(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-25
(45)【発行日】2024-10-03
(54)【発明の名称】重水素回収方法及び重水素回収設備
(51)【国際特許分類】
C01B 4/00 20060101AFI20240926BHJP
C01B 5/02 20060101ALI20240926BHJP
C01C 1/00 20060101ALI20240926BHJP
C01C 1/02 20060101ALI20240926BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240926BHJP
C25B 1/27 20210101ALI20240926BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240926BHJP
H01L 21/322 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
C01B4/00 Z
C01B5/02 B
C01C1/00
C01C1/02 E
C25B1/04
C25B1/27
C25B9/00 A
C25B9/00 Z
H01L21/322 Z
(21)【出願番号】P 2021136855
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古村 直規
(72)【発明者】
【氏名】藤井 淳弘
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-130124(JP,A)
【文献】特開2011-146642(JP,A)
【文献】特開2013-170982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B
C01B
C01C
H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造工程における重水素ガスを含む排気ガス中に重水を発生させる重水発生工程
と、
前記重水発生工程の後に、前記重水発生工程において発生させた重水含有ガスから重水を分離する重水分離工程と、
前記重水分離工程の後に、前記重水から重水素ガスを発生させる重水素ガス発生工程と、
を含む、重水素回収方法。
【請求項2】
前記重水発生工程において、前記排気ガスと酸素ガスとを、酸素ガスのモル数/前記排気ガス中の重水素ガスのモル数=1~5となるように混合して重水を発生させる、請求項1に記載の重水素回収方法。
【請求項3】
前記重水発生工程において、触媒反応によって重水素ガスと酸素ガスを反応させて重水を発生させる、請求項2に記載の重水素回収方法。
【請求項4】
前記重水分離工程において、前記重水含有ガスを冷却し、重水を液化して分離する、又は前記重水含有ガスに含まれる重水を吸着剤に吸着させて分離する、
請求項1に記載の重水素回収方法。
【請求項5】
前記重水素ガス発生工程において、重水を電気分解して重水素ガスを発生させる、
請求項1に記載の重水素回収方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の重水素回収方法を実施するための重水素回収設備であって、
半導体製造工程における重水素ガスを含む排気ガス中の重水素ガスと酸素ガスとを反応させて重水を発生させる重水発生装置を備える、重水素回収設備。
【請求項7】
半導体製造工程における重アンモニアガスを含む排気ガスから重アンモニウム塩を生成する重アンモニウム塩生成工程を含む、重水素回収方法。
【請求項8】
前記重アンモニウム塩生成工程において、前記排気ガス中の重アンモニアガスと、硫酸、重硫酸、亜硫酸、重亜硫酸、リン酸及び重リン酸からなる群から選択される少なくとも1種とを反応させて前記重アンモニウム塩を生成する、
請求項7に記載の重水素回収方法。
【請求項9】
前記重アンモニウム塩生成工程の後に、前記重アンモニウム塩を熱分解又は電気分解して重アンモニアガスを発生させる重アンモニアガス発生工程を含む、
請求項7又は8に記載の重水素回収方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の重水素回収方法を実施するための重水素回収設備であって、
半導体製造工程における重アンモニアガスを含む排気ガスから重アンモニウム塩を生成する湿式スクラバー装置と、前記重アンモニウム塩を熱分解又は電気分解して重アンモニアガスを発生させる重アンモニアガス発生装置とを備える、重水素回収設備。
【請求項11】
半導体製造工程において、重アンモニアガス(ND3)及びシランガス(SiH4)を用いて成膜する工程から発生した排気ガスから重アンモニアガスを回収する重アンモニアガス分離工程と、
重アンモニアガスを回収した後の前記排気ガスからシランガスを除去するシランガス除害工程と
を含み、
前記重アンモニアガス分離工程において、
請求項7~9のいずれか1項に記載の重水素回収方法を実施する、重水素回収方法。
【請求項12】
請求項11に記載の重水素回収方法を実施するための重水素回収設備であって、
半導体製造工程において、重アンモニアガス(ND3)及びシランガス(SiH4)を用いて成膜する工程から発生した排気ガスから重アンモニウム塩を生成する湿式スクラバー装置と、
前記排気ガスからシランガスを除去するシランガス除害装置と、
を備える、重水素回収設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重水素回収方法及び重水素回収設備に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体業界においては、大規模集積回路(LSI;Large Scale Integration)製造における前工程の最終熱処理で水素シンタリングが行われる。水素シンタリングの目的は、金属酸化物半導体(MOS;Metal-Oxide-Semiconductor)構造中の半導体基板(ケイ素,Si)と酸化膜(二酸化ケイ素,SiO2)との界面に存在する化学的に不安定なダングリングボンドを安定化させるため、結合末端に水素付加させることである。水素シンタリングは、400~450℃の加熱水素ガスを、常圧で10分程度のパッシベーションを行うことが一般的である。しかし、この終端処理した水素原子は不安定であり、使用中に脱離しやすいことから、MOSの劣化要因である。そのため、移動度の小さい、すなわち、化学的に安定な重水素での終端処理がMOSの信頼性の向上に有効である。
デバイスの種類によっては、デバイス表面に保護膜を形成させるものがあり、その保護膜としてプラズマ窒化膜(以下「P-SiN膜」ともいう。)を用いる場合がある。P-SiN膜は、水分及びガスの透過防止を目的とし、水素シンタリングによるH2ガスも浸透しにくい。そのため、水素シンタリングにおいては、P-SiN膜中に水素原子を導入することが重要となる。P-SiN膜は、通常、水素化ケイ素(SiH4)ガス又はアンモニア(NH3)ガスを用いて高周波プラズマ中で~1μm程度成膜する。このため、重水素化ケイ素(SiD4)ガス又は重アンモニア(ND3)ガスを用いて成膜を行う研究が行われている。ダングリングボンドとなり得るN-H結合及びSi-H結合は相対値100:1程度であり、N-D結合とするのが劣化を抑えるためには一番効率がよい。よって、P-SiN膜中にN-D結合を形成させるためには、アンモニア(NH3)ガスではなく重アンモニア(ND3)ガスを用いる方がよい。
半導体業界において、重水素及び含重水素化合物の利用が増加傾向にある。重水素(D2)は水素(H2)に比べて存在比が少なく、非常に高価であるにもかかわらず、水素シンタリング及びP-SiN成膜に用いた重水素及び重水素化合物は空気中に排出されている。そのため、重水素を回収し、再利用することが、半導体デバイス製造の効率化に寄与する。
【0003】
特許文献1には、酸素イオン又は水素イオンが伝導する固体電解質を動作させて水蒸気を電気分解する水蒸気電解装置により水素を製造する水素製造方法において、原子炉や火力発電等の熱源やタービンの廃熱を用いて水蒸気を発生させる水蒸気発生段階と、前記水蒸気を前記固体電解質が動作する900K以上の温度に昇温する昇温段階と、900K以上に昇温した前記水蒸気を前記水蒸気電解装置に導いて前記水素を生成させる水素生成段階と、を含むことを特徴とする水素製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、水素を含む燃料と水との混合蒸気を発生させる原料供給系と、触媒を含み、原料供給系からの混合蒸気から水素を生成させる反応管と、反応管内で生成された水素を回収する生成ガス回収系とを備え、反応管は、製鉄プラントの製鉄炉からの排ガスが流れる排ガス流路ダクト内部に設けられ、この排ガス流路ダクト内部で、排ガスにより触媒の存在下で原料供給系からの混合蒸気を加熱しながら反応させて水素を生成させることを特徴とする水素製造装置が記載されている。
【0005】
特許文献3には、基板上に複数の第1膜および複数の第2膜を交互に形成し、前記第1膜および前記第2膜に開口部を形成し、前記開口部内の前記第1膜および前記第2膜の側壁に、第1絶縁膜、電荷蓄積層、第2絶縁膜、および半導体層を順番に形成する、ことを具備し、前記電荷蓄積層は、シリコン窒化膜を含み、前記第2絶縁膜は、シリコン酸窒化膜を含み、前記シリコン窒化膜および前記シリコン酸窒化膜の一方または両方は、シリコンと第1元素とを含む第1ガスと、窒素と重水素を含む第2ガスとを用いて形成される、半導体装置の製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献4には、半導体デバイスの製造工程に用いる重水を貯蔵容器内で貯蔵する方法において、重水中の全有機炭素及び金属を除去手段によって除去することにより、重水中の全有機炭素を20μg/L以下、金属を1μg/L以下に維持することを特徴とする重水の貯蔵方法、並びに、半導体デバイスの製造工程から排出される重水含有蒸気から重水を凝縮させて回収することを特徴とする重水分離方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-307290号公報
【文献】特開2008-013397号公報
【文献】特開2021-044486号公報
【文献】特開2011-146642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、半導体製造工程において用いられる重水素又はその化合物を回収し、再利用することが可能な重水素回収方法及び重水素回収設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 半導体製造工程における重水素ガスを含む排気ガス中に重水を発生させる重水発生工程と、
前記重水発生工程の後に、前記重水発生工程において発生させた重水含有ガスから重水を分離する重水分離工程と、
前記重水分離工程の後に、前記重水から重水素ガスを発生させる重水素ガス発生工程と、
を含む、重水素回収方法。
[2] 前記重水発生工程において、前記排気ガスと酸素ガスとを、酸素ガスのモル数/前記排気ガス中の重水素ガスのモル数=1~5となるように混合して重水を発生させる、[1]に記載の重水素回収方法。
[3] 前記重水発生工程において、触媒反応によって重水素ガスと酸素ガスを反応させて重水を発生させる、[2]に記載の重水素回収方法。
[4] 前記重水分離工程において、前記重水含有ガスを冷却し、重水を液化して分離する、又は前記重水含有ガスに含まれる重水を吸着剤に吸着させて分離する、[1]に記載の重水素回収方法。
[5] 前記重水素ガス発生工程において、重水を電気分解して重水素ガスを発生させる、[1]に記載の重水素回収方法。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の重水素回収方法を実施するための重水素回収設備であって、
半導体製造工程における重水素ガスを含む排気ガス中の重水素ガスと酸素ガスとを反応させて重水を発生させる重水発生装置を備える、重水素回収設備。
[7] 半導体製造工程における重アンモニアガスを含む排気ガスから重アンモニウム塩を生成する重アンモニウム塩生成工程を含む、重水素回収方法。
[8] 前記重アンモニウム塩生成工程において、前記排気ガス中の重アンモニアガスと、硫酸、重硫酸、亜硫酸、重亜硫酸、リン酸及び重リン酸からなる群から選択される少なくとも1種とを反応させて前記重アンモニウム塩を生成する、[7]に記載の重水素回収方法。
[9] 前記重アンモニウム塩生成工程の後に、前記重アンモニウム塩を熱分解又は電気分解して重アンモニアガスを発生させる重アンモニアガス発生工程を含む、[7]又は[8]に記載の重水素回収方法。
[10] [7]~[9]のいずれかに記載の重水素回収方法を実施するための重水素回収設備であって、
半導体製造工程における重アンモニアガスを含む排気ガスから重アンモニウム塩を生成する湿式スクラバー装置と、前記重アンモニウム塩を熱分解又は電気分解して重アンモニアガスを発生させる重アンモニアガス発生装置とを備える、重水素回収設備。
[11] 半導体製造工程において、重アンモニアガス(ND3)及びシランガス(SiH4)を用いて成膜する工程から発生した排気ガスから重アンモニアガスを回収する重アンモニアガス分離工程と、
重アンモニアガスを回収した後の前記排気ガスからシランガスを除去するシランガス除害工程と
を含み、
前記重アンモニアガス分離工程において、[7]~[9]のいずれかに記載の重水素回収方法を実施する、重水素回収方法。
[12] [11]に記載の重水素回収方法を実施するための重水素回収設備であって、
半導体製造工程において、重アンモニアガス(ND3)及びシランガス(SiH4)を用いて成膜する工程から発生した排気ガスから重アンモニウム塩を生成する湿式スクラバー装置と、
前記排気ガスからシランガスを除去するシランガス除害装置と、
を備える、重水素回収設備。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体製造工程において用いられる重水素又はその化合物を回収し、再利用することが可能な重水素回収方法及び重水素回収設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る重水素回収設備の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る重水素回収設備の概略構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る重水素回収設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
本発明において、質量数2の水素を重水素といい、その元素記号としてDを用いる。質量数1の水素を軽水素という場合がある。また、重アンモニアは化学式ND3で表される化合物を意味し、重アンモニウム塩はアンモニウム塩のアンモニウムカチオンの4つの水素原子のうち3個又は4個が重水素原子に置換された塩を意味する。重硫酸は化学式H2SO4で表される硫酸の2個の水素原子を重水素原子で置換した無機酸を意味する。重リン酸は化学式H3PO4で表されるリン酸(オルトリン酸)の3個の水素原子を重水素原子で置換した無機酸を意味する。
【0013】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、半導体製造工程における重水素ガスを含む排気ガスから重水素又はその化合物を回収するための重水素回収方法及び重水素回収設備である。
【0014】
<重水素回収設備>
図1に示す重水素回収設備101は、本発明の第1の実施形態に係る重水素回収設備である。重水素回収設備101は、半導体製造工程において排出された、重水素ガスを含む排気ガスG11から、重水素又はその化合物を回収するための設備である。
【0015】
重水素回収設備101は、重水発生装置11と、重水分離装置12と、重水素ガス発生装置13と、重水発生装置11に排気ガスG11を供給するための排気ガス導入ラインLG11と、重水発生装置11に酸素ガスO2を供給するための供給ラインLO2と、重水発生装置11で発生させた重水含有ガスG12を重水発生装置11から導出し、重水分離装置12に導入するための移送ラインLG12と、重水分離装置12で分離した重水D2Oを重水分離装置12から導出し、重水素ガス発生装置13に導入するための移送ラインLD2Oと、重水素ガス発生装置13から重水素ガスを導出するための導出ラインLD2と、重水分離装置12からの排気ガスG13を排出する排気ガス排出ラインLG13と、重水素ガス発生装置13からの排気ガスG14を排出するための排気ガス排出ラインLG14と、を備えている。
【0016】
(重水発生装置)
重水発生装置11は、排気ガスG11中の重水素ガスD2と外部から供給した酸素ガスO2とを反応させて重水含有ガスG12を生成するための装置であり、排気ガスG11中の重水素ガスD2を酸素ガスO2により酸化して重水D2Oを合成するための合成部(図示略)を有する。前記合成部における重水D2Oの合成は、重水素ガスD2を含む排気ガスG11と酸素ガスO2の混合ガスを触媒と接触させることにより行われるか、又は、重水素ガスD2を含む排気ガスG11と酸素ガスO2の混合ガスを燃焼させることにより行われる。
前記触媒としては、白金、パラジウム等の金属の単体、合金又は化合物が使用される。重水素ガスD2の酸化を触媒によって行う場合、前記混合ガスと触媒との接触面積をより大きくするため、触媒は多孔質となっていることが好ましい。
【0017】
(重水分離装置)
重水分離装置12は、重水発生装置11で生成した重水含有ガスG12から重水D2Oを分離するための装置であり、重水含有ガスG12から重水D2Oを分離するための分離部(図示略)を有する。前記分離部における重水D2Oの分離は、重水含有ガスG12を冷却器(図示略)によって冷却し、気体状態の重水D2Oを凝結させて液化することによって、又は、重水含有ガスG12中の気体状態の重水D2Oを吸着塔(図示略)に充填された乾燥剤に吸着することによって、行われる。分離部で分離した重水D2Oは、移送ラインLD2Oを通じて重水素ガス発生装置13に移送される。前記分離部で発生した排気ガスG13は、排気ガス排出ラインLG13を通じて系外に排出される。
なお、重水素を重水D2Oとして回収する場合には、前記分離部で分離した重水D2Oを重水素ガス発生装置13に移送せず、回収してもよい。
【0018】
(重水素ガス発生装置)
重水素ガス発生装置13は、重水分離装置12で分離した重水D2O(液体)から重水素ガスD2を発生させるための装置であり、重水D2Oから重水素ガスD2を発生させるための反応部(図示略)を有する。前記反応部における重水素ガスD2の発生は、重水D2Oを電気分解することによって、行われる。前記反応部で発生した重水素ガスD2は、導出ラインLD2を通じて回収される。前記反応部で発生した排気ガスG14は、排気ガス排出ラインLG14を通じて系外に排出される。
【0019】
<重水素回収方法>
以下では上述した本実施形態の重水素回収設備101を用いる重水素回収方法について説明する。
【0020】
(重水発生工程)
本実施形態の重水素回収方法は、半導体製造工程における重水素ガスを含む排気ガス中に重水を発生させる重水発生工程を含む。
前記重水発生工程は、
図1に示す重水素回収設備101の重水発生装置11において実施される。
重水発生装置11における重水発生工程は、重水発生装置11の合成部(図示略)において、排気ガスG11中の重水素ガスD
2と重水発生装置11の外部から供給される酸素ガスO
2とを反応させることにより行われる。重水素ガスD
2と酸素ガスO
2との反応は、具体的には、排気ガスG11と酸素ガスO
2を混合した混合ガスを触媒と接触させることによって、又は前記混合ガスを燃焼させることによって、行われることが好ましい。
前記触媒としては、白金又はパラジウムの単体、合金又は化合物が好ましい。触媒の具体例としては、パラジウム炭素触媒(Pd/C)が挙げられる。
前記混合ガスと前記触媒とを接触させる際の温度は特に限定されないが、400~580℃が好ましく、500~580℃がより好ましい。
【0021】
排気ガスG11中の重水素ガスD2を酸化させる際の重水素ガスD2と酸素ガスO2の量比は、酸素ガスO2のモル数/重水素ガスD2のモル数=1~5が好ましく、重水素の回収効率の点から、1~3がより好ましい。排気ガスG11中の有機物が触媒毒となるため、酸素ガスO2を過剰量とすることにより有機物を除去することができる。
重水発生工程により、排気ガスG11中の重水素ガスD2は重水D2Oに変換され、重水含有ガスG12として、重水発生装置11から導出される。重水素を重水D2Oとして回収する場合には、重水含有ガスG12を目的物質として回収してもよい。
重水素ガスと酸素ガスとの反応は次式のとおりである。
2D2+O2→2D2O
【0022】
(重水分離工程)
本実施形態の重水素回収方法は、前記重水発生工程の後、さらに、前記重水発生工程において発生させた重水含有ガスから重水を分離する重水分離工程を含んでいてもよい。
前記重水分離工程は、
図1に示す重水素回収設備101の重水分離装置12において実施される。
重水分離装置12における重水分離工程は、重水分離装置12の分離部(図示略)において、重水含有ガスG12を冷却器(図示略)によって冷却し、気体状態の重水D
2Oを凝結させて液化することによって、又は、重水含有ガスG12中の気体状態の重水D
2Oを吸着塔(図示略)に充填された乾燥剤に吸着することによって、行われることが好ましい。
重水含有ガスG12を冷却する際の温度は特に限定されないが、0~25℃が好ましく、0~10℃がより好ましい。重水の沸点は101.4℃(1013hPa)であるから、重水の凝固点付近まで冷却するまでもなく、室温(25℃)程度まで冷却することで、重水含有ガスG12中の重水の大部分を液化できるが、より冷却した方が回収率が向上する。冷却方法としては、一般工業用水との熱交換が挙げられる。
前記吸着剤としては、例えば、シリカゲル、モレキュラーシーブ等が挙げられる。
冷却による液化と吸着剤による重水の吸着とを組み合わせてもよい。この場合、重水含有ガスG12を冷却して、含有される重水の大部分を液化し、回収した後、吸着剤によって残った重水を吸着し、回収することが好ましい。
【0023】
(重水素ガス発生工程)
本実施形態の重水素回収方法は、前記重水分離工程の後、さらに、前記重水分離工程において分離した重水から重水素ガスを発生させる重水素ガス発生工程を含んでもよい。
前記重水素ガス発生工程は、
図1に示す重水素回収設備101の重水素ガス発生装置13において実施される。
重水素ガス発生装置13における重水素ガス発生工程は、重水素ガス発生装置13の反応部(図示略)において、重水D
2Oを電気分解して重水素ガスD
2を発生させることによって、行われる。
重水D
2Oの電気分解は、従来公知の軽水H
2Oの電気分解と同様に行うことができ、陰極に重水素ガスD
2が、陽極に酸素ガスO
2が発生する。
本実施形態の重水素回収方法では、陰極に発生した重水素ガスD
2を半導体製造装置へリサイクルするほか、重水をそのまま回収して利用することも可能である。
【0024】
<作用効果>
重水素を含む排気ガスG11から重水素を直接回収するためには、重水素ガスを液化するために-253℃以下の極低温が必要となるため、現実的ではない。そのため、本実施形態の重水素回収方法及び重水素回収設備では、排気ガスG11中の重水素ガスD2から重水D2Oを合成し、これを分離して、さらに電気分解することによって、排気ガスG11からの重水素ガスD2の回収を高効率かつ低コストで実現する。
【0025】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、半導体製造工程における重アンモニアガスを含む排気ガスから重水素又はその化合物を回収するための重水素回収方法及び重水素回収設備である。
【0026】
<重水素回収設備>
図2に示す重水素回収設備201は、本発明の第2の実施形態に係る重水素回収設備である。重水素回収設備201は、半導体製造工程において排出された、重アンモニアガスを含む排気ガスG21から、重アンモニアガスを回収するための設備である。
【0027】
重水素回収設備201は、湿式スクラバー装置21と、重アンモニアガス発生装置22と、湿式スクラバー装置21に排気ガスG21を供給するための排気ガス導入ラインLG21と、湿式スクラバー装置21から流体F21を導出するための移送ラインLF21と、重アンモニアガス発生装置22から重アンモニアガスND3を導出するための導出ラインLND3と、流体F21から重アンモニアガスND3を発生した残りの流体F22を排出するための排出ラインLF22を備えている。
【0028】
(湿式スクラバー装置)
湿式スクラバー装置21は、排気ガスG21中の重アンモニアガスND3と硫酸H2SO4、重硫酸D2SO4、亜硫酸H2SO3、重亜硫酸D2SO3、リン酸H3PO4、及び重リン酸D3PO4からなる群から選択される少なくとも1種A(以下「無機酸A」ともいう。)とを反応させて重アンモニウム塩を生成するための装置であり、排気ガスG21中の重アンモニアガスND3と無機酸Aとを反応させて重アンモニウム塩を生成する反応部(図示略)を有する。前記反応部における重アンモニウム塩の生成は、形式的には、重アンモニアガスND3と無機酸Aとの間の酸塩基反応により行われる。例えば、以下のような反応が重アンモニアガスND3と無機酸Aとの間で起こる。
2ND3+H2SO4→(NHD3)2SO4↓
2ND3+D2SO4→(ND4)2SO4↓
2ND3+H3PO4→(NHD3)3PO4↓
2ND3+D3PO4→(ND4)3PO4↓
生成した重アンモニウム塩は固体として反応部に沈殿する。移送ラインLF21は、反応部に沈殿した重アンモニウム塩を反応部の液体とともに流体F21として重アンモニアガス発生装置22に移送するためのラインである。
【0029】
(重アンモニアガス発生装置)
重アンモニアガス発生装置22は、湿式スクラバー装置21で生成した流体F21を導入して前記重アンモニウム塩を電気分解又は熱分解して重アンモニアガスND3を発生させるための装置であり、前記重アンモニウム塩を電気分解又は熱分解して重アンモニアガスND3を発生させる反応部(図示略)を有する。
前記反応部における前記重アンモニウム塩の電気分解は、従来公知のアンモニウム塩の電気分解方法によって行うことができる。また、前記反応部における前記重アンモニウム塩の熱分解は、従来公知のアンモニウム塩の熱分解方法によって行うことができる。
発生した重アンモニアガスND3は、導出ラインLND3を通じて回収され、半導体製造工程において再利用される。
流体F21から重アンモニアガスND3を発生した残りの流体F22は、排出ラインLF22を通じて系外に排出される。
【0030】
<重水素回収方法>
本実施形態の重水素回収方法は、半導体製造工程における重アンモニアガスを含む排気ガスから重アンモニウム塩を生成する重アンモニウム塩生成工程を含む。
【0031】
(重アンモニウム塩生成工程)
重アンモニウム塩生成工程は、
図2に示す重水素回収設備201の湿式スクラバー装置21において実施される。
湿式スクラバー装置21における重アンモニウム塩生成工程は、湿式スクラバー装置21の反応部(図示略)において、排気ガスG21中の重アンモニアガスND
3と、硫酸、重硫酸、亜硫酸、重亜硫酸、リン酸及び重リン酸からなる群から選択される少なくとも1種A(以下「無機酸A」ともいう。)とを反応させることによって、行われることが好ましい。
前記重アンモニウム塩生成工程では、軽水素Hの影響を軽減するため、無機酸Aとしては、重硫酸D
2SO
4又は重リン酸D
3PO
4を用いることが好ましい。
無機酸Aを溶解するための溶媒として、軽水H
2O又は重水D
2Oを使用できる。軽水素Hの影響を軽減するため、重水D
2Oを無機酸Aを溶解するための溶媒として使用することが好ましい。
また、重硫酸を溶媒に添加する代わりに、三酸化硫黄SO
3を重水D
2O中にバブリングして重硫酸D
2SO
4を生成しながら、重アンモニウム塩の生成を行ってもよい。
SO
3+D
2O→D
2SO
4
また、重硫酸を溶媒に添加する代わりに、二酸化硫黄SO
2を重水D
2O中にバブリングして重亜硫酸D
2SO
3を生成しながら、重アンモニウム塩の生成を行ってもよい。
SO
2+D
2O→D
2SO
3
ただし、重亜硫酸と重アンモニアとの反応では、(ND
4)
2SO
3・D
2Oが沈殿し、高価な重水D
2Oを消費するため、濃度モニタリングによるSO
2及びD
2Oの供給制御が必要となる。
また、重リン酸を溶媒に添加する代わりに、五酸化二リンP
2O
5を重水D
2O中に溶解して重リン酸を生成しながら、重アンモニウム塩の生成を行ってもよい。
P
2O
5+3D
2O→2D
3PO
4
【0032】
(重アンモニアガス発生工程)
本実施形態の重水素回収方法は、前記重アンモニウム塩生成工程の後、さらに、前記重アンモニウム塩を熱分解又は電気分解して重アンモニアガスを発生させる重アンモニアガス発生工程を含んでもよい。
前記重アンモニアガス発生工程における重アンモニウム塩の電気分解は、従来公知のアンモニウム塩の電気分解方法によって行うことができる。また、前記反応部における前記重アンモニウム塩の熱分解は、従来公知のアンモニウム塩の熱分解方法によって行うことができる。
発生した重アンモニアガスND3は、導出ラインLND3を通じて回収され、半導体製造工程において再利用される。
【0033】
<作用効果>
重アンモニアを含む排気ガスG21から重アンモニアを直接回収するためには、重アンモニアを液化するために加圧(9000hPa程度)又は冷却(-33℃程度)が必要となるため、現実的ではないそのため、本実施形態の重水素回収方法及び重水素回収設備では、排気ガスG21中の重アンモニアガスND3から重アンモニウム塩を生成し、これを分離して、さらに熱分解又は電気分解することによって、排気ガスG21からの重アンモニアガスND3の回収を高効率かつ低コストで実現する。
【0034】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、半導体製造工程における重アンモニアガス及びシランガスを含む排気ガスから重アンモニアガスを回収するための重水素回収方法及び重水素回収設備である。
【0035】
<重水素回収設備>
図3に示す重水素回収設備301は、本発明の第3の実施形態に係る重水素回収設備である。重水素回収設備301は、半導体製造工程において、重アンモニアガス(ND
3)及びシランガス(SiH
4)を用いて成膜する工程から発生した、重アンモニアガス及びシランガスを含む排気ガスから、重アンモニアガスを回収するための設備である。
【0036】
重水素回収設備301は、三フッ化窒素除害装置31と、湿式スクラバー装置32と、シランガス除害装置33と、重アンモニアガス発生装置34と、三フッ化窒素除害装置31に排気ガスG31を供給するための排気ガス導入ラインLG31と、三フッ化窒素除害装置31からNF3を排出するためのNF3排出ラインLNF3と、三フッ化窒素ガスNF3を除害した後のガスG32を排気ガスG31から湿式スクラバー装置32に移送するための移送ラインLG32と、ガスG32から重アンモニアガスND3を除去したガスG33をシランガス除害装置33に移送するための移送ラインLG33と、湿式スクラバー装置32で生成した重アンモニウム塩を含む流体F31を重アンモニアガス発生装置34に移送するための移送ラインLF31と、重アンモニアガス発生装置34から重アンモニアガスND3を導出するための導出ラインLND3と、を備えている。
【0037】
(三フッ化窒素除害装置)
三フッ化窒素除害装置31は、半導体製造工程において重アンモニアガス(ND3)及びシランガス(SiH4)を用いて成膜する工程から発生した排気ガスG31から三フッ化窒素ガス(NF3)を除害するための装置である。三フッ化窒素ガスNF3はエッチングガスとして使用されるため、成膜工程からの排気ガスに通常含まれている。三フッ化窒素ガスNF3は人体に対する毒性があるため、排気ガスG31から除害される。
三フッ化窒素除害装置31はとしては、従来使用されている三フッ化窒素除害装置を使用することができる。
排気ガスG31から三フッ化窒素ガスNF3を除害したガスG32は、移送ラインLG32を通じて湿式スクラバー装置32に移送される。
【0038】
(湿式スクラバー装置、重アンモニアガス発生装置)
湿式スクラバー装置32は、ガスG32中の重アンモニアガスND3と硫酸H2SO4、重硫酸D2SO4、亜硫酸H2SO3、重亜硫酸D2SO3、リン酸H3PO4、及び重リン酸D3PO4からなる群から選択される少なくとも1種B(以下「無機酸B」ともいう。)とを反応させて重アンモニウム塩を生成するための装置であり、ガスG32中の重アンモニアガスND3と無機酸Bとを反応させて重アンモニウム塩を生成する反応部(図示略)を有する。前記反応部における重アンモニウム塩の生成は、形式的には、重アンモニアガスND3と無機酸Aとの間の酸塩基反応により行われる。例えば、以下のような反応が重アンモニアガスND3と無機酸Bとの間で起こる。
2ND3+H2SO4→(NHD3)2SO4↓
2ND3+D2SO4→(ND4)2SO4↓
2ND3+H3PO4→(NHD3)3PO4↓
2ND3+D3PO4→(ND4)3PO4↓
生成した重アンモニウム塩は固体として反応部に沈殿する。移送ラインLF31は、反応部に沈殿した重アンモニウム塩を反応部の液体とともに流体F31として重アンモニアガス発生装置34に移送するためのラインである。
【0039】
重アンモニアガス発生装置34は、湿式スクラバー装置32で生成した流体F31を導入して前記重アンモニウム塩を電気分解又は熱分解して重アンモニアガスND3を発生させるための装置であり、前記重アンモニウム塩を電気分解又は熱分解して重アンモニアガスND3を発生させる反応部(図示略)を有する。
前記反応部における前記重アンモニウム塩の電気分解は、従来公知のアンモニウム塩の電気分解方法によって行うことができる。また、前記反応部における前記重アンモニウム塩の熱分解は、従来公知のアンモニウム塩の熱分解方法によって行うことができる。
発生した重アンモニアガスND3は、導出ラインLND3を通じて回収され、半導体製造工程において再利用される。
排出ラインLF32は、流体F31から重アンモニアガスND3を発生した残りの流体F32を系外に排出するためのラインである。
【0040】
(シランガス除害装置)
シランガス除害装置33は、ガスG32から重アンモニアガスを回収した後のガスG33からシランガスSiH4を除去するための装置である。シランガス除害装置33でシランガスSiH4は燃焼により二酸化ケイ素SiO2等の固形分(粉末)としてガスG33から除去される排出ラインLG34は、ガスG33からシランガスSiH4を固形分(粉末)として除去した後のガスG34を系外に排出するためのラインである。
【0041】
<重水素回収方法>
本実施形態の重水素回収方法は、半導体製造工程において、重アンモニアガスND
3及びシランガスSiH
4を用いて成膜する工程から発生した重アンモニアガスND
3及びシランガスSiH
4を含む排気ガスから重アンモニアガスを分離する重アンモニアガス分離工程と、重アンモニアガスND
3を分離した後の前記排気ガスからシランガスSiH
4を分離するシランガス除害工程と、を含む。
本実施形態の重水素回収方法は、
図3に示す重水素回収設備301において実施される。
【0042】
(三フッ化窒素ガス除害工程)
重アンモニアガス分離工程の前に、排気ガスG31からエッチングガスとして使用された三フッ化窒素ガスNF3を除害することが好ましい。排気ガスG31から三フッ化窒素ガスNF3を除害した後のガスG32は、重アンモニアガス分離工程において処理が行われる。
【0043】
(重アンモニアガス分離工程)
湿式スクラバー装置32における重アンモニウム塩生成工程は、湿式スクラバー装置21の反応部(図示略)において、ガスG32中の重アンモニアガスND3と、硫酸、重硫酸、亜硫酸、重亜硫酸、リン酸及び重リン酸からなる群から選択される少なくとも1種B(以下「無機酸B」ともいう。)とを反応させることによって、行われることが好ましい。
前記重アンモニウム塩生成工程では、軽水素Hの影響を軽減するため、無機酸Bとしては、重硫酸D2SO4又は重リン酸D3PO4を用いることが好ましい。
無機酸Bを溶解するための溶媒として、軽水H2O又は重水D2Oを使用できる。軽水素Hの影響を軽減するため、重水D2Oを無機酸Bを溶解するための溶媒として使用することが好ましい。
また、重硫酸を溶媒に添加する代わりに、三酸化硫黄SO3を重水D2O中にバブリングして重硫酸D2SO4を生成しながら、重アンモニウム塩の生成を行ってもよい。
SO3+D2O→D2SO4
また、重硫酸を溶媒に添加する代わりに、二酸化硫黄SO2を重水D2O中にバブリングして重亜硫酸D2SO3を生成しながら、重アンモニウム塩の生成を行ってもよい。
SO2+D2O→D2SO3
また、重リン酸を溶媒に添加する代わりに、五酸化二リンP2O5を重水D2O中に溶解して重リン酸を生成しながら、重アンモニウム塩の生成を行ってもよい。
P2O5+3D2O→2D3PO4
【0044】
前記重アンモニウム塩生成工程の後、前記重アンモニウム塩を熱分解又は電気分解して重アンモニアガスを発生させる重アンモニアガス発生工程を行う。
反応部に沈殿した重アンモニウム塩は、反応部の液体とともに流体F31として、移送ラインLF31を通じて重アンモニアガス発生装置34に移送される。
前記重アンモニアガス発生工程における重アンモニウム塩の電気分解は、従来公知のアンモニウム塩の電気分解方法によって行うことができる。また、前記反応部における前記重アンモニウム塩の熱分解は、従来公知のアンモニウム塩の熱分解方法によって行うことができる。
発生した重アンモニアガスND3は、導出ラインLND3を通じて回収され、半導体製造工程において再利用される。
【0045】
(シランガス除害工程)
重アンモニアガス分離工程において湿式スクラバー装置32で発生したガスG33は、移送ラインLG33を通じてシランガス除害装置33に移送される。
ガスG33からのシランガスSiH4の除去は、従来公知のシランガス除害方法によって行われる。
シランガス除害装置33でシランガスSiH4は燃焼により酸化ケイ素SiO2等の固形分(粉末)に変化し、排ガスから除去される。シランガスSiH4を燃焼により除去した後のガスG34は排出ラインLG34を通じて回収設備系外に排出される。
【0046】
<作用効果>
重アンモニアを含む排気ガスから重アンモニアを直接回収するためには、重アンモニアを液化するために加圧(9000hPa程度)又は冷却(-33℃程度)が必要となるため、現実的ではないそのため、本実施形態の重水素回収方法及び重水素回収設備では、排気ガス中の重アンモニアガスND3から重アンモニウム塩を生成し、これを分離して、さらに熱分解又は電気分解することによって、排気ガスからの重アンモニアガスND3の回収を高効率かつ低コストで実現する。
【符号の説明】
【0047】
11 重水発生装置
12 重水分離装置
13 重水素ガス発生装置
21 湿式スクラバー装置
22 重アンモニアガス発生装置
31 三フッ化窒素除害装置
32 湿式スクラバー装置
33 シランガス除害装置
34 重アンモニアガス発生装置
101,201,301 重水素回収設備
F21,F22,F31,F32 流体
G11,G13,G14、G21、G31 排気ガス
G12 重水含有ガス
G32、G33,G34 ガス
LD2 導出ライン
LD2O,LF21,LF31,LG12 移送ライン
LF22,LF32,LG34,LNF3 排出ライン
LG11,LG21,LG31 排気ガス導入ライン
LG13,LG14 排気ガス排出ライン
LG32,LG33 移送ライン
LND3 導出ライン
LO2 供給ライン