(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】プラズマベース注入プロセスを使用するパッシベーションのための犠牲キャッピング層
(51)【国際特許分類】
H01L 21/265 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
H01L21/265 H
H01L21/265 604G
H01L21/265 F
H01L21/265 Z
H01L21/265 T
(21)【出願番号】P 2023504155
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2021038836
(87)【国際公開番号】W WO2022020056
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-10
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボスレ, ヴィクラム エム.
(72)【発明者】
【氏名】ベイトマン, ニコラス ピー.ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, ティモシー ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ミッタル, デヴェン ラジ
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0123012(US,A1)
【文献】特表2016-530665(JP,A)
【文献】特表2010-514166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0153271(US,A1)
【文献】特開2006-221941(JP,A)
【文献】特開2008-244444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0188013(US,A1)
【文献】特表2008-522404(JP,A)
【文献】特表2012-507867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースの一部分をパッシベーションする方法であって、
プラズマチャンバ内に前記ワークピースを配することと、
前記ワークピースの上面に犠牲キャッピング層を付与することと、
前記プラズマチャンバの中でパッシベーティング核種を含むプラズマを生出することであって、前記パッシベーティング核種は、水素、重水素、フッ素、および、水素、重水素、またはフッ素を希釈剤または一次処理ガスとして含有する混合ガスからなる群から選択され、前記パッシベーティング核種のイオン、ラジカル、および励起分子が発生させられる、プラズマを生出することと、
前記パッシベーティング核種の前記イオンが、前記ワークピースにバイアス電圧を印加することにより、前記犠牲キャッピング層を通して前記一部分内へと注入される注入プロセスを実行することであって、前記注入プロセス中、前記ラジカルおよび励起分子が、前記犠牲キャッピング層をエッチングする、注入プロセスを実行することと、
前記パッシベーティング核種の所望されるドーズが注入されたときに前記注入プロセスを終結させることであって、前記注入プロセスの終結において、前記犠牲キャッピング層の厚さが5オングストローム未満であるか、または、前記犠牲キャッピング層のすべてが完全に除去されており、10オングストローム未満の前記ワークピースがエッチングされている、前記注入プロセスを終結させることと
を備える、方法。
【請求項2】
前記犠牲キャッピング層は、キャッピング核種を導入し、前記バイアス電圧が印加不可能にされている間に前記キャッピング核種を含むプラズマを生出することにより、キャッピング期間中に前記プラズマチャンバ内で付与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キャッピング期間は、前記注入プロセスよりも前である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
付加的な犠牲キャッピング層が、前記キャッピング核種を前記プラズマチャンバ内へと流すことにより、前記注入プロセス中に付与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記キャッピング核種の流れは、前記注入プロセスの全体を通して継続的である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記キャッピング核種の流れは、前記注入プロセス中にパルス状にされる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記バイアス電圧は、前記キャッピング核種が前記注入プロセス中に前記プラズマチャンバ内へと流れているときに変動させられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記注入プロセスは、あらかじめ決定された時間の後に終結させられ、前記あらかじめ決定された時間は、前記パッシベーティング核種、および、パッシベーティング核種の前記所望されるドーズに基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
計測システムのアウトプットが、前記ワークピースがエッチングされているということを示すならば、警告が発生させられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記注入プロセスは、前記ワークピースがエッチングされているということを示す計測システムからのアウトプットに基づいて終結させられる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記犠牲キャッピング層の初期厚さは、前記犠牲キャッピング層のエッチング速度、および、前記注入プロセスの合計の持続期間に基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記初期厚さは、変動するエッチング速度について補償するために、チャンバ計測、処理されるワークピースの数、または、動作時間数に基づいて調整される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記犠牲キャッピング層の厚さは、5オングストロームから100オングストロームの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記バイアス電圧が印加されるとき、前記バイアス電圧は、0.1kVから10kVの間の振幅を有するパルス状DC電圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ワークピースの一部分をパッシベーションする方法であって、
チャンバ内で前記ワークピースの上面に犠牲キャッピング層を付与することであって、前記犠牲キャッピング層の厚さは、5オングストロームから100オングストロームの間である、犠牲キャッピング層を付与することと、
前記チャンバとは異なるプラズマチャンバ内に、前記ワークピースを配することと、
前記プラズマチャンバの中でパッシベーティング核種を含むプラズマを生出することであって、前記パッシベーティング核種は、水素、重水素、フッ素、および、水素、重水素、またはフッ素を希釈剤または一次処理ガスとしての含有する混合ガスからなる群から選択され、前記パッシベーティング核種のイオン、ラジカル、および励起分子が発生させられる、プラズマを生出することと、
前記パッシベーティング核種の前記イオンが、前記ワークピースにバイアス電圧を印加することにより、前記犠牲キャッピング層を通して前記一部分内へと注入される注入プロセスを実行することであって、前記注入プロセス中、前記ラジカルおよび励起分子が、前記犠牲キャッピング層をエッチングする、注入プロセスを実行することと、
前記パッシベーティング核種の所望されるドーズが注入されたときに前記注入プロセスを終結させることと
を備える、方法。
【請求項16】
前記チャンバは、
前記注入プロセスの温度の付近の温度に前記ワークピースを加熱し、
前記ワークピースが加熱されている間にガスを流すことにより、前記犠牲キャッピング層を成長させる、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ワークピースの一部分をパッシベーションする方法であって、
ワークピースが配されたプラズマチャンバ内へと、キャッピング核種を流すことと、
プラズマを発生させるために前記キャッピング核種にエネルギーを与えることであって、キャッピング期間中、前記ワークピースの上面上に犠牲キャッピング層を生出するように、バイアス電圧が前記ワークピースに印加されない、前記キャッピング核種にエネルギーを与えることと、
前記プラズマチャンバ内へとパッシベーティング核種を流すことであって、前記パッシベーティング核種は、水素、重水素、フッ素、および、水素、重水素、またはフッ素を希釈剤または一次処理ガスとしての含有する混合ガスからなる群から選択される、パッシベーティング核種を流すことと、
前記ワークピース内へとパッシベーティングイオンを注入するために注入プロセスを実行することであって、前記注入プロセスは、前記パッシベーティング核種を含むプラズマが発生させられている間において前記バイアス電圧が前記ワークピースに印加されている期間として規定される、注入プロセスを実行することと、
前記注入プロセス中に前記プラズマチャンバ内へと前記キャッピング核種を流すことにより、犠牲キャッピング層に材料を付加することと、
前記注入プロセスを終結させることと
を備える、方法。
【請求項18】
前記注入プロセスは、前記パッシベーティングイオンの所望されるドーズが注入されたときに終結させられる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記注入プロセスの終結において、前記犠牲キャッピング層の厚さが5オングストローム未満であるか、または、前記犠牲キャッピング層のすべてが完全に除去されており、10オングストローム未満の前記ワークピースがエッチングされている、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記キャッピング核種の流れは、前記注入プロセスの全体を通して継続的である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記キャッピング核種の流れは、前記注入プロセス中にパルス状にされる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記バイアス電圧は、前記キャッピング核種が前記注入プロセス中に前記プラズマチャンバ内へと流れているときに変動させられる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
付加される材料の量は、変動するエッチング速度について補償するために、チャンバ計測、処理されるワークピースの数、または、動作時間数に基づいて変動させられる、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記キャッピング核種は、質量流コントローラを通って前記プラズマチャンバに流れ、前記材料の量は、前記キャッピング核種の流量、前記質量流コントローラが作動させられる頻度、または、前記質量流コントローラのデューティサイクルを調整することにより扱われる、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月22に提出された米国特許出願第16/935,774号の優先権を主張するものであり、その米国特許出願の開示は、その開示の全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示の実施形態は、プラズマチャンバを使用してワークピースをパッシベーションするためのシステムおよび方法に、ならびに、より詳しくは、ワークピースのエッチングを最小限に抑えながら、注入を使用してワークピースをパッシベーションすることに関係する。
【背景技術】
【0003】
半導体ワークピースは、しばしば、所望される伝導率を生出するためにドーパント核種を注入される。プラズマ注入は、トランジスタなどのデバイスを形成するために半導体デバイスの表面をドープする、または、他の形で改造する効果的な方法である。
【0004】
形状寸法がより小さくなり続けるにつれて、これらのより小さいトランジスタの性能および信頼性に影響を及ぼす、新しい問題点が生起する。例えば、先進的なトランジスタについては、ゲート信頼性、具体的には負バイアス温度不安定性(NBTI)が、デバイス性能および信頼性についてのクリティカルパラメータのうちの1つである。ゲート酸化物信頼性の問題点は、業界が高ゲルマニウム濃度のSiGe膜などのより先進的なチャネル材料に移行するにつれて、いっそうクリティカルである。
【0005】
ゲート酸化物信頼性は、ゲート酸化物インターフェースにおける欠陥およびトラップ状態に主に関係付けられ、性能は、これらの欠陥をパッシベーションすることにより高められ得る。例えば、これらの欠陥は、水素、重水素、およびフッ素などの核種を使用してパッシベーションされ得る。
【0006】
これらの核種は、いくつかの異なるプロセスを使用して導入され得る。ある種の実施形態において、イオン注入が、これらの核種を導入するために使用される。この手法のいくつもの利点が存するものであり、なぜならば、高いドーピングレベルが、高いドーズ率において達成され得るものであり、そうして、そのことによって、とりわけ低い注入エネルギーにおける、所有コストの有利性が可能になるからである。
【0007】
しかしながら、プラズマベースプロセスを使用するワークピースの注入は、注入プロセス中に、イオンとともにラジカルおよび励起核種が存在することに起因して、難題であり得る。ラジカルおよび励起核種は、表面層の過度のエッチング、およびそうして、デバイス性能に悪影響を及ぼすことの誘因となり得る。
【0008】
それゆえに、ワークピースを、そのワークピースの表面をエッチングすることなくパッシベーションするための核種の注入を可能にする装置および方法が有益であることになる。さらに、この方法が相当量の時間またはコストを総体的な半導体製造プロセスに追加しないならば、有益であることになる。
【発明の概要】
【0009】
犠牲キャッピング層がワークピースの上面上に生出される、ワークピースを処理する装置および方法が開示される。そのワークピースは、次いで、選択核種がワークピースをパッシベーションするために使用される、イオン注入プロセスを受けさせられる。注入プロセスが進行中である間、ラジカルおよび励起核種が、犠牲キャッピング層をエッチングする。このことは、ワークピースが経験するエッチングの量を低減する。ある種の実施形態において、犠牲キャッピング層の厚さは、注入プロセスのために使用される合計の時間、および、エッチング速度に基づいて選択される。注入プロセスのために使用される合計の時間は、所望されるドーズ、バイアス電圧、プラズマ出力、および、他のパラメータの関数であることがある。一部の実施形態において、犠牲キャッピング層は、注入プロセスよりも前に付与される。他の実施形態において、材料が、注入プロセス中に犠牲キャッピング層に付加される。
【0010】
1つの実施形態によれば、ワークピースの一部分をパッシベーションする方法が開示される。方法は、プラズマチャンバ内にワークピースを配することと、ワークピースの上面に犠牲キャッピング層を付与することと、プラズマチャンバの中でパッシベーティング核種を含むプラズマを生出することであって、パッシベーティング核種は、希釈剤または一次処理ガスとしての、水素、重水素、フッ素、および、水素、重水素、またはフッ素を含有する混合ガスからなる群から選択され、パッシベーティング核種のイオン、ラジカル、および励起分子が発生させられる、プラズマを生出することと、パッシベーション核種のイオンが、ワークピースにバイアス電圧を印加することにより、犠牲キャッピング層を通して上述の一部分内へと注入され、注入プロセス中、ラジカルおよび励起分子が、犠牲キャッピング層をエッチングする、注入プロセスを実行することと、パッシベーティング核種の所望されるドーズが注入されたときに注入プロセスを終結させることであって、注入プロセスの終結において、犠牲キャッピング層の厚さが5オングストローム未満であるか、または、犠牲キャッピング層のすべてが完全に除去されており、10オングストローム未満のワークピースがエッチングされている、注入プロセスを終結させることとを備える。ある種の実施形態において、犠牲キャッピング層は、キャッピング核種を導入し、バイアス電圧が印加不可能にされている間にキャッピング核種を含むプラズマを生出することにより、キャッピング期間中にプラズマチャンバ内で付与される。一部の実施形態において、キャッピング期間は、注入プロセスよりも前である。一部の実施形態において、付加的な犠牲キャッピング層が、キャッピング核種をプラズマチャンバ内へと流すことにより、注入プロセス中に付与される。一部のさらなる実施形態において、キャッピング核種の流れは、注入プロセスの全体を通して継続的である。一部のさらなる実施形態において、キャッピング核種の流れは、注入プロセス中にパルス状にされる。一部のさらなる実施形態において、バイアス電圧は、キャッピング核種が注入プロセス中にプラズマチャンバ内へと流れているときに変動させられる。ある種の実施形態において、注入プロセスは、あらかじめ決定された時間の後に終結させられ、あらかじめ決定された時間は、パッシベーティング核種、および、パッシベーティング核種の所望されるドーズに基づいて決定される。一部の実施形態において、計測システムのアウトプットが、ワークピースがエッチングされているということを示すならば、警告が発生させられる。ある種の実施形態において、注入プロセスは、ワークピースがエッチングされているということを示す計測システムからのアウトプットに基づいて終結させられる。ある種の実施形態において、犠牲キャッピング層の初期厚さは、犠牲キャッピング層のエッチング速度、および、注入プロセスの合計の持続期間に基づいて決定される。一部のさらなる実施形態において、初期厚さは、変動するエッチング速度について補償するために、チャンバ計測、処理されたワークピースの数、または、動作時間数(hours of operation)に基づいて調整される。ある種の実施形態において、犠牲キャッピング層の厚さは、5オングストロームから100オングストロームの間である。ある種の実施形態において、バイアス電圧が印加されるとき、バイアス電圧は、0.1kVから10kVの間のパルス状DC電圧である。
【0011】
別の実施形態によれば、ワークピースの一部分をパッシベーションする方法が開示される。方法は、チャンバ内でワークピースの上面に犠牲キャッピング層を付与することであって、犠牲キャッピング層の厚さは、5オングストロームから100オングストロームの間である、犠牲キャッピング層を付与することと、プラズマチャンバ内にワークピースを配することであって、プラズマチャンバは、上述のチャンバとは異なる、ワークピースを配することと、プラズマチャンバの中でパッシベーティング核種を含むプラズマを生出することであって、パッシベーティング核種は、水素、重水素、フッ素、および、水素、重水素、またはフッ素を希釈剤または一次処理ガスとして含有する混合ガスからなる群から選択され、パッシベーティング核種のイオン、ラジカル、および励起分子が発生させられる、プラズマを生出することと、パッシベーション核種のイオンが、ワークピースにバイアス電圧を印加することにより、犠牲キャッピング層を通して上述の一部分内へと注入され、注入プロセス中、ラジカルおよび励起分子が、犠牲キャッピング層をエッチングする、注入プロセスを実行することと、パッシベーティング核種の所望されるドーズが注入されたときに注入プロセスを終結させることとを備える。ある種の実施形態において、チャンバは、注入プロセスの温度の付近の温度にワークピースを加熱し、ワークピースが加熱されている間にガスを流すことにより、犠牲キャッピング層を成長させる。
【0012】
別の実施形態によれば、ワークピースの一部分をパッシベーションする方法が開示される。方法は、プラズマチャンバ内へとキャッピング核種を流すことであって、そのプラズマチャンバの中にワークピースが配される、キャッピング核種を流すことと、プラズマを発生させるためにキャッピング核種にエネルギーを与えることであって、キャッピング期間中、ワークピースの上面上に犠牲キャッピング層を生出するように、バイアス電圧はワークピースに印加されない、キャッピング核種にエネルギーを与えることと、プラズマチャンバ内へとパッシベーティング核種を流すことであって、パッシベーティング核種は、水素、重水素、フッ素、および、水素、重水素、またはフッ素を希釈剤または一次処理ガスとしての含有する混合ガスからなる群から選択される、パッシベーティング核種を流すことと、ワークピース内へとパッシベーティングイオンを注入するために注入プロセスを実行することであって、注入プロセスは、、パッシベーティング核種を含むプラズマが発生させられている間においてバイアス電圧がワークピースに印加されている期間として規定される、注入プロセスを実行することと、注入プロセス中にプラズマチャンバ内へとキャッピング核種を流すことにより、犠牲キャッピング層に材料を付加することと、注入プロセスを終結させることとを備える。ある種の実施形態において、注入プロセスは、パッシベーティングイオンの所望されるドーズが注入されたときに終結させられる。ある種の実施形態において、注入プロセスの終結において、犠牲キャッピング層の厚さが5オングストローム未満であるか、または、犠牲キャッピング層のすべてが完全に除去されており、10オングストローム未満のワークピースがエッチングされている。ある種の実施形態において、キャッピング核種の流れは、注入プロセスの全体を通して継続的である。ある種の実施形態において、キャッピング核種の流れは、注入プロセス中にパルス状にされる。一部のさらなる実施形態において、バイアス電圧は、キャッピング核種が注入プロセス中にプラズマチャンバ内へと流れているときに変動させられる。ある種の実施形態において、付加される材料の量は、変動するエッチング速度について補償するために、チャンバ計測、処理されるワークピースの数、または、動作時間数に基づいて変動させられる。一部のさらなる実施形態において、キャッピング核種は、質量流コントローラ(mass flow controller)を通ってプラズマチャンバに流れ、材料の量は、キャッピング核種の流量、質量流コントローラが作動させられる頻度、または、質量流コントローラのデューティサイクルを調整することにより扱われる。
【0013】
本開示のより良好な理解のために、参照により本明細書に組み込まれている、付随する図面への参照がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】1つの実施形態によるイオン源を示す図である。
【
図2】犠牲キャッピング層と、イオンと、ラジカルとの間の相互作用を示す図である。
【
図3A】異なる実施形態によるキャッピング期間および注入プロセスについてのタイミング線図を示す図である。
【
図3B】異なる実施形態によるキャッピング期間および注入プロセスについてのタイミング線図を示す図である。
【
図3C】異なる実施形態によるキャッピング期間および注入プロセスについてのタイミング線図を示す図である。
【
図4】犠牲キャッピング層の初期厚さを決定するために使用されることがあるフローチャートを示す図である。
【
図5A】犠牲キャッピング層を利用することがある代表的なトランジスタを示す図である。
【
図5B】犠牲キャッピング層を利用することがある代表的なトランジスタを示す図である。
【
図6】犠牲キャッピング層がプラズマチャンバの外側で付与される実施形態についての注入プロセスについてのタイミング線図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本開示によって使用されることがあるイオン源100のプラズマチャンバ105の実施形態の断面を示す。イオン源100は、アルミニウム、グラファイト、または、別の適した材料から構築されることがある、いくつものプラズマチャンバ壁107により画定されるプラズマチャンバ105を含む。このプラズマチャンバ105は、ガスバッフル175を経てプラズマチャンバ105に進入する、1つまたは複数のフィードガスコンテナ170a、170b内に貯蔵される、1つまたは複数のフィードガスを供給されることがある。質量流コントローラ171a、171bが、フィードガスコンテナ170a、170bそれぞれからプラズマチャンバ105内へのフィードガスの流れを調節するために使用されることがある。このフィードガスは、RFアンテナ120、または、別のプラズマ発生機構によりエネルギーを与えられることがある。RFアンテナ120は、RFアンテナ120に電力を供給するRF電力供給121と電気的に連絡している。石英またはアルミナ窓などの誘電体窓125が、RFアンテナ120と、プラズマチャンバ105の内部との間に配されることがある。
【0016】
ワークピース10が、プラテン130上で、プラズマチャンバ105の中に配される。プラテン130は、正イオンがワークピース10の方に引き付けられるように、ある種の時間期間中、プラテン130を負にバイアスするために使用される、バイアス電力供給135と電気的に連絡している。
【0017】
さらに、プラテン130は、さらには加熱されることがある。1つの実施形態において、加熱された流体が、プラテン130内に埋め込まれたチャネルを通って流れることがある。別の実施形態において、抵抗要素などの加熱エレメントが、プラテン内に、そのプラテンを加熱するために埋め込まれることがある。
【0018】
コントローラ160が、バイアス電力供給135、RF電力供給121、および、プラズマチャンバ105内へのフィードガスの流れを制御する質量流コントローラ171a、171bと連絡していることがある。コントローラ160は、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ、特殊目的コントローラ、または、別の適した処理ユニットなどの処理ユニットを含むことがある。コントローラ160は、さらには、半導体メモリ、磁気メモリ、または、別の適したメモリなどの非一時的コンピュータ可読ストレージ要素を含むことがある。この非一時的ストレージ要素は、コントローラ160が、本明細書において説明される機能を実行することを可能とする、命令および他のデータを内包することがある。
【0019】
上記で解説されたように、
図1において示されるプラズマチャンバなどのプラズマチャンバを使用するとき、ワークピースの表面が、イオンをワークピース10内へと注入するときにラジカルおよび/または励起核種によりエッチングされるということが、可能性としてある。このことは、減少される性能を結果的に生じさせることがある、ワークピース10の表面から材料を除去することの影響を有する。フィードガスがプラズマチャンバ内へと導入され、RFアンテナ120がエネルギーを与えられるとき、フィードガスのうちの一部が、プラズマへとイオン化される。これらのイオンは、電界にさらされ、そうして制御および操作され得る。しかしながら、フィードガスの一部の分子は、励起させられるがイオン化されない。他の分子は、ラジカルへと乱される。
【0020】
励起分子およびラジカルの両方は、高度に反応性であり、いかなる表面とも反応する傾向にある。そうして、ラジカルがワークピース10の表面と接触するならば、ラジカルは、ワークピース10の材料、典型的にはシリコンと反応し、材料は除去される。そうして、イオンが、ワークピース10をパッシベーションするためにワークピース10内へと有益に注入されている間、ラジカルおよび励起分子は、ワークピースの表面を不利益にエッチングしている。
【0021】
ラジカルおよび励起分子のエッチング影響に抵抗しながら、パッシベーションイオンを注入することの利益を保持するために、犠牲キャッピング層が、
図2において示されるように、ワークピースの上部上に設けられることがある。確認され得るように、ラジカルおよび励起分子200は、ワークピース10の上部上に配される犠牲キャッピング層210と反応することがある。同じ時間において、パッシベーティングイオン220が、犠牲キャッピング層210を通って進み、ワークピース10内へと注入される。
【0022】
犠牲キャッピング層210は、ラジカルおよび励起分子200のエッチング影響に抵抗する材料を含む。換言すれば、犠牲キャッピング層210のエッチング速度は、下ワークピース10のエッチング速度未満である。一部の実施形態において、犠牲キャッピング層210のエッチング速度は、下ワークピースのエッチング速度よりも5から10倍遅いことがある。ある種の実施形態において、犠牲キャッピング層210のエッチング速度は、下ワークピースのエッチング速度よりも10倍よりも多く遅いことがある。ある種の実施形態において、犠牲キャッピング層は、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SixNy)、または酸窒化ケイ素(SixOyNz)であることがある。
【0023】
犠牲キャッピング層210は、厚さにおいて5オングストロームから100オングストロームの間であることがある。他の実施形態において、犠牲キャッピング層210は、10オングストロームから100オングストロームの間であることがある。他の実施形態において、犠牲キャッピング層210は、20オングストロームから100オングストロームの間であることがある。この厚さは、パッシベーティングイオン220が、それでもなお犠牲キャッピング層210を通って進むことができるように選択される。さらに、厚さは、犠牲キャッピング層210が、パッシベーティングイオン220の注入中に、ラジカルおよび励起分子200により、完全に、または、ほぼ完全にエッチングされることがあるように選択される。そうして、犠牲キャッピング層210の厚さは、犠牲キャッピング層210のエッチング速度は無論のこと、注入時間に基づいて決定されることがある。
【0024】
この犠牲キャッピング層210は、いくつかの異なる手立てにおいて付与されることがある。例えば、犠牲キャッピング層210は、イオン注入を実行するために使用されるプラズマチャンバの中、または、別個のチャンバ内のいずれかで付与されることがある。
【0025】
犠牲キャッピング層が、パッシベーティングイオン注入を実行するために使用される同じプラズマチャンバ内で成長させられるとき、用いられ得るいくつもの異なるシーケンスが存する。
【0026】
図3Aは、第1の実施形態を示す。この図において、垂直軸は、プロセスパラメータ値を表すために使用される。ライン300は、キャッピング核種の流量を表す。キャッピング核種は、酸素(O
2)および窒素(N
2)を含む、犠牲キャッピング層を成長させるために使用されることがある任意の核種を含む。一酸化窒素(NO)または二酸化窒素(NO
2)など、他の核種が、さらには、犠牲キャッピング層を成長させるために使用されることがある。これらの核種のすべては、これらの核種が犠牲キャッピング層の成長のために使用されるので、キャッピング核種と呼称されることがある。ライン301は、パッシベーティング核種の流量を表す。ライン302は、バイアス電力供給135(
図1を確認されたい)により印加されるバイアス電圧を表す。RF電力供給121の作動が、ライン303において示される。
【0027】
この実施形態において、RF電力供給121は、キャッピング核種の導入と近似的に同じ時間において作動させられる。キャッピング核種は、フィードガスコンテナ170a内に貯蔵されることがある。そうして、キャッピング核種を導入するために、コントローラ160は、プラズマチャンバ105内へのキャッピング核種の所望される流量を可能とするように、質量流コントローラ171aを作動させることがある。RF電力供給121の作動は、キャッピング核種をイオン化し、そのことによって、犠牲キャッピング層210が、ワークピースの上面上に成長させられることが可能となる。バイアス電圧は、イオン化されたキャッピング核種がワークピース内へと注入されないように、この時間において印加可能にされない。RF電力供給121が作動させられ、質量流コントローラ171aが作動させられ、バイアス電圧が印加可能にされていない期間は、キャッピング期間と呼称されることがある。犠牲キャッピング層はキャッピング期間中に成長させられているので、パッシベーティング核種の流れが、ライン301において示されるように始まることがある。パッシベーティング核種は、水素、重水素、フッ素、または、水素、重水素、もしくはフッ素を希釈剤または一次処理ガスとしての含有する混合ガスであることがある。パッシベーティング核種は、フィードガスコンテナ170b内に貯蔵されることがあり、コントローラ160は、プラズマチャンバ105内へのパッシベーティング核種の流れを可能とするように、質量流コントローラ171bを作動させることがある。当然ながら、パッシベーティング核種が導入される速度は、
図3Aにおいて示される速度とは異なることがある。キャッピング核種の流れが、質量流コントローラ171aを動作不可能にすることによってなどで停止された後、バイアス電圧が、ライン302において示されるように、バイアス電力供給135により印加されることがある。
図3A~
図3Cは、正に見受けられるようなバイアス電圧を示すが、負バイアス電圧が、正イオンを引き付けるために使用されるということが理解される。バイアス電圧は、パッシベーティング核種に依存して、0.1kVから10kVの間の振幅を有するパルス状DC電圧であることがある。例えば、フッ素などのより重いパッシベーティング核種は、水素などのより軽いパッシベーティング核種よりも大であるバイアス電圧を利用することがある。バイアス電圧の振幅は、パッシベーティングイオンが、犠牲キャッピング層を通って進み、パッシベーションされることになるワークピース10の一部分において停止することを可能とするように選択される。
【0028】
ある種の実施形態において、この一部分は、トランジスタのゲートにおいてなどの、ポリシリコンと別の材料との間のインターフェースであることがある。パッシベーションプロセス中に犠牲キャッピング層を利用する2つの異なる半導体構造の例が、
図5A~
図5Bにおいて見いだされる。
図5Aにおいて、シリコン基板において生出されるソース500およびドレイン510を有するトランジスタが示される。ゲート520が、次いで、ソース500とドレイン510との間で、シリコン基板上に形成される。ゲート520は、ゲート酸化物521と、ゲート酸化物521上に配される多結晶シリコン(ポリシリコン)層522とを含むことがある。ポリシリコン層の頂上に、犠牲キャッピング層210がある。
【0029】
図5Bにおいて、金属ゲートを有するトランジスタが示される。トランジスタは、シリコン基板において生出されるソース530およびドレイン540を有する。ゲート550が、次いで、ソース530とドレイン540との間で、シリコン基板上に形成される。ゲート550は、インターフェーシャル層551と、高誘電率層552と、金属ゲート553と、ポリシリコン層554とを備える。ポリシリコン層の頂上に、犠牲キャッピング層210がある。
【0030】
RF電力供給121は、パッシベーティング核種がプラズマチャンバ105内へと流されている間、作動させられたままであることがある。バイアス電力供給135、RF電力供給121、および質量流コントローラ171bがすべて作動させられるとき、ワークピースの注入が起こる。そうして、時間のこの期間は、注入プロセスと呼称されることがある。注入プロセスは、所望されるドーズがワークピース内に注入されるまで続く。所望されるドーズは、1E15/cm3から3E17/cm3の間であることがある。
【0031】
注入プロセス中、ラジカルおよび励起分子200は、犠牲キャッピング層210をエッチングする。犠牲キャッピング層210の厚さは、犠牲キャッピング層210が、注入プロセス中に、完全に、または大部分がエッチングされてなくなるというようなものであることがある。例えば、1つの実施形態において、注入プロセスが終了するとき、ワークピース10の注入された一部分の中のドーズは、所望されるレンジの中にあることがあり、5オングストローム以下の犠牲キャッピング層210が残存する。別の実施形態において、注入プロセスが終了するとき、ワークピース10の注入された一部分の中のドーズは、所望されるレンジの中にあることがあり、犠牲キャッピング層210は完全にエッチングされ、10オングストローム以下のワークピース10がエッチングされている。
【0032】
そうして、注入プロセスよりも前のキャッピング期間中に付与される、犠牲キャッピング層210の厚さは、注入時間、および、犠牲キャッピング層210のエッチング速度により決定される。犠牲キャッピング層210のエッチング速度は、犠牲キャッピング層210を生出するために使用される材料、パッシベーティング核種、および、他のプロセスパラメータに基づいて決定されることがある。注入時間は、RF電力供給121により供給される電力、バイアス電圧、および、所望されるドーズにより決定されることがある。
【0033】
換言すれば、1つの実施形態において、注入時間は、上記で説明されたパラメータに基づいて算出される。この注入時間が決定されると、犠牲キャッピング層210の初期厚さが、この注入時間およびエッチング速度に基づいて決定され得る。ある種の実施形態において、犠牲キャッピング層210のエッチング速度は、最後の洗浄以後の動作時間数の関数として変化することがあるということに留意されたい。例えば、エッチング速度は、プラズマチャンバの壁が、より早期のプロセス中に生出された材料によってコーティングされた様態になるにつれて変化することがある。そうして、ある種の実施形態において、コントローラ160は、最後の洗浄以後の動作時間数をモニタし、このモニタされる値に基づいてエッチング速度を調整することがある。ある種の実施形態において、コントローラ160は、最後の洗浄以後に処理されたワークピースの数をモニタし、このモニタされる値に基づいてエッチング速度を調整することがある。別の実施形態において、コントローラ160は、犠牲キャッピング層の実際のエッチング速度を決定するために、計測システムに頼ることがある。そうして、これらの実施形態において、コントローラは、経時的に起こる変動するエッチング速度について補償するために、動作時間数、処理されたワークピースの数、または、計測システムからのアウトプットなどのパラメータをモニタする。
【0034】
そうして、コントローラ160は、後に続くシーケンスを実行することがある。最初に、
図4の囲み400において示されるように、パッシベーティング核種、および、パッシベーティング核種の所望されるドーズが、決定され、または、コントローラ160に提供されることがある。この情報に基づいて、コントローラ160は、囲み410において示されるように、所望されるドーズを送出するために使用されることがある注入時間を決定することがある。コントローラ160は、次いで、囲み420において示されるように、選択されるキャッピング核種を決定する、または提供されることがある。次に、コントローラは、囲み430において示されるように、プラズマチャンバ105が最後の洗浄以後に動作していた時間の量を任意選択で決定する。代替法として、コントローラ160は、最後の洗浄以後に処理されたワークピースの数を決定することがある。コントローラ160は、次いで、囲み440において示されるように、パッシベーティング核種、キャッピング核種、RF電力供給により印加される電力、および任意選択で、プラズマチャンバの動作時間数の数、または、ワークピースプロセスの数に基づいて、犠牲キャッピング層210の推定されるエッチング速度を決定する。別の実施形態において、コントローラ160は、チャンバ使用量の結果としてのエッチング速度における変化を決定するために計測を利用することがある。エッチング速度および注入時間に基づいて、コントローラ160は、囲み450において示されるように、犠牲キャッピング層210の所望される初期厚さを算出する。初期厚さは、エッチング速度および合計の注入時間の積として算出されることがある。この情報を使用して、コントローラ160は、囲み460において示されるように、質量流コントローラ171aが犠牲キャッピング層を形成するために作動させられる、キャッピング期間の持続期間を算出し得る。換言すれば、犠牲キャッピング層210の初期厚さは、パッシベーティング核種および所望されるドーズの関数である、後続の注入時間の関数として算出される。
【0035】
所望されるならば、
図3Aにおいて示されるシーケンスは、複数の回数繰り返されることがある。
図3Aは、犠牲キャッピング層210が生出され、次いで、注入プロセスが、犠牲キャッピング層210がエッチングされてなくなるまで実行される、シーケンスを示す。
【0036】
そうして、ある種の実施形態において、より薄い犠牲キャッピング層が成長させられることがあり、より短い注入プロセスが実行されることがある。薄い犠牲キャッピング層がエッチングされてなくなった後、
図3Aにおいて示されるシーケンスが繰り返されることがある。そうして、注入プロセスが後に続くキャッピング期間のシーケンスが、複数の回数繰り返されることがある。このことは、合計の製造プロセスに時間を追加することがあるが、そのことは、
図4のシーケンスが単に1回遂行される場合に使用されることになるよりも薄い初期犠牲キャッピング層を可能とすることがある。このことによって、パッシベーティングイオン220が、とりわけ注入プロセスの開始において、より大である深さまで進み行くことが可能となることがある。
【0037】
図3Bは、別の実施形態を示す。この図において、垂直軸は、プロセスパラメータ値を表すために使用される。ライン310は、キャッピング核種の流量を表す。キャッピング核種は、酸素(O
2)および窒素(N
2)を含む、犠牲キャッピング層を成長させるために使用されることがある任意の核種を含む。一酸化窒素(NO)または二酸化窒素(NO
2)など、他の核種が、さらには、犠牲キャッピング層を成長させるために使用されることがある。これらの核種のすべては、これらの核種が犠牲キャッピング層の成長のために使用されるので、キャッピング核種と呼称されることがある。ライン311は、パッシベーティング核種の流量を表す。ライン312は、バイアス電力供給135(
図1を確認されたい)により印加されるバイアス電圧を表す。上記で説述されたように、バイアス電圧は正に見受けられ、しかしながら、負バイアス電圧が、正イオンを引き付けるために使用されるということが理解される。RF電力供給121の作動が、ライン313において示される。
【0038】
この実施形態において、質量流コントローラ171aは、キャッピング核種の流れを可能とするように作動させられる。上記で説明されたように、キャッピング期間中、キャッピング核種のイオンが注入されないように、バイアス電圧が印加不可能にされる。あらかじめ決定された量の時間の後、パッシベーティング核種の流れが、ライン311において示されるように始まることがある。パッシベーティング核種は、水素、重水素、フッ素、または、水素、重水素、もしくはフッ素を希釈剤または一次処理ガスとしての含有する混合ガスであることがある。パッシベーティング核種は、フィードガスコンテナ170b内に貯蔵されることがあり、コントローラ160は、プラズマチャンバ105内へのパッシベーティング核種の流れを可能とするように、質量流コントローラ171bを作動させることがある。当然ながら、パッシベーティング核種が導入される速度は、
図3Bにおいて示される速度とは異なることがある。キャッピング核種の流れが、質量流コントローラ171aを動作不可能にすることによってなどで停止された後、バイアス電圧が、ライン312において示されるように、バイアス電力供給135により印加されることがある。バイアス電圧は、パッシベーティング核種に依存して、0.1kVから10kVの間の振幅を有するパルス状DC電圧であることがある。バイアス電圧の振幅は、パッシベーティングイオン220が、犠牲キャッピング層210を通って進み、パッシベーションされることになるワークピースの一部分において停止することを可能とするように選択される。ある種の実施形態において、この一部分は、
図5A~
図5Bにおいて示されたような、ポリシリコンと別の材料との間のインターフェースであることがある。RF電力供給121は、パッシベーティング核種がプラズマチャンバ105内へと流されている間、作動させられたままであることがある。バイアス電力供給135、RF電力供給121、および質量流コントローラ171bがすべて作動させられるとき、注入プロセスが起こる。注入プロセスは、所望されるドーズがワークピース10内に注入されるまで続く。所望されるドーズは、1E15/cm
3から3E17/cm
3の間であることがある。しかしながら、
図3Aにおいて示される実施形態とは違い、周期的に、コントローラ160は、注入プロセス中のキャッピング核種の流れを可能とするように、質量流コントローラ171aを作動させる。ある種の実施形態において、キャッピング核種は、パッシベーティング核種よりもはるかに重い。例えば、キャッピング核種は、酸素または窒素であることがあり、一方で、パッシベーティング核種は、水素または重水素である。したがって、キャッピング核種のイオンが注入されるとしても、それらのイオンは、パッシベーティングイオン220よりもはるかに浅い深さまで進み行くことになる。さらに、犠牲キャッピング層210の存在が、キャッピング核種のこれらのイオンをさらに遅くすることがある。ある種の実施形態において、(示されないが)バイアス電圧は、キャッピング核種が注入プロセス中にプラズマチャンバ105内へと流れているときの時間中、低減されることがある。このことは、さらには、注入されるキャッピング核種のイオンの数、および、これらのイオンが注入される深さを低減する働きをすることがある。
【0039】
この実施形態において、犠牲キャッピング層210は、注入プロセス中にパッシベーティング核種のラジカルおよび励起分子200によりエッチングされていることがあるが、犠牲キャッピング層210は、さらには、注入プロセス中に成長させられている。このことは、犠牲キャッピング層210のエッチング速度を効果的に低下させる。このことによって、
図3Aの実施形態と比較して、より薄い初期犠牲キャッピング層が、注入プロセスの前に成長させられることが可能となる。このことによって、パッシベーティングイオンが、とりわけ注入プロセスの開始において、より大である深さまで進み行くことが可能となることがある。
【0040】
そうして、
図3Bは、犠牲キャッピング層210がキャッピング期間中に生出され、次いで、注入プロセスが実行される、シーケンスを示し、そのシーケンスにおいて、周期的に、注入プロセス中、犠牲キャッピング層は、質量流コントローラ171aを作動させることにより成長させられる。
図3Bは、ライン310が、そのライン310が一定の振幅、周波数、およびデューティサイクルを有するということにおいて、注入プロセス中に周期関数のようにふるまうことを示すということに留意されたい。しかしながら、他の実施形態が、さらには可能である。例えば、質量流コントローラ171aが作動させられるデューティサイクルは、注入プロセスが前進するにつれて減少または増大することがある。加えて、質量流コントローラ171aが作動させられる頻度は、注入プロセスが前進するにつれて減少または増大することがある。
【0041】
さらに、
図3Bにおいて、キャッピング核種の流量は、質量流コントローラ171aが作動させられるのがいつであれ、一定であるように示される。しかしながら、ある種の実施形態において、キャッピング核種の流量は、注入プロセス中に、キャッピング期間中の流量よりも低いことがある。
【0042】
この実施形態において、コントローラは、犠牲キャッピング層210の初期厚さを算出する。しかしながら、先の実施形態とは違い、コントローラ160は、さらには、材料が注入プロセス中に犠牲キャッピング層に付加されることになるということを考慮する。犠牲キャッピング層に付加される材料の量は、質量流コントローラ171aのデューティサイクルおよび頻度は無論のこと、注入プロセス中の質量流コントローラ171aの流量の関数である。エッチング速度は、上記で説明されたように算出されることがある。加えて、エッチングされる犠牲キャッピング層の合計の量が、上記で説明されたように決定され得る。さらに、コントローラ160は、経時的にエッチング速度における変化を決定するために、最後の洗浄以後の動作時間数、最後の洗浄以後に処理されたワークピースの数、または、計測システムのアウトプットなどの情報を使用することがある。この修正されたエッチング速度に基づいて、コントローラ160は、変動するエッチング速度について補償するために、質量流コントローラ171aの流量を変動させる、または、質量流コントローラ171aの頻度もしくはデューティサイクルを変移させることがある。
【0043】
それゆえに、この実施形態において、犠牲キャッピング層210の初期厚さは、犠牲キャッピング層のエッチング速度および合計の注入時間の積、マイナス、注入プロセス中に犠牲キャッピング層に付加される材料の量として算出され得る。そうして、犠牲キャッピング層の初期厚さは、
図3Bにおいて示される実施形態において、
図3Aにおいて示される実施形態においてよりも薄い。このことによって、パッシベーティングイオンが、とりわけ注入プロセスの開始において、より大である深さまで進み行くことが可能となることがある。
【0044】
図3Cは、
図3Bと同様である第3の実施形態を示す。この図において、垂直軸は、プロセスパラメータ値を表すために使用される。ライン320は、キャッピング核種の流量を表す。キャッピング核種は、酸素(O
2)および窒素(N
2)を含む、犠牲キャッピング層を成長させるために使用されることがある任意の核種を含む。一酸化窒素(NO)または二酸化窒素(NO
2)など、他の核種が、さらには、犠牲キャッピング層を成長させるために使用されることがある。これらの核種のすべては、これらの核種が犠牲キャッピング層の成長のために使用されるので、キャッピング核種と呼称されることがある。ライン321は、パッシベーティング核種の流量を表す。ライン322は、バイアス電力供給135(
図1を確認されたい)により印加されるバイアス電圧を表す。やはり、バイアス電圧は正に見受けられ、しかしながら、負バイアス電圧が、正イオンを引き付けるために使用されるということが理解される。RF電力供給121の作動が、ライン323において示される。
【0045】
この実施形態において、注入プロセス中に質量流コントローラ171aをパルス状に動かすよりもむしろ、キャッピング核種の流れは、注入プロセス中に常に可能にされる。
図3Cにおいて示される実施形態などのある種の実施形態において、キャッピング核種の流量は、注入プロセスの全体を通して一定であることがある。しかしながら、他の実施形態において、流量は、注入プロセスの全体を通して増大または減少することがある。加えて、注入プロセス中のキャッピング核種の流量は、キャッピング期間中の流量よりも少ないことがある。
【0046】
さらに、コントローラ160は、経時的にエッチング速度における変化を決定するために、最後の洗浄以後の動作時間数、最後の洗浄以後に処理されたワークピースの数、または、計測システムのアウトプットなどの情報を使用することがある。この修正されたエッチング速度に基づいて、コントローラ160は、変動するエッチング速度について補償するために、質量流コントローラ171aの流量を変動させる、または、質量流コントローラ171aの頻度もしくはデューティサイクルを変移させることがある。
【0047】
そうして、ある種の実施形態において、半導体処理装置が開示される。装置は、プラズマチャンバ105を備える。装置は、さらには、キャッピング核種を含むフィードガスコンテナ170aと、フィードガスコンテナ170aからプラズマチャンバ105へのキャッピング核種の流れを調節する質量流コントローラ171aと、パッシベーティング核種を含むフィードガスコンテナ170bと、フィードガスコンテナ170bからプラズマチャンバ105へのパッシベーティング核種の流れを調節する質量流コントローラ171bとを備える。加えて、装置は、RFアンテナ120に電力を提供するRF電力供給121を備える。プラテン130が、プラズマチャンバ105の中に配される。プラテン130は、バイアス電力供給135と電気的に連絡している。装置は、さらには、RF電力供給121、バイアス電力供給135、および質量流コントローラ171a、171bと通信しているコントローラ160を備える。コントローラ160は、そのコントローラ160が、上記で説明された、および、
図3A~
図3Cにおいて示される機能を実行することを可能にする命令を備える。そうして、コントローラ160は、キャッピング期間および注入プロセスを生出するように装置を制御する。上記で説明されたように、コントローラ160は、注入プロセスの前、および/または、注入プロセス中にキャッピング期間を実行することがある。さらに、ある種の実施形態において、コントローラ160は、計測システムと通信している。コントローラ160は、計測システムのアウトプットに基づいて注入プロセスを終結させることがある。他の実施形態において、コントローラ160は、計測システムのアウトプットに基づいて警告を発行することがある。
【0048】
図3A~
図3Cは、犠牲キャッピング層が注入プロセスと同じプラズマチャンバ内で付与される実施形態を示すが、他の実施形態において、犠牲キャッピング層は、注入プロセスを実行するために使用されるプラズマチャンバの外側で付与される。例えば、1つの実施形態において、ワークピースは、600℃よりも上などの、加熱されたチャンバ内に配されることがあり、キャッピング核種が導入されることがある。加熱されたチャンバ内にこれらの核種が存在することに起因して、キャッピング層は、この環境において、何らのバイアス電圧も使用することなく成長することになる。
【0049】
別の実施形態において、ワークピースは、200℃から600℃の間の温度を有する予熱チャンバ内に配されることがある。キャッピング核種は、予熱チャンバ内へと導入されることがある。犠牲キャッピング層は、これらの状況において成長することがある。この実施形態の変更形態において、遠隔プラズマジェネレータが、1つまたは複数のキャッピング核種を使用してプラズマを発生させるために使用される。このプラズマは、次いで、予熱チャンバ内へと導入される。
【0050】
別の実施形態において、犠牲キャッピング層は、プラズマ堆積プロセス(PVD)を使用して成長させられることがある。PVDにおいて、プラズマが、ワークピースを内包するチャンバの中で、1つまたは複数のキャッピング核種を使用して生出される。プラズマからのイオンまたは分子が、次いで、犠牲キャッピング層を生出するために、ワークピース上に堆積される。
【0051】
犠牲キャッピング層を生出するために使用されることがある、他の方法および装置が存し、本開示は、上記で開示された実施形態に制限されないということが、さらには留意される。さらに、ある種の実施形態において、犠牲キャッピング層を付与するために使用されるチャンバは、さらには、パッシベーティングプロセス中に使用される温度までになど、ワークピースを加熱するために使用されることがある。
【0052】
犠牲キャッピング層がプラズマチャンバの外側で付与される、これらの実施形態の各々において、
図4において示されるフローチャートが、犠牲キャッピング層の初期厚さを決定するために使用されることがある。さらに、これらの実施形態のためにプラズマチャンバ105において使用されるシーケンスが、
図6において示される。この図において、垂直軸は、プロセスパラメータ値を表すために使用される。ライン331は、パッシベーティング核種の流量を表す。ライン332は、バイアス電力供給135(
図1を確認されたい)により印加されるバイアス電圧を表す。やはり、バイアス電圧は正に見受けられ、しかしながら、負バイアス電圧が、正イオンを引き付けるために使用されるということが理解される。RF電力供給121の作動が、ライン333において示される。パッシベーティング核種の流量は、
図6において示される流量とは異なることがある。
図6は、キャッピング期間がプラズマチャンバ105の外側で実行されるということを除いて、
図3Aと同様であるということに留意されたい。
【0053】
さらに、暫時、上記の本開示は、あらかじめ決定された時間に基づいて終結させられる注入プロセスを説明している。他の実施形態が、さらには可能である。例えば、
図1において示されるような1つの例において、光学発光分光法(OES)システム180などの計測システムが、プラズマチャンバ105内に配されることがある。
【0054】
ある種の実施形態において、OESシステム180は、注入プロセスを終結させるために使用されることがある。具体的には、犠牲キャッピング層210がエッチングされている間、OESシステム180により検出されるスペクトルは、(犠牲キャッピング層の組成物に依存して)酸素または窒素の存在を示すことになる。スペクトルは、さらには、シリコンの存在を示すピークを示すことがある。しかしながら、犠牲キャッピング層210が完全にエッチングされてなくなってしまうと、スペクトルは、シリコンについてのはるかに大きいピークを示すことになり、酸素および/または窒素と関連付けられるピークは、消えてしまうことになる。そうして、1つの実施形態において、注入プロセスのためにあらかじめ決定された時間を使用するよりもむしろ、OESシステム180が、いつ犠牲キャッピング層が消えたかを検出するために使用される。注入プロセスは、次いで、この検出を基に終結させられる。この手法は、最終的なデバイスパラメータが、ドーズに対して相対的に非敏感であるが、表面の何らかのエッチングに対して非常に敏感であるときに有利であることがある。
【0055】
ある種の実施形態において、OESシステム180は、警告システムとして使用されることがある。例えば、注入プロセスは、あらかじめ決定された持続期間の、時間を決められたプロセスであることがある。しかしながら、あらかじめ決定された持続期間が満了してしまう前に、OESシステム180がシリコンの発光における増大を検出するならば、コントローラ160は、注入プロセスを早めて終結させることがある。
【0056】
OESシステムに加えて、他の計測システムが使用され得る。例えば、吸収分光法が、プラズマをモニタするために使用されることがある。代替法として、Fourier変換赤外分光法(FTIR)、反射計測(reflectrometry)、またはエリプソメトリが、犠牲キャップをモニタするために使用されることがある。
【0057】
本開示において説明される実施形態は、多くの利点を有することがある。例えば、イオンを半導体基板内へと、その半導体基板をパッシベーションするために注入することは有益である。注入の使用によって、パッシベーティングイオンが、基板内へと、他のプロセスを使用して行われ得るよりも深く送出されることが可能となる。犠牲キャッピング層の生出によって、このパッシベーティング注入が、時には注入プロセスに付随する不利益なエッチングなしに実現されることが可能となる。そうして、これらの実施形態は、所与の構成によって利用可能なプロセス空間を拡大し、そのことによって、より大であるエネルギーおよび/またはドーズが利用されることが可能となる。
【0058】
上記の本開示は、ワークピースをパッシベーションするために使用される注入を説明しているが、本開示は、この実施形態に制限されない。例えば、注入は、ワークピースの伝導率を変移させる、または、バルク変形のためにワークピースをドープするために使用されることがある。例えば、注入は、第3族、第4族、または第5族核種などのドーパント核種であることがある。そうして、ある種の実施形態において、注入核種は、パッシベーティング核種であることがある。他の実施形態において、注入は、ドーパント核種であることがある。
【0059】
本開示は、本明細書において説明される特定の実施形態により、範囲において制限されるべきではない。さらに言えば、他の様々な、本開示の実施形態、および、本開示に対する変形が、本明細書において説明される実施形態および変形に加えて、前述の説明、および、付随する図面から、当業者に明らかであることになる。そうして、そのような他の実施形態および変形は、本開示の範囲の中に入ることを意図される。さらにまた、本開示は、個別の目的のための、個別の環境における、個別の実現形態の文脈において、本明細書において説明されたが、当業者は、本開示の有用性は、その実現形態に制限されないということ、および、本開示は、任意の数の目的のために、任意の数の環境において有益に実現されることがあるということを認識することになる。よって、下記で論述される特許請求の範囲は、本明細書において説明されるような本開示の最大限の広さおよび趣旨に鑑みて解釈されるべきである。