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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240926BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101C
H01L21/31 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021043853
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143376
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ファジュン
(72)【発明者】
【氏名】大秦 充敬
(72)【発明者】
【氏名】保坂 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】ジン ワンソン
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-015451(JP,A)
【文献】特開2020-119962(JP,A)
【文献】特開2019-102680(JP,A)
【文献】特開2016-115848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/31
C23C 16/50
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持部と、
前記基板支持部を囲むように配置され、複数の開口を有する環状バッフルプレートと、
前記環状バッフルプレートの下方に配置され、前記プラズマ処理チャンバの側壁に固定される第1無孔環状プレートと、
前記第1無孔環状プレートの下方に配置され、環状重複部分を有する第2無孔環状プレートであり、前記環状重複部分は、前記第1無孔環状プレートの一部と縦方向に重複しており、前記第2無孔環状プレートと前記基板支持部の側壁との間に環状の間隙が形成されており、前記環状の間隙は、1.0mm以下の幅を有する、第2無孔環状プレートと、
前記プラズマ処理チャンバ内の圧力を検出するように構成される圧力検出器と、
前記の検出された圧力に基づいて、前記第1無孔環状プレートと前記第2無孔環状プレートとの間の距離を変えるように前記第2無孔環状プレートを縦方向に移動させるように構成される少なくとも1つのアクチュエータと、を備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記複数の開口は、平面視で前記第1無孔環状プレート及び前記第2無孔環状プレートのうち少なくとも1つにより遮蔽されている、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記の検出された圧力が設定圧力よりも高い場合には前記距離が長くなり、
前記の検出された圧力が前記設定圧力よりも低い場合には前記距離が短くなるように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成される制御部をさらに備える、請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1無孔環状プレートと前記環状バッフルプレートとの間の距離は40mm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記環状重複部分は、5~10mmの幅を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1無孔環状プレートは、第1の幅を有し、前記第2無孔環状プレートは、前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持部と、
前記基板支持部を囲むように配置され、複数の開口を有する環状バッフルプレートと、
前記環状バッフルプレートの下方に配置され、前記基板支持部の側壁に固定される第1無孔環状プレートと、
前記第1無孔環状プレートの下方に配置され、環状重複部分を有する第2無孔環状プレートであり、前記環状重複部分は、前記第1無孔環状プレートの一部と縦方向に重複しており、前記第2無孔環状プレートと前記プラズマ処理チャンバの側壁との間に環状の間隙が形成されており、前記環状の間隙は、1.0mm以下の幅を有する、第2無孔環状プレートと、
前記プラズマ処理チャンバ内の圧力を検出するように構成される圧力検出器と、
前記の検出された圧力に基づいて、前記第1無孔環状プレートと前記第2無孔環状プレートとの間の距離を変えるように前記第2無孔環状プレートを縦方向に移動させるように構成される少なくとも1つのアクチュエータと、を備える、プラズマ処理装置。
【請求項8】
前記複数の開口は、平面視で前記第1無孔環状プレート及び前記第2無孔環状プレートのうち少なくとも1つにより遮蔽されている、請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記の検出された圧力が設定圧力よりも高い場合には前記距離が長くなり、
前記の検出された圧力が前記設定圧力よりも低い場合には前記距離が短くなるように前記少なくとも1つのアクチュエータを制御するように構成される制御部をさらに備える、請求項7又は請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記第1無孔環状プレートと前記環状バッフルプレートとの間の距離は40mm以上である、請求項7~9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記環状重複部分は、5~10mmの幅を有する、請求項7~10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記第1無孔環状プレートは、第1の幅を有し、前記第2無孔環状プレートは、前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する、請求項7~11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板にプラズマ処理を施す処理室と、処理室と連通する排気室と、複数の第1の通気穴を有し、処理室と排気室とを仕切る排気板と、排気室内に配される排気調整板と、を備える基板処理装置が開示されている。特許文献1に記載の基板処理装置によれば、前記排気調整板は、複数の第2の通気穴を有し、前記排気板と互いに平行に接触可能であるとともに、前記排気板から離間可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-15451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、処理チャンバの内部圧力を短時間で制御可能なプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、プラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持部と、前記基板支持部を囲むように配置され、複数の開口を有する環状バッフルプレートと、前記環状バッフルプレートの下方に配置され、前記プラズマ処理チャンバの側壁に固定される第1無孔環状プレートと、前記第1無孔環状プレートの下方に配置され、環状重複部分を有する第2無孔環状プレートであり、前記環状重複部分は、前記第1無孔環状プレートの一部と縦方向に重複しており、前記第2無孔環状プレートと前記基板支持部の側壁との間に環状の間隙が形成されており、前記環状の間隙は、1.0mm以下の幅を有する、第2無孔環状プレートと、前記プラズマ処理チャンバ内の圧力を検出するように構成される圧力検出器と、前記の検出された圧力に基づいて、前記第1無孔環状プレートと前記第2無孔環状プレートとの間の距離を変えるように前記第2無孔環状プレートを縦方向に移動させるように構成される少なくとも1つのアクチュエータと、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、処理チャンバの内部圧力を短時間で制御可能なプラズマ処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】プラズマ処理システムの構成を模式的に示す概略図である。
図2】プラズマ処理装置の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。
図3】排気システムの要部の構成例を拡大して示す要部拡大図である。
図4】排気システムの構成例の概略を示す斜視断面図である。
図5】排気システムの配置例を示す平面図である。
図6】排気システムの他の構成例を拡大して示す要部拡大図である。
図7】排気システムにおける離隔とプラズマ処理チャンバの内部圧力の関係の一例を示す説明図である。
図8】排気システムの変形例を示す要部拡大図である。
図9】排気システムの変形例を示す要部拡大図である。
図10】本開示に係る技術の実施例の結果を示す説明図である。
図11】本開示に係る技術の実施例の結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体基板(以下、単に「基板」という。)に対して処理ガスを供給し、当該基板にエッチング処理、成膜処理、拡散処理などの各種プラズマ処理が行われる。これらプラズマ処理は、内部を減圧雰囲気に制御可能な処理チャンバを有するプラズマ処理装置において行われる。該プラズマ処理装置においては、基板に対するプラズマ処理を適切に行うため、処理チャンバの内部圧力を精密に制御することが重要になる。
【0009】
上述した特許文献1には、処理室(処理チャンバ)の内部圧力を精密に制御するため、該処理室と排気室を仕切る排気板と、該排気板と互いに接触可能であるとともに、該排気板から離間可能に構成された排気調整板と、を備える基板処理装置(プラズマ処理装置)が開示されている。該排気板と排気調整板には、厚み方向に貫通して形成される複数の通気穴がそれぞれ形成されている。そして特許文献1に記載の基板処理装置は、排気板に対する排気調整板の位置を調整することで、比較的低圧や比較的高圧における細やかな圧力調整が可能に構成されている。
【0010】
ところで、近年の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、基板表面に形成されるパターンの微細化の要求に伴い、処理チャンバの内部圧力を短時間で調整することが求められている。しかしながら、プラズマ処理が行われる処理チャンバは、例えばプラズマガスや大容量の電源が必要になることから容量が大きくなり、短時間での圧力調整が困難である場合がある。特に、プラズマ処理装置が誘導結合型(ICP:Inductively Coupled Plasma)のプラズマ生成部を有する場合、処理チャンバの容量が大きくなることが一般的であり、該処理チャンバの内部圧力を短時間で調整することは重要な課題であった。
【0011】
本開示に係る技術は上記事情に鑑みてなされたものであり、処理チャンバの内部圧力を短時間で制御可能なプラズマ処理装置を提供する。以下、本実施形態にかかるプラズマ処理装置を備えるプラズマ処理システム、及び一実施形態にかかるプラズマ処理方法ついて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<プラズマ処理システムの構成>
先ず、一実施形態にかかるプラズマ処理システムについて説明する。図1は、プラズマ処理システムの構成の概略を示す説明図である。
【0013】
一実施形態において、プラズマ処理システムは、図1に示すようにプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。
【0014】
プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0015】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-Resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、200kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0016】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0017】
<プラズマ処理装置の構成>
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての誘導結合型のプラズマ処理装置(ICP)の構成例について説明する。図2は、プラズマ処理装置1の構成の概略を示す縦断面図である。
【0018】
誘導結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30、排気システム40及び圧力測定機構50を含む。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓101を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11、ガス導入部及びアンテナ14を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。アンテナ14は、プラズマ処理チャンバ10の上、又は上方(すなわち誘電体窓101の上、又は上方)に配置される。プラズマ処理チャンバ10は、誘電体窓101、プラズマ処理チャンバ10の内壁面を構成する側壁102及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。
【0019】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域111a(基板支持面)と、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111b(リング支持面)とを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、中央領域111a上の基板Wを囲むように環状領域111b上に配置される。
【0020】
一実施形態において、本体部111は、図示しない基台及び図示しない静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、上述の中央領域111a及び環状領域111bを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含み、1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。
【0021】
また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面との間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0022】
ガス導入部は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに導入するように構成される。一実施形態において、ガス導入部は、中央ガス注入部(CGI:Center Gas Injector)13を含む。中央ガス注入部13は、基板支持部11の上方に配置され、誘電体窓101に形成された中央開口部に取り付けられる。中央ガス注入部13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス流路13b、及び少なくとも1つのガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス流路13bを通過してガス導入口13cからプラズマ処理空間10sに導入される。なお、ガス導入部は、中央ガス注入部13に加えて又はその代わりに、側壁102に形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0023】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介して中央ガス注入部13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0024】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材(下部電極)及びアンテナ14に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオンを基板Wに引き込むことができる。
【0025】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してアンテナ14に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、アンテナ14に供給される。
【0026】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0027】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、バイアスDC生成部32aを含む。一実施形態において、バイアスDC生成部32aは、下部電極に接続され、バイアスDC信号を生成するように構成される。生成されたバイアスDC信号は、下部電極に供給される。一実施形態において、バイアスDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に供給されてもよい。種々の実施形態において、バイアスDC信号は、パルス化されてもよい。なお、バイアスDC生成部32aは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0028】
アンテナ14は、1又は複数のコイルを含む。一実施形態において、アンテナ14は、同軸上に配置された外側コイル及び内側コイルを含んでもよい。この場合、RF電源31は、外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、外側コイル及び内側コイルのうちいずれか一方に接続されてもよい。前者の場合、同一のRF生成部が外側コイル及び内側コイルの双方に接続されてもよく、別個のRF生成部が外側コイル及び内側コイルに別々に接続されてもよい。
【0029】
排気システム40は、平面視において基板支持部11の周囲に形成された排気経路10e、及び、プラズマ処理チャンバ10の底面に形成されたガス排出口10fを介してプラズマ処理チャンバ10(プラズマ処理空間10s)の内部を排気、減圧する。排気システム40は、プラズマ処理空間10sと排気経路10eとの間を区画する環状バッフルプレート41、移動機構42aの動作によりガス排出口10fを開閉する圧力調整弁42、及び該圧力調整弁42を介してプラズマ処理空間10sの内部を排気する排気機構43を備える。また本実施形態においては、排気経路10eにおける環状バッフルプレート41の下流側において、プラズマ処理空間10sの内部圧力を短時間で調整するための上側プレート44、下側プレート45、及び移動機構46が配置されている。なお、排気システム40の詳細は構成については後述する。
【0030】
圧力測定機構(圧力検出器)50は、プラズマ処理に際してプラズマ処理チャンバ10(プラズマ処理空間10s)の内部圧力を測定する。圧力測定機構50の種類は特に限定されるものではなく、プラズマ処理チャンバ10の内部圧力を測定できれば任意に決定できる。一実施形態において、圧力測定機構50は、プラズマ処理チャンバ10内の圧力を検出するように構成される圧力検出器を含む。
【0031】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0032】
<排気システムの構成>
次に、上述した排気システム40の詳細な構成の一例について説明する。図3は排気システム40の要部を拡大して示す要部拡大図である。図4は排気システム40の要部を模式的に示す斜視断面図である。
【0033】
上述したように、排気システム40は環状バッフルプレート41、圧力調整弁42、排気機構43、上側プレート44、下側プレート45及び移動機構46を含む。
【0034】
環状バッフルプレート41は、平面視における基板支持部11の周囲において、プラズマ処理空間10sと排気経路10eとの間を区画するように配置される。環状バッフルプレート41は多数の貫通穴(開口)41aを有する環状の板状部材であり、当該貫通孔を介してプラズマ処理空間10sと排気経路10eとを連通するとともに、プラズマ処理空間10sに発生するプラズマを捕捉又は反射して排気経路10eへの漏洩を抑制する。また、環状バッフルプレート41は基板支持部11に載置された基板Wと平行に配され、図中において基板Wの上面、より詳細には基板支持面よりも低い位置に配置されている。従って、環状バッフルプレート41は、基板支持部11の側壁を囲むように水平方向に沿って配置され、この環状バッフルプレート41を縦方向に貫通するように形成された複数の開口41aを有する。
【0035】
圧力調整弁42は、その開閉により排気機構43により行われるプラズマ処理空間10sの減圧動作を調整し、すなわちプラズマ処理チャンバ10の内部圧力(減圧度)を調整する。圧力調整弁42としては、例えばAPCバルブやポペットバルブを選択し得る。
【0036】
排気機構43は、プラズマ処理空間10sの内部を減圧する。排気機構43としては、例えばターボ分子ポンプやドライポンプ等の真空ポンプ、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0037】
上側プレート(第1環状プレート)44は、例えば排気経路10eにおける環状バッフルプレート41の下流側において、プラズマ処理チャンバ10の側壁102に対して固定して配置される。従って、第1環状プレート44は、環状バッフルプレート41の下方に配置される。一実施形態において、第1環状プレート44は、環状バッフルプレート41と縦方向に完全に重複する。上側プレート44は環状の板状部材であり、環状部分の幅L1(図3を参照)が環状バッフルプレート41の幅L3(図3を参照)と比較して小さく形成されている。換言すれば、上側プレート44の内端部と基板支持部11の側面部との間には、幅[L3-L1]の排気流路が形成されている。上側プレート44の幅L1は任意に設計し得る。
【0038】
なお、環状バッフルプレート41と上側プレート44との間の距離H1(図3を参照)も任意に設計し得るが、例えば排気コンダクタンスを適切に調整する観点から、当該距離H1は少なくとも40mm以上であることが好ましい。
【0039】
下側プレート(第2環状プレート)45は、例えば排気経路10eにおける上側プレート44の下流側において、基板支持部11の側面部側に配置される。従って、第2環状プレート45は、第1環状プレート44の下方に配置される。一実施形態において、第2環状プレート45は、環状バッフルプレート41と縦方向に完全に重複する。一実施形態において、第1環状プレート44は、プラズマ処理チャンバ10の側壁に固定され、この場合、第2環状プレート45は、縦方向に移動可能であり、基板支持部11の側壁又はその近傍に配置される。下側プレート45は環状の板状部材であり、環状部分の幅L2(図3を参照)が環状バッフルプレート41の幅L3と比較して小さく形成されている。換言すれば、下側プレート45の外端部とプラズマ処理チャンバ10の側壁102との間には、幅[L3-L2]の排気流路が形成されている。下側プレート45の幅L2は任意に設計し得る。
【0040】
また、第1環状プレート44及び第2環状プレート45は、環状バッフルプレート41のような、縦方向に貫通した複数の開口を有していない。従って、環状バッフルプレート41の複数の開口41aの各々は、平面視で第1環状プレート44及び第2環状プレート45のうち少なくとも1つにより遮蔽される。すなわち、環状バッフルプレート41の各開口41aは、平面視で第1環状プレート44又は第2環状プレート45により選択的に遮蔽されてもよく、平面視で第1環状プレート44及び第2環状プレート45の両方により遮蔽されてもよい。従って、複数の開口41aの上方から鉛直方向に下方を見た場合に第2環状プレート45よりも下にある空間は見えない。
【0041】
また、本実施形態において下側プレート45は、例えばアクチュエータ等の移動機構46の動作により、上側プレート44に対する遠近方向(図示の例では垂直方向)に移動自在に構成されている。換言すれば、下側プレート45は上側プレート44との間の距離H2(図3を参照)を任意に調整可能に構成されている。移動機構46の動作は、例えば制御部2により制御される。距離H2の調整幅は任意に設計し得るが、プラズマ処理空間10sの圧力制御を適切に行う観点から、当該距離H2は少なくとも5~50mmの間で調整可能であることが望ましい。従って、少なくとも1つのアクチュエータ46は、圧力検出器50により検出された圧力に基づいて、第2環状プレート45のみを縦方向に移動させるように構成される。すなわち、少なくとも1つのアクチュエータ46は、第1環状プレート44を移動させることなく第2環状プレート45を縦方向に移動させるように構成される。すなわち、第1環状プレート44は固定環状プレートとして機能し、第2環状プレート45は可動環状プレートとして機能する。これにより、第1環状プレート44と第2環状プレート45との間の距離H2が変えられる。
【0042】
ここで、本実施形態にかかる上側プレート44と下側プレート45は、図3及び図5に示すように、排気経路10eにおける排気方向(図示の例では垂直方向)に対して径方向の少なくとも一部が重なったオーバーラップ部(環状重複部分)OVを形成するように配置する。換言すれば、上側プレート44と下側プレート45は、図3及び図5に示したオーバーラップ部OVを形成する(L3<L1+L2となる)ように、それぞれの幅L1及び幅L2を決定する。オーバーラップ部OVの幅は任意に設計し得るが、例えば5~10mmで設計してもよい。一実施形態において、第2環状プレート45は、第1環状プレート44の下方に配置され、第2の環状重複部分45aを有する。第2の環状重複部分45aは、第1環状プレート44の一部(すなわち第1の環状重複部分44a)と縦方向に重複している。従って、上側プレート44と下側プレート45の環状重複部分OVは、第2環状プレート45の一部(すなわち第2の環状重複部分45a)と、第1環状プレート44の一部(すなわち第1の環状重複部分44a)とが、縦方向に重複した部分である。
【0043】
またこの時、上側プレート44の幅L1と下側プレート45の幅L2の大小関係は特に限定されるものではなく、例えば幅L1と幅L2のいずれか一方が大きくてもよいし、幅L1と幅L2が同じであってもよい。ただし、排気コンダクタンスを適切に調整する観点からは、幅L1が幅L2よりも小さい(L1<L2)ことが好ましい。
【0044】
本実施形態にかかるプラズマ処理装置1が備える排気システム40は、以上のように構成されている。
【0045】
ここで、従来のプラズマ処理装置1を用いて行われるプラズマ処理に際しては、プラズマ処理空間10sと排気経路10eとを含むプラズマ処理チャンバ10の内部全体に対して処理ガスの供給、又は排気システム40による排気を行う必要があり、これによりプラズマ処理チャンバ10(プラズマ処理空間10s)の圧力制御に多大な時間を要していた。
【0046】
この点、本実施形態においては、上述したように少なくとも径方向の一部にオーバーラップ部OVを形成する上側プレート44及び下側プレート45を排気経路10eに配置するとともに、当該下側プレート45を上側プレート44に対して遠近方向に移動自在に構成する。また、これら上側プレート44及び下側プレート45には貫通穴(開口)が形成されていない。このため、上側プレート44と下側プレート45は、距離H2を小さくすることにより、第2の圧力調整弁として疑似的に作用する。
【0047】
換言すれば、上側プレート44と下側プレート45との間の距離H2を小さくすることで、下側プレート45よりも下流側における排気経路10eをプラズマ処理空間10sから切り離し、プラズマ処理チャンバ10の容積を疑似的に小さくすることができる。そして、このようにプラズマ処理チャンバ10の容積が小さくなるため、プラズマ処理空間10sの圧力制御に要する時間を短縮することができる。
【0048】
また本実施形態によれば、上述のように下側プレート45が上側プレート44に対して遠近方向に移動自在に構成されているため、これにより排気機構43によるプラズマ処理空間10sからの排気量を任意に調整して、プラズマ処理空間10sの内部圧力を精密に制御することが可能である。すなわち、上側プレート44と下側プレート45との間の距離H2の大きさに応じてプラズマ処理空間10sからの排気量が変化するため、例えば圧力測定機構50による測定結果に基づいて距離H2を調整することで、適切にプラズマ処理空間10sの内部圧力を制御できる。
【0049】
具体的には、例えばプラズマ処理空間10sの内部圧力が設定圧力よりも低い場合には、下側プレート45を上昇させて距離H2を小さくすることで排気量が減少するため、プラズマ処理空間10sの内部圧力を高くできる。また例えば、プラズマ処理空間10sの内部圧力が設定圧力よりも高い場合には、下側プレート45を降下させて距離H2を大きくすることで排気量が増加するため、プラズマ処理空間10sの内部圧力を低くできる。
【0050】
またこの時、第2の圧力調整弁として機能する上側プレート44及び下側プレート45に加え、プラズマ処理チャンバ10の底部に配された圧力調整弁42を用いて、プラズマ処理空間10sからの排気を2段階で調整することで、プラズマ処理空間10sの内部圧力を更に精密に制御することができる。
【0051】
このように、本実施形態にかかるプラズマ処理装置1によれば、第2の圧力調整弁として機能する上側プレート44及び下側プレート45を排気システム40に設けることで、プラズマ処理空間10sの内部圧力を精密に制御できるとともに、該圧力制御に係る時間を適切に短縮できる。
しかしながら本発明者らが以上の実施形態について鋭意検討を行ったところ、特に上側プレート44と下側プレート45との間の距離H2が小さい場合、プラズマ処理空間10sの内部圧力の変化が大きく(急峻に)なりすぎてしまう可能性があることを知見した。そして、このように内部圧力の変化が大きく(急峻に)なりすぎた場合、かかる圧力変化により基板Wに対するプラズマ処理が適切に実行できなくなるおそれがある。
【0052】
<第2の実施形態>
図6は、かかるプラズマ処理空間10sの内部圧力の急峻な変化を抑制するための第2の実施形態にかかる排気システム400の構成を模式的に示す要部拡大図である。なお、図中において上述の排気システム40と同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0053】
図6に示すように第2の実施形態にかかる排気システム400は、環状バッフルプレート41、上側プレート44、下側プレート450及び移動機構46(図6においては図示せず)を含む。
【0054】
上側プレート44は、例えば排気経路10eにおける環状バッフルプレート41の下流側において、プラズマ処理チャンバ10の側壁102に対して固定して配置される。
下側プレート450は、例えば排気経路10eにおける上側プレート44の下流側において、基板支持部11の側面部側に配置される。また、下側プレート450は図示しない移動機構46の動作により、上側プレート44に対して遠近方向(図示の例では垂直方向)に対して移動自在に構成されている。
【0055】
また、本実施形態において下側プレート450は、図6に示すように基板支持部11(本体部111)の側面部との間にバイパス流路としての隙間Cが形成されるように、基板支持部11から若干離隔して配置される。すなわち、第2環状プレート450及び基板支持部11は、同心円上に配置され、第2環状プレート450は、基板支持部11の外径よりも大きい内径を有する。これにより、第2環状プレート450の内周縁部と基板支持部11の側壁との間に環状の隙間Cが形成される。隙間Cの幅は、プラズマ処理空間10sから排気機構43による排気の流れを常時生成でき、且つプラズマ処理に際してプラズマ処理空間10sの内部圧力に影響を与えない大きさであって、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。一実施形態において、環状の隙間Cは、全周に渡って同じ幅を有する。
【0056】
このように、第2の実施形態にかかる排気システム400によれば、上側プレート44と下側プレート450との間の距離H2からの排気に加えて、下側プレート45の内端部と基板支持部11の側面部との間に形成された隙間Cから、更にプラズマ処理空間10sの微小の常時排気を行う。これにより、図7に示すように、上側プレート44と下側プレート450との間の距離H2を小さくした場合であっても、第1の実施形態にかかる排気システム40のようにプラズマ処理空間10sの内部圧力の変化(図7の例では排気コンダクタンスの値)が大きく(急峻に)なることが抑制され、すなわち基板Wに対するプラズマ処理を適切に実行できる。
【0057】
特に本実施形態によれば、隙間Cの幅がプラズマ処理に際してプラズマ処理空間10sの内部圧力に影響を与えない大きさ、好ましくは1.0mm以下の大きさで設定される。このため、隙間Cからの常時排気によりプラズマ処理に際しても常時排気により内部圧力の急激な変化が抑制される。
【0058】
なお、以上の第2の実施形態においては下側プレート450の内端部と基板支持部11の側面部との間に隙間Cを形成することで、プラズマ処理空間10sの常時排気を行うためのバイパス流路を形成したが、バイパス流路の形成方法はこれに限定されない。具体的には、例えば下側プレート450の内端部に、基板支持部11の側面部に沿った1又は複数のスリット(切欠き)を形成することでバイパス流路を形成してもよい。または、例えば下側プレート450の内端部に代えて、基板支持部11の側面部に、下側プレート450の内端部に沿った1又は複数のスリット(切欠き)を形成してもよい。
【0059】
また、下側プレート450の内端部と基板支持部11の側面部との間に加えて又はその代わりに、上側プレート44とプラズマ処理チャンバ10の側壁102との間に隙間Cを形成してもよい。
【0060】
第2の実施形態にかかるプラズマ処理装置1が備える排気システム400は、以上のように構成され得る
【0061】
<変形例>
なお、以上の実施形態においては上側プレート44の位置を環状バッフルプレート41の位置に対して固定し、下側プレート45を上側プレート44の位置に対して遠近方向(垂直方向)に移動可能に構成したが、排気システムの構成はこれに限定されない。すなわち、例えば図8に示すように、下側プレート45を環状バッフルプレート41の位置に対して固定し、上側プレート44を環状バッフルプレート41と下側プレート45との間で移動可能に構成してもよい。換言すれば、上側プレート44を下側プレート45に対して遠近方向に移動自在に構成してもよい。従って、少なくとも1つのアクチュエータ46は、圧力検出器50により検出された圧力に基づいて、第1環状プレート44のみを縦方向に移動させるように構成される。すなわち、少なくとも1つのアクチュエータ46は、第2環状プレート45を移動させることなく第1環状プレート44を縦方向に移動させるように構成される。これにより、第1環状プレート44と第2環状プレート45との間の距離H2が変えられる。かかる場合であっても、圧力測定機構50による測定結果に基づいて上側プレート44と下側プレート45との間の距離H2を調整することで、プラズマ処理空間10sの内部圧力を精密に制御できるとともに、該圧力制御に係る時間を適切に短縮できる。
【0062】
なお、以上の実施形態においては上側プレート44をプラズマ処理チャンバ10の側壁102側に配置し、下側プレート45を基板支持部11の側面部側に配置したが、2枚の環状プレートの配置はこれに限定されない。すなわち、例えば図9に示すように、上側プレート44を基板支持部11の側面部側に配置し、下側プレート45をプラズマ処理チャンバ10の側壁102側に配置してもよい。かかる場合であっても、圧力測定機構50による測定結果に基づいて上側プレート44と下側プレート45との間の距離H2を調整することで、プラズマ処理空間10sの内部圧力を精密に制御できるとともに、該圧力制御に係る時間を適切に短縮できる。従って、第1環状プレート44は、基板支持部11の側壁に固定されてもよく、この場合、第2環状プレート45は、プラズマ処理チャンバ10の側壁又はその近傍に配置される。
【0063】
また、このように下側プレート45をプラズマ処理チャンバ10の側壁102側に配置する場合、上記第2の実施形態に示したバイパス流路としての隙間C、又はスリット(切欠き)は、下側プレート45の外端部とプラズマ処理チャンバ10の側壁102との間に形成されてもよい。
【0064】
なお、以上の実施形態においては環状バッフルプレート41の下流側直下において、垂直方向に並べて上側プレート44と下側プレート45を配置する場合を例に説明を行ったが、上側プレート44と下側プレート45の設置位置はここに限定されない。すなわち、環状バッフルプレート41の下流側であって、少なくとも圧力調整弁42よりも上流側に上側プレート44と下側プレート45を設置できれば、少なくとも従来と比較してプラズマ処理チャンバ10の容積を疑似的に小さくできるため、プラズマ処理空間10sの内部圧力の制御に係る時間を短縮できる。従って、少なくとも1つのアクチュエータ46は、圧力検出器50により検出された圧力に基づいて、第1環状プレート44及び第2環状プレート45の両方を縦方向に移動させるように構成される。これにより、第1環状プレート44と第2環状プレート45との間の距離H2が変えられる。少なくとも1つのアクチュエータ46は、1つのアクチュエータであってもよく、複数のアクチュエータであってもよい。後者の場合、少なくとも1つのアクチュエータ46は、第1環状プレート44を移動させるように構成される第1のアクチュエータと、第2環状プレート45を移動させるように構成される第2のアクチュエータとを含む。
【0065】
<プラズマ処理方法>
次に、以上のように構成されたプラズマ処理システムを用いたプラズマ処理方法について説明する。プラズマ処理装置1においては、基板Wに対してエッチング処理、成膜処理、拡散処理等の任意のプラズマ処理が行われる。
【0066】
プラズマ処理においては、先ず、プラズマ処理チャンバ10の内部に基板Wを搬送し、基板支持部11上に基板Wを載置する。その後、静電チャック内の電極に直流電圧を供給することにより、基板Wはクーロン力によって静電チャックに吸着保持される。また、基板Wのプラズマ処理チャンバ10への搬送後、排気システム40によってプラズマ処理チャンバ10の内部を所望の真空度まで減圧する。
【0067】
次に、ガス供給部20から中央ガス注入部13を介してプラズマ処理空間10sに処理ガスを供給する。また、第1のRF生成部31aによりプラズマ生成用の高周波電力HFをアンテナ14に供給し、プラズマ処理空間10s内の処理ガスからプラズマを生成する。そして、生成されたプラズマの作用によって、基板支持部11上の基板Wに所望のプラズマ処理が施される。すなわち、生成されたプラズマを基板Wに曝すことにより基板Wに対してプラズマ処理が施される。プラズマ処理中のプラズマ処理チャンバ10内の圧力(内部圧力)は、圧力測定機構50により経時的に測定(検出)される。
【0068】
ここで、プラズマ処理チャンバ10の内部圧力は、プラズマ処理空間10sに対する処理ガスの供給により所望の設定圧力となるように調整される。この時、上述したように上側プレート44と下側プレート45との間の距離H2を小さくすることにより、当該上側プレート44と下側プレート45が第2の圧力調整弁として作用するため、プラズマ処理チャンバ10の容積を疑似的に小さくでき、これによりプラズマ処理チャンバ10の内部圧力の制御を短時間で行うことができる。
【0069】
また上述したように、プラズマ処理装置においては、基板Wに対するプラズマ処理を適切に行うため、プラズマ処理チャンバ10の内部圧力を精密に制御することが重要になる。そこで本実施形態においては、圧力測定機構50により測定されるプラズマ処理チャンバ10の内部圧力に基づいて、排気システム40における上側プレート44と下側プレート45と間の距離H2を制御する。具体的には、圧力測定機構50による測定結果がプラズマ処理の設定圧力よりも低い場合には、下側プレート45を上昇させて距離H2を小さくすることで、プラズマ処理チャンバ10の内部圧力を上昇させる。また、圧力測定機構50による測定結果がプラズマ処理の設定圧力よりも高い場合には、下側プレート45を降下させて距離H2を大きくすることで、プラズマ処理チャンバ10の内部圧力を低下させる。従って、制御部2は、圧力検出器50により検出された圧力を、予め決められた設定圧力と比較し、検出された圧力が設定圧力よりも高いかどうか、及び/又は、低いかどうかを決定する。そして、制御部2は、検出された圧力が設定圧力よりも高い場合には距離H2が長くなり、検出された圧力が設定圧力よりも低い場合には距離H2が短くなるように少なくとも1つのアクチュエータ46を制御する。例えば、図3の例では、制御部2は、検出された圧力が設定圧力よりも高い場合には、可動環状プレート45を下降させ、検出された圧力が設定圧力よりも低い場合には、可動環状プレート45を上昇させる。
【0070】
基板Wに対するプラズマ処理が完了すると、RF電源31からの高周波電力HF及び高周波電力LFの供給、及びガス供給部20による処理ガスの供給を停止する。また、プラズマ処理中に高周波電力LFを供給していた場合には、該高周波電力LFの供給も停止する。次いで、排気システム40によってプラズマ処理チャンバ10の内部から処理ガスを排気する。次いで、基板Wの裏面への伝熱ガスの供給を停止し、静電チャックによる基板Wの吸着保持を停止する。
【0071】
プラズマ処理が施された基板Wは、その後、図示しない基板搬送機構によりプラズマ処理チャンバ10から搬送チャンバ等の外部装置に搬送され、基板Wに対する一連のプラズマ処理が終了する。
【0072】
なお、以上の一実施形態にかかるプラズマ処理おいては、プラズマ処理の最中に圧力測定機構50により測定されたプラズマ処理チャンバ10の内部圧力に基づいて下側プレート45を適宜移動させたが、下側プレート45の制御方法はこれに限定されない。例えば、プラズマ処理の最中に圧力測定機構50により測定された内部圧力に基づいて下側プレート45の動作をフィードバック制御することに代え、プラズマ処理の開始前に、予め定められた各種プロセスの設定圧力に基づいて、該プロセス毎に距離H2を変更するようにしてもよい。
【0073】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0074】
例えば、以上の実施形態においてはプラズマ処理装置1が誘導結合型のプラズマ生成部を含む場合を例に説明を行ったが、プラズマ生成部の構成はこれに限定されるものではない。すなわち、圧力制御に係る時間の短縮が求められる各種プラズマ処理装置に本開示の技術を適用することで、適切に該圧力制御に係る時間を短縮できる。
【実施例
【0075】
以下、本開示にかかる技術の実施例について説明するが、本技術は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
本発明者らは、上述の排気システム400により距離H2を小さくしてプラズマ処理チャンバの容積を疑似的に縮小させた場合(実施例)と、上側プレート44と下側プレート45を含まず、プラズマ処理チャンバの容積に排気経路10eの容積が含まれる場合(比較例)において、プラズマ処理チャンバの内部圧力の制御にかかる時間をそれぞれ測定した。
具体的には、実施例と比較例のそれぞれの場合においてプラズマ処理空間に対して処理ガスを供給し、プラズマ処理チャンバの内部圧力が所望の設定圧力に昇圧されるまでの時間を測定した。
【0077】
図10は、本実施例の結果を模式的に示す説明図であって、設定圧力100mT、プラズマ処理チャンバに供給する処理ガス流量300sccmとした場合における、内部圧力(縦軸)と時間(横軸)の関係を示すグラフである。
また図11は、設定圧力150mT、プラズマ処理チャンバに供給する処理ガス流量500sccmとした場合における、内部圧力(縦軸)と時間(横軸)の関係を示すグラフである。
図中において実線は実施例、破線は比較例をそれぞれ示している。また、時間T1は実施例が設定圧力に到達するのに要した時間、時間T2は比較例が設定圧力に到達するのに要した時間、時間T3は比較例が設定圧力で安定するのに要した時間、をそれぞれ示している。
【0078】
図10及び図11に示すように、上側プレート44と下側プレート45との間の距離H2を小さくした状態でプラズマ処理チャンバ10の内部圧力を制御することにより、該内部圧力を設定圧力に到達させるまでに要する時間が短くなることがわかる。具体的には、本発明者らが検討を行ったところ、実施例において設定圧力に到達するまでに要する時間は、時間T1と時間T2と比較して、およそ40~50%に短縮できることがわかった。また更に、プラズマ処理を安定的に行うための設定圧力での安定化に要する時間は、時間T1と時間T3を比較して、およそ20~30%に短縮できることがわかった。
【0079】
以上の結果から分かるように、プラズマ処理装置1に第2の圧力調整弁として機能する上側プレート44及び下側プレート45を配することにより、適切にプラズマ処理チャンバ10の圧力制御に係る時間を短縮できる。
【符号の説明】
【0080】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
10e 排気経路
10s プラズマ処理空間
11 基板支持部
41 環状バッフルプレート
44 上側プレート
45 下側プレート
46 移動機構
50 圧力測定機構
OV オーバーラップ部
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11