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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】光反応セルおよび安定同位体濃縮装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 59/34 20060101AFI20240924BHJP
   B01D 59/04 20060101ALI20240924BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20240924BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B01D59/34 B
B01D59/04
B01J19/12 B
H01S3/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022044339
(22)【出願日】2022-03-18
(65)【公開番号】P2023137904
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健大
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-071866(JP,A)
【文献】特開平02-258027(JP,A)
【文献】特開昭62-073686(JP,A)
【文献】特開昭59-123517(JP,A)
【文献】特開昭52-153751(JP,A)
【文献】特開2016-131938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 59/00-59/50
B01J 19/12
H01S 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に密封された空間を有するセル本体と、
前記空間にレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記空間の両端に互いに対向するように配設された一対の反射ミラーと、
一対の前記反射ミラーの間に位置し、前記空間を2以上の反応領域に区画する、1以上のレーザ光透過部材と、を備え、
一対の前記反射ミラーの間で前記レーザ光を複数回反射させて、2以上の前記反応領域において2以上の光反応をそれぞれ行い、
前記セル本体が、2以上の筒状部材が連結されて構成され、
前記筒状部材の端部にはそれぞれフランジ部が位置し、
一対の前記フランジ部の間に前記レーザ光透過部材が挟持され、
前記筒状部材の端部に、一対の前記反射ミラーが対向する方向に伸縮する調整部が設けられており、前記調整部を介して前記フランジ部が位置し、
前記調整部が、ベローズ機構を有する、光反応セル。
【請求項2】
前記レーザ光透過部材が、前記レーザ光の透過率が95%以上である、請求項1に記載の光反応セル。
【請求項3】
前記反応領域には、反応ガス導入経路及び反応ガス導出経路がそれぞれ接続される、請求項1又は2に記載の光反応セル。
【請求項4】
1以上の蒸留塔と、1以上の光反応セルと、を備え、
前記光反応セルの少なくとも1つが、請求項1乃至のいずれか一項に記載の光反応セルである、安定同位体濃縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反応セルおよび安定同位体濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光化学の分野において、ガスセル内に特定波長のレーザ光を導入し、その光の吸収によって選択的な反応を起こす技術が知られており、その用途として安定同位体の分離が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、蒸留分離とレーザ分離とを組み合わせることで酸素同位体を濃縮する技術が開示されている。具体的には、オゾナイザと呼ばれるオゾン発生器から供給される酸素とオゾンとの混合ガスに四フッ化炭素(CF)を添加し、それらを蒸留によって分離する。次いで、分離した四フッ化炭素とオゾンとの混合ガスにレーザ光を照射し、オゾン中に含まれる特定の酸素同位体を含むオゾンを選択的に酸素に分解する。さらに、分解により生成した酸素、未分解のオゾン、及び四フッ化炭素を含む混合ガスを蒸留によって分離し、分離した酸素中に酸素同位体を濃縮した後、その酸素と水素とを反応させて酸素同位体濃縮水を生成する。
【0004】
また、特許文献2には、ポリシラン化合物(たとえば、Si)への赤外線レーザの照射による赤外多光子解離を用いた、低次シラン化合物の生成技術が開示されている。具体的には、ポリシラン化合物に特定波長の光を照射して、29SiF30SiFとを選択的に生成し、それらの生成物を蒸留分離によって29Siと30Siとに選択的に濃縮する。
【0005】
一般的に、安定同位体は自然科学や医療分野でトレーサとして用いられているが、安定同位体の中には、その天然存在比が小さく、使用に際して大幅に濃縮をする必要があるものが多い。たとえば、酸素安定同位体である17O及び18Oは、天然存在比がそれぞれ約400ppm及び約2000ppmであり、トレーサとして使用する場合、%オーダーの濃度とするためには10~1000倍程度の濃縮倍率が必要である。また、たとえば、ケイ素安定同位体である28Si及び29Siは、近年では量子コンピュータの分野での用途が期待されているが、99%以上の高濃度である必要がある。
【0006】
光反応による同位体の分離は、ほかの分離方法と比較して分離係数が大きいことが特徴であるが、その濃縮倍率は高いものでも2~10倍程度であり、高い濃縮倍率を得るためには多段のプロセスが必要となる。例えば、特許文献1に開示された技術による酸素同位体濃縮の場合では、%オーダーの酸素安定同位体を得るために、オゾン生成・蒸留分離・レーザ分離を組み合わせたプロセスを複数段組み合わせる必要がある。同様に、特許文献2に開示された技術によるケイ素同位体濃縮の場合では、99%以上の濃度の安定同位体を得るために、ポリシラン化合物合成・レーザ分離・蒸留分離を組み合わせたプロセスを複数段組み合わせる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-131938号公報
【文献】特開昭61-181525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、レーザ分離を含むプロセスを複数段組み合わせる場合、光反応場である光反応セルも複数台必要となる。ここで、特許文献1及び2に開示された技術の場合、非同位体選択的な分解を抑制するために特定の波長をもつ光を照射する必要があり、照射対象物質が励起や解離をする確率が高くなるために出力の大きいレーザが好ましい。これらを両立するレーザは、非常に高価である。また、レーザは光反応セルの台数分、もしくはそれ以上用意する必要があるため、同位体濃縮装置の設備コストが非常に大きい。
【0009】
また、一般的に、光反応の効率を上げるためには、レーザ光が光反応にどれだけ用いられたかを示す「光利用率」を高めることが必要である。「光利用率」を高める代表的な方法として、レーザ光と反応対象ガスとが接する経路の長光路化が挙げられる。長光路化の方法としては、一対の反射ミラーを互いに対向するように設置し、当該一対の反射ミラー間にレーザ光を複数回反射させる方法が一般的である。反射回数を増加させて光路長を大きくするためには、互いに対向する反射ミラーの角度調整、及びレーザ光をセル内に導入するための光学機器の調整において、高度な技術を求められる。反射ミラーや光学機器の角度や位置のわずかな違いによって反射回数は大きく増減するため、光反応セルの台数が多くなるほどその調整と管理に膨大な工数を必要とする。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、複数の光反応を必要とする場合に光反応セルの使用台数を低減し、光学機器等の調整時間の短縮が可能な光反応セル、及び安定同位体濃縮装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 内側に密封された空間を有するセル本体と、
前記空間にレーザ光を照射するレーザ光源と、
前記空間の両端に互いに対向するように配設された一対の反射ミラーと、
一対の前記反射ミラーの間に位置し、前記空間を2以上の反応領域に区画する、1以上のレーザ光透過部材と、を備え、
一対の前記反射ミラーの間で前記レーザ光を複数回反射させて、2以上の前記反応領域において2以上の光反応をそれぞれ行い、
前記セル本体が、2以上の筒状部材が連結されて構成され、
前記筒状部材の端部にはそれぞれフランジ部が位置し、
一対の前記フランジ部の間に前記レーザ光透過部材が挟持され、
前記筒状部材の端部に、一対の前記反射ミラーが対向する方向に伸縮する調整部が設けられており、前記調整部を介して前記フランジ部が位置し、
前記調整部が、ベローズ機構を有する、光反応セル。
[2] 前記レーザ光透過部材が、前記レーザ光の透過率が95%以上である、[1]に記載の光反応セル。
[3] 前記反応領域には、反応ガス導入経路及び反応ガス導出経路がそれぞれ接続される、[1]又は[2]に記載の光反応セル。
[4] 1以上の蒸留塔と、1以上の光反応セルと、を備え、
前記光反応セルの少なくとも1つが、[1]乃至[]のいずれかに記載の光反応セルである、安定同位体濃縮装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光反応セルによれば、複数の光反応を必要とする場合に光反応セルの使用台数を低減し、光学機器等の調整時間を短縮できる。
また、本発明の安定同位体濃縮装置によれば、複数の光反応を必要とする場合に光反応セルの使用台数を低減し、光学機器等の調整時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態である光反応セルを示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態である酸素安定同位体濃縮装置を示す系統図である。
図3】実施例1の酸素安定同位体濃縮装置を示す系統図である。
図4】実施例1の光反応セルを示す断面図である。
図5】比較例1の酸素安定同位体濃縮装置を示す系統図である。
図6】比較例1の光反応セルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した一実施形態である光反応セルについて、それを用いる安定同位体濃縮装置とともに図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0015】
<光反応セル>
先ず、本発明を適用した一実施形態である光反応セルの構成について説明する。図1は、本発明を適用した一実施形態である光反応セルの構成の一例を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態の光反応セル100は、セル本体1、レーザ光源6、反射ミラー2,3、及びレーザ光透過部材5を備えて、概略構成されている。
【0016】
セル本体1は、内側に密封された空間を有し、反応ガスの供給を受ける筒状(例えば、円筒形状)の容器である。セル本体1は、2以上の筒状部材1A、1B、…1Nを有し、隣接する筒状部材同士が連結されて構成されている。すなわち、2以上の筒状部材1A、1B、…1Nは、それぞれセル本体1の胴部を構成する。
【0017】
筒状部材1A、1B、…1Nの軸方向の長さは、特に限定されるものではなく、後述する光反応の光路長に応じて適宜選択することができる。すなわち、筒状部材1A、1B、…1Nの軸方向の長さは、すべて同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。このように、本実施形態の光反応セル100は、用途に応じて構成を自由に設計することができる。
【0018】
筒状部材1A、1B、…1Nの、隣接する筒状部材と連結される端部には、調整部13を介してフランジ部14がそれぞれ位置する。すなわち、隣接する筒状部材同士は、隣接する一対のフランジ部14,14を締結することで連結される。
【0019】
調整部13は、後述するように、レーザ光透過部材5の向きを調整する。調整部13は、ベローズ機構11とガイドロック12とを有する。
ここで、ベローズ機構11は、セル本体1の軸方向(後述する一対の反射ミラー2,3が対向する方向)に延伸・収縮(伸縮)する。
また、ガイドロック12は、ベローズ機構11の伸縮量(ストローク)を調整した後に固定する。ガイドロック12としては、例えば、一対のベローズ機構11の四隅をボルトナットで固定し、各ナット間の距離を延伸・収縮することでベローズ機構11への応力に増減を与えてベローズ機構11の伸縮量を調整する構造が挙げられる。
【0020】
セル本体1の端部のうち、レーザ光源6が配置された側の端部には、レーザ光源6から出射したレーザ光が透過するレーザ透過窓9が位置する。
【0021】
レーザ光源6は、セル本体1のレーザ透過窓9を介してセル本体1の空間にレーザ光を照射する。レーザ光源6は、セル本体1の周囲であって、レーザ透過窓9が設けられた側の端部付近に配置される。
【0022】
レーザ光源6は、特に限定されるものではなく、光反応の種類に応じて適宜選択することができる。レーザ光源6としては、例えば、18O酸素安定同位体濃縮の用途では、半導体レーザ(レーザ出力:500mW、レーザ光波長:992nm)を適用することができる。
【0023】
セル本体1の内側の空間には、反射ミラー2,3及び1以上のレーザ光透過部材5が位置する。
【0024】
一対の反射ミラー2,3は、セル本体1の軸方向において互いに対向するように、セル本体1の空間の両端にそれぞれ配設されている。具体的には、一対の反射ミラー2,3は、凹形状の反射面をそれぞれ有しており、セル本体1の内側の空間に入射されたレーザ光をそれぞれの反射面において複数回反射させるため、反射面同士が互いに対向するように配置されている。
【0025】
反射ミラー2,3は、反射率が95%以上であり、99%以上であることが好ましい。また、レーザ光源6から出射したレーザ光の導入側に位置する反射ミラー2には、レーザ光を通過させるための穴(図示略)が設けられている。
【0026】
反射ミラー2,3は、凹形状の反射面の反対側からミラー固定部材10によって支持されている。すなわち、ミラー固定部材10により、一対の反射ミラー2,3はセル本体1の空間の所要の位置に固定される。
【0027】
また、ミラー固定部材10には、ミラー調節機構4が接続されている。換言すると、ミラー調節機構4は、ミラー固定部材10を介して反射ミラー2,3にそれぞれ接続されており、反射ミラー2,3の位置(ミラー間方向、鉛直方向)、向き(あおり方向及び首振り方向)、及びミラーの回転角度をそれぞれ調整することができる。
【0028】
レーザ光透過部材5は、セル本体1の内側の空間であって、一対の反射ミラー2,3の間に位置する。本実施形態の光反応セル100は、1以上のレーザ光透過部材5を有する。また、本実施形態の光反応セル100は、1以上のレーザ光透過部材5により、セル本体1の内側の空間が2以上の反応領域1a、1b、…1nに区画される。
【0029】
レーザ光透過部材5は、特定の波長範囲内において、レーザ光源6から照射されるレーザ光の透過率が95%以上であり、99%以上であることが好ましい。これにより、一対の反射ミラー2,3の間でレーザ光の多重反射を実現することができる。
レーザ光透過部材5は、レーザ光の透過率が95%以上であれば、材質や形状は限定されない。レーザ光透過部材5としては、例えば、板状の合成石英ガラス、コバールが挙げられる。
また、レーザ光透過部材5は、表面が光学多層膜でコーティングされていてもよい。光学多層膜としては、公知の技術(例えば、特開平10-186103号公報)を適用することができる。
例えば、18O酸素安定同位体濃縮の用途では、レーザ光透過部材5として、950~1050nmの範囲で透過率95%以上の表面コーティングがされた、合成石英製レーザウィンドウを用いることができる。
【0030】
レーザ光透過部材5は、セル本体1を構成する筒状部材1A、1B、…1Nのうち、隣接する筒状部材の間に位置する。具体的には、レーザ光透過部材5は、隣接する筒状部材が有する一対のフランジ部14,14の間に挟持されている。これにより、レーザ光透過部材5は、隣接する筒状部材の間に固定される。
【0031】
また、レーザ光透過部材5は、Oリング等のシール材を介して一対のフランジ部14,14の間に挟持されることが好ましい。これにより、レーザ光透過部材5によって区画される2以上の反応領域1a、1b、…1nを、確実に密封された空間とすることができる。
【0032】
反応領域1a、1b、…1nには、反応ガス導入経路7a、7b、…7n、及び反応ガス導出経路8a、8b、…8nがそれぞれ接続される。
【0033】
(光反応セルの使用方法)
本実施形態の光反応セル100では、先ず、一対の反射ミラー2,3の位置を調整する。次いで、レーザ光源6からレーザ光をセル本体1の内側に照射し、一対の反射ミラー2,3の間でレーザ光を複数回反射させる。次いで、反応ガス導入経路7a、7b、…7nから光反応に供される反応ガスを各反応領域1a、1b、…1nにそれぞれ導入する。各反応領域1a、1b、…1nでは、レーザ光により光反応がそれぞれ行われる。次いで、反応ガス導出経路8a、8b、…8nから反応後のガスを各反応領域1a、1b、…1nからそれぞれ導出する。
【0034】
ところで、本実施形態の光反応セル100において、一対の反射ミラー2,3の間でレーザ光の多重反射を実現するためには、反射ミラー2,3の間に位置する1以上のレーザ光透過部材5におけるレーザ光の屈折を可能な限り抑制する必要がある。
一般に、光反応セルの反射ミラー間におけるレーザ光の反射回数の調整は高い精度と分解能とが要求される。
したがって、本実施形態の光反応セル100において、レーザ光透過部材5でレーザ光の屈折が起こると光路が複雑になり、その調整がさらに難しくなる。
【0035】
従来の光反応セルの場合、対向する一対の反射ミラー間を通過するレーザ光の入射角は、反射ミラーの直径と光反応セルの胴部の長さとの比よりも大きくなることはなく、光路長を大きくとる場合には胴部が長いセルとなり、レーザ光の入射角は非常に小さい角度となる。
これに対して、本実施形態の光反応セル100では、レーザ光透過部材5の向き(あおり方向及び首振り方向)が対向する一対の反射ミラー2,3に対して角度がある場合、レーザ光透過部材5に対してレーザ光が一定の入射角をもつことになる。このため、一対の反射ミラー2,3の間でレーザ光を多重反射させると、レーザ光透過部材5を通過するたびに屈折が起こることになる。
したがって、レーザ光透過部材5の向きは、対向する一対の反射ミラー2,3と平行であることが望ましいが、製作精度の都合上、レーザ光透過部材5と反射ミラー2,3とを完全に平行とすることは困難である。また、レーザ光透過部材5は、反応領域をそれぞれ密封された空間に区画するガスシール機構を兼ねていることから、レーザ光透過部材5を単独で動かして調節することができない。
【0036】
そこで、本実施形態の光反応セル100では、レーザ光透過部材5を挟持する一対のフランジ部14,14のそれぞれに隣接するように調整部13を設け、ベローズ機構11の延伸・収縮によってレーザ光透過部材5の向きを調整可能としている。これにより、レーザ光透過部材5と反射ミラー2,3とが平行となるように、レーザ光透過部材5の向きを調整できる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の光反応セル100によれば、レーザ光を透過するレーザ光透過部材5によってセル本体1の内側を2以上の反応領域1a、1b、…1nに区画し、一対の反射ミラー2、3の間でレーザ光を複数回反射させるため、単一のレーザ光源6を用い、2以上の光反応を行うことができる。したがって、複数の光反応セルを必要とする場合に、レーザ光源6の台数を削減によって設備コストを低減できる。また、一対の反射ミラー2,3の位置を調整する等、光学機器の調整時間を短縮できる。
【0038】
また、本実施形態の光反応セル100によれば、セル本体1を構成する2以上の筒状部材1A、1B、…1Nの胴部の長さをそれぞれ選択することで、各反応領域1a、1b、…1nの光路長をそれぞれ最適化できる。
【0039】
また、本実施形態の光反応セル100によれば、セル本体1を構成する2以上の筒状部材1A、1B、…1Nを交換することなく、筒状部材間の調整部13によるレーザ光透過部材5の位置の調整により、光反応セル全体の光路長を小さくすることなく、各反応領域1a、1b、…1nのそれぞれの光路長を変更できる。
【0040】
<酸素安定同位体濃縮装置>
次に、本発明を適用した一実施形態である酸素安定同位体濃縮装置の構成について説明する。図2は、本発明を適用した一実施形態である酸素安定同位体濃縮装置の構成の一例を示す模式図である。
図2に示すように、本実施形態の酸素安定同位体濃縮装置200は、(3×n)基の蒸留塔21a、21b、…21n、22a、22b、…22n、23a、23b、…23nと、1基の光反応セル100と、n基のオゾナイザ33a、33b、…33nと、n基のオゾン分解触媒筒34a、34b、…34nと、を備える。
【0041】
本実施形態の酸素安定同位体濃縮装置200は、3本の蒸留塔(第1の蒸留塔21n、第2の蒸留塔22n、及び第3の蒸留塔23n)と光反応セル100の1つの反応領域1nとが、酸素安定同位体を濃縮する1段分の構成であり、当該構成をn段組み合わせたものである。なお、nは2以上の整数である。
【0042】
オゾナイザ33a、33b、…33nは、酸素ガス(O)からオゾン(O)を発生させる装置である。オゾナイザ33a、33b、…33nの出口側は、原料フィードライン43a、43b、…43nを介して各段における第1の蒸留塔21a、21b、…21nにそれぞれ接続されている。
【0043】
オゾン分解触媒筒34a、34b、…34nは、酸化マンガン等の触媒が充填されており、常温でオゾン(O)を酸素(O)に分解する機能を有する。オゾン分解触媒筒34a、34b、…34nは、一端がオゾン分解触媒筒導入ライン49a、49b、…49nにそれぞれ接続されており、他端がオゾン分解触媒筒導出ライン50a、50b、…50nにそれぞれ接続されている。
【0044】
各蒸留塔21a、21b、…21n、22a、22b、…22n、23a、23b、…23nは、規則充填物が充填された充填塔である。なお、各蒸留塔は、規則充填物が充填された充填塔に限定されるものではなく、不規則充填物が充填された充填塔であってもよいし、棚段塔であってもよい。
各蒸留塔21a、21b、…21n、22a、22b、…22n、23a、23b、…23nには、コンデンサ31とリボイラ32とがそれぞれ1基ずつ設けられている。
【0045】
コンデンサ31は、各蒸留塔の塔頂部の異なる位置に両端が接続された循環ライン41に位置する。コンデンサ31は、蒸留塔内を上昇した気体を熱交換することで液化させ、再び蒸留塔内を下降させる機能を有する。
【0046】
リボイラ32は、各蒸留塔の塔底部の異なる位置に両端が接続された循環ライン42に位置する。リボイラ32は、蒸留塔内を下降した液体を熱交換することで気化させ、再び蒸留塔内を上昇させる機能を有する。
【0047】
各段において、第1の蒸留塔21a、21b、…21nは、酸素、オゾン及び四フッ化炭素(CF)の3成分系から、酸素を塔頂側に、オゾン及び四フッ化炭素(CF)を塔底側に、それぞれ分離する。
【0048】
第1の蒸留塔21a、21b、…21nの中間部には、原料フィードライン43a、43b、…43n、及びCF循環ライン44a、44b、…44nの一端が、それぞれ接続されている。
【0049】
また、第1の蒸留塔21a、21b、…21nの塔頂部には、酸素循環ライン45a、45b、…45nの一端が接続されており、塔底部には光反応セル導入ライン46a、46b、…46nの一端が接続されている。
【0050】
各段において、第2の蒸留塔22a、22b、…22nは、光反応セルによって酸素安定同位体17Oまたは18Oを含むオゾンのみが選択的に酸素に分解された酸素を含む、酸素、オゾン及び四フッ化炭素(CF)の3成分系から、酸素を塔頂側に、オゾン及び四フッ化炭素(CF)を塔底側に、それぞれ分離する。
【0051】
第2の蒸留塔22a、22b、…22nの中間部には、光反応セル導出ライン47a、47b、…47nの一端が、それぞれ接続されている。
【0052】
また、第2の蒸留塔22a、22b、…22nの塔頂部には、酸素同位体ガス抜出ライン48a、48b、…48nの一端が接続されており、塔底部にはオゾン分解触媒筒導入ライン49a、49b、…49nの一端が接続されている。
【0053】
ここで、酸素同位体ガス抜出ライン48a、48b、…48(n-1)は、次段のプロセスに酸素ガス(O)をそれぞれ送ガスする。酸素ガス(O)は、オゾナイザ33b、33c、…33nにおいて原料ガスとしてそれぞれ使用される。
また、最終段(n段)の酸素同位体ガス抜出ライン48nは、製品ガスを抜き出すラインであり、17Oまたは18Oが濃縮された酸素同位体ガスが送出される。
【0054】
各段において、第3の蒸留塔23a、23b、…23nは、オゾン分解触媒塔34aによってオゾンが分解された、酸素及び四フッ化炭素(CF)の2成分系から、酸素を塔頂側に、四フッ化炭素(CF)を塔底側に、それぞれ分離する。
【0055】
第3の蒸留塔23a、23b、…23nの中間部には、オゾン分解触媒筒導出ライン50a、50b、…50nの一端が、それぞれ接続されている。
【0056】
1段目(a段目)の第3の蒸留塔23aの塔頂部には、排酸素ガス抜出ライン51aの一端が接続されており、塔底部にはCF循環ライン44aの一端が接続されている。
また、第3の蒸留塔23b、23c、…23nの塔頂部には、酸素同位体ガス循環ライン51b、51c、…51nの一端が接続されており、塔底部にはCF循環ライン44b、44c、…44nの一端が接続されている。
【0057】
ここで、酸素同位体ガス循環ライン51b、51c、…51nから抜き出された酸素同位体ガスは、オゾナイザ33a、33b、…33(n-1)において原料ガスとして再利用される。
また、第3の蒸留塔23a、23b、…23nの塔底部から抜き出された四フッ化炭素(CF)は、第1の蒸留塔21a、21b、…21nの中間部に供給されて、循環使用される。
【0058】
光反応セル100は、内側の空間がn個の反応領域1a、1b、…1nに区画されている。反応領域1a、1b、…1nは、いずれも密閉空間である。
また、反応領域1a、1b、…1nには、反応ガス導入経路7a、7b、…7n、及び反応ガス導出経路8a、8b、…8nがそれぞれ接続されている。
【0059】
反応ガス導入経路7a、7b、…7nには、光反応セル導入ライン46a、46b、…46nの一端がそれぞれ接続されている。
また、反応ガス導出経路8a、8b、…8nには、光反応セル導出ライン47a、47b、…47nの一端が、それぞれ接続されている。
【0060】
これにより、各反応領域1a、1b、…1nでは、オゾン及び四フッ化炭素(CF)の2成分系のガスが導入され、レーザ光による光反応によって酸素安定同位体18Oを含むオゾンのみが選択的に酸素に分解された後、酸素、オゾン及び四フッ化炭素(CF)の3成分系のガスとして導出される。
【0061】
ところで、従来の酸素安定同位体濃縮装置では、n段の濃縮プロセスを行う場合にn台の光反応セルが必要であった。
【0062】
これに対して、本実施形態の酸素安定同位体濃縮装置200によれば、内側の空間がn個の反応領域に区画された光反応セル100を用いるため、1台の光反応セルでn段の濃縮プロセスを同時に行うことができる。
なお、光反応セル100のn個の反応領域はそれぞれ密封空間であるため、それぞれの反応領域に異なる段のプロセス流体を導入しても、組成や濃度の異なるプロセス流体同士が混合することがない。さらに、各反応領域に導入された複数段のプロセス流体に対して、同時にレーザ光の照射が可能となる。
【0063】
また、安定同位体濃縮の場合、一般的に濃縮度が高くなるほどプロセス流体の処理量は小さくなる。
従来の酸素安定同位体濃縮装置では、プロセス流体の処理量に応じて、各段に用いる光反応セルの径や長さを設計時に調整する必要があった。
【0064】
これに対して、本実施形態の酸素安定同位体濃縮装置200によれば、光反応セル100のセル本体1を構成する胴部の長さを変更することで、各反応領域の光路長を任意の長さに容易に調整することができる。
また、本実施形態の酸素安定同位体濃縮装置200によれば、光反応セル100の内側の空間を区画するレーザ光透過部材5の位置を調整することで、各反応領域の光路長を任意の長さに容易に調整することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の酸素安定同位体濃縮装置200によれば、上述した光反応セル100を用いることで、複数の光反応を必要とする場合に光反応セルの使用台数を低減し、光学機器等の調整時間を短縮できる。
【0066】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した実施形態の酸素安定同位体濃縮装置200によれば、n個の反応領域に区画された光反応セル100を1台用いる構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、n段の濃縮プロセスを行う場合、すべての光反応セルが2個の反応領域に区画されているのであればn/2台用いる構成としてもよいし、すべての光反応セルが2個の反応領域に区画されているのであればn/3台用いる構成としてもよい。また、光反応セルが有する区画された反応領域の数は、すべての光反応セルで同じであってもよいし、プロセス流量に応じて異なっていてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、安定同位体濃縮装置として、酸素安定同位体濃縮装置200を一例として説明したが、1以上の蒸留塔と光反応セルを用いる濃縮プロセスを有するのであれば、酸素安定同位体の濃縮プロセスに限定されない。
【実施例
【0068】
以下、光反応セルを用いた安定同位体濃縮装置について、実施例及び比較例を用いて本発明の効果を具体的に説明する。なお、本発明は、以下の内容に限定されない。
【0069】
<実施例1>
安定同位体濃縮装置として、図3に示す酸素安定同位体濃縮装置300を用いて、18Oの濃縮を行った。
酸素安定同位体濃縮装置300は、6本の蒸留塔と1台の光反応セル400から構成されている。具体的には、3本の蒸留塔と光反応セルの1つの反応領域とが、酸素安定同位体を濃縮する1段分の構成であり、これを2段組み合わせた装置となっている。
【0070】
図4に示すように、光反応セル400は、セル本体1の内側の空間が1つのレーザ光透過部材5によって2つの反応領域1a、1bに区画されている。
セル本体1は、直径400mm、長さ6mのSUS304製である。
一対の反射ミラー2,3は、直径300mm、厚さ25mmのホウケイ酸ガラス製であり、表面は多層の多層反射膜によってコーティングされており、反射率は99%である。
レーザ光透過部材5は、直径300mm、厚さ25mmの合成石英製であり、表面は多層の反射防止膜によってコーティングされており、透過率は99%である。
レーザ光透過部材5は、セル本体1の一端から4mの位置に設けられており、2つの反応領域1a、1bを2:1の長さ比で分割する。
レーザ透過窓9は、直径40mm、厚さ4mmの合成石英製である。
レーザ光源6は、半導体レーザを使用した。レーザ光源6のレーザ出力は、500mWであり、レーザ光の波長はオゾン中の同位体成分である「161618O」のみを分解する992nmとした。
【0071】
図3及び図4に示すように、反応ガス導入口7a、7bは、酸素安定同位体濃縮装置300の光反応セル導入ライン46a、46bの一端にそれぞれ接続されている。
また、反応ガス導出口8a、8bは、酸素安定同位体濃縮装置300の光反応セル導出ライン47a、47bの一端にそれぞれ接続されている。
【0072】
光反応セル400の反射回数の調整は、先ず、2か所のミラー調整機構4及びガイドロック12を使用して、一対の反射ミラー2,3、及びレーザ光透過部材5がそれぞれ平行となるように調整を行った。
その後、レーザ光源6よりレーザ透過窓9を通じてレーザ光をセル本体1内に導入した。そして、再び2か所のミラー調整機構4及びガイドロック12を使用して、一対の反射ミラー2,3の位置と向き、及びレーザ光透過部材5の向きの微調整を行った。
調整後、一対の反射ミラー2,3間のレーザ光の反射回数は、約200回であった。
なお、反射回数の調整には、約8時間を要した。
【0073】
光反応セル400の反射回数の調整後、蒸留部の起動を実施した。
先ず、コンデンサ31を起動し、各塔のリボイラ32に四フッ化炭素(CF)の液化ガスを溜めた。
次に、以下の表1に示す原子組成の酸素ガスをオゾナイザ33aに供給し、オゾナイザ33a起動して、1段目の第1の蒸留塔21aに酸素とオゾンとの混合ガスの供給を行った。第1の蒸留塔21aでは、酸素、オゾン及び四フッ化炭素(CF)の混合ガスに蒸留分離される。
【0074】
【表1】
【0075】
第1の蒸留塔21aの塔頂部に十分な量の酸素が溜まったのち、酸素循環ライン45aを介して酸素ガスの循環を開始した。
また、第1の蒸留塔21aの塔底部に十分な量のオゾンが溜まったのち、光反応セル導入ライン46aを介して光反応セル400へ、オゾン及び四フッ化炭素(CF)の混合ガスの送ガスを行った。
【0076】
光反応セル400では、各反応領域での光反応によって18Oを含むオゾンが選択的に分解され、18Oが濃縮された酸素ガスとそれ以外のオゾンガスが、光反応セル導出ライン47aを介して1段目の第2の蒸留塔22aに供給される。
【0077】
第2の蒸留塔22aでは、18Oが濃縮された酸素、オゾン及び四フッ化炭素(CF)の混合ガスに蒸留分離される。
第2の蒸留塔22aの塔頂部に18Oが濃縮された酸素ガスが溜まったのち、2段目のオゾナイザ33bに酸素ガスの供給を開始した。このとき、2段目のオゾナイザ33bに供給された酸素ガスの原子組成は、以下の表2の通りであった。
【0078】
【表2】
【0079】
なお、1段目の第2の蒸留塔22aの塔底部から抜き出されたオゾンと四フッ化炭素(CF)の混合ガスは、オゾン分解触媒筒導入ライン49aを介してオゾン分解触媒筒34aへ導入され、オゾンが酸素に分解される。
オゾン分解触媒筒34aの出口ガスである酸素と四フッ化炭素(CF)の混合ガスは、オゾン分解触媒筒導出ライン50aを介して1段目の第3の蒸留塔23aに導入され、第3の蒸留塔23aで酸素と四フッ化炭素(CF)とに蒸留分離される。
第3の蒸留塔23aでは、塔頂部から排酸素ガス抜出ライン51aを介して酸素ガスが排出され、塔底部からCF循環ライン44aを介して第1の蒸留塔21aの中間部へ四フッ化炭素(CF)が導入される。
【0080】
2段目のオゾナイザ33bに酸素ガスの供給を開始したのち、オゾナイザ33b起動した。以下、同様の手順で2段目の各蒸留塔を起動し、2段目の第2の蒸留塔22bの塔頂部に18Oが濃縮された酸素ガスが溜まったのち、酸素同位体ガス抜出ライン48bより製品の抜出を行った。
抜き出した製品酸素ガスの原子組成は、以下の表3の通りであった。表3より、2段の濃縮プロセスによって、18O濃度は約5倍になった。
【0081】
【表3】
【0082】
(比較例1)
図5に示す酸素安定同位体濃縮装置500を用いて、18Oの濃縮を行った。
実施例1の酸素安定同位体濃縮装置300とは、2台の光反応セル600a,600bを用いる点で異なっている。
【0083】
図6に示すように、光反応セル600a、600bは、セル本体1の内側の空間が1つの反応領域となっている。
光反応セル600aのセル本体1は、直径400mm、長さ4mのSUS304製である。
光反応セル600bのセル本体1は、直径400mm、長さ2mのSUS304製である。
一対の反射ミラー2,3は、いずれも、直径300mm、厚さ25mmのホウケイ酸ガラス製であり、表面は多層の多層反射膜によってコーティングされており、反射率は99%である。
レーザ透過窓9は、いずれも、直径40mm、厚さ4mmの合成石英製である。
レーザ光源6は、半導体レーザをそれぞれ1台ずつ使用した。レーザ光源6のレーザ出力は、500mWであり、レーザ光の波長はオゾン中の同位体成分である「161618O」のみを分解する992nmとした。
【0084】
図5及び図6に示すように、光反応セル600aの反応ガス導入口7は、酸素安定同位体濃縮装置500の光反応セル導入ライン46aの一端にそれぞれ接続されている。
また、光反応セル600aの反応ガス導出口8は、酸素安定同位体濃縮装置500の光反応セル導出ライン47aの一端にそれぞれ接続されている。
同様に、光反応セル600bの反応ガス導入口7は、酸素安定同位体濃縮装置500の光反応セル導入ライン46bの一端にそれぞれ接続されている。
また、光反応セル600bの反応ガス導出口8は、酸素安定同位体濃縮装置500の光反応セル導出ライン47bの一端にそれぞれ接続されている。
【0085】
光反応セル600a、600bの反射回数の調整は、実施例1のレーザ光透過部材5の調整が不要なことを除いて、実施例1と同様に行った。
調整後、光反応セル600a、600bのいずれも、一対の反射ミラー2,3間のレーザ光の反射回数は、約200回であった。
なお、反射回数の調整には、2台合わせて約16時間を要した。
【0086】
光反応セル600a、600bの反射回数の調整後、蒸留部の起動を実施した。
蒸留部の起動方法は、実施例1と同様であり、供給する原料酸素ガスの原子組成も表1の通りである。
【0087】
酸素安定同位体濃縮装置500の2段目のオゾナイザ33bに供給される酸素ガスの原子組成、及び2段目の第2の蒸留塔22bの塔頂部より酸素同位体ガス抜出ライン48bを介して抜き出される製品酸素ガスの原子組成は、それぞれ以下の表4と表5の通りであった。また、表5より、2段の濃縮プロセスによって、18O濃度は実施例1と同様に約5倍になった。
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1によれば、同じ同位体濃縮度を得るために必要な半導体レーザ(レーザ光源6)の数を2台から1台に削減できた。
また、実施例1によれば、一対の反射ミラー2,3間におけるレーザ光の反射回数の調整に必要な工数を半分とすることができた。
さらに、実施例1によれば、長期的な運転時、振動や環境温度の変化により反射回数の再調整が必要となるが、その調整についても光反応セル1台分のみでよいため、管理工数の削減が可能であると考える。
【符号の説明】
【0091】
1 セル本体
2、3 反射ミラー
4 ミラー調節機構
5 レーザ光透過部材
6 レーザ光源
9 レーザ透過窓
10 ミラー固定部材
11 ベローズ機構
12 ガイドロック
13 調整部
14 フランジ部
100 光反応セル
200 酸素安定同位体濃縮装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6