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特許7558916管継手、管接続構造、管継手と波付管の接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】管継手、管接続構造、管継手と波付管の接続方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/00 20060101AFI20240924BHJP
   F16L 21/02 20060101ALI20240924BHJP
   F16L 21/08 20060101ALI20240924BHJP
   F16L 33/28 20060101ALI20240924BHJP
   F16L 37/12 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
F16L33/00 B
F16L21/02 A
F16L21/08 B
F16L33/28
F16L37/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021168151
(22)【出願日】2021-10-13
(65)【公開番号】P2023058250
(43)【公開日】2023-04-25
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100156410
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 輝和
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】芳谷 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠広
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-100878(JP,A)
【文献】特開2009-275840(JP,A)
【文献】特開2009-007703(JP,A)
【文献】実開昭62-054390(JP,U)
【文献】実開昭62-184279(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0074033(KR,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0325929(KR,Y1)
【文献】特開平07-198076(JP,A)
【文献】実開平06-080315(JP,U)
【文献】実開昭62-154723(JP,U)
【文献】特開2005-321103(JP,A)
【文献】特開2004-336953(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0007049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/00
F16L 21/02
F16L 21/08
F16L 33/28
F16L 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の本体部材と、
前記本体部材の内面に設けられた止水部材と、
前記本体部材に取り付けられ、独立波を有する波付管の谷部を保持するための複数の保持爪を有する保持部材と、
前記保持部材を外周から覆うように配置され、前記本体部材に固定される止め具と、
を具備する波付管を接続する管継手であって、
前記波付管挿入時に、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部が前記本体部材の内部に挿入され、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部が、前記止水部材と接触し、
前記止水部材が、前記保持部材によって軸方向に圧縮されていて、
さらに、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部近傍において、外周部に突起が形成され、
前記本体部材に設けられた孔に前記突起が挿入されて前記保持部材が前記本体部材に固定されることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記止水部材は水膨張性不織布であり、
前記止水部材は、端部同士が重なり合うように丸められて、前記本体部材の内部に配置され、
前記止水部材の少なくとも重なり部が熱圧縮されていることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の管継手を用いた管接続構造であって、
前記管継手の端部から波付管が挿入されて接続されていることを特徴とする管接続構造。
【請求項4】
前記波付管は、外周部に軟質塩化ビニルが被覆された複層管であることを特徴とする請求項3記載の管接続構造。
【請求項5】
円筒状の本体部材と、
前記本体部材の内面に設けられた水膨張性不織布からなる止水部材と、
前記本体部材に取り付けられ、独立波を有する波付管の谷部を保持するための複数の保持爪を有する保持部材と、
前記保持部材を外周から覆うように配置され、前記本体部材に固定される止め具と、
を具備する波付管を接続する管継手の接続方法であって、
前記波付管挿入時に、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部が前記本体部材の内部に挿入され、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部が、前記止水部材と接触し、
前記止水部材の保持部材側の端部が、前記保持部材によって軸方向に僅かに圧縮されることで、前記止水部材の当該部位の剛性を高めて、前記止水部材のめくれ上がりを防止することができ、
さらに、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部近傍において、外周部に突起が形成され、
前記本体部材に設けられた孔に前記突起が挿入されて前記保持部材が前記本体部材に固定されることを特徴とする管継手と波付管の接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から水が浸入することがなく防水性に優れ、管体の接続が容易な、管継手管接続構造及び管継手と波付管の接続方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線等の保護管として、鋼管や樹脂性の波付可撓管等が使用されている。これらの保護管は、必要に応じて保護管同士が接続され、または保護管と配線ボックスやスイッチボックス等とが接続されて使用される。これら保護管の接続部には、管継手が使用される。管継手の内部には、電線等が通されるため、特に屋外に使用される管継手には高い防水性が要求される。
【0003】
このような、防水性を有する管継手としては、例えば、円筒状の本体部の内部に内径が縮径された突き当て部を設け、突き当て部に止水部材を配置し、本体部の外部に波付管を保持する保持部と締め付け部とを配置した管継手が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-154488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の管継手では、波付管を突き当て部まで挿入するだけで、波付管が保持部材で保持されるため、容易に波付管を管継手に接続することができる。この際、波付管の端面と止水部材とが密着して管継手と波付管との間の止水性を確保することができる。
【0006】
しかし、例えば地中で使用するような場合など、より高い止水性を確保しようとすると、止水部材を波付管の端面のみと密着させたのでは十分ではない。このため、止水部材と波付管との密着面積をより広くする必要がある。このような方法としては、波付管の外周面と止水部材とを密着させる方法がある。
【0007】
図12(a)は、管継手100に波付管109を挿入する状態を示す図である。管継手100は、主に、本体部材101、止水部材103、保持部材105、止め具107等から構成される。本体部材101の内面には、止水部材103が配置される。また、保持部材105は、波付管109を保持するために、先端側に多数の保持爪が形成され、本体部材101に固定される。止め具107は、保持部材105を覆うように配置されて、本体部材101と接続される。
【0008】
この状態から、波付管109を管継手100に完全に挿入することで、保持部材105によって波付管109の外面が保持されて抜けが防止される。また、波付管109の外面が止水部材103と密着して、止水性を確保することができる。
【0009】
しかし、図12(b)に示すように、波付管109を挿入した際に、波付管109の端面で止水部材103がめくりあがる場合がある(図中X部)。特に、波付管109は多少傾いた状態で挿入される場合もあり、このような状態で波付管109が管継手100に挿入されると、止水部材103が周方向に均一に変形せずに、めくり上がりの要因となる。このようになると、止水部材103と波付管109の外面とを確実に密着させることができなくなり、所望の止水性を確保することができなくなる。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、管体の接続が容易であり、より確実に止水性を確保することが可能な管継手等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、円筒状の本体部材と、前記本体部材の内面に設けられた止水部材と、前記本体部材に取り付けられ、独立波を有する波付管の谷部を保持するための複数の保持爪を有する保持部材と、前記保持部材を外周から覆うように配置され、前記本体部材に固定される止め具と、を具備する波付管を接続する管継手であって、前記波付管挿入時に、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部が前記本体部材の内部に挿入され、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部が、前記止水部材と接触し、前記止水部材が、前記保持部材によって軸方向に圧縮されていて、さらに、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部近傍において、外周部に突起が形成され、前記本体部材に設けられた孔に前記突起が挿入されて前記保持部材が前記本体部材に固定されることを特徴とする管継手である。
【0014】
前記止水部材は水膨張性不織布であり、前記止水部材は、端部同士が重なり合うように丸められて、前記本体部材の内部に配置され、前記止水部材の少なくとも重なり部が熱圧縮されていてもよい。
【0015】
第1の発明によれば、本体部材の内部に保持部材が配置され、保持部材と接触するように止水部材が配置されるため、保持部材と止水部材との間に隙間が形成されることがない。すなわち、止水部材の端面全体が露出することがない。このため、波付管を挿入した際に、波付管が隙間側に入り込むなどして、止水部材がめくれ上がることを抑制することができる。
【0016】
特に、止水部材が、保持部材によって軸方向に圧縮されていれば、止水部材の端部側の剛性をわずかに高くすることができるため、当該部位の止水部材の変形を抑制し、さらに止水部材のめくれ上がりを抑制することができる。
【0017】
また、保持部材の突起を本体部材に設けられた孔に挿入することで、保持部材を確実に本体部材に固定することができる。
【0018】
また、水膨張性不織布である止水部材を、端部同士が重なり合うように丸めることで、周方向に隙間なく止水部材を配置できる。また、少なくとも重なり部が熱圧縮されていれば、周方向の厚み変化が少なく、止水部材のめくれ上がりを抑制することができる。
【0019】
第2の発明は、第1の発明にかかる管継手を用いた管接続構造であって、前記管継手の端部から波付管が挿入されて接続されていることを特徴とする管接続構造である。
【0020】
前記波付管は、外周部に軟質塩化ビニルが被覆された複層管であってもよい。
第3の発明は、円筒状の本体部材と、前記本体部材の内面に設けられた水膨張性不織布からなる止水部材と、前記本体部材に取り付けられ、独立波を有する波付管の谷部を保持するための複数の保持爪を有する保持部材と、前記保持部材を外周から覆うように配置され、前記本体部材に固定される止め具と、を具備する波付管を接続する管継手の接続方法であって、前記波付管挿入時に、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部が前記本体部材の内部に挿入され、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部が、前記止水部材と接触し、前記止水部材の保持部材側の端部が、前記保持部材によって軸方向に僅かに圧縮されることで、前記止水部材の当該部位の剛性を高めて、前記止水部材のめくれ上がりを防止することができ、さらに、前記保持部材の前記保持爪の先端とは逆側の端部近傍において、外周部に突起が形成され、前記本体部材に設けられた孔に前記突起が挿入されて前記保持部材が前記本体部材に固定されることを特徴とする管継手と波付管の接続方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、管体の接続が容易であり、より確実に止水性を確保することが可能な管継手等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】管継手1の分解斜視図。
図2】管継手1の組み立て斜視図。
図3】管継手1の分解断面図。
図4】管継手1の組み立て断面図。
図5】(a)、(b)は、管継手1の組立状態を示す断面図。
図6】(a)は、管継手1の組立状態を示す断面図、(b)、(c)は突起21近傍の拡大図。
図7】管継手1に波付管19が挿入された状態の断面図。
図8】管継手1aの分解斜視図。
図9】管継手1aの組み立て斜視図。
図10】管継手1aの断面図。
図11】管継手1aに波付管19が挿入された状態の断面図。
図12】(a)、(b)は、従来の管継手100へ波付管109を挿入する工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態にかかる管継手1について説明する。図1は、管継手1の分解斜視図であり、図2は、管継手1の組み立て斜視図である。また、図3は、管継手1の分解断面図であり、図4は、管継手1の組立断面図である。
【0024】
管継手1は、主に、本体部材3、止水部材5、保持部材7、止め具9等から構成される。本体部材3は例えば樹脂製であり、両端部が開口する略円筒状である。本体部材3の両端部の外周部には雄ねじ部11が形成される。雄ねじ部11は後述する止め具9が締めこまれる部位である。本体部材3(雄ねじ部11)には、周方向に所定の間隔で孔23が形成される。なお、管継手1は、軸方向の両端が対称に現れるため、一方の構造について説明する。
【0025】
本体部材3の内面には、止水部材5が設けられる。止水部材5は、例えば水膨張性の不織布であり、端部が重なり合うように丸められて本体部材3の内部に配置される。水膨張性の不織布は、ポリエステル繊維等の基材に吸水性ポリマー繊維を配合した不織布である。なお、止水部材5は、接着剤や両面テープ等によって本体部材3の内面に接着されて固定される。
【0026】
止水部材5に対して本体部材3の開口端部側には、保持部材7が配置される。保持部材7は、例えば、可撓性を有する樹脂性部材である。保持部材7には、本体部材3に取り付けられ、独立波を有する波付管の谷部を保持するための複数の保持爪15が設けられる。
【0027】
より詳細には、保持部材7は、リング状であり、保持部材7の一方の先端部には複数の保持爪15が内周方向に向けて設けられ、周方向には複数の切れ目が設けられる。すなわち、保持部材7は、それぞれの保持爪15の部位で弾性変形可能である。なお、保持爪15は、保持部材7の先端側から波付管を挿入する際には、挿入抵抗が小さくなるようなテーパ形状を有し、波付管を抜き去る際には波付管に引っ掛かるような爪形状を有する。
【0028】
保持部材7の一端近傍(保持爪15が設けられた側とは他方の端部側)の外周部には、周方向に所定の間隔で突起21が設けられる。突起21は、端部側から外径が徐々に大きくなるように爪状に形成される。前述したように、本体部材3には、周方向に所定の間隔で孔23が形成されるため、保持部材7を本体部材3の内部へ挿入し、本体部材3に設けられた孔23に突起21を挿入することで、保持部材7を本体部材3に固定することができる。
【0029】
本体部材3の端部には、保持部材7を外周から覆うように止め具9が配置される。止め具9は、略円筒状の部材であり、内部には、雌ねじ部13が設けられる。止め具9の雌ねじ部13を本体部材3の雄ねじ部11と螺合させることで、止め具9が本体部材3に固定される。
【0030】
図2に示すように、管継手1を組み立てた状態で両端側からそれぞれ波付管19を管継手1に挿入することで、波付管19の外面の凹凸と保持部材7の保持爪15とが噛み合い、管継手1とそれぞれの波付管19が接続され、管接続構造20が形成される。
【0031】
次に、管継手1の組立方法について詳細に説明する。図5(a)は、止水部材5を本体部材3の内面に配置した状態を示す断面図である。前述したように、止水部材5は、端部が互いに重なり合うように丸められて、本体部材3の内面に接着等によって固定される。このようにすることで、止水部材5を隙間なく全周に配置することができる。
【0032】
この際、止水部材5の重なり部17は、他の部位と比較して厚みが厚くなる。このため、波付管の挿入時の妨げとなるおそれがある。そこで、水膨張性不織布からなる止水部材の場合、図5(b)に示すように、止水部材5の少なくとも重なり部を熱圧縮によって本体部材3の内面方向に押しつぶす(図中矢印A)。このようにすることで、止水部材5の周方向の厚み変化が小さくなり、略均一な厚みとすることができる。また、水膨張性不織布は、多少の厚みバラツキを有するが、所定の内径に熱圧縮することで、このようなばらつきを低減して、所望の内径にすることができる。
【0033】
また、水膨張性不織布は、熱圧縮によってわずかに剛性が高くなるため、波付管の挿入時のめくれ上がりを抑制することができる。なお、熱圧縮量が大きすぎると、熱圧縮後の止水部材5の柔軟性が低減して、波付管の外面の凹凸に十分に追従できなくなるため、挿入する波付管の外径や凹凸を考慮して、熱圧縮は最小限とすることが望ましい。
【0034】
次に、図6(a)に示すように、保持部材7を本体部材3の端部に取り付ける。保持部材7の外径(突起21を除く)は、本体部材3の内径よりもわずかに小さいか、内径と略同一であり、保持部材7の端部(保持爪15の先端とは逆側の端部)が本体部材3の内部に挿入される。
【0035】
ここで、前述したように、保持部材7の端部の外周面には突起21が形成され、本体部材3の孔23に嵌合する。このため、保持部材7を本体部材3へ挿入する際には、保持部材7(突起21)が変形し、突起21が本体部材3の孔23の位置に来た際に、復元力によって突起21が孔23に嵌り、両者が固定される。
【0036】
図6(b)は、保持部材7の突起21が孔23に嵌る直前の状態の部分断面図(図6(a)のB部拡大図)を示す図であり、図6(c)は、保持部材7の突起21が孔23に嵌った状態を示す図である。図6(b)に示すように、保持部材7が完全に挿入される直前に、保持部材7の先端部は止水部材5の端面と接触する。
【0037】
この状態から保持部材7をさらに押し込むことで、図6(c)に示すように、保持部材7は、わずかに止水部材5の端面を押し込み(図中矢印C)、突起21が孔23に固定される。すなわち、保持部材7の一端は止水部材5と接触して、保持部材7と止水部材5との間の隙間が形成されることがない。
【0038】
このようにすることで、波付管を挿入時に、止水部材5のめくれ上がりを抑制することができる。例えば、保持部材7と止水部材5との間に隙間が形成されると、波付管が多少斜めに挿入された際に、波付管の端部が隙間側に入り込み、止水部材5を剥がすように波付管が挿入される恐れがある。しかし、保持部材7と止水部材5との間に隙間がないと、このようなことが生じにくく、また、止水部材5の上端が保持部材7によって押さえられているため、止水部材5のめくれ上がりを抑制することができる。
【0039】
特に、止水部材5の保持部材7側の端部が、保持部材7によって軸方向にわずかに圧縮されているため、水膨張性不織布からなる止水部材の場合、圧縮によって当該部位の剛性をわずかに高めることができる。すなわち、止水部材5の保持部材7側の端部のそれ以上の変形が抑制される。このため、波付管を挿入した際における、止水部材5のめくれ上がり等の変形を抑制することができる。
【0040】
なお、止水部材5の内径は、保持部材7の内径よりも小さいため、保持部材7と止水部材5の境界部において段差が形成される。このため、波付管を挿入した際に、段差によって止水部材5のめくれ上がりが懸念される。しかし、前述したように、保持部材7の一端が止水部材5と接触して、保持部材7と止水部材5との間の隙間をなくすことで、波付管を挿入した際における止水部材5のめくれ上がりが抑制されている。このため、波付管を挿入した際に、止水部材5は波付管によって主に外径方向に圧縮変形して、波付管と止水部材5とを密着させることができる。
【0041】
なお、例えば、特許文献1のように、保持部材を本体部材の端部側(外部)に配置して、保持部材と本体部材の内径を合わせるようにする場合には、止水部材の端面が全て露出する。このため、本体部材の内面に配置される止水部材の厚みが全て段差となる。このため、波付管の端部が止水部材に引っかかりやすく、めくれあがりの要因となりやすい。しかし、本実施形態では、止水部材5とともに保持部材7も本体部材3の内面側に配置されている。このため、止水部材5による段差を、保持部材7の厚みによって緩和することができ、段差の影響を小さくすることができる。
【0042】
また、本体部材3の奥側に止水部材5が配置されているため、保持部材7を取り付ける際に、保持部材7を過剰に押し込みすぎることを抑制することができる。このため、保持部材7を確実に所定の部位で固定することができる。
【0043】
保持部材7を取り付けた後、最後に、保持部材7を覆うように、止め具9を本体部材3に固定する。以上により、管継手1を組み立てることができる。
【0044】
図7は、管継手1を用いた管接続構造20を示す図である。前述したように、管継手1は、両端のそれぞれにおいて、止水部材5、保持部材7及び止め具9が配置される。一対の波付管19は管継手1の両端から挿入されて接続される。なお、波付管19を挿入する際には、保持爪15のテーパ形状によって、波付管19は保持爪15に引っ掛かることなく挿入可能である。波付管19が、管継手1に完全に挿入された状態においては、波付管19の外面の谷部に保持爪15が引っ掛かり、波付管19は管継手1から抜けることはない。
【0045】
また、波付管19を挿入する際に、保持部材7は、波付管19によって本体部材3の奥に押し込まれる方向の力を受ける。しかし、本体部材3の保持部材7が配置されている部位の奥側には、止水部材5が配置されているため、保持部材7が本体部材3の奥側に押し込まれることを抑制することができる。
【0046】
また、この状態において、波付管19の外面で止水部材5が押しつぶされて密着する。止水部材5は大きな変形量を有するため、波付管19の外面形状に追従することができ、確実に止水をすることができる。
【0047】
ここで、波付管19としては、例えば、ポリオレフィン樹脂管の外周面に軟質塩化ビニルが被覆された複層管であることが望ましい。このようにすることで、耐候性と難燃性を高めることができる。一方で、軟質塩化ビニルは傷がつきやすいため、止水部材5との間に隙間が生じる恐れがある。これに対し、止水部材5として、ゴムパッキン等と比較して柔軟な水膨張性不織布を用いることで、波付管19の表面の傷による凹凸にも追従して、止水性を確保することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態にかかる管継手1によれば、止水部材5を波付管19の外周面に密着させることで、高い止水性を確保することができる。この際、止水部材5の端面を保持部材7と接触させることで、波付管19を挿入する際の止水部材5のめくれ上がりを抑制することができる。
【0049】
特に、止水部材5の端部が、保持部材7によって圧縮されていることで、確実に保持部材7を止水部材5の端面へ接触させることができるとともに、止水部材5の端部近傍のそれ以上の変形を抑制して、波付管19を挿入する際の止水部材5のめくれ上がりをより確実に抑制することができる。
【0050】
また、止水部材5は、端部が互いに重なり合うように丸められるため、周方向に隙間が生じることがなく、全周にわたって止水性を確保することができる。また、少なくとも重なり部17が熱圧縮されていれば、周方向の厚み変化を小さくすることができる。
【0051】
また、管継手1には、複数の保持爪15が設けられ、波付管19を挿入する際には、ワンタッチで挿入が可能であり、波付管19は、管継手1へ挿入後には確実に管継手1に接合される。したがって、都度パッキン等を波付管19へ取り付けることなく、極めて容易に一対の波付管19同士を接合することができる。
【0052】
次に、他の実施の形態にかかる管継手1aについて説明する。以下の実施の形態において、図1図7に示す管継手1と同一の機能を果たす構成要素には、図1図7と同一番号を付し、重複した説明を避ける。本実施の形態にかかる管継手1aは管継手1とほぼ同様の構成であるが、管継手1aは管継手1に対して、一方の端部に雄ねじ部31およびフランジ33が設けられる点で異なる。
【0053】
図8は、管継手1aの分解斜視図である。管継手1aは、主に、本体部材3a、止水部材5、保持部材7、止め具9、ナット35等から構成される。
【0054】
本体部材3aは筒状部材であり、一方の端部に、止め具9と接合可能な雄ねじ部11を有し、本体部材3aの他方の端部は、雄ねじ部11よりも径の小さな雄ねじ部31が設けられる。また、本体部材3aの他方の端部近傍には、外周方向に張り出したフランジ33が全周にわたって設けられる。
【0055】
本体部材3aの一方の端部側(雄ねじ部11側)には、内部に、奥側から順に止水部材5、保持部材7が配置され、止め具9が雄ねじ部11に固定される。すなわち、管継手1aの一方の端部側は、管継手1と同様の構造である。
【0056】
本体部材3aの他端側(雄ねじ部31側)は、内部に止水部材5等は配置されない。雄ねじ部31は、ナット35と螺合可能である。また、本体部材3aの他端側からは、キャップ37を本体部材3aの内部に挿入可能である。キャップ37によって、本体部材3aの内部に、水分や埃等が浸入することを防ぐことができる。
【0057】
図9は、組み立てられた状態の管継手1aの斜視図であり、図10は、組み立てられた状態の管継手1aの断面図である。本体部材3aの雄ねじ部31は、配線ボックスやスイッチボックスなどの周辺部材の壁体39に挿入され、壁体39の反対側よりナット35で固定される。
【0058】
壁体39には、あらかじめ雄ねじ部31が挿入可能な孔が設けられる。孔の径は、フランジ33よりも小さいため、管継手1aは、壁体39とフランジ33で接触する。壁体39の反対面側からは、ナット35が雄ねじ部31と接合される。したがって、管継手1aは、壁体39にナット35及びフランジ33で挟み込まれて固定される。雄ねじ部31の内部には、キャップ37が設けられる。キャップ37は、管継手1aに電線等が挿入される際には撤去される。
【0059】
なお、管継手1aに挿入される波付管19の内径よりも、雄ねじ部31の内径が大きければ、内部に電線等を挿入する際に電線等が雄ねじ部31内部に引っ掛かることがないため望ましい。また、壁体39とフランジ33との間に、パッキン等の止水部材を設ければ、より確実に防水性を確保することができる。
【0060】
図11は、管継手1aが波付管19に挿入された管接続構造20aを示す図である。波付管19は、本体部材3aの端部(止め具9側)へ挿入される。波付管19が完全に管継手1aに挿入されると、波付管19の外周面で止水部材5が押しつぶされて密着する。この際、波付管19は、保持爪15によって保持される。
【0061】
本実施形態にかかる管継手1aによれば、管継手1と同様の効果を得ることができる。また、波付管19の防水性を確保しつつ、容易に、周辺部材である配線ボックスやスイッチボックス等へ接続することができる。
【0062】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
1、1a………管継手
3、3a………本体部材
5………止水部材
7………保持部材
9………止め具
11………雄ねじ部
13………雌ねじ部
15………保持爪
17………重なり部
19………波付管
20、20a………管接続構造
21………突起
23………孔
31………雄ねじ部
33………フランジ
35………ナット
37………キャップ
39………壁体
100………管継手
101………本体部材
103………止水部材
105………保持部材
107………止め具
109………波付管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12