(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ポリカーボネートジオール、ウレタン樹脂およびコーティング剤
(51)【国際特許分類】
C08G 64/02 20060101AFI20240925BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20240925BHJP
C09D 169/00 20060101ALI20240925BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C08G64/02
C08G18/44
C09D169/00
C09D175/04
(21)【出願番号】P 2023200654
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2023020822の分割
【原出願日】2023-02-14
【審査請求日】2023-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 康平
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-103293(JP,A)
【文献】特開2022-153302(JP,A)
【文献】特開2002-275234(JP,A)
【文献】特開2008-155560(JP,A)
【文献】国際公開第2006/088152(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/039249(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/02
C08G 18/44
C09D 169/00
C09D 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表わされる繰り返し単位(A)を含有し、末端水酸基を含むポリカーボネートジオールであって、
前記繰り返し単位(A)の90~100モル%が下記式(B)で表わされる繰り返し単位(B)及び/又は下記式(C)で表わされる繰り返し単位(C)であり、
前記ポリカーボネートジオールが下記式(D)で表されるポリカーボネートジオール(D)を含み、
前記ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量が300~2800g/molであり、
せん断速度1s
-1
、温度25℃における粘度η
1
が、20000~80000mPa・s
-1
であり、
せん断速度1000s
-1
、温度25℃における粘度η
1000
が、10000~40000mPa・s
-1
であり、
せん断速度1s
-1、温度25℃における粘度η
1に対する、せん断速度1000s
-1、温度25℃における粘度η
1000の比〔η
1000/η
1〕が0.40~0.80であ
り、
前記ポリカーボネートジオールの90~100モル%が前記ポリカーボネートジオール(D)であり、
前記ポリカーボネートジオール(D)にR
1
として含まれるアルカンジイル基の全モル数に対する3-メチルペンタン-1,5-ジイル基のモル数の比が、0.20~1.00である、ポリカーボネートジオール。
【化1】
(式(A)中、Rは、炭素数2~15の2価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
【化2】
【化3】
【化4】
(式(D)中、
R
1は、*-(CH
2)
6-*、又は、*-CH
2CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2-*を表し、
前記式中の両端の*は、R
1の両端にそれぞれ結合した2つの酸素原子との結合部位を示し、
qは1以上の整数を示し、複数存在するR
1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
せん断速度1s
-1、温度25℃における粘度η
1が、
25000~70000mPa・s
-1であ
り、
せん断速度1000s
-1
、温度25℃における粘度η
1000
が、15000~35000mPa・s
-1
である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項3】
せん断速度1s
-1
、温度25℃における粘度η
1
が、30000~60000mPa・s
-1
であり、
せん断速度1000s
-1、温度25℃における粘度η
1000が、
20000~30000mPa・s
-1である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項4】
前記繰り返し単位(B)の量が、前記繰り返し単位(A)の総量に対して20~100モル%である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項5】
前記繰り返し単位(B)の量が、前記繰り返し単位(B)と前記繰り返し単位(C)との合計に対して20~100モル%である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項6】
前記繰り返し単位(A)の全てが前記繰り返し単位(B)及び/又は前記繰り返し単位(C)である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項7】
請求項1~
6のうちのいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールと、イソシアネートと、の反応生成物を含む、ウレタン樹脂。
【請求項8】
請求項
7に記載のウレタン樹脂を含む、コーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリカーボネートジオール、ウレタン樹脂およびコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートポリオールは、ポリイソシアネート化合物と反応させて、ウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂とも呼ばれる)を製造する原料として有用であり、接着剤、塗料等の原料として有用である。
ポリカーボネートポリオールの1種であるポリカーボネートジオールとしては、一般的には、ジオール成分として1,6-ヘキサンジオールを単独で用いたポリカーボネートジオールが使われている。しかしながら、このようなポリカーボネートジオールは、結晶性であるため常温で固体であり、取扱いが困難であるという問題がある。
【0003】
これらの問題を解決するため、2種類以上のジオールを用いてポリカーボネートジオールを製造することが提案されている。例えば、特開2002-275234号公報(特許文献1)には、ジオール成分として1,6-ヘキサンジオールと3-メチル-1,5-ペンタンジオールとを用い、触媒としてテトラブチルチタネートを用いて合成したポリカーボネートジオールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリカーボネートジオールは流動を伴う製造設備で使用される場合、成型加工性と粘度安定性とを両立することが困難であるという問題があった。そして、上記特許文献1に記載のポリカーボネートジオールによっても、成型加工性と粘度安定性とを両立することには、なお改善の余地を有している。
そこで、本開示の一態様は、25℃での成型加工性と粘度安定性とを両立するポリカーボネートジオールを提供することを目的とする。また、本開示の他の態様は、該ポリカーボネートジオールから得られるウレタン樹脂およびコーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の態様を提供する。
【0007】
[1]下記式(A)で表わされる繰り返し単位(A)を含有し、末端水酸基を含むポリカーボネートジオールであって、
前記繰り返し単位(A)の90~100モル%が下記式(B)で表わされる繰り返し単位(B)及び/又は下記式(C)で表わされる繰り返し単位(C)であり、
前記ポリカーボネートジオールが下記式(D)で表されるポリカーボネートジオール(D)を含み、
前記ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量が300~2800g/molであり、
せん断速度1s
-1
、温度25℃における粘度η
1
が、20000~80000mPa・s
-1
であり、
せん断速度1000s
-1
、温度25℃における粘度η
1000
が、10000~40000mPa・s
-1
であり、
せん断速度1s-1、温度25℃における粘度η1に対する、せん断速度1000s-1、温度25℃における粘度η1000の比〔η1000/η1〕が0.40~0.80であり、
前記ポリカーボネートジオールの90~100モル%が前記ポリカーボネートジオール(D)であり、
前記ポリカーボネートジオール(D)にR
1
として含まれるアルカンジイル基の全モル数に対する3-メチルペンタン-1,5-ジイル基のモル数の比が、0.20~1.00である、ポリカーボネートジオール。
【0008】
【0009】
(式(A)中、Rは、炭素数2~15の2価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
(式(D)中、
R1は、*-(CH2)6-*、又は、*-CH2CH2CH(CH3)CH2CH2-*を表し、
前記式中の両端の*は、R1の両端にそれぞれ結合した2つの酸素原子との結合部位を示し、
qは1以上の整数を示し、複数存在するR1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0014】
[2]せん断速度1s-1、温度25℃における粘度η1が、25000~70000mPa・s-1であり、
せん断速度1000s
-1
、温度25℃における粘度η
1000
が、15000~35000mPa・s
-1
である、[1]に記載のポリカーボネートジオール。
[3]せん断速度1s
-1
、温度25℃における粘度η
1
が、30000~60000mPa・s
-1
であり、
せん断速度1000s-1、温度25℃における粘度η1000が、20000~30000mPa・s-1である、[1]又は[2]に記載のポリカーボネートジオール。
[4]前記繰り返し単位(B)の量が、前記繰り返し単位(A)の総量に対して20~100モル%である、[1]に記載のポリカーボネートジオール。
【0015】
[5]前記繰り返し単位(B)の量が、前記繰り返し単位(B)と前記繰り返し単位(C)との合計に対して20~100モル%である、[1]~[4]のうちのいずれか一項に記載のポリカーボネートジオール。
【0016】
[6]前記繰り返し単位(A)の全てが前記繰り返し単位(B)及び/又は前記繰り返し単位(C)である、[1]~[5]のうちのいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール。
【0019】
[7][1]~[6]のうちのいずれか1項に記載のポリカーボネートジオールと、イソシアネートと、の反応生成物を含む、ウレタン樹脂。
【0020】
[8][7]に記載のウレタン樹脂を含む、コーティング剤。
【発明の効果】
【0021】
本開示の一態様によれば、25℃での成型加工性と粘度安定性とを両立するポリカーボネートジオールを提供することができる。また、本開示の他の態様によれば、該ポリカーボネートジオールから得られるウレタン樹脂およびコーティング剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】比較例2で得られたポリカーボネートジオールのLCスペクトルを示す図である。
【
図2】せん断速度と高分子の粘度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。「~」を用いて示された数値範囲の最小値又は最大値は、「~」を用いて示された他の数値範囲の最大値又は最小値と任意に組み合わせ可能である。また、個別に記載した上限値及び下限値も任意に組み合わせ可能である。
【0024】
<ポリカーボネートジオール>
本開示の一態様のポリカーボネートジオールは、下記式(A)で表わされる繰り返し単位(A)を含有し、末端水酸基を含むポリカーボネートジオールであって、
前記繰り返し単位(A)の90~100モル%が下記式(B)で表わされる繰り返し単位(B)及び/又は下記式(C)で表わされる繰り返し単位(C)であり、
前記ポリカーボネートジオールが下記式(D)で表されるポリカーボネートジオール(D)を含み、
前記ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量が300~2800であり、
前記ポリカーボネートジオールについて測定したLCスペクトルにおいて、前記ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量に最も近い分子量のピークに対応する前記ポリカーボネートジオール(D)の繰り返し単位の数をX0としたとき、前記繰り返し単位の数がX0であるピークの面積値に対して、ピークの面積値比が0.90~1.10であるピークが、前記繰り返し単位の数がX0であるピークを含めて2~7個連続している、ポリカーボネートジオールである。
【0025】
【0026】
(式(A)中、Rは、炭素数2~15の2価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表す。)
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
(式(D)中、
R1は、*-(CH2)6-*、又は、*-CH2CH2CH(CH3)CH2CH2-*を表し、
前記式中の両端の*は、R1の両端にそれぞれ結合した2つの酸素原子との結合部位を示し、
qは1以上の整数を示し、複数存在するR1は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0031】
なお、本開示において、「ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量に最も近い分子量のピーク」とは、前記ポリカーボネートジオール(D)の各繰り返し単位数に基づいて算出される各分子量のピークのうち、ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量との差の絶対値が最も小さい分子量のピークを意味する。なお、ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量との差の絶対値が最も小さい分子量のピークが二つ存在する場合は、分子量の小さいピークを採用する。
【0032】
本開示の一態様のポリカーボネートジオールは、前記繰り返し単位(A)を含有し、末端水酸基を含むポリカーボネートジオールである。前記式(A)中、Rは炭素数2~15の2価の脂肪族又は脂環族炭化水素である。前記2価の脂肪族炭化水素基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、ポリカーボネートジオール中に複数存在するRは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
Rにおける2価の直鎖状脂肪族炭化水素基としては、炭素数が2~15であり、3~12であることが好ましく、4~10であることがより好ましい。
【0034】
Rにおける炭素数2~15の2価の直鎖状脂肪族炭化水素基の具体例は、特に限定されないが、例えば、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基)、ペンチレン基(ペンタメチレン基)、へキシレン基(ヘキサメチレン基)、ヘプチレン基(ヘプタメチレン基)、オクチレン基(オクタメチレン基)、ノニレン基(ノナメチレン基)等が挙げられる。中でも、汎用性の観点から、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基又はノニレン基が好ましい。
【0035】
Rにおける2価の分岐鎖状脂肪族炭化水素基としては、炭素数が3~15であり、4~12であることが好ましく、5~10であることがより好ましく、6~9であることが特に好ましい。
【0036】
Rにおける2価の分岐鎖状肪族炭化水素基の具体例は、特に限定されないが、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、イソヘキシレン基、3-メチルペンチレン基、イソヘプチレン基、イソオクチレン基、2-メチルオクチレン基等が挙げられる。中でも、汎用性の観点から、イソペンチレン基、イソヘキシレン基、3-メチルペンチレン基又は2-メチルオクチレン基が好ましい。
【0037】
Rにおける2価の脂環族炭化水素基としては、炭素数が3~15であり、4~12であることが好ましく、6~9であることがより好ましい。
【0038】
Rにおける2価の脂環族炭化水素基の具体例は、特に限定されないが、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基等が挙げられる。中でも、汎用性の観点から、シクロペンチレン基又はシクロヘキシレン基が好ましい。
【0039】
これらの炭素数2~15の2価の脂肪族又は脂環族炭化水素の中でも、Rとしては、炭素数3~9の2価の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、炭素数3~9の2価の分岐鎖状肪族炭化水素基が好ましく、炭素数4~6の2価の直鎖状脂肪族炭化水素基、又は、炭素数4~6の2価の分岐鎖状肪族炭化水素基がより好ましい。
【0040】
前記繰り返し単位(A)は、その90~100モル%が前記繰り返し単位(B)及び/又は前記繰り返し単位(C)(好ましくは、前記繰り返し単位(B)及び前記繰り返し単位(C))であり、その95~100モル%が前記繰り返し単位(B)及び/又は前記繰り返し単位(C)(より好ましくは、前記繰り返し単位(B)及び前記繰り返し単位(C))であることが好ましく、その全てが前記繰り返し単位(B)及び/又は前記繰り返し単位(C)(さらに好ましくは、前記繰り返し単位(B)及び前記繰り返し単位(C))であることがより好ましい。前記繰り返し単位(B)及び/又は前記繰り返し単位(C)の割合が前記範囲内であることにより、ハンドリング性が良好であり、25℃での成形加工性と粘度安定性を両立したポリカーボネートジオールが得られやすい傾向にある。
【0041】
前記繰り返し単位(B)の量は、前記繰り返し単位(A)の総量に対して、20~100モル%であることが好ましく、30~99モル%であることがより好ましく、40~95モル%であることがさらに好ましく、50~90モル%であることが特に好ましい。前記割合が前記範囲内であることにより、得られるポリカーボネートジオールは、25℃での性状が液状となり、取り扱い性に優れやすい傾向にある。
【0042】
また、前記繰り返し単位(B)の量は、前記繰り返し単位(B)と前記繰り返し単位(C)との合計量に対して、20~100モル%であることが好ましく、30~99モル%であることがより好ましく、40~95モル%であることがさらに好ましく、50~90モル%であることが特に好ましい。前記割合が前記範囲内であることにより、得られるポリカーボネートジオールは、25℃での性状が液状となり、取り扱い性に優れやすい傾向にある。
【0043】
本開示の一態様のポリカーボネートジオールは、前記式(D)で表わされるポリカーボネートジオール(D)を含む。
【0044】
前記式(D)中、R1は、*-(CH2)6-*、又は、*-CH2CH2CH(CH3)CH2CH2-*を表し、前記式中の両端の*は、R1の両端にそれぞれ結合した2つの酸素原子との結合部位を示し、qは1以上の整数を示し、1~30であることが好ましく、2~20であることがより好ましく、3~15であることがさらに好ましい。また、複数存在するR1は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0045】
このようなポリカーボネートジオール(D)の中でも、R1として1,6-ヘキサンジイル基と3-メチルペンタン-1,5-ジイル基とを含む、すなわち、2種以上のアルカンジイル基を含む前記ポリカーボネートジオール(D)は、25℃で液体となりやすく、25℃での成型加工性と粘度安定性とを両立しやすい傾向にある。
【0046】
また、2種以上のアルカンジイル基を含む前記ポリカーボネートジオール(D)においては、25℃で液状であり、25℃での成型加工性と粘度安定性を両立しやすい観点から、前記ポリカーボネートジオール(D)にR1として含まれるアルカンジイル基の全モル数(1,6-ヘキサンジイル基と3-メチルペンタン-1,5-ジイル基との合計モル数)に対する3-メチルペンタン-1,5-ジイル基のモル数の比が、0.20~1.00であることが好ましく、0.30~0.99であることがより好ましく、0.40~0.95であることがさらに好ましく、0.50~0.90であることが特に好ましい。
【0047】
本開示の一態様のポリカーボネートジオールは、25℃で液状であり、25℃での成型加工性と粘度安定性を両立しやすい観点から、その90~100モル%が前記ポリカーボネートジオール(D)であることが好ましく、その95~100モル%が前記ポリカーボネートジオール(D)であることがより好ましく、その全てが前記ポリカーボネートジオール(D)であることが特に好ましい。
【0048】
また、本開示の一態様のポリカーボネートジオールの水酸基価は、40~375mgKOH/gであることが好ましく、45~225mgKOH/gであることがより好ましく、48~140mgKOH/gであることがさらに好ましく、55~120mgKOH/gであることが特に好ましい。なお、ポリカーボネートジオールの水酸基価は、ポリカーボネートジオール1g中のヒドロキシ基と当量の水酸化カリウムのミリグラム(mg)数を意味し、JIS K1557-1に準拠して測定することができる。
【0049】
さらに、本開示の一態様のポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量は、300~2800g/molであることが好ましく、500~2500g/molであることがより好ましく、800~2300g/molであることがさらに好ましく、1000~2000g/molであることが特に好ましい。
【0050】
本開示の一態様のポリカーボネートジオールは、測定したLCスペクトルにおいて、前記ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量(絶対分子量)に最も近い分子量のピークに対応する前記ポリカーボネートジオール(D)の繰り返し単位数をX0としたとき、前記繰り返し単位の数がX0であるピークの面積値S(X0)に対して、ピークの面積値比〔S(X)/S(X0)、S(X)は前記ポリカーボネートジオール(D)の繰り返し単位の数がXであるピークの面積値〕が0.90~1.10であるピークが、前記繰り返し単位の数がX0であるピークを含めて2~7個連続し、3~6個連続することが好ましく、4~5個連続することが特に好ましい。前記ピークの面積値比〔S(X)/S(X0)〕が0.90~1.10であるピークが連続する個数が、前記繰り返し単位の数がX0であるピークを含めて前記下限以上であると、25℃での成型加工性に優れるポリカーボネートジオールが得られやすい傾向にある。また、前記ピークの面積値比〔S(X)/S(X0)〕が0.90~1.10であるピークが連続する個数が、前記繰り返し単位の数がX0であるピークを含めて前記上限以下であると、25℃での粘度安定性に優れるポリカーボネートジオールが得られやすい傾向がある。さらに、前記繰り返し単位の数がX=X0-α(αは正の整数:1,2,3,4,・・・・)であるピークにおいて、前記ピークの面積値比〔S(X)/S(X0)〕が1.10以上のピークが存在すると、25℃での成形加工性にさらに優れるポリカーボネートジオールが得られやすい傾向がある。
【0051】
ポリカーボネートジオールのLCスペクトルにおけるピークの面積値比〔S(X)/S(X0)〕は、以下の方法により求めることができる。すなわち、ポリカーボネートジオールのLCスペクトルにおいて、前記ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量に最も近い分子量のピークとして、前記ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量との差の絶対値が最も小さい分子量のピークを決定し、このピークに対応する前記ポリカーボネートジオール(D)の繰り返し単位の数X0を求める。なお、ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量との差の絶対値が最も小さい分子量のピークが二つ存在する場合は、分子量の小さいピークを採用する。次に、前記LCスペクトルにおいて、各ピークの面積値S(X)〔Xは前記ポリカーボネートジオール(D)の繰り返し単位の数を表し、X=・・・、X0-2、X0-1、X0、X0+1、X0+2、・・・である。〕を求め、前記繰り返し単位の数がX0であるピークの面積値S(X0)に対する各ピークの面積値比〔S(X)/S(X0)〕を算出する。なお、X及びX0は、LC測定の検出限界から、分子量が300~2800g/molのピークの前記ポリカーボネートジオール(D)の繰り返し単位の数、すなわち、3~19の範囲内の整数となる。
【0052】
なお、LC測定より得られる各ピークと前記ポリカーボネートジオール(D)の繰り返し単位の数Xとの対応関係は、例えば、各ピークの単独でのMS測定(装置:ブルカー・ダルトニクス製 microTOF、イオン源:APCI、測定モード:ポジティブモード)を行い、得られるスペクトルのメインピークを解析することで確認可能である。
【0053】
このようにして算出した面積値比〔S(X)/S(X0)〕が0.90~1.10の範囲内にあるピークが、前記繰り返し単位の数がX0であるピークを含んで連続している数を求める。
【0054】
一般に、高分子は、分子量が高いほど、良好な物性を発現しやすい傾向にあるが、高粘度になるため、射出成型において、成型加工性が低下しやすい傾向にある。一方、高分子は、せん断速度の上昇に伴い、粘度が低下することが知られている。そこで、せん断速度が遅い状態(静置に近い状態)で高粘度である高分子であっても、成型加工時の流動状態、すなわち、せん断速度が速い状態で低粘度である高分子であれば、良好な物性を発現しやすい傾向にあり、かつ、成型加工性に優れた高分子が得られやすい傾向にある。
【0055】
ウレタン樹脂の原料に使用されるポリオールは、合成皮革又は人工皮革などの柔軟性が求められる用途において、ウレタン樹脂中のウレタン基量を低減するために、分子量の高いポリオールが好適に使用される。
【0056】
本開示においては、このような良好な物性を発現し、かつ、成型加工性に優れた高分子の指標として、せん断速度1s
-1、温度25℃における粘度η
1に対する、せん断速度1000s
-1、温度25℃における粘度η
1000の比〔η
1000/η
1〕を採用する。この粘度比〔η
1000/η
1〕の技術的意義について説明する。
図2に示すように、高分子は、せん断速度が速くなると、粘度が低下する。しかしながら、高せん断速度下で粘度が低くなりすぎる、すなわち、粘度比〔η
1000/η
1〕が小さくなりすぎると、成型加工性は良好となるものの、高せん断速度付近で急激に粘度が低下するため、成型時の高分子の吐出量が想定しにくくなり、吐出安定性が低下する。一方、高せん断速度下での粘度の低下が小さすぎる場合、すなわち、粘度比〔η
1000/η
1〕が1付近の場合には、粘度安定性は良好であるものの、粘度が十分に低下しないため、成型加工性が低下する。したがって、高分子の良好な物性を発現させ、かつ、良好な成型加工性と良好な粘度安定性(吐出安定性)とを両立させるためには、粘度比〔η
1000/η
1〕が特定の範囲内にあることが好ましいと考えられる。
【0057】
本開示の一態様のポリカーボネートジオールにおいては、せん断速度1s-1、温度25℃における粘度η1に対する、せん断速度1000s-1、温度25℃における粘度η1000の比〔η1000/η1〕が、0.40~0.80であることが好ましく、0.42~0.75であることがより好ましく、0.45~0.70であることがさらに好ましい。粘度比〔η1000/η1〕が前記下限未満であると、せん断速度が1000s-1付近で急激に粘度が低下するため、成型時のポリカーボネートジオールの吐出量を想定することが困難となる傾向にあり、他方、粘度比〔η1000/η1〕が前記上限を超えると、せん断速度が1000s-1付近でも高粘度であるため、成型加工性が低くなる傾向にある。
【0058】
また、本開示の一態様のポリカーボネートジオールのせん断速度1s-1、温度25℃における粘度η1としては、20000~80000mPa・s-1であることが好ましく、25000~70000mPa・s-1であることがより好ましく、30000~60000mPa・s-1であることがさらに好ましい。粘度η1が前記下限以上であると、良好な物性を発現するポリカーボネートジオールが得られやすい傾向にあり、他方、粘度η1が前記上限以下であると、成型加工性に優れるポリカーボネートジオールが得られやすい傾向にある。
【0059】
さらに、本開示の一態様のポリカーボネートジオールのせん断速度1000s-1、温度25℃における粘度η1000としては、10000~40000mPa・s-1であることが好ましく、15000~35000mPa・s-1であることがより好ましく、20000~30000mPa・s-1であることがさらに好ましい。粘度η1000が前記下限以上であると、粘度安定性に優れるポリカーボネートジオールが得られやすい傾向にあり、他方、粘度η1000が前記上限以下であると、成型加工性に優れるポリカーボネートジオールが得られやすい傾向にある。
【0060】
<ポリカーボネートジオールの製造方法>
本開示の一態様のポリカーボネートジオールは、例えば、カーボネート化合物とジオール化合物とをエステル交換触媒の存在下で反応させて得ることができる。具体的には、カーボネート化合物とジオール化合物とエステル交換触媒を含有する混合液を加熱して、カーボネート化合物由来のアルコールを反応系から除去しつつ、還流反応(エステル交換反応)を行うことにより、ポリカーボネートジオールを得ることができる。したがって、本開示の一態様のポリカーボネートジオールには、エステル交換触媒が含まれていてもよい。
【0061】
(カーボネート化合物)
本開示の一態様のポリカーボネートジオールの製造に用いられるカーボネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート等が挙げられる。
【0062】
アルキレンカーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート等が挙げられる。
【0063】
ジアルキルカーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。
【0064】
ジアリールカーボネートとしては、特に限定されないが、例えば、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0065】
これらのカーボネート化合物の中でも、ポリカーボネートジオールの製造に用いられるカーボネート化合物としては、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネートが好ましく、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートがより好ましい。
【0066】
(ジオール化合物)
本開示の一態様のポリカーボネートジオールの製造に用いられるジオール化合物は、少なくとも、1,6-ヘキサンジオール及び/又は3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含む。
【0067】
また、本開示の一態様のポリカーボネートジオールの製造に用いられるジオール化合物には、1,6-ヘキサンジオール及び3-メチル-1,5-ペンタンジオール以外の他のジオール化合物が含まれていてもよい。他のジオール化合物としては、特に限定されないが、例えば、1,6-ヘキサンジオール以外の直鎖状ジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール以外の分岐鎖状ジオール、環状ジオール、芳香環を有するジオールが挙げられる。
【0068】
1,6-ヘキサンジオール以外の直鎖状ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ナノジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
【0069】
3-メチル-1,5-ペンタンジオール以外の分岐鎖状ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等が挙げられる。
【0070】
環状ジオールとしては、特に限定されないが、例えば、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン等が挙げられる。
【0071】
本開示の一態様のポリカーボネートジオールの製造に用いられるジオール化合物において、ジオール化合物の全モル数に対する1,6-ヘキサンジオール及び/又は3-メチル-1,5-ペンタンジオール(好ましくは、1,6-ヘキサンジオール及び3-メチル-1,5-ペンタンジオール)のモル数の比は、0.90~1.00であり、0.95~1.00であることが好ましく、ジオール化合物の全てが1,6-ヘキサンジオール及び/又は3-メチル-1,5-ペンタンジオール(さらに好ましくは、1,6-ヘキサンジオール及び3-メチル-1,5-ペンタンジオール)であることがより好ましい。1,6-ヘキサンジオール及び/又は3-メチル-1,5-ペンタンジオールの割合が前記範囲内であることにより、25℃での性状が液状であり、25℃での成型加工性と粘度安定性に優れるポリカーボネートジオールが得られやすい傾向にある。
【0072】
また、ジオール化合物の全モル数に対する3-メチル-1,5-ペンタンジオールのモル数の比は、0.20~1.00であることが好ましく、0.30~0.99であることがより好ましく、0.40~0.95であることがさらに好ましく、0.50~0.90であることが特に好ましい。前記割合が前記範囲内であることにより、得られるポリカーボネートジオールは、25℃での性状が液状となり、取り扱い性に優れる。
【0073】
さらに、3-メチル-1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとの合計モル数に対する3-メチル-1,5-ペンタンジオールのモル数の比は、0.20~1.00であることが好ましく、0.30~0.99であることがより好ましく、0.40~0.95であることがさらに好ましく、0.50~0.90であることが特に好ましい。前記割合が前記範囲内であることにより、得られるポリカーボネートジオールは、25℃での性状が液状となり、取り扱い性に優れる。
【0074】
本開示の一態様のポリカーボネートジオールにおいては、その性能を損なわない範囲で、1分子に3以上のヒドロキシ基を持つポリオール化合物、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等をポリカーボネートジオールの原料として用いることもできる。この1分子中に3以上のヒドロキシ基を持つポリオール化合物をポリカーボネートジオールの原料としてあまり多く用いると、ポリカーボネートの重合反応中に架橋してゲル化が起きてしまう。したがって、1分子中に3以上のヒドロキシ基を持つポリオール化合物をポリカーボネートジオールの原料として用いる場合であっても、このポリオール化合物は、ポリカーボネートジオールの原料として用いるジオール化合物の全モル数に対し、0.1~20モル%にすることが好ましく、0.5~15モル%とすることがより好ましく、1~10モル%とすることがさらに好ましく、2~5モル%とすることが特に好ましい。
【0075】
カーボネート化合物とジオール化合物との混合比率(混合液中のカーボネート化合物の含有量/混合液中のジオール化合物の含有量)は、モル比で、1/3~3/1が好ましく、1/2~2/1がより好ましく、1/1.3~1.3/1がさらに好ましく、1/1.2~1.2/1が特に好ましい。カーボネート化合物とジオール化合物との混合比率を上記範囲とすることで、ポリカーボネートジオールを効率よく得ることができる。
【0076】
本開示の一態様のポリカーボネートジオールの製造に用いられるエステル交換触媒としては、リチウムアセチルアセトナートが好ましい。エステル交換触媒としてリチウムアセチルアセトナートを用いることによって、所望の分子量分布を有する前記ポリカーボネートジオールを得ることができる。
【0077】
混合液中のエステル交換触媒の含有量は、反応温度を適切に制御しやすく、反応生成物の色数上昇を抑えることができる観点から、混合液中のカーボネート化合物とジオール化合物との総量100質量部に対して、0.0001~0.10質量部であってよく、0.001~0.07質量部であることが好ましく、0.002~0.04質量部であることがより好ましく、0.003~0.03質量部であることが更に好ましい。エステル交換触媒の含有量が前記下限以上であると、反応温度を適切に制御しやすくなるが、得られたポリカーボネートジオールをポリウレタンの製造原料として用いた場合に、ウレタン化反応の反応性の制御を容易とする観点では、エステル交換触媒の含有量は少ないほど好ましい。また、エステル交換触媒の含有量が前記上限以下であると、反応生成物の色数上昇やウレタン化反応の反応性を抑えることができる。
【0078】
混合液の加熱温度(反応温度)は、例えば、0~250℃であり、100~220℃であってもよい。反応温度が前記下限以上であると、エステル交換反応が進行し易く、所望のポリカーボネートジオールが得られやすい。反応温度が前記上限以下であると、得られるポリカーボネートジオールの色数が抑えられる。また、エステル交換反応は、温度を一定に保って行なってもよいし、反応進行度に応じて段階的又は連続的に昇温させながら行なってもよい。所望のポリカーボネートジオールを得られやすくする観点では、下記式(α)の関係を満たす温度T1での加熱を行った後、次いで、下記式(β)の関係を満たす温度T2での加熱を行うことが好ましい。なお、温度T1及び温度T2は下記式(γ)の関係を満たすことが好ましい。また、第1の加熱の温度の平均温度T1m及び第2の加熱の温度の平均温度T2mは下記式(δ)の関係を満たすことが好ましい。ここで、反応進行度は留出物の留出量から見積もることができる。
110℃≦T1<140℃ ・・・(α)
120℃≦T2<140℃ ・・・(β)
T1<T2 ・・・(γ)
T1m<T2m ・・・(δ)
【0079】
混合液の加熱は常圧下で行うこともできるが、反応後半において、減圧下(例えば101~0.01kPaの圧力下)で行うこともできる。これにより、生成した留出物の留出速度を速めることができ、反応の進行を速めることが可能となる。なお、本明細書中、常圧とは、101.325kPa±20.000kPaの圧力を意味する。所望のポリカーボネートジオールを得られやすくする観点では、混合液の加熱は、101.325kPa±20.000kPaの圧力下で加熱すること(第1の加熱)と、次いで、0.05kPa以下の減圧下で加熱すること(第2の加熱)と、を含むことが好ましく、第1の加熱の温度が上記式(α)の関係を満たす温度T1であり、第2の加熱の温度が上記式(β)の関係を満たす温度T2であることがより好ましく、第1の加熱の温度(温度T1)と第2の加熱の温度(温度T2)とが上記式(γ)の関係を満たすことがさらに好ましい。さらに所望のポリカーボネートジオールを得られやすくする観点では、カーボネート化合物由来のアルコールをアルコールの沸点付近の温度以下(例えば、ジエチルカーボネート由来のエタノールを79℃以下)で留出させて反応系から除去することが好ましい。
【0080】
(ウレタン樹脂)
本開示の一態様にかかるウレタン樹脂は、上記ポリカーボネートジオールと、イソシアネートと、の反応生成物を含む。すなわち、ウレタン樹脂は、上記ポリカーボネートジオールと、イソシアネートとの重縮合物又はその架橋体である。ここで、架橋体とは、鎖延長剤等により重縮合物同士が架橋したものを意味する。
【0081】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環族ポリイソシアネートを挙げることができる。また、これらの変性体である変性ポリイソシアネートを用いることもできる。変性ポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート(イソシアネートの三量体)、アロファネート変性ポリイソシアネート、ウレトジオン変性ポリイソシアネート、ウレタン変性ポリイソシアネート、ビウレット変性ポリイソシアネート、ウレトンイミン変性ポリイソシアネート、アシルウレア変性ポリイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。
【0082】
芳香族イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート混合物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエ-テルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。この中でも、汎用性の観点から、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物が好ましい。
【0083】
芳香脂肪族イソシアネートとしては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、及びそれらの混合物;1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、及びそれらの混合物;ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0084】
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアナト-4-(イソシアナトメチル)オクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-(イソシアナトメチル)オクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-α,α’-ジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート、2-イソシアナトプロピル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエート等が挙げられる。この中でも、汎用性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0085】
脂環族イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナト-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、水添ダイマー酸ジイソシアネート、2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-3-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-3-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-5-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2-(イソシアナトメチル)-2-(3-イソシアナトプロピル)-6-(2-イソシアナトエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、水素化テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。この中でも、汎用性の観点から、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
【0086】
(鎖延長剤)
鎖延長剤は、目的、用途等に応じて適宜選択することができる。鎖延長剤としては、例えば、水;エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン等の低分子ポリオ-ル;ポリエステルポリオ-ル、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール等の高分子ポリオール;エチレンジアミン、イソホロンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンなどが挙げられる。鎖延長剤の配合量(ウレタン樹脂に含まれる鎖延長剤由来の構造の割合)は、ポリカーボネートジオール及びイソシアネートの合計量100質量部に対して、0.1~50質量部であってよい。なお、鎖延長剤がポリオールである場合、該ポリオールは、鎖延長剤及びポリオール成分の両方に包含されるものとして含有量を算出する。
【0087】
(コーティング剤)
本開示の一態様にかかるコーティング剤は、上記ウレタン樹脂を含む。ウレタン樹脂の具体的態様は上述したとおりであってよい。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、得られたポリカーボネートジオールの分析評価は以下の方法により行った。
【0089】
[性状の評価]
得られたポリカーボネートジオールを80℃で1時間加熱した後、25℃で3日間放置した。放置後のサンプルの状態を目視により確認し、常温(25℃)で、僅かでも流動性があれば「液状」とし、流動性がない場合には「固体」とした。
【0090】
[GPCによる数平均分子量の測定]
以下の条件で、得られたポリカーボネートジオールのGPC分析を行い、前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量を測定した。
-条件-
(1)測定器:HLC-8420(東ソー社製)
(2)カラム:TSKgel(東ソー社製)
・G3000H-XL
・G3000H-XL
・G2000H-XL
・G2000H-XL
(3)移動相:THF(テトラヒドロフラン)
(4)検出器:RI(屈折率)検出器(HLC-8420付属品)
(5)温度:40℃
(6)流速:1.000ml/min
(7)検量線:以下の商品(いずれも三洋化成工業社製の2官能のポリオキシプロピレンポリオール)を用いて、検量線を得た。
・「サンニックスPP-200」(数平均分子量=200、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-400」(数平均分子量=400、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-1000」(数平均分子量=1000、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-2000」(数平均分子量=2000、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-3000」(数平均分子量=3200、平均官能基数:2)
・「サンニックスPP-4000」(数平均分子量=4160、平均官能基数:2)
(8)検量線の近似式:3次式
(9)サンプル溶液濃度:0.5質量%THF溶液
【0091】
[水酸基価の測定]
JIS K1557-1に準拠し、アセチル化試薬を用いた方法にて、得られたポリカーボネートジオールの水酸基価を測定した。
【0092】
[水酸基価からの数平均分子量の算出]
下記式により、前記水酸基価から、得られたポリカーボネートジオールの数平均分子量を算出した。なお、水酸基価から算出した数平均分子量は高分子の絶対分子量(真の分子量)に相当する。
水酸基価から算出した数平均分子量[g/mol]
=2×56.11[KOHg/mol]×1000/水酸基価[KOHmg/g]
【0093】
[LC測定]
以下の条件で、得られたポリカーボネートジオールの液体クロマトグラフィー(LC)測定を行い、前記ポリカーボネートジオールのLCスペクトルを得た。
-条件-
(1)測定器:Agilent 1290 Infinity IIシリーズ(Agilemt Technologies社製)
(2)カラム:TSKgel(東ソー社製)
・TSKgel ODS-100V(4.6mmI.D.×15cm)
(3)移動相:
A液:水/メタノール=5/5(vol/vol%)
B液:テトラヒドロフラン(THF)
水:精製水
THF:富士フイルム和光純薬社製HPLC用
メタノール:富士フイルム和光純薬社製HPLC用
(4)前処理
得られたポリカーボネートジオールを秤量し、所定の移動相(B液)を加えて室温で一晩静置し溶解させた。得られた試料溶液を、緩やかに振り混ぜ、0.45μmのPTFEカートリッジフィルターでろ過した。
(5)溶媒グラジエント条件
溶媒グラジエント条件は表1に示す条件とした。
【0094】
【0095】
(6)検出器:蒸発型光散乱検出器(ELSD)G4260B(Agilemt Technologies社製)
(7)温度:40℃
(8)流速:0.40ml/min
(9)注入量:15μL
(10)サンプル溶液濃度(THF):2.0mg/L
なお、得られたLCスペクトルの各ピークの分子構造は各ピークの単独でのMS測定(装置:ブルカー・ダルトニクス microTOF、イオン源:APCI、測定モード:ポジティブモード)を行い同定した。
【0096】
[ピーク面積値比の算出]
得られたLCスペクトルにおいて、前記水酸基価から算出した数平均分子量(絶対分子量)に最も近い分子量のピークを決め、このピークに対応する前記ポリカーボネートジオール(D)の繰り返し単位の数X0を求めた。なお、「前記水酸基価から算出した数平均分子量に最も近い分子量のピーク」は、前記水酸基価から算出した数平均分子量との差の絶対値が最も小さい分子量のピークと定義した。なお、ポリカーボネートジオールの水酸基価から算出した数平均分子量との差の絶対値が最も小さい分子量のピークが二つ存在する場合は、分子量の小さいピークを採用する。次に、前記LCスペクトルにおいて、各ピークの面積値S(X)〔Xは前記ポリカーボネートジオール(D)の繰り返し単位の数を表し、X=・・・、X0-2、X0-1、X0、X0+1、X0+2、・・・である。〕を求め、前記繰り返し単位がX0であるピークの面積値S(X0)に対する各ピークの面積値比〔S(X)/S(X0)〕を算出した。さらに、前記面積値比〔S(X)/S(X0)〕が0.90~1.10の範囲内にあるピークが、前記繰り返し単位がX0であるピークを含んで連続している数を求めた。
【0097】
[粘度測定]
JIS Z 8803:2011の10「円すい-平板形回転粘度計による粘度測定方法」に準拠し、以下の条件で、得られたポリカーボネートジオールの粘度を測定した。具体的には、コーンプレート型粘度計(HAAKE MARS Modular Advanced Rheometer System:Thermo Scientific社製)を用い、平円板と円すいとの間にポリカーボネートジオール0.20cm3を入れ、円すいを一定のせん断速度で回転させ、5分間経過後、定常状態に達したときの平円板又は円すいが受けるトルクを測定し、ポリカーボネートジオールの粘度を算出した。
-条件-
(1)ロータ:Thermo scientific社製ロータ(タイプ(品番):C25 1°/Ti、直径:25.00mm、平円板と円すいがなす角度(円錐角:α):1°)
(2)せん断速度:1s-1、又は、1000s-1
(3)測定温度:25℃
【0098】
(実施例1)
攪拌機、温度計、加熱装置及び冷却器を組んだ1Lの二口ガラス製反応器(反応器A)に、1,6-ヘキサンジオール49.5g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール445.4g、ジエチルカーボネート505.1g、及びリチウムアセチルアセトナート0.050gを混合した。得られた混合液を、常圧下で、110~138℃(初期110℃、終盤138℃)で加熱し、低沸点成分(炭酸エステル由来のアルコール等)を除去しながら8時間反応させた。留出液温度は77℃以上79℃未満とした。さらに、反応温度138℃でフラスコ内の圧力を0.04kPaまで徐々に減圧し、さらに8時間反応を行うことで、常温で液状であるポリカーボネートジオール(PCD-1)を得た。
【0099】
(実施例2)
反応器Aに、1,6-ヘキサンジオール99.0g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール99.0g、ジエチルカーボネート202.0g、及びリチウムアセチルアセトナート0.020gを混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、常温で液状であるポリカーボネートジオール(PCD-2)を得た。
【0100】
(実施例3)
反応器Aに、1,6-ヘキサンジオール59.4g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール138.6g、ジエチルカーボネート202.0g、及びリチウムアセチルアセトナート0.020gを混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、常温で液状であるポリカーボネートジオール(PCD-3)を得た。
【0101】
(比較例1)
反応器Aに、1,6-ヘキサンジオール96.8g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール871.3g、ジエチルカーボネート1031.9g、及びリチウムアセチルアセトナート0.100gを混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、常温で液状であるポリカーボネートジオール(PCD-7)を得た。
【0102】
(比較例2)
反応器Aに、1,6-ヘキサンジオール46.7g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール420.2g、ジエチルカーボネート433.1g、及びテトラブチルチタネート0.027gを混合した。得られた混合液を、常圧下で、120~190℃(初期120℃、終盤190℃)で加熱し、低沸点成分(炭酸エステル由来のアルコール等)を除去しながら8時間反応させた。留出液温度は77℃以上79℃未満とした。さらに、反応温度190℃でフラスコ内の圧力を0.5kPaまで徐々に減圧し、さらに8時間反応を行うことで、常温で液状であるポリカーボネートジオール(PCD-8)を得た。
【0103】
(比較例3)
反応器Aに、1,6-ヘキサンジオール52.6g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール473.4g、ジエチルカーボネート374.0g、及びテトラブチルチタネート0.027gを混合して得た混合液を用いたこと以外は、比較例2と同様にして、常温で液状であるポリカーボネートジオール(PCD-9)を得た。
【0104】
(比較例4)
反応器Aに、1,6-ヘキサンジオール52.6g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール473.4g、ジエチルカーボネート374.0g、及びリチウムアセチルアセトナート0.045gを混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、常温で液状であるポリカーボネートジオール(PCD-10)を得た。
【0105】
(比較例5)
反応器Aに、1,6-ヘキサンジオール59.9g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール539.5g、ジエチルカーボネート300.5g、及びリチウムアセチルアセトナート0.045gを混合して得た混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、常温で液状であるポリカーボネートジオール(PCD-11)を得た。
【0106】
(実施例4)
比較例1で得られたPCD-7を67gと、比較例2で得られたPCD-8を33gとを40℃で混合し、ポリカーボネートジオール(PCD-4)を得た。
【0107】
(実施例5)
実施例1で得られたPCD-1を89gと、比較例5で得られたPCD-11を11gとを40℃で混合し、ポリカーボネートジオール(PCD-5)を得た。
【0108】
(実施例6)
実施例1で得られたPCD-1を80gと、比較例4で得られたPCD-10を20gとを40℃で混合し、ポリカーボネートジオール(PCD-6)を得た。
【0109】
(比較例6)
比較例1で得られたPCD-7を67gと、比較例5で得られたPCD-11を33gとを40℃で混合し、ポリカーボネートジオール(PCD-12)を得た。
【0110】
(比較例7)
比較例4で得られたPCD-10を25gと、比較例5で得られたPCD-11を25gとを40℃で混合し、ポリカーボネートジオール(PCD-13)を得た。
【0111】
(比較例8)
比較例1で得られたPCD-7を86gと、比較例4で得られたPCD-10を14gとを40℃で混合し、ポリカーボネートジオール(PCD-14)を得た。
【0112】
(比較例9)
実施例1で得られたPCD-1を67gと、比較例4で得られたPCD-10を33gとを40℃で混合し、ポリカーボネートジオール(PCD-15)を得た。
【0113】
(比較例10)
比較例1で得られたPCD-7を80gと、比較例2で得られたPCD-8を20gとを40℃で混合し、ポリカーボネートジオール(PCD-16)を得た。
【0114】
上記の方法に従って、実施例1~6及び比較例1~10で得られたポリカーボネートジオールについて測定した、常温(25℃)での性状、GPCで測定した数平均分子量、水酸基価、前記水酸基価から算出した数平均分子量、前記水酸基価から算出した数平均分子量に最も近い分子量のピークに対応する前記ポリカーボネートジオール(D)の繰り返し単位の数X
0、前記繰り返し単位の数がX
0であるピークの面積値S(X
0)に対する各ピークの面積値比〔S(X)/S(X
0)〕、前記面積値比〔S(X)/S(X
0)〕が所定の範囲内にあるピークが、前記繰り返し単位の数がX
0であるピークを含んで連続している数を、表2~3に示す。また、参考として、比較例2で得られたポリカーボネートジオール(PCD-8)のLCスペクトルを
図1に示す。
【0115】
【0116】
【0117】
上記の方法に従って、実施例1~6及び比較例1~10で得られたポリカーボネートジオールについて測定した、せん断速度1s-1又は1000s-1における粘度(25℃)〔η1及びη1000〕、並びに、せん断速度1s-1での粘度(25℃)η1に対するせん断速度1000s-1での粘度(25℃)η1000の比〔η1000/η1〕を、表4~5に示す。
【0118】
【0119】
【産業上の利用可能性】
【0120】
以上説明したように、本開示によれば、25℃での成型加工性と粘度安定性とを両立するポリカーボネートジオールを得ることが可能となる。また、本開示の一態様のポリカーボネートジオールは、耐摩耗性に優れるとともに、良好な耐湿熱性や耐汗性を有する表面処理層やコーティング膜を形成することができる。
【0121】
したがって、本開示の一態様のポリカーボネートジオールは、合成皮革や人工皮革に上記の特性を有する表面処理層を安定して形成することが可能な表面処理剤や、フィルムに上記の特性を有するコーティング膜を安定して形成することが可能なコーティング剤の構成材料として有用である。