(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20240925BHJP
H01G 11/28 20130101ALI20240925BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240925BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240925BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240925BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240925BHJP
【FI】
H01M4/66 A
H01G11/28
H01M4/02 Z
H01M4/04 A
H01M4/13
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2021501935
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005781
(87)【国際公開番号】W WO2020170960
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2019029126
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 麻里
(72)【発明者】
【氏名】畑中 辰也
(72)【発明者】
【氏名】境田 康志
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072147(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133030(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/029949(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/119288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 4/64-4/84
H01G 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵デバイス電極の集電体と電極合剤層との間に介在する薄膜を形成するためのエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物であって
、
側鎖にオキサゾリン基を有するポリマーおよび溶媒を含み、導電性炭素材料を含まないことを特徴とするエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物。
【請求項2】
前記ポリマーが、2位に重合性炭素-炭素二重結合含有基を有するオキサゾリンモノマーと、親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの少なくとも2種のモノマーのラジカル重合物である請求項1記載のエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物。
【請求項3】
前記ポリマーが、2位に重合性炭素-炭素二重結合含有基を有する式(1)で示されるオキサゾリンモノマーと、(メタ)アクリル酸、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、アクリル酸2-アミノエチルおよびその塩、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、メタクリル酸2-アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、並びにN-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種または2種以上の親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとのラジカル重合物である請求項2記載のエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物。
【化1】
(式中、Xは、重合性炭素-炭素二重結合を含む鎖状炭化水素基を表し、R
1~R
4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数6~20のアリール基、または炭素数7~20のアラルキル基を表す。)
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項記載のエネルギー貯蔵デバイスのエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物から得られる薄膜を含むアンダーコート層。
【請求項5】
請求項4記載のアンダーコート層を備えるエネルギー貯蔵デバイスの電極用複合集電体。
【請求項6】
請求項5記載のエネルギー貯蔵デバイスの電極用複合集電体を備えるエネルギー貯蔵デバイス用電極。
【請求項7】
請求項6記載のエネルギー貯蔵デバイス用電極を備えるエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項8】
リチウムイオン二次電池である請求項7記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタをはじめとしたエネルギー貯蔵デバイスの用途拡大に伴い、内部抵抗の低抵抗化が求められている。
この要求に応えるための一つの方策として、電極合材層と集電体との間に導電性炭素材料を含むアンダーコート層を配置して、それらの接触界面の抵抗を下げることが提案されている(特許文献1,2参照)が、アンダーコート層の単位面積あたりの重量(目付量)が大きいと、電池が重くなり、また大型化するという問題がある。
【0003】
また、このアンダーコート層には、電極合材層や集電体との密着性を高め、界面剥離による劣化を抑制することも期待されるが、導電性炭素材料は固体(粉末)であり、集電体や電極層との相互作用は弱いため、アンダーコート層が集電体や電極層と強く密着するには、導電性炭素材料以外の密着力の高い成分が必要となる。
しかし、導電性炭素材料以外の成分が多くなると、絶縁性成分が増えるため、アンダーコート層の導電性が低下し、電池の低抵抗化という所期の効果が損なわれるという問題がある。
さらに、これらのアンダーコート層を形成する際に用いる導電性炭素材料を含む分散液は、保存安定性が必ずしも良好ではなく、保存中に導電性炭素材料が凝集する等の問題をしばしば引き起こし、また分散処理自体もコストがかかるため製造費が高額になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-170965号公報
【文献】国際公開第2014/042080号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エネルギー貯蔵デバイス電極において、電極合剤層や集電体に対して良好な密着性を実現でき、導電性炭素材料を含まないにもかかわらずアンダーコート層として機能する薄膜を与えるエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、側鎖にオキサゾリン基を有するポリマーを含み、導電性炭素材料を含まない組成物が、電極合剤層や集電体に対して良好な密着性を発揮し得、導電性炭素材料を含まないにもかかわらずアンダーコート層として機能する薄膜を与えることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. 側鎖にオキサゾリン基を有するポリマーおよび溶媒を含み、導電性炭素材料を含まないことを特徴とするエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物、
2. エネルギー貯蔵デバイスの集電体と電極合剤層との間に介在する薄膜形成用である1のエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物、
3. 前記ポリマーが、2位に重合性炭素-炭素二重結合含有基を有するオキサゾリンモノマーと、親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの少なくとも2種のモノマーのラジカル重合物である1のエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物、
4. 前記ポリマーが、2位に重合性炭素-炭素二重結合含有基を有する式(1)で示されるオキサゾリンモノマーと、(メタ)アクリル酸、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、アクリル酸2-アミノエチルおよびその塩、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、メタクリル酸2-アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、並びにN-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種または2種以上の親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとのラジカル重合物である3のエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物、
【化1】
(式中、Xは、重合性炭素-炭素二重結合を含む鎖状炭化水素基を表し、R
1~R
4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素数6~20のアリール基、または炭素数7~20のアラルキル基を表す。)
5. 1~4のいずれかのエネルギー貯蔵デバイスのエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物から得られる薄膜を含むアンダーコート層、
6. 5のアンダーコート層を備えるエネルギー貯蔵デバイスの電極用複合集電体、
7. 6のエネルギー貯蔵デバイスの電極用複合集電体を備えるエネルギー貯蔵デバイス用電極、
8. 7のエネルギー貯蔵デバイス用電極を備えるエネルギー貯蔵デバイス、
9. リチウムイオン二次電池である8のエネルギー貯蔵デバイス
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物は、導電性炭素材料を含まないため、電極合剤層や集電体に対して優れた密着性を発揮する。
また、本発明の組成物は、導電性炭素材料を含まないにもかかわらず、アンダーコート層として機能する薄膜を与える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例4-1、比較例4-1および比較例4-2で作製した電極D,EおよびFを用いた二次電池のサイクル試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るエネルギー貯蔵デバイス電極用薄膜形成用組成物(以下、単に組成物という)は、側鎖にオキサゾリン基を有するポリマーおよび溶媒を含み、導電性炭素材料を含まないことを特徴とする。なお、導電性炭素材料とは、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウイスカー、カーボンナノチューブ(CNT)、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛等のそれ自身が導電性を有する炭素材料である。
【0011】
本発明において、側鎖にオキサゾリン基を有するポリマー(以下、オキサゾリンポリマーという)とは、主鎖を構成する繰り返し単位に直接またはアルキレン基等のスペーサー基を介してオキサゾリン基が結合した重合体であれば特に限定されるものではないが、具体的には、式(1)に示されるような2位に重合性炭素-炭素二重結合含有基を有するオキサゾリンモノマーをラジカル重合して得られる、オキサゾリン環の2位でポリマー主鎖またはスペーサー基に結合した繰り返し単位を有するビニル系ポリマーであることが好ましい。
【0012】
【0013】
上記Xは、重合性炭素-炭素二重結合含有基を表し、R1~R4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、または炭素数7~20のアラルキル基を表す。
オキサゾリンモノマーが有する重合性炭素-炭素二重結合含有基としては、重合性炭素-炭素二重結合を含んでいれば特に限定されるものではないが、重合性炭素-炭素二重結合を含む鎖状炭化水素基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等の炭素数2~8のアルケニル基などが好ましい。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭素数1~5のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数6~20のアリール基の具体例としては、フェニル基、キシリル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
炭素数7~20のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0014】
式(1)で示される2位に重合性炭素-炭素二重結合含有基を有するオキサゾリンモノマーの具体例としては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-エチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-プロピル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-ブチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-エチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-プロピル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-ブチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-エチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-プロピル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-ブチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-プロピル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-ブチル-2-オキサゾリン等が挙げられるが、入手容易性などの点から、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが好ましい。
【0015】
また、水系溶媒を用いて組成物を調製することを考慮すると、オキサゾリンポリマーも水溶性であることが好ましい。
このような水溶性のオキサゾリンポリマーは、上記式(1)で表されるオキサゾリンモノマーのホモポリマーでもよいが、水への溶解性をより高めるため、上記オキサゾリンモノマーと親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとの少なくとも2種のモノマーをラジカル重合させて得られたものであることが好ましい。
【0016】
親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、アクリル酸2-アミノエチルおよびその塩、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、メタクリル酸2-アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物が好適である。
【0017】
また、本発明の組成物から得られる薄膜の集電体等に対する密着性に悪影響を及ぼさない範囲で、上記オキサゾリンモノマーおよび親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外のその他のモノマーを併用することができる。
その他のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のα-オレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロオレフィン系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル系モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマーなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
本発明で用いるオキサゾリンポリマーの製造に用いられるモノマー成分において、オキサゾリンモノマーの含有率は、得られる薄膜の集電体等に対する密着性をより高めるという点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより一層好ましい。なお、モノマー成分におけるオキサゾリンモノマーの含有率の上限値は100質量%であり、この場合は、オキサゾリンモノマーのホモポリマーが得られる。
一方、得られるオキサゾリンポリマーの水溶性をより高めるという点から、モノマー成分における親水性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有率は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がより一層好ましい。
また、モノマー成分におけるその他の単量体の含有率は、上述のとおり、得られる薄膜の集電体等に対する密着性に影響を与えない範囲であり、また、その種類によって異なるため一概には決定できないが、5~95質量%、好ましくは10~90質量%の範囲で適宜設定すればよい。
【0019】
オキサゾリンポリマーの平均分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量が1,000~2,000,000が好ましく、2,000~1,000,000がより好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値である。
【0020】
本発明で用いるオキサゾリンポリマーは、上述した各種モノマーを、例えば、特開平6-32844号公報や特開2013-72002号公報等に記載された公知のラジカル重合法で重合させて製造することができる。
また、本発明で使用可能なオキサゾリンポリマーは、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、エポクロスWS-300((株)日本触媒製、固形分濃度10質量%、水溶液)、エポクロスWS-700((株)日本触媒製、固形分濃度25質量%、水溶液)、エポクロスWS-500((株)日本触媒製、固形分濃度39質量%、水/1-メトキシ-2-プロパノール溶液)、Poly(2-ethyl-2-oxazoline)(Aldrich)、Poly(2-ethyl-2-oxazoline)(AlfaAesar)、Poly(2-ethyl-2-oxazoline)(VWR International,LLC)等が挙げられる。
なお、溶液として市販されている場合、そのまま使用しても、目的とする溶媒に置換してから使用してもよい。
【0021】
溶媒としては、従来、この種の組成物の調製に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、水;テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、n-プロパノール等のアルコール類;n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等の有機溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
これらの中でも、水、NMP、DMF、THF、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノールが好ましい。また塗工性を向上させ得るという点から、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、プロピレングリコールを含むことが好ましい。またコストを下げ得るという点からは、水を含むことが好ましい。これらの溶媒は、塗工性を上げること、コストを下げることを目的として、1種単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。水とアルコール類との混合溶媒を用いる場合、その混合割合は特に限定されるものではないが、質量比で、水:アルコール類=1:1~10:1程度が好ましい。
【0023】
なお、上記オキサゾリンポリマーを用いた場合、アルコール類、グリコールエーテル類、グリコール類等の親水性溶媒を用いた場合でも成膜性が良好であり、さらに、上記親水性溶媒と水との混合溶媒や、水単独溶媒とした場合でも、成膜性が低下することがない。
近年、脱有機溶媒化の潮流から溶媒として水を用いた材料が求められていることから、本発明の組成物においても、親水性溶媒と水との混合溶媒や水単独溶媒を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の組成物は、上述した溶媒に可溶な架橋剤を含んでいてもよい。
架橋剤としては、オキサゾリンポリマーのオキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物、自己架橋する化合物のどちらでもよいが、得られる薄膜の耐溶剤性をより高めるという点から、オキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物が好ましい。
【0025】
オキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、チオール基、アミノ基、スルフィン酸基、エポキシ基等のオキサゾリン基との反応性を有する官能基を2個以上有する化合物であれば特に限定されるものではないが、カルボキシル基を2個以上有する化合物が好ましい。なお、薄膜形成時の加熱や、酸触媒の存在下で上記官能基が生じて架橋反応を起こす官能基、例えば、カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩等を有する化合物も架橋剤として用いることができる。
オキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物の具体例としては、酸触媒の存在下で架橋反応性を発揮する、ポリアクリル酸やそのコポリマー等の合成高分子およびカルボキシメチルセルロースやアルギン酸といった天然高分子の金属塩、加熱により架橋反応性を発揮する、上記合成高分子および天然高分子のアンモニウム塩等が挙げられるが、特に、酸触媒の存在下や加熱条件下で架橋反応性を発揮するポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸アンモニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、カルボキシメチルセルロースアンモニウム等が好ましい。
【0026】
このようなオキサゾリン基と架橋反応を起こす化合物は、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製、重合度2,700~7,500)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)、アルギン酸ナトリウム(関東化学(株)製、鹿1級)、アロンA-30(ポリアクリル酸アンモニウム、東亞合成(株)製、固形分濃度32質量%、水溶液)、DN-800H(カルボキシメチルセルロースアンモニウム、ダイセルファインケム(株)製)、アルギン酸アンモニウム((株)キミカ製)等が挙げられる。
【0027】
自己架橋する化合物としては、例えば、水酸基に対してアルデヒド基、エポキシ基、ビニル基、イソシアネート基、アルコキシ基、カルボキシル基に対してアルデヒド基、アミノ基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基に対してイソシアネート基、アルデヒド基などの、互いに反応する架橋性官能基を同一分子内に有している化合物や、同じ架橋性官能基同士で反応する水酸基(脱水縮合)、メルカプト基(ジスルフィド結合)、エステル基(クライゼン縮合)、シラノール基(脱水縮合)、ビニル基、アクリル基などを有している化合物などが挙げられる。
自己架橋する化合物の具体例としては、酸触媒の存在下で架橋反応性を発揮する多官能アクリレート、テトラアルコキシシラン、ブロックイソシアネート基を有するモノマーおよび水酸基、カルボン酸、アミノ基の少なくとも1つを有するモノマーのブロックコポリマーなどが挙げられる。
【0028】
このような自己架橋する化合物は、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、多官能アクリレートでは、A-9300(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、新中村化学工業(株)製)、A-GLY-9E(Ethoxylated glycerine triacrylate(EO9mol)、新中村化学工業(株)製)、A-TMMT(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、新中村化学工業(株)製)、テトラアルコキシシランでは、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)、テトラエトキシシラン(東横化学(株)製)、ブロックイソシアネート基を有するポリマーとしては、エラストロンシリーズE-37、H-3、H38、BAP、NEW BAP-15、C-52、F-29、W-11P、MF-9、MF-25K(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
【0029】
これらの架橋剤は、それぞれ単独で用いても、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
架橋剤の含有量は、使用する溶媒、使用する基材、要求される粘度や膜形状などにより変動するが、通常、オキサゾリンポリマーに対して0.001~80質量%であり、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.05~40質量%である。
なお、本発明の組成物は、架橋反応を促進するための触媒として、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp-トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等の酸性化合物、および/または2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2-ニトロベンジルトシレート、有機スルホン酸アルキルエステル等の熱酸発生剤を含んでいてもよい。
触媒の含有量は、導電性炭素材料分散剤(オキサゾリンポリマー)に対して、通常、0.0001~20質量%であり、好ましくは0.0005~10質量%、より好ましくは0.001~3質量%である。
【0030】
さらに、本発明の組成物は、その他の高分子を含んでいてもよい。その含有量は、特に限定されるものではないが、組成物中に、0.0001~99質量%程度とすることが好ましく、0.001~90質量%程度とすることがより好ましい。
その他の高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔P(VDF-HFP)〕、フッ化ビニリデン-塩化3フッ化エチレン共重合体〔P(VDF-CTFE)〕などのフッ素系樹脂、ポリビニルピロリドン、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)、EEA(エチレン-アクリル酸エチル共重合体)などのポリオレフィン系樹脂;PS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、AS(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、MS(メタクリル酸メチル-スチレン共重合体)、スチレン-ブタジエンゴムなどのポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアクリル酸ナトリウム、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などの(メタ)アクリル樹脂;PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、PLA(ポリ乳酸)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペートなどのポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリグルコール酸;変性でんぷん;酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース;キチン、キトサン;リグニン等の熱可塑性樹脂や、ポリアニリンおよびその半酸化体であるエメラルジンベース;ポリチオフェン;ポリピロール;ポリフェニレンビニレン;ポリフェニレン;ポリアセチレン等の導電性高分子、さらにはエポキシ樹脂;ウレタンアクリレート;フェノール樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂などが挙げられるが、本発明の組成物においては、溶媒として水を用いることが好適であることから、その他の高分子としても水溶性のもの、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、水溶性セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリスチレンスルホン酸、ポリエチレングリコール等が挙げられるが、特に、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が好適である。
【0031】
その他の高分子は、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製、重合度2,700~7,500)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)、アルギン酸ナトリウム(関東化学(株)製、鹿1級)、メトローズSHシリーズ(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、信越化学工業(株)製)、メトローズSEシリーズ(ヒドロキシエチルメチルセルロース、信越化学工業(株)製)、JC-25(完全ケン化型ポリビニルアルコール、日本酢ビ・ポバール(株)製)、JM-17(中間ケン化型ポリビニルアルコール、日本酢ビ・ポバール(株)製)、JP-03(部分ケン化型ポリビニルアルコール、日本酢ビ・ポバール(株)製)、ポリスチレンスルホン酸(Aldrich社製、固形分濃度18質量%、水溶液)等が挙げられる。
【0032】
本発明の組成物の調製法は、特に限定されるものではなく、オキサゾリンポリマーおよび溶媒、並びに必要に応じて用いられる架橋剤、その他の高分子等を任意の順序で混合して分散液を調製すればよい。
この際、混合物を分散処理することが好ましい。分散処理としては、機械的処理である、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等を用いる湿式処理や、バス型やプローブ型のソニケータを用いる超音波処理が挙げられるが、特に、ジェットミルを用いた湿式処理や超音波処理が好適である。
分散処理の時間は任意であるが、1分間から10時間程度が好ましく、5分間から5時間程度がより好ましい。この際、必要に応じて加熱処理を施しても構わない。
なお、架橋剤等の任意成分を用いる場合、これらは、オキサゾリンポリマーおよび溶媒からなる混合物を調製した後から加えてもよい。
【0033】
本発明において、組成物の固形分濃度は、特に限定されるものではないが、所望の膜厚で薄膜を形成することを考慮すると、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がより一層好ましい。
また、その下限は、任意であるが、実用的な観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がより一層好ましい。
なお、固形分とは、組成物を構成する溶媒以外の成分の総量である。
【0034】
本発明の組成物に含まれるオキサゾリンポリマーは、エネルギー貯蔵デバイスの電極に用いられる集電基板に対する高い密着性を有している。
したがって、本発明の組成物から得られる薄膜は、エネルギー貯蔵デバイスの電極を構成する集電基板と電極合剤層との間に介在し、両者を結着させる結着層に特に適している。
また、本発明の組成物から得られる薄膜は、導電性炭素材料を含まないにもかかわらず、集電基板と電極合剤層との間の導電性にも影響を与えることがないため、本発明の薄膜は、導電性炭素材料を含む従来のアンダーコート層と同様の機能層として用いることができる。
なお、エネルギー貯蔵デバイスとしては、電気二重層キャパシタ、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、プロトンポリマー電池、ニッケル水素電池、アルミ固体コンデンサ、電解コンデンサ、鉛蓄電池等の各種エネルギー貯蔵デバイスが挙げられるが、本発明の導電性薄膜用組成物から得られる導電性薄膜は、特に、電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池の電極に好適に適用することができる。
【0035】
本発明の組成物を用いた電極作製にあたっては、まず、本発明の組成物を用いて集電体上に薄膜(アンダーコート層)を形成し、複合集電体を作製することが好ましい。
この複合集電体は、集電体上に、上述した組成物を塗布し、これを自然または加熱乾燥し、薄膜を形成して作製することができる。
集電体は、従来、エネルギー貯蔵デバイス用電極の集電体として用いられているものを使用することができる。例えば、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス、ニッケル、金、銀およびこれらの合金や、カーボン材料、金属酸化物、導電性高分子等を用いることができるが、超音波溶接等の溶接を適用して電極構造体を作製する場合、銅、アルミニウム、チタン、ステンレスまたはこれらの合金からなる金属箔を用いることが好ましい。
集電体の厚みは特に限定されないが、本発明においては、1~100μmが好ましい。
また、薄膜の厚みも、特に限定されるものではないが、内部抵抗を低減することを考慮すると、1nm~10μmが好ましく、1nm~1μmがより好ましく、1~500nmがより一層好ましい。
【0036】
薄膜の膜厚は、例えば、複合集電体から適当な大きさの試験片を切り出し、それを手で裂く等の手法により断面を露出させ、走査電子顕微鏡(SEM)等の顕微鏡観察により、断面部分で薄膜が露出した部分から求めることができる。
薄膜の膜厚は、公知の方法で調整することができる。例えば、塗布により薄膜を形成する場合、組成物の固形分濃度、塗布回数、塗工機の塗工液投入口のクリアランスなどを変えることで調整できる。
膜厚を厚くしたい場合は、固形分濃度を高くしたり、塗布回数を増やしたり、クリアランスを大きくしたりする。膜厚を薄くしたい場合は、固形分濃度を低くしたり、塗布回数を減らしたり、クリアランスを小さくしたりする。
【0037】
組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、フローコート法、インクジェット法、キャスティング法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、フレキソ印刷法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法などが挙げられるが、作業効率等の点から、インクジェット法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、ダイコート法が好適である。
加熱乾燥する場合の温度も任意であるが、50~200℃程度が好ましく、80~150℃程度がより好ましい。
【0038】
本発明のエネルギー貯蔵デバイス用電極は、上記薄膜上に、電極合材層を形成して作製することができる。この場合、電極合剤層は、本発明の薄膜上に直接形成しても、導電性炭素材料等を含む従来公知の導電層を介在する態様で形成してもよいが、デバイスの内部抵抗等を低減させることを考慮すると、本発明の薄膜上に直接形成することが好ましい。
ここで、活物質としては、従来、エネルギー貯蔵デバイス用電極に用いられている各種活物質を用いることができる。
例えば、リチウム二次電池やリチウムイオン二次電池の場合、正極活物質としてリチウムイオンを吸着・離脱可能なカルコゲン化合物またはリチウムイオン含有カルコゲン化合物、ポリアニオン系化合物、硫黄単体およびその化合物等を用いることができる。
このようなリチウムイオンを吸着離脱可能なカルコゲン化合物としては、例えばFeS2、TiS2、MoS2、V2O6、V6O13、MnO2等が挙げられる。
リチウムイオン含有カルコゲン化合物としては、例えばLiCoO2、LiMnO2、LiMn2O4、LiMo2O4、LiV3O8、LiNiO2、LixNiyM1-yO2(但し、Mは、Co、Mn、Ti、Cr、V、Al、Sn、Pb、およびZnから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を表し、0.05≦x≦1.10、0.5≦y≦1.0)等が挙げられる。
ポリアニオン系化合物としては、例えばLiFePO4等が挙げられる。
硫黄化合物としては、例えばLi2S、ルベアン酸等が挙げられる。
【0039】
一方、上記負極を構成する負極活物質としては、アルカリ金属、アルカリ合金、リチウムイオンを吸蔵・放出する周期表4~15族の元素から選ばれる少なくとも1種の単体、酸化物、硫化物、窒化物、またはリチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な炭素材料を使用することができる。
アルカリ金属としては、Li、Na、K等が挙げられ、アルカリ金属合金としては、例えば、Li-Al、Li-Mg、Li-Al-Ni、Na-Hg、Na-Zn等が挙げられる。
リチウムイオンを吸蔵放出する周期表4~15族の元素から選ばれる少なくとも1種の元素の単体としては、例えば、ケイ素やスズ、アルミニウム、亜鉛、砒素等が挙げられる。
同じく酸化物としては、例えば、スズケイ素酸化物(SnSiO3)、リチウム酸化ビスマス(Li3BiO4)、リチウム酸化亜鉛(Li2ZnO2)、リチウム酸化チタン(Li4Ti5O12)、酸化チタン等が挙げられる。
同じく硫化物としては、リチウム硫化鉄(LixFeS2(0≦x≦3))、リチウム硫化銅(LixCuS(0≦x≦3))等が挙げられる。
同じく窒化物としては、リチウム含有遷移金属窒化物が挙げられ、具体的には、LixMyN(M=Co、Ni、Cu、0≦x≦3、0≦y≦0.5)、リチウム鉄窒化物(Li3FeN4)等が挙げられる。
リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出可能な炭素材料としては、グラファイト、カーボンブラック、コークス、ガラス状炭素、炭素繊維、カーボンナノチューブ、またはこれらの焼結体等が挙げられる。
【0040】
また、電気二重層キャパシタの場合、活物質として炭素質材料を用いることができる。
この炭素質材料としては、活性炭等が挙げられ、例えば、フェノール樹脂を炭化後、賦活処理して得られた活性炭が挙げられる。
【0041】
電極合材層は、以上で説明した活物質と、以下で説明するバインダーポリマーおよび必要に応じて溶媒を合わせて作製した電極スラリーを、本発明の薄膜上に塗布し、自然または加熱乾燥して形成することができる。
【0042】
バインダーポリマーとしては、公知の材料から適宜選択して用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体〔P(VDF-HFP)〕、フッ化ビニリデン-塩化3フッ化エチレン共重合体〔P(VDF-CTFE)〕、ポリビニルアルコール、ポリイミド、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアニリン等の導電性高分子などが挙げられる。
なお、バインダーポリマーの添加量は、活物質100質量部に対して、0.1~20質量部、特に、1~10質量部が好ましい。
溶媒としては、上記組成物用の溶媒で例示した溶媒が挙げられ、それらの中からバインダーの種類に応じて適宜選択すればよいが、PVdF等の非水溶性のバインダーの場合はNMPが好適であり、PAA等の水溶性のバインダーの場合は水が好適である。
【0043】
なお、上記電極スラリーは、導電材を含んでいてもよい。導電材としては、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、天然黒鉛、人造黒鉛、酸化チタン、酸化ルテニウム、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
【0044】
電極スラリーの塗布方法としては、上述した組成物の塗布方法と同様の手法が挙げられる。
また、加熱乾燥する場合の温度も任意であるが、50~400℃程度が好ましく、80~150℃程度がより好ましい。
【0045】
電極は、必要に応じてプレスしてもよい。このとき、プレス圧力は1kN/cm以上が好ましい。プレス法は、一般に採用されている方法を用いることができるが、特に金型プレス法やロールプレス法が好ましい。また、プレス圧力は、特に限定されないが、2kN/cm以上が好ましく、3kN/cm以上がより好ましい。プレス圧力の上限は、40kN/cm程度が好ましく、30kN/cm程度がより好ましい。
【0046】
本発明に係るエネルギー貯蔵デバイスは、上述したエネルギー貯蔵デバイス用電極を備えたものであり、より具体的には、少なくとも一対の正負極と、これら各極間に介在するセパレータと、電解質とを備えて構成され、正負極の少なくとも一方が、上述したエネルギー貯蔵デバイス用電極から構成される。
このエネルギー貯蔵デバイスは、電極として上述したエネルギー貯蔵デバイス用電極を用いることにその特徴があるため、その他のデバイス構成部材であるセパレータや、電解質などは、公知の材料から適宜選択して用いることができる。
セパレータとしては、例えば、セルロース系セパレータ、ポリオレフィン系セパレータ等が挙げられる。
電解質としては、液体、固体のいずれでもよく、また水系、非水系のいずれでもよいが、本発明のエネルギー貯蔵デバイス用電極は、非水系電解質を用いたデバイスに適用した場合にも実用上十分な性能を発揮させ得る。
【0047】
非水系電解質としては、電解質塩を非水系有機溶媒に溶かしてなる非水系電解液が挙げられる。
電解質塩としては、4フッ化硼酸リチウム、6フッ化リン酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等のリチウム塩;テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラプロピルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、メチルトリエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムパークロレート等の4級アンモニウム塩、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等のリチウムイミドなどが挙げられる。
非水系有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類などが挙げられる。
【0048】
エネルギー貯蔵デバイスの形態は特に限定されるものではなく、円筒型、扁平巻回角型、積層角型、コイン型、扁平巻回ラミネート型、積層ラミネート型等の従来公知の各種形態のセルを採用することができる。
コイン型に適用する場合、上述した本発明のエネルギー貯蔵デバイス用電極を、所定の円盤状に打ち抜いて用いればよい。
例えば、リチウムイオン二次電池は、コインセルのワッシャーとスペーサーが溶接されたフタに、一方の電極を設置し、その上に、電解液を含浸させた同形状のセパレータを重ね、さらに上から、電極合材層を下にして本発明のエネルギー貯蔵デバイス用電極を重ね、ケースとガスケットを載せて、コインセルかしめ機で密封して作製することができる。
【0049】
積層ラミネート型に適用する場合、電極合材層が本発明の薄膜(アンダーコート層)の表面の一部または全面に形成された電極における、電極合材層が形成されていない部分(溶接部)で金属タブと溶接して得られた電極構造体を用いればよい。
この場合、電極構造体を構成する電極は一枚でも複数枚でもよいが、一般的には、正負極とも複数枚が用いられる。
正極を形成するための複数枚の電極は、負極を形成するための複数枚の電極と、一枚ずつ交互に重ねることが好ましく、その際、正極と負極の間には上述したセパレータを介在させることが好ましい。
金属タブは、複数枚の電極の最も外側の電極の溶接部で溶接しても、複数枚の電極のうち、任意の隣接する2枚の電極の溶接部間に金属タブを挟んで溶接してもよい。
【0050】
金属タブの材質は、一般的にエネルギー貯蔵デバイスに使用されるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ニッケル、アルミニウム、チタン、銅等の金属;ステンレス、ニッケル合金、アルミニウム合金、チタン合金、銅合金等の合金などが挙げられるが、溶接効率を考慮すると、アルミニウム、銅およびニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属を含んで構成されるものが好ましい。
金属タブの形状は、箔状が好ましく、その厚さは0.05~1mm程度が好ましい。
【0051】
溶接方法は、金属同士の溶接に用いられる公知の方法を用いることができ、その具体例としては、TIG溶接、スポット溶接、レーザー溶接、超音波溶接等が挙げられるが、超音波溶接にて電極と金属タブとを接合することが好ましい。
超音波溶接の手法としては、例えば、複数枚の電極をアンビルとホーンとの間に配置し、溶接部に金属タブを配置して超音波をかけて一括して溶接する手法や、電極同士を先に溶接し、その後、金属タブを溶接する手法などが挙げられる。
本発明では、いずれの手法でも、金属タブと電極とが上記溶接部で溶接されるだけでなく、複数枚の電極同士も互いに超音波溶接されることになる。
溶接時の圧力、周波数、出力、処理時間等は、特に限定されるものではなく、用いる材料やアンダーコート層の有無、目付量などを考慮して適宜設定すればよい。
以上のようにして作製した電極構造体を、ラミネートパックに収納し、上述した電解液を注入した後、ヒートシールすることでラミネートセルが得られる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、測定等に使用した装置は以下のとおりである。
(1)プローブ型超音波照射装置
Hielscher Ultrasonics社製、UIP1000
(2)ワイヤーバーコーター(アンダーコート層形成)
(株)エスエムテー製、PM-9050MC
(3)ホモディスパー(電極スラリーの混合)
プライミクス(株)製、T.K.ロボミックス(ホモディスパー2.5型(φ32)付き)
(4)ビーズミル(電極スラリーの混合)
三菱電機(株)製、FREQROL-E500
(5)自転・公転ミキサー(電極スラリーの脱泡)
(株)シンキー製、あわとり練太郎(ARE-310)
(6)ロールプレス機(電極の圧縮)
有限会社タクミ技研製、SA-602
(7)充放電測定装置(二次電池評価)
東洋システム(株)製、TOSCAT-3100
(8)コインセルかしめ機
宝泉(株)製、手動コインカシメ機CR2032
【0053】
[1]薄膜形成用組成物の製造
[実施例1-1]
オキサゾリンポリマーを含む水溶液であるWS-700(日本触媒(株)製、固形分濃度:25.0質量%)6.94gと、ポリアクリル酸アンモニウムを含む水溶液であるアロンA-30(東亞合成(株)製、固形分濃度:31.6質量%)2.42gと、純水40.64gとを混合し、均一な溶液である薄膜形成用組成物Aを調製した。
【0054】
[比較例1-1]
オキサゾリンポリマーを含む水溶液であるWS-700(日本触媒(株)製、固形分濃度:25.0質量%)2.00gと、純水40.15gと、2-プロパノール(純正化学(株)製、試薬特級)7.35gとを混合し、さらにそこへ導電性炭素材料であるTC-2010(戸田工業(株)製、多層CNT)0.50gを混合した。得られた混合物に対して、プローブ型超音波照射装置を用いて30分間超音波処理を行い、均一に導電性炭素材料が分散した分散液を調製した。これに、ポリアクリル酸アンモニウム(PAA-NH4)を含む水溶液であるアロンA-30(東亞合成(株)製、固形分濃度:31.6質量%)0.70gと、純水41.84gと、2-プロパノール(純正化学(株)製、試薬特級)7.47gとを混合して、均一なCNT分散液である薄膜形成用組成物Bを調製した。
【0055】
[2]複合集電体の製造
[実施例2-1]
実施例1-1で調製した薄膜形成用組成物Aを、集電体である銅箔(厚さ15μm)にワイヤーバーコーターで均一に展開後、110℃で20分乾燥してアンダーコート層を形成し、複合集電体Aを作製した。目付量を測定した結果、50mg/m2であった。
【0056】
[比較例2-1]
薄膜形成用組成物Aを比較例1-1で調製した薄膜形成用組成物Bに変更した以外は、実施例2-1と同様の方法で複合集電体Bを作製した。目付量を測定した結果、47mg/m2であった。
【0057】
[3]電極の製造および密着力評価
[実施例3-1]
活物質としてシリコン(日本NER(株)製)13.5g、バインダーとしてポリアクリル酸(PAA、富士フイルム和光純薬(株)製)3.6g、導電助剤としてアセチレンブラック(AB、デンカ(株)製)0.9gおよび水42.0gを、ホモディスパーにて3,000rpmで5分間混合した。次いで、ビーズミルを用いて2,000rpmで30分の混合処理をし、さらに自転・公転ミキサーにて1,000rpmで2分脱泡して電極スラリー(固形分濃度30質量%、シリコン:PAA:AB=75:20:5(質量比))を作製した。得られた電極スラリーを、実施例2-1で作製した複合集電体Aに展開後、80℃で30分、次いで120℃で30分乾燥してアンダーコート層上に活物質層を形成し、さらにロールプレス機で1.2kN/cmのプレス圧で圧着することで電極Aを作製した。
【0058】
[比較例3-1]
複合集電体Aを比較例2-1で作製した複合集電体Bに変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、電極Bを作製した。
【0059】
[比較例3-2]
複合集電体Aを無垢の銅箔に変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、電極Cを作製した。
【0060】
上記実施例3-1および比較例3-1,3-2で作製した電極A~Cを、それぞれ25mm幅で切り出し、電極合材層塗工面に20mm幅の両面テープを貼り付けてガラス基板上に固定した。これを粘着・皮膜剥離解析装置に固定して剥離角度90°かつ剥離速度100mm/minで剥離試験を行い、密着力を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
表1に示されるように、導電性炭素材料を含まない薄膜形成用組成物Aを用いて作製された薄膜を備えた実施例3-1の電極は、導電性炭素材料を含む薄膜を備えた比較例3-1の電極および無垢の銅箔を用いた比較例3-2の電極に比べ、プレス前プレス後ともに、密着力に優れていることがわかる。すなわち、薄膜形成用組成物Aから得られたアンダーコート層は、活物質との密着性に優れていることがわかる。
【0063】
[4]電極の製造およびサイクル特性評価
[実施例4-1]
活物質として一酸化珪素(SiO、(株)大阪チタニウムテクノロジーズ製)2.16g、黒鉛(SNO-10、SECカーボン(株)製)5.04g、バインダーとしてポリアクリル酸リチウム(PAALi)0.23g、導電助剤としてアセチレンブラック(AB、デンカ(株)製)0.39gおよび水11.69gを、自転・公転ミキサーで混合処理して電極スラリー(固形分濃度40質量%、SiO:SNO-10:PAALi:AB=27.6:64.4:3.0:5.0(質量比))を作製した。得られた電極スラリーを、複合集電体Aに展開後、80℃で30分乾燥してアンダーコート層上に活物質層を形成し、さらにロールプレス機で0.1kN/cmのプレス圧で圧着して電極Dを作製した。
【0064】
[比較例4-1]
複合集電体Aを複合集電体Bに変更した以外は、実施例4-1と同様の方法で、電極Eを作製した。
【0065】
[比較例4-2]
複合集電体Aを無垢の銅箔に変更した以外は、実施例4-1と同様の方法で、電極Fを作製した。
【0066】
上記実施例4-1および比較例4-1,4-2で作製した電極D~Fから、それぞれ直径10mmの円盤状の電極を3枚打ち抜き、電極層の質量(打ち抜いた電極の質量から、電極未塗工部を直径10mmに打ち抜いたものの質量を差し引いたもの)および電極層厚み(打ち抜いた電極の厚みから、基材の厚みを引いたもの)を測定し、120℃で15時間真空乾燥し、アルゴンで満たされたグローブボックスに移した。2032型のコインセル(宝泉(株)製)のワッシャーとスペーサーが溶接されたフタにガスケット、直径14mmに打ち抜いたリチウム箔(本荘ケミカル(株)製、厚み0.17mm)を設置し、その上に、電解液(キシダ化学(株)製、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7(体積比)、電解質であるリチウムヘキサフルオロホスフェートを1.2mol/L、添加剤であるフルオロエチレンカーボネート20体積%含む。)を100μL滴下した後、直径16mmに打ち抜いたセパレータ(セルガード(株)製、セルガード♯2400)を一枚重ねた。さらに上から、活物質を塗布した面を下にして電極を重ねた。電解液を200μL滴下した後、ワッシャーとスペーサーが溶接されたフタを載せて、コインセルかしめ機で密封した。その後、15時間静置し、試験用の二次電池を3個作製した。
【0067】
作製した試験用二次電池について、電気化学特性を評価した。アンダーコート層が電池に及ぼす影響を評価することを目的として、充放電測定装置を用いて、表2に示した条件で充放電試験を行った。サイクル試験1サイクル目の結果を
図1に示す。
【0068】
【表2】
・カットオフ電圧:1.5-0.005V
・試験電池数:3個
・温度:室温
・定電圧充電は各レートの1/10でカット
【0069】
図1に示されるように、導電性炭素材料を含まない本発明の薄膜形成用組成物を用いて作製されたアンダーコート層を有する複合集電体Aを備えた電池は、導電性炭素材料が入っていないにもかかわらず、導電性炭素材料を含有している組成物から作製されたアンダーコート層を有する複合集電体Bを備えた電池と同等の初期特性を示すことがわかる。
【0070】
[5]薄膜形成用組成物の保存安定性および塗工性の評価
[実施例5-1、比較例5-1]
上記実施例1-1および比較例1-1で調製した直後の薄膜形成用組成物Aおよび薄膜形成用組成物Bを用いて複合集電体Aおよび複合集電体Bをそれぞれ作製した場合、並びに調製後、50℃、大気雰囲気下で14日間静置した後の薄膜形成用組成物Aおよび薄膜形成用組成物Bを用いて複合集電体Aおよび複合集電体Bをそれぞれ作製した場合について、塗工性を目視で評価した。評価は、〇:均一に塗工可、×:一部凝集物が見られるため塗工不可とした。結果を表3に示す。
また、薄膜形成用組成物Aおよび薄膜形成用組成物Bの作製直後、並びに50℃、大気雰囲気下で14日間静置した後のそれぞれについて粒子径測定を行い、メディアン径(d50)を求めた。結果を表3に示す。
【0071】
【0072】
表3に示されるように、実施例1-1で作製した薄膜形成用組成物Aは、導電性炭素材料を含有していないため導電性炭素材料の凝集等による不均一化が起こらず、組成物自体が安定であり、長期保存後の塗工性に優れていることがわかる。