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特許7559975多環芳香族含有ポリマーを含むレジスト下層膜形成用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】多環芳香族含有ポリマーを含むレジスト下層膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20240925BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240925BHJP
   C08F 212/02 20060101ALI20240925BHJP
   C08F 222/40 20060101ALI20240925BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20240925BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/11 503
G03F7/004 501
C08F212/02
C08F222/40
C08F220/18
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023564039
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2022045268
(87)【国際公開番号】W WO2023106364
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2021200330
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(72)【発明者】
【氏名】水落 龍太
(72)【発明者】
【氏名】緒方 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】田村 護
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/023710(WO,A1)
【文献】特開2002-323771(JP,A)
【文献】国際公開第2012/077640(WO,A1)
【文献】特開2009-098639(JP,A)
【文献】特開2013-073125(JP,A)
【文献】特表2009-534710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/004
C08F 212/02
C08F 222/40
C08F 220/18
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト下層膜形成用組成物の塗布膜の焼成物である、レジスト下層膜であって、
前記レジスト下層膜形成用組成物は、多環芳香族炭化水素構造を有する単位構造(A)、及びマレイミド構造に由来する単位構造(B)を有するポリマー及び架橋剤を含有し、
前記単位構造(A)が、下記式(1)、下記式(2)、若しくは下記式(3)で表される単位構造であるか、又は前記多環芳香族炭化水素構造が複素環構造を有する単位構造であり、
前記単位構造(B)が、下記式(4)で表される単位構造であり、
前記レジスト下層膜の膜厚が10nm未満である、レジスト下層膜。
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Xはエステル基又はアミド基を表す。Yは炭素原子数1~6のアルキレン基を表す。pは1を表す。qは0又は1を表す。Arは、置換されていてもよい、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、トリフェニレン、クリセン、ナフタセン、ビフェニレン、フルオレン、又はカルバゾールから水素原子を除いた1価の基を表す。)
【化2】
(式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Zはナフタレン環に置換したハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、チオール基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、又はチオアルキル基を表し、nは0~7の整数を表す。nが2以上のとき、2つ以上のZは同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【化3】
(式(3)中、ArとArは各々独立して置換されていてもよい炭素原子数6~40の芳香族環を表し且つ、Ar及びArの少なくとも1つはナフタレン、アントラセン、フェナントレン、又はピレンであり、Qは単結合、エーテル基、エステル基、又はイミノ基を表す。)
【化4】
(式(4)中、Rは、炭素原子数1~10のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6~10のアリール基を表す。)
【請求項2】
前記ポリマーが、更に架橋形成基を有する単位構造(C)を有する、請求項1に記載のレジスト下層膜。
【請求項3】
前記単位構造(C)における前記架橋形成基が、ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基、及び保護されたカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の基を含む、請求項2に記載のレジスト下層膜。
【請求項4】
前記レジスト下層膜形成用組成物が、更に硬化触媒を含む、請求項1に記載のレジスト下層膜。
【請求項5】
EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜である、請求項1に記載のレジスト下層膜。
【請求項6】
半導体基板と、
請求項1から5のいずれかに記載のレジスト下層膜と、
を備える半導体加工用基板。
【請求項7】
半導体基板の上に、請求項1から5のいずれかに記載のレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上に、レジスト膜を形成する工程と、
を含む、半導体素子の製造方法。
【請求項8】
半導体基板の上に、請求項1から5のいずれかに記載のレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上に、EB又はEUVリソグラフィー用レジストを用いて、レジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜にEB又はEUVを照射し、次いで、前記レジスト膜を現像し、レジストパターンを得る工程と、
前記レジストパターンをマスクに用い、前記レジスト下層膜をエッチングする工程と、
を含む、パターン形成方法。
【請求項9】
半導体基板の上に、請求項1から5のいずれかに記載のレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上に、EB又はEUVリソグラフィー用レジストを用いて、レジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜にEB又はEUVを照射し、次いで、前記レジスト膜を現像し、レジストパターンを得る工程と、
を含む、レジストパターンのLWRの改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト下層膜、EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物、半導体加工用基板、半導体素子の製造方法、パターン形成方法、レジストパターンのLWRの改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(半導体集積回路)などの半導体装置においては、集積度の向上に伴い、微細パターンの形成が要求されており、近年の最小パターンサイズは、100nm以下に達している。
こうした半導体装置における微細パターンの形成は、露光装置における光源の短波長化、及びレジスト材料の改良によって実現してきた。現在では、深紫外線である波長193nmのArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザ光を光源に、水を介して露光を行う液浸露光法が行われており、レジスト材料についても、アクリル樹脂をベースとした様々なArF対応レジスト材料が開発されている。
【0003】
更には、次世代の露光技術として、電子線(EB:Electron beam)によるEB露光法、又は波長13.5nmの軟X線を光源とするEUV(極端紫外線)露光法の検討が進んでおり、パターンサイズは30nm以下と、より一層の微細化が進んでいる。
しかしながら、このようなパターンサイズの微細化に伴い、レジストパターン側壁のがたつき(LER;Line edge roughness)及びレジストパターン幅の不均一さ(LWR:Line width roughness)が大きくなり、デバイス性能に悪影響を及ぼす懸念が高まっている。露光装置、レジスト材料、プロセス条件の最適化などで、これらを抑制する検討はなされているものの、十分な結果は得られていない。なお、LWRとLERは関連があり、LWRを改善することにより、LERも改善される。
【0004】
上記問題を解決する方法として、現像処理後のリンス工程において、特定のイオン性の界面活性剤を含む水溶液を用いてレジストパターンを処理することで、現像処理によるディフェクト(残の発生やパターン倒れなどの欠陥)を抑制すると同時に、レジストパターンの凹凸を溶解して、前記LWR、LERを改善する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-213013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、レジストパターンのLWRを改善できる、レジスト下層膜、EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物、EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜、半導体加工用基板、半導体素子の製造方法、パターン形成方法、レジストパターンのLWRの改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決する為、鋭意検討を行った結果、上記の課題を解決出来ることを見出し、以下の要旨を有する本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] レジスト下層膜形成用組成物の塗布膜の焼成物である、レジスト下層膜であって、
前記レジスト下層膜形成用組成物は、多環芳香族炭化水素構造を有する単位構造(A)、及びマレイミド構造を有する単位構造(B)の少なくともいずれかの単位構造を有するポリマーを含有し、
前記レジスト下層膜の膜厚が10nm未満である、レジスト下層膜。
[2] 前記単位構造(A)における前記多環芳香族炭化水素構造が、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、カルバゾール、ピレン、トリフェニレン、クリセン、ナフタセン、ビフェニレン、及びフルオレンからなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む、[1]に記載のレジスト下層膜。
[3] 前記単位構造(B)が、下記式(4)で表される、[1]又は[2]に記載のレジスト下層膜。
【化1】
(式(4)中、Rは、水素原子、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6~10のアリール基を表す。)
[4] 前記ポリマーが、更に架橋形成基を有する単位構造(C)を有する、[1]から[3]のいずれかに記載のレジスト下層膜。
[5] 前記単位構造(C)における前記架橋形成基が、ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基、及び保護されたカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の基を含む、[4]に記載のレジスト下層膜。
[6] 前記レジスト下層膜形成用組成物が、更に架橋剤を含む、[1]から[5]のいずれかに記載のレジスト下層膜。
[7] 前記レジスト下層膜形成用組成物が、更に硬化触媒を含む、[1]から[6]のいずれかに記載のレジスト下層膜。
[8] EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜である、[1]から[7]のいずれかに記載のレジスト下層膜。
[9] 多環芳香族炭化水素構造を有する単位構造(A)、及びマレイミド構造を有する単位構造(B)の少なくともいずれかの単位構造を有するポリマーを含有する、EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物。
[10] 前記単位構造(A)における前記多環芳香族炭化水素構造が、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、カルバゾール、ピレン、トリフェニレン、クリセン、ナフタセン、ビフェニレン、及びフルオレンからなる群から選択される少なくとも1種の構造を含む、[9]に記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物。
[11] 前記単位構造(B)が、下記式(4)で表される、[9]又は[10]に記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物。
【化2】
(式(4)中、Rは、水素原子、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6~10のアリール基を表す。)
[12] 前記ポリマーが、更に架橋形成基を有する単位構造(C)を有する、[9]から[11]のいずれかに記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物。
[13] 前記単位構造(C)における前記架橋形成基が、ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基、及び保護されたカルボキシ基からなる群から選択される少なくとも1種の基を含む、[12]に記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物。
[14] 更に架橋剤を含む、[9]から[13]のいずれかに記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物。
[15] 更に硬化触媒を含む、[9]から[14]のいずれかに記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物。
[16] [1]から[8]のいずれかに記載のレジスト下層膜の形成に用いられる、請求項9から15のいずれかに記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物。
[17] [9]から[16]のいずれかに記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物の塗布膜の焼成物である、EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜。
[18] 半導体基板と、
[1]から[8]のいずれかに記載のレジスト下層膜又は[17]に記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜と、
を備える半導体加工用基板。
[19] 半導体基板の上に、[9]から[16]のいずれかに記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物を用いて、膜厚10nm未満のレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上に、EB又はEUVリソグラフィー用レジストを用いて、レジスト膜を形成する工程と、
を含む、半導体素子の製造方法。
[20] 半導体基板の上に、[9]から[16]のいずれかに記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物を用いて、膜厚10nm未満のレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上に、EB又はEUVリソグラフィー用レジストを用いて、レジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜にEB又はEUVを照射し、次いで、前記レジスト膜を現像し、レジストパターンを得る工程と、
前記レジストパターンをマスクに用い、前記レジスト下層膜をエッチングする工程と、
を含む、パターン形成方法。
[21] 半導体基板の上に、[9]から[16]のいずれかに記載のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物を用いて、膜厚10nm未満のレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上に、EB又はEUVリソグラフィー用レジストを用いて、レジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜にEB又はEUVを照射し、次いで、前記レジスト膜を現像し、レジストパターンを得る工程と、
を含む、レジストパターンのLWRの改善方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レジストパターンのLWRを改善できる、レジスト下層膜、EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物、EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜、半導体加工用基板、半導体素子の製造方法、パターン形成方法、レジストパターンのLWRの改善方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のレジスト下層膜は、レジスト下層膜形成用組成物の塗布膜の焼成物である。そこで、レジスト下層膜形成用組成物を説明した後、本発明のレジスト下層膜について説明する。
【0010】
(レジスト下層膜形成用組成物)
本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、多環芳香族炭化水素構造を有する単位構造(A)、及びマレイミド構造に由来する単位構造(B)の少なくともいずれかの単位構造を有するポリマーを含む。本実施形態のレジスト下層膜形成用組成物は、ポリマーに加えて、さらに、溶剤、架橋剤、及び硬化触媒を含有することができる。そして、本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他の添加剤を含有することができる。
【0011】
<ポリマー>
ポリマーは、上述したように、多環芳香族炭化水素構造を有する単位構造(A)、及びマレイミド構造に由来する単位構造(B)の少なくともいずれかの単位構造を有する。
ポリマーが単位構造(A)、及びマレイミド構造に由来する単位構造(B)の少なくともいずれかの単位構造を有することにより、レジスト下層膜として用いた場合、レジストパターン形成時のレジストとレジスト下層膜界面の密着性が向上する傾向がある。このため、レジストパターンの剥がれが生じることなく、レジストパターン形成時のLWRの悪化を抑制できると推定される。特にEUV(波長13.5nm)又はEB(電子線)使用時に顕著な効果を奏する。
【0012】
本明細書において「多環芳香族炭化水素構造」とは、多環芳香族炭化水素を有する芳香族構造をいう。また、本明細書において「マレイミド構造に由来する単位構造」とは、ポリマー中の繰り返し単位であって、マレイミド又はマレイミド誘導体の炭素-炭素二重結合が反応して得られる繰り返し単位をいう。マレイミド誘導体とは、マレイミドのNH基の水素原子を置換して得られる化合物を意味する。
【0013】
<<単位構造(A)>>
単位構造(A)は、上述したように、多環芳香族炭化水素構造を有する単位構造である。
本明細書において多環芳香族炭化水素構造とは、芳香族性を示す2つ以上の芳香族環から構成される炭化水素を有する芳香族構造であり、縮合環を有する縮合多環芳香族炭化水素構造、及び複数の芳香族環が単結合で直接結合している炭化水素環集合構造を含む。
なお、本明細書において多環芳香族炭化水素構造は、芳香族環の一部の炭素が窒素で置換された複素環構造も含む。
【0014】
縮合多環芳香族炭化水素構造としては、特に制限されないが、例えば、ナフタレン構造、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、トリフェニレン構造、クリセン構造、ナフタセン構造、ビフェニレン構造、及びフルオレン構造等が挙げられる。
【0015】
炭化水素環集合構造としては、特に制限されないが、例えば、カルバゾール構造、ビフェニル構造、テルフェニル構造、クアテルフェニル構造、ビナフタレン構造、フェニルナフタレン構造、フェニルフルオレン構造、及びジフェニルフルオレン構造等が挙げられる。
【0016】
多環芳香族炭化水素構造は、置換基により置換されていてもよい。置換されていてもよい置換基としては、特に制限されないが、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、及びハロゲン基(例えば、フッ素基、塩素基、臭素基、ヨウ素基)等が挙げられる。上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基及び1-エチル-2-メチル-n-プロピル基等が挙げられる。また上記アルキル基として環状アルキル基を用いることもでき、例えば炭素原子数1~10の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基及び2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基等が挙げられる。
【0017】
多環芳香族炭化水素構造は、本発明の効果を好適に得る観点から、ナフタレン構造、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、トリフェニレン構造、クリセン構造、ナフタセン構造、ビフェニレン構造、フルオレン構造、又はカルバゾール構造であるのが好ましく、ナフタレン構造、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造、又はカルバゾール構造であるのがより好ましく、ナフレタン構造又はカルバゾール構造であるのがさらに好ましい。
多環芳香族炭化水素構造は、1種類又は2種以上でもよいが、好ましくは1種又は2種である。
【0018】
単位構造(A)として、具体的には、特に制限されないが、以下の式(1)で表される単位構造を好適に用いることができる。
【化3】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Xはエステル基又はアミド基を表す。Yは炭素原子数1~6のアルキレン基を表す。p及びqはそれぞれ独立して0又は1を表す。Arは、置換されていてもよい、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、トリフェニレン、クリセン、ナフタセン、ビフェニレン、フルオレン、又はカルバゾールから水素原子を除いた1価の基を表す。)
【0019】
また、単位構造(A)として、特に制限されないが、以下の式(2)で表される単位構造を好適に用いることができる。
【化4】
(式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Zはナフタレン環に置換したハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、チオール基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、又はチオアルキル基を表し、nは0~7の整数を表す。nが2以上のとき、2つ以上のZは同じであってもよいし、異なっていてもよい。)
【0020】
Zにおいて、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を用いることができる。アルキル基としては、例えば、直鎖又は分岐を有する炭素原子数1~6のアルキル基であり、これらはハロゲン原子等で置換されていても良い。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ヘキシル基、クロロメチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、炭素原子数1~6のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アミド基としては、例えば、炭素原子数1~12のアミド基であり、例えばホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオンアミド基、イソブチルアミド基、ベンズアミド基、ナフチルアミド基、アクリルアミド基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えば、炭素原子数1~12のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。チオアルキル基としては、例えば、炭素原子数1~6のチオアルキル基であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられる。
【0021】
式(2)で表される単位構造(A)の具体例としては、以下が挙げられる。
【化5】
【化6】
【0022】
さらに、単位構造(A)として、特に制限されないが、以下の式(3)で表される単位構造を好適に用いることができる。
【化7】
(式(3)中、ArとArは各々独立して置換されていてもよい炭素原子数6~40の芳香族環を表し且つ、Ar及びArの少なくとも1つはナフタレン、アントラセン、フェナントレン、又はピレンであり、Qは単結合又は2価の連結基を表す。)
【0023】
炭素原子数6~40の芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、アセナフテン、フルオレン、トリフェニレン、フェナレン、フェナントレン、インデン、インダン、インダセン、ピレン、クリセン、ペリレン、ナフタセン、ペンタセン、コロネン、ヘプタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ジベンゾフェナントレン、及びジベンゾ[a,j]アントラセン等が挙げられる。
【0024】
Qにおける2価の連結基としては、例えば、エーテル基、エステル基、及びイミノ基等が挙げられ、イミノ基であるのが好ましい。
【0025】
単位構造(A)は1種類又は2種類以上でよいが、好ましくは1種又は2種である。
【0026】
ポリマーが単位構造(A)を含む場合、単位構造(A)のモル比率は、本発明の効果を好適に得る観点から、ポリマーの全単位構造に対して10~90モル%であるのが好ましく、30~85モル%であるのがより好ましく、40~80モル%であるのが更に好ましい。
【0027】
<<単位構造(B)>>
単位構造(B)は、上述した、マレイミド構造に由来する単位構造である。
【0028】
単位構造(B)は、下記式(4)で表される単位構造であるのが好ましい。
【化8】
(式(4)中、Rは、水素原子、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6~10のアリール基を表す。)
【0029】
炭素原子数1~10のアルキル基としては、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれでもよい。上記炭素原子数1~10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、シクロプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、シクロブチレン基、1-メチル-シクロプロピレン基、2-メチル-シクロプロピレン基、n-ペンチレン基、1-メチル-n-ブチレン基、2-メチル-n-ブチレン基、3-メチル-n-ブチレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン、1-エチル-n-プロピレン基、シクロペンチレン基、1-メチル-シクロブチレン基、2-メチル-シクロブチレン基、3-メチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロプロピレン基、2,3-ジメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-シクロプロピレン基、2-エチル-シクロプロピレン基、n-ヘキシレン基、1-メチル-n-ペンチレン基、2-メチル-n-ペンチレン基、3-メチル-n-ペンチレン基、4-メチル-n-ペンチレン基、1,1-ジメチル-n-ブチレン基、1,2-ジメチル-n-ブチレン基、1,3-ジメチル-n-ブチレン基、2,2-ジメチル-n-ブチレン基、2,3-ジメチル-n-ブチレン基、3,3-ジメチル-n-ブチレン基、1-エチル-n-ブチレン基、2-エチル-n-ブチレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-1-メチル-n-プロピレン基、1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基、シクロヘキシレン基、1-メチル-シクロペンチレン基、2-メチル-シクロペンチレン基、3-メチル-シクロペンチレン基、1-エチル-シクロブチレン基、2-エチル-シクロブチレン基、3-エチル-シクロブチレン基、1,2-ジメチル-シクロブチレン基、1,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,2-ジメチル-シクロブチレン基、2,3-ジメチル-シクロブチレン基、2,4-ジメチル-シクロブチレン基、3,3-ジメチル-シクロブチレン基、1-n-プロピル-シクロプロピレン基、2-n-プロピル-シクロプロピレン基、1-イソプロピル-シクロプロピレン基、2-イソプロピル-シクロプロピレン基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピレン基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピレン基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピレン基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、及びn-デカニレン基等が挙げられる。
これらの炭素原子数1~10のアルキル基の任意の水素原子は、ヒドロキシ基で置換されていてもよい。
【0030】
ハロゲン原子については上述した通りである。また、炭素原子6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、及びナフチル基等が挙げられる。
【0031】
式(4)で表される単位構造(B)の具体例としては、例えば、以下の単位構造が挙げられる。
【化9】
【0032】
単位構造(B)は1種類又は2種類以上でよいが、好ましくは1種又は2種である。
【0033】
ポリマーが単位構造(B)を含む場合、単位構造(B)のモル比率は、本発明の効果を好適に得る観点から、ポリマーの全単位構造に対して10~90モル%であるのが好ましく、10~75モル%であるのがより好ましく、10~50モル%であるのがさらに好ましい。
【0034】
ポリマーが単位構造(A)及び単位構造(B)を含む場合、単位構造(A)及び単位構造(B)の合計モル比率は、本発明の効果を好適に得る観点から、ポリマーの全単位構造に対して20モル%以上であるのが好ましく、40モル%以上であるのがより好ましく、50モル%以上であるのがさらに好ましい。
【0035】
<<単位構造(C)>>
本実施形態のポリマーは、任意に、単位構造(A)及び/又は単位構造(B)に加えて架橋形成基を有する単位構造(C)をさらに含んでいてもよい。
架橋形成基は本発明のレジスト下層膜形成用組成物中に任意に導入される架橋剤成分と加熱焼成時に架橋反応を起こすことができる。このような架橋形成反応により形成されるレジスト下層膜は、上層に被覆されるレジスト膜との間でインターミキシングを防ぐ効果がある。
【0036】
架橋形成基は分子間に化学結合を生成する基であれば特に制限されないが、例えば、ヒドロキシ基、エポキシ基、保護されたヒドロキシ基、又は保護されたカルボキシル基とすることができる。架橋形成基は一分子中にいくつあってもよい。
【0037】
ヒドロキシ基としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等に由来するヒドロキシ基やヒドロキシスチレン等に由来するフェノール性ヒドロキシ基を挙げることができる。このアルキル基としては上述したアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートの双方を意味する。
【0038】
エポキシ基としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等に由来するエポキシ基が挙げられる。
【0039】
保護されたヒドロキシ基としては、例えば、ヒドロキシスチレンのヒドロキシ基がターシャリーブトキシ(tert-ブトキシ)基で保護された基が挙げられる。またはヒドロキシスチレンなどのフェノール性ヒドロキシ基とビニルエーテル化合物とを反応させて保護されたヒドロキシ基や、ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルコール性ヒドロキシ基とビニルエーテル化合物とを反応させて保護されたヒドロキシ基などが挙げられる。ビニルエーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ノルマルブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の炭素原子数1~10のアルキル鎖とビニルエーテル基とを有する脂肪族ビニルエーテル化合物や、2,3-ジヒドロフラン、4-メチル-2,3-ジヒドロフラン、2,3-ジヒドロ-4H-ピラン等の環状ビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0040】
保護されたカルボキシル基としては、例えば、(メタ)アクリル酸やビニル安息香酸のカルボキシル基にビニルエーテル化合物を反応させることによって保護されたカルボキシル基が挙げられる。ここで用いられるビニルエーテル化合物としては上述のビニルエーテル化合物を例示することができる。
【0041】
架橋形成基としては、アミノ基、イソシアネート基、保護されたアミノ基、保護されたイソシアネート基も挙げることができる。アミノ基は少なくとも一つの活性水素を有することが必要であるが、アミノ基の一つの活性水素をアルキル基等で置換したアミノ基も用いることができる。このアルキル基は上述のアルキル基を用いることができる。
【0042】
保護されたアミノ基としては、アミノ基の少なくとも一つの水素原子を、t-ブトキシカルボニル基又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基で保護したものである。
【0043】
保護されたイソシアネート基としては、イソシアネート基と保護化剤を反応させて得られるものである。保護化剤としては、イソシアネートと反応可能な活性水素含有化合物であり、例えば、アルコール、フェノール、多環フェノール、アミド、イミド、イミン、チオール、オキシム、ラクタム、活性水素含有複素環、活性メチレン含有化合物が挙げられる。
【0044】
保護化剤としてのアルコールは、例えば、炭素原子数1~40のアルコールが挙げられ、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、エチレンクロルヒドリン、1,3-ジクロロ-2-プロパノール、t-ブタノール、t-ペンタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール等が例示される。
【0045】
保護化剤としてのフェノールは例えば炭素原子数6~20のフェノール類が挙げられ、フェノール、クロロフェノール、ニトロフェノール等が例示される。
保護化剤としてのフェノール誘導体は例えば炭素原子数6~20のフェノール誘導体が挙げられ、パラ-t-ブチルフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等が例示される。
保護化剤としての多環フェノールは例えば炭素原子数10~20の多環フェノールが挙げられ、それらはフェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族縮合環であり、ヒドロキシナフタレン、ヒドロキシアントラセン等が例示される。
【0046】
保護化剤としてのアミドは例えば炭素原子数1~20のアミドが挙げられ、アセトアニリド、ヘキサンアミド、オクタンジアミド、スクシンアミド、ベンゼンスルホンアミド、エタンジアミド等が例示される。
保護化剤としてのイミドは例えば炭素原子数6~20のイミドが挙げられ、シクロヘキサンジカルボキシイミド、シクロヘキサエンジカルボキシイミド、ベンゼンジカルボキシイミド、シクロブタンジカルボキシイミド、カルボジイミド等が例示される。
保護化剤としてのイミンは例えば炭素原子数1~20のイミンが挙げられ、ヘキサン-1-イミン、2-プロパンイミン、エタン-1,2-イミン等が例示される。
【0047】
保護化剤としてのチオールは例えば炭素原子数1~20のチオールが挙げられ、エタンチオール、ブタンチオール、チオフェノール、2,3-ブタンジチオール等が例示される。
保護化剤としてのオキシムは例えば炭素原子数1~20のオキシムであり、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジメチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、ホルムアミドオキシム、アセトアルドキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等が例示される。
保護化剤としてのラクタムは例えば炭素原子数4~20のラクタムであり、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピルラクタム、γ-ピロリドン、ラウリルラクタム等が例示される。
【0048】
保護化剤としての活性水素含有複素環化合物は例えば炭素原子数3~30の活性水素含有複素環化合物であり、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピリンジン、インドール、インダゾール、プリン、カルバゾール等が例示される。
保護化剤としての活性メチレン含有化合物としては例えば炭素原子数3~20の活性メチレン含有化合物であり、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等が例示される。
【0049】
架橋形成基としては、特に制限されないが、ヒドロキシ基を好ましく用いることができ、これらの架橋形成基を有する単位構造(C)としては、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位構造が好ましく、特にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに由来する単位構造がより好ましい。
「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位構造」とは、ポリマー中の繰り返し単位であって、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの炭素-炭素二重結合が反応して得られる繰り返し単位をいう。
【0050】
ポリマーが単位構造(C)を含む場合、単位構造(C)のモル比率は、本発明の効果を好適に得る観点から、ポリマーの全単位構造に対して5~90モル%であるのが好ましく、10~80モル%であるのがより好ましく、15~75モル%であるのがさらに好ましい。
【0051】
<<ポリマーの特性>>
ポリマーにおける単位構造(A)、(B)及び(C)で表される単位構造の分布は特に制限されない。ポリマーは、単位構造(A)の単独重合体であってもよいし、単位構造(B)の単独重合体であってもよいが、少なくとも単位構造(A)を有するのが好ましい。ポリマーが、単位構造(A)と単位構造(B)との共重合体においては、単位構造(A)と単位構造(B)とが交互共重合してもよく、ランダム共重合してもよい。また、単位構造(C)が共存する場合、ポリマー中における単位構造はそれぞれブロックを構成していてもよく、ランダムに結合していてもよい。
【0052】
ポリマーの分子量としては、特に制限されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称することがある)による重量平均分子量が、1,500~100,000であることが好ましく、2,000~50,000であることがより好ましい。
【0053】
<<ポリマーの製造方法>>
ポリマーの製造方法としては、特に制限されないが、例えば、単位構造(A)のモノマーが有する炭素-炭素二重結合と、単位構造(B)のモノマーが有する炭素-炭素二重結合と、任意の単位構造(C)のモノマーが有する炭素-炭素二重結合とを反応させることにより、本実施形態のポリマーを得ることができる。
【0054】
ポリマーの重合方法としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの公知の重合方法を用いることができる。溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合など種々の公知技術を用いることができる。
【0055】
重合時に使用される重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、及び2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩等が用いられる。
【0056】
重合時に用いられる溶媒としては、特に制限されないが、例えば、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトシキ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2ーヒドロキシー3ーメチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を用いることができる。これらは単独でも、混合して使用しても良い。
【0057】
反応温度としては、特に制限されないが、例えば、20℃~160℃が挙げられる。
反応時間としては、特に制限されないが、例えば、1時間~72時間が挙げられる。
【0058】
得られたポリマーを含む溶液は、レジスト下層膜形成用組成物の調製にそのまま用いることもできる。また、ポリマーをメタノール、エタノール、イソプロパノール、水等の貧溶剤、もしくはそれらの混合溶媒に沈殿単離させて回収して用いることもできる。
【0059】
レジスト下層膜形成用組成物におけるポリマーの含有量としては、特に制限されないが、溶解性の観点から、レジスト下層膜形成用組成物全体に対して、0.1質量%~50質量%が好ましく、0.1質量%~10質量%がより好ましい。
【0060】
<架橋剤>
レジスト下層膜形成用組成物に任意成分として含まれる架橋剤は、国際公開第2017/187969号公報に記載の、窒素原子と結合する下記式(1d)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物であってもよい。
【0061】
【化10】
(式(1d)中、Rはメチル基又はエチル基を表す。*は窒素原子と結合する結合手を表す。)
【0062】
上記式(1d)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物は下記式(1E)で表されるグリコールウリル誘導体であってよい。
【0063】
【化11】
(式(1E)中、4つのRはそれぞれ独立にメチル基又はエチル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、又はフェニル基を表す。)
【0064】
上記式(1E)で表されるグリコールウリル誘導体として、例えば、下記式(1E-1)~式(1E-6)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【化12】
【0066】
上記式(1d)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物は、窒素原子と結合する下記式(2d)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物と下記式(3d)で表される少なくとも1種の化合物とを反応させることで得られる。
【0067】
【化13】
(式(2d)及び式(3d)中、Rはメチル基又はエチル基を表し、Rは炭素原子数1~4のアルキル基を表す。*は窒素原子と結合する結合手を表す。)
【0068】
上記式(1E)で表されるグリコールウリル誘導体は、下記式(2E)で表されるグリコールウリル誘導体と上記式(3d)で表される少なくとも1種の化合物とを反応させることにより得られる。
【0069】
上記式(2d)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物は、例えば、下記式(2E)で表されるグリコールウリル誘導体である。
【0070】
【化14】
(式(2E)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、又はフェニル基を表し、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基を表す。)
【0071】
上記式(2E)で表されるグリコールウリル誘導体として、例えば、下記式(2E-1)~式(2E-4)で表される化合物が挙げられる。さらに上記式(3d)で表される化合物として、例えば下記式(3d-1)及び式(3d-2)で表される化合物が挙げられる。
【0072】
【化15】
【化16】
【0073】
上記窒素原子と結合する式(1d)で表される置換基を1分子中に2~6つ有する含窒素化合物に係る内容については、WO2017/187969号公報の全開示が本願に援用される。
【0074】
また、架橋剤は、下記式(21)によって表される化合物であってもよい。
【化17】
(式(21)中、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキレン基を表し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、又は総炭素原子数2~10のアルコキシアルキル基を表し、Rは、それぞれ独立して、炭素原子数1~6のアルキル基を表す。m1、及びm2は、それぞれ独立して、1~2の整数を表す。m1及びm2が1の時、Qは、単結合、酸素原子、又は炭素原子数1~20の2価の有機基を表し、それ以外の時、Qは、炭素原子数1~20の(m1+m2)価の有機基を表す。)
【0075】
における炭素原子数1~20の(m1+m2)価の有機基としては、例えば、下記式(21-1)~式(21-5)のいずれかで表される基が挙げられる。
【0076】
【化18】
(式(21-1)中、Ra及びRbは、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素原子数1~4のアルキル基、又は-CF基を表す。
式(21-3)中、Xは、炭素原子数1~30の3価の基を表す。
式(21-4)中、Arは、2価の芳香族炭化水素基を表す。
*は、結合手を表す。)
【0077】
Arとしては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、及びアントラセンから選択される化合物の2価の残基を表す。
【0078】
式(21-1)で表される基は、2価の基である。
式(21-2)で表される基は、4価の基である。
式(21-3)で表される基は、3価の基である。
式(21-4)で表される基は、2価の基である。
式(21-5)で表される基は、3価の基である。
【0079】
上記架橋剤が使用される場合、当該架橋剤の含有割合は、単位構造(A)及び単位構造(B)の少なくともいずれかの単位構造を有するポリマーに対し、例えば1質量%~50質量%であり、好ましくは、5質量%~30質量%である。
【0080】
<<硬化触媒>>
レジスト下層膜形成用組成物に任意成分として含まれる硬化触媒は、熱酸発生剤、光酸発生剤何れも使用することができるが、熱酸発生剤を使用することが好ましい。
【0081】
熱酸発生剤としては、例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム-p-トルエンスルホネート(ピリジニウム-p-トルエンスルホン酸)、ピリジニウムフェノールスルホン酸、ピリジニウム-p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸(p-フェノールスルホン酸ピリジニウム塩)、ピリジニウム-トリフルオロメタンスルホン酸、サリチル酸、カンファースルホン酸、5-スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸等のスルホン酸化合物及びカルボン酸化合物が挙げられる。
【0082】
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、及びジスルホニルジアゾメタン化合物等が挙げられる。
【0083】
オニウム塩化合物としては、例えば、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロノルマルオクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート及びビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート等のヨードニウム塩化合物、及びトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロノルマルブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート及びトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等のスルホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0084】
スルホンイミド化合物としては、例えばN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(ノナフルオロノルマルブタンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド及びN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ナフタルイミド等が挙げられる。
【0085】
ジスルホニルジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、及びメチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン等が挙げられる。
【0086】
硬化触媒は一種のみを使用することができ、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0087】
硬化触媒が使用される場合、当該硬化触媒の含有割合は、架橋剤に対し、例えば0.1質量%~50質量%であり、好ましくは、1質量%~30質量%である。
【0088】
<<その他の成分>>
レジスト下層膜形成用組成物には、ピンホールやストリエーション等の発生がなく、表面むらに対する塗布性をさらに向上させるために、さらに界面活性剤を添加することができる。
【0089】
界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップEF301、EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製、商品名)、メガファックF171、F173、R-30(DIC(株)製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製、商品名)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製、商品名)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
これらの界面活性剤の配合量は、特に制限されないが、レジスト下層膜形成用組成物に対して通常2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下である。
これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0090】
<溶剤>
溶剤としては、一般的に半導体リソグラフィー工程用薬液に用いられる有機溶剤が好ましい。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノール、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸2-ヒドロキシエチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-ヘプタノン、メトキシシクロペンタン、アニソール、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0091】
これらの溶剤の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノンが好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0092】
レジスト下層膜形成用組成物は、好ましくは、EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物として用いられる。また、上記EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物は、好ましくは、膜厚が10nm未満のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜の形成に用いられる。
【0093】
(レジスト下層膜)
本発明のレジスト下層膜は、上述したレジスト下層膜形成用組成物の塗布膜の焼成物である。
【0094】
本発明のレジスト下層膜の膜厚は、10nm未満である。通常、レジスト下層膜の膜厚を薄くすると、表面が平坦な膜を得るのが困難となる。表面が平坦でない場合は、下層膜の上に成膜するレジスト層の膜厚変動が大きくなり、結果としてLWRが大きくなる。
本発明のレジスト下層膜は、上述したポリマーを含有することにより、基板との密着性及び成膜性に優れる傾向がある。このため、レジスト下層膜の膜厚が10nm未満であっても、表面が平坦な膜を形成することができ、レジストパターンのLWRを改善することができると推定される。特にEUV又はEB使用時に顕著な効果を奏する。
【0095】
なお、EUV又はEB使用時に膜厚20nm以上のレジスト下層膜を用いた場合、レジストパターン形成後のドライエッチング工程において、レジスト膜厚は薄いため、下層膜をエッチングする過程でレジストパターンがダメージを受けてレジスト膜厚減少やトップラウンディング形状になるなどの形状不良を起こし、実際の基板加工の際に目的の線幅のパターン形成が困難となる。
【0096】
本発明のレジスト下層膜は、レジスト下層膜形成用組成物を半導体基板上に塗布し、焼成することにより製造することができる。
【0097】
本発明のレジスト下層膜形成用組成物が塗布される半導体基板としては、例えば、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、及びヒ化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化アルミニウム等の化合物半導体ウエハが挙げられる。
【0098】
表面に無機膜が形成された半導体基板を用いる場合、当該無機膜は、例えば、ALD(原子層堆積)法、CVD(化学気相堆積)法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スピンコーティング法(スピンオングラス:SOG)により形成される。上記無機膜として、例えば、ポリシリコン膜、酸化ケイ素膜、窒化珪素膜、BPSG(Boro-Phospho Silicate Glass)膜、窒化チタン膜、窒化酸化チタン膜、タングステン膜、窒化ガリウム膜、及びヒ化ガリウム膜が挙げられる。
【0099】
このような半導体基板上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のレジスト下層膜形成用組成物を塗布する。その後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークすることによりレジスト下層膜を形成する。ベーク条件としては、ベーク温度100℃~400℃、ベーク時間0.3分~60分間の中から適宜、選択される。好ましくは、ベーク温度120℃~350℃、ベーク時間0.5分~30分間、より好ましくは、ベーク温度150℃~300℃、ベーク時間0.8分~10分間である。
【0100】
レジスト下層膜の膜厚としては、10nm未満であり、9nm以下が好ましく、8nm以下がより好ましく、7nm以下がさらに好ましい。また、レジスト下層膜の膜厚としては、1nm以上であってもよいし、2nm以上であってもよいし、3nm以上であってもよい。
【0101】
本明細書におけるレジスト下層膜の膜厚の測定方法は、以下のとおりである。
・測定装置名:エリプソ式膜厚測定装置RE-3100 ((株)SCREEN)
・SWE(単波長エリプソメータ)モード
・8点の算術平均(例えば、ウエハX方向に1cm間隔で8点測定)
【0102】
レジスト下層膜は、好ましくは、EB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜として用いられる。
【0103】
(半導体加工用基板)
本発明の半導体加工用基板は、半導体基板と、本発明のレジスト下層膜又はEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜とを備える。
半導体基板としては、例えば、前述の半導体基板が挙げられる。
レジスト下層膜又はEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜は、例えば、半導体基板の上に配される。
【0104】
(半導体素子の製造方法、パターン形成方法、レジストパターンのLWRの改善方法)
本発明の半導体素子の製造方法は、少なくとも以下の工程を含む。
・半導体基板の上に、本発明のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物を用いて、膜厚10nm未満のレジスト下層膜を形成する工程、及び
・レジスト下層膜の上に、EB又はEUVリソグラフィー用レジストを用いて、レジスト膜を形成する工程
【0105】
本発明のパターン形成方法は、少なくとも以下の工程を含む。
・半導体基板の上に、本発明のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物を用いて、膜厚10nm未満のレジスト下層膜を形成する工程、
・レジスト下層膜の上に、EB又はEUVリソグラフィー用レジストを用いて、レジスト膜を形成する工程
・レジスト膜にEB又はEUVを照射し、次いで、レジスト膜を現像し、レジストパターンを得る工程、及び
・レジストパターンをマスクに用い、レジスト下層膜をエッチングする工程
【0106】
本発明のレジストパターンのLWRの改善方法は、少なくとも以下の工程を含む。
・半導体基板の上に、本発明のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物を用いて、膜厚10nm未満のレジスト下層膜を形成する工程、
・レジスト下層膜の上に、EB又はEUVリソグラフィー用レジストを用いて、レジスト膜を形成する工程、及び
・レジスト膜にEB又はEUVを照射し、次いで、レジスト膜を現像し、レジストパターンを得る工程、
レジストパターンのLWRの改善方法では、本発明のEB又はEUVリソグラフィー用レジスト下層膜形成用組成物から得られるレジスト下層膜をレジスト膜の下に用いることで、EB又はEUVリソグラフィーにおけるレジストパターン幅の不均一さ(LWR:Line width roughness)を改善することができる。
【0107】
通常、レジスト下層膜の上にレジスト膜が形成される。
レジスト膜の膜厚としては、特に制限されないが、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましく、80nm以下が特に好ましい。また、レジスト膜の膜厚としては、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましい。
【0108】
レジスト下層膜の上に公知の方法で塗布、焼成して形成されるレジストとしては照射に使用されるEB又はEUVに応答するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。
なお、本明細書においてはEBに応答するレジストもフォトレジストと称する。
フォトレジストとしては、ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、メタル元素を含有するレジストなどがある。例えば、JSR(株)製商品名V146G、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学(株)製商品名PAR710、及び信越化学工業(株)製商品名AR2772、SEPR430等が挙げられる。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
【0109】
また、WO2019/188595、WO2019/187881、WO2019/187803、WO2019/167737、WO2019/167725、WO2019/187445、WO2019/167419、WO2019/123842、WO2019/054282、WO2019/058945、WO2019/058890、WO2019/039290、WO2019/044259、WO2019/044231、WO2019/026549、WO2018/193954、WO2019/172054、WO2019/021975、WO2018/230334、WO2018/194123、特開2018-180525、WO2018/190088、特開2018-070596、特開2018-028090、特開2016-153409、特開2016-130240、特開2016-108325、特開2016-047920、特開2016-035570、特開2016-035567、特開2016-035565、特開2019-101417、特開2019-117373、特開2019-052294、特開2019-008280、特開2019-008279、特開2019-003176、特開2019-003175、特開2018-197853、特開2019-191298、特開2019-061217、特開2018-045152、特開2018-022039、特開2016-090441、特開2015-10878、特開2012-168279、特開2012-022261、特開2012-022258、特開2011-043749、特開2010-181857、特開2010-128369、WO2018/031896、特開2019-113855、WO2017/156388、WO2017/066319、特開2018-41099、WO2016/065120、WO2015/026482、特開2016-29498、特開2011-253185等に記載のレジスト組成物、感放射性樹脂組成物、有機金属溶液に基づいた高解像度パターニング組成物等のいわゆるレジスト組成物、金属含有レジスト組成物が使用できるが、これらに限定されない。
【0110】
レジスト組成物としては、例えば、以下の組成物が挙げられる。
【0111】
酸の作用により脱離する保護基で極性基が保護された酸分解性基を有する繰り返し単位を有する樹脂A、及び、下記一般式(21)で表される化合物を含む、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0112】
【化19】
一般式(21)中、mは、1~6の整数を表す。
及びRは、それぞれ独立に、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基を表す。
は、-O-、-S-、-COO-、-SO-、又は、-SO-を表す。
は、置換基を有していてもよいアルキレン基又は単結合を表す。
は、置換基を有していてもよい環状有機基を表す。
は、カチオンを表す。
【0113】
金属-酸素共有結合を有する化合物と、溶媒とを含有し、上記化合物を構成する金属元素が、周期表第3族~第15族の第3周期~第7周期に属する、極端紫外線又は電子線リソグラフィー用金属含有膜形成組成物。
【0114】
下記式(31)で表される第1構造単位及び下記式(32)で表され酸解離性基を含む第2構造単位を有する重合体と、酸発生剤とを含有する、感放射線性樹脂組成物。
【0115】
【化20】
(式(31)中、Arは、炭素原子数6~20のアレーンから(n+1)個の水素原子を除いた基である。Rは、ヒドロキシ基、スルファニル基又は炭素原子数1~20の1価の有機基である。nは、0~11の整数である。nが2以上の場合、複数のRは同一又は異なる。Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。式(32)中、Rは、上記酸解離性基を含む炭素原子数1~20の1価の基である。Zは、単結合、酸素原子又は硫黄原子である。Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。)
【0116】
環状炭酸エステル構造を有する構造単位、下記式で表される構造単位及び酸不安定基を有する構造単位を含む樹脂(A1)と、酸発生剤とを含有するレジスト組成物。
【0117】
【化21】
[式中、
は、ハロゲン原子を有してもよい炭素原子数1~6のアルキル基、水素原子又はハロゲン原子を表し、Xは、単結合、-CO-O-*又は-CO-NR-*を表し、*は-Arとの結合手を表し、Rは、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、Arは、ヒドロキシ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる1以上の基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表す。]
【0118】
レジスト膜としては、例えば、以下が挙げられる。
【0119】
下記式(a1)で表される繰り返し単位及び/又は下記式(a2)で表される繰り返し単位と、露光によりポリマー主鎖に結合した酸を発生する繰り返し単位とを含むベース樹脂を含むレジスト膜。
【0120】
【化22】
(式(a1)及び式(a2)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数4~6の3級アルキル基である。Rは、それぞれ独立に、フッ素原子又はメチル基である。mは、0~4の整数である。Xは、単結合、フェニレン基若しくはナフチレン基、又はエステル結合、ラクトン環、フェニレン基及びナフチレン基から選ばれる少なくとも1種を含む炭素原子数1~12の連結基である。Xは、単結合、エステル結合又はアミド結合である。)
【0121】
レジスト材料としては、例えば、以下が挙げられる。
【0122】
下記式(b1)又は式(b2)で表される繰り返し単位を有するポリマーを含むレジスト材料。
【0123】
【化23】
(式(b1)及び式(b2)中、Rは、水素原子又はメチル基である。Xは、単結合又はエステル基である。Xは、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素原子数1~12のアルキレン基又は炭素原子数6~10のアリーレン基であり、該アルキレン基を構成するメチレン基の一部が、エーテル基、エステル基又はラクトン環含有基で置換されていてもよく、また、Xに含まれる少なくとも1つの水素原子が臭素原子で置換されている。Xは、単結合、エーテル基、エステル基、又は炭素原子数1~12の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキレン基であり、該アルキレン基を構成するメチレン基の一部が、エーテル基又はエステル基で置換されていてもよい。Rf~Rfは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であるが、少なくとも1つはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。また、Rf及びRfが合わさってカルボニル基を形成してもよい。R~Rは、それぞれ独立に、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素原子数1~12のアルキル基、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素原子数2~12のアルケニル基、炭素原子数2~12のアルキニル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~12のアラルキル基、又は炭素原子数7~12のアリールオキシアルキル基であり、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、オキソ基、シアノ基、アミド基、ニトロ基、スルトン基、スルホン基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、これらの基を構成するメチレン基の一部が、エーテル基、エステル基、カルボニル基、カーボネート基又はスルホン酸エステル基で置換されていてもよい。また、RとRとが結合して、これらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。)
【0124】
下記式(a)で表される繰り返し単位を含むポリマーを含むベース樹脂を含むレジスト材料。
【0125】
【化24】
(式(a)中、Rは、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又は酸不安定基である。Rは、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素原子数1~6のアルキル基、又は臭素以外のハロゲン原子である。Xは、単結合若しくはフェニレン基、又はエステル基若しくはラクトン環を含んでいてもよい直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素原子数1~12のアルキレン基である。Xは、-O-、-O-CH-又は-NH-である。mは、1~4の整数である。uは、0~3の整数である。ただし、m+uは、1~4の整数である。)
【0126】
露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、
酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)及びアルカリ現像液に対して分解性を示すフッ素添加剤成分(F)を含有し、
上記フッ素添加剤成分(F)は、塩基解離性基を含む構成単位(f1)と、下記一般式(f2-r-1)で表される基を含む構成単位(f2)と、を有するフッ素樹脂成分(F1)を含有する、レジスト組成物。
【0127】
【化25】
[式(f2-r-1)中、Rf21は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、ヒドロキシアルキル基又はシアノ基である。n”は、0~2の整数である。*は結合手である。]
【0128】
上記構成単位(f1)は、下記一般式(f1-1)で表される構成単位、又は下記一般式(f1-2)で表される構成単位を含む。
【0129】
【化26】
[式(f1-1)、(f1-2)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のハロゲン化アルキル基である。Xは、酸解離性部位を有さない2価の連結基である。Aarylは、置換基を有していてもよい2価の芳香族環式基である。X01は、単結合又は2価の連結基である。Rは、それぞれ独立に、フッ素原子を有する有機基である。]
【0130】
コーティング、コーティング溶液、及びコーティング組成物としては、例えば、以下が挙げられる。
【0131】
金属炭素結合および/または金属カルボキシラート結合により有機配位子を有する金属オキソ-ヒドロキソネットワークを含むコーティング。
【0132】
無機オキソ/ヒドロキソベースの組成物。
【0133】
コーティング溶液であって、有機溶媒;第一の有機金属組成物であって、式RSnO(2-(z/2)-(x/2))(OH)(ここで、0<z≦2および0<(z+x)≦4である)、式R’SnX4-n(ここで、n=1または2である)、またはそれらの混合物によって表され、ここで、RおよびR’が、独立して、1~31個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、およびXが、Snに対する加水分解性結合を有する配位子またはそれらの組合せである、第一の有機金属組成物;および加水分解性の金属化合物であって、式MX’(ここで、Mが、元素周期表の第2~16族から選択される金属であり、v=2~6の数であり、およびX’が、加水分解性のM-X結合を有する配位子またはそれらの組合せである)によって表される、加水分解性の金属化合物を含む、コーティング溶液。
【0134】
有機溶媒と、式RSnO(3/2-x/2)(OH)(式中、0<x<3)で表される第1の有機金属化合物とを含むコーティング溶液であって、上記溶液中に約0.0025M~約1.5Mのスズが含まれ、Rが3~31個の炭素原子を有するアルキル基またはシクロアルキル基であり、上記アルキル基またはシクロアルキル基が第2級または第3級炭素原子においてスズに結合された、コーティング溶液。
【0135】
水と、金属亜酸化物陽イオンと、多原子無機陰イオンと、過酸化物基を含んで成る感放射線リガンドとの混合物を含んで成る無機パターン形成前駆体水溶液。
【0136】
EB又はEUVの照射は、例えば、所定のパターンを形成するためのマスク(レチクル)を通して行われる。本発明のレジスト下層膜は、EB(電子線)又はEUV(極端紫外線:13.5nm)照射用に適用されるが、EUV(極端紫外線)露光用に適用されることが好ましい。
EBの照射エネルギー及びEUVの露光量としては、特に制限されない。
【0137】
EB又はEUVの照射後であって現像の前に、ベーク(PEB:Post Exposure Bake)を行ってもよい。
ベーク温度としては、特に制限されないが、60℃~150℃が好ましく、70℃~120℃がより好ましく、75℃~110℃が特に好ましい。
ベーク時間としては、特に制限されないが、1秒間~10分間が好ましく、10秒間~5分間がより好ましく、30秒間~3分間が特に好ましい。
【0138】
現像には、例えば、アルカリ現像液が用いられる。
現像温度としては、例えば、5℃~50℃が挙げられる。
現像時間としては、例えば、10秒間~300秒間が挙げられる。
アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジーn-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩の水溶液、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液及びコリンの水溶液である。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。アルカリ現像液に代えて、酢酸ブチル等の有機溶媒で現像を行い、フォトレジストのアルカリ溶解速度が向上していない部分を現像する方法を用いることもできる。
【0139】
次いで、形成したレジストパターンをマスクとして、レジスト下層膜をエッチングする。エッチングは、ドライエッチングであってもよし、ウェットエッチングであってもよいが、ドライエッチングであることが好ましい。
用いた半導体基板の表面に上記無機膜が形成されている場合、その無機膜の表面を露出させ、用いた半導体基板の表面に上記無機膜が形成されていない場合、その半導体基板の表面を露出させる。その後半導体基板を公知の方法(ドライエッチング法等)により半導体基板を加工する工程を経て、半導体装置が製造できる。
【実施例
【0140】
次に実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0141】
本明細書の下記合成例1~8、比較合成例1に示すポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)による測定結果である。測定には東ソー(株)製GPC装置を用い、測定条件等は次のとおりである。
GPCカラム:TSKgel Super-MultiporeHZ-N (2本)
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.35ml/分
標準試料:ポリスチレン(東ソー(株)製)
【0142】
<合成例1>
2-ビニルナフタレン5.68g(ポリマー1全体に対するモル比75%)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(ポリマー1全体に対するモル比25%)1.60g、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.73gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート32.00gに溶解させた。反応容器を窒素置換後、この溶液を加熱し、140℃で約4時間撹拌した。この反応液をイソプロピルアルコールに滴下し、析出物を吸引ろ過にて回収した後、60℃で減圧乾燥してポリマー1を回収した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8500であった。ポリマー1中に存在する構造を下記式に示す。
【0143】
【化27】
【0144】
<合成例2>
2-ビニルナフタレン4.75g(ポリマー2全体に対するモル比55%)、ベンジルメタクリレート(ポリマー2全体に対するモル比30%)2.96g、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(ポリマー2全体に対するモル比15%)1.21g、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル1.07gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40.00gに溶解させた。反応容器を窒素置換後、この溶液を加熱し、140℃で約4時間撹拌した。この反応液をイソプロピルアルコールに滴下し、析出物を吸引ろ過にて回収した後、60℃で減圧乾燥してポリマー2を回収した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは5900であった。ポリマー2中に存在する構造を下記式に示す。
【0145】
【化28】
【0146】
<合成例3>
2-ビニルナフタレン10.00g(ポリマー3全体に対するモル比40%)、及び3-ヒドロキシ-2-アダマンチルメタクリレート(ポリマー3全体に対するモル比60%)23.00gをフラスコ内のシクロヘキサノン97gに溶解させた後、フラスコ内を窒素で置換し60℃まで昇温した。昇温後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル1.60gをシクロヘキサのン41.00gに溶解させた溶液を滴下し、約24時間撹拌した。この反応液をメタノールに滴下し、析出物を吸引ろ過にて回収した後、60℃で減圧乾燥してポリマー3を回収した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは16000であった。ポリマー3中に存在する構造を下記式に示す。
【0147】
【化29】
【0148】
<合成例4>
2-ビニルナフタレン10.00g(ポリマー4全体に対するモル比40%)、9-アントラセンメチルメタクリレート(ポリマー4全体に対するモル比40%)17.90g、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート(ポリマー4全体に対するモル比20%)4.67gをフラスコ内のシクロヘキサノン95gに溶解させた後、フラスコ内を窒素で置換し60℃まで昇温した。昇温後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル1.60gをシクロヘキサのン41.00gに溶解させた溶液を滴下し、約24時間撹拌した。この反応液をメタノールに滴下し、析出物を吸引ろ過にて回収した後、60℃で減圧乾燥してポリマー4を回収した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8000であった。ポリマー4中に存在する構造を下記式に示す。
【0149】
【化30】
【0150】
<合成例5>
2-ビニルナフタレン2.94g(ポリマー5全体に対するモル比50%)、ヒドロキシエチルメタクリレート(ポリマー5全体に対するモル比25%)1.24g、N-シクロヘキシルマレイミド(ポリマー5全体に対するモル比25%)1.71g、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.12gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート24.00gに溶解させた。反応容器を窒素置換後、この溶液を加熱し、140℃で約4時間撹拌した。この反応液をイソプロピルアルコールに滴下し、析出物を吸引ろ過にて回収した後、60℃で減圧乾燥してポリマー5を回収した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは16300であった。ポリマー5中に存在する構造を下記式に示す。
【0151】
【化31】
【0152】
<合成例6>
2-ビニルナフタレン2.86g(ポリマー6全体に対するモル比50%)、N-シクロヘキシルマレイミド(ポリマー6全体に対するモル比25%)1.68g、N-ヒドロキシエチルマレイミド(ポリマー6全体に対するモル比25%)1.32g、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.12gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート24.00gに溶解させた。反応容器を窒素置換後、この溶液を加熱し、140℃で約4時間撹拌した。この反応液をイソプロピルアルコールに滴下し、析出物を吸引ろ過にて回収した後、60℃で減圧乾燥してポリマー6を回収した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは11900であった。ポリマー6中に存在する構造を下記式に示す。
【0153】
【化32】
【0154】
<合成例7>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート167.27gに、N-フェニル-1-ナフチルアミン50.00g(ポリマー7全体に対するモル比67%)、N-シクロヘキシルマレイミド20.43g(ポリマー7全体に対するモル比33%)、メタンスルホン酸21.91g、及びヒドロキノン1.26gをフラスコに添加した後、140℃で24時間撹拌した。この反応液をメタノールに滴下し、析出物を吸引ろ過にて回収した後、60℃で減圧乾燥してポリマー7を回収した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2000であった。ポリマー7中に存在する構造を下記式に示す。
【0155】
【化33】
【0156】
<合成例8>
プロピレングリコールモノメチルエーテル54.91gに、カルバゾール15.00g(ポリマー8全体に対するモル比67%)、N-シクロヘキシルマレイミド8.04g(ポリマー8全体に対するモル比33%)、メタンスルホン酸8.62g、及びヒドロキノン0.49gをフラスコに添加した後、140℃で23時間撹拌した。この反応液をメタノールに滴下し、析出物を吸引ろ過にて回収した後、60℃で減圧乾燥してポリマー8を回収した。GPCによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは6000であった。ポリマー8中に存在する構造を下記式に示す。
【0157】
【化34】
【0158】
<比較合成例1>
モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業株式会社製)100.00g、5,5-ジエチルバルビツール酸(立山化成株式会社製)66.4g、及びベンジルトリエチルアンモニウムクロリド4.1gを、反応容器中のプロピレングリコールモノメチルエーテル682.00gに加え溶解した。反応容器を窒素置換後、130℃で24時間反応させ比較ポリマー1を含む溶液を得た。GPC分析を行ったところ、得られた比較ポリマー1は標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量6,800、分散度は4.8であった。比較ポリマー1中に存在する構造を下記式に示す。
【0159】
【化35】
【0160】
(レジスト下層膜形成用組成物の調製)
各成分を表1に示す割合で混合し、孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いて濾過することによって、調製例1~8のレジスト下層膜形成用組成物及び比較調製例1のレジスト下層膜形成用組成物をそれぞれ調製した。
【0161】
表1中の略号は以下の通りである。
PyPSA:ピリジニウム-p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0162】
PGME-PL:Imidazo[4,5-d]imidazole-2,5(1H,3H)-dione,tetrahydro-1,3,4,6-tetrakis[(2-methoxy-1-methylethoxy)methyl]-(下記構造式)
【化36】
【0163】
TMOM-BP:3,3’,5,5’-テトラキス(メトキシメチル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール(商品名:TMOM-BP、本州化学工業(株)製、下位構造式)
【化37】
【0164】
【表1】
【0165】
(レジスト下層膜の調製)
<実施例1~8及び比較例1>
調製例1~8及び比較調製例1のレジスト下層膜形成用組成物の各々を、スピナーを用いてシリコンウェハー上にそれぞれ塗布した。そのシリコンウェハーを、ホットプレート上で205~250℃、60秒間ベークし、膜厚5nmの実施例1~8及び比較例1のレジスト下層膜を得た。膜厚は、エリプソ式膜厚測定装置RE-3100((株)SCREEN)を用いて測定した。
なお、調製例1のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、実施例1のレジスト下層膜を得た。
調製例2のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、実施例2のレジスト下層膜を得た。
調製例3のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、実施例3のレジスト下層膜を得た。
調製例4のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、実施例4のレジスト下層膜を得た。
調製例5のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、実施例5のレジスト下層膜を得た。
調製例6のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、実施例6のレジスト下層膜を得た。
調製例7のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、実施例7のレジスト下層膜を得た。
調製例8のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、実施例8のレジスト下層膜を得た。
比較調製例1のレジスト下層膜形成用組成物を用いて、比較例1のレジスト下層膜を得た。
【0166】
(レジストパターニング評価)
<電子線描画装置によるレジストパターンの形成試験>
シリコンウェハー上に形成された実施例1~8及び比較例1の各レジスト下層膜上に、EUV用ポジ型レジスト溶液をスピンコートし、130℃で60秒間加熱し、膜厚が35nmのEUVレジスト膜を形成した。そのレジスト膜に対し、電子線描画装置(ELS-G130)を用い、所定の条件で露光した。露光後、90℃で60秒間ベーク(PEB)を行い、クーリングプレート上で室温まで冷却し、フォトレジスト用現像液として2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(東京応化工業(株)製、商品名NMD-3)を用いて30秒間パドル現像を行った。ラインサイズが16nm~28nmのレジストパターンを形成した。レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、CG4100)を用いた。
【0167】
このようにして得られたフォトレジストパターンについて、パターン上部からの観察を行い、22nmライン/44nmピッチ(ラインアンドスペース(L/S=1/1)を形成した電荷量を最適照射エネルギーとし、その時の照射エネルギー(μC/cm)、及びパターン形状の粗さを示す値であるLWRを確認した。LWRは、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、CG4100)により、ラインの長手方向にラインポジションを400箇所測定し、その測定結果から求めた標準偏差(σ)の3倍値(3σ)(単位:nm)を示す。LWRの値が小さいほど、良好なパターンを形成できるパターンが形成できていることを示している。結果を表2に示す。
【0168】
比較例2として、レジスト下層膜を形成せず、シリコン基板にHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理を施した基板を用いた場合も同様に試験を行った。結果を表2に示す。
【0169】
【表2】
【0170】
実施例1~8では、比較例1及び2と比較してLWRの向上が確認された。なお、膜厚20nm以上のレジスト下層膜を用いた場合、レジストパターン形成後のドライエッチング工程において、レジスト膜厚は薄いため、下層膜をエッチングする過程でレジストパターンがダメージを受けてレジスト膜厚減少やトップラウンディング形状になるなどの形状不良を起こし、実際の基板加工の際に目的の線幅のパターン形成が困難となる。