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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240924BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20240924BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L23/02 J
H01L23/08 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021074861
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022169064
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】白井 直哉
(72)【発明者】
【氏名】三原 芳和
(72)【発明者】
【氏名】山本 智康
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-219441(JP,A)
【文献】特開2009-016649(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111044(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/161660(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00-23/26
H01L 23/34-23/473
H01L 25/00-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを有するパッケージを備え、前記パッケージは、
25℃と100℃との間で9ppm/℃以上15ppm/℃以下の線膨張係数を有するヒートシンクと、
前記ヒートシンク上に設けられ、セラミックスからなり、平面視において前記キャビティを囲む枠体と、
を備え、
平面視において、前記枠体の外縁は、第1方向に沿って延びる第1直線部と、前記第1方向と直交する第2方向に沿って延びる第2直線部と、前記第1直線部と前記第2直線部とをつなぐ面取り部と、を含み、
前記パッケージの前記キャビティ内に収められた電子部品と、
前記パッケージの前記キャビティを封止する蓋体と、
前記蓋体を前記パッケージの前記枠体に接合する接着層と、
をさらに備え、
前記接着層は、熱硬化性接着材からなり、前記枠体の前記外縁の前記面取り部において前記枠体の側面を覆う部分を有しており、前記ヒートシンクから離れている、電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置であって、
平面視において、前記第1直線部と前記第2直線部との仮想的な交点と、前記枠体の内縁との間の最短距離を距離aと定義し、かつ、前記交点と、前記枠体の前記外縁との間の最短距離を距離bと定義して、
距離aに対する距離bの割合が10%以上50%以下である、電子装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子装置であって、
前記蓋体はセラミックスからなる、電子装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子装置であって、
平面視において、前記蓋体の縁は、前記第1方向に沿って延びる第3直線部と、前記第2方向に沿って延びる第4直線部とを含み、
平面視において、前記第1直線部と前記第2直線部との仮想的な交点と、前記枠体の前記外縁との間の最短距離を距離bと定義し、かつ、前記第3直線部と前記第4直線部との仮想的な交点と、前記蓋体の縁との間の最短距離を距離cと定義して、
距離bに対する距離cの割合が0%以上120%以下である、電子装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電子装置であって、
前記蓋体の前記縁は、前記第3直線部と前記第4直線部とをつなぐ面取り部を含む、電子装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電子装置であって、
平面視において、前記第1直線部と前記第2直線部との仮想的な交点と、前記枠体の内縁との間の最短距離を距離aと定義して、
距離aに対する距離cの割合が10%以上50%以下である、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示は、パッケージおよび電子装置に関し、特に、ヒートシンクを有するパッケージと、それを含む電子装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2005-150133号公報(特許文献1)は、半導体素子収納用容器を開示している。半導体素子収納用容器は、基体(パッケージ)と、蓋体とで構成されている。パッケージは、金属板からなるヒートシンクと、セラミック枠体と、外部接続端子とを有している。ヒートシンクとセラミック枠体とで形成されるキャビティ部には、半導体素子が搭載される。半導体素子が搭載された後、エポキシ樹脂等の樹脂接着材を用いてセラミック枠体に蓋体が接合される。樹脂接着材によってセラミック枠体に接合された蓋体は、キャビティ部の上面を覆うことによって、キャビティを気密に封止する。ヒートシンクは、銅(Cu)と他の金属との複合金属板からなる。ヒートシンクに高熱伝導率を付与するために、ヒートシンクとセラミック枠体との間の熱膨張係数の近似性を若干犠牲にして、ヒートシンクの線膨張係数を8ppm/℃以上としてもよい。上記公報が主張するところによれば、そのようにヒートシンクの熱膨張係数が高くても、蓋体が樹脂材からなることによって、パッケージと蓋体との接合信頼性は確保することができる。
【0003】
特開2007-115731号公報(特許文献2)は、放熱基板(ヒートシンク)用のクラッド材(複合金属板)を開示している。クラッド材は、銅層とモリブデン層とが、合計5層以上、交互に積層されることによって構成されている。これにより、熱膨張係数を14ppm/℃以下に抑えつつ、Cu単体に近い高熱伝導率を得ることができる。熱伝導率が高いことによって、ヒートシンクの放熱性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-150133号公報
【文献】特開2007-115731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2005-150133号公報に記載されているように、パッケージと蓋体との接合信頼性は、蓋体が樹脂材を含むことによって確保しやすくなる。しかしながら、本発明者らの検討によれば、この接合信頼性は、ヒートシンクの熱膨張係数が過度に高い場合、確保することが困難である。蓋体が、樹脂材ではなくセラミックスからなる場合、蓋体の剛性が高くなるので、接合信頼性の確保は、より困難となる。以下、このことについて説明する。なお、本明細書における以下の記載において、温度T(℃)における線膨張係数(CTE:Coefficient of Thermal Expansion)は、温度25℃(室温)における長さがL25でありかつ温度Tにおける長さがLであるとき、
{(L-L25)/(T-25)}/L25
によって定義される。また本明細書において、上記の線膨張係数のことを、25℃とT(℃)との間での線膨張係数と称することもある。また、複合金属板の線膨張係数は、面内方向に沿った長さに基づいて算出される。ここで面内方向は、複合金属板の積層方向(厚み方向)に垂直な方向である。
【0006】
本発明者らの検討によれば、ヒートシンクの熱膨張係数が9ppm/℃以上の場合、ヒートサイクル下において、枠体と蓋体とを互いに接合するための樹脂接着層にクラックが発生しやすい。本発明者らは、-65℃と150℃との間でのヒートサイクル試験の結果として、このようなクラックを実際に観察した。当該クラックがキャビティと外部雰囲気との間を延びることによって、キャビティの気密性が失われてしまう。
【0007】
一方で、上記特開2007-115731号公報に開示されているように、高熱伝導率を得ることを目的とした材料の熱膨張係数は、必ずしも9ppm/℃未満には限られない。熱膨張係数が9ppm/℃未満であるという制約下では、必要な熱伝導率を確保することができないことがあり、その結果、ヒートシンクの放熱性が不十分となることがある。
【0008】
開示は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ヒートシンクの放熱性を高くしつつ、枠体と蓋体との間の接合信頼性を確保することができるパッケージと、それを含む電子装置とを提供することである。

【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態におけるパッケージは、蓋体によって封止されることになるキャビティを有している。パッケージは、25℃と100℃との間で9ppm/℃以上15ppm/℃以下の線膨張係数を有するヒートシンクと、前記ヒートシンク上に設けられ、セラミックスからなり、平面視において前記キャビティを囲む枠体と、を含む。平面視において、前記枠体の外縁は、第1方向に沿って延びる第1直線部と、前記第1方向と直交する第2方向に沿って延びる第2直線部と、前記第1直線部と前記第2直線部とをつなぐ面取り部と、を含む。
【0010】
平面視において、前記第1直線部と前記第2直線部との仮想的な交点と、前記枠体の内縁との間の最短距離を距離aと定義し、かつ、前記交点と、前記枠体の前記外縁との間の最短距離を距離bと定義して、距離aに対する距離bの割合が10%以上50%以下であってよい。蓋体はセラミックスからなっていてよい。
【0011】
一実施の形態における電子装置は、前記パッケージと、前記パッケージの前記キャビティ内に収められた電子部品と、前記パッケージの前記キャビティを封止する前記蓋体と、を含む。平面視において、前記蓋体の縁は、前記第1方向に沿って延びる第3直線部と、前記第2方向に沿って延びる第4直線部とを含む。平面視において、前記第1直線部と前記第2直線部との仮想的な交点と、前記枠体の前記外縁との間の最短距離を距離bと定義し、かつ、前記第3直線部と前記第4直線部との仮想的な交点と、前記蓋体の縁との間の最短距離を距離cと定義して、距離bに対する距離cの割合が0%以上120%以下である。
【0012】
平面視において、前記第1直線部と前記第2直線部との仮想的な交点と、前記枠体の内縁との間の最短距離を距離aと定義して、前記蓋体の前記縁は、前記第3直線部と前記第4直線部とをつなぐ面取り部を含んでよい。距離aに対する距離cの割合が10%以上50%以下であってよい。
【発明の効果】
【0013】
一実施の形態によれば、枠体の外縁において、第1直線部と第2直線部とをつなぐ角部が面取り部によって構成される。これにより、熱膨張収縮の差異に起因して角部近傍で接着層に加わる応力集中が、軽減される。よって、放熱性を高くすることにともなってヒートシンクの線膨張係数が9ppm/℃以上であっても、当該線膨張係数が15ppm/℃以下であれば、接着層における過度な応力集中を避けることができる。よって、ヒートシンクの放熱性を高くしつつ、枠体と蓋体との間の接合信頼性を確保することができる。
【0014】
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施の形態に係る電子装置の構成を、キャビティ内部が見えるようにその一部の図示を省略して示す概略斜視図である。
図2図1の電子装置の線II-IIに沿う概略断面図である。
図3図1の電子装置の線III-IIIに沿う概略断面図である。
図4】本発明の一実施の形態における電子装置が有するパッケージの構成を、金属端子の図示を省略しつつ、概略的に示す平面図である。
図5図4のパッケージが有する枠体の構成を概略的に示す部分平面図である。
図6図5の枠体に取り付けられることになる蓋体の構成を概略的に示す部分平面図である。
図7】比較例のパッケージの構成を、金属端子の図示を省略しつつ、図4と同様の視野で概略的に示す平面図である。
図8図7のパッケージを有する電子装置の構成を、図3と同様の視野で示す部分断面図である。
図9】ヒートシンク用の複合金属板(A型)の線膨張係数CTEと、ヒートシンク用の複合金属板(B型)の線膨張係数CTEと、枠体用のセラミック材料の線膨張係数CTEとを例示するグラフ図である。
図10】比較例の電子装置における接着層の応力分布のシミュレーション結果を示す部分斜視図である。
図11】一実施の形態に係る電子装置における接着層の応力分布のシミュレーション結果を例示する部分斜視図である。
図12】変形例の電子装置における接着層の応力分布のシミュレーション結果を例示する部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態における電子装置90Cの構成を、キャビティCV内部が見えるようにその一部の図示を省略して示す概略斜視図である。図2および図3のそれぞれは、図1の電子装置90Cの線II-IIおよび線III-IIIに沿う概略断面図である。
【0018】
電子装置90Cは、キャビティCVを有するパッケージ10Cと、キャビティCV内に収められた電子部品8と、配線部9と、蓋体80Cと、接着層70とを有している。パッケージ10Cは、ヒートシンク13と、枠体14Cと、金属端子15とを有している。電子部品8は、例えば、高周波用の電力用半導体素子であり、この場合、パッケージ10Cは、高周波パッケージである。電子部品8は、配線部9によってパッケージ10Cの金属端子15に電気的に接続されていてよい。蓋体80Cは、接着層70によって枠体14Cに接合されることによって、キャビティCVを封止している。
【0019】
蓋体80Cはセラミックスからなる。このセラミックスは、主成分としてアルミナを含んでいてよい。また、このセラミックスは、枠体14Cのセラミックスと同じであってよく、あるいは異なってもよい。
【0020】
なお、蓋体80Cの材料はセラミックスに限定されるものではない。例えば、蓋体80Cは樹脂材を含んでいてよい。樹脂材は、例えば、液晶ポリマーである。なお当該樹脂材中には、無機フィラーが分散されていてもよく、無機材フィラーは、例えばシリカ粒である。樹脂材中に無機フィラーが分散されていることによって、蓋体80Cの強度および耐久性を高めることができる。
【0021】
接着層70は、枠体14Cと蓋体80Cとの間に配置された部分を有することによって、これらを互いに接合している。接着層70は、硬化状態にある熱硬化性接着材からなる。この熱硬化性接着材は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシリコーン樹脂の少なくともいずれかを主成分として含んでいてよい。特にエポキシ樹脂は、耐熱性、機械的強度および耐薬品性をバランス良く備えている点で好ましい。硬化状態にある熱硬化性接着剤が上記の特性を好適に有するためには、主成分としてのエポキシ樹脂の含有量が20~40wt%(重量%)であることが好ましく、残部は硬化剤などの副成分からなってよい。具体的には、この副成分は、例えば、1~10wt%の硬化剤と、50~70wt%の無機フィラーと、0.5~2wt%のカップリング剤と、0.5~2wt%の触媒と、0.1~5wt%の低応力剤とであってよい。硬化剤としてはフェノキシ樹脂化合物が用いられてよい。無機フィラーとしてはシリカが用いられてよい。触媒としては有機リンまたはホウ素塩が用いられてよい。低応力剤としてはシリコーン(silicone)が用いられてよい。接着層70の、蓋体80Cとパッケージ10Cとの間での厚みは、例えば、100μm以上360μm以下である。接着層70は、蓋体80Cの曲げ弾性率よりも小さな曲げ弾性率を有していてよい。
【0022】
パッケージ10Cにおいて、ヒートシンク13と、枠体14Cと、金属端子15とは、接合材(図示せず)を用いて互いに接合されていてよい。接合材は、例えば、銀ろうである。セラミックと金属との銀ろうによる接合を可能にするため、枠体14Cの、ヒートシンク13および金属端子15に接合される面には、タングステンまたはモリブデンなどからなる金属層が設けられていてよい。なお、接合材による接合の後、典型的には、パッケージ10Cに、めっき処理が施されている。
【0023】
ヒートシンク13は金属からなる。ヒートシンク13の、蓋体80Cに面する搭載面には、電子部品8が搭載されている。ヒートシンク13は、25℃と100℃との間で9ppm/℃以上15ppm/℃以下の線膨張係数を有している。線膨張係数が9ppm/℃以上であることが許容されることにより、ヒートシンク13へ、高い熱伝導率を付与することが容易となり、例えば、330(W/m・K)以上360(W/m・K)以下程度の、高い熱伝導率を付与することができる。なお、ここでの熱伝導率の値は、25℃での値であってよい。一方で、ヒートシンク13の線膨張係数が15ppm/℃以下であることによって、ヒートシンク13と枠体14Cとの間での過度な膨張/収縮の差異が避けられる。ヒートシンク13は、複合金属板であってよく、例えば、複数のCu板と複数のMo(モリブデン)板とが交互に積層された複合金属板(クラッド材)であってよい。この積層構造は、例えば、Cu/Mo/Cu/Mo/Cuの5層構造である。
【0024】
なおヒートシンク13をなす金属中にはセラミック粒子が分散されていてよい。セラミック粒子は、例えば、SiC(炭化珪素)またはダイヤモンドからなる。
【0025】
枠体14Cは、ヒートシンク13上に設けられており、平面視においてキャビティCVを囲んでいる。枠体14Cはセラミックスからなる。当該セラミックスは、主成分として、例えばアルミナを含む。枠体14Cの曲げ弾性率は、通常、接着層70の曲げ弾性率よりも大きい。金属端子15は枠体14C上に接合されている。金属端子15は、パッケージ10Cおよび蓋体80Cによって封止されたキャビティCVの内部と外部とをつなぐ電気的経路を構成している。キャビティCVの内部においては、金属端子15に電子部品8が配線部9によって電気的に接続されている。配線部9は、例えば、ボンディングワイヤである。接着層70は、パッケージ10C上において、キャビティを囲むように設けられている。図1を参照して、接着層70は、金属端子15上の部分と、枠体14C上の部分とを有していてよい。
【0026】
電子装置90Cのヒートシンク13の外面(図1図3における下面)は、支持部材(図示せず)に取り付けられることになる。支持部材は、例えば、実装ボードまたは放熱部材である。ヒートシンク13は、支持部材への取り付けのための固定具(例えば、ねじ)が通る貫通部(図示せず)を有していてもよい。
【0027】
蓋体80Cは、図2に示されているように、キャビティに面する内面81iと、その反対の外面81oとを有している。典型的には、内面81i上には、枠体14Cの枠形状におおよそ対応した枠形状を有する突起である枠部81pが設けられている。この場合、接着層70は、枠部81pに接する。
【0028】
図4は、パッケージ10Cの構成を、金属端子15(図1および図2)の図示を省略しつつ、概略的に示す平面図である。図5は、パッケージ10C(図4)が有する枠体14Cの構成を概略的に示す部分平面図である。
【0029】
平面視において、枠体14Cの外縁は、図5の横方向(第1方向)に沿って延びる直線部LN1(第1直線部)と、図5の縦方向(第1方向と直交する方向)に沿って延びる直線部LN2(第2直線部)と、直線部LN1と直線部LN2とをつなぐ面取り部CM1と、を含む。
【0030】
平面視において、直線部LN1と直線部LN2との仮想的な交点PT1(図5)と、枠体14Cの内縁との間の最短距離を距離aと定義し、かつ、交点PT1と、枠体14Cの外縁との間の最短距離を距離bと定義する。距離aに対する距離bの割合は、10%以上50%以下であることが好ましい。
【0031】
なお、図5においては、平面視において面取り部CM1が、直線部LN1および直線部LN2の各々に対して、同じ角度(45度)をなしている。しかしながら、面取り部CM1の角度は、45度に限定されるものではない。また、図5においては、平面視において直線状の面取り部CM1が示されているが(図11も参照)、代わりに、平面視において曲線状(典型的には円弧状)の面取り部が用いられてもよい(図12も参照)。
【0032】
図6は、接着層70(図1図3)を用いて枠体14C(図5)に取り付けられることになる蓋体80Cの構成を概略的に示す部分平面図である。なお、図6の横方向は図5の横方向に対応しており、図6の縦方向は図5の縦方向に対応している。
【0033】
平面視において、蓋体80Cの縁は、図6の横方向(第1方向)に沿って延びる直線部LN3(第3直線部)と、図6の縦方向(第2方向)に沿って延びる直線部LN4(第4直線部)とを含む。平面視において、直線部LN3と直線部LN4との仮想的な交点PT2と、蓋体80Cの縁との間の最短距離を距離cと定義する。距離b(図5)に対する距離c(図6)の割合は、0%以上120%以下である。なお、当該割合が0%の場合、交点PT2は蓋体80Cの縁の頂点である。平面視において、直線部LN1(図5)と直線部LN3(図6)とは実質的に、共通の直線上にあってよい。また平面視において、直線部LN2(図5)と直線部LN4(図6)とは実質的に、共通の直線上にあってよい。また平面視において、交点PT1(図5)と交点PT2(図6)とは実質的に重なっていてよい。
【0034】
蓋体80Cの縁は、直線部LN3と直線部LN4とをつなぐ面取り部CM2を含んでよい。距離a(図5)に対する距離cの割合は、10%以上50%以下であってよい。平面視において、面取り部CM2(図6)は、面取り部CM1(図5)と実質的に重なってよく、その場合、面取り部CM2および面取り部CM1は共通の形状を有する。
【0035】
次に、電子装置90Cの製造方法について、以下に説明する。
【0036】
パッケージ10Cが準備される。パッケージ10Cのヒートシンク13上に電子部品8が搭載される。例えば、ヒートシンク13上に電子部品8がはんだ付けされる。次に、電子部品8が金属端子15に配線部9によって電気的に接続される。
【0037】
次に、蓋体80Cがパッケージ10C上に載置される。具体的には、蓋体80Cがパッケージ10Cの枠体14Cへ、半硬化状態にある接着層70を介して取り付けられる。次に、蓋体80Cがパッケージ10Cへ所定の荷重で押し付けられる。適切な荷重は、パッケージ10Cの寸法設計に依存するが、例えば500g以上1kg以下程度である。荷重での押し付けが行われながら、接着層70が加熱される。加熱された接着層70は、まず軟化状態へと変化する。これにより接着層70の粘度が低下する。その結果、接着層70が濡れ広がる。このとき、面取り部CM1(図1)が設けられていることによって、接着層70は、矢印FL(図3)に示されているように、枠体14Cの側面を覆うように流れやすくなる。その後、加熱による硬化反応の進行にともなって、接着層70は硬化状態へと変化する。その結果、パッケージ10Cに蓋体80Cが接合される。これによりキャビティCVが封止される。
【0038】
以上により、電子装置90Cが得られる。
【0039】
図7は、比較例のパッケージ10Sの構成を、金属端子の図示を省略しつつ、図4と同様の視野で概略的に示す平面図である。図8は、パッケージ10S(図7)を有する電子装置90Sの構成を、図3と同様の視野で示す部分断面図である。パッケージ10Sは、面取り部CM1(図5)を有しない枠体14Sを含む。ヒートサイクル下においては、図8に示されているように、ヒートシンク13には膨張/収縮EX1が生じ、枠体14Sには膨張/収縮EX2が生じ、蓋体80Sには膨張/収縮EX3が生じる。
【0040】
図9は、ヒートシンク用の複合金属板(A型)の線膨張係数CTEと、ヒートシンク用の複合金属板(B型)の線膨張係数CTEと、枠体用の典型的なセラミック材料の線膨張係数CTEとを例示するグラフ図である。なお、金属材料の線膨張係数はJIS Z 2285、セラミック材料の線膨張係数はJIS R 1618にそれぞれ準拠して測定された。A型とB型とでは、複合金属板の材料設計が異なっている。330(W/m・K)以上360(W/m・K)以下程度の高熱伝導率が意図された場合において、複合金属板の線膨張係数は、その材料設計によって、線膨張係数CTEと線膨張係数CTEとの間で調整可能である。しかしながら、そのような調整が行われたとしても、ヒートサイクルの温度範囲(典型的な試験においては、-65℃~+150℃)においては、複合金属板の線膨張係数は、枠体用の典型的なセラミック材料の線膨張係数CTEよりもかなり大きい。
【0041】
上記の線膨張係数の相違に起因して、図8に示されているように、膨張/収縮EX2に比して、膨張/収縮EX1は、かなり大きい。また、蓋体80Sがセラミックからなる場合は、膨張/収縮EX3に比しても、膨張/収縮EX1の方が大きい。これら、膨張/収縮の差異に起因して、電子装置90Sには応力が加わる。当該応力は枠体14Sの平面視における角部CN(図7)近傍に集中しやすく、その結果、接着層70にクラックCR(図8)が発生しやすい。
【0042】
また、枠体14C(図3)と異なり、枠体14Sは面取り部CM1(図5)を有していない。よって枠体14Sは、図8に示されているように、より外側(図8における右側)まで延在している。その結果、接着層70が、枠体14Sの上面(蓋体80Sに面する面)上において、端部EDを有しやすい。端部ED近傍には、上記応力が特に集中しやすく、これがクラックCRの発生原因となることがある。
【0043】
これに対して、本実施の形態によれば、面取り部CM1(図1)が設けられていることによって、接着層70が、前述したように、枠体14Cの側面を覆うように流れ出やすくなる(図3:矢印FL参照)。これにより、端部ED(図8:比較例)のような構造は形成されにくい。よって、端部EDを起点してのクラックCR(図8)の発生を抑制することができる。
【0044】
なお、面取り部CM1を枠体14Cに設けることによるこのような作用は、蓋体の材料に依らない。すなわち蓋体が樹脂材を含む場合にもこの作用は生じる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、枠体14C(図5)の外縁において、直線部LN1と直線部LN2とをつなぐ角部が面取り部CM1によって構成される。これにより、角部CN(図1および図3参照)における応力集中をもたらす熱膨張収縮の差異が生じる範囲DC(図4)が、比較例における範囲DS(図7)に比して小さくなる。その結果、熱膨張収縮の差異に起因して角部CN近傍で接着層70に加わる応力集中が、軽減される。よって、放熱性を高くすることにともなってヒートシンク13の線膨張係数が9ppm/℃以上であっても、当該線膨張係数が15ppm/℃以下であれば、接着層70における過度な応力集中を避けることができる。よって、ヒートシンク13の放熱性を高くしつつ、枠体14Cと蓋体80Cとの間の接合信頼性、具体的には接着層70の接合信頼性、を確保することができる。
【0046】
なお、図4および図7のように、平面視においてパッケージの構成が、中心位置CTを対称中心としての点対称性を有している場合、応力が集中するのは、蓋体の材料に依らず、角部CNである。よって、枠体14Cに面取り部CM1を設けることによる上記作用は、蓋体が樹脂材を含む場合であっても生じる。
【0047】
図5および図6を参照して、距離bに対する距離cの割合が0%以上120%以下である場合、角部CNにおいて、枠体14Cの上面上で接着層70が端部ED(図8)を有してしまうことを避けやすい。これにより、接着層70の端部EDでの応力集中の発生を避けることができる。よって、ヒートサイクル下における接着層70の接合信頼性を、より確実に確保することができる。
【0048】
蓋体80Cの縁は面取り部CM2(図6)を含んでよい。これにより、平面視において、面取り部CM1(図5)を有する枠体14Cの外縁に対して、蓋体80Cの角部の縁をおおよそ一致させることができる。よって、角部CN(図1)において枠体14Cと蓋体80Cとの間に接着層70を適切に配置しやすくなる。
【0049】
図5を参照して、以下の表に、距離aに対する距離bの割合である欠損率(%)と、接着層70におけるクラック発生と、枠体14Cの強度との関係を検討した結果を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
上記の表において、「クラック」の行において、「A」は接着層70のクラックの懸念が低いことを示し、「C」は当該懸念が高いことを示し、「B」は当該懸念がこれらの中間程度であることを示す。接着層70のクラックの懸念を抑えるためには、欠損率は、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましい。
【0052】
また、「枠強度」の行において、「A」は枠体14Cの強度についての懸念が低いことを示し、「C」は当該懸念が高いことを示し、「B」は当該懸念がこれらの中間程度であることを示す。枠体14Cの強度についての懸念を抑えるためには、欠損率は、50%以下が好ましく、40%以がより好ましい。なお、強度についての懸念とは、例えば、ハンドリングの際に枠体14Cが破損してしまう懸念のことである。

【0053】
図10図12は、比較例の電子装置90S(図7および図8参照)、実施の形態に対応する電子装置90C(図1図6参照)、および変形例の電子装置90Rにおける、接着層70の応力分布のシミュレーション結果を例示する部分斜視図である。なお、変形例の電子装置90Rは、各々が円弧状に面取りされている枠体14Rおよび蓋体80Rを有している。これら斜視図の各々において、部材間の区別と各部材の形状とを見やすくするために濃淡が付されており、さらに接着層70に対しては、応力に応じた濃淡が重畳されている。この重畳は、応力が高いほど濃く(黒く)、応力が低いほど淡く(白く)なされている。
【0054】
比較例の電子装置90S(図10)においては、端部ED(図8参照)に相当する箇所が生じており、当該箇所の直上において、顕著な応力集中SS(図10)が見られる。実施の形態に対応する電子装置90C(図11)における応力集中SCは、図中、横方向に線状に広く分散しており、応力集中SS(図10)に比して軽度である。変形例の電子装置90R(図12)における応力集中SRも、図中、横方向に線状に広く分散しており、応力集中SS(図10)に比して軽度である。応力集中SS(図10)における応力値を100%と定義すると、応力集中SC(図11)における応力値は68.7%であり、応力集中SR(図12)における応力値は68.1%である。
【0055】
上記シミュレーションの条件を下記に示す。なお、下記の表2中の線膨張係数は25℃と100℃との間での線膨張係数である。表2中の蓋体および枠体は、ともにアルミナを主成分とするセラミックスからなるが、副成分は少し異なる。表2中のヒートシンクは金属のみからなる。
【0056】
【表2】
【符号の説明】
【0057】
8 :電子部品
10C :パッケージ
13 :ヒートシンク
14C :枠体
70 :接着層
80C :蓋体
90C :電子装置
CM1 :面取り部
CM2 :面取り部
CV :キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12