(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂接着剤用硬化剤
(51)【国際特許分類】
C08G 59/50 20060101AFI20240924BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240924BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
C08G59/50
C09J163/00
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2021515593
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2019076494
(87)【国際公開番号】W WO2020070084
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-22
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】エディス カセミ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クラマー
(72)【発明者】
【氏名】ウルスラ シュタデルマン
(72)【発明者】
【氏名】ウルシュ ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ ゲルバー
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0240691(US,A1)
【文献】特表2022-501454(JP,A)
【文献】特開2002-037862(JP,A)
【文献】特表2018-532003(JP,A)
【文献】特表2019-512026(JP,A)
【文献】特開2008-248227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 63/00-63/10
C09J
C09D
C08J 5/04-5/10、5/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)の少なくとも一種のアミンA1及び下記の式(II)の少なくとも一種のアミンA2を含むエポキシ樹脂用硬化剤であって、
アミンA1/アミンA2の重量比が、20/1~1/2の範囲内であるエポキシ樹脂用硬化剤:
【化1】
(式中、
Aは、窒素原子を含有せず、環式若しくは芳香族成分を任意選択で含有し、かつ2~10個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
Yは、1~20個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル又はアラルキル基であり、
xは1又は2であり、及び
Bは、1,2-エチレン、1,2-プロピレン及び1,3-プロピレンから選択される同一又は異なるアルキレン基を表す)。
【請求項2】
Aは、1,2-エチレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,3-ブチレン、2-メチル-1,2-プロピレン、1,3-ペンチレン、1,5-ペンチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,6-ヘキシレン、2-メチル-1,5-ペンチレン、1,7-ヘプチレン、1,8-オクチレン、2,5-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,9-ノニレン、2,2(4),4-トリメチル-1,6-ヘキシレン、1,10-デシレン、1,11-ウンデシレン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンチレン、1,12-ドデシレン、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、(1,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-イル)メタン-1,3、4(2)-メチル-1,3-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,4-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,3-フェニレンビス(メチレン)、1,4-フェニレンビス(メチレン)からなる群から選択される二価の基であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化剤。
【請求項3】
Aは、1,2-エチレン又は1,2-プロピレンであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硬化剤。
【請求項4】
Yは、2-エチルヘキシル、2-フェニルエチル、ベンジル、1-ナフチルメチル及びシクロヘキシルメチルから選択される基であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化剤。
【請求項5】
式(I)の前記アミンA1は、N-ベンジルエタン-1,2-ジアミンであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化剤。
【請求項6】
式(II)の前記アミンA2は、3-(3-(ジメチルアミノ)プロピルアミノ)プロピルアミンであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化剤。
【請求項7】
下記の式(III):
Y-NH-A-NH-Y (III)のアミンA3(式中、A及びYは、前記同様である)及び少なくとも二つの第1級アミノ基を有する脂肪族ポリアミンであるアミンA4からなる群から選ばれる少なくとも一種のさらなるアミンを含み、
前記アミンA3が、前記アミンA1と前記アミンA3との重量比で、50/50~95/5の量で存在し、
前記アミンA4が、硬化剤組成物の合計重量に対して、1.5質量%から8.0質量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化剤。
【請求項8】
前記アミンA4はポリアルキレンアミンであることを特徴とする、請求項7に記載の硬化剤。
【請求項9】
- 少なくとも一種のエポキシ樹脂を含む樹脂成分、及び
- 請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化剤を含む硬化剤成分
を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
シンナー、促進剤及び充填材からなる群から選択される少なくとも一種のさらなる構成成分を含むことを特徴とする、請求項9に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項11】
接着剤、シーラント、封入化合物、注型用樹脂、コーティング
若しくは、プライマーとして、又は、繊維複合体材料用のマトリックスとしての請求項9又は10に記載のエポキシ樹脂組成物の使用。
【請求項12】
以下の工程を含む結合方法:
(i)請求項9又は10に記載のエポキシ樹脂組成物の成分を混合すること、
(ii)ポットライフ中に、混合した前記組成物を、
- 結合すべき基材の少なくとも一方に適用し、かつ前記基材を接合してオープンタイム内に結合を形成すること、又は、
- 2つ又はそれを超える基材間のキャビティ又は隙間に適用し、かつ任意選択で前記オープンタイム内に、前記キャビティ又は隙間にアンカーを挿入すること、
続いて、混合した前記組成物を硬化させること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂用の硬化剤、エポキシ樹脂接着剤、及び、特に鋼鉄を接合するためのその使用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
常温硬化型エポキシ樹脂接着剤は、例えば鋼鉄プレートによる建築構造の補強、プレキャストコンクリート部品による建設、手すり、欄干若しくはドア枠などの部材の固定、又は、縁、穴若しくは結合部の充填などの補修のためといった、多くの用途に用いられている。建設産業における用途について、これらは、建設現場における条件下で使用可能でなければならず;この目的のための重要な特徴は、特に、容易な加工性、並びに、周囲の外気温における高信頼性で迅速な硬化である。加えて、これらは、コンクリート、鋼鉄及びプラスチックなどの典型的な建築材料に対する高い強度及び接合強度を有しているべきである。高い接合強度を有するためには、良好な接着にもかかわらず低い応力下でさえ破壊されてしまう可能性があるために、接着剤は過度に脆弱であってはならない。
【0003】
従来技術によるエポキシ樹脂接着剤の多くは、硬化剤として、トリエチレンテトラミン又はイソホロンジアミンなどのポリアミンのアミノ官能性付加物を芳香族エポキシ樹脂と共に含有する。このような生成物は迅速な硬化及び高強度を実現する。このような付加物を別々に調製することは煩雑であり、粘度が高くなり、加工性、充填材の充填及び基材表面の濡らしが複雑となってしまう。しかしながら、溶剤で薄めることは、環境上の理由から望ましくない。このようなアミンを非付加物形態で硬化剤として使用した場合には、これにより得られる材料は典型的には比較的脆弱であり、これは、強度及び接合強度の低下として現れてしまう。さらに、このような非付加物形態のアミンは、特に低温及び湿潤条件下では、ブラッシング(すなわち、空気中の二酸化炭素との塩形成)を生じやすい。
【0004】
欧州特許第2,151,461号明細書、欧州特許第2,943,464号明細書、国際公開第2016/023839号パンフレット、欧州特許第3,138,863号明細書又は欧州特許第3,144,335号明細書に記載されているアルキル化アミンはブラッシングに対する感度が顕著に低いものである。これらは、従来技術において主にエポキシ樹脂コーティング用の硬化剤として用いられており、ここで、低い粘度、及び、ブラッシング効果に対する低い傾向は特に重要である。しかしながら、このようなアルキル化アミンがエポキシ樹脂接着剤用の硬化剤として用いられた場合、これらは、特に鋼鉄に対する不十分な接合強度、及び、低いガラス転移温度をもたらしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、生成、粘度、ブラッシング、接合強度及びガラス転移温度に関連する従来技術の欠点が克服されたエポキシ樹脂用硬化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載されている硬化剤によって達成される。本発明の硬化剤は、少なくとも1種のアルキル化アミンA1と、ジメチルアミノポリアルキレンアミンである少なくとも1種のアミンA2との特定の組み合わせに基づいている。
【0007】
本発明の硬化剤は、調製が容易であり、粘度がきわめて低く、及び、ブラッシングに感受性ではない。良好な加工性、十分に長いポットライフ及びオープンタイム(迅速な硬化と組み合わされた)、特に鋼鉄に対する意外な程に高い接合強度と組み合わされた高強度、並びに、十分に高いガラス転移温度を有する低放出性エポキシ樹脂接着剤が実現されている。
【0008】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、下記の式(I)の少なくとも一種のアミンA1及び下記の式(II)の少なくとも一種のアミンA2を含み、
アミンA1/アミンA2の重量比が20/1~1/2の範囲内であるエポキシ樹脂用硬化剤を提供する:
【化1】
(式中、
Aは、窒素原子又は環式若しくは芳香族成分を任意選択で含有し、かつ2~10個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
Yは、1~20個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル又はアラルキル基であり、
xは1又は2であり、及び
Bは、1,2-エチレン、1,2-プロピレン及び1,3-プロピレンから選択される同等又は異なるアルキレン基を表す)。
【0010】
「第一級アミノ基」とは、1個の有機基に結合すると共に2個の水素原子を有するアミノ基を指し;「第二級アミノ基」とは、一緒になって環の一部でもあり得る2個の有機基に結合すると共に1個の水素原子を有するアミノ基を指し;及び、「第三級アミノ基」とは、その2個又は3個が1つ以上の環の一部でもあり得る3個の有機基に結合すると共に水素原子をまったく有さないアミノ基を指す。
【0011】
「アミン水素」とは、第一級及び第二級アミノ基の水素原子を指す。
【0012】
「アミン水素換算重量」とは、1モル当量のアミン水素を含有するアミン又はアミン含有組成物の質量を指す。
【0013】
ポリアミン又はポリエポキシドなどの「ポリ」から始まる物質名は、形式的な意味で、1分子当たり、その名称中に現れる官能基を2個以上含有する物質を指す。
【0014】
「シンナー」とは、エポキシ樹脂中に可溶であり、粘度を低減させ、及び、硬化プロセス中においてエポキシ樹脂ポリマーに化学的に取り込まれない物質を指す。
【0015】
「分子量」は、分子のモル質量(g/mol)を指す。「平均分子量」は、オリゴマー系又は高分子分子の多分散混合物の数平均Mnを指し、これは、典型的には、標準としてのポリスチレンに対してゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。
【0016】
「ポットライフ」とは、エポキシ樹脂組成物が加工性である期間、すなわち、成分を混合してから、十分に易流動性状態にあって基材の表面を濡らすことが可能である混合組成物の塗布までの間の可能な限り最長の時間を指す。
【0017】
接着剤の「オープンタイム」とは、接着剤の塗布と、結合されるべき部品の接続との間における、粘着性の結合が可能である最長の期間を指す。
【0018】
「室温」とは、23℃の温度を指す。
【0019】
Aは、好ましくは、1,2-エチレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,3-ブチレン、2-メチル-1,2-プロピレン、1,3-ペンチレン、1,5-ペンチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,6-ヘキシレン、2-メチル-1,5-ペンチレン、1,7-ヘプチレン、1,8-オクチレン、2,5-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,9-ノニレン、2,2(4),4-トリメチル-1,6-ヘキシレン、1,10-デシレン、1,11-ウンデシレン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンチレン、1,12-ドデシレン、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、(1,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-イル)メタン-1,3、4(2)-メチル-1,3-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,4-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,3-フェニレンビス(メチレン)、1,4-フェニレンビス(メチレン)、3-アザ-1,5-ペンチレン、3,6-ジアザ-1,8-オクチレン、3,6,9-トリアザ-1,11-ウンデシレン、3-アザ-1,6-ヘキシレン及び3,7-ジアザ-1,9-ノニレンからなる群から選択される二価の基である。これらの式(I)のアミンA1は、産業的に特に容易に入手可能である。
【0020】
これらのうち、1,2-エチレン、1,2-プロピレン、2-メチル-1,5-ペンチレン、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、(1,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-イル)メタン-1,3、4(2)-メチル-1,3-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,4-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,3-フェニレンビス(メチレン)、1,4-フェニレンビス(メチレン)、3-アザ-1,5-ペンチレン、3,6-ジアザ-1,8-オクチレン、3,6,9-トリアザ-1,11-ウンデシレン、3-アザ-1,6-ヘキシレン又は3,7-ジアザ-1,9-ノニレンが好ましい。
【0021】
より好ましくは、基Aは窒素原子を含まない。このような硬化剤は、ブラッシング効果に対して特に低い感受性を有する。
【0022】
より具体的には、Aはそれ故、1,2-エチレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,3-ブチレン、2-メチル-1,2-プロピレン、1,3-ペンチレン、1,5-ペンチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,6-ヘキシレン、2-メチル-1,5-ペンチレン、1,7-ヘプチレン、1,8-オクチレン、2,5-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,9-ノニレン、2,2(4),4-トリメチル-1,6-ヘキシレン、1,10-デシレン、1,11-ウンデシレン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンチレン、1,12-ドデシレン、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、(1,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-イル)メタン-1,3、4(2)-メチル-1,3-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,4-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,3-フェニレンビス(メチレン)及び1,4-フェニレンビス(メチレン)からなる群から選択される二価の基である。
【0023】
もっとも好ましくは、Aは、1,2-エチレン、1,2-プロピレン又は1,3-フェニレンビス(メチレン)である。これらの式(I)のアミンA1は、比較的粘度が低いものであり、良好な加工性を有する接着剤を可能とする。
【0024】
Aは、1,2-エチレン又は1,2-プロピレンであることが特に好ましい。これらの式(I)のアミンA1は、黄変に対して特に低い傾向を有する接着剤を可能とする。
【0025】
Aは、1,2-エチレンであることがもっとも好ましい。これらの式(I)のアミンA1は粘度が特に低いものであり、特に容易に入手可能であり、及び、特に迅速な硬化を実現する。
【0026】
Yは、好ましくは、ヘキシル、2-エチルヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、又は、任意選択により置換されている1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、ベンジル、ナフチルメチル、シクロヘキシルメチル又は2-シクロヘキシルエチル基である。
【0027】
より好ましくは、Yは、2-エチルヘキシル、2-フェニルエチル、ベンジル、1-ナフチルメチル及びシクロヘキシルメチルから選択される基である。これらの式(I)のアミンA1は、比較的粘度が低いものであり、及び、高い接合強度を実現する。
【0028】
もっとも好ましくは、Yはベンジルである。これらの式(I)のアミンは、特に迅速な硬化及び特に高い接合強度を実現する。
【0029】
式(I)のアミンA1は、N-ベンジルエタン-1,2-ジアミン、N-(1-ナフチルメチル)エタン-1,2-ジアミン、N-シクロヘキシルメチルエタン-1,2-ジアミン、N-ベンジルプロパン-1,2-ジアミン、N-ベンジル-1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、N-(2-エチルヘキシル)-1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、N-(2-フェニルエチル)-1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン(Gaskamine(登録商標)240として入手可能であるスチレン化1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼンの構成成分、三菱ガス化学株式会社製)、N-ベンジルジエチエレントリアミン、N-ベンジルトリエチエレンテトラアミン、N-ベンジルテトラエチエレンペンタアミン、N’-ベンジル-N-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン及びN”-ベンジル-N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミンからなる群から選択されることが好ましい。
【0030】
最も好ましい式(I)のアミンA1は、N-ベンジルエタン-1,2-ジアミンである。これは、特に迅速な硬化及び特に高い接合強度を実現する。
【0031】
少なくとも1種のアルキル化剤による式A(NH2)2の少なくとも1種のアミンの部分的アルキル化に由来する反応混合物の構成成分として式(I)のアミンA1を用いることが好ましい。
【0032】
好ましくは、アルキル化は還元性アルキル化であり、ここで、用いられるアルキル化剤はアルデヒド又はケトン及び水素である。
【0033】
還元性アルキル化を好適な触媒の存在下で実施することが好ましい。好ましい触媒は、パラジウム炭素(Pd/C)、プラチナ炭素(Pt/C)、アダムス触媒又はラネーニッケル、特にパラジウム炭素又はラネーニッケルである。
【0034】
分子水素が用いられる場合、還元性アルキル化は、加圧装置において5~150bar、特に10~100barの水素圧力で行われる。これは、バッチ式プロセスで、又は、好ましくは連続プロセスで実施することが可能である。
【0035】
還元性アルキル化は、40~120℃、特に60~100℃の範囲内の温度で実施されることが好ましい。
【0036】
特にエタン-1,2-ジアミン又はプロパン-1,2-ジアミンなどの小さな揮発性ジアミンの場合、これは、アルデヒド又はケトンを基準とした化学量論的比率で用いられることが好ましく、アルキル化の後、未転換のジアミンは、特にストリッピングにより、反応混合物から少なくとも部分的に除去される。所望の場合には、次いで、反応混合物は、特に、式(I)のモノアルキル化アミンA1を、少なくとも部分的に、対応するジアルキル化アミンから蒸留により遊離させることにより、さらに精製され得る。
【0037】
好ましくは、xは1である。
【0038】
好ましくは、Bは1,3-プロピレンである。
【0039】
これらの式(II)のアミンA2は、特に容易に産業的に入手可能である。
【0040】
式(II)のアミンA2は、3-(3-(ジメチルアミノ)プロピルアミノ)プロピルアミンであることが好ましい。
【0041】
アミンA1とアミンA2との重量比(アミンA1/アミンA2の重量比)は、好ましくは、10/1~1/2、より好ましくは5/1~1/1.5、特に3/1~1/1.5の範囲内である。
【0042】
硬化剤は、少なくとも1種のさらなるアミンを含むことが好ましい。硬化剤は、好ましくは、本明細書中以下において特定される、2種以上のさらなるアミンの組み合わせを含み得る。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、硬化剤は、式(III)の少なくとも1種のアミンA3
Y-NH-A-NH-Y (III)
を含み、ここで、A及びYは既に記載されている定義を有する。
【0044】
式(I)のアミンA3は、対応するモノアルキル化アミンA1をも含む少なくとも1種のアルキル化剤による、式A(NH2)2の少なくとも1種のアミンの部分アルキル化に由来する反応混合物の一部であることが好ましい。
【0045】
アミンA3は、アミンA1とアミンA3との重量比が、50/50~95/5、好ましくは65/35~95/5、特に70/30~90/10の範囲内となるような量で存在することが好ましい。このようなアミンA1及びアミンA3の混合物は、容易に産業的に入手可能であると共に、特に安価である。
【0046】
より好ましくは、N-ベンジルエタン-1,2-ジアミン及びN,N’-ジベンジルエタン-1,2-ジアミンは、65/35~95/5、特に70/30~90/10の範囲内の重量比で存在する。
【0047】
本発明のさらに好ましい実施形態において、硬化剤は、さらなるアミンとして、少なくとも2つの第1級アミノ基を有する脂肪族ポリアミンである少なくとも1種のアミンA4を含む。少なくとも1種のアミンA4を追加で使用することで、特に高いガラス転移温度が実現される。
【0048】
好適なアミンA4は、脂肪族、脂環式又は芳香脂肪族(araliphatic)ポリアミン、特に2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン、ペンタン-1,3-ジアミン(DAMP)、ペンタン-1,5-ジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD)、2-ブチル-2-エチルペンタン-1,5-ジアミン(C11ネオジアミン)、ヘキサン-1,6-ジアミン、2,5-ジメチルヘキサン-1,6-ジアミン、2,2(4),4-トリメチルヘキサン-1,6-ジアミン(TMD)、ヘプタン-1,7-ジアミン、オクタン-1,8-ジアミン、ノナン-1,9-ジアミン、デカン-1,10-ジアミン、ウンデカン-1,11-ジアミン、ドデカン-1,12-ジアミン、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルシクロヘキシル)メタン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン又はIPDA)、2(4)-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA)、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDA)、メンタン-1,8-ジアミン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキソスピロ[5.5]ウンデカン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン(MXDA)、1,4-ビス(アミノメチル)ベンゼン、ビス(2-アミノエチル)エーテル、3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミン、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、4,7-ジオキサデカン-2,9-ジアミン、4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン、5,8-ジオキサドデカン-3,10-ジアミン、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン又はこれらのジアミンの高級オリゴマー、ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン又は他のポリテトラヒドロフランジアミン、1,4-ジメチロールシクロヘキサンのプロポキシ化及びその後のアミノ化に由来する脂環式ジアミン含有エーテル基(特に、Jeffamine(登録商標)RFD-270(Huntsman製)として入手可能であるもの)、又は、ポリオキシアルキレンジ-又は-トリアミン(特に、Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400、Jeffamine(登録商標)D-2000、Jeffamine(登録商標)EDR-104、Jeffamine(登録商標)EDR-148、Jeffamine(登録商標)EDR-176、Jeffamine(登録商標)T-403、Jeffamine(登録商標)T-3000、Jeffamine(登録商標)T-5000(すべてHuntsman製))、又は、BASF又はNitroil製の対応するアミン、又は、特に、ビス(6-アミノヘキシル)アミン(BHMT)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)又は線状ポリエチレンアミンの高級同族体、ジプロピレントリアミン(DPTA)、N-(2-アミノエチル)プロパン-1,3-ジアミン(N3アミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン(N4アミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、N5-(3-アミノプロピル)-2-メチルペンタン-1,5-ジアミン、N3-(3-アミノペンチル)ペンタン-1,3-ジアミン、N5-(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチルペンタン-1,5-ジアミン、N,N’-ビス(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチルペンタン-1,5-ジアミンなどのポリアルキレンアミン、エポキシド若しくはエポキシ樹脂との上記のもの若しくはさらなるポリアミンの付加物、特に、ジエポキシド若しくはモノエポキシド若しくはポリアミドアミンとの付加物、特に、一塩基性-又は多塩基性カルボン酸若しくはエステル又はその無水物の反応生成物、特に、ダイマー脂肪酸(脂肪族、脂環式若しくは芳香族ポリアミンは化学量論的過剰量で用いられる)、特に、ポリアルキレンアミン、例えばDETA若しくはTETA、又は、マンニッヒ塩基、特にフェンアルカミン、すなわち特にカルダノールといったフェノールと、特にホルムアルデヒドといったアルデヒドとの反応生成物、及び、ポリアミンである。
【0049】
好ましくは、アミンA4は、TMD、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、IPDA、2(4)-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサン、MXDA、ポリアルキレンアミン、これら又はさらなるポリアミンとモノ-又はジエポキシド及びマンニッヒ塩基との付加物からなる群から選択される。
【0050】
これらのうち、IPDA若しくはMXDA、又は、これらと少なくとも1種のエポキシ樹脂の付加物が好ましい。
【0051】
これらのうち、特にTETA、TEPA、PEHA、N4アミン若しくはBHMTといったポリアルキレンアミン、又は、これらと少なくとも1種のエポキシ樹脂との付加物が特に好ましい。このような硬化剤は、特に高い接合強度及び特に高いガラス転移温度を実現する。
【0052】
硬化剤は、任意選択により、少なくとも1種のシンナーを含む。
【0053】
キシレン、2-メトキシエタノール、ジメトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-ブトキシキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジフェニルメタン、ジイソプロピルナフタレン、鉱油画分、例えばSolvesso(登録商標)グレード(Exxon製)、t-ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、カルダノール(その主構成成分として3-(8,11,14-ペンタデカトリエニル)フェノールを含有するカシューナットシェル油由来)、スチレン化フェノール、ビスフェノール、芳香族炭化水素樹脂(特にフェノール基を含有するタイプ)、アルコキシル化フェノール、特にエトキシル化又はプロポキシル化フェノール、特に2-フェノキシエタノールなどのアルキルフェノール、アジピン酸塩、セバシン酸塩、フタル酸塩、安息香酸塩、有機リン酸若しくはスルホン酸エステル又はスルホンアミドが特に好適である。
【0054】
好ましいシンナーは、200℃超の沸点を有する。
【0055】
シンナーは、好ましくは、ベンジルアルコール、スチレン化フェノール、エトキシル化フェノール、フェノール基を含有する芳香族炭化水素樹脂、特にNovares(登録商標)LS 500、LX 200、LA 300又はLA 700グレード(Ruetgers製)、ジイソプロピルナフタレン及びカルダノールからなる群から選択される。
【0056】
フェノール基を含有するシンナーもまた促進剤として有効である。
【0057】
硬化剤は、任意選択により、少なくとも1種の促進剤を含む。
【0058】
好適な促進剤は、アミノ基とエポキシ基との反応を促進させる物質であって以下のものである:特に、酸若しくは酸に加水分解可能な化合物、特に酢酸、安息香酸、サリチル酸、2-ニトロ安息香酸、乳酸などの有機カルボン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸若しくは4-ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸、スルホン酸エステル、特にリン酸などの他の有機酸若しくは無機酸、又は、前述の酸及び酸エステルの混合物;特に硝酸カルシウムなどの硝酸塩;特に1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミンなどの第三級アミン、特にN-メチルイミダゾール、N-ビニルイミダゾール又は1,2-ジメチルイミダゾールなどのイミダゾール、このような第三級アミンの塩、特にベンジルトリメチル塩化アンモニウムなどの第四級アンモニウム塩、特に1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンなどのアミジン、特に1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなどのグアニジン、特にビスフェノールといったフェノール、フェノール樹脂、又は、特に2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのマンニッヒ塩基、又は、フェノールのポリマー、ホルムアルデヒド及びN,N-ジメチルプロパン-1,3-ジアミン、特にジ-若しくはトリフェニル亜リン酸塩などの亜リン酸塩、又は、メルカプト基を有する化合物。
【0059】
好ましい促進剤は、酸、硝酸塩、第三級アミン又はマンニッヒ塩基である。
【0060】
サリチル酸又は硝酸カルシウム又は2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール又はこれらの組み合わせが特に好ましい。
【0061】
本発明はさらに、
-少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む樹脂成分、及び
-式(I)の少なくとも1種のアミンA1と式(II)の少なくとも1種のアミンA2とを含み、アミンA1とアミンA2との重量比が20/1~1/2の範囲内である上記の硬化剤を含む硬化剤成分
を含むエポキシ樹脂組成物を提供する。
【0062】
好適なエポキシ樹脂は、公知の様式、特に、オレフィンの酸化により、又は、エピクロロヒドリンと、ポリオール、ポリフェノール若しくはアミンとの反応により、入手される。
【0063】
好適なエポキシ樹脂は、特に芳香族エポキシ樹脂であり、特に、以下のもののグリシジルエーテルである:
-ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールA/Fであって、ここで、Aはアセトンを表し、及び、Fは、ホルムアルデヒドを表し、これらは、これらのビスフェノールを調製するための反応体とされる。ビスフェノールFの場合、位置異性体が存在していてもよく、特に2,4’-又は2,2’-ヒドロキシフェニルメタンから誘導され得る。
-レゾルシノール、ハイドロキノン又はカテコールなどのジヒドロキシベンゼン誘導体;
-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,4-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールP)、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、4,4’-ジヒドロキシジフェニル(DOD)、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2-ヒドロキシナフタ-1-イル)メタン、ビス(4-ヒドロキシナフタ-1-イル)メタン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル又はビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンなどのさらなるビスフェノール又はポリフェノール;
-ノボラックであって、特にフェノール又はクレゾールと、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒド又はアセトアルデヒド又はクロトンアルデヒド又はイソブチルアルデヒド又は2-エチルヘキサナル又はベンズアルデヒド又はフルフラールとの縮合物であるもの;
-アニリン、トルイジン、4-アミノフェノール、4,4’-メチレンジフェニルジアミン、4,4’-メチレンジフェニルジ(N-メチル)アミン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン(ビスアニリンP)又は4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン(ビスアニリンM)などの芳香族アミン。
【0064】
さらなる好適なエポキシ樹脂は、特に以下のものである脂肪族又は脂環式ポリエポキシドである:
-飽和又は不飽和、分岐又は不分岐、環式又は開環鎖である、二-、三-又は四官能性C2~C30アルコールのグリシジルエーテル、特にエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ポリプロピレングリコール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール、ヒマシ油、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール又はグリセロール、又は、アルコキシル化グリセロール又はアルコキシル化トリメチロールプロパン;
-水素化ビスフェノールA、F若しくはA/F液体樹脂、又は、水素化ビスフェノールA、F若しくはA/Fのグリシジル化生成物;
-トリグリジシルシアヌレート若しくはトリグリジシルイソシアヌレート、又は、エピクロロヒドリンとヒダントインとの反応生成物などのアミド又は複素環式窒素塩基のN-グリシジル誘導体。
-特に、ビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロドデカジエン、シクロドデカトリエン、イソプレン、1,5-ヘキサジエン、ブタジエン、ポリブタジエン又はジビニルベンゼンなどの、オレフィンの酸化に由来するエポキシ樹脂。
【0065】
好ましくは、エポキシ樹脂は、液体樹脂又は2種以上の液体エポキシ樹脂を含有する混合物である。
【0066】
「液体エポキシ樹脂」とは、25℃未満のガラス転移温度を有する工業用ポリエポキシドを指す。
【0067】
樹脂成分は、任意選択により、固体エポキシ樹脂を一定の割合でさらに含有する。
【0068】
エポキシ樹脂は、特にビスフェノール系液体樹脂、特にビスフェノールAジグリシジルエーテル及び/又はビスフェノールFジグリシジルエーテルであって、例えば、Olin,Huntsman又はMomentiveにより市販されているものである。これらの液体樹脂は、エポキシ樹脂としては低い粘度を有すると共に、迅速な硬化及び高い硬度をもたらす。これらは、固体ビスフェノールA樹脂又はノボラックグリシジルエーテルを一定割合で含有していてもよい。
【0069】
樹脂成分は反応性希釈剤を含有し得る。
【0070】
好ましい反応性希釈剤は、特にブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジ-又はトリグリジシルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、グアヤコールグリシジルエーテル(guaiacol glycidyl ether)、4-メトキシフェニルグリシジルエーテル、p-n-ブチルフェニルグリシジルエーテル、p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、4-ノニルフェニルグリシジルエーテル、4-ドデシルフェニルグリシジルエーテル、カルダノールグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、又は、特に、C8-~C10-若しくはC12-~C14-若しくはC13-~C15-アルキルグリシジルエーテルなどの天然アルコールのグリシジルエーテルといったエポキシ基を含有する反応性希釈剤である。
【0071】
エポキシ樹脂組成物は、シンナー、促進剤及び充填材からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる構成成分を含有することが好ましい。
【0072】
好適な促進剤は、既述のものであって、特にサリチル酸、硝酸カルシウム若しくは2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、又は、これらの組み合わせである。
【0073】
好適なシンナーは、既述のものであって、特に200℃を超える沸点を有するものである。
【0074】
シンナーは、好ましくは、ベンジルアルコール、スチレン化フェノール、エトキシル化フェノール、フェノール基を含有する芳香族炭化水素樹脂、特にNovares(登録商標)LS 500、LX 200、LA 300又はLA 700グレード(Ruetgers製)、ジイソプロピルナフタレン及びカルダノールからなる群から選択される。
【0075】
エポキシ樹脂組成物は、少量のシンナーのみを含有していることが好ましい。10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、特に1重量%未満のシンナーが含有されていることが好ましい。これにより、低排出性又は無排出性のエポキシ樹脂生成物が得られる。
【0076】
好適な充填材は、特に、任意選択により特にステアリン酸塩といった脂肪酸でコーティングされた重質若しくは沈降炭酸カルシウム、重晶石(重晶石)、タルク、石英粉末、珪砂、炭化ケイ素、黒雲母、苦灰石、珪灰石、カオリン、雲母(カリウムケイ酸アルミニウム)、分子ふるい、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、セメント、石膏、フライアッシュ、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、銀若しくは鋼などの金属粉末、PVC粉末又は中空ビーズである。
【0077】
炭酸カルシウム、石英粉末及び珪砂が好ましい。
【0078】
エポキシ樹脂組成物は、任意選択により、さらなる助剤及び添加剤、特に以下のものを含む:
-反応性希釈剤、特に既述のもの、又は、エポキシ化大豆油若しくはアマニ油、アセト酢酸基を含有する化合物、特にアセトアセチル化ポリオール、ブチロラクトン、炭酸塩、アルデヒド、イソシアネート又は反応性基を有するシリコーン;
-溶剤;
-さらなるアミン、特に、特にベンジルアミン若しくはフルフリルアミンなどのモノアミン、又は、特に、4,4’-、2,4’及び/若しくは2,2’-ジアミノジフェニルメタン、2,4-及び/若しくは2,6-トリレンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,4-トリレンジアミン及び/若しくは3,5-ジメチルチオ-2,6-トリレンジアミン、3,5-ジエチル-2,4-トリレンジアミン及び/若しくは3,5-ジエチル-2,6-トリレンジアミンなどの芳香族ポリアミン;
-メルカプト基を有する化合物、特に液体メルカプタン-末端ポリスルフィドポリマー、メルカプタン-末端ポリオキシアルキレンエーテル、メルカプタン-末端ポリオキシアルキレン誘導体、チオカルボン酸のポリエステル、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、トリエチレングリコールジメルカプタン又はエタンジチオール;
-ポリマー、特にポリアミド、ポリスルフィド、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PUR)、カルボキシル基を有するポリマー、ポリアミド、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ブタジエン-スチレンコポリマー、特にエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニル若しくはアルキル(メタ)アクリレートを含む群に由来する不飽和モノマーのホモ-若しくはコポリマー、特にクロロスルホン化ポリエチレン若しくはフッ素含有ポリマー又はスルホンアミド-変性メラミン;
-繊維、特にガラスファイバー、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、又は、ポリアミド繊維若しくはポリエチレン繊維などのポリマー繊維;
-顔料、特に二酸化チタン、酸化鉄又は酸化クロム(III);
-レオロジー変性剤、特に増粘剤又は沈降防止剤;
-接着向上剤、特にオルガノアルコキシシラン;
-難燃性物質、特に、既述の水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム充填材、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、硼酸(B(OH)3)、硼酸亜鉛、リン酸亜鉛、硼酸メラミン、メラミンシアヌレート、ポリリン酸アンモニウム、メラミンリン酸塩、ピロリン酸メラミン、ポリ臭化ジフェニルオキシド又はジフェニルエーテル、特に、ジフェニルクレジルリン酸塩、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールジホスフェートオリゴマー、テトラフェニルレゾルシノールジホスファイト、エチレンジアミンジホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、トリス(クロロエチル)リン酸塩、トリス(クロロプロピル)リン酸塩、トリス(ジクロロイソプロピル)リン酸塩、トリス[3-ブロモ-2,2-ビス(ブロモメチル)プロピル]リン酸塩などのリン酸塩、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールAのビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、臭素化エポキシ樹脂、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、エチレンビス(ジブロモノルボルナンジカルボキシイミド)、1,2-ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(ヘキサクロロシクロペンタジエノ)シクロオクタン又はクロロパラフィン;又は
-添加剤、特に分散パラフィンワックス、フィルム形成助剤、湿潤剤、均展剤、脱泡剤、脱気剤、酸化、熱、光若しくはUV放射線に対する安定剤、又は殺生剤。
【0079】
エポキシ樹脂組成物において、エポキシ基の数に対するエポキシ基に対して反応性である基の数の比は、0.5~1.5、特に0.7~1.2の範囲内であることが好ましい。
【0080】
エポキシ樹脂組成物中に存在する第一級及び第二級アミノ基、並びに、エポキシ基に対して反応性であるいずれかの存在する他の基は、エポキシ基と反応して、その開環(付加反応)をもたらす。主にこの反応の結果、組成物は重合し、これにより硬化する。
【0081】
エポキシ樹脂組成物の樹脂成分及び硬化剤成分は個別の容器に保管される。エポキシ樹脂組成物のさらなる構成成分が樹脂成分又は硬化剤成分の構成成分として存在していてもよく;エポキシ基に対して反応性であるさらなる構成成分は、硬化剤成分の構成成分であることが好ましい。さらなる構成成分が、専用の別々の成分として存在していることも同様に可能である。
【0082】
樹脂成分又は硬化剤成分の保管に好適な容器は、特に、バット、ペール缶、バッグ、バケツ、缶、カートリッジ又はチューブである。この成分は保管可能であり、これは、数ヶ月から1年間又はそれ以上の間、使用に関連する程度にそれぞれの特性に変化が生じることなく、使用前に保管が可能であることを意味する。エポキシ樹脂組成物の使用のために、成分は、塗布の直前又はその最中に互いに混合される。樹脂成分と硬化剤成分との混合比は、エポキシ基に対して反応性である硬化剤成分の基が、上記のとおり、樹脂成分のエポキシ基に対して好適な比であるように選択されることが好ましい。重量部で、樹脂成分と硬化剤成分との混合比は、典型的には、1:10~10:1の範囲内である。
【0083】
成分は好適な方法により混合され;この混合は、連続的に、又は、バッチ式で行われ得る。混合が塗布の直前に行われない場合、成分の混合と塗布との間における時間が長くなりすぎないように、及び、塗布がポットライフの期間中に行われるよう気を付けなければならない。混合は、特に、周囲温度、典型的には約5~40℃、好ましくは約10~35℃の範囲内で行われる。
【0084】
化学反応による硬化は、上記のとおり、2つの成分の混合により開始する。硬化は、典型的には、0~150℃の範囲内の温度で進行する。硬化は周囲温度で進行することが好ましく、典型的には、数日間から数週間にわたる。この期間は、温度、構成成分の反応性、及び、その化学量論を含む要因に応じ、並びに、促進剤の存在に応じる。
【0085】
エポキシ樹脂組成物は少なくとも1種の基材に塗布され、以下の基材が特に好適である:
-ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、乳鉢、セメントスクリード、繊維セメント、レンガ、タイル、石膏及び花崗岩若しくは大理石などの天然石;
-PCC(ポリマー-変性セメント乳鉢)又はECC(エポキシ樹脂-変性セメント乳鉢)系補修又は均展化合物;
-亜鉛めっき又はクロム-めっき金属などの表面品質向上金属又は合金を含む、アルミニウム、鉄、鋼、銅、他の非鉄金属などの金属又は合金;
-アスファルト又はビチューメン;
-皮革、生地、紙、木材、例えばフェノール系、メラミン若しくはエポキシ樹脂といった樹脂と接着された木質材料、樹脂生地複合体、又は、さらなるいわゆるポリマー複合体;
-各事例において、未処理であるか、又は、例えばプラズマ、コロナ若しくは火炎により表面処理されている、硬質及び可撓性PVC、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、PMMA、ABS、SAN、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、PUR、POM、TPO、PE、PP、EPM又はEPDMなどのプラスチック;
-炭素繊維強化プラスチック(CFP)、ガラスファイバー強化プラスチック(GFP)及びシート成形化合物(SMC)などの繊維強化プラスチック;
-特にEPS、XPS、PUR、PIR、岩綿、ガラスウール又は気泡ガラス製の遮蔽フォーム;
-コーティング又は塗布された基材、特に塗布されたタイル、コーティングされたコンクリート、粉末コーティングされた金属若しくは合金、又は、塗布された金属シート;
-コーティング、塗料又はワニス、特にコーティングされたフロアであって、さらなるフロア被覆層でオーバーコートされたもの。
【0086】
必要である場合には、基材は、特に物理的及び/又は化学的クリーニング法により、又は、活性化剤若しくはプライマーの塗布により、塗布の前に前処理が可能である。
【0087】
上記のエポキシ樹脂組成物の硬化により硬化組成物が得られる。
【0088】
上記のエポキシ樹脂組成物は、好ましくは接着剤、シーラント、封入化合物、キャスティング樹脂、コーティング、プライマーとして、又は、特に、CFRP若しくはGFRPなどの繊維複合体用マトリックスとして使用される。「コーティング」という用語はまた、プライマー、塗料、ワニス及びシーラントを包含する。
【0089】
既述のエポキシ樹脂組成物を接着剤として使用することが特に好ましい。この場合、成分を混合した後、それは、典型的には、構造的に粘特性を有するペースト状のコンシステンシーを有する。塗布においては、混合した接着剤は、ポットライフ中に互いに結合されるべき基材の少なくとも一方に塗布され、基材が接続されて、接着剤のオープンタイム内に接着性の結合が形成される。
【0090】
混合した接着剤は、特に、ブラシ、ロール、スパチュラ、ドクターブレード若しくはコテによって、又は、チューブ、カートリッジ若しくは計量装置から塗布される。
【0091】
接着剤は、建築業における使用について、特に、鋼構成材又は炭素繊維強化複合プラスチック(CFRP)製の構成材による建築構造物の強化について、特に橋若しくはコンクリートタワーといった結合されたプレキャストコンクリートコンポーネントを含む構造物について(例えば、風力タービン、シャフト、パイプライン又はトンネル)、又は、結合された天然石、セラミック構成材、又は、繊維セメント、鋼、鋳鉄、アルミニウム、木材若しくはポリエステル製の部品を含む構造物について、穿孔中のアンカー又は棒鋼のアンカー、例えば、手すり、高欄若しくは戸枠の固定、特に、コンクリート維持管理における縁、孔若しくは結合部の充填などの補修について、又は、ポリ塩化ビニル(PVC)、可塑性付与されたポリオレフィン(Combiflex(登録商標))若しくは接着変性クロロスルホン化ポリエチレン(Hypalon(登録商標))のフィルムのコンクリート又は鋼に対する結合について特に好適である。
【0092】
さらなる使用分野は、特に接着剤乳鉢、アセンブリ接着剤、特にCFRP又は鋼薄板のコンクリート、れんが積み又は木材に対する結合のためのものなどの強化接着剤として、例えば橋構成材、サンドイッチ構成材接着剤、ファサード構成材接着剤、強化用接着剤、車体構造用接着剤又は風力タービンのロータブレード用のハーフシェル(half-shell)接着剤のための構成材接着剤としての建築業又は製造業における構造結合に関する。
【0093】
このようなエポキシ樹脂接着剤は、同様に、亀裂、クラック又は穿孔などのキャビティの充填に好適であり、ここで、接着剤は、キャビティに充填又は注入されて、硬化後にキャビティを満たし、及び、キャビティのフランクと、嵌合されているように互いに結合するか又は付着する。
【0094】
本発明は、
(i)上記のエポキシ樹脂組成物の成分を混合すること、
(ii)ポットライフ中に、混合組成物を、
- 結合すべき基材の少なくとも一方に適用し、かつこれらの基材を接合してオープンタイム内に結合を形成すること、又は
- 2つ又はそれを超える基材間のキャビティ又は隙間中に適用し、かつ任意選択でオープンタイム内に、このキャビティ又は隙間にアンカーを挿入すること、
続いて、混合組成物を硬化させること
を含む結合方法をさらに提供する。
【0095】
ここで、「アンカー」とは、より具体的には、鉄筋、寸切ボルト又はボルトを指す。アンカーは特に、その一部が嵌合されるように結合していると共に、その一部が突出して施工荷重を支えることが可能であるように壁、天井又は基礎に接着剤により結合又はアンカーされる。
【0096】
同等又は異なる基材を結合し得る。
【0097】
上記のエポキシ樹脂組成物の塗布及び硬化、又は、結合方法により、物品が得られる。この物品は、建築構造物若しくはその一部、特に地上若しくは地下の建築構造物、橋、屋根、階段、バルコニー、又は、工業製品又は消費者商品であってもよく、特に桟橋、海洋プラットフォーム、風力タービンのロータブレード、又は、特に、自動車、トラック、鉄道車両、船舶、航空機若しくはヘリコプターなどの輸送手段、又は、それらの設置可能なコンポーネントであり得る。
【0098】
それ故、本発明はさらに、既述の使用、又は、既述の結合方法から得られる物品を提供する。
【0099】
既述のエポキシ樹脂組成物は、有利な特性を特徴とする。これはまた、シンナーを伴っていなくても良好な加工性を有し、長期のポットライフ及びオープンタイム(迅速な硬化と組み合わされた)を有し、並びに、硬化して、高強度、低脆性、高い接合強度及び十分に高いガラス転移温度の材料をもたらす。これにより接合された物品はまた、厳しい機械的及び風化関連ストレスに耐える。
【実施例】
【0100】
本明細書中以下において、実施例を示すが、これらは、記載されている本発明を明らかにすることが意図するものである。当然のように、本発明は、これらの記載されている実施例には限定されない。
【0101】
「AHEW」は、アミン水素換算重量を表す。
【0102】
「EEW」は、エポキシ換算重量を表す。
【0103】
「標準気象条件」(SCC)とは、23±1℃の温度及び50±5%の相対空気湿度を指す。
【0104】
計測方法の説明:
粘度を、恒温化Rheotec RC30コーン-プレート粘度計(コーン径 50mm、コーン角度 1°、コーン先端プレート距離 0.05mm、せん断速度 10s-1)で計測した。
【0105】
アミン値を、滴定(酢酸中の0.1N HClO4対クリスタルバイオレット)により測定した。
【0106】
用いた物質及び略語:
Sikadur(登録商標)-30(A) Sikadur(登録商標)-30 コンポーネントA、構造エポキシ樹脂接着剤の石英-充填樹脂コンポーネント、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びブタン-1,4-ジオールジグリシジルエーテルを含有、EEW約700g/eq(Sika製)
B-EDA N-ベンジルエタン-1,2-ジアミン、以下に記載のとおり調製、AHEW 50g/eq
DMAPAPA 3-(3-(ジメチルアミノ)プロピルアミノ)プロピルアミン、AHEW 53g/eq(DMAPAPA、Arkema製)。
TEPA テトラエチレンペンタミン、AHEW約30g/eq(工業銘柄、Huntsman製)
BHMT 50%~78重量%の範囲内の純度を有する工業銘柄品質のビス(6-アミノヘキシル)アミン、AHEW約48g/eq(Dytek(登録商標)BHMT Amine(50-78%)、Invista製)
石英粉末 粒径0~75μm
石英砂 粒径0.1~0.3mm
沈降炭酸石灰 ステアリン酸コーティング沈降炭酸石灰(Socal(登録商標)U1S2、Solvay製)
【0107】
B-EDAは、式(I)のアミンA1である。DMAPAPAは式(II)のアミンA2である。
【0108】
N-ベンジルエタン-1,2-ジアミン(B-EDA):
最初に、丸底フラスコに180.3g(3mol)のエチレン-1,2-ジアミンを、窒素雰囲気下に室温で仕込んだ。よく撹拌しながら、106.0g(1mol)のベンズアルデヒドの1200mlのイソプロパノール中の溶液をゆっくりと滴下し、混合物を2時間撹拌した。次いで、反応混合物を、連続水素化装置中において、Pd/C固定床触媒と共に、80barの水素圧力、80℃の温度及び5ml/分の流量で水素化した。反応を監視するために、赤外分光法を用いて、約1665cm-1のイミンバンドが消失したかどうかを確認した。その後、水素化溶液をロータリーエバポレータにおいて65℃で濃縮して、未反応のエチレン-1,2-ジアミン、水及びイソプロパノールを除去した。このようにして得た反応混合物は、678mg KOH/gのアミン値を有する清透で、薄い黄色がかった液体であった。50gのこの液体を80℃、減圧下に蒸留し、31.3gの留出物を、60~65℃の蒸気温度及び0.06mbarで収集した。20℃で8.3mPa・sの粘度、750mg KOH/gのアミン値、及び、GCによる測定で97%超の純度を有する無色の液体が得られた。
【0109】
エポキシ樹脂接着剤の生成:
実施例1~11
各実施例について、表1~2に示す硬化剤成分の構成要素を遠心ミキサ(SpeedMixer(商標)DAC 150、FlackTek Inc.)により示した量(重量部)で混合し、水分を排除しながら保管した。
【0110】
用いた樹脂成分は、表1及び2に示した量(重量部)で、Sikadur(登録商標)-30成分A(Sika製)であった。
【0111】
各実施例について、次いで、樹脂及び硬化剤成分を遠心ミキサにより処理して均質なペーストを得、これを以下のとおり直ぐにテストした。
【0112】
ポットライフは、標準気象条件下において、それ以上の加工が不可能となる程度にまで接着剤の粘度が高くなるまで5分間毎にスパチュラで混合した接着剤を動かすことによって測定した。
【0113】
機械特性は、標準気象条件下で、混合した接着剤をシリコーン型に適用及び硬化して、10mmの厚さ及び150mmの長さと、80mmのゲージ長及び10mmのゲージ幅を有するダンベル形状の試料を形成することによりテストした。7日間硬化させた後に型から張力試料を外し、これらを用いて、EN ISO 527について、1mm/minのひずみ速度で引張強度及び破断伸びを測定した。
【0114】
表面の特徴をダンベル型の試料を評価して、硬化の途中に空気に露出する側部において機械特性を測定した。非粘着性の表面を「平滑」と称し、及び、粘着性の表面を「粘着性」と称した。粘着性の表面はブラッシングの徴候である。
【0115】
鋼における引張りせん断強度(LSS鋼)を、10×25mmの重畳する結合面積にて、2枚のヘプタンで脱脂した鋼板の間に、0.5mmの層厚で混合した接着剤を塗布して複数の接着による結合を形成することにより計測した。標準気象条件下に7日間の保管時間の後、引張りせん断強度を、DIN EN 1465について、10mm/minのひずみ速度で測定した。
【0116】
炭素繊維複合材料(CFRP)引張りせん断強度(LSS CFRP)を、10×50mmの重畳する結合面積にて、2枚のヘプタンで脱脂したSika(登録商標)CarboDur(登録商標)S512薄板の間に、0.5mmの層厚で混合した接着剤を塗布して複数の接着による結合を形成することにより計測した。標準気象条件下に7日間の保管時間の後、上記のとおり引張りせん断強度を測定した。
【0117】
圧縮強度を、標準気象条件下で、シリコーン型に混合した接着剤を適用して12.7×12.7×25.4mmの寸法を有する直方体を得、これらを標準気象条件下で硬化させることにより測定した。7日後、数個のこのような直方体を型から外し、ASTM D695に従って、1.3mm/minのテスト速度で破壊するまで圧縮し、各事例における最大力で圧縮強度値を読み取った。
【0118】
Tg(ガラス転移温度)を、標準気象条件下で14日間保管しておいた硬化した接着剤サンプルについて、DSCにより、Mettler Toledo DSC 3+700機器及び以下の計測プログラムで測定した:(1)-10℃で2分間、(2)10K/minの加熱速度で-10~200℃(=1回目)、(3)-50K/minの冷却速度で200~-10℃、(4)-10℃で2分間、(5)10K/minの加熱速度で-10~180℃(=2回目)。
【0119】
結果が表1及び2に報告されている。
【0120】
「(Ref.)」を付した実施例は比較例である。
【0121】
【0122】
【表2】
本開示は以下も包含する。
[1]
下記の式(I)の少なくとも一種のアミンA1及び下記の式(II)の少なくとも一種のアミンA2を含むエポキシ樹脂用硬化剤であって、
アミンA1/アミンA2の重量比が、20/1~1/2の範囲内であるエポキシ樹脂用硬化剤:
【化1】
(式中、
Aは、窒素原子又は環式若しくは芳香族成分を任意選択で含有し、かつ2~10個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
Yは、1~20個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル又はアラルキル基であり、
xは1又は2であり、及び
Bは、1,2-エチレン、1,2-プロピレン及び1,3-プロピレンから選択される同一又は異なるアルキレン基を表す)。
[2]
Aは、1,2-エチレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,3-ブチレン、2-メチル-1,2-プロピレン、1,3-ペンチレン、1,5-ペンチレン、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン、1,6-ヘキシレン、2-メチル-1,5-ペンチレン、1,7-ヘプチレン、1,8-オクチレン、2,5-ジメチル-1,6-ヘキシレン、1,9-ノニレン、2,2(4),4-トリメチル-1,6-ヘキシレン、1,10-デシレン、1,11-ウンデシレン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンチレン、1,12-ドデシレン、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、(1,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-イル)メタン-1,3、4(2)-メチル-1,3-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,4-シクロヘキシレンビス(メチレン)、1,3-フェニレンビス(メチレン)、1,4-フェニレンビス(メチレン)、3-アザ-1,5-ペンチレン、3,6-ジアザ-1,8-オクチレン、3,6,9-トリアザ-1,11-ウンデシレン、3-アザ-1,6-ヘキシレン及び3,7-ジアザ-1,9-ノニレンからなる群から選択される二価の基であることを特徴とする、[1]に記載の硬化剤。
[3]
Aは、1,2-エチレン又は1,2-プロピレンであることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の硬化剤。
[4]
Yは、2-エチルヘキシル、2-フェニルエチル、ベンジル、1-ナフチルメチル及びシクロヘキシルメチルから選択される基であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の硬化剤。
[5]
式(I)の前記アミンA1は、N-ベンジルエタン-1,2-ジアミンであることを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載の硬化剤。
[6]
式(II)の前記アミンA2は、3-(3-(ジメチルアミノ)プロピルアミノ)プロピルアミンであることを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載の硬化剤。
[7]
少なくとも一種のさらなるアミンを含むことを特徴とする、[1]~[6]のいずれかに記載の硬化剤。
[8]
前記さらなるアミンは、下記の式(III)のアミンA3であることを特徴とする、[7]に記載の硬化剤:
Y-NH-A-NH-Y (III)
[9]
前記さらなるアミンは、少なくとも二つの第1級アミノ基を有する脂肪族ポリアミンであるアミンA4であることを特徴とする、[7]に記載の硬化剤。
[10]
前記アミンA4はポリアルキレンアミンであることを特徴とする、[9]に記載の硬化剤。
[11]
- 少なくとも一種のエポキシ樹脂を含む樹脂成分、及び
- [1]~[10]のいずれかに記載の硬化剤を含む硬化剤成分
を含むエポキシ樹脂組成物。
[12]
シンナー、促進剤及び充填材からなる群から選択される少なくとも一種のさらなる構成成分を含むことを特徴とする、[11]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[13]
接着剤、シーラント、封入化合物、注型用樹脂、コーティング、プライマーとして、又は、繊維複合体材料用のマトリックスとしての[11]又は[12]に記載のエポキシ樹脂組成物の使用。
[14]
以下の工程を含む結合方法:
(i)[11]又は[12]に記載のエポキシ樹脂組成物の成分を混合すること、
(ii)ポットライフ中に、混合した前記組成物を、
- 結合すべき基材の少なくとも一方に適用し、かつ前記基材を接合してオープンタイム内に結合を形成すること、又は、
- 2つ又はそれを超える基材間のキャビティ又は隙間に適用し、かつ任意選択で前記オープンタイム内に、前記キャビティ又は隙間にアンカーを挿入すること、
続いて、混合した前記組成物を硬化させること。
[15]
[13]に記載の使用又は[14]に記載の方法により得られる物品。