(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】要素画像群生成装置及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20240926BHJP
G03B 35/20 20210101ALI20240926BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240926BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
G06T19/00 F
G03B35/20
G02B3/00 A
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2020200726
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 恭孝
(72)【発明者】
【氏名】久富 健介
(72)【発明者】
【氏名】小出 大一
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-080028(JP,A)
【文献】特表2020-510241(JP,A)
【文献】特表2018-528452(JP,A)
【文献】特開2012-230142(JP,A)
【文献】特開2014-160171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/00 - 1/08
G02B 3/00 - 3/14
G02B 27/00 -30/60
G03B 35/00 -37/06
G06T 1/00 - 1/40
G06T 3/00 - 5/94
G06T 11/00 -19/20
G09G 5/00 - 5/36
G09G 5/377- 5/42
H04N 5/64 - 5/655
H04N 13/00 -17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイと要素レンズからなるレンズアレイと接眼レンズとを備えるライドフィールド方式の頭部装着型表示装置において表示する要素画像群を生成する要素画像群生成装置であって、
前記頭部装着型表示装置の構造及び前記頭部装着型表示装置の使用者の眼に関するパラメータに基づいて、前記要素レンズのピッチより大きくなるように、前記要素画像群を構成する要素画像のピッチを算出する要素画像ピッチ算出手段と、
前記要素画像ピッチ算出手段が算出したピッチで前記要素画像群を生成する要素画像群生成手段と、を備え、
前記要素画像ピッチ算出手段は、
前記頭部装着型表示装置の光軸を基準として、前記要素画像のピッチを大きくしたときに前記レンズアレイにより形成される中間像のサイズを算出し、
前記中間像から前記接眼レンズまでの距離と前記接眼レンズから3次元像までの距離との比を前記中間像のサイズに乗算することで、前記光軸を基準とした前記3次元像のサイズを算出し、
前記3次元像のサイズ及び前記接眼レンズの直径により定まる視野角が最大になるときの前記接眼レンズから前記使用者の眼球面までの距離であるアイレリーフに基づいて、前記要素画像のピッチを算出することを特徴とする要素画像群生成装置。
【請求項2】
前記使用者の眼球位置とアイボックスの中心とが一致するように前記要素画像群のオフセット値を算出する要素画像群オフセット値算出手段、をさらに備え、
前記要素画像群生成手段は、前記要素画像ピッチ算出手段が算出したピッチ、かつ、前記要素画像群オフセット値算出手段が算出したオフセット値だけオフセットした前記要素画像群を生成することを特徴とする請求項1に記載の要素画像群生成装置。
【請求項3】
前記使用者の眼球位置を検出する眼球位置検出手段、をさらに備え、
前記要素画像群オフセット値算出手段は、前記使用者の眼球位置と前記アイボックスの中心とが一致するように前記要素画像群のオフセット値を算出することを特徴とする請求項2に記載の要素画像群生成装置。
【請求項4】
前記要素画像群生成手段は、光線追跡法により前記要素画像群を生成することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の要素画像群生成装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の要素画像群生成装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライドフィールド方式の頭部装着型表示装置において表示する要素画像群を生成する要素画像群生成装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、教育、医療、娯楽などの様々な分野でバーチャルリアリティー(VR:Virtual Reality)の活用が広がりつつある。例えば、VRでは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)が使用されている。このHMDは、接眼レンズによりディスプレイを拡大する単純な光学系を備え、左目用と右目用の2枚のディスプレイに視差のある映像を表示することにより、使用者が立体感を感じる仕組みである。
【0003】
ディスプレイの高精細化や光学系の改善により、HMDの高精細及び広視野化が進む一方、調節距離と輻輳距離との不一致に起因する長時間使用時の眼精疲労が問題の一つとしてあげられる。この問題は、調節機能により眼が焦点を合わせる位置と、輻輳機能により両眼の視線方向が交差する位置とが一致していないことに起因しており、仮想的に3D物体の光源を再生するライトフィールド方式で改善できる(特許文献1)。
【0004】
ライトフィールドHMD9は、
図7に示すように、ディスプレイ90と、レンズアレイ91と、接眼レンズ93とを備える。また、
図7には、3次元像α、中間像β、ライトフィールドHMD9を装着している使用者の眼γを図示した。
【0005】
ディスプレイ90は、要素画像110がアレイ状に配列された要素画像群100を表示するものである。また、レンズアレイ91は、マイクロレンズなどの要素レンズ92がアレイ状に配列されたものである。また、接眼レンズ93は、中間像βを拡大するレンズである。
【0006】
要素画像110中の各点は、異なる視点からのオブジェクト又はシーンの見え方(色)を表すことになる。ここで、ディスプレイ90の各画素から発せられた光線は、レンズアレイ91を通過後に3次元的に交差し、中間像βを形成する。そして、この中間像βが接眼レンズ93を通して、拡大された虚像(3次元像α)となって見える。
【0007】
ここで、ライトフィールドHMD9では、その性能を決定づけるパラメータとして、「空間周波数」、「視野角」、「アイボックス」の3つがあげられる(非特許文献1)。
【0008】
空間周波数は、3次元像αを観察した場合に、単位角度内に再生できる白黒パターンの数を表す。この空間周波数は、レンズアレイ91及び接眼レンズ93で拡大されたディスプレイ90の画素サイズ及び眼γから3次元像αまでの距離によって決まる。
視野角は、眼球面から3次元像αが見える範囲を表す。この視野角は、ディスプレイ90の両端ある要素画像110の中心からの光線と、アイレリーフとによって決まる。なお、アイレリーフとは、接眼レンズ93から眼球面までの距離のことである。
アイボックスは、眼球面における3次元像αを乱れることなく観察することができる範囲を表す。
【0009】
非特許文献1に記載の技術では、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、要素レンズ92の真後ろに、要素レンズ92のピッチと同一サイズの要素画像110を表示する。以後、X軸が水平方向、Y軸が垂直方向、Z軸が奥行方向を表すこととする。
図9に示すように、各要素画像110の中心から要素レンズ92の中心を通る光線は、ライトフィールドHMD9の光軸と平行に進み、接眼レンズ93で屈折され、接眼レンズ93の焦点距離にある眼球面の中心Cで1点に集光する。
図10(a)及び
図10(b)に示すように、ディスプレイ90で上下両端にある要素画像110の端からの光線は、それぞれ瞳面中心の上下で集光する。この上下両端の区間が、前記したアイボックスEBとなる(左右両端も同様)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Huang, H. & Hua, H. High-performance integral-imaging-based light field augmented reality display using freeform optics. Opt. Express 26, 17578 (2018).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、前記した従来技術では、要素画像110が要素レンズ92の真後ろに位置するため、接眼レンズ93を超えるサイズのディスプレイ90を使用した場合、光線が目に届かなくなる。また、各要素画像110の中心からの光線を眼球面に集光させるためには、接眼レンズ93の焦点距離だけ眼球面を離す必要がある。
【0013】
ここで、視野角θは、以下の式(1)で表される。なお、deyeは接眼レンズ93の直径であり、eはアイレリーフであり、feyeは接眼レンズ93の焦点距離である。
【0014】
【0015】
接眼レンズ93の直径deyeは、光学収差の影響を受けるため、ある程度の上限が存在する。アイレリーフeに関しては、画素ピッチが比較的狭い場合(数um程度)、拡大率を大きくしても問題が生じない。その一方、画素ピッチが広い場合(数十um程度)、ディスプレイ90の画素構造が顕著に目立ってしまうので、拡大率を大きくできず、接眼レンズの焦点距離を長くする必要がある。その結果、アイレリーフが大きくなってしまい、視野角が低下するという問題がある。
【0016】
本発明は、視野角を拡大できる要素画像群生成装置及びそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、本発明に係る要素画像群生成装置は、ディスプレイと要素レンズからなるレンズアレイと接眼レンズとを備えるライドフィールド方式の頭部装着型表示装置において表示する要素画像群を生成する要素画像群生成装置であって、頭部装着型表示装置の構造及び頭部装着型表示装置の使用者の眼に関するパラメータに基づいて、要素レンズのピッチより大きくなるように、要素画像群を構成する要素画像のピッチを算出する要素画像ピッチ算出手段と、要素画像ピッチ算出手段が算出したピッチで要素画像群を生成する要素画像群生成手段と、を備える構成とした。
【0018】
かかる構成によれば、要素画像ピッチ算出手段は、頭部装着型表示装置の光軸を基準として、要素画像のピッチを大きくしたときにレンズアレイにより形成される中間像のサイズを算出する。そして、要素画像ピッチ算出手段は、中間像から接眼レンズまでの距離と接眼レンズから3次元像までの距離との比を中間像のサイズに乗算することで、光軸を基準とした3次元像のサイズを算出する。さらに、要素画像ピッチ算出手段は、3次元像のサイズ及び接眼レンズの直径により定まる視野角が最大になるときのアイレリーフに基づいて、要素画像のピッチを算出する構成とした。
【0019】
つまり、要素画像群生成装置は、要素画像のピッチを要素レンズのピッチより大きくすることで、要素レンズの真後ろから外れた位置に要素画像を表示させる。このとき、頭部装着型表示装置では、各要素画像と要素レンズとの中心を通る光線が光軸に対して斜めに進み、接眼レンズで屈折され、アイレリーフだけ離れた眼球面の中心で1点に集光するので、視野角を拡大できる。
【0020】
なお、本発明は、コンピュータを、前記した要素画像群生成装置として機能させるためのプログラムで実現することもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、視野角を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係るライトフィールドHMDシステムの概略構成図である。
【
図2】(a)及び(b)は、実施形態において、ディスプレイとレンズアレイとの位置関係を説明する説明図である。
【
図3】実施形態において、要素画像の中心から要素レンズの中心を通る光線が眼球面の中心に集光することを説明する説明図である。
【
図4】実施形態において、ライトフィールドHMDで生成される中間像及び3次元像のサイズを説明する説明図である。
【
図5】(a)~(d)は、実施形態において、視野角の算出式を説明する説明図である。
【
図6】実施形態において、要素画像群生成装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】従来のライトフィールドHMDの概略構成図である。
【
図8】(a)及び(b)は、従来技術において、ディスプレイとレンズアレイとの位置関係を説明する説明図である。
【
図9】従来技術において、要素画像の中心から要素レンズの中心を通る光線が眼球面の中心に集光することを説明する説明図である。
【
図10】従来技術において、アイボックスを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に説明する各実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0024】
(実施形態)
図1を参照し、実施形態に係るライトフィールドHMDシステム1の構成について説明する。
図1に示すように、ライトフィールドHMDシステム1は、ライトフィールド方式でVR表示を行うライトフィールドHMD10と、ライトフィールドHMD10が表示する要素画像群を表示する要素画像群生成装置20とを備える。このとき、要素画像群生成装置20は、要素レンズ13のピッチより要素画像110のピッチが大きくなるような要素画像群を生成する。
【0025】
[ライトフィールドHMDの構成]
まず、ライトフィールドHMD10の構成について説明する。
ライトフィールドHMD10は、
図7のライトフィールドHMD9と同様、一般的なライトフィールド方式の頭部装着型表示装置である。
図1に示すように、ライトフィールドHMD10は、ディスプレイ11(11
R,11
L)と、レンズアレイ12(12
R,12
L)と、接眼レンズ14(
図3)と、筐体15とを備える。なお、
図1では、図面を見やすくするため、接眼レンズ14の図示を省略した。
【0026】
ディスプレイ11は、画素を2次元状に配列した平面ディスプレイである。ここで、ディスプレイ11は、要素レンズ13の焦点位置に配置される。本実施形態では、ディスプレイ11が、右眼用要素画像群を表示する右眼用ディスプレイ11Rと、左眼用要素画像群を表示する左眼用ディスプレイ11Lとで構成されている。なお、ディスプレイ11は、1枚の平面ディスプレイで構成し、この平面ディスプレイの左右それぞれに右眼用要素画像群及び左眼用要素画像群を表示してもよい。
【0027】
レンズアレイ12は、要素レンズ13を2次元状に配列したものである。ここで、レンズアレイ12は、接眼レンズ14の焦点位置に配置される。例えば、要素レンズ13としては、微小な両凸レンズ(マイクロレンズ)があげられる。本実施形態では、レンズアレイ12が、右眼用レンズアレイ12Rと左眼用レンズアレイ12Lとで構成されている。なお、レンズアレイ12として、ピンホールを2次元状に配列したピンホールアレイを用いてもよい。
【0028】
接眼レンズ14は、ディスプレイ11が表示する要素画像110(
図2)からの光線がレンズアレイ12を通過した後に形成する中間像βを拡大するレンズである。例えば、接眼レンズ14としては、一般的な球面レンズやフレネルレンズなどがあげられる。本実施形態では、接眼レンズ14が、右眼用接眼レンズと左眼用接眼レンズとで構成されている。
【0029】
筐体15は、ディスプレイ11、レンズアレイ12、接眼レンズ14及び要素画像群生成装置20を収容するものである。例えば、筐体15は、ゴーグル状のプラスチックケースであり、使用者の頭部にライトフィールドHMD10を固定するためのバンド(不図示)を有する。
【0030】
[要素画像群生成装置の構成]
続いて、要素画像群生成装置20の構成について説明する。
要素画像群生成装置20は、ライトフィールドHMD10に表示する要素画像群100を生成するものである。本実施形態では、要素画像群生成装置20が、ライトフィールドHMD10に内蔵された演算装置であることとする。なお、要素画像群生成装置20は、ライトフィールドHMD10から独立したコンピュータ(例えば、ワークステーション)であってもよい。
【0031】
図1に示すように、要素画像群生成装置20は、HMDパラメータ記憶手段21と、3Dシーン記憶手段22と、眼球位置検出手段23と、要素画像ピッチ算出手段24と、要素画像群オフセット値算出手段25と、要素画像群生成手段26とを備える。なお、要素画像群生成装置20において、右眼用要素画像群及び左眼用要素画像群を生成する手法は同様のため、区別せずに説明する。
【0032】
HMDパラメータ記憶手段21は、HMDパラメータを記憶するメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの記憶装置である。このHMDパラメータには、ライトフィールドHMD10及びその使用者の眼に関するパラメータが含まれており、詳細を後記する。
3Dシーン記憶手段22は、要素画像群100の生成に必要な3Dシーン(3Dモデル)を記憶する記憶装置である。
本実施形態では、HMDパラメータ及び3Dシーンが、ライトフィールドHMDシステム1の製造者や管理者が事前に設定することとする。
【0033】
眼球位置検出手段23は、使用者の眼球位置を検出するものである。つまり、眼球位置検出手段23は、ライトフィールドHMD10を装着した状態での使用者の3次元的な眼球位置Oeye=(xeye,yeye)を検出する。ここで、眼球位置検出手段23は、既知の視線検出手法を用いて、眼球位置Oeyeを検出する。例えば、眼球位置検出手段23は、ライトフィールドHMD10の内部に配置したカメラで撮影した眼球画像から虹彩位置を検出し、眼球モデルを適用することで、眼球位置Oeyeを検出する。この他、眼球位置検出手段23は、近赤外光を眼球に照射する近赤外カメラで撮影した近赤外画像から角膜表面で反射した像を抽出することで、眼球位置Oeyeを検出してもよい。
その後、眼球位置検出手段23は、検出した眼球位置Oeyeを要素画像群オフセット値算出手段25に出力する。
【0034】
なお、眼球位置検出手段23は、使用者の眼球位置Oeyeだけでなく、アイレリーフeや瞳孔径を検出してもよい。
また、要素画像群生成装置20は、眼球位置検出手段23を備えずともよい。この場合、HMDパラメータとして、使用者の平均的な眼球位置Oeyeを設定することになる。
【0035】
要素画像ピッチ算出手段24は、HMDパラメータ記憶手段21に記憶されているHMDパラメータに基づいて、要素レンズ13のピッチより大きくなるように、要素画像群100を構成する要素画像110のピッチを算出するものである。そして、要素画像ピッチ算出手段24は、算出した要素画像110のピッチを要素画像群オフセット値算出手段25に出力する。
【0036】
<要素画像のピッチ算出手法>
以下、要素画像110のピッチ算出手法を具体的に説明する。
要素画像110のピッチpelemは、ライトフィールドHMD10の素子配置やその他の素子パラメータによって決まり、以下の式(2)で表される。
【0037】
【0038】
なお、parrayは、レンズアレイ12を構成する要素レンズ13のピッチである。また、aはディスプレイ11からレンズアレイ12までの距離であり、eはアイレリーフであり、lはレンズアレイ12から接眼レンズ14までの距離であり、feyeは接眼レンズ14の焦点距離である。ここで、要素レンズ13のピッチparray、距離a、アイレリーフe、距離l及び接眼レンズ14の焦点距離feyeは、HMDパラメータとして予め設定されている。また、眼球位置検出手段23で検出した使用者のアイレリーフeを用いてもよい。
【0039】
図2には、要素画像110のピッチp
elemを要素レンズ13のピッチp
arrayより大きくしたときのディスプレイ11とレンズアレイ12との位置関係を図示した。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、ライトフィールドHMD10では、
図8の従来技術と比べて、Z軸方向で要素レンズ13の真後ろからずれた位置に要素画像110を表示する。つまり、中心の要素画像110は対応する要素レンズ13の真後ろに位置しているが、中心以外の要素画像110は、対応する要素レンズ13に対し、Y軸方向で中心から遠ざかるように位置している。このとき、
図3に示すように、各要素画像110の中心から要素レンズ13の中心を通る光線は、ライトフィールドHMD10の光軸O
axisに対して斜めに進み、接眼レンズ14で屈折され、アイレリーフeだけ離れた眼球面の中心Cで1点に集光するので、視野角を拡大できる。
【0040】
以下、要素画像110のピッチpelemを要素レンズ13のピッチparrayより大きくしたときのライトフィールドHMD10で生成される中間像β及び3次元αのサイズについて検討する。
【0041】
図4に示すように、ライトフィールドHMD10の光軸O
axisを基準とした中間像βのサイズy
interは、以下の式(3)で表される。また、アイボックスEBのサイズd
eyeboxは、以下の式(4)で表される。
【0042】
【0043】
【0044】
なお、nは要素レンズ13の水平方向又は垂直方向の個数であり、bはレンズアレイ12から中間像βまでの距離であり、dpupilは瞳孔径である。ここで、要素レンズ13の個数n、距離b、アイボックスEBのサイズdeyebox及び瞳孔径dpupilは、HMDパラメータとして予め設定されている。また、眼球位置検出手段23で検出した使用者の瞳孔径dpupilを用いてもよい。
【0045】
ライトフィールドHMD10の光軸Oaxisを基準とした3次元像αのサイズyimageは、以下の式(5)で表される。
【0046】
【0047】
なお、cは中間像βから接眼レンズ14までの距離であり、dは接眼レンズ14から3次元像αまでの距離である。ここで、距離c,dは、HMDパラメータとして予め設定されている。
【0048】
視野角θは、以下の式(6)で表される。この式(6)は、要素画像110の中心からの光線による式(1)よりも正確である。ここで、式(6)は、
図5(a)及び
図5(b)に示すように接眼レンズ14の直径d
eyeで定まる項と、
図5(c)及び
図5(d)に示すように3次元像αのサイズにより定まる項y
imageとに分かれている。なお、
図5(b)及び
図5(d)は、接眼レンズ14を介して使用者から見たときの3次元像αを表している。
【0049】
【0050】
式(6)の視野角θが最大となるアイレリーフeから、要素画像110のピッチpelemを算出する。例えば、最適化問題として式(6)を解くことで、要素画像110のピッチpelemを算出する。より具体的には、式(6)ではアイレリーフe以外が定数なので、変数が1つの最適化問題として解けばよい。
なお、眼球位置検出手段23がアイレリーフeを検出する場合、検出したアイレリーフeを式(2)に代入し、要素画像110のピッチpelemを算出してもよい。
【0051】
以下、要素画像110のピッチpelemの算出手法をまとめる。
まず、要素画像ピッチ算出手段24は、前記した式(3)を用いて、光軸Oaxisを基準として、要素画像110のピッチpelemを大きくしたときにレンズアレイ12により形成される中間像βのサイズyinterを算出する。
【0052】
次に、要素画像ピッチ算出手段24は、前記した式(5)を用いて、中間像βから接眼レンズ14までの距離cと接眼レンズ14から3次元像αまでの距離dとの比を中間像βのサイズyinterに乗算することで、光軸Oaxisを基準とした3次元像αのサイズyimageを算出する。
【0053】
さらに、要素画像ピッチ算出手段24は、3次元像αのサイズyimage及び接眼レンズ14の直径deyeにより定まる視野角θが最大になるときのアイレリーフeに基づいて、要素画像110のピッチpelemを算出する。例えば、要素画像ピッチ算出手段24は、前記した式(6)を変数が1つの最適化問題として解くことで、要素画像110のピッチpelemを算出する。
【0054】
図1に戻り、要素画像群生成装置20の構成について、説明を続ける。
要素画像群オフセット値算出手段25は、眼球位置検出手段23から入力された使用者の眼球位置O
eyeとアイボックスEBの中心とが一致するように要素画像群100のオフセット値を算出するものである。本実施形態では、要素画像群オフセット値算出手段25が、式(7)を用いて、要素画像群100のオフセット値を算出する。この式(7)は、要素画像群100のオフセット値とアイボックスEBの中心位置との関係を示している。
【0055】
【0056】
なお、xoffset,yoffsetはX-Y平面における要素画像群100のオフセット値であり、xeye,yeyeはX-Y平面における眼球位置Oeyeであり、xoa,yoaはX-Y平面における接眼レンズ14の中心位置である。
【0057】
その後、要素画像群オフセット値算出手段25は、算出した要素画像群100のオフセット値xoffset,yoffsetと、要素画像ピッチ算出手段24から入力された要素画像110のピッチpelemとを要素画像群生成手段26に出力する。
【0058】
この要素画像群100のオフセット値は、ディスプレイ11に要素画像群100を表示するときのシフト量に相当する。つまり、要素画像群100をシフトさせることで、眼球面におけるアイボックスEBを水平方向及び垂直方向に制御できる。
【0059】
なお、要素画像群オフセット値算出手段25は、必須の構成でない。
瞳孔間距離には使用者毎の個人差があるため、使用者によって眼球位置Oeyeが異なる。ここで、眼球位置OeyeがアイボックスEBの範囲内の場合、要素画像群生成装置20が、要素画像群オフセット値算出手段25を備えずともよい。一方、眼球位置OeyeがアイボックスEBの範囲外の場合、要素画像群生成装置20は、要素画像群オフセット値算出手段25を備えることで、要素画像群100のオフセットによるアイボックスEBの位置調節が可能となる。このようにして、要素画像群生成装置20は、ライトフィールドHMD10を幅広い使用者に適用させることができる。
【0060】
要素画像群生成手段26は、要素画像群オフセット値算出手段25から入力された要素画像110のピッチpelem、かつ、オフセット値xoffset,yoffsetだけオフセットした要素画像群100を生成するものである。
【0061】
本実施形態では、要素画像群生成手段26が、要素画像110のピッチpelem、要素画像群100のオフセット値xoffset,yoffset及びHMDパラメータにより光線追跡処理を行い、3Dシーン記憶手段22に記憶されている3Dシーンから色情報を取得し、要素画像群100を生成する。この光線追跡処理は、以下の参考文献1,2に記載されているため、詳細な説明を省略する。
【0062】
参考文献1:片山、3Dモデルからインテグラル立体像への変換手法、NHK技研 R&D/No.128、2011年7月、[online]、[令和2年11月18日検索]、インターネット〈URL:https://www.nhk.or.jp/strl/publica/rd/rd128/PDF/P04-10.pdf/〉
参考文献2:3次元モデルからインテグラル立体像の生成技術、NHK技研 R&D/No.123、2010年9月、[online]、[令和2年11月18日検索]、インターネット〈URL:https://www.nhk.or.jp/strl/publica/rd/rd123/PDF/P64.pdf/〉
【0063】
その後、要素画像群生成手段26は、生成した要素画像群100をライトフィールドHMD10に出力する。
【0064】
[要素画像群生成装置の動作]
図6を参照し、要素画像群生成装置20の動作について説明する。
図6に示すように、ステップS1において、眼球位置検出手段23は、使用者の眼球位置O
eyeを検出する。例えば、眼球位置検出手段23は、ライトフィールドHMD10の内部に配置したカメラで撮影した眼球画像から虹彩位置を検出し、眼球モデルに適用することで、眼球位置O
eyeを検出する。なお、使用者の眼球位置O
eyeは、予め設定した情報を用いてもよい。
【0065】
ステップS2において、要素画像ピッチ算出手段24は、HMDパラメータに基づいて、要素レンズ13のピッチparrayより大きくなるように、要素画像110のピッチpelemを算出する。
【0066】
まず、要素画像ピッチ算出手段24は、前記した式(3)を用いて、ライトフィールドHMD10の光軸Oaxisを基準として、要素画像110のピッチpelemを大きくしたときにレンズアレイ12により形成される中間像βのサイズyinterを算出する。
【0067】
次に、要素画像ピッチ算出手段24は、前記した式(5)を用いて、中間像βから接眼レンズ14までの距離cと接眼レンズ14から3次元像αまでの距離dとの比を中間像βのサイズyinterに乗算することで、3次元像αのサイズyimageを算出する。
【0068】
さらに、要素画像ピッチ算出手段24は、3次元像αのサイズyimage及び接眼レンズ14の直径deyeにより定まる視野角θが最大になるときのアイレリーフeに基づいて、要素画像110のピッチpelemを算出する。例えば、要素画像ピッチ算出手段24は、前記した式(6)を変数が1つの最適化問題として解くことで、要素画像110のピッチpelemを算出する。
【0069】
ステップS3において、要素画像群オフセット値算出手段25は、眼球位置検出手段23が検出した眼球位置OeyeとアイボックスEBの中心とが一致するように要素画像群100のオフセット値を算出する。例えば、要素画像群オフセット値算出手段25は、前記した式(7)を用いて、要素画像群100のオフセット値を算出する。
【0070】
ステップS4において、要素画像群生成手段26は、要素画像ピッチ算出手段24が算出した要素画像110のピッチpelem、かつ、要素画像群オフセット値算出手段25が算出したオフセット値xoffset,yoffsetだけオフセットした要素画像群100を生成する。例えば、要素画像群生成手段26は、一般的な光線追跡処理を用いて、要素画像群100を生成する。
【0071】
[作用・効果]
以上のように、要素画像群生成装置20は、要素画像110のピッチpelemを要素レンズ13のピッチparrayより大きくすることで、要素レンズ13の真後ろから外れた位置に要素画像110を表示させる。このとき、要素画像群生成装置20では、各要素画像110と要素レンズ13との中心を通る光線が光軸Oaxisに対して斜めに進み、接眼レンズ14で屈折され、アイレリーフだけ離れた眼球面の中心Cで1点に集光するので、視野角θを拡大できる。
【0072】
さらに、要素画像群生成装置20は、アイボックスEBを拡張し、アイレリーフを調整できる。
さらに、要素画像群生成装置20は、接眼レンズ14の直径を超えるディスプレイ11からの光線を使用者の眼に届けると共に、アイレリーフを接眼レンズ14の焦点距離より短い範囲で設計することが可能となるので、視野角を拡大できる。
【0073】
(変形例)
以上、本発明の各実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0074】
前記した各実施形態では、要素画像群生成装置を独立したハードウェアとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は、コンピュータが備えるCPU、メモリ、ハードディスク等のハードウェア資源を、前記した要素画像群生成装置として動作させるプログラムで実現することもできる。これらのプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD-ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 ライトフィールドHMDシステム
10 ライトフィールドHMD(頭部装着型表示装置)
11,11R,11L ディスプレイ
12,12R,12L レンズアレイ
14 接眼レンズ
15 筐体
20 要素画像群生成装置
21 HMDパラメータ記憶手段
22 3Dシーン記憶手段
23 眼球位置検出手段
24 要素画像ピッチ算出手段
25 要素画像群オフセット値算出手段
26 要素画像群生成手段