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特許7558883液化ガス供給装置及び供給方法、噴霧凍結装置及び噴霧凍結方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】液化ガス供給装置及び供給方法、噴霧凍結装置及び噴霧凍結方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 9/00 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
F17C9/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021075660
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169931
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】米倉 正浩
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110767(JP,A)
【文献】中国実用新案第206530872(CN,U)
【文献】特許第6508707(JP,B2)
【文献】特開昭61-232128(JP,A)
【文献】特開昭55-65872(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0254306(US,A1)
【文献】特開2014-126283(JP,A)
【文献】実開昭49-84746(JP,U)
【文献】特表2011-524972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス供給源から液化ガス導入管を介して液化ガスが導入される第1液化ガス貯留部と、
前記第1液化ガス貯留部から液化ガスが供給される第2液化ガス貯留部と、
前記第2液化ガス貯留部に貯留する液化ガスを導出する液化ガス導出管と、
前記液化ガス導出管の先端に設けられた滴下ノズルと
を備えた液化ガス供給装置において、
前記液化ガス導入管は、前記第1液化ガス貯留部内で二股に分かれ、一方は上方に延びる上部分岐管であり、もう一方は下方に延びる下部分岐管であって、その両方の出口開口にそれぞれ上部抵抗部と下部抵抗部が設けられており、
前記第1液化ガス貯留部内で、前記上部分岐管から前記上部抵抗部を介して供給される液化ガスを貯留して、当該貯留された液化ガスにより前記下部分岐管を冷却し、前記下部分岐管から前記下部抵抗部を介して供給される液化ガスが前記第1液化ガス貯留部の下端から前記第2液化ガス貯留部に供給され、
前記第2液化ガス貯留部には、内部の液化ガスの液面位置に応じて上下し、前記第1液化ガス貯留部の下端及び前記液化ガス導出管の開閉を制御するフロートが設けられ、
前記液化ガス導出管は、その開口部が、前記第2液化ガス貯留部の底面よりも高い位置に設けられていることを特徴とする液化ガス供給装置。
【請求項2】
前記下部分岐管は螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の液化ガス供給装置。
【請求項3】
前記フロートが、前記第2液化ガス貯留部内に2つ設けられており、1つは前記第1液化ガス貯留部の下端の開閉を制御するものであって、もう1つは前記液化ガス導出管の開閉を制御するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の液化ガス供給装置。
【請求項4】
前記フロートが、前記第2液化ガス貯留部内に1つ設けられており、当該1つのフロートで前記第1液化ガス貯留部の下端及び前記液化ガス導出管の開閉を両方とも制御するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の液化ガス供給装置。
【請求項5】
前記滴下ノズルが、液化ガスをミスト状とするためのスクリーンを備えるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の液化ガス供給装置。
【請求項6】
前記滴下ノズルが、液化ガスを滴状とするための絞りを備えるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の液化ガス供給装置。
【請求項7】
請求項5記載の液化ガス供給装置を用いて、前記滴下ノズルから発生したミスト状の液化ガスを用いて対象原料を噴霧凍結する噴霧凍結装置であって、
前記対象原料を噴霧するための噴霧ノズルと、
前記噴霧ノズルの噴霧場所を取り囲む冷却ジャケットと、
前記対象原料が液化ガスによって凍結された凍結物を回収するための凍結物取出弁とを備え、
前記冷却ジャケットには、前記第1液化ガス貯留部及び前記第2液化ガス貯留部からそれぞれ排出される排気ガスが導入されることを特徴とする噴霧凍結装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項記載の液化ガス供給装置を用いて液化ガスの供給を行う液化ガス供給方法であって、
液化ガスが、液化ガス供給源から、前記液化ガス導入管、前記第1液化ガス貯留部、前記第2液化ガス貯留部、前記液化ガス導出管を介して前記滴下ノズルから供給されるものであり、
前記第1液化ガス貯留部内部において、前記液化ガス導入管の前記下部分岐管に設けられた下部抵抗部を通過することで、液化ガスは圧力が低下した状態で前記第2液化ガス貯留部に供給され、
当該第2液化ガス貯留部内部において貯留されることで、液化ガスの圧力はさらに低下し、
当該圧力の低下した液化ガスが、前記液化ガス導出管を経て滴下ノズルから供給されることを特徴とする液化ガス供給方法。
【請求項9】
請求項7記載の噴霧凍結装置を用いた対象原料の噴霧凍結方法であって、
前記滴下ノズルから発生したミスト状の液化ガスによって噴霧領域を予冷し、
当該予冷された噴霧領域に対象原料を噴霧ノズルで噴霧し、
噴霧した対象原料を凍結させ、得られた凍結物を回収することを特徴とする噴霧凍結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス供給装置及び供給方法、当該装置及び方法を用いた噴霧凍結装置及び噴霧凍結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体窒素などの液化ガスは、食品凍結や冷却、各種材料の凍結保存などに広く利用されている。液化ガスを利用する際には、主に断熱された圧力容器から取り出されるが、ガス自体に自圧があるために、大気圧下で取り出す場合、当該自圧による噴射が起こり、その噴射による圧力で対象物に形状変化を与える場合があった。
【0003】
そこで、噴射による圧力で対象物に形状変化を与えないようにするために、液体窒素を少量ずつ滴下するものとして、気化量を少なくすることで液体状態を保持して滴下個所に直接供給する液化ガス滴下装置が特許文献1に示されている。また、対象物を効率よく冷却するために、液体窒素をミスト状として供給するものとして、噴射パイプを備えた低温液化ガス噴射装置が特許文献2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平5-43573号公報
【文献】特許第6508707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液体窒素を利用して対象物を効率よく冷却する場合、液体窒素を取り出す直近の場所にサブクーラーを設置して過冷却液として取り出すことや、気液分離器を設けて液体窒素のみを取り出すことが一般的であるが、低圧下での供給は難しく、特に上記特許文献1、2のように、液体窒素を滴下して定量供給する場合やミスト状として連続供給する場合は、供給元の圧力を下げるための専用の機器を用いたり、液面センサと流量制御弁の組み合わせを用いたりすることで、構成機器が複雑となり高価となることが多かった。
【0006】
以上の点に鑑みて、本発明は、シンプルな構造で液体窒素などの液化ガスを低温低圧で供給することが可能な液化ガスの供給装置及び供給方法、また、当該装置及び方法を用いた噴霧凍結装置及び噴霧凍結方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の発明は、液化ガス供給源から液化ガス導入管を介して液化ガスが導入される第1液化ガス貯留部と、前記第1液化ガス貯留部から液化ガスが供給される第2液化ガス貯留部と、前記第2液化ガス貯留部に貯留する液化ガスを導出する液化ガス導出管と、前記液化ガス導出管の先端に設けられた滴下ノズルとを備えた液化ガス供給装置において、前記液化ガス導入管は、前記第1液化ガス貯留部内で二股に分かれ、一方は上方に延びる上部分岐管であり、もう一方は下方に延びる下部分岐管であって、その両方の出口開口にそれぞれ上部抵抗部と下部抵抗部が設けられており、前記第1液化ガス貯留部内で、前記上部分岐管から前記上部抵抗部を介して供給される液化ガスを貯留して、当該貯留された液化ガスにより前記下部分岐管を冷却し、前記下部分岐管から前記下部抵抗部を介して供給される液化ガスが前記第1液化ガス貯留部の下端から前記第2液化ガス貯留部に供給され、前記第2液化ガス貯留部には、内部の液化ガスの液面位置に応じて上下し、前記第1液化ガス貯留部の下端及び前記液化ガス導出管の開閉を制御するフロートが設けられており、前記液化ガス導出管は、その開口部が、前記第2液化ガス貯留部の底面よりも高い位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記下部分岐管は螺旋状に形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記フロートが、前記第2液化ガス貯留部内に2つ設けられており、1つは前記第1液化ガス貯留部の下端の開閉を制御するものであって、もう1つは前記液化ガス導出管の開閉を制御するものであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第4の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記フロートが、前記第2液化ガス貯留部内に1つ設けられており、当該1つのフロートで前記第1液化ガス貯留部の下端及び前記液化ガス導出管の開閉を両方とも制御するものであることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第5の発明は、上記第1~第4の発明のいずれかにおいて、前記滴下ノズルが、液化ガスをミスト状とするためのスクリーンを備えるものであることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第6の発明は、上記第1~第4の発明のいずれかにおいて、前記滴下ノズルが、液化ガスを滴状とするための絞りを備えるものであることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第7の発明は、上記第5の発明における前記滴下ノズルから発生したミスト状の液化ガスを用いて対象原料を噴霧凍結する噴霧凍結装置であって、前記対象原料を噴霧するための噴霧ノズルと、前記噴霧ノズルの噴霧場所を取り囲む冷却ジャケットと、前記対象原料が液化ガスによって凍結された凍結物を回収するための凍結物取出弁とを備え、前記冷却ジャケットには、前記第1液化ガス貯留部及び前記第2液化ガス貯留部からそれぞれ排出される排気ガスが導入されることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第8の発明は、上記第1~第6の発明における液化ガス供給装置を用いた液化ガス供給方法であって、液化ガスが、液化ガス供給源から、前記液化ガス導入管、前記第1液化ガス貯留部、前記第2液化ガス貯留部、前記液化ガス導出管を介して前記滴下ノズルから供給されるものであり、前記第1液化ガス貯留部内部において、前記液化ガス導入管の前記下部分岐管に設けられた下部抵抗部を通過することで、液化ガスは圧力が低下した状態で前記第2液化ガス貯留部に供給され、当該第2液化ガス貯留部内部において貯留されることで、液化ガスの圧力はさらに低下し、当該圧力の低下した液化ガスが、前記液化ガス導出管を経て滴下ノズルから供給されることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第9の発明は、上記第7の発明における噴霧凍結装置を用いた対象原料の噴霧凍結方法であって、前記滴下ノズルから発生したミスト状の液化ガスによって噴霧領域を予冷し、当該予冷された噴霧領域に対象原料を噴霧ノズルで噴霧し、噴霧した対象原料を凍結させ、得られた凍結物を回収することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の液化ガス供給装置及び供給方法によれば、供給経路の途中に設けられた抵抗部及び貯留部によって液化ガスの圧力を下げることができるので、高価な機器を用いずに、シンプルな構造で、液化ガスを低温低圧で供給することが可能になる。また、上記装置及び方法を用いた噴霧凍結装置及び噴霧凍結方法によれば、低温低圧の液化ガスを用いて、対象物を効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1(a)】本発明の第1形態例の液化ガス供給装置において液化ガス供給開始状態を示す図である。
図1(b)】上記第1形態例の液化ガス供給装置において中間状態を示す図である。
図1(c)】上記第1形態例の液化ガス供給装置において液化ガス供給停止状態を示す図である。
図2】上記第1形態例の液化ガス供給装置における液化ガス導入管及び液化ガス供給管の構成を示す図である。
図3(a)】本発明の第2形態例の液化ガス供給装置において液化ガス供給開始状態を示す図である。
図3(b)】上記第2形態例の液化ガス供給装置において中間状態を示す図である。
図3(c)】上記第2形態例の液化ガス供給装置において液化ガス供給停止状態を示す図である。
図4(a)】上記液化ガス供給装置における滴下ノズルの一例を示す図である。
図4(b)】上記液化ガス供給装置における滴下ノズルの別の例を示す図である。
図5】上記液化ガス供給装置を用いた噴霧凍結装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の第1形態例の液化ガス供給装置1を示すものである。当該液化ガス供給装置1は、液化ガス供給源2、液化ガス導入管3、第1液化ガス貯留部4、第2液化ガス貯留部5、液化ガス導出管6、滴下ノズル7から概略構成されている。
【0019】
液化ガス供給源2は、図2に示されるように、大容量のタンクや小容量のボンベなどの液化ガス貯蔵容器に接続している、液化ガス(液体窒素など)の供給源である。
【0020】
液化ガス導入管3は、液化ガス供給源2から供給される液化ガスを、後述する第1液化ガス貯留部4に供給する配管である。当該液化ガス導入管3は、図2に示されるように、第1液化ガス貯留部4に挿通しており、当該第1液化ガス貯留部4内部で先が二股に分かれている。二股のうちの一方は上方に延びる上部分岐管8であり、直線上に形成され、その出口開口には、焼結金属からなる上部抵抗部9が設けられている。当該上部抵抗部9の上面は封止されている。そのため、前記上部分岐管8を流れる液化ガスは、上部抵抗部9の側面を通じて第1液化ガス貯留部4に供給される。
【0021】
二股のうちのもう一方は、下方に延びる下部分岐管10であり、螺旋状に形成され、その出口開口には、前記上部分岐管8と同様に、焼結金属からなる下部抵抗部11が設けられている。そのため、前記下部分岐管10を流れる液化ガスは、下部抵抗部11を通じて第1液化ガス貯留部4に供給される。
【0022】
第1液化ガス貯留部4は、液化ガス導入管3から供給される液化ガスを後述する第2液化ガス貯留部5に供給する円筒形の管状の部材であり、下端側が開口している。当該第1液化ガス貯留部4は、図2に示されるように、上下に仕切り部12により二分されており、当該仕切り部12よりも上部において、液化ガス導入管3は上部分岐管8と下部分岐管10とに分岐している。前記下部分岐管10の螺旋状部分は仕切り部12より上部側に形成され、出口開口側は仕切り部12を貫通し、下部抵抗部11は仕切り部12より下方に設けられている。
【0023】
液化ガスは、まず、上部抵抗部9、下部抵抗部11から共にガスの状態で第1液化ガス貯留部4に供給される。当該ガスによって周囲が冷却されると、液化ガスのうち液相部分が下部抵抗部11を介して仕切り部12よりも下部に排出されるようになり、気相部分は上部抵抗部9を介して仕切り部12よりも上部に排出されるようになる。その後、周囲が充分冷却されると、仕切り部12よりも上部においても、上部抵抗部9を介して液相部分が排出されるようになり、下部分岐管10の周囲に液化ガスとして溜まるようになる。
【0024】
このようにして仕切り部12よりも上部に溜まった液化ガスによって、下部分岐管10が冷却される。下部分岐管10が螺旋状に形成されていることから仕切り部12より上部に貯留する液化ガスと接触する表面積が多くなるので、当該下部分岐管10を流れる液化ガスが十分に冷却され、気化しないものとなっている。また、第1液化ガス貯留部4に供給された液化ガスは仕切り部12よりも上部で一部が気化する。当該気化したガスについては、上部に設けられた保圧弁等の保圧機構13によって適宜圧力を調整されながら外部に排出される。
【0025】
一方、仕切り部12よりも下部においては、下部抵抗部11を介して第1液化ガス貯留部4に液化ガスが供給される。供給された液化ガスは、第1液化ガス貯留部4の下端から第2液化ガス貯留部5へと流下する。
【0026】
第2液化ガス貯留部5は、第1液化ガス貯留部4から供給される液化ガスを貯留するとともに、後述する液化ガス導出管6に導出する直方体形状の槽状の部材である。前記第1液化ガス貯留部4の仕切り部12よりも下側の部分が、当該第2液化ガス貯留部5の上部に挿入されている。
【0027】
また、当該第2液化ガス貯留部5内には、貯留される液化ガスの液面位置に応じて上下するフロートが設けられており、当該フロートの位置によって、前記第1液化ガス貯留部4の下端及び前記液化ガス導出管6の開閉が制御されるようになっている。また、当該第2液化ガス貯留部5の上部には、保圧弁等の保圧機構14が設けられており、内部で気化して上部に蓄積したガスが、適宜圧力を調整されながら外部に排出されるようになっている。
【0028】
液化ガス導出管6は、第2液化ガス貯留部5から供給される液化ガスを後述する滴下ノズル7に供給する配管である。当該液化ガス導出管6は、その開口部が、前記第2液化ガス貯留部5の底面よりも高い位置に設けられている(図1図3を参照。)。
【0029】
前記第2液化ガス貯留部5内のフロートは、第1形態例として、図1に示されるように、第1液化ガス貯留部4の下端の開閉を制御する供給用フロート15と、液化ガス導出管6の開閉を制御する滴下用フロート16とが設けられている。
【0030】
第2液化ガス貯留部5内部に液化ガスの供給が開始された直後は、図1(a)に示されるように、供給用フロート15のみが液面上にあって、第1液化ガス貯留部4は開いており、液化ガス導出管6は滴下用フロート16によって閉じられている。そのため、第2液化ガス貯留部5内部への液化ガスの貯留のみが行われ、液化ガス導出管6への液化ガスの導出は行われない。
【0031】
液化ガスの供給が進み、第2液化ガス貯留部5内部の貯留量が徐々に増えると、図1(b)に示されるように、供給用フロート15及び滴下用フロート16はともに液面上にあって、第1液化ガス貯留部4及び液化ガス導出管6はともに開けられている。そのため、第2液化ガス貯留部5内部への液化ガスの貯留が行われつつ、液化ガス導出管6への液化ガスの導出が行われる。
【0032】
第2液化ガス貯留部5内部の貯留量がさらに増えると、図1(c)に示されるように、供給用フロート15及び滴下用フロート16はともに液面上にありながら、供給用フロート15が第1液化ガス貯留部4の出口開口を塞ぐようになる。すると、第1液化ガス貯留部4は閉じられて、液化ガス導出管6は開けられている状態となる。そのため、第2液化ガス貯留部5内部への液化ガスの貯留は停止し、液化ガス導出管6への液化ガスの導出のみが行われるようになる。
【0033】
その後、液化ガスの導出が進むと、液面の位置が下がって、滴下用フロート16が液化ガス導出管6を閉じるようになる。すると、上記図1(a)と同様の状態となり、再び第2液化ガス貯留部5内部への液化ガスの貯留のみが行われ、液化ガス導出管6への液化ガスの導出は行われなくなる。そして、これ以降は、上記の動作を繰り返すようになる。液化ガスの貯留量は、第1液化ガス貯留部4の出口開口の位置と液化ガス導出管6の開口の位置で調節できる。また、フロートの動作は比較的緩やかであるため、液化ガスの供給圧力変動による冷却対象物への影響を少なくすることができる。
【0034】
図3は、本発明の第2形態例の液化ガス供給装置1aを示すものである。当該第2形態例において、フロートは、供給用兼滴下用フロート17を1つだけ設ける態様となっている。当該態様においては、第1液化ガス貯留部4の出口開口と液化ガス導出管6の開口とが一直線上に設けられている。それ以外は、上記第1形態例の液化ガス供給装置1と同様である。
【0035】
上記第2形態例において、第2液化ガス貯留部5内部への液化ガスの供給が開始された直後は、図3(a)に示されるように、供給用兼滴下用フロート17は液化ガス導出管6を閉じており、第1液化ガス貯留部4は開けられている。そのため、第2液化ガス貯留部5内部への液化ガスの貯留のみが行われ、液化ガス導出管6への液化ガスの導出は行われない。
【0036】
液化ガスの供給が進み、第2液化ガス貯留部5内部の貯留量が徐々に増えると、図3(b)に示されるように、供給用兼滴下用フロート17は液面上にあって、第1液化ガス貯留部4と液化ガス導出管6の中間に位置するようになり、第1液化ガス貯留部4と液化ガス導出管6はともに開けられる。そのため、第2液化ガス貯留部5内部への液化ガスの貯留が行われつつ、液化ガス導出管6への液化ガスの導出が行われる。
【0037】
第2液化ガス貯留部5内部の貯留量がさらに増えると、図3(c)に示されるように、供給用兼滴下用フロート17は液面上にあって、第1液化ガス貯留部4の出口開口を塞ぐようになる。すると、第1液化ガス貯留部4は閉じられ、液化ガス導出管6は開けられる。そのため、第2液化ガス貯留部5内部への液化ガスの貯留は停止し、液化ガス導出管6への液化ガスの導出のみが行われる。
【0038】
その後、液化ガスの導出が進むと、液面の位置が下がって、供給用兼滴下用フロート17が液化ガス導出管6を閉じる。すると、上記図3(a)と同様の状態となり、再び第2液化ガス貯留部5内部への液化ガスの貯留のみが行われ、液化ガス導出管6への液化ガスの導出は行われなくなる。そして、これ以降は、上記の動作を繰り返すようになる。
【0039】
滴下ノズル7は、液化ガス導出管6から供給される液化ガスを各種形状に変化させて外部へと放出するためのノズルであり、液化ガス導出管6の先端に設けられている。当該滴下ノズル7は、一例として、図4(a)に示されるような、スクリーン18を備え、放出される液化ガスをミスト状とすることができる。液化ガスをミスト状とすることで、例えばソフトクリームの表面凍結など、対象物の形状を維持したままの凍結が可能となる。また、別の例として、図4(b)に示されるような、絞り19を備える外筒付直管を備え、放出される液化ガスを滴状とすることもできる。液化ガスを滴状とすることで、缶飲料などの滴下供給による冷却が可能となる。
【0040】
以上のように構成された液化ガス供給装置1、1aを用いて、液化ガスの供給は以下のように行われる。
【0041】
まず、液化ガスが、液化ガス供給源2から液化ガス導入管3に供給される。液化ガス導入管3において、液化ガスは上部分岐管8と下部分岐管10の二股に分かれて供給される。この際に、管内部での液化ガスの保持圧力(第1の保持圧力)を、液化ガス供給時の10~50%となるようにしている。上部分岐管8の出口開口から放出される液化ガスは、上部抵抗部9を通過して、第1液化ガス貯留部4の仕切り部12よりも上部に蓄えられる。蓄えられた液化ガスの一部は気化して、保圧機構13を経て外部へ排出される。
【0042】
一方、下部分岐管10の出口開口から放出される液化ガスは、下部抵抗部11を通過して、前記仕切り部12よりも下部で、第1液化ガス貯留部4の下端から第2液化ガス貯留部5へと流下する。この際、液化ガスの保持圧力はさらに低下し、上記第1の保持圧力の10~50%となる。また、二股に分かれた液化ガスは、上部抵抗部9又は下部抵抗部11を通過することにより、圧力が低下する(例えば、0.19~0.15MPa。)。
【0043】
第2液化ガス貯留部5へ流下した液化ガスは、当該第2液化ガス貯留部5にて貯留され、内部に設けられたフロートによる開閉制御によって、液化ガス導出管6の開口部が開いた時に、当該液化ガス導出管6に供給される。この際、第2液化ガス貯留部5にて貯留されることで、液化ガスの圧力はさらに低下する(例えば、0.1~0.05MPa。)。そのため、低温を維持したままで低圧の液化ガスを供給することができる。
【0044】
また、第2液化ガス貯留部5において、貯留された液化ガスの一部は気化して、保圧機構14を経て外部へ排出される。一方、液化ガス導出管6に供給された液化ガスは、先端に設けられた滴下ノズル7から、ミスト状や滴状となって外部に放出される。
【0045】
図5には、上記液化ガス供給装置1aを用いた噴霧凍結装置20が示されている。当該噴霧凍結装置20は、上記液化ガス供給装置1aの他に、制御弁21、温度調節計22、噴霧ノズル23、冷却ジャケット24、凍結物取出弁25、排気ダンパー26を備えている。
【0046】
制御弁21は、液化ガス供給装置1aの液化ガス導出管6に設けられる開閉弁である。当該制御弁21は、温度調節計22と連動しており、噴霧領域(後述する冷却ジャケット24によって取り囲まれる部分)の温度によって、液化ガスの放出を制御する。
【0047】
噴霧ノズル23は、噴霧凍結の対象原料を前記噴霧領域において噴霧するためのノズルである。当該噴霧ノズル23は、対象原料の噴霧を行う時にのみ、後述する冷却ジャケット24に設けられたノズルゲート27を通過して噴霧領域に挿入される。
【0048】
冷却ジャケット24は、噴霧領域(対象原料の噴霧凍結を行うための領域)を形成するものである。当該冷却ジャケット24内部には、保圧機構13及び保圧機構14から排出される液化ガスの気化したもの(気相部分)が供給され、冷却状態を保つようになっている。なお、当該冷却ジャケット24は保冷材(図示せず)で覆われており、外気温から保冷されている。また、当該冷却ジャケット24には、前記噴霧ノズル23を前記噴霧領域に挿入するためのノズルゲート27が設けられている。
【0049】
凍結物取出弁25は、前記冷却ジャケット24の下部において、対象原料の凍結物を回収するための弁である。当該弁が開かれた時のみ、凍結物が外部に排出される。
【0050】
排気ダンパー26は、噴霧領域において気化した液化ガスを排出するためのものであり、当該排気ダンパー26の外部は大気に開放されている。
【0051】
以上のように構成された噴霧凍結装置20を用いて、対象原料の噴霧凍結は以下のように行われる。
【0052】
まず、噴霧凍結装置20全体の予冷を行う。液化ガス供給装置1aにおいて、液化ガス導出管6に液化ガスが供給されると、制御弁21及び温度調節計22を起動して、液化ガスを、滴下ノズル7のスクリーン18から低圧低温のミスト状で放出し、装置全体を冷却する。装置全体が所定の温度(例えば-40℃以下)まで冷却されると、制御弁21が閉じて予冷が完了する。この際、噴霧領域において気化した液化ガスは、排気ダンパー26を通じて外部に排出される。
【0053】
次に、噴霧ノズル23をノズルゲート27を介して噴霧領域に挿入し、対象原料を噴霧する。装置内は上述の予冷によって所定の温度まで冷却されているので、対象原料は噴霧すると瞬時に凍結し、凍結物となって下部に落下する。また、冷却ジャケット24は、保圧機構13及び保圧機構14から排出される気相部分によって冷却されており、凍結物が付着することはない。凍結物が噴霧領域の下部にある程度溜まると、凍結物取出弁25を開いて、凍結物を回収する。
【0054】
なお、上記対象原料の噴霧凍結において、液化ガスはスクリーン18を通じて低圧低温のミスト状で供給されている。そのため、液化ガスの噴霧時の自圧によって対象原料に及ぼす影響が小さい。よって、前記微粒子は凍結されると、気化した液化ガスに同伴することなく、確実に下部に落下する。そのため、前記微粒子が冷却ジャケット24の壁面に付着することや、液化ガスの気相部分に同伴して排気ダンパー26から排出されることを防止することができる。
【0055】
上記各形態例における液化ガス供給装置及び噴霧凍結装置によれば、第1液化ガス貯留部と第2液化ガス貯留部とを設けることで、液化ガスの気液分離機構を2段階として、段階的に圧力を下げることができるとともに、第2液化ガス貯留部において、導入・導出の開閉をフロート式により制御することで、液化ガスを低圧で連続供給することが可能となる。
【0056】
なお、上記各形態例において、液化ガスとしては、使用環境や対象物の性状に応じて液体窒素をはじめとする各種液化ガスを用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1、1a・・・液化ガス供給装置、2・・・液化ガス供給源、3・・・液化ガス導入管、4・・・第1液化ガス貯留部、5・・・第2液化ガス貯留部、6・・・液化ガス導出管、7・・・滴下ノズル、8・・・上部分岐管、9・・・上部抵抗部、10・・・下部分岐管、11・・・下部抵抗部、12・・・仕切り部、13、14・・・保圧機構、15・・・供給用フロート、16・・・滴下用フロート、17・・・供給用兼滴下用フロート、18・・・スクリーン、19・・・絞り、20・・・噴霧凍結装置、21・・・制御弁、22・・・温度調節計、23・・・噴霧ノズル、24・・・冷却ジャケット、25・・・凍結物取出弁、26・・・排気ダンパー、27・・・ノズルゲート
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4(a)】
図4(b)】
図5