(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】基板処理システム及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240924BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H01L21/304 648H
H01L21/304 643A
H01L21/02 Z
(21)【出願番号】P 2023099189
(22)【出願日】2023-06-16
(62)【分割の表示】P 2019126958の分割
【原出願日】2019-07-08
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】滝本 雄二
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128087(JP,A)
【文献】特開2011-146448(JP,A)
【文献】特開2009-200476(JP,A)
【文献】特開2006-203145(JP,A)
【文献】特開2017-011159(JP,A)
【文献】特開2006-041255(JP,A)
【文献】特開2018-019095(JP,A)
【文献】特開平09-134857(JP,A)
【文献】特開平07-014821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送する基板搬送装置と、
複数の処理ユニットであって、各処理ユニットが、前記基板搬送装置から受け取った前記基板を回転可能に保持する基板保持機構と、前記基板保持機構に保持されている前記基板に処理流体を供給する処理流体供給部とを有する、複数の処理ユニットと、
前記基板に対して薬液を供給する基板薬液処理、前記基板に対してリンス液を供給する基板リンス処理及び前記基板を乾燥させる基板乾燥処理を含む基板処理プロセスを実行するよう、前記基板処理プロセスの内容を示す処理レシピ情報に従って、前記基板搬送装置及び前記複数の処理ユニットを制御するように構成される制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の処理ユニットのうちのある処理ユニットに関して異常が発生して処理対象の前記基板に対する前記基板処理プロセスを完了させることができない場合、前記処理対象の前記基板である救済基板を、前記ある処理ユニットとは異なる処理ユニットである救済処理ユニットに搬送し、前記救済処理ユニットにおいて前記救済基板に対する補完処理プロセスを実行するよう、前記補完処理プロセスの内容を示す補完レシピ情報に従って、前記基板搬送装置及び前記救済処理ユニットを制御し、
前記制御部は、前記ある処理ユニットにおいて前記救済基板が前記異常の発生直前までに受けた処理の内容に基づいて、前記救済基板に対する前記補完処理プロセスを実行するか否かを決定し、前記補完処理プロセスを実行すると決定した場合、前記救済基板を前記救済処理ユニットに搬送して前記補完処理プロセスを実行するよう前記補完レシピ情報に従って前記基板搬送装置及び前記救済処理ユニットを制御するように構成され
、
前記制御部は、前記異常の発生直前までに、前記基板薬液処理において使われるべき前記薬液の総量の所定割合以上が前記救済基板に既に供給されている場合、前記補完処理プロセスを実行しないと決定する、基板処理システム。
【請求項2】
基板を搬送する基板搬送装置と、
複数の処理ユニットであって、各処理ユニットが、前記基板搬送装置から受け取った前記基板を回転可能に保持する基板保持機構と、前記基板保持機構に保持されている前記基板に処理流体を供給する処理流体供給部とを有する、複数の処理ユニットと、
前記基板に対して薬液を供給する基板薬液処理、前記基板に対してリンス液を供給する基板リンス処理及び前記基板を乾燥させる基板乾燥処理を含む基板処理プロセスを実行するよう、前記基板処理プロセスの内容を示す処理レシピ情報に従って、前記基板搬送装置及び前記複数の処理ユニットを制御するように構成される制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の処理ユニットのうちのある処理ユニットに関して異常が発生して処理対象の前記基板に対する前記基板処理プロセスを完了させることができない場合、前記処理対象の前記基板である救済基板を、前記ある処理ユニットとは異なる処理ユニットである救済処理ユニットに搬送し、前記救済処理ユニットにおいて前記救済基板に対する補完処理プロセスを実行するよう、前記補完処理プロセスの内容を示す補完レシピ情報に従って、前記基板搬送装置及び前記救済処理ユニットを制御し、
前記制御部は、前記ある処理ユニットにおいて前記救済基板が前記異常の発生直前までに受けた処理の内容に基づいて、前記救済基板に対する前記補完処理プロセスを実行するか否かを決定し、前記補完処理プロセスを実行すると決定した場合、前記救済基板を前記救済処理ユニットに搬送して前記補完処理プロセスを実行するよう前記補完レシピ情報に従って前記基板搬送装置及び前記救済処理ユニットを制御するように構成され、
前記制御部は、前記異常の発生直前までに、前記基板薬液処理において使われるべき前記薬液の総量の所定割合よりも少ない量の前記薬液しか前記救済基板に供給されていない場合、前記補完処理プロセスを実行すると決定する、基板処理システム。
【請求項3】
前記基板薬液処理は、前記基板に対して第1の薬液を供給する第1基板薬液処理と、前記第1基板薬液処理後に前記基板に対して第2の薬液を供給する第2基板薬液処理と、を含み、
前記基板リンス処理は、前記第1基板薬液処理と前記第2基板薬液処理との間に行われる第1基板リンス処理と、前記第2基板薬液処理後に行われる第2基板リンス処理と、を含み、
前記制御部は、前記異常が前記第1基板薬液処理で発生した場合であって、前記異常の発生時において、前記第1基板薬液処理において使用されるべき前記第1の薬液の量の所定割合以上の前記第1の薬液が前記救済基板に既に付与されている場合、前記第1基板薬液処理の残りの実行をスキップして前記第1基板リンス処理、第2基板薬液処理及び前記基板乾燥処理を実行するよう、前記ある処理ユニットを制御する請求項
1又は2に記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記異常の発生直前までに、前記基板薬液処理において使われるべき前記薬液の総量の前記所定割合よりも少ない量の前記薬液しか前記救済基板に供給されていない場合、前記異常の発生後において、前記救済基板に対し、前記基板薬液処理をスキップして前記基板リンス処理及び前記基板乾燥処理を実行するよう、前記ある処理ユニットを制御する請求項
2に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記基板薬液処理は、前記基板に対して第1の薬液を供給する第1基板薬液処理と、前記第1基板薬液処理後に前記基板に対して第2の薬液を供給する第2基板薬液処理と、を含み、
前記基板リンス処理は、前記第1基板薬液処理と前記第2基板薬液処理との間に行われる第1基板リンス処理と、前記第2基板薬液処理後に行われる第2基板リンス処理と、を含み、
前記制御部は、前記異常が前記第1基板薬液処理で発生した場合であって、前記異常の発生時において、前記第1基板薬液処理において使用されるべき前記第1の薬液の量の所定割合よりも少ない量の第1の薬液しか前記救済基板に付与されていない場合、前記第1基板薬液処理の残り、前記第1基板リンス処理及び第2基板薬液処理の実行をスキップして前記基板乾燥処理を実行するよう、前記ある処理ユニットを制御する請求項
2又は
4に記載の基板処理システム。
【請求項6】
基板を搬送する基板搬送装置と、複数の処理ユニットであって、各処理ユニットが、前記基板搬送装置から受け取った前記基板を回転可能に保持する基板保持機構と、前記基板保持機構に保持されている前記基板に処理流体を供給する処理流体供給部とを有する複数の処理ユニットとを、処理レシピ情報に従って制御し、前記基板に対して薬液を供給する基板薬液処理、前記基板に対してリンス液を供給する基板リンス処理及び前記基板を乾燥させる基板乾燥処理を含む基板処理プロセスを実行することと、
前記複数の処理ユニットのうちのある処理ユニットに関して異常が発生して処理対象の前記基板に対する前記基板処理プロセスを完了させることができない場合、前記基板搬送装置と前記ある処理ユニットとは異なる処理ユニットである救済処理ユニットとを補完レシピ情報に従って制御し、前記処理対象の前記基板である救済基板を、前記救済処理ユニットに搬送し、前記救済処理ユニットにおいて前記救済基板に対する補完処理プロセスを実行することとを含み、
前記救済基板に対する前記補完処理プロセスを実行するか否かは、前記ある処理ユニットにおいて前記救済基板が前記異常の発生直前までに受けた処理の内容に基づいて決定され、前記補完処理プロセスを実行すると決定した場合、前記基板搬送装置及び前記救済処理ユニットを前記補完レシピ情報に従って制御し、前記救済基板を前記救済処理ユニットに搬送して前記補完処理プロセスを実行
し、
前記異常の発生直前までに、前記基板薬液処理において使われるべき前記薬液の総量の所定割合以上が前記救済基板に既に供給されている場合、前記補完処理プロセスを実行しないと決定する、基板処理方法。
【請求項7】
基板を搬送する基板搬送装置と、複数の処理ユニットであって、各処理ユニットが、前記基板搬送装置から受け取った前記基板を回転可能に保持する基板保持機構と、前記基板保持機構に保持されている前記基板に処理流体を供給する処理流体供給部とを有する複数の処理ユニットとを、処理レシピ情報に従って制御し、前記基板に対して薬液を供給する基板薬液処理、前記基板に対してリンス液を供給する基板リンス処理及び前記基板を乾燥させる基板乾燥処理を含む基板処理プロセスを実行することと、
前記複数の処理ユニットのうちのある処理ユニットに関して異常が発生して処理対象の前記基板に対する前記基板処理プロセスを完了させることができない場合、前記基板搬送装置と前記ある処理ユニットとは異なる処理ユニットである救済処理ユニットとを補完レシピ情報に従って制御し、前記処理対象の前記基板である救済基板を、前記救済処理ユニットに搬送し、前記救済処理ユニットにおいて前記救済基板に対する補完処理プロセスを実行することとを含み、
前記救済基板に対する前記補完処理プロセスを実行するか否かは、前記ある処理ユニットにおいて前記救済基板が前記異常の発生直前までに受けた処理の内容に基づいて決定され、前記補完処理プロセスを実行すると決定した場合、前記基板搬送装置及び前記救済処理ユニットを前記補完レシピ情報に従って制御し、前記救済基板を前記救済処理ユニットに搬送して前記補完処理プロセスを実行し、
前記異常の発生直前までに、前記基板薬液処理において使われるべき前記薬液の総量の所定割合よりも少ない量の前記薬液しか前記救済基板に供給されていない場合、前記補完処理プロセスを実行すると決定する、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理システム及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置では、予め定められたレシピに従って、薬液処理、リンス処理及び乾燥処理を含む一連の基板処理が実行される。
【0003】
基板処理の途中で薬液供給等に異常が生じた場合、処理対象の基板が処理ユニット内に配置された状態で処理が中断されることがある。この場合、処理の途中で、人手又は機械によって処理ユニットから基板が取り出される。その一方で、例えば薬液処理中に異常が生じた場合、基板の表面には薬液(例えばフッ酸等)が付着している可能性がある。
【0004】
そのような状況に鑑みて、基板処理の途中で異常が発生した場合、実行中の処理を中断し、純水を使ってリンス処理を行い、基板を回転させて基板乾燥を行う技術が提案されている(特許文献1参照)。当該技術によれば、本来の処理を途中までしか受けることができなかった基板を、薬液による過剰処理を回避して、適切に回収することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、異常が発生して実行中の基板処理を中断する場合に、処理を受けていた基板を、有用に使用可能な基板として回収するのに有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、基板を搬送する基板搬送装置と、複数の処理ユニットであって、各処理ユニットが、基板搬送装置から受け取った基板を回転可能に保持する基板保持機構と、基板保持機構に保持されている基板に処理流体を供給する処理流体供給部とを有する、複数の処理ユニットと、基板に対して薬液を供給する基板薬液処理、基板に対してリンス液を供給する基板リンス処理及び基板を乾燥させる基板乾燥処理を含む基板処理プロセスを実行するよう、基板処理プロセスの内容を示す処理レシピ情報に従って、基板搬送装置及び複数の処理ユニットを制御するように構成される制御部と、を備え、制御部は、複数の処理ユニットのうちのある処理ユニットに関して異常が発生して処理対象の基板に対する基板処理プロセスを完了させることができない場合、処理対象の基板である救済基板を、ある処理ユニットとは異なる処理ユニットである救済処理ユニットに搬送し、救済処理ユニットにおいて救済基板に対する補完処理プロセスを実行するよう、補完処理プロセスの内容を示す補完レシピ情報に従って、基板搬送装置及び救済処理ユニットを制御するように構成される、基板処理システムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、異常が発生して実行中の基板処理を中断する場合に、処理を受けていた基板を、有用に使用可能な基板として回収するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、基板処理システムの概略構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、処理ユニットの概略構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、処理ユニットの構成の具体例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、制御装置の機能構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る基板処理方法の一例の全体の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、基板処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、異常発生から補完処理プロセスの実行までの流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、補完処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る基板処理方法の一例の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係る基板処理方法の一例の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、補完処理プロセスが必要であると判定された場合に行われる救済処理プロセスの処理例を示す図である。
【
図12】
図12は、補完処理プロセスが不要であると判定された場合に行われる完結処理プロセスの処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照し、基板処理システム及び基板処理方法の実施形態を説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0012】
図1に示す基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0013】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウェハ(以下ウェハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0014】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向及び鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウェハWの搬送を行う。
【0015】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べられて設けられる。
【0016】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウェハWを保持するウェハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向及び鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウェハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウェハWの搬送を行う。
【0017】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウェハWに対して所定の基板処理を行う。
【0018】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0019】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0020】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウェハWを取り出し、取り出したウェハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウェハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0021】
処理ユニット16へ搬入されたウェハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウェハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0022】
次に、処理ユニット16の概略構成について
図2を参照して説明する。
図2は、処理ユニット16の概略構成を示す図である。
【0023】
図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持機構30と、処理流体供給部40と、回収カップ50とを備える。
【0024】
チャンバ20は、基板保持機構30と処理流体供給部40と回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0025】
基板保持機構30は、保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。保持部31は、ウェハWを水平に保持する。支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。かかる基板保持機構30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された保持部31を回転させ、これにより、保持部31に保持されたウェハWを回転させる。
【0026】
処理流体供給部40は、ウェハWに対して処理流体を供給する。処理流体供給部40は、処理流体供給源70に接続される。
【0027】
回収カップ50は、保持部31を取り囲むように配置され、保持部31の回転によってウェハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口52が形成される。
【0028】
次に、処理ユニット16の構成例について
図3を参照して説明する。
図3は、処理ユニット16の構成の具体例を示す模式図である。
【0029】
図3に示すように、FFU21には、バルブ22を介して不活性ガス供給源23が接続される。FFU21は、不活性ガス供給源23から供給されるN
2ガス等の不活性ガスをチャンバ20内に吐出する。
【0030】
また、基板保持機構30が備える保持部31の上面には、ウェハWを側面から保持する保持部材311が設けられる。ウェハWは、かかる保持部材311によって保持部31の上面からわずかに離間した状態で水平保持される。このようにして基板保持機構30は、基板搬送装置17から受け取ったウェハWを回転可能に保持する。
【0031】
また、処理ユニット16は、基板保持機構30に保持されているウェハWに処理流体を供給する処理流体供給部40(
図2参照)として、第1供給部40aと、第2供給部40bとを備える。
【0032】
第1供給部40aは、ノズル41a~41dと、ノズル41a~41dを水平に支持する第1アーム42aと、第1アーム42aを旋回及び昇降させる第1旋回昇降機構43aとを備える。
【0033】
第1供給部40aは、ウェハWに対し、薬液の一種であるDHF(Diluted Hydrofluoric acid)をノズル41aから供給する。 第1供給部40aは、ウェハWに対し、リンス液の一種であるDIW(Deionized Water)をノズル41bから供給する。 第1供給部40aは、ウェハWに対し、有機溶剤の一種であるIPA(Iso-Propyl Alcohol)をノズル41cから供給する。 第1供給部40aは、ウェハWに対し、不活性ガスの一種であるN2をノズル41dから供給する。
【0034】
具体的には、ノズル41aには、バルブ61aを介してDHF供給源71aが、バルブ61bを介してDIW供給源71bが、バルブ61cを介してIPA供給源71cが、バルブ61dを介してN2供給源71dが、それぞれ接続される。
【0035】
第2供給部40bは、ノズル41e,41fと、ノズル41e,41fを水平に支持する第2アーム42bと、第2アーム42bを旋回及び昇降させる第2旋回昇降機構43bとを備える。
【0036】
第2供給部40bは、ウェハWに対し、薬液の一種であるSC1(DIW、水酸化アンモニウム及び過酸化水素の混合液)をノズル41eから供給し、リンス液の一種であるDIWをノズル41fから供給する。
【0037】
具体的には、ノズル41eには、バルブ62aを介してSC1供給源72aが接続され、ノズル41fには、バルブ62bを介しDIW供給源72bが接続される。
【0038】
なお、ここでは、各ノズル41a~41fの各々に対応して処理流体の供給源が設けられる場合の例を示したが、各処理流体の供給源は、ノズル41a~41f間で適宜共用されてもかまわない。
【0039】
回収カップ50の底部に形成される排液口51は、3種類の排液ラインに接続される。具体的には、排液口51は、アルカリ系の排液を排出する排液ラインにバルブ64aを介して接続され、酸系の排液を排出する排液ラインにバルブ64bを介して接続され、有機系の排液を排出する排液ラインにバルブ64cを介して接続される。
【0040】
次に、異常発生時に基板処理システム1で実施される基板処理方法の典型例について説明する。
【0041】
[第1実施形態]
図4は、制御装置4の機能構成例を示す図である。なお
図4には、異常発生時の処理に関わる機能構成のみが示されており、他の機能構成は
図4において省略されている。
【0042】
制御部18は、処理実行部25及びレシピ取得部26を有する。処理実行部25及びレシピ取得部26の各々は、任意のハードウェア及び/又はソフトウェアによって構成可能である。処理実行部25及びレシピ取得部26は、お互いに別のデバイス(演算処理装置及び記憶装置等)により構成されていてもよいし、一部又は全部が共通するデバイスにより構成されていてもよい。
【0043】
レシピ取得部26は、各処理ユニット16で行われる処理内容を示すレシピ情報を取得する。本実施形態のレシピ取得部26は、記憶部19に記憶されている基本レシピ情報Dを読み出して、処理レシピ情報、救済レシピ情報及び補完レシピ情報を取得する。処理レシピ情報は、異常が発生していない場合に行われる通常時の処理内容を示すレシピ情報であり、基本レシピ情報Dに含まれる処理内容と同じであってもよい。救済レシピ情報及び補完レシピ情報は、異常が発生した場合に行われる処理内容を示すレシピ情報であり、基本レシピ情報Dに基づいて得られる。救済レシピ情報及び補完レシピ情報は、基本レシピ情報Dに含まれる一部の処理と全く同じ内容の処理を含んでいてもよいし、基本レシピ情報Dに含まれる処理とは一部又は全部が異なる内容の処理を含んでいてもよい。
【0044】
処理レシピ情報、救済レシピ情報及び補完レシピ情報(及び後述の完結レシピ情報)のデータ形態は限定されず、これらのレシピ情報はお互いに別個の情報データにより定められていてもよいし、お互いに共通の情報データに基づいて定められていてもよい。例えば処理レシピ情報、救済レシピ情報、補完レシピ情報及び完結レシピ情報の各々は、基本レシピ情報Dに含まれている複数の処理内容のうち実行対象となっている1又は複数の処理内容を示すデータにより構成されていてもよい。基本レシピ情報Dは、複数の処理内容を含むとともに、当該複数の処理内容のうち実行対象となりうる処理内容を示すデータを、処理レシピ毎に関連づけて含んでいてもよい。
【0045】
処理実行部25は、レシピ取得部26により取得される処理レシピ情報、救済レシピ情報及び補完レシピ情報に基づいて、基板搬送装置17及び各処理ユニット16を制御する。処理レシピ情報は通常の基板処理プロセスの内容を示し、救済レシピ情報は救済処理プロセスの内容を示し、補完レシピ情報は補完処理プロセスの内容を示す。異常が発生していない処理ユニット16に関しては、処理レシピ情報に基づく基板処理(すなわち基板処理プロセス)が行われる。一方、異常が発生した処理ユニット16(以下「異常処理ユニット16a」とも称する)に関しては、救済レシピ情報に基づく基板処理(すなわち救済処理プロセス)が行われる。また異常処理ユニット16aで処理を受けていたウェハW(以下「救済ウェハ(救済基板)」とも称する)は、他の処理ユニット16(以下「救済処理ユニット16b」とも称する)において補完レシピ情報に基づく基板処理(すなわち補完処理プロセス)を受ける。
【0046】
制御装置4には異常検出部80が接続されている。異常検出部80は、各処理ユニット16において発生した異常を検出することができ、異常を検出した場合、異常検出信号を制御装置4に送信する。制御装置4が異常検出信号を受信した場合、処理実行部25及びレシピ取得部26は、異常検出信号に応じた制御を行う。
【0047】
一例として異常検出部80は、処理流体供給部40における処理流体(薬液等)の流量異常、処理流体供給部40における処理流体の流量を調整する調整器(開閉バルブ及び流量調整バルブ等)の異常、処理流体供給部40における処理流体の流れに関する他の異常(例えば処理流体の漏洩等)を検出可能である。また異常検出部80は、薬液供給源(例えば
図3に示すDHF供給源71a及びSC1供給源72a)に貯留されている薬液の残量を検出する残量検出部によって構成可能である。例えば薬液供給源に貯留されている薬液の残量が閾値を下回った場合に、異常検出部80は、異常が発生した旨の通知を制御部18に送ってもよい。
【0048】
なお本実施形態では、異常検出部80が制御装置4(特に制御部18)とは別体として設けられているが、制御装置4(例えば制御部18)の一部として異常検出部80が設けられていてもよい。制御装置4の一部として設けられる異常検出部80は、例えばセンサ(図示省略)から送られてくる検出データを受信して解析することで、異常の発生の有無を検出することが可能である。当該センサは、例えば、処理流体供給部40における処理流体の流量、処理流体供給部40における処理流体の流量を調整する調整器の状態、及び/又は薬液供給源に貯留されている薬液の残量を検出してもよい。また、処理ユニット16の外部への処理流体の漏洩をリークセンサによって検出してもよい。この場合、漏洩した処理流体のpH値を検出し、検出したpH値に応じて、異常が発生した旨の通知を行ってもよい。
【0049】
図5は、第1実施形態に係る基板処理方法の一例の全体の流れを示すフローチャートである。
【0050】
制御部18の処理実行部25は、基板搬送装置13、受渡部14及び基板搬送装置17(搬送部15)を制御し、ウェハWをキャリアCから取り出して、割り当てられた処理ユニット16に収容する。そして処理実行部25は、処理レシピ情報に従って、基板搬送装置17及び各処理ユニット16の基板保持機構30及び処理流体供給部40を制御し、各処理ユニット16において基板処理プロセスを実行する(
図5のS11)。基板処理プロセスは、ウェハWに対して薬液を供給する基板薬液処理、ウェハWに対してリンス液を供給して薬液を洗い流す基板リンス処理、及び基板リンス処理後にウェハWを乾燥させる基板乾燥処理を含む。
【0051】
図6は、基板処理プロセスの一例を示すフローチャートである。本実施形態における各ウェハWは、割り当てられた処理ユニット16において、第1基板薬液処理(
図6のS21)、第1基板リンス処理(S22)、第2基板薬液処理(S23)、第2基板リンス処理(S24)及び基板乾燥処理(S25)をこの順番で受ける。したがって第2基板リンス処理(S24)は、基板乾燥処理(S25)の直前に行われるファイナルリンス処理となり、薬液を洗い流す役割だけではなく、後続の基板乾燥処理の前処理としての役割も果たす。
【0052】
なお
図6に示す基板処理プロセスは一例に過ぎず、他の流れで処理が行われてもよいし、各処理の内容も限定されない。例えば第1基板薬液処理で用いられる第1の薬液及び第2基板薬液処理で用いられる第2の薬液は限定されず、お互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。同様に、第1基板リンス処理で用いられる第1のリンス液及び第2基板リンス処理で用いられる第2のリンス液は限定されず、お互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。各処理には複数の処理ステップが含まれていてもよい。例えば、第1基板薬液処理及び/又は第2基板薬液処理は、複数種類の薬液を使った複数処理ステップを含んでいてもよい。また第1基板リンス処理及び/又は第2基板リンス処理は、複数種類のリンス液を使った複数処理ステップを含んでいてもよい。また基板乾燥処理は、乾燥剤(例えばIPA)をウェハWに付与する処理ステップと、スピン乾燥等によって乾燥剤をウェハWから取り除く処理ステップとを含んでいてもよい。
【0053】
処理実行部25は、基板処理プロセスが実行されている間、異常検出部80の検出結果に基づいて各処理ユニット16に関する異常の発生の有無を監視する(
図5のS12)。異常が発生していない間(S12のN)、各処理ユニット16では基板処理プロセスが続行される(S11)。
【0054】
一方、ある処理ユニット16に関して異常が発生して処理対象のウェハW(救済ウェハ)に対する基板処理プロセスを完了させることができない場合(S12のY)、処理実行部25は、当該ある処理ユニット16において救済処理プロセスを実行する(S13)。すなわち処理実行部25は、異常が発生した後に異常処理ユニット16aにおいて救済ウェハに対する救済処理プロセスを実行するよう、救済レシピ情報に従って異常処理ユニット16aの基板保持機構30及び処理流体供給部40を制御する。
【0055】
救済処理プロセスは、異常が発生した時に救済ウェハが受けていた処理の内容に応じて定められ、様々な処理を含みうる。一例として、第1基板薬液処理(
図6のS21)の最中に異常が発生した場合、処理実行部25は、救済処理プロセスに従って第1基板薬液処理の残りをスキップし、第1基板リンス処理(S22)を行ってもよい。その後、処理実行部25は、第2基板薬液処理(S23)をスキップし、第2基板リンス処理(S24)及び基板乾燥処理(S25)を行ってもよい。また第1基板リンス処理(S22)の最中に異常が発生した場合、処理実行部25は、救済処理プロセスに従って第1基板リンス処理の残り及び第2基板薬液処理(S23)をスキップし、第2基板リンス処理(S24)及び基板乾燥処理(S25)を行ってもよい。また第2基板薬液処理(S23)の最中に異常が発生した場合、処理実行部25は、救済処理プロセスに従って、第2基板薬液処理(S23)の残りをスキップし、第2基板リンス処理(S24)及び基板乾燥処理(S25)を行ってもよい。また第2基板リンス処理(S24:すなわちファイナルリンス処理)の最中に異常が発生した場合、処理実行部25は、救済処理プロセスに従って第2基板リンス処理(S24)及び基板乾燥処理(S25)を行ってもよい。また基板乾燥処理(S25)の最中に異常が発生した場合、処理実行部25は、救済処理プロセスに従って第2基板リンス処理(S24)及び基板乾燥処理(S25)を行ってもよい。
【0056】
救済ウェハは、救済処理プロセスを受けた後、異常処理ユニット16aから救済処理ユニット16bに搬送され(
図5のS14)、救済処理ユニット16bで補完処理プロセスを受ける(S15)。すなわち処理実行部25は、補完レシピ情報に従って基板搬送装置17及び救済処理ユニット16bの基板保持機構30及び処理流体供給部40を制御する。このように、異常処理ユニット16aとは異なる正常な処理ユニット16である救済処理ユニット16bに救済ウェハは搬送され、救済処理ユニット16bにおいて救済ウェハに対する補完処理プロセスが実行される。
【0057】
図7は、異常発生から補完処理プロセスの実行までの流れの一例を示すフローチャートである。補完処理プロセスに含まれる処理は、異常処理ユニット16aにおいて救済ウェハが実際に受けた処理の内容に応じて定められる。異常処理ユニット16aにおける異常の発生が異常検出部80によって検出されると(
図7のS31)、レシピ取得部26は、基本レシピ情報Dに基づいて補完レシピ情報を取得する(S32)。この際、レシピ取得部26は、異常処理ユニット16aにおいて救済ウェハが実際に受けた処理の内容を処理実行部25から取得し、補完レシピ情報の作成に用いてもよい。処理実行部25は、レシピ取得部26が取得した補完レシピ情報に基づき、救済処理ユニット16bにおいて救済ウェハに対する補完処理プロセスを実行する(S33)。
【0058】
なお補完処理プロセスに含まれる処理の具体的な内容は限定されない。典型的には、基板処理プロセスに含まれる処理の内容に基づいて、補完処理プロセスの処理の内容が決められる。異常発生によって中断された処理ステップ(以下「中断処理ステップ」とも称する)と、基板処理プロセスに含まれる中断処理ステップ以降の処理ステップとが、補完処理プロセスに含まれていてもよい。したがって補完処理プロセスは、例えば救済ウェハに対する基板薬液処理を完了させる補完薬液処理を含んでいてもよい。また中断処理ステップ(例えば基板薬液処理)の直前の処理ステップが基板リンス処理の場合、補完処理プロセスは、中断処理ステップの直前の基板リンス処理と、当該基板リンス処理の後に行われる中断処理ステップとを含んでいてもよい。補完処理プロセスにおいて基板リンス処理及び中断処理ステップの順に救済ウェハを処理することによって、補完処理プロセスにおいても、救済ウェハの処理面の状態を適切に整えた後に(すなわち適切なプレウェット後に)中断処理ステップを行うことができる。なお基板処理プロセスにおいて中断処理ステップ(例えば基板薬液処理)の直前の処理ステップが基板リンス処理ではない場合、補完処理プロセスでは、中断処理ステップに先立って基板リンス処理が行われなくてもよい。
【0059】
図8は、補完処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図8に示す補完処理プロセスによれば、救済ウェハは、救済処理ユニット16bにおいて、補完薬液処理(
図8のS41)、補完リンス処理(S42)及び補完乾燥処理(S43)をこの順番で受ける。補完薬液処理は薬液を救済ウェハに付与する処理であり、補完リンス処理はリンス液を救済ウェハに付与する処理であり、補完乾燥処理は救済ウェハを乾燥させる処理である。例えば、第2基板薬液処理(
図6のS23)で異常が発生した場合、及び同じ薬液を使用する第1基板薬液処理(S21)及び第2基板薬液処理(S23)のいずれかで異常が発生した場合、
図8に示す補完処理プロセスは有用である。なお
図8に示す補完処理プロセスは一例に過ぎず、補完処理プロセスは、例えば複数の補完薬液処理を含んでいてもよいし、図示しない処理を含んでいてもよい。
【0060】
救済処理ユニット16bは、補完処理プロセスを実行可能な処理ユニット16であれば限定されない。例えば、異常処理ユニット16aと同一構成を有する正常な処理ユニット16を、救済処理ユニット16bとして好適に使うことができる。制御部18(例えば処理実行部25)は、キャリア載置部11に置かれている複数のウェハW全体の基板処理プロセスに応じて、救済処理ユニット16bを選定することが可能である。典型的には、複数のウェハWのそれぞれには、処理(特に基板処理プロセス)の順番が割り当てられるとともに、その処理の順番に応じた処理ユニット16が割り当てられる。救済ウェハの補完処理プロセスは、全ての未処理のウェハWの基板処理プロセス完了後に行われてもよいし、未処理のウェハWの一部又は全部の基板処理プロセスに先立って行われてもよい。このようにして救済ウェハには補完処理プロセスを行うための新たな処理の順番が割り当てられ、当該新たな処理の順番に応じた処理ユニット16を救済処理ユニット16bとして用いることができる。
【0061】
このように制御部18(例えば処理実行部25)は、ある処理ユニット16(すなわち異常処理ユニット16a)に関して異常が発生した場合、未処理のウェハW及び救済ウェハに対する処理の優先順の再割り当てを行う。この再割り当てを行う際、異常処理ユニット16aは、割り当て可能な処理ユニット16から除外される。制御部18(例えば処理実行部25)は、異常が発生した後は、異常処理ユニット16aにウェハWが搬送されないように基板搬送装置17を制御する。
【0062】
[第2実施形態]
本実施形態において上述の第1実施形態と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略される。
【0063】
本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、ある処理ユニット16に関して異常が発生した場合には、救済処理プロセス及び補完処理プロセスが実行される。ただし本実施形態の補完処理プロセスに含まれる処理は、救済処理プロセスが完了した後から補完処理プロセスの実行が開始されるまでの時間に基づいて定められる。
【0064】
図9は、第2実施形態に係る基板処理方法の一例の流れを示すフローチャートである。
【0065】
各処理ユニット16において基板処理プロセスが実行されている間に、ある処理ユニット16に関して異常が発生した場合(
図9のS51)、処理実行部25は、その異常処理ユニット16aにおいて救済処理プロセスを実行する(S52)。
【0066】
そして制御部18(例えばレシピ取得部26)は、救済ウェハに対する救済処理プロセスが終了した後からの経過時間をカウントする(S53)。これにより制御部18は、救済ウェハに関する救済処理プロセスの終了から補完処理プロセスの開始までの時間を直接的又は間接的に示す経過時間情報を取得する。制御部18は、救済ウェハに関する救済処理プロセスの終了から補完処理プロセスの開始までの時間を正確に示す経過時間情報を取得することが好ましい。ただし制御部18は、必ずしも、救済処理プロセス終了から補完処理プロセス開始までの間の全時間をカウントする必要はない。すなわち経過時間情報は、救済処理プロセス終了から補完処理プロセス開始までの厳密な時間を示すものでなくてもよい。例えば、救済処理プロセス終了後から補完処理プロセス開始前まで救済ウェハが予め決められた保管場所に置かれる場合、制御部18は、救済ウェハが保管場所に置かれている時間を示す情報を経過時間情報として取得してもよい。
【0067】
そしてレシピ取得部26は、救済ウェハの経過時間情報に基づく補完レシピ情報を取得する(S54)。例えば、救済処理プロセス終了から補完処理プロセス開始までの時間が比較的長い場合、救済ウェハは待機時間中に酸化され、補完処理プロセスの開始時点で意図しない酸化膜が形成されていることが予想される。本実施形態のレシピ取得部26は、補完処理プロセスにおいてそのような意図しない酸化膜の除去も行われるよう、経過時間情報に基づいて補完レシピ情報を作る。具体的には、補完処理プロセスには酸化膜除去処理が含められる。本来の補完処理プロセスに酸化膜除去処理が含まれている場合には、本来の酸化膜の除去量に加えて意図しない酸化膜の除去量も考慮され、補完処理プロセスにおいて救済ウェハに付与される薬液の付与量及び/又は酸化膜除去処理の時間が決められる。
【0068】
処理実行部25は、このようにしてレシピ取得部26が取得した補完レシピ情報に従って、救済処理ユニット16bで救済ウェハに対する補完処理プロセスを実行する(S55)。これにより、救済処理プロセス終了後に生じた救済ウェハの意図しない変質も、補完処理プロセスにおいて取り除くことができる。
【0069】
[第3実施形態]
本実施形態において上述の第1実施形態又は第2実施形態と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略される。
【0070】
本実施形態の制御部18(例えば処理実行部25)は、異常処理ユニット16aにおいて救済ウェハが異常の発生直前までに受けた処理の内容に基づいて、救済ウェハに対する補完処理プロセスを実行するか否かを決定する。補完処理プロセスを実行すると決定した場合、制御部18は、救済ウェハを救済処理ユニット16bに搬送して補完処理プロセスを実行するよう、補完レシピ情報に従って基板搬送装置17及び救済処理ユニット16bを制御する。一方、補完処理プロセスを実行しないと決定した場合、制御部18は、救済ウェハに対し、補完処理プロセスではなく完結処理プロセスを実行するよう、完結レシピ情報に従って基板搬送装置17及び救済処理ユニット16bを制御する。完結レシピ情報は、レシピ取得部26により、基本レシピ情報Dに基づいて取得される。レシピ取得部26は、異常発生時に救済ウェハが受けていた処理に基づいて、完結レシピ情報を作成してもよい。
【0071】
図10は、第3実施形態に係る基板処理方法の一例の流れを示すフローチャートである。
【0072】
上述の第1実施形態と同様に、本実施形態においても、処理実行部25は、基板処理プロセスが実行されている間、異常検出部80の検出結果に基づいて各処理ユニット16における異常の発生の有無を監視する(
図10のS61及びS62参照)。異常が発生していない間(S62のN)、各処理ユニット16では基板処理プロセスが続行される(S61)。
【0073】
一方、ある処理ユニット16に関して異常が発生して救済ウェハに対する基板処理プロセスを完了させることができない場合(S62のY)、処理実行部25は、救済ウェハに対する補完処理プロセスの実行が必要か否かを判定する(S63)。当該判定は、異常処理ユニット16aに関して異常発生時までに救済ウェハが受けた処理の内容に照らして行われ、救済ウェハが既にある程度以上の処理を受けたか否かに基づいて行われる。具体的な判定基準は、基板処理プロセスの具体的な処理内容及び要求される処理の品質の程度に応じて決められる。
【0074】
例えば、異常発生時に救済ウェハが受けていた処理が第1の薬液を使った薬液処理(以下「異常薬液処理」とも称する)の場合、以下の条件に基づいて、救済ウェハに対する補完処理プロセスの実行が必要か否かを判定することが可能である。すなわち補完処理プロセスが不要であると判定されるためには、異常薬液処理が、基板処理プロセスにおいて第1の薬液を使う処理のうちの最後の処理に該当することを、条件とすることができる。さらに追加的に、補完処理プロセスが不要であると判定されるためには、異常薬液処理で本来使われるべき第1の薬液の総量の所定割合(例えば90%)以上が救済ウェハに既に付与されていることを、条件としてもよい。すなわち制御部18は、異常の発生直前までに、基板薬液処理(すなわち異常薬液処理)において使われるべき第1の薬液の総量の所定割合以上が救済ウェハに既に供給されている場合、補完処理プロセスを実行しないと決定してもよい。このように異常発生時点において、異常薬液処理においてウェハWに本来的に付与すべき第1の薬液の総量の所定割合以上が救済ウェハに既に付与されている場合にのみ、補完処理プロセスが不要であると判定してもよい。
【0075】
本例では、このように異常薬液処理が第1の薬液を使った薬液処理のうちの最後の処理に該当し且つ異常発生時において所定量以上の第1の薬液が既に救済ウェハに付与されている場合には、補完処理プロセスは不要であると判定する(S63のN)。一方、異常薬液処理が第1の薬液を使った薬液処理のうちの最後の処理に該当しない場合や、異常発生時において所定量より少ない量の第1の薬液しか救済ウェハに付与されていない場合には、補完処理プロセスは必要であると判定する(S63のY)。
【0076】
補完処理プロセスが必要であると判定される場合(S63のY)、上述の第1実施形態と同様に、異常処理ユニット16aにおいて救済ウェハに対する救済処理プロセスが実行される(S64)。そして救済ウェハは救済処理ユニット16bに搬送され(S65)、救済処理ユニット16bにおいて救済ウェハに対する補完処理プロセスが実行される(S66)。なお、上述の第2実施形態と同様に、補完処理プロセスに含まれる処理の内容は、救済処理プロセスが完了した後から補完処理プロセスが開始される前までの時間に基づいて、定められてもよい。
【0077】
一方、補完処理プロセスが不要であると判定される場合(S63のN)、処理実行部25は、完結レシピ情報に従って、異常処理ユニット16aにおいて救済ウェハに対する完結処理プロセスを実行する(S67)。完結処理プロセスは、救済ウェハを処理済のウェハWとして出荷するための処理を含み、完結レシピ情報は、完結処理プロセスの処理の内容を示す。完結処理プロセスの内容は、基板処理プロセスの内容に応じて定められる。典型的には、完結処理プロセスにおいて、異常発生時に行われていた処理ステップ(以下「異常処理ステップ」とも称する)の残りはスキップされるが、基板処理プロセスにおける異常処理ステップ以降の処理ステップは行われる。
【0078】
図11は、補完処理プロセスが必要であると判定された場合に行われる救済処理プロセスの処理例を示す図である。
図12は、補完処理プロセスが不要であると判定された場合に行われる完結処理プロセスの処理例を示す図である。
図11及び
図12は、第1基板薬液処理で使用される第1の薬液と、第2基板薬液処理で使用される第2の薬液とがお互いに異なる場合であって、第1基板薬液処理に関して異常が発生した場合を例示する。
【0079】
上述のように、
図11には、異常発生時において、第1基板薬液処理において使用されるべき第1の薬液の量の所定割合(例えば90%)よりも少ない量の第1の薬液しか救済ウェハに付与されていない場合が示されている。一方、
図12には、異常発生時において、第1基板薬液処理において使用されるべき第1の薬液の量の所定割合以上の量の第1の薬液が、救済ウェハに既に付与されている場合が示されている。
【0080】
図11に示すように、補完処理プロセスを必要とする異常が第1基板薬液処理の最中に発生した場合、処理実行部25は、救済レシピ情報に従って、第1基板薬液処理の残り、第1基板リンス処理及び第2基板薬液処理の実行をスキップすることができる。そして処理実行部25は、救済処理レシピに従って、ファイナルリンス処理である第2基板リンス処理と、乾燥処理とを救済ウェハに対して実行することができる。
【0081】
一方、
図12に示すように、補完処理プロセスを必要としない異常が第1基板薬液処理の最中に発生した場合、処理実行部25は、完結レシピ情報に従って、第1基板薬液処理の残りの実行のみをスキップすることができる。そして処理実行部25は、その後に続く第1基板リンス処理、第2基板薬液処理、第2基板リンス処理及び乾燥処理を救済ウェハに対して実行することができる。
【0082】
以上説明したように上述の基板処理システム1及び基板処理方法によれば、異常が発生して実行中の基板処理を中断する場合であっても、処理を受けていた基板(すなわち救済ウェハ)を、有用に使用可能な基板として回収することができる。
【0083】
特に、補完処理プロセスに含まれる処理を、異常処理ユニット16aにおいて救済ウェハが実際に受けた処理の内容に応じて定めることによって、救済ウェハの状態に応じた適応的な補完処理プロセスを行うことができる。
【0084】
例えば補完処理プロセスが、救済ウェハに対する基板薬液処理を完了させる補完薬液処理を含むことによって、通常のウェハWに対する薬液処理と同程度の薬液処理を、救済ウェハに対しても付与することができる。
【0085】
また救済ウェハに対して救済処理プロセスを行った後に補完処理プロセスを行うことによって、補完処理プロセスの処理精度を向上させることができる。
【0086】
特に、補完処理プロセスに含まれる処理を、救済処理プロセス完了後から補完処理プロセス開始までの時間に基づいて定めることで、救済処理プロセス完了後から補完処理プロセス開始までに救済ウェハにもたらされる酸化等の変質を取り除くことも可能である。
【0087】
また救済処理プロセスを、異常が発生した時に救済ウェハが受けていた処理の内容に応じて定めることによって、救済ウェハの状態に応じた適応的な救済処理プロセスを行うことができる。
【0088】
また救済ウェハが異常発生直前までに受けた処理の内容に基づき補完処理プロセスの実行の要否を決めることによって、異常発生後における救済ウェハの処理の効率化を図ることができる。
【0089】
また異常発生後は異常処理ユニット16aにウェハWを搬送しないようにすることによって、後続のウェハWの基板処理の不具合の発生を未然に防ぐことができる。
【0090】
なお本明細書で開示されている実施形態はすべての点で例示に過ぎず限定的には解釈されないことに留意されるべきである。上述の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態での省略、置換及び変更が可能である。例えば上述の実施形態及び変形例が組み合わされてもよく、また上述以外の実施形態が上述の実施形態又は変形例と組み合わされてもよい。
【0091】
また上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーも限定されない。例えば上述の基板処理システムが他の装置に応用されてもよい。また上述の基板処理方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 基板処理システム
16 処理ユニット
16a 異常処理ユニット
16b 救済処理ユニット
17 基板搬送装置
18 制御部
30 基板保持機構
40 処理流体供給部
W ウェハ