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特許7559626リニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物及びその硬化物並びにリニア振動アクチュエータ
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  • 特許-リニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物及びその硬化物並びにリニア振動アクチュエータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】リニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物及びその硬化物並びにリニア振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/16 20060101AFI20240925BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20240925BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240925BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240925BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H02K33/16 A
B06B1/04 Z
C08L83/04
C08L83/05
C08L83/07
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021035953
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136382
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 剛
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-013088(JP,A)
【文献】特開2007-297556(JP,A)
【文献】特開2012-017458(JP,A)
【文献】特開平06-313112(JP,A)
【文献】ADVANCED FUNCTIONAL MATERIALS,2012年,Vol.22,No.18,p.3958-3962
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
B06B 1/00- 3/04
H02K 33/00- 33/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記平均組成式(1)
(R1 3SiO1/2b(R1 2SiO2/2c(HR1SiO2/2d (1)
(式中、R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基であり、bは0.01~0.3の正数であり、cは0.2~0.9の正数であり、dは0.08~0.75の正数であり、b+c+d=1である。)
で示され、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(A)成分中のアルケニル基1モルに対し(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.01~3モルとなる量、
(C)白金系硬化触媒:触媒としての有効量、及び
(D)分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基及びケイ素原子に結合した水素原子を有しないオルガノポリシロキサン:10~80質量部
を含有してなり、硬化してJIS K2220で規定される1/4コーンによる稠度が10~40であり、かつ、25℃におけるせん断周波数10Hz及び25Hzにおける損失係数が0.1以下であるシリコーンゲル硬化物を与えるものであって、前記シリコーンゲル硬化物が、筐体及び該筐体に対してリニア振動する可動子を備えるリニア振動アクチュエータの、筐体と可動子とを繋ぐ部材として使用される、リニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物。
【請求項2】
前記シリコーンゲル硬化物を、筐体及び該筐体に対してリニア振動する可動子を備えるリニア振動アクチュエータの、筐体と可動子とを繋ぐ部材として使用したときに、その可動子の共振周波数を1~100Hzとするシリコーンゲル硬化物を与えるものである請求項1記載のリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシリコーンゲル組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物であって、筐体及び該筐体に対してリニア振動する可動子を備えるリニア振動アクチュエータの、筐体と可動子とを繋ぐ部材として使用される、シリコーンゲル硬化物。
【請求項4】
請求項3に記載のシリコーンゲル硬化物を、筐体及び該筐体に対してリニア振動する可動子を備えるリニア振動アクチュエータの、筐体と可動子とを繋ぐ部材として用いたリニア振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化して優れた振動特性を有するシリコーンゲル硬化物を与えるリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物及びその硬化物(シリコーンゲル硬化物)並びにリニア振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゲルは、一般的な有機合成ゴムと比較して、損失係数(tanδ)が大きく、外力(外部応力)を吸収する能力が高い。これは、その骨格を形成するシロキサン結合の柔軟性が大きく、また架橋点が少ないためであり、更に構造規制の影響が小さいためである。この特長を生かし、シリコーンゲルは防振材として使用されている(特許文献1;特開平4-325932号公報、特許文献2;特開平11-044342号公報)。
【0003】
同様な用途でコイルばねも使用されるが、共振周波数を比較すると、コイルばねでは共振周波数が100Hz以上の高周波数域にあるのに対し、シリコーンゲルでは共振周波数が20Hz以下の低い周波数域にある。このため、防振材ではコイルばねとシリコーンゲルを組み合わせた構造を取られることがよくある。
【0004】
力学的な振動を発生するアクチュエータとして、リニア振動アクチュエータがあるが、これはコイルばねに接続した磁石が振動するアクチュエータである。リニア振動アクチュエータでは、多彩な振動を生じさせることができるため、これを触覚デバイス向けのアクチュエータとして適用するための検討が数多くなされている。
【0005】
近年、触覚デバイスはスマートフォンやタブレット端末、家電製品、ゲームコントローラー等に搭載されるようになり、より質の高い触感フィードバックを得るために、アクチュエータの特性向上が求められるようになってきた。つまり幅広い周波数域で、大きな振動振幅を得られることが必要となってきているが、コイルばねでは、大きな振動振幅が得られる周波数域が狭く、また100Hz以上の高周波数域に限られるという課題がある。
【0006】
一方で、シリコーンゲルは大きな振動振幅を得られる周波数域が低いが、同時に高周波数域では減衰特性を示すため、上述のコイルばねのような使い方をするには、シリコーンゲルの特性を調整する必要がある。
【0007】
リニア振動アクチュエータに、シリコーンゲルなどの弾性部材を用いた例は、特許文献3(特開2006-007161号公報)や特許文献4(特開2016-101075号公報)がある。ここでは、バネ部材で接続された可動体と固定体との間に、薄板状の弾性体やゲル状のダンパー部材を配置することで、コイルばね由来の共振を抑制した構造を提案しているもので、シリコーンゲルなどの弾性部材はあくまで、コイルばねと可動体との共振を抑制するダンパー材として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平4-325932号公報
【文献】特開平11-044342号公報
【文献】特開2006-007161号公報
【文献】特開2016-101075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、幅広い周波数域において、大きな振動振幅を得ることのできる、リニア共振アクチュエータ向け材料として使用可能なシリコーンゲル硬化物を与える、リニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物及びその硬化物並びにリニア振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、硬化してJIS K2220で規定される稠度(cone penetration、以下、針入度と記載することがある。)が10~40であり、かつ25℃におけるせん断周波数10Hz及び25Hzにおける損失係数が0.1以下であるシリコーンゲル硬化物を与えるシリコーンゲル組成物が、上記課題を解決することを知見し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、以下のリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物及びその硬化物(シリコーンゲル硬化物)並びにリニア振動アクチュエータを提供するものである。
〔1〕
(A)1分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記平均組成式(1)
(R1 3SiO1/2b(R1 2SiO2/2c(HR1SiO2/2d (1)
(式中、R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基であり、bは0.01~0.3の正数であり、cは0.2~0.9の正数であり、dは0.08~0.75の正数であり、b+c+d=1である。)
で示され、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:前記(A)成分中のアルケニル基1モルに対し(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.01~3モルとなる量、
(C)白金系硬化触媒:触媒としての有効量、及び
(D)分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖され、分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基及びケイ素原子に結合した水素原子を有しないオルガノポリシロキサン:10~80質量部
を含有してなり、硬化してJIS K2220で規定される1/4コーンによる稠度が10~40であり、かつ、25℃におけるせん断周波数10Hz及び25Hzにおける損失係数が0.1以下であるシリコーンゲル硬化物を与えるものであって、前記シリコーンゲル硬化物が、筐体及び該筐体に対してリニア振動する可動子を備えるリニア振動アクチュエータの、筐体と可動子とを繋ぐ部材として使用される、リニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物。
〔2〕
前記シリコーンゲル硬化物を、筐体及び該筐体に対してリニア振動する可動子を備えるリニア振動アクチュエータの、筐体と可動子とを繋ぐ部材として使用したときに、その可動子の共振周波数を1~100Hzとするシリコーンゲル硬化物を与えるものである〔1〕記載のリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物。
〔3〕
〔1〕又は〔2〕に記載のシリコーンゲル組成物を硬化してなるシリコーンゲル硬化物であって、筐体及び該筐体に対してリニア振動する可動子を備えるリニア振動アクチュエータの、筐体と可動子とを繋ぐ部材として使用される、シリコーンゲル硬化物。
〔4〕
〔3〕に記載のシリコーンゲル硬化物を、筐体及び該筐体に対してリニア振動する可動子を備えるリニア振動アクチュエータの、筐体と可動子とを繋ぐ部材として用いたリニア振動アクチュエータ。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物を硬化することにより得られるシリコーンゲル硬化物を、リニア振動アクチュエータに使用することで、コイルばね使用時よりも幅広い周波数域で大きな振動振幅を得られるアクチュエータが提供可能となる。
【0013】
なお、本発明において、シリコーンゲル硬化物とは、オルガノポリシロキサンを主成分とする架橋密度の低い硬化物であって、JIS K2220(1/4コーン)による稠度(即ち、cone penetration。なお、JIS K2220に規定する1/4コーンは該コーン本体の先端部に先針(硬さがロックウェルCスケールの45~50の焼入鋼製先針)が装着されている構造であることから、本発明においては、稠度を針入度(needle penetration)と記載する場合がある。以下、同じ。)が5~100、特には10~80のものを意味する。これは、JIS K6253によるゴム硬度測定では測定値(ゴム硬度値)が0となり、有効なゴム硬度値を示さない程低硬度(即ち、軟らか)かつ低応力性であるものに相当し、この点において、いわゆるシリコーンゴム硬化物(シリコーンゴム状弾性体、シリコーンエラストマー)とは別異のものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物の硬化物を適用したリニア振動アクチュエータの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物は、下記の(A)~(D)成分を必須成分として含有してなるものである。
【0016】
[(A)成分]
本発明に使用される(A)成分のオルガノポリシロキサンは、シリコーンゲル組成物の主剤(ベースポリマー)であり、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基(以下「ケイ素原子結合アルケニル基」という)を少なくとも1個(通常、1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個程度)有するオルガノポリシロキサンである。
【0017】
(A)成分の分子構造は限定されず、例えば直鎖状(即ち、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰返しからなり分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンなど)、環状、分岐鎖状(一部分岐を有する直鎖状)、デンドリマー状が挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状(一部分岐を有する直鎖状)である。(A)成分は、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、又はこれらの重合体の混合物であってもよい。
【0018】
(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基として、具体的には、炭素原子数2~10の、特には炭素原子数2~6の、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、特にビニル基であることが好ましい。
【0019】
このケイ素原子結合アルケニル基のオルガノポリシロキサンにおける結合位置は、分子鎖末端であっても、分子鎖非末端(即ち、分子鎖側鎖)であっても、あるいはこれらの両方であってもよいが、(A)成分は、少なくとも分子鎖片末端又は分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を有する直鎖状又は分岐鎖状(一部分岐構造を有する直鎖状)のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0020】
(A)成分中、前記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量は、本成分100g中、好ましくは0.001~10モル、特に好ましくは0.001~1モルである。なお、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量は、29Si-NMRにより測定できる。
【0021】
(A)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、前記ケイ素原子結合アルケニル基以外のケイ素原子に結合した1価の有機基(以下、「ケイ素原子結合有機基」ともいう)は、脂肪族不飽和結合を有しないものであれば特に限定されず、例えば、非置換又は置換の、炭素原子数が、通常、1~12、好ましくは1~10の、脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基等が挙げられる。この非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0022】
(A)成分の25℃における粘度は、組成物の作業性や硬化物(シリコーンゲル硬化物)の力学特性がより優れたものとなるので、好ましくは100~500,000mPa・s、特に好ましくは300~100,000mPa・sである。なお、本発明において、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により測定できる(以下、同じ。)。また、同様の理由から、(A)成分中のケイ素原子数(又は重合度)は、通常、50~1,500個、好ましくは100~1,000個、より好ましくは120~800個程度であればよい。なお、本発明において、重合度(又は分子量)は、例えば、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる(以下、同じ。)。
【0023】
このような(A)成分として、具体的には、下記のものが例示される。
両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ビニルメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ビニルメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、片末端トリメチルシロキシ基・片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端メチルジビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体、両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体などの分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノポリシロキサンや、これらの直鎖状ジオルガノポリシロキサン中の主鎖を構成する2官能性ジオルガノシロキサン単位の1個又は2個が分岐構造(3官能性オルガノシルセスキオキサン単位)で置換された分岐鎖状(一部分岐を有する直鎖状)オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0024】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、(A)成分全体として1分子中にケイ素原子結合アルケニル基を平均して少なくとも1個有するという条件を満足する限りにおいて、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。例えば、本発明においては、1分子中、特には分子鎖両末端にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個有するオルガノポリシロキサンと、1分子中、特には分子鎖片末端にケイ素原子に結合したアルケニル基を1個有するオルガノポリシロキサン又は1個未満有するオルガノポリシロキサン(例えば、平均重合度や重合度分布が同一で、分子鎖片末端にケイ素原子に結合したアルケニル基を1個有するオルガノポリシロキサンと1分子中にアルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサンとの均一な混合物等)とを、100:0~40:60、特には70:30~40:60程度の質量割合で混合して用いることが、組成物の硬化性が良好で、かつ柔軟な(針入度の大きい)シリコーンゲル硬化物を安定的に得ることができる点から好ましい。
【0025】
[(B)成分]
本発明に使用される(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分とのヒドロシリル化付加硬化反応において、架橋剤(硬化剤)として作用する成分である。
【0026】
(B)成分は、下記平均組成式(1)で示され、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
(R1 3SiO1/2b(R1 2SiO2/2c(HR1SiO2/2d (1)
(式中、R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基であり、bは0.01~0.3の正数であり、cは0.2~0.95の正数であり、dは0.08~0.8の正数であり、b+c+d=1である。)
【0027】
上記平均組成式(1)は(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中に存在する各構成単位の比率(モル比)を示すものであって、該平均組成式(1)において、分子中の存在比率が0.01~0.3モル%(即ち、b/(b+c+d)=0.01~0.3)である(R1 3SiO1/2)単位は、分子鎖両末端に存在する(即ち、分子中に2個存在する)単官能シロキシ単位であることから、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中に存在するシロキサン単位及びシロキシ単位の合計数(即ち、1分子中のケイ素原子数)は7~200個、好ましくは10~160個、より好ましくは29~160個であり、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの主鎖を構成する2官能性のシロキサン単位である(R1 2SiO2/2)単位と(HR1SiO2/2)単位は、それぞれ1分子中に、(R1 2SiO2/2)単位が2~190個(c/(b+c+d)=0.2~0.95)、好ましくは5~144個(c/(b+c+d)=0.5~0.9)、(HR1SiO2/2)単位が3~160個(d/(b+c+d)=0.015~0.8)、好ましくは3~120個(d/(b+c+d)=0.015~0.75)、より好ましくは3~50個(d/(b+c+d)=0.015~0.4)存在するものである。従って、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、下記の分子式(2)で示すことができる。
1 3SiO-(R1 2SiO)c’-(HR1SiO)d’-SiR1 3 (2)
(式中、R1は上記と同じであり、c’は2~190の整数であり、d’は3~160の整数であり、c’+d’は5~198の整数である。但し、分子中において(R1 2SiO)単位と(HR1SiO)単位の配列はランダムである。)
【0028】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、1分子中に、ケイ素原子に結合した水素原子(以下、「ケイ素原子結合水素原子」(即ち、SiH基)ともいう)を少なくとも3個含有し、かつ、該ケイ素原子結合水素原子(SiH基)を(HR1SiO2/2)で示される2官能性のオルガノハイドロジェンシロキサン単位として分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合した水素原子として末端を除く分子鎖主鎖中だけに含有すること、及び分子鎖末端は(R1 3SiO1/2)で示されるトリオルガノシロキシ基で封鎖されていること以外に制限はない。即ち、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、分子鎖両末端トリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノハイドロジェンシロキサン共重合体(但し、分子中のオルガノ基は脂肪族不飽和結合を含有しない。)であればよい。
【0029】
上記平均組成式(1)において、R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基であり、炭素原子数が通常、1~10、好ましくは1~6の非置換又は置換1価炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0030】
bは0.01~0.3、好ましくは0.0125~0.2、より好ましくは0.0125~0.07の正数であり、cは0.2~0.95、好ましくは0.5~0.9の正数であり、dは0.015~0.8、好ましくは0.015~0.75、より好ましくは0.015~0.4の正数であり、b+c+d=1である。bが0.01未満(即ち、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中のケイ素原子数が200個超の場合)ではシリコーンゲル硬化物が得られず、また0.3を超える場合(即ち、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中のケイ素原子数が7個未満の場合)は、シリコーンゲル硬化物の変位耐久性が低下する。また、dが0.08未満の場合はシリコーンゲル硬化物が得られず、0.8を超えた場合、硬化物表面に架橋点の疎密が発生する。
【0031】
また、上記分子式(2)において、R1は上記平均組成式(1)におけるR1と同じであり、c’、d’、c’+d’は、上記平均組成式(1)におけるc、d、bとそれぞれ同様の理由により、c’は2~190の整数、好ましくは5~144の整数であり、d’は3~160の整数、好ましくは3~120の整数、より好ましくは3~50の整数であり、c’+d’は5~198の整数、好ましくは8~158の整数、より好ましくは27~150の整数である。
【0032】
(B)成分中、前記ケイ素原子結合水素原子(SiH基)の含有量は、本成分100g中、好ましくは0.1~1.5モル、特に好ましくは0.1~1.2モルである。なお、ケイ素原子結合水素原子(SiH基)の含有量は、29Si-NMRにより測定できる。
【0033】
(B)成分の分子構造は、上記要件を満たすものであれば特に限定されず、また、従来公知の方法で合成されるものである。
【0034】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、通常、1~10,000mPa・s、好ましくは3~2,000mPa・s、より好ましくは10~1,000mPa・sであり、室温(25℃)で液状のものが望ましい。
【0035】
上記平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、分子構造が両末端トリオルガノシロキシ基封鎖ジオルガノシロキサン・オルガノハイドロジェンシロキサン共重合体であって、(CH33SiO1/2単位と(CH32SiO2/2単位とH(CH3)SiO2/2単位からなる共重合体、(CH33SiO1/2単位と(C652SiO2/2単位と(CH32SiO2/2単位とH(CH3)SiO2/2単位からなる共重合体、(CH32(C65)SiO1/2単位と(CH32SiO2/2単位とH(CH3)SiO2/2単位からなる共重合体、(CH33SiO1/2単位と(CH32SiO2/2単位とH(C65)SiO2/2単位からなる共重合体、(CH32(CF324)SiO1/2単位と(CH3)(CF324)SiO2/2単位とH(CH3)SiO2/2単位とからなる共重合体、(CH32(CF324)SiO1/2単位と(CH3)(CF324)SiO2/2単位と(CH32SiO2/2単位とH(CH3)SiO2/2単位とからなる共重合体、(CH33SiO1/2単位と(CH3)(CF324)SiO2/2単位とH(CH3)SiO2/2単位とからなる共重合体、(CH33SiO1/2単位と(CH3)(CF324)SiO2/2単位と(CH32SiO2/2単位とH(CH3)SiO2/2単位とからなる共重合体、(CH33SiO1/2単位と(CH3)(CF324)SiO2/2単位と(CH32SiO2/2単位とH(CF324)SiO2/2単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0036】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0037】
(B)成分の添加量は、上記(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)が0.01~3モル、好ましくは0.05~2モル、より好ましくは0.2~1.5モル、更に好ましくは0.7~1.1モルとなる量である。この(B)成分からのケイ素原子結合水素原子が、(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、0.01モルより少なくなると、シリコーンゲル硬化物が得られなくなる。また3モルより多い場合は、所望の硬度のシリコーンゲル硬化物が得られない。
【0038】
[(C)成分]
本発明に使用される(C)成分は、前記(A)成分中のケイ素原子結合アルケニル基と前記(B)成分中のケイ素原子結合水素原子との付加反応を促進させるための触媒として使用されるものである。該(C)成分は白金系硬化触媒(白金又は白金系化合物)であり、公知のものを使用することができる。その具体例としては、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸等のアルコール変性物;塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体などの白金系硬化触媒が例示される。
【0039】
(C)成分の配合量は触媒としての有効量でよく、所望の硬化速度により適宜増減することができるが、通常、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して、白金原子の質量で、0.1~1,000ppm、好ましくは1~300ppmの範囲である。この配合量が多すぎると得られるシリコーンゲル硬化物の耐熱性が低下する場合がある。
【0040】
[(D)成分]
本発明に使用される(D)成分は、シリコーンゲル硬化物の硬度・粘弾性特性を調整する成分であり、分子鎖末端がトリオルガノシロキシ基(但し、オルガノ基は脂肪族不飽和結合を含有しない。)で封鎖され、ヒドロシリル化付加反応に関与する官能性基であるケイ素原子結合水素原子(SiH基)及びケイ素原子結合アルケニル基を分子中に含有しないオルガノポリシロキサン(いわゆる無官能性オルガノポリシロキサン又は無官能性シリコーンオイル)が使用される。
【0041】
(D)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、ケイ素原子結合有機基は、脂肪族不飽和結合を有しないものであれば特に限定されず、例えば、非置換又は置換の、炭素原子数が、通常、1~12、好ましくは1~10の、脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基等が挙げられる。この非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。また、分子鎖末端においても、上述したケイ素原子結合有機基で示されるトリオルガノシロキシ基で封鎖されている。
【0042】
(D)成分の分子構造は限定されず、例えば直鎖状(即ち、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰返しからなり分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンなど)、環状、分岐鎖状(一部分岐を有する直鎖状)、デンドリマー状が挙げられ、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状(一部分岐を有する直鎖状)である。(D)成分は、これらの分子構造を有する単一の重合体、これらの分子構造からなる共重合体、又はこれらの重合体の混合物であってもよい。
【0043】
また、上記(D)成分のオルガノポリシロキサンの粘度は、25℃における粘度が10~10,000mPa・sであることが望ましく、より好ましくは30~1,000mPa・sである。粘度が10mPa・s未満の場合、シリコーンゲル組成物の硬化時に、消失しやすくなり、体積変化が大きくなるため、所望の寸法のシリコーンゲル硬化物を得ることが困難となる。また、10,000mPa・sを超えた場合、シリコーンゲル組成物の粘度が大きくなり、作業性が低下する。
【0044】
上記(D)成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルトリフルオロプロピルポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルトリフルオロプロピルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0045】
(D)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対し、10~80質量部、好ましくは20~75質量部、より好ましくは30~70質量部である。10質量部より少ないと、得られるシリコーンゲル硬化物の硬度が高くなりすぎ、アクチュエータとの密着性が低下する。また、80質量部より多いと、得られるシリコーンゲル硬化物を組み付けたアクチュエータを振動耐久試験等にかけるとオイル成分が徐々に滲み出し、経時で特性が変化してしまう。
【0046】
本発明のリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物には、上記(A)~(D)成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、反応抑制剤、無機質充填剤、接着性ないしは粘着性の向上に寄与するアルコキシオルガノシラン等の接着性付与剤、耐熱添加剤、難燃付与剤等、チクソ性付与剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0047】
反応抑制剤は、上記組成物の反応を抑制するための成分であって、具体的には、例えば、アセチレン系、アミン系、カルボン酸エステル系、亜リン酸エステル系等の反応抑制剤が挙げられる。
【0048】
無機質充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状マイカ、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機質充填剤;これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面疎水化処理した充填剤等が挙げられる。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。
【0049】
本発明のリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物は、上述した(A)~(D)成分、及びその他の任意的な成分を所定量、均一混合することによって得ることができる。その際に、混合される成分を必要に応じて2パート又はそれ以上のパートに分割して混合してもよく、例えば、(A)成分の一部、(C)成分、及び(D)成分の一部又は全部からなるパートと、(A)成分の残部、(B)成分、及び(D)成分の残部からなるパートとに分割して混合することも可能である。ここで、使用する混合手段としては、ホモミキサー、パドルミキサー、ホモディスパー、コロイドミル、真空混合攪拌ミキサー、及びプラネタリーミキサーが例示されるが、少なくとも(A)~(D)成分を均一に混合できるものであれば特に限定されるものではない。
【0050】
本発明のリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物の硬化条件としては、23~150℃、特に80~120℃にて10分~5時間、特に30分~3時間とすることができる。
【0051】
得られたリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物の硬化物(シリコーンゲル硬化物)は、JIS K2200で規定される針入度が10~40であり、好ましくは10を超え35以下、より好ましくは10を超え30以下である。針入度が10未満ではシリコーンゲル硬化物に十分な振動耐久性が得られず、針入度が40を超えるとシリコーンゲル硬化物に目的とする十分な振動振幅が得られない。
なお、針入度を上記範囲とするためには、上記で特定した(A)~(D)成分と任意成分を特定の配合比率で均一に混合してなるシリコーンゲル組成物を上記の硬化条件にて硬化させることにより上記針入度のシリコーンゲル硬化物を得ることができる。
【0052】
更に、本発明においては、得られたリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物の硬化物(シリコーンゲル硬化物)について、せん断周波数10Hz及び25Hzにおける損失係数(tanδ)が0.1以下であり、0.07以下であることが望ましい。損失係数が0.1を超えるとシリコーンゲル硬化物に目的とする十分な振動振幅が得られない。本発明において、シリコーンゲル硬化物の損失係数(tanδ)は、粘弾性測定機ARES-G2(TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
なお、せん断周波数10Hz及び25Hzにおける損失係数を上記範囲とするためには、上述した(A)~(D)成分を特定の配合比率で併用し、特定の架橋構造及び特定の架橋密度を有するシリコーンゲル硬化物を得ることによって達成することができる。
【0053】
本発明のリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物の硬化物(シリコーンゲル硬化物)は、リニア振動アクチュエータにおけるコイルばねの代替部材として、好適に用いることができ、リニア振動アクチュエータの特性向上に、大いに役立つことが期待される。
【0054】
図1に、本発明のリニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物の硬化物(シリコーンゲル硬化物)を適用したリニア振動アクチュエータの断面構成の例を示す。
リニア振動アクチュエータは、図1に示すように、少なくとも上下2つの壁面を有する筐体1と、筐体1の2つの壁面で囲まれた内部に設けられる、矩形の筒形状のヨーク4、ヨーク4の内面に固定されたマグネット3、及びヨーク4の内部にマグネット3に対向して配置されるコイル5と、マグネット3及びコイル5のそれぞれの重心を結んだ延長線上にあるヨーク4の外面の上下2カ所それぞれで該ヨーク4と筐体1とを連結するシリコーンゲル硬化物2とを備える。また、リニア振動アクチュエータにおいて筐体1が固定体であり、マグネット3及びヨーク4が可動子である。すなわち、リニア振動アクチュエータにおいて本発明のシリコーンゲルが筐体と可動子とを繋いだ構成となっている。ここで、コイル5に電流を流すと、電磁力によりマグネット3が図1中の矢印方向(図中、左右方向)に往復運動(振動)する。このとき、シリコーンゲル硬化物2は、一種のコイルばねとして働く。
【0055】
ここで、リニア振動アクチュエータ用シリコーンゲル組成物の硬化物(シリコーンゲル硬化物)を、図1に示すような、筐体及び該筐体に対してリニア振動する可動子を備えるリニア振動アクチュエータの筐体と可動子とを繋いでその可動子の共振周波数を1~100Hzとするものであることが好ましい。本発明において、可動子の共振周波数は、レーザードップラー振動計(ポリテックジャパン社製)を用いて測定することができる。
なお、可動子の共振周波数を上記範囲とするためには、上述した(A)~(D)成分を特定の配合比率で併用し、特定の架橋構造及び特定の架橋密度を有するシリコーンゲル硬化物を得ることによって、上述のシリコーンゲル硬化物について、せん断周波数10Hz及び25Hzにおける損失係数(tanδ)を0.1以下とすることが必要である。
【実施例
【0056】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示し、粘度は25℃での回転粘度計による測定法の測定値を示したものである。Meはメチル基を示す。また、(A)成分のビニル基量及び(B)成分のSiH基量は29Si-NMRにより測定した値であり、重合度は、トルエンを展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度を示す。
【0057】
(A)成分
(A-1)下記式(3)で示される、25℃における粘度が1,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基量0.012モル/100g)
【化1】
(A-2)下記式(4)で示される、25℃における粘度が600mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基量0.015モル/100g)
【化2】
(A-3)下記式(5)で示される、25℃における粘度が800mPa・sの分子鎖片末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖・分子鎖片末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基量0.0038モル/100g)
【化3】
(A-4)下記式(6)で示される、25℃における粘度が300mPa・sの分子鎖末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖の分岐鎖状ジメチルポリシロキサン(ビニル基量0.027モル/100g)
【化4】
(B)成分
(B-1)下記式(7)で示される、25℃における粘度が約110mPa・sのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)(SiH基量0.55モル/100g)
【化5】
(B-2)下記式(8)で示される、25℃における粘度が約30mPa・sのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)(SiH基量0.13モル/100g)
【化6】
(B-3)下記式(9)で示される、25℃における粘度が約550mPa・sのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)(SiH基量0.17モル/100g)
【化7】
(B-4)下記式(10)で示される、25℃における粘度が約40mPa・sのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体)(SiH基量1.1モル/100g)
【化8】
(B-5)下記式(11)で示される、25℃における粘度が約20mPa・sのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン)(SiH基量0.13モル/100g)
【化9】
(B-6)下記式(12)で示される、25℃における粘度が100mPa・sのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(分子鎖末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖の分岐鎖状ジメチルポリシロキサン)(SiH基量0.06モル/100g)
【化10】
(C)成分
(C-1)下記式(13)で示されるオルガノポリシロキサン(分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン)を溶媒とする塩化白金酸-ビニルシロキサン錯体の溶液(白金原子含有量:1質量%)
【化11】
(D)成分
(D-1)分子鎖末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された、25℃における粘度が約30mPa・sのジメチルポリシロキサン
(E)その他の成分
(E-1)反応抑制剤:エチニルメチルデシルカルビノールの100質量%溶液
【0058】
[実施例1~4、比較例1~3]
上記(A)~(E)成分を表1の通り配合・混合し、シリコーンゲル組成物S1~S7を調製した。調製したシリコーンゲル組成物S1~S7を、120℃、30分加熱してシリコーンゲル硬化物を得た。
【0059】
得られたシリコーンゲル硬化物の針入度、及びせん断周波数10Hz、25Hzにおける損失係数tanδを測定した。なお、針入度はJIS K2220に規定された試験方法で、またせん断周波数10Hz、25Hzにおける損失係数tanδの測定は、粘弾性測定機ARES-G2(TAインスツルメント社製)にて測定を行った。
更に、得られたシリコーンゲル硬化物を、図1に示すアクチュエータに組み込み、下記の方法により、振動子の振動特性の評価を行った。
これらの結果を表1に併記した。
【0060】
[振動特性の評価]
図1に示すアクチュエータを作製した。ここで、図1中、シリコーンゲル硬化物2は
厚み約1mmのシート状であり、その上面及び下面が筐体1とヨーク4に固定されている。コイル5に電流を流すと、電磁力によりマグネット3が可動する。このとき、シリコーンゲル硬化物2は、一種のコイルばねとして働く。なお、図1中の矢印は振動方向を示す。
該アクチュエータを用い、レーザードップラー振動計(ポリテックジャパン社製)にて、振動子(図1中のマグネット3付きヨーク4)の振動特性(加速度ピーク、共振周波数)を評価した。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1~4のシリコーンゲル組成物から得られたシリコーンゲル硬化物は、本発明の要件(針入度、損失係数)を満たすものであり、100Hz以下の周波数域において共振ピークを有し、コイルばね同様の働きをすることが確認された。
【符号の説明】
【0063】
1 筐体
2 シリコーンゲル硬化物
3 マグネット
4 ヨーク
5 コイル
図1