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特許7559414電源装置、画像形成装置及び電源装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電源装置、画像形成装置及び電源装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240925BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G03G21/00 398
H02M3/28 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020133757
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030040
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 大輔
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-225029(JP,A)
【文献】特開2011-172451(JP,A)
【文献】特開2016-177025(JP,A)
【文献】特開平03-011595(JP,A)
【文献】特開昭59-228267(JP,A)
【文献】特開2017-219620(JP,A)
【文献】特開2019-194667(JP,A)
【文献】特開2013-132175(JP,A)
【文献】特開昭54-106050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/14
G03G 15/00
G03G 5/00-5/16
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスを含み、電子機器に所定の電圧又は所定の電流を出力する出力部を有する電源装置であって
スイッチングトランジスタを有し、前記出力部を駆動させる駆動部と、
前記駆動部の動作を制御する制御部と、
前記駆動部の電圧を検出する電圧検出部と、を有し、
前記電圧検出部は、前記スイッチングトランジスタのコレクタ側の電圧を検出し、
前記制御部は、前記電源装置の起動時に、前記電圧検出部により検出された前記電圧に基づいて、前記駆動部を制御する制御信号の第1ゲインを、前記スイッチングトランジスタにおけるコレクタ電流により発生する2次側のトランス励磁電流が前記電子機器から前記電源装置への流入電流よりも大きくなるように決定し、前記電圧検出部による前記電圧の検出波形の周波数が所定の周波数になった場合、又は前記電圧検出部による前記電圧の検出波形の振幅が所定の振幅閾値以上になった場合に、前記第1ゲインから前記第1ゲインより小さい第2ゲインに切り替える
電源装置。
【請求項2】
前記電圧検出部による前記電圧の検出波形の周波数に基づき、前記駆動部のスイッチング異常を検知する異常検知部を有する
請求項に記載の電源装置。
【請求項3】
前記異常検知部により前記スイッチング異常が検知された場合に、前記電源装置を停止させる停止部を有する
請求項に記載の電源装置。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか1項に記載の電源装置を有する
画像形成装置。
【請求項5】
像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電部材と、を有し、
前記出力部は、前記帯電部材に前記電圧又は前記電流を出力する
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
トランスを含み、電子機器に所定の電圧又は所定の電流を出力する出力部を有する電源装置の制御方法であって、
スイッチングトランジスタを有する駆動部により、前記出力部を駆動させる駆動工程と、
制御部により、前記駆動部の動作を制御する制御工程と、
電圧検出部により、前記駆動部の電圧を検出する工程と、を行い、
前記電圧検出部は、前記スイッチングトランジスタのコレクタ側の電圧を検出し、
前記制御部は、前記電源装置の起動時に、前記電圧検出部により検出された前記電圧に基づいて、前記駆動部を制御する制御信号の第1ゲインを、前記スイッチングトランジスタにおけるコレクタ電流により発生する2次側のトランス励磁電流が前記電子機器から前記電源装置への流入電流よりも大きくなるように決定し、前記電圧検出部による前記電圧の検出波形の周波数が所定の周波数になった場合、又は前記電圧検出部による前記電圧の検出波形の振幅が所定の振幅閾値以上になった場合に、前記第1ゲインから前記第1ゲインより小さい第2ゲインに切り替える
電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電源装置、画像形成装置及び電源装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置等の電子機器では、緊急停止すると感光体に残留電荷が残る場合があり、残留電荷に伴う流入電流により生じる電源装置の動作不良を防ぐため、感光体に残った電荷を除電する構成が知られている。
【0003】
また、電源装置における上記の動作不良を防止するために、除電に使用可能な電源を用いて感光体の残留電荷を除電する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、電子機器が除電に使用可能な電源を備えないこと等で除電を行えない場合に、電源装置の動作不良が発生する場合がある。
【0005】
本発明は、電源装置の動作不良を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電源装置は、トランスを含み、電子機器に所定の電圧又は所定の電流を出力する出力部を有する電源装置であってスイッチングトランジスタを有し、前記出力部を駆動させる駆動部と、前記駆動部の動作を制御する制御部と、前記駆動部の電圧を検出する電圧検出部と、を有し、前記電圧検出部は、前記スイッチングトランジスタのコレクタ側の電圧を検出し、前記制御部は、前記電源装置の起動時に、前記電圧検出部により検出された前記電圧に基づいて、前記駆動部を制御する制御信号の第1ゲインを、前記スイッチングトランジスタにおけるコレクタ電流により発生する2次側のトランス励磁電流が前記電子機器から前記電源装置への流入電流よりも大きくなるように決定し、前記電圧検出部による前記電圧の検出波形の周波数が所定の周波数になった場合、又は前記電圧検出部による前記電圧の検出波形の振幅が所定の振幅閾値以上になった場合に、前記第1ゲインから前記第1ゲインより小さい第2ゲインに切り替える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電源装置の動作不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す図である。
図2】電源装置への流入電流について説明する図である。
図3】第1実施形態に係る電源装置の構成例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る制御マイコンの機能構成例を示すブロック図である。
図5】第1実施形態に係る電源装置の起動前の状態例を示す図である。
図6】第1実施形態に係る電源装置の起動時の状態例を示す図である。
図7】第1実施形態に係る電源装置の指令信号と制御信号の一例の図である。
図8】第1実施形態に係る電源装置のスイッチング動作の検出例の図であり、(a)は検出波形例の図、(b)は検出周期例の図、(c)は制御信号例の図である。
図9】第1実施形態に係る電源装置の動作例を示すフローチャートである。
図10】第2実施形態に係る電源装置の構成例を示す図である。
図11】第2実施形態に係る制御マイコンの機能構成例を示す図である。
図12】第2実施形態に係る電源装置の起動前の状態例を示す図である。
図13】第2実施形態に係る電源装置の起動時の状態例を示す図である。
図14】第2実施形態に係る電源装置のスイッチング動作の検出例の図であり、(a)は電圧信号例の図、(b)は指令信号例の図、(c)は制御信号例の図である。
図15】第3実施形態に係る制御マイコンの機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、各図面において、同一の構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための電源装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0010】
以下では、画像形成装置に搭載される電源装置を一例として、実施形態を説明する。なお、画像形成装置は電子機器の一例である。
【0011】
[実施形態]
<画像形成装置100の全体構成例>
まず図1を参照して、実施形態に係る画像形成装置100の構成について説明する。図1は、画像形成装置100の構成の一例を説明する図である。
【0012】
画像形成装置100は、コピー機能、FAX機能、プリント機能、スキャナ機能、また、入力画像(スキャナ機能による読み取り原稿や、プリンタ機能あるいはFAX機能により入力された画像)を保存や配信する機能等を複合して有するいわゆるMFP(Multifunction Peripheral /Printer /Product)と称される複合機である。
【0013】
また、画像形成装置100は、PC(Personal Computer)等の外部装置とも通信可能であり、外部装置から受信した指示に応じた動作を行うこともできる。なお、実施形態において、画像形成装置100で処理される「画像」には画像データだけでなく、画像データが含まれていないデータ、つまりテキスト情報のみのデータも含むものとする。
【0014】
画像形成装置100は、帯電された感光体表面が選択的に露光されることにより書き込まれた静電潜像に、トナーを付着させ、付着させたトナーを用紙等の記録媒体に転写する、いわゆる電子写真方式の画像形成装置である。
【0015】
画像形成装置100は、図1に示すように、操作パネル10と、起動スイッチ20と、コントローラ30と、読取部40と、エンジン制御部5と、プリンタ部6と、給紙カセット7A,7Bと、搬送部8と、電源装置1とを有する。
【0016】
操作部である操作パネル10は、利用者の操作に応じた各種の入力を受け付けるとともに、各種の情報(例えば受け付けた操作を示す情報、画像形成装置100の動作状況を示す情報、画像形成装置100の設定状態を示す情報など)を表示する。操作パネル10は、一例としてタッチパネル機能を搭載した液晶表示装置(LCD:Liquid Cristal Display)で構成されるが、これに限られるものではない。例えばタッチパネル機能が搭載された有機EL(Electro-Luminescence)表示装置で構成されてもよい。さらに、これに加えて又はこれに代えて、ハードウェアキー等の操作部やランプ等の表示部を設けることもできる。
【0017】
起動スイッチ20は、画像形成装置100の電源がオフの状態でユーザによって押圧されると、画像形成装置100を起動する。また画像形成装置100が起動した状態、つまり電源がオンの状態でユーザによって押下されると、画像形成装置をオフ状態とする。このように起動スイッチ20は、ユーザが押圧することによって画像形成装置100をオン/オフしてもよいがこれに限られず、外部装置から受信した指示に基づき画像形成装置100をオン又はオフしてもよい。
【0018】
コントローラ30は、画像形成装置100を統括的に制御する。一例として操作パネル10が受け付けた操作や情報に応じた動作を、画像形成装置100に実行させる。その他の例として、PC等の外部機器から画像形成装置100が受け付けた指示等を画像形成装置100に実行させる。さらにその他の例として、特定の条件を検知した場合、例えば起動スイッチ20の押下を検知した場合に、予め決められた動作を画像形成装置100に実行させる。
【0019】
コントローラ30の具体例としては、画像形成装置100を統括的に制御する回路を搭載したコントローラボードである。
【0020】
読取部40は、ADF(Auto Document Feeder)411とスキャナ部412とを有する。ADF411は、ADF411上に置かれた原稿を順次し搬送し光学的に読み取り画像データを生成する。スキャナ部412は、透明な原稿台の上に原稿を固定し、固定された原稿を光学的に読み取り画像データを生成する。
【0021】
エンジン制御部5は、読取部40により生成された画像データに基づき、プリンタ部6や搬送部8を制御する制御信号を生成する。エンジン制御部5の具体例としては、画像データに基づき制御信号を生成するための回路基板である。
【0022】
画像形成部であるプリンタ部6は、像担持体の一例としての感光体ドラム61と、感光体ドラム61の外表面を帯電させる帯電部材62と、読取部40により読み取られた画像データに基づいて、帯電された感光体ドラム61上を露光して、感光体上に静電潜像を書き込む書込みユニット63と、書き込まれた潜像をトナーで現像する現像部材64と、トナー画像を形成する記録媒体を搬送する搬送ベルト65と、記録媒体上のトナーを記録媒体に定着させる定着部66とを有し、記録媒体上にトナー画像を形成する。
【0023】
給紙カセット7A、7Bは画像形成前の記録媒体を収納する。図1においては一例として二つの給紙カセットを有し、それぞれにサイズの異なる記録媒体を収納しているが、一つであっても良いし、三つ以上であってもよい。
【0024】
給紙搬送部としての搬送部8は、各種ローラを有し、給紙カセット7A、給紙カセット7Bに収納された記録媒体をプリンタ部6に搬送する。なお、図9における矢印Cは、記録媒体の搬送方向を示している。
【0025】
電源装置1は、入力電圧を所望の出力電圧に変換し、画像形成装置100における帯電部材62に印加する電源装置である。なお、画像形成装置100は、図示を省略するが、電源装置1以外にも、画像形成装置100の各部に所望の電圧又は電流を印加する各種電源装置を備えている。
【0026】
ここで、コピーモードを例として画像形成装置100での画像形成の流れを説明する。まずユーザが、操作パネル10で機能切替キー等をユーザが操作することにより、画像形成装置100のコピー機能、プリンタ機能、及びファクシミリ機能を順次に切り替えて選択し、各機能を動作させることが可能となる。コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクシミリ機能選択時にはファクシミリモードとなる。
【0027】
コピーモードでは、読取部40により、コピーする各原稿の画像情報が読み取られ、画像データが生成される。
【0028】
感光体ドラム61の外周面は、暗中にて帯電部材62により一様に帯電された後、書込みユニット63からの照射光(図1中に点線矢印Aで示す。)により露光され、その結果、感光体ドラム61の外周面上に静電潜像が形成される。なお、矢印Bは感光体ドラム61の回転方向を示している。
【0029】
現像部材64は、この静電潜像をトナーにより可視像化する。これにより、感光体ドラム61上にトナー画像が形成される。感光体ドラム61上に形成されたトナー画像は、搬送ベルト65上の記録媒体に転写される。そして定着部66が記録媒体上のトナー画像のトナーを一例としてヒータで加熱溶融して、記録媒体にトナー画像を定着し、記録媒体を画像形成装置100から排出する。
【0030】
なお、プリンタ部6がモノクロの電子写真方式によって画像を形成する場合を説明したが、カラーの電子写真方式等であってもよい。
【0031】
また、上述の操作パネル10は、コントローラ30によって制御されてもよいし、コントローラ30とは別に操作パネル10を制御するための制御回路を有し、制御されてもよい。その場合、コントローラ30の制御回路と操作パネル10の制御回路は、相互に通信可能に接続され、コントローラ30は操作パネル10を含む画像形成装置100全体を制御する。
【0032】
なお、コントローラ30と、エンジン制御部5と、プリンタ部6と、給紙カセット7A、7B、搬送部8は画像形成装置100の外装内に設けられているが図1においては内部を透視して示している。
【0033】
<電源装置への流入電流について>
ここで、画像形成装置における感光体ドラムの残留電荷に伴い、感光体ドラムから電源装置へ流入する流入電流について説明する。
【0034】
図2は、比較例に係る電源装置1Xへの流入電流について説明する図である。図2に示すように、電源装置1Xは、出力回路2Xと、駆動回路3Xとを有する。出力回路2Xは、トランスを有し、所定値に変換した電圧を帯電部材62に出力するトランス回路である。
【0035】
駆動回路3Xは、スイッチングトランジスタ31を有し、出力回路2を駆動させるスイッチング回路である。駆動回路3Xは、自励発振回路で構成され、スイッチングトランジスタ31のオン状態又はオフ状態の時間比率が制御されることで電源装置1Xの出力電圧を安定化させる。
【0036】
ここで、画像形成装置が緊急停止すると感光体ドラム61に残留電荷61aが残る場合がある。この残留電荷により感光体ドラム61から電源装置1に、太い実線矢印で示すように流入電流621が流れる。自励発振回路の場合、起動時は太い破線矢印で示すようにエミッタ電流622を発生させてスイッチングトランジスタ31をオン状態にし、太い一点鎖線矢印で示すコレクタ電流623が流れる。
【0037】
駆動回路3Xが正常に動作する場合には、以下の(1)乃至(4)の順に電流が流れ、駆動回路3Xが発振する。
(1)エミッタ電流622が流れ、コレクタ電流623が流れ、トランス励磁電流(流入電流621とは反対方向に流れる電流)が流れる。
(2)太い二点鎖線矢印で示す引抜電流624(ベースに流れないようにエミッタ電流から引き抜いた電流)が流れ、コレクタ電流623がオフ状態になり、帯電電流(流入電流621と同じ方向に流れる電流)が流れる。
(3)引抜電流624とエミッタ電流622の和の電流が流れ、コレクタ電流623が流れ、トランス励磁電流が流れる。
(4)上記(2)及び(3)の繰り返しで発振する。
【0038】
上記(1)から(4)の動作において、(1)でコレクタ電流623により発生する2次側のトランス励磁電流が流入電流621以上に流れないと、(2)で引抜電流624が流れないため、スイッチングトランジスタ31がオフ状態にならず、駆動回路3Xが発振しない。これにより、電源装置1Xが動作不良を起こし、電源装置1Xの破損に繋がる。
【0039】
これに対し、実施形態では、駆動回路のスイッチング動作を検出した場合に、駆動回路を制御する制御信号のゲインを、第1ゲインから第1ゲインより小さい第2ゲインに切り替える。例えば、電源装置の起動時に制御信号のゲインを第1ゲインとし、その後、駆動回路の電圧を検出する電圧検出回路による検出波形の周波数が所定の周波数になった場合にゲインを第2ゲインに切り替える。
【0040】
これにより、例えば電源装置の起動時に、画像形成装置から電源装置への流入電流がある場合にも、流入電流の影響を受けずに駆動回路を制御可能にし、電源装置の動作不良を防止する。
【0041】
[第1実施形態]
<電源装置1の構成例>
図3は、第1実施形態に係る電源装置1の構成の一例を説明する図である。なお、図3において、図2で説明した構成部と同じ機能を有する構成部には、図2と同じ部品番号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0042】
図3に示すように、電源装置1は、出力回路2と、駆動回路3と、制御マイコン4とを有する。出力回路2は、画像形成装置100に所定の電圧又は所定の電流を出力する出力部の一例である。
【0043】
駆動回路3は、スイッチングトランジスタ31と、電圧検出回路32とを有し、出力回路2を駆動させる駆動部の一例である。駆動回路3は、自励発振回路で構成され、スイッチングトランジスタ31のオン状態又はオフ状態の時間比率が制御されることで電源装置1の出力電圧を安定化させるスイッチング回路である。電圧検出回路32は、駆動回路3の電圧を検出する電圧検出部の一例であり、電圧の検出信号を制御マイコン4に出力する。
【0044】
制御マイコン4は、CPU(Central Processing Unit)41と、切替回路42とを有し、駆動回路3を制御する制御部の一例である。CPU41は、コントローラ30から指令信号を入力し、また電圧検出回路32から電圧の検出信号を入力する。CPU41は、これらの入力信号に基づき、切替回路42を介して制御信号421を出力し、駆動回路3による出力回路2の駆動を制御することができる。切替回路42はトランジスタ等のスイッチング回路である。
【0045】
<制御マイコン4の機能構成例>
次に図4を参照して、制御マイコン4の機能構成について説明する。図4は、制御マイコン4の機能構成の一例を説明するブロック図である。図4に示すように、制御マイコン4は、指令信号入力部401と、波形取得部402と、決定部403と、切替部404とを有する。指令信号入力部401、波形取得部402及び決定部403の各機能は、図3のCPU41が所定のプログラムを実行すること等により実現される。切替部404の機能は切替回路42等により実現される。
【0046】
制御マイコン4は、駆動回路3(図3参照)のスイッチング動作を検出した場合に、駆動回路3を制御する制御信号421のゲインを、第1ゲインから第1ゲインより小さい第2ゲインに切り替えることができる。
【0047】
具体的には、指令信号入力部401は、コントローラ30から指令信号を入力する。この指令信号に応じて制御マイコン4は起動する。波形取得部402は、電圧検出回路32による電圧の検出信号を入力し、所定の検出周期で検出波形を取得して決定部403に提供する。
【0048】
決定部403は、電源装置1の起動時に制御信号421のゲインを第1ゲインに決定し、その後、電圧検出回路32による検出波形の周波数が所定の周波数になった場合に、制御信号421のゲインを第2ゲインに決定し、切替部404を介して制御信号421を出力する。
【0049】
或いは、決定部403は、電源装置1の起動時に制御信号421のゲインを第1ゲインに決定し、その後、電圧検出回路32による検出波形の振幅が所定の振幅閾値以上になった場合に制御信号421のゲインを第2ゲインに決定し、切替部404を介して制御信号421を出力することもできる。
【0050】
切替部404は、決定部403による決定結果に応じて、制御信号421のゲインを第1ゲインから第2ゲインに切り替える。なお、切替部404の機能は、CPU41が所定のプログラムを実行すること等により実現されてもよい。
【0051】
<電源装置1の動作例>
次に図5乃至図9を参照して、電源装置1の動作について説明する。
図5は、電源装置1の起動前状態の一例を説明する図であり、コントローラ30からCPU41への指令信号が入力しない状態を示している。図5における検出波形321は、コントローラ30からCPU41へ指令信号が入力しない状態で、電圧検出回路32で検出される電圧波形を示している。図5に示すように、この状態では、検出波形321の電圧はVin(直流電圧)になる。
【0052】
次に図6は、電源装置1の起動時の状態の一例を説明する図であり、コントローラ30からCPU41へ指令信号301が入力する状態を示している。図6における検出波形322は、コントローラ30からCPU41へ指令信号301が入力する状態で、電圧検出回路32で検出される電圧波形を示している。図6に示すように、コントローラ30から指令信号301が入力され、駆動回路3の自励発振回路が正常に動作し始めると、電圧検出回路32の検出波形の電圧は、オン状態とオフ状態とのスイッチングを開始する。
【0053】
次に図7は、電源装置1における指令信号301と制御信号421の一例を示すタイミングチャートである。図7に示すように、指令信号301が入力し始めるタイミング301aでは、制御信号421は第1ゲイン421aに決定される。その後、電圧検出回路32による検出波形に基づきスイッチング動作が検出されると、第1ゲイン421aから第2ゲイン421bに切り替えられる。なお図7では、第1ゲイン421aは時間に応じて変化しているが、必ずしも変化しなくてもよく、第2ゲイン421bより大きければ、一定のゲインであってもよい。
【0054】
次に図8は、スイッチング動作の検出の一例を説明する図であり、(a)は検出波形の一例を示す図、(b)は検出周期の一例を示す図、(c)は制御信号の一例を示す図である。
【0055】
図8(a)におけるTは、検出波形323におけるスイッチング周期を示し、323a乃至323dはそれぞれ検出波形323における立ち上がりエッジを示している。電圧検出回路32による検出周期324は、一例としてスイッチング周期Tの5倍になるように予め設定されている。
【0056】
決定部403(図4参照)は、電源装置1の起動時は、高ゲインである第1ゲイン422aに決定する。その後、例えば検出波形323内に立ち上がりエッジを4個以上検出した場合に、駆動回路3がスイッチング動作をしていると判定する。その後、制御信号422のゲインを第2ゲイン422bに決定し、切替部404を介して制御信号422のゲインを第1ゲイン422aから第2ゲイン422bに切り替える。
【0057】
なお、検出周期324はスイッチング周期Tの5倍の周期に限定されるものではなく、スイッチング周期Tの2倍以上の周期であればよい。またスイッチング動作の判定は、検出波形323内に立ち上がりエッジが4個以上検出された場合に限定されるものではなく、2個以上検出された場合でもよい。
【0058】
次に図9を参照して、電源装置1の動作について説明する。図9は、電源装置1の動作の一例を説明するフローチャートである。図9は、電源装置1が起動され、帯電部材62(図3参照)に所定の電圧又は電流を出力するまでの動作を示している。なお、図4の機能構成図も適宜参照して説明する。
【0059】
電源装置1の起動時に、指令信号入力部401がコントローラ30から指令信号を入力すると、まずステップS91において、決定部403は制御信号421のゲインを第1ゲインに決定し、切替部404を介して制御信号421を出力する。
【0060】
続いて、ステップS92において、波形取得部402は、電圧検出回路32による電圧の検出信号を入力し、所定の検出周期で検出波形を取得して決定部403に提供する。
【0061】
続いて、ステップS93において、決定部403は、検出波形に基づきスイッチング動作の検出を行う。
【0062】
ステップS93で、スイッチング動作が検出されない場合には(ステップS93、No)、スッテプS92以降の動作が繰り返される。一方、スイッチング動作が検出された場合には(ステップS93、Yes)、ステップS94において、決定部403は、制御信号421のゲインを第2ゲインに決定し、切替部404を介して制御信号421を出力する。
【0063】
続いて、ステップS95において、出力回路2は帯電部材62に所定の電圧又は電流を出力する。
【0064】
このようにして、電源装置1は起動し、画像形成装置に所定の電圧又は電流を出力することができる。
【0065】
<電源装置1の作用効果>
次に、電源装置1の作用効果について説明する。
従来、電子写真方式の画像形成装置等の電子機器では、緊急停止すると感光体に残留電荷が残る場合があり、残留電荷に伴う流入電流により生じる電源装置の動作不良を防ぐため、感光体に残った電荷を除電する構成が知られている。また、電源装置における上記の動作不良を防止するために、除電に使用可能な電源を用いて感光体の残留電荷を除電する構成が開示されている。
【0066】
しかしながら、従来の構成では、電子機器が除電に使用可能な電源を備えないこと等により除電を行えない場合に、電源装置の動作不良が発生する場合がある。
【0067】
本実施形態では、制御マイコン(制御部)は、駆動回路(駆動部)のスイッチング動作を検出した場合に、駆動回路を制御する制御信号のゲインを、第1ゲインから第1ゲインより小さい第2ゲインに切り替える。例えば、電源装置の起動時に制御信号のゲインを第1ゲインとし、その後、駆動回路の電圧を検出する電圧検出回路による検出波形の周波数が所定の周波数になった場合にゲインを第2ゲインに切り替える。
【0068】
これにより、例えば電源装置の起動時に、画像形成装置から電源装置への流入電流がある場合にも、駆動回路におけるスイッチングトランジスタにコレクタ電流により発生する2次側のトランス励磁電流を流入電流以上に流すことができる。その結果、流入電流の影響を受けずに駆動回路を制御可能にし、電源装置の動作不良を防止することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、検出電圧波形の周波数が所定の周波数になった場合に制御信号のゲインを第1ゲインから第2ゲインに切り替える構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、検出電圧波形の振幅が所定の振幅閾値以上になった場合に制御信号のゲインを第1ゲインから第2ゲインに切り替える構成にしてもよい。
【0070】
より具体的には、予め指令信号とスイッチングの振幅幅(Vpp電圧値)の関係を制御マイコンに含まれるROM(Read Only Memory)等に記憶しておく。そして起動時のスイッチングのVpp電圧が指令信号に対する目標出力電圧を定常的に出力している条件でのVpp電圧に近づいた場合(例えば指令信号に対して記憶している定常動作でのVpp電圧の50%以上になった場合)に、第1ゲインから第2ゲインに切り替える。このようにすることで、電源装置起動時のスイッチング電圧の振幅が安定した後に、立ち上げる負荷によらず確実に起動することが可能になる。
【0071】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る電源装置1aについて説明する。なお、第1実施形態で説明したものと同一の構成部には、同一の部品番号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0072】
本実施形態では、像担持体の残留電圧に基づき、第1ゲインの増幅率を決定するように制御する。
【0073】
<電源装置1aの構成例>
図10は、電源装置1aの構成の一例を説明する図である。図10に示すように、電源装置1aは出力回路2aと、制御マイコン4aと、を有し、出力回路2aは電流検出回路21を有する。
【0074】
電流検出回路21は、感光体ドラム61の残留電荷61aにより発生する流入電流を検出し、検出信号を制御マイコン4aに出力する。制御マイコン4aは流入電流の検出信号から取得される残留電圧値に応じて、第1ゲインの増幅率を決定することができる。
【0075】
<制御マイコン4aの機能構成例>
次に図11は、制御マイコン4aの機能構成の一例を説明するブロック図である。図11に示すように、制御マイコン4aは残留電圧取得部405と、決定部403aとを有する。残留電圧取得部405の機能は、図10のCPU41が所定のプログラムを実行すること等により実現される。
【0076】
残留電圧取得部405は、電流検出回路21から入力する流入電流の検出信号に基づき、感光体ドラム61の残留電圧値を取得して、決定部403aに提供する。
【0077】
決定部403aは、残留電圧に基づき、第1ゲインの増幅率を決定する。例えば決定部403aは、残留電圧より大きい制御信号の電圧が得られるように第1ゲインの増幅率を決定できる。
【0078】
<電源装置1aの動作例>
次に図12乃至図14を参照して、電源装置1aの動作について説明する。
図12は、電源装置1aの起動前の状態の一例を説明する図である。太い実線矢印は、電源装置1aの起動前に感光体ドラム61の残留電荷61aに伴い流入する流入電流621を表している。コントローラ30からの指定信号が入力していない状態でも電流検出回路21には流入電流に応じた直流電圧が発生する。この直流電圧から演算で取得される残留電圧に基づき、第1ゲインの増幅率を決定できる。
【0079】
図13は、電源装置1aの起動時の状態の一例を説明する図である。コントローラ30から指令信号326が入力され、駆動回路3の自励発振回路が正常に動作し始めると、電圧検出回路32による検出波形322に基づき、スイッチング動作を検出可能になる。
【0080】
決定部403(図11参照)は、電源装置1aの起動時に制御信号421のゲインを残留電圧に基づき第1ゲインに決定し、その後、電圧検出回路32による検出波形の周波数が所定の周波数になった場合に、制御信号421のゲインを第2ゲインに決定し、切替部404を介して制御信号421を出力する。
【0081】
次に図14は、電源装置1aのスイッチング動作の検出例を説明する図であり、(a)は電圧信号325を示す図、(b)は指令信号326を示す図、(c)は制御信号423を示す図である。コントローラ30からの指令信号の入力がない状態で、流入電流に応じた直流電圧325aから残留電圧325bを演算で取得する。コントローラ30から指令信号326が入力する際には、残留電圧に応じて増幅率が決定された第1ゲイン423aに決定され、その後、スイッチング動作が検出されたタイミングで第2ゲイン423bに切り替えられる。
【0082】
<電源装置1aの作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、像担持体の残留電圧に基づき、第1ゲインの増幅率を決定するように制御する。これにより感光体ドラムの残留電圧に合わせて、制御信号の第1ゲインの増幅率を適正化し、電源装置1aの起動時間のバラツキを抑制することができる。
【0083】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る電源装置1bについて説明する。図15は、電源装置1bが有する制御マイコン4bの機能構成の一例を説明するブロック図である。図15に示すように、制御マイコン4bは、異常検知部406と、停止部407とを有する。異常検知部406及び停止部407の各機能は、図3のCPU41が所定のプログラムを実行すること等により実現される。
【0084】
異常検知部406は、電圧検出回路32による検出波形の周波数に基づき、駆動回路3(図3参照)のスイッチング異常を検知する。例えば、検出波形の周波数が所定の周波数の2倍以上の周波数になった場合にスイッチング異常を検知する。
【0085】
停止部407は、異常検知部406によりスイッチング異常が検知された場合に、電源装置1bを停止させる。
【0086】
このような構成により、スイッチング異常が発生した場合の安全性を確保できる。なお、スイッチング異常が発生した場合の処理は、電源装置1bを停止させることに限定されるものではない。例えば異常の発生を示す通知を画像形成装置の操作パネル等の表示部に表示することもできる。
【0087】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0088】
なお、実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0089】
また、機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、及び/又は、一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0090】
また、実施形態は、電源装置の制御方法も含む。例えば、電源装置の制御方法は、電子機器に所定の電圧又は所定の電流を出力する出力部を駆動させる駆動工程と、前記駆動工程を制御する制御工程と、を行い、前記制御工程では、前記駆動工程のスイッチング動作を検出した場合に、前記駆動工程を制御する制御信号のゲインを、第1ゲインから前記第1ゲインより小さい第2ゲインに切り替える。このような電源装置の制御方法により、上述した電源装置と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 電源装置
2 出力回路(出力部の一例)
21 電流検出回路(電流検出部の一例)
3 駆動回路(駆動部の一例)
31 スイッチングトランジスタ
32 電圧検出回路(電圧検出部の一例)
4 制御マイコン(制御部の一例)
41 CPU
401 指令信号入力部
402 波形取得部
403 決定部
404 切替部
405 残留電圧取得部
406 異常検知部
407 停止部
42 切替回路
421 制御信号
421a 第1ゲイン
421b 第2ゲイン
10 操作パネル
30 コントローラ
301 指令信号
61 感光体ドラム
61a 残留電荷
62 帯電部材
621 流入電流
622 エミッタ電流
623 コレクタ電流
624 引抜電流
100 画像形成装置(電子機器の一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0092】
【文献】特開2017-219620号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15