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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】冷却デバイスおよび電子部品の冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/427 20060101AFI20240924BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20240924BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H01L23/46 A
H01L23/46 B
F28D15/02 M
F28D15/02 101H
H05K7/20 Q
H05K7/20 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020185888
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075228
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 智明
(72)【発明者】
【氏名】反町 真人
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0228482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0217467(US,A1)
【文献】特開2002-164680(JP,A)
【文献】特開2020-115077(JP,A)
【文献】特開2007-180453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/427
F28D 15/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に第1作動流体を有し、外面の取付位置で発熱体と熱的に接続可能な容器を備える冷却デバイスであって、
前記容器は、前記外面における前記取付位置を含む部分に凸曲面部を有し、
前記冷却デバイスは、前記凸曲面部と同一部材の前記容器における、前記凸曲面部と対向する内面に設けられ、前記凸曲面部の外形よりも大きい伝熱部材をさらに備えることを特徴とする冷却デバイス。
【請求項2】
前記凸曲面部の形状は、頂部を通り前記容器の前記外面に直交する中心軸に対して、回転対称である、請求項1に記載の冷却デバイス。
【請求項3】
前記凸曲面部の頂部の高さは5μm以上100μm以下である、請求項1または2に記載の冷却デバイス。
【請求項4】
前記容器は、前記外面における前記取付位置を含む部分に窪み部を有し、前記窪み部は、前記凸曲面部を収容する、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却デバイス。
【請求項5】
前記容器の前記凸曲面部以外に設けられ、前記容器を前記発熱体に向かって付勢する弾性部材をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の冷却デバイス。
【請求項6】
前記容器の上部で前記容器を貫通して延在し、第2作動流体が内部を流通する凝縮管をさらに備え、
沸騰冷却装置として用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の冷却デバイス。
【請求項7】
前記容器は、ベーパーチャンバとして用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の冷却デバイス。
【請求項8】
前記容器は、ヒートパイプとして用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の冷却デバイス。
【請求項9】
前記容器の外面と前記発熱体とが非平行な状態で取り付けられている、請求項1~8のいずれか1項に記載の冷却デバイス。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の冷却デバイスと、前記冷却デバイスの前記取付位置に取り付けられる発熱体と、を備えることを特徴とする電子部品の冷却構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却デバイスおよび電子部品の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化に伴い、電子機器の内部には、電気・電子部品などの発熱体が高密度に搭載され、また、発熱体の発熱量が増大する傾向にある。発熱体の温度が所定の許容温度を超えると、発熱体の誤作動を引き起こす原因となることから、発熱体の温度は常に許容温度以下に維持し続けることが求められている。通常、電子機器の内部には、発熱体を冷却するための冷却デバイスが搭載されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、外表面の一部が発熱体を実装したモジュールに当接するための外殻を有し、外殻の内部に冷却媒体の流路が形成される冷却板が記載されている。この冷却板は、外殻の弾性力によって、モジュールに付勢されて当接される。また、特許文献1には、この冷却板と、発熱体が実装され、冷却板に付勢されて当接するように配置されたモジュールとを備える電子機器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-110071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電子機器では、冷却板と接触しているモジュールの表面は起伏などがなく平坦(フラット)である。モジュールと冷却板とが互いに平行な状態で接触すると、モジュールに実装される発熱体から発生する熱は冷却板の全面に均一に伝わるものの、互いに平行な状態でモジュールと冷却板とを接触(いわゆる面接触)設置することは容易ではない。一般的には、モジュールと冷却板とが互いに非平行な状態で接触する。そうすると、冷却板の端部しかモジュールに接触しなくなる。この場合、モジュールから冷却板に伝わる熱は、モジュールに接触している冷却板の端部に局所的に集中する。このように、発熱体の熱は冷却板の端部に集中することから、冷却板は発熱体を効率的には冷却できず、冷却板の設計マージンを大きく取る必要がある。さらに、冷却板への熱の伝達はモジュールと冷却板との接触状態に大きく依存し、モジュールと冷却板との接触状態はモジュールの冷却効率に影響を及ぼす。
【0006】
本開示の目的は、小型で容易に製造でき、安定して優れた冷却効率を有する冷却デバイスおよび電子部品の冷却構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 内部空間に第1作動流体を有し、外面の取付位置で発熱体と熱的に接続可能な容器を備える冷却デバイスであって、前記容器は、前記外面における前記取付位置を含む部分に凸曲面部を有することを特徴とする冷却デバイス。
[2] 前記凸曲面部の形状は、頂部を通り前記容器の前記外面に直交する中心軸に対して、回転対称である、上記[1]に記載の冷却デバイス。
[3] 前記凸曲面部の頂部の高さは5μm以上100μm以下である、上記[1]または[2]に記載の冷却デバイス。
[4] 前記容器は、前記外面における前記取付位置を含む部分に窪み部を有し、前記窪み部は、前記凸曲面部を収容する、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の冷却デバイス。
[5] 前記容器の前記凸曲面部以外に設けられ、前記容器を前記発熱体に向かって付勢する弾性部材をさらに備える、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の冷却デバイス。
[6] 前記容器の内面における、前記取付位置の背面に設けられる伝熱部材をさらに備え、前記凸曲面部の外形は、前記伝熱部材の外形よりも小さい、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の冷却デバイス。
[7] 前記容器の上部で前記容器を貫通して延在し、第2作動流体が内部を流通する凝縮管をさらに備え、沸騰冷却装置として用いられる、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の冷却デバイス。
[8] 前記容器は、ベーパーチャンバとして用いられる、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の冷却デバイス。
[9] 前記容器は、ヒートパイプとして用いられる、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の冷却デバイス。
[10] 上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の冷却デバイスと、前記冷却デバイスの前記取付位置に取り付けられる発熱体と、を備えることを特徴とする電子部品の冷却構造。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、小型で容易に製造でき、安定して優れた冷却効率を有する冷却デバイスおよび電子部品の冷却構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の冷却デバイスの一例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態の冷却デバイスの一例を示す底部側の拡大断面図である。
図3図3は、実施形態の冷却デバイスの他の例を示す底部側の拡大断面図である。
図4図4は、実施形態の冷却デバイスの他の例を示す底部側の拡大断面図である。
図5図5は、実施形態の冷却デバイスに設けられる弾性部材の一例を示す拡大断面図である。
図6図6は、実施形態の冷却デバイスがベーパーチャンバである容器の一例を示す上面透過図である。
図7図7は、実施形態の冷却デバイスがベーパーチャンバである一例を示す縦断面図である。
図8図8は、実施形態の冷却デバイスがヒートパイプである一例を示す縦断面図である。
図9図9は、実施形態の電子部品の冷却構造の一例を示す底部側の拡大断面図である。
図10図10は、実施例1および比較例1で製造した冷却デバイスの熱密度と熱抵抗との関係を示すグラフである。
図11図11は、従来の冷却デバイスの一例を示す底部側の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態の冷却デバイスの一例を示す斜視図である。図2は、冷却デバイスの一例を示す底部側の拡大断面図である。図3は、冷却デバイスの他の例を示す底部側の拡大断面図である。なお、図1では、便宜上、冷却デバイスの容器の内部構造がわかるように部分的に透過した状態を示している。
【0012】
図1、2に示すように、実施形態の冷却デバイス1は、内部空間Sに第1作動流体F1を有し、外面10aの取付位置11で発熱体70と熱的に接続可能な容器10を備える冷却デバイスである。冷却デバイス1において、容器10は、外面10aにおける取付位置11を含む部分に凸曲面部20を有する。冷却デバイス1は、第1作動流体F1を液相から気相に相変化させることによる潜熱を利用したものである。ここでは、冷却デバイス1が沸騰冷却装置である例を示す。
【0013】
冷却デバイス1は、内部空間Sに第1作動流体F1を封入する容器10を備える。内部に内部空間Sを有する容器10は、外面10aに配置される取付位置11で、発熱体70と熱的に接続可能である。例えば、発熱体70は、基板80の表面に設けられる。
【0014】
沸騰冷却装置として用いられる冷却デバイス1では、容器10の底部12の外面10aに配置される取付位置11で、容器10は発熱体70と熱的に接続される。容器10の底部12の内面10bには、伝熱部材30が取り付けられている。伝熱部材30は、容器10の内面10bにおける、取付位置11の背面に設けられる。
【0015】
冷却デバイス1の冷却効率を向上する観点から、容器10を形成する材料は、高い熱伝導性を有することが好ましく、その中でも、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、ステンレス鋼のような鉄合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、またはマグネシウム合金であることがより好ましい。
【0016】
また、冷却デバイス1の冷却効率を向上する観点から、伝熱部材30を形成する材料は、高い熱伝導性を有することが好ましく、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄、または鉄合金であることがより好ましい。
【0017】
液相の第1作動流体F1(L)は、容器10の下部に存在し、気相の第1作動流体F1(G)は、容器10の上部に存在する。容器10の底部12に固着される伝熱部材30の全体は、液相の作動流体F1(L)に浸漬している。
【0018】
また、冷却デバイス1は、容器10の上部で容器10を貫通して延在し、第2作動流体F2が内部を流通する凝縮管40をさらに備る。凝縮管40は、液相の第1作動流体F(L)の液面よりも上方の容器10の側壁を貫通する貫通穴13を挿通し、容器10の内部および外部に亘って延在する。例えば、第1作動流体F1の循環経路は容器10の内部空間Sであり、第2作動流体F2の循環経路は凝縮管40であるため、第1作動流体F1と第2作動流体F2とは混ざり合わない。
【0019】
凝縮管40は、液相の第1作動流体F1(L)の液面よりも上方の内部空間S内に配設される。例えば、凝縮管40に設けられる不図示の循環ポンプによって、第2作動流体F2は凝縮管40内を循環している。
【0020】
容器10の上部に配設される凝縮管40は、凝縮管40内を流れる第2作動流体F2によって、気相の第1作動流体F1(G)から熱を吸収し、冷却された気相の第1作動流体F1(G)を凝縮させて液相の第1作動流体F1(L)に相変化させる。冷却デバイス1の冷却効率を高めるために、凝縮管40の外面には、外面の表面積を増大させる不図示の凹凸部位を設けてもよい。同様に、冷却デバイス1の冷却効率を高めるために、凝縮管40の内面には、内面の表面積を増大させる不図示の凹凸部位を設けてもよい。
【0021】
また、冷却デバイス1である沸騰冷却装置は、図1に示すように凝縮管40が複数で構成される凝縮管群41を備える構成を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、冷却デバイス1は、凝縮管40の代わりに、不図示の冷却フィンなどの冷却機構を有してもよい。
【0022】
冷却デバイス1の冷却効率を向上する観点から、凝縮管40を形成する材料は、高い熱伝導性を有することが好ましく、その中でも、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、またはマグネシウム合金であることがより好ましい。
【0023】
冷却デバイス1の冷却効率の向上や第1作動流体F1の電気絶縁性の観点から、第1作動流体F1は、高い電気絶縁性を有することが好ましく、その中でも、水、アルコール、アンモニア、フルオロカーボン類、シクロペンタン、エチレングリコール、またはこれらの混合物であることが好ましく、フルオロカーボン類、シクロペンタン、エチレングリコールであることがより好ましく、フルオロカーボン類であることがさらに好ましい。
【0024】
第2作動流体F2には、水、主成分としてエチレングリコールなどを含む不凍液が用いられる。容器10の内部を流れる第2作動流体F2の温度は、第2作動流体F2によって気相の第1作動流体F1(G)から液相の第1作動流体F1(L)に凝縮可能な温度以下に保持されている。
【0025】
容器10は、容器10の外面10aにおける取付位置11を含む部分に、凸曲面部20を有する。凸曲面部20は、容器の外面10aから突き出ている。例えば、凸曲面部20は、グリスなどの潤滑剤90を介して、発熱体70に取り付けられる。
【0026】
凸曲面部20は、底部12に配置される取付位置11を含む外面10aに設けられる。容器10の外面10aにおいて、凸曲面部20は、取付位置11よりも大きい。すなわち、取付位置11は、凸曲面部20内に配置される。例えば、凸曲面部20は、容器10の外面10aの一部分に設けられる。
【0027】
凸曲面部20の表面形状は、半楕円体や半球体のような連続する楕円弧状や円弧状などの曲面である。凸曲面部20の表面には、凹部や角部は設けられない。
【0028】
このような凸曲面部20を備える容器10は、発熱体70に対して以下のように作用する。
【0029】
凸曲面部20を外面10aに備える容器10が、例えば潤滑剤90を介して、発熱体70に取り付けられ、図2に示すような容器10の外面10aと発熱体70とが互いに平行な状態で熱的に接続される場合には、凸曲面部20の頂部21が発熱体70に最も近い部分になる。発熱体70から容器10に伝わる熱は、凸曲面部20の頂部21に集中し、発熱体70の熱は、頂部21から容器10に伝わる。凸曲面部20の背面に配置される伝熱部材30は、頂部21から容器10に伝達された熱を効率的に吸収する。このように、伝熱部材30を頂部21の背面に設置することで、発熱体70を効率的に冷却できる。そのため、伝熱部材30の配置場所のマージンを大きく取ることが不要になる。
【0030】
また、図3に示すような容器10の外面10aと発熱体70とが非平行な状態で熱的に接続される場合、凸曲面部20における頂部21と端部22との間の位置が発熱体70に最も近い部分になる。すなわち、凸曲面部20における端部22よりも内側の部分が発熱体70に最も近い。発熱体70から容器10に伝わる熱は、凸曲面部20における端部22よりも内側部分に集中し、発熱体70の熱は、内側部分から伝熱部材30に伝わる。伝熱部材30を凸曲面部20の背面に設置することで、発熱体70を効率的に冷却できる。そのため、伝熱部材30の配置場所のマージンを大きく取ることが不要になる。
【0031】
このように、容器10の外面10aと発熱体70とが非平行な状態で取り付けられる場合であっても、伝熱部材30の配置場所のマージンを大きく取ることが不要になる。そのため、冷却デバイス1を小型化できる。
【0032】
さらに、容器10の外面10aと発熱体70とが非平行な状態で取り付けられる場合であっても、伝熱部材30を凸曲面部20の背面に設置することによって、発熱体70を効率的に冷却できる。容器10の外面10aおよび発熱体70の接触角度が発熱体70の冷却効率に与える影響は、大きく低下する。そのため、冷却デバイス1は、安定して優れた冷却効率を有する。
【0033】
さらに、容器10の外面10aと発熱体70とが非平行な状態で取り付けられる場合であっても、上記のような冷却デバイス1の小型化や優れた冷却効率の安定化が発揮される。すなわち、容器10の外面10aと発熱体70とを平行な状態で取り付けなくても、冷却デバイス1は上記効果を発揮できる。そのため、冷却デバイス1を容易に製造できる。
【0034】
仮に図11に示す従来の冷却デバイスのように、凸曲面部20を具備しない容器10の外面10aと発熱体70とが非平行な状態で取り付けられる場合、発熱体70から容器10に伝わる熱は、発熱体70の端部71に近い容器10の部分に集中する。容器10に伝達された熱は、伝熱部材30と接触していない内面10bの部分にも伝わり、伝熱部材30が発熱体70の熱を吸収する効率は低下する。そのため、伝熱部材30の設計マージンを大きく取ることが必要である。また、容器10と発熱体70との接触状態は、発熱体70の冷却効率に大きな影響を及ぼすため、容器10の外面10aは、発熱体70に対して、非平行ではなく、平行に取り付けることが求められる。このように、容器10の外面10aを発熱体70に対して平行に取り付けることは容易ではない。
【0035】
また、凸曲面部20の形状は、頂部21を通り容器10の外面10aに直交する中心軸23に対して、回転対称であることが好ましい。凸曲面部20の形状が中心軸23を中心として回転対称であると、発熱体70から凸曲面部20への熱の伝達効率が向上するため、冷却デバイス1の冷却効率はさらに向上する。また、外面10aの凸曲面部20を発熱体70に容易に取り付けできるため、冷却デバイス1をさらに容易に製造できる。さらには、冷却デバイス1をさらに小型化できる。
【0036】
また、凸曲面部20の頂部21の高さhは、好ましくは5μm以上100μm以下である。頂部21の高さhが5μm以上であると、凸曲面部20を容易に形成できる。頂部21の高さhが100μm以下であると、発熱体70から凸曲面部20への熱の伝達効率が向上するため、冷却デバイス1の冷却効率はさらに向上する。また、外面10aの凸曲面部20を発熱体70に容易に取り付けできるため、冷却デバイス1をさらに容易に製造できる。さらには、冷却デバイス1をさらに小型化できる。
【0037】
また、図4に示すように、容器10は、外面10aにおける取付位置11を含む部分に窪み部14を有することが好ましい。また、窪み部14は、凸曲面部20を収容することが好ましい。窪み部14は、取付位置11を有する容器10の底部12の外面10aに設けられ、外面10aから内面10bに向かって窪んでいる。容器10の外面10aにおいて、窪み部14は、凸曲面部20よりも大きい。凸曲面部20は、窪み部14の底部に設けられる。窪み部14の底部の形状は、凸曲面部20の形状に応じて、適宜選択される。
【0038】
容器10が窪み部14を有し、窪み部14が凸曲面部20を収容すると、発熱体70は、窪み部14内に収容される凸曲面部20内の取付位置11に取り付けられることから、冷却デバイス1の厚さを低減することができる。そのため、冷却デバイス1をさらに小型化できる。
【0039】
また、図2などに示すように、凸曲面部20の外形20dは、伝熱部材30の外形30dよりも小さいことが好ましい。外面10aに沿った凸曲面部20の外形20dが内面10bに沿った伝熱部材30の外形30dよりも小さいため、小さい凸曲面部20によって、上述した冷却デバイス1の優れた冷却効率や製造の容易化を効率的に達成できる。
【0040】
また、図5に示すように、冷却デバイス1は、容器10の凸曲面部20以外に設けられ、容器10を発熱体70に向かって付勢する弾性部材50をさらに備えてもよい。すなわち、弾性部材50は、凸曲面部20には設けられない。弾性部材50は、例えば図1に示すように、容器10の外側に設けられる。
【0041】
弾性部材50は、例えば、バネ部51およびナット部52を有する。また、容器10の底部12には、外面10aから内面10bに貫通する貫通穴15が設けられる。貫通穴15の内径は、バネ部51の外形よりも小さい。基板80の表面に立設する支持部81には、容器10の貫通穴15を挿通している状態で、容器10の内面10b側からバネ部51が挿通される。支持部81の先端部に設けられるネジ部81aには、バネ部51側から、ナット部52が螺合される。ナット部52がネジ部81aに締め込まれながら容器10の内面10bに近づくにつれて、弾性力がバネ部51に付与される。バネ部51の弾性力が容器10に付与されることによって、容器10は発熱体70に向かって付勢される。支持部81に対するナット部52の締め込み度合いに応じて、容器10を発熱体70に付勢する力を調整できる。
【0042】
このような冷却デバイス1は、主に以下の冷却経路によって、発熱体70を冷却する。
【0043】
沸騰冷却装置である冷却デバイス1では、発熱体70の熱は、凸曲面部20内の取付位置11を介して、容器10から伝熱部材30に伝達される。伝熱部材30に伝達された熱は、液相の第1作動流体F1(L)を蒸発させて気相の第1作動流体F1(G)に相変化させることによって、冷却デバイス1は、発熱体70からの熱を潜熱として吸収する。気相の第1作動流体F1(G)は、容器10の内部空間Sを上方へ移動し、凝縮管40などの冷却機構と熱的に接触する。冷却機構として凝縮管40を用いる場合、気相の第1作動流体F1(G)は、凝縮管40を介して、内部を流通する第2の作動流体F2と熱交換することによって、気相の第1作動流体F1(G)は、液相の第1作動流体F1(L)に相変化する。気相の第1作動流体F1(G)から液相の第1作動流体F1(L)への相変化の際に、気相の第1作動流体F1(G)から放出される潜熱は、凝縮管40内を流通する第2作動流体F2に伝達される。相変化した液相の第1作動流体F1(L)は、重力の作用により、容器10の内部空間Sを下部へ還流する。第1作動流体F1は、密閉された内部空間Sで、液相から気相への相変化、および気相から液相への相変化を繰り返す。気相の第1作動流体F1(G)から熱を吸収した第2作動流体F2は、凝縮管40に沿って冷却デバイス1の内部から外部へ流通することで、発熱体70の熱を冷却デバイス1の外部に輸送される。
【0044】
上記では、冷却デバイス1が沸騰冷却装置に用いられる例について説明したが、冷却デバイスは、ベーパーチャンバとして用いられることも好ましい。
【0045】
図6は、実施形態の冷却デバイスがベーパーチャンバである容器の一例を示す上面透過図である。図7は、実施形態の冷却デバイスがベーパーチャンバである一例を示す縦断面図である。
【0046】
図6、7では、冷却デバイス1aはベーパーチャンバとして用いられる。冷却デバイス1aの容器10は、例えば、板状容器であり、2つの金属板16を接合して形成される。冷却デバイス1aの容器10の内部空間Sは、外部環境に対して密閉された空間であり、脱気処理により減圧されている。
【0047】
容器10には、発熱体70からの熱を液相の第1作動流体F1(L)に伝え、液相の第1作動流体F1(L)を蒸発させて気相の第1作動流体F1(G)に相変化させる蒸発部60と、気相の第1作動流体F1(G)を凝縮させて液相の第1作動流体F1(L)に相変化させる凝縮部61とを設ける。
【0048】
容器10の外面10aに設けられる凸曲面部20には、発熱体70が取り付けられる。例えば、図6、7に示す冷却デバイス1aでは、凸曲面部20は容器10の一端側部分に設けられる。蒸発部60は、凸曲面部20側の内部空間に形成される。蒸発部60は、凸曲面部20内の取付位置11と熱的に接続された発熱体70から伝達される熱を吸収する機能を有する。蒸発部60は、発熱体70から伝達された熱によって、内部空間Sに封入された液相の第1作動流体F1(L)を蒸発させて気相の第1作動流体F1(G)に相変化させることで、冷却デバイス1aは、蒸発潜熱として発熱体70の熱を吸収する。
【0049】
凝縮部61は、蒸発部60から離れた位置に配設される。例えば、容器10の他端側部分に配設される。凝縮部61は、蒸発部60で相変化した気相の第1作動流体F1(G)を放熱する機能を有している。具体的には、凝縮部61は、気相の第1作動流体F1(G)を凝縮させて液相の第1作動流体F1(L)に相変化させ、それにより凝縮潜熱として流通する作動流体F1(G)の熱を容器10の外部に放出する。
【0050】
例えば、蒸発部60から凝縮部61への気相の第1作動流体F1(G)の流通は、内部空間Sの主に上方で行われる。凝縮部61から蒸発部60への液相の第1作動流体F1(L)の流通は、内部空間Sの主に下方で行われる。これにより、蒸発部60と凝縮部61との間で第1作動流体F1が循環される。
【0051】
また、冷却デバイスは、ヒートパイプとして用いられることも好ましい。
【0052】
図8は、実施形態の冷却デバイスがヒートパイプである一例を示す縦断面図である。
【0053】
図8では、冷却デバイス1bはヒートパイプとして用いられる。冷却デバイス1bの容器10は、例えば管状容器である。上記の冷却デバイス1aと基本的に同様の動作原理によって動作するヒートパイプとしての冷却デバイス1bでは、ベーパーチャンバに比べて容器10の内部空間Sが広い。
【0054】
容器10の外面10aに設けられる凸曲面部20には、発熱体70が取り付けられる。例えば、図8に示す冷却デバイス1bでは、凸曲面部20は容器10の一端側部分に設けられる。
【0055】
容器10には、液相の第1作動流体F1(L)を蒸発させて気相の第1作動流体F1(G)に相変化させる蒸発部60と、蒸発部60から離れた位置に配設され、気相の第1作動流体F1(G)を凝縮させて液相の第1作動流体F1(L)に相変化させる凝縮部61とを設ける。
【0056】
例えば、蒸発部60から凝縮部61への気相の第1作動流体F1(G)の流通は、容器10の内部空間Sに沿って行われる。凝縮部61から蒸発部60への液相の第1作動流体F1(L)の流通は、蒸発部60から凝縮部61に連続して延在する、液相の第1作動流体F1(L)に対して毛細管力を発揮する液相流路17に沿って行われる。凝縮部61で凝縮した液相の第1作動流体F1(L)は、液相流路17の毛細管力によって蒸発部60に運ばれるため、蒸発部60および凝縮部61の高さ位置の関係によらず、冷却デバイス1bを動作させることができる。また、凝縮部61から蒸発部60への液相の第1作動流体F1(L)の流通は、容器10の底面に沿って行われてもよい。
【0057】
図9は、実施形態の電子部品の冷却構造2の一例を示す底部側の拡大断面図である。電子部品の冷却構造2は、上記の冷却デバイス1、1a、1bと、冷却デバイス1、1a、1bの取付位置11に取り付けられる発熱体70と、を備える。
【0058】
凸曲面部20を具備する冷却デバイス1、1a、1bで発熱体70を冷却する電子部品の冷却構造2は、冷却デバイス1、1a、1bと同様に、小型で容易に製造でき、安定して優れた冷却効率を有する。
【0059】
以上説明した実施形態によれば、内部空間に作動流体を収容する容器の外面構造に着目し、容器外面における取付位置を含む部分に凸曲面部を設けることによって、安定して優れた冷却効率を有する小型化の冷却デバイスを容易に製造できる。
【0060】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0061】
次に、実施例および比較例について説明するが、本開示は実施例に限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
図1~2に示す構成を有する沸騰冷却装置である冷却デバイスを製造した。凸曲面部は曲率Rが2500、半径が10mm、頂部の高さが20μm、中心軸に対して回転対称であった。
【0063】
(比較例1)
図11に示す構成を有する沸騰冷却装置である冷却デバイスを製造した。すなわち、比較例1の冷却デバイスは凸曲面部を具備せず、容器の外面10aが平坦であった。
【0064】
実施例1および比較例1で製造した冷却デバイスについて、熱密度と熱抵抗とを測定した。熱密度は、発熱体と容器との接触面積に対する発熱体の発熱量の比(発熱体の発熱量/発熱体の接触面積)から算出した。熱抵抗は、容器に流入する直前の作動流体の温度t1と容器から流出した直線の作動流体の温度t2とを熱電対で測定し、発熱体の発熱量に対する上記温度の差の比(t1-t2/発熱体の発熱量)から算出した。図10は、熱密度と熱抵抗との関係を示すグラフである。
【0065】
図10に示すように、凸曲面部を有する容器を備えた実施例1の冷却デバイスは、比較例1の冷却デバイスに比べて、熱抵抗を低減できた。このとき、実施例1では、容器と発熱体とを平行な状態で取り付けなくても、冷却デバイスの冷却効率を安定化できたことから、冷却デバイスの製造が容易になった。そのため、実施例1の冷却デバイスは、安定して優れた冷却効率を有することができた。また、上述のように、凸曲面部を有する実施例1の冷却デバイスは、小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1、1a、1b 冷却デバイス
2 電子部品の冷却構造
10 容器
10a 容器の外面
10b 容器の内面
11 取付位置
12 容器の底部
13 貫通穴
14 窪み部
15 貫通穴
16 金属板
17 液相流路
20 凸曲面部
21 凸曲面部の頂部
22 凸曲面部の端部
23 凸曲面部の中心軸
30 伝熱部材
40 凝縮管
41 凝縮管群
50 弾性部材
51 バネ部
52 ナット部
60 蒸発部
61 凝縮部
70 発熱体
71 発熱体の端部
80 基板
81 支持部
81a ネジ部
90 潤滑剤
S 内部空間
F1 第1作動流体
F1(L) 液相の第1作動流体
F1(G) 気相の第1作動流体
F2 第2作動流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11