(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】共重合体
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20240925BHJP
D06M 15/347 20060101ALI20240925BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20240925BHJP
C08F 224/00 20060101ALI20240925BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
C09K3/18 101
D06M15/347
D06M15/263
C08F224/00 ZBP
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2022561900
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2021040963
(87)【国際公開番号】W WO2022102568
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2020188186
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】芥 諒
(72)【発明者】
【氏名】東 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】川部 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】麻生 隆彬
(72)【発明者】
【氏名】宇山 浩
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-065404(JP,A)
【文献】特開平06-322104(JP,A)
【文献】特開平07-033824(JP,A)
【文献】特開2005-325262(JP,A)
【文献】特開平02-214719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/18
C08F 224/00
C08F 220/00
D06M 15/347
D06M 15/263
C08L 101/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体を含む、撥水撥油剤組成物であって、
共重合体は
、
疎水性単量体から誘導された繰り返し単位、及び、
式:
[式中、Xは炭素数1~10の脂肪族基であり、Zは水素原子
又は炭素数1~6の炭化水素
基である。]
で表される化合物である環状ビニリデン単量体から誘導された繰り返し単位を有し、
共重合体は非フッ素共重合体であ
り、
疎水性単量体が式:
CH
2
=C(-R
12
)-C(=O)-Y
11
-(R
11
)
k
[式中、R
11
は、炭素数4~40の脂肪族炭化水素基であり、
R
12
は、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y
11
は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C
6
H
4
-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)
2
-及び-NR’-(R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で示される化合物であり、
共重合体が、繰り返し単位の合計100モル部に対して、疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を10モル部以上含み、環状ビニリデン単量体から誘導された繰り返し単位を10モル部以上含む、撥水撥油剤組成物。
【請求項2】
主鎖骨格中にエステル結合を有する、請求項1に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項3】
Xは置換基を有してよいアルキレン基又はエーテル性酸素によって分断されていてよいアルキレン基である、請求項1又は2に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項4】
R
11
が炭素数12以上のアルキル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項5】
共重合体が、繰り返し単位の合計100モル部に対して、疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を10モル部以上60モル部以下含み、環状ビニリデン単量体から誘導された繰り返し単位を20モル部以上90モル部以下含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項6】
繊維製品用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物。
【請求項7】
疎水性単量体、及び
式:
[式中、Xは炭素数1~10の脂肪族基であり、Zは水素原子
又は炭素数1~6の炭化水素
基である。]
で表される環状ビニリデン単量体、
を共重合する工程を含む、主鎖にエステル結合を有する
非フッ素共重合体である共重合体を含む撥水撥油剤組成物の製造方法
であって、
疎水性単量体が式:
CH
2
=C(-R
12
)-C(=O)-Y
11
-(R
11
)
k
[式中、R
11
は、炭素数4~40の脂肪族炭化水素基であり、
R
12
は、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y
11
は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C
6
H
4
-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)
2
-及び-NR’-(R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で示される化合物であり、
共重合体が、繰り返し単位の合計100モル部に対して、疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を10モル部以上含み、環状ビニリデン単量体から誘導された繰り返し単位を10モル部以上含む、製造方法。
【請求項8】
共重合がラジカル共重合である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の撥水撥油剤組成物における共重合体が付着した繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、共重合体に関し、特に主鎖にエステル結合を有する共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種基材に撥液性(撥水性及び/又は撥油性)を付与することができる撥水剤又は撥油剤の開発が進められている。
含フッ素重合体を用いることで撥液性を付与し得ることが知られているが、非フッ素重合体を用いる場合、撥液性を付与することは困難である。また、持続可能な社会の実現のために、生分解性を有する材料の開発が進められている。
【0003】
特許文献1は、各種紙基材に対し撥水性及び撥油性を付与できる特定のポリオルガノシロキサンを含有するシリコーン組成物を開示している。
【0004】
特許文献2は、塗膜の撥水撥油性を向上し得るポリエステルとして、パーフルオロアルキル基を有するラジカル重合性含フッ素単量体と、環状ビニリデン単量体とを重合させて得られる含フッ素ポリエステルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、特定のオルガノシロキサンを含む組成物を用いることで、緩やかな生分解性が実現されることが記載されているが、オルガノシロキサンを用いることから、重合体の分子設計自由度が低いという問題がある。
【0007】
本開示は、撥液性を有し、かつ、生分解性も有するビニル系共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示における一実施形態は、次のとおりである。
[項1]
1つのエチレン性不飽和二重結合及び炭素数3~40の炭化水素基を有する疎水性単量体から誘導された繰り返し単位、及び、
式:
[式中、Xは炭素数1~10の脂肪族基であり、Zは水素原子、炭素数1~6の炭化水素基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種である。]
で表される化合物である環状ビニリデン単量体から誘導された繰り返し単位を有する、共重合体。
[項2]
主鎖骨格中にエステル結合を有する、項1に記載の共重合体。
[項3]
Xは置換基を有してよいアルキレン基又はエーテル性酸素によって分断されていてよいアルキレン基である、請求項1又は2に記載の共重合体。
[項4]
疎水性単量体が式:
CH
2=C(-R
12)-C(=O)-Y
11-(R
11)
k
[式中、R
11は、炭素数3~40の脂肪族炭化水素基であり、
R
12は、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y
11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C
6H
4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)
2-及び-NR’-(R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で示される化合物である、項1~3のいずれか一項に記載の共重合体。
[項5]
繰り返し単位の合計100モル部に対して、疎水性単量体から誘導された繰り返し単位を10モル部以上60モル部以下含み、環状ビニリデン単量体から誘導された繰り返し単位を20モル部以上90モル部以下含む、項1~4のいずれか一項に記載の共重合体。
[項6]
非フッ素共重合体である、項1~5のいずれか一項に記載の共重合体。
[項7]
1つのエチレン性不飽和二重結合及び炭素数3~40の炭化水素基を有する疎水性単量体、及び
式:
[式中、Xは炭素数1~10の脂肪族基であり、Zは水素原子、炭素数1~6の炭化水素基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種である。]
で表される環状ビニリデン単量体、
を共重合する工程を含む、主鎖にエステル結合を有する共重合体の製造方法。
[項8]
共重合がラジカル共重合である、項7に記載の製造方法。
[項9]
項1~6のいずれか一項に記載の共重合体を含む、撥水撥油剤組成物。
[項10]
繊維製品用である、項9に記載の撥水撥油剤組成物。
[項11]
請求項1~6のいずれか一項に記載の共重合体が付着した繊維製品
【発明の効果】
【0009】
本開示における共重合体を用いることで、撥液性(撥水性及び/又は撥油性)を基材に付与することが可能である。また、本開示における共重合体は生分解性を有するため、環境負荷を極めて低減させることが可能である。さらに、本開示における共重合はビニル系単量体の共重合体であるため、多様なビニル系単量体を共重合させることができ、分子設計自由度が高い。本開示における共重合体は、含有するフッ素含有基の炭素数が6以下(例えば炭素数6以下のパーフルオロアルキル基)の場合であっても、あるいは非フッ素共重合体であっても、撥液性を有し得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<共重合体>
本開示における共重合体は、1つのエチレン性不飽和二重結合及び炭素数3~40の炭化水素基を有する疎水性単量体から誘導された繰り返し単位と、環状ビニリデン単量体から誘導された繰り返し単位とを有する。
【0011】
本開示における共重合体は、主鎖骨格中にエステル結合を有する。主鎖骨格中にエステル結合を有することで、生分解性が発現し得る。
【0012】
[疎水性単量体]
疎水性単量体は、1つのエチレン性不飽和二重結合及び炭素数3~40の炭化水素基を有する。
【0013】
疎水性単量体は少なくとも1つの炭素数3~40の炭化水素基を有していてよい。当該炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。当該炭化水素基は直鎖状又は分岐鎖状であってよい。当該炭化水素基の炭素数は4以上、6以上、8以上、10以上、11以上、12以上、14以上、又は16以上であってよく、好ましくは6以上である。当該炭化水素基の炭素数は40以下、30以下、25以下、22以下、又は20以下であってよく、好ましくは30以下である。
【0014】
疎水性単量体は式:
CH2=C(-R12)-C(=O)-Y11-(R11)k
[式中、R11は、炭素数3~40の脂肪族炭化水素基であり、
R12は、水素原子、一価の有機基又はハロゲン原子であり、
Y11は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
kは1~3である。]
で示される単量体であってよい。
【0015】
R11は、分岐状又は長鎖(もしくは長鎖の直鎖状)の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。-CH3基は-CH2-に比べ表面自由エネルギーが低く撥液性を示しやすい。このため分岐が多く、-CH3基が多い構造が好ましい。また、一方で一定の長さの長鎖アルキル基はその結晶性由来の高い撥液性を示す。よって、分岐状の炭化水素基(例えば、分岐状のアルキル基)、特にt-ブチル基やイソプロピル基、多分岐構造の基、あるいは長鎖の炭化水素基(もしくは長鎖の直鎖状炭化水素基)、例えばアルキル基であってよい。R11の炭素数は、4以上、6以上、8以上、10以上、11以上、12以上、14以上、16以上、18以上であってよく、好ましくは12以上である。R11の炭素数は40以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下であってよい。
【0016】
kは1、2又は3である。Y11が4価の炭素数1の炭化水素基を有する場合等において、k=3である。Y11が3価の炭素数1の炭化水素基を有する場合等において、k=2である。Y11が3価及び4価の炭素数1の炭化水素基を有しない場合(例えば、Y11が2価の炭素数1の炭化水素基(-CH2-)を(例えば1~6個)有する場合)に、k=1である。
【0017】
R12は、水素原子、メチル基、ハロゲン原子、置換又は非置換のベンジル基、置換又は非置換のフェニル基であってよい。あるいは、-CF3基であってよい。R12の例は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子、-CF3基、シアノ基である。R12は、水素原子、メチル基、塩素原子であることが好ましい。R12はメチル基であることがより好ましい。R12がメチル基であることにより、より高い撥液性が得られる。R12は、特に反応性の観点から、水素原子であってよい。
【0018】
Y11は、2価の基であることが好ましい。2~4価の炭素数1の炭化水素基の例は、-CH2-、枝分かれ構造を有する-CH=及び枝分かれ構造を有する-C≡である。
【0019】
Y11は、-Y’-、-Y’-Y’-、-Y’-C(=O)-、-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-X’-、-Y’-X’-Y’-、-Y’-X’-Y’-C(=O)-、-Y’-X’-C(=O)-Y’-、-Y’-X’-Y’-C(=O)-Y’-、又は-Y’-X’-Y’-X’-
[式中、Y’はそれぞれ独立して、直接結合、-O-、-NR’-(R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基)又は-S(=O)2-であり、
X’は-(CH2)m-(mは1~10、例えば1~5の整数である)、炭素数1~10、例えば1~5の不飽和結合を有する直鎖状の炭化水素基、炭素数1~20、例えば1~10、又は1~5の枝分かれ構造を有する炭化水素基、又は-(CH2)l-C6H4-(CH2)l-(lはそれぞれ独立して0~5の整数であり、-C6H4-はフェニレン基である)である。]
であってよい。Y11は2価の炭化水素基のみでないことが好ましい。
【0020】
Y11の具体例は、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-NH-C(=O)-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C6H4-、-NH-C6H4-、-O-(CH2)m-O-、-NH-(CH2)m-NH-、-O-(CH2)m-NH-、-NH-(CH2)m-O-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-、-O-(CH2)m-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-、-NH-(CH2)m-C(=O)-O-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-O-(CH2)m-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-O-C6H4-、-O-(CH2)m-NH-S(=O)2-、-O-(CH2)m-S(=O)2-NH-、-NH-(CH2)m-NH-S(=O)2-、-NH-(CH2)m-S(=O)2-NH-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-O-C6H4-、又は-NH-(CH2)m-NH-C6H4-である[式中、mは1~5の整数、特に2又は4である。]。
【0021】
Y11は、-O-、-NH-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-S(=O)2-又は-O-(CH2)m-S(=O)2-NH-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-
[式中、mは1~10(例えば1~5)の整数、特に2、4、6、8又は10である。]
であることが好ましい。Y11は、-O-、-NH-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、又は-O-(CH2)m-NH-C(=O)-、-O-(CH2)m-NH-S(=O)2-又は-O-(CH2)m-S(=O)2-NH-、特に-O-、-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-であることがより好ましい。
【0022】
疎水性単量体は、反応性基又は親水性基を有しないことが好ましい。反応性基の例は、エポキシ基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ブロックイソシアネート基である。親水性基の例は、ヒドロキシル基、ポリアルキレンオキシド基、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸、スルホン酸、リン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、塩素又は臭素、ヨウ素イオンが対アニオンであるアンモニウム塩基、その他イオン性基等である。
【0023】
疎水性単量体はその25℃水溶解度が10g/l以下、5g/l以下、3g/l以下、1g/l以下、0.5g/l以下、又は0.1g/l以下であってよく、好ましくは3g/l以下である。疎水性単量体のホモポリマーはその25℃水溶解度が10g/l以下、5g/l以下、3g/l以下、1g/l以下、0.5g/l以下、又は0.1g/l以下であってよく、好ましくは3g/l以下である。
【0024】
疎水性単量体のホモポリマーの水接触角は75°以上、80°以上、85°以上、90°以上、95°以上100°以上、101°以上、103°以上、105°以上、110°以上、115°以上、又は120°以上であってよく、好ましくは90°以上、又は100°以上である。疎水性単量体のホモポリマーの水接触角は160°以下、150°以下、140°以下、130°以下、125°以下、又は110°以下であってよい。水接触角が上記範囲にあることが共重合体の撥液性、特に撥水性の観点等から好ましい。ホモポリマーの水接触角はホモポリマーの固形分濃度1.0%のクロロホルム溶液をシリコンウエハ基板上にスピンコートし、塗膜上に、2μLの水を滴下し、着滴1秒後の接触角を測定して得られた値であってよい。
【0025】
疎水性単量体は炭素数1以上、3以上、6以上、又は8以上かつ炭素数20以下、12以下、10以下、8以下、6以下又は3以下のフルオロアルキル基(例えばパーフルオロアルキル基)を有してもよく、有しなくてよい。疎水性単量体は、非フッ素単量体であってよい。
【0026】
疎水性単量体の具体例は、次のとおりである。下記の化学式の化合物は、α位が水素原子であるアクリル化合物であるが、α位がメチル基であるメタクリル化合物及びα位が塩素原子であるαクロロアクリル化合物であってよい。またスチレン誘導体においても、下記の化学式の化合物はα位が水素原子であるが、具体例は、α位がメチル基であるαメチルスチレン化合物及びα位が塩素原子であるαクロロスチレン化合物であってよく、α位が水素原子であるスチレン化合物が好ましい。
CH
2=CHC(=O)OC
18H
37
CH
2=CHC(=O)OC
nH
2n+1
CH
2=CHC(=O)NHC
nH
2n+1
CH
2=CHC(=O)OC
2H
4OC(=O)NHC
18H
37
CH
2=CHC(=O)OC
2H
4NHC(=O)OC
18H
37
CH
2=CHC(=O)OC
mH
2mNHC(=O)C
nH
2n+1
CH
2=CHC(=O)OC
2H
4OC(=O)NHC
nH
2n+1
CH
2=CHC(=O)OC
2H
4NHC(=O)OC
nH
2n+1
CH
2=CHC(=O)OC
2H
4NHC(=O)NHC
nH
2n+1
CH
2=CHC(=O)OC
mH
2mNHC(=O)NHC
nH
2n+1
CH
2=CHC(=O)OC
4H
8OC(=O)NHC
nH
2n+1
CH
2=CHC(=O)NHC
mH
2mOC(=O)NHC
nH
2n+1
CH
2=CHC(=O)OC
mH
2mNHSO
2C
nH
2n+1
CH
2=CHC(=O)OC
mH
2mSO
2NHC
nH
2n+1
[上記式中、nは3~40の数であり、mは1~5の数である。]
【0027】
疎水性単量体の好ましい具体例としては、ステアリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ステアリルαクロロアクリレート、イコシルαクロロアクリレート、ベヘニルαクロロアクリレート、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、2-ステアラミドエチルアクリレート、CH2=CHC(=O)OC2H4NHSO2C18H37、t-ブチルスチレン、2,4-ジt-ブチルスチレン等が挙げられる。
【0028】
[環状ビニリデン単量体]
環状ビニリデン単量体は
式:
[式中、Xは炭素数1~10の脂肪族基であり、Zは水素原子、炭素数1~6の炭化水素基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種である。]
で表される化合物である。
【0029】
環を構成する原子の数は3以上、又は4以上であってよく、10以下、9以下、8以下、7以下、又は6以下であってよい。
【0030】
Xは炭素数1~10の脂肪族基である。Xは飽和又は不飽和であってよく、好ましくは飽和である。Xは直鎖状又は分岐鎖状であってよく、好ましくは直鎖状である。
【0031】
Xの炭素数は2以上、3以上、又は4以上であってよく、10以下、9以下、8以下、7以下、又は6以下であってよい。
【0032】
Xは、水酸基、ハロゲン原子、エステル結合、アミド結合等によってその少なくとも一部が置換されていてもよいし、エーテル性酸素によって分断されていてもよい。Xは置換基を有してもよいアルキレン基又はエーテル性酸素によって分断されていてもよいアルキレン基であることが好ましい。
【0033】
Zは水素原子、炭素数1~6の炭化水素基及びハロゲン原子からなる群から選択される少なくとも一種である。ここで、炭素数1~6の炭化水素基は脂肪族基、特にアルキル基であることが好ましく、その炭素数は1~3であってよく、例えば1又は2である。ハロゲン原子は、臭素原子、塩素原子、又はフッ素原子であってよく、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。環状ビニリデン単量体における2個の単量体のうち、少なくとも1つが水素原子又はメチル基(特に水素原子)であってもよい。
【0034】
環状ビニリデン単量体は炭素数1以上、3以上、6以上、又は8以上かつ炭素数20以下、12以下、10以下、8以下、6以下又は3以下のフルオロアルキル基(例えばパーフルオロアルキル基)を有してもよく、有しなくてもよい。環状ビニリデン単量体は、非フッ素単量体であってよい。
【0035】
環状ビニリデン単量体の具体例としては、2-メチレン-1,3-ジオキソラン、2-メチレン-1,3-ジオキサン、2-メチレン-1,3-ジオキセパン等が挙げられる。
【0036】
[その他単量体]
本開示における重合体は疎水性単量体及び環状ビニリデン単量体以外のその他単量体から誘導された繰り返し単位を有していてよい。その他単量体の種類は特に限定されないが、反応性/親水性単量体、架橋性単量体、環状基含有単量体、シロキサン基含有単量体、ハロゲン化オレフィン単量体、含フッ素単量体等が挙げられる。適切な疎水性単量体の選定により、優れた撥液性を示し得る。その他単量体は炭素数1以上、3以上、6以上、又は8以上かつ炭素数20以下、12以下、10以下、8以下、6以下又は3以下のフルオロアルキル基(例えばパーフルオロアルキル基)を有してもよく、有しなくてもよい。その他単量体は、非フッ素単量体であってよい。
【0037】
(反応性/親水性単量体)
反応性/親水性単量体は、1つのエチレン性不飽和二重結合と、少なくとも1つの反応性基及び/又は親水性基とを有する。反応性基の例は、エポキシ基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ブロックイソシアネート基である。親水性基の例は、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸、スルホン酸、リン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、塩素又は臭素、ヨウ素イオンが対アニオンであるアンモニウム塩基である。反応性/親水性単量体は、非フッ素単量体であってよい。
【0038】
反応性/親水性単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、2-(トリメチルシリルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(tert-ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物、及びテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
(架橋性単量体)
架橋性単量体は、少なくとも2つのエチレン性不飽和二重結合を有する。
【0040】
反応性/親水性単量体は、非フッ素単量体であってよい。
【0041】
架橋性単量体の具体例は、ジビニルベンゼン、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチエレングルコールジ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、メチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシ-1,3-アダマンタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートである。
【0042】
(環状炭化水素基含有単量体)
環状炭化水素基含有単量体は、1つのエチレン性不飽和二重結合と、環状炭化水素基とを有する単量体である。環状炭化水素基は、飽和又は不飽和であり、飽和であることが好ましい。環状炭化水素基は、単環基、多環基、橋かけ環基であってよく、橋架け環基が好ましい。環状基は鎖状基(例えば、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基)を有していてよい。
【0043】
環状炭化水素基の炭素数は4以上、6以上、又は8以上であってよく、30以下、26以下、22以下、18以下、又は14以下であってよい。
【0044】
環状炭化水素基の具体例としては、シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、アダマンチル基、2-メチル-2-アダマンチル基、2-エチル-2-アダマンチル基、ボルニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、2-t-ブチルフェニル基、これらの基から1以上の水素原子を除いた残基(例えば、シクロへキシレン基、アダマンチレン基、フェニレン基、ナフチレン基等)及びこれらの置換体である基等が挙げられる。
【0045】
環状炭化水素基含有単量体は非フッ素単量体であってよい。
【0046】
(ハロゲン化オレフィン単量体)
ハロゲン化オレフィン単量体の例としては、フッ化ビニル、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル等のハロゲン化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデンが挙げられる。
【0047】
ハロゲン化オレフィン単量体は非フッ素単量体であってよい。
【0048】
(含フッ素単量体)
含フッ素単量体は、1つのエチレン性不飽和二重結合と、フルオロアルキル基(例えば炭素数1~20、1~12、1~6又は1~3のパーフルオロアルキル基)とを有する単量体であってよい。
【0049】
含フッ素単量体は式:
CH2=C(-R22)-C(=O)-Y21-(Rf)l
[式中、Rfは、炭素数1~20のフルオロアルキル基であり、
R22は、水素原子、一価の有機基(例えばメチル基)又はハロゲン原子(例えば塩素)であり、
Y21は、直接結合、2~4価の炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-及び-NR’-(R’は、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基)から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される2~4価の基であり、
lは1~3、好ましくは1である。]
で示される単量体であってよい。
【0050】
含フッ素単量体の具体例は次のとおりである。
CH2=CHC(=O)OCmH2mC2F5
CH2=CHC(=O)OCH2C2F5
CH2=CHC(=O)OCH2CH2C4F9
CH2=CHC(=O)OCH2CH2C6F13
[上記式中、mは1~20である。]
【0051】
(その他)
上記以外のその他単量体の例には、例えば、エチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルキルエーテル、及びシロキサン基含有単量体等が含まれる。
【0052】
[共重合体の組成等]
共重合体において、疎水性単量体から誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、5モル部以上、10モル部以上、15モル部以上、20モル部以上、25モル部以上、又は30モル部以上であってよく、好ましくは10モル部以上である。共重合体において、疎水性単量体から誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、70モル部以下、60モル部以下、50モル部以下、又は40モル部以下であってよく、好ましくは60モル部以下である。
【0053】
共重合体において、環状ビニリデン単量体から誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、10モル部以上、20モル部以上、30モル部以上、40モル部以上、50モル部以上、又は60モル部以上であってよく、好ましくは20モル部以上である。共重合体において、環状ビニリデン単量体から誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、95モル部以下、90モル部以下、85モル部以下、75モル部以下、又は70モル部以下であってよく、好ましくは90モル部以下である。
【0054】
共重合体において、その他単量体から誘導された繰り返し単位の合計は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、0モル部以上、0.3モル部以上、1モル部以上、5モル部以上、10モル部以上、又は20モル部以上、30モル部以上であってよい。共重合体において、その他単量体から誘導された繰り返し単位の合計は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、40モル部以下、30モル部以下、20モル部以下、10モル部以下、又は5モル部以下であってよく、好ましくは30モル部以下である。
【0055】
共重合体において、その他単量体が複数存在する場合、その他単量体のそれぞれから誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、0モル部以上、0.1モル部以上、1モル部以上、5モル部以上、10モル部以上、20モル部以上であってよい。共重合体において、その他単量体のそれぞれから誘導された繰り返し単位は、繰り返し単位の合計100モル部に対して、35モル部以下、25モル部以下、15モル部以下、10モル部以下、5モル部以下、又は3モル部以下であってよく、好ましくは25モル部以下である。
【0056】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は1000以上、3000以上、5000以上、又は10000以上であってよい。共重合体の重量平均分子量(Mw)は5000000以下、3000000以下、500000以下、300000以下、100000以下、又は50000以下であってよい。分子量分散度(Mw/Mn)は、1.0以上、1.2以上、1.5以上、2.0以上、3.0以上であってよい。分子量分散度(Mw/Mn)は、7.5以下、5.0以下、4.0以下、3.0以下、又は2.0以下であってよい。共重合体の分子量は、一般に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定する。
【0057】
共重合体は炭素数1以上、3以上、6以上、又は8以上かつ炭素数20以下、12以下、10以下、8以下、6以下又は3以下のフルオロアルキル基(例えばパーフルオロアルキル基)を有してもよく、有しなくてよい。フルオロアルキル基はパーフルオロアルキル基であってよい。フルオロアルキル基の例は、-CF2CF3、-CF2CF2CF3、-CF(CF3)2、-CF2CF2CF2CF3、-CF2CF(CF3)2、-C(CF3)3、-(CF2)4CF3、-(CF2)2CF(CF3)2、-CF2C(CF3)3、-CF(CF3)CF2CF2CF3、-(CF2)5CF3、-(CF2)3CF(CF3)2、-C(CF3)2CH3、-C(CF3)2H、-CF2CF2H、-CF2CF2CF2CF2H、-CF2CF2CF2CF2CF2CF2H等である。共重合体は非フッ素重合体であってもよい。
【0058】
<共重合体の製造方法>
【0059】
共重合体を製造するための重合方法として、公知の方法を用いることができ、例えば乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等が用いられる。重合の種類としては、本開示の共重合体が得られれば特に限定されず、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等が挙げられるが、ラジカル重合が好ましい。ラジカル重合においては、環状ビニリデン単量体の環の一部を構成する2個の酸素原子がビニリデン基に直接結合しているために、共重合時にラジカルの転移によりエステル基が形成される。エステル基が形成されることにより、式:
-(-CZ2-C(=O)-O-X-)-
で示される構造の繰り返し単位を主鎖骨格中に有する共重合体が得られる。
【0060】
共重合体の製造方法は限定されない。例えば、界面活性剤あるいは分散剤の存在下又は不存在下で、単量体を水性媒体中で重合することによって、共重合を製造してよい。あるいは、溶液重合により重合体を製造した後に、界面活性剤及び水の添加及び溶剤の除去を行って、共重合体を含む水分散体を得ることができる。あるいは、溶媒非存在下で単量体を重合する塊状重合により共重合体を製造する方法を用いることもできる。
【0061】
界面活性剤を用いない乳化重合においては、水性媒体中において単量体を低濃度(例えば、単量体濃度1~30重量%、特に1~15重量%)で重合させることが好ましい。
【0062】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶媒に溶解させ、窒素置換後、30~120℃の範囲で1~10時間、加熱撹拌する方法が採用されてよい。重合開始剤の例としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。重合開始剤は単量体100モル部に対して、0.01~20モル部、例えば0.01~10モル部の範囲で用いられてよい。
【0063】
有機溶媒は、単量体に不活性でこれらを溶解又は均一に分散するものであり、例えば、エステル(例えば、炭素数2~30のエステル、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、炭素数2~30のケトン、具体的には、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン)、アルコール(例えば、炭素数1~30のアルコール、具体的には、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール)であってよい。有機溶媒の具体例としては、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン等が挙げられる。有機溶媒は単量体と有機溶媒の合計を100重量部とすると、そのうち50~99.5重量部、例えば70~99重量部の範囲で用いられてよい。
【0064】
乳化重合では、重合開始剤及び界面活性剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、30~80℃の範囲で1~10時間、撹拌して重合させる方法が採用されてよい。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t-ブチルパーベンゾエート、1-ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3-カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン-二塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ニ塩酸塩、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性のものやアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の油溶性のものが用いられる。重合開始剤は単量体100モル部に対して、0.01~10モル部の範囲で用いられる。必要に応じて、ロンガリット、アスコルビン酸、酒石酸、二亜硫酸ナトリウム、イソアスコルビン酸、硫酸第一鉄等の還元剤を併用してもよい。
【0065】
界面活性剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種界面活性剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5~20重量部の範囲で用いられる。アニオン性及び/又はノニオン性及び/又はカチオン性の界面活性剤を使用することが好ましい。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶媒を添加することも好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性及び共重合性を向上させることが可能である。
【0066】
水溶性有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノール、メタノール等が挙げられ、水100重量部に対して、0.1~50重量部、例えば1~40重量部の範囲で用いてよい。
【0067】
重合においては、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤の使用量に応じて、重合体の分子量を変化させることができる。連鎖移動剤の例は、ラウリルメルカプタン、チオグリコール、チオグリセロール等のメルカプタン基含有化合物(特に、(例えば炭素数1~30の)アルキルメルカプタン)、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の無機塩等である。連鎖移動剤の使用量は、単量体の総量100重量部に対して、0.01~10重量部、例えば0.1~5重量部の範囲で用いてよい。
【0068】
懸濁重合では、重合開始剤及び分散剤の存在下で、単量体を水中に分散させ、窒素置換後、30~80℃の範囲で1~10時間、撹拌して重合させる方法が採用されてよい。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等の油溶性のものが用いられてよい。重合開始剤は単量体100モル部に対して、0.01~10モル部の範囲で用いられてよい。
【0069】
分散剤の例としては、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子;第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ハイドロキシアパタイト等の難溶性無機化合物等が挙げられる。
【0070】
塊状重合では、液状の単量体に種々の単量体及び重合開始剤を溶解させ、窒素置換後、30~80℃の範囲で1~10時間、撹拌して重合させる方法が採用されてよい。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等の油溶性のものが用いられてよい。重合開始剤は単量体100モル部に対して、0.01~10モル部の範囲で用いられてよい。
【0071】
<撥水撥油剤組成物>
撥水撥油剤組成物は、撥水性及び/又は撥油性を有する組成物であって、共重合体、及び液状媒体を含んでなる。撥水撥油剤組成物は、さらに、界面活性剤、及びその他添加剤等から選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0072】
[共重合体]
共重合体の量は、撥水撥油剤組成物に対して0.1重量%以上、1重量%以上、3重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上であってよい。液状媒体の量は、撥水撥油剤組成物に対して75重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下であってよい。
【0073】
[液状媒体]
撥水撥油剤組成物は、液状媒体を含有し、好ましくは水性媒体を含有する。液状媒体は水の単独、有機溶媒の単独、又は水と有機溶媒の混合物であり、好ましくは水の単独又は水と有機溶媒の混合物である。
【0074】
液状媒体が水と有機溶媒の混合物の場合、有機溶媒の量は、液状媒体に対して、3重量%以上、10重量%以上、30重量%以上、50重量%以上、又は75重量%以上であってよい。有機溶媒の量は、液状媒体に対して、90重量%以下、50重量%以下、30重量%以下、又は10重量%以下であってよい。
【0075】
液状媒体の量は、撥水撥油剤組成物に対して30重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、75重量%以上、又は90重量%以上であってよい。液状媒体の量は、撥水撥油剤組成物に対して95重量%以下、75重量%以下、又は50重量%以下であってよい。
【0076】
[界面活性剤又は分散剤]
撥水撥油剤組成物は、界面活性剤(乳化剤)又は分散剤を含有しなくてもよいし、あるいは含有していてもよい。一般に、重合中の粒子の安定化、重合後の水分散体の安定化のために、重合時に界面活性剤又は分散剤を少量(例えば、単量体100重量部に対して0.01~15重量部)で添加してよく、又は、重合後に界面活性剤又は分散剤を添加してよい。界面活性剤(乳化剤)又は分散剤の例は上記で説明したとおりである。
【0077】
被処理物が繊維製品である場合において特に、撥水撥油剤組成物において、界面活性剤又は分散剤は、ノニオン性界面活性剤を含むことが好ましい。さらに、界面活性剤は、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選択された一種以上の界面活性剤を含むことが好ましい。ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤の組み合わせを用いることが好ましい。
【0078】
ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のそれぞれが一種又は二以上の組み合わせであってよい。
界面活性剤又は分散剤の量は、単量体の合計100重量部に対して15重量部以下、10重量部以下、7.5重量部以下、5重量部以下、2.5重量部以下であってよい。一般に界面活性剤又は分散剤を添加すると、水分散体の安定性や布への浸透性は向上する。
【0079】
[ブロックイソシアネート化合物]
撥水撥油剤組成物は、ブロックイソシアネート化合物を含有しなくてもよいし、あるいは含有していてもよい。ブロックイソシアネート化合物は重合前に添加されてもよいし、重合後(例えば、重合後キュアリング工程前)に添加されてもよい。
【0080】
ブロックイソシアネート化合物は、イソシアネート(A(NCO)m[式中、Aは、イソシアネート化合物からイソシアネート基が除去された後に残る基であり、mは2~8の整数である。]で表される化合物であってよい)をブロック剤(RH[式中、Rは、窒素原子または酸素原子のようなヘテロ原子によって置換されていてよい炭化水素基であってよく、Hは水素原子である]で表される化合物であってよい)と反応させることによって、製造することができる。
【0081】
A(NCO)mは、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などである。R基を形成するブロック剤の例は、オキシム、フェノール、アルコール、メルカプタン、アミド、イミド、イミダゾール、尿素、アミン、イミン、ピラゾールおよび活性メチレン化合物である。
【0082】
ブロックイソシアネート化合物としては、オキシムブロックドトルエンジイソシアネート、ブロックドヘキサメチレンジイソシアネート、ブロックドジフェニルメタンジイソシアネートなどのブロックドイソシアネートが好ましい。
【0083】
ブロックイソシアネート化合物の量は、単量体の合計100重量部(又は重合体の合計100重量部)に対して15重量部以下、10重量部以下、7.5重量部以下、5重量部以下、2.5重量部以下であってよい。
【0084】
[その他添加剤]
撥水撥油剤組成物は、その他添加剤を含有してもよい。その他添加剤の例は、バインダー樹脂、分散剤、撥水剤、撥油剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤、風合い調整剤、すべり性調整剤、帯電防止剤、親水化剤、抗菌剤、防腐剤、防虫剤、芳香剤、難燃剤、サイズ剤、紙力増強剤等である。その他添加剤の量は、単量体の合計100重量部に対して、0.1~20重量部、例えば0.1~10重量部であってよい。
【0085】
<撥水撥油剤組成物の用途>
撥水撥油剤組成物(例えば、共重合体の水分散体である撥水撥油剤組成物)は、撥水剤、撥油剤、防汚剤、汚れ脱離剤、剥離剤又は離型剤として使用できる。撥水撥油剤組成物は、外的処理剤(表面処理剤)又は内的処理剤として使用できる。
【0086】
基材が撥水撥油剤組成物により処理されることで、撥水撥油剤組成物中の共重合体が基材表面に表面コーティング構造を形成する。
【0087】
処理された被処理物(基材)は、撥液性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、共重合体のTg以上の温度、例えば100℃~200℃で加熱されることが好ましい。共重合体のTg以上の温度で処理することにより、基材表面が共重合体に被覆され、さらに側鎖の配列が誘起される。これにより、疎水性に優れた表面コーティング構造が形成され得る。
【0088】
表面コーティング構造は、撥水撥油剤組成物を従来既知の方法により被処理物(基材)に適用することで、基材表面に共重合体を付着させることで、形成することができる。通常、該撥水撥油剤組成物を有機溶媒又は水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布等のような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる。また、必要ならば、適当な架橋剤(例えば、ブロックイソシアネート化合物)と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、撥水撥油剤組成物に、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤、サイズ剤、紙力増強剤等を添加して併用することも可能である。
【0089】
撥水撥油剤組成物で処理される被処理物としては、繊維製品、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極及びガス拡散支持体)、ガラス、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属及び酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、及びプラスター等を挙げることができる。
【0090】
繊維製品としては、繊維製品としては種々の例を挙げることができるが、例えば布製品や紙製品が挙げられる。
【0091】
布製品の例としては、綿、麻、羊毛、絹等の動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維等の無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。布製品には、織物、編物及び不織布、衣料品形態の布及びカーペットが含まれるが、布とする前の状態の繊維、糸、中間繊維製品(例えば、スライバー又は粗糸等)に対して、処理がなされてもよい。
【0092】
紙製品の例としては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプ等からなる紙、紙でできた容器、紙でできた成形体等が挙げられる。紙製品の具体例としては、食品用包装用紙、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナー及び中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナー及び金属合紙、クラフト紙、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙及び中性情報用紙、モールド紙(モールド容器)等である。
【0093】
撥水撥油剤組成物は、繊維製品を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって繊維状基材(例えば、繊維製品等)に適用することができる。繊維製品が布であるときには、布を溶液に浸してよく、あるいは、布に溶液を付着又は噴霧してよい。処理は外添処理であっても、内添処理であってもよい。繊維製品が紙であるときには、紙に塗工してよく、あるいは、紙に溶液を付着又は噴霧してよく、あるいは、抄造前のパルプスラリーと混合して処理してもよい。処理は外添処理であっても、内添処理であってもよい。
【0094】
共重合体を、予め形成した繊維製品(特に紙、布等)に適用してよく、又は、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。撥水撥油剤組成物はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用又はドライクリーニング法等において繊維製品に適用してよい。
【0095】
あるいは、繊維状基材は皮革であってよい。共重合体を、皮革を疎水性及び疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、又は、皮革の仕上げの期間中に、水溶液又は水性乳化物から皮革に適用してよい。
【0096】
撥水撥油剤組成物は外部離型剤としても使用できる。例えば、基材の表面を、他の表面(該基材における他の表面、あるいは他の基材における表面)から容易に剥離することができる。
【0097】
「処理」とは、処理剤を、浸漬、噴霧、塗布等により被処理物に適用することを意味する。処理により、処理剤の有効成分である共重合体が被処理物の内部に浸透する及び/又は被処理物の表面に付着する。
【0098】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0099】
<実施例>
【0100】
以下、実施例を挙げて本開示を詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0101】
実施例及び比較例において、略号の意味は次のとおりである。
MDO:2-メチレン-1,3-ジオキセパン
StA:ステアリルアクリレート
AEA:2-ステアラミドエチルアクリレート
HD:n-ヘキサデカン
PCL:ポリカプロラクトン
【0102】
(重合体の接触角の測定方法)
重合体の接触角は、得られた重合体の固形分濃度1.0%のクロロホルム溶液をシリコンウエハ基板上にスピンコートし、静的接触角を測定した。静的接触角は、塗膜上に、2μLの水又はヘキサデカンを滴下し、着滴1秒後の接触角を測定して得られた。
【0103】
(実施例1)
窒素置換した反応容器内に表1に示す組成の原料単量体、アゾビスイソブチロニトリル2 mol% (単量体対比)、及び単量体のモル濃度が1.5 Mになるようにトルエンを添加し、65℃で14時間加熱撹拌後、メタノールに再沈殿することで重合体を得た。分子量(Mw)はポリスチレン換算で44,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。得られた重合体について、接触角測定を行って得られた結果を表1に示す。
【0104】
(実施例2)
窒素置換した反応容器内に表1に示す組成の原料単量体に2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)2 mol% (単量体対比)を添加し、20℃で20時間加熱撹拌することで重合体を得た。分子量(Mw)はポリスチレン換算で1,240,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.7であった。得られた重合体について、接触角測定を行って得られた結果を表1に示す。
【0105】
(比較例1)
富士フィルムWAKO純薬社製PCLについて、接触角測定を行って得られた結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
(土壌分解性評価)
実施例1で得られた重合体をクロロホルムに溶解してソルベントキャスト法により得られた厚さ30μmのフィルムを、土壌中、30℃で一定期間放置し、目視又は顕微鏡によりその状態を観察することにより、分解状態を評価した。30日時点で明らかなフィルムの白化が確認され、74日時点で走査電子顕微鏡観察からフィルム表面に無数の細孔が存在していることが確認され、土壌分解性を有していることが確認された。エステル結合を有することにより、フィルムの生分解性が向上したことが示唆される。