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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】フォトマスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/80 20120101AFI20240925BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20240925BHJP
   G03F 1/32 20120101ALI20240925BHJP
【FI】
G03F1/80
G03F1/54
G03F1/32
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023122522
(22)【出願日】2023-07-27
(62)【分割の表示】P 2020112639の分割
【原出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2023145614
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹本 紘平
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-78953(JP,A)
【文献】特開2010-79110(JP,A)
【文献】特開2019-179106(JP,A)
【文献】特開2018-151453(JP,A)
【文献】特開2015-121801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0165747(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20-1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第1の無機膜と、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第2の無機膜とを有し、上記第1の無機膜と上記第2の無機膜とが接して形成され、上記第1の無機膜が、直接又は1若しくは2以上の他の無機膜を介して上記透明基板上に形成されているフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する方法であって、
(A)上記第2の無機膜に接してレジスト膜を形成する工程、
(B)上記レジスト膜をパターニングして、レジストパターンを形成する工程、
(C)上記レジストパターンをエッチングマスクとして、上記第2の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の無機膜のパターンを形成する工程、
(D)上記第2の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、上記第1の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の無機膜のパターンを形成する工程、
(F)残存している上記レジストパターンを除去する工程、及び
(G)残存している上記第2の無機膜のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
透明基板と、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第1の無機膜と、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第2の無機膜と、レジスト膜とを有し、上記第1の無機膜と上記第2の無機膜と上記レジスト膜とがこの順で接して形成され、上記第1の無機膜が、直接又は1若しくは2以上の他の無機膜を介して上記透明基板上に形成されているフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する方法であって、
(B)上記レジスト膜をパターニングして、レジストパターンを形成する工程、
(C)上記レジストパターンをエッチングマスクとして、上記第2の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の無機膜のパターンを形成する工程、
(D)上記第2の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、上記第1の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の無機膜のパターンを形成する工程、
(F)残存している上記レジストパターンを除去する工程、及び
(G)残存している上記第2の無機膜のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
上記(C)工程及び(D)工程をフッ素系ドライエッチングにより連続して実施することを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
上記(C)工程におけるフッ素系ドライエッチングと、上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングとが同一条件であり、上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第1の無機膜のエッチングレートに対して、上記(C)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第2の無機膜のエッチングレートが0.3以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
上記第2の無機膜のクロム含有率が、25原子%以上40原子%未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
上記第2の無機膜の膜厚が、1nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
上記(G)工程をフッ素系ドライエッチングにより実施することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
上記フォトマスクブランクが、上記他の無機膜として形成された、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第3の無機膜を有し、該第3の無機膜が、上記第1の無機膜の上記透明基板側に接して形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項9】
上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第1の無機膜のエッチングレートに対して、上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第3の無機膜のエッチングレートが0.3未満であることを特徴とする請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
更に、(E)上記(D)工程の後、かつ上記(G)工程の前に、上記第1の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、上記第3の無機膜を、塩素系ドライエッチングによりパターニングして、第3の無機膜のパターンを形成する工程
を含むことを特徴とする請求項8又は9記載の製造方法。
【請求項11】
更に、(H)上記(G)工程の後に、上記第1の無機膜のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とする請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
上記(H)工程をフッ素系ドライエッチングにより実施することを特徴とする請求項11記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路などを製造する際に使用するフォトマスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体加工においては、特に大規模集積回路の高集積化により、回路パターンの微細化がますます必要になってきており、回路を構成する配線パターンの細線化や、セルを構成する層間の配線のためのコンタクトホールパターンの微細化技術への要求がますます高まってきている。そのため、これらの配線パターンやコンタクトホールパターンを形成する光リソグラフィーで用いられる、回路パターンが書き込まれたフォトマスクの製造においても、上記微細化に伴い、より微細かつ正確に回路パターンを書き込むことができる技術が求められている。
【0003】
より精度の高いフォトマスクパターンをフォトマスク基板上に形成するためには、まず、フォトマスクブランク上に高精度のレジストパターンを形成することが必要になる。現在行われているリソグラフィーでは、描画しようとしている回路パターンは使用する光の波長をかなり下回るサイズになっており、回路の形状をそのまま4倍にしたフォトマスクパターンを使用すると、実際の光リソグラフィーを行う際に生じる光の干渉などの影響で、レジスト膜にフォトマスクパターン通りの形状は転写されない。そこで、これらの影響を減じるため、フォトマスクパターンは、実際の回路パターンより複雑な形状(いわゆるOPC:Optical Proximity Correction(光学近接効果補正)などを適用した形状)に加工する必要が生じる場合もある。そのため、フォトマスクパターンを得るためのリソグラフィー技術においても、現在、更に高精度な加工方法が求められている。
【0004】
フォトマスクパターンの形成においては、通常、透明基板上に遮光膜や位相シフト膜などを有するフォトマスクブランクの上にレジスト膜を形成し、電子線によるパターンの描画を行い、現像を経てレジストパターンを得て、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、遮光膜や位相シフト膜などをエッチングして遮光膜パターンや位相シフト膜パターンなど(フォトマスクパターン)へと加工するが、レジスト膜の膜厚を変更せずに維持したままで、より微細化したフォトマスクパターンを加工しようとすると、パターン幅に対する膜厚の比、いわゆるアスペクト比が高くなってしまい、レジストパターンの形状が劣化して、パターン転写がうまくいかなくなったり、場合によってはレジストパターンの倒れや剥がれを起こしたりしてしまう。そのため、フォトマスクパターンの微細化に伴いレジスト膜を薄くする必要がある。
【0005】
一方、ドライエッチング時のレジストパターンの負担を減らすために、ハードマスクを使用するという方法は、古くより試みられており、例えば、特開昭63-85553号公報(特許文献1)では、MoSi2膜上にSiO2膜を形成し、SiO2膜のパターンを、塩素を含むガスを用いてMoSi2膜をドライエッチングする際のエッチングマスクとして使用することが記載されている。また、例えば、特開平7-49558号公報(特許文献2)には、位相シフト膜の上に遮光膜としてクロム膜を形成し、クロム膜の上にハードマスク膜としてSiO2膜を形成して、SiO2膜のパターンを、クロム膜のエッチング時のハードマスクとして用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭63-85553号公報
【文献】特開平7-49558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フォトマスクパターンの微細化に伴い、レジスト膜及びレジストパターンの密着性が重要となっているが、ケイ素を含む膜の表面にレジスト膜を形成し、これをレジストパターンに加工し、このレジストパターンをエッチングマスクとして用いて、ケイ素を含む膜を加工する場合、ケイ素を含む膜とレジスト膜との密着性が低いため、微細なフォトマスクパターンを形成しようとすると、レジスト膜が、レジスト膜からレジストパターンを形成する際の現像工程において剥離してしまう問題がある。この問題を回避するためには、ケイ素を含む膜の表面を、ヘキサメチルジシラザンなどによりシリル化する処理が有効であることが知られている。
【0008】
しかし、シリル化処理を施すと、被処理表面の疎水性が高くなってしまい、水系洗浄が難しくなる。そのため、レジスト膜からレジストパターンを形成する際の現像後の洗浄工程で、レジスト残渣などが多数残り、欠陥となってしまうことが問題となる。一方、ケイ素を含む膜の側からレジスト膜との密着性を改善する手段としては、例えば、SiO2膜などのケイ素を含む膜の表面の組成を、レジスト膜との密着性がよい組成に調整する方法があるが、ケイ素を含む膜に求められる本質的な特性である光学特性やエッチング特性などを損なうことなく、レジスト膜との密着性を改善しようとすると、ケイ素を含む膜の組成の変更では、自由度が低い。また、レジスト膜との密着性を考慮して、ケイ素を含む膜の表面の組成を調整してしまうと、エッチングのコントロール性が悪く、また、導電性を付与しにくいという問題もある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、フォトマスクブランク及びフォトマスクに設けられるケイ素を含む膜に要求される特性を損なうことなく、ケイ素を含有する膜に対してレジスト膜を形成した場合に生じる、ケイ素を含有する膜とレジスト膜との密着性の問題(レジストパターンの倒れや剥がれ)を回避し、また、洗浄時のレジスト残渣などによる欠陥の発生を抑制して、フォトマスクを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、透明基板と、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第1の無機膜とを有するフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する場合において、第1の無機膜に接してクロムを含有し、ケイ素を含有しない第2の無機膜を形成することにより、レジスト膜との密着性を確保できること、更に、クロムを含有し、ケイ素を含有しない膜である第2の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりエッチングできる膜、具体的には、フッ素系ドライエッチングにより同一条件でエッチングしたとき、第1の無機膜のエッチングレートに対して0.3以上のエッチングレートを有する膜とすることにより、第2の無機膜に接してレジスト膜を形成し、レジスト膜からレジストパターンを形成し、第2の無機膜、第1の無機膜の順に、これらを共にフッ素系ドライエッチングでパターニングすれば、ケイ素を含む膜に対するシリル化処理において問題となる、レジスト残渣の発生を回避して、微細なフォトマスクパターンを精度よく形成できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、以下のフォトマスクの製造方法を提供する。
1.透明基板と、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第1の無機膜と、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第2の無機膜とを有し、上記第1の無機膜と上記第2の無機膜とが接して形成され、上記第1の無機膜が、直接又は1若しくは2以上の他の無機膜を介して上記透明基板上に形成されているフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する方法であって、
(A)上記第2の無機膜に接してレジスト膜を形成する工程、
(B)上記レジスト膜をパターニングして、レジストパターンを形成する工程、
(C)上記レジストパターンをエッチングマスクとして、上記第2の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の無機膜のパターンを形成する工程、
(D)上記第2の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、上記第1の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の無機膜のパターンを形成する工程、
(F)残存している上記レジストパターンを除去する工程、及び
(G)残存している上記第2の無機膜のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
2.透明基板と、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第1の無機膜と、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第2の無機膜と、レジスト膜とを有し、上記第1の無機膜と上記第2の無機膜と上記レジスト膜とがこの順で接して形成され、上記第1の無機膜が、直接又は1若しくは2以上の他の無機膜を介して上記透明基板上に形成されているフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する方法であって、
(B)上記レジスト膜をパターニングして、レジストパターンを形成する工程、
(C)上記レジストパターンをエッチングマスクとして、上記第2の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の無機膜のパターンを形成する工程、
(D)上記第2の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、上記第1の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の無機膜のパターンを形成する工程、
(F)残存している上記レジストパターンを除去する工程、及び
(G)残存している上記第2の無機膜のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
3.上記(C)工程及び(D)工程をフッ素系ドライエッチングにより連続して実施することを特徴とする1又は2記載の製造方法。
4.上記(C)工程におけるフッ素系ドライエッチングと、上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングとが同一条件であり、上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第1の無機膜のエッチングレートに対して、上記(C)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第2の無機膜のエッチングレートが0.3以上であることを特徴とする1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
5.上記第2の無機膜のクロム含有率が、25原子%以上40原子%未満であることを特徴とする1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
6.上記第2の無機膜の膜厚が、1nm以上10nm以下であることを特徴とする1乃至5のいずれかに記載の製造方法。
7.上記(G)工程をフッ素系ドライエッチングにより実施することを特徴とする1乃至6のいずれかに記載の製造方法。
8.上記フォトマスクブランクが、上記他の無機膜として形成された、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第3の無機膜を有し、該第3の無機膜が、上記第1の無機膜の上記透明基板側に接して形成されていることを特徴とする1乃至7のいずれかに記載の製造方法。
9.上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第1の無機膜のエッチングレートに対して、上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第3の無機膜のエッチングレートが0.3未満であることを特徴とする8記載の製造方法。

10.更に、(E)上記(D)工程の後、かつ上記(G)工程の前に、上記第1の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、上記第3の無機膜を、塩素系ドライエッチングによりパターニングして、第3の無機膜のパターンを形成する工程
を含むことを特徴とする8又は9記載の製造方法。
11.更に、(H)上記(G)工程の後に、上記第1の無機膜のパターンを除去する工程
を含むことを特徴とする10記載の製造方法。
12.上記(H)工程をフッ素系ドライエッチングにより実施することを特徴とする11記載の製造方法。
また、本発明は、以下のフォトマスクの製造方法及びフォトマスクブランクが関連する。
[1].透明基板と、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第1の無機膜と、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第2の無機膜とを有し、上記第1の無機膜と上記第2の無機膜とが接して形成され、上記第1の無機膜が、直接又は1若しくは2以上の他の無機膜を介して上記透明基板上に形成されているフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する方法であって、
(A)上記第2の無機膜に接してレジスト膜を形成する工程、
(B)上記レジスト膜をパターニングして、レジストパターンを形成する工程、
(C)上記レジストパターンをエッチングマスクとして、上記第2の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の無機膜のパターンを形成する工程、及び
(D)上記第2の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、上記第1の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の無機膜のパターンを形成する工程
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
[2].透明基板と、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第1の無機膜と、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第2の無機膜と、レジスト膜とを有し、上記第1の無機膜と上記第2の無機膜と上記レジスト膜とがこの順で接して形成され、上記第1の無機膜が、直接又は1若しくは2以上の他の無機膜を介して上記透明基板上に形成されているフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する方法であって、
(B)上記レジスト膜をパターニングして、レジストパターンを形成する工程、
(C)上記レジストパターンをエッチングマスクとして、上記第2の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の無機膜のパターンを形成する工程、及び
(D)上記第2の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、上記第1の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の無機膜のパターンを形成する工程
を含むことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
[3].上記(C)工程及び(D)工程をフッ素系ドライエッチングにより連続して実施することを特徴とする[1]又は[2]記載の製造方法。
[4].上記(C)工程におけるフッ素系ドライエッチングと、上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングとが同一条件であり、上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第1の無機膜のエッチングレートに対して、上記(C)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第2の無機膜のエッチングレートが0.3以上であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5].上記第2の無機膜のクロム含有率が、25原子%以上40原子%未満であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6].上記第2の無機膜の膜厚が、1nm以上10nm以下であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7].上記フォトマスクブランクが、上記他の無機膜として形成された、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第3の無機膜を有し、該第3の無機膜が、上記第1の無機膜の上記透明基板側に接して形成されていることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8].上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第1の無機膜のエッチングレートに対して、上記(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる上記第3の無機膜のエッチングレートが0.3未満であることを特徴とする[7]記載の製造方法。
[9].上記フォトマスクブランクが、上記他の無機膜として形成された、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第4の無機膜を有し、該第4の無機膜が、上記第3の無機膜の上記透明基板側に接して形成されていることを特徴とする[7]又は[8]記載の製造方法。
[10].上記第1の無機膜が上記第3の無機膜のハードマスク膜、上記第2の無機膜が上記第1の無機膜の加工補助膜、上記第3の無機膜が遮光膜、上記第4の無機膜が位相シフト膜であることを特徴とする[9]記載の製造方法。
[11].透明基板と、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第1の無機膜と、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第2の無機膜とを有し、上記第1の無機膜と上記第2の無機膜とが接して形成され、上記第1の無機膜が、直接又は1若しくは2以上の他の無機膜を介して上記透明基板上に形成されているフォトマスクブランクであって、
フッ素系ドライエッチングにより同一条件でエッチングしたとき、上記第1の無機膜のエッチングレートに対する上記第2の無機膜のエッチングレートが0.3以上であることを特徴とするフォトマスクブランク。
[12].上記第2の無機膜のクロム含有率が、25原子%以上40原子%未満であることを特徴とする[11]記載のフォトマスクブランク。
[13].上記第2の無機膜の膜厚が、1nm以上10nm以下であることを特徴とする[11]又は[12]記載のフォトマスクブランク。
[14].上記フォトマスクブランクが、上記他の無機膜として形成された、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第3の無機膜を有し、該第3の無機膜が、上記第1の無機膜の上記透明基板側に接して形成されていることを特徴とする[11]乃至[13]のいずれかに記載のフォトマスクブランク。
[15].フッ素系ドライエッチングにより同一条件でエッチングしたとき、上記第1の無機膜のエッチングレートに対する上記第3の無機膜のエッチングレートが0.3未満であることを特徴とする[14]記載のフォトマスクブランク。
[16].上記フォトマスクブランクが、上記他の無機膜として形成された、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第4の無機膜を有し、該第4の無機膜が、上記第3の無機膜の上記透明基板側に接して形成されていることを特徴とする[14]又は[15]記載のフォトマスクブランク。
[17].上記第1の無機膜が上記第3の無機膜のハードマスク膜、上記第2の無機膜が上記第1の無機膜の加工補助膜、上記第3の無機膜が遮光膜、上記第4の無機膜が位相シフト膜であることを特徴とする[16]記載のフォトマスクブランク。
[18].上記第2の無機膜の上記透明基板から離間する側に接してレジスト膜を有することを特徴とする[11]乃至[17]のいずれかに記載のフォトマスクブランク。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第1の無機膜に対して、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第2の無機膜を介してレジスト膜を形成することにより、ケイ素含む膜の膜質によらず、レジスト膜の密着性が確保され、また、クロムを含有し、ケイ素を含有しない膜である第2の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりエッチングできる膜とし、第2の無機膜、第1の無機膜の順に、これらを共にフッ素系ドライエッチングでパターニングすることにより、ケイ素を含む膜に対するシリル化処理において問題となる、レジスト膜からレジストパターンを形成する際の現像後に生じるレジスト残渣の問題を回避して、新たな工程を追加することなく、欠陥が少ないフォトマスクを製造することができる。また、本発明によれば、ケイ素含む膜である第1の無機膜の膜質(組成、物性など)について、レジスト膜との密着性を考慮する必要がないので、第1の無機膜の選択の自由度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のフォトマスクブランクの一例を示す断面図である。
図2】本発明のフォトマスクブランクの他の例を示す断面図である。
図3】第3の無機膜を有する本発明のフォトマスクブランクの一例を示す断面図である。
図4】第3の無機膜を有する本発明のフォトマスクブランクの他の例を示す断面図である。
図5】第3の無機膜及び第4の無機膜を有する本発明のフォトマスクブランクの一例を示す断面図である。
図6】第3の無機膜及び第4の無機膜を有する本発明のフォトマスクブランクの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のフォトマスクブランクは、透明基板と、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第1の無機膜と、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第2の無機膜とを有し、第1の無機膜と第2の無機膜とが接して形成されている。透明基板としては、露光光に対して透明な材料で、かつフォトマスクブランク及びフォトマスクの製造における熱処理で変形が小さいものであれば、特に制限はなく、一例としては、石英基板が挙げられる。第1の無機膜は、透明基板上に直接形成されていても、1又は2以上の他の無機膜(例えば、第3の無機膜、第4の無機膜など)を介して透明基板上に形成されていてもよいが、第1の無機膜は、透明基板上に他の無機膜を介して形成されていることが好ましい。また、第2の無機膜の透明基板から離間する側に接してレジスト膜が形成されていてもよい。
【0015】
図1は、本発明のフォトマスクブランクの一例を示す断面図である。このフォトマスクブランク10は、透明基板1上に、透明基板1に接して第1の無機膜21、第1の無機膜21に接して第2の無機膜22が、順に形成されている。また、図2は、本発明のフォトマスクブランクの他の例を示す断面図である。このフォトマスクブランク11は、透明基板1上に、透明基板1に接して第1の無機膜21、第1の無機膜21に接して第2の無機膜22、第2の無機膜22に接してレジスト膜3が、順に形成されている。
【0016】
第1の無機膜は、第2の無機膜のパターンをエッチングマスクとしてパターン形成される膜である。第1の無機膜は、ケイ素を含有し、クロムを含有しない膜であるが、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成されていることが好ましい。第1の無機膜は、ケイ素と共に、クロム以外の遷移金属を含んでいてもよい。本発明において、塩素系ドライエッチングとして典型的には、Cl2ガスとO2ガスとの混合ガスなどの塩素と酸素を含むエッチングガスによるドライエッチング、フッ素系ドライエッチングとして典型的には、CF4ガスやSF6ガスなどのフッ素を含むエッチングガスによるドライエッチングが挙げられる。
【0017】
第1の無機膜を構成する材料は、ケイ素を含有し、遷移金属を含有しない材料、又はクロム以外の遷移金属(Me)とケイ素とを含有し、クロムを含有しない材料であることが好ましい。ケイ素を含有し、遷移金属を含有しない膜の材料としては、ケイ素単体(Si)、又はケイ素(Si)と、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)から選ばれる1種以上とを含有するケイ素化合物であればよい。このようなものとしては、ケイ素からなる材料(Si)、ケイ素と酸素とからなる材料(SiO)、ケイ素と窒素とからなる材料(SiN)、ケイ素と酸素と窒素とからなる材料(SiON)、ケイ素と炭素とからなる材料(SiC)、ケイ素と酸素と炭素とからなる材料(SiOC)、ケイ素と窒素と炭素とからなる材料(SiNC)、ケイ素と酸素と窒素と炭素とからなる材料(SiONC)などが挙げられる。
【0018】
一方、クロム以外の遷移金属(Me)とケイ素とを含有し、クロムを含有しない膜の材料としては、遷移金属(Me)と、ケイ素(Si)とを含有する遷移金属(Me)ケイ素化合物、又は遷移金属(Me)と、ケイ素(Si)と、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)から選ばれる1種以上とを含有する遷移金属(Me)ケイ素化合物であればよい。このようなものとしては、遷移金属とケイ素とからなる材料(MeSi)、遷移金属とケイ素と酸素とからなる材料(MeSiO)、遷移金属とケイ素と窒素とからなる材料(MeSiN)、遷移金属とケイ素と酸素と窒素とからなる材料(MeSiON)、遷移金属とケイ素と炭素とからなる材料(MeSiC)、遷移金属とケイ素と酸素と炭素とからなる材料(MeSiOC)、遷移金属とケイ素と窒素と炭素とからなる材料(MeSiNC)、遷移金属とケイ素と酸素と窒素と炭素とからなる材料(MeSiONC)などが挙げられる。
【0019】
ここで、クロム以外の遷移金属(Me)としては、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)から選ばれる1種又は2種以上が好適であるが、特に、ドライエッチング加工性の点からモリブデン(Mo)が好ましい。なお、第1の無機膜を構成する材料は、水素などを含んでいてもよい。
【0020】
第1の無機膜としては、遮光膜、反射防止膜、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜などの光学膜、透明基板又は後述する第3の無機膜のエッチングマスクとして用いるハードマスク膜などが挙げられる。
【0021】
第1の無機膜の膜厚は、1nm以上で、100nm以下が好ましい。第1の無機膜が遮光膜、反射防止膜又は位相シフト膜である場合、フォトマスクとしたときに、遮光パターンとして残る膜全体として、露光光、例えば、波長250nm以下の光、特にArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)などの波長200nm以下の光に対して、光学濃度(OD)が2.5以上、特に3以上となる厚さとすることが好ましく、具体的には、40nm以上100nm以下が好ましい。また、第1の無機膜がハードマスク膜である場合、膜厚は、1nm以上、特に2nm以上で、30nm以下、特に20nm以下、とりわけ10nm以下が好ましい。
【0022】
本発明のフォトマスクブランクにおいて、クロムを含有し、ケイ素を含有しない膜である第2の無機膜は、フッ素系ドライエッチングによりエッチングできる膜である。フッ素系ドライエッチングは、フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する際に、通常、ケイ素を含有する膜、特に、ケイ素を含有し、クロムを含有しない膜のパターニングに適用されるエッチングであるが、第2の無機膜をフッ素系ドライエッチングによりエッチングできる膜とすることにより、第2の無機膜を、第1の無機膜に適用されるエッチングであるフッ素系ドライエッチングでエッチングすること、特に、第1の無機膜に適用されるエッチングと同一の工程で、エッチングすることができる。第2の無機膜のフッ素系ドライエッチングによりエッチングできる膜として具体的には、フッ素系ドライエッチングにより同一条件でエッチングしたとき、第1の無機膜のエッチングレートに対して0.1以上、好ましくは0.3以上の比率のエッチングレートを有する膜とすることができる。
【0023】
第2の無機膜は、第1の無機膜に対する加工補助膜ということができる。加工補助膜という観点から、第2の無機膜の膜厚は、1nm以上、特に2nm以上で、10nm以下、特に5nm以下であることが好ましい。第2の無機膜の膜厚を上記範囲内とすることにより、レジスト膜の膜厚を厚くすることなく第2の無機膜をパターニングすることができるため好ましい。また、フッ素系ドライエッチングにより、効率よくパターニングする観点から、第2の無機膜を構成する材料は、クロム化合物であることが好ましい。クロム化合物としては、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)から選ばれる1種以上とを含有するクロム化合物であればよい。このようなものとしては、クロムと酸素とからなる材料(CrO)、クロムと窒素とからなる材料(CrN)、クロムと酸素と窒素とからなる材料(CrON)、クロムと炭素とからなる材料(CrC)、クロムと酸素と炭素とからなる材料(CrOC)、クロムと窒素と炭素とからなる材料(CrNC)、クロムと酸素と窒素と炭素とからなる材料(CrONC)などが挙げられる。
【0024】
第2の無機膜の材料であるクロム化合物の場合、クロム含有率は、25原子%以上、特に30原子%以上で、40原子%未満、特に39原子%以下であることが好ましい。また、酸素は0原子%以上、特に10原子%以上で、70原子%以下、特に65原子%以下、窒素は0原子%以上、特に5原子%以上で、60原子%以下、特に50原子%以下、炭素は0原子%以上、特に1原子%以上で、30原子%以下、特に20原子%以下であることが好ましい。
【0025】
第2の無機膜のシート抵抗は、1×104Ω/□以下であることが好ましい。第2の無機膜のシート抵抗を低くすることで、第1の無機膜が、例えばSiO2などの高抵抗膜(例えば、シート抵抗が1×1012Ω/□以上)である場合に、第2の無機膜を導電膜として機能させることができる。
【0026】
第1の無機膜が、透明基板上に1又は2以上の他の無機膜を介して形成されているフォトマスクブランクの例としては、他の無機膜として、クロムを含有し、ケイ素を含有しない第3の無機膜を有し、第3の無機膜が、第1の無機膜の透明基板側に接して形成されているものが好ましい。このようにすることで、第3の無機膜を、第1の無機膜に対するフッ素系ドライエッチングに対して耐性を有するハードマスクとして機能する膜とすると共に、第3の無機膜を第1の無機膜に対して選択的に剥離することができる。
【0027】
更に、第1の無機膜が、透明基板上に1又は2以上の他の無機膜を介して形成されているフォトマスクブランクの例としては、他の無機膜として、第3の無機膜と共に、ケイ素を含有し、クロムを含有しない第4の無機膜を有し、第4の無機膜が、第3の無機膜の透明基板側に接して形成されているものが挙げられる。他の無機膜を有している場合も、第2の無機膜の透明基板から離間する側に接してレジスト膜が形成されていてもよい。
【0028】
図3は、第3の無機膜を有する本発明のフォトマスクブランクの一例を示す断面図である。このフォトマスクブランク12は、透明基板1上に、透明基板1に接して第3の無機膜23、第3の無機膜23に接して第1の無機膜21、第1の無機膜21に接して第2の無機膜22が、順に形成されている。また、図4は、第3の無機膜を有する本発明のフォトマスクブランクの他の例を示す断面図である。このフォトマスクブランク13は、透明基板1に接して第3の無機膜23、第3の無機膜23に接して第1の無機膜21、第1の無機膜21に接して第2の無機膜22、第2の無機膜22に接してレジスト膜3が、順に形成されている。
【0029】
図5は、第3の無機膜及び第4の無機膜を有する本発明のフォトマスクブランクの一例を示す断面図である。このフォトマスクブランク14は、透明基板1上に、透明基板1に接して第4の無機膜24、第4の無機膜24に接して第3の無機膜23、第3の無機膜23に接して第1の無機膜21、第1の無機膜21に接して第2の無機膜22が、順に形成されている。また、図6は、第3の無機膜及び第4の無機膜を有する本発明のフォトマスクブランクの他の例を示す断面図である。このフォトマスクブランク15は、透明基板1に接して第4の無機膜24、第4の無機膜24に接して第3の無機膜23、第3の無機膜23に接して第1の無機膜21、第1の無機膜21に接して第2の無機膜22、第2の無機膜22に接してレジスト膜3が、順に形成されている。
【0030】
本発明のフォトマスクブランクにおいて、クロムを含有し、ケイ素を含有しない膜である第3の無機膜は、フッ素系ドライエッチングによりエッチングできる膜であってもよいが、第1の無機膜とエッチング特性が異なること又は第1の無機膜に対してエッチング選択性が高いことが好ましく、フッ素系ドライエッチングでエッチングされない膜であることが好ましい。第3の無機膜のフッ素系ドライエッチングでエッチングされない膜として具体的には、フッ素系ドライエッチングにより同一条件でエッチングしたとき、第1の無機膜のエッチングレートに対するエッチングレートが0.3未満、特に0.1以下の比率である膜であることが好ましい。
【0031】
クロムを含有し、ケイ素を含有しない膜である第3の無機膜を構成する材料は、クロム単体(Cr)、又はクロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)から選ばれる1種以上とを含有するクロム化合物であればよい。このようなものとしては、クロムと酸素とからなる材料(CrO)、クロムと窒素とからなる材料(CrN)、クロムと酸素と窒素とからなる材料(CrON)、クロムと炭素とからなる材料(CrC)、クロムと酸素と炭素とからなる材料(CrOC)、クロムと窒素と炭素とからなる材料(CrNC)、クロムと酸素と窒素と炭素とからなる材料(CrONC)などが挙げられる。
【0032】
第3の無機膜の材料であるクロム化合物の場合、クロム含有率は、30原子%以上、特に35原子%以上で、100原子%以下、特に80原子%以下であることが好ましい。また、酸素は0原子%以上、特に5原子%以上で、70原子%以下、特に60原子%以下、窒素は0原子%以上、特に10原子%以上で、60原子%以下、特に50原子%以下、炭素は0原子%以上、特に1原子%以上で、40原子%以下、特に30原子%以下であることが好ましい。
【0033】
第3の無機膜としては、遮光膜、反射防止膜、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜などの光学膜、第1の無機膜に対するエッチングストッパ膜、透明基板又は第4の無機膜のエッチングマスクとして用いるハードマスク膜などが挙げられる。第3の無機膜を設ける場合、例えば、第3の無機膜を遮光膜、第1の無機膜を反射防止膜とすることができる。
【0034】
第3の無機膜の膜厚は、1nm以上で、100nm以下が好ましい。第3の無機膜が遮光膜、反射防止膜又は位相シフト膜である場合、フォトマスクとしたときに、遮光パターンとして残る膜全体として、露光光、例えば、波長250nm以下の光、特にArFエキシマレーザ(193nm)、F2レーザ(波長157nm)などの波長200nm以下の光に対して、光学濃度(OD)が2.5以上、特に3以上となる厚さとすることが好ましく、具体的には、40nm以上100nm以下が好ましい。また、第3の無機膜がエッチングストッパ膜又はハードマスク膜である場合、膜厚は、1nm以上、特に2nm以上で、30nm以下、特に20nm以下、とりわけ10nm以下が好ましい。
【0035】
本発明のフォトマスクブランクにおいて、ケイ素を含有し、クロムを含有しない膜である第4の無機膜は、第3の無機膜とエッチング特性が異なること又は第3の無機膜に対してエッチング選択性が高いことが好ましく、塩素系ドライエッチングに対して耐性を有し、かつフッ素系ドライエッチングで除去可能な材料で構成されていることが好ましい。第4の無機膜は、ケイ素と共に、クロム以外の遷移金属を含んでいてもよい。
【0036】
第4の無機膜を構成する材料は、ケイ素を含有し、遷移金属を含有しない材料、又はクロム以外の遷移金属(Me)とケイ素とを含有し、クロムを含有しない材料であることが好ましい。ケイ素を含有し、遷移金属を含有しない膜の材料としては、第1の無機膜において例示したものと同様に、ケイ素単体(Si)、又はケイ素(Si)と、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)から選ばれる1種以上とを含有するケイ素化合物であればよい。また、クロム以外の遷移金属(Me)とケイ素とを含有し、クロムを含有しない膜の材料としては、第1の無機膜において例示したものと同様に、遷移金属(Me)と、ケイ素(Si)とを含有する遷移金属(Me)ケイ素化合物、又は遷移金属(Me)と、ケイ素(Si)と、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)から選ばれる1種以上とを含有する遷移金属(Me)ケイ素化合物であればよい。クロム以外の遷移金属(Me)も、第1の無機膜において例示したものと同様のものが挙げられ、特に、ドライエッチング加工性の点からモリブデン(Mo)が好ましい。なお、第4の無機膜を構成する材料も、水素などを含んでいてもよい。
【0037】
第4の無機膜としては、遮光膜、反射防止膜、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜などの光学膜、第3の無機膜に対するエッチングストッパ膜などが挙げられる。
【0038】
第4の無機膜の膜厚は、1nm以上で、100nm以下が好ましい。第4の無機膜が遮光膜、反射防止膜又は位相シフト膜である場合、フォトマスクとしたときに、遮光パターンとして残る膜全体として、露光光、例えば、波長250nm以下の光、特にArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)などの波長200nm以下の光に対して、光学濃度(OD)が2.5以上、特に3以上となる厚さとすることが好ましく、具体的には、40nm以上100nm以下が好ましい。
【0039】
第1の無機膜、第2の無機膜及び他の無機膜(第3の無機膜、第4の無機膜など)は、各々、単層で構成しても、複数(2以上で、通常4以下)の層で構成してもよく、また、傾斜組成を有する膜としてもよい。複数層構成の場合、例えば、透明基板側を、酸素や窒素の多い材料で形成して、密着性を改善した層又は反射防止層(A層)、透明基板から離間する側を、反射防止層(B層)として、透明基板側から、A層及び遮光層の2層構成の遮光膜、遮光層及びB層の2層構成の遮光膜、A層、遮光層及びB層の3層構成の遮光膜とすることができる。
【0040】
本発明のフォトマスクブランクには、第2の無機膜の透明基板から離間する側に接して、レジスト膜などの有機膜を形成してもよい。レジスト膜は、電子線で描画する電子線レジストでも、光で描画するフォトレジストでもよく、特に、化学増幅型レジストが好ましい。化学増幅型レジストは、ポジ型でもネガ型でもよく、例えば、ヒドロキシスチレン系の樹脂又は(メタ)アクリル酸系樹脂と、酸発生剤とを含有し、必要に応じて、架橋剤、クエンチャー、界面活性剤などを添加したものが挙げられる。レジスト膜の膜厚は、形状が良好なフォトマスクパターンが得られるよう、適宜設定することができるが、50nm以上、特に70nm以上で、200nm以下、特に150nm以下が好ましい。
【0041】
本発明のフォトマスクブランクとしては、バイナリーマスクブランクであっても、ハーフトーン位相シフトマスクブランクなどの位相シフトマスクブランクであってもよい。これらからは、各々、バイナリーマスク、ハーフトーン位相シフトマスクなどの位相シフトマスクが製造される。
【0042】
透明基板上の無機膜の構成としては、例えば、第1の無機膜が第3の無機膜のハードマスク膜、第2の無機膜が第1の無機膜の加工補助膜、第3の無機膜が遮光膜、第4の無機膜が位相シフト膜であるものが好適である。第1の無機膜が第3の無機膜のハードマスク膜である場合、ハードマスク膜としての第1の無機膜の加工精度を十分保持しつつ、パターンの転写性を向上させることができる。特に、微細なパターンを形成するフォトマスクブランク、例えば30nmノード以細のフォトマスクパターンを形成するためのフォトマスクブランクとして、第1の無機膜を第3の無機膜のハードマスク膜、第2の無機膜を第1の無機膜の加工補助膜とすることが、精度よくフォトマスクパターンを形成する上で、特に効果的である。第1の無機膜がハードマスク膜である場合、第1の無機膜を構成する材料としては、特に、ケイ素と酸素とからなる材料(SiO)又はケイ素と酸素と窒素とからなる材料(SiON)が、エッチング耐性が高く好ましい。
【0043】
本発明のフォトマスクブランクに用いる無機膜の形成は、特に限定されるものではないが、例えば、SiO2などのケイ素と酸素とからなる材料の膜を形成する場合は、ケイ素を含むガス、例えば、モノシラン、ジクロロシラン、トリクロロシランなどを用いたCVDにより形成してもよいが、スパッタリング法による形成が、制御性がよく、所定の特性を有する膜を形成しやすいので好ましい。スパッタリング方式は、DCスパッタリング、RFスパッタリングなどが適用でき、特に制限はない。
【0044】
第1の無機膜、第4の無機膜などとして、ケイ素を含有し、遷移金属を含有しない膜を形成する場合は、スパッタターゲットとして、ケイ素ターゲットを用いることができる。また、第1の無機膜、第4の無機膜などとして、クロム以外の遷移金属(Me)とケイ素とを含有し、クロムを含有しない膜を形成する場合は、スパッタターゲットとして、クロム以外の遷移金属(Me)とケイ素とを含有するターゲットを用いることができる。この場合、ケイ素ターゲットと、クロム以外の遷移金属(Me)ターゲットとを用いて、クロム以外の遷移金属(Me)とケイ素とを含有し、組成が異なっている(構成元素の一部若しくは全部が異なっている、又は構成元素は同一であるがそれらの濃度が異なっている)ターゲットを複数用いて、又はケイ素ターゲット又はクロム以外の遷移金属(Me)ターゲットと、クロム以外の遷移金属(Me)とケイ素とを含有するターゲットとを用いて、共スパッタリングすることもできる。一方、第2の無機膜、第3の無機膜などとして、クロムを含有し、ケイ素を含有しない膜を形成する場合、スパッタターゲットとしては、クロムターゲットを用いることができる。
【0045】
スパッタターゲットに投入する電力はスパッタターゲットの大きさ、冷却効率、膜形成のコントロールのし易さなどによって適宜設定すればよく、通常、スパッタターゲットのスパッタ面の面積当たりの電力として、0.1~10W/cm2とすればよい。
【0046】
ケイ素のみ、ケイ素及び遷移金属のみ、又はクロムのみからなる材料の膜を形成する場合、スパッタガスとしては、ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、アルゴンガス(Ar)などの希ガスのみが用いられる。一方、酸素、窒素又は炭素を含む材料の膜を形成する場合、スパッタリングは、反応性スパッタリングが好ましい。スパッタガスとしては、ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、アルゴンガス(Ar)などの希ガスと、反応性ガスとが用いられる。例えば、酸素を含む材料の膜を形成するときは、反応性ガスとして酸素ガス(O2ガス)、窒素を含む材料の膜を形成するときは、反応性ガスとして窒素ガス(N2ガス)を用いればよい。また、窒素と酸素の双方を含む材料の膜を形成するときは、反応性ガスとして、酸素ガス(O2ガス)と窒素ガス(N2ガス)を同時に用いてもよいし、一酸化窒素ガス(NOガス)、二酸化窒素ガス(NO2ガス)などの酸化窒素ガスを用いてもよい。炭素を含む材料の膜を形成するときは、反応性ガスとして、メタンガス(CH4)、一酸化炭素ガス(COガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)などの炭素を含むガスを用いればよい。
【0047】
膜形成時の圧力は、膜応力、耐薬品性、洗浄耐性などを考慮して適宜設定すればよく、通常、0.01Pa以上、特に0.03Pa以上で、1Pa以下、特に0.3Pa以下とすることで、耐薬品性が向上する。また、各ガス流量は、所望の組成となるように適宜設定すればよく、通常0.1~100sccmとすればよい。
【0048】
フォトマスクブランクの製造過程において、透明基板又は透明基板及び無機膜に、熱処理を施してもよい。熱処理の方法は、赤外線加熱、抵抗加熱などが適用でき、処理の条件も、特に制限はない。熱処理は、例えば、酸素を含むガス雰囲気で実施することができる。酸素を含むガスの濃度は、特に制限はなく、例えば、酸素ガス(O2ガス)の場合、1~100体積%とすることができる。熱処理の温度は、200℃以上、特に400℃以上とすることが好ましい。また、フォトマスクブランクの製造過程において、無機膜に、オゾン処理やプラズマ処理などを施してもよく、処理の条件も、特に制限はない。いずれの処理も、無機膜の表面部の酸素濃度を増加させる目的で実施することができ、その場合、所定の酸素濃度となるように、処理条件を適宜調整すればよい。なお、無機膜をスパッタリングで形成する場合は、スパッタガス中の希ガスと、酸素ガス(O2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)、二酸化炭素ガス(CO2ガス)などの酸素を含むガス(酸化性ガス)との比率を調整することにより、無機膜の表面部の酸素濃度を増加させることも可能である。
【0049】
フォトマスクブランクの製造過程においては、透明基板又は無機膜の表面上に存在するパーティクルを除去するために、洗浄処理を実施してもよい。洗浄は、超純水、及びオゾンガス、水素ガスなどを含む超純水である機能水の一方又は双方を用いて実施することができる。また、界面活性剤を含む超純水で洗浄した後、超純水及び機能水の一方又は双方を用いて更に洗浄してもよい。洗浄は、必要に応じて超音波を照射しながら実施することができ、更に、UV光照射を組み合わせることもできる。
【0050】
本発明のフォトマスクブランクに、レジスト膜を形成する場合、レジスト膜の塗布方法は、特に限定されず、公知の手法が適用できる。
【0051】
本発明のフォトマスクブランクからフォトマスクを製造することができる。例えば、フォトマスクブランクにレジスト膜が形成されていない場合は、まず、第2の無機膜に接してレジスト膜を形成する((A)工程)。次に、レジスト膜をパターニングして、レジストパターンを形成する((B)工程)。次に、レジストパターンをエッチングマスクとして、第2の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第2の無機膜のパターンを形成する((C)工程)。次に、第2の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、第1の無機膜を、フッ素系ドライエッチングによりパターニングして、第1の無機膜のパターンを形成する((D)工程)。透明基板と第1の無機膜との間に他の無機膜(第3の無機膜、第4の無機膜など)がない場合は、更に、必要に応じて、適宜、残存しているレジストパターン及び第2の無機膜のパターンを除去すれば、フォトマスクを得ることができる。
【0052】
クロムを含有し、ケイ素を含有しない第2の無機膜に対する(C)工程のドライエッチングは、フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する際に、クロムを含有し、ケイ素を含有しない膜に対して通常実施される塩素系ドライエッチングではなく、フッ素系ドライエッチングにより実施される。従って、(C)工程及び(D)工程は、いずれもフッ素系ドライエッチングにより実施されるため、(C)工程及び(D)工程を連続して実施することができる。(C)工程及び(D)工程をフッ素系ドライエッチングにより実施するためには、(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる第1の無機膜のエッチングレートに対して、(C)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる第2の無機膜のエッチングレートが0.1以上、特に0.3以上の比率であることが有効である。また、(C)工程におけるフッ素系ドライエッチングと、(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングとは、同一条件であることが好ましい。
【0053】
透明基板と第1の無機膜との間に第3の無機膜がある場合、(D)工程の後、第1の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、第3の無機膜のエッチング特性に応じて、塩素系ドライエッチングにより第3の無機膜のパターンを形成することができる。透明基板と第3の無機膜との間に他の無機膜(第4の無機膜)がない場合は、更に、必要に応じて、適宜、残存しているレジストパターン及び第2の無機膜のパターンを除去すれば、更には、必要に応じて第1の無機膜のパターンを除去すれば、フォトマスクを得ることができる。この場合、第3の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、透明基板のエッチング特性に応じて、フッ素系ドライエッチングにより透明基板にパターンを形成することもできる。
【0054】
透明基板と第1の無機膜との間に第3の無機膜及び第4の無機膜がある場合、(D)工程の後、第1の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、第3の無機膜のエッチング特性に応じて、塩素系ドライエッチングにより第3の無機膜のパターンを形成することができ、更に、第3の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、第4の無機膜のエッチング特性に応じて、フッ素系ドライエッチングにより第4の無機膜のパターンを形成することができる。この後、必要に応じて、適宜、残存しているレジストパターン及び第2の無機膜のパターンを除去すれば、更には、必要に応じて第1の無機膜のパターンを除去すれば、フォトマスクブランクを得ることができる。この場合、更に、必要に応じて新たなレジストパターンを形成し、第3の無機膜のパターンの一部又は全部を塩素系ドライエッチングによりエッチングして除去してもよい。
【0055】
第3の無機膜は、第1の無機膜に対するエッチング選択性の観点から、(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる第1の無機膜のエッチングレートに対して、(D)工程におけるフッ素系ドライエッチングによる第3の無機膜のエッチングレートが0.3未満、特に0.1以下の比率であることが好ましい。
【0056】
本発明のフォトマスクは、被加工基板にハーフピッチ50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下のパターンを形成するためのフォトリソグラフィにおいて、被加工基板上に形成したフォトレジスト膜に、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)などの波長250nm以下、特に波長200nm以下の露光光でパターンを転写する露光において特に有効である。
【0057】
本発明のフォトマスクを用いたパターン露光方法では、フォトマスクブランクから製造されたフォトマスクを用い、フォトマスクパターンに、露光光を照射して、被加工基板上に形成したフォトマスクパターンの露光対象であるフォトレジスト膜に、フォトマスクパターンを転写する。露光光の照射は、ドライ条件による露光でも、液浸露光でもよく、特に、300mm以上のウェハーを被加工基板として液浸露光により、フォトマスクパターンを露光する場合に好適に用いることができる。
【実施例
【0058】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明を具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0059】
[実施例1]
152mm角、厚さ約6mmの石英基板上に、位相シフト膜(第4の無機膜)としてMoSiON膜(厚さ75nm)をスパッタリング法で形成した。スパッタガスとしては、アルゴンガスと酸素ガスと窒素ガスを用い、ターゲットとしてはMoSi2ターゲットとSiターゲットの2種類を用いて、石英基板を30rpmで回転させながら成膜した。この位相シフト膜の組成をESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)法(XPS法)で、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製、K-Alphaを使用(以下のESCA法において同じ。)して測定したところ、Mo:Si:O:N=1:4:1:4(原子比)であった。
【0060】
次に、第4の無機膜の上に、遮光膜(第3の無機膜)として、石英基板側からCrN層(厚さ30nm)と、CrON層(厚さ20nm)とをスパッタリング法で形成した。スパッタガスとしては、CrN層はアルゴンガスと窒素ガスを、CrON層はアルゴンガスと酸素ガスと窒素ガスを用い、ターゲットとしては金属クロムターゲットを用いて、石英基板を30rpmで回転させながら成膜した。この遮光膜の組成をESCA法で測定したところ、CrN層はCr:N=9:1(原子比)、CrON層はCr:O:N=4:5:1(原子比)であった。
【0061】
次に、第3の無機膜の上に、ハードマスク膜(第1の無機膜)として、SiO膜(厚さ5nm)をスパッタリング法で形成した。スパッタガスとしては、アルゴンガスと酸素ガスを用い、ターゲットとしてはSiターゲットを用いて、石英基板を30rpmで回転させながら成膜した。このハードマスク膜の組成をESCA法で測定したところ、Si:O=1:2(原子比)であった。
【0062】
次に、第1の無機膜の上に、加工補助膜(第2の無機膜)として、CrON膜(厚さ5nm)をスパッタリング法で形成した。スパッタガスとしては、アルゴンガスと酸素ガスと窒素ガスを用い、ターゲットとしては金属クロムターゲットを用いて、石英基板を30rpmで回転させながら成膜した。この加工補助膜の組成をESCA法で測定したところ、Cr:O:N=37:51:12(原子比)であった。
【0063】
次に、第2の無機膜の上に、ネガ型電子線レジスト(信越化学工業株式会社製)を塗布することによりレジスト膜(厚さ100nm)を形成して、フォトマスクブランク(位相シフトマスクブランク)を得た。
【0064】
この方法で得られたフォトマスクブランクのレジスト膜を、水酸化テトラメチルアンモニウムで現像して、純水でリンスした。これを欠陥検査装置(レーザーテック社製、MAGICS 2350)で検査したところ、サイズが0.1μm以上の欠陥の検出数は50個以下と少なかった。
【0065】
また、この方法で得られたフォトマスクブランクのレジスト膜に、電子線(EB)によりパターンを描画し、水酸化テトラメチルアンモニウムで現像して、レジストパターンを形成した。次に、レジストパターンをエッチングマスクとして、下記条件のフッ素系ドライエッチングで第2の無機膜と第1の無機膜とを順にエッチングして、第2の無機膜のパターンと第1の無機膜のパターンを形成した。次に、第1の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、下記条件の塩素系ドライエッチングで第3の無機膜をエッチングして、第3の無機膜のパターンを形成した。この段階で、残存しているレジストパターンは除去した。
【0066】
次に、第3の無機膜のパターンをエッチングマスクとして、下記条件のフッ素系ドライエッチングで第4の無機膜をエッチングして、第4の無機膜のパターンを形成すると共に第2の無機膜のパターンと第1の無機膜のパターンを除去した。次に、石英基板及び第3の無機膜のパターンの上に、新たなレジスト膜を形成し、フォトマスクのマスクパターン形成範囲外にレジスト膜が残存するレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、下記条件の塩素系ドライエッチングでマスクパターン形成範囲内の第3の無機膜をエッチングして、第3の無機膜を除去した。最後に、残存しているレジストパターンを除去して、フォトマスク(位相シフトマスク)を得た。
【0067】
<フッ素系ドライエッチング条件>
RF1(バイアス用高周波電源):RIE(リアクティブイオンエッチング)、CW(連続放電)、54W
RF2(アンテナ用高周波電源):ICP(誘導結合プラズマ)、CW(連続放電)、325W
圧力:5mTorr(0.67Pa)
SF6:18sccm
2:45sccm
【0068】
<塩素系ドライエッチング条件>
RF1(バイアス用高周波電源):RIE(リアクティブイオンエッチング)、パルス、700V
RF2(アンテナ用高周波電源):ICP(誘導結合プラズマ)、CW(連続放電)、400W
圧力:6mTorr(0.80Pa)
Cl2:185sccm
2:55sccm
He:9.25sccm
【0069】
上記フッ素系ドライエッチングによる第1の無機膜のエッチングレートに対する第2の無機膜のエッチングレートの比率は0.3、第1の無機膜のエッチングレートに対する第3の無機膜のエッチングレートの比率は0.2であった。
【0070】
[比較例1]
第1の無機膜の上に、第2の無機膜を形成せず、第1の無機膜に直接レジスト膜を形成した以外は、実施例1と同様にして、フォトマスクブランク(位相シフトマスクブランク)を得た。
【0071】
この方法で得られたフォトマスクブランクのレジスト膜を、水酸化テトラメチルアンモニウムで現像して、純水でリンスした。これを欠陥検査装置(レーザーテック社製、MAGICS 2350)で検査したところ、多数のレジスト残渣が残り、サイズが0.1μm以上の欠陥の検出数は4500個以上と非常に多かった。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0073】
1 透明基板
21 第1の無機膜
22 第2の無機膜
23 第3の無機膜
24 第4の無機膜
3 レジスト膜
10、11、12、13、14、15 フォトマスクブランク
図1
図2
図3
図4
図5
図6