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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】接地構造体、及びワイヤーハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/64 20060101AFI20240924BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H01R4/64 A
H01B7/00 301
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021036335
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136631
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】石橋 慎一
(72)【発明者】
【氏名】榊 直哉
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 正則
(72)【発明者】
【氏名】井上 郁哉
(72)【発明者】
【氏名】三吉 隆宜
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 辰哉
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-164700(JP,A)
【文献】特開2000-166074(JP,A)
【文献】特開2003-110277(JP,A)
【文献】実開昭52-085184(JP,U)
【文献】特開2016-219232(JP,A)
【文献】特開2020-053478(JP,A)
【文献】特開2011-253776(JP,A)
【文献】特開2018-129282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/64
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する筒状体に電気的に接続される第1可撓性導電部材と、
前記第1可撓性導電部材と異なる第2可撓性導電部材と、
前記第1可撓性導電部材と前記第2可撓性導電部材を接続する、導電性を有する端子とが備えられ、
前記第1可撓性導電部材は、前記筒状体を挿通し、さらに延びる電線の少なくとも一部が挿通される、金属素線を編んで形成した筒状の編組部材であり、
前記第2可撓性導電部材は、前記第1可撓性導電部材及び接地回路に接続され、
編組部材である前記第1可撓性導電部材において、前記端子が接続される接続箇所は、前記筒状体に接続される側に向かって折り返され、
前記端子に、前記第1可撓性導電部材に接続する編組接続部が備えられ、
前記編組接続部には、前記編組接続部に、前記第1可撓性導電部材に向けて突出するとともに、前記端子と前記第1可撓性導電部材とを電気的に接続する一対の接続片が複数形成されており、
前記端子は、前記第1可撓性導電部材を前記筒状体に接続される側に向けて折り返して重ね合わされた重ね合わせ部に前記接続片を把持させて、前記重ね合わせ部における周方向の一部に接続された
接地構造体。
【請求項2】
前記第2可撓性導電部材は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線である
請求項1に記載の接地構造体。
【請求項3】
前記第1可撓性導電部材において前記第2可撓性導電部材が接続される端部の接続箇所は、前記金属素線の編組が解れている
請求項1又は請求項2に記載の接地構造体。
【請求項4】
導電性を有する筒状体と、
前記筒状体に電気的に接続される筒状の第1可撓性導電部材と、
前記第1可撓性導電部材と異なる第2可撓性導電部材と、
前記第1可撓性導電部材と前記第2可撓性導電部材を接続する、導電性を有する端子と、
前記筒状体に挿通されるとともに、前記第1可撓性導電部材の少なくとも一部に挿通される電線とが備えられ、
前記第2可撓性導電部材は、前記第1可撓性導電部材及び接地回路に接続され、
前記第1可撓性導電部材は、前記電線の少なくとも一部が挿通される、金属素線を編んで形成した筒状の編組部材であり、
前記第1可撓性導電部材において、前記端子が接続される接続箇所は、前記筒状体に接続される側に向かって折り返され、
前記端子に、前記第1可撓性導電部材に接続する編組接続部が備えられ、
前記編組接続部には、前記編組接続部に、前記第1可撓性導電部材に向けて突出するとともに、前記端子と前記第1可撓性導電部材とを電気的に接続する一対の接続片が複数形成されており、
前記端子は、前記第1可撓性導電部材を前記筒状体に接続される側に向けて折り返して重ね合わされた重ね合わせ部に前記接続片を把持させることで、前記重ね合わせ部における周方向の一部に接続された
ワイヤーハーネス。
【請求項5】
前記第1可撓性導電部材が、
記筒状体と接続する側と反対側の端部から前記編組部材における長手方向の途中部分まで連通する開口が設けられ、
前記第1可撓性導電部材の内部に挿通された前記電線が、前記開口を介して前記第1可撓性導電部材の外部に引き出された
請求項4に記載のワイヤーハーネス。
【請求項6】
前記第1可撓性導電部材において前記第2可撓性導電部材が接続される端部の接続箇所及び前記開口の少なくとも一方は、前記金属素線の編組が解れて形成された
請求項5に記載のワイヤーハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、電線が挿通された導電性を有する筒状体を接地回路に接続するための接地構造体、及び、接地回路に接続できるワイヤーハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
外部から放射される電磁波から電線を保護するため、導電性を有する筒状体に電線を挿通させていることがある。この筒状体の端部から延出する電線を保護するため、例えば、導電性の金属素線を編んだ編組で筒状体の端部から延出する電線を覆うとともに、筒状体及び編組に生じたノイズを除去するため、編組の端部に接地用の端子を付けた接地構造体が特許文献1に開示されている。
【0003】
詳述すると、特許文献1の接地構造体は、導電性の金属素線を袋状に編んだ編組の一端側に設けられた開口部を筒状体の他端側に接続するとともに、編組の他端側に接地用の接地端子が組み付けられている。また、袋状の編組の一部に対してドライバなどで設けられた開口から、筒状体の内部を挿通する電線の一部が引き出されている。
【0004】
このように構成された接地構造体では、電線に放射される電磁波を筒状体及び編組で遮断できるとともに、放射された電磁波により筒状体及び編組に生じたノイズを、接地端子を介して接地回路に逃がすことができるとされている。
【0005】
しかしながら、接地端子を接続するための接地箇所の環境は、接地箇所の周辺の空間や形状、周辺機器に対する電磁波の影響など様々な要素がある。このため、筒状体と接地箇所までが編組で一様に構成された特許文献1の接地構造体では、接地箇所における接地環境の要求を十分に満たせないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5473117号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述の問題に鑑み、接地環境の要求を満たすことができる接地構造体及びワイヤーハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、 導電性を有する筒状体に電気的に接続される第1可撓性導電部材と、前記第1可撓性導電部材と異なる第2可撓性導電部材と、前記第1可撓性導電部材と前記第2可撓性導電部材を接続する、導電性を有する端子とが備えられ、前記第1可撓性導電部材は、前記筒状体を挿通し、さらに延びる電線の少なくとも一部が挿通される、金属素線を編んで形成した筒状の編組部材であり、前記第2可撓性導電部材は、前記第1可撓性導電部材及び接地回路に接続され、編組部材である前記第1可撓性導電部材において、前記端子が接続される接続箇所は、前記筒状体に接続される側に向かって折り返され、前記端子に、前記第1可撓性導電部材に接続する編組接続部が備えられ、前記編組接続部には、編組接続部に、前記第1可撓性導電部材に向けて突出するとともに、前記端子と前記第1可撓性導電部材とを電気的に接続する一対の接続片が複数形成されており、前記端子は、前記第1可撓性導電部材を前記筒状体に接続される側に向けて折り返して重ね合わされた重ね合わせ部に前記接続片を把持させて、前記重ね合わせ部における周方向の一部に接続された接地構造体であることを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、導電性を有する筒状体と、前記筒状体に電気的に接続される筒状の第1可撓性導電部材と、前記第1可撓性導電部材と異なる第2可撓性導電部材と、前記第1可撓性導電部材と前記第2可撓性導電部材を接続する、導電性を有する端子と、前記筒状体に挿通されるとともに、前記第1可撓性導電部材の少なくとも一部に挿通される電線とが備えられ、前記第2可撓性導電部材は、前記第1可撓性導電部材及び接地回路に接続され、前記第1可撓性導電部材は、前記電線の少なくとも一部が挿通される、金属素線を編んで形成した筒状の編組部材であり、前記第1可撓性導電部材において、前記端子が接続される接続箇所は、前記筒状体に接続される側に向かって折り返され、前記端子に、前記第1可撓性導電部材に接続する編組接続部が備えられ、前記編組接続部には、編組接続部に、前記第1可撓性導電部材に向けて突出するとともに、前記端子と前記第1可撓性導電部材とを電気的に接続する一対の接続片が複数形成されており、前記端子は、前記第1可撓性導電部材を前記筒状体に接続される側に向けて折り返して重ね合わされた重ね合わせ部に前記接続片を把持させることで、前記重ね合わせ部における周方向の一部に接続されたワイヤーハーネスであることを特徴とする。
【0010】
前記筒状体は、導電性を有していれば、特に限定されず、例えば、金属製のパイプや、可撓性及び導電性を有するシールドコルゲートチューブなどであってもよい。
【0011】
また、前記第1可撓性導電部材とは、可撓性及び導電性を有していれば、特に限定されず、例えば、導電性を有する金属素線を編み込んだ編組や、導電性を有するシールドコルゲートチューブなどを含む。
【0012】
前記第2可撓性導電部材は、可撓性及び導電性を有していれば、特に限定されず、例えば、導電性を有する芯線を絶縁性樹脂で被覆した被覆電線や、導電性を有する金属素線を編み込んだ編組などを含む。
【0013】
また、上述の前記第1可撓性導電部材と異なる第2可撓性導電部材とは、前記第1可撓性導電部材と物理的な構造が異なる場合の他、物理的な構造が同じであるが例えば金属種が異なるなど要素が異なる場合も含む。具体的には、前記第1可撓性導電部材が編組で構成され、前記第2可撓性導電部材が被覆電線で構成されている場合のように物理的な構造が異なる場合や、前記第1可撓性導電部材がアルミニウム製の編組で構成され、前記第2可撓性導電部材が銅製の編組で構成されるなどのように物理的な構造が同じで金属種の異なる場合を含む。
【0014】
上述の前記筒状体に接続される側に向かって折り返されとは、一回折り返すことにより第2可撓性導電部材が二重となる場合のみならず、第2可撓性導電部材が複数重なり合うように複数回折り返す場合を含む。なお、第2可撓性導電部材における端部を折り返す場合のみならず、第2可撓性導電部材の中央部分など、端部以外を折り返す場合を含む。
【0015】
この発明により、接地環境に応じて第1可撓性導電部材及び第2可撓性導電部材を選択することができるため、接地環境の要求を満たすことができる。
【0016】
具体的に説明すると、第1可撓性導電部材を軽量なアルミ素線を編んだ編組とし、第2可撓性導電部材を導電性の高い銅素線を編んだ編組とする。これにより、同じ伝導率を確保しながら第2可撓性導電部材を第1可撓性導電部材に比べて縮径でき、接地回路に接続する接地箇所の周辺における空間が狭い場合であっても、確実に筒状体及び第1可撓性導電部材に生じたノイズを接地回路に逃がすことができる。また、この場合には、ワイヤーハーネス全体として軽量化も図ることができる。
【0017】
また、第1可撓性導電部材の近傍に他の部材が配置されており、第1可撓性導電部材と干渉するおそれがある場合などには、第1可撓性導電部材を挿通する電線を確実に保護する必要がある。例えば、第1可撓性導電部材をコルゲートチューブとし、第2可撓性導電部材を編組としたり、第1可撓性導電部材を編組の周囲にビニールシートで覆い、第2可撓性導電部材を他の構成の編組としたりすることで、電線を保護しつつ、筒状体及び第1可撓性導電部材に生じたノイズを接地回路に逃がすことができる。
【0018】
なお、この明細書における接地環境とは、接地回路に接続する第2可撓性導電部材の配置空間や、筒状体を挿通する電線に対する保護性能、電線の電磁波に対するシールド性能や筒状体と接続される第1可撓性導電部材及び第2可撓性導電部材の重量、車両などのようなワイヤーハーネスを取り付ける取付対象の全体の重量、あるいは製造にかかるコストなどを含む。
【0019】
さらにまた、第1可撓性導電部材及び第2可撓性導電部材はともに可撓性を有するため、接地箇所の空間に応じて変形させることができる。このため、第2可撓性導電部材を接地回路に接続させる場合や接続させた状態において、第2可撓性導電部材に張力が作用して所定の方向に引っ張られたとしても、第1可撓性導電部材は第2可撓性導電部材に追従して変形できる。したがって、第1可撓性導電部材の内部を挿通する電線に過度の負荷がかかることを抑制できる。
【0020】
このように、シールド性能、保護性能、重量、接地箇所の空間、コストなどの接地箇所や接地状況などの接地環境に応じた第1可撓性導電部材及び第2可撓性導電部材とすることで、接地環境の要求を満たしながら、筒状体及び第1可撓性導電部材に生じたノイズを逃がすことができる。
【0021】
また前記第1可撓性導電部材が、金属素線を編んで形成した筒状の編組部材であることにより、第1可撓性導電部材が十分な可撓性を備えるため、第2可撓性導電部材を接地回路に接地した場合であっても、第1可撓性導電部材にかかる負荷を軽減できる。
【0022】
さらにまた、第1可撓性導電部材での放熱性が向上するため、筒状体を挿通する電線が高圧電線であった場合でも、電線から生じる熱を外部に放出でき、筒状体及び第1可撓性導電部材に蓄積される熱から電線を保護することができる。
【0023】
また、前記第1可撓性導電部材において前記第2可撓性導電部材が接続される接続箇所は、前記筒状体に接続される側に向かって折り返されている。
これにより、第1可撓性導電部材における第2可撓性導電部材を接続する接続箇所を少なくとも二重にできるため、接続箇所の厚みを増加させ、剛性を向上させることができる。これにより、第1可撓性導電部材と第2可撓性導電部材との接続強度を向上させることができる。したがって、振動などによる第2可撓性導電部材の脱落や導電性低下などを抑制できる。また、十分な剛性があるため接続箇所をテープ巻きすることもでき、振動などによる第2可撓性導電部材の離脱をより防止できる。
【0024】
この発明の態様として、前記第2可撓性導電部材は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線であってもよい。
この発明によると、第2可撓性導電部材を第1可撓性導電部材よりも縮径できるとともに、軽量化を図ることができる。また、既製品を用いることで汎用性の向上やコストを削減でき、さらには接地環境に応じて適した被覆電線(例えば銅電線やアルミ電線など)を選択できる。したがって、接地環境の要求をより満たすことができる。
【0025】
加えて、第2可撓性導電部材に対して、追加の絶縁処理や外装部材による保護も必要ないため、第1可撓性導電部材に第2可撓性導電部材を接続させる作業の作業効率を向上できるとともに、部品点数を削減できる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記第1可撓性導電部材において前記第2可撓性導電部材が接続される端部の接続箇所は、前記金属素線の編組が解れていてもよい。
上述の前記金属素線の編組が解れてとは、解かれた編組の端部がそのまま放置されている場合や、一部を切断するなどの処理がされた場合を含む。具体例として、解した編組に第2可撓性導電部材を接続した場合に、第2可撓性導電部材の接続箇所に収納されない編組の端部を切断してもよい。
【0027】
この発明により、金属素線の編組が解れた箇所を電線の開口とすることができるため、開口を別に設けることなく容易に電線を引き出すことができる。また、開口を設けることによる編組の損傷を防止できるため、編組のシールド性能の低下を防止でき、電磁波を第2可撓性導電部材で遮断することができる。
【0028】
また、金属素線の編組が解れた箇所を、前記第2可撓性導電部材を接続する箇所とすることができる。これにより、別途接続箇所を設ける必要はなく、第1可撓性導電部材に第2可撓性導電部材を接続させる接続作業を簡素化できる。したがって、第1可撓性導電部材に第2可撓性導電部材を接続させるための作業効率を向上させることができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記第1可撓性導電部材と前記第2可撓性導電部材を接続する、導電性を有する端子が備えられてもよい。
この発明により、第1可撓性導電部材と第2可撓性導電部材との導電性を確実に確保できるため、ノイズを第1可撓性導電部材から第2可撓性導電部材へ確実に伝達して接地回路に逃がすことができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記第1可撓性導電部材が、金属素線を編んで形成した筒状の編組部材であるとともに、前記筒状体と接続する側と反対側の端部から前記編組部材における長手方向の途中部分まで連通する開口が設けられ、前記第1可撓性導電部材の内部に挿通された前記電線が、前記開口を介して前記第1可撓性導電部材の外部に引き出されてもよい。
上述の開口は、例えば金属素線を編んで形成された編組部材を解して形成される開口や、編組部材を切断して形成される開口を含む。
【0031】
この発明により、電線を所望の位置から引き出すことができるため、少なくとも一部が第1可撓性導電部材を挿通する電線を所望の位置で容易に引き出すことができるとともに、所望の方向に配索できる。これにより、電線と開口とが過度に干渉することを防止できるため、第1可撓性導電部材の損傷を防止し、第1可撓性導電部材のシールド性能の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0032】
この発明により、接地環境の要求を満たすことができる接地構造体及びワイヤーハーネスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ワイヤーハーネスの概略断面図。
図2】ピアス端子の概略斜視図。
図3】ワイヤーハーネスの製造方法の概略断面図。
図4】ワイヤーハーネスを接地させた状態の概略断面図。
図5】他の実施形態であるワイヤーハーネスの概略図。
図6】他の実施形態であるワイヤーハーネスの概略図。
図7】他の実施形態であるワイヤーハーネスの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の一実施態を以下図面とともに説明する。
図1はワイヤーハーネス1の概略断面図を示し、図2は編組線30に対して接続される接地接続部40の概略斜視図を示し、図3はワイヤーハーネス1の製造方法を説明する概略断面図を示し、図4はワイヤーハーネス1を接地させた状態の一例の概略断面図で示す。
【0035】
図5はワイヤーハーネス1の他の実施形態を表す断面図を示し、図6及び図7はワイヤーハーネス1の他の実施形態、具体的には、筒状体20と編組線30と接地接続部40を他の構成としたワイヤーハーネス1の他の実施形態(ワイヤーハーネス1v,1w,1x,1y,1z)の断面図を示す。
【0036】
ワイヤーハーネス1は、図1に示すように、導電性を有する筒状体20に挿通させた高電圧用のワイヤーハーネスである電線10の一部を、接地構造体2に挿通された構成である。
接地構造体2には、筒状体20に電気的に接続するとともに、電線10に対する電磁波の放射及び放射を遮断する編組線30と、編組線30のノイズを接地回路に逃がす接地接続部40が備えられている。
【0037】
このワイヤーハーネス1及び接地構造体2について詳述する。
ワイヤーハーネス1は、上述のように、高電圧用のワイヤーハーネスである電線10と、電線10を挿通する筒状体20と、接地構造体2を備えている。また、接地構造体2は、導電性を有する筒状体20と電気的に接続された編組線30と、編組線30に接続された接地接続部40とを備えている。
【0038】
電線10は、高電圧用のワイヤーハーネスであって、導電性を有する複数の芯線を束ねて構成された導通用導体部11と、導通用導体部11の外周面を覆う絶縁性の導通用絶縁被覆部12とで構成されている。
【0039】
筒状体20は、内部に電線10を挿通できる程度の内径を有するアルミニウム製の筒状体であり、一定の剛性を有している。なお、本実施形態において、筒状体20はアルミニウム製であるが、導電性を有していれば、特に限定されず、鉄や銅、ステンレスなど配置箇所に応じた金属種を適宜選択してもよい。
【0040】
編組線30は、錫メッキした銅製の金属素線である金属素線30aを編んで形成した、可撓性を有する筒状の編組部材である。この編組線30の一端側(筒状体20に接続されている側)は、図示しない金属バンドを介して筒状体20と接続されている。一方、他端側(筒状体20に接続されていない側)は、編んだ金属素線30aを解いて形成された開口部31が備えられている。
【0041】
より具体的には、編組線30の他端側には、金属素線30aを解いて筒状に構成した編組線30の他端を一端側に折り返して構成された重ね合わせ部32が設けられている。この編組線30の他端を折り返した筒状の重ね合わせ部32により、開口部31は形成されている。
なお、本実施形態において、編組線30は、一般的に用いられる錫メッキ銅線で構成されているが、アルミ線など他の金属素線で構成されていてもよい。
【0042】
このように金属素線30aを解いた編組線30の端部を重ね合わせた重ね合わせ部32は、編組線30の他の箇所よりも剛性が高く構成されている。また、編組線30の端部を折り返されていることから、解かれた金属素線30aに意図せぬ外力が作用することにより編組線30の他端がさらに解かれることを防止できる。
なお、本実施形態において、重ね合わせ部32は、編組線30を解いた後に形成される必要はなく、編まれたままの編組線30の端部側がそのまま折り返されて形成されていてもよい。
【0043】
接地接続部40は、図1及び図2に示すように、接地回路にノイズを伝達する接地用被覆電線50と、一端側において編組線30と接地用被覆電線50とを接続するジョイント端子60と、接地用被覆電線50を接地回路に接続するための接地端子70とで構成されている。
【0044】
接地用被覆電線50は、可撓性を有する一般的な銅電線であり、導電性を有する複数の銅製の芯線を束ねて構成された接地用導体部51と、接地用導体部51の外周面を覆う絶縁性の接地用絶縁被覆部52とで構成されている。この接地用被覆電線50の両端部分は、接地用絶縁被覆部52を一部剥いであり、接地用導体部51が露出している。このように構成された接地用被覆電線50は、編組線30に比べて外径がはるかに小さく構成され、また編組線30に比べて軽量に構成されている。
なお、接地用被覆電線50は、可撓性を有する一般的な銅電線としているが、これに限定されず、例えばアルミ電線など他の電線であってもよい。
【0045】
なお、この接地用被覆電線50は、導電性及び可撓性を有することで、筒状体20及び編組線30に生じたノイズを逃がすことができれば特に電線の種類を限定されず、必要に応じて適宜選択することができる。すなわち、接地用被覆電線50は、本実施形態のように、導体が銅製の銅電線の他、導体がアルミ製のアルミ電線などでもよい。
【0046】
ジョイント端子60は、導電性を有する金属製の端子であって、編組線30と接地用被覆電線50とを接続する端子であれば特にその構成は限定されない。
例えば、ジョイント端子60は、重ね合わせ部32に接続する編組接続部61と、接地用導体部51と圧着接続する編組側導体圧着部62と、接地用絶縁被覆部52を圧着する編組側被覆圧着部63とで一体構成されている。なお、編組接続部61、編組側導体圧着部62、編組側被覆圧着部63は、電線10の挿通方向に沿って一端側から他端側にこの順で並んで配置されている。
【0047】
編組接続部61には、一方側に向けて突出する一対の接続片61aが複数形成されており、重ね合わせ部32を接続片61aの突出部分の内側に当接させ、接続片61aを内側に折り曲げてかしめられている。このように構成された編組接続部61は、接続片61aで重ね合わせ部32を把持し、ジョイント端子60と編組線30とを電気的に接続している。
【0048】
編組側導体圧着部62は、いわゆるオープンバレルであって、接地用導体部51が圧着接続されている。これにより、接地用被覆電線50とジョイント端子60とは電気的に接続されている。
編組側被覆圧着部63は、編組側導体圧着部62と同様に、いわゆるオープンバレルであって、接地用絶縁被覆部52が圧着接続されている。
【0049】
なお、本実施形態において、端子の一例として上述のジョイント端子60をあげているが、この構成に限定されるものでなく、導電性を有する金属製の端子であればよい。例えば、重ね合わせ部32に対して突き刺した刃を折り曲げることで、編組線30と接地用被覆電線50とを接続する端子などを用いても構わない。
【0050】
接地端子70は、導電性を有する金属製の丸端子であって、接地用絶縁被覆部52を圧着する接地側被覆圧着部71と、接地用導体部51を圧着接続する接地側導体圧着部72と、接地回路における接地用のボルトBを挿通する接地接続部73とで一体構成されている。なお、接地側被覆圧着部71、接地側導体圧着部72、接地接続部73は、電線10の挿通方向に沿って一端側から他端側にこの順で並んで配置されている。
【0051】
接地側被覆圧着部71は、編組側被覆圧着部63と同様に構成されたオープンバレルであって、接地用被覆電線50の他端側の接地用絶縁被覆部52を圧着接続している。
接地側導体圧着部72は、編組側被覆圧着部63と同様に構成されたオープンバレルであって、接地用被覆電線50の他端側の接地用導体部51が圧着接続されている。これにより、接地用被覆電線50と接地端子70とは電気的に接続されている。
【0052】
接地接続部73は、平面視で円形状の平板で構成されており、中央部分に板厚方向に貫通した貫通孔731が設けられている。この貫通孔731に接地回路に設けられたボルトBが挿通可能に構成されているため、ナット締めにより接地回路と電気的に接続することができる(図4参照)。
【0053】
次に、このように構成されたワイヤーハーネス1の製造方法について、図3及び図4に基づき簡単に説明する。
はじめに、所望の長さで構成された接地用被覆電線50の一端側における接地用導体部51及び接地用絶縁被覆部52に対して、編組側導体圧着部62及び編組側被覆圧着部63を接続させる。また、接地用被覆電線50の他端側における接地用導体部51及び接地用絶縁被覆部52に対して接地側導体圧着部72及び接地側被覆圧着部71を接続させ、接地接続部40を準備する。
【0054】
次に、編組線30の他端側の編組を解し(図3(a)参照)、他端を一端側に向けて折り返して二重に重ね合わされた重ね合わせ部32を形成する。これにより、編組線30の他端側に円筒状に形成された筒状体20と挿通する開口部31が形成される(図3(b)参照)。
【0055】
なお、本実施形態では、重ね合わせ部32は、編組線30の他端を一度だけ折り返すことで、編組線30の他端を二重に重ね合わされているが、編組線30の他端を複数回折り返して重ね合わせても構わない。この場合、重ね合わせ部32の剛性をさらに向上させることができる。
【0056】
そして、接地用被覆電線50と接続されたジョイント端子60の接続片61aに、編組線30の端部を重ね合わせた重ね合わせ部32を当接させて、突出部分を内側に折り曲げてかしめることで、重ね合わせ部32に編組接続部61を接続する(図3(b)及び図3(c)参照)。そして、図示しないテープでジョイント端子60と重ね合わせ部32とをテープ止めする。これにより、接地構造体2を製造することができる。
【0057】
このようにして、編組線30と、接地接続部40とが接続された接地構造体2において、筒状体20の他端側の外周面に編組線30を被せた後、例えばバンド(図示省略)などで編組線30を筒状体20に接続固定する(図3(c)参照)。これにより、筒状体20と編組線30とが電気的に接続できる。
【0058】
そして、電線10を筒状体20の一端側から他端側に挿通させるとともに、筒状体20の他端側の端部からさらに延びる電線10を筒状の編組線30に挿通させて、開口部31から他端側に引き出す(図3(d)参照)。そして、電線10を所望の配索経路に配索するとともに、接地接続部40を接地回路に設けられたボルトBの方向に伸ばし、貫通孔731にボルトBを挿通させる。これにより、ワイヤーハーネス1における接地接続部40を接地回路に接続することができる(図4参照)。
【0059】
このように構成された接地構造体2は、導電性を有する筒状体20に電気的に接続される編組線30と、編組線30と異なる接地接続部40とが備えられている。そして、編組線30は、筒状体20を挿通し、さらに延びる電線10の少なくとも一部が挿通される筒状であり、接地接続部40を構成する接地用被覆電線50は、接地用導体部51を接地用絶縁被覆部52で被覆しており、編組線30及び接地回路に接続されている。
【0060】
またワイヤーハーネス1は、導電性を有する筒状体20と、筒状体20に電気的に接続される筒状の編組線30と、編組線30に電気的に接続されると異なる接地接続部40とが備えられている。また、ワイヤーハーネス1には、筒状体20に挿通されるとともに、編組線30の少なくとも一部に挿通される電線10が備えられている。そして、接地接続部40を構成する接地用被覆電線50は、接地用導体部51を接地用絶縁被覆部52で被覆しており、編組線30及び接地回路に接続されている。
【0061】
これにより、接地環境に応じた編組線30及び接地接続部40(接地用被覆電線50)を適宜選択することができるため、接地環境の要求を満たすことができる。
具体的には、編組線30と接続されている接地用被覆電線50は、編組線30よりも外径を小さくすることができるとともに、軽量であるため、他端側の縮径と軽量化を図ることができる。また、接地用被覆電線50を既製品とすることができるため、汎用性の向上やコストを削減でき、さらには接地環境に応じて適した接地用被覆電線50(例えば銅電線やアルミ電線など)を適宜選択することができる。したがって、接地環境の要求を満たすことができる。
【0062】
加えて、接地用被覆電線50は接地用導体部51の外周をあらかじめ接地用絶縁被覆部52で覆っているため、接地用被覆電線50に対する絶縁処理や外装部材による保護も必要ない。したがって、接地接続部40に対して編組線30を接続させる前に絶縁処理などが必要ないため、接地接続部40に対して編組線30を接続させる作業効率を向上できるとともに、部品点数の削減することができる。
【0063】
また、編組線30が、金属素線を編んで形成した筒状の編組部材で構成されていることにより、編組線30が十分な可撓性を備えている。このため、接地接続部40を接地回路に接地した場合であっても、編組線30にかかる負荷を軽減できる。
【0064】
さらにまた、編組線30及び接地用被覆電線50はともに可撓性を有するため、接地箇所の空間に応じて変形させることができる。具体的には、図4に示すように、電線10の延出方向とボルトBの位置が逆方向である場合、編組線30が電線10に引っ張られて電線10の延出方向に湾曲することとなる。しかしながら、編組線30及び接地用被覆電線50が可撓性を有するため、接地用被覆電線50をボルトB側に湾曲させることで、接地端子70とボルトBとを接続できる。また、接地用被覆電線50をボルトB側に湾曲することによる電線10及び編組線30に対する負荷を抑制できるとともに、電線10が開口部31と干渉することによる編組線30の他端が解れることを抑制できる。
【0065】
また、編組線30の隙間から放熱されるため、筒状体20を挿通する電線10が高電圧用のワイヤーハーネスである電線10から生じる熱を外部に放出できる。したがって、電線10を熱から保護することができる。
【0066】
また、金属素線30aの編組が解れた箇所を、編組線30を接続する箇所とすることができる。これにより、別途接続箇所を設ける必要はなく、編組線30に接地接続部40(ジョイント端子60)を接続させる接続作業を簡素化できる。したがって、筒状体20に編組線30を接続させるための作業効率を向上させることができる。
【0067】
また、編組線30において接地接続部40(ジョイント端子60)が接続される接続箇所は(を重ね合わせ部32)、筒状体20に接続される側に向かって折り返されている。これにより、編組線30における接地接続部40(ジョイント端子60)を接続する接続箇所を少なくとも二重にできるため、接続箇所の厚みを増加させることができる。
【0068】
したがって、編組線30における接地接続部40を接続する接続箇所の剛性を向上させることができ、編組線30と接地接続部40との接続強度を向上させることができる。また、振動などによる接地接続部40の脱落や導電性低下などを抑制でき、さらには接続箇所をテープ巻きにすることもできる。このため、振動などで接地接続部40が編組線30から離脱することをより防止できる。
【0069】
さらにまた、編組線30と接地接続部40を接続する、導電性を有するジョイント端子60が備えられている。これにより、編組線30と接地接続部40との導電性を確実に確保することができ、編組線30から接地接続部40へとノイズを確実に伝達し、接地回路に逃がすことができる。
【0070】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、筒状体は筒状体20に対応し、
第1可撓性導電部材は編組線30に対応し、
第2可撓性導電部材は接地接続部40(接地用被覆電線50)に対応し、
接地構造体は接地構造体2に対応し、
端子はジョイント端子60に対応し、
電線は電線10に対応し、
ワイヤーハーネスはワイヤーハーネス1に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0071】
以下の説明において、上述の実施形態(ワイヤーハーネス1)と同様の構成については同じ付番を付し、その説明を省略する。
例えば、本実施形態では、ジョイント端子60を重ね合わせ部32に接続しているが、必ずしも重ね合わせ部32を形成する必要はない。例えば、図5(a)に示すように、編組線30の端部において編組を解いた金属素線30aを束ねてジョイント端子60と接続してもよい。
【0072】
この場合、束ねられた金属素線30aは、電線10の挿通方向と直交する方向でまとめられる。すなわち、金属素線30aを解して形成される開口部31は、編組部材である編組線30の他端から編組線30における長手方向の途中部分まで連通することとなる。なお、ジョイント端子60における編組接続部61は、束ねた金属素線30aを圧着接続する圧着部端子であっても構わない。
【0073】
このように、図5(a)では、編組線30が、金属素線を編んで形成した筒状の編組部材であるとともに、筒状体20と接続する側と反対側の端部から編組部材における長手方向の途中部分まで連通する開口部31が設けられている。また、編組線30の内部に挿通された電線10が、開口部31を介して編組線30の外部に引き出されている。これにより、編組部材における長手方向の所望の位置に設けた開口部31から編組線30の内部に挿通された電線10を外部に容易に引き出すことができる。
【0074】
また、ワイヤーハーネス1と接続する箇所は金属素線30aを束ねて構成されているため、筒状の編組線30の端部に比べて可撓性が向上している。このため、ボルトBに対して接地端子70を容易に接続できるとともに、電線10及び接地接続部40とを異なる方向に引っ張った場合に、電線10及び編組線30、接地接続部40に対する負荷を軽減することができる。さらには、接地用被覆電線50を短くすることもできる。
【0075】
さらにまた、編組線30において接地接続部40が接続される端部の接続箇所は、金属素線30aの編組が解れていることにより、金属素線30aの編組が解れた箇所を電線10の開口部31とすることができる。これにより、金属素線30aの編組が解れた箇所を電線10の開口部31とすることができ、開口部31を別に設けることなく容易に電線10を引き出すことができる。また、編組線30の中央部分に開口部31を設けることによる損傷を防止できるため、編組のシールド性能の低下を防止できる。
【0076】
なお、編組接続部61と接続した金属素線30aのうち、接続箇所からはみ出ている部分については切断してもよい。これにより、接続箇所からはみ出した金属素線30aが他の部材などと接触し、筒状体20や編組線30に生じたノイズが意図しない箇所に流れることを防止できる。
【0077】
また、本実施形態では、編組線30の他端に重ね合わせ部32を形成しているが、必ずしも端部である必要はなく、例えば、図5(b)に示すように、中央部分に設けてもよい。これにより、編組線30における所望の位置に接地接続部40を接続することができる。さらには、接地接続部40の延出方向も、他端側に限定する必要はなく、一端側に延出してもよい。
【0078】
さらにまた、本実施形態において、筒状体20を金属製(アルミニウム製)のパイプとしているが、筒状体20は、導電性を有していれば、特に限定されない。そのため、例えば、他の金属種(銅など)で構成された金属製のパイプの他、可撓性及び導電性を有するシールドコルゲートチューブ80としてもよい(図6(a)参照)。
【0079】
また、本実施形態において、編組線30を錫メッキした銅製の金属線である金属素線30aを編んだ編組部材としているが、可撓性及び導電性を有していれば、特に限定されない。そのため、例えば、編組線30の代わりに導電性を有するシールドコルゲートチューブ80とする場合や(図6(b)参照)、第1可撓性導電部材に対応する編組線30と異なる金属種で構成された金属素線を編んだ編組部材としてもよい。
【0080】
さらにまた、本実施形態において、接地接続部40は可撓性及び導電性を有する接地用被覆電線50を備えているが、接地接続部40は可撓性及び導電性を有していればよく、接地用被覆電線50に限定されるわけではない。例えば、接地用被覆電線50の代わりに、導電性を有する金属素線を編んだ編組部材、フラットケーブル、扁平電線などとしてもよい。
【0081】
図6及び図7に示す他の実施形態について、より具体的に説明する。
図6(a)に示すワイヤーハーネス1v及び接地構造体2vでは、上述のように、編組線30の一端側が接続する筒状体20の代わりとして、長手方向に沿って凹凸形状を繰り返すシールドコルゲートチューブ80を筒状体として備えている。
【0082】
これにより、ワイヤーハーネス1vは上述のワイヤーハーネス1の効果に加えて、例えば電線10の一端側を湾曲したい場合に、電線10に追従してシールドコルゲートチューブ80を湾曲させることができる。このため、電線10を確実に保護しつつ、所望の配索経路に沿って電線10を配索することができる。
【0083】
また、図6(b)に示すワイヤーハーネス1w及び接地構造体2wでは、電線10に対して接続する編組線30の代わりにシールドコルゲートチューブ80を備えている。このため、ワイヤーハーネス1vは、編組線30に比べて筒状体20から延出した電線10をより確実に保護することができる。
【0084】
次に、図7(a)に基づいてワイヤーハーネス1x及び接地構造体2xについて説明する。
ワイヤーハーネス1x及び2xは、接地用被覆電線50の代わりに、導電性を有し、金属素線30aとは異なる種類(ここでは銅製とする)の銅製の金属素線90aを編んで構成された編組線90を備えている。なお、編組線90の一端には編組線30と電気的に接続するためのジョイント端子60(図示省略)が接続され、編組線90の他端には接地端子70が接続されている。
【0085】
このワイヤーハーネス1x及び接地構造体2xにおける編組線30と編組線90とは、周方向の寸法の異なる編組である。具体的には、編組線90は内部に他の電線10等を収容する必要がないため、編組線30と比べて周方向の寸法を小さくすることができる。
【0086】
また、図7(b)に示すワイヤーハーネス1y及び接地構造体2yでは、ワイヤーハーネス1xにおける筒状体20の代わりにシールドコルゲートチューブ80を備えている。
図7(c)に示すワイヤーハーネス1z及び接地構造体2zでは、ワイヤーハーネス1xにおける編組線30の代わりにシールドコルゲートチューブ80を備えている。
【0087】
このように構成されたワイヤーハーネス1,1w,1v,1x,1y,1zは、導電性を有する筒状体(筒状体20又はシールドコルゲートチューブ80)と、導電性及び可撓性を有し筒状体20又はシールドコルゲートチューブ80に電気的に接続される第1可撓性導電部材(編組線30又はシールドコルゲートチューブ80)と、編組線30又はシールドコルゲートチューブ80と異なる第2可撓性導電部材(接地接続部40(接地用被覆電線50又は編組線90))とが備えられている。そして、編組線30又はシールドコルゲートチューブ80の少なくとも一部に挿通される電線10を備え、接地用被覆電線50又は編組線90は、編組線30又はシールドコルゲートチューブ80及び接地回路に接続される。このように、筒状体及び第1可撓性導電部材、第2可撓性導電部材は、多種多様な構成とすることができるため、接地環境に応じて、筒状体のみならず、第1可撓性導電部材及び第2可撓性導電部材を必要に応じて適宜選択することができる。これにより、接地環境の要求を満たすことができる。
【0088】
具体的に説明すると、ワイヤーハーネス1xでは、第1可撓性導電部材として金属素線30aを編んだ編組線30とし、第2可撓性導電部材として金属素線90aを編んだ編組線90としている。これにより、編組線90は、編組線30は内部に他の電線10等を収容する必要がないため、編組線30に比べて周方向の寸法を小さくすることができる。したがって、接地回路に接続する接地箇所の周辺における空間が狭い場合であっても、確実に筒状体20及び編組線30に生じたノイズを接地回路に逃がすことができ、ワイヤーハーネス1全体の軽量化も図ることができる。また、金属素線30aと金属素線90aは、種類の異なる金属材料で構成されていてもよく、アルミニウム素線、銅素線等(合金素線を含む)などを目的に応じて適宜使い分けてもよい。
【0089】
また、編組線30の近傍に他の部材が配置されており、編組線30と干渉するおそれがある場合などには、編組線30を挿通する電線10を確実に保護する必要がある。この場合、編組線30の代わりにシールドコルゲートチューブ80を備えるワイヤーハーネス1w又はワイヤーハーネス1zをワイヤーハーネス1の代わりに用いることができる。これにより、電線10を保護しつつ、筒状体20及び編組線30に生じたノイズを接地回路に確実に逃がすことができる。
【0090】
さらにまた、編組線30あるいはシールドコルゲートチューブ80、及び接地用被覆電線50あるいは編組線90は可撓性を有するため、接地箇所の空間に応じて変形させることができる。このため、接地用被覆電線50及び編組線90を接地回路に接続させる場合や接続させた状態において、接地用被覆電線50及び編組線90に張力が作用して所定の方向に引っ張られたとしても、編組線30及びシールドコルゲートチューブ80は接地用被覆電線50及び編組線90に追従して変形することができる。したがって、編組線30及びシールドコルゲートチューブ80の内部を挿通する電線10に過度の負荷がかかることを抑制できる。
【0091】
なお、以下に記載の他の実施形態において、本実施形態と同じ構成については同一の番号を付しその説明を省略する。また、他の実施形態に記載の内容は、それぞれの実施形態にのみ実施できるものではなく、効果を奏する限り適宜組み合わせを変更することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 ワイヤーハーネス
2 接地構造体
10 電線
20 筒状体
30 編組線
31 開口部
40 接地接続部
50 接地用被覆電線
60 ピアス端子
80 シールドコルゲートチューブ
90 編組線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7