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特許7561066III-V族及びIII-VI族半導体成膜装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】III-V族及びIII-VI族半導体成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240926BHJP
   C30B 25/02 20060101ALI20240926BHJP
   C30B 29/40 20060101ALI20240926BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240926BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L21/205
C30B25/02
C30B29/40
C23C16/455
C23C16/44 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021042037
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142056
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一樹
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-087616(JP,A)
【文献】特開2015-221740(JP,A)
【文献】特開2008-060536(JP,A)
【文献】特許第6117169(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C30B 25/02
C30B 29/40
C23C 16/455
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩化物を原料とするIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置であって、
半導体材料ガスを基板上で反応させる反応炉と、
前記反応炉と分離独立しており、前記半導体材料ガスを生成し前記反応炉に供給する半導体材料ガス生成部と、
前記半導体材料ガス生成部と前記反応炉とを接続し前記半導体材料ガス生成部から前記反応炉に前記半導体材料ガスを供給する半導体材料ガス供給配管と、
を有し、
前記半導体材料ガス生成部は、内部空間の下部に固体又は液体材料を収納し、前記内部空間の上部にキャリアガスと原料ガスとの混合ガスを供給し、前記固体又は液体材料と前記混合ガスとのその場生成により前記半導体材料ガスを生成する反応容器を有し、
前記半導体材料ガス供給配管は、前記半導体材料ガス生成部と接続される第1接続部と、前記反応炉と接続される第2接続部とを有し、鉛直方向において前記第1接続部は前記第2接続部よりも低い位置に存在し、前記第1接続部と前記第2接続部との間に前記半導体材料ガス供給配管の最も低い部分が存在し、前記最も低い部分には液化した前記固体又は液体材料を排出する排出部が設けられている、
III-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
【請求項2】
前記排出部の下方に液化した前記固体又は液体材料を溜めるトラップを有する、請求項1に記載のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
【請求項3】
前記半導体材料ガス供給配管の内部に、液化した前記固体又は液体材料が前記排出部の下方に配置したトラップに落下しやすく、かつ、前記半導体材料ガスの流路を複雑化する邪魔板を有する、請求項1又は2に記載のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
【請求項4】
前記半導体材料ガス供給配管の前記最も低い部分と前記第2接続部との間の少なくとも一部が鉛直方向に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
【請求項5】
前記半導体材料ガス供給配管の前記第1接続部と前記第2接続部との間の形状が略U字形であり、前記略U字形の底部が前記最も低い部分である、請求項1~3のいずれか1項に記載のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
【請求項6】
前記金属塩化物が三塩化ガリウムである、請求項1~5のいずれか1項に記載のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III-V族及びIII-VI族半導体成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、次世代の半導体デバイスの材料として、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化ガリウム(Ga)等のワイドギャップ半導体が盛んに研究されている。また、GaAsやInPを使用した超高効率低損失を実現する太陽電池の研究も行われている。これらデバイスの製造には主に有機金属気相成長(MOCVD,Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法が用いられているが、原料となる有機金属は炭素を含むため一定量(1015cm-3以上)の炭素が不純物として膜中に混入する。炭素濃度がn型不純物よりも高い場合、低濃度n型伝導性制御が困難となるため、炭素を含まない原料を使用することが理想である。
そこで注目されているのが特許文献1に示すハライド気相成長(HVPE,Hydride Vapor Phase Epitaxy)法である。HVPE法は、例えば、金属ガリウムと塩素系ガスとを反応させて一塩化ガリウム(GaCl)や三塩化ガリウム(GaCl)を供給するため、原料に炭素(C)をほとんど含まないことがメリットである。
HVPE法は原料が安価なので製造コストで秀でているが、現状技術では原料のGaClやGaClを炉内で生成しなければならないので、大口径量産型エピ成膜装置を実現する上で塩化ガリウム(又はInCl若しくはAlCl等の金属塩化物)の供給方法は大きな課題である。この原料部を切り離して炉との間を配管でつないだ装置も存在する(特許文献2)。この場合、配管の温度は原料ガスが凝縮しない温度まで加熱している。例えば、三塩化ガリウムでは凝固点が201℃であるので、それ以上に加熱する。一方で配管には継手やバルブが必要であり、その構成部材には耐食性、耐熱性のほか、柔軟性が必要な箇所も存在する。これらを兼ね備えた材料を選択すると、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)では最高使用温度が300℃程度である。また、配管材料であるステンレスも400℃を超えると変態を起こすことが知られており、配管の温度は300℃程度以下に設定される。
一方、塩化ガリウムは高温では一塩化ガリウムの状態で存在するが、常温を含む低温では三塩化ガリウムが安定であり、300℃以下では一塩化ガリウムは不均化反応を起こし、三塩化ガリウムとガリウム金属に分解する。そのため、通常は配管内を通せず、炉内で製造するのが一般的である。ガリウム金属は融点30℃であるが、過冷却状態で常温でも液体の場合が多い。
従来は原料として一塩化ガリウムを用いたHVPE法が主流であったが、三塩化ガリウムを原料とした研究も発展しており、THVPE法では高温状態で、一塩化ガリウムに再度塩素を付加し、三塩化ガリウムとして反応炉に供給している。原料を三塩化ガリウムに変更することで、高速成長が期待される。酸化ガリウムの製造においては、不純物濃度の低減が期待されている。
三塩化ガリウムを原料として用いる場合、三塩化ガリウムその物を原料とし、加熱蒸発させてキャリアガスに同伴させて反応炉に送る手段が一般的であるが、三塩化ガリウムは合成物であり高価である上、吸湿性があり、原料自体の純度が低い。そこで原料供給部にて塩素や塩化水素と金属ガリウムを反応させて三塩化ガリウムを得る方法がある。この時反応がスムースに行われる温度は600℃程度であるが、この温度では生成される三塩化ガリウムに対する一塩化ガリウムの比率は高い。そこで別室に導入し、再度塩素や塩化水素と反応させ半導体材料ガス中の三塩化ガリウムの割合を高める方法もある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-196293号公報
【文献】特許第6117169号公報
【文献】特許第5787324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3に記載された方法では、半導体材料ガスを配管に通すと、前述の耐熱温度である300℃以下の低温となるため、三塩化ガリウムは気体のまま通過するが、一塩化ガリウムは前述の不均化反応により三塩化ガリウムと金属ガリウムに分解する。これにより半導体材料ガスの組成は三塩化ガリウムの比率が上がり、反応効率が上がる点は良いが、一方で配管内に金属ガリウムが析出するようになり、メンテナンス時に継手から漏れ出たり、配管を閉塞したりする可能性がある。
【0005】
本発明は、半導体材料ガス生成部と反応炉とを接続する半導体材料ガス供給配管の閉塞を抑制できる、金属塩化物を原料とするIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] 金属塩化物を原料とするIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置であって、
半導体材料ガスを基板上で反応させる反応炉と、
前記反応炉と分離独立しており、前記半導体材料ガスを生成し前記反応炉に供給する半導体材料ガス生成部と、
前記半導体材料ガス生成部と前記反応炉とを接続し前記半導体材料ガス生成部から前記反応炉に前記半導体材料ガスを供給する半導体材料ガス供給配管と、
を有し、
前記半導体材料ガス生成部は、内部空間の下部に固体又は液体材料を収納し、前記内部空間の上部にキャリアガスと原料ガスとの混合ガスを供給し、前記固体又は液体材料と前記混合ガスとのその場生成により前記半導体材料ガスを生成する半導体材料ガス生成部を有し、
前記半導体材料ガス供給配管は、前記半導体材料ガス生成部と接続される第1接続部と、前記反応炉と接続される第2接続部とを有し、鉛直方向において前記第1接続部は前記第2接続部よりも低い位置に存在し、前記第1接続部と前記第2接続部との間に前記半導体材料ガス供給配管の最も低い部分が存在し、前記最も低い部分には液化した前記固体又は液体材料を排出する排出部が設けられている、
III-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
[2] 前記排出部の下方に液化した前記固体又は液体材料を溜めるトラップを有する、[1]に記載のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
[3] 前記半導体材料ガス供給配管の内部に、液化した前記固体又は液体材料が前記排出部の下方に配置したトラップに落下しやすく、かつ、前記半導体材料ガスの流路を複雑化する邪魔板を有する、[1]又は[2]に記載のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
[4] 前記半導体材料ガス供給配管の前記最も低い部分と前記第2接続部との間の少なくとも一部が鉛直方向に配置されている、[1]~[3]のいずれかに記載のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
[5] 前記半導体材料ガス供給配管の前記第1接続部と前記第2接続部との間の形状が略U字形であり、前記略U字形の底部が前記最も低い部分である、[1]~[3]のいずれかに記載のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
[6] 前記金属塩化物が三塩化ガリウムである、[1]~[5]のいずれかに記載のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、半導体材料ガス生成部と反応炉とを接続する半導体材料ガス供給配管の閉塞を抑制できる、金属塩化物を原料とするIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の半導体成膜装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明の半導体成膜装置の別の一例を示す概略図である。
図3図3は、本発明の半導体成膜装置の更に別の一例を示す概略図である。
図4図4は、本発明の半導体成膜装置の半導体材料ガス供給配管の内部に設置された邪魔板の一例を示す概略断面図である。
図5図5は、本発明の半導体成膜装置の半導体材料ガス供給配管の内部に設置された邪魔板の別の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
III-V族半導体とは、III族元素とV族元素を用いた半導体をいう。III族元素はIUPACの元素周期表(https://iupac.org/what-we-do/periodic-table-of-elements/)の13族元素であり、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びインジウム(In)等を含む。V族元素はIUPACの元素周期表の15族元素であり、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)及びアンチモン(Sb)等を含む。
III-VI族半導体とは、III族元素とVI族元素を用いた半導体をいう。III族元素は上述したとおりである。VI族元素はIUPACの元素周期表の16族元素であり、酸素(O)、イオウ(S)及びセレン(Se)等を含む。
【0010】
[III-V族及びIII-VI族半導体成膜装置]
本発明のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置(以下、単に「本発明の半導体成膜装置」ともいう。)は、金属塩化物を原料とし、反応炉と、半導体材料ガス生成部と、半導体材料ガス供給配管と、を備える。
【0011】
反応炉では、加熱した基板上に半導体材料ガスを供給し、化学反応により薄膜を堆積、成膜させる。
例えば、HVPE法による成膜では、水素ガス中に、半導体材料ガスとしてIII族元素の塩化物ガス(GaCl等)と、V族元素の水素化物ガス(NH、PH、AsH等)を流し、基板上で半導体薄膜を成膜する。窒化ガリウム(GaN)の成膜には、半導体材料ガスとして三塩化ガリウムガスとアンモニアガスを流し成膜する。HVPE法は、III族元素の原料として有機金属を用いる有機金属気相成長法や超高真空中の分子線エピタキシー法等の他の成膜方法に比べ成長速度が速く、GaN層を厚く成長させるのに適している。
【0012】
半導体材料ガス生成部は、前記反応炉と分離独立しており、半導体材料ガス供給配管を通じて反応炉に半導体材料ガスを供給する。
半導体材料ガス生成部は、内部空間の下部に固体又は液体材料を収納し、前記内部空間の上部にキャリアガスと原料ガスとの混合ガスを供給し、前記固体又は液体材料と前記混合ガスとのその場生成により前記半導体材料ガスを生成する反応容器を含む。
【0013】
前記反応容器は、例えば、ガリウムと塩素ガスとの反応によって、半導体材料ガスとして三塩化ガリウムを生成する場合、ガリウムと塩素ガスとの反応によって一塩化ガリウムガスを含む第1のガスを生成する第1の反応室と、前記第1のガスと塩素ガスとの反応によって三塩化ガリウム及び不純物としての一塩化ガリウムを含む第2のガスを生成する第2の反応室とを含む。
前記第1の反応室は、下部に液体のガリウムが収納されており、上部に塩素ガスが供給されることによって、ガリウムと塩素ガスとを反応させて、一塩化ガリウムガスを含む第1のガスが生成される。前記第1の反応室は、2つ以上を直列に接続して、2つ目以降の第1の反応室にはその1つ前の反応室で生成した第1のガスを供給し、第1のガス中の未反応の塩素ガスとガリウムとの接触機会を増加させることにより、第1のガス中の一塩化ガリウムガスの濃度(モル濃度)を高めることもできる。前記第1の反応室でガリウムと塩素ガスとを反応させる際の温度(第1の反応温度)は、300~1000℃が好ましく、500~1000℃がより好ましく、700~900℃がさらに好ましい。
前記第2の反応室は、前記第1の反応室で生成した第1のガス及び塩素ガスが供給され、三塩化ガリウムガスを含む第2のガスが生成される。前記第2のガスは、三塩化ガリウムガスの他に、不純物として、一塩化ガリウムガス及び未反応の塩素ガス等を含む場合がある。前記第2の反応室で前記第2のガスと塩素とを反応させる際の温度(第2の反応温度)は、150~1000℃が好ましく、500~1000℃がより好ましく、600~1000℃がさらに好ましく、700~900℃がいっそう好ましい。
前記第1の反応室及び前記第2の反応室に加え、前記第1の反応室と前記第2の反応室を接続する配管、前記第1の反応室及び前記第2の反応室に塩素ガスを供給する配管及び前記第2の反応室から前記第2のガスを排出する配管等を含む反応容器は、前記第1の反応温度及び前記第2の反応温度に耐える材料で構成されることが好ましい。このような材料としては、カーボン、ステンレススチール又は石英ガラス等が挙げられる。ステンレススチールは耐蝕性の観点から、窒化ホウ素、シリカ又はPTFE/Ni等でコーティングを施してもよい。
前記反応容器は、円筒形状の石英ガラス製収納容器に収容され、前記収納容器の周囲に配置されたマントルヒーター等の加熱機構によって加熱できるように構成されることが好ましい。前記加熱機構は、前記第1の反応室と前記第2の反応室の温度を独立して制御できることが好ましい。
【0014】
以下では図1図5を適宜参照しながら、前記半導体材料ガス供給配管について説明する。
本発明のIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置100(101,200)において、半導体材料ガス供給配管3は、半導体材料ガス生成部1と反応炉2とを接続し、半導体材料ガス生成部1から反応炉2に半導体材料ガスを供給する配管である。
半導体材料ガス供給配管3は、半導体材料ガス生成部1と接続される第1接続部3aと、反応炉2と接続される第2接続部3bとを有する。
鉛直方向において、第1接続部3aは第2接続部3bよりも低い位置に存在する。
第1接続部3aと第2接続部3bとの間に、半導体材料ガス供給配管3の最も低い部分3cが存在する。
最も低い部分3cには、液化した固体又は液体材料を排出するための排出部3dが設けられている。
排出部3dの下方には、液化した固体又は液体材料を溜めるトラップ4が配置されている。トラップ4は取外し可能であり、必要時以外は取り外しておいてもよい。
【0015】
図1は、本発明の半導体成膜装置の一例の概略構成を示す図である。
III-V族及びIII-VI族半導体成膜装置100において、半導体材料ガス供給配管3の最も低い部分3cと第2接続部3bとの間の少なくとも一部が鉛直方向に配置された鉛直部3eとなっている。
図1では、第1接続部3aと最も低い部分3cとの間の配管は略水平となっている。
【0016】
図2は、本発明の半導体成膜装置の別の一例の概略構成を示す図である。
III-V族及びIII-VI族半導体成膜装置101において、半導体材料ガス供給配管3の最も低い部分3cと第2接続部3bとの間の少なくとも一部が鉛直方向に配置された鉛直部3eとなっている。
図2では、第1接続部3aと最も低い部分3cとの間の配管は第1接続部3aから最も低い部分3cに向けて低くなるように斜めとなっている。
【0017】
図3は、本発明の半導体成膜装置の更に別の一例の概略構成を示す図である。
III-V族及びIII-VI族半導体成膜装置200において、半導体材料ガス供給配管3の第1接続部3aと第2接続部3bとの間の形状が略U字形となっている。前記略U字形の底部が最も低い部分3cである。
図3では、最も低い部分3cと第2接続部3bとの間の少なくとも一部が鉛直方向に配置された鉛直部3eとなっている。
【0018】
III-V族及びIII-VI族半導体成膜装置100(101,200)の半導体材料ガス供給配管3の鉛直部3eの内部には、配管内の一塩化ガリウムの不均化反応を促進するため、流路に突出した邪魔板3f(3g)を配置することが好ましい。
図4に示すような配管内面から突き出した形状の邪魔板3fを鉛直部3eの内部に設けるには、例えば、円管に斜めにスリットを入れ、そこに邪魔板を差込み、円管の外より邪魔板を含みスリットを密閉するように溶接することで、簡便に製作可能である。
また、図5に示すように、邪魔板3gを設けた中心軸3hを準備し、鉛直部3eに鉛直方向に挿入することでも、邪魔板3gを鉛直部3e内部に配置できる。この場合、中心軸3hを保持するための邪魔板保持部材3iを鉛直部3e内部に設けることが好ましい。この例では、配管内部に邪魔板を固定せず、中心軸3hに半円状の板を何枚か間隔をあけて溶接した別部材を配管内に挿入している。これにより流路が複雑化して熱交換と液化ガリウムのスムースな落下を両立できる。
【0019】
半導体材料ガス供給配管3には、分解時の真空置換用の真空引き及びパージライン等を備えていてもよい。
また、トラップ4は、高温対応用のOリング等を介してクイックカップリングなどで接続され、メンテナンス時に外して液体ガリウムを回収するようにしてもよい。また、トラップ4の下段に別途バルブ及び配管を設置し、バルブを開放して液体ガリウムを放出するようにしてもよい。
【0020】
半導体材料ガス供給配管3及びトラップ4は最も耐熱温度が低い部材に合わせて150~300℃程度に加熱コントロールされることが好ましい。
図2では、第1接続部3aと最も低い部分3cとの間の配管にも傾斜をつけた斜め配管としたため、斜め配管で発生したガリウム金属もトラップ4に回収できる。
さらに、図3では、ガリウム金属の発生量が少ない場合や、メンテナンス周期を短く取れる場合の簡易形状を示す。半導体材料ガス供給配管3を略U字管とし、最下部に滴下ラインの分岐とその先にバルブを配している。この場合、トラップに当たる部分は分岐した配管部であり、頻繁にバルブを開けてガリウム金属を滴下することにすれば、構造が簡単になり、コストが低下する。
【0021】
[作用効果]
本発明を用いて半導体材料ガス供給部と反応炉間の配管部の一部又は全部を重力に抗して略鉛直な構造とすることで、前記配管内で温度の低下により不均化反応を起こした固体又は液体材料は配管壁面に付着し、液体状態のため、重力により容易に落下し、ガス流路を避けた位置に配される液ダメ部に収容される。これにより配管内の詰まりが予防される。さらにメンテナンス時は一カ所を開放するだけで良くなるし、さらにバルブを介した摘出ラインを追加し、液化した固体又は液体材料をさらに下部に設けた容器に滴下させるなどすることで、メンテナンス性が向上する。
【実施例
【0022】
図1に示すIII-V族及びIII-VI族半導体成膜装置100を用いて以下の条件でGaN膜を成長した。10回成長後、半導体材料ガス供給配管3を分解したところ、壁面にはガリウム金属が薄く付着しているが、配管を閉塞するような兆候は無く、一方、トラップ4からは5mL程度の金属ガリウムが確認された。
<成長条件>
NHガスの圧力が0.4atmとなり、NHガス及びキャリアガスの混合ガスの圧力が1atmとなり、NHガス及びキャリアガスの混合ガスの流量が10slmとなるように調整した。次に、反応炉の成長部を加熱することにより、種基板を成長温度1300℃にまで加熱した。次に、GaClガス生成装置において、容器内のGaを800℃に加熱して、塩素とキャリアガスを導入し、GaClガスを生成させ、供給配管を通じて装置外に、GaClガス及びキャリアガスの混合ガスを排出した。排出した混合ガスを、GaN結晶膜製造装置に輸送した。この際、GaCl供給管内において、GaClガスの圧力が3×10-2atmとなり、GaClガス及びキャリアガスの混合ガスの圧力が1atmなりGaClガス及びキャリアガスの混合ガスの流量が10slmとなるように調整した。これらのガスを種基板向かって吹き付け、10時間連続成長した。
【符号の説明】
【0023】
1…半導体材料ガス生成部
2…反応炉
3…半導体材料ガス供給配管
3a…第1接続部
3b…第2接続部
3c…最も低い部分
3d…排出部
3e…鉛直部
3f,3g…邪魔板
3h…中心軸
3i…邪魔板保持部材
4…トラップ
100,101,200…III-V族及びIII-VI族半導体成膜装置
V1,V2…開閉バルブ
図1
図2
図3
図4
図5