(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】液体撹拌構造、沸騰冷却装置、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240925BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20240925BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
F28D15/02 M
H01L23/46 A
H05K7/20 Q
(21)【出願番号】P 2020146404
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019188557
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 信一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 淳
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-031503(JP,A)
【文献】特開2003-318342(JP,A)
【文献】特開2016-217684(JP,A)
【文献】特開2005-277138(JP,A)
【文献】特開2008-147482(JP,A)
【文献】特開2011-044541(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0142195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
H01L 23/427
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留した容器と、
前記容器の中に設けられ、前記液体が加熱されて発生した気泡が当たることで液体内で振動して前記液体を撹拌する振動体と、
を
有し、
前記振動体は弾性変形する板材で形成され、前記容器に設けた支持部に支持されている、
液体撹拌構造。
【請求項2】
前記板材の一端が前記支持部に支持されている、
請求項1に記載の液体撹拌構造。
【請求項3】
前記板材の前記支持部から突出する長さを調整する調整機構が設けられている、
請求項2に記載の液体撹拌構造。
【請求項4】
前記振動体は、弾性体を介して前記容器に設けた支持部に支持されている、
請求項1に記載の液体撹拌構造。
【請求項5】
前記振動体と前記容器との間には、前記液体が進入する隙間が設けられている、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の液体撹拌構造。
【請求項6】
冷媒を貯留した容器と、
前記容器の中に設けられ、前記容器に接する冷却対象である被冷却体で前記冷媒を加熱して気泡を発生させ、前記気泡が当たることで冷媒内で振動して前記冷媒を撹拌する振動体と、
を
有し、
前記振動体は弾性変形する板材で形成され、前記容器に設けた支持部に支持されている、
沸騰冷却装置。
【請求項7】
前記容器は、前記冷媒を密閉状態で貯留する、
請求項6に記載の沸騰冷却装置。
【請求項8】
前記容器には、前記容器の内圧の変動を吸収する圧力変動吸収装置が設けられている、
請求項7に記載の沸騰冷却装置。
【請求項9】
前記圧力変動吸収装置は、ベローズである、
請求項8に記載の沸騰冷却装置。
【請求項10】
前記容器には、前記冷媒と容器外部との間で熱交換を可能とする熱交換部が設けられている、
請求項6~請求項9の何れか1項に記載の沸騰冷却装置。
【請求項11】
前記冷媒の沸点は、前記被冷却体の予め設定された発熱上限温度よりも低く設定されている、
請求項6~請求項10の何れか1項に記載の沸騰冷却装置。
【請求項12】
前記被冷却体は原子炉である、
請求項6~請求項11の何れか1項に記載の沸騰冷却装置。
【請求項13】
請求項6~請求項11の何れか1項に記載の沸騰冷却装置と、
被冷却体としての電子部品と、
を備えた電子機器。
【請求項14】
前記振動体は、振動により発電する発電部材である、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の液体撹拌構造。
【請求項15】
前記振動体は、振動により発電する発電部材である、
請求項6~請求項12の何れか1項に記載の沸騰冷却装置。
【請求項16】
前記振動体は、振動により発電する発電部材である、
請求項13に記載の電子機器。
【請求項17】
前記振動体の振動により発電を行う発電部材を備えている、
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の液体撹拌構造。
【請求項18】
前記振動体の振動により発電を行う発電部材を備えている、
請求項6~請求項12の何れか1項に記載の沸騰冷却装置。
【請求項19】
前記振動体の振動により発電を行う発電部材を備えている、
請求項13に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体撹拌構造、沸騰冷却装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を用いて被冷却物を冷却する沸騰冷却装置がある(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体の沸騰現象を用いた冷却装置は、液体を沸騰させて気泡を発生させることで、気泡を発生させない場合に比較して、液体の撹拌効率をある程度向上することはできるが、撹拌効率をさらに向上させることが望まれている。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、液体を効率的に撹拌可能な液体撹拌構造、沸騰冷却装置、及び電子機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の液体撹拌構造は、液体を貯留した容器と、
前記容器の中に設けられ、前記液体が加熱されて発生した気泡が当たることで液体内で振動して前記液体を撹拌する振動体と、を有し、前記振動体は弾性変形する板材で形成され、前記容器に設けた支持部に支持されている。
【0007】
請求項1に記載の液体撹拌構造では、液体が加熱されて発生した気泡が板材に当たることで板材が弾性変形して振動して液体が撹拌される。このため、気泡のみで液体を撹拌する場合と比較して、撹拌効率が向上する。
【0009】
また、請求項1に記載の液体撹拌構造では、板材が支持部により、一定の位置に支持される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体撹拌構造において、前記板材の一端が前記支持部に支持されている。
【0011】
請求項2に記載の液体撹拌装置では、板材が、支持部に片持ちで支持された状態で弾性変形して振動するので、振幅を大きくとれる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液体撹拌構造において、前記板材の前記支持部から突出する長さを調整する調整機構が設けられている。
【0013】
請求項3に記載の液体撹拌装置では、板材に気泡が当たり離れる間隔(周期)に合わせて板材が共振するように振動体の固有振動数を調整することができる。これにより、板材が大きく振動して振幅が大きくなり、撹拌効率が高まる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の液体撹拌構造において、前記振動体は、弾性体を介して前記容器に設けた支持部に支持されている。
【0015】
請求項4に記載の液体撹拌装置では、板材を弾性体で支持し、弾性体で支持された板材を振動させることで、液体を撹拌する。板材自体が弾性変形し難い場合、弾性体で支持することが有効となる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の液体撹拌構造において、前記振動体と前記容器との間には、前記液体が進入する隙間が設けられている。
【0017】
請求項5に記載の液体撹拌装置では、振動体と容器との間に隙間を設けて液体を進入させることで、該隙間の液体を沸騰させて気泡を発生させやすい。
【0018】
請求項6に記載の沸騰冷却装置は、冷媒を貯留した容器と、前記容器の中に設けられ、前記容器に接する冷却対象である被冷却体で前記冷媒を加熱して気泡を発生させ、前記気泡が当たることで冷媒内で振動して前記冷媒を撹拌する振動体と、を有し、前記振動体は弾性変形する板材で形成され、前記容器に設けた支持部に支持されている。
【0019】
請求項6に記載の沸騰冷却装置では、冷媒が加熱されて発生した気泡が振動体に当たることで振動体が振動して冷媒が撹拌される。このため、気泡のみで冷媒を撹拌する場合と比較して、撹拌効率が向上する。また、冷媒を撹拌することで、容器内において、冷媒の温度の偏りが抑制され、冷却効率を向上することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の沸騰冷却装置において、前記容器は、前記冷媒を密閉状態で貯留する。
【0021】
請求項7に記載の沸騰冷却装置では、冷媒を貯留する容器が密閉されているので、冷媒の蒸発を抑制することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の沸騰冷却装置において、前記容器には、前記容器の内圧の変動を吸収する圧力変動吸収装置が設けられている。
【0023】
請求項8に記載の沸騰冷却装置では、容器が弾性変形しない場合、気泡の発生により上昇した圧力を圧力変動吸収装置が吸収する。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の沸騰冷却装置において、前記圧力変動吸収装置は、ベローズである。
【0025】
請求項9に記載の沸騰冷却装置では、ベローズが拡縮して容器内の圧力変動を吸収する。
【0026】
請求項10に記載の発明は、請求項6~請求項9の何れか1項に記載の沸騰冷却装置において、前記容器には、前記冷媒と容器外部との間で熱交換を可能とする熱交換部が設けられている。
【0027】
請求項10に記載の沸騰冷却装置では、被冷却体で加熱された冷媒の熱を、熱交換部を介して容器外部に放熱でき、冷媒の温度上昇を抑制することができる。
【0028】
請求項11に記載の発明は、請求項6~請求項10の何れか1項に記載の沸騰冷却装置において、前記冷媒の沸点は、前記被冷却体の予め設定された発熱上限温度よりも低く設定されている。
【0029】
請求項11に記載の沸騰冷却装置では、冷媒の沸点を、被冷却体の予め設定された発熱上限温度よりも低く設定することで、被冷却体が発熱上限温度以上になることを抑制できる。
【0030】
請求項12に記載の発明は、請求項6~請求項11の何れか1項に記載の沸騰冷却装置において、前記被冷却体は原子炉である。
【0031】
請求項12に記載の沸騰冷却装置を用いて、エネルギーを使用せずに原子炉を冷却できる。
【0032】
請求項13に記載の電子機器は、請求項6~請求項11の何れか1項に記載の沸騰冷却装置と、被冷却体としての電子部品と、を備えている。
【0033】
請求項13に記載の電子機器では、電子機器の電子部品を、電力を使用せずに、効率的に冷却することができる。
【0034】
請求項14に記載の発明は、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の液体撹拌構造において、前記振動体は、振動により発電する発電部材である。
【0035】
請求項14に記載の液体撹拌構造では、振動体が振動により発電する発電部材であるため、振動体が振動することで発電部材から電力を得ることができる。得られた電力は、電力使用機器で利用したり、蓄電池に蓄電して利用することができる。
【0036】
請求項15に記載の発明は、請求項6~請求項12の何れか1項に記載の沸騰冷却装置において、前記振動体は、振動により発電する発電部材である。
【0037】
請求項15に記載の沸騰冷却装置では、振動体が振動により発電する発電部材であるため、振動体が振動することで発電部材から電力を得ることができる。得られた電力は、電力使用機器で利用したり、蓄電池に蓄電して利用することができる。
【0038】
請求項16に記載の発明は、請求項13に記載の電子機器において、前記振動体は、振動により発電する発電部材である。
【0039】
請求項16に記載の電子機器では、振動体が振動により発電する発電部材であるため、振動体が振動することで発電部材から電力を得ることができる。得られた電力は、電子機器で利用したり、電子機器以外の電力使用機器で利用したり、蓄電池に蓄電して利用することができる。
【0040】
請求項17に記載の発明は、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の液体撹拌構造において、前記振動体の振動により発電を行う発電部材を備えている。
【0041】
請求項17に記載の液体撹拌構造では、振動体が振動することで、発電部材から電力を得ることができる。得られた電力は、電力使用機器で利用したり、蓄電池に蓄電して利用することができる。
【0042】
請求項18に記載の発明は、請求項6~請求項12の何れか1項に記載の沸騰冷却装置において、前記振動体の振動により発電を行う発電部材を備えている。
【0043】
請求項18に記載の沸騰冷却装置では、振動体が振動することで、発電部材から電力を得ることができる。得られた電力は、電力使用機器で利用したり、蓄電池に蓄電して利用することができる。
【0044】
請求項19に記載の発明は、請求項13に記載の電子機器において、前記振動体の振動により発電を行う発電部材を備えている。
【0045】
請求項19に記載の電子機器では、振動体が振動することで、発電部材から電力を得ることができる。得られた電力は、電子機器で利用したり、電子機器以外の電力使用機器で利用したり、蓄電池に蓄電して利用することができる。
【発明の効果】
【0046】
以上説明したように本発明の液体撹拌構造は、液体を効率的に撹拌することができる。
本発明の沸騰冷却装置は、被冷却体を効率的に冷却することができる。
また、本発明の電子機器は、電子部品を効率的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】第1の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る沸騰冷却装置の底部を示す平面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図4】第3の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図5】第4の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図6】第5の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図7】第6の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図8】第7の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図9】第8の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図10】(A)は第9の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図であり、(B)は振動板を示す平面図である。
【
図11】(A)第10の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図であり、(B)はガイド筒を示す斜視図である。
【
図12】第11の実施形態に係る沸騰冷却装置の要部を示す断面図である。
【
図13】他の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図14】第12の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図15】第13の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図16】第14の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図17】第15の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図18】第16の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【
図19】第17の実施形態に係る沸騰冷却装置を備えた電子機器の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
[第1の実施形態]
図1、及び
図2を用いて、本発明の第1の実施形態に係る沸騰冷却装置10について説明する。
【0049】
図1に示すように、沸騰冷却装置10は、液体の冷媒12が貯留された容器14を備えている。容器14は、内部が密閉されている。容器14は、熱伝導性に優れた金属材料等で形成されていることが好ましく、金属材料としては、一例として、アルミニウム、銅、ステンレススチール等を挙げることができるが、他の金属材料であってもよく、金属材料以外の、例えば、セラミックスであってもよい。
【0050】
本実施形態の容器14は、一例として、矩形の箱形状であるが、容器14の形状、大きさ、容量等は、特に限定されず、後述する被冷却体としての電子部品16の大きさや発熱量等に応じて適宜設定される。
【0051】
容器14に貯留する冷媒12としては、本実施形態では水を用いているが、水の他に、メタノール、アセトン、フロロカーボン等の他の液体を用いることもできる。
【0052】
容器14の底部14Aには、外面に被冷却体としての電子部品16が取り付けられている。電子部品16は、一例として、LSI、IC、CPU、MPU、トランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサ、コイル等の発熱するものであるが、これらに限らず、他の電子部品であってもよい。なお、容器14の底部14Aと電子部品16との間の熱伝導性を向上させるために、容器14の底部14Aと電子部品16との間に、高熱伝導性のペーストや接着剤を介在させておくことが好ましい。
【0053】
本実施形態では、一例として、
図2に示すように、平面視形状が矩形(正方形)の電子部品16が底部14Aに取り付けられている。電子部品16の平面視形状としては、矩形に限らず、円形等の他の形状であってもよく、平面視形状は特に問わない。
【0054】
図1に示すように、本実施形態の電子部品16は、基板18に実装されているものであるが、電子部品16は、基板18に実装されていないものであってもよい。なお、本実施形態の電子部品16、及び基板18が本発明の電子機器に相当している。
【0055】
容器14の内部には、冷媒12を撹拌する振動板20が設けられている。
容器14の底部14Aには、矩形の台座22が取り付けられており、この台座22に振動板20の一端が固定されている。言い換えれば、振動板20は、台座22に対して片持ちで支持されている。
【0056】
台座22と底部14Aとの固定、及び台座22と振動板20との固定は、ねじ止め、接着剤、ロー付け、半田付け、溶接、カシメ等、材料に合わせて選択すればよく、固定の方法は特に問わない。
【0057】
本実施形態の台座22は、平面視形状が矩形であるが、台座22の形状は特に問わない。台座22は、振動板20を支持できればよい。台座22は、一例として金属材料、合成樹脂材料、セラミックス等で形成することができるが、他の材料で形成されていてもよく、冷媒と反応したり、腐食等して劣化しないことが好ましい。
【0058】
本実施形態の振動板20は平板であり、一例として、平面視形状が矩形であるが、他の形状であってもよい。本実施形態の振動板20は、曲げ変形容易なように、薄い金属板等で形成されているが、合成樹脂板等、金属板以外で形成されていてもよく、冷媒と反応したり、腐食等して劣化しないことが好ましい。
【0059】
振動板20は、一端側が台座22に固定されており、台座22に固定されていない残りの部分が、電子部品16の上方に配置されている。
【0060】
振動板20は、台座22に底部14Aに対して若干の隙間Sを介して平行に配置されている。
【0061】
容器14の天井部14Bには、放熱フィン24が一体的に形成されている。なお、放熱フィン24は、容器14の側壁部14Cに形成してもよい。
【0062】
容器14には、側壁部14Cに貫通孔26が形成されており、側壁部14Cには、貫通孔26の外側に金属製のベローズ28が取り付けられている。ベローズ28は、拡縮することで容器内の圧力変動を吸収する。
【0063】
(作用、効果)
次に、沸騰冷却装置10の作用、効果を説明する。
電子部品16が発する熱は、底部14Aを介して冷媒12に伝達される。電子部品16から伝達された熱により、底部14Aの電子部品16と接している部分、即ち発熱面30が高温となり、発熱面30近くの冷媒12が沸点に達すると、発熱面30近くの冷媒12が沸騰して無数の気泡Bが発生する。
【0064】
なお、沸騰には、飽和沸騰(液温が飽和温度に達している)と、サブクール沸騰(液温が飽和温度よりも低い)があるが、何れの沸騰形態であってもよい。ただし、一般的に、サブクール沸騰の方が、合体気泡が成長しづらく、冷却性能は高い。
【0065】
無数の気泡Bが、発熱面30と振動板20との間で連続的に発生し、無数の気泡Bが振動板20に次々に当たり、その後、容器内を上昇し、無数の気泡Bが上昇することで、容器内の冷媒12に対流が生じ、この対流により冷媒12はある程度撹拌される。
【0066】
さらに、本実施形態の沸騰冷却装置10では、例えば、
図1の2点鎖線で示すように振動板20が振動(ここでは、台座22を支点として曲げ変形する1次振動を図示)することで、冷媒12を撹拌するので、気泡Bの上昇に伴う撹拌のみの場合に比較して、冷媒12の撹拌効率が向上し、冷却効率を向上させることができる。
【0067】
振動板20が振動すると、冷媒12は、例えば、
図2の矢印Aで示すように、振動板20の先端から台座22とは反対方向へ向かう流れ(液の排出)と、振動板20の側方から振動板20に向かう流れ(液の供給)が生じる。さらに、振動板20の振動と、これらの冷媒12の流れによって、発熱面30と振動板20との間の隙間Sで生じた気泡Bが該隙間Sから効率的に除去される。これにより、発熱面30と冷媒12との接触が良好となり、発熱面30から冷媒12への熱の伝達が向上して冷却効率が向上すると共に、所謂バーンアウトが抑制される。
【0068】
なお、冷媒12が温度上昇すると、冷媒12の体積が増加するが、本実施形態の沸騰冷却装置10では、ベローズ28の変形により、冷媒12の体積変動を吸収することができ、また、容器14の内圧の変動を抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態の沸騰冷却装置10では、密閉された容器14に冷媒12が入れられているので、冷媒12が蒸散することが抑制される。
【0070】
本実施形態の沸騰冷却装置10では、電動ポンプ、スターラ等を用いず、発生する気泡Bにより振動板20を振動させて冷媒12を撹拌するので、構造を極めてシンプルにすることができる。さらに、冷媒12を撹拌する際に電力等のエネルギーを使用する必要が無いので、省エネになる。
【0071】
本実施形態では、連続して発生する気泡Bを振動板20に当てて振動板20が振動する説明をしたが、気泡Bの発生状況(一例として、気泡Bの発生、消滅、もしくは離脱)に合わせて振動板20の質量、ばね定数、サイズ等を調整することで、気泡Bの発生時に、振動板20が共振するようにもできる。
【0072】
振動板20を共振させることで、共振しない場合に比較して振動する振動板20の振幅を大きくすることができ、これにより、冷媒12の撹拌効率を向上させることができる。
共振には、1次、2次、3次等の複数のモードがあるが、振幅を大きくとれる1次の共振が好ましい。
【0073】
なお、振動板20を共振させる場合には、冷媒12の温度変化によってばね乗数が変化し難い材料、例えば、金属材料で形成することが好ましい。
【0074】
冷媒12の熱は、容器14、及び放熱フィン24を介して容器外に放出することができる。
【0075】
なお、台座22をゴム等の弾性体で形成し、振動板20を動かしやすくしてもよい。
【0076】
本実施形態の振動板20は平坦な平板形状であったが、振動板20は振動して冷媒12を撹拌できればよく、必要に応じて湾曲していてもよく、立体的に形成されていてもよい。
【0077】
また、振動板20は、発熱面30に対して平行に設けられていたが、振動板20は振動して冷媒12を撹拌できればよく、発熱面30に対して平行に設けられていなくてもよい。
【0078】
また、冷媒12の沸点を、電子部品16の予め設定された発熱上限温度よりも低く設定することで、電子部品16が発熱上限温度以上になることを抑制できる。
【0079】
[第2の実施形態]
図3を用いて、本発明の第2の実施形態に係る沸騰冷却装置10について説明する。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図3に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、電子部品16が容器内部の底部14Aに取り付けられている。
【0080】
(作用、効果)
本実施形態では、電子部品16の熱が冷媒12に直接的に伝達されるので、底部14Aを介して間接的に伝達する場合に比較して、冷却効率を向上させることができる。
なお、その他の作用、効果は第1の実施形態と同様である。
【0081】
[第3の実施形態]
図4を用いて、本発明の第3の実施形態に係る沸騰冷却装置10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図4に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動板20の両端部分が、台座22に支持されている。
【0082】
(作用、効果)
本実施形態の振動板20は、2点鎖線で示すように、振動板20の中央部分が上方に凸になる変形と下方に凸となる変形が交互の行われる振動形態となる。
本実施形態のような両側が支持された振動板20においても、気泡Bにより振動板20を振動させることができる。
なお、その他の作用、効果は、第1の実施形態と同様である。
【0083】
[第4の実施形態]
図5を用いて、本発明の第4の実施形態に係る沸騰冷却装置10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図5に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動板20と台座22との接合部分よりも振動板20の内側部分に、波型に形成したバネ部20Aが形成されている。
振動板20の一部を波型に形成することで、ばね乗数を低下させることができ、バネ部20Aとバネ部20Aとの間の振動板20を上下に振動させ易くなる。
なお、その他の作用、効果は第3の実施形態と同様である。
【0084】
[第5の実施形態]
図6を用いて、本発明の第5の実施形態に係る沸騰冷却装置10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図6に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動板20の中央部が台座22に支持されている。
【0085】
(作用、効果)
本実施形態の沸騰冷却装置10では、台座22を支点として振動板20の両側が曲げ変形して振動するので、振動板20の両側で対流(矢印A)を生じさせることができる。
なお、その他の作用、効果は、第1の実施形態と同様である。
【0086】
[第6の実施形態]
図7を用いて、本発明の第6の実施形態に係る沸騰冷却装置10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図7に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、台座22の上面に、横方向に向けて延びる支持腕34が取り付けられており、この支持腕34に、コイルバネ36を介して振動板38が吊り下げられている。
【0087】
振動板38は発熱面30に対して平行に配置され、振動板38と発熱面30との間には隙間Sが形成されている。
【0088】
(作用、効果)
本実施形態では、気泡Bが振動板38に当たることで、コイルバネ36で吊り下げられた振動板38が上下に振動して、冷媒12を撹拌する。
【0089】
なお、本実施形態では、振動板38の質量、サイズ、コイルバネ36のばね定数等を調整することで、気泡Bの発生時に、振動板38が共振するようにできる。
【0090】
また、本実施形態の振動板38は、コイルバネ36で支持されて振動するので、第1の実施形態の振動板20のように曲げ変形しなくてもよい。したがって、本実施形態の振動板38は、第1の実施形態の振動板20のように薄く形成されていなくてもよい。
なお、その他の作用、効果は、第1の実施形態と同様である。
【0091】
[第7の実施形態]
図8を用いて、本発明の第7の実施形態に係る沸騰冷却装置10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図8に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、電子部品16が容器14の底部14Aに取り付けられている。
振動板38は、容器14の底部14Aに取り付けられたコイルバネ40の上端に支持され、電子部品16の上側に隙間Sを介して配置されている。
【0092】
(作用、効果)
本実施形態では、気泡Bが振動板38に当たることで、コイルバネ40に下から支持された振動板38が上下に振動して、冷媒12を撹拌する。
なお、本実施形態では、振動板38の質量、サイズ、コイルバネ40のばね乗数等を調整することで、気泡Bの発生時に、振動板38が共振するようにできる。
なお、その他の作用、効果は、第1の実施形態と同様である。
【0093】
[第8の実施形態]
図9を用いて、本発明の第8の実施形態に係る沸騰冷却装置10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施形態の沸騰冷却装置10では、第1の実施形態の変形例であり、第1の実施形態で説明した振動板20と台座22とが一体化形成されているものであり、例えば、厚肉の金属板を切削加工することで形成することができる。
なお、その他の作用、効果は、第1の実施形態と同様である。
【0094】
[第9の実施形態]
図10を用いて、本発明の第9の実施形態に係る沸騰冷却装置10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図10に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10は、第3の実施形態の変形例であり、振動板20が、ビス42を用いて台座22に取り付けられている。
振動板20には、ビス42が挿通する一対の長孔44が形成されており、ビス42を緩めることで、台座22から突出する振動板20の長さLを調整(矢印B方向)することができる。
【0095】
(作用、効果)
本実施形態では、台座22から突出する振動板20の長さLを調整することで、振動板20の振動する部分のばね乗数、質量を調整することができ、これにより、振動板20の固有振動数を調整することができる。
【0096】
このため、本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動板20が大きく振幅するように、発生する気泡Bに合わせて振動板20の固有振動数を調整することができ、撹拌効率を高めることができる。
なお、その他の作用、効果は、第1の実施形態と同様である。
【0097】
[第10の実施形態]
図11(A),(B)を用いて、本発明の第10の実施形態に係る沸騰冷却装置10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0098】
図11(A)に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動体46が容器14の底部14Aの発熱面30の上に載せられている。
【0099】
また、振動体46の下面には、突起48が形成されており、この突起48により、振動体46の下面と発熱面30との間に隙間Sが形成されている。
【0100】
図11(A),(B)に示すように、本実施形態の振動体46は、厚肉の円板形状であり、振動体46の外側には、振動体46を取り囲むようにガイド筒50が底部14A上に設けられている。
【0101】
ガイド筒50は、複数の開口52Aが形成された筒部本体52を備え、筒部本体52の上端には径方向内側に突出するリング状のストッパ54が設けられている。
【0102】
筒部本体52と振動体46との間には、隙間S2が設けられており、振動体46は、筒部本体52の内部を上下方向に移動自在となっている。
【0103】
また、振動体46の外径よりもストッパ54の内径が小さくなっており、ストッパ54と振動体46との間には、振動体46を下方に付勢するコイルバネ55が配置されている。
【0104】
ここで、振動体46の下面と発熱面30とが密着していると、振動体46と発熱面30との間に冷媒12が進入せず、振動体46と発熱面30との間で気泡を発生させることが出来なくなる虞がある。したがって、振動体46と発熱面30とを離間させる突起48を設けることが好ましい。
【0105】
(作用、効果)
本実施形態の沸騰冷却装置10では、無数の気泡(図示省略)が、発熱面30と振動体46との間で連続的に発生して振動体46に次々に当たることで、振動体46が上下に振動(気泡に押圧されることによる上方への移動、及びコイルバネ55による下方への移動の繰り返し)し、冷媒12を撹拌する。本実施形態では、振動体46の質量、及びコイルバネ55のバネ定数を調整することで、振動体46を共振させることができる。
なお、その他の作用、効果は、第1の実施形態と同様である。
【0106】
[第11の実施形態]
図12を用いて、本発明の第11の実施形態に係る沸騰冷却装置10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
本実施形態の沸騰冷却装置10では、容器14の発熱面30の上方に、ドーム状の膜体56が設けられている。膜体56の周囲は、容器14の底部14Aに固定されている。
【0107】
膜体56は、合成樹脂フィルム等で形成されており、内外を貫通する貫通孔58が複数形成されている。なお、膜体56は、自由状態で、ドーム形状を維持している。
【0108】
(作用、効果)
本実施形態の沸騰冷却装置10では、発熱面30で連続的に発生した気泡Bが膜体56に次々に当たることで、膜体56を振動させ、冷媒12を撹拌することができる。なお、気泡B、及び冷媒12は、貫通孔58を介して膜体56の内部と外部との間を移動できる。
【0109】
[その他の実施形態]
以上、本発明の液体撹拌構造の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0110】
上記実施形態、一例として第1の実施形態(その他の実施形態も同様)では、一つの沸騰冷却装置10で一つの電子部品16の冷却を行う構成を説明したが、例えば、
図13に示すように、一つの沸騰冷却装置10で複数の電子部品16の冷却を行うようにしてもよい。
【0111】
上記実施形態では、容器14の圧力変動を吸収するために、容器14にベローズ28を接続したが、圧力変動を吸収するための圧力変動吸収装置としては、ベローズ28に限らず、圧力を吸収するアキュムレータであってもよい。
【0112】
上記実施形態では、容器14の圧力変動を吸収するために、容器14にベローズ28を接続したが、ベローズ28は必要に応じて設ければよく、ベローズ28を設けない構成とすることもできる。例えば、容器14を薄い金属板等で形成し、容器14の壁を変形させて内部の圧力変動を吸収するようにしてもよい。
【0113】
上記実施形態では、容器14の底部14Aに電子部品16を取り付けたが、振動板20が振動できるのであれば、場合によっては、容器14の側壁に電子部品16を取り付け、電子部品16と対応する側壁に振動板20を配置してもよい。
【0114】
上記実施形態では、沸騰冷却装置10を用いて電子部品16を冷却する例を説明したが、沸騰冷却装置10を冷却する対象である被冷却体は、電子部品16に限らず、被冷却体の構成は特に問わない。
【0115】
上記実施形態では、冷媒12を撹拌して電子部品16を冷却する例について説明したが、液体撹拌構造で撹拌する液体の使用目的は特に問わない。
【0116】
被冷却体は、発熱するものであれば何でもよく、一例として、図示は省略するが、エンジン(内燃機関)や原子炉であってもよい。
【0117】
冷媒としての液体は、水に限らず、液状の金属であってもよい。液状の金属としては、一例として金属ナトリウム、ナトリウムカリウム合金、水銀等を上げることができる。
【0118】
[液体撹拌構造の変形例]
上記実施形態では、液体を撹拌するために振動板20、振動板38、及び振動体46等を振動させているが、振動板20、振動板38、及び振動体46等の振動を発電に利用することができる。
以下に、振動板20、振動板38、及び振動体46等の振動を利用して発電を行う実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0119】
[第12の実施形態]
図14(A)、(B)に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動板20の上面に、変形により発電を行う圧電フィルム60が接着剤等を用いて貼り付けられている。
【0120】
本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動板20が振動すると、振動板20が曲げ変形するので、振動板20に貼り付けられた圧電フィルム60が曲げ変形して発電が行われる。得られた電力は、電子部品16を用いている電子機器で利用したり、電子機器以外の電力使用機器で利用したり、蓄電池に蓄電して利用する等、様々な用途に利用できる。電力使用機器としては、LED、通信機器等を挙げることができる。また、圧電フィルム60は、発電用途に限らず、振動板20が振動しているか否かを検知する振動検出センサーとして利用することもできる。なお、圧電フィルム60としては、例えば、エルメック電子工業株式会社の「PIEZO FILM SENSOR」等を用いることができる。
【0121】
圧電フィルム60は、高温になると発電量が低下する場合があるので、
図14(C)に示すように、圧電フィルム60、及び振動板20全体を、薄い断熱材62で覆うようにしてもよい。断熱材62としては、振動板20、及び圧電フィルム60よりも熱伝導率の低い材料、例えば、無数の気泡を含んだ合成樹脂などを用いることができる。
【0122】
圧電フィルム60は、変形の大きな部位に設けることが好ましい。図示は省略するが、圧電フィルム60は、振動板20の両面に貼り付けてもよい。また、図示は省略するが、振動板20を圧電フィルム60に置き換えてもよい(言い換えれば、振動板20自体を発電部材とする。)。
【0123】
[第13の実施形態]
図15に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動板20の上側に、 矩形の台座64で片持ち支持された圧電フィルム60が間隔を開けて平行に配置されている。
振動板20の先端側(台座22と反対側)と、圧電フィルム60の先端側とは、一例として棒状の連結部材66で互いに連結されている。連結部材66は、振動板20よりも熱伝導率の低い材料、例えば、合成樹脂等で形成されており、振動板20の熱が圧電フィルム60に伝達し難くなっている。
【0124】
本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動板20が振動すると、振動板20の振動が連結部材66を介して圧電フィルム60に伝達されて発電が行われる。
【0125】
本実施形態の沸騰冷却装置10では、圧電フィルム60が発熱面30から離れた位置に設けられているため、圧電フィルム60が高温になり難く、発電効率の低下を抑制することができる。
【0126】
[第14の実施形態]
図16(A),(B)に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動板20の先端側の上部に、断熱部材68を介して棒状の磁石70が縦に取り付けられている。断熱部材68は、振動板20よりも熱伝達率の低い材料、一例として合成樹脂等で形成されている。断熱部材68としては、合成樹脂系の接着剤を用いることができる。
【0127】
図16(A)に示すように、この磁石70の外周側には、隙間を開けてコイル72が外挿されている。
【0128】
本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動板20が振動すると、磁石70がコイル72の内部で軸方向に振動して発電が行われる。
【0129】
磁石70は、温度が高くなると磁力が弱まる性質を有しているため、高温となる振動板20との間に断熱部材68を介在させ、磁石70の温度上昇を抑制することが好ましい。これにより、発電効率の低下を抑制することができる。
【0130】
なお、本実施形態では、振動板20に磁石70を取り付け、磁石70の外周側にコイル72を配置したが、図示は省略するが、振動板20にコイル72を取り付けてコイル72と磁石70の位置を入れ替えてもよい。
【0131】
[第15の実施形態]
図17に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動体46を収容しているガイド筒50の筒部本体52の上端側の開口部分に、円形に形成された圧電フィルム60が取り付けられている。筒部本体52の上端部よりも若干下側には、隔壁74が設けられている。
【0132】
隔壁74と振動体46との間には、振動体46を下方に付勢するコイルバネ55が配置されている。
【0133】
振動体46の中央部分と圧電フィルム60の中央部分とは、棒状の連結部材76で連結されている。なお、連結部材76は、隔壁74の中央に形成された小孔78を貫通している。
【0134】
(作用、効果)
本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動体46が上下に振動すると、振動体46の振動が連結部材76を介して圧電フィルム60に伝達され、圧電フィルム60が変形して発電を行う。
【0135】
また、本実施形態の沸騰冷却装置10では、圧電フィルム60が発熱面30から離れた位置に設けられており、また、振動体46が収容されている筒部本体52の内部空間S3とは、隔壁74を介して離れているので、圧電フィルム60が高温になり難く、発電効率の低下を抑制することができる。
【0136】
[第16の実施形態]
図18に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、ガイド筒50の内部に収容された振動体46の上に、断熱部材80を介して磁石82が積層されている。断熱部材80は、振動体46よりも熱伝達率の低い材料、一例として合成樹脂等で形成されている。断熱部材80としては、合成樹脂系の接着剤を用いることができる。
【0137】
本実施形態では、ガイド筒50の外周面に、磁石82の径方向外側にコイル84が形成されている。本実施形態のガイド筒50は、合成樹脂等の非金属材料で形成されている。
なお、コイル84は、ガイド筒50の内周面に形成されていてもよい。
【0138】
(作用、効果)
本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動体46が上下に振動すると、磁石82がコイル84の内側で軸方向に振動して発電が行われる。
【0139】
磁石82は、温度が高くなると磁力が弱まる性質を有しているため、高温となる振動体46との間に断熱部材80を介在させ、磁石82の温度上昇を抑制することが好ましい。これにより、発電効率の低下を抑制することができる。
【0140】
[第17の実施形態]
図19に示すように、本実施形態の沸騰冷却装置10では、ガイド筒50の内部に収容された振動体46に、リンク86、クランク88、ピン90、及びピン92を用いて発電機94の回転軸96が連結されている。なお、発電機94は、図示しない取付部材を介してガイド筒50または容器14に取り付けられている。
【0141】
また、本実施形態では、振動体46の上下変位を大きくとるため、振動体46が第5実施形態よりも上側に配置されている。
【0142】
(作用、効果)
本実施形態の沸騰冷却装置10では、振動体46が上下に振動すると、振動体46の上下動(直線運動)がリンク86、クランク88、ピン90、及びピン92によって回転運動に変換され、発電機94の回転軸96が回転し、発電機94で発電が行われる。
【0143】
上記実施形態では、圧電素子の一種である圧電フィルム60、磁石70、82、コイル72、84等を用いて発電を行ったが、振動により発電できるものであれば、これら以外の発電部材を用いて発電を行ってもよい。
【符号の説明】
【0144】
10 沸騰冷却装置(液体撹拌構造)
12 液体
14 容器
16 電子部品(電子機器)
18 基板(電子機器)
20 振動板
22 台座(支持部)
24 放熱フィン
28 ベローズ(圧力変動吸収装置)
34 支持腕(支持部)
36 コイルスプリング
38 振動板
42 ビス
44 長孔
46 振動体
56 膜体(振動体)
S 隙間
60 圧電フィルム(発電部材)
70 磁石(発電部材)
72 コイル(発電部材)
82 磁石(発電部材)
84 コイル(発電部材)
94 発電機(発電部材)