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  • 特許-イオン交換樹脂の評価方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】イオン交換樹脂の評価方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 47/00 20170101AFI20240925BHJP
   G01N 30/00 20060101ALI20240925BHJP
   B01J 39/05 20170101ALI20240925BHJP
   B01J 39/20 20060101ALI20240925BHJP
   B01J 47/02 20170101ALI20240925BHJP
   B01J 31/10 20060101ALI20240925BHJP
   C07C 39/16 20060101ALI20240925BHJP
   C07C 37/20 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B01J47/00
G01N30/00 J
B01J39/05
B01J39/20
B01J47/02
B01J31/10 Z
C07C39/16
C07C37/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020103112
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021194600
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】丹野 善裕
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-186644(JP,A)
【文献】特開2002-136968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 39/00- 49/90
C02F 1/42
B01J 31/08- 31/10
G01N 30/00- 30/96
C07B 31/00- 61/00
C07B 63/00- 63/04
C07C 1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂の圧力損失の評価方法であって、該イオン交換樹脂及び液体をカラムに充填し、該カラム内に該液体を該カラム上部から流通させつつ、該イオン交換樹脂を該カラム上部からピストンで加圧し、該イオン交換樹脂の体積減少率を測定し、体積減少率が小さいほど圧力損失が小さいと評価するイオン交換樹脂の評価方法であって、
前記カラムの内径が10mm以上であり、前記イオン交換樹脂の充填量が25mL以上であり、該カラム内に該液体を該カラム上部から流通させる速度が10mL/min以上の一定流速であり、該イオン交換樹脂を該カラム上部からピストンで加圧する圧力が、5kPa以上の一定圧力であり、該加圧開始から1400秒以降の、該イオン交換樹脂の体積減少率及び該カラム前後の差圧を測定することを特徴とする、イオン交換樹脂の評価方法。
【請求項2】
前記該イオン交換樹脂を該カラム上部からピストンで加圧する圧力が、5kPa以上、1000kPa以下の一定圧力である請求項に記載のイオン交換樹脂の評価方法。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂が、スルホン酸基を有するスチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂からなる、ビスフェノール化合物製造用強酸性陽イオン交換樹脂触媒である請求項1又は2に記載のイオン交換樹脂の評価方法。
【請求項4】
イオン交換樹脂充填の上部から複数の物質からなる液体を流通させ、該イオン交換樹脂充填に充填されたイオン交換樹脂によって該物質同士の反応を促進させる方法であって、
前記イオン交換樹脂充填に充填されるイオン交換樹脂が、請求項1又は2に記載の評価方法により選別されたイオン交換樹脂であることを特徴とする、反応促進方法。
【請求項5】
フェノール化合物と、カルボニル化合物とを、触媒充填の上部から流通させて、ビスフェノール化合物を製造する方法であって、
前記触媒充填に充填される触媒が、請求項1~の何れか1項に記載の評価方法により選別されたイオン交換樹脂であることを特徴とする、ビスフェノール化合物の製造方法。
【請求項6】
イオン交換樹脂充填塔の上部から複数の物質からなる液体を流通させ、該液体中の不純物であるイオンを除去する方法であって、
前記イオン交換樹脂充填に充填されるイオン交換樹脂が、請求項1又は2に記載の評価方法により選別されたイオン交換樹脂であることを特徴とする、イオンの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂層に液を流通させて加圧した時の体積減少率等を評価するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂は化学工業において主に物質精製の用途で用いられる。粒状のイオン交換樹脂を用いた液精製において、イオン交換樹脂の能力は、その粒径、架橋剤の架橋度等に依存し、一般的に粒径が小さく架橋度が低いほどイオン交換速度は速い。しかし小粒径化および低架橋度化は樹脂充填層への液流通時には充填層入出の圧力損失の増大につながり、触媒充填量の低下による性能低下を余儀なくされるなどの不具合を招く。
【0003】
固形粒子充填層の圧力損失は、樹脂充填層の高さ、空塔速度、流体粘性、充填層空隙率、粒径、粒子の球形度等に依存するが、イオン交換樹脂によっては液流通時の圧力によって変形し、粒径、空隙率、球形度が変化するため液圧増大時の圧力損失を推測することが難しい。
【0004】
特許文献1では、イオン交換樹脂粒子の圧壊強度(シャチロン値)が小さければ圧力損失が上昇する恐れがあることが記載されており、実施例で樹脂1粒毎のシャチロン値と圧力損失が比較されている。しかし、高圧付加時には、樹脂粒間の空隙率変化および樹脂自体の変形により樹脂層変形が生じ、圧力損失が増大する。そのため、樹脂一粒毎のシャチロン値からでは、圧力損失の推測が困難な場合があった。
【0005】
また、特許文献2では、実際にカラム内に充填したイオン交換樹脂に液を流通させて、圧力損失を測定している。しかし、試験用カラムに、プラントのイオン交換樹脂充填と同程度の高圧を付加することは難しく、試験用カラムにおける圧力損失からプラントのイオン交換樹脂充填における圧力損失を推測することは困難な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-279825号公報
【文献】国際公開番号WO2011/055819
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実際のプラントのイオン交換樹脂充填を使って圧力損失試験を行えば、大量のイオン交換樹脂及び大流量の流通が必要となる。本発明は、イオン交換樹脂の圧力損失を評価する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]イオン交換樹脂の評価方法であって、該イオン交換樹脂及び液体をカラムに充填し、該カラム内に該液体を該カラム上部から流通させつつ、該イオン交換樹脂を該カラム上部からピストンで加圧し、該イオン交換樹脂の体積減少率を測定することを特徴とする、イオン交換樹脂の評価方法。
【0009】
[2]前記カラムの内径が10mm以上であり、前記イオン交換樹脂の充填量が25mL以上であり、該カラム内に該液体を該カラム上部から流通させる速度が10mL/min以上の一定流速であり、該イオン交換樹脂を該カラム上部からピストンで加圧する圧力が、5kPa以上の一定圧力であり、該加圧開始から1400秒以降の、該イオン交換樹脂の体積減少率及び該カラム前後の差圧を測定することを特徴とする、[1]に記載のイオン交換樹脂の評価方法。
【0010】
[3]前記該イオン交換樹脂を該カラム上部からピストンで加圧する圧力が、5kPa以上、1000kPa以下の一定圧力である[1]又は[2]に記載のイオン交換樹脂の評価方法。
【0011】
[4]前記イオン交換樹脂が、スルホン酸基を有するスチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂からなる、ビスフェノール化合物製造用強酸性陽イオン交換樹脂触媒である[1]~
[3]のいずれかに記載のイオン交換樹脂の評価方法。
【0012】
[5]イオン交換樹脂充填塔の上部から複数の物質からなる液体を流通させ、該イオン交換樹脂充填に充填されたイオン交換樹脂によって該物質同士の反応を促進させる方法であって、前記イオン交換樹脂充填に充填されるイオン交換樹脂が、[1]~[4]の何れかに記載の評価方法により選別されたイオン交換樹脂であることを特徴とする、反応促進方法。
【0013】
[6]フェノール化合物と、カルボニル化合物とを、触媒充填の上部から流通させて、ビスフェノール化合物を製造する方法であって、前記触媒充填に充填される触媒が、[1]~[4]の何れかに記載の評価方法により選別されたイオン交換樹脂であることを特徴とする、ビスフェノール化合物の製造方法。
【0014】
[7]イオン交換樹脂充填塔の上部から複数の物質からなる液体を流通させ、該液体中の不純物であるイオンを除去する方法であって、前記イオン交換樹脂充填に充填されるイオン交換樹脂が、[1]~[4]の何れかに記載の評価方法により選別されたイオン交換樹脂であることを特徴とする、イオンの除去方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、液を流通させた時にイオン交換樹脂層にかかる圧力を再現した状態でのイオン交換樹脂層の体積減少率を測定することにより、イオン交換樹脂の圧力損失を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】評価装置の構成図である。
図2】イオン交換樹脂の層高の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明方法を実施するためのイオン交換樹脂の評価装置を示すものであり、カラム7内にイオン交換樹脂を充填したイオン交換樹脂層11が形成される。
【0018】
カラム7の底部には、流出口付きのボトムキャップ7aが設けられ、この流出口に配管15が接続されている。
【0019】
ボトムキャップ7aの上側にメッシュ12が配置されている。イオン交換樹脂のスラリーをカラム7内に注ぎ込み、水を流出口から配管15に流出させることにより、イオン交換樹脂層11が形成される。
【0020】
イオン交換樹脂層11の上面にメッシュ10が配置され、メッシュ10の上側にピストン8が配置される。ピストン8には上下方向に貫通する液流通ライン9が設けられている。ピストン8を下方に向って押圧するためにピストン8には圧縮試験装置等の機構が接続されている。
【0021】
タンク1内にカラム7に通水するための水が貯留されている。タンク1内の水の温度を一定に保つための機構(この実施の形態では、タンク1の下部が浸漬された恒温槽2)が設けられている。
【0022】
タンク1内の水は、ポンプ3、配管4を介してカラム7の上部に供給され、ピストン8の液流通ライン9を通ってイオン交換樹脂層11に供給される。イオン交換樹脂層11を通過した水は配管15を介してタンク1に返送される。配管4,15にそれぞれ温度センサ5,14及び圧力センサ6,13が設けられている。圧力センサ6,13の検出圧力の差ΔPをイオン交換樹脂層11の圧力損失とする。イオン交換樹脂層11の層高Hはピストン8の位置(高さ)を検知することによって検出される。
【0023】
カラム7に定流量で水を供給すると共に、ピストン8でイオン交換樹脂層11を一定圧力で圧縮し、イオン交換樹脂層11の層高H及び圧力損失ΔPを測定する。加圧を開始すると、図2のように、イオン交換樹脂層の層高Hは徐々に低下する。また、図示は省略するが、イオン交換樹脂層の圧力損失は徐々に増大する。
【0024】
このように、イオン交換樹脂層11を一定圧力で加圧しながらイオン交換樹脂層11に通水し、圧力損失及び層高変化を計測することにより、体積減少率(イオン交換樹脂層の圧力変形特性)及び圧力損失変化特性を検出することができる。
【0025】
各種のイオン交換樹脂についてこの装置を用いて特性を検出し、相対評価することもできる。
【0026】
なお、上記説明では、カラム7に水を通水するようにしているが、水以外の液体を流通させるようにしてもよい。
【0027】
液体としては、評価するイオン交換樹脂に対して溶解性がなく、流動性のあるものであればどのようなものでも良いが、中でも水溶液、フェノール、アセトンが好ましく、水がより好ましい。
【0028】
<イオン交換樹脂>
イオン交換樹脂としては、スチレン、アクリル酸等を基体とするものが挙げられ、中でもスチレン基体が好ましく、その中でもスルホン酸基を有するスチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂からなるビスフェノール化合物製造用強酸性陽イオン交換樹脂が好ましく、その中でも三菱ケミカル株式会社製SK104がより好ましい。前記スルホン酸基を有するスチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂からなるビスフェノール化合物製造用強酸性陽イオン交換樹脂には、スルホン酸基を有するスチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂に2-(2-ピリジル)エタンチオール等の助触媒をバウンドさせたものも含む。
【0029】
<配管>
液体を流通させる配管は、材質として液によって腐食を生じないものであればどのようなものでも良いが、金属製、樹脂製が好ましく、その中でもSUS、フッ素樹脂がより好ましい。
【0030】
<圧力センサ>
圧力センサは、流通させる液体によって腐食しない材質のものが好適であり、SUS製が好ましい。
【0031】
<カラム>
カラムの内径は、ピストンによるイオン交換樹脂加圧時に樹脂とカラム内壁との摩擦が無視できる程度に大きくする必要がある。また大きすぎる場合にはカラム内の液のショートパスが発生する可能性も考えられ、10mm以上が好ましく30mm以上がより好ましく、通常70mm以下であり、50mm以下がより好ましい。
【0032】
カラム材質は評価圧力以上の耐圧性があり、流通させる液体に対して不活性のものであり、SUS、ガラス製が好ましく、ガラス製がより好ましい。
【0033】
<カラムへのイオン交換樹脂の充填量>
カラムへのイオン交換樹脂の充填量が少ない場合、加圧時の体積減少率測定において誤差を生じやすくなる。また樹脂層加圧時の堆積減少は樹脂自体と樹脂間の空隙の圧縮によって生じるため、そのイオン交換樹脂を使用する実際のプラント等の樹脂層の充填高さと充填径の比を考慮してカラム内径と充填量を決める必要がある。
【0034】
カラムへのイオン交換樹脂の充填量は、25mL以上が好ましく、40mL以上がより好ましく、通常80mL以下であり、70mL以下がより好ましい。
【0035】
<カラム内に液体をカラム上部から流通させる速度>
カラム内に液体を流通させる速度が小さすぎる場合、圧力損失を測定するときに誤差を生じやすくなる。またカラム内径に従いカラム内の線速が変化するため、使用するカラム内径からそのイオン交換樹脂を使用する実際のプラント等の線速度に見合った液流通速度を選定する必要がある。
【0036】
該カラム内に該液体を該カラム上部から流通させる速度は、10mL/min以上が好ましく、40mL/min以上がより好ましく、通常500mL/min以下であり、400mL/min以下がより好ましい。
【0037】
<イオン交換樹脂層をピストンで加圧する圧力>
イオン交換樹脂をピストンで加圧することでイオン交換樹脂の変形特性を測定する。変形特性には加圧解除後に変形が元に戻る弾性変形と、樹脂破砕等による不可逆的な変化による非弾性変形とがある。非弾性変形はイオン交換樹脂の性能に不可逆的な影響を与えるため一般的に好まれない。よってピストンによるイオン交換樹脂への加圧は通常、弾性変形の範囲内で行われ、変形による影響を評価しやすい範囲で定める必要がある。
【0038】
イオン交換樹脂層をピストンで加圧する圧力は、5kPa以上が好ましく、30kPa以上がより好ましく、通常1000kPa以下であり、800kPa以下がより好ましい。イオン交換樹脂層をピストンで加圧する圧力は、プラントのイオン交換樹脂充填に付加される圧力に揃えると、プラントのイオン交換樹脂充填における圧力損失をより正確に予測することができる。
【0039】
<体積減少率>
体積減少率は、イオン交換樹脂層への加圧前後での体積の減少量を百分率で表したものである。図2において、時刻tにおける体積減少率は[(H-H)/H]×100%であり、時刻tにおける体積減少率は[(H-H)/H]×100%である。
【0040】
体積減少率が大きいと、加圧により樹脂層高は低くなるが、空隙率も小さくなるため、総じてイオン交換樹脂層の圧力損失は上昇する。
【0041】
加圧時のイオン交換樹脂層の圧力損失を低減するためには、体積減少率は小さい方が好ましい。測定条件により値は異なるが実施例に示す流通評価条件および使用イオン交換樹脂においては23%以下が好ましく、21%以下がより好ましい。
【0042】
<本発明の用途>
本発明は複数の物質の反応に用いられる反応槽中のイオン交換樹脂層の圧力損失評価、またフェノール、アセトン、キュメン、α-メチルスチレン、水等からなるプロセス液体中から不純物である陰イオンを除去するための除去塔の圧力損失評価等に用いられる。
【0043】
具体的には、例えば、以下の方法に用いることができる。
【0044】
(1)イオン交換樹脂充填塔の上部から複数の物質からなる液体を流通させ、該イオン交換樹脂充填に充填されたイオン交換樹脂によって該物質同士の反応を促進させる方法であって、前記イオン交換樹脂充填に充填されるイオン交換樹脂が、本発明の評価方法により選別されたイオン交換樹脂であることを特徴とする、反応促進方法。
本方法において、複数の物質とは、例えばフェノール化合物、カルボニル化合物等であり、好ましくはフェノール、アセトンである。
イオン交換樹脂は、例えばスチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂からなる強酸性陽イオン交換樹脂等であり、好ましくは三菱ケミカル株式会社製SK104である。
【0045】
(2) フェノール化合物と、カルボニル化合物とを、触媒充填の上部から流通させて、ビスフェノール化合物を製造する方法であって、前記触媒充填に充填される触媒が、本発明の評価方法により選別されたイオン交換樹脂であることを特徴とする、ビスフェノール化合物の製造方法。
本方法において、フェノール化合物は、下記一般式で表される化合物であることが好ましい。式中R~Rは、互いに同一であっても相違していても良く、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はハロゲン原子等である。フェノール化合物の中で特に好ましいのはフェノールである。
【0046】
【化1】
【0047】
カルボニル化合物は、ケトン又はアルデヒドに属するカルボニル化合物であれば良く、具体的には一般式RCORで表される化合物であることが好ましい。ここで、R及びRは、互いに同一であっても相違していても良く、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~20のアルキルアリール基等である。カルボニル化合物の中で特に好ましいのはアセトンである。
ビスフェノール化合物は、上記のフェノール化合物とカルボニル化合物との反応で生成しうる化合物であり、好ましくはビスフェノールAである。
イオン交換樹脂は、例えばスチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂からなる強酸性陽イオン交換樹脂等であり、好ましくは三菱ケミカル株式会社製SK104である。
【0048】
(3)イオン交換樹脂充填塔の上部から複数の物質からなる液体を流通させ、該液体中の不純物であるイオンを除去する方法であって、前記イオン交換樹脂充填に充填されるイオン交換樹脂が、本発明の評価方法により選別されたイオン交換樹脂であることを特徴とする、イオンの除去方法。
本方法において、複数の物質からなる液体とは、例えば、フェノール、アセトン、キュメン、α-メチルスチレン、及び水等からなるプロセス液体等である。
イオン交換樹脂は、例えばスチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂からなる陰イオン交換樹脂等であり、好ましくは三菱ケミカル株式会社製WA20である。
【実施例
【0049】
<測定方法>
図1の評価装置において、内径31.8mmのガラス製耐圧カラムにイオン交換樹脂を55.6mL充填した。ピストンによってイオン交換樹脂層を500kPaの圧力で加圧しつつ、22℃の水を50mL/minで上から下に向って流通させ、加圧開始から1400から2000秒にかけての圧力損失および層高変化(ピストンの押し込み幅により求める。)を測定し、平均圧力損失および平均体積減少率を求める。
【0050】
加圧開始(t=0)の圧力損失をΔP、1400秒後の圧力損失をΔP1400,2000秒後の圧力損失をΔP2000とした場合、平均圧力損失は下記計算式により求められる。
【0051】
【数1】
【0052】
平均体積減少率はt=0秒、t=1400秒及びt=2000秒の層高H,H1400
2000を用いて下記計算式により求められる。
【0053】
【数2】
【0054】
この時、下記が平均層高となる。
【0055】
【数3】
【0056】
[実施例1]
イオン交換樹脂として、スルホン酸基を有するスチレン-ジビニルベンゼン共重合樹脂からなる、ビスフェノール化合物製造用ゲル型強酸性陽イオン交換樹脂触媒(平均粒径500μm、粒径均一係数1.0、架橋度4%、助触媒として2-(2-ピリジル)エタンチオールをバウンドしたもの)(イオン交換樹脂A)を用いた。
【0057】
上記測定方法により測定された体積減少率(平均体積減少率)と、平均圧力損失を平均層高で除算した層高あたりの圧力損失を、表1の「流通評価」の欄に示す。また、このイオン交換樹脂を用いてビスフェノール製造の反応器に用いた際の最大圧力損失および平均圧力損失を、表1の「反応器使用時」の欄に示す。
【0058】
[実施例2]
イオン交換樹脂Aの代わりに、イオン交換樹脂Aとは同種別年製造のイオン交換樹脂Bを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1の通り、流通評価による体積減少率と反応器使用時の圧力損失には関係性が認められ、流通評価による体積減少率を比較することで反応器使用時の圧力損失の大小を予測可能である。
【0061】
[実施例3]
イオン交換樹脂Aの代わりに、イオン交換樹脂Aとは同種別年製造のイオン交換樹脂Cを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で測定を行った。また、このイオン交換樹脂についてシャチロンテスター(AMETEK製LTCM3-220V)を用いてプレート上に並べた60粒の粒子を粒子ごとに圧し潰して圧潰強度を測定し、その平均値を算出した。体積減少率と層高あたりの圧力損失および圧潰強度を表2に示す。
【0062】
[実施例4]
イオン交換樹脂Cの代わりに、イオン交換樹脂Cとは同種別ロットのイオン交換樹脂Dを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で測定を行った。結果を表2に示す。
【0063】
[実施例5]
イオンン交換樹脂Cの代わりに、イオン交換樹脂Cとは同種別ロットのイオン交換樹脂Eを用いたこと以外は、実施例3と同様の方法で測定を行った。結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
表2の通り、圧力損失に対して体積減少率は相関性を持つが、圧潰強度は相関性がない。
【0066】
これまで1粒当たりでの圧潰強度を規定することでイオン交換樹脂層の圧力損失を低下させるといった提案があったが、圧潰強度ではイオン交換樹脂層の圧力損失を必ずしも表せるものではなく、イオン交換樹脂層の圧力損失を評価するためには、本発明による体積減少率による比較を行う方が有効である。
【符号の説明】
【0067】
1 タンク
2 恒温槽
3 ポンプ
5,14 温度センサ
6,13 圧力センサ
7 カラム
8 ピストン
9 液流通ライン
10,12 メッシュ
11 イオン交換樹脂層
図1
図2