(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】低硬化温度を示す潜在的な還元剤を含む、カチオン硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 491/08 20060101AFI20240926BHJP
C08G 59/68 20060101ALI20240926BHJP
C08G 65/18 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C07D491/08 CSP
C08G59/68
C08G65/18
(21)【出願番号】P 2020573040
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 US2019039370
(87)【国際公開番号】W WO2020006159
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-24
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】スリダー、 ラクスミシャ エム.
(72)【発明者】
【氏名】シャンペン、 ティモシー エム.
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-537205(JP,A)
【文献】特開平07-330872(JP,A)
【文献】独国特許発明第4325846(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D491/00-493/22
C08G 2/00- 85/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロインまたはフロイン誘導体と、
(a)1以上のマレイミド、ナジイミドまたはイタコンイミド官能基を有する化合物および/または(b)1以上のマレエートまたはフマレート官能基を有する化合物とのDiels-Alder反応生成物であって、
フロイン誘導体は、以下の式
【化1】
(式中、Rは、フラン環のいずれかまたは両方の
、結合を有していない位置のいずれかの1以上
に存在する置換基であり、Rは、アルキル、アリール、ハロ
ゲン、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、チオエーテル、またはアセトキシアルキルから選択
され、ここで、アルキル基は1~4個の炭素原子を有する。)で表され、
1以上のマレイミド、ナジイミド、またはイタコンイミド官能基を有する化合物は、
【化2】
(式中、
m=1~15であり、
p=0~15であり、
各R
2は、水素または1~4個の炭素原子を有する低級アルキルから独立して選択され、
Jは、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、ポリシロキサン、ポリシロキサン-ポリウレタンブロックコポリマー、およびそれらの組み合わせから選択される一価または多価基であり、任意に、共有結合、-O-、-S-、-NR-、-OC(O)-、-O-C(O)-O-、-O-C(O)-NR-、-NR-C(O)-、-NR-C(O)-O-、-NR-C(O)-NR-、-SC(O)-、-SC(O)-O-、-SC(O)-NR-、-S(O)-、-S(O)
2-、-O-S(O)
2-、-O-S(O)
2-O-、-O-S(O)
2-NR-、-OS(O)-、-O-S(O)-O-、-O-S(O)-NR-、-O-NR-C(O)-、-O-NR-C(O)-O-、-O-NR-C(O)-NR-、-NR-OC(O)-、-NR-O-C(O)-O-、-NR-O-C(O)-NR-、-O-NR-C(S)-、-O-NR-C(S)-O-、-O-NR-C(S)-NR-、-NR-OC(S)-、-NR-O-C(S)-O-、-NR-O-C(S)-NR-、-OC(S)-、-O-C(S)-O-、-O-C(S)-NR-、-NR-C(S)-、-NR-C(S)-O-、-NR-C(S)-NR-、-S-S(O)
2-、-S-S(O)
2-O-、-S-S(O)
2-NR-、-NR-O-S(O)-、-NR-O-S(O)-O-、-NR-O-S(O)-NR-、-NR-O-S(O)
2-、-NR-O-S(O)
2-O-、-NR-O-S(O)
2-NR-、-O-NR-S(O)-、-O-NR-S(O)-O-、-O-NR-S(O)-NR-、-O-NR-S(O)
2-O-、-O-NR-S(O)
2-NR-、-O-NR-S(O)
2-、-O-P(O)
R-、-S-P(O)
R-、-NR-P(O)
R-から選択される1以上のリンカーを含み、式中、各Rは独立して水素、アルキルまたは置換アルキル、およびそれらの任意の2以上の組み合わせ
から選択される)
またはそれらの組み合わせであり、
1以上のマレエートまたはフマレート官能基を有する化合物は、
【化3】
(それぞれ式中、
各Rは、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、7~10個の炭素原子を有するアリール基およびアルカリル基から独立して選択される)で表される反応生成物。
【請求項2】
請求項1に記載の反応生成物、エポキシ含有またはオキセタン含有成分、カチオン性オニウム触媒および遷移金属塩を含む硬化性組成物。
【請求項3】
エポキシ含有成分が、脂環式エポキシ樹脂;C4~C28アルキルグリシジルエーテル;C1~C28アルキル-グリシジルエステル;C2~C28アルケニル-グリシジルエステル;C1~C28アルキル-、モノ-およびポリフェノールグリシジルエーテル;ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン(またはビスフェノールF)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(またはビスフェノールA)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびトリス(4-ヒドロキシフェニル)メタンのポリグリシジルエーテル;上記のジフェノールの塩素化および臭素化生成物のポリグリシジルエーテル;ノボラックのポリグリシジルエーテル;芳香族ヒドロ
キシカルボン酸の塩をジハロアルカンまたはジハロゲンジアルキルエーテルでエステル化することによって得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと少なくとも2つのハロゲン原子を含む長鎖ハロゲンパラフィンを縮合させて得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;およびそれらの組み合わせからなる群から選択され
る、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
オキセタン含有成分が、
【化4】
(式中、Rは、メチル基またはエチル基であり、nは1~6である)
によって表される、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
カチオン性オニウム触媒が、以下の構造
【化5】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
5’は、存在しても、存在しなくてもよく、存在しない場合は水
素が存在し、存在する場合は、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびカルボキシルから独立して選
択され、R
1、R
2、R
5およびR
5’は、それが結合している各芳香環に個別に最大
5個存在し、R
3およびR
4は、それが結合している各芳香環に個別に最大
4個存在し、nは、0~3であり、mは、0~1である
)
のカチオン性対イオンを含む、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
カチオン性オニウム触媒が、
【化6】
からなる群から選択される対イオンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
カチオン性オニウム触媒が、
【化7】
(式中、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
6’、R
7’、R
8’、R
9’、R
10’、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20およびR
21は、存在しても、存在しなくてもよく、存在しない場合は
水素が存在し、存在する場合は、1~5個の炭素原子のアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、およびカルボキシルから個別に選
択される)
からなる群から選択される対イオンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
カチオン性オニウム触媒が、
【化8】
からなる群から選択される対イオンを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
カチオン性オニウム触媒が、全組成物の0.1~10重量パーセントの範囲内の量で使用される、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
遷移金属塩が、銅、コバルト、バナジウム、金、銀、パラジウム、ニッケル、ジルコニウム、鉄、チタン、クロム、マンガン、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、およびレニウムからなる群から選択される遷移金属を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
遷移金属塩が、アンチモネート、ホスフェート、スルホネート、カルボキシレート、チオフェノレート、それらの配位子錯体からなる群から選択される塩を含み、それらの一部またはすべてがハロゲン化されてもよい、請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
【化9】
(式中、
C
36
は、ダイマージオールから2つの水酸基を除いた構造を意味する)
から選択される請求項1に記載の反応生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
低い硬化温度と改善された作業寿命を示す潜在的な還元剤を有するカチオン硬化性組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の簡単な記載)
多くの製造およびパッケージングプロセスでは、優れた処理速度により、スループットが向上し、組み立てコストが削減される。接着剤、コーティング、または封止材の使用が製造プロセスの一部である場合、接着剤、コーティング、または封止材を迅速に、望ましくは比較的低い硬化温度で硬化させることができれば、処理速度を上げることができる。たとえば、電子パッケージング業界では、さまざまな用途に低温で高速(スナップ)硬化の接着剤と封止材が求められている。電子パッケージングの一般的なモードは、接着剤または封止材によって半導体デバイスを基板に貼り付けることを含む。より顕著な用途は、集積回路チップの金属リードフレームまたは有機基板への結合、および回路パッケージまたはアセンブリの印刷されたワイヤボード、例えば、アレイパッケージ用のダイアタッチ、RFIDパッケージ用のダイアタッチ、およびインクジェットカートリッジアセンブリ用のコンポーネントアタッチへの結合である。インクジェットカートリッジの場合、低温硬化アセンブリにより、噴射軌道の歪みを最小限に抑え、印刷品質を向上させることができる。RFIDアプリケーションの紙ベースのアンテナや有機基板のカメラセンサーなど、温度に敏感なコンポーネントまたは基板の場合、低温相互接続が非常に望ましい。したがって、低温、好ましくは100℃未満で硬化する組成物には多くの商業的機会が存在する。
【0003】
ヨードニウム塩/銅塩を使用したエポキシ樹脂のレドックスカチオン重合は、よく知られたプロセスである。米国特許第4275190号は、ヨードニウム塩と銅塩の組み合わせを使用するエポキシ樹脂のレドックスカチオン重合を記載している。Cu(I)とCu(II)の両方が、このカチオン重合において触媒効果を示す。Cu(II)を使用する場合、Cu(I)を使用する場合よりも高い温度で硬化する必要がある。Cu(II)の使用を低温硬化状態でより魅力的にするためベンゾインやフロインに存在するものなど、いくつかの活性化α-ヒドロキシケトン化合物がCu(II)の還元剤として使用されている。米国特許第4,482,679号は、3成分硬化システムにおけるCu(II)の還元剤と組み合わせたヨードニウム塩およびCu(II)塩の硬化性組成物を記載している。J.Crivelloらによる、J.Polym.Sci.、Polym.Chem.、21、1097(1983)は、ヨードニウム塩、銅(II)塩および共還元剤、すなわち、ベンゾインおよびフロインなどの活性化α-ヒドロキシケトン化合物のエポキシ樹脂のための3成分硬化システムを記載している。
【0004】
しかしながら、これらの硬化システムの待ち時間は、時期尚早のゲル化が始まる前に、組成物の良好な作業寿命を達成するのに十分ではない。多くの低温硬化用途では、室温で数時間にわたる良好な粘度安定性が望まれる。今日まで、それは長年の、しかしこれまでに満たされていない欲求であった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、フロインまたはフロイン誘導体と、潜在的な還元剤を生成する特定の他の化合物との反応生成物を提供し、カチオン硬化性組成物では、低温硬化と良好な待ち時間の両方が達成される。
【0006】
より具体的には、本明細書では、フロインまたはフロイン誘導体と、(a)1以上のマレイミド、ナジイミドまたはイタコンイミド官能基を有する化合物および/または(b)1以上のマレエートまたはフマレート官能基を有する化合物の反応生成物を提供する。
【0007】
この反応生成物は、エポキシ含有またはオキセタン含有成分、カチオン性オニウム触媒および遷移金属塩を含む硬化性組成物で使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<詳細な説明>
上記のように、本明細書の一態様では、フロインまたはフロイン誘導体と、(a)1以上のマレイミド、ナジイミドまたはイタコンイミド官能基を有する化合物、および/または(b)1以上のマレエートまたはフマレート官能基を有する化合物の反応生成物を提供する。
【0009】
1以上のマレイミド、ナジイミド、またはイタコンイミド官能基を有する化合物は、
【化1】
(式中、
m=1~15であり、
p=0~15であり、
各R
2は、水素または1~約4個の炭素原子を有する低級アルキルから独立して選択され、
Jは、有機基またはオルガノシロキサン基を含む一価または多価部分である)
ならびにそれらの組み合わせを含む。
【0010】
より具体的には、マレイミド、ナジミド、またはイタコンイミド含有化合物の「J」付加物は、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビル、ヒドロカルビレン、置換ヒドロカルビレン、ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、置換ヘテロ原子含有ヒドロカルビレン、ポリシロキサン、ポリシロキサン-ポリウレタンブロックコポリマー、およびそれらの組み合わせから選択される一価または多価基と見なすことができ、任意に、共有結合、-O-、-S-、-NR-、-OC(O)-、-O-C(O)-O-、-O-C(O)-NR-、-NR-C(O)-、-NR-C(O)-O-、-NR-C(O)-NR-、-SC(O)-、-SC(O)-O-、-SC(O)-NR-、-S(O)-、-S(O)2-、-O-S(O)2-、-O-S(O)2-O-、-O-S(O)2-NR-、-OS(O)-、-O-S(O)-O-、-O-S(O)-NR-、-O-NR-C(O)-、-O-NR-C(O)-O-、-O-NR-C(O)-NR-、-NR-OC(O)-、-NR-O-C(O)-O-、-NR-O-C(O)-NR-、-O-NR-C(S)-、-O-NR-C(S)-O-、-O-NR-C(S)-NR-、-NR-OC(S)-、-NR-O-C(S)-O-、-NR-O-C(S)-NR-、-OC(S)-、-O-C(S)-O-、-O-C(S)-NR-、-NR-C(S)-、-NR-C(S)-O-、-NR-C(S)-NR-、-S-S(O)2-、-S-S(O)2-O-、-S-S(O)2-NR-、-NR-O-S(O)-、-NR-O-S(O)-O-、-NR-O-S(O)-NR-、-NR-O-S(O)2-、-NR-O-S(O)2-O-、-NR-O-S(O)2-NR-、-O-NR-S(O)-、-O-NR-S(O)-O-、-O-NR-S(O)-NR-、-O-NR-S(O)2-O-、-O-NR-S(O)2-NR-、-O-NR-S(O)2-、-O-P(O)R2-、-S-P(O)R2-、-NR-P(O)R2-から選択される1以上のリンカーを含み、式中、各Rは独立して水素、アルキルまたは置換アルキル、およびそれらの任意の2以上の組み合わせである。
【0011】
上記の一価または多価基の1以上が、当業者によって容易に認識されるように、マレイミド、ナジミドまたはイタコンイミド基の「J」付加物を形成するための上記のリンカーの1以上を含む場合、例えば、オキシアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、カルボキシルアルキル、オキシアルケニル、チオアルケニル、アミノアルケニル、カルボキシアルケニル、オキシアルキニル、チオアルキニル、アミノアルキニル、カルボキシアルキニル、オキシシクロアルキル、チオシクロアルキル、アミノシクロアルキル、カルボキシシクロアルキル、オキシクロアルケニル、チオシクロアルケニル、アミノシクロアルケニル、カルボキシシクロアルケニル、複素環式、オキシ複素環式、チオ複素環式、アミノ複素環式、カルボキシ複素環式、オキシアリール、チオアリール、アミノアリール、カルボキシアリール、ヘテロアリール、オキシヘテロアリール、チオヘテロアリール、アミノヘテロアリール、カルボキシヘテロアリール、オキシアルキルアリール、チオアルキルアリール、アミノアルキルアリール、カルボキシアルキルアリール、オキシアリールアルキル、チオアリールアルキル、アミノアリールアルキル、カルボキシアリールアルキル、オキシアリールアルケニル、チオアリールアルケニル、アミノアリールアルケニル、カルボキシアリールアルケニル、オキシアルケニルアリール、チオアルケニルアリール、アミノアルケニルアリール、カルボキシアルケニルアリール、オキシアリールアルキニル、チオアリールアルキニル、アミノアリールアルキニル、カルボキシアリールアルキニル、オキシアルキニルアリール、チオアルキニルアリール、アミノアルキニルアリールまたはカルボキシアルキニルアリール、オキシアルキレン、チオアルキレン、アミノアルキレン、カルボキシアルキレン、オキシアルケニレン、チオアルケニレン、アミノアルケニレン、カルボキシアルケニレン、オキシアルキニレン、チオアルキニレン、アミノアルキニレン、カルボキシアルキニレン、オキシシクロアルキレン、チオシクロアルキレン、アミノシクロアルキレン、カルボキシシクロアルキレン、オキシシクロアルケニレン、チオシクロアルケニレン、アミノシクロアルケニレン、カルボキシシクロアルケニレン、オキシアリーレン、チオアリーレン、アミノアリーレン、カルボキシアリーレン、オキシアルキルアリーレン、チオアルキルアリーレン、アミノアルキルアリーレン、カルボキシアルキルアリーレン、オキシアリールアルキレン、チオアリールアルキレン、アミノアリールアルキレン、カルボキシアリールアルキレン、オキシアリールアルケニレン、チオアリールアルケニレン、アミノアリールアルケニレン、カルボキシアリールアルケニレン、オキシアルケニルアリーレン、チオアルケニルアリーレン、アミノアルケニルアリーレン、カルボキシアルケニルアリーレン、オキシアリールアルキニレン、チオアリールアルキニレン、アミノアリールアルキニレン、カルボキシアリールアルキニレン、オキシアルキニルアリーレン、チオアルキニルアリーレン、アミノアルキニルアリーレン、カルボキシルアルキニルアリーレン、ヘテロリーレン、オキシヘテロアリーレン、チオヘテロアリーレン、アミノヘテロアリーレン、カルボキシヘテロアリーレン、ヘテロ原子含有二価または多価環状部分、オキシヘテロ原子含有二価または多価環状部分、チオヘテロ原子含有二価または多価環状部分、アミノヘテロ原子含有二価または多価環状部分、カルボキシヘテロ原子含有二価または多価環状部分、ジスルフィド、スルホンアミドなどの様々なリンカーを生成することができる。
【0012】
1以上のマレイミド、ナジイミド、および/またはイタコンイミド官能基を有する化合物には、それぞれ構造I、II、またはIIIに含まれる化合物が含まれ、式中、m=1~6、p=0~6であり、およびJは以下から選択される。
【0013】
任意に、任意に置換されたアリール部分をアルキル鎖上の置換基として、またはアルキル鎖の主鎖の一部として含み、アルキル鎖が最大約20個の炭素原子を有する飽和直鎖アルキルまたは分枝鎖アルキル;
-(C(R3)2)d-[Si(R4)2-O]f-Si(R4)2-(C(R3)2)e-、-(C(R3)2)d-C(R3)-C(O)O-(C(R3)2)d-[Si(R4)2-O]f-Si(R4)2-(C(R3)2)e-O(O)C-(C(R3)2)e-または-(C(R3)2)d-C(R3)-O(O)C-(C(R3)2)d-[Si(R4)2-O]f-Si(R4)2-(C(R3)2)e-C(O)O-(C(R3)2)e-
(式中、各R3は、独立して水素、アルキルまたは置換アルキルであり、
各R4は、独立して水素、低級アルキル(すなわち、1~約4個の炭素原子)またはアリールであり、
d=1~10、
e=1~10、および
f=1~50である)構造を有するシロキサン;
【0014】
【化2】
(式中、各Rは、独立して水素、低級アルキルまたは置換アルキルであり、
r=1~10、
s=1~10、および
fは上記で定義されたとおりである)構造を有するポリアルキレンオキシド;
【化3】
(式中、各Arは、3~10個の炭素原子の範囲を有する一置換、二置換または三置換芳香族またはヘテロ芳香族環であり、
Zは、任意にアルキレン鎖上の置換基として、またはアルキレン鎖の骨格の一部として飽和環状部分を含む、飽和直鎖アルキレンまたは分岐鎖アルキレン、または
【化4】
(式中、
各Rは、水素または低級アルキル(すなわち、1~約4個の炭素原子)から独立して選択され、rおよびsはそれぞれ上記のように定義され、およびqは、1~50の範囲にある。)構造を有するポリアルキレンオキサイドである)構造を有する芳香族基;
【0015】
【化5】
(式中、
各Rは、水素または低級アルキルから独立して選択され、
tは、2~10の範囲にあり、
uは、2~10の範囲にあり、
Arは上記で定義されたとおりである。)
構造を有する二置換または三置換芳香族部分;
【化6】
(式中、各Rは、水素または低級アルキルから独立して選択され、
t=2~10、
k=1、2または3、
g=1~約50、
各Arは、上記で定義されたとおりであり、
Eは、-O-または-NR
5-であり、R
5は、水素または低級アルキルであり、
Wは、直鎖または分岐鎖アルキル、アルキレン、オキシアルキレン、アルケニル、アルケニレン、オキシアルケニレン、エステル、またはポリエステル、-(C(R
3)
2)
d-[Si(R
4)
2-O]
f-Si(R
4)
2-(C(R
3)
2)
e-、-(C(R
3)
2)
d-C(R
3)-C(O)O-(C(R
3)
2)
d-[Si(R
4)
2-O]
f-Si(R
4)
2-(C(R
3)
2)
e-O(O)C-(C(R
3)
2)
e-、または-(C(R
3)
2)
d-C(R
3)-O(O)C-(C(R
3)
2)
d-[Si(R
4)
2-O]
f-Si(R
4)
2-(C(R
3)
2)
e-C(O)O-(C(R
3)
2)
e-
(式中、各R
3は、独立して水素、アルキルまたは置換アルキルであり、各R
4は独立して水素、低級アルキルまたはアリールであり、
d=1~10、
e=1~10、および
f=1~50である)
構造のシロキサンである)構造を有する芳香族基;
【0016】
【化7】
(式中、
各Rは、独立して水素、アルキル、または置換アルキルであり、
r=1~10、
s=1~10、および
fは、上記で定義されたとおりである。)
構造を有し、任意に、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、ニトリル、シクロアルキルまたはシクロアルケニルから選択される置換基を含むポリアルキレンオキシド;
R
7-U-C(O)-NR
6-R
8-NR
6-C(O)-(O-R
8-O-C(O)-NR
6-R
8-NR
6-C(O))
v-U-R
8-
(式中、
各R
6は、独立して水素または低級アルキルであり、
各R
7は、独立して、1~18個の炭素原子を有するアルキル、アリール、またはアリールアルキル基であり、
各R
8は、鎖内に最大約100個の原子を持ち、必要に応じてArで置換されたアルキルまたはアルキルオキシ鎖であり、
Uは、-O-、-S-、-N(R)-、または-P(L)
1,2-(式中、Rは、上記で定義され、各Lは、独立して、=O、=S、-OR、または-Rである)であり、
およびv=0~50である)構造を有するウレタン基:
多環式アルケニル;またはそれらの組み合わせ。
【0017】
本発明の特に望ましい態様では、マレイミド、イタコンイミドおよび/またはナジミド化合物のマレイミド、イタコンイミドおよび/またはナジミド官能基は、それぞれ、一価基であるJに結合している、またはマレイミド、イタコンイミドおよび/またはナジミド化合物のマレイミド、イタコンイミドおよび/またはナジミド官能基はJ、多価基によって分離され、一価の基または多価の基のそれぞれは、マレイミド、イタコンイミドおよび/またはナジミド化合物を液体にするのに十分な長さおよび分岐を有する。
【0018】
そのより具体的な態様では、Jは、マレイミド、イタコンイミドまたはナジミド化合物を液体にするのに十分な長さおよび分岐を有する分枝鎖アルキル、アルキレンまたはアルキレンオキシド種を含み、各R2は、水素またはメチルから独立して選択され、mは1、2、または3である。
【0019】
本発明の実施に有用な特定のマレイミド含有化合物には、例えば、以下の構造
【化8】
【化9】
を有するマレイミドが含まれる。
【0020】
式Iの追加のマレイミド含有化合物には、ステアリルマレイミド、オレイルマレイミド、ベヘニルマレイミド、1,20-ビスマレイミド-10,11-ジオクチル-エイコサンなど、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0021】
式Iに含まれる特に望ましいマレイミド化合物には、無水マレイン酸と二量体アミンとの反応によって調製されたビスマレイミドが含まれる。このような二量体アミンから調製できる例示的なビスマレイミドは、1,20-ビスマレイミド-10,11-ジオクチル-エイコサンであり、これは、二量体酸を生成するために使用されるエン反応で生成される他の異性体種と混合して存在する可能性が高い。
【0022】
本発明の実施において使用が企図される他のビスマレイミドには、アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン(Huls America,Piscataway,NJによって販売される「PS510」など)、ポリオキシプロピレンアミン(Texaco Chemical Company, Houston,TXによって販売される「D-230」、「D-400」、「D-2000」および「T-403」など)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート(Air Products,Allentown,PAが「VERSALINK」、例えば「VERSALINK」P-650の商品名で販売するそのような製品のファミリーなど)から調製されるビスマレイミドが含まれる。好ましいマレイミド樹脂には、ステアリルマレイミド、オレイルマレイミド、ベヘニルマレイミド、1,20-ビスマレイミド-10,11-ジオクチル-エイコサン、および6-マレイミドカプロン酸とダイマージオールのフィッシャーエステル化生成物であるSRM-1(Pripol 2033、Crodaから市販されている)、およびそれらの任意の2つ以上の混合物が含まれる。
【0023】
ビスマレイミドは、当業者に周知の技術を使用して調製することができるため、ここでは繰り返さない。
【0024】
別の実施形態では、1以上のマレイミド、ナジイミド、またはイタコンイミド官能基を有する化合物の代わりに、またはそれに加えて、
【化10】
(式中、それぞれ、各Rは、1~約20個の炭素原子を有するアルキル基、3~約10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、7~約10個の炭素原子を有するアリール基およびアルカリル基から独立して選択される)に含まれる1以上のマレエート(式IV)およびフマレート(式V)官能基を有する化合物であってもよい。
【0025】
より具体的には、1以上のマレエートおよびフマレート官能基を有する化合物には、マレエートおよびフマレートのアルキルエステル、例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、ジオクチルマレエートおよびフマレートエステルが含まれる。
【0026】
フロインまたはフロイン誘導体は、その実際的な例は後述する本発明の反応生成物を生成するために、1以上のマレイミド、ナジイミド、またはイタコンイミド官能基を有する化合物および/または1以上のマレエートおよびフマレート官能基を有する化合物に対して少なくとも1:1のモル比で使用すべきである。残留する遊離フロインは作業寿命に悪影響を与える可能性があるため、フロインと比較してわずかに過剰なマレイミドが使用される。
【0027】
フロインは市販されているが、多くのフロイン誘導体は市販されていない。Diels-Alder付加物を形成するために本発明で使用することができる代表的なフロイン誘導体は、以下の式
【化11】
(式中、Rは、フラン環のいずれかまたは両方の結合していない位置のいずれかの1以上で置換することができ、Rは、アルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、チオエーテル、またはアセトキシアルキルから選択することができ、ここで、アルキル基は1~4個の炭素原子を有する。)
を包含し得る。これらの誘導体は、当業者によって以下に示されるように、出発物質としてフルフラール誘導体を使用するワンステップでのベンゾイン型縮合反応によって作製され得る。
【化12】
【0028】
多くの置換フルフラール誘導体が市販されており、上記のようにフロイン誘導体を製造するために使用することができる。フロイン誘導体を作製することができる代表的なフルフラール誘導体には、5-メチルフルフラール、5-ヒドロキシメチルフルフラール、5-フェニルフルアルデヒド、5-(4-ブロモフェニル)フルフラール、5-ブロモ-2-フルアルデヒド、5-シアノ-2-フルアルデヒド、5-アセトキシメチル-2-フルアルデヒドが含まれる。
【0029】
本発明の硬化性組成物は、そのように記載された本発明の反応生成物だけでなく、エポキシ含有またはオキセタン含有成分、カチオン性触媒および遷移金属塩も含む。
【0030】
本発明の反応生成物(付加物またはDiels-Alder付加物と呼ばれることもある)は、カチオン硬化性組成物において約0.1~約20重量パーセントの量で使用すべきである。
【0031】
エポキシ含有成分は、脂環式エポキシ樹脂;C4~C28アルキルグリシジルエーテル;C1~C28アルキル-グリシジルエステル;C2~C28アルケニル-グリシジルエステル;C1~C28アルキル-、モノ-およびポリフェノールグリシジルエーテル;ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン(またはビスフェノールF)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(またはビスフェノールA)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびトリス(4-ヒドロキシフェニル)メタンのポリグリシジルエーテル;上記のジフェノールの塩素化および臭素化生成物のポリグリシジルエーテル;ノボラックのポリグリシジルエーテル;芳香族ヒドロカルボン酸の塩をジハロアルカンまたはジハロゲンジアルキルエーテルでエステル化することによって得られるジフェノールのエーテルをエステル化することによって得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと少なくとも2つのハロゲン原子を含む長鎖ハロゲンパラフィンを縮合させて得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;およびそれらの組み合わせからなる群から選択すべきである。
【0032】
オキセタン含有成分は、以下の一般構造
【化13】
(式中、Rは、メチル基またはエチル基であり、nは1~6である)
に含まれる単官能性または多官能性脂肪族または芳香族オキセタンエステル樹脂から選択すべきである。
【0033】
より具体的には、芳香族オキセタンエステルは、以下の一般的な構造
【化14】
(式中、Rは、メチル基またはエチル基であり、Arが芳香族基である)
を包含し得る。
【0034】
Arは、エステル基の炭素-酸素二重結合と結合した炭素-炭素二重結合を持つ任意の芳香族基であってもよい。Arは、アルキル、エーテル、またはエステル官能基で置換できる。
【0035】
いくつかの実施形態において、Arは、単一のアリール基、2つの縮合アリール基、または直接結合、低級アルキレン(1~4個の炭素原子アルキレン結合など)、またはヘテロ原子、例えば、酸素または硫黄によって接続された2つ以上のアリール基である。
【0036】
他の実施形態では、Arは、
【化15】
(式中、R
1は低級アルキル基であり、低級は上記で例示したとおりである。)から選択される連結基によって接続された2つ以上のアリール基である。
【0037】
一実施形態では、オキセタンエステル官能基は、線状、分岐、またはシクロアルキレン基から選択される脂肪族骨格に結合し、任意に、ヘテロ原子(O、S、ハロゲン、Si、およびNなど)または芳香族の中断または置換を含む。
【0038】
別の実施形態において、オキセタンエステル官能基は、エステル基の炭素酸素二重結合と結合した炭素炭素二重結合を有する芳香族骨格に結合する。
【0039】
または、芳香族オキセタンエステルには、以下の一般構造
【化16】
(式中、Rは、メチル基またはエチル基であり、Kは、C(=O)Oであり、Gは存在しても存在しなくてもよく、存在する場合は(CH
2)
mO(式中、mは1~4ある。)であり、XはO、S、SO
2、C(=O)、フェンアルデヒド、CH
2またはC
3H
7であり、nは1~3である)が包含され得る。
【0040】
または、フェノキシオキセタンエステルには、以下の一般構造
【化17】
(式中、Rは、メチル基またはエチル基であり、Xは、1~5個の炭素原子のアルキルまたは3~10個の炭素原子のアルキレンであり、そのいずれが、O、N、Sなどのヘテロ原子、またはビフェニルまたはビスフェノールA、E、F、S構造で置換または中断されており、nは、1~3である)が包含され得る。
【0041】
さらにより具体的には、フェノキシオキセタンエーテルには、以下の一般構造
【化18】
(式中、Rは、メチル基またはエチル基であり、Xは、1~5個の炭素原子のアルキルまたは3~10個の炭素のアルキレンであり、そのいずれかは、O、N、Sなどのヘテロ原子によって置換または中断されているか、ケトン、アリール、またはフェンアルデヒドによって中断され、nは1~3である)が包含され得る。
【0042】
本明細書での使用に適した代表的なオキセタン含有化合物には、以下が含まれる:
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【0043】
メチル基またはエチル基のいずれかが、オキセタン環の3位の炭素に結合してもよい。一つの基が示されている場合、他方の基を置換することができる。
【0044】
ポリマーまたはエラストマー樹脂を介してオキセタンを導入することが望ましい場合がある。このような状況では、オキセタンまたはオキセタンエステル官能基は、ポリマー主鎖の末端に、および/またはその上のペンダント基として存在する。代表的なポリマー主鎖には、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、およびノボラック樹脂が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
一実施形態では、オキセタン含有化合物は、OX-1、OX-2、OX-3、およびOX-4から選択される。
【0046】
特定の他のオキセタン含有化合物も提供される。たとえば、
【化24】
OX-Aの場合、Rは、一般にメチルまたはエチルであり、Arは、一般に芳香環または芳香環系である。より具体的には、Arが、オルト置換を有するフェニル環である場合、Rは、メチルまたはエチルであり、Arが、メタ置換を有するフェニル環である場合、Rは、メチルであり、Arが、メタ置換またはパラ置換のビフェニルである場合、Rは、メチルまたはエチルであってもよく、Arが、ビスフェノールA、E、F、またはSの骨格である場合、Rは、メチルまたはエチルであってもよく、Arが、パラ置換されておらず、Rがメチルまたはエチルである場合、Arは、芳香族ポリエステル(OX-12に示されているような)の繰り返し単位を持つポリマー構造またはArはフェニルエーテルである。
【0047】
【化25】
OX-Bの場合、Rは、一般にメチルまたはエチルであり、R
1は、メチル、エチル、プロピルまたはブチル、特にt-ブチルなどの1~4個の炭素原子のアルキル基である。
【0048】
本発明の組成物に使用できる他のオキセタン含有化合物には、OXT-101、OXT-121、OXT-212、およびOXT-221を含むARONの商品名で市販されているものなど、Nagase America Corporationによって市販されているオキセタン樹脂が含まれる。
【0049】
エポキシ含有成分および/またはオキセタン含有成分は、全組成物の約1~約99重量パーセントの量で使用する必要がある。
【0050】
カチオン性オニウム触媒は、以下の構造
【化26】
(式中、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
5’は、存在しても、存在しなくてもよく、存在しない場合は水素であり、存在する場合は、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびカルボキシルから独立して選択でき、R
1、R
2、R
5およびR
5’は、それが結合している各芳香環に個別に最大5回存在し、R
3およびR
4は、それが結合している各芳香環に個別に最大4回存在し、nは、0~3であり、mは、0~1である)
内でもよいカチオン性対イオンを含む:
【0051】
カチオン性オニウム触媒が、
【化27】
から選択されてもよい対イオンを含む。
【0052】
カチオン性オニウム触媒は、
【化28】
(式中、構造VIの場合、R
6、R
7、R
8、R
9およびR
10は、存在しても、存在しなくてもよく、存在しない場合は水素であり、存在する場合は1~5個の炭素原子のアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、およびカルボキシルから個別に選択でき、構造VIIの場合、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
6’、R
7’、R
8’、R
9’およびR
10’は、存在しても、存在しなくてもよく、存在しない場合は水素であり、存在する場合は、1~5個の炭素原子のアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、およびカルボキシルから個別に選択でき、構造VIIIの場合は、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20およびR
21は、存在しても、存在しなくてもよく、存在しない場合は水素であり、存在する場合は、1~5個の炭素原子のアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、およびカルボキシルから個別に選択できる。)
から選択されてもよい対イオンを含む。
【0053】
カチオン性オニウム触媒は、
【化29】
から選択されてもよい対イオンを含む。
【0054】
カチオン性オニウム触媒は、全組成物の約0.1~約2重量パーセントの範囲内の量で使用されるべきである。
【0055】
遷移金属塩には、銅、コバルト、バナジウム、金、銀、パラジウム、ニッケル、ジルコニウム、鉄、チタン、クロム、マンガン、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、およびレニウムから選択される遷移金属が含まれる。
【0056】
遷移金属塩は、アンチモネート、ホスフェート、スルホネート、カルボキシレート、チオフェノレート、それらの配位子錯体からなる群から選択される塩を含み、それらの一部またはすべてがハロゲン化され得る。
【0057】
遷移金属塩は、全組成物の約0.1~約10重量パーセントの範囲内の量で使用されるべきである。
【0058】
本発明の付加物とカチオン性オニウム触媒および遷移金属塩との望ましい比は、約1:1:1のモル比である。硬化速度および作業寿命を調整するために、この比率を変更して、当業者が所望の硬化および作業寿命プロファイルを達成することができる。
【実施例】
【0059】
例
ベンゾインとフロイン(以下に示す)はどちらも活性化されたα-ヒドロキシケトン化合物であり、Crivelloによって開示されているように、ヨードニウム塩を含む3成分レドックスカチオン系でCu(II)塩の効率的な還元剤として機能する。
【化30】
【0060】
しかし、これらの3成分レドックスカチオンシステムの待ち時間は、良好な作業寿命を達成するのに十分ではない。多くの低温硬化用途では、室温で数時間の良好な粘度安定性が望まれる。ベンゾインもフロイン自体もそのような待ち時間を促進しない。
【0061】
<フロインのDiels-Alder付加物の合成>
この例では、潜在的な還元剤は、フロインと1つまたは2つのマレイミド官能基のいずれかを有する化合物とのDiels-Alder反応生成物によって形成される。この付加物の形成により、フロインのα-ヒドロキシケトンの活性が低下し、Cu(II)塩とのレドックス相互作用における反応性が低下する。ベンゾイン自体(フロイン自体と同様)も還元剤として作用するが、構造内にジエン単位がないため(フラニル環の代わりに、フェニル環がベンゾインに存在する)、Diels-Alder付加物をベンゾインと形成することはできない。
【0062】
Diels-Alder付加物は、例に示すように、フロインとマレイミド官能基を有する2つの化合物で形成された。2つのマレイミドは、米国特許第6,355,750号に従って製造された、以下に示す構造の液体ビスマレイミド樹脂であるSRM-1およびN-シクロヘキシルマレイミドである。
【化31】
【0063】
【0064】
メカニカルスターラーを備えたガラス容器に、SRM-1(57.3g、61ミリモル)、フロイン(17.15g、89ミリモル)、およびブチルヒドロキシトルエン(「BHT」)(65mg、1000ppm)の混合物を採取した。混合物を120℃の温度で約1時間撹拌し、その時点で透明な暗褐色の液体が形成された。液体を室温で2日間放置した。液体に対して実施されたGPCは、遊離フロインが存在しないことを示した。
【0065】
【0066】
スターラーを備えたガラス容器に、N-シクロヘキシルマレイミド(3.85g、21ミリモル)、フロイン(3.7g、19.3ミリモル)およびBHT(8mg、1000ppm)の混合物を採取した。混合物を120℃の温度で約1時間撹拌し、その時点で透明な暗褐色の液体が形成された。液体を室温で2日間保存した。
【0067】
<カチオン硬化性組成物の配合物>
低温硬化能力と作業寿命粘度安定性を評価するために、いくつかの組成物を調製した。組成物に使用される成分の名称および量を表1に示す。低温での硬化速度と粘度安定性を比較するために、それぞれフロインを含む場合と含まない場合の2つの対照配合物(配合物1および5)も使用した。潜在的還元剤(付加物1)を含む3つの配合物(配合物2~4)を使用した。それぞれの配合物を形成するために、各成分を混合しながら加えた。各配合物は、使用する準備ができるまで保管した。
【0068】
【0069】
<DSCによる硬化温度の評価>
配合物1~5の開始温度およびピーク温度を、ASTM D3418-15に従って、示差走査熱量測定(「DSC」)を使用して調査した。ここでは、DSC実行は、20度の初期温度から300℃まで、5~10℃/分のランプ速度でスキャンした。DSCデータをまとめ、表2に報告した。
【0070】
付加物1を含む配合物(すなわち、配合物2~4)の開始温度は約70℃で始まるようである。付加物1を含む配合物のTgは、配合物1よりわずかに低かった。
【0071】
【0072】
<硬化率>
配合物1~5の硬化率は、100℃の温度で等温DSCを使用してさまざまな時間間隔で調査した。表3に示すように、熱流の変化(W/g)を経時的に観察した。この方法は、最初の2分の遅延の後、1分未満で100℃まで上昇するように設定した。硬化率は、各時間間隔で観察された熱流を総熱で割り、その結果に100を掛けることによって算出した。
【0073】
【0074】
重要なことに、遊離フロイン含有配合物(すなわち、配合物1)の開始は、フロイン付加物含有配合物(すなわち配合物2~4)よりも低かったが(表2を参照)、これらの配合物の硬化速度は、観察された同様のレベルの硬化率によって証明されるように、同様のようである(表3を参照)。これは、それぞれの硬化速度に影響を与えることなく、本発明の配合物2~4の待ち時間を示している。対照的に、還元剤を含まず、遷移金属塩/触媒オニウム触媒(すなわち、Cu(II)-ヨードニウム塩系)の組み合わせのみを含む配合物5は、より低い硬化率を示した。
【0075】
<作業寿命評価>
上に示したように、フロインおよびフロイン付加物を含む配合物で同様の硬化率が観察されたが、付加物1を含む配合物(すなわち、配合物2~4)の待ち時間は、粘度安定性調査によって示され、その結果は、以下の表4に示される。配合物1は、暴露後2.5時間以内にゲル化することが確認されたが(視覚的確認)、配合物2~4では有意な粘度変化は観察されなかった。配合物2~4については、室温で約19時間で粘度の上昇が観察されたが、配合物2~4は、室温で24時間後でも依然として液体状態であった。これらの結果は、硬化速度に影響を与えずに、潜在的な還元剤を含む3成分レドックスカチオン系の粘度安定性が大幅に向上することを示す。
【0076】