(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】固体撮像素子、読取装置、画像処理装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240925BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240925BHJP
H04N 25/701 20230101ALI20240925BHJP
H04N 25/40 20230101ALI20240925BHJP
【FI】
H04N1/04 106D
H01L27/146 A
H01L27/146 D
H04N25/701
H04N25/40
(21)【出願番号】P 2020109376
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】阪口 伸司
(72)【発明者】
【氏名】中澤 政元
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-348296(JP,A)
【文献】特開2000-069252(JP,A)
【文献】特開2020-028103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
H01L 27/146
H04N 25/701
H04N 25/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換を行う画素を行列状に複数配置した画素部と、
前記画素部から得られる信号を処理する処理部と、
前記画素部の画素の読出し制御
および前記処理部における処理の制御を実施する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記画素部のうちの一部の
画像データを必要としない不要な画素
での光電変換で生じた電荷を転送せずに破棄して読出し制御を実施しない
場合において、前記不要な画素についての出力信号を一定レベルに固定し、要求される画像品質を満足できる範囲内で、前記不要な画素についての前記処理部の動作を全部または部分的にを停止させる、
ことを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
前記画素部は、複数の異なる特定の波長域の光を透過するカラーフィルタを配した画素群から構成され、
前記制御部が読出し制御を実施しない前記画素部のうちの一部の画素は、前記画素群のうち、特定のカラーフィルタを配した画素群である、
ことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記特定のカラーフィルタは、前記画素部を構成する複数の画素群のうち、最大波長帯の光を透過するカラーフィルタである、
ことを特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記特定のカラーフィルタは、近赤外領域を透過するカラーフィルタである、
ことを特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記制御部は
、前記処理部
の動作を部分的に停止する制御抑制機能について、選択的にON/OFF可能とする、
ことを特徴とする請求項
1に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
光を照射する光源と、
請求項1ないし
5の何れか一項に記載の固体撮像素子と、
を備えることを特徴とする読取装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の読取装置と、
画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
光電変換を行う画素を行列状に複数配置した画素部と、
前記画素部から得られる信号を処理する処理部と、前記画素部の画素の読出し制御
および前記処理部における処理の制御を実施する制御部と、を備える固体撮像素子で実行される制御方法であって、
前記制御部は、前記画素部のうちの一部の
画像データを必要としない不要な画素
での光電変換で生じた電荷を転送せずに破棄して読出し制御を実施しない
場合において、前記不要な画素についての出力信号を一定レベルに固定し、要求される画像品質を満足できる範囲内で、前記不要な画素についての前記処理部の動作を全部または部分的にを停止させる工程を含む、
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子、読取装置、画像処理装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イメージセンサを用いた固体撮像素子においては、RGBからなる画素を配置した3ラインイメージセンサ構成や、RGBなどの可視光以外に近赤外(NIR)などの不可視光の読取を可能とする4ラインイメージセンサ構成が開発されている。
【0003】
4ラインイメージセンサにおいては、可視光と不可視光を同時に読み取ることを可能とすることで、例えば原稿上のゴミなどの余分な読取情報を排除する目的、あるいは不可視ではあるが重要な情報を原稿にあらかじめ埋め込んでおき、その情報を読み取る技術が既に知られている。
【0004】
特許文献1には、エリアセンサにおいて、読出し領域の上下行に対してリセット処理を行うことで、ブルーミングの発生を防止するための技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の複数ラインから成るイメージセンサでは、配置したラインのうち一部分の情報のみを必要とする場合においても、全てのラインを動作させ、得られる画像データのうち必要な画像データのみを選択して使用していた。
【0006】
または、従来の複数ラインから成るイメージセンサでは、不要なラインの処理、あるいは、不要なラインより得られた画像データの処理について、最適な処理手段が提供されていないという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に開示の従来技術によれば、必要な領域の画像読出しのタイミングに合わせて、不要な領域の画素にて発生した電荷をリセットするため、不要な領域の画素のリセット処理動作により生じるノイズが必要な領域の画素の読出しに影響を与えかねないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、画像データを必要とする画素群から得られる画像品質の向上を図る、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、光電変換を行う画素を行列状に複数配置した画素部と、前記画素部から得られる信号を処理する処理部と、前記画素部の画素の読出し制御および前記処理部における処理の制御を実施する制御部と、を備え、前記制御部は、前記画素部のうちの一部の画像データを必要としない不要な画素での光電変換で生じた電荷を転送せずに破棄して読出し制御を実施しない場合において、前記不要な画素についての出力信号を一定レベルに固定し、要求される画像品質を満足できる範囲内で、前記不要な画素についての前記処理部の動作を全部または部分的にを停止させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像データを必要とする画素群から得られる画像品質の向上を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の一例の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、画像読取装置の構造を例示的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、画像読取装置を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、画素回路における転送にかかるタイミング制御を示す図である。
【
図6】
図6は、画素回路のシリコン層での電荷移動(電荷クロストーク)を示す図である。
【
図7】
図7は、回路間でのノイズ伝搬(回路クロストーク)を示す図である。
【
図8】
図8は、回路間でのノイズ伝搬(配線クロストーク)を示す図である。
【
図9】
図9は、画素回路の制御タイミングを示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施の形態にかかる画素群の部分読出しの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第3の実施の形態にかかる画素回路の構成例を示す図である。
【
図12】
図12は、画素回路における転送にかかるタイミング制御を示す図である。
【
図13】
図13は、画素回路の制御タイミングを示す図である。
【
図14】
図14は、第4の実施の形態にかかる固体撮像素子を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。
【
図15】
図15は、AD変換部(Line1,3)を停止した場合のノイズ影響(回路クロストーク)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、固体撮像素子、読取装置、画像処理装置および制御方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置100の一例の構成を示す図である。
図1において、画像処理装置である画像形成装置100は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する一般に複合機と称されるものである。
【0014】
画像形成装置100は、読取装置である画像読取装置101およびADF(Automatic Document Feeder)102を有し、その下部に画像形成部103を有する。画像形成部103については、内部の構成を説明するために、外部カバーを外して内部の構成を示している。
【0015】
ADF102は、画像を読み取らせる原稿を読取位置に位置づける原稿支持部である。ADF102は、載置台に載置した原稿を読取位置に自動搬送する。画像読取装置101は、ADF102により搬送された原稿を所定の読取位置で読み取る。また、画像読取装置101は、原稿を載置する原稿支持部であるコンタクトガラスを上面に有し、読取位置であるコンタクトガラス上の原稿を読み取る。具体的に画像読取装置101は、内部に光源や、光学系や、CMOSイメージセンサなどの固体撮像素子を有するスキャナであり、光源で照明した原稿の反射光を光学系を通じて固体撮像素子で読み取る。
【0016】
画像形成部103は、記録紙を手差しする手差ローラ104や、記録紙を供給する記録紙供給ユニット107を有する。記録紙供給ユニット107は、多段の記録紙給紙カセット107aから記録紙を繰り出す機構を有する。供給された記録紙は、レジストローラ108を介して二次転写ベルト112に送られる。
【0017】
二次転写ベルト112上を搬送する記録紙は、転写部114において中間転写ベルト113上のトナー画像が転写される。
【0018】
また、画像形成部103は、光書込装置109や、タンデム方式の作像ユニット(Y、M、C、K)105や、中間転写ベルト113や、上記二次転写ベルト112などを有する。作像ユニット105による作像プロセスにより、光書込装置109が書き込んだ画像を中間転写ベルト113上にトナー画像として形成する。
【0019】
具体的に、作像ユニット(Y、M、C、K)105は、4つの感光体ドラム(Y、M、C、K)を回転可能に有し、各感光体ドラムの周囲に、帯電ローラ、現像器、一次転写ローラ、クリーナーユニット、及び除電器を含む作像要素106をそれぞれ備える。各感光体ドラムにおいて作像要素106が機能し、感光体ドラム上の画像が各一次転写ローラにより中間転写ベルト113上に転写される。
【0020】
中間転写ベルト113は、各感光体ドラムと各一次転写ローラとの間のニップに、駆動ローラと従動ローラとにより張架して配置されている。中間転写ベルト113に一次転写されたトナー画像は、中間転写ベルト113の走行により、二次転写装置で二次転写ベルト112上の記録紙に二次転写される。その記録紙は、二次転写ベルト112の走行により、定着装置110に搬送され、記録紙上にトナー画像がカラー画像として定着する。その後、記録紙は、機外の排紙トレイへと排出される。なお、両面印刷の場合は、反転機構111により記録紙の表裏が反転されて、反転された記録紙が二次転写ベルト112上へと送られる。
【0021】
なお、画像形成部103は、上述したような電子写真方式によって画像を形成するものに限るものではなく、インクジェット方式によって画像を形成するものであってもよい。
【0022】
次に、画像読取装置101について説明する。
【0023】
図2は、画像読取装置101の構造を例示的に示す断面図である。
図2に示すように、画像読取装置101は、本体11内に、固体撮像素子22を備えたセンサ基板10、レンズユニット8、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7を有する。第1キャリッジ6は、LED(Light Emitting Diode)である光源2及びミラー3を有する。第2キャリッジ7は、ミラー4,5を有する。また、画像読取装置101は、上面にコンタクトガラス1及び基準白板13を設けている。光源2は、可視画像用の白色光源や、不可視画像用の近赤外(NIR)光源など用途に合わせた光源により構成される。
【0024】
画像読取装置101は、読取動作において、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7を待機位置(ホームポジション)から副走査方向(A方向)に移動させながら光源2から光を上方に向けて照射する。そして、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7は、原稿12からの反射光を、レンズユニット8を介して固体撮像素子22上に結像させる。
【0025】
また、画像読取装置101は、電源ON時などには、基準白板13からの反射光を読取って基準を設定する。即ち、画像読取装置101は、第1キャリッジ6を基準白板13の直下に移動させ、光源2を点灯させて基準白板13からの反射光を固体撮像素子22の上に結像させることによりゲイン調整を行う。
【0026】
固体撮像素子22は、可視、不可視の波長域を撮像可能である。固体撮像素子22には、入射光量を電気信号に変換する画素が配置されている。画素は行列状に配置され、各画素から得られる電気信号は、一定時間毎に所定の順序で、後段のデジタル信号処理部225(
図4参照)へと転送される(画素読出し信号)。各画素上には特定の波長の光のみを透過するカラーフィルタが配置されている。本実施の形態の固体撮像素子22では、同一のカラーフィルタが配置された画素群から得られる各信号をチャンネルと称する。なお、本実施形態では可視光を照射して固体撮像素子22によって撮像された画像を可視画像、近赤外光などの不可視光を照射して固体撮像素子22によって撮像された画像を不可視画像と呼ぶ。
【0027】
なお、本実施形態の画像読取装置101として縮小光学系の画像読取装置を適用したが、これに限るものではなく、等倍光学系(密着光学系:CIS方式)であってもよい。
【0028】
図3は、画像読取装置101を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。
図3に示すように、画像読取装置101は、上述した固体撮像素子22、光源2に加え、画像処理部20、制御装置23、光源駆動部24、を備えている。光源駆動部24は、光源2を駆動する。
【0029】
固体撮像素子22は、縮小光学系用センサであり、例えばCMOSイメージセンサなどである。固体撮像素子22は、画素部221と、制御部222と、制御レジスタ部223と、AD変換部224と、デジタル信号処理部225と、を備える。
【0030】
なお、本実施形態では4ライン構成での固体撮像素子22を例にして説明するが、4ラインに限定されるものではない。また、画素部221より後段の回路構成に関しても、図示する構成に限定されるものではない。
【0031】
画素部221は、画素を構成する画素回路228を行列状に複数配置した4ラインの画素群を有する。また、画素部221は、4ラインの画素群には行毎に異なるカラーフィルタ(CF)229を配置し、特定の波長域の光のみを透過する。カラーフィルタ229は、入射光を異なる波長帯毎に分離するために配置される。例えばRGB-CFやYMCK-CFやNIR-CFなど画像取得目的に応じて、最適なカラーフィルタ229が配置される。
【0032】
画素部221の各画素回路228は、制御部222あるいは制御レジスタ部223から制御される。制御部222あるいは制御レジスタ部223は、制御装置23から制御される。
【0033】
AD変換部224は、AMP回路226とAD変換回路227とを備え、画素部221から出力された信号をデジタル信号へと変換する。デジタル信号処理部225は、AD変換部224で変換されたデジタル信号を必要に応じて処理する。AD変換部224およびデジタル信号処理部225は、画素部221から得られる信号を処理する処理部として機能するものであって、制御部222あるいは制御レジスタ部223から制御される。
【0034】
画素部221の各画素回路228により生成されたリセットレベルと信号レベル(PIXOUT_CF0~3)は、例えば主走査の配置位置に沿って順次読出しを実施され、読み出されたリセットレベルと信号レベルの差分がAD変換部224のAMP回路226により増幅される。増幅された差分レベルは、AD変換部224のAD変換回路227によりデジタル信号へと変換される。変換されたデジタル信号(画像データ)は、必要に応じてデジタル信号処理部225にて処理が施され、後段に配置される画像処理部20へと転送される。
【0035】
画像処理部20は、画像データの使用目的に合わせた各種の画像処理を実行する。
【0036】
なお、本実施形態においては、固体撮像素子22がデジタル信号処理部225を備える構成としたが、これに限るものではなく、デジタル信号処理部225を固体撮像素子22の外部に備えるようにしてもよい。また、AD変換部224や制御レジスタ部223を固体撮像素子22の外部に備えるようにしてもよい。
【0037】
次に、画素部221の画素回路228について説明する。
【0038】
図4は、画素回路228の構成例を示す図である。画素回路228の一例として、フォトダイオード(PD)200と、電荷転送トランジスタ(TX_Tr)202と、電荷-電圧変換を行うフローティングディフュージョン(FD)204と、FD204をリセットするリセットトランジスタ(RT_Tr)206と、後段に信号をバッファリングして出力するソースフォロワ回路(SF回路)208と、PIXOUTラインへの信号出力を制御する選択制御スイッチ(SL)210と、SF回路208にバイアス電流を供給する電流源(Is)212と、を含む4トランジスタ構成のものを示している。PD200は、「受光素子」の一例であり、入射した光を光電変換して電荷を生成し、入射光量に応じた電荷を蓄積する。PD200は、例えば埋め込み型のフォトダイオードである。TX_Tr202と、RT_Tr206と、SF回路208と、SL210とが4つのトランジスタ(一例としてMOSFET(MOS Field Effect Transistor))の構成をとる。画素回路228内の接続関係を次に示す。
【0039】
PD200は、アノードが接地され、カソードがTX_Tr202のドレインに接続される。TX_Tr202は、ドレインがPD200のカソードに接続され、ソースがFD204に接続される。RT_Tr206は、ドレインが電圧VDDに接続され、ソースがFD204に接続される。SF回路208は、ゲートがFD204に接続され、ドレインが電圧VDDに接続され、ソースがSL210のドレインに接続される。SL210は、ドレインがSF回路208のソースに接続され、ソースから画素信号(電圧)をAD変換部224(
図3参照)側に出力する。
【0040】
制御部222(
図3参照)は、TX_Tr202のゲートや、RT_Tr206のゲートや、SL210のゲートに制御信号としてパルス電圧を印加することにより画素回路228を動作させる。
【0041】
画素回路228の基本的な動作を次に示す。先ず、PD200が光電変換を行うことにより、入射される光の量に応じた電荷を生成して蓄積する。PD200に蓄積された電荷は、TX_Tr202のスイッチオンにより、PD200からFD204(浮遊拡散領域)へと転送される。FD204は、PD200が生成した電荷を電圧に変換する。
【0042】
SF回路208は、次のように動作する。SF回路208は、FD204の信号レベルの電圧を増幅し、画素信号(電圧)SFOUTとして出力する。FD204の信号レベルをSFOUTへ出力した後に、FD204の信号レベルは、RT_Tr206のスイッチオンによりリセットされ、所定のレベルに初期化される。画素信号SFOUTは、SL210のスイッチオンによりPIXOUTへと転送され、さらにAD変換部224などを経て画像データとなる。
【0043】
以下において、転送にかかるタイミング制御について説明する。なお、簡単のため、画素回路228が行列状に4ライン分配置されるものとして説明する。
【0044】
ここで、
図5は画素回路228における転送にかかるタイミング制御を示す図である。
図5に示すように、制御部222は、所定の読取間隔(以下、ライン周期)毎に、RT信号,TX信号の順で制御する。
【0045】
RT信号がアサートされると、FD204は所定のレベル(リセットレベル)へと初期化される。その後、TX信号がアサートされ、PD200で生じた電荷がTX_Tr202を介してFD204へと転送される。
【0046】
TX信号がアサートされた後のFD204は、リセットレベルを基準として、PD200で生じた電荷量に応じたレベル分低下する(信号レベル)ため、AD変換部224により、リセットレベルと信号レベルの差分をAD変換することで、前述のライン周期間に生じた電荷量、すなわち入射光量を得ることになる。
【0047】
ところで、画像読取装置101においては、必ずしも搭載した全ての画素群の画像データを必要とはしない。例えば、カラーフィルタ229としてRGB-CFを配したイメージセンサにおいて単色の画像データのみを読取る場合などは、RGB3色のカラーフィルタ229を配した画素群のうち一つの画素群からの画像データのみを読み出せればよい。また、例えば、読取を行う原稿のうち一部分のみを読取る場合など、同一のカラーフィルタ229を配した画素群のうちでも、一部分の画素群のみを読み出せればよい場合がある。
【0048】
特に、本実施形態においては、RGBのような可視光を照射して撮像された可視画像と、NIRのような不可視光を照射して撮像された不可視画像を同時に取得可能な画像読取装置101が適用されている。このような画像読取装置101においては、用途により、RGBのような可視光を照射して撮像された可視画像のみ、あるいはNIRのような不可視光を照射して撮像された不可視画像のみの取得を必要とする場合がある。
【0049】
ただし、搭載した複数画素群のうち特定のラインに含まれる一部の画素群から得られる画像データを取得する場合において、不要な画素群の処理を適切に行わないと、不要な画素群を処理することに起因するノイズの影響により、必要な画素群から得られる画像の品質が本来得られるはずの画像品質に対して劣化してしまう。また、不要な画素群の処理回路を常に動作させたままとすることは、消費電力の観点からも望ましくはない。以下において、画像品質の劣化要因について説明する。
【0050】
まず、画素回路228のシリコン層での電荷移動(電荷クロストーク)による画像品質の劣化について説明する。
【0051】
ここで、
図6は画素回路228のシリコン層での電荷移動(電荷クロストーク)を示す図である。
図6は、行あるいは列方向に隣接する画素回路228間でのシリコン層での電荷移動を図示したものである。
【0052】
より詳細には、
図6に示すように、画素回路228では、光が入射される限り光電変換が実施され電荷が発生する。発生した電荷は、PD200下のシリコン層を経由して、他のPD200の下部へと移動する。例えば、Rのみを透過するカラーフィルタ229を配した画素回路228で発生したR光に起因する電荷が、Gのみを透過するカラーフィルタ229を配した画素回路228の下部へと移動する場合、本来G光に起因する電荷のみを有効な光電変換結果として扱いたいが、R光に起因する電荷が混入することになる。このような電荷の混入は、電荷クロストーク成分による混色とされる。
【0053】
なお、PD200への入射光の波長が長ければ長いほど、シリコン層の深い位置で光電変換が実施されるため、NIR光など長波長の光が入射されると、可視光など短波長の光が入射される場合と比較し電荷クロストーク成分が増加する。例えば、R/G/B/NIRの各波長帯を透過するカラーフィルタを配した画素群を形成した場合、配したカラーフィルタのうちNIRカラーフィルタが最大波長帯を透過するカラーフィルタであるため、NIR画素群から、その他の画素群への電荷クロストーク成分が最も大きい。同様にR/G/Bの各波長帯を透過するカラーフィルタを配した画素群を形成した場合には、R画素群から、その他の画素群への電荷クロストーク成分が最も大きい。
【0054】
通常、電荷クロストーク成分は十分小さくなるように、画素回路228が設計される。例えば、異なる画素回路228の間に電荷の移動を妨げる壁を設けることで混色を低減できる。しかし、電荷の移動を全て防止することは困難である。
【0055】
そこで、本実施形態においては、詳細は後述するが、画像データを必要としない画素群からの混色成分を抑制することで、必要な画素群から得られる画像の品質を向上させるようにする。
【0056】
次に、回路間でのノイズ伝搬(回路クロストーク)による画像品質の劣化について説明する。
【0057】
ここで、
図7は回路間でのノイズ伝搬(回路クロストーク)を示す図である。
図7に示すように、ある回路のスイッチング動作などにより負荷変動が生じると、回路に電流を供給している電源あるいはGNDのレベルが変動する。電源/GNDの変動は、共通インピーダンスを介し、その回路と電源/GNDを共通とする他の回路へノイズとして伝搬する。
【0058】
そこで、本実施形態においては、詳細は後述するが、不要な画素群を処理するための回路に起因するノイズの発生を抑制し、必要な画素群から得られるデータへのノイズ伝搬を抑制することで、必要な画素群から得られる画像品質を向上させるようにする。
【0059】
次に、回路間でのノイズ伝搬(配線クロストーク)による画像品質の劣化について説明する。
【0060】
ここで、
図8は回路間でのノイズ伝搬(配線クロストーク)を示す図である。
図8に示すように、二つの信号線が近接して平行に配線されている場合、配線間の寄生容量や相互インダクタンスを介してノイズが伝搬する。一方の配線で生じたレベル変化が、他方の配線へとノイズとなって伝搬する。つまり、配線1が固定レベルであれば、寄生容量などの配線クロストーク伝搬経路が存在したとしても、ノイズの伝搬は発生しないことになる。
【0061】
そこで、本実施形態においては、詳細は後述するが、不要な画素群の処理にかかる信号配線を固定レベルへと制御し、配線間でのノイズ伝搬を抑制することで、必要な画素群から得られる画像品質を向上させるようにする。
【0062】
続いて、本実施形態における画素回路228の制御タイミングについて説明する。以下においては、画素回路228を4ライン(Line0~3)分配置した場合について説明する。そして、画像データを取得する画素群であるラインを必要ライン(Line0~2)、画像データを必要としない画素群であるラインを不要ライン(Line3)と称する。
【0063】
ここで、
図9は画素回路228の制御タイミングを示す図である。
図9に示すように、制御部222は、必要ライン(Line0~2)に配置された画素回路228については、
図5で説明した制御を行い、画像データを得る。
【0064】
一方、
図9に示すように、制御部222は、不要ライン(Line3)に配置された画素回路228については、RT/TX信号を常時アサートとする。
【0065】
不要ライン(Line3)に配置された画素回路228による光電変換で生じた電荷は、常時TX信号がアサートされているため、電荷発生後すぐにFD204へと転送される。加えて、RT信号も常時アサートされているため、FD204は常に一定の電位に保たれる。すなわち、光電変換により発生した電荷は、すぐにRT_Tr206を介して電源へと破棄される。
【0066】
本制御により、不要ライン(Line3)で生じた電荷は常に破棄され、読出し制御を実施しない。より詳細には、画素回路228における光電変換は実施されるが、光電変換により生じた電荷はすぐに破棄されるため、PD200部に電荷が貯まらず、不要ラインから必要ラインへの電荷クロストーク成分を最小化することができる。すなわち、画素回路228間での電荷クロストークを低減でき、画像品質を向上さえることができる。
【0067】
また、不要ライン(Line3)に配置した画素回路228を駆動するためのトランジスタの状態を固定しているため、トランジスタのスイッチング動作に伴う負荷変動が抑制され、共通インピーダンスを介した余分な回路クロストークの発生を抑えることができる。すなわち、不要ライン(Line3)に配置された画素回路228についてはトランジスタのスイッチング動作を行わないため、回路クロストークを抑制することができ、消費電力を低減することができる。
【0068】
また、FD204の電位が常に一定のため、不要ライン(Line3)の処理配線のレベルは常に所定のレベル(リセットレベル)にあるため、必要ライン(Line0~2)の画素部221および処理配線への配線クロストーク成分を最小化することができる。すなわち、画素回路228からの配線のレベルが変動しないため、配線クロストークを抑制することができる。
【0069】
加えて、制御部222は、AD変換部224及びデジタル信号処理部225を、以下のように制御する。
【0070】
制御部222は、必要ライン(Line0~2)については、従来同様の制御を行い、画像データを得る。
【0071】
一方、制御部222は、不要ライン(Line3)については、AD変換部224及びデジタル信号処理部225の動作を停止する。
【0072】
このように、不要ライン(Line3)の処理部(AD変換部224及びデジタル信号処理部225)の動作を停止することで、回路のスイッチング動作による負荷変動を抑制することができる。すなわち、停止した不要ライン(Line3)の処理部(AD変換部224及びデジタル信号処理部225)から、動作している必要ライン(Line0~2)の処理部への回路クロストーク成分を最小化することができる。すなわち、不要な回路動作を行わないため、回路クロストークを抑制することができる。
【0073】
また、不要ライン(Line3)の処理部(AD変換部224及びデジタル信号処理部225)の動作を停止させることにより、各処理部間を接続している配線の電位を所定のレベルに固定できるため、必要ライン(Line0~2)の処理部間を接続している配線への配線クロストーク成分を最小化することができる。すなわち、処理部間の配線のレベルが変動しないため、配線クロストークを抑制することができる。
【0074】
さらにまた、制御信号を固定、あるいは、不要ライン(Line3)の処理部を停止させることで、低消費電力化を図ることができ、消費電力を低減することができる。
【0075】
このように本実施形態によれば、画像データを必要としない不要な画素領域に対しては常に電荷をリセットし、読出し制御を実施しない構成とすることにより、不要な画素領域での光電変換により生じる電荷、あるいは、不要な画素領域から得られる画像データの処理回路の動作に起因するノイズの必要領域への回り込みを低減でき、画像データを必要とする必要ラインの画素から得られる画像品質の向上を図ることができる。
【0076】
さらに、要求される画像品質を満足できる範囲内で、画像データを必要としない不要ラインの各処理部を停止することで、低消費電力化を図り、消費電力を低減することができる。
【0077】
例えば、RGBのような可視光を照射して撮像された可視画像のみの取得を必要とする場合であって、NIRのような不可視光を照射して撮像された不可視画像の取得を不要とする場合には、不要ライン(Line3)から必要ライン(Line0~2)への電荷クロストークを低減することができる。
【0078】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0079】
第1の実施の形態では、必要とする画素群あるいは不要とする画素群をライン単位で設定する場合における制御部222の制御を説明したが、第2の実施の形態は、同一ライン内において必要な画素群と不要な画素群を設定するようにした点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0080】
図10は、第2の実施の形態にかかる画素群の部分読出しの一例を示す図である。
図10に示す図は、同一ライン内において画素群単位で画素回路228の制御切替えを示すものである。
図10に示す例においては、行列状に配置された画素回路228の中央に配置する画素群のみを読出す場合についての制御を示す。
【0081】
なお、
図10においては、網掛けで示した画素群が、画素部221における読出しを実施しない一部の画素である。なお、読出しを実施しない一部の画素は、1画素または複数画素である。
【0082】
固体撮像素子22は、読出範囲制御部230を備える。制御部222は、読出範囲制御部230に対して、画素部221の各画素回路228における読出を行う画素範囲(読出開始画素位置から読出終了画素位置までの範囲)の指定を行う。読出範囲制御部230は、画素部221のライン(Line0~3)毎の各画素回路228に設けられたシフトレジスタ回路228aを制御する。
【0083】
シフトレジスタ回路228aは、読出範囲制御部230により設定された読出開始画素位置から読出終了画素位置までの範囲で、制御部222より入力される画素制御信号TX、RT、SL信号を画素毎に順次適用していく。なお、制御部222よりシフトレジスタ回路228aへ入力される制御信号は、
図5に示した制御タイミングと同様のタイミングで入力される。
【0084】
また、シフトレジスタ回路228aは、読出範囲制御部230により設定されない読出範囲外の画素について、画素制御信号TX、RTを固定レベルに制御する。また、シフトレジスタ回路228aは、読出範囲外の画素から得られる信号を後段に設けられたAMP226、ADC227へと転送する必要がないため、SL信号も固定レベルに制御する。つまり、
図10において網掛けで示した読出しを実施しない画素群へのシフトレジスタ回路228aからの制御信号は、全て固定レベルとする。
【0085】
すなわち、
図10において網掛けで示した読出しを実施しない画素群であるLine0、3については、シフトレジスタ回路228aは、出力を常時固定レベルとし、読出しを実施しない。また、Line1,2の画素回路228の端部に位置する網掛けで示した画素群については、シフトレジスタ回路228aは、出力を固定レベルとし、読出しを実施しない。
【0086】
一方、
図10において網掛けで示した画素以外の画素群については、シフトレジスタ回路228aは、出力を制御部222により制御され、画像データとして読出しを実施する。
【0087】
なお、読出範囲制御部230は、同一ライン内における部分的な読出が不要な場合においては不要である。同一ライン内における部分的な読出が不要な場合には、制御部222が、読出しを実施する必要ラインのシフトレジスタ回路228aへの制御信号と、読出しを実施しない不要ラインのシフトレジスタ回路228aへの制御信号と、を切替えればよい。
【0088】
このように本実施形態によれば、同一ライン内において必要な画素群と不要な画素群を設定する場合においても、制御部222は、画素群単位で画素回路228の制御切替えを行うことで、電荷クロストーク低減効果を得ることができる。
【0089】
また、制御部222は、同一ライン内の不要な画素群の読出しに係る各処理動作を実施しないことにより、回路クロストークあるいは配線クロストークを低減することができる。
【0090】
さらに、制御部222は、不要な画素群の読出しに係る各処理動作を実施しないため、画像データの取得に必要な時間を短縮することができる。あるいは、制御部222は、必要な画素群の読出しに係る各処理動作の処理速度を低減することができる。
【0091】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0092】
第3の実施の形態は、画素回路228において電荷転送スイッチ(TX_Tr)202を備えずに3トランジスタ構成にした点が、第1の実施の形態または第2の実施の形態と異なる。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態または第2の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態または第2の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0093】
図11は、第3の実施の形態にかかる画素回路228の構成例を示す図である。第2の実施の形態にかかる画素回路228は、電荷転送スイッチ(TX_Tr)202を備えずに、容量(キャパシタ)214を備えた3トランジスタ構成である。キャパシタ214は、PD200とRT_Tr206との間に設けられる。
【0094】
PD200で発生した電荷は、キャパシタ214へと蓄積される。キャパシタ214端には、発生した電荷量に応じた電位差(以下、信号レベル)が生じる。また、キャパシタ214は、RT_Tr206によりリセットされる。リセット動作は、制御部222からのRT信号により制御される。
【0095】
以下において、転送にかかるタイミング制御について説明する。なお、簡単のため、画素回路228が行列状に4ライン分配置されるものとして説明する。
【0096】
ここで、
図12は画素回路228における転送にかかるタイミング制御を示す図である。
図12に示すように、制御部222は、所定の読取間隔(以下、ライン周期)毎に、各RT信号で制御する。
【0097】
PD200での光電変換は、常時実施される。PD200で発生した電荷は、キャパシタ214へと蓄積される。
【0098】
制御部222は、光電変換結果の読出しタイミングで信号レベルを読出し、信号レベル読出し後に各RT信号をアサートする。
【0099】
RT信号がアサートされると、キャパシタ214の端電位は、所定の電位(以下、リセットレベル)へと初期化される。リセットレベルと信号レベルの差分が、光電変換により生じた電荷量となり、すなわち光電変換された光量となる。リセットレベル及び信号レベルは、SF回路208により増幅され、SFOUTとして出力される。
【0100】
SL信号がアサートされると、SF回路208により増幅されたレベルが、後段に配するAD変換部224へと転送される。
【0101】
続いて、本実施形態における画素回路228の制御タイミングについて説明する。
【0102】
ここで、
図13は画素回路228の制御タイミングを示す図である。
図13に示すように、制御部222は、必要ライン(Line0~2)に配置された画素回路228については、
図5で説明した制御を行い、画像データを得る。
【0103】
一方、
図13に示すように、制御部222は、不要ライン(Line3)に配置された画素回路228については、RT信号を常時アサートとする。
【0104】
不要ライン(Line3)に配置された画素回路228による光電変換で生じた電荷は、常時RT信号がアサートされているため、光電変換により電荷が発生しても、すぐにRT_Tr206を介して電源へと破棄される。
【0105】
本制御により、不要ライン(Line3)で生じた電荷は常に破棄される。より詳細には、画素回路228における光電変換は実施されるが、光電変換により生じた電荷はすぐに破棄されるため、不要ラインから必要ラインへの電荷クロストーク成分を最小化することができる。
【0106】
また、不要ライン(Line3)に配置した画素回路228を駆動するためのトランジスタの状態を固定しているため、トランジスタのスイッチング動作に伴う負荷変動が抑制され、共通インピーダンスを介した余分な回路クロストークの発生を抑えることができる。
【0107】
また、FD204の電位及びSFOUT電位が常に一定のため、不要ライン(Line3)の処理配線のレベルは常に所定のレベル(リセットレベル)にあるため、必要ライン(Line0~2)の処理配線への配線クロストーク成分を最小化することができる。
【0108】
加えて、制御部222は、AD変換部224及びデジタル信号処理部225を、以下のように制御する。
【0109】
制御部222は、必要ライン(Line0~2)については、従来同様の制御を行い、画像データを得る。
【0110】
一方、制御部222は、不要ライン(Line3)については、AD変換部224及びデジタル信号処理部225の動作を停止する。
【0111】
このように、不要ライン(Line3)の処理回路(AD変換部224及びデジタル信号処理部225)の動作を停止することで、回路のスイッチング動作による負荷変動を抑制することができる。すなわち、停止した不要ライン(Line3)の処理回路(AD変換部224及びデジタル信号処理部225)から、動作している必要ライン(Line0~2)の処理回路への回路クロストーク成分を最小化することができる。すなわち、不要な回路動作を行わないため、回路クロストークを抑制することができる。
【0112】
また、不要ライン(Line3)の処理回路(AD変換部224及びデジタル信号処理部225)の動作を停止させることにより、各回路間を接続している配線の電位を所定のレベルに固定できるため、必要ライン(Line0~2)の処理回路間を接続している配線への配線クロストーク成分を最小化することができる。すなわち、回路間の配線のレベルが変動しないため、配線クロストークを抑制することができる。
【0113】
さらにまた、制御信号を固定、あるいは、不要ライン(Line3)の処理回路を停止させることで、低消費電力化を図ることができ、消費電力を低減することができる。
【0114】
このように本実施形態によれば、画像データを必要としない不要な画素領域に対しては常に電荷をリセットし、読出し制御を実施しない構成とすることにより、不要な画素領域での光電変換により生じる電荷、あるいは、不要な画素領域から得られる画像データの処理回路の動作に起因するノイズの必要領域への回り込みを低減でき、画像データを必要とする必要ラインの画素から得られる画像品質の向上を図ることができる。
【0115】
なお、本実施形態では、必要とする画素群あるいは不要とする画素群をライン単位で設定する場合においての制御を説明したが、同一ライン内において必要な画素群と不要な画素群を設定する場合においても、制御部222は、画素群単位で画素回路228の制御切替えを行うことで、電荷クロストーク低減効果を得ることができる。
【0116】
また、制御部222は、同一ライン内の不要な画素群の読出しに係る各処理動作を実施しないことにより、回路クロストークあるいは配線クロストークを低減することができる。
【0117】
さらに、制御部222は、不要な画素群の読出しに係る各処理動作を実施しないため、画像データの取得に必要な時間を短縮することができる。あるいは、制御部222は、必要な画素群の読出しに係る各処理動作の処理速度を低減することができる。
【0118】
なお、画素群単位で画素回路228の制御切替えについては、第2の実施の形態にて説明した手段と同様の手段を適用できる。
【0119】
さらに、要求される画像品質を満足できる範囲内で、画像データを必要としない不要ラインの各制御部、処理回路を停止することで、低消費電力化を図り、消費電力を低減することができる。
【0120】
なお、第1の実施形態ないし第3の実施形態においては、各ラインに配置された画素回路228には、それぞれ異なるカラーフィルタ229が配されている。例えば、3ラインであればRGB-CFが配されるなど、用途に応じて種々カラーフィルタ229が配されることがある。いずれの場合においても、全てのラインの画像を必要としない場合が想定される。
【0121】
例えば、カラーフィルタ229としてRGB-CFを配した場合では、Rの波長が最も長いため、R-CFを配した画素回路228から、GあるいはB-CFを配した画素への電荷クロストークが大きくなる。例えば、Gの画像のみを必要とする場合に、不要ラインから必要ラインへの電荷クロストークによる影響を低減するには、まず最大波長となるR-CFを配した画素回路228に対しての制御を、第1の実施形態ないし第3の実施形態に示した制御へと切替え、R-CFを配した画素回路228からの電荷クロストークを低減することで、必要ラインへのノイズ低減を図ることが可能となる。すなわち、電荷のクロストークが大きい画素群を読み出さないことで、クロストークを低減することができる。
【0122】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0123】
第4の実施の形態においては、AD変換部224の配置位置が、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる。以下、第4の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0124】
図14は、第4の実施の形態にかかる固体撮像素子22を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。
図14に示すように、固体撮像素子22は、4ラインからなる画素部221の上下に、AD変換部224を2回路ずつ配置する。画素部221の上部または下部に配置したAD変換部224は、それぞれ4ラインの内の2ラインの画素部221から得られる信号を処理するものとする。
【0125】
制御部222は、2ライン分(Line0,1)の画像データを必要とする場合に、AD変換部(Line2,3)224を部分的に停止する。これにより、AD変換部(Line2,3)224で発生するノイズを抑制することができる。また、画素部221あるいはAD変換部(Line0,1)224への回路クロストーク成分を抑制することができる。
【0126】
一方、制御部222は、2ライン分(Line0,2)の画像データを必要とする場合には、AD変換部(Line1,3)224を停止する。これにより、AD変換部(Line1,3)224で発生するノイズを抑制することができる。前述同様に、画素部221あるいはAD変換部(Line0,2)224への回路クロストーク成分を抑制できることになるが、画素部221への回路クロストークに起因するノイズ成分が分布をもつことになる。本実施形態であれば、画素部221の左側はAD変換部224からのノイズの影響を受けることになり、画素部221の右側はノイズの影響が少なくなっている。
【0127】
ここで、
図15はAD変換部(Line1,3)224を停止した場合において、各AD変換部224間及びAD変換部224から画素部221へのノイズ影響(回路クロストーク)を示す図である。なお、
図15においては、信号配線の記載は省略する。
【0128】
ノイズの影響が画像品質に与える影響が小さい場合は、そのノイズの影響は画素部221に対して一様である方が画像品質上好ましい場合がある。このような場合を考慮し、本実施形態においては、制御レジスタ部223が、AD変換部224やデジタル信号処理部225の制御抑制機能について、選択的にON/OFF可能とし、例えばデジタル信号処理部225のみを部分的に停止可能とする。特に、画像品質に与える影響が大きい画素部221に近い処理部のみを部分的に動作させることができる。
【0129】
図14に示す構成において、2ライン分(Line0,2)の画像データを必要とする場合には、制御レジスタ部223は、4つのAD変換部(Line0~3)224の全てを動作させる。ラインを構成する画素群に対して、AD変換部224からのノイズ伝搬量が極端に偏ることがなく、画素の配置位置によらず品質が均一な画像を得ることができる。すなわち、ノイズ分布を一様化することができる。
【0130】
このように本実施形態によれば、意図して部分的に不要な回路を動作させることにより、ノイズの影響を制御し所望の画像品質を得ることができる。また、不要な回路は停止させることで、低消費電力化を図ることができる。
【0131】
なお、上記各実施の形態では、本発明の画像処理装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像処理装置であればいずれにも適用することができる。
【0132】
以上、上記各実施の形態について説明したが、それらの各部の具体的な構成、処理の内容、データの形式は、実施形態で説明したものに限るものではない。
【0133】
また、上記各実施の形態の構成は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0134】
2 光源
22 固体撮像素子
100 画像処理装置
101 読取装置
103 画像形成部
221 画素部
222 制御部
224,225 処理部
229 カラーフィルタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0135】