(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ケーブル外装部材
(51)【国際特許分類】
H02G 11/00 20060101AFI20240924BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240924BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20240924BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04 062
F16L57/00 A
B60R16/02 623U
B60R16/02 620C
(21)【出願番号】P 2021012114
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】竿谷 尚志
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-203988(JP,A)
【文献】特開2007-143287(JP,A)
【文献】特開2011-46274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
H02G 3/04
F16L 57/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、車体に対してスライドしながらドア開口を開閉するスライドドアとの間において、互いに架け渡すように接続され、上記スライドドアの開閉動作に追従して曲げ変形するケーブルに外装されるケーブル外装部材であって、
上記ケーブルの長手方向に沿って外装される外装部材本体と、上記ケーブルの曲げ変形時に車体側へ張り出すように変形する張出し部分の車体内側への侵入を規制するガイド部とが備えられ、
車体平面視で上記ケーブルの長手方向に直交する方向を上記ケーブルの厚み方向に設定するとともに、上記ケーブルの長手方向および厚み方向に直交する方向を上記ケーブルの上下方向に設定し、
上記ガイド部は、車体側に車体外側から当接可能に上記外装部材本体に対して上記上下方向の少なくとも一方へ延出され、
さらに上記ガイド部は、上記外装部材本体の上記長手方向における、少なくとも上記張出し部分に相当する部位に連続して形成された
ケーブル外装部材。
【請求項2】
上記外装部材本体の上記長手方向における、中間位置よりも車体側の部位を、上記外装部材本体の車体側部位に設定し、
上記ガイド部は、上記外装部材本体の上記車体側部位の少なくとも一部に上記長手方向に沿って連続して形成された
請求項1に記載のケーブル外装部材。
【請求項3】
上記ケーブルは、上記厚み方向の長さよりも上記上下方向の長さが長い偏平形状に形成されたフラットケーブルであり、
上記外装部材本体は、上記ケーブルに対して外装可能に該ケーブルよりも上記厚み方向および上記上下方向に一回り大きく形成されるとともに、上記長手方向における、上記ガイド部を有する部位を含めて上記偏平形状に形成された
請求項1又は2に記載のケーブル外装部材。
【請求項4】
上記ガイド部は、上記外装部材本体と上記厚み方向において同じ長さに形成された
請求項3に記載のケーブル外装部材。
【請求項5】
上記外装部材本体と上記ガイド部とは、単一の弾性部材により一体形成された
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のケーブル外装部材。
【請求項6】
上記外装部材本体は、上記長手方向に沿った断面が凹状となる凹部と、凸状となる凸部とが、共に上記外装部材本体の上記上下方向に直線状に延びるとともに、上記長手方向に沿って交互に複数配設された蛇腹形状に形成された
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のケーブル外装部材。
【請求項7】
上記外装部材本体の上記長手方向における上記ガイド部に相当する部位における、上記凹部と上記凸部とは、上記ガイド部に至るまで上記上下方向に連続して形成された
請求項6に記載のケーブル外装部材。
【請求項8】
上記ガイド部の上記長手方向の少なくとも一方側に、上記外装部材本体に対して上記上下方向の少なくとも一方へ延出される延出長さが、上記ガイド部の上記長手方向の少なくとも上記一方側の端部に近付くに従って徐々に小さくなる面取り部が形成された
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のケーブル外装部材。
【請求項9】
上記外装部材本体の内部には、上記ケーブルを収容する収容空間が設けられ、
上記ケーブルを上記収容空間に対して出し入れする開口部は、上記外装部材本体の下部に、上記長手方向に沿って上記上下方向に延びるスリット状に形成された
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のケーブル外装部材。
【請求項10】
上記開口部は、上記ガイド部の上記厚み方向の内側を通って該ガイド部を上記厚み方向において一方側と他方側とに分割するように上記上下方向に延びるスリット状に形成された
請求項9に記載のケーブル外装部材。
【請求項11】
上記ガイド部の上記厚み方向における上記一方側の部位を、車体へ当接するガイド面を有する側の部位に設定するとともに、上記ガイド部の上記厚み方向における上記他方側の部位を、車体へ当接しない非ガイド面を有する側の部位に設定し、
上記ガイド部の上記一方側の部位が、上記他方側の部位よりも上記厚み方向に長く形成された
請求項10に記載のケーブル外装部材。
【請求項12】
上記外装部材本体の下縁は、上記ドア開口からの車室内に対する乗員の乗降用として、車体に設けられたステップ面部よりも高い位置に配置され、
上記ガイド部は、該ガイド部の下縁が上記ステップ面部よりも低い位置に配置されるように上記外装部材本体から下方へ向けて延出された
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のケーブル外装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車体と、車体に対してスライドしながら開閉するスライドドアとの間において、互いに架け渡すように接続され、スライドドアの開閉動作に追従して曲げ変形するケーブルに外装されるケーブル外装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に備えられているスライドドア内には、パワーウインドモーター、スイッチ、スピーカー等の電装品が組み込まれている。これら電装品に対して車体側からの給電、或いは車体との間で各種制御信号の送受信を行うために、車体とスライドドアとの間には、ワイヤハーネス等のケーブルが架け渡されるように配索されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、ケーブルの長手方向に沿って外装されるケーブル外装部材として、周方向に延びる凹部と凸部とが長手方向に沿って交互に配列された蛇腹形状のコルゲートチューブが開示されている。
特許文献1のコルゲートチューブに例示されるように、ケーブル外装部材は、内部に備えられたケーブルと共に、スライドドアの開閉動作に追従して曲げ変形する。例えば、ケーブル外装部材は、スライドドアが開閉動作する過程において、車体とスライドドアとの間に生じる余長部分が平面視でU字形状に屈曲する。
【0004】
しかしながら、ケーブル外装部材は、例えば、U字形状の折返し部における車体側への張出し部分の張り出し具体にもよるが、スライドドアが半開き位置などの開閉途中の位置にある場合や、全開位置にある場合に関わらず、車体側への張出し部分が、車体に侵入するおそれがある。
【0005】
そして、ケーブル外装部材の例えば、車体側への張出し部分が、車体に侵入した場合、車体に備えられた内装品等の車体部品に干渉するおそれがある。
【0006】
ケーブル外装部材の張出し部分がスライドドアの開閉動作の度に車体部品に対して干渉を繰り返した場合、該張出し部分が損傷してケーブル外装部材が有するケーブルの保護機能が低下するおそれがある。
【0007】
また、ケーブル外装部材は、スライドドアが開閉途中の位置にある場合や、全開位置にある場合に限らず、張出し部分が、乗員が車室に対して乗降の際に利用する車体部品としての踏み台のステップ面部に乗り上げる場合がある。そして、その場合には、乗員が該ステップ面部を踏む際に、誤って張出し部分を踏みつけて該張出し部分が損傷したり、乗員のスムーズな乗降動作が阻害されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、スライドドアの開閉動作に追従して変形するケーブルが、車体内側へ侵入することをスライドドアの開閉動作の間に亘って継続して規制することができるケーブル外装部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、車体と、車体に対してスライドしながらドア開口を開閉するスライドドアとの間において、互いに架け渡すように接続され、上記スライドドアの開閉動作に追従して曲げ変形するケーブルに外装されるケーブル外装部材であって、上記ケーブルの長手方向に沿って外装される外装部材本体と、上記ケーブルの曲げ変形時に車体側へ張り出すように変形する張出し部分の車体内側への侵入を規制するガイド部とが備えられ、車体平面視で上記ケーブルの長手方向に直交する方向を上記ケーブルの厚み方向に設定するとともに、上記ケーブルの長手方向および厚み方向に直交する方向を上記ケーブルの上下方向に設定し、上記ガイド部は、車体側に車体外側から当接可能に上記外装部材本体に対して上記上下方向の少なくとも一方へ延出され、さらに上記ガイド部は、上記外装部材本体の上記長手方向における、少なくとも上記張出し部分に相当する部位に連続して形成されたことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、スライドドアの開閉動作に追従して変形するケーブルが、車体内側へ侵入することを規制することができる。
【0012】
詳述すると、ケーブルは、スライドドアが開閉動作する際、該開閉動作に追従して、該スライドドアの開閉位置に応じた曲げ形状に曲げ変形する。例えば、スライドドアの開閉位置によっては、ケーブルは、車体とスライドドアとの間においてU字形状の折返し部が形成され、該ケーブルの折返し部は、スライドドアの開閉動作に追従して移動する。
【0013】
そして、ケーブルは、折返し部の一部が、スライドドアの開閉位置によっては、車体内側へ侵入しようと張り出すことがあり、このケーブルの張出し部分についても、スライドドアの開閉動作に追従して移動する。
【0014】
これに対して、ガイド部は、外装部材本体の長手方向に沿って連続して形成されているため、スライドドアが開閉動作する際に、逐次移動する張出し部分が車体内側へ侵入することを、ガイド部によって継続して規制することができる。
【0015】
これにより、乗員が車室に対して乗降時にケーブルと干渉することを防止できることや、ケーブルが乗員によって視認可能な位置まで車室内に張り出さないことによる見栄えを確保できるといった効果を、スライドドアの開閉位置に関わらず奏することができる。
【0016】
この発明の態様として、上記外装部材本体の上記長手方向における、中間位置よりも車体側の部位を、上記外装部材本体の車体側部位に設定し、上記ガイド部は、上記外装部材本体の上記車体側部位の少なくとも一部に上記長手方向に沿って連続して形成された構成とすることができる。
【0017】
上記構成によれば、ガイド部は、スライドドアが半開き状態など、開閉途中においてケーブルが折返し形状(U字形状)に曲げ変形した際、U字形状の折返し部における、車体に面する側に設けられる。これにより、ケーブル外装部材は、ケーブルの車体内側への侵入を、ガイド部によってスライドドアが開閉途中の間に亘って規制することができる。
【0018】
一方、ガイド部は、スライドドアが半開き状態など、開閉途中においてケーブルが折返し形状(Uターン形状)に曲げ変形した際、U字形状の折返し部における、スライドドアに面する側には設けられていない。このため、ケーブル外装部材は、外装部材本体の長手方向において、ガイド部が備えられる長さを抑制して軽量化を図ることができる。
【0019】
またこの発明の態様として、上記ケーブルは、上記厚み方向の長さよりも上記上下方向の長さが長い偏平形状に形成されたフラットケーブルであり、上記外装部材本体は、上記ケーブルに対して外装可能に該ケーブルよりも上記厚み方向および上記上下方向に一回り大きく形成されるとともに、上記長手方向における、上記ガイド部を有する部位を含めて上記偏平形状に形成された構成とすることができる。
【0020】
上記構成によれば、ケーブル外装部材の曲げ特性(曲げ抵抗)について方向性を持たせることができるため、外装部材本体の長手方向に沿って連続して延びるガイド部を備えた構成でありながらも、ケーブル外装部材の厚み方向における優れた曲げ特性と、自重による垂れ下がりの抑制とを両立することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、上記ガイド部は、上記外装部材本体と上記厚み方向において同じ長さに形成された構成とすることができる。
【0022】
上記構成によれば、上下方向においてガイド部と外装部材本体との境界部に段部等が形成されることなく、ガイド部の車体側に当接するガイド面から外装部材本体に至るまで上下方向に面一とすることができる。
【0023】
なお、上記ガイド部は、上記外装部材本体と厚み方向において厳密に同じ長さに限らず、ある程度(±10%程度)の差異がある長さも含むものとする。
【0024】
従って、ガイド部が車体に当接した際において、ガイド部と外装部材本体との境界部が車体側に引っ掛かることなくガイド部を車体側へしっかりと当接させることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、上記外装部材本体と上記ガイド部とは、単一の弾性部材により一体形成された構成とすることができる。
【0026】
本発明のケーブル外装部材は、上記外装部材本体と上記ガイド部とを、別部材とし、上記ガイド部が上記外装部材本体に対して後付けされる構成としてもよいが、上述したように、上記外装部材本体と上記ガイド部とが単一の弾性部材により一体形成された構成を採用することで、部品点数を抑えてシンプルに構成することができる。
【0027】
また上記構成によれば、現場等においてガイド部を外装部材に後付けする手間を要しない。特に、本発明においては、ガイド部が外装部材本体の長手方向に沿って連続して形成された構成であるため、ガイド部を外装部材に後付けする場合には、ガイド部を外装部材本体の長手方向に沿って複数個所に亘って取り付ける必要があるが、上述したように上記外装部材本体と上記ガイド部とが、単一の部材により一体形成されたものであるため、このような手間を要しない。
【0028】
またこの発明の態様として、上記外装部材本体は、上記長手方向に沿った断面が凹状となる凹部と、凸状となる凸部とが、共に上記外装部材本体の上記上下方向に直線状に延びるとともに、上記長手方向に沿って交互に複数配設された蛇腹形状に形成された構成とすることができる。
【0029】
上記構成によれば、ケーブル外装部材は、長手方向に沿って蛇腹形状に形成されるため、車体平面視において、厚み方向において曲げ変形し易く(すなわち曲げ抵抗の増大を緩和)することができる。
【0030】
またこの発明の態様として、上記外装部材本体の上記長手方向における上記ガイド部に相当する部位における、上記凹部と上記凸部とは、上記ガイド部に至るまで上記上下方向に連続して形成された構成とすることができる。
【0031】
上記構成によれば、ケーブル外装部材は、長手方向に沿ってガイド部も含めて蛇腹形状に形成されるため、車体平面視において、ガイド部も含めて厚み方向において曲げ変形し易く(すなわち曲げ抵抗の増大を緩和)することができる。
【0032】
従って、ケーブル外装部材は、曲げ変形時における車体側への張り出しを抑えることができ、結果として、ケーブル外装部材の車室への侵入を抑制することができる。
【0033】
また上記構成によれば、上下方向に延びる凸部が、ガイド部の長手方向に沿って複数配設されているため、該凸部を、ガイド部を補強するリブとして機能させることができる。
【0034】
すなわち、ガイド部を蛇腹形状に形成することで、ガイド部を、長手方向の直交断面視において曲げ変形(たわみ変形)し難くすることができる。
【0035】
これにより、ガイド部が車体に当接した際に、外装部材本体がそれ以上車体内側へ侵入しないようにガイド部によるガイド機能を高めることができる。
【0036】
またこの発明の態様として、上記ガイド部の上記長手方向の少なくとも一方側に、上記外装部材本体に対して上記上下方向の少なくとも一方へ延出される延出長さが、上記ガイド部の上記長手方向の少なくとも上記一方側の端部に近付くに従って徐々に小さくなる面取り部が形成された構成とすることができる。
【0037】
上記構成によれば、ガイド部の長手方向の少なくとも一方側に、面取り部が形成されたため、外装部材本体の曲げ変形時に、該少なくとも一方側に曲げ応力が集中することを抑制できる。従って、外装部材本体は、曲げ変形時に、該少なくとも一方側において屈曲変形することなく緩やかに曲げ変形させることができる。
【0038】
またこの発明の態様として、上記外装部材本体の内部には、上記ケーブルを収容する収容空間が設けられ、上記ケーブルを上記収容空間に対して出し入れする開口部は、上記外装部材本体の下部に、上記長手方向に沿って上記上下方向に延びるスリット状に形成された構成とすることができる。
【0039】
上記構成によれば、ガイド部が車体に当接した際において、ガイド部が車体側から受ける反力を、開口部が閉じる方向に作用させることができる。
【0040】
これにより、ガイド部が車体に当接した際に、不用意に開口部が開いて収容空間に収容したケーブルが露出したり、脱出したりすることを防ぐことができる。
【0041】
またこの発明の態様として、上記開口部は、上記ガイド部の上記厚み方向の内側を通って該ガイド部を上記厚み方向において一方側と他方側とに分割するように上記上下方向に延びるスリット状に形成された構成とすることができる。
【0042】
ここで、仮にガイド部が厚み方向において分割されずに形成されている場合、厚み方向に分割して形成された場合と比して該ガイド部は、厚み方向に連続する厚みを有する。それ故、ガイド部は、車体平面視で曲げ変形時に、外周側の部位と内周側の部位との間に経路差が生じることによる内部応力が発生し、曲げ抵抗が増大する(すなわち、曲げ難くなる)おそれがある。
【0043】
これに対して上記構成によれば、上述したように、ガイド部は、上記開口部によって厚み方向の一方側と他方側とに分割するように形成されている。このため、ケーブル外装部材にガイド部を備えたことによる、車体平面視における曲げ変形時にケーブル外装部材の曲げ抵抗が増加することを抑制できる。
【0044】
またこの発明の態様として、上記ガイド部の上記厚み方向における上記一方側の部位を、車体へ当接するガイド面を有する側の部位に設定するとともに、上記ガイド部の上記厚み方向における上記他方側の部位を、車体へ当接しない非ガイド面を有する側の部位に設定し、上記ガイド部の上記一方側の部位が、上記他方側の部位よりも上記厚み方向に長く形成された構成とすることができる。
【0045】
上記構成によれば、ガイド部が車体に当接した際において、ガイド部が車体側から受ける反力を、ガイド部の上記他方側の部位よりも厚み方向に長い上記一方側の部位によって、しっかりと受け止めることができる。
【0046】
これにより、ガイド部が車体に当接した際に、不用意に開口部が開いて収容空間に収容したケーブルが露出したり、脱出したりすることを防ぐことができる。
【0047】
またこの発明の態様として、上記外装部材本体の下縁は、上記ドア開口からの車室内に対する乗員の乗降用として、車体に設けられたステップ面部よりも高い位置に配置され、上記ガイド部は、該ガイド部の下縁が上記ステップ面部よりも低い位置に配置されるように上記外装部材本体から下方へ向けて延出された構成とすることができる。
【0048】
上記構成によれば、ケーブルが曲げ変形時に、該ケーブルが車体内側へ侵入しようとした場合においても、ステップ面部よりも高い位置に配置された外装部材本体については、ステップ面部の車体外端に対して干渉することによる損傷を防ぐことができる。
【0049】
一方、下縁が上記ステップ面部よりも低い位置に配置された上記ガイド部については、ステップ面部の車体外端に当接させることができる。よって、ケーブルの車体内側への張出し部分が、ステップ面部に乗り上げて車体内側へ侵入しないようにガイド部によって確実に規制することができる。
【発明の効果】
【0050】
上記構成によれば、スライドドアの開閉動作に追従して変形するケーブルが、車体内側へ侵入することをスライドドアの開閉動作の間に亘って継続して規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本実施形態のケーブル外装部材を車両前方、車両上方かつ車幅方向内側から視た斜視図
【
図2】本実施形態のケーブル外装部材を車両後方、車両下方かつ車幅方向外側から視た斜視図
【
図4】(a)は
図3中のB-B矢視断面図、(b)は
図3中のC-C矢視断面図
【
図5】(a)は
図3中のD-D矢視要部拡大断面図、(b)は
図3中のE-E矢視要部拡大断面図
【
図6】スライドドアの各開閉位置に応じた本実施形態のケーブル外装部材の変形を模式的に示した水平断面図
【
図9】スライドドアの各開閉位置に応じた従来のケーブル外装部材の変形を模式的に示した水平断面図
【発明を実施するための形態】
【0052】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
なお、図中において、矢印Fは車両前方向を、矢印Uは車両上方向を、矢印OUTは車幅方向外側を、矢印INは車幅方向内側を、矢印Lはケーブル4の長手方向(軸線方向)を、夫々示している。
【0053】
図1、
図2に示すように、本実施形態のケーブル外装部材10は、車両1における、車体2(後述する車体側取付け部5)とスライドドア3(後述するドア側取付け部6)との間において、これらに架け渡すように配索されたケーブル4に外装している。
【0054】
本実施形態のケーブル外装部材10を備えた車両1は、3列シートで構成されたミニバン等の自動車であって、左右両側の側部にドア開口21(例えば、
図6(a)において車両左側のみ図示)が設けられた車体2(同図参照)と、車両1の左右両側に備えられ、主に車両前後方向にスライドすることでドア開口21を開閉するスライドドア3(同図参照)とを備えている。
【0055】
本実施形態のケーブル外装部材10は、車両1の左右両側に備えている。但し、本実施形態のケーブル外装部材10を備えた車両1の要部は、左右対称形状であるため、特に記載する場合を除いて車両1の左側の構造に基づいて説明する。
また本実施形態のケーブル外装部材10の構成の説明に先立って車両1、スライドドア3およびケーブル4について説明する。
【0056】
車体2のドア開口21の敷居部分22(例えば、
図6(b)参照)には、ステップトリムとも称する合成樹脂製のスカッフ23(例えば、
図6(b)、
図7、
図8参照)が設けられている。
図7、
図8に示すように、スカッフ23は、上面部23aと、上面部23aよりも車幅方向外側の位置において該上面部23aに対して一段低く形成されたステップ面部23bと、上面部23aの車幅方向外端とステップ面部23bの車幅方向内端とを車両上下方向に連結する縦壁部23cと、格納部23d(例えば、
図6(a)参照)と、を備えて一体形成されている。
【0057】
上面部23aは、車室床面を形成するフロアパネル(図示省略)と略同じ高さに配置され、また、ステップ面部23bは、車室に対してドア開口21を通じて乗員が乗降時に踏み台として利用可能な高さに配置されている。これら上面部23aとステップ面部23bとは共に、水平面状に形成されている。格納部23dは、ステップ面部23bよりも車両後方位置において該ステップ面部23bに対して上方に隆起して形成され、後述する車体側取付け部5を格納する空間を下方に備えている。
【0058】
スライドドア3は、車両1の左右両側に備えられ(車両左側のみ図示)、スライドドア3の外板としてのドアアウタパネル31(例えば、
図6(a)参照)と、ドアアウタパネル31よりも車幅方向内側に配されるドアインナパネル32(例えば、
図6(a)、
図7、
図8参照)と、ドアインナパネル32よりもさらに車幅方向内側においてスライドドア3の内装パネルとして配されるドアトリム33(同図参照)とを備えている。
【0059】
図7、
図8に示すように、ドアトリム33は、該ドアトリム33の正面視において、中央に有する主壁33aがドアインナパネル32に対して車幅方向内側に離間して配されるように周縁33bがドアインナパネル32の外周部に車幅方向内側から接合されている。これにより、ドアトリム33の内部(すなわち、ドアトリム33とドアインナパネル32との間)には、補機収容空間33sが構成される。補機収容空間33sは、スライドドア3を駆動するドアアクチュエータ等、スライドドア3に搭載される各種電装品(図示省略)が収容されている。
【0060】
例えば、
図6(a)、
図7、
図8に示すように、車体2とスライドドア3との間には、上述したように、これらに架け渡すようにケーブル4が配索されている。
図1、
図2に示すように、ケーブル4は、車体2に取り付けられた車体側取付け部5と、スライドドア3に取り付けたドア側取付け部6とに支持されている。
【0061】
具体的には、ケーブル4の長手方向Lの一端側は、車体側取付け部5の内部に引き込まれており、該車体側取付け部5から車体2の内部において延出するコネクタ5a(
図1、
図2参照)に接続されている。このコネクタ5aは、車体2の内部に搭載した例えば、給電装置としてのバッテリーや電装品から延出されるワイヤハーネスに接続される(図示省略)。すなわち、ケーブル4の長手方向Lの一端側は、コネクタ5aを介して車体2に搭載されたバッテリーや電装品等に電気的に接続されている。
【0062】
車体側取付け部5は、車室側の乗員から略視認されないように車体2における、スカッフ23の後部に設けられた格納部23dの下方に格納されている(
図6(a)参照)。この状態で車体側取付け部5は、例えば、
図6(a)に示すように、ケーブル4(ケーブル外装部材10)の延出部分が車幅方向外側を向くように座面部5b(
図1、
図2参照)が車体2に取り付けられている。
【0063】
なお、格納部23dは、スライドドア3の開閉動作に追従して変形するケーブル4(ケーブル外装部材10)と干渉しないように車幅方向外側に向けて開口形成されている。
【0064】
一方、ケーブル外装部材10が外装されたケーブル4の長手方向Lの他端側は、ドア側取付け部6の内部に引き込まれており、該ドア側取付け部6からスライドドア3の内部において延出するコネクタ6a(
図1、
図2参照)に接続されている。このコネクタ6aは、スライドドア3の内部に搭載した電装品から延出されるワイヤハーネスに接続される(図示省略)。すなわち、ケーブル4の長手方向Lの他端側は、コネクタ6aを介して電装品に電気的に接続されている。
【0065】
上述により、ケーブル4は、スライドドア3に搭載された電装品に対して車体2側から給電したり、制御信号の送受信を行うことができる。
【0066】
例えば、
図6(a)、
図7、
図8に示すように、ドア側取付け部6は、スライドドア3の外側から視認されないように、ドアトリム33の内部の補機収容空間33sに収容されている。ドア側取付け部6は、該ドア側取付け部6に備えた座面部6b(
図1、
図2参照)がドアインナパネル32に車幅方向内側から取り付けられている。ドア側取付け部6は、ケーブル4(ケーブル外装部材10)の延出部分が車両前方を向くようにスライドドア3に対して取り付けられている(例えば、
図6(a)参照)。
【0067】
なお、ドアトリム33は、主壁33a等に貫通穴(図示省略)が形成されている。ケーブル4(ケーブル外装部材10)のドア側取付け部6からの延出部分は、ドアトリム33に干渉することなく補機収容空間33sから該ドアトリム33よりも車幅方向内側(スライドドア3の外側)へ上記の貫通穴を通じて配索される。
【0068】
スライドドア3は、車体2に対して主に車両前後方向にスライドすることでドア開口21を開閉する。
具体的に、
図6(a)に示すように、スライドドア3は、完全に閉じた位置Pc(全閉位置Pc)においては、スライドドア3の車幅方向の外面(ドアアウタパネル31の外面)が車体2の側部の外面と略面一となるようにドア開口21に嵌め込まれた状態となる。なお、スライドドア3が全閉位置Pcのとき、ドア側取付け部6は、車体側取付け部5よりも車両前方に位置する。
【0069】
スライドドア3は、このような全閉位置Pcから開動作される際には、開動作開始直後において車両後方かつ車幅方向外側へと移動する(
図6(b)中の太矢印参照)。このようにスライドドア3は、開動作開始直後に車幅方向外側へと移動した後、完全に開いた位置Po(全開位置Po)(
図6(d)参照)に達するまで略直線状に車両後方へ移動する(
図6(b)(c)中の太矢印参照)。
なお、スライドドア3は厳密には、後方へ進む程若干高い位置になるように斜め上方へスライドする。
【0070】
スライドドア3が車両後方へ移動する間、ドア側取付け部6は、車体側取付け部5に対して車両後方へ相対移動する。スライドドア3が全開位置Poにおいては、ドア側取付け部6は車体側取付け部5よりも若干車両後方に位置する(
図6(d)参照)。
スライドドア3は閉動作の際には、上述した開動作の際と同じ軌道を逆方向にスライドする。
【0071】
図4(a)(b)、
図5(b)、
図7、
図8に示すように、本実施形態においては、ケーブル4として公知のフラットケーブル(FFC)を採用している。
【0072】
図4(a)(b)に示すように、フラットケーブルとしてのケーブル4は、平板状(長手方向Lの直交断面が偏平形状)の電源線、信号線であって、間隔を空けて互いに並列配置した複数(当例では4つ)の断面平角状の導体41を、一対のフィルム状の絶縁材42で挟み込んで接着剤(図示省略)を介してラミネートすることにより被覆して形成されている。
【0073】
なお、導体41は、銅、アルミニウム、或いはこれらの合金等の導電性材料により形成され、絶縁材42としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の絶縁性材料により形成されている。
【0074】
ここで、複数の導体41を並列配置する方向をケーブル4の幅方向Wに設定する。また、ケーブル4の長手方向Lと幅方向Wとの双方に直交する方向をケーブル4の厚み方向Tに設定する。
【0075】
フラットケーブルとしてのケーブル4は、厚み方向Tにおいて曲がり易く(可撓性に優れ)、幅方向Wに曲がり難い曲げ特性を有している。このようなケーブル4は、車体2とスライドドア3との間に略水平面内に配置された状態において、幅方向Wが車両上下方向と略一致する姿勢で配置される。
【0076】
すなわち、フラットケーブルとしのケーブル4は、厚み方向Tの長さよりも車両上下方向に長い偏平形状に形成されている。これにより、ケーブル4は、フラットケーブルとして形成されたことにより有する上述した曲げ特性によって、略水平面内において曲がり易くなる。
【0077】
従って、スライドドア3の開閉動作の際に、車体側取付け部5とドア側取付け部6とは、略水平面内において相対変位する。それに伴って、ケーブル4は、略水平面内においてスライドドア3の開閉動作に追従して、スライドドア3の開閉位置に応じた曲げ形状に柔軟に変形する。すなわち、スライドドア3は、車体2に対してスライドするが、車体2との電気的な接続を維持することができる。
【0078】
続いて、本実施形態のケーブル外装部材10について説明する。
図1、
図2、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)に示すように、本実施形態のケーブル外装部材10は上述したように、ケーブル4を長手方向Lの全長に亘って内部に収容可能にチューブ状に形成されるとともに、ケーブル4の長さに対応する長さを有して形成される。
【0079】
これにより、
図1、
図2に示すように、ケーブル外装部材10は、車体2とスライドドア3とに架け渡すように配索されたケーブル4に外装され、ケーブル4を長手方向Lの全長に亘って保護している。ケーブル外装部材10の長手方向Lの一端側は、車体側取付け部5に取り付けられ、ケーブル外装部材10の長手方向Lの他端側は、ドア側取付け部6に取り付けられている。
【0080】
図1~
図5(a)(b)に示すように、ケーブル外装部材10は、ケーブル4を長手方向Lに沿って外装する外装部材本体11と、ケーブル4が車体2の内側へ侵入することを規制するガイド部15とを有して一体形成されている。
【0081】
ケーブル外装部材10は、例えば、ブロー成形等により、外装部材本体11とガイド部15とが単一の弾性部材により一体形成されている。本実施形態におけるケーブル外装部材10は、ガイド部15も含めて全体が可撓性に優れたエラストマー樹脂で形成されているが、これに限定せず、弾性部材であればゴム等で形成してもよい。
【0082】
なお、ケーブル外装部材10(外装部材本体11)の長手方向Lはケーブル4の長手方向Lに一致するものとする。以下の説明において、長手方向Lとはケーブル4の長手方向のみならずケーブル外装部材10の長手方向も示すものとする。
【0083】
外装部材本体11は、フラットケーブルとしてのケーブル4と同様に長手方向Lの直交断面が偏平形状に形成されている。
【0084】
以下の説明において、厚み方向Tとはケーブル4の厚み方向のみならずケーブル外装部材10の厚み方向も示すものとする。同様に幅方向Wとはケーブル4の幅方向のみならずケーブル外装部材10の幅方向も示すものとする。
【0085】
外装部材本体11は、上述したように長手方向Lの直交断面が偏平形状に形成されているため、例えば、長手方向Lに螺旋状に形成された筒状のコルゲートチューブ(図示省略)とは異なり、曲げ特性について方向性を有している。具体的には、外装部材本体11は、ケーブル4と同様にケーブル4の厚み方向Tにおいて曲がり易く、ケーブル4の幅方向Wに曲がり難い曲げ特性を有している。
【0086】
図4(a)(b)、
図5(a)に示すように、外装部材本体11は、上述したように、ケーブル4に外装されるように内部にケーブル4を収容する収容空間16が長手方向Lに沿って設けられた中空形状に形成されている。
【0087】
収容空間16は、長手方向Lの直交断面がフラットケーブルとしてのケーブル4を収容可能に該ケーブル4よりも一回り大きく形成されている。具体的には、収容空間16の厚み方向Tおよび幅方向Wの長さは、ケーブル4の夫々に対応する長さよりも若干長く形成されている(同図参照)。
これにより、ケーブル4は、外装部材本体11に対してクリアランスを確保した状態で該外装部材本体11が外装される。
【0088】
図2、
図4(a)に示すように、外装部材本体11の下縁11dには、ケーブル4を収容空間16に対して出し入れする開口部17が長手方向Lに沿って形成されている。
図4(a)に示すように、開口部17は、外装部材本体11の下縁11dの厚み方向Tの中間位置において、収容空間16と、外装部材本体11の外側とを連通するように幅方向W(車両上下方向)に延びるスリット状(切り込み状)に設けられている。
【0089】
該開口部17の両側の縁部17a,17bは、厚み方向Tにおいて互いに密着または近接した状態となり、開口部17は、略閉じられた状態となる。さらに、開口部17は、外装部材本体11自体(特に、開口部17の両側の縁部17a,17b)が有する弾性(形状保持性)により、通常時において略閉じられた状態に維持される。
【0090】
図3、
図5(a)に示すように、外装部材本体11は、長手方向Lに沿った断面(水平断面)が、凹部12と凸部13とが交互に長手方向Lに沿って複数配設された蛇腹形状に形成されている。凹部12と凸部13とは共に、外装部材本体11の略全周に亘って(当例においては外装部材本体11の上下両端を除く部位に幅方向Wに沿って)直線状に延びている。
【0091】
図1、
図2、
図3、
図4(b)に示すように、ガイド部15は、外装部材本体11に対して下方向へ延出されている。
具体的には
図8に示すように、外装部材本体11は、該外装部材本体11の下縁11dが、車体2に設けられたステップ面部23bよりも高い位置になるように配置されている。一方、
図7、
図8に示すように、ガイド部15は、該ガイド部15の下縁15dがステップ面部23bよりも低い位置に配置されるように外装部材本体11から下方に向けて延出されている。これにより、スライドドア3の開閉動作時にガイド部15は、ケーブル4が車体2側へ張り出そうとした際にも、ステップ面部23bの車幅方向外端23bbに確実に当接し(
図7、
図8参照)、それ以上、ケーブル4が車体2側へ侵入しないように規制する。
【0092】
さらに、
図1~
図3に示すように、ガイド部15は、外装部材本体11の下縁11dに沿って連続して形成されている。これにより、ガイド部15は、ケーブル外装部材10の長手方向Lおよび車両上下方向(幅方向W)に延びる面状に形成されている。
【0093】
さらにまた、
図1、
図2、
図4(b)に示すように、ガイド部15は、外装部材本体11と厚み方向Tにおいて同じ長さ(厚み)に形成されている。これにより、ガイド部15の厚み方向Tの一方側の面、詳しくは車体2に当接する側の面15a(以下、「ガイド面15a」とも称する)は、外装部材本体11の厚み方向Tの一方側の面に対して略面一に形成されている。同様に、ガイド部15の厚み方向Tの他方側の面、詳しくは車体2に当接しない側の面15b(以下、「非ガイド面15b」とも称する)は、外装部材本体11の厚み方向Tの他方側の面に対して略面一に形成されている。
【0094】
図1、
図2に示すように、ガイド部15は、ケーブル外装部材10の長手方向Lにおける、車体側取付け部5とドア側取付け部6との間部分の中間位置10Mに対して、車体側取付け部5の側の部位10B(以下、「車体側部位10B」とも称する)の少なくとも一部(当例では一部)に長手方向Lに沿って形成されている。
【0095】
ここで、ケーブル外装部材10(ケーブル4)は、スライドドア3の開閉動作するに伴って曲げ変形し、これに伴って、ケーブル外装部材10(ケーブル4)長手方向Lの一部には、車室側へ向けて張り出す張出し部分19が形成される(
図6(b)(c)参照)。
【0096】
上述したガイド部15は、ケーブル外装部材10の長手方向Lにおける、少なくとも張出し部分19において長手方向に沿って連続して形成されている。当例においてガイド部15は、張出し部分19および、該張出し部分19に対して車体側(車両後方側)の周辺部に亘って連続して形成されている(
図6(b)(c)参照)。
【0097】
なお、ガイド部15がケーブル外装部材10の長手方向Lにおいて形成される部位や長さは、スライドドア3の開閉動作に追従して変形するケーブル4が、車体2の内側への侵入を規制可能な部位であれば、上述した実施形態の構成に限らず、異なる部位や、長さで形成してもよい。
【0098】
ここで、外装部材本体11の下縁11dには上述したように、開口部17が長手方向Lに沿って形成されている(
図2、
図4(a)参照)。ケーブル外装部材10の長手方向Lにおけるガイド部15に相当する部位において、上記の開口部17は、中実に形成されたガイド部15の下縁15dに至るまで下方に連続して延びている。
【0099】
開口部17は、ガイド部15の厚み方向Tの内側を通って該ガイド部15を厚み方向Tの一方側(ガイド面15aを有する側)と他方側(非ガイド面15bを有する側)とに分割するように車両上下方向に延びるスリット状に形成されている。
【0100】
本実施形態において、開口部17は、ガイド部15を厚み方向Tに略2分割するように厚み方向Tの中間位置において形成されている。開口部17は、ガイド部15においても外装部材本体11と同様に、ガイド部15の弾性により、通常時において略閉じられた状態に維持される。
【0101】
ケーブル外装部材10をケーブル4に外装する際には、
図4(a)(b)中仮想線で示したように、ケーブル外装部材10の開口部17を開いて該開口部17から収容空間16にケーブル4を差し込むようにして収容することができる(
図4(a)(b)中太矢印参照)。
【0102】
なお、ケーブル外装部材10を上述したブロー成形により形成する際においては、図示省略するが、開口部17は、金型の内側にセットしたケーブル外装部材10の内部(収容空間16)に対して、圧縮エアーを吹き出すブローピンを差し込むための穴として利用される。
【0103】
また、ガイド部15は上述したように、外装部材本体11に対して下方向へ延出形成されるとともに、外装部材本体11の長手方向Lに沿って連続して形成されている。このようなガイド部15の長手方向Lの両側には、
図1~3に示すように、長手方向Lの夫々に対応する側の端部15e,15f(
図3参照)に近付くに従って下方向への延出長さが徐々に小さくなる面取り部14が形成されている。
【0104】
すなわち、本実施形態においては、ガイド部15の長手方向Lの両側に形成された面取り部14は、長手方向Lの夫々に対応する端部15e,15fに向けて下縁15dが外装部材本体11の下縁11dに向けて傾斜する直線状に形成されている。
【0105】
ここで、外装部材本体11は上述したように、凹部12と凸部13とが交互に長手方向Lに沿って複数配設された蛇腹形状に形成されている(
図3、
図5(a)参照)。
図3に示すように、ケーブル外装部材10の長手方向Lにおけるガイド部15に相当する部位において、外装部材本体11に設けられた複数の凹部12と凸部13とは、何れもガイド部15に至るまで車両上下方向に連続して形成されている。これにより、ガイド部15(ガイド面15aおよび非ガイド面15b)についても略全体が蛇腹形状に形成されている。
【0106】
上述したケーブル外装部材10は、全体が弾性部材で形成され、さらに上述したように、ガイド部15も含めて長手方向Lに沿って蛇腹形状に形成されている。加えて、ケーブル外装部材10は上述したように、フラットケーブルとしてのケーブル4と同様に長手方向Lの直交断面が偏平形状で形成され、略水平面内(厚み方向T)において曲がり易く形成されている。
【0107】
これらにより、スライドドア3の開閉動作の際に、ケーブル外装部材10は、スライドドア3の開閉動作の際に、ケーブル4の曲げ変形に追従して曲げ変形することができる。
【0108】
図6は、車体2と、車体2に対してスライドするスライドドア3との間で、スライドドア3の開閉位置に応じて変形する本実施形態のケーブル外装部材10を模式的に示した水平断面であり、
図6(a)はスライドドア3が全閉位置Pc、
図6(b)はスライドドア3が第1の半開き位置Pm1、
図6(c)はスライドドア3が第2の半開き位置Pm2、
図6(a)はスライドドア3が全開位置Poの、夫々に位置する状態を示す。なお、
図6(a)(b)(c)(d)のケーブル外装部材10の長手方向Lにおける、ドットを付した領域は、ガイド部15を備えた部位を示している。
【0109】
図9は、車体2とスライドドア3との間で、スライドドア3の開閉位置に応じて変形する従来のケーブル外装部材100を模式的に示した水平断面であって、
図9(a)は
図6(a)に、
図9(b)は
図6(b)に、
図9(c)は
図6(c)に、夫々対応する。
なお、
図9(a)(b)(c)中の従来のケーブル外装部材100としては、例えば、ガイド部15を備えていないコルゲートチューブが採用されている。また、従来のケーブル外装部材100に外装される従来のケーブル(図示省略)としては、丸電線が採用されている。
【0110】
ここで、スライドドア3が上記第1の半開き位置Pm1とは、スライドドア3が車両前後方向にスライドする可動範囲の中間位置を示す。
また、スライドドア3が上記第2の半開き位置Pm2とは、フューエルリッド(図示省略)が開状態においてスライドドア3が、それ以上車両後方へスライドすることが規制される位置を示す。
【0111】
詳しくは、一般に車体の左右何れか一方側の側部であって、ドア開口21よりも後方位置には、フューエルリッド(図示省略)が設けられている。当例においてフューエルリッドは、車体2の左側の側部に設けられている(図示省略)。
【0112】
乗員が車両1への給油のため、フューエルリッドを開き、その状態で例えば、乗員の不注意等によりスライドドア3を開けようとすると、スライドドア3がフューエルリッドや給油ホースに干渉するおそれがある。
【0113】
このため、一般に車体2には、スライドドア3が全閉位置Pc(
図6(a)参照)から車両後方へ移動し、フューエルリッドに干渉する手前の所定の位置に達した際に、該スライドドア3を強制的に停止するためのストッパ機能が備えられている。このフューエルリッドに干渉する手前の所定の位置が第2の半開き位置Pm2である。本実施形態における第2の半開き位置Pm2は、車両前後方向における、第1の半開き位置Pm1と全開位置Poとの間の位置において設定されている。
【0114】
続いて、スライドドア3の開閉位置に応じて変形する本実施形態のケーブル外装部材10の作用について
図6を用いて説明するが、それに先立って、従来のケーブル外装部材100の課題について
図9を用いて説明する。
【0115】
スライドドア3が全閉位置Pcにあるとき、ドアトリム33は、ステップ面部23bに対して高い位置(上方)に配置されるとともに、該ステップ面部23bの車幅方向の略中間位置まで車幅方向内側へ迫り出した状態となる(
図6(a)、
図7、
図9(a)中のステップ面部23bに対するドアトリム33の位置参照)。
【0116】
その状態において、従来のケーブル外装部材100(従来のケーブル)は、その長手方向Lの略全長が
図9(a)に示すように、ステップ面部23bに乗り上げた状態となる。すなわち、従来のケーブル外装部材100(従来のケーブル)は、ステップ面部23bの車幅方向外端23bbよりも車幅方向内側へ侵入し、ステップ面部23bと、該ステップ面部23bよりも高い位置に配置されるドアトリム33との間の空間に配される(
図9(a)参照)。
【0117】
さらに
図9(a)に示すように、従来のケーブル外装部材100は、長手方向Lの途中部が、ステップ面部23bに乗り上げた状態において、ドアトリム33よりも車幅方向内側(車室内)へさらに張り出すおそれがある。スライドドア3が全閉位置Pcにおいて、この張出し部分100a(
図9(a)参照)が、車室内の乗員から視認されるおそれがあるため、車体2のドア開口21の敷居部分22周辺の見栄えの悪化が懸念される。
【0118】
図9(b)に示すように、スライドドア3を全閉位置Pcから車両後方へスライドさせ、ドア開口21を開いていくと、従来のケーブル外装部材100には、スライドドア3が全閉位置Pc(
図9(a)参照)の場合と比して、車体2とスライドドア3との間に余長部分が徐々に生じることになる。
【0119】
従来のケーブル外装部材100(従来のケーブル)は、長手方向Lの途中部が、余長部分を吸収するように平面視で車両前方へ膨出するようにU字形状の折返し部180が形成される(
図9(b)参照)。
【0120】
スライドドア3が第1の半開き位置Pm1において、
図9(b)に示すように、従来のケーブル外装部材100は、その長手方向Lにおける、折返し部180の車室側への張出し部分190がステップ面部23bを乗り上げるようにして車体2の内側へと侵入する。
【0121】
これにより、乗員が車室に対して乗降時にステップ面部23bに乗り上げた従来のケーブル外装部材100(従来のケーブル)と干渉するおそれがある。
【0122】
具体的には、スライドドア3がこのような第1の半開き位置Pm1(
図9(b)参照)において、従来のケーブル外装部材100の車室側への張出し部分190がステップ面部23bに乗り上げる領域は、車室内に配設された2列目のシート(図示省略)に対して乗員が乗降時に、乗員がステップ面部23bを踏む箇所に相当する。
【0123】
よって、スライドドア3が第1の半開き位置Pm1において、2列目のシートに対して乗員が乗降時に、ステップ面部23bに乗り上げた従来のケーブル外装部材100を踏むおそれがあるため、好ましくない。
【0124】
また、スライドドア3のさらなる開動作に従って(すなわち、スライドドア3が車両後方へスライドするに従って)、ケーブル外装部材100(従来のケーブル)の余長部分は、さらに長くなる。これに伴って、折返し部18は、徐々に大きくなりながら車両後方へと移動していく。
【0125】
このため、スライドドア3が、
図9(c)に示す第2の半開き位置Pm2において、従来のケーブル外装部材100(従来のケーブル)の長手方向Lにおける車室側への張出し部分190は、
図9(b)に示す第1の半開き位置Pm1の場合と比してステップ面部23bに、より一層乗り上げるようにして車体2の内側へと侵入する。
【0126】
これにより、乗員が車室に対して乗降時にステップ面部23bに乗り上げたケーブル4と干渉するおそれがある。
【0127】
具体的には、スライドドア3がこのような第2の半開き位置Pm2(
図9(c)参照)において、従来のケーブル外装部材100がステップ面部23bに乗り上げる領域は、車室内に配設された3列目のシート(図示省略)に対して乗員が乗降時に、乗員がステップ面部23bを踏む箇所に相当する。
【0128】
よって、スライドドア3が第2の半開き位置Pm2において、3列目のシートに対して乗員が乗降時に、ステップ面部23bに乗り上げた従来のケーブル外装部材100を踏むおそれがあるため、好ましくない。
【0129】
これに対して本実施形態のケーブル外装部材10においては、
図1、
図2に示すように、長手方向Lの中間位置10Mに対して車体2側、すなわち中間位置10Mよりも車両後方にガイド部15が備えられている。
【0130】
この構成により、
図6(a)、
図7に示すように、ケーブル外装部材10(ケーブル4)は、長手方向Lの少なくとも後側部位が、ステップ面部23bに乗り上げることがガイド部15によって規制される。一方、ケーブル外装部材10の長手方向Lの前側部位については、ステップ面部23bに乗り上げるものの、ケーブル外装部材10の後側部位がガイド部15によって規制されるため、全体的に車室内への侵入が抑制される(
図6(a)参照)。
【0131】
上述により、ケーブル外装部材10は、長手方向Lの全長に亘ってガイド部15によってドアトリム33よりも車室側へはみ出さない。すなわち、本実施形態のケーブル外装部材10は、従来のケーブル外装部材100のように、ドアトリム33よりも車幅方向内側(車室内)へ張り出す張出し部分100a(
図9(a)参照)が生じることがない。
【0132】
従って、スライドドア3が全閉位置Pcにおいて、ステップ面部23bに乗り上げたケーブル外装部材10(ケーブル4)が車室内空間の乗員から視認可能な位置まで張り出さないことによる見栄えを確保することができる。
【0133】
また、ガイド部15は、上述したように、ケーブル外装部材10の長手方向Lの後側部位においてのみ形成され、前側部位において形成されないため、該前側部位についてはドアトリム33を超えて車室内へ侵入しない範囲でステップ面部23bに乗り上げることが許容される。ここで、スライドドア3は上述したように、全閉位置Pcにおいて、ドア開口21に嵌め込まれるように配設される(
図6(a)参照)。その場合においても、ケーブル外装部材10は、特に、ドア側取付け部6から延出される延出部分に相当する前側部位も含めて、スライドドア3とスカッフ23(車体2)との間において、これらに対して干渉するおそれがない。
【0134】
また、本実施形態のケーブル外装部材10においては、上述したようにガイド部15が、長手方向Lの中間位置10Mに対して車体2側に備えられている。このため、ガイド部15は、スライドドア3が第1の半開き位置Pm1(
図9(b)参照)のときには、
図6(b)に示すように、ケーブル外装部材10の長手方向Lにおける、折返し部18(曲げ変形箇所)の特に車体2側への張出し部分19に位置させることができる。よって、スライドドア3が第1の半開き位置Pm1のときにおいても、本実施形態のガイド部15は、ケーブル4の車室内への侵入を規制することができる。
【0135】
ここで、スライドドア3が全閉位置Pcから車両後方へスライドする過程において、上述したように、本実施形態のケーブル外装部材10(ケーブル4)のU字形状の折返し部18は、張出し部分19が車体2の側に向けて張り出した状態を維持しつつスライドドア3の開動作に追従して車両後方へ移動する。
【0136】
これに対して本実施形態のケーブル外装部材10においては、上述したようにガイド部15が、外装部材本体11の長手方向Lの後側部位において、長手方向Lに沿って連続して形成されている。
【0137】
すなわち、本実施形態のガイド部15は、スライドドア3が車両後方へ移動する開動作に追従して車両後方へ移動する張出し部分19に沿って連続して形成されている。
【0138】
これにより、ガイド部15は、第1の半開き位置Pm1(
図6(b)参照)のみならず第2の半開き位置Pm2(
図6(c)参照)のときも含めてスライドドア3が車両後方へスライドする間に亘って、
図6(b)(c)に示すように、ステップ面部23bの車幅方向外端23bb(
図8参照)に当接しながらケーブル外装部材10(ケーブル4)の車室内への侵入を規制することができる。
【0139】
また
図6(d)に示すように、本実施形態のケーブル外装部材10(ケーブル4)においては、スライドドア3が全開位置Poのとき、平面視でS字形状に曲がる。このとき、ガイド部15は、ケーブル外装部材10の長手方向Lにおける、折返し部18の前側部位に配置させることができる。
【0140】
すなわち、ガイド部15は、全開位置Poのスライドドア3と、車体2との間の下部において車両前方を臨むように配置することができる。これにより、ガイド部15は、ドア開口21を通じて車室に対して乗降する乗員から視認されないように、スライドドア3と車体2との間の下部を塞ぐように配置される。このため、本実施形態の車両1は、スライドドア3が全開位置Poのときも車室に対して乗降する乗員からの見栄えを確保することができる。
【0141】
しかも、本実施形態のケーブル外装部材10は、フラットケーブルとして形成されたケーブル4に対応して厚み方向Tに薄肉に嵩張ることなく形成されているため、ケーブル外装部材10自体の見栄えも確保することができる。
【0142】
上述した本実施形態のケーブル外装部材10は、例えば、
図1、
図2、
図6(a)に示すように、車体2と、車体2に対してスライドしながらドア開口21を開閉するスライドドア3との間において、互いに架け渡すように接続され、スライドドア3の開閉動作に追従して、該スライドドア3の開閉位置に応じた曲げ形状に変形するケーブル4に外装される(
図4(a)(b)、
図5(a)、
図7、
図8参照)。
【0143】
さらに、
図1、
図2、
図7、
図8に示すように、本実施形態のケーブル外装部材10は、ケーブル4に、該ケーブル4の長手方向Lに沿って外装される外装部材本体11と、ケーブル4の曲げ変形時に車体2側へ張り出すように変形する張出し部分(19)の車体2の内側への侵入を規制するガイド部15とが備えられている。
【0144】
さらにまた、
図1~3、
図4(b)、
図6(a)~
図6(d)、
図7、
図8に示すように、ガイド部15は、ステップ面部23b(車体)に対して車幅方向外側(車体外側)から当接可能に外装部材本体11に対して下方向(車両上下方向の少なくとも一方)へ延出され、さらにガイド部15は、外装部材本体11の長手方向Lにおける、少なくとも張出し部分19に相当する部位に長手方向Lに沿って連続して形成されている。
【0145】
上記構成によれば、スライドドア3の開閉動作に追従してケーブル4が変形する際に、ケーブル4の長手方向Lにおける張出し部分(19)は、逐次移動するが、その移動する位置に関わらず、張出し部分(19)が車体2の内側へ侵入することを、外装部材本体11の長手方向Lに沿って延びる面状のガイド部15によって継続して規制することができる。
【0146】
例えば、
図1、
図2、
図6(a)に示すように、ガイド部15は、ケーブル外装部材10(外装部材本体11)の長手方向Lにおける、車体側部位10Bの少なくとも一部に長手方向Lに沿って連続して形成されている。
【0147】
上記構成によれば、スライドドア3が、
図6(b)に示すような第1の半開き位置Pm1、
図6(c)に示すような第2の半開き位置Pm2など、スライドドア3の開閉途中においてケーブル4が折返し形状(Uターン形状)に曲げ変形した際、車体2側に向けて張り出す張出し部分19(車体2側に面する側)に、ガイド部15を設けることができる。
【0148】
従って、スライドドア3が開閉途中の間に亘って、ケーブル4の車体2の内側への侵入を、ガイド部15によって規制することができる。
【0149】
一方、スライドドア3が、
図6(b)に示すような第1の半開き位置Pm1、
図6(c)に示すような第2の半開き位置Pm2など、スライドドア3の開閉途中においてケーブル4が折返し形状に曲げ変形した際、スライドドア3側に面する側にはガイド部15が設けられていない。このように、外装部材本体11の長手方向Lの全長に対してガイド部15が占める長さを抑制することでケーブル外装部材10の軽量化を図ることができる。
【0150】
図4(a)(b)に示すように、ケーブル4は、厚み方向Tの長さよりも車両上下方向(幅方向W)の長さが長い偏平形状のフラットケーブルであり、外装部材本体11は、ケーブル4に対して外装可能に該ケーブル4よりも厚み方向Tおよび幅方向W(車両上下方向)において若干大きく形成されるとともに、長手方向Lにおける、ガイド部15を有する部位を含めて上記偏平形状に形成されている。
【0151】
上記構成によれば、外装部材本体11は、ケーブル4と同様に偏平形状に形成されているため、ケーブル外装部材10の曲げ特性(曲げ抵抗)について方向性を持たせることができる。
【0152】
すなわち、ケーブル外装部材10は、厚み方向Tについて薄肉であるが故に曲げ変形し易くなり、ガイド部15を備えた構成でありながらも、例えば車体平面視で曲げ変形し易く(曲げ半径を小さく)することができる(つまり曲げ抵抗の増大を抑制できる)。
【0153】
従って、ケーブル外装部材10は、車体2側への張り出しを抑えることができるため、結果として、ケーブル外装部材10の車室への侵入を、ガイド部15のガイド機能も利用して効果的に抑制することができる。
【0154】
一方、ケーブル外装部材10は、車両上下方向については曲げ難くすることができるため、長手方向Lに沿って連続して延びるガイド部15を備えた構成でありながらも自重により下方へ撓み難くすることができる。
【0155】
また、
図1、
図2、
図4(b)に示すように、ガイド部15は、外装部材本体11と厚み方向Tにおいて同じ長さに形成されている。
【0156】
上記構成によれば、車両上下方向においてガイド部15と外装部材本体11との境界部に段部等が形成されることなく、ガイド部15の車体側に当接するガイド面15aから外装部材本体11に至るまで車両上下方向に面一とすることができる。
【0157】
従って、ガイド部15が車体に当接した際において、ガイド部15と外装部材本体11との境界部が車体側に引っ掛かることなくガイド部15を車体側へしっかりと当接させることができる。
【0158】
図1~
図4(a)(b)に示すように、本実施形態のケーブル外装部材10は、外装部材本体11とガイド部15とが、エラストマー樹脂(単一の弾性部材)により一体形成されている。
【0159】
本発明のケーブル外装部材は、ガイド部15が外装部材本体11に対して後付け可能に互いに別部材により構成してもよいが、本実施形態のケーブル外装部材10のように、外装部材本体11とガイド部15とが単一の弾性部材により一体形成された構成を採用することで、部品点数を抑えてシンプルに構成することができる。
【0160】
また上記構成によれば、現場等においてガイド部15を外装部材本体11に後付けする手間を要しない。特に、本実施形態においては、ガイド部15が外装部材本体11の長手方向Lに沿って連続して形成された構成である。このため仮に、ガイド部15を外装部材本体11に後付けする場合には、ガイド部15を外装部材本体11の長手方向Lに沿って複数個所に亘って取り付ける必要がある。これに対して本実施形態においては、上述したように外装部材本体11とガイド部15とは、単一の部材により一体形成されたものであるため、このような手間を要しない。
【0161】
なお、弾性部材としては、曲げ変形可能な弾性を有していればよく、本実施形態のようにエラストマー樹脂に限らず、例えば、ゴムで形成することができる。
【0162】
図3、
図5(a)(b)に示すように、外装部材本体11は、長手方向Lに沿った断面が厚み方向Tにおいて凹状となる凹部12と、凸状となる凸部13とが、共に外装部材本体11の略全体に車両上下方向に直線状に延びるとともに、長手方向Lに沿って交互に複数配設された蛇腹形状に形成されている。
【0163】
上記構成によれば、ケーブル外装部材10は、長手方向Lに沿って蛇腹形状に形成されるため、車体平面視において、厚み方向Tにおいて曲げ変形し易く(すなわち曲げ抵抗の増大を緩和)することができる。
【0164】
さらに、
図3に示すように、外装部材本体11の長手方向Lにおけるガイド部15に相当する部位における、凹部12と凸部13とは、ガイド部15の下縁15dに略至るまで車両上下方向に連続して形成されている。
【0165】
上記構成によれば、ケーブル外装部材10は、長手方向Lに沿ってガイド部15も含めて蛇腹形状に形成されるため、車体平面視において、ガイド部15も含めて曲げ変形し易く(すなわち曲げ抵抗の増大を緩和)することができる。
【0166】
従って、ケーブル外装部材10は、曲げ変形時に車体2側への張り出しが抑制され、結果として、ケーブル外装部材10の車室への侵入を抑制することができる。
【0167】
また上記構成によれば、車両上下方向に延びる凸部13が、ガイド部15の長手方向Lに沿って複数配設されているため(
図3参照)、該凸部13を、ガイド部15を補強するリブとして機能させることができる。
【0168】
すなわち、ガイド部15を蛇腹形状に形成することで、ガイド部15を、幅方向Wにおいて曲げ変形(たわみ変形)し難くすることができる。
【0169】
これにより、ガイド部15が車体2に当接した際に、例えば、ガイド部15の幅方向Wの一部が厚み方向Tに曲げ変形する等して、該ガイド部15がステップ面部23bに乗り上げることを抑制することができる。
【0170】
従って、ケーブル外装部材10は、本実施形態のように、ガイド部15も含めてエラストマー樹脂等の弾性部材により形成された場合においても、外装部材本体11が、それ以上車体2の内側へ侵入しないようにガイド部15によってしっかりと規制することができる。
【0171】
図1~
図3に示すように、本実施形態のケーブル外装部材10は、ガイド部15の長手方向Lの両側に、下方向への延出長さが、ガイド部15の長手方向Lの少なくとも上記一方側の端部15e,15f(
図3参照)に近付くに従って徐々に小さくなる面取り部14が形成されている。
【0172】
ここで、仮に、ガイド部15の長手方向Lの両側に面取り部14が形成されていない場合は、ケーブル外装部材10は、ガイド部15の長手方向Lにおける両側の、ガイド部15を有しない部位との境界部が、長手方向Lに沿って段状に形成されることになる。すなわち、ケーブル外装部材10は、長手方向Lに沿って延びる下端形状が、境界部において車両上下方向に急激に変化することになる。
【0173】
そうすると、ケーブル外装部材10の曲げ変形時に、ガイド部15の長手方向Lの両側に位置する境界部に曲げ応力が集中し、結果として、ケーブル外装部材10が上記境界部において屈曲変形し易くなるおそれがある。
【0174】
これに対して、本実施形態のケーブル外装部材10によれば、ガイド部15の長手方向Lの両側に、面取り部14が形成されたため、ケーブル外装部材10が曲げ変形する際に、境界部に曲げ応力が集中することを抑制できる。
【0175】
従って、本実施形態のケーブル外装部材10は、曲げ変形時に、ガイド部15の長手方向Lの両側に有する境界部においても局所的に屈曲変形することなく車体の平面視において緩やかに曲げ変形させることができる。
【0176】
図4(a)(b)、
図5(a)に示すように、本実施形態の外装部材本体11は、内部にケーブル4を収容する収容空間16が設けられ、
図4(a)に示すように、ケーブル4を収容空間16に対して出し入れする開口部17が、外装部材本体11の下縁11dに、長手方向Lに沿って厚み方向T(車両上下方向)に延びるスリット状に形成されている。
【0177】
上記構成によれば、ガイド部15が車体2(ステップ面部23bの車幅方向外端23bb)に当接した際において(
図7、
図8参照)、ガイド部15が車体2側から受ける反力を、該開口部17が閉じる方向(車幅方向外側)に作用させることができる。
【0178】
これにより、ガイド部15が車体2に当接した際に、不用意に開口部17が開いて収容空間16に収容したケーブル4が外側へ露出したり脱出することを防ぐことができる。
【0179】
ここで、スライドドア3の開閉に伴ってケーブル外装部材10が車体平面視で曲げ変形した際に、ガイド部15は厚みを有するが故に、該ガイド部15のガイド面15aの側(外周側)の部位と、非ガイド面15bの側(内周側)の部位との間に経路差が生じる。そして、仮にガイド部15が厚み方向Tにおいて分割せずに一体に形成された場合、曲げ変形したガイド部15には、厚み方向Tの一方側と他方側との間に生じる経路差に起因して内部応力が発生し、曲げ抵抗が増大する(すなわち、曲げ難くなる)。
【0180】
これに対して
図4(b)に示すように、開口部17は、ガイド部15の厚み方向Tの内側を通って該ガイド部15を厚み方向Tにおいて一方側と他方側とに分割するように車両上下方向に延びるスリット状に形成されている。
【0181】
すなわち、本実施形態のガイド部15は、開口部17によって厚み方向Tにおいて一方側と他方側とに長手方向Lに沿って分割するように形成されたため、ガイド部15の車体平面視における曲げ変形時における曲げ抵抗の増加を抑制することができる。
【0182】
図8に示すように、外装部材本体11の下縁11dは、ドア開口21からの車室内に対する乗員の乗降時の踏み台として車体2に設けられたステップ面部23bよりも高い位置に配置されている。
【0183】
一方、
図7、
図8に示すように、ガイド部15は、該ガイド部15の下縁15dがステップ面部23bよりも低い位置に配置されるように外装部材本体11から下方に向けて延出されている。
【0184】
上記構成によれば、ケーブル4が曲げ変形時に、車体2の内側へ侵入しようとした場合においても、ステップ面部23bよりも高い位置に設けられた外装部材本体11が、ステップ面部23bの車幅方向外端23bbに対して干渉することによる損傷を防ぐことができる。
【0185】
一方、ガイド部15は、下縁15dがステップ面部23bよりも低い位置に設けられているため、ケーブル外装部材10の車体2の内側への張出し部分19が車体2の内側に向けて侵入しようとした際に、ステップ面部23bの車幅方向外端23bbに確実に当接される。これにより、本実施形態のケーブル外装部材10は、車体2へ侵入しないように、ガイド部15によって規制することができる。
【0186】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【0187】
例えば、開口部17は、上述したように、外装部材本体11の下部の厚み方向Tの中間位置に形成するに限らず、外装部材本体11の下部の厚み方向Tの他の部位に設けてもよい。
【0188】
例えば、図示省略するが、ガイド部15の厚み方向Tにおける、ガイド面15aの側(外周側)の部位(開口部17の一方側の縁部17a(
図4(b)参照))が、非ガイド面15bの側(内周側)の部位(開口部17の他方側の縁部17b(同図参照))よりも厚み方向Tに長く形成された構成を採用してもよい。
【0189】
上記構成によれば、ガイド部15が車体2に当接した際において、ガイド部15が車体2側から受ける反力を、ガイド部15の厚み方向Tにおける、非ガイド面15bの側の部位よりも厚み方向Tに長いガイド面15aの側の部位によって、しっかりと受け止めることができる。
【0190】
これにより、ガイド部15が車体2に当接した際に、不用意に開口部17が開いて収容空間に収容したケーブルが露出したり、脱出したりすることを防ぐことができる。
【0191】
また本発明のケーブル外装部材は、図示省略するが、外装部材本体11に、例えば、該外装部材本体11の下縁11dから下方へ突状のガイド部が長手方向Lに沿って複数備えられた構成を採用してもよい。
【0192】
また他の実施形態として、ケーブル4は、収容空間16に1本のみならず複数本を収容してもよい。その場合、ケーブル4は、複数本のフラットケーブルを厚み方向Tに積層して一体化した構成であってもよい。
【0193】
さらにまた他の実施形態として、ケーブル4は、フラットケーブルで形成されるに限らず、複数の電線を束ねたワイヤハーネスであってもよい。
【0194】
本実施形態のケーブル外装部材10を備えた車両1は、3列シートで構成された自動車等の車両を採用したが、本発明のケーブル外装部材を備えた車両は、これに限らず、シートの配列数は特に限定せず、例えば、2列シートを採用してもよい。また、本発明のケーブル外装部材を備えた車両は、スライドドア3およびケーブル外装部材10を車体2の左右両側に備えた構成に限らず、車体2の左右何れか一方側に備えた構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0195】
2…車体
3…スライドドア
4…ケーブル
10…ケーブル外装部材
10M…外装部材本体の長手方向の中間位置
11…外装部材本体
11d…外装部材本体の下縁
12…凹部
13…凸部
14…面取り部
15…ガイド部
15a…ガイド面(ガイド部の車体への当接面)
15d…ガイド部の下縁
16…収容空間
17…開口部
19…張出し部分
21…ドア開口
23b…ステップ面部
T…厚み方向
L…長手方向
U…車両上下方向(上下方向)