(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】分散液、組成物、封止部材、発光装置、照明器具、表示装置
(51)【国際特許分類】
C01G 25/02 20060101AFI20240925BHJP
C08K 9/06 20060101ALI20240925BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240925BHJP
C09C 1/00 20060101ALI20240925BHJP
C09C 3/08 20060101ALI20240925BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20240925BHJP
【FI】
C01G25/02
C08K9/06
C08L83/04
C09C1/00
C09C3/08
H01L33/56
(21)【出願番号】P 2020165846
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智海
(72)【発明者】
【氏名】武田 怜
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175804(JP,A)
【文献】特開2020-002306(JP,A)
【文献】特開2020-125427(JP,A)
【文献】特開2013-133430(JP,A)
【文献】国際公開第2016/208640(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00-47/00
C01G 49/00-99/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C09C 1/00-3/12
C09D 15/00-17/00
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン化合物とシリコーン化合物により表面修飾された金属酸化物粒子と、溶媒と、を含む分散液であって、
前記シラン化合物はメチル基を含み、
前記シリコーン化合物は、
芳香族炭化水素基を含み、
前記
芳香族炭化水素基に対する前記メチル基のモル比率(メチル基/
芳香族炭化水素基)が0.01以上10以下であり、
前記分散液を真空乾燥により乾燥して得られる前記金属酸化物粒子について、フーリエ変換式赤外分光光度計により800cm
-1以上3800cm
-1以下の波数の範囲の透過スペクトルを測定し、当該範囲におけるスペクトルの最大値を100、最小値を0となるようにスペクトルの値を規格化した場合に、下記の式(1)を満足する、分散液。
IA/IB≦3.5 (1)
(式中、「IA」は、3500cm
-1におけるスペクトル値、「IB」は、1100cm
-1におけるスペクトル値をそれぞれ示す。)
【請求項2】
前記金属酸化物粒子に対するシラン化合物とシリコーン化合物の合計の含有量が190質量%以上1000質量%以下である、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
請求項1または2に記載の分散液とシリコーン樹脂成分との混合物である、組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物の硬化物である、封止部材。
【請求項5】
請求項4に記載の封止部材と、前記封止部材により封止された発光素子と、を備える発光装置。
【請求項6】
請求項5に記載の発光装置を備える、照明器具。
【請求項7】
請求項5に記載の発光装置を備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラン化合物およびシリコーン化合物で表面修飾された金属酸化物粒子を含む分散液、組成物、封止部材、発光装置、照明器具および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型、長寿命化、低電圧駆動等の長所を有する光源として、発光ダイオード(LED)が広く用いられている。LEDパッケージ中のLEDチップは、一般に、酸素、水分等の外部環境に存在する劣化因子との接触を防止するために、樹脂を含む封止材料で封止されている。したがって、LEDチップにおいて発した光は、封止材料を透過して外部に向かって出射される。そのため、LEDパッケージから放出される光束を増大させるためには、LEDチップにおいて放出された光をLEDパッケージ外部に効率よく取り出すことが重要となる。
【0003】
LEDチップから放出された光の取り出し効率を向上させるための封止材料としては、アルケニル基、H-Si基およびアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含む表面修飾材料によって表面修飾された金属酸化物粒子と、マトリックス樹脂組成物とを含有してなる光散乱複合体形成用組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この光散乱複合体形成用組成物では、透明性が比較的維持された状態で、シリコーン樹脂に、金属酸化物粒子を含む分散液が混合されている。金属酸化物粒子としては、分散粒子径が小さく、かつ屈折率が高いものが用いられている。これにより、光散乱複合体形成用組成物を硬化して得られる光散乱複合体は、光透過性の低下が抑制されており、かつ、光散乱性が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、LEDの封止材料として使用されるシリコーン樹脂は、炭化水素基であるメチル基とフェニル基を含有していることが一般的であり、用途によって官能基の比率が調整されている。例えば、照明用途では、LEDチップからの光取り出し量を増やすため、屈折率の高いフェニル基を多く含む構造となっている。一方、車載用途では、高出力LEDによるシリコーン封止樹脂の劣化を抑制するために、耐熱性の高いメチル基を多く含む構造となっている。
そのため、シリコーン封止樹脂の品種毎や用途毎に金属酸化物粒子表面の修飾設計が必要であった。
【0007】
また、近年、LEDの高寿命化のために、耐熱性の高いメチル基を多く含むメチル系シリコーン樹脂の需要が高まっている。メチル系シリコーン樹脂は、従来、一般的に使用されていたフェニル系シリコーン樹脂等と比較して、メチル基の含有量が大きく、疎水性の度合いが大きい。そのため、特許文献1に記載されている発明のように、表面が疎水化された金属酸化物粒子であっても、メチル系シリコーン樹脂と混合した場合に、金属酸化物粒子同士が凝集して、透明な組成物が得られないという課題があった。
【0008】
上記のような課題を解決するために、シラン化合物に金属酸化物粒子を直接分散させて一次修飾した後、シリコーン化合物を二次修飾することによって、メチル系シリコーン樹脂に分散できる表面修飾された金属酸化物粒子を得る方法が検討されている。以下、「表面修飾された金属酸化物粒子」を「表面修飾金属酸化物粒子」と略記する場合がある。
【0009】
しかしながら、上記の方法で得られた表面修飾金属酸化物粒子は、フェニル基を多く含むフェニル系シリコーン樹脂に分散させることができなかった。
そのため、メチル系シリコーン樹脂にもフェニル系シリコーン樹脂にも分散することができる表面修飾金属酸化物粒子が求められていた。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、メチル系シリコーン樹脂であっても、フェニル系シリコーン樹脂であっても、分散することが可能な表面修飾金属酸化物粒子を含む分散液、該分散液を含有する組成物、該組成物を用いて形成される封止部材、該封止部材を有する発光装置、該発光装置を備えた照明器具および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、シラン化合物とシリコーン化合物により表面修飾された金属酸化物粒子と、溶媒と、を含む分散液であって、上記シラン化合物はメチル基を含み、上記シリコーン化合物は芳香族炭化水素基を含み、上記芳香族炭化水素基に対する前記メチル基のモル比率(メチル基/芳香族炭化水素基)が0.01以上10以下であり、
上記分散液を真空乾燥により乾燥して得られる上記金属酸化物粒子について、フーリエ変換式赤外分光光度計により800cm-1以上3800cm-1以下の波数の範囲の透過スペクトルを測定し、当該範囲におけるスペクトルの最大値を100、最小値を0となるようにスペクトルの値を規格化した場合に、下記の式(1)を満足する、分散液を提供する。
IA/IB≦3.5 (1)
(式中、「IA」は、3500cm-1におけるスペクトル値、「IB」は、1100cm-1におけるスペクトル値をそれぞれ示す。)
【0012】
本発明の一態様においては、上記金属酸化物粒子に対するシラン化合物とシリコーン化合物の合計の含有量が190質量%以上1000質量%以下であってもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、上記分散液と、シリコーン樹脂成分と、を含む、組成物を提供する。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、上記組成物の硬化物である、封止部材を提供する。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、上記封止部材と、上記封止部材により封止された発光素子と、を備える発光装置を提供する。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、上記発光装置を備える、照明器具を提供する。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、上記発光装置を備える、表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、メチル系シリコーン樹脂であっても、フェニル系シリコーン樹脂であっても、分散することが可能な表面修飾金属酸化物粒子を含む分散液、該分散液を含有する組成物、該組成物を用いて形成される封止部材、該封止部材を有する発光装置、該発光装置を備えた照明器具および表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る発光装置の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る発光装置の他の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る発光装置の他の一例を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る発光装置の他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の分散液、該分散液を含有する組成物、該組成物を用いて形成される封止部材、該封止部材を有する発光装置、該発光装置を備えた照明器具および表示装置の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0021】
<1.本発明者等の着想>
まず、本発明の詳細な説明に先立ち、本発明者等による本発明に至るまでの着想について説明する。
【0022】
一般に、封止部材の原料となる封止材料(組成物)の製造において、金属酸化物粒子は、表面修飾材料により修飾され、シリコーン樹脂等の樹脂に分散される。しかしながら、メチル系シリコーン樹脂は、従来、一般的に使用されていたフェニル系シリコーン樹脂等と比較して、メチル基の含有量が大きく、疎水性の度合いが大きい。そのため、上述したように表面修飾材料により修飾した場合であっても、金属酸化物粒子は、メチル系シリコーン樹脂中に均一に分散することが困難であった。
【0023】
そこで、本発明者等は、問題を解決すべく鋭意検討した結果、単純に表面修飾材料の使用量を増加させても金属酸化物粒子のメチル系シリコーン樹脂への分散性は大きくは向上しないことを知見した。
【0024】
この結果を受け、本発明者等はさらに検討を行い、金属酸化物粒子の表面における表面修飾材料の修飾状態について着目した。すなわち、仮に多量の表面修飾材料を使用して金属酸化物粒子を修飾した場合であっても、金属酸化物粒子の表面に少量しか表面修飾材料が付着していない場合、金属酸化物粒子の表面は充分には疎水化されない。一方、仮に少量の表面修飾材料を使用して金属酸化物粒子を修飾した場合であっても、表面修飾材料の金属酸化物粒子の表面への付着割合が高く、金属酸化物粒子の表面に多量に表面修飾材料が付着している場合、金属酸化物粒子の表面は充分に疎水化される。
【0025】
そして、本発明者等は、表面修飾材料としてシラン化合物やシリコーン化合物を用いている場合において上記のような金属酸化物粒子への表面修飾材料の付着の度合いがフーリエ変換式赤外分光光度計(FT-IR)により測定・観察できることを見出した。そして、シラン化合物とシリコーン化合物で、後述する方法で金属酸化物粒子を表面修飾すれば、従来、分散させることが困難であったメチル系シリコーン樹脂に分散できることを見出した。さらに、メチル基を含むシラン化合物と、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物で、上記炭化水素基に対する上記メチル基のモル比率を0.01以上10以下となる比率で金属酸化物粒子を表面修飾することにより、メチル系シリコーン樹脂であっても、フェニル系シリコーン樹脂であっても分散が可能な表面修飾金属酸化物粒子が得られることも見出した。
【0026】
<2.分散液>
本実施形態に係る分散液について説明する。
本実施形態に係る分散液は、シラン化合物とシリコーン化合物により表面修飾された金属酸化物粒子と、溶媒と、を含み、上記シラン化合物はメチル基を含み、上記シリコーン化合物は炭素数が2以上の炭化水素基を含み、上記炭化水素基に対する上記メチル基の比率(メチル基/炭化水素基)が0.01以上10以下である。
そして、本実施形態においては、上記分散液を真空乾燥により乾燥して得られる上記金属酸化物粒子について、フーリエ変換式赤外分光光度計により800cm-1以上3800cm-1以下の波数の範囲の透過スペクトルを測定し、当該範囲におけるスペクトルの最大値を100、最小値を0となるようにスペクトルの値を規格化した場合に、下記の式(1)を満足する。
IA/IB≦3.5 (1)
(式中、「IA」は、3500cm-1におけるスペクトル値、「IB」は、1100c
m-1におけるスペクトル値をそれぞれ示す。)
以上の条件を満足することにより、本実施形態に係る分散液は、メチル系シリコーン樹脂にもフェニル系シリコーン樹脂にも分散することができる。
【0027】
詳しく説明すると、フーリエ変換式赤外分光光度計により測定される透過スペクトルのうち、波数1100cm-1の位置は、シロキサン結合(Si-O-Si結合)に帰属し、波数3500cm-1の位置は、シラノール基(Si-OH基)に帰属する。シラン化合物およびシリコーン化合物は、それぞれ、Si-O-Si結合を形成可能なSi-OH基や、Si-OH基を形成可能な基を含む。したがって、3500cm-1におけるスペクトル値(IA)と、1100cm-1におけるスペクトル値(IB)とを比較することにより、シラン化合物およびシリコーン化合物のSi-OHや、Si-OH基を形成可能な基の反応度合いを観察することが可能となる。
【0028】
そして、本発明者等は、IA/IBが3.5以下であることにより、シラン化合物が金属酸化物粒子の表面に充分に付着していることを見出した。これにより、金属酸化物粒子は、メチル系シリコーン樹脂と混合した際において、凝集することなく、メチル系シリコーン樹脂中に分散することが可能となる。
【0029】
これに対して、IA/IBが3.5を超える場合、シラン化合物およびシリコーン化合物が金属酸化物粒子の表面に充分には付着しておらず、金属酸化物粒子のメチル系シリコーン樹脂中の分散性を優れたものとすることができない。この結果、分散液とメチル系シリコーン樹脂とを混合した際に、金属酸化物粒子の凝集が生じ、得られる組成物に濁りが生じてしまう。IA/IBは、上述したように3.5以下であるが、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。
【0030】
また、IA/IBの下限値は、IA=0が好ましいため、0である。しかし、シラノール基(Si-OH基)が少量残存していてもメチル系シリコーン樹脂に混合することはできるため、IA/IBの下限値は0であってもよく、0.1であってもよく、0.5であってもよく、1.0であってもよく、1.5であってもよい。
【0031】
なお、金属酸化物粒子のフーリエ変換式赤外分光光度計(FT-IR)による透過スペクトルの測定は、具体的には以下のように行うことができる。
本実施形態の分散液を真空乾燥で乾燥する。乾燥条件は分散液の量と濃度により適宜調整すればよい。例えば、固形分が30質量%の分散液10gであれば、100℃、20hPa以下で2時間以上乾燥すればよい。真空乾燥機としては、EYELA東京理科器械株式会社製のVACUUM OVEN VOS-201SDを用いることができる。
次いで、乾燥により得られた金属酸化物粒子0.01g~0.05gを用いることにより、フーリエ変換式赤外分光光度計(例えば、日本分光株式会社製、型番:FT/IR-670 Plus)で測定することができる。
【0032】
しかし、IA/IBが3.5以下である表面修飾金属酸化物粒子は、フェニル系シリコーン樹脂に分散することが困難であった。
そこで、本発明者等はさらなる検討を行い、上記炭化水素基に対する上記メチル基のモル比率を0.01以上10以下となるように表面修飾することで、メチル系シリコーン樹脂であっても、フェニル系シリコーン樹脂であっても分散が可能な表面修飾金属酸化物粒子が得られることを知得した。
メチル系シリコーン樹脂に分散させるためには、メチル基を含むシラン化合物中での表面修飾が必須となる。このような方法で表面修飾された金属酸化物粒子はLED用シリコーン樹脂に含まれるフェニル基との親和性に劣る。また、シリコーン化合物はシラン化合物よりもシリコーン樹脂に対する親和性が高い。そのため、メチル基よりもフェニル基に対する親和性が高い炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物で表面処理するにより、メチル系シリコーン樹脂であっても、フェニル系シリコーン樹脂であっても、分散することが可能な汎用性の高い表面修飾金属酸化物粒子が得られると推測される。
【0033】
メチル系シリコーン樹脂に分散できるような表面修飾金属酸化物粒子は、メチル基との親和性を高めているため、フェニル系シリコーン樹脂に分散させることは難しいと本発明者等は考えていた。そのため、メチル基と炭素数が2以上の炭化水素基のモル比率を調整することで、メチル系シリコーン樹脂にもフェニル系シリコーン樹脂にも分散することができる、汎用性の高い表面修飾金属酸化物粒子が得られるとの結果は予想外であった。
【0034】
本実施形態において、上記炭化水素基に対する上記メチル基のモル比率(メチル基/炭化水素基)は0.01以上10以下であり、0.03以上8以下であることが好ましく、0.05以上5以下であることがより好ましく、0.1以上3以下であることがさらに好ましい。
上記のモル比率が0.01以上10以下であることにより、メチル系シリコーン樹脂であっても、フェニル系シリコーン樹脂であっても、金属酸化物粒子を透明に分散することが可能となる。メチル基/炭化水素基のモル比率が0.01未満の場合、メチル基が少な過ぎて、メチル系シリコーン樹脂に分散させることができない。一方、メチル基/炭化水素基のモル比率が10を超えると、フェニル系シリコーン樹脂に分散させることができない。
【0035】
メチル基と炭素数が2以上の炭化水素基のモル比率は、NMR(核磁気共鳴分光法)で、以下の方法で測定したものを意味する。すなわち、表面修飾された金属酸化物粒子に含まれるメチル基と炭素数が2以上の炭化水素基のモル比率を意味する。そのため、実質的には、シラン化合物とシリコーン化合物に含まれるメチル基と炭素数が2以上の炭化水素基のモル比率を意味する。
固形分が30質量%に調整された分散液15gと、メタノール15gとを混合し、表面修飾金属酸化物粒子を沈殿させる。この混合液を遠心分離機で固液分離し、固体部分(表面修飾金属酸化物粒子)を回収する。回収した表面修飾金属酸化物粒子を数mg採取し、重クロロホルムに1質量%となるように溶解させる。この溶解液を用いて、卓上型NMR装置(Nanalysis社製、型番NMReady60Pro(1H/19F))を用いて、炭素数が2以上の炭化水素基とメチル基の1H-液体NMRスペクトルを測定する。得られたスペクトルから炭素数が2以上の炭化水素基とメチル基のスペクトル面積(積分値)を算出し、メチル基の積分値/炭素数が2以上の炭化水素基の積分値を算出する。これにより、炭素数が2以上の炭化水素基に対するメチル基のモル比率を算出することができる。
なお、分散液の固形分は30質量%である必要はなく、NMRで測定するのに必要な量を採取できればよい。
【0036】
(2.1金属酸化物粒子)
金属酸化物粒子は、後述する封止部材中において発光素子から放出される光を散乱させる。また、金属酸化物粒子は、その種類によっては封止部材の屈折率を向上させる。これらにより、金属酸化物粒子は、発光装置において光の明るさの向上に寄与する。
【0037】
金属酸化物粒子としては、特に限定されない。本実施形態において、金属酸化物粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化鉄粒子、酸化銅粒子、酸化スズ粒子、酸化セリウム粒子、酸化タンタル粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タングステン粒子、酸化ユーロピウム粒子、酸化イットリウム粒子、酸化モリブデン粒子、酸化インジウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化ゲルマニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化ビスマス粒子、および酸化ハフニウム粒子並びにチタン酸カリウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、ニオブ酸カリウム粒子、ニオブ酸リチウム粒子、タングステン酸カルシウム粒子、イットリア安定化ジルコニア粒子、アルミナ安定化ジルコニア粒子、カルシア安定化ジルコニア粒子、マグネシア安定化ジルコニア粒子、スカンジア安定化ジルコニア粒子、ハフニア安定化ジルコニア粒子、イッテルビア安定化ジルコニア粒子、セリア安定化ジルコニア粒子、インジア安定化ジルコニア粒子、ストロンチウム安定化ジルコニア粒子、酸化サマリウム安定化ジルコニア粒子、酸化ガドリニウム安定化ジルコニア粒子、アンチモン添加酸化スズ粒子、およびインジウム添加酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む金属酸化物粒子が好適に用いられる。
【0038】
上述した中でも、透明性や封止樹脂(樹脂成分)との相溶性(親和性)を向上させる観点から、金属酸化物粒子としては、酸化ジルコニウム粒子および酸化チタン粒子からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、金属酸化物粒子は、封止部材の屈折率を向上させる観点から、屈折率が1.7以上であることが好ましい。
【0039】
金属酸化物粒子は、より好ましくは酸化ジルコニウム粒子および酸化チタン粒子の少なくとも一方であり、特に好ましくは、酸化ジルコニウム粒子である。
【0040】
金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、1nm以上200nm以下であることが好ましく、3nm以上150nm以下であることがより好ましく、10nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。金属酸化物粒子の平均一次粒子径が上記範囲であることにより、封止部材の透明性の低下を抑制することができる。この結果、発光装置の光の明るさをより一層向上させることができる。
【0041】
金属酸化物粒子の平均一次粒子径の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡での観察により行うことができる。まず、透過型電子顕微鏡により、無機酸化物粒子を観察し、透過型電子顕微鏡画像を得る。次いで、透過型電子顕微鏡画像中の無機酸化物粒子を所定数、例えば、100個を選び出す。そして、これらの無機酸化物粒子各々の最長の直線分(最大長径)を測定し、これらの測定値を算術平均して求める。
【0042】
ここで、金属酸化物粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している金属酸化物粒子の粒子(一次粒子)の最大長径を所定数測定し、平均一次粒子径とする。
【0043】
本実施形態の分散液における金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、特に限定されないが、例えば、10nm以上300nm以下であり、20nm以上250nm以下であることが好ましく、30nm以上200nm以下であることがより好ましい。金属酸化物粒子の平均分散粒子径が10nm以上であることにより、この分散液を用いて製造される後述する発光装置の光の明るさが向上する。また、金属酸化物粒子の平均分散粒子径が300nm以下であることにより、分散液やこれを用いて製造される後述する組成物、封止部材の光の透過率の低下を抑制することができる。その結果、発光装置の光の明るさが向上する。
【0044】
なお、金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、動的光散乱法により得られる散乱強度分布の累積百分率が50%のときの金属酸化物粒子の粒子径D50であることができ、動的光散乱式の粒度分布計(例えば、HORIBA社製、型番:SZ-100SP)により測定することができる。測定は、固形分を5質量%に調整した分散液を対象として光路長10mm×10mmの石英セルを用いて行うことができる。なお、本明細書において「固形分」とは、分散液において揮発可能な成分を除去した際の残留物をいう。例えば、分散液1.2gを磁性るつぼに入れて、ホットプレートで、150℃で1時間加熱した場合に、揮発せずに残留する成分(金属酸化物粒子や表面修飾材料等)を固形分とすることができる。
【0045】
また、金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、金属酸化物粒子が一次粒子または二次粒子のいずれの状態で分散しているかに関わらず、分散している状態の金属酸化物粒子の径に基づいて測定、算出される。また、本実施形態において、金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子の平均分散粒子径として測定されてもよい。分散液中には、表面修飾材料が付着した金属酸化物粒子と、表面修飾材料が付着していない金属酸化物粒子とが存在し得る。そのため、通常、金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、これらの混合状態における値として測定される。
【0046】
以上説明した金属酸化物粒子の表面には、以下に説明する表面修飾材料が付着している。これにより、当該金属酸化物粒子を用いて製造される分散液中および組成物中において安定して金属酸化物粒子が分散する。
【0047】
(2.2シラン化合物)
本実施形態に係る表面修飾金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子がメチル基を含むシラン化合物により表面修飾されている。
本実施形態におけるシラン化合物は、メチル基/炭化水素基が所定の範囲であれば、メチル基を含むシラン化合物の他に、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物を併用してもよい。また、メチル基や炭素数が2以上の炭化水素基以外の官能基を含むシラン化合物を併用してもよい。
【0048】
金属酸化物粒子により多くのシラン化合物を付着させる観点において、本実施形態では、メチル基を含むシラン化合物で金属酸化物粒子の表面を修飾することは必須となる。しかし、メチル基を含むシラン化合物が金属酸化物粒子の表面に充分に付着すれば、それ以降の表面修飾は、シリコーン樹脂との相溶性を阻害しないか、相溶性を高めるものであれば特に限定されない。LED用のシリコーン樹脂は、炭化水素基であるメチル基とフェニル基を官能基として含むのが一般的である。そのため、本実施形態のシラン化合物は、メチル基を含むシラン化合物で一次修飾および二次修飾を行ってもよく、メチル基を含むシラン化合物で一次修飾を行い、次いで、炭素数が2以上の炭化水素基で二次修飾を行ってもよい。LED用シリコーン樹脂中のフェニル基との相溶性を向上させ、分散液の安定性を向上させる観点においては、メチル基を含むシラン化合物と、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物で金属酸化物粒子の表面が修飾されていることが好ましい。そのため、本実施形態では、シラン化合物はメチル基および炭素数が2以上の炭化水素基を含むことが好ましい。
【0049】
これらシラン化合物は、少なくともその一部が金属酸化物粒子の表面に付着して、当該表面を修飾することにより、金属酸化物粒子の凝集を防止する。さらに、LED用のシリコーン樹脂成分、換言すれば、メチル基とフェニル基を含むシリコーン樹脂成分との相溶性を向上させる。
【0050】
ここで、シラン化合物が金属酸化物粒子に「付着する」とは、シラン化合物が金属酸化物粒子に対し、これらの間の相互作用や反応により接触または結合することをいう。接触としては、例えば、物理吸着が挙げられる。また、結合としては、例えば、イオン結合、水素結合、共有結合等が挙げられる。
【0051】
メチル基を含むシラン化合物としては、金属酸化物粒子の表面に付着できるものであれば特に限定されない。メチル基を含むシラン化合物としては、メチル基とアルコキシ基を含むシラン化合物や、メチル基とH-Si基を含むシラン化合物や、メチル基とアルコキシ基とH-Si基を含むシラン化合物を用いることができる。
メチル基を含むシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。メチル基を含むシラン化合物は、アルコキシ基、特にメトキシ基を含むものが、金属酸化物粒子に付着し易いため好ましい。
【0052】
メチル基とアルコキシ基を含むシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メトキシジメチル(フェニル)シラン、エトキシジメチル(フェニル)シラン、ジメチル(メトキシ)フェニルシラン、およびジメチル(エトキシ)フェニルシランの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
メチル基とH-Si基を含むシラン化合物としては、ジメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、およびメチルフェニルクロロシランの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
メチル基とアルコキシ基とH-Si基を含むシラン化合物としては、例えば、ジエトキシメチルシランやエトキシジメチルシランを用いることができる。
【0053】
上述した中でも、メチル基を含むシラン化合物は、粘度が低く、後述する分散工程における金属酸化物粒子の分散が容易となる観点から、好ましくはメチル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物を含む。
このようなメチル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルコキシ基の数は1以上3以下であることが好ましく、アルコキシ基の数は3であることがより好ましい。アルコキシ基の炭素数は1以上5以下であることが好ましい。
メチル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のメチル基の数は、1以上3以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。
アルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルコキシ基とメチル基の総数は2以上4以下であり、4であることが好ましい。
このようなメチル基を含むシラン化合物は、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、およびメチルトリプロポキシシランからなる群から選択される少なくとも1種を含む。金属酸化物粒子の表面に付着し易い観点から、メチルトリメトキシシランが好ましく、メチルトリエトキシシランが好ましく、メチルトリメトキシシランを用いることがより好ましい。
【0054】
炭素数が2以上の炭化水素基としては、LED用のシリコーン樹脂と相溶し易いものであれば特に限定されない。例えば、炭素数が2以上の脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
炭化水素基の炭素数は、LED用シリコーン樹脂に含まれる官能基の種類に応じて適宜選択すればよい。LED用シリコーン樹脂には、通常メチル基とフェニル基が含まれていることに鑑みれば、上記炭素数は2以上20以下であることが好ましく、3以上16以下であることがより好ましく、4以上12以下であることがさらに好ましく、5以上9以下であることがよりさらに好ましい。
【0055】
脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を用いることができる。鎖式の脂肪族炭化水素基であってもよく、環式の脂肪族炭化水素基であってもよい。アルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を用いることができる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等を用いることができる。アルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等を用いることができる。
【0056】
芳香族炭化水素基としては、アリール基やアラルキル基を用いることができる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル、フェナントリル基等を用いることができる。
アラルキル基としては、例えば、トリチル基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、スチリル基、ベンジリデン基等を用いることができる。
【0057】
上述した中でも、LED用のシリコーン樹脂との相溶性に優れる点において、炭素数が2以上の炭化水素基としては、フェニル基やキシリル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0058】
炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、フェニルジクロロシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルモノメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、およびジフェニルモノエトキシシランの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。これらの中でも、LED用のシリコーン樹脂との相溶性を向上させる調整が容易な点でフェニルトリメトキシシランを用いることが好ましい。
【0059】
分散液中におけるシラン化合物の含有量は、特に限定されないが、金属酸化物粒子に対して、例えば、50質量%以上700質量%以下であることが好ましく、70質量%以上600質量%以下であることがより好ましく、90質量%以500質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、金属酸化物粒子の表面に、シラン化合物を緻密に付着させることができ、金属酸化物粒子の分散安定性を向上させるとともに、メチル系シリコーン樹脂とフェニル系シリコーン樹脂への分散性を向上させることができる。
【0060】
(2.3シリコーン化合物)
炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物は、比較的大きな分子量を有し、後述するシリコーン樹脂成分との親和性向上に寄与する。上記シリコーン化合物は、上記シラン化合物で表面修飾された金属酸化物粒子の表面近傍に存在している。上記シリコーン化合物は、上記シラン化合物で表面修飾された金属酸化物粒子と、後述するシリコーン樹脂成分を媒介する役割も果たしている。そのため、上記シリコーン化合物は、炭素数が2以上の炭化水素基を含み、上記シラン化合物で表面修飾された金属酸化物粒子と、シリコーン樹脂成分と相溶できるものであれば特に限定されない。
【0061】
上記シリコーン化合物は、上記シラン化合物で表面修飾された金属酸化物粒子と、シリコーン樹脂成分との間に存在すればよいため、上記シラン化合物で表面修飾された金属酸化物粒子の表面近傍に存在していればよく、上記シラン化合物で表面修飾された金属酸化物粒子に付着していてもよく、付着していなくてもよい。
すなわち、本実施形態の「シラン化合物とシリコーン化合物により表面修飾された」とは、上記シラン化合物は金属酸化物粒子に付着し、上記シリコーン化合物はシラン化合物が付着した金属酸化物粒子の表面近傍に存在している状態を意味する。
【0062】
LED用シリコーン樹脂は、メチル基とフェニル基を含んでいるため、本実施形態の上記シリコーン化合物は、炭素数が2以上の炭化水素基の他にメチル基を含んでいてもよい。炭素数が2以上の炭化水素基は、上記シラン化合物で説明したのと同じものを使用できる。
また、本実施形態のシリコーン化合物は、炭素数が2以上の炭化水素基を含まない、メチル基を含むシリコーン化合物を併用してもよい。
【0063】
炭素数が2以上炭化水素基を含むシリコーン化合物としては、例えば、アルコキシ基含有フェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルフェニルハイドロジェンシリコーン、ジフェニルハイドロジェンシリコーン、アルコキシ両末端フェニルシリコーン、アルコキシ両末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有フェニルシリコーン等が挙げられる。これらのシリコーン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
炭素数が2以上の炭化水素基を含まない、メチル基を含むシリコーン化合物としては、例えば、ジメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、アルコキシ基含有ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端トリメチル片末端(メチル基片末端)ジメチルシリコーン等が挙げられる。これらのシリコーン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
上記シリコーン化合物は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、レジン(ポリマー)であってもよい。表面修飾が容易であることより、モノマーかオリゴマーを用いることが好ましい。
【0066】
上述した中でも、反応のし易さと疎水性の高さの観点から、上記炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物は、好ましくはアルコキシ基含有フェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルコキシ両末端フェニルシリコーン、アルコキシ両末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーン、およびアルコキシ基含有フェニルシリコーンからなる群から選択される少なくとも1種を含み、より好ましくはメトキシ基含有フェニルシリコーンを含む。
また、反応のし易さの観点から、炭素数が2以上の炭化水素基を含まない、メチル基を含むシリコーン化合物は、好ましくは、ジメチルシリコーン、アルコキシ基含有ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端トリメチル片末端(メチル基片末端)ジメチルシリコーンを含み、より好ましくは、ジメチルシリコーンおよびメトキシ基含有ジメチルシリコーンの群から選択される少なくとも1種を含む。
【0067】
分散液中におけるシリコーン化合物の含有量は、特に限定されないが、金属酸化物粒子に対して、例えば、10質量%以上500質量%以下であることが好ましく、15質量%以上400質量%以下であることがより好ましく、100質量%以上300質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、金属酸化物粒子の表面に、充分な量のシリコーン化合物を付着させることができ、金属酸化物粒子の分散安定性を向上させるとともに、メチル系シリコーン樹脂への分散性を向上させることができる。さらに、遊離したシリコーン化合物の量を減らすことができ、メチル系シリコーン樹脂中とフェニル系シリコーン樹脂中における金属酸化物粒子の不本意な凝集を抑制することができる。
【0068】
また、分散液は、表面修飾材料として上記シラン化合物および上記シリコーン化合物以外の一般的な表面修飾材料や分散剤等を含んでもよい。
【0069】
金属酸化物粒子に対するシラン化合物とシリコーン化合物の合計の含有量は、特に限定されず、例えば、100質量%以上1000質量%以下であることが好ましく、150質量%以上800質量%以下であることがより好ましく、190質量%以上600質量%以下であることがさらに好ましい。シラン化合物とシリコーン化合物の合計の量が上述した範囲内であると、遊離するシラン化合物やシリコーン化合物の量を低減しつつ、金属酸化物粒子の分散性を充分に向上させることができる。
【0070】
(2.4溶媒)
本実施形態に係る分散液は、金属酸化物粒子を分散する溶媒を分散媒として含む。この溶媒は、シラン化合物が付着した金属酸化物粒子を分散させることができ、後述するシリコーン樹脂成分と混合することができるものであれば、特に限定されないが、疎水性溶媒が好ましい。
このような疎水性溶媒としては、例えば、芳香族類、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類等が挙げられる。これらの疎水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上述した中でも、疎水性溶媒は、芳香族類、特に芳香族炭化水素が好ましい。芳香族類は、LED用シリコーン樹脂との相溶性に優れ、これにより得られる組成物の粘度特性の向上および形成される封止部材の品質(透明性、形状等)の向上に資する。
【0072】
このような芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1-フェニルプロパン、イソプロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、2-エチルトルエン、3-エチルトルエン、4-エチルトルエン等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
上述した中でも、分散液の安定性や、後述する組成物製造時における疎水性溶媒媒の除去等における取り扱い性の容易性の観点からは、疎水性溶媒は、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、ベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられ、トルエンがより好ましく用いられる。
【0074】
分散液に含まれる溶媒の含有量は、所望の固形分となるように適宜調整すればよい。溶媒の含有量は、例えば、40質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、分散液と後述する樹脂成分、特にLED用のシリコーン樹脂との混合がより容易となる。
【0075】
本実施形態の分散液は、親水性溶媒を含んでいてもよい。親水性溶媒は、例えば、後述する方法に起因して、分散液中に含まれ得る。このような親水性溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒等が挙げられる。これらの親水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
アルコール系溶媒としては、例えば、炭素数1~4の分岐または直鎖状アルコール化合物およびそのエーテル縮合物が挙げられる。これらのアルコール系溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、第1級アルコール、第2級アルコールおよび第3級アルコールのいずれであってもよい。また、アルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、一価アルコール、二価アルコールおよび三価アルコールのいずれであってもよい。より具体的には、アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、メタンジオール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブチンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール等が挙げられる。
【0077】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
ニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。
【0078】
水と疎水性溶媒双方との親和性に優れ、これらの混和を促進させる観点から、親水性溶媒は、好ましくはアルコール系溶媒を含む。この場合において、アルコール系溶媒を構成するアルコール化合物の炭素数は、1以上3以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましい。
上述した中でも、メタノールおよびエタノール、特にメタノールは、上記のアルコール系溶媒の効果を充分に発現することができるために好適に用いることができる。
【0079】
また、分散液中における親水性溶媒の含有量は、例えば、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。親水性溶媒の含有量は0質量%であってもよい。
【0080】
(2.5その他の成分)
本実施形態に係る分散液は、上述した以外の成分を含んでもよい。例えば、本実施形態に係る分散液は、必要に応じて上述した以外の成分、例えば、分散剤、分散助剤、酸化防止剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の一般的な添加剤等を含んでいてもよい。
また、本実施形態に係る分散液は、後述する方法に起因して含まれ得る成分、例えば、酸、水、アルコール等を含んでもよい。
【0081】
なお、本明細書において、本実施形態に係る分散液は、樹脂成分を含み、硬化により封止部材を形成可能な本実施形態に係る組成物とは区別される。すなわち、本実施形態に係る分散液は、単純に硬化させても封止部材を形成可能な程度には後述する樹脂成分を含まない。より具体的には、本実施形態に係る分散液における、樹脂成分と金属酸化物粒子との質量比率は、樹脂成分:無機酸化物粒子で、0:100~40:60の範囲にあることが好ましく、0:100~20:80の範囲にあることがより好ましい。本実施形態に係る分散液は、さらに好ましくは後述する樹脂成分を本質的に含まず、特に好ましくは後述する樹脂成分を完全に含まない。
【0082】
本実施形態に係る分散液では、所定のシラン化合物により表面修飾された金属酸化物粒子と、溶媒と、を含む分散液であって、上記式(1)を満足する分散液であるため、メチル系シリコーン樹脂にも、フェニル系シリコーン樹脂にも分散することができる。したがって、本実施形態の分散液をメチル系シリコーン樹脂にも分散させた場合であっても、フェニル系シリコーン樹脂に分散させた場合であっても、白濁等の濁りの発生が抑制される。さらに、表面修飾金属酸化物粒子を含むLED用のシリコーン樹脂の粘度変化も抑制される。
【0083】
<3.分散液の製造方法>
次に、本実施形態に係る分散液の製造方法について説明する。
【0084】
本実施形態に係る分散液の製造方法は、メチル基を含むシラン化合物と金属酸化物粒子とを混合して混合液を得る工程Bと、上記混合液中において上記金属酸化物粒子を分散して分散液(第1の分散液)を得る工程Cと、上記金属酸化物粒子を含む分散液に、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物を添加して分散液(第3の分散液)を得る工程Fと、を有する。
【0085】
なお、上記メチル基を含むシラン化合物および上記炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物と上記金属酸化物粒子の合計の含有量は、固形分により評価することもできる。
また、上記メチル基を含むシラン化合物および上記炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物と上記金属酸化物粒子との合計含有量には、後述するシラン化合物の加水分解で発生するアルコールは含まない。すなわち、上記メチル基を含むシラン化合物および上記炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物と上記金属酸化物粒子との合計含有量とは、シラン化合物と、加水分解されたシラン化合物と、シリコーン化合物と、金属酸化物粒子との合計含有量を意味する。なお、上記合計含有量が上記メチル基を含むシラン化合物および上記炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物に表面修飾された金属酸化物粒子の含有量を含めた値であることは言うまでもない。
【0086】
また、本実施形態においては、上記の工程Bに先立ち、メチル基を含むシラン化合物と、水とを混合して、加水分解されたメチル基を含むシラン化合物を含む加水分解液を得る工程A(加水分解工程)を有してもよい。
また、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物でも金属酸化物粒子を表面修飾する場合には、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物も、メチル基を含むシラン化合物同様に、加水分解液を得る工程A(加水分解工程)を有してもよい。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0087】
(工程A(第1の加水分解工程))
第1の加水分解工程では、メチル基を含むシラン化合物と水とを混合して、加水分解されたメチル基を含むシラン化合物を含む加水分解液を得る。このように予めメチル基を含むシラン化合物の少なくとも一部が加水分解した混合液を用いることにより、後述する分散工程Cにおいて金属酸化物粒子にメチル基を含むシラン化合物が付着し易くなる。
【0088】
また、加水分解液中におけるメチル基を含むシラン化合物の含有量は、特に限定されず、加水分解液中の他の成分の残部とすることができるが、例えば、60質量%以上99質量%以下であることが好ましく、70質量%以上97質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上95質量%以下であることがさらに好ましい。
【0089】
なお、第1の加水分解工程において、メチル基を含むシラン化合物以外の表面修飾材料を加水分解液に含有させてもよい。
【0090】
また、第1の加水分解工程において、加水分解液は水を含む。水は、メチル基を含むシラン化合物等の表面修飾材料の加水分解反応の基質となる。
加水分解液中における水の含有量は、特に限定されず、例えば、メチル基を含むシラン化合物の量に対応して適宜設定できる。例えば、加水分解液に添加される水の量が、メチル基を含むシラン化合物1molに対して、0.5mol以上5mol以下であることが好ましく、0.6mol以上3mol以下であることがより好ましく、0.7mol以上2mol以下であることがさらに好ましい。これにより、メチル基を含むシラン化合物の加水分解反応を充分に進行させつつ、過剰量の水により製造される分散液において無機酸化物粒子の凝集が生じることをより確実に防止することができる。
【0091】
あるいは、加水分解液中における水の含有量は、例えば、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0092】
また、加水分解液には、メチル基を含むシラン化合物および水とともに触媒が添加されてもよい。触媒としては、例えば、酸または塩基を用いることができる。
酸は、加水分解液中においてメチル基を含むシラン化合物の加水分解反応を触媒する。一方、塩基は、加水分解されたメチル基を含むシラン化合物と金属酸化物粒子表面の官能基、例えば、水酸基やシラノール基との縮合反応を触媒する。これにより、後述する分散工程(工程C)においてメチル基を含むシラン化合物が金属酸化物粒子に付着し易くなり、金属酸化物粒子の分散安定性が向上する。
【0093】
ここで、上記の「酸」とは、いわゆるブレンステッド-ローリの定義に基づく酸をいい、メチル基を含むシラン化合物等の表面修飾材料の加水分解反応においてプロトンを与える物質をいう。また、上記の「塩基」とは、いわゆるブレンステッド-ローリの定義に基づく塩基をいい、ここでは、メチル基を含むシラン化合物等の加水分解反応およびその後の縮合反応においてプロトンを受容する物質をいう。
【0094】
酸としては、メチル基を含むシラン化合物の加水分解反応においてプロトンを供給可能であれば特に限定されず、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸や酢酸、クエン酸、ギ酸等の有機酸が挙げられる。これらの有機酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
塩基としては、メチル基を含むシラン化合物の加水分解反応においてプロトンを受容可能であれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、アミン等が挙げられる。これらの塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
上述した中でも、触媒としては、酸を用いることが好ましい。酸としては、酸性度の観点から、無機酸が好ましく、また、塩酸がより好ましい。
【0097】
加水分解液中における触媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、10ppm以上1000ppm以下であることが好ましく、20ppm以上800ppm以下であることがより好ましく、30ppm以上600ppm以下であることがさらに好ましい。これにより、メチル基を含むシラン化合物の加水分解を充分に促進させつつ、メチル基を含むシラン化合物の副反応を抑制することができる。
【0098】
また、加水分解液は、親水性溶媒を含んでいてもよい。親水性溶媒は、加水分解液中において、水とシラン化合物の混和を促進させ、これらのシラン化合物の加水分解反応をより一層促進させる。
【0099】
このような親水性溶媒としては、例えば、後述する分散液に含まれ得る各種親水性溶媒が挙げられる。
【0100】
上述した中でも、水と疎水性溶媒双方との親和性に優れ、これらの混和を促進させる観点から、親水性溶媒は、好ましくはアルコール系溶媒からなる群から選択される少なくとも1種を含み、より好ましくはメタノールおよびエタノールの少なくとも1種を含む。
【0101】
また、加水分解液中における親水性溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。これにより、加水分解液中におけるシラン化合物および水の含有量を充分に大きくすることができる。また、加水分解液中における親水性溶媒の含有量は、例えば、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。これにより、メチル基を含むシラン化合物と水との混和をより一層促進することができ、この結果、メチル基を含むシラン化合物の加水分解反応を効率よく進行させることができる。なお、加水分解液中において、加水分解反応由来の化合物を除く親水性溶媒が含まれなくてもよい。
【0102】
加水分解工程では、加水分解液を調製後、一定の温度で所定の時間保持してもよい。これにより、シラン化合物の加水分解をより一層促進させることができる。
この処理において、加水分解液の温度は、特に限定されず、シラン化合物の種類によって適宜変更できるが、例えば、5℃以上65℃以下であることが好ましく、30℃以上60℃以下であることがより好ましい。
【0103】
また、保持時間は、特に限定されないが、例えば、10分以上180分以下であることが好ましく、30分以上120分以下であることがより好ましい。
なお、上記の加水分解液の保持において、加水分解液を適宜撹拌してもよい。
【0104】
(工程A(第2の加水分解工程))
炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物でも金属酸化物粒子を表面修飾する場合には、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物の加水分解液を得る第2の加水分解工程を行ってもよい。
第2の加水分解工程では、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物と水とを混合して、加水分解された炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物を含む加水分解液を得る。このように予め炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物の少なくとも一部が加水分解した混合液を用いることにより、後述する添加工程Fにおいて金属酸化物粒子に炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物が付着し易くなる。
第2の加水分解工程では、第1の加水分解工程におけるメチル基を含むシラン化合物を、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物に替えて、同様に行うことができる。
【0105】
(工程B(混合工程))
混合工程では、メチル基を含むシラン化合物と金属酸化物粒子とを混合して混合液を得る。混合工程では、メチル基を含むシラン化合物と金属酸化物粒子の他に、水や触媒を混合してもよい。なお、上述した第1の加水分解工程により加水分解液を得ている場合、加水分解液と金属酸化物粒子とを混合することにより、混合液が得られる。
【0106】
そして、混合液中における金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、メチル基を含むシラン化合物と無機酸化物粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下であるように、混合が行われる。
【0107】
このように、本実施形態においては、混合液中のメチル基を含むシラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量が非常に大きい。そして、従来、必須であると考えられていた有機溶媒、水等の分散媒は、混合液中に含まれないか、あるいは非常に少量のみ混合される。あるいは、加水分解により、不可避的なアルコール化合物が少量含まれる程度である。このような場合であっても、分散工程を経ることにより、混合液中において、金属酸化物粒子の均一な分散が可能であるとともに、メチル基を含むシラン化合物の金属酸化物粒子への均一な付着(表面修飾)が達成される。
【0108】
詳しく説明すると、一般に金属酸化物粒子を液相中にてシラン化合物等の表面修飾材料により表面修飾する場合には、金属酸化物粒子と表面修飾材料のみならず分散媒を混合して混合液を得、当該混合液について分散機を用いて分散処理することが一般的である。ここで、このような表面修飾された金属酸化物粒子は、メチル系シリコーン樹脂と混合した際に、充分に当該メチル系シリコーン樹脂中に分散できず凝集してしまい、結果として、メチル系シリコーン樹脂に白濁等の濁りが生じる問題がある。このような場合、添加される無機酸化物粒子は、目的とする性能が充分に発揮されない。
【0109】
メチル基を含むシラン化合物は、低分子であり、粘度が比較的小さい。さらに、上述した加水分解工程において加水分解されていることにより、金属酸化物粒子への付着性が良好である。このため、メチル基を含むシラン化合物は、高濃度のシラン化合物中での金属酸化物粒子の分散に極めて好適である。
【0110】
メチル基を含むシラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量が65質量%未満である場合、上記2成分以外の成分、例えば、分散媒が多くなり過ぎ、後述する分散工程(工程C)においてメチル基を含むシラン化合物を充分に金属酸化物粒子の表面に付着させることができない。その結果、金属酸化物粒子表面に水酸基が多く残存し、得られる分散液を疎水性の材料と混合した際に、金属酸化物粒子が凝集してしまい、疎水性の材料に濁りが生じてしまう。メチル基を含むシラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量は、65質量%以上であればよいが、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。
【0111】
これに対して、メチル基を含むシラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量が98質量%を超えると、混合液の粘度が高くなり過ぎて、後述する分散工程(工程C)においてメチル基を含むシラン化合物を充分に金属酸化物粒子の表面に付着させることができない。メチル基を含むシラン化合物と金属酸化物粒子との合計の含有量は、98質量%以下であればよいが、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
【0112】
また、上述したように、混合液中における金属酸化物粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下である。これにより、金属酸化物粒子に対するメチル基を含むシラン化合物の量を適切な範囲内とすることができ、金属酸化物粒子の表面に均一にメチル基を含むシラン化合物を付着させることができるとともに、混合液の粘度の上昇を抑制することができる。
【0113】
これに対して、混合液中における金属酸化物粒子の含有量が10質量%未満である場合、金属酸化物粒子に対してメチル基を含むシラン化合物の量が過剰となり、得られる分散液において過剰のメチル基を含むシラン化合物が金属酸化物粒子の凝集を誘発する。混合液中における金属酸化物粒子の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
【0114】
また、金属酸化物粒子の含有量が49質量%を超えると、金属酸化物粒子に対してメチル基を含むシラン化合物の量が不足し、金属酸化物粒子に充分な量のメチル基を含むシラン化合物が付着しない。また、金属酸化物粒子の含有量が多くなり過ぎる結果、混合液の粘度が大きくなり過ぎ、後述する分散工程(工程C)において、金属酸化物粒子を充分に分散できない。混合液中における金属酸化物粒子の含有量は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0115】
混合液中における金属酸化物粒子の含有量に対するメチル基を含むシラン化合物の含有量は、特に限定されないが、例えば、100質量%以上800質量%以下であることが好ましく、140質量%以上600質量%以下であることがより好ましく、180質量%以上400質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、金属酸化物粒子に対するメチル基を含むシラン化合物の量を適切な範囲内とすることができ、金属酸化物粒子の表面に均一にメチル基を含むシラン化合物を付着させることができる。
【0116】
また、混合工程では、混合液にさらに有機溶媒を混合してもよい。混合液に有機溶媒を混合することにより、シラン化合物の反応性を制御することが可能となり、金属酸化物粒子表面へのシラン化合物の付着の程度を制御することが可能となる。さらに、有機溶媒により、混合液の粘度の調節が可能となる。
【0117】
このような有機溶媒としては、上述した本実施形態に係る分散液の分散媒として挙げた疎水性溶媒や親水性溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
混合液中における有機溶媒の含有量は、上述した金属酸化物粒子およびメチル基を含むシラン化合物の含有量を満足するものであれば特に限定されない。なお、混合液中に有機溶媒が含まれなくてもよいことはいうまでもない。
【0119】
(工程C(分散工程))
分散工程では、混合工程で得た混合液中において金属酸化物粒子を分散して、金属酸化物粒子が分散した第1の分散液を得る。本実施形態において、金属酸化物粒子は、加水分解された高濃度のメチル基を含むシラン化合物中において分散される。したがって、得られる第1の分散液においては、金属酸化物粒子の表面に比較的均一にメチル基を含むシラン化合物が付着しており、かつ、金属酸化物粒子が比較的均一に分散した、第1の分散液を得る。
【0120】
金属酸化物粒子の分散は、公知の分散機により行うことができる。分散機としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、ディスパー、撹拌機等が好適に用いられる。
【0121】
ここで、分散工程では、分散液中における金属酸化物粒子の粒子径(分散粒子径)がほぼ均一となるように、過剰なエネルギーは付与せず、必要最低限のエネルギーを付与して、混合液中において金属酸化物粒子を分散させることが好ましい。
【0122】
また、分散工程の後、第1の分散液に、疎水性溶媒を添加して、第2の分散液を得る溶媒添加工程D(第1の添加工程)を有していてもよい。
疎水性溶媒としては、前述した本実施形態に係る分散液の分散媒として挙げた疎水性溶媒が挙げられる。これらの疎水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
(工程D(第1の添加工程))
第1の添加工程では、上記第1の分散液に疎水性溶媒を添加し、所望の固形分(濃度)に調整された第2の分散液を得る。
分散工程Cで得られた第1の分散液は、固形分(濃度)が高いため、粘度が高く、ハンドリング性が悪い。しかし、固形分を低くするために、得られた第1の分散液に疎水性溶媒を添加すると、粒子表面の疎水性が低いため、粒子が凝集してしまい、均一な分散液が得られない。
【0124】
そこで、本発明者等は、得られた第1の分散液を加熱し、疎水性溶媒を徐々に添加することで、固形分の低い分散液に調整できることも見出した。
【0125】
そのメカニズムは以下のように推測される。
第1の分散液を加熱することにより、金属酸化物粒子に付着したメチル基を含むシラン化合物の重合が進行し、粒子表面の疎水性が向上する。重合反応が進行し過ぎても金属酸化物粒子は凝集する。そのため、重合反応が進行中の第1の分散液に疎水性溶媒を徐々に添加することにより、過剰な重合反応を抑制しつつ、表面が徐々に疎水化される。これにより、第1の分散液に、疎水性の溶媒を徐々に混合することができる。
すなわち、金属酸化物粒子が凝集しない程度の量の疎水性溶媒を添加し、添加した量の疎水性溶媒と相溶できる程度に、メチル基を含むシラン化合物の重合反応を進行させることにより、所望の固形分に調整された分散液を得ることができる。
【0126】
上述の通り、疎水性溶媒は、金属酸化物粒子が凝集しないように、徐々に添加すればよい。そのため、第1の分散液を加熱してから溶媒を添加してもよく、疎水性溶媒を添加してから第1の分散液を加熱してもよく、第1の分散液の加熱と疎水性溶媒の添加を同時に行ってもよい。
すなわち、第1の添加工程は、上記の第1の分散液を加熱した後に、疎水性溶媒を上記の金属酸化物粒子が凝集しない速度で加える工程d1であってもよく、上記の第1の分散液を加熱しながら、疎水性溶媒を上記の金属酸化物粒子が凝集しない速度で加える工程d2であってもよく、または、疎水性溶媒を上記の金属酸化物粒子が凝集しない速度で加えた後に、上記の第1の分散液を加熱する工程d3であってもよい。
【0127】
金属酸化物粒子が凝集しない速度は、特に限定されない。例えば、1時間で3質量%以上20質量%以下の範囲で固形分が低くなるような速度で連続的に疎水性溶媒を添加すればよい。加熱温度が高い場合には疎水性溶媒の添加量を多くし、加熱温度が低い場合には疎水性溶媒の添加量を少なくするように、疎水性溶媒の添加量を適宜調整すればよい。
【0128】
例えば、30分毎、1時間毎、または2時間毎に、3質量%以上20質量%以下の範囲で固形分が低くなるように、疎水性溶媒を段階的に添加すればよい。加熱温度が高い場合には一度に添加する疎水性溶媒の添加量を多めにし、加熱温度が低い場合には一度に添加する疎水性溶媒の添加量を少なくするように、疎水性溶媒の添加量を適宜調整すればよい。
【0129】
加熱温度は、メチル基を含むシラン化合物の重合反応が進行する温度であれば特に限定されない。加熱温度は、例えば、35℃以上80℃以下であることが好ましい。加熱温度が35℃以上であることにより、メチル基を含むシラン化合物の重合反応を進行させることができる。一方、加熱温度が80℃以下であることにより、メチル基を含むシラン化合物の急激な反応による金属酸化物粒子の凝集を抑制することができる。
【0130】
加熱時間は、固形分の調整が終わるまで適宜実施すればよく、例えば、4時間以上12時間以下であることが好ましい。加熱時間が4時間以上であることにより、メチル基を含むシラン化合物の重合反応が進行し、溶媒と混合することが可能となる。一方、加熱時間が12時間以下であることにより、メチル基を含むシラン化合物の重合反応の進行し過ぎによる金属酸化物粒子の凝集を抑制することができる。
【0131】
疎水性溶媒は、後述する組成物製造時における分散媒の除去等における取り扱い性の容易性の観点から、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレンおよびベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく用いられ、トルエンがより好ましく用いられる。
【0132】
最終的な第2の分散液に含まれる疎水性溶媒の含有量は、所望の固形分となるように適宜調整すればよい。疎水性溶媒の含有量は、例えば、40質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。
第1の添加工程により、所望の固形分に調整された第2の分散液が得られる。第2の分散液を用いることにより、以下の工程における分散液のハンドリング性が向上する。
【0133】
(工程E(除去工程))
本実施形態では、工程Dの後に、加水分解により生じたアルコールを除去する工程Eを設けてもよい。
除去工程を設けることにより、以下に説明する組成物の生産効率が向上すると推測される。
除去する方法は特に限定されないが、例えば、エバポレータを用いることができる。
除去工程は、アルコールが完全に除去されるまで行ってもよく、5質量%程度残存していてもよい。
【0134】
(工程F(第2の添加工程))
第2の添加工程では、第2の分散液に、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物を添加して第3の分散液を得る。上述したように第2の分散液においては、メチル基を含むシラン化合物が金属酸化物粒子の表面に比較的均一に付着している。したがって、シリコーン化合物は、上記メチル基を含むシラン化合物を介して金属酸化物粒子の表面近傍に比較的均一に存在することとなる。
【0135】
第2の添加工程では、第2の分散液に、シリコーン化合物を混合した混合液を所定の温度で所定時間保持してもよい。これにより、シリコーン化合物の金属酸化物粒子への表面修飾をより一層促進させることができる。
【0136】
シリコーン化合物としては、上述したシリコーン化合物が挙げられる。これらのシリコーン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
上記シリコーン化合物は、第2の分散液中におけるシリコーン化合物の含有量が金属酸化物粒子に対して、例えば、好ましくは10質量%以上500質量%以下となるように、第2の分散液に添加することができる。また、上記シラン化合物に含まれるメチル基と、シリコーン化合物中に含まれる炭素数が2以上の炭化水素基の量を勘案して、メチル基/炭素数が2以上の炭化水素基が0.01以上10以下となるようにシリコーン化合物は添加される。これにより、金属酸化物粒子の表面に、充分な量のシリコーン化合物を付着させることができ、金属酸化物粒子の分散安定性を向上させるとともに、LED用シリコーン樹脂への分散性を向上させることができる。さらに、遊離したシリコーン化合物の量を減らすことができ、LED用シリコーン樹脂中における金属酸化物粒子の不本意な凝集を抑制することができる。
【0138】
第2の添加工程では、保持温度は、特に限定されず、シリコーン化合物の種類によって適宜変更できるが、例えば、40℃以上150℃以下であることが好ましく、50℃以上140℃以下であることがより好ましい。
【0139】
また、保持時間は、特に限定されないが、例えば、1時間以上24時間以下であることが好ましく、2時間以上20時間以下であることがより好ましい。
なお、上記の保持において、第3の分散液を適宜撹拌してもよい。
【0140】
また、第2の添加工程では、複数回シリコーン化合物による処理を行ってもよい。例えば、異なる種類のシリコーン化合物を用い、複数回シリコーン化合物による処理を行うことにより、メチル系シリコーン樹脂の種類に合わせた金属酸化物粒子の表面状態の制御がより容易となる。
また、第2の添加工程では、シリコーン化合物による処理後に固形分を測定し、所望の固形分となるように疎水性溶媒を添加してもよい。固形分を小さくすることにより、後述するシリコーン樹脂成分との混合が容易となる。
【0141】
また、第2の添加工程では、メチル基を含むシラン化合物や、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物を添加してもよい。これらのシラン化合物を添加することにより、メチル基/炭化水素基の比率の調整が容易になる。
なお、メチル基を含むシラン化合物や、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物は、上述した第1または第2の加水分解工程により得られる加水分解液を用いてもよい。
【0142】
第2の添加工程でシラン化合物を添加する場合の添加量は、混合工程Bで混合されたメチル基を含むシラン化合物の量も含めて、金属酸化物粒子に対して、例えば、100質量%以上700質量%以下となるように、添加すればよい。
また、第2の添加工程で炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物が添加される場合には、上記シリコーン化合物に含まれる炭化水素基の量も勘案して、炭素数が2以上の炭化水素基に対するメチル基のモル比率が0.01以上10以下となるように添加する。
なお、第2の添加工程では、シラン化合物とシリコーン化合物を同時に添加してもよく、シラン化合物を添加した後にシリコーン化合物を添加してもよく、シリコーン化合物を添加した後にシラン化合物を添加してもよい。
【0143】
以上により、上記メチル基を含むシラン化合物が付着した金属酸化物粒子をシリコーン化合物により表面修飾した第3の分散液を得ることができる。
【0144】
本実施形態に係る表面修飾金属酸化物粒子の製造方法を用いて製造された表面修飾金属酸化物粒子を含む分散液は、金属酸化物粒子の表面がメチル基、またはメチル基および炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物により緻密かつ充分に修飾され、さらに炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物が金属酸化物粒子の表面近傍に存在している。そして、このように表面修飾された表面修飾金属酸化物粒子は、LED用のメチル系シリコーン樹脂ともフェニル系シリコーン樹脂とも相溶性に優れ、双方の樹脂に対して、比較的均一に分散することができる。したがって、メチル系シリコーン樹脂であっても、フェニル系シリコーン樹脂であっても表面修飾金属酸化物粒子を分散させた場合、白濁等の濁りの発生が抑制される。さらに、表面修飾金属酸化物粒子を含むLED用のシリコーン樹脂の粘度変化も抑制される。
【0145】
<4.組成物>
次に、本実施形態に係る組成物について説明する。
本実施形態に係る組成物は、上述した表面修飾金属酸化物粒子を含む分散液と、シリコーン樹脂成分と、を含む。すなわち、本実施形態に係る組成物は、上述した分散液とシリコーン樹脂成分との混合物である。したがって、本実施形態に係る組成物は、上述したメチル基、またはメチル基および炭素数が2以上の炭化水素基を含むシラン化合物により表面修飾された金属酸化物粒子と溶媒に加え、シリコーン樹脂成分を含む。
ここで、シリコーン樹脂成分とは、シリコーン樹脂が硬化する前の流動性を有する状態であることを意味する。
【0146】
本実施形態に係る組成物は、後述するように硬化させて発光素子の封止部材として用いられる。本実施形態に係る組成物は、上述した屈折率と透明性の向上に寄与する金属酸化物粒子を含むことにより、封止部材に用いた際に発光装置の光の明るさを向上させることができる。
【0147】
さらに、本実施形態に係る組成物は、上述したメチル基を含むシラン化合物と、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物が、上記式(1)を満たすほど充分に金属酸化物粒子に付着した表面修飾金属酸化物粒子を含むため、シリコーン樹脂成分が含まれる場合であっても、シリコーン樹脂成分が硬化した後であっても、金属酸化物粒子の凝集が抑制され、透明性の低下が抑制されている。このため、本実施形態に係る組成物を封止部材に用いた際に発光装置の光の明るさを向上させることができる。
【0148】
本実施形態の組成物における、金属酸化物粒子の含有量は、透明性の高い組成物を得る観点においては、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましい。
【0149】
また、メチル基を含むシラン化合物と炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物の含有量は、本実施形態に係る表面修飾金属酸化物粒子における含有量に対応することができる。
【0150】
シリコーン樹脂成分は、本実施形態に係る組成物における主成分である。シリコーン樹脂成分は、本実施形態に係る組成物を封止材料として用いた際において硬化して発光素子を封止することにより、発光素子に水分、酸素等の外部環境からの劣化因子が到達することを防止する。また、本実施形態において、シリコーン樹脂成分より得られる硬化物は、基本的に透明であり、発光素子から放出される光を透過させることができる。
【0151】
シリコーン樹脂成分としては、LEDを封止するためのLED用シリコーン樹脂成分であれば特に限定されない。シリコーン樹脂成分は、メチル基とフェニル基を含むことが好ましい。シリコーン樹脂成分は、メチル系シリコーン樹脂成分であってもよく、フェニル系シリコーン樹脂成分であってもよい。メチル系シリコーン樹脂成分とは、メチル基を多く含むシリコーン樹脂成分を意味する。メチル系シリコーン樹脂成分は、メチル基含有シリコーン樹脂成分であってもよく、メチルフェニルシリコーン樹脂成分であってもよく、ジメチルシリコーン樹脂成分であってもよい。汎用性の高さの観点より、メチルフェニルシリコーン樹脂成分が好ましい。
フェニル系シリコーン樹脂成分とは、フェニル基を多く含むシリコーン樹脂成分を意味する。フェニル系シリコーン樹脂成分は、フェニル基含有シリコーン樹脂成分であってもよく、メチルフェニルシリコーン樹脂成分であってもよく、ジフェニルシリコーン樹脂であってもよい。汎用性の高さの観点より、メチルフェニルシリコーン樹脂成分が好ましい。
【0152】
本実施形態に係る組成物中におけるシリコーン樹脂成分の含有量は、他の成分の残部とすることができるが、例えば、10質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る組成物中におけるシリコーン樹脂成分と表面修飾金属酸化物粒子との質量比は、シリコーン樹脂:表面修飾金属酸化物粒子で、50:50~90:10の範囲にあることが好ましく、60:40~80:20の範囲にあることがより好ましい。
【0153】
本実施形態に係る組成物は、本実施形態に係る分散液由来の溶媒を含んでいてもよく、除去されていてもよい。すなわち、分散液由来の溶媒を完全に除去してもよく、組成物中に1質量%以上10質量%以下程度残存していてもよく、2質量%以上5質量%以下程度残存していてもよい。
【0154】
本実施形態に係る組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、蛍光体粒子を含んでいてもよい。蛍光体粒子は、発光素子から放出される特定の波長の光を吸収し、所定の波長の光を放出する。すなわち、蛍光体粒子により光の波長の変換ひいては色調の調整が可能となる。
【0155】
蛍光体粒子は、後述するような発光装置に使用できるものであれば、特に限定されず、発光装置の発光色が所望の色となるように、適宜選択して用いることができる。
本実施形態の組成物中における蛍光体粒子の含有量は、所望の明るさが得られるように、適宜調整して用いることができる。
【0156】
また、本実施形態に係る組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、防腐剤、重合開始剤、重合禁止剤、硬化触媒、光拡散剤等の、一般的に用いられる添加剤が含有されていてもよい。光拡散剤としては、平均粒子径が1μm以上30μm以下のシリカ粒子を用いることが好ましい。
【0157】
本実施形態に係る組成物は、上述したメチル基を含むシラン化合物と、炭素数が2以上の炭化水素基を含むシリコーン化合物が、上記式(1)を満たすほど充分に金属酸化物粒子に付着した表面修飾金属酸化物粒子を含むため、シリコーン樹脂成分がメチル系シリコーン樹脂であっても、フェニル系シリコーン樹脂であっても、金属酸化物粒子の凝集が抑制され、透明性の低下が抑制されている。このため、本実施形態に係る組成物を用いて、発光装置の光の明るさを向上させる封止部材を形成することができる。
【0158】
<5.組成物の製造方法>
次に、本実施形態に係る組成物の製造方法について説明する。
【0159】
本実施形態に係る組成物の製造方法は、上述の表面修飾金属酸化物粒子の製造方法で得られた第3の分散液にシリコーン樹脂成分を添加して、組成物を得る工程Hを有する。
【0160】
(工程G(第3添加工程))
第3の添加工程では、上記第3の分散液にシリコーン樹脂成分を添加し、組成物を所望の固形分(濃度)に調整する。
【0161】
最終的な組成物に含まれるシリコーン樹脂成分の含有量は、所望の固形分となるように適宜調整すればよい。シリコーン樹脂成分の含有量は、例えば、10質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
第3の添加工程により、所望の固形分に調整された組成物が得られる。
【0162】
(工程H(除去工程))
本実施形態では、工程Gの後に、第3の分散液に含まれる溶媒を除去する工程Hを設けてもよい。
除去する方法は特に限定されないが、例えば、エバポレータを用いることができる。
除去工程は、溶媒が完全に除去されるまで行ってもよく、5質量%程度残存していてもよい。
【0163】
以上により、本実施形態に係る組成物を得ることができる。
【0164】
<6.封止部材>
本実施形態に係る封止部材は、本実施形態に係る組成物の硬化物である。本実施形態に係る封止部材は、通常、発光素子上に配置される封止部材またはその一部として用いられる。
本実施形態に係る封止部材の厚みや形状は、所望の用途や特性に応じて適宜調整することができ、特に限定されるものではない。
【0165】
本実施形態に係る封止部材は、上述したように本実施形態に係る組成物を硬化することにより製造することができる。組成物の硬化方法は、本実施形態に係る組成物中のシリコーン樹脂の特性に応じて選択することができ、例えば、熱硬化や電子線硬化等が挙げられる。より具体的には、本実施形態の組成物中のシリコーン樹脂を付加反応や重合反応により硬化することにより、本実施形態の封止部材が得られる。
【0166】
封止部材中における金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、10nm以上300nm以下であることが好ましく、20nm以上250nm以下であることがより好ましく、30nm以上200nm以下であることがさらに好ましい。
【0167】
なお、封止部材中の金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、封止部材の透過型電子顕微鏡観察(TEM)により測定される、個数分布基準の平均粒子径(メジアン径)である。また、本実施形態に係る封止部材中の金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、封止部材中における金属酸化物粒子の分散粒子径に基づいて測定、算出される値である。平均分散粒子径は、金属酸化物粒子が一次粒子または二次粒子のいずれの状態で分散しているかに関わらず、分散している状態の金属酸化物粒子の径に基づいて測定、算出される。また、本実施形態において、封止部材中の金属酸化物粒子の平均粒子径は、上記シラン化合物およびシリコーン化合物に表面修飾された金属酸化物粒子の平均粒子径として測定されてもよい。封止部材中には、上記シラン化合物およびシリコーン化合物に表面修飾された金属酸化物粒子と、上記シラン化合物がおよびシリコーン化合物に表面修飾されていない金属酸化物粒子とが存在し得るため、通常、封止部材中の金属酸化物粒子の平均粒子径は、これらの混合状態における値として測定される。
【0168】
本実施形態に係る封止部材は、本実施形態に係る組成物の硬化物であるので、屈折率と透明性とに優れている。そのため、本実施形態によれば、発光装置の光の明るさを向上させる取り出し効率に優れる封止部材を得ることができる。
【0169】
<7.発光装置>
次に、本実施形態に係る発光装置について説明する。本実施形態に係る発光装置は、上述した封止部材と、当該封止部材に封止された発光素子とを備える。
【0170】
発光素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)等が挙げられる。特に、本実施形態に係る封止部材は、発光ダイオードの封止に適している。
【0171】
以下、発光素子が、チップ上の発光ダイオード、すなわちLEDチップであり、発光装置がLEDパッケージである例を挙げて、本実施形態に係る発光装置を説明する。
図1~
図4は、それぞれ、本発明の実施形態に係る発光装置の一例を示す模式図(断面図)である。
なお、図中の各部材の大きさは、説明を容易とするため適宜強調されており、実際の寸法、部材間の比率を示すものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0172】
図1に示す発光装置(LEDパッケージ)1Aは、凹部21を有する基板2と、基板2の凹部21の底面上に配置される発光素子(LEDチップ)3と、凹部21において発光素子3を覆うように封止する封止部材4Aとを備えている。
封止部材4Aは、上述した本実施形態に係る封止部材により構成されている。したがって、封止部材4A中においては、上述した本実施形態に係る組成物由来の金属酸化物粒子が分散されており、この結果、発光装置1Aにおける光の取出し効率が向上している。また、封止部材4A内においては、蛍光体粒子5が分散している。蛍光体粒子5は、発光素子3より出射される光の少なくとも一部の波長を変換する。
【0173】
図2に示す発光装置1Bは、封止部材4Bが2層となっている点で発光装置1Aと異なる。すなわち、封止部材4Bは、発光素子3を直接覆う第1の層41Bと、第1の層41Bを覆う第2の層43Bとを有している。第1の層41Bと第2の層43Bとは、共に本実施形態に係る封止部材である。第1の層41B内においては、蛍光体粒子5が分散している。一方、第2の層43Bは、蛍光体粒子5を含まない。発光装置1Bは、封止部材4Bを構成する第1の層41Bおよび第2の層43B内において、上述した本実施形態に係る組成物由来の金属酸化物粒子が分散されていることにより、光の明るさが向上している。
【0174】
図3に示す発光装置1Cも、封止部材4Cの構成が封止部材4Aのものと異なる点で、発光装置1Aと異なっている。封止部材4Cは、発光素子3を直接覆う第1の層41Cと、第1の層41Cを覆う第2の層43Cとを有している。第1の層41Cは、本実施形態に係る封止部材ではなく、上述した金属酸化物粒子を含まない樹脂の封止部材であり、封止部材に用いることのできる樹脂等により構成されている。また、第1の層41C内においては、蛍光体粒子5が分散している。一方、第2の層43Cは、本実施形態に係る封止部材である。発光装置1Cは、封止部材4Cを構成する第2の層43C内において、上述した本実施形態に係る組成物由来の金属酸化物粒子が分散されていることにより、光の取出し効率が向上している。
【0175】
図4に示す発光装置1Dでは、封止部材4Dは、発光素子3を直接覆う第1の層41Dと、第1の層41Dを覆う第2の層43Dと、第2の層43Dをさらに覆う第3の層45Dとを有している。第1の層41Dおよび第2の層43Dは、本実施形態に係る封止部材ではなく、上述した金属酸化物粒子を含まない樹脂の封止部材であり、封止部材に用いることのできる樹脂等により構成されている。また、第2の層43D内においては、蛍光体粒子5が分散している。一方、第3の層45Dは、本実施形態に係る封止部材である。発光装置1Dは、封止部材4Dを構成する第3の層45D内において、上述した本実施形態に係る組成物由来の金属酸化物粒子が分散されていることにより、光の明るさが向上している。
【0176】
なお、本実施形態に係る発光装置は、図示の態様に限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る発光装置は、封止部材中に蛍光体粒子を含まなくてもよい。また、本実施形態に係る封止部材は、封止部材中の任意の位置に存在することができる。
【0177】
以上、本実施形態に係る発光装置は、発光素子が本実施形態の封止部材により封止されているため、光の明るさが向上している。
【0178】
また、本実施形態に係る発光装置は、上述したような本実施形態に係る組成物により発光素子が封止される。したがって、本発明は、一側面において、本実施形態に係る組成物を用いて発光素子を封止する工程を有する発光装置の製造方法にも関する。同側面において、上記製造方法は、本実施形態に係る分散液と樹脂成分とを混合して上記組成物を得る工程を有していてもよい。
【0179】
なお、発光素子の封止は、例えば、ディスペンサー等により、本実施形態に係る組成物を発光素子上に付与し、その後当該組成物を硬化させることにより行うことができる。
【0180】
<8.照明器具、表示装置>
上述したような本実施形態に係る発光装置は、例えば、照明器具および表示装置に用いることができる。したがって、本発明は、一側面において、本実施形態に係る発光装置を備える照明器具または表示装置に関する。
照明器具としては、例えば、室内灯、室外灯等の一般照明装置、携帯電話やOA機器等の、電子機器のスイッチ部の照明等が挙げられる。
本実施形態に係る照明器具は、本実施形態に係る発光装置を備えるため、同一の発光素子を使用しても従来と比較して放出される光束が大きくなり、周囲環境をより明るくすることができる。
【0181】
表示装置としては、例えば、携帯電話、携帯情報端末、電子辞書、デジタルカメラ、コンピュータ、テレビ、およびこれらの周辺機器等が挙げられる。
本実施形態に係る表示装置は、本実施形態に係る発光装置を備えるため、同一の発光素子を使用しても従来と比較して放出される光束が大きくなり、例えば、より鮮明かつ明度の高い表示を行うことができる。
【実施例】
【0182】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
【0183】
[実施例1]
(分散液の作製)
(1)第1の加水分解工程
メチルトリメトキシシラン(製品名:KBM-13、信越工業化学社製)90.78質量部と、水9.21質量部と、塩酸(1N)0.01質量部とを添加して混合し、加水分解液を得た。次いで、この加水分解液を60℃で30分撹拌し、メチルトリメトキシシランの加水分解処理を行い、加水分解液を得た。
【0184】
(2)混合工程
平均一次粒子径が12nmの酸化ジルコニウム(ZrO2)粒子(住友大阪セメント社製)30質量部と、上記加水分解液70質量部とを混合して、混合液を得た。混合液中の酸化ジルコニウム粒子の含有量は30質量%、メチルトリメトキシシランの含有量は63.5質量%、酸化ジルコニウム粒子とメチルトリメトキシシランの合計の含有量は93.5質量%であった。
【0185】
(3)分散工程
この混合液をビーズミルで6時間分散処理した後、ビーズを除去し、第1の分散液を得た。
第1の分散液の固形分(100℃で1時間)を測定した結果、70質量%であった。
【0186】
(4)第1の添加工程
得られた第1の分散液を60℃で2時間加熱した。次いで、固形分が40質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で2時間加熱した。
次いで、固形分が30質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で1時間加熱した。
次いで、固形分が20質量%となるように分散液にトルエンを添加し、60℃で1時間加熱することで、第2の分散液を得た。
【0187】
(FT-IR分析)
第2の分散液の一部を分取し、真空乾燥機で乾燥した。得られた表面修飾酸化ジルコニウム粒子0.01g~0.05gを用いて、フーリエ変換式赤外分光光度計(型番:FT/IR-670 Plus、日本分光株式会社製)で、800cm-1以上3800cm-1以下の波数の範囲の透過スペクトルを測定した。この測定範囲におけるスペクトルの最大値を100、最小値を0となるようにスペクトルの値を規格化し、3500cm-1の値(IA)と1100cm-1の値(IB)を求めた。この結果、IA/IBは7であった。
【0188】
(5)第2の添加工程
トルエンで固形分が15質量%に調整された第2の分散液66.7質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物(商品名:KR213(高フェニル含有)、信越化学工業社製)33.3質量部とを混合し、100℃で3時間撹拌することで、実施例1の分散液(第3の分散液)を得た。
【0189】
(分散液の評価)
(1)FT-IR分析
トルエンで固形分を30質量%に調整した実施例1に係る分散液10gを真空乾燥機(EYELA東京理化器機社製、装置名:VACUUM OVEN VOS-201SD)を用いて、100℃、20hPaの条件下で2時間乾燥した。次いで、得られた金属酸化物粒子0.01g~0.05gを用いて、フーリエ変換式赤外分光光度計(型番:FT/IR-670 Plus、日本分光株式会社製)で、800cm-1以上3800cm-1以下の波数の範囲の透過スペクトルを測定した。この測定範囲におけるスペクトルの最大値を100、最小値を0となるようにスペクトルの値を規格化し、3500cm-1の値(IA)と1100cm-1の値(IB)を求めた。この結果、IA/IBは1.9であった。結果を表1に示す。
【0190】
(2)NMR測定
トルエンで固形分を30質量%に調整した実施例1に係る分散液15gと、メタノール15gとを混合し、表面修飾酸化ジルコニウム粒子を沈殿させた。この混合液を遠心分離機で固液分離し、固体部分(表面修飾酸化ジルコニウム粒子)を回収した。回収後の表面修飾酸化ジルコニウム粒子を数mg採取し、重クロロホルムに1質量%となるように溶解させる。この溶解液を用いて、卓上型NMR装置(Nanalysis社製、型番NMReady60Pro(1H/19F))を用いて、フェニル基とメチル基の1H-液体NMRスペクトルを測定した。得られたスペクトルから、フェニル基とメチル基のピーク面積(積分値)をそれぞれ算出し、メチル基の積分値/フェニル基の積分値を算出することで、フェニル基に対するメチル基のモル比率を算出した。結果を表1に示す。
フェニル基に対するメチル基のモル比率(メチル基/フェニル基)は0.45であった。結果を表1に示す。
【0191】
(組成物Aの作製)
トルエンで固形分を30質量%に調整した実施例1に係る分散液16.7gと、メチル系シリコーン樹脂成分(商品名:KER-2500-A/B、信越化学工業社製)95gとを混合した。次いで、この混合液をエバポレータによりトルエンを除去することで、メチル系シリコーン樹脂成分を含む実施例1に係る組成物Aを得た。
【0192】
得られた組成物Aの粘度を、レオメーター(商品名:レオストレスRS-6000、HAAKE社製)を用い、25℃、剪断速度1(1/s)の条件で測定した。
その結果、組成物Aの粘度Aは、8Pa・sであった。結果を表1に示す。
【0193】
(硬化物Aの作製)
この組成物を、テフロン(登録商標)コートされた1mm厚のSUS容器に、1mm厚となるように充填した。次いで、100℃で2時間加熱した後、150℃で4時間加熱することで、実施例1に係る硬化物Aを得た。容器から取り出した硬化物Aの厚みは約1mmであった。
【0194】
容器から取り出した硬化物Aの透過率を、分光光度計(日本分光社製、型番:V-770)で積分球を用いて測定した。メチル系シリコーン樹脂を含む硬化物Aの透過率Aは70%だった。結果を表1に示す。
【0195】
(組成物Bと硬化物Bの作製)
トルエンで固形分を30質量%に調整した実施例1に係る分散液16.7gと、フェニル系シリコーン樹脂成分(商品名:OE-6520、東レ・ダウコーニング社製)95gとを混合した。次いで、この混合液をエバポレータによりトルエンを除去することで、フェニル系シリコーン樹脂成分を含む実施例1に係る組成物Bを得た。組成物Aと同様にして測定した組成物Bの粘度Bを表1に示す。
次いで、組成物Aと同様に硬化させることで、実施例1に係る硬化物Bを得た。容器から取り出した硬化物Bの厚みは約1mmであった。硬化物Aと同様に測定した透過率Bを表1に示す。
【0196】
(LEDパッケージの作製と明るさの評価)
(1)組成物の作製
トルエンで固形分を30質量%に調整した実施例1に係る分散液5.0gと、メチル系シリコーン樹脂成分(商品名:KER-2500-B、信越化学工業社製)3.5gとを混合した。すなわち、ジルコニアおよび表面修飾材料の合計質量と、メチル系シリコーン樹脂成分とが、質量比で30:70となるように混合した。
次いで、この混合液をエバポレータによりトルエンを除去することで、封止部材作製のための実施例1に係る組成物Cを得た。
【0197】
(2)LEDパッケージの作製
得られた組成物C1質量部に、メチル系シリコーン樹脂成分(商品名:KER-2500-A/B、信越化学工業社製)を14質量部加えて、組成物中に表面修飾酸化ジルコニウム粒子が2質量%となるように調整し、混合した。この組成物1質量部に蛍光体粒子(イットリウム・アルミニウム・ガーネット:YAG)を0.38質量部混合した組成物(表面修飾酸化ジルコニウム粒子と樹脂の合計量:蛍光体粒子=100:38)を、LEDリードフレーム内に300μmの厚みで充填した。その後、室温で3時間保持した。次いで、ゆっくりと組成物を加熱硬化させて封止部材を形成し、実施例1に係る白色LEDパッケージを作製した。
【0198】
(3)評価
得られた白色LEDパッケージについて、全光束測定システム(大塚電子社製)にて、LEDパッケージに電圧3V、電流150mAを印加し測光することにより明るさを測定した。この結果、この白色LEDパッケージの明るさは、74.4lmであった。結果を表1に示す。
【0199】
[実施例2]
実施例1において、トルエンで固形分が15質量%に調整された第2の分散液66.7質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物33.3質量部を混合する替わりに、第2の分散液を90.9質量部と、上記シリコーン化合物9.1質量部を混合した以外は実施例1と全く同様にして、実施例2に係る分散液(第3の分散液)を得た。
【0200】
実施例1と同様にして、実施例2に係る分散液のIA/IBと、メチル基/フェニル基を測定した。結果を表1に示す。
【0201】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例2に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る組成物Aと組成物B、実施例2に係る硬化物Aと硬化物Bを得た。実施例1と同様に組成物の粘度と硬化物の透過率を測定した結果を表1に示す。
【0202】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例2に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る組成物Cと、実施例2に係るLEDパッケージを得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0203】
[実施例3]
実施例1において、トルエンで固形分が15質量%に調整された第2の分散液66.7質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物33.3質量部を混合する替わりに、第2の分散液を95.2質量部と、上記シリコーン化合物4.8質量部を混合した以外は実施例1と全く同様にして、実施例3の分散液(第3の分散液)を得た。
【0204】
実施例1と同様にして、実施例3に係る分散液のIA/IBと、メチル基/フェニル基を測定した。結果を表1に示す。
【0205】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例3に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る組成物Aと組成物B、実施例3に係る硬化物Aと硬化物Bを得た。実施例1と同様に組成物の粘度と硬化物の透過率を測定した結果を表1に示す。
【0206】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例3に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る組成物Cと、実施例3に係るLEDパッケージを得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0207】
[実施例4]
(第2の加水分解工程)
フェニルトリメトキシシラン(製品名:KBM-103、信越工業化学社製)91.66質量部と、水8.33質量部と、塩酸(1N)0.01質量部とを添加して混合し、加水分解液を得た。次いで、この加水分解液を60℃で30分撹拌し、フェニルトリメトキシシランの加水分解処理を行い、加水分解液を得た。
【0208】
(分散液の作製)
実施例1の作製過程で得られる固形分が15質量%に調整された第2の分散液62.5質量部と、上記フェニルトリメトキシシランの加水分解液6.3質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物(商品名:KR213(高フェニル含有)、信越化学工業社製)31.2質量部とを混合し、100℃で3時間撹拌することで、実施例4に係る分散液(第3の分散液)を得た。
【0209】
実施例1と同様にして、実施例4に係る分散液のIA/IBと、メチル基/フェニル基を測定した。結果を表1に示す。
【0210】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例4に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る組成物Aと組成物B、実施例4に係る硬化物Aと硬化物Bを得た。実施例1と同様に組成物の粘度と硬化物の透過率を測定した結果を表1に示す。
【0211】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例4に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る組成物Cと、実施例4に係るLEDパッケージを得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0212】
[実施例5]
実施例4において、第2の分散液62.5質量部と、フェニルトリメトキシシランの加水分解液6.3質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物を31.2質量部混合する替わりに、第2の分散液60.6質量部と、フェニルトリメトキシシランの加水分解液9.1質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物を30.3質量部混合した以外は実施例4と同様にして、実施例5に係る分散液を得た。
【0213】
実施例1と同様にして、実施例5に係る分散液のIA/IBと、メチル基/フェニル基を測定した。結果を表1に示す。
【0214】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例5に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る組成物Aと組成物B、実施例5に係る硬化物Aと硬化物Bを得た。実施例1と同様に組成物の粘度と硬化物の透過率を測定した結果を表1に示す。
【0215】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例5に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る組成物Cと、実施例5に係るLEDパッケージを得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0216】
[実施例6]
実施例4において、第2の分散液62.5質量部と、フェニルトリメトキシシランの加水分解液6.3質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物を31.2質量部混合する替わりに、第2の分散液64.5質量部と、フェニルトリメトキシシランの加水分解液3.2質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物を32.3質量部混合した以外は実施例4と同様にして、実施例6に係る分散液を得た。
【0217】
実施例1と同様にして、実施例6に係る分散液のIA/IBと、メチル基/フェニル基を測定した。結果を表1に示す。
【0218】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例6に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例6に係る組成物Aと組成物B、実施例6に係る硬化物Aと硬化物Bを得た。実施例1と同様に組成物の粘度と硬化物の透過率を測定した結果を表1に示す。
【0219】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例6に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例6に係る組成物Cと、実施例6に係るLEDパッケージを得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0220】
[実施例7]
実施例4において、第2の分散液62.5質量部と、フェニルトリメトキシシランの加水分解液6.3質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物を31.2質量部混合する替わりに、第2の分散液65.4質量部と、フェニルトリメトキシシランの加水分解液2.0質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物を32.6質量部混合した以外は実施例4と同様にして、実施例7に係る分散液を得た。
【0221】
実施例1と同様にして、実施例7に係る分散液のIA/IBと、メチル基/フェニル基を測定した。結果を表1に示す。
【0222】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例7に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例7に係る組成物Aと組成物B、実施例7に係る硬化物Aと硬化物Bを得た。実施例1と同様に組成物の粘度と硬化物の透過率を測定した結果を表1に示す。
【0223】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例7に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例7に係る組成物Cと、実施例7に係るLEDパッケージを得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0224】
[実施例8]
実施例4において、第2の分散液62.5質量部と、フェニルトリメトキシシランの加水分解液6.3質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物を31.2質量部混合する替わりに、第2の分散液62.9質量部と、フェニルトリメトキシシラン5.7質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物を31.4質量部混合した以外は実施例4と同様にして、実施例8に係る分散液を得た。
【0225】
実施例1と同様にして、実施例8に係る分散液のIA/IBと、メチル基/フェニル基を測定した。結果を表1に示す。
【0226】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例8に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例8に係る組成物Aと組成物B、実施例8に係る硬化物Aと硬化物Bを得た。実施例1と同様に組成物の粘度と硬化物の透過率を測定した結果を表1に示す。
【0227】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例8に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例8に係る組成物Cと、実施例8に係るLEDパッケージを得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0228】
[比較例1]
実施例1において、トルエンで固形分が15質量%に調整された第2の分散液66.7質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物33.3質量部を混合する替わりに、第2の分散液を95.5質量部と、上記シリコーン化合物4.5質量部を混合した以外は実施例1と全く同様にして、比較例1の分散液(第3の分散液)を得た。
【0229】
実施例1と同様にして、比較例1に係る分散液のIA/IBと、メチル基/フェニル基を測定した。結果を表1に示す。
【0230】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、比較例1に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る組成物Aと比較例1に係る硬化物Aを得た。実施例1と同様に組成物の粘度と硬化物の透過率を測定した結果を表1に示す。
実施例1と同様にして、比較例1に係る分散液を用いて組成物Bと硬化物Bを得ようとした。しかし、比較例1の分散液は、フェニル系シリコーン樹脂成分に分散することができず、組成物Bは白濁凝集したため、硬化物Bは作製できなかった。
【0231】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、比較例1に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る組成物Cと、比較例1に係るLEDパッケージを得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0232】
[比較例2]
実施例1の混合工程において、メチルトリメトキシシランの加水分解液70質量部を混合する替わりに、上記加水分解液20質量部と、イソプロピルアルコール(IPA)50質量部とを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、混合工程と分散工程を行い、分散液(第1の分散液)を得た。
分散液の固形分(100℃で1時間)を測定した結果、38質量%であった。
【0233】
(4)第1の添加工程
得られた分散液(第1の分散液)に、固形分が20質量%となるようにトルエンを添加し、60℃で2時間加熱した。次いで、揮発した量と同程度のトルエンを分散液に添加し、60℃で2時間加熱した。次いで、揮発した量と同程度のトルエンを分散液に添加し、60℃で1時間加熱した。次いで、揮発した量と同程度のトルエンを分散液に添加し、60℃で1時間加熱することで、表面修飾が促進され、イソプロピルアルコールがトルエンに置換された分散液(第2の分散液)を得た。
【0234】
(5)第2の添加工程
固形分が15質量%に調整された第2の分散液89質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物(商品名:KR213(高フェニル含有)、信越化学工業社製)11質量部とを混合して110℃で1時間加熱し、比較例2の分散液(第3の分散液)を得た。
【0235】
実施例1と同様にして、比較例2に係る分散液のIA/IBと、メチル基/フェニル基を測定した。結果を表1に示す。
【0236】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、比較例2に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る組成物Bと硬化物Bを得た。実施例1と同様にして測定した粘度と透過率の結果を表1に示す。
実施例1と同様にして、比較例2に係る分散液を用いて組成物Aと硬化物Aを得ようとした。しかし、比較例2の分散液は、メチル系シリコーン樹脂成分に分散することができず、組成物Aは白濁凝集したため、硬化物Aは作製できなかった。
【0237】
[比較例3]
実施例1の混合工程において、メチルトリメトキシシランの加水分解液70質量部を用いる替わりに、実施例4の加水分解工程で得られたフェニルトリメトキシシランの加水分解液70質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、混合工程と分散工程と第1の添加工程を行い、分散液(第2の分散液)を得た。
固形分が15質量%に調整された第2の分散液89質量部と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物(商品名:KR213(高フェニル含有)、信越化学工業社製)11質量部とを混合して110℃で1時間加熱し、比較例3の分散液(第3の分散液)を得た。
【0238】
実施例1と同様にして、比較例3に係る分散液のIA/IBと、メチル基/フェニル基を測定した。結果を表1に示す。
【0239】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、比較例3に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る組成物Bと硬化物Bを得た。実施例1と同様にして測定した粘度と透過率の結果を表1に示す。
実施例1と同様にして、比較例3に係る分散液を用いて組成物Aと硬化物Aを得ようとした。しかし、比較例3の分散液は、メチル系シリコーン樹脂成分に分散することができず、組成物Aは白濁凝集したため、硬化物Aは作製できなかった。
【0240】
[比較例4]
実施例1の混合工程において、メチルトリメトキシシランの加水分解液70質量部を用いる替わりに、上記フェニルトリメトキシシランの加水分解液70質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、混合工程と分散工程と第1の添加工程を行い、分散液(第2の分散液)を得た。
固形分が15質量%に調整された第2の分散液91質量部と、上記メチルトリメトキシシランの加水分解液9質量部とを混合し、130℃で3時間撹拌することで、比較例4の分散液(第3の分散液)を得た。
【0241】
実施例1と同様にして、比較例4に係るIA/IBと、メチル基/フェニル基を測定した。結果を表1に示す。
【0242】
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、比較例4に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例4に係る組成物と硬化物を得ようとした。しかし、比較例4の分散液は、メチル系シリコーン樹脂にも、フェニル系シリコーン樹脂にも分散させることができず、組成物A、Bともに白濁凝集した。そのため、硬化物Aも硬化物Bも作製できなかった。
【0243】
【0244】
実施例1~実施例8、比較例1~比較例4を比較することにより、メチル基/フェニル基が0.01以上10以下で、メチル基を含むシラン化合物と、フェニル基を含むシリコーン化合物で、IA/IB≦3.5を満たすほど、充分に表面修飾された酸化ジルコニウム粒子は、メチル基を多く含むメチル系フェニルシリコーン樹脂にも、フェニル基を多く含むフェニル系シリコーン樹脂にも良好に分散することが確認された。
また、実施例1~実施例3と、実施例4~実施例8を比較することにより、メチル基とフェニル基を含むシラン化合物と、メチル基とフェニル基を含むシリコーン化合物で表面修飾されたジルコニア粒子は、LEDパッケージの明るさがより向上することが確認された。
【0245】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0246】
1A、1B、1C、1D 発光装置
2 基板
21 凹部
3 発光素子
4A、4B、4C、4D 封止部材
41B、41C、41D 第1の層
43B、43C、43D 第2の層
45D 第3の層
5 蛍光体粒子