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特許7559379読取装置、画像形成装置および画像読取方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】読取装置、画像形成装置および画像読取方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/191 20060101AFI20240925BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20240925BHJP
   G03B 27/54 20060101ALI20240925BHJP
   G03B 27/50 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H04N1/191
H04N1/04 101
G03B27/54 A
G03B27/50 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020109890
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007139
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 歩
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特許第6142389(JP,B2)
【文献】特開2019-168423(JP,A)
【文献】特開2007-043427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/191
H04N 1/04
G03B 27/54
G03B 27/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に可視波長の光を照射する可視光源と、
前記被写体に不可視波長の光を照射する不可視光源と、
前記被写体からの反射光を受光し、不可視成分を含む可視画像を撮像する第一の撮像素子と、
不可視成分である不可視画像を撮像する第二の撮像素子と、
前記第二の撮像素子で取得した不可視画像を利用して、前記第一の撮像素子で取得した可視画像に含まれる不可視成分を除去する不可視成分除去部と、
前記不可視成分除去部での不可視成分の除去の際に用いる、個体ばらつきまたは経時による変動を吸収する補正係数を、取得した画像から生成する係数生成部と、
を備え、
前記不可視成分除去部は、前記第二の撮像素子で取得した不可視画像に対して、前記係数生成部で生成した補正係数を乗じる、
ことを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記係数生成部により生成される前記補正係数は、前記第一の撮像素子で取得する前記可視画像に含まれる不可視成分と前記第二の撮像素子で取得する前記不可視画像の不可視成分とを合わせる、
ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記係数生成部は、前記被写体に対して前記不可視光源から不可視波長の光を照射する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記係数生成部は、主走査方向の読取濃度ムラを補正するための基準部材を、前記被写体として用いる、
ことを特徴とする請求項3に記載の読取装置。
【請求項5】
前記係数生成部は、前記補正係数を、主走査位置毎に異なる補正係数とする、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項6】
前記係数生成部は、前記第一の撮像素子および前記第二の撮像素子の所定エリアを副走査方向において限定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の読取装置。
【請求項7】
前記係数生成部は、電源立ち上げ時に、前記補正係数の生成用画像を取得する、
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項8】
前記係数生成部は、前回の前記補正係数の生成用画像の取得時から予め定めた時間が経過した場合、前記補正係数の生成用画像を取得する、
ことを特徴とする請求項7に記載の読取装置。
【請求項9】
前記第一の撮像素子および前記第二の撮像素子の温度を検知する温度検知部を更に備え、
前記係数生成部は、前記温度検知部の温度検知に基づいて一定以上の温度変化があった場合、前記補正係数の生成用画像を取得する、
ことを特徴とする請求項7に記載の読取装置。
【請求項10】
前記被写体を用いた前記補正係数の生成用画像を取得したタイミングで、背景板を読み取ったデータのレベルを検知するレベル検知部を更に備え、
前記係数生成部は、原稿の連続読取が開始された場合に、前記背景板を読み取ったデータを取得し、前記補正係数の生成用画像を取得時と一定時間経過時との背景板のレベルの変動を、前記補正係数の生成用画像に反映する、
ことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項11】
前記レベル検知部は、前記被写体を用いた前記補正係数の生成用画像を取得したタイミングで、前記不可視光源を点灯させて背景板を読み取ったデータのレベルを検知し、
前記係数生成部は、原稿の連続読取が開始された場合に、前記不可視光源を点灯させて前記背景板を読み取ったデータを取得する、
ことを特徴とする請求項10に記載の読取装置。
【請求項12】
前記レベル検知部は、前記被写体を用いた前記補正係数の生成用画像を取得したタイミングで、前記可視光源および前記不可視光源を点灯させて背景板を読み取ったデータのレベルを検知し、
前記係数生成部は、原稿の連続読取が開始された場合に、前記可視光源および前記不可視光源を点灯させて前記背景板を読み取ったデータを取得する、
ことを特徴とする請求項10に記載の読取装置。
【請求項13】
前記レベル検知部は、急激なレベル変動を検出するエラー検知部を更に備え、
前記エラー検知部は、前記レベル検知部が前記背景板を読み取ったデータのレベルを検知する毎に、以前のレベル検知結果と比較を行い、閾値よりも大きな変化があった場合はエラーとして異常処理を行う、
ことを特徴とする請求項10ないし12のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項14】
前記係数生成部は、ユーザが設定した画質モードに応じて、前記補正係数の生成タイミングを切り替える、
ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項15】
前記係数生成部は、ユーザが設定したタイミングで前記補正係数を生成する、
ことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項16】
前記不可視光源は、前記被写体に近赤外光の光を照射する、
ことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一項に記載の読取装置。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれか一項に記載の読取装置と、
前記読取装置で読み取った画像を形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
被写体に可視波長の光を照射する可視光源と、
前記被写体に不可視波長の光を照射する不可視光源と、
前記被写体からの反射光を受光し、不可視成分を含む可視画像を撮像する第一の撮像素子と、
不可視成分である不可視画像を撮像する第二の撮像素子と、
を備える読取装置における画像読取方法であって、
前記第二の撮像素子で取得した不可視画像を利用して、前記第一の撮像素子で取得した可視画像に含まれる不可視成分を除去する不可視成分除去ステップと、
前記不可視成分除去ステップでの不可視成分の除去の際に用いる、個体ばらつきまたは経時による変動を吸収する補正係数を、取得した画像から生成する係数生成ステップと、
を含み、
前記不可視成分除去ステップは、前記第二の撮像素子で取得した不可視画像に対して、前記係数生成ステップで生成した補正係数を乗じる、
ことを特徴とする画像読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置、画像形成装置および画像読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、文書セキュリティの目的で、目に見えない不可視情報を埋め込んだ原稿を不可視光で読み取ることで、原稿の真贋判定を行う撮影技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、可視画像と近赤外画像を同時に読みとった際の可視画像品質を向上させるために、可視画像から近赤外光の影響を取り除く際に、可視センサと不可視センサの特性差を補正する補正係数を利用する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術によれば、可視センサと不可視センサの特性差を補正する補正係数を照明ランプや分光特性ランクなどの種別毎に分けた係数テーブルに予め保持し、設定に応じて係数テーブルから所望の補正係数を選択するようにしている。そのため、特許文献1に開示の技術によれば、照明ランプや分光特性ランクなどの種別の組み合わせが多く係数テーブルの生成が困難、バックアップしておくデータが多くなりメモリコストが上がる、部品交換時にユーザやサービスマンによって部品ランクを設定する手間が発生する、という問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、可視画像から不可視成分を取り除く際に使用する可視センサと不可視センサとの特性差に対する補正係数を、予め保持するデータや設定の手間なしで生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被写体に可視波長の光を照射する可視光源と、前記被写体に不可視波長の光を照射する不可視光源と、前記被写体からの反射光を受光し、不可視成分を含む可視画像を撮像する第一の撮像素子と、不可視成分である不可視画像を撮像する第二の撮像素子と、前記第二の撮像素子で取得した不可視画像を利用して、前記第一の撮像素子で取得した可視画像に含まれる不可視成分を除去する不可視成分除去部と、前記不可視成分除去部での不可視成分の除去の際に用いる、個体ばらつきまたは経時による変動を吸収する補正係数を、取得した画像から生成する係数生成部と、を備え、前記不可視成分除去部は、前記第二の撮像素子で取得した不可視画像に対して、前記係数生成部で生成した補正係数を乗じる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、可視画像から不可視成分を取り除く際に使用する可視センサと不可視センサとの特性差に対する補正係数を、予め保持するデータや設定の手間なしで生成することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置の一例の構成を示す図である。
図2図2は、画像読取部およびADFの構成を概略的に示す図である。
図3図3は、画像読取部を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。
図4図4は、イメージセンサの分光感度特性を示す図である。
図5図5は、画像読取部の機能を示す機能ブロック図である。
図6図6は、補正係数の生成時の動作を説明する図である。
図7図7は、不可視領域の分光感度特性を示す図である。
図8図8は、基準部材の分光反射率を示す図である。
図9図9は、イメージセンサの構成を示す図である。
図10図10は、補正係数の生成用画像を示す図である。
図11図11は、電源立ち上げ時の補正係数の生成用画像取得の流れを示すフローチャートである。
図12図12は、イメージセンサの経時での温度変動の影響を示す図である。
図13図13は、経時での補正係数の更新処理を示すフローチャートである。
図14図14は、モード設定画面の一例を示す図である。
図15図15は、キャリブレーション画面の一例を示す図である。
図16図16は、第2の実施の形態にかかる画像読取部の機能を示す機能ブロック図である。
図17図17は、第3の実施の形態にかかる画像読取部の機能を示す機能ブロック図である。
図18図18は、不可視光源の点灯でのレベル検知を用いた変動対応を示す図である。
図19図19は、第4の実施の形態にかかる同時点灯でのレベル検知による補正係数の修正方法について説明する図である。
図20図20は、第5の実施の形態にかかる画像読取部の機能を示す機能ブロック図の断面図である。
図21図21は、レベル検知結果の異常処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、読取装置、画像形成装置および画像読取方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる画像形成装置100の一例の構成を示す図である。図1において、画像形成装置100は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する一般に複合機(MFP:Multifunction Peripheral/Printer/Product)と称される画像形成装置である。
【0011】
画像形成装置100は、読取装置である画像読取部101およびADF(Automatic Document Feeder:自動原稿給送装置)102を有し、その下部に画像形成部103を有する。画像形成部103については、内部の構成を説明するために、外部カバーを外して内部の構成を示している。
【0012】
ADF102は、画像を読み取らせる原稿(対象物)を読取位置に位置づける原稿支持部である。ADF102は、載置台に載置した原稿を読取位置に自動搬送する。画像読取部101は、ADF102により搬送された原稿を所定の読取位置で読み取る。また、画像読取部101は、原稿を載置する原稿支持部であるコンタクトガラスを上面に有し、読取位置であるコンタクトガラス上の原稿を読み取る。具体的に画像読取部101は、内部に光源や、光学系や、CCD(Charge Coupled Device)等のイメージセンサを有するスキャナであり、光源で照明した原稿の反射光を、光学系を通じてイメージセンサで読み取る。
【0013】
画像形成部103は、画像読取部101で読み取った原稿画像を形成する。画像形成部103は、記録紙を手差しする手差ローラ104や、記録紙を供給する記録紙供給ユニット107を有する。記録紙供給ユニット107は、多段の記録紙給紙カセット107aから記録紙を繰り出す機構を有する。供給された記録紙は、レジストローラ108を介して二次転写ベルト112に送られる。
【0014】
二次転写ベルト112上を搬送する記録紙は、転写部114において中間転写ベルト113上のトナー画像が転写される。
【0015】
また、画像形成部103は、光書込装置109や、タンデム方式の作像ユニット(Y、M、C、K)105や、中間転写ベルト113や、上記二次転写ベルト112などを有する。作像ユニット105による作像プロセスにより、光書込装置109が書き込んだ画像を中間転写ベルト113上にトナー画像として形成する。
【0016】
具体的に、作像ユニット(Y、M、C、K)105は、4つの感光体ドラム(Y、M、C、K)を回転可能に有し、各感光体ドラムの周囲に、帯電ローラ、現像器、一次転写ローラ、クリーナーユニット、及び除電器を含む作像要素106をそれぞれ備える。各感光体ドラムにおいて作像要素106が機能し、感光体ドラム上の画像が各一次転写ローラにより中間転写ベルト113上に転写される。
【0017】
中間転写ベルト113は、各感光体ドラムと各一次転写ローラとの間のニップに、駆動ローラと従動ローラとにより張架して配置されている。中間転写ベルト113に一次転写されたトナー画像は、中間転写ベルト113の走行により、二次転写装置で二次転写ベルト112上の記録紙に二次転写される。その記録紙は、二次転写ベルト112の走行により、定着装置110に搬送され、記録紙上にトナー画像がカラー画像として定着する。その後、記録紙は、機外の排紙トレイへと排出される。なお、両面印刷の場合は、反転機構111により記録紙の表裏が反転されて、反転された記録紙が二次転写ベルト112上へと送られる。
【0018】
なお、画像形成部103は、上述したような電子写真方式によって画像を形成するものに限るものではなく、インクジェット方式によって画像を形成するものであってもよい。
【0019】
次に、画像読取部101およびADF102について説明する。
【0020】
図2は、画像読取部101およびADF102の構成を概略的に示す図である。図2に示すように、画像読取部101は、本体11内に、撮像素子であるイメージセンサ9を備えたセンサ基板10、イメージセンサ9に結像するためのレンズユニット8、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7を有する。イメージセンサ9は、例えばCCDやCMOSイメージセンサなどである。第1キャリッジ6は、LED(Light Emitting Diode)である光源2及びミラー3を有する。第2キャリッジ7は、ミラー4,5を有する。
【0021】
また、画像読取部101は、上面にコンタクトガラス1及び基準部材である基準白板13を設けている。基準白板13は、主走査方向に長く形成されており、読み取り光学系等における主走査方向の読取濃度ムラなどを補正するためなどに用いる。また、画像読取部101は、ADF102により搬送された原稿を読みとるためのシートスルー読み取り用スリットであるコンタクトガラス14も備えている。
【0022】
ADF102は、コンタクトガラス1に対して開閉できるように、ヒンジ等を介して画像読取部101に連結される。
【0023】
ADF102は、複数枚の原稿からなる原稿束を載置可能な原稿載置台としての原稿トレイ15を備えている。また、ADF102は、原稿トレイ15に載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離してコンタクトガラス14へ向けて自動給送する給送ローラ16を含む分離・給送手段も備えている。
【0024】
さらに、ADF102は、背景板17をコンタクトガラス14に対向する位置に備えている。背景板17は、主走査方向の濃度が一様になるように構成されている。
【0025】
このように構成された画像形成装置100において、原稿12の画像面をスキャン(走査)して原稿12の画像を読み取るスキャンモード時には、画像読取部101は、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7を待機位置(ホームポジション)から副走査方向(A方向)に移動させながら光源2から光を上方に向けて照射する。このとき、コンタクトガラス1からイメージセンサ9までの光路長を一定に維持するために、第2キャリッジ7は第1キャリッジ6の1/2の速度で移動する。そして、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7は、原稿12からの反射光を、レンズユニット8を介してイメージセンサ9上に結像させる。そして、イメージセンサ9の光電変換により信号が出力され、後段の信号処理部によりデジタル信号に変換される。それによって、原稿12の画像が読み取られ、デジタルの画像が得られる。
【0026】
一方、原稿を自動給送して原稿の画像を読み取るシートスルーモード時には、画像読取部101は、第1キャリッジ6および第2キャリッジ7をコンタクトガラス14の下側へ移動する。その後、ADF102の原稿トレイ15に載置された原稿が給送ローラ16によって矢示B方向(副走査方向)へ自動給送され、画像読取部101は、コンタクトガラス14の位置において原稿に対して光源2から光を上方に向けて照射する。そして、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7は、原稿からの反射光を、レンズユニット8を介してイメージセンサ9上に結像させる。そして、イメージセンサ9の光電変換により信号が出力され、後段の信号処理部によりデジタル信号に変換される。それによって、ADF102によって搬送される原稿の画像が読み取られ、デジタルの画像が得られる。このようにして画像の読み取りが完了した原稿は、排出口に排出される。
【0027】
なお、画像読取部101は、電源ON時などのスキャンモード時又はシートスルーモード時の画像読み取り前に、光源2による照明により、基準白板13からの反射光を読取って基準を設定する。
【0028】
即ち、画像読取部101は、第1キャリッジ6を基準白板13の直下に移動させ、光源2を点灯させて基準白板13からの反射光をイメージセンサ9の上に結像させる。基準白板13からの反射光がイメージセンサ9でアナログ信号に変換され、後段の信号処理部によりデジタル信号に変換される。それによって、基準白板13が読み取られ、その読み取り結果(デジタル信号)に基づいて原稿の画像読み取り時のシェーディング補正が行われる。
【0029】
また、ADF102に搬送ベルトを備えている場合には、スキャンモードであっても、ADF102によって原稿をコンタクトガラス1上の読み取り位置に自動給送して、その原稿の画像を読み取ることができる。
【0030】
なお、本実施形態においては、読取部10は、対象物からの反射光を読み取るものとして説明しているが、これに限るものではなく、読取部10は、対象物からの透過光を読み取るものであってもよい。
【0031】
図3は、画像読取部101を構成する各部の電気的接続を示すブロック図である。図3に示すように、画像読取部101は、光源2と、撮像装置21と、制御部23と、光源駆動部24と、操作表示部26と、を備えている。光源駆動部24は、光源2を駆動する。
【0032】
光源2は、主に可視(Red/Green/Blue)域の波長を持つ可視光を照射する可視光源2aと、近赤外(NIR)域の波長を持つ不可視光(近赤外光)を照射する不可視光源2bと、を備える。
【0033】
ここで、図4はイメージセンサの分光感度特性を示す図である。図4に示すように、一般的なシリコンのイメージセンサでは、近赤外領域(おおよそ750nm~1100nm付近)で感度を有している。したがって、近赤外領域(おおよそ750nm~1100nm付近)の光は、特殊な読取装置を用意する必要はなく、一般的な複合機に搭載されているスキャナのイメージセンサで撮像可能である。さらに、人体への悪影響もないため、危険性という面においても導入難易度は非常に低い。
【0034】
撮像装置21は、上述したように可視および不可視の波長域を撮像できるイメージセンサ9と、信号処理装置22と、を備えている。
【0035】
イメージセンサ9は、入射光に対してカラーフィルタ等を介して波長ごとに可視光(Red/Green/Blue)と不可視光(赤外光)に分解された光を受光する。イメージセンサ9は、主となる可視成分(Red/Green/Blue)および近赤外成分の電気信号に変換する第一の撮像素子である第1イメージセンサ(可視センサ)9aと、近赤外成分の電気信号に変換する第二の撮像素子である第2イメージセンサ(不可視センサ)9bと、を備える。
【0036】
なお、本実施形態においては、不可視画像として近赤外(NIR)画像を用いる例について説明するが、不可視画像で使用する波長域は限定しない。
【0037】
制御部23は、光源駆動部24、イメージセンサ9、信号処理装置22、操作表示部26の各部を制御する。
【0038】
信号処理装置22は、詳細については後述するが、イメージセンサ9から出力された画像信号に対して各種の信号処理を実施する。
【0039】
操作表示部26は、ディスプレイ等のユーザが各種情報を確認するためのユーザインタフェースと、キーボード等のユーザが情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0040】
図5は、画像読取部101の機能を示す機能ブロック図である。図5に示すように、画像読取部101の信号処理装置22は、不可視成分除去部221と、係数生成部222と、を備える。なお、信号処理装置22は、ハードウェア、ソフトウェアのどちらで実現されても良い。
【0041】
不可視成分除去部221は、概略的には、不可視成分を含む可視画像と不可視画像とを利用して、不可視成分を除去した可視画像を生成する。
【0042】
係数生成部222は、概略的には、不可視成分除去部221で用いる補正係数を生成する。
【0043】
まず、不可視成分除去部221について詳述する。
【0044】
第1イメージセンサ9aは、主に可視成分を取得するためのイメージセンサである。第1イメージセンサ9aで読みとった読取データは、可視成分と不可視成分が混ざった画像となる。一方、第2イメージセンサ9bは、不可視成分を取得するためのイメージセンサである。第2イメージセンサ9bで読みとった読取データは、不可視成分画像となる。可視成分画像を得るためには、第2イメージセンサ9bから出力された不可視成分画像を利用して、第1イメージセンサ9aから出力された画像に含まれる不可視成分を除去する必要がある。
【0045】
そこで、不可視成分除去部221は、下記に示す式(1)で第1イメージセンサ9aから出力された画像に含まれる不可視成分を除去する不可視成分除去処理を実行する。
R=R+IV_r-(IV×Kr)
G=G+IV_g-(IV×Kg)
B=B+IV_b-(IV×Kb) ・・・(1)
【0046】
なお、式(1)では、第2イメージセンサ9bから出力された画像に対して補正係数(Kr、Kg、Kb)を乗じたものを、第1イメージセンサ9aから出力された画像から減算することで、不可視成分の除去を実施している。
【0047】
次に、係数生成部222について詳述する。
【0048】
係数生成部222は、補正係数(Kr、Kg、Kb)の生成用の画像取得を行う。より詳細には、係数生成部222は、係数生成時において、第1イメージセンサ9aから出力された画像と第2イメージセンサ9bから出力された画像とを取得する。そして、係数生成部222は、取得した画像を利用して、不可視成分除去の演算に利用する補正係数(Kr、Kg、Kb)を生成する。
【0049】
ここで、図6は補正係数の生成時の動作を説明する図、図7は不可視領域の分光感度特性を示す図である。図6に示すように、補正係数生成時において、不可視光源2bは、補正係数生成の基準となる被写体に対して照射する。第1イメージセンサ9aと第2イメージセンサ9bとは、不可視波長の光による反射光を受光した画像を係数生成部222に入力する。そして、係数生成部222は、取得した画像を用いて補正係数(Kr、Kg、Kb)を生成する。
【0050】
不可視成分除去部221における不可視成分除去処理では、第1イメージセンサ9aで取得した画像に含まれる不可視成分と、第2イメージセンサ9bで取得した画像である不可視成分を合わせるような係数を作ることが重要である。そのため、図7で示すように不可視領域の特性差を捉えることが重要で、不可視光源2bのみ点灯させて得た各イメージセンサの取得画像を使うことで可能となる。なお、「第1イメージセンサ9aで取得した画像に含まれる不可視成分と、第2イメージセンサ9bで取得した画像である不可視成分を合わせる」は完全一致に限るものではなく、近づけることができればよい。
【0051】
また、第1イメージセンサ9aと第2イメージセンサ9bで取得した画像は、ある個体における光源2、イメージセンサ9、カラーフィルタ、レンズなど各種部品の分光特性が反映されたデータとなっている。このため、この画像を利用して不可視成分除去用の補正係数(Kr、Kg、Kb)を生成することで、個体ばらつきを吸収した補正係数(Kr、Kg、Kb)を生成することができる。
【0052】
これにより、部品ごとの分光特性データを保持しなくても、不可視光源2bのみ点灯させて画像を取得することで、個体に最適な不可視成分除去が可能になるため、不可視成分除去後の可視画像の品質を向上させることが可能になる。
【0053】
次いで、基準白板13について説明する。
【0054】
図7で示したような各イメージセンサ9a,9bの不可視領域の特性を把握するためには、補正係数(Kr、Kg、Kb)の生成用画像を取得する際の被写体も重要となる。不可視領域の特性を把握するためには、できるだけ不可視領域で反射率の高い被写体を使用することが望ましい。そこで、本実施形態においては、被写体として基準白板13を用いる。
【0055】
図8は、基準白板13の分光反射率を示す図である。図8に示すように、基準白板13は、赤外領域でも高い分光反射率を有する。このように基準白板13を読み取ることで補正係数(Kr、Kg、Kb)の生成用画像を取得するようにしたことにより、ユーザが被写体を用意して読取をしたり、新たな被写体を読取装置に用意したりすることなく、反射成分が大きい被写体で特性差を測ることができ、高精度な成分除去が可能となる。
【0056】
次に、主走査位置毎での補正係数の算出について説明する。
【0057】
図9は、イメージセンサ(第1イメージセンサ9a+第2イメージセンサ9b)9の構成を示す図である。図9に示すように、イメージセンサ(第1イメージセンサ9a+第2イメージセンサ9b)9は、R,G,B,IVの4ラインイメージセンサである。イメージセンサ(第1イメージセンサ9a+第2イメージセンサ9b)9の各画素(PD:Photo Diode)には、それぞれのラインに赤(R)フィルタ、緑(G)フィルタ、青(B)フィルタ、IVフィルタが積層されている。第1イメージセンサ9aは、R,G,Bといったカラーの可視画像を取得する。また、第2イメージセンサ9bは、不可視画像を取得する。
【0058】
ところで、上述のようにフィルタを積層する場合においては、膜厚の違いなどにより、画素毎に分光特性にばらつきを持つ。また、イメージセンサとカラーフィルタだけでなく、レンズ系の影響や光源自体の主走査方向の特性ばらつきも存在する。そのため不可視成分除去に使用する補正係数も、主走査位置毎に異なる補正係数とするのが望ましい。
【0059】
そこで、本実施形態においては、下記式(2)に示すように、主走査位置毎に異なる補正係数とすることで、各画素において適切な不可視成分除去が可能となる。
R(x,y)=R+IV_r(x,y)-(IV(x,y)×Kr(x))
G(x,y)=G+IV_g(x,y)-(IV(x,y)×Kg(x))
B(x,y)=B+IV_b(x,y)-(IV(x,y)×Kb(x))・・(2)
ただし、
x=0,1,2・・・nであって、主走査位置毎に異なる。
y=0,1,2・・・nであって、副走査位置毎に異なる。
【0060】
ラインイメージセンサは、読取光学系あるいは原稿を走査することで、画像データを取得する。そのため、入力画像は、主走査方向、副走査方向で異なる値を持つ。ラインイメージセンサでは副走査方向は同一の画素で読むため、係数は主走査位置毎に持てばよい。また、エリアセンサや複数ラインセンサで構成された場合も、上記の構成を取れば主走査位置による特性差を吸収することができ、より適した不可視成分除去が可能となる。これにより、主走査位置によるばらつきの違いを補正し、高精度な成分除去が可能となる。
【0061】
加えて、イメージセンサ(第1イメージセンサ9a+第2イメージセンサ9b)9で読み取った可視画像、不可視画像共に、イメージセンサ(第1イメージセンサ9a+第2イメージセンサ9b)9のショットノイズや暗電流ノイズなどのランダムノイズによって、画素値にばらつきが発生している。イメージセンサ9やカラーフィルタの個体や経時での特性を補正する補正係数を生成するためには、このようなランダムノイズの影響を抑える必要がある。
【0062】
図10は、補正係数の生成用画像を示す図である。係数生成部222は、図10に示すように、所定エリアの平均値や中央値をとることでランダムノイズの影響を軽減した画像を補正係数の生成用画像として利用する。
【0063】
主走査位置毎に補正係数を持つ場合、イメージセンサ(第1イメージセンサ9a+第2イメージセンサ9b)9のエリアを副走査方向に限定(平均値や中央値など)する必要がある。そこで、図10に示すように、係数生成部222は、イメージセンサ(第1イメージセンサ9a+第2イメージセンサ9b)9のエリアを副走査方向において限定(平均値や中央値など)することで、主走査位置毎の部品特性を維持したままノイズ影響を抑える。
【0064】
これにより、副走査方向に限定(平均値や中央値など)することで、撮像時のばらつきを抑え、部品の特性ばらつきのみに対応する主走査位置毎の最適な補正係数を生成することが可能となる。
【0065】
次に、電源立ち上げ時の補正係数の生成について説明する。
【0066】
図11は、電源立ち上げ時の補正係数の生成用画像取得の流れを示すフローチャートである。図11に示すように、電源立ち上げ時、制御部23は、基準白板13下にキャリッジを移動させ(ステップS1)、光量調整(ステップS2)、ゲイン調整(ステップS3)を行う。
【0067】
次いで、制御部23は、補正係数の生成用画像を取得し(ステップS4)、ホームポジションにキャリッジを移動させる(ステップS5)。
【0068】
このように電源立ち上げ時に補正係数の生成用画像を取得することで、イメージセンサ9の個体ばらつきを反映した補正係数を生成することができ、不可視成分除去後の画像を高画質化することができる。また、補正係数の生成用画像の取得処理を、ユーザのコピーやスキャン動作時に時間をかけずに実施することができる。
【0069】
次に、指定時間経過での補正係数の生成について説明する。
【0070】
ここで、図12はイメージセンサ9の経時での温度変動の影響を示す図である。図12(a)は不可視光源2bの特性を示し、図12(b)はカラーフィルタを含めたイメージセンサの感度特性を示す。図12(b)では、可視としてBLUE画素、不可視として近赤外画素の特性を例として示している。
【0071】
図12(a)に示すように、波長スペクトルがピーキーな特性を持った不可視光源2bでは、温度変化でピーク波長が変化する。このように温度変化でピーク波長が変化した場合、読取の特性は大きく変化する。
【0072】
一方、図12(b)に示すケースでは、波長に対し特性が振動したように変化している。このような場合に温度変化で光源のピーク波長が変化すると、イメージセンサ9の出力値も大きく変化することがわかる。つまり、可視信号と不可視信号とにおいて、温度変化によって不可視成分の関係性が変わる。また、イメージセンサ9自体も温度によって感度特性が変化する可能性がある。この状態で、ある補正係数で不可視成分除去を実施すると画質が悪化する。
【0073】
そこで、図12で示した経時での温度変動によるばらつきに対する対応が必要となる。
【0074】
図13は、経時での補正係数の更新処理を示すフローチャートである。上述したように、光源の温度変動は光源の駆動時間と共に変動する。ここでは一定時間経過した場合に補正係数の生成用画像を再取得することで経時変動ばらつきに対応する。
【0075】
図13に示すように、係数生成部222は、前回取得した(例えば、電源立ち上げ時)補正係数の生成用画像を取得する(ステップS11)。
【0076】
次いで、係数生成部222は、補正係数の生成用画像の前回取得時からt時間経過したかを判断する(ステップS12)。
【0077】
係数生成部222は、前回取得時からt時間経過した場合(ステップS12のYes)、補正係数の生成用画像を再取得する(ステップS13)。
【0078】
そして、係数生成部222は、再取得した補正係数の生成用画像に基づいて補正係数を更新する(ステップS14)。
【0079】
これにより、経時での光源2やイメージセンサ9の温度変動に応じて補正係数を更新することで、不可視成分除去を経時変動の影響を軽減しながら実施することができ、出力画像の画質を維持することが可能となる。
【0080】
このように本実施形態によれば、補正係数生成用の画像取得を行い、取得した画像を基に、可視画像と不可視画像の特性差を補正する補正係数を生成するので、可視画像から不可視成分を取り除く際に使用する第1イメージセンサ(可視センサ)9aと第2イメージセンサ(不可視センサ)9bとの特性差に対する補正係数を、予め保持するデータや設定の手間なしで生成することができる。これにより、メモリ削減とユーザの部品ランク入力の手間を省くことができる。
【0081】
なお、係数生成部222は、ユーザが設定した画質モードに応じて、補正係数の生成タイミングを切り替えるようにしてもよい。ここで、図14はモード設定画面の一例を示す図である。例えば、通常モードでは補正係数の生成を読取動作時には行わないが、操作表示部26における図14に示すユーザインタフェースUI1において高画質モードなど画質が求められるモードXが選択された場合、係数生成部222は、スキャン前に必ず基準白板13を用いた補正係数の生成動作を実行するようにしてもよい。
【0082】
これにより、生産性を落としてでも高画質が求められる場合には必ず補正係数生成を行うことで、画質向上を行うことが可能となる。
【0083】
また、係数生成部222は、ユーザが設定したタイミングで補正係数を生成するようにしてもよい。ここで、図15はキャリブレーション画面の一例を示す図である。操作表示部26における図15に示すユーザインタフェースUI2上において「不可視補正係数を生成」Yが選択された場合、係数生成部222は、基準白板13を用いた不可視の補正係数を生成するキャリブレーション処理を実行するようにしてもよい。
【0084】
これにより、キャリブレーションモードを持たせることで、ユーザが画質異常に気が付いた時にユーザが任意のタイミングで簡単に調整をすることができる。
【0085】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0086】
第2の実施の形態は、イメージセンサ9の温度検知に基づいて補正係数の生成用画像を更新する点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0087】
図16は、第2の実施の形態にかかる画像読取部101の機能を示す機能ブロック図である。図16に示すように、画像読取部101は、温度検知部25を備える。温度検知部25は、イメージセンサ9の温度を検知する。
【0088】
係数生成部222は、温度検知部25の温度検知に基づいて一定以上の温度変化があった場合、補正係数の生成用画像を再取得することで経時変動ばらつきに対応する。
【0089】
このように本実施形態によれば、温度検知部25を備えることで、イメージセンサ9に急激な温度変動があった時でも補正係数の生成用画像を更新することが可能となり、画質を維持することが可能となる。
【0090】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0091】
第3の実施の形態は、ADF102による読取時の経時変動に対応する点が、第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なる。以下、第3の実施の形態の説明では、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0092】
図17は、第3の実施の形態にかかる画像読取部101の機能を示す機能ブロック図である。ADF102を利用したシートスルーモードによる連続原稿読取時は読取位置に第1キャリッジ6および第2キャリッジ7を固定し、読取位置に原稿を搬送することで画像を読み取る。また、このような連続読取時は、イメージセンサ9が常に駆動した状態になり、温度変動などの影響を受けやすい。
【0093】
一方、連続読取時において基準白板13の位置に第1キャリッジ6および第2キャリッジ7を移動させ、不可視成分除去に使う補正係数を生成し直すと、生産性の悪化につながる。
【0094】
そこで、本実施形態においては、読取位置は変えずに背景板17のデータを取得し、その変動を補正係数に生成することで、精度を上げるようにしたものである。
【0095】
そのため、図17に示すように、信号処理装置22は、レベル検知部223を備える。
【0096】
レベル検知部223は、基準白板13を用いた補正係数の生成用画像を取得したタイミングで、不可視光源2bのみを点灯させ背景板17を読み取った背景板17のデータのレベルを検知する。
【0097】
補正係数の生成は反射率がどの波長域でも高い基準白板13を利用することが望ましいが、係数生成用画像取得時と一定時間経過時の背景板17のレベルの変動を、係数生成用画像取得データに反映することで、生産性を維持しながら、変動に対応し画質を保つことができる。
【0098】
ここで、図18は不可視光源2bの点灯でのレベル検知を用いた変動対応を示す図である。図18(a)はデータ取得と光源点灯タイミングを示し、図18(b)はデータイメージを示す。
【0099】
図18(a)では、補正係数の生成に使う各データ取得のタイミングと、光源点灯タイミングについて具体的に説明する。図18(a)に示すように、まず、基準白板13を用いた補正係数の生成用画像を取得したタイミングからすぐに、レベル検知部223は、背景板17のデータのレベルを検知しておく。次に、原稿の連続読取が開始された場合に、原稿読取前の紙の間のタイミングで、不可視光源2bのみ点灯させた背景板17のデータを取得する。その後、可視光源2aも点灯させ、原稿読取を実施する。
【0100】
上述した検知データから補正係数を算出する方法を図18(b)で説明する。[1]は初期に基準白板13で取得した補正係数の生成用画像、[2]は初期で取得した背景板17のレベルデータ、[3]は経時で取得した背景板17のレベルデータを示す。kやk’は基準白板13と背景板17の分光反射率の違いを表す。係数生成部222は、これらより下記の式(3)で[4]経時用の係数生成用データの算出を行う。
可視chの経時生成用データ (k×c/k×a)×a=c
不可視chの経時生成用データ (k’×d/k’×b)×b=d ・・・(3)
経時用の補正係数 c/d
【0101】
なお、上記の例では背景板17のデータの読取を原稿間で毎回実施しているが、2スキャンに1回や、3スキャンに1回などでも良い。
【0102】
このように本実施形態によれば、基準白板13の位置に第1キャリッジ6および第2キャリッジ7を移動させることなく経時変動に対応し、生産性と画質の両立が可能となる。
【0103】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0104】
第4の実施の形態は、シートスルーモードによる連続原稿読取時においては可視光源2aも不可視光源2bも点灯状態を維持する点が、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる。以下、第4の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0105】
図19は、第4の実施の形態にかかる同時点灯でのレベル検知による補正係数の修正方法について説明する図である。図19(a)はデータ取得と光源点灯タイミングを示し、図19(b)はデータイメージを示す。
【0106】
図18に示した方法では、背景板17を不可視光で読み取ることで経時変動に対応した。すなわち、図18に示した方法では、背景板17を不可視光で読み取ることで読取位置変更による生産性影響を排除したが、可視光源2aの点灯/消灯を行うために、点灯状態が安定する時間を必要とする。
【0107】
そこで、本実施形態においては、図19(a)に示すように、さらに生産性を上げるために、シートスルーモードによる連続原稿読取時においては可視光源2aも不可視光源2bも点灯状態を維持する構成とする。
【0108】
図19(b)に示すように、本実施形態においては、初期のレベル検知データとして背景板17を可視光のみ点灯で読み取った背景板17のレベルデータと、可視光源2aと不可視光源2bを同時点灯で読み取った背景板17のレベルデータとを取得している。そして、シートスルーモードによる連続原稿読取時には、紙(原稿)の間で可視光源2aと不可視光源2bとを同時点灯させた背景板17のレベルデータを読み取っている。係数生成部222は、可視データは経時変動の影響を受けにくいので、下記の式(4)で[4]経時用の係数生成用データの算出を行う。
可視chの経時生成用データ
(((k×c+A)-A)/((k×a+A)-A))×a=c
不可視chの経時生成用データ
(((k’×d+B)-B)/((k’×b+B)-B))×b=d・・・式(4)
経時用の補正係数:c/d
【0109】
このように本実施形態によれば、基準白板13の位置への第1キャリッジ6および第2キャリッジ7の移動と光源の点灯切り替えなく経時変動に対応し、生産性と画質の両立が可能となる。
【0110】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。
【0111】
第5の実施の形態は、レベル検知異常時に対応する点が、第1の実施の形態ないし第4の実施の形態と異なる。以下、第5の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第4の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第4の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0112】
図20は、第5の実施の形態にかかる画像読取部101の機能を示す機能ブロック図である。図20に示すように、レベル検知部223の内部には、エラー検知部223aを有する。エラー検知部223aは、急激なレベル変動を検出する。
【0113】
図21は、レベル検知結果の異常処理を示す図である。図21に示すように、エラー検知部223aは、背景板17を読み取ったデータのレベルを検知する毎に、以前のレベル検知結果と比較を行い、エラー閾値よりも大きな変化があった場合はエラーとして異常処理を行う。
【0114】
エラー検知部223aは、異常処理として、検知異常を通知したり、また補正係数の生成に使うレベル検知結果を従来取得の結果を使うことで回避を行ったりする。
【0115】
なお、図21に示した例では、前回取得時と比較を行う例を示しているが、エラー検知部223aは、新規レベル検知時に、基準のレベル検知結果と比較してエラー処理をしても良い。このようにエラー処理を行うことで、異常をユーザに知らせたり、異常画像の発生を防いだりする効果がある。
【0116】
このように本実施形態によれば、エラー処理を行うことで、異常をユーザに知らせるや異常画像の発生を防ぐことができる。
【0117】
なお、上記各実施の形態では、本発明の画像形成装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像形成装置であればいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0118】
2a 可視光源
2b 不可視光源
9a 第一の撮像素子
9b 第二の撮像素子
13 基準部材
17 背景板
25 温度検知部
100 画像形成装置
101 読取装置
103 画像形成部
221 不可視成分除去部
222 係数生成部
223 レベル検知部
223a エラー検知部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0119】
【文献】特開2007-043427号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21