応力の合計値、及び下腹領域F13の幅方向Wの引張り応力と下背領域R13の幅方向の引張り応力の合計値は、上腹領域F12の幅方向Wの引張り応力と上背領域R12の幅方向Wの引張り応力の合計値よりも大きくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、F11+R11>F12+R12を満たし、F13+R13>F12+R12を満たしてよい。胴回りの周長は、ウエスト開口近傍において最も短く、ウエスト開口から股下側に向かって長くなる。長くなる理由は、腹のふくらみと臀部の頂点からの傾斜とによるものである。腹のふくらみと臀部の頂点からの傾斜は、主に上腹領域F12と上背領域R12に対応する。上腹領域F12と上背領域R12の引張り応力の合算値が前ウエスト領域F11の引張り応力と後ウエスト領域R11の引張り応力の合算値よりも小さいことにより、身体のふくらみを締め付けずに、身体に沿って吸収性物品1が配置される。胴回りの周長は、腹のふくらみと臀部の頂点からの傾斜よりも股下側に向かって、下腹部の凹みによって短くなる。下腹領域F13の引張り応力と下背領域R13の引張り応力の合算値は、上腹領域F12と上背領域R12の引張り応力の合算値よりも大きく、下腹部の凹みにフィットする。ウエスト開口近傍から腹部の下端までの領域が、身体の周長に合わせて配置され、局所的な締め付けによる装着感の悪化を抑制しつつ、吸収性物品1全体のずれを抑制できる。
【0041】
後ウエスト領域R11の幅方向Wの引張り応力と上背領域R12の幅方向Wの引張り応力の合計値は、下腹領域F13の幅方向Wの引張り応力と後脚領域R14の幅方向Wの引張り応力の合計値よりも大きくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、R11+R12>R13+R14を満たしてよい。背部の身体の形状は、上側の方が凹んでおり、後ウエスト領域R11及び上背領域R12は、背部において比較的凹んでいる領域である。当該背部の凹んでいる部分を、強い応力でフィットさせることにより、吸収性物品1のずれを抑制する。また、前ウエスト領域F11の幅方向Wの引張り応力と上腹領域F12の幅方向Wの引張り応力の合計値は、下腹領域F13の幅方向Wの引張り応力と前脚領域F14の幅方向Wの引張り応力の合計値よりも大きくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、F11+F12<F13+F14を満たしてよい。腹部の身体の形状は、下側の方が凹んでおり、下腹領域F13及び前脚領域F14は、腹部において比較的凹んでいる領域である。当該腹部の凹んでいる部分を、強い応力でフィットさせることにより、吸収性物品1のずれを抑制する。後ウエスト領域R11の引張り応力と上背領域R12の引張り応力の合計値は、下腹領域F13の幅方向Wの引張り応力と前脚領域F14の幅方向Wの引張り応力の合計値よりも大きくてよい。引張り応力の関係は、R11+R12>F13+F14を満たしてよい。後ウエスト領域R11及び上背領域R12は、背部において比較的凹んでいる領域である。また、下腹領域F13及び前脚領域F14は、腹部において比較的凹んでいる領域である。腹部及び背部において凹んでいる領域に対して強く締め、ずれ下がりを抑制できる。また、腹側よりも背側を強く締め付けることで、背側の上に向かって引っ張る力を大きくし、腹側が下にずれる方向と逆の力を加えられる。よって、吸収性物品1がずれ下がることを抑制できる。
【0042】
後ウエスト領域のR11の幅方向Wの引張り応力は、下腹領域F13の幅方向Wの引張り応力よりも大きくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、R11>F13を満たしてよい。前胴回り域S1において下腹領域F13の引張り応力が最も大きく、後胴回り域S2において後ウエスト領域R11の引張り応力が最も大きく、装着状態において下腹領域F13と後ウエスト領域R11が互いに引っ張り合う。このとき、後ウエスト領域R11の引張り応力が下腹領域F13の引張り応力よりも大きいため、腹部の中央から身体の側部に向かって斜め上方向の力が作用する。よって、尿等の体液の吸収時に股下域側の力が作用しても、吸収性物品1の引き下がりを抑制できる。
【0043】
上背領域のR12の幅方向Wの引張り応力は、下腹領域F13の幅方向Wの引張り応力よりも大きくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、R12>F13を満たしてよい。装着状態において下腹領域F13と上背領域R12が互いに引っ張り合う。このとき、上背領域R12の引張り応力が下腹領域F13の引張り応力よりも大きいため、腹部の中央から身体の側部に向かって斜め上方向の力が作用する。よって、尿等の体液の吸収時に股下域側の力が作用しても、吸収性物品1の引き下がりを抑制できる。
【0044】
下腹領域F13の幅方向Wの引張り応力は、下背領域R13の幅方向Wの引張り応力よりも大きくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、F13>R13を満たしてよい。下腹領域F13と下背領域R13は、サイド接合部16を介して互いに引っ張り合う。このとき、引張り応力の関係がF13>R13を満たすため、相対的に引張り応力の大きい下腹領域F13によって後胴回り域S2を前胴回り域S1側に引っ張り、腹の下端に対するフィット性をより向上できる。また、背部では、後ウエスト領域R11の引張り応力が比較的大きいため、上方向の力が生じ、吸収性物品1のずれ下がりを抑制できる。
【0045】
上背領域R12の幅方向Wの引張り応力は、上腹領域F12の幅方向Wの引張り応力よりも大きくてよい。すなわち、引張り応力の関係は、R12>F12を満たしてよい。また、好適には、上背領域R12の幅方向Wの引張り応力は、上腹領域F12の幅方向Wの引張り応力の2倍以上であってよい。身体の形状は、上背領域R12があたる臀部の頂点よりも上側が凹んでおり、上腹領域F12が配置される腹の下端部よりも上側の部分が膨らんでいる。臀部の頂点に対して凹み初めの領域と腹の下端に対して膨らみ始めの領域のその胴回り周長の差が大きくなりやすい。引張り応力の関係は、R12>F12を満たすことにより、身体の形状により合った応力配置にすることができ、吸収性物品1のずれ下がりを抑制できる。
【0046】
後ウエスト領域R11の幅方向Wの引張り応力と上背領域R12の幅方向Wの引張り応力の合計値は、前ウエスト領域F11の幅方向Wの引張り応力と上腹領域F12の幅方向Wの引張り応力の合計値以上であってよい。本態様によれば、身体の形状でくぼんでいる付近に対して、腹側よりも、背側を強く締め付けることで、腹側が下にずれる方向と逆の力を加えられるため、吸収性物品1のずれ下がりを抑制できる。
【0047】
また、吸収性物品のずれを抑制するための構成は、外装体50の領域の応力の違いに加えて、吸収性本体20の構成を変化させてもよい。より詳細には、低坪量部LRは、下腹領域F13と重なる領域に配置されてよい。低坪量部LRによって吸収コア31が変形し易く、下腹領域F13がより腹部の下端の凹みにフィットし、前胴回り域S1のずれをより抑制できる。なお、低坪量部LRは、少なくとも下腹領域F13に配置されていればよく、他の領域にまたがって配置されてもよい。
【0048】
また、各領域の応力を大きくする構成は、例えば、以下によって実現できる。外装体に配置されるウエスト弾性部材の伸長倍率を高くする。または、糸状又紐状のウエスト弾性部材55の本数を増やす。または、外装体に配置される糸状のウエスト弾性部材の番手を高くする。また、各領域の応力を小さくする構成は、大きくする構成の逆の構成を採用すればよい。
【0049】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
吸収性物品のずれ下がりを抑制できる吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:吸収性物品、31:吸収コア、LR:低坪量部、F11:前ウエスト領域、F12:上腹領域、F13:下腹領域、F14:前脚領域、R11:後ウエスト領域、R12:上背領域、R13:下背領域、R14:後脚領域、S1:前胴回り域、S1F:前端縁、S2:後胴回り域、S2R:後端縁、S3:股下域、L:長手方向、W:幅方向
図1
図2
図3
図4