(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ジョイントカバーおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H01R 4/70 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
H01R4/70 B
(21)【出願番号】P 2021019475
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩司
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-031988(JP,A)
【文献】特開2013-187020(JP,A)
【文献】実公昭51-040466(JP,Y1)
【文献】実開昭59-178872(JP,U)
【文献】実開昭49-019283(JP,U)
【文献】実開昭61-101968(JP,U)
【文献】実開昭51-005700(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0013579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を接続した接続部を有する接続電線の少なくとも前記接続部を内部に収容するジョイントカバーであって、
電線の長手方向に沿った軸方向において互いに嵌合する一対のカバー構成体を有し、
前記カバー構成体は、
電線を周方向に取り囲むように軸方向に沿って延びる周壁部と、
前記周壁部よりも軸方向の先端側において他の前記カバー構成体の前記先端側に設けられた嵌合部と嵌合する嵌合部とが備えられ、
前記カバー構成体に対して径方向の外側から内側へ電線を差し込み可能に該外側と該内側とを径方向に連通する連通部が、前記カバー構成体の軸方向の全長に亘って形成さ
れ、
前記嵌合部は、前記連通部が他の前記カバー構成体の前記連通部と前記周方向に一致しない嵌合状態で他の前記カバー構成体の前記嵌合部と嵌合する構成とされた
ジョイントカバー。
【請求項2】
前記カバー構成体は、
少なくとも前記周方向に前記電線の外径より狭い間隔
を有する前記連通部が、軸方向に沿って形成されるとともに、
前記連通部の前記間隔が少なくとも前記電線の外径よりも前記周方向に広がるまで変形可能に形成された
請求項1に記載のジョイントカバー。
【請求項3】
前記連通部は、前記カバー構成体の軸方向の全長に亘って前記電線の外径よりも広い前記周方向の間隔を有する
請求項1に記載のジョイントカバー。
【請求項4】
前記カバー構成体の内部に、前記軸方向における前記先端側において前記接続部を前記軸方向に位置規制する規制部が設けられた
請求項1乃至3のうちいずれかに記載のジョイントカバー。
【請求項5】
前記嵌合部は、
前記軸方向における、前記周壁部の側へ凹状となる凹部と、前記先端側へ凸状となる凸部とが周方向に沿って交互に複数配置されるとともに、前記凹部が他の前記カバー構成体の前記凸部に、前記凸部が他の前記カバー構成体の前記凹部に夫々嵌合する凹凸嵌合部である
請求項1乃至4のうちいずれかに記載のジョイントカバー。
【請求項6】
前記連通部の軸方向の前記先端側の端部は、一対の前記カバー構成体の夫々において、前記凹部と前記凸部とのうち、何れか同じ側に形成された
請求項5に記載のジョイントカバー。
【請求項7】
前記凹部の根元部分と前記凸部の先端部のうち一方に、前記径方向の内側に向かって凹む内側薄肉部が設けられ、
前記凹部の根元部分と前記凸部の先端部のうち他方に、前記径方向の外側に向かって凹む外側薄肉部が設けられた
請求項5又は6に記載のジョイントカバー。
【請求項8】
前記凸部と前記凹部とのうち、一方に係合部が設けられるとともに、
他方に前記係合部と係合する被係合部が設けられた
請求項5乃至7のうちいずれかに記載のジョイントカバー。
【請求項9】
前記凸部と前記凹部は、軸方向の先端側に延びるに従って周方向に曲がる曲げ形状で形成された
請求項5乃至8のうちいずれかに記載のジョイントカバー。
【請求項10】
一対の前記カバー構成体は互いに同一形状である
請求項1乃至9のうちいずれかに記載のジョイントカバー。
【請求項11】
前記カバー構成体は、前記軸方向の先端側へ向けて、周方向の略全体に亘って徐々に径大となる略釣り鐘形状に形成された
請求項1乃至10のうちいずれかに記載のジョイントカバー。
【請求項12】
複数の電線を接続した接続部を有する接続電線の少なくとも前記接続部を、
請求項1乃至11のうちいずれかに記載のジョイントカバーの内部に収容したジョイント電線と、他の電線とを束ねて構成した
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、複数の電線を接続部で接続した接続電線の少なくとも接続部を内部に収容するジョイントカバーおよび該ジョイントカバーを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内部に配索されるワイヤハーネスにおいて、従来より、例えば、幹線から枝線を分岐させたり、幹線相互間を直列に接続したりすることが一般に行われる。
【0003】
このような複数の電線同士を接続した接続電線においては、夫々の電線の接続部分に相当する絶縁被覆を皮剥ぎして露出させた導体(芯線)に、例えば、スプライス端子(「スプライスジョイント」とも称する)等の接続部材を加締め圧着する等により、複数の電線を電気的に接続した接続部(「ジョイント部」とも称する)が形成される。
【0004】
さらに、従来より、前記接合部を保護するために、該接続部に対して、接続部材や電線の導体の露出部分が覆われるように例えば、絶縁テープで巻き付けることが行われている(例えば、特許文献1の
図5参照)。
【0005】
しかしながら例えば、絶縁テープが、接続部に対して電線の軸線方向に位置ずれするなどして、該接続部においてジョイント端子等が露出する不具合が発生することが懸念される。
【0006】
対策として、接続部に対して絶縁テープをより入念に巻き付けたり、接続部に巻き付けた絶縁テープに対して、さらに外側から補強テープを巻き付けたりすることで上述した絶縁テープの位置ずれを防止しているが、ワイヤハーネスの配索時の作業量が増加するという別の課題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、接続部を一対のカバー構成体の内部に収容した状態で容易に、かつしっかりと保護することができるジョイントカバーおよび該ジョイントカバーを備えたワイヤハーネスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、複数の電線を接続した接続部を有する接続電線の少なくとも前記接続部を内部に収容するジョイントカバーであって、電線の長手方向に沿った軸方向において互いに嵌合する一対のカバー構成体を有し、前記カバー構成体は、電線を周方向に取り囲むように軸方向に沿って延びる周壁部と、前記周壁部よりも軸方向の先端側において他の前記カバー構成体の前記先端側に設けられた嵌合部と嵌合する嵌合部とが備えられ、前記カバー構成体に対して径方向の外側から内側へ電線を差し込み可能に該外側と該内側とを径方向に連通する連通部が、前記カバー構成体の軸方向の全長に亘って形成され、前記嵌合部は、前記連通部が他の前記カバー構成体の前記連通部と前記周方向に一致しない嵌合状態で他の前記カバー構成体の前記嵌合部と嵌合する構成とされたことを特徴とする。
【0010】
前記構成によれば、接続部を一対のカバー構成体の内部に収容した状態で容易に、かつしっかりと保護することができる。
【0011】
詳述すると、前記構成によれば、電線を前記連通部を通じてカバー構成体の内部に差し込んで、電線に対してカバー構成体を外側から容易に配置させることができる。このため、前記カバー構成体は、複数の電線を接続部材等で接続する前の電線に対して外側に配置させることに限らず、接続部で接続された状態の複数の電線に対しても、外側から容易に配置させることができる。すなわち、一対のカバー構成体を接続電線に対して後付けすることができる。
【0012】
さらに、一対の前記カバー構成体を互いに嵌合することで、接続部を一対のカバー構成体の内部に収容した状態でしっかりと保護することができる。
【0013】
また、前記嵌合部は、前記連通部が他の前記カバー構成体の前記連通部と前記周方向に一致しない嵌合状態で他の前記カバー構成体の前記嵌合部と嵌合する構成とされていることにより、一対のカバー構成体は、夫々の前記連通部が周方向において互いに一致しない状態で夫々の前記嵌合部を互いに嵌合することができる。これにより、一対のカバー構成体は、夫々の嵌合部を互いに嵌合した状態において、夫々に形成された前記連通部が軸方向において互いに非連続な状態とすることができる。
【0014】
従って、これにより、一対のカバー構成体は、互いに嵌合した状態において、前記連通部を通じて径方向の内側に差し込んだ前記接続部が、意に反して径方向の外側へ抜け出さないように内部に収容した状態に確実に保つことができる。
【0015】
ここで、例えば、一対のカバー構成体を嵌合状態としたとき、夫々の連通部が周方向に一致する場合等においては、前記電線が前記連通部を通じて径方向の外側へ抜け出さないように該連通部を、例えば、絶縁テープ等で塞ぐことで、前記接続部の保護性能をより一層高めることができる。
【0016】
その際、絶縁テープは、例えば、接続部材や電線の導体の露出部分が覆われるように接続部に対して全体的に巻き付ける場合と比して連通部を塞ぐ程度の範囲の最小限の使用量に抑えることができる。
【0017】
従って、接続部に対して絶縁テープを巻き付ける手間を低減できるとともに、絶縁テープがカバー構成体から外れるリスクも低減できる。
【0018】
また、前記接続部は、例えば、複数の電線がジョイント端子等の接続部材で接続された構成、溶接等で接続された構成、テープ等を巻き回して接続された構成、或いは夫々の電線の導体同士を互いに撚り合わせる等して接続された構成を採用することができる。
【0019】
さらに、前記接続部は、複数の電線が接続部材で接続された構成を採用する場合は、接続部材がコネクタハウジングに収容した状態とし、該コネクタハウジングごと一対のカバー構成体の内部に収容する構成を採用してもよい。
【0020】
ここで、連通部は、前記カバー構成体の軸方向の全長に亘って軸方向と平行に延びる構成に限らず、例えば、軸方向の途中部に周方向に延びる部位を有してもよい。すなわち、連通部は、前記カバー構成体の周方向に迂回しながら軸方向に延びる構成を採用してもよい。
【0021】
この発明の態様として、前記カバー構成体は、少なくとも前記周方向に前記電線の外径より狭い間隔を有する前記連通部が、軸方向に沿って形成されるとともに、前記連通部の前記間隔が少なくとも前記電線の外径よりも前記周方向に広がるまで変形可能に形成されている。
【0022】
なお、前記連通部は、前記電線の外径より狭い間隔であれば、該連通部の周方向の両縁部が、互いに密着した状態であってもよいし、互いに離間した状態であってもよい。
【0023】
前記構成によれば、前記カバー構成体を弾性変形させることで連通部の間隔を前記周方向に広げることで、該連通部を通じて前記電線を前記カバー構成体の径方向の内側に容易に差し込むことができる。
【0024】
ここで、前記カバー構成体は、上述したように変形可能に形成するにあたり、例えば、弾性変形可能な部材で形成する、或いは、互いに開閉(変形)可能にヒンジ軸により軸支された2部材を備えた構成を採用することができる。
【0025】
また、この発明の態様として、前記連通部は、前記カバー構成体の軸方向の全長に亘って前記電線の外径よりも広い前記周方向の間隔を有している。
【0026】
前記構成によれば、例えば、前記カバー構成体を変形させる等して前記連通部の周方向の間隔を広げることなく、電線を連通部を通じてカバー構成体の内部に容易に差し込むことができる。
【0027】
また、本発明は、一対の前記カバー構成体の夫々の前記連通部が、軸方向の前記先端側の端部(末端部)において周方向において互いに一致しない構成であれば、軸方向の前記先端側の端部以外の部位が周方向において互いに一致してもよい。
【0028】
また、この発明の態様として、前記カバー構成体の内部に、前記軸方向における前記先端側において前記接続部を前記軸方向に位置規制する規制部が設けられている。
【0029】
前記構成によれば、互いに嵌合した状態(組付けた状態)の一対のカバー構成体の内部において、接続部を、軸方向の中央側に配置した状態に規制部によって規制することができる。
【0030】
これにより、接続電線の長手方向において接続部の位置に対して一対のカバー構成体が位置ずれすることなく、接続部を一対のカバー構成体の内部に安定して収容することができる。
【0031】
さらに、互いに嵌合した状態の一対のカバー構成体の内部において、上述したように、接続部が常時、軸方向の中央に配置された状態に規制部によって規制できるため、作業者は、接続部を一対のカバー構成体の外側から目視できなくとも、一対のカバー構成体の内部における接続部の軸方向の位置を認識することができる。
【0032】
このため、例えば、電線の長手方向の両端に、他の電線と接続された接続部が夫々備えられた構成において、作業者は、電線の長手方向の両端の接続部同士の間隔を、接続部が一対のカバー構成体の内部に収容された状態であっても、正確に把握することができる。
【0033】
従って、作業者は、電線の長手方向において互いに離間する接続部の夫々が一対のカバー構成体の内部に収容された状態であっても、夫々の接続部の間隔を正確かつ容易に管理することができる。
【0034】
また、この発明の態様として、前記嵌合部は、前記軸方向における、前記周壁部の側へ凹状となる凹部と、前記先端側へ凸状となる凸部とが周方向に沿って交互に複数配置されるとともに、前記凹部が他の前記カバー構成体の前記凸部に、前記凸部が他の前記カバー構成体の前記凹部に夫々嵌合する凹凸嵌合部である。
【0035】
前記構成によれば、一対のカバー構成体の夫々の前記嵌合部に複数配置された凹部と凸部とを互いに嵌合させることができ、結果として一対のカバー構成体を強固に嵌合することができる。
【0036】
また、この発明の態様として、前記連通部の軸方向の前記先端側の端部は、一対の前記カバー構成体の夫々において、前記凹部と前記凸部とのうち、何れか同じ側に形成されている。
【0037】
前記構成によれば、一対のカバー構成体を嵌合した状態において、前記凹部と前記凸部とが嵌合するため、夫々のカバー構成体に形成された前記連通部の軸方向の前記先端側の端部が、周方向に一致しないように嵌合させることができる。
【0038】
特に、前記連通部の軸方向の前記先端側の端部は、一対の前記カバー構成体の夫々において、何れも前記凹部の側に形成された構成を採用することが好ましい。
【0039】
前記連通部の軸方向の前記先端側の端部が凹部の側に形成されることで、カバー構成体の軸方向の全長に亘って延びる連通部の一部を凹部によって賄うことができるため、連通部の軸方向の長さを、凹部の深さ分だけ短くすることができる。
従って、電線を、連通部を通じてカバー構成体の径方向内側へ差し込み易くすることができる。
【0040】
また、上述したように、カバー構成体の軸方向の全長に亘って延びる連通部の一部を凹部によって賄うことができるため、連通部の軸方向の凹部に相当する部位と、凹部とを別々に形成する場合と比してカバー構成体の剛性(形状保持性)を高めることができる。
従って、カバー構成体の内部に収容した接続部の、カバー構成体による保護性能を高めることができる。
【0041】
また、この発明の態様として、前記凹部の根元部分と前記凸部の先端部のうち一方に、前記径方向の内側に向かって凹む内側薄肉部が設けられ、前記凹部の根元部分と前記凸部の先端部のうち他方に、前記径方向の外側に向かって凹む外側薄肉部が設けられている。
【0042】
前記構成によれば、前記凸部と前記凹部とが嵌合した状態において、内側薄肉部と外側薄肉部とが径方向(板厚方向)において重合するため、互いに嵌合された前記凸部と前記凹部との間に、径方向に連通する隙間が形成され難い構成とすることができる。さらに、前記凸部と前記凹部とが周方向に嵌合することに加え、径方向(板厚方向)においても強固に嵌合することができる。
【0043】
また、この発明の態様として、前記凸部と前記凹部とのうち、一方に係合部が設けられるとともに、他方に前記係合部と係合する被係合部が設けられている。
【0044】
前記構成によれば、前記凸部と前記凹部とが嵌合すると、前記係合部と前記被係合部とが係合することで、互いに意に反して抜け難くすることができる。
【0045】
ここで、前記係合部は、前記内側薄肉部と前記外側薄肉部とのうち、一方に形成されるとともに、前記被係合部は、前記内側薄肉部と前記外側薄肉部とのうち、他方に形成された構成を採用してもよい。
【0046】
また、この発明の態様として、前記凸部と前記凹部は、軸方向の先端側に延びるに従って周方向に曲がる曲げ形状で形成されている。
【0047】
前記構成によれば、一対のカバー構成体を互いに嵌合する(組み付ける)際には、凹部に対して凸部を軸方向に直線状に押し込むのみならず、周方向に捩りながら軸方向に押し込むことで、凸部が凹部に対して意に反して抜けないように軸方向に加えて周方向においても強固に、且つ容易に嵌合させることができる。
【0048】
また、この発明の態様として、一対の前記カバー構成体は互いに同一形状である。
【0049】
前記構成によれば、部品点数(部品の種類数)を削減できるため、部品管理の手間を簡略化できるとともに製造コストを削減することができる。
【0050】
また、前記構成によれば、一対の前記カバー構成体の組み合わせが一義的に決まるため、例えば、現場において作業者が一対の前記カバー構成体を誤った組み合わせで組付けようと(嵌合しようと)するおそれがなく、常に適切な組み合わせで組み付けることができ、結果として、一対の前記カバー構成体の組み付け作業効率を高めることができる。
【0051】
また、この発明の態様として、前記カバー構成体は、前記軸方向の先端側へ向けて、周方向の略全体に亘って徐々に径大となる略釣り鐘形状に形成されている。
【0052】
前記構成によれば、一対の前記カバー構成体は、互いに組み付けた状態において、軸方向の両側から中央部へ徐々に径大となる略長球形状(「略長楕円体長球形状」、又は「所謂卵型形状」とも称する。)とすることができる。
【0053】
従って、一対の前記カバー構成体は、互いに組み付けた状態において、軸方向および周方向において、角部が極力抑制された滑らかな形状とすることができる。
【0054】
従って、例えば、車両の振動等により、接続電線の接続部を外側から覆うジョイントカバーが、周辺に存在する電線やコルゲートチューブ(外装部材)等の部品に接触しても、局所的に外力が作用することを抑制でき(すなわち角あたりすることがなく)、結果として周辺の部品が破損することを防ぐことができる。
【0055】
また、一対の前記カバー構成体は、軸方向の両側よりも中央部が径大となるため、内部の中央側において接続部をしっかりと収容することができる。
【0056】
この発明は、複数の電線を接続した接続部を有する接続電線の少なくとも前記接続部を、上述したジョイントカバーの内部に収容したジョイント電線と、他の電線とを束ねて構成されたワイヤハーネスである。
【0057】
前記構成によれば、一対のカバー構成体の内部に、複数の電線を接続部で接続した前記接続部を収容した状態で該一対のカバー構成体を互いに嵌合することができる。
【0058】
さらに、接続電線の接続部が連通部を通じて径方向の外側へ意に反して抜け出さないように該接続部を一対のカバー構成体の内部に収容した状態に保つことができる。
【発明の効果】
【0059】
前記構成によれば、接続部を一対のカバー構成体の内部に収容した状態で容易に、かつしっかりと保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本実施形態のジョイントカバーを備えたワイヤハーネスの一部断面図
【
図4】(a)は本実施形態のジョイントカバーの正面図、(b)は
図2中におけるA-A矢視断面図
【
図5】(a)は本実施形態のジョイントカバーの分解正面図、(b)は
図4(b)に対応する分解断面図
【
図6】(a)は
図4(a)中におけるB-B矢視断面図、(b)は
図4(a)中におけるC-C矢視図、(c)
図5(a)中におけるD-D矢視断面図
【
図7】(a)はカバー構成体を電線に取り付ける際の様子を示す一部断面図、(b)は
図7(a)中におけるE-E矢視断面図、(c)はカバー構成体を組み付ける際の様子を示す一部断面図
【
図8】(a)は内部に接続電線の接続部を収容した状態の本実施形態のジョイントカバーの一部断面図、(b)は
図8(a)中におけるE-E矢視拡大断面図
【
図9】(a)は変形例1のジョイントカバーの
図4(b)対応図、(b)は
図9(a)中のX部拡大図
【
図11】(a)は変形例3のジョイントカバーの
図2対応図、(b)は
図4(a)対応図
【発明を実施するための形態】
【0061】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1に示すワイヤハーネス1は、車両に搭載される車両用のワイヤハーネス1であって、主に、同一方向を向くように束ねた状態でワイヤハーネス1の配索経路Rwに沿って配索される複数の幹線3と、ワイヤハーネス1の配索経路Rwにおける所定の分岐箇所Dにおいて幹線3から分岐する枝線4と、本実施形態のジョイントカバー10とを備えている。
【0062】
このようなワイヤハーネス1は、配索経路Rwに沿って全体がコルゲートチューブ9によって外装されている。
【0063】
図1は、ワイヤハーネス1に有する、幹線3の2箇所の分岐箇所Dを示している。ワイヤハーネス1を構成する複数の幹線3のうち、2箇所の分岐箇所Dの夫々を通過する幹線3は、夫々の分岐箇所Dから1本の枝線4が分岐しており、該枝線4を介して互いに電気的に接続されている。
【0064】
幹線3と枝線4とは共に、アルミ又はアルミ合金から成る導体(芯線)3a,4aを、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の絶縁材料から成る絶縁被覆3b,4bで被覆した絶縁被覆電線である(
図7(b)参照)。
【0065】
但し、導体3a,4aは、複数の素線を束ねて形成されたものに限らず、一本の素線から形成されたものを採用してもよい。また、導体3a,4aは、アルミ系に限らず、銅系など他の導電性材料により形成されてもよい。
【0066】
2箇所の分岐箇所Dの夫々において、所定の幹線3と枝線4とは、図示省略するが、所定の幹線3の中間部の絶縁被覆3bと、枝線4の先端部の絶縁被覆4bを剥いで夫々の導体3a,4aを露出させ、さらに両電線3,4の導体3a,4a同士を重ね合わせて外側から接続部材としてのスプライス端子(ジョイント端子)6(
図7(a)参照)を被せ、圧着して接続されている。
これにより、ワイヤハーネス1を構成する複数の電線2,3には、所定の幹線3と枝線4とがスプライス端子6で接続された接続電線5を有している。さらに、接続電線5は、所定の幹線3と枝線4との分岐箇所Dにおいて、スプライス端子6によって接続された接続部7が形成されている(
図7(a)参照)。
【0067】
本実施形態において、接続電線5は、分岐箇所Dにおいて、接続部7に対して長手方向Yの一方側から1本の幹線3が延出するとともに、他方側から幹線3と枝線4とが一本ずつ合計2本の電線3,4が延出する(
図7(a)参照)。また、
図1に示すように、2箇所の分岐箇所D(接続部7)の夫々は、ワイヤハーネス1の配索経路Rwにおいて所定間隔Lを隔てた各側の位置に設定されている。
【0068】
また、分岐箇所Dにおいて、幹線3と枝線4との接続部7は、ジョイントカバー10の内部に収容された状態で保護されている(
図8(a)参照)。ここで、接続電線5の中でも接続部7がジョイントカバー10の内部に収容された接続電線5を、ジョイント電線5’とも称する。すなわち、
図1に示すように、ワイヤハーネス1は、ジョイント電線5’と他の電線3Aとで構成されている。
【0069】
なお、枝線4は、上述したように、コルゲートチューブ9の内部空間において配索された構成に限らず、図示省略するが、所定の1本の幹線3から枝分かれして延出する部分が、コルゲートチューブ9の外側へ延出されるとともに、該延出部分の先端が車内に搭載された各種電気機器やバッテリーのコネクタ等に接続される構成を採用してもよい。
【0070】
続いて、ジョイントカバー10の構成について説明する。但し、2箇所の分岐箇所Dの夫々に備えたジョイントカバー10は、同一形状および大きさで、すなわち同一に形成されている。
【0071】
図2、
図3、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)に示すように、本実施形態のジョイントカバー10は、軸方向Daにおいて互いに組み付ける一対のカバー構成体11(11A,11B)を備えている。カバー構成体11は、全体が合成樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP))で形成されている。
【0072】
なお、軸方向Daとは、電線3,4の長手方向Y(
図1参照)に沿った方向(当例では、長手方向Yと一致する方向)であって、一対のカバー構成体11の夫々の中心軸と一致する方向を示す。
【0073】
また、以下の説明において、一対のカバー構成体11の夫々の軸方向Daにおける、組み付け相手側となる他方のカバー構成体11と対峙する側を、軸方向Daの先端側Dac(「中央側」とも称する)に設定するとともに、他のカバー構成体11と対峙しない側を基端側Dao(「外側」とも称する)に設定する。
【0074】
一対のカバー構成体11は、互いに同一の形状および大きさで形成された同一部品であり、何れも軸方向Daの先端側Dacへ向けて、周方向Dcの略全体に亘って徐々に径大となる略釣り鐘形状に形成されている。
【0075】
一対のカバー構成体11は、軸方向Daの先端側Dacが対峙するように逆向きに配置した状態で互いに組付けられる。
図2、
図4(a)に示すように、本実施形態のジョイントカバー10は、一対のカバー構成体11を互いに組み付けた状態において、軸方向Daの両外側(基端側Dao)に対して中央部(先端側Dac)に向けて、略全周に亘って徐々に径大となる略長球形状(「略長楕円体長球形状」、又は「所謂卵型形状」とも称する。)とすることができる。
【0076】
図4(b)に示すように、ジョイントカバー10の内部空間10sは、一対のカバー構成体11が略釣り鐘形状であることに対応して、軸方向Daの両外側の基端側Daoに対して中央側の先端側Dacが大径に形成されている。これにより、一対のカバー構成体11は、接続電線5における接続部7を内部空間10sに収容可能に形成されている(
図8(a)参照)。
【0077】
具体的に、カバー構成体11は、電線3,4に対して径方向Drの外側に配置され(
図8(a)参照)、
図2、
図3、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)、
図6(a)(b)(c)に示すように、電線3,4を周方向Dcに取り囲むように軸方向Daに沿って延びる周壁部12と、該周壁部12よりも軸方向Daの先端側Dacに設けられた嵌合部13とが備えられている。
【0078】
さらに、
図2、
図3、
図4(a)、
図5(a)(b)、
図6(a)(b)(c)に示すように、カバー構成体11は、該カバー構成体11に対して径方向Drの外側から内側(後述する片側内部空間11s)へ電線3,4を差し込み可能に該外側と該内側とを径方向Drに連通する連通部14が、カバー構成体11の軸方向Daの全長に亘って形成されている。この連通部14については後述する。
【0079】
周壁部12は、軸方向Daおよび周方向Dcにおいて略同じ板厚で形成されており(
図4(b)、
図6(a)(c)参照)、内周面および外周側が、周方向Dcの略全体に亘って軸方向Daの基端部15から先端側Dacへ向けて徐々に径大となる中空の円錐台状に形成されている(
図4(a)(b)、
図5(a)(b)、
図6(b)参照)。
図5(b)に示すように、カバー構成体11の内部には、片側内部空間11sを有している。
【0080】
図5(a)(b)、
図6(c)に示すように、片側内部空間11sは、上述したジョイントカバー10の内部空間10sの軸方向Daの片側略半分に相当し、軸方向Daの先端側Dacへ向けて開口する。
【0081】
すなわち、
図4(b)に示すように、一対のカバー構成体11を互いに組み付けた状態において、夫々の片側内部空間11sが軸方向Daにおいて互いに連通することで、内部に内部空間10sが構成される。
【0082】
図2、
図4(a)(b)、
図6(b)に示すように、カバー構成体11(周壁部12)の基端部15は、軸方向Daに直交する略平坦な端面形状で形成され、その中央部には、
図2、
図4(b)、
図5(b)、
図6(a)(b)(c)に示すように、基端側開口部16が軸方向Daに貫通形成されている。これにより、片側内部空間11sは、基端側開口部16を通じて軸方向Daの外側に向けて開口している。
【0083】
基端側開口部16は、幹線3と枝線4とを1本ずつ合計2本の電線3,4を挿通可能に形成されている(
図8(a)参照)。本実施形態において、電線としての幹線3と枝線4とは、互いに略同じ外径で形成されているため、基端側開口部16は、電線3,4の外径の2倍よりも大きな内径で開口形成されている。
【0084】
但し、本実施形態において、基端側開口部16は、スプライス端子6(接続部7)の外径よりも小さな内径で開口形成されている。
【0085】
上述により、一対のカバー構成体11は、
図8(a)に示すように、接続電線5における接続部7を内部空間10sに収容した状態で、接続部7に対して両側へ延びる電線3,4が、夫々の基端側開口部16を通じて軸方向Daの各外側へ延出可能に形成されている。
【0086】
また、
図2、
図3、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)、
図6(a)(c)に示すように、嵌合部13は、周壁部12の軸方向Daの先端部12aからさらに先端側Dacへ略同じ径を有して延びている。嵌合部13は、一対のカバー構成体11を互いに組み付けた状態において互いに嵌合可能に構成されている(
図2、
図4(a)(b)、
図6(a)参照)。
【0087】
詳しくは、特に
図3、
図5(a)(b)、
図6(a)に示すように、嵌合部13は、軸方向Daの先端側Dacへ直線状に延びる凸部21と、軸方向Daの基端側Dao(周壁部12の側)へ直線状に凹む凹部22とが周方向Dcに沿って交互に複数配置された凹凸形状で形成されている。さらに、複数の凸部21の夫々は、互いに同一形状に形成されるとともに、複数の凹部22の夫々は、互いに同一形状に形成されている。
すなわち、本実施形態においては、凸部21と凹部22とは、周方向Dcに夫々6つずつ略等分に配設されている。
【0088】
図3、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)に示すように、凸部21は、周壁部12の先端部12a(嵌合部13の根元部分)から軸方向Daの先端側Dacへ突出している。凸部21は、凹部22の軸方向Daの深さと略同じ、或いは若干短い軸方向Daの長さ(突出長さ)を有するとともに、凹部22の周方向Dcの長さ(溝幅)と略同じ、或いは若干短い周方向Dcの長さを有している。
すなわち、凹部22の根元側の縁部22a(最深部)は、周壁部12の先端部12a(嵌合部13の根元部分)の位置に相当する(
図3、
図5(a)(b)参照)。
【0089】
ここで、
図2、
図6(a)に示すように、一対の嵌合部13を嵌合した嵌合部分130は、軸方向Daの直交断面が略全周に亘って滑らかな曲げ形状(連通部14を除いて周方向Dcに連続する略C環形状)となるように形成される。
【0090】
すなわち、凸部21と、凹部22の縁部(根元側の縁部22aおよび後述する内側薄肉部221(
図3、
図6(a)参照))とは共に、軸方向Daの直交断面が、嵌合部分130の周方向Dcの各部位に対応する曲げ形状に形成されている。
【0091】
以上により、一対の嵌合部13は、夫々の凹部22と凸部21とが軸方向Daおよび周方向Dcにおいて隙間なく互いに嵌合する。
【0092】
また、一対のカバー構成体11のうち、一方のカバー構成体11Aに形成した複数の凸部21の夫々は、他方のカバー構成体11Bに形成した複数の凹部22の何れに対しても互いに凹凸嵌合することができる。
【0093】
同様に、一対のカバー構成体11のうち、一方のカバー構成体11Aに形成した複数の凹部22の夫々は、他方のカバー構成体11Bに形成した複数の凸部21の何れに対しても互いに凹凸嵌合することができる。
【0094】
すなわち、一対のカバー構成体11は、上述したように、夫々の軸方向Daの先端側Dacを軸方向Daにおいて対峙させた状態で組み付けられるが、夫々の周方向Dcの相対姿勢に関わらず、互いに嵌合することができる。
【0095】
なお、例えば、
図2、
図4(a)(b)、
図6(a)には、一対のカバー構成体11を互いに組み付けた状態の一態様として、一対のカバー構成体11が、軸方向Daにおいて互いに点対称となる相対姿勢で組み付けられた状態を示している。
【0096】
また、
図3、
図4(b)、
図5(b)、
図6(b)(c)に示すように、嵌合部13には、凹部22の根元部分に、凸部21の径外面よりも径方向Drの内側に向かって凹む内側薄肉部221が設けられるとともに、凸部21の先端部に、凸部21の根元部分の径内面よりも径方向Drの外側に向かって凹む外側薄肉部211が設けられている。
【0097】
そして、
図4(b)、
図6(a)に示すように、一対の嵌合部13の嵌合状態において、すなわち、凸部21が凹部22に差し込まれた状態において、凹部22の内側薄肉部221と、凸部21の外側薄肉部211とが、径方向Drにおいて互いに重合する。
【0098】
これにより、一対の嵌合部13の嵌合状態において、凸部21と凹部22とは、周方向Dcのみならず、径方向Drにおいても嵌合することでより強固な嵌合状態を得ることができる。
【0099】
ここで、
図3、
図5(b)に示すように、本実施形態における嵌合部13は、換言すると、径内側短片部23と径外側長片部24とが備えられている。径内側短片部23と径外側長片部24とは、何れも周壁部12の軸方向Daの先端部12aから軸方向Daの先端側Dacへ直線状に突出形成されている。
【0100】
具体的に、径内側短片部23は、周壁部12の軸方向Daの先端部12aにおける径方向Drの内側部分から軸方向Daの先端側Dacへ径外側長片部24よりも短い長さ(当例では半分程度の突出長さ)で突出形成されている。径内側短片部23は、連通部14を除く全周に亘って略同じ板厚(径方向Drの長さ)で形成されている。
【0101】
そして、
図3に示すように、径内側短片部23の周方向Dcにおける凹部22の根元部分に相当する部位は、径外側長片部24の径方向Drの外面よりも内側へ一段低く形成されている。これにより、凹部22の根元部分には、凸部21の根元部分よりも薄肉となる内側薄肉部221が形成される。
【0102】
一方、
図5(b)に示すように、径外側長片部24は、周壁部12の軸方向Daの先端部12aにおける径方向Drの外側部分から軸方向Daの先端側Dacへ凸部21と同じ突出長さで突出形成されている。径外側長片部24は、軸方向Daの全長に亘って径方向Drに同じ厚みに形成されている。
【0103】
そして、
図3、
図5(b)に示すように、径外側長片部24の先端部(211)の径内面(211a)は、径内側短片部23の径方向Drの内面よりも外側へ一段低く形成されることで、凸部21の根元部分よりも薄肉となる外側薄肉部211が形成される。
【0104】
なお、
図5(b)に示すように、径外側長片部24は、外側薄肉部211と径外側長片部24の根元部分241とで一体形成されている。また、凸部21は、径外側長片部24と、径内側短片部23の周方向Dcにおける、凸部21の根元部分に相当する部位231とで一体形成されている。
【0105】
また、
図4(b)に示すように、一対のカバー構成体11の夫々の径内側短片部23は、該一対のカバー構成体11の嵌合状態において、軸方向Daの先端側Dacの端面23a同士が互いに当接する。
【0106】
図2、
図3、
図5(a)(b)、
図6(c)に示すように、上述した連通部14は、カバー構成体11の周方向Dcにおける一部にのみ形成されるとともに、
図2、
図3、
図4(a)、
図5(a)に示すように、正面視で(径方向Drの外側から視て)軸方向Daと平行に直線状に延びている。
【0107】
ここで、本実施形態におけるカバー構成体11は、連通部14の周方向Dcの間隔dが軸方向Daの全長に亘って、少なくとも電線3,4の外径より広がるまで弾性変形(撓み変形)可能に形成されている(
図7(b)中の仮想線で示したカバー構成体11B参照)。
【0108】
すなわち、カバー構成体11は、連通部14の間隔dが広がるように弾性変形させることで、連通部14を通じて電線3,4を径方向Drの外側から内側(片側内部空間11s)へ差し込み可能に形成されている。一方、本実施形態における連通部14は、カバー構成体11を後述するように弾性変形させていない通常時において、該カバー構成体11の周方向Dcにおける間隔dが少なくとも電線3,4の外径より狭い間隔dで軸方向Daに沿って形成されている。
【0109】
これにより、カバー構成体11は、周方向Dcに間隔dを広げた連通部14を通じて内部空間10sに差し込んだ電線3,4が、通常時において、連通部14を通じて外側へ不用意に抜け出さない構成とするとともに、連通部14を通じてごみや水等が内部空間10sに侵入することを極力排除する構成としている。
【0110】
一対のカバー構成体11は、
図2、
図4(a)(b)、
図6(a)に示すように、夫々の連通部14が周方向Dcにおいて互いに一致しない嵌合状態となるように、夫々の嵌合部13が互いに嵌合される構成としている。
【0111】
具体的には、
図3、
図5(a)(b)、
図6(c)に示すように、連通部14の軸方向Daにおける、周壁部12の先端部12a(嵌合部13の根元部分)に位置する端部14a(以下、「連通部14の軸方向Daの先端側Dacの端部14a」とも称する。)は、カバー構成体11(嵌合部13)の周方向Dcに配設された複数の凹部22のうち、所定の凹部22Aと周方向Dcに一致する部位に形成されている。
【0112】
具体的には、
図3、
図5(a)(b)、
図6(c)に示すように、連通部14の軸方向Daの先端側Dacの端部14aは、カバー構成体11(嵌合部13)の周方向Dcに配設された複数の凹部22のうち、所定の凹部22Aと周方向Dcに一致する部位に形成されている。
【0113】
本実施形態においては、
図3、
図5(a)(b)に示すように、連通部14の軸方向Daの先端側Dacの端部14aは、上述したように、周壁部12の先端部12a(嵌合部13の根元部分)に位置し、カバー構成体11(嵌合部13)の周方向Dcにおける、所定の凹部22Aの根元部分の縁部22aにおける周方向Dcの一端側に形成されている。
【0114】
ここで、一対のカバー構成体11(嵌合部13)は、上述したように、互いに同一形状であるため、何れのカバー構成体11についても連通部14の軸方向Daの先端側Dacの端部14aは、所定の凹部22Aの根元部分に形成されている。
【0115】
すなわち、一対のカバー構成体11が嵌合状態において、連通部14の端部14aが形成された所定の凹部22Aと、連通部14の端部14aが形成されていない凸部21とが嵌合される。
【0116】
このため、一対のカバー構成体11の周方向Dcの相対姿勢に関わらず、該一対のカバー構成体11の夫々に形成された連通部14が周方向Dcにおいて互いに一致しない嵌合状態に確実にすることができる。
【0117】
また、嵌合部分130は、上述したように、一対の嵌合部13を嵌合した状態において、軸方向Daの直交断面が略全周に亘って周方向Dcに滑らかな曲げ形状で形成されている(
図2、
図6(a)参照)。一方、周壁部12についても、上述したように、軸方向Daの直交断面が略全周に亘って周方向Dcに滑らかな曲げ形状で形成されている(
図2、
図6(b)参照)。 さらに、周壁部12は、軸方向Daの先端側Dacから基端側Daoに従って徐々に小径となるように形成されている。
【0118】
このため、基端部15の端面と周壁部12の外周面との角部が極力小さくなるように形成されている。加えて、カバー構成体11は、周壁部12の先端部12a(嵌合部13の根元部分)においても軸方向Daにおいて滑らかに形成されている。
【0119】
すなわち、本実施形態のジョイントカバー10は、上述したように全体として略釣り鐘形状に形成されているため(
図2参照)、軸方向Daおよび周方向Dcにおいて、極力角部を有しない滑らかな形状としている。
【0120】
これにより、車両の振動により、本実施形態のジョイントカバー10は、該ジョイントカバー10が、周辺に有する、他の電線3A(
図1参照)やコルゲートチューブ9(
図1参照)等の周辺部品に衝突しても、周辺部品が破損しない構成としている。
【0121】
また、
図3、
図4(b)、
図5(b)、
図6(b)(c)に示すように、カバー構成体11の片側内部空間11sには、軸方向Daにおける先端側において接続部7を軸方向Daに位置規制する規制部26が備えられている。
【0122】
規制部26は、カバー構成体11の軸方向Daにおける周壁部12の先端部12aにおける内壁から径方向Drの内側(内部空間10s)へ一体に突出形成されている。規制部26は、内壁の周方向Dcに複数(当例では4つ)備え、夫々周方向Dcに等分に配設されている(
図6(a)(c)参照)。
【0123】
規制部26は、径方向Drの中心軸に沿って延びる接続電線5における電線3,4の外周面よりも径外側かつ接続部7の外周面よりも径内側へ先端が位置するように径方向Drの内側(すなわち片側内部空間11sの側)へ突出する(
図8(a)(b)参照)。
【0124】
本実施形態においては、
図6(a)(c)に示すように、規制部26は、カバー構成体11の片側内部空間11sにおいて径方向Drに対峙するようにカバー構成体11の内壁から突出する一対が備えられ、これら一対が内部空間10s(片側内部空間11s)の周方向Dcにおいて2組備えられている。
【0125】
また、規制部26は、上述したように、カバー構成体11の内壁の軸方向Daにおける周壁部12の先端部12aに設けられている(
図4(b)参照)。
これにより、規制部26は、一対のカバー構成体11の嵌合状態において、内部空間10sの軸方向Daの中央部(嵌合部分130に相当する部位)に対して両側の部位に配設される(
図4(b)参照)。このため、規制部26は、ジョイントカバー10の内部空間10sの中央部に収容された接続部7(
図8(a)参照)が該中央部よりも軸方向Daの両外側のうち、何れか一方へ位置ずれしようとした際に、接続部7の軸方向Daの一方の端部が、該一方の規制部26に当接する。これにより、規制部26は、接続部7が軸方向Daの一方側(一方の周壁部12に相当する側)へ位置ずれすることを規制することができる。
【0126】
続いて、上述した本実施形態のジョイントカバー10の内部空間10sに、接続電線5における接続部7が収容されるように該ジョイントカバー10を構成する一対のカバー構成体11を互いに組み付ける手順の一例について説明する。
【0127】
図7(a)に示すように、作業者は、互いに分離した状態の一対のカバー構成体11のうち、一方のカバー構成体11Aを接続電線5の接続部7に対して長手方向Yにおける一方側に配置する。さらに、接続電線5の接続部7に対して長手方向Yにおける一方側へ延出する幹線3を、一方のカバー構成体11の片側内部空間11sに連通部14を通じて差し込む(
図7(a)中の白抜き矢印参照)。
【0128】
ここで、上述したように、一方のカバー構成体11Aは、連通部14を周方向Dcの隙間を広げるように弾性変形可能に形成されるとともに、連通部14は、一方のカバー構成体11Aの軸方向Daの全長に亘って連続して形成されている。このため、作業者は、連通部14の周方向Dcの間隔dを広げるようにして一方のカバー構成体11を撓み変形させることで(後述する
図7(b)中の仮想線で示したカバー構成体11B参照)、幹線3を連通部14を通じて片側内部空間11sに差し込むことができる。
【0129】
同様に、
図7(a)に示すように、作業者は、互いに分離した状態の一対のカバー構成体11のうち、他方のカバー構成体11Bを接続電線5の接続部7に対して長手方向Yにおける他方側に夫々配置する。さらに、接続電線5の接続部7に対しての長手方向Yにおける他方側へ延出する幹線3および枝線4を、他方のカバー構成体11Bの片側内部空間11sに連通部14を通じて差し込む(
図7(a)(b)中の白抜き矢印参照)。
【0130】
その際、
図7(b)に示すように、作業者は、上述したように、連通部14の周方向Dcの間隔dを広げるようにして他方のカバー構成体11Bを撓み変形させることで(
図7(b)中の仮想線で示したカバー構成体11B参照)、幹線3と枝線4とを連通部14を通じて1本ずつ片側内部空間11sに差し込むことができる。
【0131】
上述により、
図7(c)に示すように、一対のカバー構成体11の夫々を、接続部7に対して長手方向Yの夫々の側の電線3,4に対して外側から取り囲むように配置することができる。
【0132】
そして、
図7(c)中の白抜き矢印に示すように、作業者は、一対のカバー構成体11を、接続電線5の長手方向Yにおける接続部7の側へ互いに近接する側へ長手方向Yに沿ってスライドさせ、接続電線5の長手方向Yにおける接続部7に対して両側から夫々の嵌合部13同士を互いに嵌合させる。
【0133】
これにより、
図8(a)(b)に示すように、作業者は、一対のカバー構成体11を、接続部7を内部空間10sに収容した状態で互いに組み付けることができる。なお、
図8(b)は、接続電線5におけるスプライス端子6から延出する電線3,4のみを仮想線で簡略化して図示している。
【0134】
また、一対のカバー構成体11を互いに組み付けた状態において、該一対のカバー構成体11の夫々の連通部14は、上述したように、周方向にずれて互いに軸方向Daに非連続となるため(
図2、
図4(a)(b)参照)、該連通部14を通じて内部空間10sに収容した接続部7が意に反して外側へ抜け出すことがない。
【0135】
上述した本実施形態のジョイントカバー10は、
図8(a)に示すように、複数の電線3,4を接続部材としてのスプライス端子6で接続した接続部7を有する接続電線5の少なくとも接続部7を内部に収容するジョイントカバーであって、
図2、
図3、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)、
図6(a)(b)(c)に示すように、電線3,4の長手方向Yに沿った軸方向Daにおいて互いに嵌合する一対のカバー構成体11を有し、カバー構成体11は、電線3,4を周方向Dcに取り囲むように軸方向Daに沿って延びる周壁部12と、周壁部12よりも軸方向Daの先端側Dacにおいて他のカバー構成体11の先端側Dacに設けられた嵌合部13と嵌合する嵌合部13とが備えられ、カバー構成体11に対して径方向Drの外側から内側(片側内部空間11s)へ電線3,4を差し込み可能に該外側と該内側とを径方向Drに連通する連通部14が、カバー構成体11の軸方向Daの全長に亘って形成されている。
【0136】
前記構成によれば、該電線3,4を連通部14を通じてカバー構成体11の片側内部空間11sにおいて差し込むことができる。
【0137】
従って、一対のカバー構成体11を、複数の電線3,4が接続部7において接続された接続電線5に対して後付けできるとともに、該接続部7を、互いに嵌合した状態の一対のカバー構成体11の内部に収容した状態で保護することができる。
【0138】
また、
図2、
図4(a)(b)に示すように、カバー構成体11は、連通部14の間隔dが少なくとも電線3,4の外径より狭い間隔dで軸方向Daに沿って形成されるとともに、連通部14の間隔dが少なくとも電線3,4の外径よりも周方向Dcに広がるまで弾性変形可能に形成されている(
図7(b)参照)。
【0139】
前記構成によれば、カバー構成体11を弾性変形させることで連通部14の間隔dを周方向Dcに広げることができるため、該連通部14を通じて電線3,4をカバー構成体11の径方向Drの内側に容易に差し込むことができる。
【0140】
なお、カバー構成体11が弾性変形していない通常時においては、連通部14は、周方向Dcにおいて略閉塞された状態で軸方向Daに沿って形成されているため、連通部14を通じてジョイントカバー10の内部空間10sにごみや水等の異物が侵入することを抑制できる。
【0141】
また、
図2、
図4(a)(b)、
図6(a)に示すように、一対のカバー構成体11は、夫々の連通部14が周方向Dcにおいて互いに一致しない状態で夫々の嵌合部13を互いに嵌合する構成としている。
【0142】
すなわち、一対のカバー構成体11は、夫々の嵌合部13を互いに嵌合した状態において、夫々に形成された連通部14が軸方向Daにおいて非連続な状態とすることができる。
【0143】
従って、一対のカバー構成体11は、互いに嵌合する前の状態において、連通部14を通じて片側内部空間11sに差し込んだ接続部7が、互いに嵌合した状態において、意に反して径方向Drの外側へ抜け出さないように内部空間10sに収容された状態に確実に保つことができる。
【0144】
また、
図3、
図4(b)、
図5(b)、
図6(a)(c)に示すように、カバー構成体11の片側内部空間11sに、軸方向Daにおける先端側Dacにおいて接続部7を軸方向Daに位置規制する規制部26が設けられている。
【0145】
前記構成によれば、互いに嵌合した状態(組付けた状態)の一対のカバー構成体11の内部空間10sにおいて、スプライス端子6を、軸方向Daの中央側に配置した状態に規制部26によって規制することができる(
図8(a)参照)。
【0146】
これにより、接続部7の位置に対して一対のカバー構成体11が、接続電線5の長手方向Yにおいて位置ずれすることなく、接続部7を一対のカバー構成体11の内部空間10sに安定して収容することができる。
【0147】
さらに、互いに嵌合した状態の一対のカバー構成体11の内部空間10sにおいて、上述したように、接続部7が常時、軸方向Daの中央に配置された状態に規制部26によって規制することができる。このため、作業者は、接続部7が一対のカバー構成体11に覆われることにより、該接続部7を一対のカバー構成体11の外側から直接目視できなくとも、一対のカバー構成体11の内部空間10sにおける接続部7の軸方向Daの位置を認識することができる。
【0148】
すなわち、例えば、作業者は、一対のカバー構成体11の内部空間10sに接続部7が収容された状態のままでも、枝線4の長手方向Yの両端の接続部7同士の間隔L(
図1参照)を正確に把握することができる。
【0149】
従って、作業者は、
図1に示すように、電線3,4の長手方向Yにおいて離間して配置される接続部7同士の間隔Lの管理を正確かつ容易に行うことができる。
【0150】
また、
図2、
図3、
図4(a)、
図5(a)(b)、
図6(a)(c)に示すように、一対の嵌合部13の夫々は、軸方向Daにおける、基端側Dao(周壁部12の側)へ凹状となる凹部22と、先端側へ凸状となる凸部21とが周方向Dcに沿って交互に複数配置されるとともに、凹部22と凸部21とは、一対の嵌合部13の夫々の間において互いに嵌合する凹凸嵌合部である。
【0151】
前記構成によれば、一対のカバー構成体11のうち、一方のカバー構成体11Aの嵌合部13に設けられた複数の凹部22と、他方のカバー構成体11Bの嵌合部13に設けられた複数の凸部21とを互いに嵌合させることができる。
【0152】
さらに、一方のカバー構成体11Aの嵌合部13に設けられた複数の凸部21と、他方のカバー構成体11Bの嵌合部13に設けられた複数の凹部22とを互いに嵌合させることができる。
【0153】
これにより、一対のカバー構成体11を強固に嵌合することができる。
【0154】
また、
図2、
図3、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)に示すように、一対のカバー構成体11の夫々の周壁部12における、連通部14の軸方向Daの先端側Dacの端部14aは、共に、夫々に対応するカバー構成体11の周方向Dcにおける凹部22と凸部21とのうち、凹部22(所定の凹部22A)の側に形成されている。
【0155】
前記構成によれば、一対のカバー構成体11の夫々について、連通部14の軸方向Daの先端側Dacの端部14aが、カバー構成体11の周方向Dcにおける凹部22(所定の凹部22A)と一致する部位に形成された構成とすることができる。
【0156】
これにより、本実施形態のジョイントカバー10は、一対のカバー構成体11の夫々の凹部22と凸部21とを嵌合させた状態において、該一対のカバー構成体11の夫々の連通部14の端部14aが、周方向Dcに確実に一致しない構成とすることができる。
【0157】
すなわち、一対のカバー構成体11の嵌合状態において、連通部14は、一対のカバー構成体11の軸方向Daの全長に亘って非連続となり、ジョイントカバー10の内部空間10sに収容した接続部7が連通部14を通じて径外側へ不用意に脱出することを確実に防ぐことができる。
【0158】
さらに、前記構成によれば、カバー構成体11の軸方向Daの全長に亘って延びる連通部14の一部を、凹部22(所定の凹部22A)によって賄うことができるため、連通部14の軸方向Daの長さを、凹部22の深さ分だけ短くできる。
【0159】
従って、電線3,4を連通部14を通じてカバー構成体11の片側内部空間11sへ容易に差し込むことができる。
【0160】
加えて、上述したように、カバー構成体11の軸方向Daの全長に亘って延びる連通部14の一部を、凹部22によって賄うことができるため、連通部14の軸方向Daの凹部22に相当する部位と、凹部22との双方を形成する場合と比してカバー構成体11の剛性(形状保持性)を高めることができる。
従って、カバー構成体11の内部に収容した接続部7の、カバー構成体11による保護性能を高めることができる。
【0161】
また、
図3、
図4(b)、
図5(b)、
図6(a)に示すように、本実施形態のジョイントカバー10は、凹部22の根元部分に、径方向Drの内側に向かって凹む内側薄肉部221が設けられ、凸部21の先端部に、径方向Drの外側に向かって凹む外側薄肉部211が設けられている。
【0162】
前記構成によれば、凸部21と凹部22とが周方向Dcに嵌合することに加え、内側薄肉部221と外側薄肉部211との夫々が径方向Dr(板厚方向)に重合するため、凸部21と凹部22とをより強固に嵌合することができる。
【0163】
また、
図2、
図3、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)、
図6(a)(b)(c)に示すように、一対のカバー構成体11は、互いに同一形状である。
【0164】
前記構成によれば、本実施形態のジョイントカバー10を2部材からなる一対のカバー構成体11で構成しながらも、該一対のカバー構成体11を一種類の形態で形成することができる。このため、本実施形態のジョイントカバー10の部品点数(部品の種類)を削減できるため、カバー構成体11を複数個用意する場合においても、部品管理の手間を簡略化できるとともに製造コストを削減することができる。
【0165】
さらに、複数個用意されたカバー構成体11の中から選択される一対のカバー構成体11の組み合わせを一義的に決定することができる。
【0166】
このため、例えば、現場において作業者が一対のカバー構成体11を誤った組み合わせで組付けようと(嵌合しようと)するおそれがなく、常に適切な組み合わせで組み付けることができる。
従って、一対のカバー構成体11の組み付け作業効率を高めることができる。
【0167】
また、
図3、
図5(a)(b)に示すように、カバー構成体11は、軸方向Daの先端側Dacへ向けて、周方向Dcの略全体に亘って徐々に径大となる略釣り鐘形状に形成されている。
【0168】
前記構成によれば、
図2、
図4(a)(b)に示すように、一対のカバー構成体11は、互いに組み付けた状態において、軸方向Daの両側から中央部(先端側Dac)に向けて徐々に径大となる略長球形状(「略長楕円体長球形状」、又は「所謂卵型形状」とも称する。)とすることができる。
【0169】
従って、一対のカバー構成体11は、互いに組み付けた状態において、軸方向Daおよび周方向Dcにおいて、角部が極力抑制された滑らかな形状とすることができる。
【0170】
従って、例えば、車両の振動等により、接続電線5の接続部7を外側から覆う本実施形態のジョイントカバー10が、周辺に存在する電線3A(
図1参照)やコルゲートチューブ9(外装部材)(
図1参照)等の部品に接触しても、局所的に外力が作用することを抑制でき、結果として周辺の部品が破損することを防ぐことができる。
【0171】
また、本実施形態のジョイントカバー10は、軸方向Daの両側よりも中央部が径大となるため、内部空間10sに接続部7をしっかりと収容することができる。
【0172】
本実施形態のワイヤハーネス1は、
図1に示すように、複数の電線3,4をスプライス端子6で接続した接続部7を有する接続電線5(
図7(a)参照)の少なくとも接続部7を、ジョイントカバー10の内部空間10sに収容したジョイント電線5’(
図1、
図8(a)参照)と、他の電線3Aとを束ねて構成されている。
【0173】
前記構成によれば、複数の電線3,4を接続部7で接続した状態からでも接続部7を内部空間10sに収容した状態で一対のカバー構成体11を互いに嵌合することができる。さらに、接続電線5の接続部7が連通部14を通じて径方向Drの外側へ意に反して抜け出さないように該接続部7を一対のカバー構成体11の内部空間10sに収容した状態に保つことができる。
【0174】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【0175】
上述した実施形態の変形例1として、例えば、
図9(a)(b)に示すように、複数の凸部21の夫々には、係合部31が設けられるとともに、複数の凹部22(凹部22の縁部)の夫々には、被係合部32が設けられた構成を採用してもよい。
【0176】
具体的に、変形例1に係るジョイントカバー10Aは、係合部31が、凸部21(外側薄肉部211)の軸方向Daの先端部の径内面211aから径内側へ突出形成されるとともに、被係合部32が、凹部22(内側薄肉部221)の軸方向Daの基端部の径外面221aから径内側へ凹状に形成されている。
【0177】
一対の嵌合部13の嵌合状態において、すなわち、凸部21が凹部22に差し込まれた状態において、径内側へ凹状の被係合部32に径外側へ凸状の係合部31が嵌り込むように互いに係合し、結果として、凸部21が凹部22に対して意に反して抜け難くすることができる。
【0178】
ここで、上述した変形例1において、図示省略するが、係合部31は、凸部21(外側薄肉部211)に形成されるとともに、被係合部32は、凹部22(内側薄肉部221)に形成された構成を採用したが、この構成に限定せず、図示省略するが、係合部31は、凹部22(内側薄肉部221)に形成されるとともに、被係合部32は、凸部21(外側薄肉部211)に形成された構成を採用してもよい。
【0179】
また、係合部31は、凸部21における外側薄肉部211の先端部に設けられた構成に限らず、被係合部32と係合可能な構成であれば、外側薄肉部211における先端部以外の部位に設けられた構成を採用してもよい。
【0180】
同様に、被係合部32は、凹部22の縁部における内側薄肉部221の根元側の縁部22aに設けられた構成に限らず、係合部31と係合可能な構成であれば、内側薄肉部221における根元側の縁部22a以外の部位に設けられた構成を採用してもよい。
【0181】
また、
図10に示す変形例2に係るジョイントカバー10Bのように、連通部14Aは、カバー構成体11を弾性変形させていない通常時において、電線3,4の外径よりも広い周方向Dcの間隔d’を有するように該カバー構成体11の軸方向Daの全長に亘って形成された構成を採用してもよい。
【0182】
前記構成によれば、一対のカバー構成体11を互いに組み付け前の状態において、例えば、カバー構成体11を弾性変形させる等して連通部14Aの周方向Dcの間隔d’を広げることなく、電線3,4を連通部14Aを通じてカバー構成体11の片側内部空間11sに容易に差し込むことができる。
【0183】
その一方で、一対のカバー構成体11は、上述したように、嵌合状態においては、夫々に形成された連通部14Aが軸方向Daにおいて非連続な状態とすることができるため、絶縁テープ等で連通部14Aを塞がずとも、該連通部14Aを通じて内部空間10sに差し込んだ接続部7が意に反して径方向Drの外側へ抜け出さないように収容した状態に確実に保つことができる。
【0184】
なお、ジョイントカバー10Bに備えた一対のカバー構成体11は、連通部14Aの間隔d’を広げるために弾性変形可能に形成されたものである必要がないことから、上述した実施形態におけるカバー構成体11と比して弾性がより低い(弾性変形がよりし難い)材質で形成された構成を採用してもよい。
【0185】
また、本発明のジョイントカバーに備えた凸部と凹部とは、上述した実施形態のジョイントカバー10に備えた凸部21と凹部22のように、軸方向に直線状に形成された構成に限定せず、
図11(a)(b)に示した変形例3に係るジョイントカバー10Cに備えた凸部21’と凹部22’のように形成された構成を採用してもよい。
【0186】
詳しくは、
図11(a)(b)に示すように、変形例3に係るジョイントカバー10Cに備えた凸部21’と凹部22’は、軸方向Daの先端側Dacに延びるに従って周方向Dcに曲がる曲げ形状で形成されている。
【0187】
より詳しくは、凸部21’と凹部22’は、カバー構成体11の嵌合部13において、該嵌合部13の中心軸回りに螺旋状に延びている。
【0188】
前記構成によれば、一対のカバー構成体11を互いに嵌合する(組み付ける)際には、該一対のカバー構成体11を例えば、周方向Dcに相反する方向へ捩りながら凹部22に対して、凸部21を軸方向Daの先端側Dacへ押し込むだけでよいため、容易に嵌合させることができる。
【0189】
一方、前記構成によれば、一対のカバー構成体11の互いの嵌合状態を解除する際には、捩り力(カバー構成体11の中心軸回りの回転方向の力)が必要となるため、凸部21が凹部22に対して意に反して抜けないように、軸方向Daに加えて周方向Dcにおいても強固に嵌合させることができる。
【0190】
また、本発明は、上述した実施形態のように、凹部の根元部分に内側薄肉部221が設けられるとともに、凸部の先端部に外側薄肉部211が設けられた構成であることに限定せず、図示省略するが、凹部の根元部分に外側薄肉部が設けられるとともに、凸部の先端部に内側薄肉部が設けられた構成を採用してもよい。
【0191】
また、本発明は、上述した実施形態のように、一対のカバー構成体11の夫々の周壁部12における、連通部14の軸方向Daの先端側Dacの端部14aが、共に、夫々に対応するカバー構成体11の周方向Dcにおける凹部22(所定の凹部22A)の側に形成され構成に限らず、図示省略するが、凸部21の側に形成され構成を採用してもよい。
【0192】
この構成においても、本実施形態のジョイントカバー10は、一対のカバー構成体11の夫々の凹部22と凸部21とを嵌合させた状態において、該一対のカバー構成体11の夫々の連通部14の端部14aが、周方向Dcに確実に一致しない構成とすることができる。
【符号の説明】
【0193】
1…ワイヤハーネス
3,4…複数の電線
3A…他の電線
5…接続電線
5’…ジョイント電線
6…スプライス端子
7…接続部
10,10A,10B,10C…ジョイントカバー
10s…内部空間(ジョイントカバーの内部)
11…一対のカバー構成体
11s…片側内部空間(カバー構成体の内部)
12…周壁部
13…嵌合部
14…連通部
22,22’…凹部
21,21’…凸部
26…規制部
31…係合部
32…被係合部
211…外側薄肉部
221…内側薄肉部
d,d’…連通部の間隔
Y…電線の長手方向
Da…軸方向
Dac…軸方向の先端側
Dr…径方向