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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】自動分析システム及び検体分配方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
G01N35/00 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023503633
(86)(22)【出願日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 JP2022002718
(87)【国際公開番号】W WO2022185788
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2021033797
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】綿引 彩子
(72)【発明者】
【氏名】渡部 修
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-146264(JP,A)
【文献】特開2010-223818(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051671(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自動分析装置と、
前記複数の自動分析装置に接続する搬送ラインと、
前記搬送ラインを制御して前記複数の自動分析装置に検体を分配するコンピュータとを備え、
前記複数の自動分析装置は、稼働中に恒常的に使用される第1部品と、間欠的に使用される第2部品とをそれぞれ含んで構成されており、
前記コンピュータが、
各自動分析装置の前記第1部品の使用時間を設定時間と比較し、
前記複数の自動分析装置のいずれかの前記第1部品の使用時間が前記設定時間を超える場合、前記第1部品の使用時間が前記設定時間を超える自動分析装置を優先装置に選択し、
前記第2部品を分析に使用する検体を他の自動分析装置に優先して前記優先装置に搬送するように前記搬送ラインを制御する
ように構成されていることを特徴とする自動分析システム。
【請求項2】
請求項1の自動分析システムにおいて、
前記コンピュータが、前記第1部品の使用時間が前記設定時間を超える自動分析装置が複数ある場合、それら複数の自動分析装置の前記第2部品の使用回数を比較し、前記第2部品の使用回数が最も多い自動分析装置を前記優先装置に選択することを特徴とする自動分析システム。
【請求項3】
請求項1の自動分析システムにおいて、
前記第2部品が、前記検体が分注される反応セルであり、
前記第1部品が、前記反応セルに照射する検査光を発光する光源ランプである
ことを特徴とする自動分析システム。
【請求項4】
請求項1の自動分析システムにおいて、
前記第1部品及び前記第2部品が、前記複数の自動分析装置で共通であることを特徴とする自動分析システム。
【請求項5】
請求項1の自動分析システムにおいて、
前記第1部品の使用時間を基に前記優先装置を選択する機能の有効及び無効を切り換えるスイッチを備えていることを特徴とする自動分析システム。
【請求項6】
請求項1の自動分析システムにおいて、
前記複数の自動分析装置のメンテンナンス履歴を記憶したメモリを備えており、
前記コンピュータが、
前記メモリから読み出したメンテナンス履歴に基づき、現在使用中の第2部品の使用可能回数を演算し、
前記使用可能回数に対する前記現在使用中の第2部品の使用回数を表示する
ことを特徴とする自動分析システム。
【請求項7】
複数の自動分析装置を備え、前記複数の自動分析装置が、稼働中に恒常的に使用される第1部品と、間欠的に使用される第2部品とをそれぞれ含んで構成された自動分析システムにおける前記複数の自動分析装置への検体分配方法であって、
各自動分析装置の前記第1部品の使用時間を設定時間と比較し、
前記複数の自動分析装置のいずれかの前記第1部品の使用時間が前記設定時間を超える場合、前記第1部品の使用時間が前記設定時間を超える自動分析装置を優先装置に選択し、
前記第2部品を分析に使用する検体を他の自動分析装置に優先して前記優先装置に分配する
ことを特徴とする検体分配方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の自動分析装置を備えた自動分析システム及び検体分配方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の自動分析装置を備えた自動分析システムでは、複数の自動分析装置で並行して分析を行うことで、多数の検体を短時間で処理することができる。特許文献1には、各自動分析装置の負荷状況や試薬残量に基づいて各自動分析装置への検体の分配を決定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-177136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動分析システムでは、個々の自動分析装置において、例えば光源ランプや反応セルといった様々な部品が使用される。これら部品については、定期的又は適時に、清掃、修理、交換といったメンテナンスをする必要がある。こうしたメンテナンスは、ユーザーの負担となるだけでなく、その都度自動分析装置を停止させなければならず検体の分析の処理効率を低下させる。
【0005】
本発明の目的は、メンテナンスに伴う自動分析装置の停止頻度を下げ、ユーザーの負担を軽減し検体の分析の処理効率を向上させることができる自動分析システム及び検体分配方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の自動分析装置と、前記複数の自動分析装置に接続する搬送ラインと、前記搬送ラインを制御して前記複数の自動分析装置に検体を分配するコンピュータとを備え、前記複数の自動分析装置は、稼働中に恒常的に使用される第1部品と、間欠的に使用される第2部品とをそれぞれ含んで構成されており、前記コンピュータが、各自動分析装置の前記第1部品の使用時間を設定時間と比較し、前記複数の自動分析装置のいずれかの前記第1部品の使用時間が前記設定時間を超える場合、前記第1部品の使用時間が前記設定時間を超える自動分析装置を優先装置に選択し、前記第2部品を分析に使用する検体を他の自動分析装置に優先して前記優先装置に搬送するように前記搬送ラインを制御するように構成されている自動分析システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メンテナンスに伴う自動分析装置の停止頻度を下げ、ユーザーの負担を軽減し検体の分析の処理効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る自動分析システムの模式図
図2図1の自動分析システムに備わった各自動分析装置の要部を抜き出して表した模式図
図3図2の自動分析装置に備わった反応ディスクとその関連要素を抜き出して表した模式図
図4図1の自動分析システムに備わったコンピュータの機能の要部を表した機能ブロック図
図5】反応セルの交換要否を判定するセルブランク測定の処理手順の一例を示すフローチャート
図6】反応セルの交換日時を時間軸で示す図
図7】反応セルの使用進行率の説明図
図8】管理対象部品のメンテナンス項目のルールを例示した図
図9】管理対象部品の使用進行率を表示する画面の例を表す図
図10】コンピュータによる複数の自動分析装置に対する検体分配動作の手順を表すフローチャート
図11】保守機会抑制モードが無効のときのコンピュータによる複数の自動分析装置に対する検体分配動作の手順を表すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
-自動分析システム-
図1は本発明の一実施形態に係る自動分析システムの模式図である。同図に示した自動分析システムは、搬送ライン100、複数の自動分析装置300A,300B、及びコンピュータ400を含んで構成されている。本実施形態では2つの自動分析装置300A,300Bを備えた自動分析システムを例に挙げて説明するが、3つ以上の自動分析装置が含まれる自動分析システムにも発明は適用され得る。
【0011】
搬送ライン100は、自動分析装置300A,300Bの双方に接続し、これら自動分析装置300A,300Bに検体を搬送したり、自動分析装置300A,300Bから検体を回収したりするユニットである。この搬送ライン100は、サンプラユニット101及び搬送ユニット102を含んで構成されている。サンプラユニット101は、自動分析システムに対して検体を出し入れするユニットであり、患者の検体が入った検体容器1を複数搭載した検体ラック2を複数収納すると共に、搬送ユニット102との間で検体ラック2を授受する。検体容器1には、血液や尿等といった患者の検体(生体サンプル)が入っている。一部の検体容器1には、検量線作成のための標準液又は精度管理のための試料を入れる場合もある。搬送ユニット102は、サンプラユニット101から出庫された検体を自動分析装置300A,300Bに選択的に供給したり、自動分析装置300A,300Bから回収した検体容器1(検体ラック2)をサンプラユニット101に入庫したりする。
【0012】
自動分析装置300A,300Bは、検体容器1に入った検体について所定の分析(例えば生化学分析、ISE分析等)を実行するユニットであり、分析装置本体301の他、バッファユニット302、制御装置303等をそれぞれ含んで構成されている。分析装置本体301(後述)は、検体の分析動作を実行する機械部である。バッファユニット302は、搬送ユニット102との間で検体ラック2を移載し、また一時的に検体ラック2を待機させるユニットであり、分析装置本体301に隣接して設置される。制御装置303はCPUやRAM、ROM等を持つコンピュータであり、上位制御装置であるコンピュータ400からの信号に応じて分析装置本体301やバッファユニット302を制御する。
【0013】
コンピュータ400は、操作装置401でユーザー(オペレータ等)により入力されたデータや所定のプログラムに基づき、サンプラユニット101、搬送ユニット102及び自動分析装置300A,300Bを制御する。例えばサンプラユニット101及び搬送ユニット102が、分析の依頼項目や分析順序のデータに基づいてコンピュータ400により制御され、自動分析システムに投入された検体容器1が自動分析装置300A,300Bに分配される(割り振られる)。また、コンピュータ400からの入力データに基づき、自動分析装置300A,300Bの分析装置本体301が各々の制御装置303により制御され、各分析装置本体301において並行して検体の分析動作が実行される。検体の分析の済んだ検体容器1は搬送ユニット102に移載され、コンピュータ400により制御される搬送ユニット102によりサンプラユニット101に戻される。
【0014】
操作装置401は、キーボードやマウス、タッチパネル等の入力装置と、モニタ等の表示装置とを含んで構成されている。
【0015】
-自動分析装置-
図2図1の自動分析システムに備わった各自動分析装置の要部を抜き出して表した模式図、図3は自動分析装置に備わった反応ディスクとその関連要素を抜き出して表した模式図である。図2においてバッファユニット302は図示を省略してある。ここでは図2及び図3を用いて自動分析装置300Aの構成を説明するが、自動分析装置300Bも自動分析装置300Aと同様の構成であり、自動分析装置300A,300Bは、分析項目の測定原理や使用する部品等が共通している。
【0016】
自動分析装置300Aの分析装置本体301には、反応ディスク311、検体分注機構312、試薬ディスク313、試薬分注機構314、生化学測定器315が備わっている。
【0017】
反応ディスク311は、鉛直軸周りに自転するターンテーブル状の装置である。反応ディスク311の外周部には透光性材料からなる多数の反応セル321が設置され、これら反応セル321が環状列を構成する。反応セルは上部が開口した耐薬樹脂製の上下に細長い使い捨て容器である。反応ディスク311は、恒温槽(不図示)により設定温度(例えば37℃程度)に温度調整され、自動分析装置300Aの稼働中に間欠的に回転して所定位置(検体を分注する位置等)に所定の反応セル321を移動させる。
【0018】
検体分注機構312は、検体容器1から反応セル321に検体等を分注する機構であり、反応ディスク311と吸入位置(図2の検体ラック2の位置)の間に位置している。この検体分注機構312は、可動アームとこれに取り付けられたピペットノズル(プローブ)とを備えており、ピペットノズルの水平方向への回転移動と上下方向への平行移動ができるように構成されている。この構成により、検体分注機構312は、吸入位置に移動させた検体ラック2の目的の検体容器1にピペットノズルを挿し込んで所定量の検体を吸入し、反応ディスク311の回転により所定位置に移動した所定の反応セル321に検体を吐出する。この検体分注機構312の検体分注動作は、液面検知器322で検体容器1や反応セル321の内部の液面を検知しながら実行される。特に図示していないが、検体分注機構312によるピペットノズルの移動経路上には、検体分注機構312のピペットノズルを洗浄するための洗浄槽が設置されており、洗浄槽で検体分注機構312のピペットノズルが洗浄できるようになっている。
【0019】
試薬ディスク313は、鉛直軸周りに自転するターンテーブル状の装置である。試薬ディスク313の外周部には多数の試薬容器323が設置され、これら試薬容器323が環状列を構成する。試薬ディスク313は試薬保管庫の役割を果たし、保管した試薬液を保冷する機能を備えている。各試薬容器323には、試薬識別情報(例えばバーコード)を表示したラベルが貼られており、各々分析項目の測定に用いる試薬液を収容している。試薬ディスク313の外周側の位置には、試薬ID読取り器324が設置されている。この試薬ID読取り器324により試薬容器323に貼られた試薬識別情報が読み取られ、読み取られた試薬液のデータが試薬ディスク313におけるその試薬容器323のポジションのデータと共に制御装置303に出力される。制御装置303に入力されたこれらのデータは、制御装置303のメモリ331に登録される。
【0020】
試薬分注機構314は、試薬容器323から反応セル321に試薬液を分注するための機構である。試薬分注機構314はまた、反応ディスク311と試薬ディスク313の間に位置しており、検体分注機構312と同じように、可動アームとこれに取り付けられたピペットノズル(プローブ)とを備えている。この試薬分注機構314は、試薬ディスク313の回転により吸入位置に移動した目的の試薬容器323にピペットノズルを挿し込んで所定量の試薬液を吸入し、反応ディスク311の回転により所定位置に移動した所定の反応セル321に試薬液を吐出する。この試薬分注機構314の試薬液分注動作も、液面検知器325で液面の検知を行いながら実施される。特に図示していないが、試薬分注機構314によるピペットノズルの移動経路上には、試薬分注機構314のピペットノズルを洗浄するための洗浄槽が設置されており、洗浄槽で試薬分注機構314のピペットノズルが洗浄できるようになっている。
【0021】
生化学測定器315は、検体の生化学成分の分析を行う装置であり、反応ディスク311に設置された反応セル321に接近して配置されている。この生化学測定器315は光源ランプ326(図3)や光度計327等からなる。光源ランプ326は反応セル321の環状列の内側に、光度計327は反応セル321の環状列の外側に配置されている。光源ランプ326から出射された検査光が検体の入った反応セル321を透過し、反応セル321を透過した透過光又は散乱光が光度計327で測光される。自動分析装置300Aの稼働中は常時光源ランプ326に通電され、各反応セル321の内部の検体及び試薬液の反応液は、光源ランプ326と光度計327との間を横切る度に測光される。測光に伴って光度計327から出力されるアナログ信号は制御装置303に入力され、A/D変換器332でデジタル信号に変換されてメモリ331に記録される。測定が終了した反応セル321は、反応ディスク311の近傍に配置された反応セル洗浄機構(不図示)により内部が洗浄され、繰り返し使用される。
【0022】
なお、詳細な説明は省略するが、自動分析装置300Aには、反応セル321に分注された検体及び試薬液を攪拌する攪拌機構(例えば超音波撹拌機構)や、イオン選択電極を用いて検体中の電解質濃度を測定するISE分析器等も備わっている。
【0023】
-コンピュータ-
図4図1の自動分析システムに備わったコンピュータの機能の要部を表した機能ブロック図である。図4では、コンピュータ400による搬送ライン100の制御機能を抜き出して表しており、自動分析装置300A,300Bの制御機能は省略してある。図4に示したコンピュータ400には、メモリ(記憶装置)410、演算装置(CPU等)420、タイマー430等が備わっている。コンピュータ400は、搬送ライン100や自動分析装置300A,300Bと有線又は無線で直接接続された構成としても良いし、ネットワークを介して搬送ライン100や自動分析装置300A,300Bと接続された構成としても良い。
【0024】
メモリ410には、自動分析装置300A,300Bに使用される部品についての現在データ411やメンテナンス履歴412等が記憶される。
【0025】
現在データ411は、自動分析装置300A,300Bで現在使用中の管理対象部品の使用状況を品目毎に記録した例えばデータテーブルである。管理対象部品とは、自動分析装置300A,300Bに備わった部品であって、消耗品を含め使用状況を管理すべき部品である。管理対象部品は、稼働中に恒常的に使用される第1部品と、間欠的に使用される第2部品とに大別される。本実施形態の場合、自動分析装置300A,300Bは分析原理も管理対象部品(第1部品及び第2部品)も共通している。第1部品については、使用状況として使用時間が記録され、第2部品については、使用状況として使用回数が記録される。現在データ411に記録される使用状況のデータ(使用時間又は使用回数)は、演算装置420の使用記録421(後述)で随時加算されて更新される。
【0026】
前述した第1部品が「恒常的に使用される」とは、自動分析装置300A又は300Bの稼働中にその第1部品が常時一定状態で使用されることを言う。代表的な第1部品は、反応セル321に照射する検査光を発光する光源ランプ326である。光源ランプ326は、自己が組み付けられた自動分析装置300A又は300Bの稼働中に常に通電されて発光し続ける。その他、反応ディスク311を適温に保温する恒温槽も第1部品の一例である。
【0027】
また第2部品が「間欠的に使用される」とは、所定のサイクルで繰り返し第2部品が使用されることを言う。代表的な第2部品は、検体が分注される反応セル321である。反応セル321は、検体や試薬液の受け入れ、分析項目の測定、検体及び試薬液の混合液の排出、洗浄といった一連のサイクルで繰り返し使用される。その他、検体又は試薬液や洗浄液の吸入及び吐出に繰り返し使用されるピペットノズルも第2部品の一例である。
【0028】
メンテナンス履歴412は、自動分析装置300A,300Bにそれぞれ使用される管理対象部品の品目毎にメンテナンスの履歴を記録した例えばデータテーブルである。メンテナンス履歴412には、例えば自動分析装置300Aの反応セル321といった管理対象部品の交換日時等の履歴データが記録される。これら履歴データは、例えばユーザーにより操作装置401から入力される構成とする例が挙げられる。
【0029】
演算装置420には、使用記録421、使用可能回数演算422、使用進行率演算423、搬送制御424の各処理の実行機能が備わっている。
【0030】
使用記録421は、第1部品及び第2部品の使用状況を記録する処理である。使用記録421の処理において、コンピュータ400は、自動分析装置300A,300Bで各々使用中の第1部品の使用時間(例えば光源ランプ326の累積使用時間)を測定する。また、コンピュータ400は、自動分析装置300A,300Bで各々使用中の第2部品について、使用回数(例えば反応セル321の累積使用回数)を計数する。
【0031】
現在使用中の第1部品の使用時間は、交換後(自動分析装置300A又は300Bに組み付けられて以降)の自動分析装置300A,300Bの稼働時間をタイマー430で計時することによって測定することができる。この場合、第1部品の使用時間の始期は、メンテナンス履歴412に記録された第1部品の交換日時のデータから定めることができる。
【0032】
現在使用中の第2部品の使用回数は、検体の分析項目の測定動作の回数、例えば液面検知器322又は325による液面検知の回数を自動分析装置300A,300Bから信号(又は自動分析装置300A,300Bへの信号)を基にカウントすることができる。この場合、第2部品の使用回数をカウントする期間の始期は、メンテナンス履歴412に記録された第2部品の交換日時のデータから定めることができる。その他、第2部品の使用回数は、検体又は試薬液の分注動作(シリンジへの動作指令)の回数、ピペットノズルの洗浄動作(反応ディスク311への動作指令)の回数を自動分析装置300A,300Bからのデータを基にカウントすることでも測定できる。使用記録421で測定した現在使用中の第1部品や第2部品の使用状況は、現在データ411としてメモリ410に記録される。
【0033】
使用可能回数演算422は、メモリ410から読み出した第2部品のメンテナンス履歴412から所定の第2部品の使用可能回数の目安を演算する処理である。反応セル321の例を説明すると、反応セル321は、自動分析装置300A,300Bのそれぞれで稼働中に所定の間隔で実行されるセルブランク測定(図5)と称されるテストにより交換の要否が判定される。そのため、反応セル321が交換されるまでに第2部品が現実に使用される回数は増減し得る。そこで、使用可能回数演算422の処理において、演算装置420は、メモリ410に記録されたメンテナンス履歴412に基づき、まず反応セル321のメンテナンス間隔(交換間隔)を統計する。そして、この統計により導き出された反応セル321の予想使用期間を基に、現在使用中の反応セル321が組み付けられてから交換されるまでに使用される回数を推定し、これを反応セル321の使用可能回数として演算する。これは反応セル321の例であるが、テストを行わず単純に一定回数だけ使用したら交換するルールを適用する第2部品の場合、使用可能回数は設定値(一定値)とする。
【0034】
使用進行率演算423は、自動分析装置300A,300Bで現在使用中の第1部品及び第2部品の使用進行率(使用可能回数又は使用可能時間の消化率)を演算する処理である。予め設定された使用可能時間だけ使用したらメンテナンス(例えば交換)される第1部品の場合、使用進行率演算423の処理において、使用可能時間に対する現在の使用時間の割合が演算される(図9)。第2部品の場合、使用進行率演算423の処理において、使用可能回数に対する反応セル321の現在の使用回数の割合が演算される(図9)。
【0035】
搬送制御424は、操作装置401からの操作信号や第1部品や第2部品の使用進行率に応じて、自動分析装置300A,300Bへの検体の割り振りを決定し搬送ライン100を制御する処理である(図10図11)。
【0036】
-セルブランク測定-
図5は反応セルの交換要否を判定するセルブランク測定の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0037】
(ステップS51)
前述した通り、自動分析装置300A,300Bにおいては、検体の分析動作の合間に所定の間隔で(例えば所定時間毎に、又は検体分析を所定回数行う毎に)反応セル321の交換の要否を判定するためにセルブランク測定と呼ばれるテストが行われる。自動分析装置300A,300Bの稼働中、制御装置303又はコンピュータ400は、例えば稼働時間或いは分析実行回数等を基に、所定の測定時期が到来したかを判定する(ステップS51)。測定時期が到来していなければ、制御装置303又はコンピュータ400は、分析動作の継続を自動分析装置300A,300Bに指令してステップS51に手順を戻す。測定時期が到来していれば、制御装置303又はコンピュータ400は、分析動作の中断を指令してステップS52(セルブランク測定)に手順を移す。以下、自動分析装置300Aにおいて反応セル321の測定時期が到来する場合を例に挙げてステップS52以降の処理を説明する。
【0038】
(ステップS52)
セルブランク測定では、測定値が既知の液体(ここでは水とする)を全ての反応セル321に分注して検査光を当て、各反応セル321について吸光度を測定する。各反応セル321への水の分注は、例えば所定の試薬容器323又は検体容器1に入れて用意しておいた水を試薬分注機構314又は検体分注機構312により各反応セル321に分注する方法を採用することができる。また、ピペットノズルの洗浄に水を用いる場合、洗浄機構で使用する水を各反応セル321に分注する構成とすることもできる。
【0039】
(ステップS53,S54)
続くステップS53において、制御装置303又はコンピュータ400は、各反応セル321についてセルブランク測定で得た吸光度を予め設定されてメモリに記憶されている基準範囲(上限値及び下限値)と比較し、基準範囲から外れた値の有無を判定する。この判定で、各反応セル321についての吸光度の値が全て基準値(上限値以上で下限値以下)に収まっていれば、制御装置303又はコンピュータ400は、分析動作の再開を自動分析装置300Aに指令してステップS51に手順を戻す。反対に、基準範囲から外れた(下限値より小さい又は上限値より大きい)吸光度が1つでも測定されれば、制御装置303又はコンピュータ400は、ステップS54に手順を移し、吸光度の値が基準範囲を外れた反応セル321の数をカウントする。
【0040】
(ステップS55,S56)
続くステップS55において、制御装置303又はコンピュータ400は、基準範囲を外れた吸光度の値が複数存在するかを判定する。この判定で、基準範囲を外れた吸光度の値が1つのみでれば、制御装置303又はコンピュータ400は、分析動作の再開を自動分析装置300Aに指令してステップS51に手順を戻す。反対に、基準範囲を外れた吸光度の値が複数存在すれば、制御装置303又はコンピュータ400は、ステップS56に手順を移し、反応セル321の一斉交換を推奨するアラームを出力装置(例えば操作装置401のモニタ)に出力して図5のフローを終了する。本実施形態では、吸光度の測定値の誤差等を考慮し、測定値が基準範囲から外れた反応セルが1つ以下であれば、制御装置303又はコンピュータ400で反応セル321の交換は不要であると判定されるように構成してある。但し、ステップS55でアラーム出力の判定基準とする不良反応セルの数は、設定変更可能である。
【0041】
アラームに従って全ての反応セル321が交換され、所定の操作により反応セル321の交換完了を伝える信号が入力されたら、反応セル321の交換日時がメンテナンス履歴412に登録される。また、反応セルセル321の交換後、自動分析装置300Aの分析動作の再開に伴って自動分析装置300Aについて図5のフローが再び実行される。
【0042】
-反応セルの使用期間の推定-
図6は反応セルの交換日時を時間軸で示す図である。同図に示す反応セル321の交換履歴は自動分析装置300Aのものであるとするが、以下の説明は自動分析装置300Bについても共通する。コンピュータ400においては、前述した通り、反応セル321の交換日時がメンテナンス履歴412に登録されてメモリ410に記憶される。演算装置420による使用可能回数演算422の処理では、メモリ410から読み出したメンテナンス履歴412に基づき、交換により新たに自動分析装置300Aに組み付けられた反応セル321(現在使用中の第2部品)の使用可能回数が演算される。具体的には、例えば自動分析装置300Aにおいて、まず反応セル321の交換日時に基づき、直近の所定回数nの反応セル321の交換間隔の実績値I1,I2,…Inが演算される。これら実績値I1,I2,…Inが演算装置420で統計(例えば平均)され、新たに自動分析装置300Aに組み付けられる反応セル321の予想使用期間In+1が演算される。演算装置420による使用可能回数演算422の処理では、更に予想使用期間In+1に基づいて新たな反応セル321の使用可能回数が演算される。使用可能回数は、例えば自動分析装置300Aにおける直近所定期間の単位時間当たりの分析実施回数の実績値をメモリ410の記憶データから算出し、実績値と同じペースで予想使用期間In+1に実施される分析数を演算することで求められる。
【0043】
-反応セルの使用進行率の推定-
図7は反応セルの使用進行率の説明図である。図7の図の横軸の回数は、自動分析装置300A(自動分析装置300Bも同様)の反応セル321を全数1セットとして一斉交換する前提の下、自動分析装置300Aで現在使用中の反応セル321の1セットの使用回数を表している。つまり、同図の横軸は、自動分析装置300Aで現在使用中の反応セル321(全数1セット)を用いて実施された分析実行数に相当する。
【0044】
図7では、現在使用中の反応セル321を上記の通り演算した使用可能回数Npだけ使用した頃に、セルブランク測定で反応セル321の交換を要求する次回のアラームが出力されることが想定されている。この場合、現在使用中の反応セル321の現在までの使用回数をNとすると、演算装置420による使用進行率演算423の処理では、100×N/Npの値が反応セル321の使用進行率R(%)の推定値として演算される。使用進行率Rが100%になる頃に反応セル321の次回の交換が想定される。使用可能回数Np及び使用回数Nも同図の横軸と同様、個々の反応セル321の個別の使用回数ではなく、現在使用中の反応セル321を全数1セットと捉えた概念の下の値である。
【0045】
-その他の管理対象部品の使用進行率-
演算装置420による使用進行率演算423の処理では、現在使用中の反応セル321の使用進行率だけでなく、その他の管理対象部品の使用進行率も演算される。但し、各管理対象部品の使用進行率の演算は管理基準により若干異なる。
【0046】
図8は管理対象部品のメンテナンス項目のルールを例示した図である。同図の例では、反応ディスク311を適温に保つ恒温槽は、A月(所定の一定期間)毎に洗浄することが規定されている。恒温槽の前回洗浄時からの経過期間は、コンピュータ400又は制御装置303のタイマーで計測することができる。また、光源ランプ326については、使用時間がB時間(使用可能時間)に到達したら交換することが規定されている。光源ランプ326の使用時間は自動分析装置300A(又は自動分析装置300B)に取り付けられてからの自動分析装置300A(又は自動分析装置300B)の稼働時間に相当する。光源ランプ326の使用時間も、コンピュータ400又は制御装置303のタイマーで計測することができる。これら恒温槽や光源ランプ326は自動分析装置300A,300Bの稼働中に恒常的に使用される第1部品であり、そのメンテナンスの時期については時間で管理される。これら第1部品については、使用進行率演算423の処理において、一定の使用可能時間Tpと使用時間T(直近のメンテナンス時からの経過時間)とから、T/Tp×100で使用進行率Rが演算される。
【0047】
他方、図8に例示した反応セル321やピペットノズル(サンプルプローブ)は、自動分析装置300A,300Bの稼働中に検体の分析に伴って間欠的に使用される第2部品であり、そのメンテナンスの時期については使用回数で管理される。セルブランク測定でメンテナンスの要否を判定する反応セル321のような部品の場合、次回メンテナンスまでに実際に使用される回数がばらつく。そこで、反応セル321のような第2部品については、前述した通りメンテナンス履歴412から使用時間を推定し、使用時間から推定される使用可能回数Npに対する使用回数Nの割合(N/Np×100)を使用進行率Rとして演算する。
【0048】
同じ第2部品でも、ピペットノズルについては、具体的にC回(一定の使用可能回数)だけ使用されたらメンテナンス(洗浄)することが規定されている。ここで規定するピペットノズルの洗浄は、分析プロセスで検体分注の度に実行する洗浄ではなく、それよりも洗浄時間又は洗浄液の流通回数を増やしたメンテナンスとしての洗浄である。ピペットノズルのようにメンテナンス時期を一定の使用回数で判定する第2部品については、使用進行率演算423の処理において使用する使用可能回数Npには一定の設定値が設定される。使用可能回数Npに用いる値がバリアブルな推定値ではなく一定の設定値である点が異なるが、ピペットノズル等の使用進行率Rも反応セル321と同じくN/Np×100と演算される。
【0049】
コンピュータ400のメモリ410又は制御装置303のメモリ331には、図8のように規定された第1部品や第2部品のメンテナンス実施の判断基準(使用可能時間や使用可能回数等)が記憶されている。コンピュータ400又は制御装置303は、これら基準に基づき、所定の条件が満たされたら、該当する部品のメンテナンスを要求するアラームを例えば操作装置401に出力する。第1部品の場合、使用時間が使用可能時間に到達したらアラームが出力される。第2部品のうち反応セル321等のテストでメンテナンス要否を判定する部品については、所定のテスト(例えばセルブランク測定)でメンテナンスが必要と判定されたらアラームが出力される。第2部品のうちピペットノズル等の単純に使用回数でメンテナンスの要否を判定する部品については、使用回数が使用可能回数に到達したらアラームが出力される。
【0050】
-画面の例-
図9は管理対象部品の使用進行率を表示する画面の例を表す図である。同図に示した画面は、例えば操作装置401の所定の操作に応じたコンピュータ400からの表示信号により操作装置401のモニタに表示される画面である。この画面は、演算装置420で演算された管理対象部品の使用進行率やその演算の基礎としたデータに基づいて表示される。ネットワークを介してコンピュータ400に他のコンピュータ(不図示)を接続した場合、他のコンピュータのモニタに図9の画面を表示させることもできる。同図の画面には、インジケータ91-94とスイッチ95とが表示されている。
【0051】
インジケータ91には、自動分析装置300A(同図では第1モジュールと表記)の光源ランプ326の使用状況が表される。インジケータ91の全体の長さが光源ランプ326について設定された上記使用可能時間Tpに相当し、その使用可能時間Tpのうち光源ランプ326の使用時間Tがどの程度であるかがインジケータ91で視覚的に表示される。光源ランプ326の使用時間Tについては、インジケータ91の項目欄91aに数値も表示される。自動分析装置300Aの稼働時間と共に、インジケータ91の使用時間T及び項目欄91aの数値が増していく。図9の例では光源ランプ326についてデータを表示する場合を例示しているが、他の第1部品又は複数の第1部品についてのデータが表示されるようにしても良い。また、任意に選択した第1部品についてのデータを表示できるようにしても良い。
【0052】
インジケータ92には、自動分析装置300Aの反応セル321の使用状況が表される。インジケータ92の全体の長さが反応セル321について推定された上記使用可能回数Npに相当し、その使用可能回数Npのうち反応セル321の使用回数Nがどの程度であるかがインジケータ92で視覚的に表示される。反応セル321の使用回数Nについては、インジケータ92の項目欄92aに数値も表示される。反応セル321が使用される度に、インジケータ92の使用回数N及び項目欄92aの数値が増していく。図9の例では反応セル321の交換時期の目安となるデータを表示する場合を例示しているが、他の第2部品又は複数の第2部品についてのデータが表示されるようにしても良い。また、任意に選択した第2部品についてのデータを表示できるようにしても良い。
【0053】
インジケータ93,94には、自動分析装置300B(同図では第2モジュールと表記)の光源ランプ326及び反応セル321の使用状況が表される。インジケータ93,94はインジケータ91,92と同様の表示であり、インジケータ91,92と同じく項目欄93a,94aに数値も表示される。
【0054】
スイッチ95は、演算装置420の搬送制御424による保守機会抑制モードの有効及び無効を切り換えるスイッチである。保守機会抑制モードとは、検体を優先的に供給する優先装置を第1部品の使用時間を基に選択し管理対象部品のメンテナンスの機会の抑制を図る検体分配機能である。保守機会抑制モードによる検体の分配動作については図10を用いて後述する。
【0055】
本実施形態では、図9の画面に表示されるチェックボックスをスイッチ95に採用した場合を例示している。チェックボックスにチェックを入れると保守機会抑制モードが有効になり、チェックを外すと保守機会抑制モードが無効になる。但し、スイッチ95は同図に示した形態に限定されず、その他の表示形態のボタンに代えても良いし、例えば操作装置401や分析装置本体301等に設けた物理的なスイッチに代えることもできる。
【0056】
-検体分配動作(保守機会抑制モード)-
図10はコンピュータ400による自動分析装置300A,300Bに対する検体分配動作の手順を表すフローチャートである。このフローチャートに示す手順は自動分析装置300A,300Bの分析稼働中に常時繰り返し実行され、検体ラック2は、自動分析システムに投入された際に自動分析装置300A,300Bのどちらで検体が分析されるかが図10に示す手順で設定される。
【0057】
ステップS101
自動分析装置300A,300Bが起動すると、コンピュータ400は図10のフローを開始し、保守機会抑制モードが有効であるかを判定する(ステップS101)。図9のスイッチ95で保守機会抑制モードの無効が選択されている場合、コンピュータ400は、ステップS101からステップS120に手順を移す。反対にスイッチ95で保守機会抑制モードの有効が選択されている場合、コンピュータ400は、ステップS101からステップS102に手順を移す。
【0058】
ステップS102-S107
ステップS102に手順を移すと、コンピュータ400は、メモリ410に記録された自動分析装置300A,300Bの現在使用中の所定の第1部品(この例では光源ランプ326とする)の現在までの使用時間Ta,Tbを参照する。自動分析装置300A,300Bの使用時間Ta,Tbは、予め設定された設定時間T0とそれぞれ比較される(ステップS103-S105)。設定時間T0は、光源ランプ326の使用可能時間Tpよりも短く設定された値であり、例えば使用可能時間Tpの2/3程度の値である。ステップS103-S105の判定の結果、自動分析装置300A,300Bの光源ランプ326の使用時間Ta,Tbがいずれも設定時間T0以下である場合、コンピュータ400はステップS120に手順を移す。それに対し、自動分析装置300A,300Bのいずれかの光源ランプ326の使用時間が設定時間T0を超える場合、コンピュータ400は、使用時間が設定時間T0を超える自動分析装置を優先装置に選択する。例えば使用時間Taのみが設定時間T0を超える場合、コンピュータ400はステップS106に手順を移し、自動分析装置300Aを優先装置に選択して図10の手順を終える。使用時間Tbのみが設定時間T0を超える場合、コンピュータ400はステップS107に手順を移し、自動分析装置300Bを優先装置に選択して図10の手順を終える。使用時間Ta,Tbの双方が設定時間T0を超える場合、コンピュータ400はステップS108に手順を移す。
【0059】
ステップS108-S110
ステップS108に手順を移すと、コンピュータ400は、メモリ410に記録されている自動分析装置300A,300Bの現在使用中の所定の第2部品(この例では反応セル321とする)の現在までの使用回数N1,N2を参照する。続くステップS109に手順を移し、コンピュータ400は、上記の通り演算した反応セル321の使用可能回数Npと使用回数N1,N2とを基に、自動分析装置300A,300Bにおける反応セル321の各々の現在の使用進行率R1,R2を演算する。次のステップS110において、コンピュータ400は、自動分析装置300A,300Bの反応セル321の使用進行率R1,R2を比較する。この比較の結果、自動分析装置300Aの反応セル321の使用進行率R1の方が高ければ(R1>R2)、コンピュータ400はステップS106に手順を移し、自動分析装置300Aを優先装置に選択して図10の手順を終える。反対に自動分析装置300Bの反応セル321の使用進行率R2の方が高ければ(R1<R2)、コンピュータ400はステップS107に手順を移し、自動分析装置300Bを優先装置に選択して図10の手順を終える。このように、所定の第1部品の使用時間が設定時間T0を超える自動分析装置が複数ある場合、コンピュータ400は、それら複数の自動分析装置について所定の第2部品の使用回数を比較し、第2部品の使用回数が最も多い自動分析装置を優先装置に選択する。
【0060】
コンピュータ400は、自動分析装置300a,300Bの稼働中、保守機会抑制モードが有効であれば、以上のステップS101-S110の手順を繰り返し実行する。保守機会抑制モードが有効時には、コンピュータ400の演算装置420による搬送制御424の処理において、ステップS101-S110による優先装置の選択に従って搬送ライン100に制御信号が出力される。その結果、自動分析装置300A,300Bのうち第1部品のメンテナンス時期が近い優先装置に、反応セル321(所定の第2部品)を分析に使用する検体が他の自動分析装置に優先して搬送される。
【0061】
-検体分配動作(スループット優先モード)-
図11は保守機会抑制モードが無効のときのコンピュータ400による自動分析装置300A,300Bに対する検体分配動作の手順を表すフローチャートである。図11に示すフローチャートは、図10のステップS120の手順の詳細であり、スループットを重視して優先装置を選択するスループット優先モードの一例である。このスループット優先モード(ステップS120)は、スイッチ95で保守機会抑制モードが無効に設定されている場合に実行される(図10)。また保守機会抑制モードが有効である場合でも、自動分析装置300A,300Bの光源ランプ326の使用時間Ta,Tbがいずれも設定時間T0以下であり、保守機会抑制モードを適用するよりも高い効率が見込まれる場面で実行される(図10)。
【0062】
ステップS120の手順を開始すると、コンピュータ400は、ステップS121において、自動分析装置300A,300Bのどちらが低負荷状態であるかを判定する。自動分析装置300A,300Bの負荷状態は、例えばメモリ410に記録された検体分配履歴及び両自動分析装置の分析実行履歴を基に、自動分析装置300A,300Bに現在分配されている検体の各総処理時間の見込み値を演算することで評価できる。この判定の結果、自動分析装置300Aよりも自動分析装置300Bが低負荷であれば、コンピュータ400は、ステップS125に手順を移して自動分析装置300Bを優先装置に選択し、図11の手順を終了して図10のステップS101に手順を戻す。
【0063】
反対に自動分析装置300Bよりも自動分析装置300Aが低負荷であれば、コンピュータ400は、ステップS122に手順を移して自動分析装置300A,300Bのどちらのバッファユニット302の検体容器1の保持数が少ないかを判定する。自動分析装置300A,300Bの検体待ち数は、例えばメモリ410に記録された検体分配履歴及び両自動分析装置の分析実行履歴を基に演算できる。この判定の結果、自動分析装置300Aよりも自動分析装置300Bの検体待ち数が少なければ、コンピュータ400は、ステップS125に手順を移して自動分析装置300Bを優先装置に選択し、図11の手順を終了して図10のステップS101に手順を戻す。
【0064】
反対に自動分析装置300Bよりも自動分析装置300Aの検体待ち数が少なければ、コンピュータ400は、ステップS123に手順を移して自動分析装置300A,300Bのどちらが検体ラック投入位置から近いかを判定する。どちらの自動分析装置が近いかは、自動分析システムの既知の構成データから判定することができる。この判定の結果、自動分析装置300Aよりも自動分析装置300Bが近ければ、コンピュータ400は、ステップS125に手順を移して自動分析装置300Bを優先装置に選択し、図11の手順を終了して図10のステップS101に手順を戻す。反対に自動分析装置300Bよりも自動分析装置300Aが近ければ、コンピュータ400は、ステップS124に手順を移して自動分析装置300Aを優先装置に選択し、図11の手順を終了して図10のステップS101に手順を戻す。
【0065】
自動分析装置300A,300Bの負荷状態等を考慮せず、例えば単純に近い方の自動分析装置にばかり検体が分配されると、自動分析装置300A,300Bの負荷に偏りが生じてスループットが低下する可能性がある。それに対し、図11のように負荷状態等を考慮して検体を分配することで、負荷の偏りが抑制されてスループットの低下が抑えられる。
【0066】
-効果-
(1)光源ランプ326を交換する場合、分析装置本体301から反応ディスク311を取り外す等の事前作業をする必要があり、光源ランプ326の交換後にも分析装置本体301に反応ディスク311を取り付ける等の事後作業をする必要がある。この作業の間は自動分析装置を停止させなければならない。反応セル321を交換する場合、分析装置本体301から反応ディスク311を取り外し、反応ディスク311から使用済みの反応セル321を全て取り外し、新たな反応セル321をセットした反応ディスク311を分析装置本体301に取り付ける。この間も自動分析装置を停止させる必要がある。他の管理対象部品のメンテナンス時も、同じく自動分析装置を停止させる必要がある。そのため、各管理対象部品のメンテナンスの機会が個別に訪れると、自動分析装置の停止頻度が増加する。
【0067】
このとき、光源ランプ326等の第1部品は自動分析装置300A,300Bでそれぞれ一定の使用状態で恒常的に使用されるため、メンテナンス時期を調整することは困難である。それに対し、反応セル321等の第2部品は使用機会を制御することでメンテナンス機会の到来時期を調整することができる。そこで本実施形態の自動分析システムでは、所定の第1部品(図10の例では光源ランプ326)の使用時間Tが設定時間T0を超える自動分析装置が優先装置に選択され、選択された優先装置に他の自動分析装置に優先して検体が搬送されるようにした。これにより優先装置つまり第1部品のメンテナンス時期の近付いた自動分析装置で優先的に検体の分析が実行され、これにより優先装置における第2部品(図10の例では反応セル321)の使用回数が他の自動分析装置に比べて早期に増加する。その結果、優先装置における所定の第2部品のメンテナンスの機会が早まり、優先装置における所定の第1部品のメンテナンスの機会が到来する頃には所定の第2部品の使用がかなり進行する。所定の第2部品の使用進行率が一定以上になっていれば、所定の第1部品のメンテナンスの機会に第2部品のメンテナンスを併せて行っても差し支えない。
【0068】
このように複数の管理対象部品のメンテナンスの機会をまとめることで、管理対象部品のメンテナンスに伴う自動分析装置の停止頻度を下げ、ユーザーの負担を軽減し検体の分析の処理効率を向上させることができる。
【0069】
特に反応セル321と光源ランプ326は、反応ディスク311の付け外し作業等、交換に伴う作業が共通するため、1度のメンテナンスの機会で双方を交換することができれば効率面で非常に効果が大きい。
【0070】
(2)また、図10のステップS108-S110で説明したように、第1部品の使用時間Tが設定時間T0を超える自動分析装置が複数ある場合には、それら複数の自動分析装置における第2部品の使用回数Nによって優先装置が選択される。これにより、第1部品のメンテナンス時期が近付いた自動分析装置が複数ある場合に、より早期に第2部品のメンテナンスの機会を到来させることができる自動分析装置が優先装置に選択される。優先装置における第2部品のメンテナンス時期が第1部品のメンテナンス時期により合い易くなる。また、例えば自動分析装置300Aが優先装置に選択された後、メンテナンス時期が到来する前に、自動分析装置300Bにおける光源ランプ326の使用時間Tが設定時間T0を超える場合もあり得る。この場合、自動分析装置300Bの光源ランプ326の使用時間Tが設定時間T0を超えた時点で、自動分析装置300Aよりも自動分析装置300Bの方が反応セル321の使用回数Nが多い可能性もある。このような場面において、より早期に第2部品のメンテナンス時期を到来させられる自動分析装置300Bが新たに優先装置に選択され、状況の変化に対応して柔軟に優先装置が切り換わる。
【0071】
(3)複数の自動分析装置で第1部品及び第2部品が共通していることで、1つの自動分析装置が停止している間も他の自動分析装置で項目の共通する分析を実施することができる。そのため、例えば反応セル321及び光源ランプ326の交換のために自動分析装置300Aを停止させても、その間に自動分析装置300Bで生化学分析を継続して行うことができ、分析の処理の停滞を抑制することができる。また、自動分析装置間で部品が共通していれば、管理部品の品目数が抑えられて部品管理の面でも有利である。
【0072】
但し、同一の自動分析装置における所定の第1部品と所定の第2部品のメンテナンスの時期を合わせる効果を得る上では、自動分析システムを構成する複数の自動分析装置で管理対象部品が共通している必要は必ずしもない。
【0073】
(4)保守機会抑制モードを無効にするスイッチ95が用意されているので、常にスループット優先モードで検体が自動分析装置300A,300Bに分配されることが望ましい場合には、保守機会抑制モードを無効にすることができる。第1部品の使用進行率によらずスループット重視で分析処理を進捗させたい場面等に柔軟に対応することができる。
【0074】
(5)例えば反応セル321は、間欠的に使用される第2部品ではあるが、前述したようにセルブランク測定で必要と判定された場合にメンテナンスの機会が到来するため、現在までの使用回数のみで単純に交換時期が決まる訳ではない。そこで、メンテナンス履歴から反応セル321の交換間隔を統計して使用可能時間Tpを推定し、使用可能時間Tpから見込まれる使用可能回数Npを演算することで、現在使用中の反応セル321の交換時期が凡そ推定される。この見込まれる使用可能回数Npに対する反応セル321の現在の使用回数N、つまり反応セル321の使用進行率Rの推定値は、図9に例示した通りインジケータ92,94に表示される。これにより、通常はセルブランク測定により唐突に知らされる反応セル321の交換時期について、ユーザーに目安を知らせることができる。インジケータで視覚的に表示することで、反応セル321の交換時期が感覚的にも把握し易い。
【符号の説明】
【0075】
95…スイッチ、100…搬送ライン、300A,B…自動分析装置、321…反応セル(第2部品)、326…光源ランプ(第1部品)、400…コンピュータ、410…メモリ、412…メンテンナンス履歴、N…使用回数、Np…使用可能回数、T…使用時間、T0…設定時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11