(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】両面処理のためのパターニングされた真空チャック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
H01L21/68 P
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022111504
(22)【出願日】2022-07-12
(62)【分割の表示】P 2020544293の分割
【原出願日】2019-01-29
【審査請求日】2022-08-09
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ユドフスキー, ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】シヴァラマクリシュナン, ヴィスウェスウォレン
(72)【発明者】
【氏名】ゴデット, ルドヴィーク
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー ティマーマン タイセン, ラトガー
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-512000(JP,A)
【文献】特開2017-092396(JP,A)
【文献】特開平08-250454(JP,A)
【文献】特開2010-209173(JP,A)
【文献】国際公開第2006/030908(WO,A1)
【文献】特開2001-127145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための方法であって、
基板の第1主表面であって、該第1主表面上に形成された複数の構造物を含む第1主表面を、チャック上に位置付けることであって、前記チャックは、チャック面と、前記チャック面から凹化している複数のキャビティとを備え、前記複数のキャビティは、前記基板の前記第1主表面上に形成されている前記複数の構造物のパターンに対応している、位置付けることと、
前記チャック面内に形成された複数のポートを通じて前記第1主表面に第1圧力を印加しつつ、前記複数のキャビティのうちの少なくとも1つのキャビティの中に、前記第1圧力とは異なる第2圧力を印加することと、
前記基板の第2主表面上に、複数の構造物を形成することであって、
前記第2主表面上に樹脂層を形成すること、および
テンプレートの一方の面を前記樹脂層に押し付けることにより、前記一方の面に形成されている転写用パターンを、前記テンプレートから前記樹脂層に転写すること
を含む、形成することと
、
分離ラインを用いて、前記分離ラインの位置と合致する少なくとも1つのキャビティ内の圧力を低下させながら、前記樹脂層から前記テンプレートを除去することと
を含
む、方法。
【請求項2】
前記テンプレートの前記一方の面とは反対側の面が、複数の可変圧力溝を備えるプレートに連結され、
前記樹脂層から前記テンプレートを前記除去することが、前記基板の変形を最小化しながら、前記可変圧力溝に負圧を漸増的に印加するこ
とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のキャビティが、キャビティの第1の対およびキャビティの第2の対を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記キャビティの第1の対が第1導管に連結され、前記キャビティの第2の対が第2導管に連結される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1導管が第1真空源に連結され、前記第2導管が第2真空源に連結される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
基板を処理するための方法であって、
基板の第1主表面であって、該第1主表面上に形成された複数の構造物を含む第1主表面を、チャック上に位置付けることであって、前記チャックは、チャック面と、前記チャック面から凹化している複数のキャビティとを備え、前記複数のキャビティは、前記基板の前記第1主表面上に形成されている前記複数の構造物のパターンに対応している、位置付けることと、
前記チャック面内に形成された複数のポートを通じて前記第1主表面に第1圧力を印加しつつ、前記複数のキャビティのうちの少なくとも1つのキャビティの中に、前記第1圧力とは異なる第2圧力を印加することと、
前記基板の第2主表面上に、複数の構造物を形成することであって、
前記第2主表面上に樹脂層を形成すること、
テンプレートの一方の面を前記樹脂層に押し付けることにより、前記一方の面に形成されている転写用パターンを、前記テンプレートから前記樹脂層に転写すること、および
前記複数のキャビテ
ィ内の圧力を変動させつつ、前記樹脂層から前記テンプレートを除去すること
であって、少なくとも1つのキャビティ内の圧力は、該少なくとも1つのキャビティの上方の位置において前記樹脂層から前記テンプレートが除去されているときに、少なくとも1つの別のキャビティ内の圧力よりも低くされる、前記樹脂層から前記テンプレートを除去すること
を含む、形成することと
を含
む、方法。
【請求項7】
前記テンプレートの前記一方の面とは反対側の面が、複数の可変圧力溝を備えるプレートに連結される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記可変圧力溝に負圧を漸増的に印加することによって、前記樹脂層から前記テンプレートを除去する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記樹脂層から前記テンプレートが除去されている間、前記第1主表面に印加される前記第1圧力は一定のままに保たれる、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のキャビティが、キャビティの第1の対およびキャビティの第2の対を含む、請求項6
から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記キャビティの第1の対が第1導管に連結され、前記キャビティの第2の対が第2導管に連結される、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1導管が第1真空源に連結され、前記第2導管が第2真空源に連結される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
基板を処理するための方法であって、
チャック面に形成された複数のキャビティを備えるチャック上に位置付けられた
、基板の第1主表面に、第1圧力を印加することと、
前記基板の第2主表面上に、複数の構造物を形成することであって、
前記第2主表面上に樹脂層を形成すること、および
テンプレートの一方の面を前記樹脂層に押し付けることにより、前記一方の面に形成されている転写用パターンを、前記テンプレートから前記樹脂層に転写すること
を含む、形成することと
、
ある位置において、前記樹脂層から前記テンプレートを除去することと、
前記複数のキャビティのうちの、前記位置の下に配置された少なくとも1つのキャビティ内の、圧力を低下させることと
を含
む、方法。
【請求項14】
前記第1圧力は、前記チャックの
前記チャック面内に形成された複数のポートを通じて前記第1主表面に印加される、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1主表面は、該第1主表面上に形成された複数の構造物を含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のキャビティは、前記チャック面から凹化して
おり、前記複数のキャビティは、前記基板の前記第1主表面上に形成されている前記複数の構造物のパターンに対応している、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1主表面に
前記第1圧力を印加しつつ、前記複数のキャビティのうちの少なくとも1つのキャビティの中に、前記第1圧力とは異なる第2圧力を印加する、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のキャビティが、キャビティの第1の対およびキャビティの第2の対を含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項19】
前記キャビティの第1の対が第1導管に連結され、前記キャビティの第2の対が第2導管に連結される、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1導管が第1真空源に連結され、前記第2導管が第2真空源に連結される、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記テンプレートの前記一方の面とは反対側の面が、複数の可変圧力溝を備えるプレートに連結され、
前記樹脂層から前記テンプレートを前記除去することが、前記基板の変形を最小化しながら、前記可変圧力溝に負圧を漸増的に印加するこ
とを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項22】
前記樹脂層を硬化することをさらに含み、前記テンプレートは、前記樹脂層の前記硬化後に除去される、請求項
1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記転写用パターンを前記樹脂層に前記転写した後
、かつ前記テンプレートを前記除去する前に、前記樹脂層が硬化される、請求項
22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
技術分野
[0001]本開示の実施形態は、概して基板チャックに関する。より具体的には、本書に記載の実施形態は、パターニングされた真空チャックに関する。
【0002】
関連技術の説明
[0002]基板チャック装置は、一般的に、半導体及びディスプレイ関連の産業において、基板の移送中又は処理中に基板を支持するために使用される。新興技術は、基板上にデバイス及び構造物を製造するための様々な先進的処理技法の発展をもたらしてきた。例えば、仮想現実及び拡張現実関連の応用のための導波管装置の製造により、従来型の基板処理技法の限界が広げられてきた。
【0003】
[0003]導波管装置には、ガラス基板又はガラス様基板上に形成された微細構造物が組み込まれる。微細構造物が基板の表側と裏側に形成されることはよくある。しかし、処理中に、微細構造物が基板の表と裏とに形成された基板を扱い、支持することは、困難である。例えば、基板の表側が処理されている間に、従来型のチャック装置が、裏側に形成された微細構造物を損傷すること(又はその逆)もある。
【0004】
[0004]ゆえに、当該技術分野において必要とされているのは、改良型のチャック装置である。
【発明の概要】
【0005】
[0005]本書に記載の実施形態は、基板をチャックする基板チャック装置及び方法に関する。一実施形態では、基板チャック装置は、チャック面とチャック面の反対側の底面とを有する、本体を含む。本体は、本体内に形成された、チャック面から凹化している複数のキャビティを含み、複数のキャビティの対が、複数の第1導管と流体連結している。装置は、本体内に形成された複数の第2導管も含み、複数の第2導管のうちの1つは、複数のキャビティのうちの一部の間に形成され、キャビティの対の中の圧力は個別に制御される。
【0006】
[0006]別の実施形態では、基板チャック装置は、チャック面を有する円形本体と、チャック面に形成された複数のキャビティと、各々がチャック面に形成された表面ポートに連結された、複数の第1導管と、複数のキャビティの第1の対に連結された第2導管と、複数のキャビティの第2の対に連結された第3導管と、複数のキャビティの第3の対に連結された第4導管とを含み、キャビティの対の各々の中の圧力は、個別に制御される。
【0007】
[0007]別の実施形態では、基板を処理するための方法であって、基板の第1主表面上に複数の構造物を形成することと、チャック上に第1主表面を位置付けることであって、複数の構造物の各々が、チャックのチャック面に形成された対応するキャビティ内に位置付けられる、第1主表面を位置付けることと、複数の表面ポートを通じて主表面に第1圧力を印加しつつ、キャビティの対の中に第2圧力を印加することであって、第1圧力は第2圧力とは異なる、印加することとを含む、方法について説明する。
【0008】
[0008]本開示の上述の特徴が詳しく理解されうるように、上記では簡単に要約した本開示のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られる。一部の実施形態は付随する図面に示されている。しかし、付随する図面は例示的な実施形態のみを示すものであり、したがって、本開示の範囲を限定すると見なすべきではなく、その他の等しく有効な実施形態も許容しうることに、留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】[0009]本書に記載の一実施形態による、微細構造物を有するダイが表面上に形成された基板の平面図を示す。
【
図1B】[0010]本書に記載の一実施形態による、線1B-1Bに沿って切った
図1Aの基板の断面図を示す。
【
図2A】[0011]本書に記載の一実施形態による、真空チャック装置の断面図を示す。
【
図2B】[0012]
図2Aの真空チャック装置の平面図である。
【
図3A】[0013]パターニングされたテンプレートを基板上に転写するプロセスの一部分の概略断面図である。
【
図3B-3C】[0014]上部に基板を有する真空チャック装置の部分的な断面図である。
【
図4A】[0015]本書に記載に一実施形態による、
図2の真空チャック装置の平面図を示す。
【
図4B】[0016]
図4Aの真空チャック装置の断面図を示す。
【
図5A】[0017]本書に記載の一実施形態による、
図2の真空チャック装置の平面図を示す。
【
図5B】[0018]
図5Aの線5B-5Bに沿って切った真空チャック装置の概略断面図である。
【
図6】[0019]本書に記載の一実施形態による、真空チャック装置の一部分の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0020]理解を容易にするために、可能な場合には、複数の図に共通する同一の要素を指し示すのに同一の参照番号を使用した。1つの実施形態の要素及び特徴は、更なる記述がなくとも、他の実施形態に有益に組み込まれうると想定される。
【0011】
[0021]本書に記載の実施形態は、複数のキャビティが内部に形成された基板チャック装置に関する。一部のキャビティは、チャック装置にチャックされる基板の一方の主表面上に予め形成された微細構造物を受容するために利用され、基板のもう一方の主表面上に微細構造物を形成することが可能になる。チャック装置は、リソグラフィプロセス(例えば、基板共形インプリントリソグラフィ(SCIL)といったナノインプリントリソグラフィ(NIL)プロセス)において、特に有用でありうる。一部の実施形態は、SCILプロセスと共に使用されると例示的に説明されているが、本開示は、SCILプロセスに限定されるわけではなく、その他のNILプロセスと共に利用されてもよい。その他のNILプロセスは、基板にパターンを転写するために、可撓性テンプレートに接触するローラを使用することを含む。
【0012】
[0022]
図1Aは、リソグラフィプロセスにより微細構造物106を有するダイが表面上に形成された、基板100の平面図を示している。一実施形態では、基板100は、ガラス又はガラス様材料(石英又はサファイアなど)から形成される。別の実施形態では、基板は半導体材料(例えばシリコン材料など)から形成される。基板100は、実質的に円形状を有するものとして図示されているが、形状が多角形(例えば、長方形又は正方形といった四辺形の形状)でありうることが想定される。
【0013】
[0023]基板100は、表面上に複数のダイ104が形成されたものとして図示されている。ダイ104は、基板100の、様々なデバイス(例えば演算デバイス、光学デバイスなど)において後に利用される上で望ましい構造物を伴ってパターニングされている区域に対応する。ダイ104は、表面上に形成された微細構造物106を含む。微細構造物106は、リソグラフィプロセス(NILプロセスなど)といった様々な製造プロセスによってダイ104に形成された、フィーチャである。あるいは、微細構造物106は、基板100上にエッチングされるか又は堆積される、フィーチャである。一実施形態では、微細構造物106は格子構造物であり、ダイ104は、導波管又は導波管装置の一部分であると想定される。
【0014】
[0024]ダイ104は基板100上に配置され、ダイ104の周囲又は隣接したダイ104の間には、カーフ(kerf)区域108が形成されている。カーフ区域108は、基板表面の、ダイ104によって占有されていない領域である。カーフ区域108は、それぞれのダイ104を実質的に取り囲み、かつ個々のダイ104を互いから離間させる。カーフ区域108は、個々のダイ104と基板100の周縁部との間にも延在しうる。一実施形態では、カーフ区域108上には、微細構造物又はフィーチャが実質的に形成されない。様々な実行形態において、カーフ区域108は、個片化において個々のダイ104を分離するために、後続のダイシング工程中に除去される領域である。
【0015】
[0025]
図1Bは、本書に記載の一実施形態による、
図1Aの基板100の、線1B-1Bに沿って切った断面図を示している。上述したように、カーフ区域108は、隣接したダイ104の間に配置されている領域である。基板100は、基板100の第1の側102に微細構造物106が形成されたものとして図示されていることに、留意すべきである。一実施形態では、微細構造物106は、基板100の第1の側102から、約100umと約500umとの間の距離だけ延在する。一実施形態では、第1の側102が基板100の表側である。基板100の第2の側110は、第1の側102の反対側に、第1の側102と平行に存在している。図示している実施形態では、第2の側110は未処理であることにより、第2の側110にフィーチャ又は微細構造物は形成されていない。
【0016】
[0026]
図2Aは、本書に記載の一実施形態による、真空チャック装置200の断面図を示している。基板100は、第1の側を真空チャック装置200に接触させることにより、第2の側110が、真空チャック装置200ではない側に面して、第2の側110の処理に適した配置に配向されている状態で、図示されている。
【0017】
[0027]真空チャック装置200は、チャック面202とチャック面202の反対方向を向いた底面204とを有する、本体201を含む。一実施形態では、本体201は、金属材料(例えばアルミニウム、ステンレス鋼、又はこれらの合金、組み合せ、及び混合物)から形成される。別の実施形態では、本体201は、セラミック材料(例えば窒化ケイ素材料、窒化アルミニウム材料、アルミナ材料、又はこれらの組み合わせ及び混合物)から形成される。ある種の実施形態では、本体201のチャック面202上にコーティングが配置される。このコーティングは、所望の実行形態に応じて、ポリマー材料(例えばポリイミド材料、ポリアミド材料、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料のうちの一又は複数)である。
【0018】
[0028]本体201には、複数のキャビティ206が形成される。キャビティ206は、本体201の内部に配置され、チャック面202から本体201内へと延在する。キャビティ206は、底面203及び側壁205によって画定される。キャビティ206の深さは、約100umと約1000umとの間(例えば約300umと約700umとの間)である。キャビティ206の深さが、基板100上に形成された微細構造物106を収容するのに十分であることにより、基板100が真空チャック装置200上に位置付けられても、微細構造物106は本体201と接触しないままに保たれることが、想定される。一実施形態では、複数のキャビティ206は、本体201上に配置された材料層内に形成される。
【0019】
[0029]一実施形態では、キャビティ206の形状はダイ104の形状に対応する。例えば、ダイ104が正方形又は長方形の形状である場合、キャビティ206の形状も同様に、正方形又は長方形になる。しかし、キャビティ206のサイズは、ダイ104に対応する区域よりも大きく又は小さくなりうることが、想定される。
【0020】
[0030]本体201には複数の第1ポート208が形成され、本体201のチャック面202には、複数の第2ポート(表面ポート)210が形成される。複数の第1ポート208の各々は、キャビティ206のうちの対応する1つと流体連結している。複数の第2ポート210は、キャビティ206の間に配置される。複数の第2ポート210は、本体のチャック面202の、複数のキャビティ206の半径方向外側にも形成される。複数の第1導管212が、複数の第1ポート208及び複数の第2ポート210から、本体201を通って、底面204へと延在する。複数の第1導管212の各々は、第1真空源214に連結される。ゆえに、第1真空源214は、複数の第1導管212を介して、キャビティ206のみならず本体201のチャック面202とも流体連結している。
【0021】
[0031]
図2Bは、
図2Aの真空チャック装置200の平面図である。図示している実施形態では、複数のキャビティ206内の複数の第1ポート208も、チャック面202の複数の第2ポート210も、形状が実質的に円形である。円形のポートは真空チャック装置200の製造の容易性を向上させうるが、任意のポート形状が利用されてよいと想定される。本体201のチャック面202全体に分布した、いくつかの第2ポート210が図示されているが、基板100を実質的に平坦にチャックすることを可能にするのに適した、任意の数、配置、又は分布の第2ポート210が、この開示の範囲に含まれると想定される。
【0022】
[0032]稼働中、キャビティ206から離れた領域で基板100を本体201にチャックするために、第1真空源214によって真空圧が生成される。加えて、処理中に、特に基板100上の微細構造物106の位置に対応する区域において、基板100を安定させるために、第1真空源214による真空圧が利用される。
【0023】
[0033]リソグラフィプロセス(特にSCILプロセス)では、パターニングされた(マスタパターンからパターニングされた)テンプレートが、基板の第2の側110に配置された樹脂層に、有効に押し付けられる。例えば、パターニングされたテンプレートが可撓性かつ光透過性の基板上に提供され、この基板が、基板100上の樹脂層に、一定の時間間隔及び/又は圧力で押し付けられる。基板100を本体201に真空チャックすることは、パターニングされたテンプレートを基板の第2の側110にあてがう(applying)上で望ましい基板平坦性を実現するのに、十分であると想定される。パターニングされたテンプレートが基板の第2の側110の樹脂にあてがわれた後、パターニングされたテンプレート及び可撓性かつ光透過性の基板を基板の第2の側110から除去せずに、樹脂は硬化される。しかし、樹脂の硬化後に、パターニングされたテンプレート及び可撓性かつ光透過性の基板は、基板の第2の側110から除去される。パターニングされたテンプレート及び可撓性かつ光透過性の基板は、基板の第2の側110の硬化された樹脂層から有効に剥離されるが、これにより、基板100に、曲げモーメント及び/又は曲げ応力が生じる。除去プロセスについては、
図3A~3Cで詳述する。
【0024】
[0034]
図3Aは、パターニングされたテンプレート300を基板100の樹脂層315に転写するプロセスの一部分の、概略断面図である。基板100は、本書に記載しているように、真空チャック装置200にチャックされる。パターニングされたテンプレート300は、可撓性かつ光透過性の基板310に連結された複数のフィーチャ305を含む。複数のフィーチャ305の各々は、突起、窪み、又はこれらの組み合わせであってよく、これらが、基板100の第2の側110に配置された樹脂層315に押し付けられる。樹脂層315内又は樹脂層315上に構造物325のパターンを転写するために、パターニングされたテンプレート300は、プレート318によって樹脂層315にあてがわれる。プレート318は、パターニングされたテンプレート300に陽圧を漸増的に印加する、複数の可変圧力溝320を有する。例えば、パターニングされたテンプレート300は、プレート318の可変圧力溝320から選択的に圧力を印加することによって、基板100の第1側部327Aから反対側の第2側部327Bへと、漸増する圧力で樹脂層315に押し付けられる。
【0025】
[0035]しかし、樹脂層315の硬化後に行われるパターニングされたテンプレート300の除去においては、パターニングされたテンプレート300は、プレート318の可変圧力溝320から選択的に真空を印加することによって、基板100の第2の側327Bから第1の側327Aへと、樹脂層315から剥離される。プレート318によるこの漸増的な真空印加により、可変圧力溝320からの真空圧の印加に基づいて基板100の第2の側327Bから第1の側327Aへと移動する、分離ライン330が形成される。パターニングされたテンプレート300を基板100から引き離す際に可変圧力溝320によって提供される力により、基板は真空チャック装置200から外れうる。追加的又は代替的には、パターニングされたテンプレート300を基板100から引き離す際に可変圧力溝320によって提供される力が、分離ライン330において基板100を変形させることもある。基板100の変形が規定値を超過すると、基板100の第1の側102の微細構造物106が損傷されうる。本書に記載の真空チャック装置200は、基板100の、特にキャビティ206に対応する位置における変形を防止するか又は最小化するために利用される。
【0026】
[0036]
図3B及び
図3Cは、上部に基板100を有している真空チャック装置200の部分的な断面図である。
図3B及び3Cは、
図3Aに示している分離ライン330の種々の位置に基づく、
図3Aのパターニングされたテンプレート300の除去中の、基板100の若干の変形を示している。
図3Bはアクティブ状態のキャビティ335Aを示しており、分離ライン330において基板100が引っ張られることに対応した、凸状配向の基板100が描かれている。
図3Cはアイドル状態のキャビティ335Bを示しており、分離ライン330が基板を通過する前又は通過した後の、第1ポート208のうちの1つを通じて第1真空源214から真空が印加されたことによる、凹状配向の基板100が描かれている。アクティブ状態のキャビティ335Aとアイドル状態のキャビティ335Bは各々、
図2A及び
図2Bに示しているキャビティ206のうちの1つである。一実施形態では、アクティブ状態のキャビティ335Aとアイドル状態のキャビティ335Bの各々の中で、圧力は同じである。しかし、分離ライン330が基板100に隣接している時には、
図3Bに記載しているように、プレート318の可変圧力溝320の力がアクティブ状態のキャビティ335A内の圧力を凌駕する。
【0027】
[0037]しかし、本書に記載の実施形態によると、変形度(参照番号340として図示している)は、本書で開示している真空チャック装置を利用して仕様の範囲内に維持される。
【0028】
[0038]
図4Aは、本書に記載の一実施形態による、
図2の真空チャック装置200の平面図を示している。図示している第2ポート(表面ポート)210は、
図2A及び
図2Bに示している実施形態と比較して、真空に曝露される基板表面積を増加させるために、不規則形状の溝パターンになっている。
【0029】
[0039]
図4Bは、
図4Aの真空チャック装置200の断面図を示している。図示している実施形態では、真空チャック装置200は、複数の第2ポート404と、複数の第2導管402と、第2真空源406とを含む。複数の第2ポート404は、キャビティ206の底面203に形成され、複数の第2導管402が、複数の第2ポート404の各々から、本体201を通って底面204へと延在する。複数の第2導管402も、前述のように第2真空源406に連結される。
【0030】
[0040]稼働中、
図4A及び
図4Bの真空チャック装置200は、基板100を差圧チャックすることを可能にする。複数の第1導管212及び複数の第1ポート210を介して基板100と流体連結している第1真空源214は、第1真空圧を生成して、本体201のチャック面202に基板をチャックする。複数の第2導管402及び複数の第2ポート404を介してキャビティ206と流体連結している第2真空源406は、第2真空圧を生成してキャビティ206の圧力を更に低下させ、基板100の変形度を低減するか又は変形をなくす。第1真空圧は、望ましいチャック特性に応じて、第2真空圧よりも大きくても、小さくても、又は第2真空圧と等しくてもよいと、想定される。一部の実行形態では、第1真空圧及び第2真空圧は、真空チャック装置200が稼働している周囲圧力よりも低くてよい。周囲圧力は、大気圧(例えば760水銀柱ミリメートル(mmHg)又はおおよそその程度)でありうる。
【0031】
[0041]
図5Aは、本書に記載の一実施形態による、
図2の真空チャック装置200の平面図を示している。
図5Bは、
図5Aの線5B-5Bに沿って切った、真空チャック装置200の概略断面図である。この実施形態では、真空チャック装置200には、第1圧力ゾーン500A、第2圧力ゾーン500B、第3圧力ゾーン500C、及び第4圧力ゾーン500Dを含む複数の圧力ゾーンが設けられている。第4圧力ゾーン500Dは、基板100の、表面上に微細構造物106が形成されていない部分をチャックするために利用される、溝パターン505によって画定される。キャビティ510A~510Cとして図示しているキャビティ206は、上述したように、基板の微細構造物106を有する部分をチャックするために利用される。キャビティ510A~510Cの各々は、第1真空源515A、第2真空源515B、及び第3真空源515Cと流体連結し、溝パターン505は第4真空源515Dと流体連結している。真空源515A~515Dの各々は、個別に制御される。
【0032】
[0042]
図5Bに示しているように、複数の第1導管520は第4真空源515Dに連結されている。複数の第1導管520の各々の表面開口525は、
図5Aの溝パターン505と流体連結しており、溝パターン505は、基板100の、キャビティ510A~510Cの上に配置されない部分をチャックするために利用される。複数の第2導管530は、キャビティ510A(
図5Bの側面図には図示せず)及び第1真空源515Aに連結されている。複数の第3導管535は、キャビティ510B及び第2真空源515Bに連結されている。複数の第3導管535の各々の開口540は、基板100の、キャビティ510B内に露出した部分に負圧の印加を行う。複数の第4導管545は、キャビティ510C(
図5Bの側面図には図示せず)及び第3真空源515Cに連結されている。
図5Bの側面図には示していないが、複数の第2導管530及び複数の第4導管545はそれぞれ、基板100の、キャビティ510A及び510C内に露出した部分に負圧の印加を行う、開口540と類似した開口を含む。
【0033】
[0043]第1圧力ゾーン500A、第2圧力ゾーン500B、及び第3圧力ゾーン500C内の圧力が個別に制御される一方、第4圧力ゾーン500D内の圧力は一定のままでありうる。第1圧力ゾーン500A、第2圧力ゾーン500B、及び第3圧力ゾーン500C内の圧力は、分離ライン330の位置に基づいて変動しうる。例えば、分離ライン330が、基板の上方の、キャビティ510Aのところ(第1圧力ゾーン500Aとして示されている)に位置付けられると、キャビティ510A内の圧力は、キャビティ510B及び510Cの圧力と比較して低くなる。しかし、分離ライン330が、基板を横切って、例えば第2圧力ゾーン500Bにおけるキャビティ510Bの上方に移動すると、キャビティ510A及び510Cの圧力は、キャビティ510Bの圧力よりも高くなる。同様に、分離ライン330がキャビティ510Cの上方にある時、キャビティ510C内の圧力は、キャビティ510A及び510Bの圧力と比較して低くなる。
【0034】
[0044]
図6は、本書に記載の一実施形態による、真空チャック装置200の一部分の断面図を示している。この実施形態では、キャビティ206には支持部材600が設けられている。支持部材600は、キャビティ206内でより低い圧力が使用されることを可能にすると共に、基板100の変形度340を低減するか又は変形をなくすために、利用される。支持部材600は、取り外し可能なフィーチャであっても、又は真空チャック装置200の一部分として形成されてもよい。支持部材600は、ある種の微細構造物106と共に使用されることが可能であり、この場合、基板100と支持部材600との接触が微細構造物106を損傷することはない。
【0035】
[0045]要約すると、内部にキャビティが形成された基板チャック装置により、基板の両面処理のために、微細構造物が形成された表面を有する基板をチャックすることが可能になる。このチャック装置は、処理中に基板100の変形度340を低減するか又は変形をなくすために利用される、上述の種々の真空チャック要素を含む。
【0036】
[0046]上記の説明は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱しなければ、本開示の他の実施形態及び更なる実施形態が考案されてよく、本開示の範囲は以下の特許請求の範囲によって決まる。