(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】枠体付き捕獲粘着板及び捕獲粘着板セット
(51)【国際特許分類】
A01M 1/14 20060101AFI20240925BHJP
A01M 1/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A01M1/14 S
A01M1/00 Q
(21)【出願番号】P 2021126727
(22)【出願日】2021-08-02
【審査請求日】2024-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】矢代 敏久
(72)【発明者】
【氏名】眞田 幸代
(72)【発明者】
【氏名】高山 智光
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-215577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/14
A01M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫を捕獲するための枠体付き捕獲粘着板において、
片側に粘着層を有した粘着板と、
前記粘着板の周縁部に囲むように設けられた枠体と、を備え、
前記枠体の高さ方向の片側は、開口されており、
前記枠体の内側に、前記粘着板の前記粘着層に付着した虫を収容するための収容空間が形成されていることを特徴とする枠体付き捕獲粘着板。
【請求項2】
調査対象の虫が体長10mm程度までの小型の害虫である場合に、前記粘着板の前記粘着層から前記枠体の開口側の端面と同一平面上の仮想平面までの距離は、前記粘着板の前記粘着層にランダムな向きに付着した小型の害虫がスキャナーの読取面に接触しない距離以上で、かつ10mm以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の枠体付き捕獲粘着板。
【請求項3】
前記粘着板の前記粘着層から前記枠体の開口側の端面と同一平面上の仮想平面までの距離は、4mm以上でかつ10mm以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の枠体付き捕獲粘着板。
【請求項4】
前記枠体の開口側の端面に連結ピンの一端部を係合させるための複数の第1係合穴が形成され、前記枠体の開口側の反対側の端面に、前記連結ピンの他端部を係合させるための複数の第2係合穴が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の枠体付き捕獲粘着板。
【請求項5】
請求項4に記載の複数の枠体付き捕獲粘着板と、
一端部が前記枠体付き捕獲粘着板における前記枠体の各第1係合穴に係合可能であり、
他端部が前記枠体付き捕獲粘着板における前記枠体の各第2係合穴に係合可能である複数の連結ピンと、を備えることを特徴とする捕獲粘着板セット。
【請求項6】
虫を捕獲するための枠体付き捕獲粘着板において、
片側に粘着層を有した粘着板と、
前記粘着板の周縁部に囲むように設けられた枠体と、を備え、
前記枠体の内側に、前記粘着板の前記粘着層に付着した虫を収容するための収容空間が形成されており、
前記枠体の開口側の端面に連結ピンの一端部を係合させるための複数の第1係合穴が形成され、前記枠体の開口側の反対側の端面に、前記連結ピンの他端部を係合させるための複数の第2係合穴が形成されていることを特徴とする枠体付き捕獲粘着板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫等の虫を捕獲するための枠体付き捕獲粘着板、及び複数の枠体付き捕獲粘着板を備えた捕獲粘着板セットに関する。
【背景技術】
【0002】
害虫の発生調査には、害虫を捕獲するための粘着板(捕獲粘着板)が用いられる。粘着板は、例えばアクリル樹脂等の合成樹脂からなる基材と、基材の片側に形成された粘着層とを有している。
【0003】
害虫の発生調査の際には、調査員が害虫を粘着板の粘着層に付着させて捕獲する。その後、調査員が粘着板の粘着層に付着した害虫の種類及び個体数等を目視によって確認する。また、通常、害虫の発生調査後に、害虫の種類及び個体数等の再確認、換言すれば、害虫の発生調査の結果の再確認は行われていなかった。
【0004】
近年、害虫の発生調査の結果の再確認が容易に行われるように、害虫を付着させた粘着板をフラットヘッドスキャナー等のスキャナーによってスキャニングして、粘着板の高品質な画像(画像データ)を取得する試みが検討されている。
【0005】
粘着板をスキャナーでスキャニングする際は、粘着板の粘着層がスキャナーの読取面に接触しないようにする必要がある。そのため、2つのアクリル棒等の2つのスペーサを用い、粘着板の両端部とスキャナーの読取面とによって2つのスペーサを挟むように、粘着板をスキャナーの読取面側に配置する手法(2つのスペーサを用いた手法)が考えられる。また、粘着板に関する技術ではないが、粘着層を有した粘着シートの表面に保護フィルムを貼り付ける手法(保護フィルムを用いた手法)が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スペーサを用いた手法は、スキャナーによるスキャニングの度に、粘着板の両端部とスキャナーの読取面とによって2つのスペーサを挟む作業を行わなければならず、非常に手間がかかる。また、粘着板とスペーサが固定されていないため、粘着板に付着した害虫の個体がスキャナーの読取面に接触して変形又は破損して、害虫の種の判別が困難になることがある。
【0008】
一方、保護フィルムを用いた方法は、害虫が粘着板とスキャナーの読取面とによって圧迫されることが前提となっており、個体が変形又は破損しても害虫の種の判別ができる害虫のみしか調査対象とすることができない。
【0009】
そこで、本発明の一態様は、粘着板に付着した虫を変形又は破損させることなく、粘着板をスキャナーによって簡単にスキャニングすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係る枠体付き捕獲粘着板は、虫を捕獲するための枠体付き捕獲粘着板において、片側に粘着層を有した粘着板と、前記粘着板の周縁部に囲むように設けられた枠体と、を備え、前記枠体の内側に、前記粘着板の前記粘着層に付着した虫を収容するための収容空間が形成されている。
【0011】
前記の構成によれば、前述のように、前記枠体の内側に前記収容空間が形成されている。そのため、前記粘着板(前記粘着層)に付着した虫が前記枠体の開口側の端面と同一平面上の仮想平面から前記収容空間の外側に突出することを防止できる。これにより、前記枠体付き捕獲粘着板をスキャナーの読取面に載置するだけで、前記粘着板に付着した虫を変形又は破損させることなく、スキャナーによって前記粘着板を簡単にスキャニングすることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る捕獲粘着板において、調査対象の虫が体長10mm程度までの小型の害虫である場合に、前記粘着板の前記粘着層から前記枠体の開口側の端面と同一平面上の仮想平面までの距離は、前記粘着板の前記粘着層にランダムな向きに付着した小型の害虫がスキャナーの読取面に接触しない距離以上で、かつ10mm以下に設定されてもよい。
【0013】
前記の構成によれば、前記粘着板の前記粘着層から前記仮想平面までの距離が前記接触しない距離以上に設定されているため、調査対象の虫が体長10mm程度までの小型の害虫である場合、前記粘着板に付着した小型の害虫が前記仮想平面から前記収容空間の外側に突出することがない。これにより、前記粘着板に付着した小型の害虫の変形又は破損を確実に回避して、小型の害虫の種の判別等を行うことができる。
【0014】
また、前記粘着板の前記粘着層から前記仮想平面までの距離が10mm以下に設定されているため、スキャナーによって前記粘着板の高品質な画像(画像データ)を取得することができる。これにより、前記粘着板に付着した小型の害虫等の虫の種の判別等を正確に行うことができる。
【0015】
本発明の一態様に係る枠体付き捕獲粘着板において、前記粘着板の前記粘着層から前記枠体の開口側の端面と同一平面上の仮想平面までの距離は、4mm以上でかつ10mm以下に設定されてもよい。
【0016】
前記の構成によれば、前記粘着板の前記粘着層から前記仮想平面までの距離が4mm以上に設定されているため、調査対象の虫がイネウンカ類である場合、前記粘着板に付着したイネウンカ類が前記仮想平面から前記収容空間の外側に突出することがない。これにより、前記粘着板に付着したイネウンカ類の変形又は破損を確実に回避して、イネウンカ類の種の判別等を行うことができる。
【0017】
また、前記粘着板の前記粘着層から前記仮想平面までの距離が10mm以下に設定されているため、スキャナーによって前記粘着板の高品質な画像(画像データ)を取得することができる。これにより、前記粘着板に付着したイネウンカ類等の虫の種の判別等を正確に行うことができる。
【0018】
本発明の一態様に係る枠体付き捕獲粘着板において、前記枠体の開口側の端面に連結ピンの一端部を係合させるための複数の第1係合穴が形成され、前記枠体の開口側の反対側の端面に、前記連結ピンの他端部を係合させるための複数の第2係合穴が形成されてもよい。
【0019】
前記の構成によれば、複数の前記枠体付き捕獲粘着板及び複数の前記連結ピンを用い、いずれかの前記枠体付き捕獲粘着板における前記枠体の各第1係合穴に前記連結ピンの一端部を係合させる。他のいずれかの前記枠体付き捕獲粘着板における前記枠体の各第2係合穴に前記連結ピンの他端部を係合させる。また、必要に応じて、前述の動作(複数の前記連結ピンの係合動作)を繰り返す。これにより、複数の前記枠体付き捕獲粘着板を重ねた状態で一体化することができ、複数の前記枠体付き捕獲粘着板の運搬作業の効率化を図ることできる。
【0020】
本発明の一態様に係る捕獲粘着板セットは、複数の前記枠体付き捕獲粘着板と、一端部が前記枠体付き捕獲粘着板における前記枠体の各第1係合穴に係合可能であり、他端部が前記枠体付き捕獲粘着板における前記枠体の各第2係合穴にそれぞれ係合可能である複数の連結ピンとを備える。
【0021】
前記の構成によれば、前述のように、複数の前記枠体付き捕獲粘着板を重ねた状態で一体化することでき、複数の前記枠体付き捕獲粘着板の運搬作業の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、粘着板に付着した虫を変形又は破損させることなく、粘着板をスキャナーによって簡単にスキャニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態1に係る枠体付き捕獲粘着板の模式的な斜視図である。
【
図2】
図1に記載の枠体付き捕獲粘着板の横方向に沿った模式的な断面図である。
【
図3】実施形態2に係る捕獲粘着板セットの模式的な斜視図である。
【
図4】
図3に記載の捕獲粘着板セットの模式的な正面図であり、実施形態2に係る枠体付き捕獲粘着板を複数の連結ピンを重ねた状態を示している。
【
図5】イネウンカ類の種及びアクリル棒の大きさを変えながら、イネウンカ類の付着した粘着板とアクリル板との間に2つのアクリル棒を挟んだ場合に、アクリル板に虫体が接触した個体数を示す表図である。
【
図6】アクリル棒の大きさを変えながら、イネウンカ類以外の小型の害虫の付着した粘着板とアクリル板との間に2つのアクリル棒を挟んだ場合に、アクリル板に虫体が接触した個体数を示す表図である。
【
図7】スキャニング用の枠体を粘着板の周縁部に囲むように取付けた状態で、フラットヘッドスキャナーによるスキャニングによって取得された枠体を含む粘着板の画像を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本願の明細書において、横方向とは、枠体付き捕獲粘着板の幅方向のことであり、水平方向の1つである。縦方向とは、枠体付き捕獲粘着板の長さ方向のことであり、横方向に直交する水平方向の1つである。高さ方向とは、枠体付き捕獲粘着板の高さ方向のことであり、横方向及び縦方向に直交する垂直方向のことである。図面中、「CD」は横方向、「LD」は縦方向、「HD」は高さ方向をそれぞれ指している。
【0025】
〔実施形態1〕
実施形態1について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、実施形態1に係る枠体付き捕獲粘着板の模式的な斜視図である。
図2は、
図1に記載の枠体付き捕獲粘着板の横方向に沿った模式的な断面図である。
【0026】
(枠体付き捕獲粘着板10の概要)
図1及び
図2に示すように、実施形態1に係る枠体付き捕獲粘着板10は、虫の一例である害虫Bの発生調査に用いられ、害虫Bを捕獲するための器具である。枠体付き捕獲粘着板10は、フラットヘッドスキャナー等のスキャナー(不図示)によってスキャニング可能である。
【0027】
(粘着板12)
枠体付き捕獲粘着板10は、害虫Bを付着させるための矩形状の粘着板12を備えている。粘着板12は、矩形状の基材14を有しており、基材14は、例えばアクリル樹脂等の合成樹脂からなる。なお、基材14が合成樹脂からなる代わりに、例えばアルミ等の金属又は木材からなってもよい。
【0028】
粘着板12は、例えば両面テープ等の接着材によって基材14の表面14fに貼り付けられた例えば防水紙等の紙材16を有している。紙材16には、スプレー糊が噴霧されており、紙材16は、粘着性を有している。換言すれば、粘着板12は、その片側に、粘着層としての粘着性のある紙材16を有している。また、紙材16には、複数の枡目を区画する格子状の線が付されている。紙材16の縦方向の一側縁には、複数の枡目の横方向の位置を指示するためのアラビア数字が付されている。紙材16の横方向の一側縁には、複数の枡目の縦方向の位置を指示するためのローマ数字が付されている。枠体付き捕獲粘着板10を害虫Bの発生調査に用いる前の状態において、紙材16の表面16fに剥離紙(不図示)が貼り付けられている。なお、粘着板12の構成から紙材16を省略して、基材14の表面14fに粘着層としての両面テープ(不図示)を貼り付けてもよい。
【0029】
(枠体18)
粘着板12の周縁部には、矩形状の枠体18が設けられており、枠体18の高さ方向の片側は、開口されている。枠体18は、粘着板12の全方位(四方)を隙間なく囲んでいる。枠体18は、例えばアクリル樹脂等の合成樹脂、例えばアルミ等の金属、又は木材からなる。枠体18が基材14と同様に合成樹脂又は金属からなる場合には、枠体18を基材14と一体成形してもよい。また、枠体18の開口側(表側)の端面18fは、枠体付き捕獲粘着板10をスキャナーの読取面(不図示)に載置するための載置面である。枠体18の開口側と反対側(裏側)の端面18sは、基材14の裏面14sと同一平面上に位置している。なお、枠体18の裏側の端面18sが基材14の裏面14sに対して突出してもよい。
【0030】
枠体18の内側には、粘着板12の粘着層としての紙材16に付着した害虫Bを収容するための収容空間CSが形成されている。また、枠体付き捕獲粘着板10は、害虫Bを付着させた粘着板12の紙材16を下方向に向けても、粘着板12が下方向に撓まないように構成されている。これにより、粘着板12の紙材16に付着させた害虫Bが、枠体18の開口側の端面18fと同一平面上の仮想平面VFに対して突出することがない。
【0031】
粘着板12の紙材16の表面16fから仮想平面VF(枠体18の開口側の端面18fと同一平面上の仮想平面)までの距離(所定の距離)Mは、4mm以上でかつ10mm以下に設定されている。所定の距離Mは、収容空間CSの高さである。ここで、所定の距離Mを4mm以上に設定したのは、所定の距離Mが4mm未満であると、調査対象の害虫Bがイネウンカ類である場合、粘着板12に付着したイネウンカ類が仮想平面VFから収容空間CSの外側に突出して、スキャナーの読取面に接触することがあるからである(後述の実施例1参照)。所定の距離Mを10mm以下に設定したのは、所定の距離Mが10mmを超えると、粘着板12の紙材16の表面16fから仮想平面VFまでの距離Mが長くなり、スキャナーによって粘着板12の高品質な画像(画像データ)を取得することが困難になるからである。
【0032】
なお、調査対象の害虫Bがイネウンカ類よりも大きい害虫(例えば、ツマグロヨコバイ)である場合には、所定の距離Mの下限値を4mmよりも大きくしてもよい。調査対象の害虫Bがイネウンカ類よりも小さい害虫(例えば、フタテンチビヨコバイ)である場合には、所定の距離Mの下限値を4mmよりも小さくしてもよい(後述の実施例2参照)。つまり、調査対象の害虫Bが体長10mm程度までの小型の害虫である場合に、所定の距離Mは、粘着板12の紙材16にランダムな向きに付着した小型の害虫がスキャナーの読取面に接触しない距離以上に設定すればよい。
【0033】
(実施形態1の作用効果)
続いて、実施形態1の作用効果について説明する。
【0034】
前述のように、枠体18の内側には、粘着板12(紙材16)に付着した害虫Bを収容するための収容空間CSが形成されている。そのため、粘着板12に付着した害虫Bが仮想平面VFから収容空間CSの外側に突出することを防止できる。特に、粘着板12の紙材16から仮想平面VFまでの距離(所定の距離)Mが4mm以上に設定されているため、調査対象の害虫Bがイネウンカ類である場合、粘着板12に付着したイネウンカ類が仮想平面VFから収容空間CSの外側に突出することがない。又は、所定の距離Mが前記接触しない距離以上に設定されているため、調査対象の害虫Bが体長10mm程度までの小型の害虫である場合、粘着板12に付着した小型の害虫が仮想平面VFから収容空間CSの外側に突出することがない。
【0035】
従って、実施形態1によれば、枠体付き捕獲粘着板10をスキャナーの読取面に載置するだけで、粘着板12に付着した害虫Bを変形又は破損させることなく、スキャナーによって枠体18を含む粘着板12を簡単にスキャニングすることができる。
【0036】
また、枠体18が粘着板12の全方位を隙間なく囲んでいるため、スキャナーによって取得された粘着板12の画像に影が入ることがなく、高品質な画像を取得することができる。特に、粘着板12の紙材16から仮想平面VFまでの距離Mが10mm以下に設定されているため、スキャナーによって粘着板12のより高品質な画像を取得することができる。
【0037】
従って、実施形態1によれば、粘着板12に付着した害虫Bの種の判別等を正確に行うことができる。
【0038】
(実施形態2)
実施形態2について
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、実施形態2に係る捕獲粘着板セットの模式的な斜視図である。
図4は、
図3に記載の捕獲粘着板セットの模式的な正面図であり、実施形態2に係る枠体付き捕獲粘着板を複数の連結ピンを重ねた状態を示している。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0039】
(粘着板セット20の概要、枠体付き捕獲粘着板10A)
図3に示すように、実施形態2に係る粘着板セット20は、複数の枠体付き捕獲粘着板10Aと、複数の枠体付き捕獲粘着板10Aを高さ方向に重なるための複数の連結ピン22とを備えている。また、実施形態2に係る枠体付き捕獲粘着板10Aは、実施形態1に係る枠体付き捕獲粘着板10(
図1及び
図2参照)と同様の構成を有しており、枠体付き捕獲粘着板10Aの構成のうち、枠体付き捕獲粘着板10と異なる点についてのみ説明する。なお、
図3においては、2つの枠体付き捕獲粘着板10Aを図示しており、
図4においては、3つの枠体付き捕獲粘着板10Aを図示しているが、枠体付き捕獲粘着板10Aの数は2つ又は3つに限定されるものではない。
【0040】
枠体18の4つの角部には、貫通穴18hがそれぞれ形成されている。枠体18の各貫通穴18hのうち枠体18の表側の部分(表側部分)は、枠体18の表側の端面18fに形成されかつ連結ピン22の一端部を係合させるための第1係合穴に相当する。枠体18の各貫通穴18hのうち枠体18の裏側の部分(裏側部分)は、枠体18の裏側の端面18sに形成されかつ連結ピン22の他端部を係合させるための複数の第2係合穴に相当する。なお、枠体18の4つの角部に貫通穴18hがそれぞれ形成される代わりに、枠体18の表側の端面18fに複数の有底の第1係合穴が形成されかつ枠体18の裏側の端面18fに複数の有底の第2係合穴が形成されてもよい。
【0041】
(連結ピン22)
各連結ピン22の一端部は、枠体18の各貫通穴18hの表側部分に係合可能であり、各連結ピン22の他端部は、枠体18の各貫通穴18hの裏側部分に係合可能である。各連結ピン22は、その中間に、高さ方向に隣接する枠体付き捕獲粘着板10Aの間隔を設定する間隔設定部22aを有している。
【0042】
(実施形態2の作用効果)
そして、実施形態2によれば、前述の実施形態1の作用効果の他に、次のような作用効果を奏する。
【0043】
いずれかの枠体付き捕獲粘着板10Aにおける枠体18の各貫通穴18hの表側部分に連結ピン22の一端部を係合させる。他のいずれかの枠体付き捕獲粘着板10Aにおける枠体18の各貫通穴18hの裏側部分に連結ピン22の他端部を係合させる。また、必要に応じて、前述の動作(連結ピン22の係合動作)を繰り返す。これにより、複数の枠体付き捕獲粘着板10Aを高さ方向に沿って重ねた状態で一体化することができる。
【0044】
従って、実施形態2によれば、複数の枠体付き捕獲粘着板10Aを一度に運搬することができ、複数の枠体付き捕獲粘着板10Aの運搬作業の効率化を図ることできる。
【0045】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0046】
〔実施例1〕
実施例1について
図5を参照して説明する。
図5は、イネウンカ類の種及びアクリル棒の大きさを変えながら、イネウンカ類の付着した粘着板とアクリル板との間に2つのアクリル棒を挟んだ場合において、アクリル板に虫体が接触した個体数を示す表図である。
【0047】
室内飼育されたイネウンカ類の3種の成虫を複数の粘着板に付着させた。具体的には、50匹のトビイロウンカ(長翅メス成虫)、50匹のトビイロウンカ(長翅オス成虫)、50匹のセジロウンカ(長翅メス成虫)、50匹のセジロウンカ(長翅オス成虫)、50匹のヒメトビウンカ(長翅メス成虫)、及び50匹のヒメトビウンカ(長翅オス成虫)を複数の粘着板にそれぞれ付着させた。
【0048】
イネウンカ類の付着した粘着板とスキャナーの読取面に相当するアクリル板との間に、2mm角の2つのアクリル棒を挟み、イネウンカ類の虫体がアクリル板に接触しないか確認した。3mm角の2つのアクリル棒、4mm角の2つのアクリル棒、及び5mm角の2つのアクリル棒をそれぞれ用いた場合においても、イネウンカ類の虫体がアクリル板に接触しないか確認した。
【0049】
その結果をまとめると、
図5に示すようになる。即ち、2mm角の2つのアクリル棒及び3mm角の2つのアクリル棒を用いた場合には、イネウンカ類がスキャナーの読取面に相当するアクリル板に接触するが、4mm角の2つのアクリル棒及び5mm角の2つのアクリル棒を用いた場合には、イネウンカ類がスキャナーの読取面に相当するアクリル板に接触しないことが判明した。つまり、粘着板とスキャナーの読取面との間隔が4mm以上あれば、粘着板に付着したイネウンカ類がスキャナーの読取面に接触しないことが判明した。
【0050】
〔実施例2〕
実施例2について
図6を参照して説明する。
図6は、アクリル棒の大きさを変えながら、イネウンカ類以外の小型の害虫の付着した粘着板とアクリル板との間に2つのアクリル棒を挟んだ場合において、アクリル板に虫体が接触した個体数を示す表図である。
【0051】
室内飼育されたイネウンカ類以外の小型の害虫を複数の粘着板に付着させた。具体的には、50匹のツマグロヨコバイ(メス成虫)、50匹のツマグロヨコバイ(オス成虫)、50匹のフタテンチビヨコバイ(メス成虫)、及び50匹のフタテンチビヨコバイ(オス成虫)を複数の粘着板にそれぞれ付着させた。
【0052】
イネウンカ類以外の小型の害虫(ツマグロヨコバイ、フタテンチビヨコバイ)の付着した粘着板とスキャナーの読取面に相当するアクリル板との間に、2mm角の2つのアクリル棒を挟み、イネウンカ類の虫体がアクリル板に接触しないか確認した。3mm角の2つのアクリル棒、4mm角の2つのアクリル棒、及び5mm角の2つのアクリル棒をそれぞれ用いた場合においても、イネウンカ類以外の小型の害虫(ツマグロヨコバイ、フタテンチビヨコバイ)の虫体がアクリル板に接触しないか確認した。
【0053】
その結果をまとめると、
図6に示すようになる。即ち、2mm角の2つのアクリル棒、3mm角の2つのアクリル棒、及び4mm角の2つのアクリル棒を用いた場合には、ツマグロヨコバイがスキャナーの読取面に相当するアクリル板に接触するが、5mm角の2つのアクリル棒を用いた場合には、ツマグロヨコバイがスキャナーの読取面に相当するアクリル板に接触しないことが判明した。つまり、粘着板とスキャナーの読取面との間隔が5mm以上あれば、粘着板に付着したツマグロヨコバイがスキャナーの読取面に接触しないことが判明した。
【0054】
また、2mm角の2つのアクリル棒を用いた場合には、フタテンチビヨコバイがスキャナーの読取面に相当するアクリル板に接触するが、3mm角の2つのアクリル棒、4mm角の2つのアクリル棒、及び5mm角の2つのアクリル棒を用いた場合には、フタテンチビヨコバイがスキャナーの読取面に相当するアクリル板に接触しないことが判明した。つまり、粘着板とスキャナーの読取面との間隔が3mm以上あれば、粘着板に付着したフタテンチビヨコバイがスキャナーの読取面に接触しないことが判明した。
【0055】
〔実施例3〕
実施例3について
図7を参照して説明する。
図7は、スキャニング用の枠体を粘着板の周縁部に囲むように取付けた状態で、フラットヘッドスキャナーによるスキャニングによって取得された枠体を含む粘着板の画像を示す写真図である。
【0056】
3Dプリンターを用いた作成した矩形枠状の枠体を、矩形状の粘着板の周縁部に囲むように取付けることにより、枠体付き捕獲粘着板を試作した。そして、枠体付き捕獲粘着板をイネウンカ類の発生調査に用いた後、スキャナーによって枠体を含む粘着板をスキャニングした。その結果、
図7に示すように、スキャナーによってイネウンカ類の種の判別が可能な高品質の鮮明な画像を取得することができた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の一態様に係る枠体付き捕獲粘着板は、害虫の発生調査を行う公設試験場又は農薬メーカー等での利用が想定され、産業上の利用可能性を有する。また、本発明の一態様に係る枠体付き捕獲粘着板は、害虫の種の自動判別を行うAIの研究機関又はメーカーでの利用が想定され、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0058】
10:枠体付き捕獲粘着板、12:粘着板、14:基材、14f:基材の表面、14s:基材の裏面、16:紙材(粘着層)、16f:紙材の表面、18:枠体、18f:枠体の開口側の端面、18s:枠体の開口側の反対側の端面、CS:収容空間、VF:仮想平面、20:粘着板セット、10A:枠体付き捕獲粘着板、18h:貫通穴(第1係合穴、第2係合穴)、22:連結ピン、22a:間隔設定部