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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】レーザー光熱転写フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20240924BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20240924BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240924BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240924BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240924BHJP
   H05K 3/00 20060101ALN20240924BHJP
【FI】
B32B27/34
C09J7/29
B32B7/027
B32B27/18 Z
B32B7/06
H05K3/00 X
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021194904
(22)【出願日】2021-11-30
(65)【公開番号】P2023081173
(43)【公開日】2023-06-09
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】柏木 努
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0238592(US,A1)
【文献】特開2020-188261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0168498(US,A1)
【文献】特開2001-301345(JP,A)
【文献】特開2012-121300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 1/00-201/10
H01L 21/447-21/449,21/52,21/58,21/60-21/607
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム、光熱変換層、粘着層の順に三層が積層されたレーザー光熱転写フィルムであって、前記光熱変換層は、一般式(1)で示される赤外線光吸収剤、及び、下記一般式(3)及び/又は一般式(4)で示されるビスマレイミド樹脂を含有する常温で固体のものであることを特徴とするレーザー光熱転写フィルム。
【化1】
(一般式(1)中、pは、1または2であり、RからRは、それぞれ独立して炭素数1から10の置換または非置換の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1から8のアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキルアミノ基で置換されていてもよく、Xは、下記一般式(2)で示されるフルオロアルキル・フォスフェイト陰イオンである。)
【化2】
(一般式(2)中、xは0または1であり、yは1、2または3であり、zは6-yであり、RからR13はそれぞれ独立して水素またはフッ素である。)
【化3】
(一般式(3)中、Aは芳香族環または脂肪族環を含む4価の有機基を示す。Qは炭素数6以上の直鎖アルキレン基を示す。Rはそれぞれ独立して炭素数6以上の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。nは1~10の整数を表す。)
【化4】
(一般式(4)中、A’は芳香族環または脂肪族環を含む4価の有機基を示す。Bは2価のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族環を有する炭素数6から18のアルキレン鎖である。Q’は炭素数6以上の直鎖アルキレン基を示す。R’はそれぞれ独立に炭素数6以上の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。n’は1~10の整数を表す。mは1~10の整数を表す。)
【請求項2】
前記粘着層を構成する粘着剤が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エポキシ、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、及び、シリコーン樹脂から選択される、1又は2以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のレーザー光熱転写フィルム。
【請求項3】
前記光熱変換層に含まれる前記赤外線光吸収剤の含有量が1~15質量%であり、ビスマレイミド樹脂が85~99質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザー光熱転写フィルム。
【請求項4】
前記粘着層の厚みが1~10μmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のレーザー光熱転写フィルム。
【請求項5】
前記光熱変換層の厚さが0.1~20μmであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザー光熱転写フィルム。
【請求項6】
前記赤外線光吸収剤の最大吸収波長が780~1500nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレーザー光熱転写フィルム。
【請求項7】
前記粘着層の粘着力が0.1~10N/25mmのものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のレーザー光熱転写フィルム。
【請求項8】
前記基材フィルムが透明な熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のレーザー光熱転写フィルム。
【請求項9】
前記ビスマレイミド樹脂の硬化物の熱分解開始温度が300℃以上でガラス転移温度が150℃以下、且つガラス転移温度以上での熱膨張係数が100ppm/℃以上であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のレーザー光熱転写フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルム、レーザー照射により発熱、膨張する光熱変換層及び粘着層が順次積層しているレーザー光熱転写フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光熱転写フィルムに使用される光熱変換用の光吸収剤としては、赤外線吸収染料、顔料、金属材料などが使用される。赤外線吸収染料はレーザー光熱転写に使用される典型的な赤外線レーザー波長の範囲である近赤外線領域で最大吸光度のピークを持ちつつも、700nm以下の可視光線領域では比較的低い吸光度を示す材料を幅広く選択することができるというメリットがある。
【0003】
例えば、特許文献1では808nmレーザーに使用するのに適したイメージ形成放射線吸収剤の材料として、プルシアンブルー(Prussian Blue、or ピグメントブルー27)、銅フタロシアニン(ピグメントブルー15)、ポリメチン染料、シアニン染料などが開示されている。
【0004】
一方、特許文献2では650-1200nm波長での光熱変換層の最大吸光度が400-650nmの波長での光熱変換層の最大吸光度よりサイズが3倍以上大きい光熱変換層に適用することができる染料として、インドールリウム塩(indolium salts)またはベンゾインドールリウム塩(benz[e]indolium salts))系列の染料が開示されている。ベンゾインドールリウム塩の例を以下に示す。
【化1】
【0005】
特許文献3には、レーザー光熱転写用の光吸収剤として、フタロシアニン系列化合物の金属錯化合物が開示されている。フタロシアニン-金属錯化合物の例を以下に示す。しかし、上記の染料を使用する場合、可視光線領域での透過率が不十分なため、製造された転写フィルムの品質検査や、レシーバー要素との整列などに問題がある。
【化2】
(Mはいくつかの水素原子、二価金属、三価金属誘導体、または四価金属誘導体を表し、R~Rはそれぞれアルキル基またはアルコキシアルキル基を表し、X~Xは、それぞれ硫黄またはNR9を表し、X=(XまたはXのいずれか)=(XまたはXのいずれか)=(XまたはXのいずれか)=硫黄とX=(XとXのもう一方)=(XとXのもう一方)=(もう一方のXおよびX)=NR9;Rは水素またはアルキルを表す。但し上記R等は上記式についてのみ適用する。)
【0006】
特許文献4には基材フィルム、光熱変換層及び粘着層からなる光熱転写用フィルムが開示されている。この特許では赤外線レーザー照射後、光熱変換層が膨張することで特定の位置に転写体を転写することができるものである。上記のバインダーとして、アクリル系列の樹脂(ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリル酸またはこれらとポリオレフィンの共重合体として。これらは-OH、-COOHのような親水性官能基を持つか、持たないことがある。)が例示されている。これらの樹脂は耐熱性が不足し、且つ熱膨張係数も小さいことから転写能力としては低いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】大韓民国公開第2009-0034364号公報
【文献】大韓民国公開第2007-0067725号公報
【文献】米国特許第6,066,729号公報
【文献】大韓民国公開第2019-0106498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、膨張率の大きいビスマレイミド樹脂を光熱変換層のバインダーに用いることにより、レーザー照射の後、光熱変換層が大きく膨張することで転写特性が改善されたレーザー光熱転写フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、
基材フィルム、光熱変換層、粘着層の順に三層が積層されたレーザー光熱転写フィルムであって、前記光熱変換層は、一般式(1)で示される赤外線光吸収剤、及び、下記一般式(3)及び/又は一般式(4)で示されるビスマレイミド樹脂を含有する常温で固体のものであることを特徴とするレーザー光熱転写フィルムを提供する。
【化3】
(一般式(1)中、pは、1または2であり、RからRは、それぞれ独立して炭素数1から10の置換または非置換の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1から8のアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキルアミノ基で置換されていてもよく、Xは、下記一般式(2)で示されるフルオロアルキル・フォスフェイト陰イオンである。)
【化4】
(一般式(2)中、xは0または1であり、yは1、2または3であり、zは6-yであり、RからR13はそれぞれ独立して水素またはフッ素である。)
【化5】
(一般式(3)中、Aは芳香族環または脂肪族環を含む4価の有機基を示す。Qは炭素数6以上の直鎖アルキレン基を示す。Rはそれぞれ独立して炭素数6以上の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。nは1~10の整数を表す。)
【化6】
(一般式(4)中、A’は芳香族環または脂肪族環を含む4価の有機基を示す。Bは2価のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族環を有する炭素数6から18のアルキレン鎖である。Q’は炭素数6以上の直鎖アルキレン基を示す。R’はそれぞれ独立に炭素数6以上の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。n’は1~10の整数を表す。mは1~10の整数を表す。)
【0010】
このようなレーザー光熱転写フィルムであれば、転写特性が改善されたレーザー光熱転写フィルムを提供することができる。
【0011】
また、本発明では、前記粘着層を構成する粘着剤が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エポキシ、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド、及び、シリコーン樹脂から選択される、1又は2以上の組み合わせであることが好ましい。
【0012】
このようなものがレーザー光熱転写フィルムの粘着剤として好ましい。
【0013】
また、本発明では、前記光熱変換層に含まれる前記赤外線光吸収剤の含有量が1~15質量%であり、ビスマレイミド樹脂が85~99質量%であることが好ましい。
【0014】
このようなレーザー光熱転写フィルムであれば、赤外線光吸収剤はバインダー樹脂内に好適に分散でき、レーザー照射により十分な発熱を起こすことができる。
【0015】
また、本発明では、前記粘着層の厚みが1~10μmであることが好ましい。
【0016】
このようなレーザー光熱転写フィルムであれば、粘着力が十分であり、転写体の付着が良く、レーザー照射の後、転写特性の制御がしやすくなる。
【0017】
また、本発明では、前記光熱変換層の厚さが0.1~20μmであることが好ましい。
【0018】
このようなレーザー光熱転写フィルムであれば、レーザー照射による局所的な熱の吸収により光熱変換層が膨張して転写を容易にすることができる。
【0019】
また、本発明では、前記赤外線光吸収剤の最大吸収波長が780~1500nmの範囲内であることが好ましい。
【0020】
このようなレーザー光熱転写フィルムであれば、近赤外線による光熱変換の効率が高いものとなる。
【0021】
また、本発明では、前記粘着層の粘着力が0.1~10N/25mmのものであることが好ましい。
【0022】
このようなレーザー光熱転写フィルムであれば、転写体をレーザー照射によって転写基板へ良好に転写することができる。
【0023】
また、本発明では、前記基材フィルムが透明な熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0024】
このような基材フィルムであれば、基材フィルム側からレーザー光を照射して光熱変換層を膨張させることができる。
【0025】
また、本発明では、前記ビスマレイミド樹脂の硬化物の熱分解開始温度が300℃以上でガラス転移温度が150℃以下、且つガラス転移温度以上での熱膨張係数が100ppm/℃以上であることが好ましい。
【0026】
このようなレーザー光熱転写フィルムであれば、レーザー光熱転写フィルムから転写基板への転写を精度よく行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明であれば、膨張率の大きいビスマレイミド樹脂を光熱変換層のバインダーに用いることにより、レーザー照射の後、光熱変換層が大きく膨張することで転写体と粘着層の粘着面積が低下し、粘着力を特定の範囲に調整することで転写特性が改善されたレーザー光熱転写フィルムを提供することができる。このため、レーザー光熱転写フィルムとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のレーザー光熱転写フィルムの一例を示す模式的断面図である。
図2】本発明のレーザー光熱転写フィルムを用いて素子を転写する実装フローの一例を示す概略図である。
図3】本発明のレーザー光熱転写フィルムにレーザーを照射後の膨張を3Dで測定し、キーエンス社VHX デジタル顕微鏡にて撮影した一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、基材フィルム、下記一般式(1)で示される赤外線光吸収剤、及び、下記一般式(3)及び/又は下記一般式(4)で示されるビスマレイミド樹脂を含有する光熱変換層、粘着層の三層が積層されたレーザー光熱転写フィルムが上記課題を解決できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0030】
即ち、本発明は、
基材フィルム、光熱変換層、粘着層の順に三層が積層されたレーザー光熱転写フィルムであって、前記光熱変換層は、一般式(1)で示される赤外線光吸収剤、及び、下記一般式(3)及び/又は一般式(4)で示されるビスマレイミド樹脂を含有する常温で固体のものであることを特徴とするレーザー光熱転写フィルムである。
【化7】
(一般式(1)中、pは、1または2であり、RからRは、それぞれ独立して炭素数1から10の置換または非置換の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1から8のアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキルアミノ基で置換されていてもよく、Xは、下記一般式(2)で示されるフルオロアルキル・フォスフェイト陰イオンである。)
【化8】
(一般式(2)中、xは0または1であり、yは1、2または3であり、zは6-yであり、RからR13はそれぞれ独立して水素またはフッ素である。)
【化9】
(一般式(3)中、Aは芳香族環または脂肪族環を含む4価の有機基を示す。Qは炭素数6以上の直鎖アルキレン基を示す。Rはそれぞれ独立して炭素数6以上の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。nは1~10の整数を表す。)
【化10】
(一般式(4)中、A’は芳香族環または脂肪族環を含む4価の有機基を示す。Bは2価のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族環を有する炭素数6から18のアルキレン鎖である。Q’は炭素数6以上の直鎖アルキレン基を示す。R’はそれぞれ独立に炭素数6以上の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。n’は1~10の整数を表す。mは1~10の整数を表す。)
【0031】
このように本発明は、レーザー光熱転写フィルムに関するものであって、基材フィルム上にジイモニウム系列染料の赤外線光吸収剤と熱膨張係数の大きなビスマレイミド樹脂を含有する光熱変換層及び粘着層が積層された、可視光線領域で透過率が高く、粘着層が適正範囲の粘着力を持つようにして転写特性が改善されたレーザー光熱転写フィルムに関するものである。
【0032】
光熱変換層はジイモニウム系列染料の赤外線光吸収剤を含有する熱膨張係数の大きな熱硬化した薄層で、粘着層の厚さを特定の範囲にして粘着力を調節することにより、レーザー照射後、光熱変換層及び粘着層が膨張変形し半導体素子の接地面の減少により粘着力が低くなり半導体素子を特定の基板上に転写することができる。
【0033】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
<レーザー光熱転写フィルム>
本発明は、基材フィルム、光熱変換層、粘着層の順に三層が積層され、前記光熱変換層は特定の赤外線光吸収剤、及び、特定のビスマレイミド樹脂を含有する常温で固体のレーザー光熱転写フィルムである。なお、本発明において常温とは25℃のことを指すこととする。
【0035】
図1に示すように、本発明のレーザー光熱転写フィルム1は、基材フィルム11、特定の赤外線光吸収剤と特定のビスマレイミド樹脂を含有する光熱変換層12、粘着層13の順に三層が積層されてなるものである。レーザー光熱転写フィルム1にレーザー光を照射することで光熱変換層12が加熱され、膨張することにより、光熱変換層12がその上の粘着層13を押し上げて隆起する。
以下各層について説明する。
【0036】
<基材フィルム>
基材フィルムは、光熱変換層、粘着層及び上記の粘着層上に付着される転写体などを支持する基板として作用する。
【0037】
基材フィルムとして、高分子重合体フィルムを使用できる。上記の基材フィルムとして使用するのに適したものとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリビニル樹脂、またはポリエステルが使用できる。上記基材フィルムは透明な熱可塑性樹脂であることが好ましい。光透過性と熱安定性を両立するポリエステルフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートフィルムを使用できるが、これに限らず、十分な機械的及び熱的安定性、特定波長の光に対する高い透過率を有する等の光学性質を有するフィルムを使用できる。
【0038】
上記の基材フィルムの厚さは10から250μmであることが好ましく、光熱変換層との接着性の向上等を目的としてプライマー処理、粗度処理をすることができ、熱安定性のための延伸または熱処理、撥水処理をすることができ、さらに光の透過性を調節するために少量の微粒子または充填材を含有することができる。中でも基材フィルムとしてはレーザー光を透過させるため、二軸延伸された50~200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであって、可視光線の透過率が約90%以上のものが好ましい。
【0039】
<光熱変換層>
光熱変換層は、一般式(1)で示される赤外線光吸収剤、及び、一般式(3)及び/又は一般式(4)で示されるビスマレイミド樹脂を含む常温で固体のものである。光熱変換層の内部に含まれる一つ以上の赤外線光吸収剤によって光(レーザー)を吸収して、これを熱に転換することにより光熱変換層が膨張して、半導体素子が熱膨張による物理的な力で転写基板に転写される。
【0040】
光熱変換層に含まれる赤外線光吸収剤の含有量は1~15質量%が好ましく、ビスマレイミド樹脂は85~99質量%であることが好ましい。
【0041】
レーザー照射による局所的な熱の吸収で光熱変換層が膨張する。このため光熱変換層は、転写を容易にするため、できるだけ薄く製作されるのが好ましく、0.1から20μmの厚さが好ましい。
【0042】
本発明の光熱転写フィルムの光熱変換層に適用される赤外線光吸収剤として、下記一般式(1)で示されるジイモニウム塩(diimmonium salts)系列の染料を使用する。
【0043】
【化11】
(一般式(1)中、pは、1または2であり、RからRは、それぞれ独立して炭素数1から10の置換または非置換の直鎖状または分枝状のアルキル基であり、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、スルホン基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数1から8のアルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アシルオキシ基またはアルキルアミノ基で置換されていてもよく、Xは、下記一般式(2)で示されるフルオロアルキル・フォスフェイト陰イオンである。)
【化12】
(一般式(2)中、xは0または1であり、yは1、2または3であり、zは6-yであり、RからR13はそれぞれ独立して水素またはフッ素である。)
【0044】
本発明で、基材フィルムとして例えば、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した場合、二軸延伸されたPETフィルムの可視光線透過率は約90%とすることができる。この基材フィルムに上記の一般式(1)で示される赤外線光吸収剤を使用する場合、転写性能を維持し、かつ60%以上の可視光線透過率を有する光熱転写フィルムを製造できる。
【0045】
可視光線透過率は、光熱変換層に使用される赤外線光吸収剤の濃度に反比例する。本発明の赤外線光吸収剤として使用されるジイモニウム塩系列の有機染料は近赤外線、具体的には780から1500nm波長領域での吸光度が、他の有機染料に比べて優れていることから、近赤外線による光熱変換の効率は高い。一方、可視光線領域での吸光度は高くなく、可視光線領域での透明性は高い。即ち、赤外線光吸収剤の最大吸収波長が780~1500nmの範囲内であることが好ましい。
【0046】
上述した赤外線光吸収剤であるジイモニウム塩系列の染料は、基材フィルム及び/または粘着層との接着性の調節のためにバインダーと一緒に使用される。ジイモニウム塩系列の染料は有機溶剤への溶解性が非常に優れていることから、バインダーとなるビスマレイミド樹脂中への均一分散が可能となる。この結果、樹脂内に均一に分散していることから、スポット的に照射するレーザーにより発生する熱量を均一とすることができる。また、このような良好な分散性は、10μm以下の薄い厚さを持つ光熱変換層の厚さの偏差を減らすことができるという利点がある。
【0047】
光熱変換層のバインダーとなるビスマレイミド樹脂は、25℃で固体であるビスマレイミド樹脂であって、分子中に少なくとも1つのダイマー酸骨格、少なくとも1つの炭素数6以上の直鎖アルキレン基、及び少なくとも2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物である。炭素数6以上の直鎖アルキレン基を有するので耐熱性に優れ、大きな膨張率を有することからレーザー光の吸収から発生する熱による膨張が大きく転写を容易に行える。そのようなビスマレイミド樹脂として本発明では、下記一般式(3)及び/又は一般式(4)で表されるものを使用する。
【0048】
【化13】
(一般式(3)中、Aは芳香族環または脂肪族環を含む4価の有機基を示す。Qは炭素数6以上の直鎖アルキレン基を示す。Rはそれぞれ独立して炭素数6以上の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。nは1~10の整数を表す。)
【化14】
(一般式(4)中、A’は芳香族環または脂肪族環を含む4価の有機基を示す。Bは2価のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族環を有する炭素数6から18のアルキレン鎖である。Q’は炭素数6以上の直鎖アルキレン基を示す。R’はそれぞれ独立に炭素数6以上の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。n’は1~10の整数を表す。mは1~10の整数を表す。)
【0049】
一般式(3)中のQ及び一般式(4)中のQ’は直鎖のアルキレン基であり、これらの炭素数は6以上であるが、好ましくは6以上20以下であり、より好ましくは7以上15以下である。また、一般式(3)中のRの炭素数及び一般式(4)中のR’の炭素数は6以上であるが、好ましくは6以上12以下であり、R及びR’は直鎖状、分岐状のアルキル基があげられる。
【0050】
一般式(3)中のA及び一般式(4)中のA’は芳香族環または脂肪族環を含む4価の有機基を示し、特に、下記構造式で示される4価の有機基のいずれかで表されるものであることが好ましい。
【化15】
(なお、上記構造式中の置換基が結合していない結合手は、一般式(3)及び一般式(4)において環状イミド構造を形成するカルボニル炭素と結合するものである。)
【0051】
また、一般式(4)中のBは2価のヘテロ原子を含んでもよい脂肪族環を有する炭素数6から18のアルキレン鎖であり、該アルキレン鎖の炭素数は好ましくは8以上15以下である。一般式(4)中のBは下記構造式で示される脂肪族環を有するアルキレン鎖のいずれかであることが好ましい。
【化16】
(なお、上記構造式中の置換基が結合していない結合手は、一般式(4)において環状イミド構造を形成する窒素原子と結合するものである。)
【0052】
一般式(3)中のnは1~10の整数であり、好ましくは2~7の整数である。一般式(4)中のn’は1~10の整数であり、好ましくは2~7の整数である。一般式(4)中のmは1~10の整数であり、好ましくは2~7の整数である。
【0053】
ビスマレイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、常温で固体である範囲であれば特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によるポリスチレン標準で換算した重量平均分子量が2,000~50,000であることが好ましく、特に好ましくは2,500~40,000、更に好ましくは3,000~20,000である。該分子量が2,000以上であれば、ビスマレイミド樹脂は常温で固形化しており、該分子量が50,000以下であれば、後述するコーティング組成物は粘度が高くなりすぎて流動性が低下するおそれがなく、成形性が良好となる。
なお、本明細書中で言及するMwとは、下記条件で測定したGPCによるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量を指すこととする。
【0054】
<測定条件>
展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.35mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム: TSK Guardcolumn SuperH-L
TSKgel SuperHZ4000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ3000(4.6mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperHZ2000(4.6mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:5μL(濃度0.2質量%のTHF溶液)
【0055】
本発明で使用可能なビスマレイミド樹脂としてはSLKシリーズ(信越化学工業(株)製)として市販されているSLK3000、SLK689、SLK2600などが好ましい。
【0056】
上記の赤外線光吸収剤とバインダーであるビスマレイミド樹脂、および硬化触媒がアニソールなどの有機溶剤で溶解分散されたワニス状の溶液となっているコーティング組成物を作製することができる。このワニス状の溶液を基材フィルム上にコーティングして積層し、コーティング後、加熱槽で熱をかけて溶剤を除去し、ビスマレイミド樹脂を乾燥固形化することで赤外線光吸収剤とマレイミド樹脂を含有する常温で固体の光熱変換層を基材フィルム上に形成できる。
【0057】
光熱変換層は常温(25℃)で固体であればよく、必要に応じて硬化触媒を加えてもよい。硬化触媒としてはイミダゾール系触媒、有機過酸化物などを使用することができるが、マレイミド基が反応する触媒であれば特に限定しない。
【0058】
コーティング組成物の固形物含量は、5から85質量%が好ましく、より好ましくは5から60質量%の範囲である。上記組成物の固形物含量が5質量%以上であれば、目標とするコーティング層の厚さの加工がしやすく、85質量%以下であれば、コーティング樹脂の粘度が高くならず、コーティングした後、表面が荒れず好適である。
【0059】
また、上記組成物の固形物のうち、赤外線光吸収剤(ジイモニウム塩系列の染料)の含量は、1から15質量%が好ましい。赤外線光吸収剤の含量が1質量%以上であれば、十分な発熱が起こり、15質量%以下であれば、赤外線光吸収剤の溶解度が低くならず、バインダー樹脂内の分散に好適である。
【0060】
レーザー照射による発熱で樹脂を加熱することから、硬化したビスマレイミド樹脂の熱分解開始温度は300℃以上が好ましく、より好ましくは400℃以上で、ガラス転移温度は150℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下であり、更に好ましくは50℃以下である。
【0061】
硬化したビスマレイミド樹脂の熱膨張係数はガラス転移温度以下では100ppm/℃以下が好ましく、ガラス転移温度以上では100ppm/℃以上が好ましく、より好ましくは150ppm/℃以上である。
【0062】
一般に熱分解開始温度が300℃以上の耐熱性を持ったポリイミド樹脂はガラス転移温度が200℃以上であり、熱膨張係数もガラス転移温度以下で20ppm/℃以下、ガラス転移温度以上では80ppm/℃以下である。このため、レーザー照射後に光熱変換層の膨張が本発明で使用するビスマレイミド樹脂に比較してポリイミド樹脂は小さくレーザー光熱転写フィルムから転写基板への転写を精度よく行うことができない。その為、半導体素子等を転写する転写基板を出来るだけレーザー光熱転写フィルムに近づけておく必要がある。このため、レーザー光熱転写フィルムからの転写力を制御することが困難になる。
【0063】
本発明のレーザー光熱転写フィルムを使用した場合、レーザー光照射による膨張が大きいことから、転写基板とレーザー光熱転写フィルムを離して設置できるうえに、熱により凸状に膨張した光熱変換層の先端面積が小さくなることから、粘着力がより小さくなり容易に半導体素子を転写基板に転写できる。
【0064】
上記のコーティング組成物には、さらに、架橋剤、保湿剤、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤及び共溶媒などを含有することができる。
【0065】
光熱変換に使用するレーザー光としては赤外線レーザー、可視光レーザー、UVレーザー、エキシマレーザーなどがあげられるが、中でも赤外線レーザーが好ましい。
【0066】
<粘着層>
粘着層は、半導体素子をレーザー光熱転写フィルムに付着させる役割を果たしており、上記粘着層の粘着力は、転写基板の粘着力を考慮して設計する。レーザー光熱転写フィルムの粘着力と転写基板の粘着力とを適切にすることで、両方のフィルムの合紙の際、転写体が転写基板側に移っていく問題や、転写基板への転写が起こらないという問題が発生しない。レーザー転写フィルムの粘着力は、JIS Z 0237に準拠し180°引きはがし試験(被着体SUS)において、0.1~10N/25mmが好ましく、転写基板側の粘着力に応じて上記の範囲内で調節することができる。
【0067】
粘着層の厚さは、1から10μmであることが好ましい。上記の粘着層の厚さが1μm以上の場合は粘着力が低くならず、転写体の付着が良く、厚さが10μm以下であれば、レーザー照射の後、転写特性の制御がしやすくなる。
【0068】
上記の粘着層は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エポキシ、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリイミド及びシリコーン樹脂から選択される、1又は2以上の組み合わせが好ましい。
【0069】
中でも、耐熱性、耐汚染性に優れるシリコーン粘着剤が好ましい。シリコーン粘着剤は粘着層の半導体素子への移行が少なく熱時安定性に優れることから特に好適な材料である。シリコーン粘着剤としてはMQレジンと高粘度ビニルシロキサンを主成分とする白金付加硬化タイプや縮合硬化タイプが例示されるが、光熱変換層の表面に塗布後、速やかに硬化する白金付加硬化タイプが好ましい。
【0070】
上記シリコーン粘着剤をトルエンなどの溶剤で希釈し光熱変換層にフィルムコーターやアプリケーターにて1~10μm塗工し、溶剤の乾燥および粘着剤硬化をおこなうことができる。
【0071】
レーザー光熱転写フィルムから転写される転写体としては半導体素子、LEDなどの発光素子、セラミックなどの基板、半導体素子やLED素子を内包するプラスティックやセラミックなどのパッケージ、蛍光体を含有するセラミック基板や樹脂シート、積層コンデンサー、など固体形状を有するものであれば特に限定されない。特に、マイクロLEDやミニLEDなどをハンダバンプや異方導電層を有する表示基板となる転写基板に転写することで、LEDを使用した表示装置を作成することができる。
【0072】
<転写プロセス>
図2は本発明のレーザー光熱転写フィルム1を用いて素子を転写する実装フローの一例である。
レーザー光熱転写フィルム1は、基材フィルム11に接着リリース層14が積層されており、接着リリース層14は基材フィルム11の側から順に光熱変換層12、粘着層13が積層されてなる。他方、転写基板15の一方の表面には、素子を転写すべき部分にハンダ16が印刷などにより設けられている。
レーザー光熱転写フィルム1の接着リリース層14の粘着層表面に素子17を付着させた後、素子17とハンダ16が対向するようにしながら、レーザー光熱転写フィルム1と転写基板15の距離(ギャップ18)を設定してレーザー照射装置にセットする。そして、基材フィルム11側からレーザーを照射して光熱変換層の膨張19を発生させる。このとき光熱変換層12がその上の粘着層13を押し上げて隆起して、転写基板15上のハンダ16に素子17が転写される。
【実施例
【0073】
以下、実施例と比較例により、本発明の構成及びそれに伴う効果をより詳細に説明する。なお、本実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
実施例・比較例で使用するビスマレイミド樹脂の物性について、表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
<実施例1>
(1)基材フィルム:東レ(株)の光学用PETフィルムを基材フィルムとして使用した(厚さ 100μm)。
(2)光熱変換層用組成物:ジイモニウム系列染料(日本化薬製、KAYASORB IRG-069)、ビスマレイミド樹脂(SLK3000)、硬化触媒として過酸化物(ジクミルパーオキサイド)を表2に記載した量をアニソールに溶解して光熱変換層用組成物(コーティング組成物)を用意した。
(3)粘着剤:転写体付着のための粘着層は、KR-3704(信越化学製):X-40-3237-1(信越化学製)を75:25(質量比)で混合しさらに信越化学製 CAT PL-50Tを0.5%添加して固形分35質量%の粘着剤を用意した。
【0077】
<レーザー光熱転写フィルムの製造>
基材フィルム上に光熱変換層用組成物をMayer barを用いて塗布し、150℃で2時間乾燥、硬化させて、平均厚さ2.5μmの光熱変換層を形成した。次に、粘着剤をアプリケータを用いて塗布した後、100℃で3分間乾燥して、平均厚さ3μmの粘着層を形成して(JIS Z 0237に準拠し180°引きはがし試験(被着体SUS)において、粘着力0.3N/25mm)、レーザー光熱転写フィルムを製造し(図1)、後述する方法で転写特性を評価した。結果を表3に記載した。
【0078】
<実施例2>
ジイモニウム塩の量を変更して硬化触媒として過酸化物(ジクミルパーオキサイド)を表2に記載した量をアニソールに溶解して光熱変換層用組成物を用意した。そのほかは実施例1と同様にしてレーザー光熱転写フィルムを製造し、転写特性を評価した。結果は表3に記載した。
【0079】
<実施例3>
ジイモニウム塩の量を変更して硬化触媒として過酸化物(ジクミルパーオキサイド)を表2に記載した量をアニソールに溶解して光熱変換層用組成物を用意した。そのほかは実施例1と同様にしてレーザー光熱転写フィルムを製造し、転写特性を評価した。結果は表3に記載した。
【0080】
<実施例4>
ビスマレイミド樹脂をSLK689とSLK2600に変更して硬化触媒として過酸化物(ジクミルパーオキサイド)を表2に記載した量をアニソールに溶解して光熱変換層用組成物を用意した。そのほかは実施例1と同様にしてレーザー光熱転写フィルムを製造し、転写特性を評価した。結果は表3に記載した。
【0081】
<実施例5>
ジイモニウム塩の量を変更して過酸化物(ジクミルパーオキサイド)を添加しないで表2に記載した量をアニソールに溶解して光熱変換層用組成物を用意した。そのほかは実施例1と同様にしてレーザー光熱転写フィルムを製造し、転写特性を評価した。結果は表3に記載した。
【0082】
<実施例6>
ジイモニウム塩の量を変更して硬化触媒として過酸化物(ジクミルパーオキサイド)を表2に記載した量をアニソールに溶解して光熱変換層用組成物を用意した。そのほかは実施例1と同様にしてレーザー光熱転写フィルムを製造し、転写特性を評価した。結果は表3に記載した。
【0083】
<実施例7>
ジイモニウム塩の量を変更して硬化触媒として過酸化物(ジクミルパーオキサイド)を表2に記載した量をアニソールに溶解して光熱変換層用組成物を用意した。そのほかは実施例1と同様にしてレーザー光熱転写フィルムを製造し、転写特性を評価した。結果は表3に記載した。
【0084】
<比較例1>
ビスマレイミド樹脂をポリイミド樹脂に変更して表2に記載した量をNMPに溶解して光熱変換層用組成物を用意した。そのほかは実施例1と同様にしてレーザー光熱転写フィルムを製造し、転写特性を評価した。結果は表3に記載した。
【0085】
<転写特性の評価>
PCB基板上の所定の電極にハンダペーストをスクリーン印刷で20μm塗布した転写基板を作製した。一方、評価用の光半導体素子(500μm角)を100個、上記の実施例及び比較例で作製した基材、光熱変換層、粘着層の三層からなるレーザー光熱転写フィルムに付着させた後、レーザー光熱転写フィルムと転写基板の距離を150μmに設定してレーザー照射装置にセットした。レーザー光熱転写フィルムの基材側からNd:YAG1064nmのレーザー装置を利用して100Wのエネルギーでレーザー光を照射し、光熱変換層の膨張により転写基板のハンダペースト上に光半導体素子を転写した。転写基板上に転写された光半導体素子の数を測定して転写特性を評価した。
【0086】
<実施例8>
実施例1のレーザー光熱転写フィルムにレーザーを照射した後の膨張をキーエンス社VHX デジタル顕微鏡にて撮影した。この写真を図3に示す。
本発明では光熱変換層が特定のビスマレイミド樹脂を含むため、このように高い隆起を得ることができる。レーザー照射後の膨張を3Dで測定したところ、高さは200μmであった。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
光熱変換層用組成物に含まれる樹脂としてビスマレイミド樹脂を使用した実施例1~7のレーザー光熱転写フィルムは、ポリイミド樹脂を使用した比較例1のレーザー光熱転写フィルムより転写特性が優れていた。従って、膨張率の大きいビスマレイミド樹脂を光熱変換層のバインダーに用いることは、転写特性が改善されたレーザー光熱転写フィルムの提供することに有用である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・レーザー光熱転写フィルム、 11・・・基材フィルム、 12・・・光熱変換層、 13・・・粘着層、 14・・・接着リリース層、 15・・・転写基板、 16・・・ハンダ、 17・・・素子、 18・・・ギャップ、19・・・光熱変換層の膨張
図1
図2
図3