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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240926BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L21/30 565
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021062851
(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公開番号】P2022158150
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】岩田 和也
(72)【発明者】
【氏名】古閑 法久
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-040025(JP,A)
【文献】国際公開第2011/062162(WO,A1)
【文献】特開2013-229454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVリソグラフィ用レジスト材によるレジスト膜が形成された基板に対して、露光処理前に真空紫外光を含む光を照射する光源と、
前記光源からの光の光路上に設けられて、前記基板表面に到達する光の光量を、照射領域において全体的に微弱光に抑制する光量抑制部材と、
を有し、
前記真空紫外光を含む光は、波長10nm~200nmに含まれる少なくとも一部の帯域の連続したスペクトル成分を含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記光量抑制部材は、
厚さ方向に複数の開口が形成された有孔板を含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記光量抑制部材は、
前記光源からの光の光量を前記微弱光に抑制して透過させる部材を含む、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記光源からの光を照射する際に、前記基板を回転しながら支持する基板支持部と、
前記光源と前記基板との間の位置に設けられ、前記基板の表面面積に対して小さい面積であって、且つ、前記基板の外周側に向かって大きくなるように、前記基板表面に前記照射領域を形成する遮光部材と、
をさらに有する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記光量抑制部材は、前記照射領域において中央部よりも外周部において、単位面積あたりの光の照射強度が大きくなるように光量の勾配を形成する、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記光量抑制部材は、厚さ方向に複数の開口が形成された有孔板を含み、
前記中央部よりも前記外周部の開口率を大きくすることで、光量の勾配を形成する、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記遮光部材は、平面視において前記基板の中心と重なる位置には開口が形成されていない、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記光源は、光軸が前記基板表面に対して傾斜している、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
EUVリソグラフィ用レジスト材によるレジスト膜が形成された基板に対して、露光処理前に光源から真空紫外光を含む光を照射することと、
前記照射することにおいて、前記光源からの光の光路上に設けられた光量抑制部材によって、前記基板表面に到達する光の光量を、照射領域において全体的に微弱光に抑制することと、
を有し、
前記真空紫外光を含む光は、波長10nm~200nmに含まれる少なくとも一部の帯域の連続したスペクトル成分を含む、基板処理方法。
【請求項10】
前記照射することにおいて、前記基板を回転しながら基板を支持し、
前記照射することにおいて、前記光源と前記基板との間の位置に設けられた遮光部材によって、前記基板の表面面積に対して小さい面積であって、前記基板の外周側に向かって大きくなるような照射領域を前記基板表面に形成することをさらに含む、請求項9に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上に形成されたレジスト膜に対して、露光処理とは別に紫外線を照射することによって、レジストパターンの膜圧または線幅の精度または面内均一性の向上を図る補助露光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-186191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、EUVリソグラフィに適したレジスト材料を用いた基板における露光時の感度を面内で均一にすることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理装置は、EUVリソグラフィ用レジスト材によるレジスト膜が形成された基板に対して、露光処理前に真空紫外光を照射する光源と、前記光源からの光の光路上に設けられて、前記基板表面に到達する光の光量を、照射領域において全体的に微弱光に抑制する光量抑制部材と、を有し、前記真空紫外光は、波長10nm~200nmに含まれる少なくとも一部の帯域の連続したスペクトル成分を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、EUVリソグラフィに適したレジスト材料を用いた基板における露光時の感度を面内で均一にすることが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一つの例示的実施形態に係る基板処理装置を示す図である。
図2図2は、基板処理装置における有孔板の一例を示す図である。
図3図3は、基板処理装置の変更例の一例を示す図である。
図4図4は、基板処理装置における遮光板の一例を示す図である。
図5図5は、コントローラのハードウェア構成を例示するブロック図である。
図6図6は、基板処理方法の一例を説明するフロー図である。
図7図7は、基板処理装置における基板処理時の圧力変化の一例を示す図である。
図8図8(a)、図8(b)、図8(c)は、光源からの光の分布の評価結果の一例を示す図である。
図9図9(a)、図9(b)、図9(c)は、遮光板の構成の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的施形態において、基板処理装置は、EUVリソグラフィ用レジスト材によるレジスト膜が形成された基板に対して、露光処理前に真空紫外光を含む光を照射する光源と、前記光源からの光の光路上に設けられて、前記基板表面に到達する光の光量を、照射領域において全体的に微弱光に抑制する光量抑制部材と、を有し、前記真空紫外光を含む光は、波長10nm~200nmに含まれる少なくとも一部の帯域の連続したスペクトル成分を含む。
【0010】
上記の基板処理装置によれば、光量抑制部材によって微弱光に調整された真空紫外光を含む光が、基板表面の照射領域に照射される。そのため、微弱光の真空紫外光を含む光を基板表面に対して照射することによるレジスト膜露光時の感度調整を適切に行うことができる。その結果、基板における露光時の感度を面内で均一にすることが可能になる。
【0011】
前記光量抑制部材は、厚さ方向に複数の開口が形成された有孔板を含む態様とすることができる。
【0012】
上記のような有孔板を光量抑制部材として用いることで、光源からの真空紫外光を含む光について、そのスペクトル成分を変化させずに、微弱光として基板に対して照射することが可能となる。そのため、真空紫外光を含む光によるレジスト膜の感度の調整を適切に行うことができる。
【0013】
前記光量抑制部材は、前記光源からの光の光量を前記微弱光に抑制して透過させる部材を含む態様とすることができる。
【0014】
上記のような光源からの光の光量を前記微弱光に抑制して透過させる部材を用いることで、光源からの光の分布を維持した状態で、微弱光として基板に対して照射することが可能となる。そのため、真空紫外光を含む光によるレジスト膜の感度の調整を適切に行うことができる。
【0015】
前記光源からの光を照射する際に、前記基板を回転しながら支持する基板支持部と、前記光源と前記基板との間の位置に設けられ、前記基板の表面面積に対して小さい面積であって、且つ、前記基板の外周側に向かって大きくなるように、前記基板表面に前記照射領域を形成する遮光部材と、をさらに有する態様とすることができる。
【0016】
上記のように基板表面に照射領域を形成する遮光部材を用いて、回転する基板に対して光源からの光を照射する構成とすることで、基板表面の全面に対して、光源からの光をより光量を均一に照射することが可能となる。そのため、真空紫外光を含む光によるレジスト膜の感度の調整を基板表面において適切に行うことができる。
【0017】
前記光量抑制部材は、前記照射領域のうち中央部よりも外周部において、単位面積あたりの光の照射強度が大きくなるように光量の勾配を形成する態様とすることができる。
【0018】
回転する基板に対して光源からの光を照射する場合、光量抑制部材によって照射領域のうち中央部よりも外周部において、単位面積あたりの光の照射強度が大きくなるように光量の勾配を形成することで、基板の中央部と外周部とでの周速度の差に由来する光量の差を調整することができるため、光源からの光をより光量を均一に照射することが可能となる。
【0019】
前記光量抑制部材は、厚さ方向に複数の開口が形成された有孔板を含み、前記中央部よりも前記外周部の開口率を大きくすることで、光量の勾配を形成する態様とすることができる。
【0020】
上記のように、中央部よりも外周部において有孔板の開口率を大きくすることで光量の勾配を形成する場合、より簡単な構成で基板の中央部と外周部とでの光量の差を調整することができる。
【0021】
前記遮光部材は、平面視において前記基板の中心と重なる位置には開口が形成されていない態様とすることができる。
【0022】
光源からの光は、遮光部材よりも下方でも拡散される。そのため、平面視において基板の中心と重なる位置には遮光部材の開口が形成されていないとすることで、基板の中心において光源からの光が集中することを防ぐことができる。
【0023】
前記光源は、光軸が前記基板表面に対して傾斜している態様とすることができる。
【0024】
光源の光軸が基板表面に対して傾斜している場合、光源と基板との距離を小さくしながら、微弱光の真空紫外光を含む光を基板表面に対して照射することが可能となる。そのため、レジスト膜露光時の感度調整を適切に行うことができる。
【0025】
一つの例示的施形態において、基板処理方法は、EUVリソグラフィ用レジスト材によるレジスト膜が形成された基板に対して、露光処理前に光源から真空紫外光を含む光を照射することと、前記照射することにおいて、前記光源からの光の光路上に設けられた光量抑制部材によって、前記基板表面に到達する光の光量を、照射領域において全体的に微弱光に抑制することと、を有し、前記真空紫外光を含む光は、波長10nm~200nmに含まれる少なくとも一部の帯域の連続したスペクトル成分を含む。
【0026】
上記の基板処理方法によれば、光量抑制部材によって照射領域において微弱光に調整された真空紫外光を含む光が、基板表面に照射される。そのため、微弱光の真空紫外光を含む光を基板表面に対して照射することによるレジスト膜露光時の感度調整を適切に行うことができる。その結果、基板における露光時の感度を面内で均一にすることが可能になる。
【0027】
前記照射することにおいて、前記基板を回転しながら基板を支持し、前記照射することにおいて、前記光源と前記基板との間の位置に設けられた遮光部材によって、前記基板の表面面積に対して小さい面積であって、前記基板の外周側に向かって大きくなるような照射領域を前記基板表面に形成することをさらに含む態様とすることができる。
【0028】
上記のように、基板表面に前記照射領域を形成する遮光部材を用いて、回転する基板に対して光源からの光を照射する構成とすることで、基板表面の全面に対して、光源からの光をより光量を均一に照射することが可能となる。そのため、真空紫外光を含む光によるレジスト膜の感度の調整を基板表面において適切に行うことができる。
【0029】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0030】
[基板処理装置の構成]
(第1の構成例)
図1は、本実施形態の基板処理装置の第1の構成例を示す模式図(縦断側面図)である。図1に示す基板処理装置1は、ワークWに対して処理用の光を照射する。例えば、基板処理装置1は、ワークWの表面に形成されたレジスト膜またはレジストパターンに対し真空紫外光(VUV光:Vacuum Ultra Violet Light)を含む光を照射するように構成されている。基板処理装置1による真空紫外光を含む光の照射によって、これらのレジスト膜の露光時の感度を向上させ得る。また、真空紫外光を含む光を照射することによって、露光・現像処理によって得られるレジストパターンの表面のラフネスも改善され得る。
【0031】
処理対象のワークWは、例えば基板、あるいは所定の処理が施されることで膜および回路等が形成された状態の基板である。ワークWに含まれる基板は、一例として、シリコンを含むウエハである。ワークW(基板)は、一例として円板状を呈するが、円形の一部が切り欠かれていたり、多角形などの円形以外の形状を呈していてもよい。処理対象のワークWは、ガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)などであってもよく、これらの基板等に所定の処理が施されて得られる中間体であってもよい。
【0032】
基板処理装置1では、ワークWの表面に対して処理用の光L1を照射する機能を有する。一例としては、基板上にSOC膜(Silicon-on-Carbon)およびSOC膜上のSOG膜(Silicon-on-Glass)上にレジスト膜を形成した後に、露光・現像処理を行うことによって所定のパターンのレジストパターンが形成される。レジストパターンは下層膜であるSOC膜およびSOG膜をエッチングしてこれらの下層膜にパターンを形成するためのマスクパターンである。基板処理装置1は、例えば、レジストパターンが形成されたワークWの表面に対して処理用の光L1を照射することによって、レジストパターンの表面の荒れを改善する機能を有している。一方、本実施形態では、レジスト膜を形成した後、露光・現像処理を行う前のワークWに対して基板処理装置1による処理用の光L1の照射が行われる場合について説明する。
【0033】
なお、本実施形態に係る基板処理装置1では、レジストパターンの形成に使用されるレジスト材がEUVレーザーを露光光源とするEUVリソグラフィに適した材料である場合について説明する。なお、EUVレーザー(Extreme Ultraviolet)とは、波長13.5nmのレーザーである。レジスト材によるレジスト膜が形成されたワークWに対して基板処理装置1を用いて所定の条件で上記のVUV光を含む光の照射を行う。この結果、その後の露光処理における感度が向上する。さらに、露光・現像処理によってレジストパターンを形成した際のレジストの表面の荒れが改善される。また、このレジストパターンをマスクとしてエッチングを行った結果のパターンについても表面の荒れが改善され得る。
【0034】
基板処理装置1の各部について説明する。基板処理装置1は、図1に示されるように、処理室20と、光照射機構40(光源部)と、光量調整機構50と、コントローラ100(制御部)とを備える。
【0035】
処理室20は、筐体21(処理容器)と、搬送口22と、回転支持部25と、ガス供給部30と、ガス排出部32と、雰囲気調整部34と、を含む。筐体21は、例えば大気雰囲気中に設けられた真空容器の一部であり、搬送機構(不図示)によって搬送されたワークWを収納可能に構成されている。すなわち、筐体21は内部でワークWに係る処理を行う処理容器として機能する。なお、筐体21内は、後述のように、透光板53によってその上下が区切られていてもよい。
【0036】
基板処理装置1では、筐体21内にワークWが収納された状態でワークWに対する処理が行われる。筐体21の側壁には、搬送口22が形成されている。搬送口22は、筐体21に対してワークWを搬入出するための開口である。搬送口22は、ゲートバルブ23によって開閉される。
【0037】
回転支持部25は、筐体21において、コントローラ100の指示に基づいてワークWを回転させながら保持する機能を有する。回転支持部25は、例えば、保持部26と、回転駆動部27と、を有する。保持部26は、レジストパターンが形成された表面を上にして水平に配置されたワークWの中央部分を支持し、当該ワークWを例えば真空吸着等によって保持する。回転駆動部27は、ワークWを保持した保持部26を当該ワークWと共に鉛直な軸線A1まわりに回転させる機能を有する。回転駆動部27は、例えば電動モータを動力源とする回転アクチュエータである。
【0038】
ガス供給部30は、筐体21に形成された貫通孔21aを介して筐体21内に不活性ガス(例えば、アルゴン、窒素など)を供給するように構成されている。ガス供給部30は、ガス源30aと、バルブ30bと、配管30cとを有する。ガス源30aは、不活性ガスを貯留しており、不活性ガスの供給源として機能する。バルブ30bは、コントローラ100からの動作信号に基づいて動作し、配管30cを開放および閉塞させる。配管30cは、上流側から順に、ガス源30a、バルブ30bおよび貫通孔21aを接続している。
【0039】
ガス排出部32は、筐体21に形成された貫通孔21bを介して筐体21からの気体を排出する。ガス排出部32は、真空ポンプ32aと、配管32cとを有する。真空ポンプ32aは、筐体21内から気体を排出する。配管32cは、貫通孔21bと真空ポンプ32aとを接続している。
【0040】
雰囲気調整部34は、筐体21に形成された貫通孔21cを介して筐体21内を大気雰囲気に調整し得る。雰囲気調整部34はバルブ34bと配管34cを有する。バルブ34bは、コントローラ100からの動作信号に基づいて動作し、配管34cを開放および閉塞させる。配管34cは、貫通孔21cを大気雰囲気と接続し得る。すなわち、バルブ34bを開放した際には、筐体21内が大気雰囲気に調整される。
【0041】
光照射機構40は、筐体41と、光源42と、スイッチ43と、を含む。筐体41は、筐体21の上部に設けられている。光源42は筐体41内に収容される。図1では、光源42は、保持部26の回転軸である軸線A1上に配置されている。光源42により、保持部26により保持されたワークWの表面全体に光が照射される。スイッチ43は、光源42の点灯のオンオフを切り替えるために設けられていてもよい。スイッチ43の動作は、例えば、コントローラ100によって制御される。なお、光源42の配置例は一例であり、適宜変更される。なお、詳細は後述するが、光源42とワークWの位置関係を調整することで、ワークWに対して照射する光の光量を調整してもよい。
【0042】
光源42は、例えば、115nm~400nmの波長範囲の光を含む光を照射する。一例として、光源42は、115nm~400nmの連続スペクトルをなす光を照射する。「連続スペクトルをなす光」とは、波長10nm~200nm(真空紫外光(VUV光)の波長域に対応する)に含まれる少なくとも一部(例えば、波長幅が10nm以上)の帯域の連続したスペクトル成分を含む光を含んでいればよい。また、光源42から出射する光は、VUV光に加えて、VUV光よりも波長が大きい近紫外光(近紫外線)を含んでいてもよい。一例として、光源42からの光は波長160nm以下の帯域の光を含む構成とすることができる。このように、少なくともVUV光を含んで光源42から出射される光を「VUV光を含む光」という場合がある。
【0043】
光源42は、例えば重水素ランプであり、波長が200nm以下のVUV光を照射するように構成されていてもよい。連続スペクトルのピークの波長は、例えば、160nm以下であってもよいし、150nm以上であってもよい。また、光源42からの光は、複数のサブピークを有する連続スペクトルをなす光であってもよい。なお、光源42からの光は、連続スペクトルに限定されるものではなく、例えば、115nm~400nmの波長範囲の1以上の波長の光を含んでいる。「特定の波長範囲の光を含む」とは、当該波長範囲に含まれる1以上の波長の光を含むことをいう。
【0044】
光源42から照射される光のスペクトルの波長域は比較的広いため、ワークW上のレジスト膜は様々な波長の光のエネルギーを受けることになる。その結果、レジスト膜の表面では様々な反応が起こる。具体的には、レジスト膜を構成する分子中の様々な位置における化学結合が切断されることで、レジスト膜の露光に対する感度が上昇する。そのため、より少ない露光量であっても露光が適切に行われる。また、上述の化学結合の切断によって様々な化合物が生成するため、光照射前にレジスト膜中に存在していた分子が持つ配向性が解消される。その結果、レジスト膜における表面自由エネルギーが低下し、内部応力が低下する。つまり、光源として光源42を用いることで、レジスト膜の表面の流動性が高くなりやすく、その結果として、レジストパターンを形成した際の表面の荒れの改善効果を向上させることができる。
【0045】
なお、光源42からVUV光を含む光を照射する場合、ワークW上のレジスト膜が受ける光のエネルギーに偏りが生じると、VUV光が照射されたワークW表面においてレジストの特性に偏りが生じる可能性がある。そのため、VUV光を含む光は、ワークW表面全体においてできるだけ均等に照射されることが求められる。また、光源42からの光の照射によってワークW表面のレジスト膜の特性を調整しようとする場合、光の照射量が需要となる場合がある。そのため、基板処理装置1では、光量調整機構50を用いて光量の調整を行う。
【0046】
光量調整機構50は、上述のとおり、光源42から照射される光L1の光路上において、光源42から照射される光の光量を調整する機能を有する。図1に示す例では、光量調整機構50として、シャッター51、有孔板52、透光板53、および、遮光板54を有する。
【0047】
シャッター51は、光源42からの光L1がワークWへ到達する状態と、到達したい状態とを切り替える機能を有する。シャッター51は、例えば、光L1の光路上に配置可能な遮蔽板51aと、遮蔽板51aを移動可能に支持する支持部51bとを有する。遮蔽板51aは、光源42からの光L1を全て塞ぐことが可能な大きさとされている。また、支持部51bは、例えば、遮蔽板51aが光L1の光軸に対して直交した状態で、光路上と光路以外の領域との間で遮蔽板51aを移動可能に支持する。支持部51bによって遮蔽板51aを移動させることで、光源42からの光L1がワークWに到達する状態と、到達しない状態とを切り替えることができる。なお、図1では、遮蔽板51aが光路上に配置荒れた状態を示している。
【0048】
有孔板52は、光源42から照射される光L1の光路上に設けられ、光源42からの光L1を減光させる機能を有する。つまり、有孔板52は、光量抑制部材として機能し得る。有孔板52は、例えば、図2に示すように、厚さ方向に複数の開口52aが形成された板である。具体的には、有孔板52としては、例えば、複数の開口が多数形成されたパンチングメタルを用いることができる。なお、有孔板52の全面において複数の開口が設けられている必要はなく、少なくとも光L1が照射される範囲において有孔板52としての機能が発揮できるように開口が設けられているよい。有孔板52の開口率(光L1の照射範囲での開口率)は、例えば、1%~50%程度とすることができる。有孔板52に設けられる開口の形状および大きさは特に限定されないが、例えば、有孔板52を通過した光L1は、通過前の光と比べて波長分布が同程度で、強度が全体的に弱くなるような有孔板52が選択され得る。
【0049】
透光板53は、シャッター51よりも下方(光源42から離間した側)に設けられて、光L1を透過させる、所謂仕切壁としての機能も有する。すなわち、透光板53は、筐体21内の空間を、光源42側とワークW側とに区画するように配置される。これにより、透光板53よりも下方の空間が、上方の空間とは独立した閉じた空間となる。ガス供給部30、ガス排出部32、および、雰囲気調整部34を、透光板53よりも下方に配置した場合、透光板53よりも下方のワークWが存在する空間における雰囲気の調整が適切に行われ得る。透光板53は、例えば、ガラス(例えば、フッ化マグネシウムガラス)であってもよい。なお、透光板53全体が光L1を実質的に100%透過可能でなくてもよく、少なくとも光L1の光路上が光L1を透過可能であればよい。また、透光板53として光L1を減衰させる材料を用いることで、透光板53についても、光量抑制部材としての機能を有する構成としてもよい。
【0050】
遮光板54は、光源42から照射される光L1の照射範囲(ワークW表面における光L1の到達範囲)を調整する、遮光部材としての機能を有する。図1に示す例では、遮光板54によって、光源42からの光L1がワークWの全面に到達するように、光L1の照射範囲が調整されている。なお、遮光板54の形状は、ワークWに対する光源42の配置によって変更され得る。また、ワークW表面における光L1の照射範囲を照射領域ARという。図1に示す例では、ワークWの表面全体が照射領域ARとなる。
【0051】
光源42から出射された光L1は、光量調整機構50を経ることで、光量が抑制され、その結果、微弱光となる。本実施形態において、「微弱光」とは、ワークWに対して光を照射した際のワークWの温度の変化は、外部の温度(筐体21外の温度、室温)に対して1℃未満に抑えられる程度の光である。また、光量調整機構50を経た後の光L1は、ワークW表面における光L1の照射領域ARの全体において微弱光に調整され得る。
【0052】
(第2の構成例)
次に、光源42の配置を変更した第2の構成例に係る基板処理装置1Aについて、図3を参照しながら説明する。
【0053】
基板処理装置1Aでは、回転支持部25によってワークWを回転することを前提として、光源42の照射位置をワークW全体ではなく、一部に区切った構成としている。具体的には、光源42の光軸A2が、ワークWの回転軸A1に対してワークWの径方向に沿って外側に移動した配置となっている。図3に示す例では、光源42からの光L1は、ワークWの中央付近を照射しつつ、ワークWの一端(図3では右側端部)が照射可能な程度に、光軸A2が移動されている。この場合、ワークWの全面に対して光源42からの光L1を照射しないため、光源42とワークWとの距離を近くすることができる。
【0054】
なお、ワークWの回転軸A1と光軸A2との距離をどの程度とするかは、光源42とワークWとの距離にもよるが、例えば、回転軸A1と光軸A2との距離がワークWの半径に対して10%~100%程度となるように調整することが考えられる。
【0055】
なお、基板処理装置1Aの構成としながら、ワークWの全面に対して光源42からの光を均一に照射しようとする場合、特に、遮光板56の形状を調整してワークWへの光源42からの光の照射量を調整することが求められる。
【0056】
図4は、基板処理装置1Aにおいて用いられ得る遮光板56の形状の一例を示している。遮光板56は、光源42からの光を通過させる開口56aを含んで構成される。このとき、開口56aを、例えば、平面視においてワークWの中心に対応する保持部26の軸線A1を頂角とし、ワークWの径方向に延びる二等辺56b,56bを有する二等辺三角形としてもよい。この場合、二等辺三角形の底辺56cがワークWの周縁Wpを超えた位置となるように、二等辺56b,56bの長さが設定される。図4の例では、底辺56cがワークWの周縁Wpと重なる位置とされている。ただし、実際には、図3等に示すように、遮光板56よりも下方でも光L1は拡がるので、遮光板56の配置に応じて、開口56aの形状および大きさが設定される。
【0057】
回転支持部25によって所定の回転速度(角速度)でワークWを回転させながら光源42から光L1を照射した場合、ワークWの中央付近と比べて周縁では周速度が大きくなる。この点を考慮して、図4に示すように、光源42からの光の照射領域がワークWの中心から周縁Wpへ向けて拡がるように、つまり、遮光板56の形状および大きさが設定され得る。このような形状とすると、ワークW上での照射領域AR(図3参照)は、概略三角形状となる。
【0058】
なお、図3では、ワークWの中心を含むある程度広い範囲に光L1の照射領域ARが設定されている例を示している。光源42から照射される光の強度分布等に応じて、ワークW表面に照射される光の強度が均一になるように、照射領域を調整してもよい。
【0059】
照射領域ARを調整することで、ワークW表面の各位置に照射される光L1の光量をより均一に調整することが可能となる。そのため、光源42から出射される光の光量分布に応じて、照射領域ARを調整してもよい。
【0060】
(コントローラ)
基板処理装置1のコントローラ100は、回転支持部25、ガス供給部30、ガス排出部32、雰囲気調整部34、光照射機構40、光量調整機構50(特に、シャッター51)を制御する。
【0061】
また、コントローラ100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。例えばコントローラ100は、図5に示す回路120を有する。回路120は、一つ又は複数のプロセッサ121と、メモリ122と、ストレージ123と、入出力ポート124とを有する。ストレージ123は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、後述の基板処理手順を基板処理装置1に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスクおよび光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ122は、ストレージ123の記憶媒体からロードしたプログラムおよびプロセッサ121による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ121は、メモリ122と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。入出力ポート124は、プロセッサ121からの指令に従って、コントローラ100が制御する各部との間で電気信号の入出力を行う。
【0062】
なお、コントローラ100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えばコントローラ100の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0063】
[基板処理方法]
次に、基板処理装置での動作を含む基板処理方法について、説明する。本実施形態に示す基板処理方法は、レジスト膜が形成されたワークWに対して、基板処理装置1(または基板処理装置1A)を用いて露光前にVUV光を含む光を照射する。
【0064】
図6は、ワークWに対してレジストパターンを形成する際の手順をフロー図として示している。
【0065】
ステップS01では、ワークWの表面に対してレジスト液を塗布し、レジスト膜を形成する。レジスト膜の形成方法は特に限定されない。レジスト膜を形成する前のワークWの表面には、下層膜等が形成されていてもよい。この段階ではレジスト膜がワークWの表面の全面に対して形成される。
【0066】
ステップS02では、基板処理装置1を用いてレジスト膜が形成されたワークWの表面にVUV光を含む光を照射する。筐体21で保持されたワークWに対して、VUV光として光源42からの光L1を照射する。光L1はVUV光を含む光である。以下の実施形態では、光源42から出射される「VUV光を含む光L1」を単に「VUV光」という場合がある。以下、ステップS02における基板処理装置1の操作について説明する。
【0067】
図7は、筐体21内の圧力の経時変化の概略を示すグラフである。なお、「筐体21内」とは、ワークWが存在する空間内(透光板53で区画された空間のうち、ワークWが存在する下方の空間)を指す。また、図7のグラフの横軸は、処理中の経過時間を示し、縦軸は処理容器となる筐体21内の圧力(単位:Pa)を示しており、概ね対数軸を模式的に示したものとなっている。
【0068】
まず、ガス供給部30およびガス排出部32の動作が停止された状態で、搬送機構によりワークWが筐体21内に搬入される。回転支持部25の保持部26にワークWが載置されると、ゲートバルブ23が閉じられて筐体21内が気密にされる。このとき、筐体21内は、例えば標準気圧の大気雰囲気(図7の時刻t0)とされる。その後、ガス排出部32の動作によって、筐体21内の圧力を低くする。
【0069】
減圧が進行して、筐体21内の圧力が1Paになると(時刻t1)、当該時間が所定時間維持される。1Paの減圧状態を暫く維持した後(時刻t2)、ガス供給部30のバルブ30bが開かれて筐体21内にArガスが供給される。これにより、筐体21内にArガス雰囲気が形成されると共に、当該筐体21内の圧力が上昇する。なお、減圧速度および昇圧速度は、ガス供給部30およびガス排出部32の動作によって制御することができる。また、減圧速度および昇圧速度は、一定であってもよいし、途中で変動させてもよい。
【0070】
Arガスにより例えば筐体21内の圧力が10000Paに達すると、筐体21内の圧力を維持した状態で、光源42からワークWに対してVUV光を含む光が照射される(時刻t3)。このとき、基板処理装置1Aのように、ワークWを回転させながらVUV光を含む光を照射することが想定されている場合には、回転支持部25によってワークWを回転させた状態で照射を行う。なお、基板処理装置1のように、光源42からの光がワークW全体に到達する場合には、ワークWを回転させなくてもよい。所定の時間、例えば30秒間、光源42から光が照射されると、当該光照射が停止される(時刻t4)。その後、ガス供給部30およびガス排出部32の動作が停止され、筐体21内の圧力が大気雰囲気に戻された後に、ワークWが筐体21内から搬出される。以上により、基板処理装置1によるワークWの処理が終了する。
【0071】
VUV光を含む光の照射時における単位面積あたりの光量(積算照射量、または、線量という場合がある)は、レジストパターンを照射した後にワークWの表面に対してVUV光を含む光を照射する場合と比較して小さくされる。具体的には、露光・現像処理によってレジストパターンを形成した後にワークWの表面に対してVUV光を含む光を照射して、表面のラフネス改善を図る場合と比較して、VUV光を含む光の照射量が1%~2%となるように調整される。例えば、レジストパターンに対してVUV光を含む光を照射する場合には、VUV光を含む光の光量を25mj/cm~100mj/cmと調整し得る。一方、露光処理を行う前のレジスト膜に対してVUV光を含む光を照射する場合には、VUV光を含む光の光量が1mj/cm~2mj/cm程度に調整し得る。このように、露光処理前のレジスト膜に対してVUV光を含む光を照射する場合には、照射光の光量が小さく調整され得る。
【0072】
VUV光を含む光の照射中は、ワークWの温度上昇が抑制されていてもよい。上記のように、VUV光を含む光の光量が小さくなるように調整され、且つ筐体21内の圧力が大気圧より小さくなるように調整されていると、ワークW自体の温度上昇が防がれる。そのため、ワークWの温度が雰囲気温度(例えば、筐体21の外部の温度)と略同等の状態で上記のVUV光を含む光の照射が行われ得る。ワークWの温度が(外部の)雰囲気温度と略同等の状態で照射が行われる場合、ワークWの温度変化の影響を受けてレジスト膜の特性が変化することが防がれる。一例として、VUV光を含む光の照射時のワークWの温度の変化は、外部の温度(筐体21外の温度、室温)に対して1℃未満に抑えられていてもよい。
【0073】
ワークWの単位面積当たりの光の照射量を小さくする方法としては、例えば、光源42から出射される光の光量自体を小さくすること(電流値を調整すること)が挙げられる。また、その他の方法として、ワークWの表面と光源42との距離を小さくすること(ワークWに対して光源42が遠くなるように調整すること)、照射時間を短くすること等の公知の方法が挙げられる。ワークWの表面と光源42との距離を変えることと共に、光源42からの光の照射中に光路周辺の圧力を変えることでも、ワークWの表面に到達する光のエネルギーを調整することができる。これらの手法を組み合わせて単位面積当たりのVUV光を含む光の照射量を変化させてもよい。
【0074】
基板処理装置1では、有孔板52もワークWの単位面積当たりの光の照射量の調整に寄与する。有孔板52の開口率に応じて、光源42からの光量が減少するため、ワークWの単位面積当たりの光の照射量が小さくなる。また、基板処理装置1Aでは、有孔板52に加えて、遮光板54の形状もワークWの単位面積当たりの光の照射量の調整に寄与する。
【0075】
なお、上述したように、基板処理装置1では、光源42からのワークWへの光の照射時に、ガス供給部30によるガスの供給と、ガス排出部32によるガスの排出とが行われる。したがって、筐体21内の圧力が維持された状態でArガスの入れ替えが発生しているといえる。
【0076】
光源42からの光の照射の間(時刻t3~時刻t4の間)、筐体21内の圧力は一定であってもよいし、徐々に変化させてもよい。図6に示す例では、光源42から光を照射する間は、ワークW表面からのデガス(アウトガス)を抑制するために、筐体21内の圧力を10000Paとしている。しかしながら、光源42からの光の照射をしている間にデガスの発生量が徐々に少なくなることが考えられる。この場合、筐体21内の圧力を徐々に小さく変化させる制御を行ってもよい。このような構成とすることで、より真空に近い状態でワークWに対する光の照射を行うことが可能となる。
【0077】
ステップS03では、VUV光を含む光を照射した後のワークWに対して加熱処理を行う。この段階での加熱処理は、固化していないレジスト膜に対する加熱処理であり、PAB(Pre Applied Bake)といわれる熱処理である。
【0078】
ステップS04では、加熱処理(PAB)後のワークWに対する露光処理を行う。露光処理では、液浸露光等の方法を用いて、ワークWに形成されたレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する。
【0079】
ステップS05では、露光処理後のワークWに対して加熱処理を行う。この段階での加熱処理は、固化していないレジスト膜に対する加熱処理であり、PEB(Post Exposure Bake)といわれる熱処理である。
【0080】
ステップS06では、加熱処理(PEB)後のワークWに対する現像処理を行う。現像処理では、ワークWの表面上に現像液を塗布した後、これをリンス液により洗い流す。これによりワークWの表面上に所定のパターンが形成される。なお、現像処理後に再度加熱処理(PB:Post Bake)が行われてもよい。なお、ステップS01およびステップS03~S06で説明した、塗布処理、加熱処理(PAB,PEB)、露光処理、および現像処理は、例えば公知の塗布・現像装置および露光装置を含む基板処理システム等を用いて行うことができる。
【0081】
上記の一連の処理を行うことによって、従来の基板処理方法と比較して、レジスト膜における露光感度が向上し、さらに露光・現像処理後のレジストパターンのラフネスが改善する効果が得られる。
【0082】
[評価結果]
上記の構成とすることで、微弱光とされた光源42からの光L1をワークW表面に対して均一に照射することができる。この点について評価した結果を図8に示す。
【0083】
図8(a)~図8(c)は、ワークW表面における光源42からの光L1の分布を評価した結果を模式的に示している。図8(a)~図8(c)では、ワークWの中心を位置0とし、ワークWの外周部(周縁Wpに相当する部分)を「+」「-」として表示している。
【0084】
図8(a)は、基板処理装置1において、有孔板52を用いた減光を行わずにワークWに対して光を照射した場合の光量の分布を示している。また、図8(b)は、基板処理装置1のように、開口率が10%の有孔板52を配置した場合の光量の分布を示している。さらに、図8(c)は、基板処理装置1Aのように、光源42の光軸A2がワークWの中心(軸線A1に対してずれた位置)とした上で、遮光板56を用いた場合の光量の分布を示している。図8(c)に示す例では、有孔板52の開口率は19%であり、遮光板56における開口56aの形状は、図4に示すように、中央部が頂角となる二等辺三角形状であって、頂角を60°としたことによって実質的に正三角形状であった。
【0085】
図8(a)と図8(b)とを比較した結果から、有孔板52を設けることによって、光量を大幅に抑制できることが確認された。また、有孔板52を用いることで、ワークWの中央部と外周部との間での光量の偏りも抑制された。ただし、図8(b)に示す結果においても外周部と比べて中央部では、ワークW表面が受ける光L1の光量が大きいことが確認された。これに対して、図8(c)では、ワークWの中央部と外周部との間で、ワークW表面が受ける光L1の光量の差が小さくなることが確認された。
【0086】
このように、有孔板52を用いることで、光量を大幅に抑制できることができた。さらに、ワークWを回転させながら照射をする場合、遮光板の形状を調整することで、光源42からの光をより均一に(光量の差を小さくした状態で)照射できることが確認された。
【0087】
[作用]
上記の基板処理装置および基板処理方法によれば、光量抑制部材として機能する有孔板52を用いることで、微弱光に調整された真空紫外光を含む光が、基板表面の照射領域ARに照射される。そのため、微弱光の真空紫外光を含む光を基板表面に対して照射することによるレジスト膜露光時の感度調整を適切に行うことができる。その結果、基板における露光時の感度を面内で均一にすることが可能になる。
【0088】
露光前に真空紫外光を含む光を照射する場合、微弱光に調整した光を照射することが求められ得る。しかしながら、光源42から真空紫外光を含む光を安定して出力しようとすると、光量をある程度高くした状態での出力が求められる。基板に到達する光の光量を減らすためには、光源と基板との距離を大きくすることも考えられる。しかしながら、光源と基板との距離を大きくすると、装置を大型化(例えば、高背化)する必要がある。これに対して、上記の構成等することで、光量抑制部材を用いて光量を微弱光に抑制した状態で、基板に対して真空紫外光を含む光を照射することができる。したがって、装置の大型化を防ぎながら、基板における露光時の感度を適切に調整することができる。
【0089】
また、上記実施形態のように、光量抑制部材として、厚さ方向に複数の開口52aが形成された有孔板52を用いてもよい。この場合、光源42からの真空紫外光を含む光について、そのスペクトル成分を変化させずに、微弱光として基板に対して照射することが可能となる。そのため、真空紫外光を含む光によるレジスト膜の感度の調整を適切に行うことができる。
【0090】
また、光量抑制部材として、例えば、透光板53のように、光源42からの光の光量を微弱光に抑制して透過させる部材を含んでいてもよい。このような光量抑制部材を用いる場合、光源からの光の分布を維持した状態で、微弱光として基板に対して照射することが可能となるため、真空紫外光を含む光によるレジスト膜の感度の調整を適切に行うことができる。つまり、有孔板52のように開口52aのみ光が通過可能という構成と比較して、光が通過可能な位置が規制されていないため、光の偏りを減らすことができる。
【0091】
また、上記の基板処理装置1Aでは、基板の表面面積に対して小さい面積であって、且つ、基板の外周側に向かって大きくなるように、前記基板表面に前記照射領域ARを形成する遮光部材としての遮光板56を用いている。そして、光源42からの光を、遮光板56を介して照射領域ARを調整した後に、回転する基板に対して照射している。このような構成とすることで、遮光板56を調整することで、基板表面の全面に対して、光源42からの光をより光量を均一に照射することが可能となる。そのため、真空紫外光を含む光によるレジスト膜の感度の調整を基板表面において適切に行うことができる。
【0092】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、および変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0093】
例えば、遮光部材としての遮光板の形状は適宜変更することができる。図9(a)~(c)では、遮光板の2種類の変形例を示している。
【0094】
図9(a)に示す遮光板56Xは、遮光板56の開口56aと比較して、開口56aの形状が異なっている。すなわち、遮光板56Xは、平面視においてワークWの中心と重なる位置(軸線A1に対応する位置)には開口56aが形成されていない。図1および図3に示すように、光源42からの光は、遮光部材としての遮光板54,56よりも下方でも拡散される。一方、ワークWの中心は、ワークWが回転してもほとんど位置が変わらないため、ワークWの中心は、その周囲と比較して光源42からの光L1の到達量が大きくなり得る。これに対して、平面視においてワークWの中心と重なる位置には遮光板56Xの開口56aが形成されていないとすることで、ワークWの中心において光源42からの光が集中することを防ぐことができる。図9(a)に示す遮光板56Xでは、開口56aの形状を三角形ではなく台形とすることで、ワークWの中心と重なる位置に開口56aが形成されないようにしているが、開口の形状は適宜変更することができる。例えば、中央側の開口の端部を曲線状としてもよい。
【0095】
図9(b)および図9(c)に示す遮光板56Yは、通過する光の光量を中央部と外周部とで調整している構成を示している。遮光板56Yは、開口56aのほかに、有孔部56eを有している。そのため、遮光板56Yは、ワークWへ到達する光の光量を微弱光に調整する、光量抑制部材としての機能も有している。また、遮光板56Xと同様に、開口56aの領域は台形とされていて、ワークWの中央部に対応する側に有孔部56eが形成されている。この結果、遮光板56Yは、単位面積あたりの光の照射強度が大きくなるように光量の勾配を形成する機能を有している。
【0096】
回転するワークWに対して光源42からの光を照射する場合、外周部よりも中央部のほうが周速度が小さくなるため、光源42からの光が照射される時間帯が長くなりがちである。これに対して、照射領域ARのうち中央部よりも外周部において、単位面積あたりの光の照射強度が大きくなるように光量の勾配を形成すると、周速度の差に由来する光量の差を調整することができる。そのため、光源42からの光をより光量を均一な状態で照射することが可能となる。
【0097】
特に、遮光板56Yのように、厚さ方向に複数の開口が形成された有孔部を含む有孔板が光量抑制部材に含まれル場合には、中央部よりも外周部の開口率を大きくすることで、光量の勾配を形成してもよい。
【0098】
なお、図9では、遮光板56Yに有孔部56eを設ける例を示したが、有孔板52において、中央部よりも外周部の開口率を大きくすることで、単位面積あたりの光の照射強度が大きくなるように光量の勾配を形成してもよい。
【0099】
その他の変形例として、光源は、光軸A2が基板表面に対して傾斜していてもよい。光源42の光軸A2が基板の表面に対して傾斜している場合、光源42と基板との距離を小さくしながら、微弱光の真空紫外光を含む光を基板表面に対して照射することが可能となる。そのため、レジスト膜露光時の感度調整を適切に行うことができる。つまり、基板処理装置を低背化しながら、上記の構成を実現することができる。
【0100】
なお、光源を基板表面に対して傾斜した場合、光源42からの光の光量分布が、光軸A2が垂直な場合と比較して変化し得る。そのため、有孔板52、透光板53、遮光板54等を用いて、光量が適切な分布となるように、調整してもよい。
【0101】
また、上記の構成では、光源42とワークWとの間に、有孔板52、シャッター51、透光板53、遮光板54がこの順で配置される構成を説明したが、この順序は適宜変更できる。
【0102】
また、上記では、基板処理方法の一例を説明したが、例えば、VUV光の照射(S02)と加熱処理(S03)との順序は変更してもよい。また、露光前の加熱処理(S03)自体を行わない構成としてもよい。
【0103】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0104】
1,1A…基板処理装置、20…処理室、21…筐体、25…回転支持部、26…保持部、27…回転駆動部、30…ガス供給部、32…ガス排出部、34…雰囲気調整部、40…光照射機構、41…筐体、42…光源、50…光量調整機構、51…シャッター、52…有孔板、52a…開口、53…透光板、54,56,56X,56Y…遮光板、56a…開口、56e…有孔部、100…コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9