(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240925BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240925BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240925BHJP
H04N 1/10 20060101ALI20240925BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H04N1/04 106Z
G03G15/00 303
G03G21/00 500
G03G21/00 386
H04N1/10
H04N1/00 567M
(21)【出願番号】P 2020109594
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】森元 英雅
(72)【発明者】
【氏名】室田 孝一
(72)【発明者】
【氏名】本美 勝史
(72)【発明者】
【氏名】大里 侑生
(72)【発明者】
【氏名】戸村 有佑
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-102052(JP,A)
【文献】特開2019-043705(JP,A)
【文献】特開2018-097213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
G03G 15/00
G03G 21/00
H04N 1/10
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取台と、
前記読取台上の記録媒体に形成されるパターンを読み取り、当該パターンの画像データを生成する画像読取部と、
感光体と、前記感光体表面を帯電させる帯電部と、帯電された前記感光体表面に光を照射して静電潜像を形成する発光素子を有する露光部と、前記静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像部と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写部と、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着部と、を有し、前記記録媒体上に前記パターンを形成する画像形成部と、
前記発光素子の光量の補正値でありかつ予め設定される第1補正値と、前記画像データの濃度データに基づいて算出される、前記発光素子の光量の第2補正値と、に基づいて、前記発光素子の光量を補正する第3補正値を算出する制御部と、を備え、
前記露光部は、前記第3補正値が記憶される記憶部と、前記記憶部から前記第3補正値を読み出して、当該第3補正値に従って前記発光素子を駆動する素子駆動部と、を有し、
前記制御部は、前記記録媒体の白地エリアおよび濃度取得用パターンエリアのそれぞれに少なくとも2つ以上の判定エリアを設定し、前記第3補正値の算出前に、前記判定エリアの前記画像データの濃度データに基づいて、前記読取台上の前記記録媒体の浮きの有無を判断
し、前記白地エリア内の複数の前記判定エリア間における前記濃度データの差分の絶対値と、第1閾値と、の比較結果、前記白地エリア内の前記各判定エリアの前記濃度データと、第2閾値との比較結果、前記濃度取得用パターンエリア内の複数の前記判定エリア間における前記濃度データの差分の絶対値と、第3閾値との比較結果、および、前記濃度取得用パターンエリア内の前記各判定エリアの前記濃度データと、第4閾値との比較結果に基づいて、前記読取台上の前記記録媒体の浮きの有無を判断する、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記濃度取得用パターンエリア内に4つ以上の前記判定エリアを設定する場合、前記濃度取得用パターンエリアにおける前記記録媒体の両端に少なくとも2つずつ前記判定エリアを設定する、請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記濃度取得用パターンエリア内に4つ以上の前記判定エリアを設定する場合、4+2n(nは、0以上の整数)個の前記判定エリアを設定する、請求項1
または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、さらに、前記画像形成部を制御して、前記記録媒体上に形成する前記濃度取得用パターンエリアの位置を移動させる、請求項1から
3のいずれか一に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ等の読取装置を用いた、紙面等の記録媒体の浮きの検知方法として、記録媒体の白地エリアを読み取った画像データの濃度が濃くなることを利用して、記録媒体の浮きを検知する技術が開発されている。また、スキャナ等の読取装置によって、定型の画像が形成された記録媒体の画像データを読み取った際に、記録媒体の特定のエリアの画像データの濃度によって、記録媒体が逆さまや裏返しにされていないかを判定する技術が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、記録媒体の白地エリアを読み取った画像データの濃度が濃くなることを利用して記録媒体の浮きを検知する技術では、1つの濃度の閾値に基づいて、記録媒体の浮きを検知しているため、白地エリア以外の濃度を有するエリアにおける記録媒体の浮きを検知することが困難である。また、記録媒体の特定のエリアの画像データの濃度によって、記録媒体が逆さや裏返しにされていないかを判定する技術では、記録媒体の副走査方向への幅が細い浮きが発生した場合に、記録媒体が逆さや裏返しにされているか否かの判定には該当せず、記録媒体の浮きに対して正しい処理が行うことが困難である。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、読取台に置かれた記録媒体の白地エリア以外の濃度を有する濃度検出用パターンエリアについても、記録媒体の浮きを検知してユーザに通知することができ、ユーザによる記録媒体の置き直しや、記録媒体に対して重しを乗せることが可能となり、記録媒体の浮きによる誤った濃度補正を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、読取台と、前記読取台上の記録媒体に形成されるパターンを読み取り、当該パターンの画像データを生成する画像読取部と、感光体と、前記感光体表面を帯電させる帯電部と、帯電された前記感光体表面に光を照射して静電潜像を形成する発光素子を有する露光部と、前記静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像部と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写部と、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着部と、を有し、前記記録媒体上に前記パターンを形成する画像形成部と、前記発光素子の光量の補正値でありかつ予め設定される第1補正値と、前記画像データの濃度データに基づいて算出される、前記発光素子の光量の第2補正値と、に基づいて、前記発光素子の光量を補正する第3補正値を算出する制御部と、を備え、前記露光部は、前記第3補正値が記憶される記憶部と、前記記憶部から前記第3補正値を読み出して、当該第3補正値に従って前記発光素子を駆動する素子駆動部と、を有し、前記制御部は、前記記録媒体の白地エリアおよび濃度取得用パターンエリアのそれぞれに少なくとも2つ以上の判定エリアを設定し、前記第3補正値の算出前に、前記判定エリアの前記画像データの濃度データに基づいて、前記読取台上の前記記録媒体の浮きの有無を判断し、前記白地エリア内の複数の前記判定エリア間における前記濃度データの差分の絶対値と、第1閾値と、の比較結果、前記白地エリア内の前記各判定エリアの前記濃度データと、第2閾値との比較結果、前記濃度取得用パターンエリア内の複数の前記判定エリア間における前記濃度データの差分の絶対値と、第3閾値との比較結果、および、前記濃度取得用パターンエリア内の前記各判定エリアの前記濃度データと、第4閾値との比較結果に基づいて、前記読取台上の前記記録媒体の浮きの有無を判断する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、読取台に置かれた記録媒体の白地エリア以外の濃度を有する濃度検出用パターンエリアについても、記録媒体の浮きを検知してユーザに通知することができ、ユーザによる記録媒体の置き直しや、記録媒体に対して重しを乗せることが可能となり、記録媒体の浮きによる誤った濃度補正を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施の形態にかかる画像形成装置のハードウェア構成の一例の概略図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態にかかる画像形成装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、従来の画像形成装置における記録媒体の浮きの有無の判断処理の課題の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態にかかる画像形成装置における記録媒体の浮きの有無の判断処理の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態にかかる画像形成装置における判定エリアの設定方法の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本実施の形態にかかる画像形成装置における判定エリアの濃度データの取得処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施の形態にかかる画像形成装置における白地エリアの浮きの有無の判断処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本実施の形態にかかる画像形成装置における濃度取得用パターンエリアA2の浮きの有無の判断処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本実施の形態にかかる画像形成装置における判定エリアの設定処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、画像形成装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施の形態にかかる画像形成装置のハードウェア構成の一例の概略図である。
図1に示すように、画像形成装置1は、CPU(Central Processing Unit)30と、ROM(Read Only Memory)31と、RAM(Random Access Memory)32と、HDD(Hard Disk Drive)33と、通信I/F(Interface)34と、操作部35と、画像読取部100と、画像形成部200と、を少なくとも有し、これらがシステムバス36を介して相互に接続されている。
【0010】
CPU30は、画像形成装置1の動作を制御する。CPU30は、RAM32をワークエリア(作業領域)としてROM31またはHDD33に格納されたプログラムを実行することで、画像形成装置1全体の動作を制御し、上述したコピー機能、スキャナ機能、ファクス機能、プリンタ機能などの各種機能を実現する。これらの各種機能の実行した動作(以降ジョブと呼ぶことがある)は、その都度、画像形成装置1の動作ログとしてHDD33に保存可能である。
【0011】
通信I/F34は、外部装置からのジョブを公知のネットワークを介して受け付けたり、画像読取部100で読み取って形成した読取画像を公知のネットワークを介して外部に送信したりするインタフェースである。
【0012】
操作部35は、操作者の操作に応じた各種の入力を受け付けるとともに、各種の情報(例えば、受け付けた操作を示す情報、画像形成装置1の動作状況を示す情報、画像形成装置1の設定状態を示す情報など)を表示する。操作部35は、一例としてタッチパネル機能を搭載した液晶表示装置(LCD:Liquid Cristal Display)で構成されるが、これに限られるものではない。例えばタッチパネル機能が搭載された有機EL(Electro-Luminescence)表示装置で構成されてもよい。さらに、これに加えてまたはこれに代えて、ハードウェアキー等の操作部やランプ等の表示部を設けることもできる。
【0013】
画像読取部100は、コンタクトガラス11、および読取部12を有している。コンタクトガラス11は、画像形成部200によりパターンが形成される用紙等の記録媒体が置かれる読取台の一例である。読取部12は、コンタクトガラス11上に置かれた記録媒体に形成されたパターンを読み取り、当該パターンの画像データを生成する画像読取部の一例である。
【0014】
画像形成部200は、感光体ドラム(感光体の一例)と、帯電部と、露光部と、現像部と、転写部と、定着部と、を有し、記録媒体上にパターンを形成する。帯電部は、感光体ドラムの表面を帯電させる。露光部は、帯電された感光体ドラムの表面に光を照射して静電潜像を形成する。
【0015】
具体的には、露光部は、光源ユニット40を備える。そして、光源ユニット40は、光源素子41と、駆動部42と、光源ROM(Read Only Memory)43と、を備える。光源素子41は、LED(Light Emitting Diode)アレイヘッドやLD(Laser Diode)ユニット等であり、記録媒体に形成するパターンに対応する照射光を、感光体ドラムの表面に照射して静電潜像を形成する発光素子の一例である。駆動部42は、一例としてドライバIC(Integrated Circuit)で構成され、光源素子41を、画像データに基づき点灯するように駆動させる。具体的には、駆動部42は、後述する光源ROM43から補正値(後述する第3補正値)を読み出して、当該補正値に従って光源素子41を駆動する素子駆動部の一例である。光源ROM43は、光源素子41の光量を補正する補正値(例えば、光源素子41の駆動電流や駆動時間)等、駆動部42が光源素子41を駆動するために必要な情報、設定などを保存(記憶)する記憶部の一例である。
【0016】
現像部は、感光体ドラムの表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する。転写部は、感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する。定着部は、トナー像を記録媒体に定着させる。
【0017】
図2は、本実施の形態にかかる画像形成装置の機能構成の一例を示すブロック図である。次に、
図2を用いて、本実施の形態にかかる画像形成装置1の機能構成の一例について説明する。
【0018】
画像形成装置1は、表示制御部110と、通信制御部120と、制御部130と、読出・書込処理部140と、記憶部150と、補正値記憶部160と、入力受付部170と、を備える。
【0019】
表示制御部110は、CPU30がRAM32を作業領域としてROM3またはHDD33に記憶されたプログラムを実行することで実現され、後述する入力受付部170に表示する表示画面を制御する機能を実行する。本実施の形態では、表示制御部110は、制御部130によって、コンタクトガラス11上の記録媒体の浮き等の異常が検出された場合に、その異常を通知する。
【0020】
通信制御部120は、通信I/F34の処理によって実現され、画像情報を外部へメール送信したり、各種設定情報を外部機器から設定可能な場合には、外部装置とネットワーク経由で通信したりする機能を実行する。
【0021】
制御部130は、CPU30がRAM32を作業領域としてROM31またはHDD33を実行することによって実現され、画像形成装置1全体の機能、一例として、コピー機能、スキャナ機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能を実行する。
【0022】
本実施の形態では、制御部130は、補正値取得部131、パターン処理部132、異常判断部133、画像濃度取得部134、補正値算出部135と、を備える。
【0023】
補正値取得部131は、補正値記憶部160から、光源素子41の光量を補正する補正値である第1補正値を取得する。ここで、第1補正値は、光源素子41の駆動電流や駆動時間等、光源素子41の光量の補正値でありかつ予め設定される補正値である。パターン処理部132は、記録媒体の白地エリアおよび濃度取得用パターンエリアのそれぞれに対して2つ以上の判定エリアを設定する。本実施の形態では、パターン処理部132は、記録媒体の端側に判定エリアを設定する。また、本実施の形態では、記憶部150が、記録媒体における判定エリアの配置座標を記憶しているものとする。配置座標は、予め設定されているものとする。したがって、パターン処理部132は、記憶部150に記憶される配置座標に基づいて、判定エリアを設定する。さらに、本実施の形態では、パターン処理部132は、画像形成部200を制御して、記録媒体上に形成する濃度取得用パターンエリアの位置を移動させる。
【0024】
画像濃度取得部134は、記録媒体に設定される複数の判定エリアのそれぞれに対応する画像データの濃度データ(例えば、平均濃度)を取得する。補正値算出部135は、画像読取部100により生成される画像データの濃度データに基づいて、光源素子41の光量を補正する第2補正値(例えば、光源素子41の駆動電流や駆動時間)を算出する。次いで、補正値算出部135は、補正値取得部131により取得される第1補正値と、当該算出した第2補正値と、に基づいて、光源素子41の光量を補正する第3補正値(例えば、光源素子41の駆動電流や駆動時間)を算出する。そして、補正値算出部135は、第3補正値を、補正値記憶部160に保存する。
【0025】
異常判断部133は、補正値算出部135によって第3補正値を算出する前に、画像濃度取得部134により取得される判定エリアの濃度データに基づいて、コンタクトガラス11上の記録媒体Xの浮きの有無を判断する。これにより、濃度取得用パターンエリアA2においても記録媒体Xの浮きY1,Y2の有無を判断することや、記録媒体Xの副走査方向への幅が細かい浮きY1,Y2の有無を判定することができる。その結果、ユーザによる記録媒体Xの置き直しや、記録媒体Xに対して重しを乗せることが可能となり、記録媒体Xの浮きY1,Y2による誤った濃度補正を抑制することができる。
【0026】
読出・書込処理部140は、CPU30がRAM32を作業領域としてROM3またはHDD33を実行することによって実現され、記憶部150または補正値記憶部160に各種データを記憶したり、記憶された各種データを読み出したりする機能を実行する。
【0027】
記憶部150は、ROM31またはHDD33の処理によって実行され、プログラムや文書データ、画像形成装置1の動作に必要な各種設定情報、画像形成装置1の動作ログ等を格納する機能を実行する。RAM32の一時的な記憶機能により実行してもよい。
【0028】
補正値記憶部160は、光源ROM43の処理によって実行され、光源素子41を駆動するのに用いる各種情報、設定を格納する機能を実行する。本実施の形態では、補正値記憶部160は、光源ROM43によって実現されているが、これに限定するものではなく、例えば、HDD34等の記憶装置によって実現することも可能である。
【0029】
入力受付部170は、操作部35の処理によって実現され、操作者に対し操作に必要な情報を表示し、操作者による各種入力を受け付ける機能を実行する。
【0030】
図3は、従来の画像形成装置における記録媒体の浮きの有無の判断処理の課題の一例を説明するための図である。次に、
図3を用いて、従来の画像形成装置における記録媒体Xの浮きの有無の判断処理の課題の一例について説明する。
【0031】
従来、スキャナ等の読取装置を用いた、記録媒体Xの浮きの検知方法として、記録媒体Xの白地エリアA1を読み取った画像データの濃度が濃くなることを利用して、記録媒体Xの浮きを検知する技術が開発されている。記録媒体Xに形成される画像(出力パターン)は、定着直後のため、記録媒体Xの端面がたわみ易く、コンタクトガラス11上に載せて記録媒体Xを読み取る際に、記録媒体Xの端面が歪む。本実施の形態では、この歪みを、コンタクトガラス11上からの記録媒体Xの浮きと言うものとする。しかしながら、この技術では、1つの濃度の閾値に基づいて、記録媒体Xの浮きを検知しているため、白地エリアA1以外の濃度取得用パターンエリアA2(濃度を有するエリア)における記録媒体Xの浮きを検知することが困難である。
【0032】
また、従来、読取装置によって、定型の画像が形成された記録媒体Xの画像データを読み取った際に、記録媒体Xの濃度取得用パターンエリアA2内の判定エリア301,302に対する画像データの濃度に基づいて、記録媒体Xが逆さまや裏返しにされていないかを判定する技術が開発されている。しかしながら、この技術では、
図3に示すように、記録媒体Xの副走査方向への幅が細い浮きY1,Y2が発生した場合、記録媒体Xが逆さまや裏返しにされているか否かの判定エリア301,302に含まれないため、記録媒体Xの浮きY1,Y2を検知することができず、当該浮きY1,Y2に対して正しい濃度の補正処理を実行することが困難である。
【0033】
図4は、本実施の形態にかかる画像形成装置における記録媒体の浮きの有無の判断処理の一例を説明するための図である。次に、
図4を用いて、本実施の形態にかかる画像形成装置1における記録媒体Xの浮きの有無の判断処理の一例について説明する。
【0034】
本実施の形態にかかる画像形成装置1では、上述した課題を解決するために、パターン処理部132は、
図4に示すように、記録媒体Xの白地エリアA1および濃度取得用パターンエリアA2のそれぞれに2以上の判定エリアE1,E2,F1,F2を設定する。本実施の形態では、パターン処理部132は、
図4に示すように、記録媒体Xにおいて、副走査方向に沿って、複数の判定エリアE1,E2,F1,F2を設定する。その際、隣り合う判定エリア間の間隔は、記録媒体Xの副走査方向への幅が細かい浮きY1,Y2が発生した場合に、当該浮きY1,Y2が検知できるように設定することが好ましい。
【0035】
そして、異常判断部133は、補正値算出部135による第3補正値の算出前に、画像読取部100により生成される画像データの濃度データのうち、判定エリアの画像データの濃度データに基づいて、コンタクトガラス11上の記録媒体Xの浮きの有無を判断する。これにより、濃度取得用パターンエリアA2においても記録媒体Xの浮きY1,Y2の有無を判断することや、記録媒体Xの副走査方向への幅が細かい浮きY1,Y2の有無を判定することができる。その結果、ユーザによる記録媒体Xの置き直しや、記録媒体Xに対して重しを乗せることが可能となり、記録媒体Xの浮きY1,Y2による誤った濃度補正を抑制することができる。
【0036】
図5は、本実施の形態にかかる画像形成装置における判定エリアの設定方法の一例を説明するための図である。次に、本実施の形態にかかる画像形成装置1における判定エリアの設定方法の一例について説明する。
【0037】
図4に示す例では、パターン処理部132は、記録媒体Xの幅方向(すなわち、記録媒体Xの副走査方向に直交する主走査方向)の端のうち、一方の端側の白地エリアA1および濃度取得用パターンエリアA2のそれぞれに2つの判定エリアE1,E2,F1,F2を設定する。しかし、パターン処理部132は、
図5に示すように、記録媒体Xの幅方向の他方の端側の白地エリアA1および濃度取得用パターンエリアA2のそれぞれにも2つの判定エリアE3,E4,F3,F4を設定することも可能である。
【0038】
すなわち、パターン処理部132は、記録媒体Xの幅方向の両方の端側の白地エリアA1および濃度取得用パターンエリアA2のそれぞれに2つの判定エリアE1~E4,F1~F4を設ける。特に、パターン処理部132は、濃度取得用パターンエリアA2内に4つ以上の判定エリアE1~E4を設定する場合、濃度取得用パターンエリアA2における記録媒体Xの両端に少なくとも2つずつ判定エリアを設定する。
【0039】
これにより、
図5に示すように、記録媒体Xの一方の端側の判定エリアE1,E2,F1,F2が浮きY3に含まれてしまい、当該判定エリアE1,E2,F1,F2の画像データの濃度に基づいて、浮きY3の有無を判断することが困難な場合でも、記録媒体Xの幅方向の両端の判定エリアE1~E4,F1~F4の画像データの濃度データを用いることによって、浮きY3の有無を判断することができる。その結果、記録媒体Xの浮きY1,Y2による誤った濃度補正をより高精度に抑制することができる。
【0040】
図6は、本実施の形態にかかる画像形成装置における判定エリアの濃度データの取得処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、
図6を用いて、本実施の形態にかかる画像形成装置1における判定エリアE1~E4,F1~F4に対する画像データの濃度データの取得処理の流れの一例について説明する。
【0041】
画像濃度取得部134は、まず、記録媒体Xに含まれる判定エリアE1~E4に対応する画像データの平均濃度D(濃度データ)を取得する(ステップS601)。次に、画像濃度取得部134は、記録媒体Xに含まれる判定エリアF1~F4に対応する画像データの平均濃度D(濃度データ)を取得する(ステップS602)。
【0042】
図6に示す濃度データの取得処理では、画像濃度取得部134は、記録媒体Xの幅方向の両端側の判定エリアE1~E4,F1~F4に対応する画像データの平均濃度Dを取得しているが、記録媒体Xの幅方向の一方の端側にのみ、判定エリアE1,E2,F1,F2を設定した場合には、画像濃度取得部134は、当該一方の端側の判定エリアE1,E2,F1,F2に対応する画像データの平均濃度Dのみを取得するものとする。
【0043】
図7は、本実施の形態にかかる画像形成装置における白地エリアの浮きの有無の判断処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、
図7を用いて、本実施の形態にかかる画像形成装置1における白地エリアA1の浮きの有無の判断処理の流れの一例について説明する。
【0044】
異常判断部133は、記録媒体Xの白地エリアA1に設定される判定エリアF1~F4のそれぞれの平均濃度D(濃度データ)のうち、判定エリアF1の平均濃度Dと判定エリアF3の平均濃度Dの差分、および判定エリアF2の平均濃度Dと判定エリアF4の平均濃度Dの差分を算出する。すなわち、異常判断部133は、白地エリアA1に設定される判定エリアF1~F4の平均濃度Dのうち、左右の判定エリア間(白地エリアA1内の複数の判定エリア間の一例)の平均濃度Dの差分を算出する。
【0045】
また、異常判断部133は、記録媒体Xの白地エリアA1に設定される判定エリアF1~F4のそれぞれの平均濃度D(濃度データ)のうち、判定エリアF1の平均濃度Dと判定エリアF2の平均濃度Dの差分、および判定エリアF3の平均濃度Dと判定エリアF4の平均濃度Dの差分を算出する。すなわち、異常判断部133は、白地エリアA1に設定される判定エリアF1~F4の平均濃度Dのうち、記録媒体Xの主走査方向における位置が同じ判定エリア間(白地エリアA1内の複数の判定エリア間の一例)の平均濃度Dの差分を算出する。
【0046】
次いで、異常判断部133は、判定エリアF1の平均濃度Dと判定エリアF3の平均濃度Dの差分の絶対値、判定エリアF2の平均濃度Dと判定エリアF4の平均濃度Dの差分の絶対値、判定エリアF1の平均濃度Dと判定エリアF2の平均濃度Dの差分の絶対値、および判定エリアF3の平均濃度Dと判定エリアF4の平均濃度Dの差分の絶対値が、第1閾値未満であるか否かを判断する(ステップS701)。異常判断部133は、予め設計した白地エリアA1の濃度データに基づいて、白地エリアA1内の判定エリア間の平均濃度Dの差分の絶対値が設計の範囲内か否かを判定して、その判定結果に基づいて、第1閾値を設定するものとする。
【0047】
そして、判定エリアF1の平均濃度Dと判定エリアF3の平均濃度Dの差分の絶対値、判定エリアF2の平均濃度Dと判定エリアF4の平均濃度Dの差分の絶対値、判定エリアF1の平均濃度Dと判定エリアF2の平均濃度Dの差分の絶対値、および判定エリアF3の平均濃度Dと判定エリアF4の平均濃度Dの差分の絶対値のうち、少なくとも1つが第1閾値以上である場合(ステップS701:No)、異常判断部133は、コンタクトガラス11上の記録媒体Xの浮きを検出し、記録媒体Xに異常があると判定する(ステップS702)。さらに、異常判断部133は、記録媒体Xの浮きの検出回数をカウントアップする(ステップS703)。記録媒体Xに異常があると判定された場合、表示制御部110は、記録媒体Xに異常あること(すなわち、記録媒体Xに浮きがあること)を表示する。
【0048】
一方、判定エリアF1の平均濃度Dと判定エリアF3の平均濃度Dの差分の絶対値、判定エリアF2の平均濃度Dと判定エリアF4の平均濃度Dの差分の絶対値、判定エリアF1の平均濃度Dと判定エリアF2の平均濃度Dの差分の絶対値、および判定エリアF3の平均濃度Dと判定エリアF4の平均濃度Dの差分の絶対値が、第1閾値未満である場合(ステップS701:Yes)、異常判断部133は、判定エリアF1~F4のそれぞれの平均濃度Dが第2閾値未満であるか否かを判断する(ステップS704)。異常判断部133は、予め設計した白地エリアA1の濃度データに基づいて、白地エリアA1内の判定エリアの平均濃度Dが設計の範囲内か否かを判定し、その判定結果に基づいて、第2閾値を設定するものとする。
【0049】
そして、判定エリアF1~F4のそれぞれの平均濃度Dのうち少なくとも1つが第2閾値以上である場合(ステップS704:No)、異常判断部133は、コンタクトガラス11上の記録媒体Xの浮き(異常)を検出する(ステップS702)。さらに、異常判断部133は、記録媒体Xの浮きの検出回数をカウントアップする(ステップS703)。一方、判定エリアF1~F4のそれぞれの平均濃度Dが第2閾値未満である場合(ステップS704:Yes)、異常判断部133は、白地エリアA1内に浮きが無く、正常な状態と判定し(ステップS705)、濃度取得用パターンエリアA2における浮きの有無の判定処理へ進む。
【0050】
すなわち、異常判断部133は、白地エリアA1内の複数の判定エリア間における濃度データの差分の絶対値と、第1閾値と、の比較結果、および、白地エリアA1内の各判定エリアの濃度データと、第2閾値との比較結果に基づいて、コンタクトガラス11上の記録媒体Xの浮きの有無を判断する。
【0051】
図8は、本実施の形態にかかる画像形成装置における濃度取得用パターンエリアA2の浮きの有無の判断処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、
図8を用いて、本実施の形態にかかる画像形成装置1における濃度取得用パターンエリアA2の浮きの有無の判断処理の流れの一例について説明する。
【0052】
異常判断部133は、記録媒体Xの濃度取得用パターンエリアA2に設定される判定エリアE1~E4のそれぞれの平均濃度D(濃度データ)のうち、判定エリアE1の平均濃度Dと判定エリアE2の平均濃度Dの差分、および判定エリアE3の平均濃度Dと判定エリアE4の平均濃度Dの差分を算出する。すなわち、異常判断部133は、濃度取得用パターンエリアA2に設定される判定エリアE1~E4の平均濃度Dのうち、記録媒体Xの主走査方向における位置が同じ判定エリア間(濃度取得用パターンエリアA2内の複数の判定エリア間の一例)の平均濃度Dの差分を算出する。
【0053】
次いで、異常判断部133は、判定エリアE1の平均濃度Dと判定エリアE2の平均濃度Dの差分の絶対値、および判定エリアE3の平均濃度Dと判定エリアE4の平均濃度Dの差分の絶対値が、第3閾値未満であるか否かを判断する(ステップS801)。異常判断部133は、予め設計した濃度取得用パターンエリアA2の濃度データに基づいて、濃度取得用パターンエリアA2内の判定エリア間の平均濃度Dの差分の絶対値が設計の範囲内か否かを判定して、その判定結果に基づいて、第3閾値を設定するものとする。
【0054】
そして、判定エリアE1の平均濃度Dと判定エリアE2の平均濃度Dの差分の絶対値、および判定エリアE3の平均濃度Dと判定エリアE4の平均濃度Dの差分の絶対値のうち、少なくとも1つが第3閾値以上である場合(ステップS801:No)、異常判断部133は、コンタクトガラス11上の記録媒体Xの浮きを検出し、記録媒体Xに異常があると判定する(ステップS802)。さらに、異常判断部133は、記録媒体Xの浮きの検出回数をカウントアップする(ステップS803)。
【0055】
一方判定エリアE1の平均濃度Dと判定エリアE2の平均濃度Dの差分の絶対値、および判定エリアE3の平均濃度Dと判定エリアE4の平均濃度Dの差分の絶対値が、第3閾値未満である場合(ステップS801:Yes)、異常判断部133は、判定エリアE1~E4のそれぞれの平均濃度Dが第4閾値未満であるか否かを判断する(ステップS804)。異常判断部133は、予め設計した濃度取得用パターンエリアA2の濃度データに基づいて、濃度取得用パターンエリアA2内の判定エリアの平均濃度Dが設計の範囲内か否かを判定し、その判定結果に基づいて、第4閾値を設定するものとする。
【0056】
そして、判定エリアE1~E4のそれぞれの平均濃度Dのうち少なくとも1つが第4閾値以上である場合(ステップS804:No)、異常判断部133は、コンタクトガラス11上の記録媒体Xの浮き(異常)を検出する(ステップS802)。さらに、異常判断部133は、記録媒体Xの浮きの検出回数をカウントアップする(ステップS803)。一方、判定エリアE1~E4のそれぞれの平均濃度Dが第4閾値未満である場合(ステップS804:Yes)、異常判断部133は、濃度取得用パターンエリアA2内に浮きが無く、正常な状態と判定する(ステップS805)。
【0057】
すなわち、異常判断部133は、濃度取得用パターンエリアA2内の複数の判定エリア間における濃度データの差分の絶対値と、第3閾値と、の比較結果、および、濃度取得用パターンエリアA2内の各判定エリアの濃度データと、第4閾値との比較結果に基づいて、コンタクトガラス11上の記録媒体Xの浮きの有無を判断する。
【0058】
図9は、本実施の形態にかかる画像形成装置における判定エリアの設定処理の一例を説明するための図である。次に、
図9を用いて、本実施の形態にかかる判定エリアの設定処理の一例について説明する。
【0059】
本実施の形態では、パターン処理部132は、
図9に示すように、記録媒体Xの濃度取得用パターンエリアA2内に少なくとも4個の判定エリアE1~E4が設定される場合に、濃度取得用パターンエリアA2の副走査方向への幅αが広がると、パターン処理部132は、4個の判定エリアE1~E4に加えて、濃度取得用パターンエリアA2内の判定エリアを2個ずつ、増やす。すなわち、パターン処理部132は、4+2n(nは、0以上の整数)個の判定エリアを、濃度取得用パターンエリアA2内に設定する。
【0060】
これにより、濃度取得用パターンエリアA2の副走査方向への幅αが広がったとしても、濃度取得用パターンエリアA2内の判定エリア間の間隔が長くなることを防止でき、記録媒体Xの副走査方向への幅が細かい浮きY1,Y2の有無の誤判定を防止できる。その結果、ユーザによる記録媒体Xの置き直しや、記録媒体Xに対して重しを乗せることが可能となり、記録媒体Xの浮きY1,Y2による誤った濃度補正をより抑制することができる。
【0061】
このように、本実施の形態にかかる画像形成装置1によれば、濃度取得用パターンエリアA2においても記録媒体Xの浮きY1,Y2の有無を判断することや、記録媒体Xの副走査方向への幅が細かい浮きY1,Y2の有無を判定することができる。その結果、ユーザによる記録媒体Xの置き直しや、記録媒体Xに対して重しを乗せることが可能となり、記録媒体Xの浮きY1,Y2による誤った濃度補正を抑制することができる。
【0062】
なお、本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムは、ROM31等に予め組み込まれて提供される。本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0063】
さらに、本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0064】
本実施の形態の画像形成装置1で実行されるプログラムは、上述した各部(補正値取得部131、パターン処理部132、異常判断部133、画像濃度取得部134、補正値算出部135)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU30(プロセッサの一例)が上記ROM31からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ補正値取得部131、パターン処理部132、異常判断部133、画像濃度取得部134、補正値算出部135が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0065】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像形成装置1を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 画像形成装置
11 コンタクトガラス
12 読取部
30 CPU
31 ROM
32 RAM
33 HDD
34 通信I/F
35 操作部
40 光源ユニット
41 光源素子
42 駆動部
43 光源ROM
100 画像読取部
110 表示制御部
120 通信制御部
130 制御部
131 補正値取得部
132 パターン処理部
133 異常判断部
134 画像濃度取得部
135 補正値算出部
140 読出・書込処理部
150 記憶部
160 補正値記憶部
200 画像形成部
A1 白地エリア
A2 濃度取得用パターンエリア
X 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【文献】特開2012-160896号公報
【文献】特開2019-060984号公報