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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】ペプチド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/06 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
C07K1/06
【請求項の数】 42
(21)【出願番号】P 2020571181
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2020003927
(87)【国際公開番号】W WO2020162393
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2019017919
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019209066
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506269633
【氏名又は名称】ペプチドリーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】半田 道玄
(72)【発明者】
【氏名】安田 直彦
(72)【発明者】
【氏名】長屋 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】上坂 浩之
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-067555(JP,A)
【文献】特表平04-502908(JP,A)
【文献】Albert Isidro-Llobet et al.,Amino Acid-Protecting Groups,Chem. Rev.,2009年,Vol.109,p.2455-2504
【文献】Kimitoshi Sakamoto et al.,Combination of silyl carbamate and amino acid fluoride for solid-phase peptide synthesis,Tetrahedron Letters,2002年,Vol.43,p.1515-1518
【文献】Hidekazu Katayama et al.,Direct evidence for the function of crustacean insulin-like androgenic gland factor (IAG): Total chemical synthesis of IAG,Bioorganic & Medicinal Chemistry ,2014年,Vol.22,p.5783-5789
【文献】BRUCE H. et al.,Triisopropylsilyloxycarbonyl (''Tsoc''): A New Protecting Group for 1° and 2° Amines,J. Org. Chem.,1999年,Vol.64,p.3792-3793
【文献】Huan Liang et al.,Di-tert-butylisobutylsilyl, Another Useful Protecting Group,ORGANIC LETTERS,2011年,Vol.13, No.15,p.4120-4123
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)及び(2)を含む、ペプチドの製造方法。
(1)
式(I):
【化1】

[式中、
Yは、C末端が無保護のアミノ酸又はC末端が無保護のペプチドを表し、
、R及びRは、独立して、それぞれ無置換であるか、又は置換基で置換されている脂肪族炭化水素基を表し、
Si基中の炭素原子の総数は、10以上であり、
SiOC(O)基は、Y中のN末端と結合している。]
で表されるN-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドのC末端に、C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドを縮合させる工程。
(2)
工程(1)で得られたペプチドのC末端の保護基を、除去する工程。
【請求項2】
さらに下記工程(3)及び(4)の繰り返しを1以上含む、請求項1に記載の製造方法。
(3)
工程(2)又は(4)で得られたペプチドのC末端にC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドを縮合させる工程。
(4)
工程(3)で得られたペプチドのC末端の保護基を除去する工程。
【請求項3】
得られたペプチドを、分液により精製する工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
得られたペプチドを、酸性水溶液又は塩基性水溶液で分液精製する工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項5】
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのC末端の保護基が、C1-6アルキル基、C7-10アラルキル基又はトリC1-6アルキルシリル基である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのC末端の保護基が、C1-6アルキル基又はトリC1-6アルキルシリル基である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのC末端の保護基が、トリC1-6アルキルシリル基である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのC末端の保護基が、トリメチルシリル基である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(1)における縮合が、カルボジイミド系縮合剤、クロロホルメート系縮合剤、酸ハロゲン化物系縮合剤、ホスホニウム系縮合剤及びウロニウム系縮合剤からなる群より選ばれる縮合剤を用いて縮合する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(1)における縮合が、イソブチルクロロホルメート、ピバロイルクロリド及び(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる縮合剤を用いて縮合する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
工程(1)において、さらに塩基を使用する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
塩基が、脂肪族アミン又は芳香族アミンである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
塩基が、N,N-ジイソプロピルエチルアミン又はN-メチルモルホリンである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
工程(2)における脱保護条件が、フッ素化合物以外の脱保護剤を使用する条件である、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
工程(2)における脱保護条件が、水、塩基若しくは酸を使用する、又は水素及び金属触媒を使用する条件である、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
工程(2)における脱保護条件が、水、トリフルオロ酢酸若しくは水酸化リチウムを使用する、又は水素及びパラジウムカーボン粉末を使用する条件である、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
工程(2)における脱保護条件が、水を使用する条件である、請求項7乃至13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
さらに下記工程(5)を含む、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の製造方法。
(5)
工程(2)又は(4)で得られたペプチドのN末端の保護基を、脱保護剤で除去する工程。
【請求項19】
工程(5)で使用する脱保護剤が、フッ素化合物である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
フッ素化合物が、フッ化カリウム又はフッ化アンモニウムである、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
さらに下記工程(6)及び(7)を含む、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の製造方法。
(6)
工程(2)又は(4)で得られたペプチドのC末端にC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドを縮合させる工程。
(7)
工程(6)で得られたペプチドのN末端の保護基を、脱保護剤で除去する工程。
【請求項22】
工程(7)で使用する脱保護剤が、フッ素化合物である、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
フッ素化合物が、フッ化カリウム又はフッ化アンモニウムである、請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのC末端の保護基が、C1-6アルキル基又はベンジル基である請求項21乃至23のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項25】
Si基中の炭素原子の総数が10乃至100である、請求項1乃至24のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項26】
Si基中の炭素原子の総数が10乃至40である、請求項1乃至24のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項27】
Si基中の炭素原子の総数が12乃至26である、請求項1乃至24のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項28】
、R及びRの内、2つ又は3つが、互いに独立して、2級若しくは3級の脂肪族炭化水素基である、請求項1乃至27のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項29】
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級の脂肪族炭化水素基であり、残りの1つが、3級の脂肪族炭化水素基である、請求項28に記載の製造方法。
【請求項30】
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級のC3-6アルキル基であり、残りの1つが、3級のC4-6アルキル基である、請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
Si基が、ジ-i-プロピル-t-ブチルシリル基である、請求項1乃至26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項32】
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級の脂肪族炭化水素基であり、残りの1つが、置換基を有している2級の脂肪族炭化水素基(ここで、2級の脂肪族炭化水素基の置換基は、シリル原子に結合する炭素原子上に存在する。)である、請求項28に記載の製造方法。
【請求項33】
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級のC3-6アルキル基であり、残りの1つが、フェニル基で置換された2級のC3-6アルキル基(ここで、2級のC3-6アルキル基の置換基であるフェニル基は、シリル原子に結合する炭素原子上に存在する。)である、請求項32に記載の製造方法。
【請求項34】
Si基が、ジ-i-プロピルクミルシリル基である、請求項33に記載の製造方法。
【請求項35】
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、3級の脂肪族炭化水素基である、請求項28に記載の製造方法。
【請求項36】
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、3級のC4-6アルキル基である、請求項35に記載の製造方法。
【請求項37】
Si基が、ジ-t-ブチルイソブチルシリル基である、請求項36に記載の製造方法。
【請求項38】
Si基が、ベンジル-ジ-t-ブチルシリル基、ジ-t-ブチルオクタデシルシリル基又はジ-t-ブチルシクロへキシルシリル基である、請求項36に記載の製造方法。
【請求項39】
アミノ酸又はペプチドがα-アミノ酸で構成される、請求項1乃至38のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項40】
置換基で置換されている脂肪族炭化水素基における置換基が、C 6-14 アリール基、C 6-14 アリールオキシ基、5-10員複素環基、ヒドロキシ基、C 1-40 アルコキシ基、C 3-6 シクロアルコキシ基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、アミノ基、モノC 1-6 アルキルアミノ基、N-アセチルアミノ基、ジC 1-6 アルキルアミノ基、ハロゲン原子、C 1-6 アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、N-メチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基、トリC 1-6 アルキルシリル基、トリC 1-6 アルキルシリルオキシ基、シアノ基、ニトロ基又はカルボキシ基である、請求項1~39のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項41】
置換基が、C 6-14 アリール基、C 1-40 アルコキシ基、ジC 1-6 アルキルアミノ基、トリC 1-6 アルキルシリル基又はトリC 1-6 アルキルシリルオキシ基である、請求項40に記載の製造方法。
【請求項42】
置換基が、C 6-14 アリール基、C 1-40 アルコキシ基又はトリC 1-6 アルキルシリル基である、請求項40に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリルカルバメート系保護基を用いる、ペプチドの新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリルカルバメート系保護基は、フッ素イオン等により温和且つ他の保護基に対して選択的に脱保護できることから、アミノ酸及びペプチドのN末端保護基としてペプチド合成に用いられている(例えば、非特許文献1~3)。
ペプチド合成における代表的な使用例としては、N末端側がトリイソプロピルシリルカルボニル(Tsoc)基で保護されたアミノ酸とC末端が保護されたアミノ酸とを縮合し、N末端及びC末端が保護されたジペプチドを得る方法が知られている(例えば、非特許文献1~2)。
ペプチド合成における別の使用例としては、N末端側をシリルカルバメート系の固相支持体に結合させた後、C末端側にペプチド鎖を伸長する固相合成法が知られている(例えば、非特許文献3)。
また、C末端側にペプチド鎖を伸長する方法としてC末端カルボキシ基をクロロギ酸アルキルで活性化し、シリル化されたアミノ酸又はペプチドと反応させてC末端が遊離したペプチドを得る方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5535928号
【文献】米国特許第5714484号
【非特許文献】
【0004】
【文献】テトラヘドロン レターズ、2002年、43巻、1515-1518頁
【文献】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー、1999年、64巻、3792-3793頁
【文献】テトラへドロン レターズ、2001年、42巻、5629-5633頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1のペプチド合成では、C末端が遊離したペプチドは得られておらず、更にN末端とシリルカルバメート系保護基の結合を維持したままC末端側にペプチド鎖を伸長する方法については検討されていなかった。
また、上記非特許文献2の方法でも、C末端が遊離したペプチドは得られておらず、さらに酸性及び塩基性条件下での、C末端保護基の除去や分液操作によって、N末端保護基のTsoc基が容易に脱離することが見出された。
本発明は、N末端側に特定の構造を有するシリルカルバメート系保護基を用いて、C末端側にペプチド鎖を伸長し、C末端が遊離したペプチドを得る、液相でのペプチドの新規な製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構造を有するシリルカルバメート系保護基を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下を特徴とするものである。
【0007】
[1]
下記工程(1)及び(2)を含む、ペプチドの製造方法。
(1)
式(I):
【化1】

[式中、
Yは、C末端が無保護のアミノ酸又はC末端が無保護のペプチドを表し、
、R及びRは、独立して、それぞれ置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、
Si基中の炭素原子の総数は、10以上であり、
SiOC(O)基は、Y中のN末端と結合している。]
で表されるN-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドのC末端に、C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドを縮合させる工程。
(2)
工程(1)で得られたペプチドのC末端の保護基を、除去する工程。
[2]
さらに下記工程(3)及び(4)の繰り返しを1以上含む、[1]に記載の製造方法。
(3)
工程(2)又は(4)で得られたペプチドのC末端にC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドを縮合させる工程。
(4)
工程(3)で得られたペプチドのC末端の保護基を除去する工程。
[3]
得られたペプチドを、分液により精製する工程を含む、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]
得られたペプチドを、酸性水溶液又は塩基性水溶液で分液精製する工程を含む、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[5]
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのC末端の保護基が、C1-6アルキル基、C7-10アラルキル基又はトリC1-6アルキルシリル基である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[6]
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのC末端の保護基が、C1-6アルキル基又はトリC1-6アルキルシリル基である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[7]
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのC末端の保護基が、トリC1-6アルキルシリル基である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[8]
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのC末端の保護基が、トリメチルシリル基である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[9]
工程(1)における縮合が、カルボジイミド系縮合剤、クロロホルメート系縮合剤、酸ハロゲン化物系縮合剤、ホスホニウム系縮合剤及びウロニウム系縮合剤からなる群より選ばれる縮合剤を用いて縮合する[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の製造方法。
[10]
工程(1)における縮合が、イソブチルクロロホルメート、ピバロイルクロリド及び(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩からなる群より選ばれる縮合剤を用いて縮合する[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の製造方法。
[11]
工程(1)において、さらに塩基を使用する、[1]乃至[10]のいずれか1つに記載の製造方法。
[12]
塩基が、脂肪族アミン又は芳香族アミンである、[11]に記載の製造方法。
[13]
塩基が、N,N-ジイソプロピルエチルアミン又はN-メチルモルホリンである、[11]に記載の製造方法。
[14]
工程(2)における脱保護条件が、フッ素化合物以外の脱保護剤を使用する条件である、[1]乃至[13]のいずれか1つに記載の製造方法。
[15]
工程(2)における脱保護条件が、水、塩基若しくは酸を使用する、又は水素及び金属触媒を使用する条件である、[1]乃至[13]のいずれか1つに記載の製造方法。
[16]
工程(2)における脱保護条件が、水、トリフルオロ酢酸若しくは水酸化リチウムを使用する、又は水素及びパラジウムカーボン粉末を使用する条件である、[1]乃至[13]のいずれか1つに記載の製造方法。
[17]
工程(2)における脱保護条件が、水を使用する条件である、[7]乃至[13]のいずれか1つに記載の製造方法。
[18]
さらに下記工程(5)を含む、[1]乃至[17]のいずれか1つに記載の製造方法。
(5)
工程(2)又は(4)で得られたペプチドのN末端の保護基を、脱保護剤で除去する工程。
[19]
工程(5)で使用する脱保護剤が、フッ素化合物である、[18]に記載の製造方法。
[20]
フッ素化合物が、フッ化カリウム又はフッ化アンモニウムである、[19]に記載の製造方法。
[21]
さらに下記工程(6)及び(7)を含む、[1]乃至[17]のいずれか1つに記載の製造方法。
(6)
工程(2)又は(4)で得られたペプチドのC末端にC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドを縮合させる工程。
(7)
工程(6)で得られたペプチドのN末端の保護基を、脱保護剤で除去する工程。
[22]
工程(7)で使用する脱保護剤が、フッ素化合物である、[21]に記載の製造方法。
[23]
フッ素化合物が、フッ化カリウム又はフッ化アンモニウムである、[22]に記載の製造方法。
[24]
C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドのC末端の保護基が、C1-6アルキル基又はベンジル基である[21]乃至[23]のいずれか1つに記載の製造方法。
[25]
Si基中の炭素原子の総数が10乃至100である、[1]乃至[24]のいずれか1つに記載の製造方法。
[26]
Si基中の炭素原子の総数が10乃至40である、[1]乃至[24]のいずれか1つに記載の製造方法。
[27]
Si基中の炭素原子の総数が12乃至26である、[1]乃至[24]のいずれか1つに記載の製造方法。
[28]
、R及びRの内、2つ又は3つが、互いに独立して、2級若しくは3級の脂肪族炭化水素基である、[1]乃至[27]のいずれか1つに記載の製造方法。
[29]
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級の脂肪族炭化水素基であり、残りの1つが、3級の脂肪族炭化水素基である、[28]に記載の製造方法。
[30]
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級のC3-6アルキル基であり、残りの1つが、3級のC4-6アルキル基である、[29]に記載の製造方法。
[31]
Si基が、ジ-i-プロピル-t-ブチルシリル基である、[1]乃至[26]のいずれか1つに記載の製造方法。
[32]
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級の脂肪族炭化水素基であり、残りの1つが、置換基を有している2級の脂肪族炭化水素基(ここで、2級の脂肪族炭化水素基の置換基は、シリル原子に結合する炭素原子上に存在する。)である、[28]に記載の製造方法。
[33]
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級のC3-6アルキル基であり、残りの1つが、フェニル基で置換された2級のC3-6アルキル基(ここで、2級のC3-6アルキル基の置換基であるフェニル基は、シリル原子に結合する炭素原子上に存在する。)である、[32]に記載の製造方法。
[34]
Si基が、ジ-i-プロピルクミルシリル基である、[33]に記載の製造方法。
[35]
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、3級の脂肪族炭化水素基である、[28]に記載の製造方法。
[36]
、R及びRの内、2つが、互いに独立して、3級のC4-6アルキル基である、[35]に記載の製造方法。
[37]
Si基が、ジ-t-ブチルイソブチルシリル基である、[36]に記載の製造方法。
[38]
Si基が、ベンジル-ジ-t-ブチルシリル基、ジ-t-ブチルオクタデシルシリル基又はジ-t-ブチルシクロへキシルシリル基である、[36]に記載の製造方法。
[39]
アミノ酸又はペプチドがα-アミノ酸で構成される、[1]乃至[38]のいずれか1つに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、シリルカルバメート系保護基を用いた液相でのペプチドの新規な製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0010】
本明細書における「n-」はノルマル、「i-」はイソ、「s-」はセカンダリー、「t-」はターシャリー、「Me」はメチル、「Bu」はブチル、「Bn」はベンジル、「Ph」はフェニル、「Tf」はトリフルオロメタンスルホニル、「TMS」はトリメチルシリル、「IPBS」はジ-i-プロピル-t-ブチルシリル、「IPCS」はジ-i-プロピルクミルシリル、「PhBS」はジ-t-ブチルフェニルシリル、「CHBS」はジ-t-ブチルシクロへキシルシリル、「Tsoc」はトリイソプロピルシリルオキシカルボニル、「BIBSoc」はジ-t-ブチルイソブチルシリルオキシカルボニル、「IPBSoc」はジ-i-プロピル-t-ブチルシリルオキシカルボニル、「IPCSoc」はジ-i-プロピルクミルシリルオキシカルボニル、「BBSoc」はベンジル-ジ-t-ブチルシリルオキシカルボニル、「CHBSoc」はジ-t-ブチルシクロへキシルシリルオキシカルボニル、「ODBSoc」はジ-t-ブチルオクタデシルシリルオキシカルボニル、「Boc」はt-ブチルオキシカルボニルを意味する。
【0011】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0012】
「C1-6アルキル基」とは、炭素数が1乃至6個である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を意味し、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。また、「C3-6アルキル基」とは、炭素数が3乃至6個であり、「C4-6アルキル基」とは、炭素数が4乃至6個である、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を意味する。
【0013】
「C1-40アルキル基」とは、炭素数が1乃至40個である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を意味し、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、トリアコンチル基、テトラコンチル基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシル基(以下、2,3-ジヒドロフィチル基ということもある。)などが挙げられる。
【0014】
「C1-6アルコキシ基」とは、炭素数が1乃至6個である直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基を意味し、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0015】
「C1-40アルコキシ基」とは、炭素数が1乃至40個である直鎖又は分岐鎖状のアルコキシ基を意味し、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ドコシルオキシ基、トリアコンチルオキシ基、テトラコンチルオキシ基、3,7,11,15-テトラメチルヘキサデシルオキシ基(以下、2,3-ジヒドロフィチルオキシ基ということもある。)などが挙げられる。
【0016】
「C1-6アルコキシカルボニル基」とは、1個の前記「C1-6アルコキシ基」がカルボニル基に結合した基を意味し、具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0017】
「C2-6アルケニル基」とは、炭素数が2乃至6個である直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基を意味し、具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基などが挙げられる。
【0018】
「C2-6アルキニル基」とは、炭素数が2乃至6個である直鎖又は分岐鎖状のアルキニル基を意味し、具体例としては、エチニル基、1-プロピニル基などが挙げられる。
【0019】
「C3-6シクロアルキル基」とは、炭素数が3乃至6個であるシクロアルキル基を意味し、具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0020】
「C3-6シクロアルコキシ基」とは、炭素数が3乃至6個であるシクロアルコキシ基を意味し、具体例としては、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0021】
「C6-14アリール基」とは、炭素数が6乃至14個である芳香族炭化水素基を意味し、その具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、ビフェニル基などが挙げられる。
【0022】
「C6-14アリールオキシ基」とは、炭素数が6乃至14個であるアリールオキシ基を意味し、具体例としては、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、2-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、ビフェニルオキシ基などが挙げられる。
【0023】
「C7-10アラルキル基」とは、炭素数が7乃至10個であるアラルキル基を意味し、具体例としては、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、1-フェニルプロピル基などが挙げられる。
【0024】
「トリC1-6アルキルシリル基」とは、同一又は異なる3個の前記「C1-6アルキル基」がシリル基に結合した基を意味し、具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ジ-t-ブチルイソブチルシリル基などが挙げられる。
【0025】
「トリC1-6アルキルシリルオキシ基」とは、同一又は異なる3個の前記「C1-6アルキル基」がシリルオキシ基に結合した基を意味し、具体例としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、t-ブチルジメチルシリルオキシ基、ジ-t-ブチルイソブチルシリルオキシ基などが挙げられる。
【0026】
「モノC1-6アルキルアミノ基」とは、1個の前記「C1-6アルキル基」がアミノ基に結合した基を意味し、具体例としては、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノ-n-プロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、モノ-n-ブチルアミノ基、モノイソブチルアミノ基、モノ-t-ブチルアミノ基、モノ-n-ペンチルアミノ基、モノ-n-ヘキシルアミノ基などが挙げられる。
【0027】
「ジC1-6アルキルアミノ基」とは、同一又は異なる2個の前記「C1-6アルキル基」がアミノ基に結合した基を意味し、具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジ-n-ペンチルアミノ基、ジ-n-ヘキシルアミノ基、N-エチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-n-プロピルアミノ基、N-イソプロピル-N-メチルアミノ基、N-n-ブチル-N-メチルアミノ基、N-イソブチル-N-メチルアミノ基、N-t-ブチル-N-メチルアミノ基、N-メチル-N-n-ペンチルアミノ基、N-n-ヘキシル-N-メチルアミノ基、N-エチル-N-n-プロピルアミノ基、N-エチル-N-イソプロピルアミノ基、N-n-ブチル-N-エチルアミノ基、N-エチル-N-イソブチルアミノ基、N-t-ブチル-N-エチルアミノ基、N-エチル-N-n-ペンチルアミノ基、N-エチル-N-n-ヘキシルアミノ基などが挙げられる。
【0028】
「5-10員複素環基」とは、環を構成する原子の数が5乃至10個であり、かつ環を構成する原子中に、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より独立して選ばれる1乃至4個のヘテロ原子を含有する単環系又は縮合環系の複素環基を意味する。この複素環基は飽和、部分不飽和、不飽和のいずれであってもよく、具体例としては、ピロリジニル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、ピペリジル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオピラニル基、ピロール基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、アゼパニル基、オキセパニル基、チエパニル基、アゼピニル基、オキセピニル基、チエピニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリニル基、ピラジニル基、モルホリニル基、チアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾイミダゾリル基、プリニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、クロメニル基、イソクロメニル基などが挙げられる。
【0029】
「脂肪族炭化水素基」とは、直鎖、分岐鎖状又は環状の、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられ、具体例としては、C1-40アルキル基、C3-6シクロアルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基が挙げられる。
【0030】
「芳香族炭化水素基」とは、単環又は複数の環から構成される炭化水素基であり、少なくとも一つの環が芳香族性を示す基を意味し、具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、インデニル基、フェナセニル基、インダニル基等が挙げられる。
【0031】
「置換基を有していてもよい」とは、無置換であるか、又は任意の数の任意の置換基で置換されていることを意味する。
【0032】
上記の「任意の置換基」は、本発明が対象とする反応に悪影響を与えない置換基であれば特に種類は限定されない。
【0033】
「置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基」における「置換基」としては、例えば、C6-14アリール基、C6-14アリールオキシ基、5-10員複素環基、ヒドロキシ基、C1-40アルコキシ基、C3-6シクロアルコキシ基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基、アミノ基、モノC1-6アルキルアミノ基、N-アセチルアミノ基、ジC1-6アルキルアミノ基、ハロゲン原子、C1-6アルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、N-メチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基、トリC1-6アルキルシリル基、トリC1-6アルキルシリルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基等が挙げられ、好ましくは、C6-14アリール基、C1-40アルコキシ基、ジC1-6アルキルアミノ基、トリC1-6アルキルシリル基、トリC1-6アルキルシリルオキシ基であり、より好ましくは、C6-14アリール基、C1-40アルコキシ基、トリC1-6アルキルシリル基である。
【0034】
「置換基を有している」とは、任意の数の任意の置換基で置換されていることを意味する。
【0035】
上記の「任意の置換基」は、本発明が対象とする反応に悪影響を与えない置換基であれば特に種類は限定されない。
【0036】
「置換基を有している2級の脂肪族炭化水素基」における「置換基」としては、例えば、C6-14アリール基、C6-14アリールオキシ基、5-10員複素環基、C1-40アルコキシ基、C3-6シクロアルコキシ基等が挙げられ、好ましくは、C6-14アリール基であり、より好ましくは、フェニル基である。
【0037】
本明細書中、「特定の構造を有するシリルカルバメート系保護基」とは、下記式(II):
【化2】

[式中、
、R及びRは、独立して、それぞれ置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を表し、
Si基中の炭素原子の総数は、10以上である。]
で表される、アミノ酸又はペプチドのN末端と結合する保護基を意味する。
【0038】
「RSi基中の炭素原子の総数」とは、R、R及びRがそれぞれ有する炭素原子数の合計であり、R、R及びRの内、少なくとも一つが置換基を有している場合は、その置換基中の炭素原子数も含まれる。
【0039】
式(II)において、R、R及びRは、互いに独立して、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、好ましくは、R、R及びRの内、2つ又は3つが、互いに独立して、2級若しくは3級の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは、R、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級の脂肪族炭化水素基であり、残りの1つが、3級の脂肪族炭化水素基であり、更に好ましくは、R、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級のC3-6アルキル基であり、残りの1つが、3級のC4-6アルキル基であり、より更に好ましくは、R、R及びRの内、2つが、i-プロピル基であり、残りの1つがt-ブチル基である。
【0040】
式(II)において、R、R及びRの別の態様としては、好ましくは、R、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級の脂肪族炭化水素基であり、残りの1つが、置換基を有している2級の脂肪族炭化水素基(ここで、2級の脂肪族炭化水素基の置換基は、シリル原子に結合する炭素原子上に存在する。)であり、より好ましくは、R、R及びRの内、2つが、互いに独立して、2級のC3-6アルキル基であり、残りの1つが、フェニル基で置換された2級のC3-6アルキル基(ここで、2級の脂肪族炭化水素基の置換基であるフェニル基は、シリル原子に結合する炭素原子上に存在する。)であり、更に好ましくは、R、R及びRの内、2つが、i-プロピル基であり、残りの1つが、クミル基である。
【0041】
式(II)において、R、R及びRの別の態様としては、好ましくは、R、R及びRの内、2つが、互いに独立して、3級の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは、R、R及びRの内、2つが、互いに独立して、3級のC4-6アルキル基であり、更に好ましくは、R、R及びRの内、2つが、t-ブチル基であり、残りの1つが、i-ブチル基、ベンジル基、オクタデシル基又はシクロへキシル基である。
【0042】
式(II)において、RSi基中の炭素原子の総数は、好ましくは10乃至100であり、より好ましくは10乃至40であり、更に好ましくは12乃至26である。
【0043】
本発明で用いる特定の構造を有するシリルカルバメート系保護基(本発明の保護基)の特徴としては、例えば以下が挙げられる。
(a)C末端Me基が脱保護される塩基性条件(水酸化リチウム水溶液などの試薬の存在下)で、本発明の保護基は安定である(後述の合成例2など参照)。
(b)C末端t-Bu基が脱保護される酸性条件(トリフルオロメタンスルホン酸などの試薬の存在下)で、本発明の保護基は安定である(後述の合成例3など参照)。
(c)C末端TMS基が脱保護される分液の条件下で、本発明の保護基は安定である(後述の合成例1及び4など参照)。
(d)フッ素化合物(フッ化カリウム、フッ化アンモニウムなど)の存在下で脱保護される。
【0044】
「N-保護アミノ酸」及び「N-保護ペプチド」とは、N末端のアミノ基が保護されており、C末端のカルボキシ基が無保護のアミノ酸又はペプチドを意味する。
【0045】
「C-保護アミノ酸」及び「C-保護ペプチド」とは、C末端のカルボキシ基が保護されており、N末端のアミノ基が無保護のアミノ酸又はペプチドを意味する。
【0046】
本発明で使用されるアミノ酸は、アミノ基とカルボキシ基の両方の官能基を持つ有機化合物であり、好ましくはα-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸又はδ-アミノ酸であり、より好ましくはα-アミノ酸又はβ-アミノ酸であり、更に好ましくはα-アミノ酸である。またこれらのアミノ酸に2以上のアミノ基が存在する場合(例えば、アルギニン、リシン等)、2以上のカルボキシ基が存在する場合(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、又は反応性官能基が存在する場合(例えば、システイン、セリン等)、本発明で使用されるアミノ酸は、ペプチドの形成に関与しないアミノ基、カルボキシ基及び/又は反応性官能基が、保護及び/又は修飾されたアミノ酸も含む。
【0047】
ペプチドとは当業者に周知の概念であるが、念のために補足すると、本発明におけるペプチドは、アミノ酸をモノマーとしてペプチド結合により鎖状につながった分子をいい、本発明で使用されるペプチドを構成するアミノ酸は、上述のアミノ酸である。
【0048】
α-アミノ酸の立体構造は特に限定されないが、好ましくはL体である。
【0049】
「一時保護基」とは、ペプチド鎖を伸長する末端側の保護基であり、ペプチド伸長反応(アミド化反応)を行う前に脱保護される保護基を意味し、C末端側へのペプチド鎖の伸長においては、C末端保護基が挙げられる。C末端保護基としては、ペプチド化学等の技術分野で一般的に用いられる、カルボキシ基の保護基が使用可能であるが、好ましくは、特定の構造を有するシリルカルバメート系保護基の脱離とは異なる条件により脱離する保護基であり、具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、シリル基であり、好ましくはC1-6アルキル基、C7-10アラルキル基、トリC1-6アルキルシリル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、t-ブチル基、ベンジル基、トリメチルシリル基が挙げられる。
【0050】
本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと同様又は同等の任意の方法及び材料は、本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及したすべての刊行物及び特許は、例えば、記載された発明に関連して使用されうる刊行物に記載されている、構築物及び方法論を記載及び開示する目的で、参照として本明細書に組み入れられる。
【0051】
(本発明のペプチドの製造法の具体的な説明)
以下に本発明のペプチドの製造法の各工程(i)乃至(vi)について説明する。
一つの態様として、本発明のペプチドの製造は、以下の工程(i)乃至(vi)として記載されるそれぞれの単位工程により構成される。
一つの態様として、本発明のペプチドの製造は、以下の工程(i)乃至(vi)として記載される単位工程を、すべてまたは適宜組み合わせることで行うことができる。
なお、本具体的な説明は以下に基づき説明される。
(a)工程(i)乃至(vi)の記載におけるR、RおよびRは、上記と同義である。
(b)反応の具体的な条件は、本発明のペプチドの製造が達成される限りにおいて特に制限されない。各反応における好ましい条件は適宜詳述される。
(c)各反応で記載される溶媒は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
【0052】
工程(i):ペプチド鎖伸長工程
本工程は、特定の構造を有するシリルカルバメート系保護基をN末端に導入したN-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドのC末端に、市販品又はシリル化剤を用いて合成したC-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドを縮合させる工程である。
尚、特定の構造を有するシリルカルバメート系保護基をN末端に導入したN-保護アミノ酸又はペプチドは、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、1999年、64巻、3792-3793頁、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー、2005年、127巻、13720-13725頁及び参考合成例1、5、7に記載の方法及びそれに準ずる方法で得ることができる。
【0053】
本工程は、縮合剤を使用し、ペプチド化学等の技術分野で一般的に用いられる縮合条件下で行われる。
【0054】
本工程で使用する縮合剤は、特に制限は無いが、好ましくは、カルボジイミド系縮合剤(例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-ジメチルアミノプロピルカルボジイミド 塩酸塩(EDCI))、クロロホルメート系縮合剤(例えば、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル)、酸ハロゲン化物系縮合剤(例えば、ピバロイルクロリド)、イミダゾール系縮合剤(例えば、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI))、ホスホニウム系縮合剤(例えば、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBOP(商標登録))、ブロモトリピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(PyBrop(商標登録)))、ウロニウム系縮合剤(例えば、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロ-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O-ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロボレート(HBTU)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(COMU))等であり、より好ましくは、カルボジイミド系縮合剤、クロロホルメート系縮合剤、酸ハロゲン化物系縮合剤、ホスホニウム系縮合剤又はウロニウム系縮合剤であり、更に好ましくは、クロロギ酸イソブチル、ピバロイルクロリド又は(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩である。
【0055】
縮合剤の使用量は、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドに対して、好ましくは0.1当量乃至20当量であり、より好ましくは1当量乃至10当量であり、さらに好ましくは1当量乃至5当量である。
【0056】
本工程において、添加剤及び塩基は、反応を妨げない限り適宜使用することができる。
【0057】
本工程で使用する添加剤は、特に制限は無いが、その例としては、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-1H-1,2,3-トリアゾール-5-カルボン酸エチルエステル(HOCt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、(ヒドロキシイミノ)シアノ酢酸エチル(OxymaPure)等が挙げられる。
【0058】
添加剤の使用量は、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドに対して、好ましくは0.01当量乃至20当量であり、より好ましくは0.2当量乃至10当量であり、さらに好ましくは1当量乃至5当量である。
【0059】
本工程で使用する塩基は、特に制限は無いが、その例としては、脂肪族アミン(例えば、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン)、芳香族アミン(例えば、ピリジン)等が挙げられる。好ましくは、脂肪族アミンであり、より好ましくはN,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリンである。
【0060】
塩基の使用量は、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドに対して、好ましくは1当量乃至50当量であり、より好ましくは1当量乃至10当量であり、さらに好ましくは1当量乃至5当量である。
【0061】
本工程で使用する溶媒は、反応を妨げない限り特に限定されないが、その例としては、含ハロゲン炭化水素溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム)、芳香族炭化水素溶媒(例えば、トルエン、キシレン)、エーテル溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル)、アミド溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド等)、ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリル)等が挙げられる。好ましくは含ハロゲン炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、又はエーテル溶媒であり、より好ましくはトルエン、テトラヒドロフラン、又はメチル-t-ブチルエーテルである。
【0062】
溶媒の使用量は、N-保護アミノ酸又はN-保護ペプチドに対して、好ましくは100質量倍以下であり、より好ましくは1質量倍乃至50質量倍であり、さらに好ましくは5質量倍乃至20質量倍である。
【0063】
反応温度は、特に制限は無いが、-40℃から反応混合物の還流温度までが好ましく、より好ましくは-20℃乃至50℃であり、さらに好ましくは-10℃乃至30℃である。
【0064】
反応時間は、特に制限は無いが、反応開始乃至72時間が好ましく、より好ましくは0.1時間乃至48時間であり、さらに好ましくは0.1乃至24時間である。
【0065】
反応の進行の確認は、一般的な液相有機合成反応と同様の方法を適用できる。即ち、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)等を用いて反応を追跡することができる。
【0066】
工程(ii):C末端の脱保護工程
本工程は、上記工程(i)で得られたペプチドのC末端保護基を除去する工程である。
【0067】
脱保護条件は、C末端保護基の種類により適宜選択されるが、特定の構造を有するシリルカルバメート系保護基の脱離とは異なる条件により脱保護するのが好ましい。C末端保護基がC1-6アルキル基の場合は、塩基又は酸で処理することにより行われ(例えば、メチル基の場合は、塩基で処理することにより行なわれ、t-ブチル基の場合は、酸で処理することにより行われる)、C7-10アラルキル基(例えば、ベンジル基など)の場合は、金属触媒存在下、水素添加することにより行われ、トリC1-6アルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基など)の場合は、水(中性、酸性又は塩基性水溶液など)で処理することにより行われる。
【0068】
本工程で使用する塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピペリジン、ヒドラジン等が挙げられる。
【0069】
本工程で使用する酸としては、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等が挙げられる。
【0070】
当該反応に用いる金属触媒としては、例えば、パラジウムカーボン粉末、白金カーボン粉末、ルテニウムカーボン粉末、アルミナ粉末等が挙げられる。
【0071】
本工程で使用する水溶液は、特に制限はないが、酸性水溶液としては、塩酸、硫酸、酢酸水溶液、リン酸水溶液、クエン酸水溶液、塩化アンモニウム水溶液等が挙げられる。塩基性水溶液としては、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、アンモニア水等が挙げられる。
【0072】
本工程で使用する溶媒は、反応を妨げない限り特に限定されないが、その例としては、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール)、含ハロゲン炭化水素溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム)、芳香族炭化水素溶媒(例えば、トルエン、キシレン)、エーテル溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル)、アミド溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)、ニトリル溶媒(例えば、アセトニトリル)等が挙げられる。好ましくはアルコール溶媒、含ハロゲン炭化水素溶媒、又はエーテル溶媒であり、より好ましくはトルエン、テトラヒドロフラン又はメチル-t-ブチルエーテルである。
【0073】
工程(iii):精製工程
本工程は、上記工程(ii)で得られたペプチドを、分液操作により精製する工程である。
【0074】
分液操作では、ペプチドを溶解させた良溶媒を、目的とするペプチドや含まれ得る不純物に応じて、水、あるいは酸性及び/又は塩基性水溶液で洗浄することにより、不純物を除去することができる。
【0075】
本工程で使用する酸性水溶液は、特に制限は無いが、その例としては、塩酸、硫酸、酢酸水溶液、リン酸水溶液、クエン酸水溶液、塩化アンモニウム水溶液等が挙げられる。好ましくは、塩酸、リン酸水溶液、クエン酸水溶液又は塩化アンモニウム水溶液である。
【0076】
本工程で使用する塩基性水溶液は、特に制限は無いが、その例としては、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、アンモニア水等が挙げられる。好ましくは、炭酸カリウム水溶液、アンモニア水である。
【0077】
また、本発明のペプチドの製造方法において、工程(ii)で得られたペプチドに対して、下記工程(iv)乃至(vi)を所望の回数繰返すことにより、ペプチド鎖をさらに伸長することができる。
(iv)精製工程で得られたペプチドのC末端に、C-保護アミノ酸又はC-保護ペプチドを縮合させる工程、及び
(v)上記工程(iv)で得られたペプチドのC末端の一時保護基を除去する工程、
(vi)上記工程(v)で得られたペプチドを分液する工程。
いずれも、上記工程(i)乃至(iii)と同様の操作で実施することができる。
【0078】
本工程は、上記工程(i)や(iv)の、ペプチド鎖伸長工程で得られたペプチドに対して実施しても良い。
【0079】
本発明のペプチドの製造方法においては、次工程の反応に影響を及ぼさない範囲で工程(ii)又は工程(v)の精製工程を適宜省略することも可能である。
【0080】
工程(vii):N末端の脱保護工程
当該工程は、上記工程(ii)乃至(vi)により得られたペプチドから、N末端保護基を除去する工程である。
【0081】
当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、フッ素化合物等の試薬を反応させることにより行われる。
【0082】
当該反応に影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、含ハロゲン炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒等が挙げられる。好ましくはアルコール溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒又はニトリル溶媒であり、より好ましくはメタノール、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン又はアセトニトリルである。
【0083】
当該反応で用いるフッ素化合物は、例えば、フッ化水素-アミン塩(例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化アンモニウム、フッ化水素-ピリジン錯体、フッ化水素-トリエチルアミン錯体)、フッ化水素-金属塩(例えば、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム)が挙げられる。好ましくは、テトラブチルアンモニウムフルオリド、フッ化アンモニウム又はフッ化カリウムであり、より好ましくは、フッ化アンモニウム又はフッ化カリウムである。
【0084】
当該反応を行う場合、反応温度は、通常-20℃乃至使用する溶媒の沸点の範囲の任意の温度であり、好ましくは0℃乃至60℃であり、より好ましくは10℃乃至40℃である。また、反応時間は、通常1乃至24時間であり、好ましくは1乃至5時間である。
【0085】
各反応において、反応基質がヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、カルボキシ基又はカルボニル基を有する場合(特にアミノ酸又はペプチドの側鎖に官能基を有する場合)、これらの基にペプチド化学等で一般的に用いられるような保護基が導入されていてもよく、反応後に必要に応じて保護基を除去することにより目的化合物を得ることができる。
【0086】
保護及び脱保護は、一般的に知られている保護基を用いて、保護・脱保護反応(例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第4版(Protective Groups in Organic Synthesis, Fourth edition)、グリーン(T.W.Greene)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(2006年)など参照)を行うことにより実施することができる。
【実施例
【0087】
以下に参考合成例、合成例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0088】
本明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、各表示は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものである。
【0089】
なお、合成例中、「M」はmol/Lを意味する。
【0090】
実施例のプロトン核磁気共鳴(H-NMR)は、特に記述が無い場合は、日本電子(JEOL)社製JNM-ECP300、又は日本電子(JEOL)社製JNM-ECX300、又は、ブルカー(Bruker)社製AscendTM500を用いて重クロロホルム又は重ジメチルスルホキシド溶媒中で測定し、化学シフトは、テトラメチルシランを内部標準(0.0ppm)としたときのδ値(ppm)で示した。
【0091】
NMRスペクトルの記載において、「s」はシングレット、「d」はダブレット、「t」はトリプレット、「q」はカルテット、「sep」はセプテット、「dt」はダブレット オブ トリプレット、「m」はマルチプレット、「br」はブロード、「J」はカップリング定数、「Hz」はヘルツ、「CDCl」は重クロロホルムを意味する。
【0092】
高速液体クロマトグラフィー/質量分析は、特に記載が無い場合は、Waters社製ACQUITY UPLC H-Class/QDa、Waters社製ACQUITY UPLC H-Class/SQD2、又は、Shimadzu社製LC-20AD/Triple Tof5600のいずれかを用いて測定した。
【0093】
高速液体クロマトグラフィー/質量分析の記載において、ESI+はエレクトロスプレーイオン化法のポジティブモードであり、M+Hはプロトン付加体、M+Naはナトリウム付加体を意味する。
【0094】
高速液体クロマトグラフィー/質量分析の記載において、ESI-はエレクトロスプレーイオン化法のネガティブモードであり、M-Hはプロトン欠損体を意味する。
【0095】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーでの精製は、特に記述がない場合は、山善製Hi-Flashカラム、バイオタージ製SNAP Ultra Silica Cartridge、メルク製シリカゲル60又は富士シリシア化学製PSQ60Bのいずれかを用いた。
【0096】
参考合成例1:Tsoc-Phe-OHの合成
【化3】
(i)Boc-Phe-OBn(1.49g、4.22mmol)、ルチジン(0.68g、6.3mmol)をアセトニトリル(15mL)と混合させ、0℃にてトリイソプロピルシリルトリフルオロメタンスルホネート(1.42g、4.63mmol)を加えた後、3時間撹拌した。この反応液に、0℃にてルチジン(0.68g、6.3mmol)、トリイソプロピルシリルトリフルオロメタンスルホネート(1.42g、4.63mmol)を加え、室温に昇温して20時間撹拌した。得られた反応液をt-ブチルメチルエーテル(45mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(15mL)、飽和塩化アンモニウム水溶液(15mL)、水(15mL)の順で洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、Tsoc-Phe-OBn(1.56g、収率82%)を無色液体として得た。
H-NMR(CDCl
δppm:1.04-1.06(18H,m),1.27(3H、sep,J=7.8Hz),3.04-3.18(2H,m),4.63-4.50(1H,m),5.09-5.21(3H,m),7.02-7.63(10H,m)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+456.37
(ii)Tsoc-Phe-OBn(0.383g、0.840mmol)を酢酸エチル(8.0mL)と混合させ、10質量%Pd-C(39.9mg、0.037mmol)を加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で1時間撹拌した。反応液をろ過後、得られたろ液を濃縮し、Tsoc-Phe-OH(0.31g、収率101%)を得た。
H-NMR(CDCl
δppm:1.05(18H,d,J=7.5Hz),1.26(3H,Sep,7.5Hz),3.06-3.27(2H,m),4.60-4.66(1H,m),5.13(2H,d,7.5Hz),7.18-7.33(5H,m)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+366.32
【0097】
参考合成例2:Tsoc-Phe-Phe-OHの合成
【化4】
Tsoc-Phe-OH(0.222g、0.608mmol)、N-メチルモルホリン(0.064g、0.63mmol)をテトラヒドロフラン(4.0mL)と混合させ、0℃にてクロロギ酸イソブチル(0.082g、0.60mmol)を加え15分撹拌した。この溶液に、別途H-Phe-OH(0.109g、0.66mmol)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(0.268g、1.32mmol)、テトラヒドロフラン(1.0mL)を混合させ、55℃にて1時間撹拌した溶液を加え、さらに0℃のまま2時間撹拌し、原料の消失を確認した。得られた反応液をt-ブチルメチルエーテル(4.0mL)で希釈し、10質量%炭酸カリウム水溶液(2.0mL)、20質量%塩化アンモニウム水溶液(2.0mL)、飽和塩化ナトリウム水溶液(4.0mL)で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、Tsoc-Phe-Phe-OH(0.089g、収率29%)を白色固体として得た。
H-NMR(CDCl
δppm:0.90-1.19(18H,m),1.21-1.32(3H,m),2.79-3.21(4H,m),4.37(1H,br),4.58(1H,br),5.66(1H,br),5.87(1H,br),7.09(10H,br)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+513.35
【0098】
参考合成例3:Tsoc-Phe-Phe-OHの合成
【化5】
(i)Tsoc-Phe-OH(0.298g、0.815mmol)、N-メチルモルホリン(0.186g、1.84mmol)を酢酸エチル(8.0mL)と混合させ、-30℃にてクロロギ酸イソブチル(0.126g、0.92mmol)を加えた。この溶液にH-Phe-OMe塩酸塩(0.201g、0.93mmol)を加えた後、同温度で30分間撹拌した。この反応液を室温に昇温して1時間撹拌した後、5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液(3.0mL、2回)、水(3.0mL)で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、Tsoc-Phe-Phe-OMe(0.436g、収率102%)を無色オイルとして得た。
H-NMR(CDCl
δppm:0.90(1H,d,J=6.9Hz),1.02-1.06(18H,m),1.26(3H,Sep,J=7.5Hz),2.97-3.10(4H,m),3.65(3H,s),4.30-4.38(1H,m),4.71-4.78(1H,m),5.21(1H,d,J=7.8Hz),6.16(1H,d,J=7.2Hz),6.97-7.29(10H,m)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+527.33
(ii)Tsoc-Phe-Phe-OMe(0.078g、0.15mmol)をメタノール(1.6mL)と混合させ、5質量%水酸化リチウム水溶液(0.085g、0.18mmol)を加え、室温にて10分撹拌した。この反応液をLC-MSで分析したところ、Tsoc-Phe-Phe-OMeは分解しており、Tsoc-Phe-Phe-OHも生成していなかった。
【0099】
参考合成例4:Tsoc-Phe-Phe-OHの合成
【化6】
(i)Tsoc-Phe-OH(0.279g、0.764mmol)、N-メチルモルホリン(0.162g、1.60mmol)を酢酸エチル(5.6mL)と混合させ、-10℃にてクロロギ酸イソブチル(0.110g、0.80mmol)を加えた。この溶液にH-Phe-O(t-Bu)塩酸塩(0.207g、0.80mmol)を加えた後、同温度で45分間撹拌した。得られた反応液を、5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液(5.6mL、2回)、水(5.6mL)で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、Tsoc-Phe-Phe-O(t-Bu)(0.294g、収率68%)を白色固体として得た。
H-NMR(CDCl
δppm:1.05(18H,d,J=7.2Hz),1.27(3H,Sep,J=7.2Hz),1.35(9H,s),3.01-3.06(4H,m),4.31-4.38(1H,m),4.57-4.63(1H,m),5.22(1H,d,J=8.1Hz),6.15(1H,d,J=7.5Hz),7.03-7.29(10H,m)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+569.38
(ii)Tsoc-Phe-Phe-O(t-Bu)(0.10g、0.18mmol)を塩化メチレン(2.0mL)と混合させ、トリフルオロ酢酸(0.80g、7.0mmol)を加え、2時間30分撹拌した。この反応液をLC-MSで分析したところ、Tsoc-Phe-Phe-O(t-Bu)は分解しており、Tsoc-Phe-Phe-OHも生成していなかった。
【0100】
参考合成例5:BIBSoc-Phe-OHの合成
【化7】
(i)Boc-Phe-OBn(0.752g、2.11mmol)、ルチジン(0.34g、3.16mmol)をアセトニトリル(7.5mL)と混合させ、0℃にてジ-t-ブチルイソブチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(0.81g、2.32mmol)を加えた後、2時間撹拌した。この反応液に、0℃にてルチジン(0.11g、1.1mmol)、ジ-t-ブチルイソブチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(0.27g、0.77mmol)を加え、室温に昇温して16時間撹拌した。得られた反応液をt-ブチルメチルエーテル(23mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(7.5mL)、飽和塩化アンモニウム水溶液(7.5mL)、水(7.5mL)の順で洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、BIBSoc-Phe-OBn(0.83g、収率79%)を無色液体として得た。
H-NMR(CDCl
δppm: 0.83(2H,d,J=6.9Hz),0.94(6H,d,J=6.6Hz),1.03(18H,m),1.99(1H,br Sep,J=6.9Hz),3.03-3.17(2H,m),4.67(1H,dt,J=8.4Hz,6.0Hz),5.08-5.19(3H,m),7.01-7.35(10H,m)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+498.42
(ii)BIBSoc-Phe-OBn(0.330g、0.69mmol)を酢酸エチル(5.0mL)と混合させ、10質量%Pd-C(38.9mg、0.037mmol)を加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で1時間30分撹拌した。反応液をろ過後、得られたろ液を濃縮し、BIBSoc-Phe-OH(0.250g、収率92%)を得た。
H-NMR(CDCl
δppm:0.83(2H,d,J=6.9Hz),0.94(6H,br d,J=6.6Hz),1.03(18H,m),1.99(1H,Sep,J=6.6Hz),3.06-3.26(2H,m),4.60-4.66(1H,m),5.04(1H,d,J=7.8Hz),7.16-7.32(5H,m)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+408.33
【0101】
合成例1:BIBSoc-Phe-Phe-OHの合成
【化8】
BIBSoc-Phe-OH(0.151g、0.368mmol)、N-メチルモルホリン(0.043g、0.42mmol)をテトラヒドロフラン(3.0mL)と混合させ、0℃にてクロロギ酸イソブチル(0.055g、0.40mmol)を加え15分撹拌した。この溶液に、別途H-Phe-OH(0.074g、0.44mmol)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(0.18g、0.88mmol)、テトラヒドロフラン(0.75mL)を混合させ、55℃にて1時間撹拌して調製した溶液を加え、さらに0℃のまま2時間撹拌した。得られた反応液をt-ブチルメチルエーテル(3.0mL)で希釈し、10質量%炭酸カリウム水溶液(1.5mL)、20質量%塩化アンモニウム水溶液(1.5mL)、飽和塩化ナトリウム水溶液(1.5mL)で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、BIBSoc-Phe-Phe-OH(0.174g、収率85%)を白色固体として得た。
H-NMR(CDCl
δppm:0.76-1.04(27H,m),2.85-3.30(4H,m),4.36(1H,br),4.60(1H,br),6.91-7.20(10H,br)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+555.38
【0102】
合成例2:BIBSoc-Phe-Phe-OHの合成
【化9】
(i)BIBSoc-Phe-OH(0.299g、0.736mmol)、N-メチルモルホリン(0.156g、1.55mmol)を酢酸エチル(6.0mL)と混合させ、-10℃にてクロロギ酸イソブチル(0.106g、0.77mmol)を加えた。この溶液にH-Phe-OMe塩酸塩(0.199g、0.92mmol)を加えた後、同温度で30分間撹拌した。得られた反応液を、5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液(6.0mL、2回)、水(6.0mL)で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、BIBSoc-Phe-Phe-OMe(0.420g、収率101%)を白色固体として得た。
H-NMR(CDCl
δppm:0.81(2H,d,J=6.3Hz),0.89-0.95(6H,m),1.02(18H,d,J=1.8Hz),1.98(1H,Sep,J=6.6Hz),2.97-3.09(4H,m),3.65(3H,s),4.31-4.39(1H,m),4.71-4.78(1H,m),5.13(1H,d,J=8.1Hz),6.13(1H,d,J=7.8Hz),6.94-7.29(10H,m)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+569.38
(ii)BIBSoc-Phe-Phe-OMe(0.10g、0.18mmol)をメタノール(2.0mL)と混合させ、5質量%水酸化リチウム水溶液(0.10g、0.21mmol)を加え、23時間撹拌した。得られた反応液に、4質量%塩酸(1.0mL)を加えクエンチし、酢酸エチル(2.0mL)、水(2.0mL)を加え、分液した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、BIBSoc-Phe-Phe-OH(0.082g、収率85%)を白色固体として得た。
【0103】
合成例3:BIBSoc-Phe-Phe-OHの合成
【化10】
(i)BIBSoc-Phe-OH(0.159g、0.393mmol)、N-メチルモルホリン(0.083g、0.82mmol)を酢酸エチル(3.2mL)と混合させ、-10℃にてクロロギ酸イソブチル(0.056g、0.41mmol)を加えた。この溶液にH-Phe-O(t-Bu)塩酸塩(0.109g、0.42mmol)を加えた後、同温度で45分間撹拌した。得られた反応液を、5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液(3.2mL、2回)、水(3.2mL)で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、BIBSoc-Phe-Phe-O(t-Bu)(0.239g、収率100%)を白色固体として得た。
H-NMR(CDCl
δppm:0.82(2H,d,J=5.7Hz),0.90-0.96(6H,m),1.02(18H,d,J=1.8Hz),1.35(9H,s),1.99(1H,Sep,J=6.6Hz),3.00-3.05(4H,m),4.31-4.38(1H,m),4.56-4.63(1H,m),5.17(1H,d,J=8.1Hz),6.19(1H,d,J=7.5Hz),7.03-7.28(10H,m)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+611.45
(ii)BIBSoc-Phe-Phe-O(t-Bu)(0.092g、0.15mmol)を塩化メチレン(1.9mL)と混合させ、トリフルオロ酢酸(0.69g、6.1mmol)を加え、4時間30分撹拌した。得られた反応液に10質量%炭酸ナトリウム水溶液(2.0mL)を加えクエンチし、分液した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、BIBSoc-Phe-Phe-OH(0.079g、収率94%)を白色固体として得た。
【0104】
参考合成例6:IPBS-OTfの合成
【化11】

ジ-i-プロピル-t-ブチルシラン(0.300g、1.74mmol)を塩化メチレン(10.0g)と混合し、氷冷下でトリフルオロメタンスルホン酸(0.160g、1.07mmol)を滴下した後、室温に昇温して1時間撹拌した。生成したジ-i-プロピル-t-ブチルシリルトリフラートは、単離することなく塩化メチレン溶液として次の反応に用いた。
【0105】
参考合成例7:IPBSoc-Phe-OHの合成
【化12】
(i)Boc-Phe-OBn(0.500g、1.41mmol)、ルチジン(0.326g、3.04mmol)をアセトニトリル(5.0mL)と混合させ、0℃にてジ-i-プロピル-t-ブチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(1.74mmol)の塩化メチレン溶液を加えた後、室温にて2時間撹拌した。更に0℃にてジ-i-プロピル-t-ブチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(0.42mmol)の塩化メチレン溶液を加えた後、室温にて16時間撹拌した。得られた反応液をt-ブチルメチルエーテル(10mL)で希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)、飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)、水(10mL)の順で洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、IPBSoc-Phe-OBn(0.618g、収率94%)を無色液体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+470.26
(ii)IPBSoc-Phe-OBn(0.161g、0.341mmol)を酢酸エチル(3.2mL)と混合させ、10質量%Pd-C(20.4mg、0.019mmol)を加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で1時間撹拌した。反応液をろ過し、得られたろ液を濃縮し、IPBSoc-Phe-OH(0.138g、収率107%)を得た。
H-NMR(CDCl
δppm:1.02(9H,s),1.10-1.12(12H,m),1.42(2H,Sep,7.4Hz),3.06-3.27(2H,m),4.60-4.66(1H,m),5.13(2H,d,J=8.1Hz),7.17-7.32(5H,m)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+380.30
【0106】
合成例4:IPBSoc-Phe-Phe-OHの合成
【化13】
IPBSoc-Phe-OH(0.138g、0.365mmol)、N-メチルモルホリン(0.040g、0.39mmol)をテトラヒドロフラン(2.6mL)と混合させ、0℃にてクロロギ酸イソブチル(0.051g、0.37mmol)を加え15分撹拌した。この溶液に、別途H-Phe-OH(0.068g、0.41mmol)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(0.17g、0.82mmol)、テトラヒドロフラン(0.7mL)を混合させ、55℃にて1時間撹拌して調製した溶液を加え、さらに0℃のまま2時間撹拌した。得られた反応液をt-ブチルメチルエーテル(2.6mL)で希釈し、10質量%炭酸カリウム水溶液(1.3mL)、20質量%塩化アンモニウム水溶液(1.3mL)、飽和塩化ナトリウム水溶液(2.6mL)で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、IPBSoc-Phe-Phe-OH(0.152g、収率79%)を白色固体として得た。
H-NMR(CDCl
δppm:0.97-1.02(21H,m),1.36(2H,br),2.80-3.21(4H,m),3.79(1H,br),4.38-4.61(1H,m),7.15(10H,br)
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+527.35
【0107】
参考合成例8:IPCS-OTfの合成
【化14】

ジ-i-プロピルクミルシラン(0.48g、2.0mmol)を塩化メチレン(2.5g)と混合し、氷冷下でトリフルオロメタンスルホン酸(0.38g、2.5mmol)を滴下した後、室温に昇温して0.5時間撹拌した。生成したジ-i-プロピルクミルシリルトリフラートは、単離することなく塩化メチレン溶液として次の反応に用いた。
【0108】
参考合成例9:IPCSoc-Phe-OHの合成
【化15】
(i)Boc-Phe-OBn(0.37g、1.0mmol)、ルチジン(0.36g、3.4mmol)をアセトニトリル(5.0g)と混合させ、0℃にてジ-i-プロピルクミルシリルトリフラート(2.0mmol)の塩化メチレン溶液を加えた後、室温にて3時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、IPCSoc-Phe-OBn(0.518g、収率92%)を無色油状物として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+532.29
(ii)IPCSoc-Phe-OBn(0.20g、0.38mmol)を酢酸エチル(4.0g)と混合させ、10質量%Pd-C(0.03g)を加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で5時間撹拌した。反応液をろ過した後、得られたろ液を濃縮し、IPCSoc-Phe-OH(0.17g、収率100%)を得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+442.24
【0109】
合成例5:IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-OHの合成
【化16】

IPCSoc-Phe-OH(0.20g、0.46mmol)、N-メチルモルホリン(0.06g、0.59mmol)をテトラヒドロフラン(2.0g)と混合させ、0℃にてクロロギ酸イソブチル(0.08g、0.58mmol)を加え5分撹拌した。この溶液に、別途H-Lys(Boc)-OH(0.15g、0.61mmol)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(0.25g、1.2mmol)、テトラヒドロフラン(1.3g)を混合させ、55℃にて0.5時間撹拌して調製した溶液を加え、さらに0℃のまま2時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-OH(0.32g、収率103%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+670.39
【0110】
合成例6:IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-OHの合成
【化17】

IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-OH(0.32g、0.47mmol)、N-メチルモルホリン(0.06g、0.58mmol)をテトラヒドロフラン(4.0g)と混合させ、0℃にてクロロギ酸イソブチル(0.08g、0.56mmol)を加え5分撹拌した。この溶液に、別途H-Asp(O(t-Bu))-OH(0.12g、0.62mmol)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(0.25g、1.2mmol)、テトラヒドロフラン(1.9g)を混合させ、55℃にて0.5時間撹拌して調製した溶液を加え、さらに0℃のまま3時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-OH(0.38g、収率97%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+841.48
【0111】
合成例7:IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-OHの合成
【化18】

IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-OH(0.20g、0.24mmol)、N-メチルモルホリン(0.03g、0.29mmol)をテトラヒドロフラン(2.0g)と混合させ、0℃にてクロロギ酸イソブチル(0.04g、0.27mmol)を加え5分撹拌した。この溶液に、別途H-Phe-Phe-OH(0.16g、0.51mmol)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(0.25g、1.2mmol)、テトラヒドロフラン(1.2g)を混合させ、55℃にて20分撹拌し、更にN,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(0.08g、0.41mmol)を加えて調製した溶液を加え、さらに0℃のまま1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-OH(0.29g、収率108%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+1135.61
【0112】
合成例8:IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-Phe-OHの合成
【化19】

(i)IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-OH(0.25g、0.22mmol)、H-Phe-OBn塩酸塩(0.08g、0.27mmol)を塩化メチレン(2.6g)と混合させ、0℃に冷却後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.07g、0.57mmol)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(0.12g、0.27mmol)を加えて3時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-Phe-OBn(0.22g、収率73%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+1372.73
(ii)IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-Phe-OBn(0.05g、0.04mmol)を酢酸エチル(1.0g)と混合し、10質量%Pd-C(0.01g)を加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で5時間撹拌した。反応液をろ過した後、得られたろ液を濃縮し、IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-Phe-OH(0.05g、収率99%)を得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+1282.64
【0113】
合成例9:H-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-Phe-OHの合成
【化20】

IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-Phe-OH(19.7mg、0.02mmol)をメタノール(1.0g)と混合させ、室温下でフッ化カリウム(3.4mg、0.06mmol)を加えて4時間攪拌した。得られた反応液をヘキサン(2.0g)で3回洗浄し、得られたメタノール層に5質量%塩化アンモニウム水溶液を加えて固体を析出させ、これをろ過した。得られた固体を乾燥し、H-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-Phe-OH(12.6mg、収率74%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+1006.52
【0114】
合成例10:H-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-Phe-OBnの合成
【化21】

IPCSoc-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-Phe-OBn(0.15g、0.11mmol)をメタノール(3.0g)、N-メチルピロリドン(2.0g)と混合させ、室温下でフッ化カリウム(0.02g、0.26mmol)を加えて3時間攪拌した。得られた反応液に水(2.0g)を加えて、ヘキサン(5.0g)で3回洗浄した。得られた水層に酢酸エチル、飽和食塩水を加えて分液した。得られた有機層を濃縮した後、水(5.0g)を加えて固体を析出させ、これをろ過した。得られた固体を乾燥し、H-Phe-Lys(Boc)-Asp(O(t-Bu))-Phe-Phe-Phe-OBn(0.12g、収率96%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+1096.57
【0115】
参考合成例10:CHBS-OTfの合成
【化22】

(i)ブロモベンゼン(5.7g、36mmol)、テトラヒドロフラン(8.0g)を混合させ、0℃にて1.55Mのn-ブチルリチウム-ヘキサン溶液(35mL、54mmol)に加えた後、25℃にて6時間攪拌した。得られた反応液に、t-ブチルジヒドロシラン(2.0g、13.9mmol)とテトラヒドロフラン(4.0g)の混合溶液を加え、室温で15時間攪拌した。得られた反応液を2M塩酸(14g)、5質量%塩化ナトリウム水溶液(14g)で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、ヘキサン、シリカゲルを加えてろ過した。得られた有機層を濃縮し、PhBS-Hのヘキサン溶液(6.7g)を得た。
(ii)PhBS-Hのヘキサン溶液(6.7g)、ヘキサン(21g)を混合させ、Ru-Al(0.61g)を加えた後、水素ガス雰囲気下、30℃で19時間撹拌した。反応液をろ過し、得られたろ液を濃縮し、CHBS-Hのヘキサン溶液(5.9g)を得た。
(iii)CHBS-Hのヘキサン溶液(0.4g)を塩化メチレン(1.0g)と混合し、氷冷下でトリフルオロメタンスルホン酸(0.14g、0.93mmol)を滴下した後、室温に昇温して0.5時間撹拌した。生成したCHBS-OTfは、単離することなくヘキサン-塩化メチレン溶液として次の反応に用いた。
【0116】
参考合成例11:CHBSoc-Phe-OHの合成
【化23】
(i)Boc-Phe-OBn(0.20g、0.55mmol)、ルチジン(0.12g、1.1mmol)をアセトニトリル(2.0g)と混合させ、0℃にてCHBS-OTfのヘキサン-塩化メチレン溶液を加えた後、室温にて19時間撹拌した。得られた反応液に水(1.0g)を加えた後、析出した固体をろ取し、CHBSoc-Phe-OBn(0.21g、収率74%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+524.30
(ii)CHBSoc-Phe-OBn(0.20g、0.38mmol)を酢酸エチル(4.0)と混合させ、10質量%Pd-C(24.1mg)を加えた後、水素ガス雰囲気下、室温で2時間撹拌した。反応液をろ過し、得られたろ液を濃縮し、CHBSoc-Phe-OH(0.17g、収率100%)を得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+434.27
【0117】
合成例11:CHBSoc-Phe-Ala-OHの合成
【化24】
(i)CHBSoc-Phe-OH(0.50g、1.2mmol)、H-Ala-O(t-Bu)塩酸塩(0.25g、1.4mmol)を塩化メチレン(5.2g)と混合させ、0℃に冷却後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.38g、2.9mmol)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(0.60g、1.4mmol)を加えて1時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、CHBSoc-Phe-Ala-O(t-Bu)(0.68g、収率106%)を淡黄色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+561.37
(ii)CHBSoc-Phe-Ala-O(t-Bu)(0.60g、1.1mmol)を塩化メチレン(12g)と混合させ、0℃に冷却後、トリフルオロ酢酸(4.9g、43.1mmol)を加え、室温に昇温して1時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、CHBSoc-Phe-Ala-OH(0.52g、収率97%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+505.31
【0118】
合成例12:CHBSoc-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-OHの合成
【化25】
(i)CHBSoc-Phe-Ala-OH(0.52g、1.0mmol)、H-Ser(t-Bu)-OMe塩酸塩(0.26g、1.2mmol)を塩化メチレン(5.0g)と混合させ、0℃に冷却後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.32g、2.5mmol)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(0.51g、1.2mmol)を加えて2時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で3回、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、CHBSoc-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-OMe(0.73g、収率106%)を淡黄色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+662.42
(ii)CHBSoc-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-OMe(0.40g、0.60mmol)をメタノール(8.0g)と混合させ、0℃に冷却後、5質量%水酸化リチウム水溶液(1.2g、2.4mmol)を加え、室温に昇温して3時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、CHBSoc-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-OH(0.36g、収率91%)を褐色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+648.40
【0119】
合成例13:H-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-Phe-OBnの合成
【化26】
(i)CHBSoc-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-OH(0.35g、0.54mmol)、H-Phe-OBn塩酸塩(0.21g、0.72mmol)を塩化メチレン(4.0g)と混合させ、0℃に冷却後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.20g、1.5mmol)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ-モルホリノ-カルベニウムヘキサフルオロリン酸塩(0.31g、0.72mmol)を加えて2時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、CHBSoc-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-Phe-OBn(0.35g、収率73%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+885.51
(ii)CHBSoc-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-Phe-OBn(0.10g、0.11mmol)をメタノール(2.0g)と混合させ、室温下でフッ化アンモニウム(0.05g、1.2mmol)を加えて4時間攪拌した。得られた反応液をヘプタン(2.0g)で3回洗浄し、得られたメタノール層に酢酸エチル、飽和食塩水を加えて分液した。得られた有機層を濃縮し、H-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-Phe-OBn(0.07g、収率98%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+617.33
【0120】
合成例14:H-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-Phe-OBnの合成
合成例13の工程(i)で得られたCHBSoc-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-Phe-OBn(0.15g、0.17mmol)をテトラヒドロフラン(3.1g)と混合させ、室温下で1Mテトラブチルアンモニウムフルオリド-テトラフドロフラン溶液(0.2mL、0.20mmol)を加えて2時間攪拌した。得られた反応液を酢酸エチルで希釈した後、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮し、アセトニトリル(3.0mL)と混合した後、ヘプタン(3.0mL)で2回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、H-Phe-Ala-Ser(t-Bu)-Phe-OBn(0.10g、収率95%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+617.33
【0121】
参考合成例12:H-Phe-Phe-OMeの合成
【化27】

合成例2の工程(i)で得られたBIBSoc-Phe-Phe-OMe(0.10g、0.17mmol)をメタノール(2.0g)と混合させ、室温下でフッ化カリウム(0.02g、0.35mmol)を加えて5時間攪拌した。得られた反応液をヘキサン(3.0g)で3回洗浄し、得られたメタノール層に酢酸エチル、飽和食塩水を加えて分液した。得られた有機層を濃縮し、H-Phe-Phe-OMe(0.07g、収率86%)を白色固体として得た。
MASS(ESI+)m/z;(M+H)+327.16
【0122】
試験例1:特定の構造を有するシリルカルバメート系保護基をN末端に導入したN-保護アミノ酸による、ペプチド伸長工程及びC末端の脱保護工程の収率比較
【化28】
【0123】
[試験化合物]
以下の表1及び2に記載した、特定の構造を有するシリルカルバメート系保護基をN末端に導入したN-保護アミノ酸(以下、原料とも言う)を使用した。なお、原料は、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、1999年、64巻、3792-3793頁、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー、2005年、127巻、13720-13725頁及び参考合成例1、5、6、7に記載の方法及びそれに準ずる方法で得ることができる。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
[試験方法]
各原料(170mg)、N-メチルモルホリン(1.2当量)をテトラフドロフラン(10質量倍)と混合させ、0℃に冷却して、クロロギ酸イソブチル(1.1当量)を加え15~30分攪拌した。この溶液に、別途H-Phe-OH(1.2当量)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(2.4当量)、テトラヒドロフラン(6質量倍)を混合させ、50~55℃にて0.5~1時間撹拌して調製した溶液を加え、さらに0℃のまま1~3時間撹拌した。得られた反応液をt-ブチルメチルエーテル(20質量倍)で希釈し、10質量%炭酸カリウム水溶液(10質量倍)、20質量%塩化アンモニウム水溶液(10質量倍)、飽和塩化ナトリウム水溶液(10質量倍)で順次洗浄した。得られた有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的物の収率を算出した。
【0127】
[試験結果]
各原料によるペプチド伸長工程及びC末端の脱保護工程の収率は、参考合成例2の収率と比較して、大幅に向上した。
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明により、ペプチドの高効率な製造方法を提供することができる。