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特許7559786ジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート及びその製造方法、コンパウンド製品及びその製造方法、並びに成形品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート及びその製造方法、コンパウンド製品及びその製造方法、並びに成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/183 20060101AFI20240925BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20240925BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C08G63/183
C08G63/78
C08J5/00 CFD
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022029155
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2022158961
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2021059925
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岸下 稔
(72)【発明者】
【氏名】松園 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】山中 康史
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-277719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/183
C08G 63/78
C08J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分に由来するユニットと、1,4-ブタンジオールを主成分とし、ジブチレングリコールを含むジオール成分に由来するユニットとからなるジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、前記ジカルボン酸成分に由来するユニットに対するジブチレングリコールに由来するユニットの割合が0.13~1.0モル%であることを特徴とするジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項2】
チタンの含有量が100質量ppm以下である請求項1に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項3】
チタンの含有量が50質量ppm以下である請求項2に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項4】
末端メトキシカルボニル基濃度が0.5当量/トン以下である請求項1~3の何れか1項に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項5】
周期表2A族金属の含有量が金属原子として5~50ppmである請求項1~4の何れか1項に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項6】
周期表2A族金属がマグネシウムである請求項5に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項7】
末端カルボキシル基濃度が5~30当量/トンである請求項1~6の何れか1項に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項8】
固有粘度が0.6~1.3dL/gである請求項1~7の何れか1項に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【請求項9】
真空発生装置用の蒸気として使用した1,4-ブタンジオール組成物を、製造原料として使用することを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートの製造方法。
【請求項10】
真空発生装置用の蒸気発生槽の温度を256℃以下にする請求項9に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートの製造方法。
【請求項11】
原料の少なくとも一部として、請求項1~8の何れか1項に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートペレットを使用したことを特徴とするコンパウンド製品。
【請求項12】
原料の少なくとも一部として、請求項1~8の何れか1項に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートペレットを使用し、押出機を使用して混練することを特徴とするコンパウンド製品の製造方法。
【請求項13】
前記押出機による混練樹脂温度が320℃以下である請求項12に記載のコンパウンド製品の製造方法。
【請求項14】
成形材料の少なくとも一部として、請求項11に記載のコンパウンド製品を使用したことを特徴とする成形品。
【請求項15】
成形材料の少なくとも一部として、請求項11に記載のコンパウンド製品を使用し、射出成形機を使用して射出成形することを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項16】
前記射出成形時の溶融樹脂温度が280℃以下である請求項15に記載の成形品の製造方法。
【請求項17】
成形材料の少なくとも一部としてリサイクル原料を使用する請求項15又は請求項16に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートに関し、詳しくは、色調、耐加水分解性、熱安定性、成形性に優れ、しかも、電気電子部品、自動車部品などに好適に使用することが出来るジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートに関する(以下、ジブチレングリコールをDBG、ポリブチレンテレフタレートをPBTと略記することがある)。
本発明はまた、このDBG共重合PBTの製造方法と、このDBG共重合PBTを用いたコンパウンド製品及びその製造方法、並びに成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、その優れた機械的性質と化学的性質から、工業的に重要な位置を占めている。芳香族ポリエステル樹脂、なかでもPBT、は耐熱性、耐薬品性に優れた樹脂で、成形加工の容易さと経済性から、電気電子部品、自動車部品、精密機器部品などの射出成形用途等の分野で広く使用されている。
【0003】
PBTは、テレフタル酸成分と1,4-ブタンジオール(以下、1,4-ブタンジオールをBDOと略記することがある)成分とを原料として、エステル化反応又はエステル交換反応を経たのち、高温減圧下、溶融重合法で合成される。この際、原料のBDO蒸気を駆動源とするエゼクターを減圧のための真空発生装置として用いるならば、効率的、経済的にPBTを製造することが出来る。この場合、BDOに関し重合系(エステル化反応又はエステル交換反応を含む)及びエゼクターの循環系を構成することにより、より効率的な製造を行うことが出来る。
【0004】
しかるに、本発明者は、BDOを駆動源とするエゼクターから回収したBDOには、BDOが2量化したDBGが少なからず含まれることを知見した。特に、PBT原料の酸成分としてテレフタル酸を用いると、テレフタル酸ジメチルを用いる場合に比べてこの傾向が顕著となる。
BDOが加温により脱水環化して一部テトラヒドロフランとなることはよく知られているが、エゼクターに使用したBDOからDBGが一定量生成することはこれまで知られていないこと、そして、本発明者は、このDBGはBDOより高沸点であるため、循環系から系外に留出することはないこと、DBGを含むBDOをPBT原料として使用するとDBGがPBTに共重合されてしまうことも知見した。
【0005】
従来、DBGに関しては、特許文献1及び特許文献2に記載がある。
特許文献1には、PBTに用いるジオール成分の一つの例としてDBGが記載されているが、それ以上の記載はなく、その物性やそれがPBTの物性などに及ぼす影響などについては記載されていない。
特許文献2には、PBT組成物における遊離の芳香族ジカルボン酸ジブチレングリコールエステルを100ppm以下にする旨が記載されている。しかし、この技術は、酸化防止剤を添加することなどにより遊離の芳香族ジカルボン酸ジブチレングリコールエステル成分を減らすことを特徴とするもので、DBGの生成や生成したDBGがPBTに共重合されてしまうことに関しては触れるところがない。
【0006】
ところで、PBTを用いた射出成形などの成形加工においては、その成形加工の前にPBTの乾燥を行う必要がある。これは、この操作を行わないと、樹脂中に含まれる水分によりエステル結合が加水分解を起こし、分子量の低下を引き起こしてしまうからである。分子量の低下は、成形品の強度や耐衝撃性の低下をもたらすなど、成形品の品質を著しく損なうので好ましくない。また、成形品の品質を損なうだけでなく、水分が金型内で蒸発し、気泡や銀条(シルバーストリーク)、ウェルドライン、くもりなど、さまざまな外観的な成形トラブルが発生する問題もある。
【0007】
このようなことから、PBTは成形前に乾燥を行ってから成形機に供給される。乾燥処理には、真空下で乾燥する真空乾燥機、窒素下で加熱するイナートオーブン乾燥機、空気下で加熱する棚段乾燥機、熱風乾燥機、ホッパードライヤーなど種々の乾燥機が用いられる。なかでも、使いやすさ、コストの点から、空気下で加熱するタイプの乾燥機が使用されることが多い。この場合、乾燥を短時間で終わらせるべく、乾燥温度を上げることがしばしば行われる。また、休日等の工場の稼動停止後に運転を再開して成形を行う場合、稼動停止前からの乾燥を継続して行う結果、乾燥時間が数十時間もの長時間に及ぶこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-277719号公報
【文献】特開2008-291237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、DBGが生成したBDOを用いて製造されたPBTは、DBGが共重合されて含まれるものとなること、このようにDBGが一定量共重合したPBTを、成形に先立ち、例えば、常圧の空気下で加温、乾燥すると、着色、特に黄色味が増加してしまうことを知見した。着色を防止するため、予めPBTに酸化防止剤を配合するには、操作が煩雑となり、また経済性も劣るようになる上に、ブリードアウトの問題も起こり、好ましくない。
【0010】
なお、PBT原料のジカルボン酸成分としてテレフタル酸ではなくテレフタル酸ジメチルを用いた場合は、ジカルボン酸成分に対するBDOの量が相対的に少ないこと、またテレフタル酸由来の酸触媒がないことから、DBGの発生を抑制することが出来る。しかし、この場合には、原料コストの関係から経済性に劣る上、テレフタル酸ジメチルを用いて得られたPBTには、原料由来のメトキシカルボニル基が末端に残存してしまうという問題が起こる。
【0011】
PBTの末端メトキシカルボニル基は、以下の点において、その低減が求められる。
即ち、近年、PBTは食品包装用のフィルム等に多く使用されるようになってきたが、成形中の熱や、電子レンジによる加熱、食品中に含まれる酵素や酸、塩基により、メタノールの他、その酸化物であるホルムアルデヒドやギ酸を発生し、有害性問題を惹起している。また、同様に混練や成形時の熱により、メタノールの他、その酸化物であるホルムアルデヒドやギ酸を発生する。ギ酸は金属製の重合装置や成形機器、真空関連機器などを痛める原因にもなっており、その低減が求められている。
これらはPBTの末端メトキシカルボニル基に起因して起こるため、PBTの末端メトキシカルボニル基は低いことが好ましく、そのためには、テレフタル酸ジメチルよりもテレフタル酸を用いることが好ましい。ただし、この場合には、DBGの発生が問題となる。
【0012】
本発明の目的は、空気下での乾燥時の色調変化が少なく、電気電子部品、自動車部品などに好適に使用することが出来るDBG共重合PBTを提供することにある。
本発明はまた、このDBG共重合PBTの製造方法と、このDBG共重合PBTを用いたコンパウンド製品及びその製造方法、並びに成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、DBG共重合量が所定の範囲であるDBG共重合PBTを用いるならば、この課題を解決することが出来ることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0015】
[1] テレフタル酸成分を主成分とするジカルボン酸成分に由来するユニットと、1,4-ブタンジオールを主成分とし、ジブチレングリコールを含むジオール成分に由来するユニットとからなるジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、前記ジカルボン酸成分に由来するユニットに対するジブチレングリコールに由来するユニットの割合が0.05~1.0モル%であることを特徴とするジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0016】
[2] チタンの含有量が100質量ppm以下である[1]に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0017】
[3] チタンの含有量が50質量ppm以下である[2]に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0018】
[4] 末端メトキシカルボニル基濃度が0.5当量/トン以下である[1]~[3]の何れかに記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0019】
[5] 周期表2A族金属の含有量が金属原子として5~50重量ppmである[1]~[4]の何れかに記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0020】
[6] 周期表2A族金属がマグネシウムである[5]に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0021】
[7] 末端カルボキシル基濃度が5~30当量/トンである[1]~[6]の何れかに記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0022】
[8] 固有粘度が0.6~1.3dL/gである[1]~[7]の何れかに記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレート。
【0023】
[9] 真空発生装置用の蒸気として使用した1,4-ブタンジオール組成物を、製造原料として使用することを特徴とする[1]~[8]の何れかに記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートの製造方法。
【0024】
[10] 真空発生装置用の蒸気発生槽の温度を256℃以下にする[9]に記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートの製造方法。
【0025】
[11] 原料の少なくとも一部として、[1]~[8]の何れかに記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートペレットを使用したことを特徴とするコンパウンド製品。
【0026】
[12] 原料の少なくとも一部として、[1]~[8]の何れかに記載のジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートペレットを使用し、押出機を使用して混練することを特徴とするコンパウンド製品の製造方法。
【0027】
[13] 前記押出機による混練樹脂温度が320℃以下である[12]に記載のコンパウンド製品の製造方法。
【0028】
[14] 成形材料の少なくとも一部として、[11]に記載のコンパウンド製品を使用したことを特徴とする成形品。
【0029】
[15] 成形材料の少なくとも一部として、[11]に記載のコンパウンド製品を使用し、射出成形機を使用して成形することを特徴とする成形品の製造方法。
【0030】
[16] 前記射出成形時の溶融樹脂温度が280℃以下である[15]に記載の成形品の製造方法。
【0031】
[17] 成形材料の少なくとも一部としてリサイクル原料を使用する[15]又は[16]に記載の成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明のDBG共重合PBTは、空気下での乾燥時の色調増加が少ない。このようなDBG共重合PBT、それを含むコンパウンド製品、及び成形品は電気電子部品、自動車部品などに好適に使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明で採用するエステル化反応工程またはエステル交換反応工程の一例の説明図である。
図2】本発明で採用する重縮合工程の一例の説明図である。
図3】本発明で採用する重縮合工程の他の一例の説明図である。
図4】本発明で採用する真空発生工程の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
【0035】
[DBG共重合PBT]
本発明のDBG共重合PBTは、テレフタル酸成分を主成分とするジカルボン酸成分に由来するユニットと、1,4-ブタンジオールを主成分し、ジブチレングリコールを含むジオール成分に由来するユニットとからなるジブチレングリコール共重合ポリブチレンテレフタレートであって、前記ジカルボン酸成分に由来するユニットに対するジブチレングリコールに由来するユニットの割合(以下、この割合を「DBG共重合量」と称す場合がある。)が0.05~1.0モル%であることを特徴とする。
【0036】
なお、本発明において、ジカルボン酸成分における「主成分」とは、当該成分中に50モル%以上含まれる成分をいう。また、ジオール成分における「主成分」についても同様である。
また、「ユニット」とは、原料化合物からDBG共重合PBT中に取り込まれた構造単位をさし、例えばDBGに由来するユニットとは、DBGに由来してDBG共重合PBT中に取り込まれた構造単位をさす。
【0037】
本発明において、PBTとは、テレフタル酸成分及び1,4-ブタンジオール(BDO)成分がエステル結合した構造を有し、ジカルボン酸成分の50モル%以上がテレフタル酸成分から成り、ジオール成分の50モル%以上がBDOから成るポリマーを言う。全ジカルボン酸成分中のテレフタル酸成分の割合は、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上であり、全ジオール成分中のBDOの割合は、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、特に好ましくは、DBGを除き全てである。テレフタル酸成分又はBDOが50モル%より少ない場合は、PBTの結晶化速度が低下し、成形性の悪化を招いてしまう。
本発明のDBG共重合PBTは、このようなPBTに対して、更にDBGが共重合成分として取り込まれ、所定の割合でDBGに由来するユニットを含むものである。
【0038】
本発明において、ジカルボン酸成分とはジカルボン酸とジカルボン酸誘導体を含むものである。テレフタル酸以外のジカルボン酸には特に制限はなく、例えば、フタル酸、イソフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることが出来る。ジカルボン酸誘導体としては、これらのジカルボン酸のエステル、ジカルボン酸ハライド等のエステル形成性誘導体が挙げられる。
これらのテレフタル酸成分以外のジカルボン酸成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
本発明においては、BDO及びDBG以外のジオール成分の使用には特に制限はなく、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール等の脂肪族ジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,1-シクロヘキサンジメチロール、1,4-シクロヘキサンジメチロール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン等の芳香族ジオール等を挙げることが出来る。
これらのBDO及びDBG以外のジオール成分についても、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
本発明においては、更に、乳酸、グリコール酸、m-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸、p-β-ヒドロキシエトキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、t-ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸などの単官能成分、トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、没食子酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の三官能以上の多官能成分などの1種又は2種以上を共重合成分として使用することが出来る。
【0041】
尚、本発明のDBG共重合PBTは、エンジニアリングプラスチック用途として用いられる。このため、曲げ弾性率は、2,000MPa以上が好ましく、更に好ましくは2,100MPa、より好ましくは2,200MPa、最も好ましくは2,300MPa以上である。上限値としては特に限定されないが、好ましくは2,700MPaである。
柔軟成分として、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ1,3-プロピレングリコール、ポリ1,2-プロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリネオペンチルグリコール、ポリ3-メチルペンタンジーオール、ポリ1,5-ペンタンジオールなどをPBTに共重合した場合、少量の共重合量であっても、曲げ弾性率が著しく低下し、一般的なエンジニアリングプラスチック用途として用いるには好ましくない。
加えて、これらの柔軟成分が共重合された場合、空気下での乾燥時の色調増加が著しく大きくなり、好ましくない。
このため、本発明のDBG共重合PBTは、これらの柔軟成分に由来するユニットを含まないことが好ましい。
【0042】
本発明のDBG共重合PBTは、DBG共重合量が0.05~1.0モル%であることを特徴とする。DBG共重合量が1.0モル%を超える場合は、空気下、乾燥時のDBG共重合PBTの色調が悪化し、本発明の目的を達成することが出来ない。DBG共重合量を0.05モル%未満にするためには、経済的な不利な条件を採用せざるを得ず好ましくない。敢えてこの範囲のDBG共重合PBTを、例えば通常考えられるテレフタル酸ジメチルを原料とする方法で製造したとしても、そのPBTには末端メトキシカルボニル基が残存してしまい、混練や成形時の熱により、メタノール、ホルムアルデヒド、ギ酸が生成してしまう不具合が生じてしまう。
本発明のDBG共重合PBTのDBG共重合量は0.05モル%以上で、0.95モル%以下が好ましく、0.75モル%以下がより好ましく、0.65モル%以下がさらに好ましく、0.55モル%以下、0.50モル%以下、0.40モル%以下、0.30モル%以下、0.20モル%以下、0.14モル%以下、0.10モル%以下の順に好ましい。
【0043】
なお、DBG共重合PBTのDBG共重合量は、後掲の実施例の項に記載の方法で求めることが出来る。
【0044】
ジオール成分とジカルボン酸成分とのエステル化反応又はジオール成分とジカルボン酸ジエステル等のジカルボン酸のエステル形成性誘導体とのエステル交換反応で得られたオリゴマーを重縮合する際には、通常、触媒としてチタン化合物と、好ましくは更に周期表2A族金属化合物が使用される。
これらの触媒成分は、エステル化反応又はエステル交換反応時に使用して、そのまま重縮合反応を行ってもよいし、エステル化反応又はエステル交換反応では使用せずに、又は、チタン触媒のみを使用し、残りの触媒成分は重縮合段階で追加してもよい。更には、エステル化反応又はエステル交換反応で、最終的に使用する触媒量の一部を使用し、重縮合反応の進行と共に適宜追加することも出来る。何れにしても、本発明においては、最終的に得られるDBG共重合PBT中に、必然的にチタン及び好ましくは周期表2A族金属が含有されるが、その量については後述する。なお、以下において、チタン化合物をチタン触媒、周期表2A族金属化合物を2A族金属触媒ということがある。
【0045】
チタン化合物の具体例としては、酸化チタン、四塩化チタン等の無機チタン化合物、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中ではテトラアルキルチタネートが好ましく、その中ではテトラブチルチタネートが好ましい。
【0046】
本発明のDBG共重合PBTにおけるチタンの含有量は、チタン原子としてDBG共重合PBTに対する質量比で5~100ppmであることが好ましい。この量は10ppm以上がより好ましく、20ppm以上がさらに好ましく、25ppm以上が最も好ましい。またこの量は80ppm以下が好ましく、60ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましく、40ppm以下が最も好ましい。
チタンの含有量が多過ぎる場合は、色調、耐加水分解性などが悪化し、少な過ぎる場合は重合性が悪化する。
【0047】
本発明における周期表2A族金属化合物の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの各種化合物が挙げられるが、取り扱いや入手の容易さ、触媒効果の点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が好ましく、特に、触媒効果に優れるマグネシウム化合物が好ましい。マグネシウム化合物の具体例としては、酢酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキサイド、燐酸水素マグネシウム等が挙げられる。カルシウム化合物の具体例としては、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキサイド、燐酸水素カルシウム等が挙げられる。これらの周期表2A族金属化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中では酢酸マグネシウムが好ましい。
【0048】
本発明のDBG共重合PBTにおける周期表2A族金属の含有量は、特に制限されないが、周期表2A族金属原子としてPBTに対する質量比で3~150ppmであることが好ましい。この量は5ppm以上がより好ましく、10ppm以上がさらに好ましい。またこの量は50ppm以下がより好ましく、40pp以下がさらに好ましく、30ppm以下が特に好ましく、15ppm以下が最も好ましい。周期表2A族金属の含有量が多過ぎる場合は、色調、耐加水分解性などが悪化し、少な過ぎる場合は重合性が悪化する。
【0049】
本発明のDBG共重合PBTに含まれるチタン原子と周期表2A族金属原子のモル比(周期表2A族金属/チタン)は、通常0.01~100、好ましくは0.1~10、更に好ましくは0.3~3、特に好ましくは0.3~1.5である。
【0050】
DBG共重合PBT中のチタン原子などの金属含有量は、湿式灰化などの方法でポリマー中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、InductivelyCoupledPlasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
【0051】
本発明のDBG共重合PBTの製造に際しては、前記のチタン化合物や周期表2A族金属化合物とは別に、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、正燐酸、亜燐酸、次亜燐酸、ポリ燐酸、それらのエステルや金属塩などの燐化合物、水酸化ナトリウム、安息香酸ナトリウム等の反応助剤を使用してもよい。
【0052】
DBG共重合PBTの末端には、水酸基、カルボキシル基、ビニル基の他に、原料由来のメトキシカルボニル基が残存していることがあり、特にテレフタル酸ジメチルを原料とする場合には多く残存することがある。この末端メトキシカルボニル基は、混練や成形時の熱によりメタノールの他、その酸化物であるホルムアルデヒドやギ酸を発生する。前述の通り、電気電子部品用途あっては、ギ酸は、接点腐食の懸念、金属製の成形機器や真空関連機器などを痛めてしまため好ましくない。従って、本発明のDBG共重合PBTにおける末端メトキシカルボニル基の濃度は0.5当量/トン以下とするのがよい。末端メトキシカルボニル基濃度は、好ましくは0.3当量/トン以下、より好ましくは0.2当量/トン以下、さらに好ましくは0.1当量/トン以下である。末端メトキシカルボニル基を上記上限以下とするには、ジカルボン酸成分としてジカルボン酸、好ましくはテレフタル酸を使用すればよい。
【0053】
本発明のDBG共重合PBTの末端カルボキシル基濃度は、通常0.1~50当量/トン、好ましくは1~40当量/トン、より好ましくは5~30当量/トン、特に好ましくは10~25当量/トンである。末端カルボキシル基濃度が高すぎる場合は耐加水分解性が悪化することがある。この値を0.1当量/トン未満とするためには、例えば極めて少量の製造規模とするなど、経済的に不利な条件を採用せざるを得ず現実的ではない。
【0054】
また、本発明のDBG共重合PBTの末端ビニル基濃度は、通常0.1~10当量/トン、好ましくは0.5~8当量/トン、より好ましくは1~5当量/トンである。末端ビニル基濃度が高すぎる場合は、色調悪化の原因となる。成形時の熱履歴により、末端ビニル基濃度は更に上昇する傾向にあるため、成形温度が高い場合や、リサイクル工程を有する製造方法の場合には、更に色調悪化が顕著となる。
【0055】
なお、DBG共重合PBTの末端メトキシカルボニル基濃度、末端カルボキシル基濃度、末端ビニル基濃度は、後掲の実施例の項に記載の方法で求めることが出来る。
【0056】
本発明のDBG共重合PBTの固有粘度は0.6~1.3dL/gであることが好ましい。固有粘度が0.6dL/g未満の場合は成形品の機械的強度が不十分となり、1.3dL/gを超える場合は溶融粘度が高くなり、流動性が悪化して、成形性が悪化する傾向にある。本発明のDBG共重合PBTの固有粘度は、より好ましくは0.65~1.26dL/g、更に好ましくは0.7~1.2dL/gである。
DBG共重合PBTの固有粘度は、後掲の実施例の項に記載の方法で求めることが出来る。
【0057】
本発明のDBG共重合PBTの降温結晶化温度は、通常160~200℃、好ましくは170~195℃、更に好ましくは175~190℃である。本発明における降温結晶化温度とは、示差走査熱量計を使用して樹脂が溶融した状態から降温速度20℃/minで冷却した際に現れる結晶化による発熱ピークの温度である。降温結晶化温度は、結晶化速度と対応し、降温結晶化温度が高いほど結晶化速度が速いため、射出成形に際して冷却時間を短縮し、生産性を高めることが出来る。降温結晶化温度が低い場合は、射出成形に際して結晶化に時間が掛かり、射出成形後の冷却時間を長くせざるを得なくなり、成形サイクルが伸びて生産性が低下する傾向にある。
本発明のDBG共重合PBTの降温結晶化温度は、後掲の実施例の項に記載の方法で求めることが出来る。
【0058】
本発明のDBG共重合PBTの溶液ヘイズは、特に制限されないが、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。溶液ヘイズが高い場合は、異物も増加する傾向があるため、商品価値を著しく落とす。溶液ヘイズは、チタン触媒の失活が大きい場合に上昇する傾向がある。
DBG共重合PBTの溶液ヘイズは、後掲の実施例の項に記載の方法で求めることが出来る。
【0059】
[DBG共重合PBTの製造方法]
次に、本発明のDBG共重合PBTの製造方法について説明する。本発明のDBG共重合PBTの製造方法は、原料面から、ジカルボン酸を主原料として使用するいわゆる直接重合法と、ジカルボン酸ジアルキルを主原料として使用するエステル交換法とに大別される。前者は初期のエステル化反応で主に水が生成し、後者は初期のエステル交換反応で主にアルコールが生成するという違いがある。
【0060】
また、DBG共重合PBTの製造方法は、原料供給又はポリマーの払い出し形態から回分法と連続法に大別される。初期のエステル化反応又はエステル交換反応を連続操作で行って、それに続く重縮合を回分操作で行ったり、逆に、初期のエステル化反応又はエステル交換反応を回分操作で行って、それに続く重縮合を連続操作で行う方法もある。
【0061】
本発明においては、原料の入手安定性、留出物の処理の容易さ、原料原単位の高さ、本発明による改良効果という観点から、BDOを真空発生用の蒸気として使用する連続重合法が好ましい。また、本発明においては、生産性や製品品質の安定性、本発明による改良効果の観点から、連続的に原料を供給し、連続的にエステル化反応又はエステル交換反応を行う方法を採用し、エステル化反応又はエステル交換反応に続く重縮合反応も連続的に行ういわゆる連続法が好ましい。
【0062】
本発明においては、エステル化反応槽又はエステル交換反応槽にて、好ましくはチタン触媒の存在下、少なくとも一部のBDOをテレフタル酸(又はテレフタル酸ジアルキル)とは独立にエステル化反応槽又はエステル交換反応槽に供給しながら、テレフタル酸(又はテレフタル酸ジアルキル)とBDOとを連続的にエステル化又はエステル交換する工程が好ましく採用される。以後、テレフタル酸(又はテレフタル酸ジアルキル)とは独立にエステル化反応槽又はエステル交換反応槽に供給されるBDOを「別供給BDO」と称することがある。
【0063】
上記の「別供給BDO」には、プロセスとは無関係の新鮮なBDOを当てることが出来る。また、「別供給BDO」は、エステル化反応槽又はエステル交換反応槽から留出したBDOをコンデンサ等で捕集し、そのまま、又は、一時タンク等へ保持して反応槽に還流させたり、不純物を分離、精製して純度を高めたBDOとして供給することも出来る。以後、コンデンサ等で捕集されたBDOから構成される「別供給BDO」を「再循環BDO」又は「リサイクルBDO」と称することがある。資源の有効活用、設備の単純さの観点からは、「再循環BDO(リサイクルBDO)」を「別供給BDO」に当てることが好ましい。
【0064】
また、通常、エステル化反応槽又はエステル交換反応槽より留出したBDOは、BDO以外に、水、アルコール、テトラヒドロフラン、ジヒドロフラン等の成分を含んでいる。従って、上記の留出したBDOは、コンデンサ等で捕集した後、又は、捕集しながら、水、アルコール、テトラヒドロフラン等の成分と分離、精製し、反応槽に戻すことが好ましい。
【0065】
また、本発明においては、触媒の失活を防ぐため、エステル化反応又はエステル交換反応に使用されるチタン触媒の内、10質量%以上をテレフタル酸(又はテレフタル酸ジアルキル)とは独立に反応液液相部に直接供給することが好ましい。ここで、反応液液相部とは、エステル化反応槽又はエステル交換反応槽中の気液界面の液相側を示し、反応液液相部に直接供給するとは、配管などを使用し、チタン触媒が反応器の気相部を経由せずに直接液相部分に供給されることを表す。反応液液相部に直接添加するチタン触媒の割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0066】
上記のチタン触媒は、溶媒などに溶解させたり又は溶解させずに直接エステル化反応槽又はエステル交換反応槽の反応液液相部に供給することも出来るが、供給量を安定化させ、反応器の熱媒ジャケット等からの熱による変性などの悪影響を軽減するためには、BDO等の溶媒で希釈することが好ましい。この際の濃度は、溶液全体に対するチタン触媒の濃度として、通常0.01~20質量%、好ましくは0.05~10質量%、より好ましくは0.08~8質量%である。また、異物低減の観点から、溶液中の水分濃度は、通常0.05~1.0質量%である。触媒溶液調製の際の温度は、失活や凝集を防ぐ観点から、通常20~150℃、好ましくは30~100℃、より好ましくは40~80℃である。また、触媒溶液は、劣化防止、析出防止、失活防止の点から、別供給BDOと配管などで混合してエステル化反応槽又はエステル交換反応槽に供給することが好ましい。
【0067】
また、2A族金属触媒もエステル化反応槽又はエステル交換反応槽に供給してもよい。2A族金属触媒の供給位置に特に制限はなく、これら反応槽の反応液気相部から反応液上面へ供給してもよいし、反応液液相部に直接供給してもよい。また、この場合、テレフタル酸やチタン化合物と共に供給してもよいし、独立して供給してもよいが、触媒の安定性の観点からはテレフタル酸やチタン化合物とは独立に、反応液気相部から反応液上面に供給することが好ましい。
【0068】
2A族金属触媒は、通常固体であり、そのまま供給することも出来るが、供給量を安定化させ、熱による変性などの悪影響を軽減するため、BDO等の溶媒で希釈して供給することが好ましい。この際の濃度は、溶液全体に対する2A族金属触媒の濃度として、通常0.01~20質量%、好ましくは0.05~10質量%、より好ましくは0.08~8質量%である。この溶液には、析出防止、熱安定性の向上などの目的で水を少量添加してもよい。
【0069】
一方、2A族金属触媒は、エステル化反応槽又はエステル交換反応槽に続く重縮合反応槽へのオリゴマー配管や重縮合反応槽に添加することも出来る。この場合も、供給量を安定化させ、熱による変性などの悪影響を軽減するため、BDO等の溶媒で2A族金属触媒を希釈することが好ましい。この際の濃度は、溶液全体に対する2A族金属触媒の濃度として、通常0.01~20質量%、好ましくは0.05~10質量%、更に好ましくは0.08~8質量%である。この溶液には、析出防止、熱安定性の向上などの目的で水を少量添加してもよい。
【0070】
直接重合法を採用した連続エステル化法の一例は、次の通りである。
すなわち、テレフタル酸を主成分とする前記ジカルボン酸成分とBDOを主成分とする前記ジオール成分とを原料混合槽で混合してスラリーとし、単数又は複数のエステル化反応槽内で、好ましくはチタン触媒及び2A族金属触媒の存在下に、DBGの発生を調整しながら、エステル化反応を行う必要がある。反応温度は、好ましくは230℃以下、より好ましくは228℃以下、さらに好ましくは227℃以下、最も好ましくは226℃以下である。反応温度の下限は特に限定されないが、好ましくは210℃、より好ましくは215℃である。圧力は、通常10~133kPa、好ましくは13~101kPa、より好ましくは60~90kPaの圧力(絶対圧力、以下同じ)下で行う。また、滞留時間は、好ましくは、3.6時間以下、より好ましくは3.1時間以下、さらに好ましくは2.6時間以下、最も好ましくは2.5時間以下である。滞留時間の下限は特に限定されないが、好ましくは1時間である。
【0071】
直接重合法の場合は、テレフタル酸とBDOとのモル比は、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
BM/TM=1.1~4.0(モル/モル) …(1)
(但し、BMは単位時間当たりにエステル化反応槽に外部から供給されるBDOのモル数、TMは単位時間あたりにエステル化反応槽に外部から供給されるテレフタル酸のモル数)
【0072】
上記の「エステル化反応槽に外部から供給されるBDO」とは、原料スラリー又は溶液として、テレフタル酸と共に供給されるBDOの他、これらとは独立に供給するBDO(別供給BDO)、触媒の溶媒として使用されるBDO等、反応槽外部から反応槽内に入るBDOの総和である。
【0073】
得られるDBG共重合PBTのDBG共重合量を本発明の規定範囲に調整するには、BM/TMを調整することが効果的である。
BM/TMの値が1.1より小さい場合は、転化率の低下や触媒失活を招き、4.0より大きい場合は、熱効率が低下するだけでなく、テトラヒドロフラン、DBG等の副生物が増大する傾向にある。BM/TMの値は、好ましくは1.5~3.9、より好ましくは2.5~3.8、さらに好ましくは3.1~3.5である。
【0074】
本発明においては、得られるDBG共重合PBTのDBG共重合量を1.0モル%以下とするために、供給するBDO中のDBG量を制御する必要がある。このためにはエゼクターの蒸気発生槽の温度を通常用いられる256℃を超える温度ではなく、256℃以下、好ましくは251℃以下、更に好ましくは246℃以下、さらに好ましくは242℃以下とするのがよい。
この蒸気発生槽の温度とDBGの生成とが関係を有すること、そしてこの温度を256℃以下とすることが、DBGの生成を抑制するために極めて有効であることは、本発明者により初めて見出された知見である。
また、温度が242℃以下の場合でも蒸気発生槽でのBDOの平均滞留時間が長くなると、DBG生成量が本発明規定の範囲(ジカルボン酸成分に由来するユニットに対するジブチレングリコールに由来するユニットの割合が0.05~1.0モル%)を超えて増加する場合がある。従って、DBG生成量を制御するには、以下の滞留時間にするのがよい。
この蒸気発生槽におけるBDOの平均滞留時間は、好ましくは5時間以下、より好ましくは4時間以下、さらに好ましくは3時間以下、最も好ましくは2時間以下である。
蒸気発生槽で用いたBDOはDBG共重合PBTの製造に用いるが、その量は製造に使用するBDO全体の質量割合の50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは100%である。
なお、DBGはBDOよりも高沸点なので、蒸気発生槽の液相側に蓄積しやすい。品質が安定したDBG共重合PBTを製造するには、蒸気発生槽の液相側組成物と蒸気側組成物の両方を連続して、製造原料として使用することが好ましい。
【0075】
また、エステル交換法を採用した連続法の一例は、次の通りである。
すなわち、単数又は複数のエステル交換反応槽内で、チタン触媒及び2A族金属触媒の存在下に、通常110~260℃、好ましくは140~245℃、更に好ましくは180~220℃の温度、また、通常10~133kPa、好ましくは13~120kPa、更に好ましくは60~101kPaの圧力下で、通常0.5~5時間、好ましくは1~3時間で、連続的にエステル交換反応させる。
エステル交換法の場合、テレフタル酸メチル等のテレフタル酸ジアルキルとBDOとのモル比は、次の式(2)を満たすことが好ましい。
【0076】
BM/DM=1.1~2.5(モル/モル) …(2)
(但し、BMは単位時間当たりにエステル交換反応槽に外部から供給されるBDOのモル数、DMは単位時間あたりにエステル交換反応槽に外部から供給されるテレフタル酸ジアルキルのモル数)
【0077】
上記のBM/DMの値が1.1より小さい場合は、転化率の低下や触媒活性の低下を招き、2.5より大きい場は、熱効率が低下するだけでなく、テトラヒドロフラン等の副生物が増大する傾向にある。BM/DMの値は、好ましくは1.1~1.8、更に好ましくは1.2~1.5である。
【0078】
エステル化反応槽又はエステル交換反応槽としては、公知のものが使用でき、縦型撹拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽などの何れの型式であってもよく、また、単数槽としても、同種もしくは異種の槽を直列又は並列させた複数槽としてもよい。なかでも、撹拌装置を有する反応槽が好ましく、撹拌装置としては、動力部、軸受、軸、撹拌翼から成る通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式撹拌機、ディスクミル型撹拌機、ローターミル型撹拌機などの高速回転するタイプも使用することが出来る。
【0079】
撹拌の形態は、特に制限されず、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部などから直接撹拌する通常の撹拌方法の他、配管などで反応液の一部を反応器の外部に持ち出してラインミキサー等で撹拌し、反応液を循環させる方法も採ることが出来る。
【0080】
撹拌翼の種類は、公知のものが選択でき、具体的には、プロペラ翼、スクリュー翼、タービン翼、ファンタービン翼、デイスクタービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼などが挙げられる。
【0081】
このようなエステル化反応又はエステル交換反応の反応生成物として得られたオリゴマーは、重縮合反応槽に移される。この際のオリゴマーの数平均分子量は、通常300~3000であり、好ましくは500~1500である。
【0082】
DBG共重合PBTの製造においては、通常、複数段、好ましくは2~5段、特に好ましくは2~3段の反応条件の異なる重縮合反応槽を使用し、順次分子量を上昇させていく。重縮合反応槽の形態は、縦型撹拌完全混合槽、縦型熱対流式混合槽、塔型連続反応槽などの何れの型式であってもよく、また、これらを組み合わせることも出来る。中でも、少なくとも1つの重縮合反応槽においては撹拌装置を有するタイプであることが好ましく、撹拌装置としては、動力部、軸受、軸、撹拌翼から成る通常のタイプの他、タービンステーター型高速回転式撹拌機、ディスクミル型撹拌機、ローターミル型撹拌機などの高速回転するタイプも使用することが出来る。
【0083】
撹拌の形態は、特に制限されず、反応槽中の反応液を反応槽の上部、下部、横部などから直接撹拌する通常の撹拌方法の他、配管などで反応液の一部を反応器の外部に持ち出してラインミキサー等で撹拌し、反応液を循環させる方法も採ることが出来る。中でも、少なくとも重縮合反応槽の1つは、水平方向に回転軸を有する表面更新とセルフクリーニング性に優れた横型の反応器を使用することが推奨される。
【0084】
重縮合反応は、触媒の存在下に、通常210~280℃、好ましくは220~250℃、更に好ましくは230~245℃、特に好ましくは少なくとも一つの反応槽においては230~240℃の温度で、好ましくは撹拌を行いながら、通常1~12時間、好ましくは3~10時間で、通常27kPa以下、好ましくは20kPa以下、特に好ましくは13kPa以下の減圧状態で行う。反応は、回分法でも連続法でも構わないが、ポリマーの品質の安定性や末端カルボキシル基低減等の観点からは、連続法が好ましい。また、着色や劣化を抑え、ビニル基などの末端基の増加を抑制するため、少なくとも1つの反応槽において、通常1.3kPa以下、好ましくは0.5kPa以下、更に好ましくは0.3kPa以下の高真空下で行うのがよい。
【0085】
重縮合反応により得られたポリマーは、通常、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら又は水冷後、カッターで切断され、ペレット状、チップ状などの粒状体とされる。
【0086】
本発明のDBG共重合PBTは、ポリマー前駆体やポリマーの流路にフィルターを設置することにより、更に品質の優れたポリマーとすることが出来る。
【0087】
フィルターの設置位置が製造プロセスの余りにも上流側の場合は、下流側で発生する異物の除去が行えず、下流側の粘度が高い所ではフィルターの圧力損失が大きくなり、流量を維持するためには、フィルターの目開きを大きくしたり、フィルターの濾過面積や配管などの設備を過大にする必要があったり、また、流体通過時に高剪断を受けるため、剪断発熱によるDBG共重合PBTの劣化が不可避となる。従って、フィルターの設置位置は、DBG共重合PBT又はその前駆体の固有粘度が通常0.1~0.9dL/gの位置が選択される。
【0088】
フィルターを構成する濾材としては、金属ワインド、積層金属メッシュ、金属不織布、多孔質金属板などの何れでもよいが、濾過精度の観点から、積層金属メッシュ又は金属不織布が好ましく、特に、その目開きが焼結処理により固定されているものが好ましい。フィルターの形状としては、バスケットタイプ、ディスクタイプ、リーフディスクタイプ、チューブタイプ、フラット型円筒タイプ、プリーツ型円筒タイプ等の何れの型式であってもよい。また、プラントの運転に影響を与えない様にするため、複数のフィルターを設置し、切り替えて使用出来る構造にしたり、オートスクリーンチェンジャーを設置することが好ましい。
【0089】
フィルターの絶対濾過精度は、特に制限されないが、通常0.5~200μm、好ましくは1~100μm、更に好ましくは5~50μm、特に好ましくは10~30μmである。絶対濾過精度が大きすぎる場合は製品中の異物低減効果がなくなり、小さすぎる場合は生産性の低下やフィルター交換頻度の増大を招く。ここに、絶対濾過精度とは、粒径が既知でかつ揃ったガラスビーズ等の標準粒径品を使用し濾過テストを行った場合に、完全に濾別除去される場合の最低粒径を示す。
【0090】
以下、添付図面に基づき、本発明のDBG共重合PBTの製造方法の好ましい実施態様を説明する。図1は、本発明で採用するエステル化又はエステル交換反応工程の一例の説明図、図2図3は、本発明で採用する重縮合工程の一例の説明図、図4は、本発明で採用する真空発生設備工程の一例の説明図である。
【0091】
図1において、原料のテレフタル酸は、通常、原料混合槽(図示せず)でBDOと混合され、原料供給ライン(1)からスラリー又は液体の形態で反応槽(A)に供給される。一方、原料がテレフタル酸ジアルキルの場合は通常溶融した液体としてBDOと独立に反応槽(A)に供給される。また、チタン触媒は、好ましくは触媒調整槽(図示せず)でBDOの溶液とした後、チタン触媒供給ライン(3)から供給される。図1では再循環BDOの再循環ライン(2)に触媒供給ライン(3)を連結し、両者を混合した後、反応槽(A)の液相部に供給する態様を示した。また、2A族金属触媒は、好ましくは触媒調製槽(図示せず)でBDOの溶液とした後、2A族金属触媒供給ライン(15)から供給される。
【0092】
反応槽(A)から留出するガスは、留出ライン(5)を経て精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離される。通常、高沸成分の主成分はBDOであり、低沸成分の主成分は、直接重合法の場合は水及びテトラヒドロフラン、エステル交換法の場合は、アルコール、テトラヒドロフラン、水である。
【0093】
精留塔(C)で分離された高沸成分は抜出ライン(6)から抜き出され、ポンプ(D)を経て、一部は再循環ライン(2)から反応槽(A)に循環され、一部は循環ライン(7)から精留塔(C)に戻される。また、余剰分は抜出ライン(8)から外部に抜き出される。一方、精留塔(C)で分離された軽沸成分はガス抜出ライン(9)から抜き出され、コンデンサ(G)で凝縮され、凝縮液ライン(10)を経てタンク(F)に一時溜められる。タンク(F)に集められた軽沸成分の一部は、抜出ライン(11)、ポンプ(E)及び循環ライン(12)を経て精留塔(C)に戻され、残部は、抜出ライン(13)を経て外部に抜き出される。コンデンサ(G)はベントライン(14)を経て排気装置(図示せず)に接続されている。反応槽(A)内で生成したオリゴマーは、抜出ポンプ(B)及び抜出ライン(4)を経て抜き出される。
【0094】
図1に示す工程においては、再循環ライン(2)に触媒供給ライン(3)が連結されているが、両者は独立していてもよい。また、原料供給ライン(1)は反応槽(A)の液相部に接続されていてもよい。
【0095】
図2において、前述の図1に示す抜出ライン(4)から供給されたオリゴマーは、第1重縮合反応槽(a)で減圧下に重縮合されてプレポリマーとなった後、抜出用ギヤポンプ(c)及び抜出ライン(L1)を経て第2重縮合反応槽(d)に供給される。第2重縮合反応槽(d)では、通常、第1重縮合反応槽(a)よりも低い圧力で更に重縮合が進みポリマーとなる。得られたポリマーは、抜出用ギヤポンプ(e)及び抜出ライン(L3)を経てフィルター(f)を通過して、ダイスヘッド(g)から溶融したストランドの形態で抜き出され、水などで冷却された後、回転式カッター(h)で切断されてペレットとなる。符号(L2)は第1重縮合反応槽(a)のベントライン、符号(L4)は第2重縮合反応槽(d)のベントラインである。
【0096】
図3に示す工程は、図2に示す工程に比し、第2重縮合反応槽(d)の後に第3重縮合反応槽(k)が設けられている点が異なる。第3重縮合反応槽(k)は、複数個の撹拌翼ブロックで構成され、2軸のセルフクリーニングタイプの撹拌翼を具備した横型の反応槽である。抜出ライン(L3)を通じて第2重縮合反応槽(d)から第3重縮合反応槽(k)に導入されたポリマーは、ここで更に重縮合が進められた後、抜出用ギヤポンプ(m)及び抜出ライン(L5)を経てフィルター(f)を通過して、ダイスヘッド(g)から溶融したストランドの形態で抜き出され、水などで冷却された後、回転式カッター(h)で切断されてペレットとなる。符号(L6)は第3重縮合反応槽(k)のベントラインである。
【0097】
各反応工程に必要な真空は図4に示すBDO蒸気エゼクターを使用して取得した。具体的には、BDO流入ライン(16)を連続的にBDO蒸発器(I)に供給し、所定の温度、圧力、滞留時間で運転した。当該処理により、BDOからテトラヒドロフラン、水、DBGなどが発生する。
このBDO蒸気を連続的に蒸気ライン(19)を経てエゼクター設備(J)に供給した。同時に連続的にポンプPにより液相ライン(18)を経てリサイクルBDOタンク(M)にDBGを含有するBDO(BDO組成物)を供給した。
【0098】
エゼクター設備(J)及びエゼクターライン(20)で反応槽(A)、第1重縮合反応槽(a)、第2重縮合反応槽(d)、第3重縮合反応槽(k)の真空を取得した。即ち、これらの各反応槽からのベーパーとエゼクター設備(J)で使用したBDO蒸気をバロコン設備(K)で凝縮し、バロコンライン(22)を介して、バロコンタンク(L)に連続的に回収し、更にバロコンタンクライン(23)を経てポンプPによりリサイクルBDOタンク(M)に連続的に移送した。リサイクルBDOは、ポンプPによりリサイクルBDOライン(24)を経て抜き出され、原料スラリー槽(N)にてテレフタル酸とのスラリー調製用に使用される。原料スラリー槽(N)で調製された原料スラリーはポンプPにより原料スラリーライン(25)を経て反応槽(O)に送給される。
【0099】
[添加剤・付加成分]
本発明のDBG共重合PBTには、2,6-ジ-t-ブチル-4-オクチルフェノール、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3’,5’-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のフェノール化合物、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル-テトラキス(3-ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物などの抗酸化剤、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸及びそのエステル、シリコーンオイル等の離型剤などを添加してもよい。
【0100】
本発明のDBG共重合PBTには、強化充填材を配合することが出来る。強化充填材としては、特に制限されないが、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維などの無機繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維などの有機繊維などが挙げられる。これらの強化充填材は、2種以上を組み合わせて使用することが出来る。上記の強化充填材の中では、無機充填材、特にガラス繊維が好適に使用される。
【0101】
強化充填材が無機繊維又は有機繊維である場合、その平均繊維径は、特に制限されないが、通常1~100μm、好ましくは2~50μm、更に好ましくは3~30μm、特に好ましくは5~20μmである。また、平均繊維長は、特に制限されないが、通常0.1~20mm、好ましくは0.1~10mmである。
【0102】
強化充填材は、DBG共重合PBTとの界面密着性を向上させるため、収束剤又は表面処理剤で表面処理して使用することが好ましい。収束剤又は表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物が挙げられる。強化充填材は、収束剤又は表面処理剤により予め表面処理しておくことが出来、又は、DBG共重合PBT組成物の調製の際に、収束剤又は表面処理剤を添加して表面処理することも出来る。強化充填材の添加量は、DBG共重合PBT100質量部に対し、通常150質量部以下、好ましくは5~100質量部である。
【0103】
本発明のDBG共重合PBTには、強化充填材と共に他の充填材を配合することが出来る。配合する他の充填材としては、例えば、板状無機充填材、セラミックビーズ、アスベスト、ワラストナイト、タルク、クレー、マイカ、ゼオライト、カオリン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。板状無機充填材を配合することにより、得られる成形品の異方性及びソリを低減することが出来る。板状無機充填材としては、例えば、ガラスフレーク、雲母、金属箔などを挙げることが出来る。これらの中ではガラスフレークが好適に使用される。
【0104】
本発明のDBG共重合PBTには、難燃性を付与するために難燃剤を配合することが出来る。難燃剤としては、特に制限されず、例えば、有機ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、その他の有機難燃剤、無機難燃剤などが挙げられる。有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等が挙げられる。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等が挙げられる。リン化合物としては、例えば、リン酸エステル、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、赤リン、ホスフィン酸金属塩等が挙げられる。その他の有機難燃剤としては、例えば、メラミン、シアヌール酸などの窒素化合物などが挙げられる。その他の無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ素化合物、ホウ素化合物などが挙げられる。
【0105】
本発明のDBG共重合PBTには、必要に応じ、上記以外の慣用の添加剤などを配合することが出来る。斯かる添加剤としては、特に制限されず、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤の他、滑剤、離型剤、触媒失活剤、結晶核剤、結晶化促進剤などが挙げられる。これらの添加剤は、重合途中又は重合後に添加することが出来る。更に、DBG共重合PBTに、所望の性能を付与するため、紫外線吸収剤、耐候安定剤などの安定剤、染顔料などの着色剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤などを配合することが出来る。
【0106】
本発明のDBG共重合PBTには、必要に応じて、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸エステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を配合することが出来る。これらの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。
【0107】
前記の種々の添加剤や樹脂等の付加成分の配合方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮出来る設備を有する1軸又は2軸の押出機を用いて溶融混練する方法が好ましい。各成分は、付加的成分を含めて、混練機に一括して供給することが出来、あるいは、順次供給することも出来る。また、付加的成分を含めて、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合しておくことも出来る。
【0108】
本発明のDBG共重合PBTを原料の少なくとも一部として用いて、上記の通り、押出機により溶融混練を行って本発明のコンパウンド製品とする場合、押出機における混練樹脂温度を320℃以下とすることが好ましい。この混練樹脂温度が320℃以下であれば熱分解が抑制される傾向にある。この観点から、押出機における混練樹脂温度は310℃以下であることがより好ましく、300℃以下であることが更に好ましい。一方、均一な溶融性の確保の観点から、押出機における混練樹脂温度は240℃以上、特に250℃以上であることが好ましい。
【0109】
[成形方法]
本発明のDBG共重合PBT及び本発明のDBG共重合PBTを含む本発明のコンパウンド製品の成形加工方法は、特に制限されず、熱可塑性樹脂について一般に使用されている成形法、すなわち、射出成形、中空成形、押し出し成形、プレス成形などの成形法を適用することが出来る。これらのうち、自動車部品、電気・電子部品に使用する場合には射出成形機を使用することが好ましい。
この射出成形時の溶融樹脂温度は280℃以下であることが好ましい。この溶融樹脂温度が280℃以下であれば熱分解が抑制される点で好ましい。この観点から、射出成形時の溶融樹脂温度は275℃以下であることがより好ましく、270℃以下であることが更に好ましい。一方、均一な溶融性の確保の観点から、射出成形時の溶融樹脂温度は240℃以上、特に250℃以上であることが好ましい。
【0110】
なお、本発明のDBG共重合PBT又は本発明のコンパウンド製品の成形に際しては、成形材料の少なくとも一部としてリサイクル原料を使用してもよく、リサイクル原料の使用で原料コストを削減することができ、また、この場合であっても、リサイクル原料の使用割合が30%以下であれば物性の低下が許容範囲であり、好ましい。
【0111】
本発明のDBG共重合PBTは、色調、耐加水分解性、熱安定性、成形性に優れており、特に空気下、加熱乾燥時の色調変化が少ない。このため、電気電子部品、自動車用部品などの射出成形部品として好適である。
【実施例
【0112】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した物性及び評価項目の測定方法は次の通りである。
【0113】
(1)エステル化率
以下の式によって酸価及びケン化価から算出した。酸価は、ジメチルホルムアミドにオリゴマーを溶解させ、0.1NのKOH/メタノール溶液を使用して滴定により求めた。ケン化価は0.5NのKOH/エタノール溶液でオリゴマーを加水分解し、0.5Nの塩酸で滴定し求めた。
エステル化率(%)=((ケン化価-酸価)/ケン化価)×100
【0114】
(2)エステル交換率
重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=7/3(体積比)の混合溶媒1mLにオリゴマー約100mgを溶解させ、重ピリジン36μLを添加し、50℃でH-NMRを測定し、末端メトキシカルボニル基量(当量/トン)を求めた。NMR装置には日本電子(株)製「α-400」又は「AL-400」を使用した。エステル交換率は以下の式で算出した。
エステル交換率(%)=100-(末端メトキシカルボニル基量/9081)×100
【0115】
(2)末端カルボキシル基濃度
ベンジルアルコール25mLにDBG共重合PBT又はオリゴマー0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/Lベンジルアルコール溶液を使用して滴定して求めた。
【0116】
(3)固有粘度(IV)
ウベローデ型粘度計を使用し次の要領で求めた。すなわち、フェノール/テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を使用し、30℃において、濃度1.0g/dLのポリマー溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、以下の式より求めた。
IV=((1+4Kηsp0.5-1)/(2K・C)
(但し、ηsp=η-1であり、ηはポリマー溶液の落下秒数、ηは溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(g/dL)、Kはハギンスの定数であり、0.33を採用した。)
【0117】
(4)DBG共重合PBT中のチタン及び周期表2A族金属濃度
電子工業用高純度硫酸及び硝酸でDBG共重合PBTを湿式分解し、高分解能ICP(InductivelyCoupledPlasma)-MS(MassSpectrometer)(サーモクエスト社製)を使用して測定した。
【0118】
(5)DBG共重合量・末端メトキシカルボニル基濃度・末端ビニル基濃度
重クロロホルム/ヘキサフルオロイソプロパノール=7/3(体積比)の混合溶媒1mLにDBG共重合PBT約100mgを溶解させ、重ピリジン36μLを添加し、50℃でH-NMRを測定して求めた。NMR装置には日本電子(株)製「α-400」又は「AL-400」を使用した。DBG共重合量は、モル%/全カルボン酸(表中「モル%」で示す)、末端メトキシカルボニル基濃度及び末端ビニル基濃度は、当量/トンで算出した。
【0119】
(6)融点(Tm)・降温結晶化温度
パーキンエルマー社製示差走査熱量計「型式DSC7」を使用し、昇温速度20℃/minで室温から300℃まで昇温した後、降温速度20℃/minで80℃まで降温し、吸熱ピークの温度を融点とし、発熱ピークの温度を降温結晶化温度とした。降温結晶化温度が高いほど結晶化速度が速く、成形サイクルが短くなる。
【0120】
(7)溶液ヘイズ
フェノール/テトラクロロエタン=3/2(質量比)の混合溶媒20mLにDBG共重合PBT2.70gを110℃で30分間溶解させた後、30℃の恒温水槽で15分間冷却し、日本電色(株)製濁度計「NDH-300A」を使用し、セル長10mmで測定した。値が低いほど透明性が良好であることを示す。
【0121】
(10)ペレット色調
DBG共重合PBTペレットを50mmφのアルミ皿に30g入れて、エスペック株式会社製の回転枠付き恒温機ギヤ―オーブンにて、常圧である空気下で140℃の温度で8時間加熱した。加熱前後の色調b値を測定した。測定には日本電色(株)製色差計「Z-300A型」を使用し、L、a、b表色系におけるb値で評価した。値が低いほど黄ばみが少なく色調が良好であることを示す。
【0122】
(11)ホルムアルデヒド発生量
DBG共重合PBT1gとpH=2.29に調整した塩酸水溶液5mLとを、10mLのヘッドスペース瓶に入れて、120℃で1時間攪拌抽出した。この液を冷却した後、クロマトディスクで濾過した。更に、この液約3gを精秤し、0.25%2,4-ジニトロフェニルヒドラジン-6N塩酸溶液0.2mLとヘキサン1mLを入れて、50℃で20分反応させ、ヘキサン相をガスクロマトグラフィー(島津(株)製「GC2010」、カラム:「HP-5MS」)で分析した。
【0123】
(12)曲げ弾性率
DBG共重合PBTペレットを、140℃の棚段式乾燥機で8時間乾燥した後、住友重機械(株)製射出成形機「型式S-75MIII」を使用し、シリンダー温度250℃、金型温度80℃にて、ISO試験片を成形し、ISO178に従い、曲げ弾性率を測定した。測定は5回行い、5回の平均値を採用した。
【0124】
[実施例1]
図1に示すエステル化工程と図2に示す重縮合工程を通し、次の要領でDBG共重合PBTの製造を行った。
先ず、テレフタル酸1.00モルに対して、BDO1.80モルの割合で混合した60℃のスラリーをスラリー調製槽から原料供給ライン(1)を通じ、予め、エステル化率99%のPBTオリゴマーを充填したスクリュー型撹拌機を有するエステル化のための反応槽(A)に、41.0質量部/hとなる様に連続的に供給した。同時に、再循環ライン(2)から185℃の精留塔(C)の塔底成分(98質量%以上がBDO)を15.8質量部/hで供給し、チタン触媒供給ライン(3)から触媒として65℃のテトラブチルチタネートの3.0質量%BDO溶液を0.26質量部/hで供給した(テトラブチルチタネートは理論ポリマー収量に対しチタン元素として40重量ppm)。この触媒溶液中の水分は0.2質量%であった。
【0125】
反応槽(A)の内温は226℃、圧力は60kPaとし、生成する水とテトラヒドロフラン及び余剰のBDOを、留出ライン(5)から留出させ、精留塔(C)で高沸成分と低沸成分とに分離した。
系が安定した後の塔底の高沸成分は、98質量%以上がBDOであり、精留塔(C)の液面が一定になる様に、抜出ライン(8)を通じてその一部を外部に抜き出した。
一方、低沸成分は塔頂よりガスの形態で抜き出し、コンデンサ(G)で凝縮させ、タンク(F)の液面が一定になる様に、抜出ライン(13)より外部に抜き出した。
【0126】
反応槽(A)で生成したオリゴマーの一定量は、ポンプ(B)を使用し、抜出ライン(4)から抜き出し、反応槽(A)内液の平均滞留時間が3.0hrになる様に液面を制御した。系が安定した後、反応槽(A)の出口で採取したオリゴマーのエステル化率は96.5%であった。
抜出ライン4から抜き出したオリゴマーに、2A族金属触媒供給ライン(15)から触媒として65℃の酢酸マグネシウム・4水塩の6.0質量%BDO溶液を0.04質量部/hで供給した(酢酸マグネシウムは理論ポリマー収量に対しマグネシウム元素として10質量ppm)。この触媒溶液中の水分は10.0質量%であった。
【0127】
抜出ライン(4)より抜き出したオリゴマーは第1重縮合反応槽(a)に連続的に供給した。第1重縮合反応槽(a)の内温は230℃、圧力3.9kPaとし、滞留時間が120分になる様に液面制御を行った。減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L2)から、水、テトラヒドロフラン、BDOを抜き出しながら、初期重縮合反応を行った。抜き出した反応液は第2重縮合反応槽(d)に連続的に供給した。
第2重縮合反応槽(d)の内温は240℃、圧力130Paとし、滞留時間が80分になる様に液面制御を行い、減圧機(図示せず)に接続されたベントライン(L4)から、水、テトラヒドロフラン、BDOを抜き出しながら、更に重縮合反応を進めた。
得られたポリマーは、抜出用ギヤポンプ(e)により抜出ライン(L3)を経由し、フィルター(f)を通してダイスヘッド(g)からストランド状に連続的に抜き出し、回転式カッター(h)でカッティングした。
【0128】
各反応工程に必要な真空は以下に記載のBDO蒸気エゼクターを使用して、取得した。
BDOをBDO流入ライン(16)より連続的にBDO蒸発器(I)に14.9質量部/hrで供給し、内温241℃、圧力50KPaで、滞留時間1.47時間で運転した。当該処理により、BDOからテトラヒドロフラン、水、DBGなどが発生する。
このDBGを含有するBDO蒸気を連続的に蒸気ライン(19)を用いてエゼクター設備(J)に14.5質量部/hrで供給した。
同時に連続的に液相ライン(18)を用いてリサイクルBDOタンク(M)にDBGを含有するBDOを0.4質量部/hrで供給した。
エゼクター設備(J)でエステル反応槽(A)、第1重縮合反応槽(a)、第2重縮合反応槽(d)の真空を取得した。前記の各反応槽からのベーパーとエゼクター設備(J)で使用したBDO蒸気をバロコン設備(K)で凝縮させ、バロコンライン(22)を介して、バロコンタンク(4)に連続的に回収し、バロコンタンクライン(23)を介して、リサイクルBDOタンク(M)に連続的に移送した。
リサイクルBDOは、テレフタル酸とのスラリー調製用に使用した。
【0129】
DBG共重合PBTのDBG共重合量は、このようにしてBDOが高濃度で存在する、真空用蒸気発生槽の温度、滞留時間、エステル化反応の温度、滞留時間を調整する事で、コントロールする事が出来る。
【0130】
得られたポリマーの固有粘度(IV)は0.85dL/g、末端カルボキシル基濃度は13当量/トン、末端メトキシカルボニル基濃度は0.1当量/トン以下であった。
得られたポリマーを用いて前述の評価を行った。
また、得られたポリマーペレット(長径約3mm、短径約2mm、長さ約4mm)について加熱前後の色調b値を測定した。この評価結果を表1に示す。
【0131】
[実施例2~10]
実施例1において、エステル化条件及び蒸気発生槽条件及びチタン、マグネシウム添加量を表1に記載した条件に変えるほかは実施例1と同様にしてDBG共重合PBTを得た。得られたDBG共重合PBTの物性、評価結果を表1に記載した。
【0132】
表1に示されるように、本発明の要件を満たす、実施例1~10のDBG共重合PBTは、空気下、140℃で8時間乾燥してもb値(黄色味)の増加が少なく、射出成形などの成形用途に適しているDBG共重合PBTであった。
実施例10のDBG共重合PBTは、同じくb値の増加は少ないものの、チタン含有量が多いため溶液ヘイズが高く透明性が劣っていた。
【0133】
[比較例1及び比較例2]
実施例1において、エステル化条件及び蒸気発生槽条件を表1に記載した条件に変えるほかは実施例1と同様にしてDBG共重合PBTを得た。得られたDBG共重合PBTの物性、評価結果を表2に記載した。
表2に示すように本発明の要件を満たさない比較例1,2のDBG共重合PBTは、空気下、140℃で8時間乾燥するとb値(黄色味)の増加が大きく、射出成形などの成形用途に適していなかった。
【0134】
[比較例3]
タービン型撹拌翼を具備した内容積200Lのステンレス製反応槽に、テレフタル酸ジメチル397.2質量部、BDO213.8質量部に6質量%のテトラブチルチタネートのBDO溶液1.75質量部(テトラブチルチタネートは理論ポリマー収量に対しチタン元素として33質量ppm)を加え、150~215℃で2時間エステル交換反応を行った後、10質量%の酢酸マグネシウム・4水塩BDO溶液1.9質量部(酢酸マグネシウムは理論ポリマー収量に対しマグネシウム元素として48質量ppm)をBDOに溶解して添加し、更に、6質量%のテトラブチルチタネートのBDO溶液3.25質量部(テトラブチルチタネートは理論ポリマー収量に対しチタン元素として61質量ppm)を添加した。続いて、ベント管及びダブルヘリカル型撹拌翼を有する内容積200Lのステンレス反応槽に、上記で得られたオリゴマーを移送した後、重縮合反応を行った。重縮合反応は常圧から0.133kPaまで85分かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度240℃まで昇温し、以降、所定重合温度、0.133kPaで継続し、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了し、ポリマーを抜き出した。なお、真空発生装置としてはスチームエゼクターを用いた。得られたPBTの物性、評価結果を表2に示した。
比較例3のDBG共重合PBTは、空気下、140℃で8時間乾燥してもb値の増加は少なかったが、末端メトキシカルボニル基濃度が高く、ホルムアルデヒドが発生した。更に酸化されるとギ酸となるので、電気電子部品や自動車部品向けには好ましくないDBG共重合PBTであった。またこのDBG共重合PBTはテレフタル酸ジメチルを原料成分としており、またスチームエゼクターを用いるため、コストが高くなる難点がある。
【0135】
[比較例4]
比較例3において、テレフタル酸ジメチル360.0質量部、BDO189.0質量部、平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール45.8質量部に6質量%のテトラブチルチタネートのBDO溶液1.33質量部(テトラブチルチタネートは理論ポリマー収量に対しチタン元素として25質量ppm)を加え、150~215℃で2時間エステル交換反応を行った後、10質量%の酢酸マグネシウム・4水塩BDO溶液1.9質量部(酢酸マグネシウムは理論ポリマー収量に対しマグネシウム元素として48質量ppm)をBDOに溶解して添加し、更に、6質量%のテトラブチルチタネートのBDO溶液1.75質量部(テトラブチルチタネートは理論ポリマー収量に対しチタン元素として33質量ppm)を添加した。続いて、ベント管及びダブルヘリカル型撹拌翼を有する内容積200Lのステンレス反応槽に、上記で得られたオリゴマーを移送した後、重縮合反応を行った。重縮合反応は常圧から0.133kPaまで85分かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度240℃まで昇温し、以降、所定重合温度、0.133kPaで継続し、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了し、ポリマーを抜き出した。なお、真空発生装置としてはスチームエゼクターを用いた。得られたPBTの物性、評価結果を表2に示した。このポリマーは、柔軟成分である、ポリテトラメチレンエーテルグリコールがポリマーに対して10質量%共重合されている。
比較例4のポリテトラメチレンエーテルグリコールがポリマーに対して10質量%共重合されたPBTは、DBG共重合量は低いものの、空気下、140℃で8時間乾燥した際のb値の増加が大きかった。また、末端メトキシカルボニル基濃度が高く、ホルムアルデヒドが発生した。更に酸化されるとギ酸となるので、電気電子部品や自動車部品向けには好ましくないPBTであった。加えて、曲げ弾性率が低く、エンジニアリングプラチックスとしては、好ましくなかった。またこのPBTはテレフタル酸ジメチルを原料成分としており、またスチームエゼクターを用いるため、コストが高くなる難点がある。
【0136】
[比較例5及び比較例6]
実施例1において、表3に記載した条件に変えるほかは実施例1と同様にしてDBG共重合PBTペレットを得た。得られたDBG共重合PBTペレットの物性、評価結果を表3に記載した。
表3より、本発明の要件を満たさない比較例5及び比較例6のDBG共重合PBTペレットは、空気下、140℃で8時間乾燥するとb値(黄色味)の増加が大きく、射出成形などの成形用途に適していなかった。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【符号の説明】
【0140】
1 原料供給ライン
2 再循環ライン
3 触媒供給ライン
4 抜出ライン
5 留出ライン
6 抜出ライン
7 循環ライン
8 抜出ライン
9 ガス抜出ライン
10 凝縮液ライン
11 抜出ライン
12 循環ライン
13 抜出ライン
14 ベントライン
15 触媒供給ライン
16 BDO流入ライン
17 リサイクルBDO流入ライン
18 液相ライン
19 蒸気ライン
20 エゼクターライン
21 エステル化槽、プレポリマー槽、第1重合槽、第2重合槽のベーパーライン
22 バロコンライン
23 バロコンタンクライン
24 リサイクルBDOライン
25 原料スラリーライン
A 反応槽
B 抜出ポンプ
C 精留塔
D、E、P、P、P、P ポンプ
F タンク
G コンデンサ
H リボイラ
L1 抜出ライン
L3、L5 抜出ライン
L2、L4、L6 ベントライン
a 第1重縮合反応槽
d 第2重縮合反応槽
k 第3重縮合反応槽
c、e、m 抜出用ギヤポンプ
f フィルター
g ダイスヘッド
h 回転式カッター
I BDO蒸発器
J エゼクター設備
K バロコン設備
L バロコンタンク
M リサイクルBDOタンク
N 原料スラリー槽
O 反応槽
図1
図2
図3
図4