(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】モデル生成装置、モデル生成方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20240925BHJP
【FI】
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2023542155
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2021030575
(87)【国際公開番号】W WO2023021690
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】渋江 遼平
(72)【発明者】
【氏名】岩田 具治
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094267(WO,A1)
【文献】特開2020-123008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推論モデルと生成モデルとを含む同時強度関数モデルであって、マーク付きイベント系列の同時強度関数をスケールパラメータと同時確率密度関数の積で表わした場合の前記同時確率密度関数を、ニューラルネットワークを含むデコーダーを用いて表現した同時強度関数モデルを記憶するモデル記憶部と、
前記マーク付きイベント系列と、これに対応する共変量の潜在変数の時系列を前記推論モデルに入力し、前記マーク付きイベント系列の潜在変数の時系列を計算するマーク付きイベント系列潜在変数時系列計算部と、
前記マーク付きイベント系列の潜在変数の時系列を前記生成モデルに入力し、前記マーク付きイベント系列の周辺分布のパラメータを計算するマーク付きイベント系列周辺分布パラメータ計算部と、
前記マーク付きイベント系列の周辺分布のパラメータを用いて、前記マーク付きイベント系列の尤度の下限を大きくするように前記生成モデルおよび前記推論モデルのパラメータを更新するイベント系列モデルパラメータ更新部を含む
モデル生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモデル生成装置であって、
前記モデル記憶部は、
前記同時強度関数モデルに加え、推論モデルと生成モデルを含む状態空間モデルであって、共変量時系列についての状態空間モデルを記憶し、
前記共変量時系列を共変量時系列の推論モデルに入力し、共変量の潜在変数の時系列を計算する共変量潜在変数時系列計算部と、
前記共変量の潜在変数の時系列を前記共変量時系列の生成モデルに入力し、前記共変量の周辺分布のパラメータを計算する共変量周辺分布パラメータ計算部と、
前記共変量の周辺分布のパラメータを用いて、前記共変量時系列の尤度の下限を大きくするように前記共変量時系列の生成モデルおよび推論モデルのパラメータを更新する共変量モデルパラメータ更新部を含む
モデル生成装置。
【請求項3】
推論モデルと生成モデルとを含む同時強度関数モデルであって、マーク付きイベント系列の同時強度関数をスケールパラメータと同時確率密度関数の積で表わした場合の前記同時確率密度関数を、ニューラルネットワークを含むデコーダーを用いて表現した同時強度関数モデルを用い、
前記マーク付きイベント系列と、これに対応する共変量の潜在変数の時系列を前記推論モデルに入力し、前記マーク付きイベント系列の潜在変数の時系列を計算するマーク付きイベント系列潜在変数時系列計算ステップと、
前記マーク付きイベント系列の潜在変数の時系列を前記生成モデルに入力し、前記マーク付きイベント系列の周辺分布のパラメータを計算するマーク付きイベント系列周辺分布パラメータ計算ステップと、
前記マーク付きイベント系列の周辺分布のパラメータを用いて、前記マーク付きイベント系列の尤度の下限を大きくするように前記生成モデルおよび前記推論モデルのパラメータを更新するイベント系列モデルパラメータ更新ステップを、
モデル生成装置が実行するモデル生成方法。
【請求項4】
コンピュータを請求項1または2に記載のモデル生成装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーク付きイベント系列と共変量の関係を分析するためのモデルを生成するモデル生成装置、モデル生成方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
統計モデルの手法として、各イベントがマークと呼ばれる特徴量をもつようなマーク付きイベント系列が知られている。とくに、ある別の共変量時系列が存在して、それがマーク付きイベント系列の発生に影響を及ぼしているような状況を想定する。
【0003】
以上の状況を外部刺激に応じて発火頻度が変化するようなニューロンの発火列を例に説明する。ニューロンの発火活動を実験によって計測する際、各発火は電位の波形の情報からそれがどのニューロンから発生したものなのかが判断される。このような各発火を特徴づける情報をマークとみなすことで、複数のニューロンの発火列をひとつのマーク付きイベント系列で表すことができる。注目しているニューロンの集団が外部刺激に応じてどう発火をしているかを知るためには、特徴量が付加された発火列をマーク付きイベント系列、外部刺激の時系列を共変量とみなし、マーク付きイベント系列の発生頻度を共変量の関数として推定すればよい。以下に他の例を列挙する。
【0004】
<地震>地震の発生時刻をイベントの発生時刻、地震のマグニチュードや発生位置をイベントのマークとみなすことができる。地震の発生に影響を及ぼす他の情報が共変量に相当する。地質や地層など。
【0005】
<購買データ>商品を購入した日付をイベントの発生時刻、購入した商品の情報をイベントのマークとみなすことができる。商品の人気に影響を及ぼす他の情報が共変量に相当する。掲載ページの視聴数や貼られているリンクの数など。
【0006】
<金融商品の取引>取引が成立した時刻をイベントの発生時刻、取引された金融商品の銘柄や価額をイベントのマークとみなすことができる。注目している金融商品の取引に影響を及ぼす他の情報が共変量に相当する。他の金融商品の取引量や景気指数など。
【0007】
<SNS上の投稿>SNS上への投稿時刻をイベントの発生時刻、その内容やリンクの関係をイベントのマークとみなすことができる。SNSの投稿に影響を及ぼす他の情報が共変量に相当する。特定のワードの検索数やニュースサイトの記事など。
【0008】
つぎに、関連する技術分野を以下に列挙する。
【0009】
(a)マーク付き点過程モデル。各イベントが特徴量をもつようなイベント系列の分布を表現する際に用いられる統計モデル。マーク付き点過程の分布はイベントの発生数の期待値の関数である条件付き強度関数によって決定される。統計モデリングの際は、この条件付き強度関数に相当するモデルをあらかじめ用意しておき、適当な目的関数を最大化することによって推定を行う。
【0010】
(b)Variational Autoencoder(VAE)。ニューラルネットワークを用いた生成モデル。画像や動画など、高次元の多様体上に分布するデータの生成によく用いられる。ある事前分布に従う潜在変数が存在するとし、その潜在変数がニューラルネットワークを含む条件付き分布によって変換されることでデータが生成されていると仮定する。この条件付き分布はデコーダーと呼ばれる。
【0011】
(c)変分推論。モデルのもとでの尤度が陽に書き下せないときに、変分事後分布と呼ばれる分布族を用いて尤度の下限を導出し、その下限を最大化することによってパラメータを推定する方法。VAEの場合は、エンコーダーと呼ばれるニューラルネットワークを含む分布を用いる。Kullback-Leibler divergence 以外のダイバージェンスを基にした下限や、下限を最大化するかわりに尤度の上限を最小化するという方法も提案されている。
【0012】
(d)状態空間モデル。主に時系列に適用する確率モデルで、時系列の各時刻の値は背後に存在する潜在変数から独立に生成されているとし、潜在変数同士の関係を同時分布によって表現する。観測された時系列から背後にある潜在変数の事後分布、およびモデルのパラメータを学習する。昨今の研究では、非線形な時間発展をする時系列にも適用できるように、状態空間モデルの一部をニューラルネットワークに置き換えたブラックボックス状態空間モデルが提案されている。
【0013】
本発明に特に関連する文献として非特許文献1がある。非特許文献1では、複数のニューロンの発火列をマーク付きイベント系列、発火活動に影響しているであろう外部刺激を共変量とみなし、後述する同時強度関数をカーネル密度推定によって推定し、さらに、推定した同時強度関数を発火列からの外部刺激の復元に活用する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【文献】F Kloosterman, S P Layton, Z Chen, and M A Wilson, “Bayesian decoding using unsorted spikes in the rat hippocampus,” Journal of Neurophysiology, vol. 111, no. 1, pp. 217 - 227, 2014.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題を説明するために、マーク付き点過程の定義およびその尤度について説明する。マーク付き点過程は前述のマーク付きイベント系列を生成する確率過程である。マーク付き点過程の分布は条件付き強度関数によって決定されるため、その分布を知るためにはかわりに条件付き強度関数を推定すればよい。条件付き強度関数は過去の履歴が与えられたもとでの単位時間あたりのイベント数の期待値に相当する関数で
【数1】
と定義される。ただし、k∈Kはマーク、N()は(0,T]×K上の計数測度、x
t∈X,t∈(0,T]は共変量の時系列、H
tは時刻tまでに得られた履歴の情報である。本発明では、マーク付き点過程のうち、非定常ポアソン過程で各時刻での発生頻度がその時刻での共変量の値の関数で表せるもののみを考える。このとき、条件付き強度関数は
【数2】
のように、X×K上で定義されたある非負値関数λ(x,k)を使って表すことができる。このλ(x,k)は、共変量の値がxであるときに、マークがkであるようなイベントの単位時間当たりの発生数の期待値に相当する。以降、このλ(x,k)を同時強度関数とよぶことにする。
【0016】
いま、マーク付きイベント系列{(t
i,k
i)}
n
i=1が(0,T]×K上で観測されているとする。このとき、同時強度関数λ(x,k)にしたがうマーク付きイベント系列を次の手順で生成することができる。まずはじめに、イベントの総数nを平均
【数3】
のポアソン分布から生成する。そののち、λ(x
t,k)に比例する確率密度関数をもつ(0,T]×K上の分布に従って{(t
i,k
i)}
n
i=1を選ぶ。したがって、{x
t}
t∈(0,T]が与えられたもとでの{(t
i,k
i)}
n
i=1の確率は
【数4】
となる。いま、共変量x
tは定間隔Δで観測されているとし、その時刻を{t
j}
m
j=1とする。このとき、{(t
i,k
i)}
n
i=1が与えられたもとでの対数尤度は
【数5】
となる。ただし、第二項は時間についての積分をx
tj, j=1,...,mによる和で近似した。推定の際は、あらかじめλ(x,k)のモデルを用意しておき、そのなかで上の対数尤度関数を最大にするものをもとめればよい。以下に、同時強度関数の推定の際の課題を列挙する。
【0017】
<課題1>既存のマーク付き点過程モデルは単純なパラメトリックなモデルかニューラルネットワークを用いたモデルの二種類に大別される。前者のモデルは、共変量とマークの関係が明らかでない場合や、それらが高次元である場合は適用が難しい。後者のモデルはイベントの予測のために定式化されたものであり、共変量の予測には向いていない。また、マークの分布には単純な分布が採用されており、複雑な分布は表現できない。
【0018】
<課題2>マーク付き点過程の尤度はマークについての積分の項を含む。したがって、同時強度関数をニューラルネットワークで表現すると尤度の計算自体が難しくなる。
【0019】
<課題3>非線形な時間発展をする共変量について、その生成過程をモデル化する際はニューラルネットワークを含む状態空間モデルが有用である。一方で、そのようなモデルを用いる場合は、潜在変数の空間上での真の同時強度関数がそのニューラルネットワークによってデータドリブンで決まるため、その同時強度関数について適切なモデルを事前に用意することが難しい。
【0020】
そこで本発明では、上記の課題を鑑み、マーク付きイベント系列と共変量の関係を高い精度で表現するモデルを生成することができるモデル生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のモデル生成装置は、モデル記憶部と、マーク付きイベント系列潜在変数時系列計算部と、マーク付きイベント系列周辺分布パラメータ計算部と、イベント系列モデルパラメータ更新部を含む。
【0022】
モデル記憶部は、推論モデルと生成モデルとを含む同時強度関数モデルであって、マーク付きイベント系列の同時強度関数をスケールパラメータと同時確率密度関数の積で表わした場合の同時確率密度関数を、ニューラルネットワークを含むデコーダーを用いて表現した同時強度関数モデルを記憶する。
【0023】
マーク付きイベント系列潜在変数時系列計算部は、マーク付きイベント系列と、これに対応する共変量の潜在変数の時系列を推論モデルに入力し、マーク付きイベント系列の潜在変数の時系列を計算する。
【0024】
マーク付きイベント系列周辺分布パラメータ計算部は、マーク付きイベント系列の潜在変数の時系列を生成モデルに入力し、マーク付きイベント系列の周辺分布のパラメータを計算する。
【0025】
イベント系列モデルパラメータ更新部は、マーク付きイベント系列の周辺分布のパラメータを用いて、マーク付きイベント系列の尤度の下限を大きくするように生成モデルおよび推論モデルのパラメータを更新する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のモデル生成装置は、マーク付きイベント系列と共変量の関係を高い精度で表現するモデルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1のマーク付きイベント系列分析装置の機能構成を示すブロック図。
【
図2】実施例1のマーク付きイベント系列分析装置の動作を示すフローチャート。
【
図3】実施例1のパラメータ推定部の機能構成を示すブロック図。
【
図4】実施例1のパラメータ推定部の動作を示すフローチャート。
【
図5】実施例1のマーク付きイベント系列予測部の機能構成を示すブロック図。
【
図6】実施例1のマーク付きイベント系列予測部の動作を示すフローチャート。
【
図7】実施例1の共変量時系列予測部の機能構成を示すブロック図。
【
図8】実施例1の共変量時系列予測部の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0029】
なお、以下の実施例では、条件付き強度関数が共変量とマークの関数で表せる場合のみを取り扱う。この関数は同時強度関数と呼ばれ、共変量が与えられたもとでのマーク付きイベント系列の予測や、マーク付きイベント系列が与えられたもとでの共変量の予測に利用される。
【実施例1】
【0030】
本実施例のマーク付きイベント系列分析装置は、VAEを用いた同時強度関数のモデル(同時強度関数モデル)を用いる。同時強度関数モデルは、マーク付きイベント系列の同時強度関数を、以下のようにスケールパラメータと同時確率密度関数の積に分解し、分解した同時確率密度関数をニューラルネットワークを含むデコーダーp
θ(x,k|z)を用いて表現したものである。
【数6】
ニューラルネットワークを利用することで、高次元かつ背後の関係性が未知である共変量とマーク付きイベント系列にも事前知識なしで適用できる(課題1)。また、VAEの定式化にならうことで,尤度に含まれるマークの積分を低次元の潜在変数上での積分に置き換えることができる(課題2)。
【0031】
本実施例のマーク付きイベント系列分析装置は、上述のモデルのもとで、二つのエンコーダーq
φ(z|x,k),q
φ(z|x)を用いて以下のように尤度の下限を導出し、その下限を最大化することでパラメータを推定する。
【数7】
尤度の最大化をその下限の最大化に置き換えることで、安定したパラメータ推定が可能となる(課題2)。
【0032】
本実施例のマーク付きイベント系列分析装置は、上述のモデルと共変量時系列についての状態空間モデルとを組み合わせることにより、非線形な時間発展をする共変量のもとでの同時強度関数を推定する。ニューラルネットワークを含む状態空間モデルを利用することで、どのような共変量時系列についてもデータドリブンに同時強度関数が推定でき、マーク付きイベント系列からの共変量時系列の予測も可能となる(課題3)。
【0033】
以下、
図1を参照して、VAEを用いた同時強度関数モデルを用いる実施例1のマーク付きイベント系列分析装置の機能構成を説明する。
【0034】
同図に示すように本実施例のマーク付きイベント系列分析装置1は、モデル記憶部10と、パラメータ推定部11と、マーク付きイベント系列予測部12と、共変量時系列予測部13を含む。なお、モデル記憶部10とパラメータ推定部11によりモデルのパラメータを更新することができるため、これらの機能構成(10、11)のみを含むモデル生成装置5に対して、別装置として、マーク付きイベント系列予測部(装置)12、共変量時系列予測部(装置)13が接続された構成としてもよい。
【0035】
本実施例のマーク付きイベント系列分析装置1が用いるモデルはマーク付きイベント系列についての同時強度関数モデルと共変量時系列についての状態空間モデルの二つに分けられる。
【0036】
マーク付きイベント系列についての同時強度関数モデルは2つの推論モデル(第1、第2推論モデル)と、生成モデルを含む。共変量時系列についての状態空間モデルは推定モデルと、生成モデルを含む。
【0037】
生成モデルはマーク付きイベント系列と共変量時系列の生成過程を記述する。推論モデルは、生成モデルのパラメータを推定するために補助的に導入するもので、観測データが与えられたもとでの潜在変数の事後分布を近似する。
【0038】
[モデル記憶部10]
モデル記憶部10は、マーク付きイベント系列についての同時強度関数モデルと、共変量時系列についての状態空間モデルを予め記憶している。
【0039】
[パラメータ推定部11]
パラメータ推定部11は、モデル記憶部10に予め記憶されたモデルのもとで、尤度の下限を導出し、その下限を最大化することでパラメータを推定する(S11、
図2)。
【0040】
パラメータ推定部11は、マーク付きイベント系列と共変量時系列が与えられた条件の下で、上述のモデルのパラメータを推定する。まずはじめに、推論モデルを用いて生成モデルの尤度の下限を計算する。この尤度の下限を確率的勾配法によって最大化することで、生成モデルと推論モデルのパラメータを推定する。
【0041】
図3に示すように、パラメータ推定部11は、共変量潜在変数時系列計算部111と、共変量周辺分布パラメータ計算部112と、共変量モデルパラメータ更新部113と、マーク付きイベント系列潜在変数時系列計算部114と、マーク付きイベント系列周辺分布パラメータ計算部115と、イベント系列モデルパラメータ更新部116を含む。以下、
図4を参照して、各機能構成の詳細な動作を説明する。
【0042】
<共変量潜在変数時系列計算部111>
共変量潜在変数時系列計算部111は、共変量時系列を共変量時系列の推論モデルに入力し、共変量の潜在変数の時系列を計算する(S111)。
【0043】
<共変量周辺分布パラメータ計算部112>
共変量周辺分布パラメータ計算部112は、S111で計算した共変量の潜在変数の時系列を共変量時系列の生成モデルに入力し、共変量の周辺分布のパラメータを計算する(S112)。
【0044】
<共変量モデルパラメータ更新部113>
共変量モデルパラメータ更新部113は、S112で計算した共変量の周辺分布のパラメータを用いて、共変量時系列の尤度の下限を計算し、この尤度の下限を大きくするように共変量時系列の生成モデルおよび推論モデルのパラメータを更新する(S113)。
【0045】
<マーク付きイベント系列潜在変数時系列計算部114>
マーク付きイベント系列潜在変数時系列計算部114は、これに対応するステップS111で計算した共変量の潜在変数の時系列と、これに対応するマーク付きイベント系列をマーク付きイベント系列についての2つの推論モデル(第1、第2推論モデル)に入力し、マーク付きイベント系列の潜在変数の時系列を計算する(S114)。
【0046】
<マーク付きイベント系列周辺分布パラメータ計算部115>
マーク付きイベント系列周辺分布パラメータ計算部115は、ステップS114で計算したマーク付きイベント系列の潜在変数の時系列をマーク付きイベント系列についての生成モデルに入力し、マーク付きイベント系列の周辺分布のパラメータを計算する(S115)。
【0047】
<イベント系列モデルパラメータ更新部116>
イベント系列モデルパラメータ更新部116は、ステップS115で計算したマーク付きイベント系列の周辺分布のパラメータを用いて、マーク付きイベント系列の尤度の下限を計算し、この尤度の下限を大きくするようにマーク付きイベント系列についての生成モデルおよび推論モデルのパラメータを更新する(S116)。
【0048】
パラメータ推定部11は、ステップS111~S116の処理を収束するまで繰り返す。パラメータ推定部11は、収束したパラメータを出力する。
【0049】
[マーク付きイベント系列予測部12]
マーク付きイベント系列予測部12は、パラメータ推定部11で推定されたパラメータを用いて、共変量時系列が与えられた下でのマーク付きイベント系列の予測分布を計算する(S12)。
【0050】
図5に示すように、マーク付きイベント系列予測部12は、共変量潜在変数時系列計算部121と、マーク付きイベント系列予測分布計算部122を含む。以下、
図6を参照して、各機能構成の詳細な動作を説明する。
【0051】
<共変量潜在変数時系列計算部121>
共変量潜在変数時系列計算部121は、共変量時系列を共変量時系列についての推論モデルに入力し、共変量の潜在変数の時系列を計算する(S121)。
【0052】
<マーク付きイベント系列予測分布計算部122>
マーク付きイベント系列予測分布計算部122は、S121で計算した共変量の潜在変数の時系列とマーク付きイベント系列についての生成モデルおよび推論モデルからマーク付きイベント系列の予測分布を計算し、出力する(S122)。
【0053】
[共変量時系列予測部13]
共変量時系列予測部13は、パラメータ推定部11で推定されたパラメータを用いて、マーク付きイベント系列が与えられた下での共変量時系列の予測分布を計算する(S13)。
【0054】
図7に示すように、共変量時系列予測部13は、予測分布初期化部131と、予測分布更新部132と、予測分布出力部133を含む。以下、
図8を参照して、各機能構成の詳細な動作を説明する。
【0055】
<予測分布初期化部131>
予測分布初期化部131は、共変量の潜在変数の時系列についての予測分布を初期化する(S131)。
【0056】
<予測分布更新部132>
予測分布更新部132は、マーク付きイベント系列についての生成モデルと推論モデル、共変量時系列の生成モデルを用いて、予測分布を更新する(S132)。予測分布更新部132は、ステップS132の処理を収束するまで繰り返す(収束?:Y→S133、N→S132)。
【0057】
<予測分布出力部133>
予測分布出力部133は、ステップS132で収束した予測分布を共変量時系列についての生成モデルに入力し、共変量時系列の周辺分布のパラメータを計算し、得られたパラメータに相当する分布を共変量時系列の予測分布として出力する(S133)。
【0058】
<補記>
本発明の装置は、例えば単一のハードウェアエンティティとして、キーボードなどが接続可能な入力部、液晶ディスプレイなどが接続可能な出力部、ハードウェアエンティティの外部に通信可能な通信装置(例えば通信ケーブル)が接続可能な通信部、CPU(Central Processing Unit、キャッシュメモリやレジスタなどを備えていてもよい)、メモリであるRAMやROM、ハードディスクである外部記憶装置並びにこれらの入力部、出力部、通信部、CPU、RAM、ROM、外部記憶装置の間のデータのやり取りが可能なように接続するバスを有している。また必要に応じて、ハードウェアエンティティに、CD-ROMなどの記録媒体を読み書きできる装置(ドライブ)などを設けることとしてもよい。このようなハードウェア資源を備えた物理的実体としては、汎用コンピュータなどがある。
【0059】
ハードウェアエンティティの外部記憶装置には、上述の機能を実現するために必要となるプログラムおよびこのプログラムの処理において必要となるデータなどが記憶されている(外部記憶装置に限らず、例えばプログラムを読み出し専用記憶装置であるROMに記憶させておくこととしてもよい)。また、これらのプログラムの処理によって得られるデータなどは、RAMや外部記憶装置などに適宜に記憶される。
【0060】
ハードウェアエンティティでは、外部記憶装置(あるいはROMなど)に記憶された各プログラムとこの各プログラムの処理に必要なデータが必要に応じてメモリに読み込まれて、適宜にCPUで解釈実行・処理される。その結果、CPUが所定の機能(上記、…部、…手段などと表した各構成要件)を実現する。
【0061】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。また、上記実施形態において説明した処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されるとしてもよい。
【0062】
既述のように、上記実施形態において説明したハードウェアエンティティ(本発明の装置)における処理機能をコンピュータによって実現する場合、ハードウェアエンティティが有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記ハードウェアエンティティにおける処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0063】
上述の各種の処理は、
図9に示すコンピュータ10000の記録部10020に、上記方法の各ステップを実行させるプログラムを読み込ませ、制御部10010、入力部10030、出力部10040などに動作させることで実施できる。
【0064】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。具体的には、例えば、磁気記録装置として、ハードディスク装置、フレキシブルディスク、磁気テープ等を、光ディスクとして、DVD(Digital Versatile Disc)、DVD-RAM(Random Access Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Recordable)/RW(ReWritable)等を、光磁気記録媒体として、MO(Magneto-Optical disc)等を、半導体メモリとしてEEP-ROM(Electrically Erasable and Programmable-Read Only Memory)等を用いることができる。
【0065】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0066】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記録媒体に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0067】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、ハードウェアエンティティを構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。